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特許7438725シート搬送装置、画像読取装置及び画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】シート搬送装置、画像読取装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 5/06 20060101AFI20240219BHJP
   B65H 5/38 20060101ALI20240219BHJP
   B65H 3/06 20060101ALI20240219BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20240219BHJP
   H04N 1/00 20060101ALI20240219BHJP
   H04N 1/04 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
B65H5/06 D
B65H5/38
B65H3/06 330A
G03G15/00 107
H04N1/00 567Q
H04N1/12 Z
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019208025
(22)【出願日】2019-11-18
(65)【公開番号】P2021080056
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 拓也
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-109225(JP,A)
【文献】特開2012-129668(JP,A)
【文献】特開2017-052593(JP,A)
【文献】特開2003-118878(JP,A)
【文献】特開2014-005100(JP,A)
【文献】特開2006-282381(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0202218(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/06
B65H 5/38
B65H 1/00- 3/68
H04N 1/00
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、前記本体部に対して開閉可能な開閉カバーとを備え、前記開閉カバーが閉じている状態でシートを搬送するシート搬送装置であって、
前記本体部に設けられた第1ローラと、
前記開閉カバーに支持される支持部材と、
前記支持部材に支持され、シートの幅方向に延びる第1軸部材と、
前記第1軸部材により回転可能に支持され、前記開閉カバーが閉じている状態で前記第1ローラに圧接し、前記第1ローラと共にシートをシート搬送方向に搬送する第2ローラと、
前記開閉カバーに設けられ、前記幅方向に延びる第2軸部材と、
前記開閉カバーが閉じている状態で前記第2ローラを前記第1ローラへ向けて付勢する付勢部材と、
前記第2軸部材に設けられ、前記本体部に設けられた被係合部に係合することで、前記開閉カバーを閉じている状態に保持する係合部と、
前記第2軸部材に設けられ、前記開閉カバーが閉じている状態で前記開閉カバーの上面に露出するように配置された把手部であって、前記係合部と前記被係合部の係合を解除する操作を行うための把手部と、を備え、
記第2軸部材及び前記支持部材の前記シート搬送方向における位置重なっており
前記支持部材は、前記第1軸部材を支持する第1領域と、前記幅方向に見たときに前記把手部の一部が前記第1領域よりも下方に突出することを許容する第2領域と、を有する、
ことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
シートが積載されるシート積載部と、
前記シート積載部から給送されるシートを前記第1ローラ及び前記第2ローラへ向けて搬送する搬送ローラと、
前記搬送ローラに当接し、前記搬送ローラによって搬送されるシートを1枚ずつ分離する分離部材と、をさらに備え、
前記第1ローラ及び前記第2ローラの搬送速度が、前記搬送ローラの搬送速度に比べて大きく設定されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項3】
前記開閉カバーが閉じている状態において、前記第1ローラと前記第2ローラとが互いに押圧する力の大きさは、前記搬送ローラと前記分離部材とが互いに押圧する力より大きい、
ことを特徴とする請求項2に記載のシート搬送装置。
【請求項4】
前記シート積載部に積載されたシートの上面の位置に応じて移動するフラグ部と、
前記開閉カバーに設けられ、前記フラグ部を検知するセンサと、を備える、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載のシート搬送装置。
【請求項5】
前記付勢部材は、前記支持部材と前記第1軸部材との間に配置されている、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項6】
前記開閉カバーは、前記シート搬送方向において前記第2軸部材より上流で前記支持部材に当接する第1当接部と、前記シート搬送方向において前記第2軸部材より下流で前記支持部材に当接する第2当接部と、を有し、前記開閉カバーが閉じている状態で前記付勢部材によって付勢される前記支持部材を、前記第1当接部及び前記第2当接部によって受け止める、
ことを特徴とする請求項5に記載のシート搬送装置。
【請求項7】
前記シート搬送方向に関する前記付勢部材の位置と、前記シート搬送方向に関する前記係合部及び前記被係合部の係合位置とが重なっている、
ことを特徴とする請求項5又は6に記載のシート搬送装置。
【請求項8】
前記シート搬送方向に関する前記第1軸部材の位置が前記シート搬送方向に関する前記第2軸部材の位置と重なっており、
前記第1軸部材は前記支持部材の下方に配置され、前記第2軸部材は前記支持部材の上方に配置されている、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項9】
前記把手部は、前記幅方向に関して前記第2ローラの外側に配置されている、
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項10】
前記第2領域は、前記支持部材の一部が前記第1領域に比べて下方に凹んだ凹形状である、
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項11】
前記第2領域は、前記支持部材に設けられた開口形状である、
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項12】
前記支持部材は、前記シート搬送方向及び前記幅方向に延びる板状の部材であり、前記幅方向における少なくとも一方の端部を、前記開閉カバーに固定されている、
ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項13】
前記本体部に設けられた第1ガイド部と、
前記開閉カバーに設けられ、前記開閉カバーが閉じている状態で前記第1ガイド部に対向し、前記第1ガイド部との間にシートの搬送路を形成する第2ガイド部と、を備える、
ことを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項14】
前記開閉カバーは、前記シート搬送装置の外装面を構成する外装カバーを有し、
前記第2ガイド部及び前記外装カバーは互いに固定され、前記開閉カバーの筐体を形成しており、
前記支持部材は前記筐体に取り付けられている、
ことを特徴とする請求項13に記載のシート搬送装置。
【請求項15】
前記本体部に設けられ、前記シート搬送方向に関して前記第1ローラの下流に位置する第3ローラと、
前記開閉カバーに設けられ、前記開閉カバーが閉じている状態で前記第3ローラに当接し、前記第3ローラと共に前記シートを挟持して搬送する第4ローラと、を備える、
ことを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項16】
請求項1乃至15のいずれか1項に記載のシート搬送装置と、
前記シート搬送装置によって搬送されるシートから画像情報を読み取る読取手段と、を備える、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項17】
請求項16に記載の画像読取装置と、
前記画像読取装置によって読み取った画像情報に基づいて記録材に画像を形成する画像形成手段と、を備える、
ことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを搬送するシート搬送装置、シートから画像情報を読み取る画像読取装置及び記録材に画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原稿から画像情報を読み取る画像読取装置には、原稿を1枚ずつ搬送する自動原稿搬送装置(Auto Document Feeder、以下ADFとする)を備えたものがある。ADFは、内部の搬送路に詰まった原稿の除去やメンテナンスを容易にするため、ADF本体に対して開閉可能な開閉カバーを備えている。特許文献1には、ADFの本体部に対して開閉可能なカバー部材を本体部の係止ピンに係止することで閉状態に保つ係止爪が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-131073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
開閉カバーにローラ対の一方のローラが設けられた構成の場合、開閉カバーを閉じた状態では、当該ローラは他方のローラに圧接してニップ部を形成する。このとき、ローラ同士のニップ圧により開閉カバーに作用する応力によって開閉カバーにクリープ変形等の変形が生じると、開閉カバーに設けられたローラやガイド等の部材が位置ずれし、シート詰まりや搬送不良が生じる懸念がある。
【0005】
そこで、本発明は、開閉カバーの変形を抑制可能なシート搬送装置、画像読取装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、本体部と、前記本体部に対して開閉可能な開閉カバーとを備え、前記開閉カバーが閉じている状態でシートを搬送するシート搬送装置であって、前記本体部に設けられた第1ローラと、前記開閉カバーに支持される支持部材と、前記支持部材に支持され、シートの幅方向に延びる第1軸部材と、前記第1軸部材により回転可能に支持され、前記開閉カバーが閉じている状態で前記第1ローラに圧接し、前記第1ローラと共にシートをシート搬送方向に搬送する第2ローラと、前記開閉カバーに設けられ、前記幅方向に延びる第2軸部材と、前記開閉カバーが閉じている状態で前記第2ローラを前記第1ローラへ向けて付勢する付勢部材と、前記第2軸部材に設けられ、前記本体部に設けられた被係合部に係合することで、前記開閉カバーを閉じている状態に保持する係合部と、前記第2軸部材に設けられ、前記開閉カバーが閉じている状態で前記開閉カバーの上面に露出するように配置された把手部であって、前記係合部と前記被係合部の係合を解除する操作を行うための把手部と、を備え、記第2軸部材及び前記支持部材の前記シート搬送方向における位置重なっており前記支持部材は、前記第1軸部材を支持する第1領域と、前記幅方向に見たときに前記把手部の一部が前記第1領域よりも下方に突出することを許容する第2領域と、を有する、ことを特徴とするシート搬送装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、開閉カバーの変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例に係る画像形成装置の概略図。
図2】実施例に係る画像読取装置の概略図。
図3】実施例に係る画像読取装置の制御構成を表すブロック図。
図4】実施例に係る原稿搬送装置のカバーユニットを開いた状態を表す図。
図5】実施例に係るカバーユニットの内部を上方から見た図(a)及びカバーユニットの側面図(b)。
図6】実施例に係る引抜コロの支持構成を説明するための図(a、b)。
図7】変形例に係るカバーユニットの側面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための例示的な形態について、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は、本実施形態に係る画像形成装置300の概略図である。画像形成装置300は、画像形成部250と、画像形成部250の上方に配設される画像読取部200と、画像読取部200に支持される原稿搬送装置(Auto Document Feeder、以下ADFとする)80とを備える。画像形成部250は、外部PCから入力された画像情報や画像読取部200が原稿から読み取った画像情報に基づいて、記録媒体として用いられるシートPに画像を形成する。記録媒体又は原稿として用いられるシートには、用紙及び封筒等の紙、オーバーヘッドプロジェクタ用のプラスチックフィルム、並びに布が含まれる。
【0011】
画像形成部250は、4つの画像形成ステーションPY,PM,PC,PKと、中間転写ベルト231と、定着装置240とを含む、中間転写方式の電子写真ユニット251を有する印刷装置である。各画像形成ステーションPY~PKは、電子写真プロセスにより感光ドラム211の表面にトナー像を形成する。即ち、電子写真ユニット251に対して画像形成動作の実行が要求されると、各画像形成ステーションPY~PKでは、感光体である感光ドラム211が回転駆動され、帯電装置が感光ドラム211の表面を一様に帯電させる。露光装置213は、画像情報に基づくレーザ光を感光ドラム211に照射してドラム表面を露光し、感光ドラム211に静電潜像を書き込む。現像装置214は、感光ドラム211に帯電したトナー粒子を供給して静電潜像をトナー像として現像する。画像形成ステーションPY~PKによって形成された各色のトナー像は、一次転写ローラ217により、感光ドラム211から中間転写ベルト231に一次転写される。感光ドラム211に残留したトナー等の付着物は、ドラムクリーナ215によって除去される。
【0012】
中間転写体である中間転写ベルト231は、二次転写内ローラ234、テンションローラ238、及び張架ローラ232に巻き回されており、図中反時計回り方向に回転駆動される。中間転写ベルト231に担持されたトナー像は、二次転写内ローラ234に対向する二次転写ローラ235と中間転写ベルト231との間のニップ部である二次転写部T2においてシートPに二次転写される。中間転写ベルト231に残留したトナー等の付着物は、ベルトクリーナ236によって除去される。
【0013】
トナー像を転写されたシートPは、定着装置240へ受け渡される。定着装置240は、シートPを挟持して搬送する定着ローラ240a及び加圧ローラ240bと、定着ローラ240aを加熱するハロゲンヒータ等の熱源とを有する。定着装置240は、シートPを搬送しながらトナー像に熱及び圧力を付与することによりトナーを溶融させ、その後トナーが固着することで、シートPに画像が定着する。
【0014】
このような画像形成プロセスに並行して、カセット220からシートPが1枚ずつ給送される。給送部材の例である給送ローラ221によってカセット220から送り出されたシートPは、分離ローラ又は分離パッド等の分離部材によって他のシートから分離された状態で給送され、引抜ローラ224を介して搬送される。その後、プレレジストレーションローラ222によって停止状態のレジストレーションローラ223にシート先端を突き当てられることで、シートPの斜行が補正される。レジストレーションローラ223は、電子写真ユニット251による画像形成プロセスの進捗に合わせたタイミングでシートPを二次転写部T2に送り込む。二次転写部T2及び定着装置240を通過することで画像を形成されたシートPは、搬送ローラ242,243を介して排出ローラ241に搬送され、画像形成部250の上部に設けられた排出トレイ249に排出される。
【0015】
以上の説明において、電子写真ユニット251は画像形成手段の一例であり、感光体からシートPにトナー像を直接的に転写する直接転写方式の電子写真ユニットや、インクジェット方式又はオフセット印刷方式の画像形成ユニットを用いても良い。
【0016】
(画像読取装置)
本実施形態の画像読取装置を構成するADF80及び画像読取部200について、図2を用いて説明する。ADF80は、原稿としてのシートを搬送する本実施形態のシート搬送装置である。
【0017】
画像読取部200は、プラテンガラス18aと、原稿台ガラス18bと、読取ユニット201と、を有している。読取ユニット201は、ランプ202及びミラー203を有し、キャリッジ204に搭載されることで原稿台ガラス18bの下方で副走査方向(図内左右方向)に移動可能に構成されている。ランプ202は、原稿Sに画像面に光を照射する光源である。原稿Sからの反射光は、ミラー203,205,206を介して結像レンズ207に導かれて、撮像素子としての電荷結合素子208に結像する。電荷結合素子208は、光電変換を行うことで入射した光を電子的な画像情報に変換する。
【0018】
画像読取部200の読取ユニット201は、固定読み及び流し読みの2つのモードで画像読取動作を行うことができる。固定読みとは、読取ユニット201が副走査方向に移動しながら、原稿台ガラス18bに静置された静止原稿から画像情報を読み取る動作である。流し読みとは、読取ユニット201がプラテンガラス18aの下方に位置決めされている状態で、ADF80によって搬送される移動原稿の一方のシート面から画像情報を読み取る動作である。
【0019】
ADF80は、読取ユニット24、原稿トレイ11、給送ユニット143、引抜ローラ21、搬送ローラ22,23,25、排出ローラ16及び排出トレイ19を備えている。また、ADF80は、画像読取部200に対して開閉可能な本体フレーム144と、本体フレーム144に対して開閉可能なカバーユニット140と、を備えている。カバーユニット140の詳細な構成については後述する。
【0020】
読取ユニット24は、プラテンガラス18cを介して、ADF80によって搬送される移動原稿の他方のシート面から画像情報を読み取る。つまり、画像読取部200の読取ユニット201及びADF80の読取ユニット24は、いずれもシートから画像情報を読み取る読取手段の例である。本実施形態では、読取ユニット24としてコンタクトイメージセンサを用いており、読取ユニット24には光源となるランプ、等倍光学系を構成するレンズアレイ、及びCMOS等の撮像素子が配置されている。
【0021】
本実施形態のシート積載部である原稿トレイ11には、画像の読み取りを行う原稿Sが載置される。原稿トレイ11に載置された原稿Sの幅方向(主走査方向)の位置は、幅方向に移動可能なサイド規制板10によって規制される。また、原稿トレイ11の下面は昇降手段の一例であるリフト板145に支持されている。リフト板145は、駆動源であるトレイ昇降モータ181(図3)に駆動されて回動することで、原稿トレイ11のリフトアップ及びリフトダウンを行う。
【0022】
給送ユニット143は、給送ローラ1と、搬送ローラ3と、分離ローラ4とを有する。給送ローラ1は、保持部材であるアーム2によって支持され、原稿トレイ11の上方に配置されている。アーム2は、搬送ローラ3の回転軸線を中心にして揺動することで、給送ローラ1が上下に移動することを可能としている。給送ローラ1は、原稿トレイ11に積載された原稿Sを図中左方に送り出す給送部材である。
【0023】
ADF80には、原稿トレイ11にセットされた原稿Sの有無を検知するための原稿セット検知センサ93(図3)と、原稿トレイ11に積載された原稿Sの上面位置を検知するための給送位置センサ91と、が設けられている。原稿セット検知センサ93としては、原稿トレイ11に原稿Sがセットされた場合に揺動する検知フラグ100(図2)によって遮光されるフォトインタラプタを用いることができる。また、給送位置センサ91としては、給送ユニット143のアーム2に設けられたフラグ部90によって遮光されるフォトインタラプタを用いることができる。
【0024】
搬送ローラ3は、給送ローラ1から原稿Sを受け取って引抜ローラ21へ向けて搬送する搬送部材である。分離ローラ4は、固定軸にトルクリミッタを介して接続されたローラであり、搬送ローラ3と分離ローラ4との間の分離ニップに入った原稿Sに摩擦力を付与することで原稿Sを分離する。分離ニップに1枚の原稿Sが進入したときは、トルクリミッタが滑って分離ローラ4が搬送ローラ3に従動回転する。一方、分離ニップに複数枚の原稿が進入したときは、分離ローラ4は回転せず、搬送ローラ3に接触している最上位シート以外のシートの搬送を制止する。
【0025】
搬送ローラ3及び分離ローラ4は、原稿トレイ11に積載された原稿Sを1枚ずつ分離しながら給送する本実施例の分離搬送手段である。なお、分離ローラ4は分離部材の一例であり、トルクリミッタを介してシートの搬送に逆らう方向の回転が入力されるリタードローラや、パッド状の摩擦部材を用いてもよい。
【0026】
引抜ローラ21は、原稿Sの搬送方向において分離ニップの下流に配置されている。引抜ローラ21は駆動源に接続された駆動ローラであり、引抜ローラ21に連れ回る引抜コロ304との間に原稿Sを挟持して搬送する。引抜ローラ21の下流には搬送ローラ22が配置されている。搬送ローラ22も駆動ローラであり、搬送ローラ22に連れ回る搬送コロ305との間に原稿Sを挟持して搬送する。
【0027】
搬送ローラ22の下流には、搬送ローラ23,25及び排出ローラ16が配置されている。搬送ローラ23,25は、読取ユニット24,201による走査位置を介して原稿Sを搬送する。排出ローラ16は排出トレイ19に原稿Sを排出する排出手段である。なお、排出トレイ19は原稿トレイ11の下方に位置しており、排出ローラ16による原稿の排出方向(図中右方)は給送ユニット143による原稿の給送方向(図中左方)とは水平方向に関して反対向きである。そのため、ADF80の内部における原稿搬送路は画像形成装置300の正面側から見てU字状に湾曲している。
【0028】
ADF11の動作の概要を説明する。原稿トレイ11に原稿Sが差し込まれると、検知フラグ100が揺動して原稿セット検知センサ93の光軸を遮光する。すると、後述の制御部50(図3)は原稿トレイ11に原稿Sがセットされたと判断する。
【0029】
原稿トレイ11に原稿Sがセットされた状態でユーザが画像形成装置300の操作部を介して読取動作の開始を指示すると、制御部50は流し読みモードで読み取りジョブを開始する。まず、リフト板145が駆動されて原稿トレイ11を上昇させる。すると、原稿トレイ11に積載された原稿Sの上面が給送ローラ1に接触し、給送ローラ1が上昇を開始する。給送ユニット143のアーム2に設けられたフラグ部90が給送位置センサ91の光軸を遮光すると、制御部50はリフト板145によってさらに原稿トレイ11を所定距離上昇させてからリフト板145の駆動を停止する。これにより原稿Sが給送ローラ1によって給送可能な高さに上昇する。
【0030】
次に、給送ユニット143が駆動されることで、給送ローラ1によって原稿Sが原稿トレイ11から送り出され、搬送ローラ3によって引抜ローラ21に向けて搬送される。このとき、搬送ローラ3が1枚ずつ原稿Sを搬送するように分離ローラ4によって原稿Sの分離が行われる。1枚の原稿Sが引抜ローラ21と引抜コロ304の間のニップ部(以下、引抜ニップとする)に到達する度にアーム2が上昇して給送ローラ1は原稿Sの上面から離間する。
【0031】
引抜ローラ21は、搬送ローラ3から受け取った原稿Sをさらに搬送する。ここで、引抜ローラ21の搬送速度(周速)は搬送ローラ3の搬送速度(周速)よりも大きな値に設定されており、引抜ローラ21は原稿Sを加速させて分離ニップから原稿Sを引き抜くように搬送する。そして、原稿Sは搬送ローラ22,23,25によってU字状に湾曲した搬送路を搬送される。その過程で、プラテンガラス18a,18cの間を通過する際に読取ユニット24及び読取ユニット201の一方又は両方によって原稿Sの画像情報が読み取られる。その後、原稿Sは排出ローラ16によって排出トレイ19に排出される。
【0032】
なお、引抜ローラ21の搬送速度が搬送ローラ3の搬送速度より大きく設定されているのは、原稿Sの重送を防ぎつつADF80のスループットを向上するためである。即ち、搬送ローラ3の搬送速度は、分離ローラ4が原稿Sに付与する摩擦力で原稿Sを十分に分離できる程度に小さく設定されている。一方、引抜ローラ21(及びその下流の搬送ローラ22等)の搬送速度を大きく設定することで、単位時間あたりに読取ユニット24,201の走査位置を通過する原稿の枚数を増やしてADF80のスループットを向上可能である。
【0033】
(制御系)
図3を用いてADF80を制御するための構成について説明する。ADF80を制御するための制御手段は、少なくとも1つのプロセッサを有する制御回路からなる。本実施形態の制御手段である制御部50は、中央処理装置(CPU)51と、不揮発性の記憶媒体の例である読取専用メモリ(ROM)52と、揮発性の記憶媒体の例であるランダムアクセスメモリ(RAM)53とを含む。CPU51は、ROM52等に格納されたプログラムを読み出して実行し、ADF80及び画像読取部200の動作を制御する。RAM53は、CPU51がプログラムを実行する際の作業スペースとなる。なお、以下で説明する制御部50の各機能は、ASIC等の独立したハードウェアとして制御部の回路上に実装してもよく、CPU51又は他の処理装置が実行するプログラムの機能単位としてソフトウェア的に実装してもよい。また、制御部50は、ADF80の筐体外(例えば画像読取部200)に搭載されていてもよい。
【0034】
ADF80には、装置の状態を検知するための各種センサとして、上述の給送位置センサ91及び原稿セット検知センサ93並びに重送検知センサ92が設けられている。重送検知センサ92は、分離ニップに複数枚の原稿が進入している重送状態を検知する。具体的には、重送検知センサ92は、原稿搬送経路上の分離ニップと引抜ニップの間で搬送路を横切る光を発する発信部92aと、発信部92aが発した光を検知する受信部92bとを有する。制御部50は、今回の原稿Sの給送が開始されてから所定のタイミング以降も受信部92bが光を検知していない状態が継続した場合に、原稿の重送が発生したと判断する。所定のタイミングとは、今回の原稿Sの後端が重送検知センサ92の光軸位置を通過する想定時刻を表し、今回の原稿Sの給送開始時刻と、搬送ローラ3及び引抜ローラ21の搬送速度とに基づいて定めることができる。
【0035】
CPU51は、ドライバ54に駆動指令を送ることで、ADF80の駆動源である各モータ181~183の動作を制御する。トレイ昇降モータ181は、上述のリフト板145を駆動する。給送モータ182は、給送ユニット143の給送ローラ1及び搬送ローラ3を駆動する。なお、給送モータ182が引抜ローラ21及び搬送ローラ22の駆動も担う構成としてもよく、引抜ローラ21及び搬送ローラ22を駆動する他のモータを配置してもよい。
【0036】
給送ローラ昇降モータ183は、給送ローラ1を原稿トレイ11に積載された原稿に当接可能な位置と、原稿に接触しないように退避した位置との間で移動させることができる。給送ローラ昇降モータ183は、例えば給送ユニット143のアーム2を揺動させるカム機構を駆動するように構成される。本実施形態において、これらのモータ181~183はステッピングモータを用いている。CPU51は、ドライバ54が各モータ181~183に流す励磁パルスのパルス数及び周波数を指定することで、モータの回転量及び回転速度を制御することができる。また、ドライバ54は、各モータ181~183を逆方向に回転させることも可能である。
【0037】
制御部50は、通信IC59を介して画像形成部250に搭載された本体制御部350に接続されている。本体制御部350は、少なくとも1つのプロセッサを有する制御回路からなり、電子写真ユニット251による画像形成動作や記録材であるシートPの搬送動作を制御する。本体制御部350は、画像読取装置によって読み取られた画像情報を受け取り、当該画像情報に基づいてシートPに複写画像を形成させるジョブを実行する。また、本体制御部350は画像形成装置300を統括制御する制御部を兼ねており、例えば操作部を介してユーザから与えられた指示に基づいて制御部50に指令を送って画像読取装置の動作を制御する。
【0038】
(カバーユニットの支持構成)
次に、本実施例の開閉カバーであるカバーユニット140の支持構成について詳細に説明する。図4はカバーユニット140を開いた状態を示すADF80の概略図である。以下、「原稿搬送方向」とは、特に断らない限り、引抜ローラ21及び引抜コロ304によって原稿が搬送される方向を指す。原稿搬送方向は本実施例におけるシート搬送方向である。「主走査方向」とは、読取ユニット24,201が原稿を走査する方向(原稿搬送方向に垂直な方向)を指す。主走査方向は、ADF80によって搬送されるシートの幅方向である。また、「上下方向」とは、画像形成装置300が水平面に設置された図1の状態における鉛直方向を指す。
【0039】
図4及び図5(a)に示すように、カバーユニット140は、外装カバー307と、開閉ガイド6と、引抜支持板306と、搬送支持板308と、を備えている。また、上記の給送ユニット143、引抜コロ304、搬送コロ305、原稿セット検知センサ93の検知フラグ100、及び給送位置センサ91は、カバーユニット140に設けられている。
【0040】
カバーユニット140は、ADF80の本体部を構成する本体フレーム144に対して、回動中心146を支点にして回転可能に支持されている。カバーユニット140は、図2に示すように閉じている状態(閉位置)と図4に示すように開いている状態(開位置)との間で開閉可能である。
【0041】
外装カバー307及び開閉ガイド6はビスによって締結されており、カバーユニット140の筐体を構成している。外装カバー307はADF80の上側の外装面を構成する部材である。開閉ガイド6は、本体フレーム144に支持される本体ガイド36に対向するガイド部材であり、カバーユニット140が閉じている状態で本体ガイド36との間に原稿の搬送路を形成する。本体ガイド36を本実施例の第1ガイド部とするとき、開閉ガイド6は本実施例の第2ガイド部である。
【0042】
引抜支持板306はカバーユニット140の筐体に支持されており、引抜コロ軸309を介して引抜コロ304を支持している。同様に、搬送支持板308はカバーユニット140の筐体に支持されており、搬送コロ軸310を介して搬送コロ305を支持している。また、引抜支持板306と引抜コロ軸309との間、及び搬送支持板308と搬送コロ軸310との間には、カバーユニット140が閉じている状態でローラ対の当接圧(ニップ圧)を生じさせる引抜バネ311及び搬送バネ312がそれぞれ配置されている。引抜コロ304の支持構成については後に詳しく説明する。
【0043】
本体フレーム144に支持される引抜ローラ21を本実施例の第1ローラとするとき、引抜コロ304は本実施例の第2ローラである。また、本体フレーム144に支持される搬送ローラ22を本実施例の第3ローラとするとき、搬送コロ305は本実施例の第4ローラである。引抜支持板306は本実施例の支持部材であり、引抜コロ軸309は本実施例の第1軸部材である。
【0044】
また、カバーユニット140には開閉操作用の把手314(図5(b)参照)と、把手軸301と、フック302,302と、が設けられている。把手314は本実施例の把手部であり、把手軸301は本実施例の第2軸部材である。把手314は把手軸301と一体的に成形されており、上方から見て外装カバー307に設けられた開口部に配置されている。把手314はカバーユニット140の上面に露出しており、図5(b)に示すように、操作されていない状態で外装カバー307と略面一となるように配置されている。
【0045】
把手軸301は主走査方向に(つまり幅方向に)沿って、主走査方向に関して原稿が通過する通過範囲の両外側まで延びている。特に、本実施例の把手軸301は主走査方向におけるカバーユニット140の両側の側壁部の外側に貫通している。把手軸301の主走査方向における両端部には、フック302,302が例えば軽圧入の方法で取り付けられている。把手軸301は、カバーユニット140の筐体に設けられた穴部に嵌合されており、把手314及びフック302,302と一体に回転する。
【0046】
フック302,302は、把手軸301を中心に回動することで、本体フレーム144に設けられた被係合部としてのラッチ軸303に係合及び離脱する。フック302,302は、いずれも係合部の一例であり、一方のフック302を本実施例の第1係合部材とするとき、他方のフック302は本実施例の第2係合部材である。
【0047】
図2に示すように閉じている状態のカバーユニット140を開く場合、ユーザは把手314を図5(b)の状態から図中反時計回り方向に引き起こすように操作する。すると、把手軸301及びフック302,302が同じ方向に回転し、フック302,302がラッチ軸303,303から離脱する。これにより、フック302,302を介したカバーユニット140と本体フレーム144の係合が解除される。
【0048】
この状態でユーザが把手314をさらに上方に押圧することで、カバーユニット140は回動中心146を支点にして開き方向(図2における反時計回り方向)に回動する。これにより、カバーユニット140は、図4に示すように本体フレーム144に対して開いた状態となる。
【0049】
開いている状態のカバーユニット140を閉じる場合、ユーザは把手314又は外装カバー307等を操作することで、カバーユニット140を回動中心146を支点にして閉じ方向(図4における時計回り方向)に回動させる。すると、搬送ローラ3、引抜コロ304、搬送コロ305がそれぞれ分離ローラ4、引抜ローラ21、搬送ローラ22と圧接し始める(図2参照)。このとき、カバーユニット140は、搬送ローラ3、引抜コロ304及び搬送コロ305が分離ローラ4、引抜ローラ21及び搬送ローラ22から上方向の反力を受け始める。
【0050】
さらにカバーユニット140を回動させると、フック302がラッチ軸303に引っ掛かることで、カバーユニット140が閉じた状態でロックされる。このとき、カバーユニット140は上記上方向の反力を受け続けているが、フック302がラッチ軸303に係合していることでカバーユニット140の開き方向への回動が規制される。
【0051】
なお、カバーユニット140の開閉操作を行うのはメンテナンス時や原稿詰まりが発生した場合である。この場合、ユーザがカバーユニット140を開くと、所定の角度で不図示のストッパによってカバーユニット140の姿勢が維持される構成となっており、ユーザはカバーユニット140から手を離して必要な作業を行うことができる。また、給送ローラ1及び搬送ローラ3を有する給送ユニット143はカバーユニット140に対して着脱が可能な構成となっており、必要な作業を行うことができる。例えば、給送ユニット143をカバーユニット140から取り外した状態で給送ローラ1又は搬送ローラ3の交換を行うことができる。また、外装面となる外装カバー307と開閉ガイド6を締結しているビスを取り外して外装カバー307を外すことで、開閉ガイド6内の部品にアクセスすることができる。
【0052】
(カバーユニットの内部構成)
カバーユニット140の詳細な構成について説明する。図5(a)はカバーユニット140の内部を上方から見た図である。図5(b)は図5(a)のA-A線で表される断面位置でカバーユニット140を画像形成装置300の正面側から見た断面図である。なお、図5(a)はカバーユニット140の外装カバー307を取り外した状態を示している。
【0053】
図5(a)に示すように、本実施例の開閉ガイド6には、給送ローラ1、搬送ローラ3、引抜コロ304及び搬送コロ305の4つの回転体(ローラ)が支持されている。4つの回転体は、ADF80が原稿を搬送する際の搬送中心C0(原稿トレイ11のサイド規制板10によって決まる原稿位置の主走査方向D2の中心位置)に対して対称に配置される。原稿に搬送力を付与する回転体をこのような対称配置とすることで、搬送中の原稿の旋回を抑制して原稿の斜行を防ぎ、ひいては搬送動作の安定性向上や画像情報の読取精度の向上を図ることができる。なお、図示した例では給送ローラ1、搬送ローラ3及び引抜コロ304が搬送中心C0上に1つ配置され、複数の搬送コロ305が搬送中心C0に対して対称に配置されているが、各回転体の数や配置は適宜変更可能である。
【0054】
まず、給送ユニット143を構成する給送ローラ1及び搬送ローラ3に関する構成を説明する。給送ローラ1及び搬送ローラ3は、それぞれシャフト13,5を介してアーム2によって回転可能に保持されている。アーム2は搬送ローラ3のシャフト13を支点にして揺動する。給送ローラ1及び搬送ローラ3はタイミングベルト7を介して連結されており、一体的に回転する。
【0055】
搬送ローラ3のシャフト5は、駆動カップリング151を介して駆動入力軸150に連結されている。給送ユニット143は、駆動カップリング151及びホルダ(非図示)によって開閉ガイド6に保持される。駆動入力軸150には駆動入力ギア149が取り付けられている。この駆動入力ギア149は、カバーユニット140が閉じている状態で、本体フレーム144に支持され給送モータ182(図3)に接続されている駆動出力ギアと噛み合うように配置されている。そのため、カバーユニット140が閉じている状態で給送モータ182が回転すると、駆動入力ギア149及び駆動カップリング151を介して給送ユニット143に駆動力が伝達され、給送ローラ1及び搬送ローラ3が回転する。
【0056】
給送ユニット143のアーム2には上記のフラグ部90が設けられている。また、開閉ガイド6にはフォトインタラプタである上記の給送位置センサ91が設けられている。流し読みの開始時に原稿トレイ11がリフトアップすると、原稿トレイ11に積載された原稿の上面に押圧されて給送ローラ1が上昇することで、フラグ部90が上昇する。そして、フラグ部90によって給送位置センサ91の検知状態が例えば非遮光状態から遮光状態に切り替わったことに基づいて、制御部50は原稿及び給送ローラ1の高さを検知することができる。
【0057】
次に、引抜コロ304及び搬送コロ305に関する構成を説明する。図5(a)に示すように、引抜コロ304は原稿搬送方向D1において搬送ローラ3の下流に配置され、搬送コロ305はさらに引抜コロ304の下流に配置されている。引抜コロ304は引抜コロ軸309に対して回転可能に取り付けられており、搬送コロ305は搬送コロ軸310に対して回転可能に取り付けられている。
【0058】
引抜コロ軸309は引抜支持板306の下方において主走査方向D2に延びている。引抜コロ軸309は、引抜支持板306により、引抜ローラ21に対して接近及び離間する方向(図5(b)における上下方向)に所定の範囲内で移動可能に支持されている。引抜支持板306は、原稿搬送方向D1及び主走査方向D2に延びる板状の部材であり、主走査方向D2に関して原稿の通過範囲を包含する長さを有する。引抜コロ軸309と引抜支持板306との間には、本実施例の弾性体である引抜バネ311が配置されている。引抜バネ311は、例えば上下方向が伸縮方向となるように配置された圧縮コイルバネを用いることができる。
【0059】
引抜バネ311は、カバーユニット140が閉じている状態で引抜コロ304が引抜ローラ21に圧接することで、自然長から所定の変形量で変形するように配置されている。従って、引抜コロ304と引抜ローラ21との間に生じる当接圧(ニップ圧)は、引抜バネ311のバネ定数とカバーユニット140が閉じている状態における引抜バネ311の変形量とによって規定される。
【0060】
ここで、カバーユニット140が閉じている状態で、引抜コロ304と引抜ローラ21とが引抜ニップにおいて互いに押圧する力の大きさは、搬送ローラ3と分離ローラ4とが分離ニップで互いに押圧する力の大きさよりも大きく設定されている。ただし、ニップ部においてローラ同士が押圧する力の大きさは、当接圧をローラ同士の接触面積全体に亘って積算した値を指す。これは、引抜ローラ21及び引抜コロ304が、搬送ローラ3から受け取った原稿を加速して分離ニップから引き抜くようにして搬送する動作を実現するためである。
【0061】
搬送コロ軸310は搬送支持板308の下方において主走査方向D2に延びている。搬送コロ軸310は、搬送支持板308により、搬送ローラ22に対して接近及び離間する方向に所定の範囲内で移動可能に支持されている。搬送支持板308は、搬送ローラ22による原稿の搬送方向及び主走査方向D2に延びる板状の部材であり、主走査方向D2に関して原稿の通過範囲を包含する長さを有する。搬送コロ軸310と搬送支持板308との間には、他の弾性体である搬送バネ312が配置されている。従って、搬送コロ305と搬送ローラ22との間に生じる当接圧は、搬送バネ312のバネ定数とカバーユニット140が閉じている状態における搬送バネ312の変形量とによって規定される。
【0062】
図6(a、b)は、開閉ガイド6による引抜支持板306の支持構成を表している。図6(a)は、引抜支持板306の主走査方向における一方側の端部が開閉ガイド6に支持される様子を画像形成装置300の正面側から見た斜視図である。図6(b)は、引抜支持板306の主走査方向における他方側の端部が開閉ガイド6に支持される様子を画像形成装置300の後方側から見た斜視図である。
【0063】
引抜支持板306の一方側の端部には前側差込み部315(図6(a))が設けられ、引抜支持板306の他方側の端部には奥側差込み部317(図6(b))が設けられている。前側差込み部315は、主走査方向D2の一方側に向かってそれぞれ突出する第1突起315a及び第2突起315bによって構成される。同様に、奥側差込み部317は、主走査方向D2の他方側に向かってそれぞれ突出する第1突起317a及び第2突起317bによって構成される。
【0064】
カバーユニット140の筐体を構成する開閉ガイド6には、前側差込み部315が差し込まれる前側開口部316(図6(a))、及び奥側差込み部317が差し込まれる奥側開口部318が設けられている。前側開口部316及び奥側開口部318は、開閉ガイド6のうち、原稿の搬送路を形成するガイド面から屈曲して主走査方向D2に略垂直に広がる前側壁6f及び後側壁6rに形成された穴である。また、前側開口部316及び奥側開口部318の各々は、第1突起315a,317aが差し込まれる第1開口316a,318aと、第2突起315b,317bが差し込まれる第2開口316b,318bとを含む。
【0065】
上述した通り、引抜支持板306とその下方の引抜コロ軸309との間に引抜バネ311が配置されているから、引抜支持板306は引抜バネ311から上方に向かって付勢力を受ける。カバーユニット140が閉じている状態では、開いている状態に比べて引抜バネ311が圧縮されるから、引抜支持板306はより強い力で図中上方に付勢される。そのため、前側開口部316及び奥側開口部318の上方側の壁面316c,316d,318c,318dは、前側差込み部315及び奥側差込み部317に当接することで引抜支持板306を受け止める接触面として機能する。引抜支持板306は、前側差込み部315及び奥側差込み部317が壁面316c,316d,318c,318dに突き当たって位置決めされた状態で、ビス319によって開閉ガイド6に固定されている。
【0066】
ここで、上述のフック302が設けられた把手軸301は、開閉ガイド6の前側壁6f及び後側壁6rに設けられた開口形状である溝部6g,6gに挿通されている。そして、原稿搬送方向D1における把手軸301の位置は、原稿搬送方向D1における引抜支持板306の位置と重なっている。また、原稿搬送方向D1におけるフック302及びラッチ軸303の係合位置も、原稿搬送方向D1における引抜支持板306の位置と重なっている。ただし、ある方向における2つの部材の位置が重なるとは、2つの部材を当該方向に延びる座標軸に投影したときに、一方の部材の投影範囲(当該方向に関する占有範囲)の少なくとも一部が他方の部材の投影範囲と重複することを指す。
【0067】
このように、フック302が設けられた把手軸301の原稿搬送方向D1の位置と引抜支持板306の原稿搬送方向D1の位置とをオーバーラップさせることで、引抜ニップのニップ圧に起因するカバーユニット140の変形を抑えることができる。即ち、ニップ圧を生じさせる引抜バネ311の付勢力で上方に付勢される引抜支持板306の位置と、フック302を介して本体フレーム144に係止される把手軸301の位置とがオーバーラップしている。言い換えると、カバーユニット140が閉じている状態で、カバーユニット140に対して上向きに作用する力の作用部である引抜支持板306の位置と、カバーユニット140に対して下向きに作用する力の作用部である把手軸301の位置とが重複している。
【0068】
従って、カバーユニット140の原稿搬送方向D1の撓み(主走査方向から見て、カバーユニット140の一部がラッチ軸303を支点に回転するような変形)を抑制することができる。そして、例えば開閉ガイド6の撓みが抑制されるから、開閉ガイド6と本体ガイド36(図4)との間の間隔のずれが低減され、原稿搬送の安定性向上に貢献する。また、カバーユニット140に設けられる他の回転体(例えば搬送ローラ3や搬送コロ305)の位置ずれが低減されることも、原稿搬送の安定性向上に貢献する。さらに、カバーユニット140に設けられたセンサ(例えば給送位置センサ91)の位置ずれも低減されるため、原稿の上面位置の検知精度向上に貢献する。
【0069】
さらに詳しく説明すると、図6(a、b)に示す前側差込み部315及び奥側差込み部317の第1突起315a,317aは、原稿搬送方向D1に関してラッチ軸303(図4)より上流に位置する。また、第2突起315b,317bは、原稿搬送方向D1に関してラッチ軸303より下流に位置する。
【0070】
つまり、引抜支持板306は原稿搬送方向D1に関して少なくとも2か所で開閉ガイド6に突き当てられており、これらの突き当て領域が原稿搬送方向D1に関して把手軸301及びラッチ軸30を挟み込む位置関係となっている。言い換えると、開閉ガイド6は、第1当接部としての壁面316c,318cと、第2当接部としての壁面316d,318dとによって、カバーユニット140が閉じている状態で上方に付勢される引抜支持板306を受け止める構成となっている。
【0071】
この構成では、引抜バネ311による上方向の付勢力は、前側差込み部315及び後側差込み部317の第1突起315a,317a及び第2突起315b,317bを介して開閉ガイド6に伝わる。このとき、開閉ガイド6を支える支点となっているラッチ軸303に対して対称に上方向の力が加わるため、ラッチ軸303に対する回転モーメントが相殺し合うことでカバーユニット140がラッチ軸303を支点に回転するような変形をより効果的に抑制できる。
【0072】
また、本実施例では、前側差込み部315及び前側開口部316の突き当て位置と前側のフック302(図6(a))とが主走査方向D2に近接している。同様に、奥側差込み部317及び奥側開口部318の突き当て位置と前側のフック302(図6(b))とが主走査方向D2に近接している。前側開口部316及び奥側開口部318は開閉ガイド6の前側壁6f及び後側壁6rに形成されており、フック302,302は主走査方向D2に前側壁6f及び後側壁6rの外側で、かつ主走査方向D2に前側壁6f及び後側壁6rと対向する位置にある。
【0073】
このように、フック302及びラッチ軸303の係合位置と、開閉ガイド6に対する引抜支持板306の突き当て位置とが主走査方向D2に関して近接しているため、カバーユニット140の主走査方向D2の撓みも抑制される。即ち、仮に開閉ガイド6に対する引抜支持板306の突き当て位置が主走査方向D2の中央部にのみ設けられていると、開閉ガイド6は、ラッチ軸303に係止される主走査方向D2の両端部に比べて中央部が上方に突出するように変形しやすい。これに対し、本実施例の配置を採用することで、開閉ガイド6の変形をさらに低減することができる。
【0074】
(把手軸と引抜支持板の位置関係)
ここで、本体フレーム144に対するカバーユニット140の係合位置と、引抜バネ311の付勢力を受け止める引抜支持板306とを、上述のように原稿搬送方向D1の位置が重なる配置とするとき、把手軸301や把手314の配置が課題となり得る。
【0075】
そこで本実施例では、図5(a、b)に示すように把手軸301を引抜支持板306の上方に配置すると共に、引抜支持板306に把手314の一部を収容する凹部313を設けている。凹部313は、主走査方向D2において引抜コロ304とオーバーラップしない位置(主走査方向D2に関して引抜コロ304の位置の外側)に設けられる。
【0076】
引抜支持板306の凹部313と把手314の位置関係について詳細に説明する。図5(a,b)に示すように、凹部313は、引抜支持板306が上方から見て引抜バネ311と重なる部分306a(第1領域)に比べて下方に凹んだ凹形状であり、把手314の下部は凹部313に収容されている。言い換えると、引抜支持板306には、引抜コロ軸309を支持する第1領域に比べて下方に凹んだ第2領域としての凹部313が設けられており、把手314の一部が第1領域より下方に突出することを許容するように構成されている。
【0077】
本実施例の引抜支持板306は鋼板であることから、凹部313は絞り加工によって形成される。本実施例では強度を維持するために絞り加工を用いるが、第2領域として引抜支持板306に切欠き又は貫通穴を形成してもよい。
【0078】
図5(b)に示すように、上下方向における凹部313の位置は引抜コロ304の上部とオーバーラップしているが、主走査方向D2に関して凹部313が引抜コロ304から離れているため、凹部313は引抜コロ304と干渉しない。同様の理由で、凹部313は、引抜バネ311や引抜コロ軸309とも干渉しない。このように配置することで、図7に変形例として示すように、引抜支持板306に凹部を設けずに、引抜コロ304の上方に引抜支持板306及び把手314を配置する場合に比べて、カバーユニット140を薄型化することができる。
【0079】
また、本実施例では、引抜支持板306及び把手314について原稿搬送方向D1の位置がオーバーラップする構成としたことで、引抜ローラ21及び引抜コロ304を搬送ローラ3及び分離ローラ4に接近させることが可能となった。即ち、把手314と引抜支持板306の干渉を避けるために、引抜支持板306を把手314よりも原稿搬送方向D1の下流に移動させた構成を考えると、本実施例に比べて引抜コロ304が原稿搬送方向D1の下流に移動することになる。ここで、引抜ローラ21の搬送速度が搬送ローラ3の搬送速度より大きく設定されていることから、搬送ローラ3から引抜ローラ21までの距離が大きくなるほど、ADF80のスループットの面では不利となる。本実施例では、図5(a)に示すように引抜ローラ21及び引抜コロ304を搬送ローラ3及び分離ローラ4に接近させた配置とすることで、ADF80のスループット向上を実現している。
【0080】
なお、図7に示すように、引抜支持板306及び把手314について原稿搬送方向D1の位置がオーバーラップしていれば、把手314が外装カバー307の上方に突出するような配置となってもよい。この変形例は、上記の実施例に比べて上下方向の厚さが大きくなっているものの、実施例と同等のスループットを実現可能である。
【0081】
(変形例)
本実施例では、把手314、フック302及び把手軸301が一体化された構成を例示したが、例えばフック302を把手314とは別個の部材として配置し、リンク等を介して把手314に連動してラッチ軸303から離脱するように構成してもよい。また、鉤形状のフック302と軸状のラッチ軸303とは係合部と被係合部の一例であり、引抜ニップ等におけるローラ同士の当接圧に抗してカバーユニット140を閉じている状態に係止可能な構成であれば、係合部及び被係合部に他の構成を採用してもよい。例えば、係合部として磁石を使用し、被係合部として鉄板を用いてもよい。
【0082】
また、本実施例では、弾性体としての引抜バネ311がカバーユニット140側に設けられた構成を例示したが、引抜バネ311が本体側で引抜ローラ21を上方に付勢する構成であってもよい。また、引抜バネ311を省略し、引抜ローラ21及び/又は引抜コロ304の外周部を構成するゴム層の弾性によってニップ圧を生じさせる構成としてもよい。これらのいずれの場合においても、上述した引抜支持板306、把手軸301及び把手314等の配置を採用することで、カバーユニット140の変形を抑制可能である。
【0083】
(その他の実施形態)
上記の実施形態では画像形成装置の上部に設置される画像読取装置及びその画像読取装置の一部を構成するシート搬送装置としてのADF80の構成を説明した。しかしながら、本技術は、他の画像読取装置又はシート搬送装置にも適用可能である。例えば、画像形成装置において記録材として用いられるシートを搬送するシート搬送装置が挙げられる。また、画像形成装置の分野に限らず、例えばチラシや郵便物を搬送するためのシート搬送装置に本技術を適用してもよい。
【符号の説明】
【0084】
3…搬送ローラ/4…分離部材(分離ローラ)/6…第2ガイド部(開閉ガイド)/11…シート積載部(原稿トレイ)/21…第1ローラ(引抜ローラ)/22…第3ローラ(搬送ローラ)/24,201…読取手段(読取ユニット)/36…第1ガイド部(本体ガイド)/80…シート搬送装置(ADF)/90…フラグ部/91…センサ(給送位置センサ)/140…開閉カバー(カバーユニット)/251…画像形成手段(電子写真ユニット)/300…画像形成装置/301…第2軸部材(把手軸)/302…係合部(フック)/303…被係合部(ラッチ軸)/304…第2ローラ(引抜コロ)/305…第4ローラ(搬送コロ)/306…支持部材(引抜支持板)/306a…第1領域/309…第1軸部材(引抜コロ軸)/311…弾性体(引抜バネ)/313…第2領域(凹部)/314…把手部(把手)/316c,318c…第1当接部(壁面)/316d,318d…第2当接部(壁面)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7