(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】増幅回路
(51)【国際特許分類】
H03F 3/30 20060101AFI20240219BHJP
H03F 3/34 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
H03F3/30
H03F3/34 230
(21)【出願番号】P 2019160543
(22)【出願日】2019-09-03
【審査請求日】2021-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111121
【氏名又は名称】原 拓実
(74)【代理人】
【識別番号】100200104
【氏名又は名称】渡邊 実
(72)【発明者】
【氏名】安田 隆哉
(72)【発明者】
【氏名】南 一保
【審査官】▲高▼橋 徳浩
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-106904(JP,A)
【文献】特開2000-180478(JP,A)
【文献】特開2006-050151(JP,A)
【文献】特開2013-102283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F1/00-H03F3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力端子と、
電源電位と前記出力端子の間に電気的に直列に接続された、第1トランジスタ及び第1抵抗と、
前記出力端子と基準電位の間に電気的に直列に接続された、前記第1トランジスタとチャネル型が異なる第2トランジスタ及び第2抵抗と、
+入力端子及び-入力端子が、それぞれ前記第1抵抗の一端と他端に電気的に接続された第1アンプと、
+入力端子及び-入力端子が、それぞれ前記第2抵抗の一端と他端に電気的に接続された第2アンプと、
ゲートが前記第1アンプの出力端子に電気的に接続され、前記第1抵抗の両端間に発生する第1電圧に対応する第1検出電流がソースドレイン間を導通する第3トランジスタと、
ゲートが前記第2アンプの出力端子に電気的に接続され、前記第2抵抗の両端間に発生する第2電圧に対応する第2検出電流がソースドレイン間を導通する第4トランジスタと、
第5トランジスタと、第6トランジスタと、第3抵抗を含み、前記第6トランジスタと前記第3抵抗の一端は、前記第3トランジスタのドレインに電気的に接続され、前記第3抵抗の他端と、前記第5トランジスタ及び前記第6トランジスタのソースは基準電位に電気的に接続されている第1電圧変換回路と、
一端が前記第4トランジスタのドレインに電気的に接続され、他端が前記第1電圧変換回路の前記第5トランジスタ及び前記第6トランジスタのゲートに電気的に接続され、前記第2検出電流を複製する第1電流複製回路と、を有し、
前記第3抵抗には、前記第1検出電流から前記第2検出電流が差し引かれた電流が導通する増幅回路。
【請求項2】
ゲートが前記第1アンプの出力端子に電気的に接続され、前記第1検出電流がソースドレイン間を導通する第8トランジスタのドレインと一端が電気的に接続され、他端が前記第1電流複製回路
の第7トランジスタのドレインと電気的に接続された
第2電圧変換回路をさらに有し、
前記第2電圧変換回路は、第9トランジスタと、第10トランジスタと、第4抵抗を含んでおり、
前記第9トランジスタと前記第4抵抗の一端は前記第7トランジスタのドレインに電気的に接続され、前記第4抵抗の他端、及び前記第9トランジスタと前記第10トランジスタのソースは基準電位に電気的に接続され、
前記第4抵抗には前記第2検出電流から前記第1検出電流が差し引かれた電流が導通する請求項1に記載の増幅回路。
【請求項3】
前記第1電圧変換回路はカレントミラー回路を用いて前記第2検出電流を複製し、
前記第2電圧変換回路はカレントミラー回路を用いて前記第1検出電流を複製する、
請求項2に記載の増幅回路。
【請求項4】
入力端子の一方が、前記第3トランジスタと前記第3抵抗との間に電気的に接続された第1コンパレータと、
入力端子の一方が、前記第7トランジスタと前記第4抵抗との間に電気的に接続された第2コンパレータと、
をさらに有する請求項2~3のいずれか1項に記載の増幅回路。
【請求項5】
各ソースドレインが電源電位と基準電位との間に電気的に直列に接続され、各ドレインが出力端子に電気的に接続され、互いにチャネル型が異なる第1トランジスタ及び第2トランジスタを有するプッシュプル回路と、
前記電源電位と前記第1トランジスタの間に電気的に接続され、前記第1トランジスタのソースドレイン間電流を検出し、相当する第1検出電流に変換する第1電流検出回路と、
前記第2トランジスタと前記基準電位の間に電気的に接続され、前記第2トランジスタのソースドレイン間電流を検出し、相当する第2検出電流に変換する第2電流検出回路と、
前記第2検出電流を複製し、前記第1検出電流から前記第2検出電流を差し引く第1電流複製回路と、
前記第1検出電流から前記第2検出電流が差し引かれた電流が導通する第1抵抗と、
前記第1検出電流を複製し、前記第2検出電流から前記第1検出電流を差し引く第2電流複製回路と、
前記第2検出電流から前記第1検出電流が差し引かれた電流が導通する第2抵抗と、
を有する増幅回路。
【請求項6】
前記第1電流複製回路はカレントミラー回路を用いて前記第2検出電流を複製し、
前記第2電流複製回路はカレントミラー回路を用いて前記第1検出電流を複製する、
請求項5記載の増幅回路。
【請求項7】
前記第1抵抗は前記第1検出電流から前記第2検出電流を差し引いた電流を第1検出電圧に変換し、
前記第2抵抗は前記第2検出電流から前記第1検出電流を差し引いた電流を第2検出電圧に変換する、
請求項5または請求項6に記載の増幅回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、増幅回路に関する。
【背景技術】
【0002】
プッシュプル型の増幅回路には、出力負荷電流の過電流を検出するものがある。単に、プッシュプル回路を構成するトランジスタの一方に流入する電流を検出するだけでは、検出される電流と実際の出力電流との間に、プッシュプルアンプに定常的に流れるバイアス電流分の誤差が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
出力電流と出力電流に相当する検出電流との誤差が小さい電流検出機能を有する増幅回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の増幅回路は、出力端子と、電源電位と前記出力端子の間に電気的に直列に接続された、第1トランジスタ及び第1抵抗と、前記出力端子と基準電位の間に電気的に直列に接続された、前記第1トランジスタとチャネル型が異なる第2トランジスタ及び第2抵抗と、+入力端子及び-入力端子が、それぞれ前記第1抵抗の一端と他端に電気的に接続された第1アンプと、+入力端子及び-入力端子が、それぞれ前記第2抵抗の一端と他端に電気的に接続された第2アンプと、ゲートが前記第1アンプの出力端子に電気的に接続され、前記第1抵抗の両端間に発生する第1電圧に対応する第1検出電流がソースドレイン間を導通する第3トランジスタと、ゲートが前記第2アンプの出力端子に電気的に接続され、前記第2抵抗の両端間に発生する第2電圧に対応する第2検出電流がソースドレイン間を導通する第4トランジスタと、第5トランジスタと、第6トランジスタと、第3抵抗を含み、前記第6トランジスタと前記第3抵抗の一端は、前記第3トランジスタのドレインに電気的に接続され、前記第3抵抗の他端と、前記第5トランジスタ及び前記第6トランジスタのソースは基準電位に電気的に接続されている第1電圧変換回路と、一端が前記第4トランジスタのドレインに電気的に接続され、他端が前記第1電圧変換回路の前記第5トランジスタ及び前記第6トランジスタのゲートに電気的に接続され、前記第2検出電流を複製する第1電流複製回路と、を有し、前記第3抵抗には、前記第1検出電流から前記第2検出電流が差し引かれた電流が導通する増幅回路。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1の実施形態の増幅回路の構成を模式的に示す回路図。
【
図2】比較例の増幅回路の構成を模式的に示す回路図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して、実施形態にかかる半導体集積回路を詳細に説明する。なお、これらの実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0008】
(第1の実施形態)
図1を用いて、第1の実施形態の増幅回路の構成を説明する。
図1は、第1の実施形態の増幅回路100の構成を模式的に示す回路図である。
【0009】
増幅回路100は、制御回路10、プッシュプル回路11、第1電流検出回路12、第2電流検出回路13、第1電圧変換回路14、第2電圧変換回路15、カレントミラー回路16、第1コンパレータCMP1、第2コンパレータCMP2を有する。
【0010】
制御回路10は、信号S1、S2を入力することでプッシュプル回路動作を制御する。制御回路は、例えばプッシュプル回路11にAB級動作をさせるAB級制御回路であるが、プッシュプル回路11にA級やB級、その他の動作をさせる制御回路であってもよい。
【0011】
プッシュプル回路11は、トランジスタM1、M2及び出力端子Poutを有する。
【0012】
本明細書では簡単のため、トランジスタがMetal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor(MOSFET)であるもとのとして説明するが、その他の電界効果トランジスタや接合型トランジスタを用いることができる。
【0013】
トランジスタM1はPチャネル型であり、トランジスタM2はNチャネル型である。トランジスタM1、M2のドレインは、相互に電気的に接続されるとともに、出力端子Poutに電気的に接続される。トランジスタM1、M2のゲートは、制御回路10に電気的に接続され、それぞれ異なる信号S1、S2が入力されることでゲート電圧及びソースドレイン間電流が制御される。以降、プッシュプル回路において、出力端子Poutを基準に、電源電位VDD側(トランジスタM1側)をHiside、基準電位GND側(トランジスタM2側)をLosideと表現する。
【0014】
第1電流検出回路12は、抵抗R1、R2、R3、アンプAMP1、Pチャネル型のトランジスタM3、M7を有する。抵抗R1の一端は、トランジスタM1のソースに電気的に接続され、他端は電源電位VDDに電気的に接続される。抵抗R2は、一端が電源電位VDDと抵抗R1との間のノードに電気的に接続され、他端がアンプAMP1の-入力端子、及びトランジスタのM3、M7のソースに電気的に接続される。抵抗R3は、一端が抵抗R1とトランジスタM1のソースとの間のノードに電気的に接続され、他端がアンプAMP1の+入力端子に電気的に接続される。アンプAMP1の出力端子は、トランジスタM3、M7のゲートに電気的に接続される。トランジスタM3、M7は、同一の特性を有する。トランジスタM3、M7は、電流複製回路を構成し、それぞれのソースドレイン間には同じ大きさの電流が流れる。
【0015】
なお、第1電流検出回路12は、抵抗R1がトランジスタM1のドレインと出力端子Poutとの間に電気的に接続され、アンプAMP1の2つの入力端子がそれぞれ抵抗R2、R3を介して、抵抗R1の両端のノードに接続される構成としてもよい。
【0016】
第1コンパレータCMP1の+入力端子は、トランジスタM3のドレインと電気的に接続される。第1コンパレータCMP1の-入力端子は、参照電位VREFと電気的に接続される。
【0017】
第1電圧変換回路14は、抵抗R4、及びNチャネル型のトランジスタM11、M12を有する。抵抗R4の一端、及びトランジスタM12のドレインは、トランジスタM3のドレインと第1コンパレータCMP1の+入力端子との間のノードに電気的に接続される。抵抗R4の他端、及びトランジスタM11、M12のソースは、基準電位GNDに電気的に接続される。トランジスタM11のゲート及びドレインと、トランジスタM12のゲートとは、後述するトランジスタM10のドレインに電気的に接続される。トランジスタM11、M12は、同じ電気的特性を有する。トランジスタM11、M12は、電流複製回路を構成し、それぞれのソースドレイン間には同じ大きさの電流が複製される。
【0018】
第2電流検出回路13は、抵抗R5、R6、R7、アンプAMP2、Nチャネル型のトランジスタM4を有する。抵抗R5の一端は、トランジスタM2のソースに電気的に接続され、他端は基準電位GNDに電気的に接続される。抵抗R6は、一端が基準電位GNDと抵抗R5との間のノードに電気的に接続され、他端がアンプAMP2の-入力端子、及びトランジスタのM4のソースに電気的に接続される。抵抗R7は、一端が抵抗R5とトランジスタM2のソースとの間のノードに電気的に接続され、他端がアンプAMP2の+入力端子に電気的に接続される。アンプAMP2の出力端子は、トランジスタM4のゲートに電気的に接続される。
【0019】
なお、第2電流検出回路13は、抵抗R5がトランジスタM2のドレインと出力端子Poutとの間に電気的に接続され、アンプAMP2の2つの入力端子がそれぞれ抵抗R6、R7を介して、抵抗R5の両端のノードに接続される構成としてもよい。
【0020】
カレントミラー回路16は、Pチャネル型のトランジスタM5、M6、M10を有する。トランジスタM5のドレイン、及びトランジスタM5、M6、M10のゲートは、トランジスタM4のドレインに電気的に接続される。トランジスタM5、M6、M10のソースは、電源電位VCCに電気的に接続される。トランジスタM6のドレインは、第2コンパレータCMP2の+入力端子に電気的に接続される。トランジスタM5、M6、M10は、同じ電気的特性を有する。トランジスタM5、M6、M10は、電流複製回路を構成し、それぞれのソースドレイン間には同じ大きさの電流が複製される。
【0021】
第2コンパレータCMP2の+入力端子は、トランジスタM6のドレインと電気的に接続される。第2コンパレータCMP2の-入力端子は、参照電位VREFと電気的に接続される。
【0022】
第2電圧変換回路15は、抵抗R8、及びNチャネル型のトランジスタM8、M9を有する。抵抗R8の一端、及びトランジスタM9のドレインは、トランジスタM6のドレインと第2コンパレータCMP2の+入力端子との間のノードに電気的に接続される。抵抗R8の他端、及びトランジスタM8、M9のソースは、基準電位GNDに電気的に接続される。トランジスタM8のドレイン、及びトランジスタM8、M9のゲートは、トランジスタM7のドレインに電気的に接続される。トランジスタM8、M9は、同じ電気的特性を有する。トランジスタM8、M9は、電流複製回路を構成し、それぞれのソースドレイン間には同じ大きさの電流が複製される。
【0023】
増幅回路100各部の機能について説明する。
【0024】
プッシュプル回路11は、トランジスタM1とトランジスタM2とを交互に使用して、出力端子Poutから出力電流Ioutを出力する。トランジスタM1とトランジスタM2とは、常に飽和動作している。プッシュプル回路11がトランジスタM1とトランジスタM2とのどちらを使用しているかに関係なく、トランジスタM1とトランジスタM2とのソースドレイン間には、常にバイアス電流Ibが導通している。トランジスタM1とトランジスタM2のうち、使用しているトランジスタのソースドレイン間にIout+Ibの電流が流れる。
【0025】
なお、プッシュプル回路11がAB級アンプ動作をする場合、トランジスタM1が使用されるとは、トランジスタM1が出力端子Poutから出力電流Ioutを吐き出すことである。また、トランジスタM2が使用されるとは、トランジスタM2が出力端子Poutから出力電流Ioutを引き込むことである。
【0026】
トランジスタM1に流れるHiside電流IHは、抵抗R1両端に現れる電圧に変換される。第1電流検出回路12は、アンプAMP1及びトランジスタM3によって、抵抗R1両端に現れる電圧をHiside電流IHに相当するHiside検出電流IHsに変換する。Hiside検出電流IHsは、トランジスタM3のソースドレイン間に流れる。
【0027】
トランジスタM2に流れるLoside電流ILは、抵抗R5両端に現れる電圧に変換される。第2電流検出回路13は、アンプAMP2及びトランジスタM4によって、抵抗R5両端に現れる電圧をLoside電流ILに相当するLoside検出電流ILsに変換する。Loside検出電流ILsは、トランジスタM4のソースドレイン間に流れる。
【0028】
カレントミラー回路16は、トランジスタM4、M5に流れるLoside検出電流ILsの向きを折り返して、トランジスタM6、M10のソースドレイン間に流す。
【0029】
第1電圧変換回路14は、抵抗R4に流れる電流をHiside検出電圧VHsに変換する。トランジスタM11、M12のソースドレイン間には、Loside検出電流ILsが流れる。抵抗R4とトランジスタM12のソースドレインとが平行に電気的に接続されているため、抵抗R4には、Hiside検出電流IHsからLoside検出電流ILsを引いた値の電流が流れる。つまり、抵抗R4は、IHs-ILsの電流をHiside検出電圧VHsに変換する。
【0030】
第1コンパレータCMP1は、Hiside検出電圧VHsと参照電位VREFとを比較し、出力端子から過電流検出信号OCHを出力する。第1コンパレータCMP1は、VHs≧VREFであれば、つまりIHs-ILsが規定値以上であれば、プッシュプル回路11の出力端子Poutに規定値を超える電流が流れていると判断し、Highレベルの過電流検出信号OCHを出力する。第1コンパレータCMP1は、VHs<VREFであれば、つまりIHs-ILsが規定値未満であれば、プッシュプル回路11の出力端子Poutに規定値未満の電流が流れていると判断し、Lowレベルの過電流検出信号OCHを出力する。
【0031】
第2電圧変換回路15は、抵抗R8に流れる電流をLoside検出電圧VLsに変換する。トランジスタM8、M9のソースドレイン間には、Hiside検出電流IHsが流れる。抵抗R8とトランジスタM9のソースドレインとが平行に電気的に接続されているため、抵抗R8には、Loside検出電流ILsからHiside検出電流IHsを引いた値の電流が流れる。つまり、抵抗R8は、ILs-IHsの電流をLoside検出電圧VLsに変換する。
【0032】
第2コンパレータCMP2は、Loside検出電圧VLsと参照電位VREFとを比較し、出力端子Poutから過電流検出信号OCLを出力する。第2コンパレータCMP2は、VLs≧VREFであれば、つまりILs-IHsが規定値以上であれば、プッシュプル回路11の出力端子Poutに規定値を超える電流が流れていると判断し、Highレベルの過電流検出信号OCLを出力する。第2コンパレータCMP2は、VLs<VREFであれば、つまりILs-IHsが規定値未満であれば、プッシュプル回路11の出力端子Poutに規定値以下の電流が流れていると判断し、Highレベルの過電流検出信号OCLを出力する。
【0033】
増幅回路100は、出力電流Ioutと検出された電流との間の誤差が小さい電流検出機能を有することを説明する。
【0034】
以降の説明では、出力電流Ioutに相当する検出電流の値をIoutsと表記し、バイアス電流Ibに相当する検出電流の値をIbsと表記する。Iout+Ibに相当する検出電流の値は、Iouts+Ibsである。
【0035】
まず、プッシュプル回路11がトランジスタM1を使用して動作しているときの、電流検出機能を説明する。
【0036】
プッシュプル回路11がトランジスタM1を使用して動作しているとき、トランジスタM1には、出力電流Ioutとバイアス電流Ibとを合わせた値のHiside電流IHが流れる。トランジスタM2には、バイアス電流Ibが流れる。つまり、IH=Iout+Ib、IL=Ibである。
【0037】
第1電流検出回路12は、Hiside電流IHを検出し、Hiside検出電流IHsに変換する。IHs=Iouts+Ibsである。
【0038】
第2電流検出回路13は、Loside電流ILを検出し、Loside検出電流ILsに変換する。ILs=Ibsである。
【0039】
第1電圧変換回路は、IHs-ILsの電流をHiside検出電圧VHsに変換する。IHs-ILs=Ioutsなので、Hiside検出電圧VHsの値から、出力電流Ioutの値を求めることができる。
【0040】
第1コンパレータは、Hiside検出電圧VHsと参照電位VREFとを比較し、出力端子から過電流検出信号OCHを出力する。IHs-ILs=Ioutsなので、Hiside検出電圧VHsの値から、出力電流Ioutの値を求めることができる。つまり、Hiside検出電圧VHsを適当に設定した参照電位VREFと比較すれば、出力電流Ioutが規定値以上となっているか判断できる。
【0041】
次に、プッシュプル回路11が、トランジスタM2を使用して動作しているときの、電流検出機能を説明する。
【0042】
プッシュプル回路11が、トランジスタM2を使用して動作しているとき、トランジスタM2には、出力電流Ioutとバイアス電流Ibとを合わせた値のLoside電流ILが流れる。トランジスタM1には、バイアス電流Ibが流れる。つまり、IL=Iout+Ib、IH=Ibである。
【0043】
第2電流検出回路13は、Loside電流ILを検出し、Loside検出電流ILsに変換する。ILs=Iouts+Ibsである。カレントミラー回路16は、Loside検出電流ILsの向きを折り返す。
【0044】
第1電流検出回路12は、Hiside電流IHを検出し、Hiside検出電流IHsに変換する。IHs=Ibsである。
【0045】
第2電圧変換回路は、ILs-IHsの電流をLoside検出電圧VLsに変換する。ILs-IHs=Ioutsなので、Loside検出電圧VLsの値から、出力電流Ioutを求めることができる。
【0046】
第2コンパレータCMP2は、Loside検出電圧VLsと参照電位VREFとを比較し、出力端子から過電流検出信号OCLを出力する。ILs-IHs=Ioutsなので、Loside検出電圧VLsの値から、出力電流Ioutを求めることができる。つまり、Loside検出電圧VLsを適当に設定した参照電位VREFと比較すれば、出力電流Ioutが規定値以上となっているか判断できる。
【0047】
図2を用いて、比較例の増幅回路200の構成を説明する。
図2は、比較例の増幅回路200の構成を模式的に示す回路図である。
【0048】
比較例の増幅回路200は、第1の実施形態の増幅回路100と比較して構成が異なる点は、第1電流検出回路22にトランジスタM7が設けられていない、第1電圧変換回路24にトランジスタM11、M12が設けられていない、第2電圧変換回路25にトランジスタM8、M9が設けられていない、カレントミラー回路26にトランジスタM10が設けられないことである。
【0049】
比較例の増幅回路200の電流検出機能を説明する。
【0050】
プッシュプル回路11がトランジスタM1を使用して動作しているとき、第1電流検出回路22は、Hiside電流IHを検出し、Hiside検出電流IHsに変換する。抵抗R4は、Hiside検出電流IHsをHiside検出電圧VHsに変換する。第1コンパレータCMP1は、Hiside検出電圧VHsと参照電位VREFとを比較し、出力端子から過電流検出信号OCHを出力する。
【0051】
このとき、IH=Iout+Ibであり、IHs=Iouts+Ibsである。Hiside検出電圧VHsをもとに算出される出力電流の値は、Iout+Ibとなる。このため、第1コンパレータCMP1は、実際の出力電流Ioutにバイアス電流Ib分の誤差が重畳された値をもとに、出力電流Ioutが規定値以上の値か否かを判定する。
【0052】
プッシュプル回路11がトランジスタM2を使用して動作しているとき、第2電流検出回路13は、Loside電流ILを検出し、Loside検出電流ILsに変換する。カレントミラー回路26は、Loside検出電流ILsの向きを折り返す。抵抗R5は、Loside検出電流ILsをLoside検出電圧VLsに変換する。第2コンパレータCMP2は、Loside検出電圧VLsと参照電位VREFとを比較し、出力端子から過電流検出信号を出力する。
【0053】
このとき、IL=Iout+Ibである。Loside検出電流ILs及びLoside検出電圧VLsをもとに算出される出力電流の値は、Iout+Ibとなる。このため、第2コンパレータは、実際の出力電流Ioutにバイアス電流Ib分の誤差が重畳された値をもとに、出力電流Ioutが規定値以上の値か否かを判定する。
【0054】
このように、比較例では、プッシュプル回路11を構成するトランジスタM1、M2の一方に流入する電流を検出し検出電圧に変換する。検出電流の値(Iouts+Ibs)と出力電流の値(Iout)との間に、プッシュプルアンプに定常的に流れるバイアス電流Ib分の誤差が生じる。さらに、検出電流をもとに変換された検出電圧も誤差が生じ、検出電圧を利用したコンパレータによる過電流検出にも誤差が生じる。
【0055】
一方、第1の実施形態の増幅回路100は、出力電流Ioutに相当するHiside及びLosideの検出電流から他方の検出電流の値を差し引く。差し引かれた検出電流は、出力電流Ioutの検出電流に相当する。つまり、差し引かれた検出電流の値(Iouts)と実際の出力電流の値(Iout)との間に、バイアス電流Ibによる誤差が生じない。このため、差し引かれた検出電流が変換された検出電圧を用いた過電流検出でも、バイアス電流Ibによる誤差が生じない。このように、第1の実施形態によって、出力電流と出力電流に相当する検出電流との誤差が小さく電流検出機能を有する増幅回路100を提供することができる。
【0056】
以上説明したように、第1の実施形態の増幅回路は、出力電流Ioutに相当するHiside及びLosideの検出電流から他方の検出電流の値を差し引く。差し引かれた検出電流の値(Iouts)と実際の出力電流の値(Iout)との間に、バイアス電流Ibによる誤差が生じない。このため、差し引かれた検出電流が変換された検出電圧を用いた過電流検出でも、バイアス電流Ibによる誤差が生じない。このように、第1の実施形態によって、出力電流と出力電流に相当する検出電流との誤差が小さい電流検出機能を有する増幅回路100を提供することができる。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
10 制御回路
11 プッシュプル回路
12、22 第1電流検出回路
13 第2電流検出回路
14、24 第1電圧変換回路
15、25 第2電圧変換回路
16、26 カレントミラー回路
100、200 増幅回路
M1、M2、M3、M4、M5、M6、M7、M8、M9、M10、M11、M12 トランジスタ
AMP1、AMP2 アンプ
CMP1 第1コンパレータ
CMP2 第2コンパレータ
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8 抵抗
Pout 出力端子
VDD、VCC 電源電位
GND 基準電位
VREF 参照電位