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特許7438722炉内監視方法、炉内監視装置および加熱炉
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】炉内監視方法、炉内監視装置および加熱炉
(51)【国際特許分類】
   F27D 21/02 20060101AFI20240219BHJP
   F27B 9/40 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
F27D21/02
F27B9/40
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019206222
(22)【出願日】2019-11-14
(65)【公開番号】P2021081087
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000203977
【氏名又は名称】日鉄テックスエンジ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】松本 俊司
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 睦季
(72)【発明者】
【氏名】平加 記靖
(72)【発明者】
【氏名】柴田 正司
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-323743(JP,A)
【文献】特開2006-105522(JP,A)
【文献】実開平04-027400(JP,U)
【文献】特開2002-286227(JP,A)
【文献】特開平09-318013(JP,A)
【文献】特開2001-271110(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 21/02
F23M 11/04
F27B 9/40
C21D 1/00
C21D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱炉内を監視する炉内監視方法であって、
前記加熱炉は、被加熱材の長手方向を炉幅方向に向けて収容し、被加熱材を炉長方向に搬送しながら加熱し、
前記加熱炉の天井部の炉幅方向中央付近に二次元撮像装置を配置し、
前記二次元撮像装置は、前記加熱炉の幅全体を前記二次元撮像装置の長辺方向の視野範囲とし、前記加熱炉の炉長方向に傾けて配置することを特徴とする、炉内監視方法。
【請求項2】
前記二次元撮像装置を2台以上設置し、全ての前記二次元撮像装置の視野を合成した視野範囲が前記炉長方向全体に亘るように、前記二次元撮像装置の位置および傾ける角度を設定することを特徴とする、請求項1に記載の炉内監視方法。
【請求項3】
前記二次元撮像装置を前記天井部の炉幅中央に配置し、前記二次元撮像装置の中心軸線の水平方向に対する傾斜角度αが、式(1)で求められる傾斜角度α、式(2)で求められる傾斜角度αとした場合に、式(3)の範囲であることを特徴とする、請求項1または2のいずれか一項に記載の炉内監視方法。
α=arcsin{H/(W/2×tan(90°-θ/2))}-θ/2 ・・・(1)
α=arcsin{H/(N×σ/n/2×tan(90°-θ/2))}+θ/2 ・・・(2)
α≧α≧α ・・・(3)
なお、
H:加熱炉の天井と搬送パスラインとの距離(mm)
W:加熱炉の炉幅寸法(mm)
θ:炉幅方向の二次元撮像装置の視野角(°)
θ:炉長方向の二次元撮像装置の視野角(°)
N:炉幅方向の二次元撮像装置の画素数
σ:炉幅方向の必要精度(mm)
n:必要精度を得るために必要な画素数
【請求項4】
前記二次元撮像装置を前記天井部の炉幅中央に配置し、前記二次元撮像装置の中心軸線の水平方向に対する傾斜角度αが、式(4)で求められる傾斜角度α11、式(5)で求められる傾斜角度α21とした場合に、式(6)の範囲であることを特徴とする、請求項1または2のいずれか一項に記載の炉内監視方法。
α11=arcsin (3.46×H/W)-34 ・・・(4)
α21=arcsin (5.41×10-4×H)+34 ・・・(5)
α11≧α≧α21 ・・・(6)
なお、
H:加熱炉の天井と搬送パスラインとの距離(mm)
W:加熱炉の炉幅寸法(mm)
【請求項5】
前記二次元撮像装置は、先端部に配置された光学系および二次元撮像素子を備えた撮像部と、前記撮像部の外周に設けられた、冷却水が流通する水冷部と、前記水冷部の外周に設けられた、冷却ガスが流通する空冷部と、によって形成された管状の管体部を備え、
前記水冷部は、前記管体部の中心軸側の往路と前記往路の先端から折り返す外周側の復路とからなり、前記空冷部は、前記管体部の先端側が外部に向けて開放され、前記空冷部を流通した冷却ガスが前記管体部の先端側から放出されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の炉内監視方法。
【請求項6】
加熱炉内を監視する炉内監視装置であって、
前記加熱炉は、被加熱材の長手方向を炉幅方向に向けて収容し、被加熱材を炉長方向に搬送しながら加熱し、
前記加熱炉の天井部の炉幅方向中央付近に配置された二次元撮像装置および前記二次元撮像装置に接続された演算部を備え、
前記二次元撮像装置は、前記加熱炉の幅全体を前記二次元撮像装置の長辺方向の視野範囲とし、前記加熱炉の炉長方向に傾けて配置されていることを特徴とする、炉内監視装置。
【請求項7】
2台以上の二次元撮像装置を備え、
全ての前記二次元撮像装置の視野を合成した視野範囲が前記炉長方向全体に亘るように、前記二次元撮像装置の位置および傾ける角度が設定されていることを特徴とする、請求項6に記載の炉内監視装置。
【請求項8】
前記二次元撮像装置は、前記天井部の炉幅中央に配置され、
前記二次元撮像装置の中心軸線の水平方向に対する傾斜角度αが、式(1)で求められる傾斜角度α、式(2)で求められる傾斜角度αとした場合に、式(3)の範囲であることを特徴とする、請求項6または7のいずれか一項に記載の炉内監視装置。
α=arcsin{H/(W/2×tan(90°-θ/2))}-θ/2 ・・・(1)
α=arcsin{H/(N×σ/n/2×tan(90°-θ/2))}+θ/2 ・・・(2)
α≧α≧α ・・・(3)
なお、
H:加熱炉の天井と搬送パスラインとの距離(mm)
W:加熱炉の炉幅寸法(mm)
θ:炉幅方向の二次元撮像装置の視野角(°)
θ:炉長方向の二次元撮像装置の視野角(°)
N:炉幅方向の二次元撮像装置の画素数
σ:炉幅方向の必要精度(mm)
n:必要精度を得るために必要な画素数
【請求項9】
前記二次元撮像装置は、前記天井部の炉幅中央に配置され、
前記二次元撮像装置の中心軸線の水平方向に対する傾斜角度αが、式(4)で求められる傾斜角度α11、式(5)で求められる傾斜角度α21とした場合に、式(6)の範囲であることを特徴とする、請求項6または7のいずれか一項に記載の炉内監視装置。
α11=arcsin (3.46×H/W)-34 ・・・(4)
α21=arcsin (5.41×10-4×H)+34 ・・・(5)
α11≧α≧α21 ・・・(6)
なお、
H:加熱炉の天井と搬送パスラインとの距離(mm)
W:加熱炉の炉幅寸法(mm)
【請求項10】
前記二次元撮像装置は、先端部に配置された光学系および二次元撮像素子を備えた撮像部と、前記撮像部の外周に設けられた、冷却水が流通する水冷部と、前記水冷部の外周に設けられた、冷却ガスが流通する空冷部と、によって形成された管状の管体部を備え、
前記水冷部は、前記管体部の中心軸側の往路と前記往路の先端から折り返す外周側の復路とからなり、前記空冷部は、前記管体部の先端側が外部に向けて開放され、前記空冷部を流通した冷却ガスが前記管体部の先端側から放出されることを特徴とする、請求項6~9のいずれか一項に記載の炉内監視装置。
【請求項11】
請求項6~10のいずれか一項に記載の炉内監視装置を備えた加熱炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱炉の内部を監視する方法に関し、殊に、広範囲に亘って炉内を監視できる炉内監視方法、炉内監視装置および、その炉内監視装置を備えた加熱炉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
加熱炉内では、搬送される被加熱材が蛇行することがある。蛇行が生じると、被加熱材が炉壁に接触して炉壁が損傷したり、被加熱材が短尺の場合はスキッドから脱落して搬送不能になったりするという問題が起こる。そして、このようなトラブルが発生すると、炉を一旦停止しなければならなくなり、作業能率が著しく低下する。そのため、全ての被加熱材における蛇行量の常時監視や蛇行原因の特定を行うことは、炉の操業上極めて重要である。
【0003】
従来、加熱炉内において、このような被加熱材の蛇行の有無や、炉内設備の状態、被加熱材の表面性状、バーナー火炎の状態等を監視する目的で、炉内監視装置が必要とされている。
【0004】
しかしながら、加熱炉では、被加熱材への加熱は、主に高温に熱せられた天井及び加熱炉内(天井と被加熱材との間)の高温ガス内成分から生じる輻射熱によって行われる。そのため、天井と被加熱材との間の間隔が小さいほど、輻射熱量が大きくなる。したがって、加熱炉は、天井と被加熱材との間隔が小さくなるように形成され、炉幅は被加熱材の長手方向の長さを許容できるように形成されるため、結果的に幅広になり、断面形状が横長の長方形状となっている。そして、被加熱材の搬送パスラインの上部および下部には多数のバーナーが設置されており、炉内が高温状態となるため、加熱炉の天井付近も高温となる。そのため、加熱炉内において、被加熱材の蛇行の有無等を監視するために、加熱炉の天井付近に二次元撮像装置を設置すると、バーナーの熱の影響を受けて二次元撮像装置が破損する恐れがある。
【0005】
また、上述のように、加熱炉内は天井と被加熱材との間隔が小さいため、一台の二次元撮像装置における視野範囲は狭くなる。一方、搬送方向における加熱炉の長さは長いため、炉の全体を二次元撮像装置で撮影しようとすると、搬送方向に沿って多数の二次元撮像装置を配置しなければならない。しかしながら、多数の二次元撮像装置を配置すると、コストがかかるうえ、破損する頻度も高くなる。一台でも二次元撮像装置が破損すると、加熱炉の操業を停止して二次元撮像装置を交換しなければならないため、従来、二次元撮像装置を用いて炉内の搬送状況を監視することは現実的には困難であった。
【0006】
そこで、従来、引用文献1、2に記載されているような方法で炉内を監視していた。すなわち、特許文献1には、ウォーキングビーム式加熱炉の炉心に対して平行であって被加熱材の搬送方向を向くように画像計測用カメラを設置し、被加熱材の上に耐火レンガを載置し、被加熱材とともに装入口から抽出口に移動する耐火レンガを画像計測用カメラで撮影し、その撮影した映像を画像処理して耐火レンガの位置変化を演算し、その位置変化に基づいて、被加熱材の搬送時に発生する蛇行量を求める方法が開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、ウォーキングビーム式加熱炉の炉壁に、被加熱材と対向して搬送方向に複数台(6台)配置されたレーザ距離計と、同一の被加熱材に対するこれらのレーザ距離計からの測定距離の差を基にして、被加熱材をこれらのレーザ距離計間だけ炉内搬送した際の蛇行量を求める演算器を備える装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2007-254789号公報
【文献】特開2001-181732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1は、被加熱材に耐火レンガを載置しなければ監視ができないため、耐火レンガの載置および撤去作業に手間がかかり、特に抽出口で高温になった耐火レンガを撤去する際の作業性が課題である。
【0010】
また、特許文献2は、レーザ距離計を配置した位置の蛇行量しか測定できないため、どの位置で蛇行が開始したのか、どのように蛇行量が変化したのか等が不明で、蛇行原因の特定が困難であるという問題がある。
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するものであり、加熱炉内を広範囲に監視することができる炉内監視方法、炉内監視装置および加熱炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記問題を解決するため、本発明は、加熱炉内を監視する炉内監視方法であって、前記加熱炉は、被加熱材の長手方向を炉幅方向に向けて収容し、被加熱材を炉長方向に搬送しながら加熱し、前記加熱炉の天井部の炉幅方向中央付近に二次元撮像装置を配置し、前記二次元撮像装置は、前記加熱炉の幅全体を前記二次元撮像装置の長辺方向の視野範囲とし、前記加熱炉の炉長方向に傾けて配置することを特徴とする、炉内監視方法を提供する。
【0013】
前記二次元撮像装置を2台以上設置し、全ての前記二次元撮像装置の視野を合成した視野範囲が前記炉長方向全体に亘るように、前記二次元撮像装置の位置および傾ける角度を設定してもよい。
【0014】
前記二次元撮像装置を前記天井部の炉幅中央に配置し、前記二次元撮像装置の中心軸線の水平方向に対する傾斜角度αが、式(1)で求められる傾斜角度α、式(2)で求められる傾斜角度αとした場合に、式(3)の範囲としてもよい。
α=arcsin{H/(W/2×tan(90°-θ/2))}-θ/2 ・・・(1)
α=arcsin{H/(N×σ/n/2×tan(90°-θ/2))}+θ/2 ・・・(2)
α≧α≧α ・・・(3)
なお、
H:加熱炉の天井と搬送パスラインとの距離(mm)
W:加熱炉の炉幅寸法(mm)
θ:炉幅方向の二次元撮像装置の視野角(°)
θ:炉長方向の二次元撮像装置の視野角(°)
N:炉幅方向の二次元撮像装置の画素数
σ:炉幅方向の必要精度(mm)
n:必要精度を得るために必要な画素数
【0015】
また、前記二次元撮像装置を前記天井部の炉幅中央に配置し、前記二次元撮像装置の中心軸線の水平方向に対する傾斜角度αが、式(4)で求められる傾斜角度α11、式(5)で求められる傾斜角度α21とした場合に、式(6)の範囲としてもよい。
α11=arcsin
(3.46×H/W)-34 ・・・(4)
α21=arcsin
(5.41×10-4×H)+34 ・・・(5)
α11≧α≧α21 ・・・(6)
なお、
H:加熱炉の天井と搬送パスラインとの距離(mm)
W:加熱炉の炉幅寸法(mm)
【0016】
前記二次元撮像装置は、先端部に配置された光学系および二次元撮像素子を備えた撮像部と、前記撮像部の外周に設けられた、冷却水が流通する水冷部と、前記水冷部の外周に設けられた、冷却ガスが流通する空冷部と、によって形成された管状の管体部を備え、前記水冷部は、前記管体部の中心軸側の往路と前記往路の先端から折り返す外周側の復路とからなり、前記空冷部は、前記管体部の先端側が外部に向けて開放され、前記空冷部を流通した冷却ガスが前記管体部の先端側から放出されてもよい。
【0017】
また、本発明は、加熱炉内を監視する炉内監視装置であって、前記加熱炉は、被加熱材の長手方向を炉幅方向に向けて収容し、被加熱材を炉長方向に搬送しながら加熱し、前記加熱炉の天井部の炉幅方向中央付近に配置された二次元撮像装置および前記二次元撮像装置に接続された演算部を備え、前記二次元撮像装置は、前記加熱炉の幅全体を前記二次元撮像装置の長辺方向の視野範囲とし、前記加熱炉の炉長方向に傾けて配置されていることを特徴とする、炉内監視装置を提供する。
【0018】
また、2台以上の二次元撮像装置を備え、全ての前記二次元撮像装置の視野を合成した視野範囲が前記炉長方向全体に亘るように、前記二次元撮像装置の位置および傾ける角度が設定されていてもよい。
【0019】
前記二次元撮像装置は、前記天井部の炉幅中央に配置され、前記二次元撮像装置の中心軸線の水平方向に対する傾斜角度αが、式(1)で求められる傾斜角度α、式(2)で求められる傾斜角度αとした場合に、式(3)の範囲としてもよい。
α=arcsin{H/(W/2×tan(90°-θ/2))}-θ/2 ・・・(1)
α=arcsin{H/(N×σ/n/2×tan(90°-θ/2))}+θ/2 ・・・(2)
α≧α≧α ・・・(3)
なお、
H:加熱炉の天井と搬送パスラインとの距離(mm)
W:加熱炉の炉幅寸法(mm)
θ:炉幅方向の二次元撮像装置の視野角(°)
θ:炉長方向の二次元撮像装置の視野角(°)
N:炉幅方向の二次元撮像装置の画素数
σ:炉幅方向の必要精度(mm)
n:必要精度を得るために必要な画素数
【0020】
また、前記二次元撮像装置は、前記天井部の炉幅中央に配置され、前記二次元撮像装置の中心軸線の水平方向に対する傾斜角度αが、式(4)で求められる傾斜角度α11、式(5)で求められる傾斜角度α21とした場合に、式(6)の範囲としてもよい。
α11=arcsin
(3.46×H/W)-34 ・・・(4)
α21=arcsin
(5.41×10-4×H)+34 ・・・(5)
α11≧α≧α21 ・・・(6)
なお、
H:加熱炉の天井と搬送パスラインとの距離(mm)
W:加熱炉の炉幅寸法(mm)
【0021】
前記二次元撮像装置は、先端部に配置された光学系および二次元撮像素子を備えた撮像部と、前記撮像部の外周に設けられた、冷却水が流通する水冷部と、前記水冷部の外周に設けられた、冷却ガスが流通する空冷部と、によって形成された管状の管体部を備え、前記水冷部は、前記管体部の中心軸側の往路と前記往路の先端から折り返す外周側の復路とからなり、前記空冷部は、前記管体部の先端側が外部に向けて開放され、前記空冷部を流通した冷却ガスが前記管体部の先端側から放出されてもよい。
【0022】
さらに、本発明は、前記炉内監視装置を備えた加熱炉を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、一台の二次元撮像装置で炉内を広範囲に監視できる。そのため、少ない台数の二次元撮像装置で炉内全体を監視することができる。したがって、被加熱材の蛇行の有無、蛇行が発生した場合の位置や原因等の特定が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明が適用されるウォーキングビーム式加熱炉の一例を示す平面図である。
図2図1の加熱炉をA-A方向から見た断面図である。
図3図1の加熱炉をB-B方向から見た断面図である。
図4】一般的な二次元撮像装置の配置例を示す断面図である。
図5】本発明の実施形態で用いられる二次元撮像装置の例を示す断面図である。
図6】本発明が適用できるウォーキングビーム式加熱炉の異なる例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を、図を参照して説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0026】
図1は、本発明の炉内監視方法が適用されるウォーキングビーム式の加熱炉の一例を示す。本実施形態では、加熱炉を鋼板加熱炉とし、被加熱材を鋼材とする。
【0027】
図1は鋼板加熱炉1の平面図である。本実施形態に係る鋼板加熱炉1は、鋼材2の長手方向を炉幅方向(X方向)に向けて収容し、鋼材2を炉長方向(Y方向)に、約50mの距離を搬送しながら加熱する。
【0028】
前述の通り、ウォーキングビーム式の鋼板加熱炉1内を搬送される鋼材2の蛇行は、鋼材2の炉壁4への接触や、スキッド5からの脱落による搬送不能に直結することから、蛇行量を常時監視し、蛇行原因を特定することは、操業上極めて重要である。そこで、本発明では、炉内を搬送される全ての鋼材2を常時監視し、蛇行の有無や、蛇行が発生した場合にはその開始位置を特定できるように、広角に炉内を撮像できる二次元撮像装置3および撮像データの処理を行う演算部9を有する炉内監視装置10を、鋼板加熱炉1の天井部に設置する。
【0029】
図2図1の鋼板加熱炉1のA-A方向から見た断面図である。炉幅の寸法Wは、鋼材2の長手方向寸法の例えば6mよりも少し大きい寸法であり、搬送パスライン6から鋼板加熱炉1の天井までのZ方向の高さHは例えば2m程度である。このような鋼板加熱炉1の天井部の炉幅方向中央付近に、二次元撮像装置3が設置されている。さらに、二次元撮像装置3は、演算部9に接続されている。
【0030】
鋼板加熱炉1内の鋼材2の位置を正確に把握するためには、一つの鋼材2についてはカメラの個体差に左右されず同じ条件で撮像することが求められる。図1に示す鋼板加熱炉1においては、鋼材2の通路の幅は、鋼板加熱炉1の炉幅と略等しく、鋼材2が蛇行することを考慮すると、鋼材2の長手方向全体を撮像するためには、一台の二次元撮像装置3が、少なくとも炉幅方向全体を視野におさめることが必要である。つまり、例えば図2に示す鋼板加熱炉1の場合、二次元撮像装置3の長辺方向視野が、炉幅方向に視野角θ=120°程度を有するものとする。このような二次元撮像装置3を天井部の幅方向中央に設置することにより、鋼材2の蛇行の様子を上方から撮像することができる。
【0031】
図3図1の鋼板加熱炉1のB-B方向から見た断面図である。本実施形態では、図3に示すように、二次元撮像装置3を、鋼板加熱炉1の鉛直方向から炉長方向(Y方向)に傾けて設置することにより、二次元撮像装置3の炉長方向の視野が広くなるようにする。図4は、二次元撮像装置3を鉛直方向に設置した場合を示し、この場合には、二次元撮像装置3を短辺方向視野の間隔で設置する必要があり、炉長方向に例えば4台必要となる。さらに、鋼板加熱炉1内には、燃焼ゾーンを仕切る図示しない仕切り壁等もあり、これが視野の障害となってさらに二次元撮像装置3の台数が増える場合もある。本発明の実施形態にかかる図3の例では、2台で炉内の全ての鋼材2を監視することができる。二次元撮像装置3の傾斜角度αは、所望する視野や精度等に応じて適宜決めればよく、例えば20度~60度程度の範囲とする。水平方向に対する傾斜角度αが大きい場合は、精度は良いが視野を拡げる効果が少なく、炉長方向全体を監視するためには、多数の二次元撮像装置3を設置しなければならない。一方、傾斜角度αが小さすぎると、視野は広くなるものの、二次元撮像装置3から距離が離れた位置の炉幅方向の計測分解能が低下する。本発明では、二次元撮像装置3の視野の長辺方向を炉幅方向に配置することで、蛇行量の計測分解能を確保するとともに、二次元撮像装置3の視野の短辺方向を炉長方向に傾けて配置することで、炉長方向の広い視野を確保している。
【0032】
本発明による、二次元撮像装置3を天井部炉幅中央に配置する場合の、水平方向に対する二次元撮像装置3の傾斜角度は、下記式(1)に基づいて算出されるαとしてもよい。
α=arcsin{H/(W/2×tan(90°-θ/2))}-θ/2 ・・・(1)
なお、
sin(α+θ/2)=H/X
X=W/2×tan(90°-θ/2)
H:加熱炉の天井と搬送パスラインとの距離(mm)
W:加熱炉の炉幅寸法(mm)
θ:炉幅方向の二次元撮像装置の視野角(°)
θ:炉長方向の二次元撮像装置の視野角(°)
X:二次元撮像装置のレンズ中心位置aと、aを始点とする角度α+θ/2の直線が搬送パスラインと交わる点bとの距離(mm)
である。
【0033】
傾斜角度を式(1)で算出された角度αとすることにより、搬送パスライン6との交点bの位置において、二次元撮像装置3の炉幅方向の視野範囲が炉幅Wと一致し、二次元撮像装置3の性能に応じて効率よく撮像できる。傾斜角度は、角度α以下でもよい。
【0034】
また、本発明による、二次元撮像装置3を天井部炉幅中央に配置する場合の、水平方向に対する二次元撮像装置3の傾斜角度αは、下記式(2)に基づいて算出されるαとしてもよい。
α=arcsin{H/(N×σ/n/2×tan(90°-θ/2))}+θ/2 ・・・(2)
なお、
sin(α-θ/2)=H/Y
Y=W’/2×tan(90°-θ/2)
W’=N×σ/n
H:加熱炉の天井と搬送パスラインとの距離(mm)
N:炉幅方向の二次元撮像装置の画素数
σ:炉幅方向の必要精度(mm)
n:必要精度を得るために必要な画素数
θ:炉幅方向の二次元撮像装置の視野角(°)
θ:炉長方向の二次元撮像装置の視野角(°)
Y:二次元撮像装置のレンズ中心位置aと、aを始点とする角度α-θ/2の直線が搬送パスラインと交わる点cとの距離(mm)
W’:点cにおける二次元撮像装置の視野幅(mm)
である。
【0035】
傾斜角度を式(2)で算出された角度αとすることにより、搬送パスライン6との交点cの位置において、二次元撮像装置3の炉幅方向の必要精度σを確保できる。なお、必要精度σを得るために必要な画素数nは、一般論として撮像装置の3~5画素であるが、鋼材2のエッジが明確な場合や、エッジの強調処理等により効果のある場合には、さらに小さい値を用いることも可能である。傾斜角度は、角度α以上でもよい。
【0036】
したがって、二次元撮像装置3の傾斜角度αは、上記式(1)で求められる角度α、式(2)で求められる角度αから、
α≧α≧α ・・・(3)
の範囲とすることが好ましい。
【0037】
上記傾斜角度αは、例えば表1に示すカメラの性能および所望する精度の条件においては、以下のように求めることができる。
【0038】
【表1】
【0039】
表1の条件を上記式(1)に代入すると式(4)が得られ、式(2)に代入すると式(5)が得られる。
α11=arcsin
(3.46×H/W)-34 ・・・(4)
α21=arcsin
(5.41×10-4×H)+34 ・・・(5)
なお、
H:加熱炉の天井と搬送パスラインとの距離(mm)
W:加熱炉の炉幅寸法(mm)
二次元撮像装置3を天井部の炉幅中央に配置する際、二次元撮像装置3の中心軸線の水平方向に対する傾斜角度αは、式(4)で求められる傾斜角度α11、式(5)で求められる傾斜角度α21とした場合、式(6)の範囲とすることが好ましい。
α11≧α≧α21 ・・・(6)
【0040】
なお、本発明では、二次元撮像装置3の視野が広角に亘るため、視野窓を大きくする必要があり、これにより炉内からの受熱量が増加するとともに、炉内雰囲気中の異物成分が付着しやすくなる。そのため、二次元撮像装置3は、耐熱性に優れた構造で、且つ、視野窓に炉内雰囲気中の異物成分が付着しにくい構造とすることが求められる。
【0041】
図5は、本実施形態で用いられる二次元撮像装置3の例を示す断面図である。二次元撮像装置3は、管状の管体部11を有し、管体部11の中心軸線上の先端部に、光学系と二次元撮像素子とを備えた撮像部21を備えている。そして、管体部11の中心軸線を中心として同心軸状に、撮像部21の外周側に水冷部22、および、水冷部22の外周側に空冷部23が設けられている。抜熱効果の高い水冷部22を撮像部21に近い内周側とし、さらにその外周側に空冷部23を設けて、冷却機構を二重構造とすることで、撮像部21が炉内の高熱の影響を受けにくくした。
【0042】
撮像部21としては、小型で十分な視野角を有する工業用内視鏡が好適であり、例えば1/6インチカラーCMOSセンサ等が用いられる。撮像部21の外周は保護管24で覆われ、撮像部21は、管体部11の基端方向に延びるケーブル31を介して、演算部(図2図3)に接続される。保護管24の材質は、ステンレスでもよいが、後述する水冷部による冷却効果を高めるために、熱伝導率の高い材質、例えば銅が好ましい。
【0043】
管体部11において、撮像部21の先端側には、視野窓25が設けられている。視野窓25は、撮像部21の撮像素子のアスペクト比と同じアスペクト比の四角形状とし、サイズは、所望する視野角θに応じて決められる。これにより、炉内からの受熱量や粉塵等の付着を最小限に抑制することができる。視野窓25は、例えば水冷部22の管壁の先端面が窓枠となるように形成される。視野窓25には、サファイアガラス等26が取り付けられていることが好ましく、サファイアガラス26に赤外線を通過しない膜を蒸着してもよい。
【0044】
水冷部22は、中心軸側の往路22aと、往路22aの先端から折り返す外周側の復路22bとからなり、管体部11の基端側に設けられた冷却水入口33から供給された冷却水が、往路22aの先端で折り返して復路22bを基端側へ向かって流れるようになっている。復路22bの基端側には、冷却水排出口34が形成されている。
【0045】
空冷部23には、基端側に冷却ガスを供給する冷却ガス入口35が設けられ、先端側は、外部に向けて開放されている。これにより、供給された冷却ガスが空冷部23を流れた後、先端から炉内に向けて放出される。冷却ガスを放出することにより、炉内雰囲気中の異物成分が撮像部21に付着するのを防ぐことができる。
【0046】
水冷部22および空冷部23の管壁の材質としては、例えばステンレスが用いられる。ただし、効率よく撮像部21を冷却するために、少なくとも水冷部の先端側の管壁を、熱伝導率の高い銅製にすることが好ましい。
【0047】
さらに、水冷部22と保護管24との間に空気を介することなく両者を密着させて、水冷部22による撮像部21側への冷却効果を高めるために、保護管24をばね等の弾性体36で水冷部22の管壁に押しつけるようにすることが好ましい。また、炉内に相対する管体部11の先端面には、ジルコニア溶射等を行って耐熱性を向上させることが好ましい。
【0048】
このように、撮像部21の外周に冷却性能の高い水冷部22、さらにその外周に空冷部23を設け、冷却機構を二重構造とすることにより、広角に撮像する撮像部21を高温雰囲気の鋼板加熱炉1の熱から十分に保護することができる。さらに、空冷部23を流通した冷却ガスを先端から放出することにより、炉内雰囲気中の異物成分が撮像部21に付着するのを防ぐことができる。したがって、鋼板加熱炉1内を広角に撮像し、リアルタイムで内部の監視を行うことができる。なお、本発明において、二次元撮像装置3の構造は図5の例に限るものではない。
【0049】
以上のように、本発明は、加熱炉の天井部に二次元撮像装置の視野の長辺方向を炉幅方向に配置することで、蛇行量の計測分解能を確保するとともに、二次元撮像装置の視野の短辺方向を炉長方向に傾けて配置することで、炉長方向の広い視野を確保することにより、この二次元撮像装置によって取得した画像から、炉内の広範囲に亘って被加熱材の蛇行監視が可能となるため、被加熱材の蛇行原因の特定が容易となる。したがって、重大なトラブルが発生する前に対処することができ、炉壁の損傷や被加熱材の脱落を防止し、炉の安定操業に寄与できる。
【0050】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0051】
例えば、炉長全体を監視する必要がない場合でも、二次元撮像装置3を傾けて設置することにより、一台でも広範囲の監視を行うことができる。
【0052】
また、図6に示すように、鋼材2を二列に搬送する鋼板加熱炉41の場合には、幅方向(X方向)の各列に、傾斜させた二次元撮像装置3を配置することにより、各列の鋼材2の蛇行を監視することができる。
【0053】
さらに、本発明は、ウォーキングビーム式以外の加熱炉にも適用できることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、加熱炉内を搬送される被加熱材を広範囲に監視する監視方法として適用できる。
【符号の説明】
【0055】
1 鋼板加熱炉
2 鋼材
3 二次元撮像装置
4 炉壁
5 スキッド
6 搬送パスライン
9 演算部
10 炉内監視装置
11 管体部
21 撮像部
22 水冷部
22a 往路
22b 復路
23 空冷部
24 保護管
25 視野窓
33 冷却水入口
34 冷却水排出口
35 冷却ガス入口
36 弾性体
図1
図2
図3
図4
図5
図6