(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】異なるタイミングパターンディスプレイを使用した異なる心臓律動の可視化
(51)【国際特許分類】
A61B 5/346 20210101AFI20240219BHJP
A61B 5/343 20210101ALI20240219BHJP
【FI】
A61B5/346
A61B5/343
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019229098
(22)【出願日】2019-12-19
【審査請求日】2022-10-26
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
【審査官】▲高▼木 尚哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-185516(JP,A)
【文献】特開昭57-096638(JP,A)
【文献】特開2008-272483(JP,A)
【文献】特開2007-061617(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0051160(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/05-5/0538
A61B 5/24-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを備えたシステムの作動方法であって、
前記プロセッサが、心臓の一部の上方の所与の位置で測定された心電図(ECG)を受信することと、
前記測定されたECGに基づいて、
前記プロセッサが、所与の時間間隔にわたって律動パターンを特定することであって、前記律動パターンが、現在の心周期長と先行する心周期長との間の関係に対応する、律動パターンを特定することと、
特定された
前記律動パターンに基づいて、
前記プロセッサが、前記位置の分類を、規則的なパターンを示すか又は不整脈を示すかのいずれかとして判定することと、
前記不整脈を示すとして前記位置を分類することが、前記プロセッサが、前記不整脈の種類を分類することを含み、前記不整脈の前記種類は、連続する周期長の間に周期長の単一の値変化を有する第1の種類、又は、前記連続する周期長が3つの値の間で変化する第2の種類のいずれかであり、
前記プロセッサが、前記分類
及び前記不整脈の前記種類に従って前記位置を図形的に符号化することと、
前記プロセッサが、前記心臓の一部の解剖学的マップ上に、前記図形的に符号化された位置を重ね合わせることと、を含む、
システムの作動方法。
【請求項2】
前記律動パターンを特定することが、
前記プロセッサが、前記現在の心周期長と前記先行する心周期長との差を算出することを含む、請求項1に記載の
システムの作動方法。
【請求項3】
前記プロセッサが、前記規則的なパターンを示すと分類された前記位置を第1の視覚的パターンに符号化することと、
前記プロセッサが、前記第1の種類の前記不整脈を示すと分類された前記位置を第2の視覚的パターンに符号化することと、
前記第2の種類の前記不整脈を示すと分類された前記位置を第3の視覚的パターンに符号化することと、
によって前記プロセッサが、前記分類及び前記不整脈の前記種類に従って前記位置を図形的に符号化する、請求項1に記載の
システムの作動方法。
【請求項4】
前記図形的に符号化された位置を重ね合わせることが、
前記プロセッサが、前記心臓の一部の時空間的電気解剖学的マップを生成することを含む、請求項1に記載の
システムの作動方法。
【請求項5】
前記プロセッサが、電気解剖学的マッピングのためのカテーテルベースのシステム
から前記ECGを
受信することを含む、請求項1に記載の
システムの作動方法。
【請求項6】
システムであって、
心臓の一部の上方の所与の位置で測定された心電図(ECG)を格納するように構成されているメモリと、
プロセッサであって、
前記測定されたECGに基づいて、所与の時間間隔にわたって律動パターンを特定することであって、前記律動パターンが、現在の心周期長と先行する心周期長との間の関係に対応する、律動パターンを特定することと、
特定された
前記律動パターンに基づいて、前記位置の分類を、規則的なパターンを示すか又は不整脈を示すかのいずれかとして判定することと、
前記不整脈を示すとして前記位置を分類することが、前記不整脈の種類を分類することを含み、前記不整脈の前記種類は、連続する周期長の間に周期長の単一の値変化を有する第1の種類、又は、前記連続する周期長が3つの値の間で変化する第2の種類のいずれかであり、
前記分類に従って前記位置を図形的に符号化することと、
前記心臓の一部の解剖学的マップ上に、前記図形的に符号化された位置を重ね合わせることと、を行うように構成されているプロセッサと、を備える、システム。
【請求項7】
前記プロセッサが、前記現在の心周期長と前記先行する心周期長との間の差を算出することによって、前記律動パターンを特定するように構成されている、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記プロセッサが、
前記規則的なパターンを示すと分類された前記位置を第1の視覚的パターンに符号化し、前記第1の種類の前記不整脈を示すと分類された前記位置を第2の視覚的パターンに符号化し、前記第2の種類の前記不整脈を示すと分類された前記位置を第3の視覚的パターンに符号化するように構成されている、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記プロセッサが、前記心臓の一部の時空間的電気解剖学的マップを生成することによって、前記図形的に符号化された位置を重ね合わせるように構成されている、請求項6に記載のシステム。
【請求項10】
前記システムが、電気解剖学的マッピングのためのカテーテルベースのシステムを使用して前記ECGを測定するように更に構成されている、請求項6に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概ね、電気解剖学的マッピング、特に心臓の電気解剖学的マッピングの方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
心室の電気解剖学的マッピングの技術は、特許文献で以前に論じられていた。例えば、米国特許出願公開第2016/0089048号は、心室チャネル、マッピングチャネル、及び複数の基準チャネルを含む、少なくとも4つの多チャネル心電図信号から局所的活性化時間(local activation time、LAT)を判定するための自動方法を記載している。当該方法は、(a)心室チャネル信号を格納することと、(b)心室及びマッピングチャネル信号並びに第1の基準チャネル信号を使用して、複数のマッピングチャネル位置のLAT値を計算することと、(c)第1の基準チャネル信号のタイミング安定性を監視することと、(d)監視された信号のタイミング安定性が安定性基準を下回る場合、第2の基準チャネルの信号を使用してLAT値を判定することと、を含む。LAT値の実質的な損失は、タイミング安定性の損失にもかかわらず回避される。
【0003】
別の例として、米国特許出願公開第2016/0089050号は、心臓活動の活性化信号を検出するように構成されているマッピング電極を含む解剖学的マッピングシステム及び方法を記載している。処理システムは、検出された活性化信号を記録し、生理活動の各実例中に感知された活性化信号の各々について、ベクトル場を生成するように構成されている。処理システムは、開始時間及び代替の開始時間候補を判定し、初期ベクトル場とテンプレートバンクからのベクトル場テンプレートとの間の類似度に基づいて、初期ベクトル場テンプレートを特定し、次いで、開始時間候補と初期ベクトル場テンプレートとの間の度類似性に基づいて、各活性化信号に対する最適化された開始時間を判定する。
【0004】
米国特許出願公開第2011/0251505号は、心臓律動障害の原因を示すために、患者の心臓に関連する複雑な律動障害を表す心臓情報の再構成を促進するシステム、アセンブリ、及び方法を記載している。複雑な律動障害は、律動障害の原因を修正するためのエネルギーの印加によって治療することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態は、心臓の一部の上方の所与の位置で測定された心電図(electrocardiogram、ECG)を受信することを含む方法を提供する。測定されたECGに基づいて、律動パターンが、所与の時間間隔にわたって特定される。律動パターンは、現在の心周期長と先行する心周期長との間の関係に対応する。特定された律動パターンに基づいて、位置の分類が、規則的なパターンを示すか又は不整脈を示すかのいずれかとして判定される。位置は、分類に従って図形的に符号化される。図形的に符号化された位置は、心臓の一部の解剖学的マップ上に重ね合わされる。
【0006】
いくつかの実施形態では、律動パターンを特定することは、現在の心周期長と先行する心周期長との差を算出することを含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、不整脈を示すとして位置を分類することは、不整脈の種類を分類することを含む。
【0008】
一実施形態では、図形的に符号化された位置を重ね合わせることは、心臓の一部の時空間的電気解剖学的マップを生成することを含む。別の実施形態では、本方法は、電気解剖学的マッピングのためのカテーテルベースのシステムを使用してECGを測定することを更に含む。
【0009】
また、本発明の実施形態によれば、メモリ及びプロセッサを含むシステムが更に提供される。メモリは、心臓の一部の上方の所与の位置で測定された心電図(ECG)を格納するように構成されている。プロセッサは、測定されたECGに基づいて、所与の時間間隔にわたって律動パターンを特定するように構成される。律動パターンは、現在の心周期長と先行する心周期長との間の関係に対応する。プロセッサは、特定された律動パターンに基づいて、位置の分類を、規則的なパターンを示すか又は不整脈を示すかのいずれかとして判定するように追加的に構成されている。プロセッサは、分類に従って位置を図形的に符号化し、心臓の一部の解剖学的マップ上に、図形的に符号化された位置を重ね合わせるように更に構成されている。
【0010】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態による、電気解剖学的マッピング用システムの模式的な描写図である。
【
図2A】本発明の一実施形態による、局所的心拍タイミングパターンの概略散布プロットである。
【
図2B】本発明の一実施形態による、局所的心拍タイミングパターンの概略散布プロットである。
【
図2C】本発明の一実施形態による、局所的心拍タイミングパターンの概略散布プロットである。
【
図3】本発明の一実施形態による、心室の時空間電気解剖学的マップの概略描写図である。
【
図4】本発明の一実施形態による、心室の時空間電気解剖学的マップを作成する方法及び方法のためのアルゴリズムを概略的に例示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
概論
カテーテルベースの電気解剖学的マッピング手技の1つの重要な用途は、不整脈の潜在的な起点又は伝導経路として機能する心内組織位置を特定することである。診断のために、ある特定の組織位置は、カテーテルがその位置で記録した電気生理学的(electrophysiological、EP)活動の律動パターンの分析に基づいて、正常又は異常として特徴付けることができる。
【0013】
例えば、心内心電図(ECG)において見られるそのような局所的に記録された律動パターンは、心臓EP活性化の心周期長(すなわち、周期性)の特性によって簡潔に表現され得る。正常な洞律動を通常は意味する反復可能な周期長は、健康かつ正常な心臓組織位置を示す。それに対して、高度に可変の周期長は、不整脈が発生するか、又は不整脈が通って伝播する異常な組織の位置示す。
【0014】
現在、医師は、不整脈の起点及び/又は経路を特定しようと試みるために、心室の異なる領域を手作業で検査することによって、心室の電気解剖学的マップを分析する場合がある。しかしながら、この種の検査は、労力及び時間がかかる細かい作業を必要とする。
【0015】
以下に記載される本発明の実施形態は、心室の表面組織などの心臓の一部の表面組織の時空間電気解剖学的マップ(以下、「時空間EPマップ」とも命名される)を生成する。時空間EPマップは、健康又は異常として組織位置を図形的に符号化する。更に、時空間EPマップを生成するための開示される技術は、異なる種類の不整脈挙動を特定及び符号化することができる。
【0016】
開示される時空間EPマップは、心室壁組織の上方に呈されるものなど、心臓の一部の上方の組織位置によって呈されるタイミングパターンを分類することによって作製される。タイミングパターンは、任意の特定の組織位置について、「現在の」期間、すなわち、周期長を、先行する又は「前の」期間と比較することによって特定される。タイミングパターンは、プロセッサによって、数秒の典型的な時間間隔にわたって特定されてもよい。このようにして、組織位置のタイミングパターンは、その位置における律動パターンを示している。
【0017】
正常な洞律動を呈する(例えば、数秒にわたって十分に反復可能な心拍数を有する)組織位置は、以下に記載されるように、単一の点を本質的に与えるタイミングパターンをもたらす。しかしながら、不整脈を呈する組織位置は、洞パターンとは異なるタイミングパターンを生成し、異なる種類の不整脈の各々が、典型的には、以下に示されるように、はっきりと異なる特有のタイミングパターンを有する。
【0018】
いくつかの実施形態では、心臓の一部の上方の所与の位置で測定された心電図(ECG)を格納するように構成されているメモリが提供される。プロセッサは、(a)測定されたECGに基づいて、所与の時間間隔にわたって律動パターンを特定することであって、律動パターンが、現在の心周期長と先行する心周期長との間の関係に対応する、律動パターンを特定することと、(b)特定された律動パターンに基づいて、位置の分類を、規則的なパターン(すなわち、正常な)を示すか又は不整脈を示すかのいずれかとして判定することと、を行うように構成されている。プロセッサは、分類に従って位置を図形的に符号化し、心臓の一部の解剖学的マップ上に、図形的に符号化された位置を重ね合わせるように更に構成されている。
【0019】
一実施形態では、プロセッサは、心室の解剖学的マップ上の位置の異なるタイミングパターンで符号化を重ね合わせて、心室の時空間マップを作成し、時空間マップは、医師が不整脈の起点を特定するのを支援することができ、かつ/又は不整脈の種類を示すことができる。
【0020】
通常、プロセッサは、上記で概説されたプロセッサ関連の工程及び機能の各々をプロセッサによって実行することを可能にする特定のアルゴリズムを含むソフトウェアでプログラムされる。
【0021】
開示された時空間電気解剖学的マッピング技術は、心室組織の正常な領域に対する異常な領域の明瞭な視覚表示を医師に提供し、したがって、不整脈の診断及び治療の選択を容易にすることができる。
【0022】
システムの説明
図1は、本発明の実施形態による、電気解剖学的マッピング用システムの模式的な描写図である。
図1は、医師27が電気解剖学的カテーテル29を使用して、患者25の心臓23の電気解剖学的マッピングを実施しているのを描写している。カテーテル29は、その遠位端に、機械的に可撓性であり得る1つ又は2つ以上のアーム20を備え、各アームに1つ又は2つ以上の電極22が連結されている。マッピング手技中に、電極22は、心臓23の組織から信号を取得する、及び/又は心臓23の組織に信号を注入する。プロセッサ28は、電気インターフェース35を介してこれらの信号を受信し、これらの信号に含まれる情報を使用して、例えば、以下に説明するように、開示された時空間電気解剖学的マップを作成するために、プロセッサ28が更なる使用のためにメモリ33内に保存する電気解剖学的マップ31を構築する。手技中及び/又は手技の後に、プロセッサ28は、ディスプレイ26上に電気解剖学的マップ31を表示してもよい。
【0023】
手技中に、追跡システムを使用して感知電極22のそれぞれの位置を追跡することで、信号のそれぞれとその信号が取得された位置とを関連付けることができる。例えば、米国特許第8,456,182号で説明され、その開示が参照により本明細書に組み込まれるBiosense-Webster(Irvine California)製のActive Current Location(ACL)システムが使用されてもよい。ACLシステムでは、プロセッサは、感知電極22のそれぞれと患者25の皮膚に連結されている複数の表面電極24との間で測定されたインピーダンスに基づいて電極のそれぞれの位置を推定する。例えば、3つの表面電極24を患者の胸部に、別の3つの表面電極を患者の背部に、連結してもよい。(例示しやすいように、1本の表面電極のみを
図1に示す。)プロセッサは、電極22から受信した任意の所与のインピーダンス信号と、信号が取得された心臓23内の位置とを関連付ける。
【0024】
図1に示される例示的な図は、純粋に概念を分かりやすくするために選択されたものである。Carto(登録商標)4システム(Biosense Webster製)と同様に、電圧信号測定に基づくものなどの他の追跡方法を使用することができる。Lasso(登録商標)カテーテル(Biosense-Webster製)など、他のタイプの感知用カテーテルも同等に採用され得る。接触センサは電気解剖学的カテーテル29の遠位端に取り付けられてもよい。上述したように、アブレーションに使用される電極などの他のタイプの電極が、必要な位置データを取得するための電極22に取り付けられて同様の方法で利用されてもよい。よって、この場合、位置データを収集するために使用されるアブレーション電極が、感知電極とみなされる。ある任意の実施形態では、プロセッサ28は、測定中に電極22のそれぞれと心室の内表面との間の物理的接触の質を示すように更に構成されている。
【0025】
プロセッサ28は、典型的には、本明細書に説明される機能を実行するようにプログラムされたソフトウェアを備える汎用コンピュータを含む。ソフトウェアは、例えば、ネットワークを介して電子形式でコンピュータにダウンロードされてもよく、あるいは、代替的に若しくは追加的に、磁気的、光学的、又は電子的メモリなどの非一時的な有形媒体上に提供及び/又は記憶されてもよい。詳細には、プロセッサ28は、以下で更に説明する本開示の複数のステップをプロセッサ28が実行することを可能にする、
図4を含む本明細書に開示の専用アルゴリズムを実行する。
【0026】
異なる心臓律動の異なるタイミングパターンディスプレイの使用
図2A~
図2Cは、本発明の一実施形態による、局所的心拍タイミングパターンの概略散布プロットである。3つの図の全ては、直に先行する又は「前の」期間に対する「現在の」期間、すなわち周期長をプロットする。
【0027】
図2Aは、正常の洞律動において規則的な様式で動作する組織の上方の位置のタイミングパターンプロットである。見られるように、タイミングパターンプロットは、EP活性化間の現在及び前の周期長が、正常な心臓組織において非常に類似しているので、1つの点46aを本質的に与える。
【0028】
図2Bは、「タイプ1」と命名された特定の種類の不整脈を呈する組織の上方の位置のタイミングパターンプロットである。見られるように、「タイプ1」不整脈は、連続する周期長の間の単一の値変化46bを特徴とする。
【0029】
図2Cは、「タイプ2」と命名された別の種類の不整脈を呈する組織の上方の別の位置のタイミングパターンプロットである。見られるように、「タイプ2」不整脈は、周期長がより複雑な様式、すなわち、3つの値46cの間で変化することを特徴とする。更に見られるように、各種類の時間パターンは、それぞれの対応する位置を、それらの対応する種類のタイミングパターンプロットに従って図形パターン44a、44b、及び44cを含む空間的フットプリントを割り当てる(すなわち、各位置を、正常、又はその位置に示す1種類又は他方の種類の不整脈を有する不整脈のいずれかとして分類する)ことにより、図式的に符号化される。
【0030】
図2A~
図2Cに示される例示的な図は、概念を明確化する目的のために単に選択されている。
図2A~
図2Cは、本発明の実施形態に関連する部分のみを示す。例えば、何らかの変動は、各点について、ブロード化「クラウド」の形態で、散布プロット内で生じ得る。心拍揺らぎの閾値化などの追加のデータ処理工程を適用して、確定していないブロード化されたタイミングパターンプロットを最小化することができる。代替の実施形態では、散布図で見られるタイミングパターンを定量化するものなど、他の分類が確立されてもよい。
【0031】
図3は、本発明の一実施形態による、心室の時空間電気解剖学的マップ40の概略描写図である。マップ40を作製するために、プロセッサは、マップ31などの心室の解剖学的マップ上に、分類された位置を重ね合わせる。図に見られるように、マップ40内の各領域は、規則的なパターンを示すように符号化された位置、すなわち、領域52、タイプ1不整脈を示すように符号化された位置、すなわち領域54、又はタイプ2不整脈を示すように符号化された位置、すなわち領域56の、キャプション60に従う1つ又は2つ以上の位置を含んでもよい。
【0032】
解剖学的マップ上にプロットされた異なるタイミングパターンの位置は、心室の時空間マップを作成し、このマップは、医師が不整脈の起点を特定するのを支援し、及び/又は不整脈の種類を示すことができる。したがって、開示された技術は、例えば、治療の必要な過程の決定を容易にするように、心室組織の正常対異常領域の明瞭な視覚表示を医師27に提供する。
【0033】
図3に示される例示的な図は、純粋に概念を分かりやすくするために選択されたものである。代替の実施形態では、散布図に見られるタイミングパターンを定量化するために、可変長を有する矢印などの追加又は代替の図形的要素をマップ31上に重ね合わせて、異なる分類に基づいてマップ40を作成してもよい。
【0034】
図4は、本発明の一実施形態による、心室の時空間電気解剖学的マップを作成するための方法及びアルゴリズムを概略的に例示したフローチャートである。本実施形態によるアルゴリズムは、ECGトレースアップロード工程70において、心室の内表面組織の上方の位置で測定された心内ECGトレースを、医師30がメモリ33からアップロードし始めるプロセスを実行する。次に、プロセッサ28は、タイミングパターンチェック工程72において、プロセッサ28がその位置におけるタイミングパターンを比較するプことによって、ECGトレース内に呈された律動パターンを検査する。専用アルゴリズムを使用する分析工程74では、プロセッサ28は、分析された律動パターンが規則的(すなわち反復可能)であるか又は異常(すなわち、高度に可変)であるか否かを判定する。次いで、プロセッサ28は、それぞれ位置分類工程76及び78において、それに応じて、正常又は異常のいずれかとして、組織位置を適宜分類する。
【0035】
次の工程で、プロセッサ28は、電気解剖学的マップ更新ステップ80において、分類された位置で電気解剖学的マップを更新する。次いで、プロセスは、別の組織位置を検査するために工程70にループする。
【0036】
最後に、検査された位置を分類することに基づいて、プロセッサ28は、
図3に記載されるように、時空間マッピング工程82において、律動パターンを符号化することによって、心室組織の時空間マップ40を構築する。結果として得られる時空間マップは、不整脈活動を示す位置を示している。最後に、プロセッサ28は、時空間マップ提示工程84において、導出された時空間マップを医師27に提示する。
【0037】
図4に示される例示的なフロー図は、純粋に概念を分かりやすくするために選択されたものである。不整脈のタイミングパターンを提示するなどの追加の工程は、意図的に高度に単純化されたフローチャートから省略される。
【0038】
本明細書に記述される実施形態は、主として心臓での用途を取り扱うが、本明細書に記載される方法及びシステムは、脳のEP活動の脳波図(electroencephalogram、EEG)ベースのマッピングなどの他の用途にも用いることができる。
【0039】
したがって、上記に述べた実施形態は、例として引用したものであり、また本発明は、上記に具体的に示し説明したものに限定されないことが理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、上述の様々な特徴の組み合わせ及びその一部の組み合わせの両方、並びに上述の説明を読むことで当業者により想到されるであろう、また従来技術において開示されていない、それらの変形形態及び修正形態を含むものである。参照により本特許出願に援用される文献は、これらの援用文献においていずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾して定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の一部とみなすものとする。
【0040】
〔実施の態様〕
(1) 方法であって、
心臓の一部の上方の所与の位置で測定された心電図(ECG)を受信することと、
前記測定されたECGに基づいて、所与の時間間隔にわたって律動パターンを特定することであって、前記律動パターンが、現在の心周期長と先行する心周期長との間の関係に対応する、律動パターンを特定することと、
前記特定された律動パターンに基づいて、前記位置の分類を、規則的なパターンを示すか又は不整脈を示すかのいずれかとして判定することと、
前記分類に従って前記位置を図形的に符号化することと、
前記心臓の一部の解剖学的マップ上に、前記図形的に符号化された位置を重ね合わせることと、を含む、方法。
(2) 前記律動パターンを特定することが、前記現在の心周期長と前記先行する心周期長との差を算出することを含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 不整脈を示すとして前記位置を分類することが、前記不整脈の種類を分類することを含む、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記図形的に符号化された位置を重ね合わせることが、前記心臓の一部の時空間的電気解剖学的マップを生成することを含む、実施態様1に記載の方法。
(5) 電気解剖学的マッピングのためのカテーテルベースのシステムを使用して前記ECGを測定することを含む、実施態様1に記載の方法。
【0041】
(6) システムであって、
心臓の一部の上方の所与の位置で測定された心電図(ECG)を格納するように構成されているメモリと、
プロセッサであって、
前記測定されたECGに基づいて、所与の時間間隔にわたって律動パターンを特定することであって、前記律動パターンが、現在の心周期長と先行する心周期長との間の関係に対応する、律動パターンを特定することと、
前記特定された律動パターンに基づいて、前記位置の分類を、規則的なパターンを示すか又は不整脈を示すかのいずれかとして判定することと、
前記分類に従って前記位置を図形的に符号化することと、
前記心臓の一部の解剖学的マップ上に、前記図形的に符号化された位置を重ね合わせることと、を行うように構成されているプロセッサと、を備える、システム。
(7) 前記プロセッサが、前記現在の心周期長と前記先行する心周期長との間の差を算出することによって、前記律動パターンを特定するように構成されている、実施態様6に記載のシステム。
(8) 前記プロセッサが、前記不整脈の種類を分類することによって、不整脈を示すとして前記位置を分類するように構成されている、実施態様6に記載のシステム。
(9) 前記プロセッサが、前記心臓の一部の時空間的電気解剖学的マップを生成することによって、前記図形的に符号化された位置を重ね合わせるように構成されている、実施態様6に記載のシステム。
(10) 前記システムが、電気解剖学的マッピングのためのカテーテルベースのシステムを使用して前記ECGを測定するように更に構成されている、実施態様6に記載のシステム。