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特許7438757治療用途のためのヒトCペプチドとヒトエラスチン受容体との相互作用のペプチドモジュレーター
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  • 特許-治療用途のためのヒトCペプチドとヒトエラスチン受容体との相互作用のペプチドモジュレーター 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】治療用途のためのヒトCペプチドとヒトエラスチン受容体との相互作用のペプチドモジュレーター
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/08 20190101AFI20240219BHJP
   A61K 38/10 20060101ALI20240219BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20240219BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240219BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240219BHJP
   C07K 14/62 20060101ALI20240219BHJP
   C12N 15/17 20060101ALN20240219BHJP
【FI】
A61K38/08
A61K38/10
A61K38/16
A61P29/00
A61P43/00 111
C07K14/62 ZNA
C12N15/17
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019563680
(86)(22)【出願日】2018-02-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-12
(86)【国際出願番号】 EP2018052822
(87)【国際公開番号】W WO2018141969
(87)【国際公開日】2018-08-09
【審査請求日】2021-01-18
(31)【優先権主張番号】17154889.4
(32)【優先日】2017-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519285259
【氏名又は名称】バイオテンプト・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベンスフォールト,ヘルト
【審査官】堂畑 厚志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0082842(US,A1)
【文献】国際公開第2005/118638(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/021924(WO,A1)
【文献】特開2007-217422(JP,A)
【文献】Journal of Cell Science,2005年,Vol. 118, No. 2,p. 343-356
【文献】DIABETES,2013年,Vol. 62, No. 11,p. 3807-3816
【文献】DOYLE, Jamie R. et al.,The Journal of Biological Chemistry,2014年,vol. 289, no. 19,p. 13385-13396
【文献】PIAO, Wenji et al.,The Journal of Immunology,2013年,vol. 190, no. 5,p. 2263-2272
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00-38/58
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトエラスチン受容体へのヒトCペプチドの結合を調整することができる少なくとも1つのペプチドモチーフを付された単離された又は合成ペプチドを含む、ヒトの炎症性疾患の治療において使用するための医薬組成物であって、
前記ペプチドが、少なくとも1つのヒトエラスチン受容体結合モチーフGxxPGを有し、少なくとも1つのアミノ酸Qを有し、Gが1文字表記でアミノ酸グリシンを表し、Pがアミノ酸プロリンを表し、Qがアミノ酸グルタミンを表し、xが任意のアミノ酸を表し、
前記ペプチドが、配列番号10、11、12、13、17、18、19、20、14、15、16、21、25、175、3、22、23、26、176、24、27、28、29、43、93及び94のいずれか一からなる、医薬組成物。
【請求項2】
ペプチドが、配列番号14、15、16、21、25、175、3、22、23、26、176、24、27、28、29、43、93及び94のいずれか一からなる、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
ヒトの炎症性疾患の治療において使用するための医薬組成物であって、単離された又は合成ペプチドを含み、前記ペプチドが、配列番号10、11、12、13、17、18、19、20、14、15、16、21、25、175、3、22、23、26、176、24、27、28、29、43、93及び94に列挙される親L-アミノ酸の順序から逆の順番で集合したD-アミノ酸により構成されるレトロインベルソバリアントペプチドである、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヒトの医学の分野に属し、薬学、バイオテクノロジー及び薬物開発の分野に属する。本開示は、メタボリックシンドロームの病因論に関し、ヒトにおける炎症、インスリン抵抗性、アテローム性疾患、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、心臓血管疾患、1型及び2型糖尿病における微小及び大血管性病理の治療のための免疫調整ペプチドの使用を提供する。
【背景技術】
【0002】
暴食というあまりに人間的な習慣及び日常的に食品が容易に手に入ることの結果として、健康に悲惨な帰結を有する肥満症の流行が世界中でもたらされた。15億人が過体重(そのうち5億人が肥満)であり、彼らの非常に多くが、高所得及び中間所得の国々において健常でない加齢及び死の主要な原因であるメタボリックシンドロームと多くの場合に呼ばれる慢性炎症性疾患を患っている。これらの15億人は心臓血管疾患(血管の慢性炎症[アテローム性疾患、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症]、血圧増加[高血圧]及び血中の増加した異常な脂肪レベル[脂質異常症])を発症し、心臓発作及び卒中にまで繋がる増加したリスクがある。これらの15億人の少なくとも30%は、2型糖尿病を発症するさらなるリスクがある(世界保健機関)。他の者は、腎不全又は認知症などの加齢の早過ぎる発現を発症する。非致死性及び致死性心筋梗塞としての心不全及び末梢動脈疾患(PAD)は、2型糖尿病における心臓血管疾患の最も一般的な初期発現であり、他のものとしては一過性虚血発作(TIA)又は虚血性卒中及び安定狭心症である。座りがちの生活及び喫煙はこれらの状態からの死亡のリスクをさらに増加させる。現在、これらの唖然とさせる数字の背景にある初期には穏やかであるが最終的に慢性の炎症性疾患に繋がる原因事象の(過食以外の)満足のいく医学的理解は存在しない。この摂食誘導性の炎症が起こり、これほど多くの人々に影響する理由はほとんど分かっておらず、多くの議論が為されている。
【0003】
Cペプチドは、プロインスリン分子中のA鎖とB鎖との連結ペプチドである。膵島ベータ細胞の小胞体中での切断後、インスリン及び35アミノ酸のペプチドが生成される。後者は、分子の両側における2つの塩基性残基の酵素的除去により、31アミノ酸のペプチドであるCペプチドに加工される。Cペプチドは、膵島ベータ細胞から門脈循環中にインスリンと等モル量で共分泌される。2鎖インスリン構造のフォールディングへの寄与の他に、Cペプチドのさらなる生物学的活性はその発見後長年にわたり疑問となっている。
【0004】
ヒトCペプチドは、以下の配列を有する31アミノ酸のペプチドである。
【0005】
配列番号1(EAEDLQVGQVELGGGPGAGSLQPLALEGSLQ、アミノ酸の1文字表記による)。
【0006】
Cペプチドは古典的に、より保存されたN及びC末端セグメント及びより可変の中間配列、又は内部の疎水性中央部分というトリパータイトの全体構造とみなされている。したがって、ヒトCペプチドの場合、N末端セグメントは多くの場合に残基1~12(配列番号2(EAEDLQVGQVEL))、中央部分は残基13~25(配列番号3(GGGPGAGSLQPLA))、及びC末端セグメントは残基25~31(配列番号4(LEGSLQ))と考えられている。配列番号5(EAED)のテトラペプチドが、ベータ細胞中で2鎖インスリン構造をフォールディングさせる過程において必要とされると考えられている(Chen at al.,J Biochem.2002 Jun;131(6):855-9)。最近、一部の研究により、充分に定義された二次構造を示すCペプチドのC末端ペンタペプチド(ヒトCペプチドにおいて配列番号6、EGSLQ、ラットCペプチドにおいて配列番号7(EVARQ))がヒト腎臓尿細管細胞において細胞内Ca2+の増加を誘導し得ることが示唆された(Shafqat et al.,Cell Mol Life Sci.2002 Jul;59(7):1185-9.)。
【0007】
Cペプチドはインスリンと等量で産生され、糖尿病患者における内因性インスリン分泌の最良の追加の指標である。Cペプチドを使用するインスリン分泌の測定は、臨床プラクティスにおいて役立つと考えられており、インスリン分泌の差異は、1型及び2型糖尿病の異なる治療要件の基礎となっている。Jones and Hattersley(Diabet Med.2013 Jul;30(7):803-17)には、糖尿病患者の臨床管理におけるCペプチド測定の使用が総説されており、Cペプチド試験の解釈及び選択並びに糖尿病の分類及び治療の選択、及びCペプチドをどの場面で使用するべきかの推奨、試験の選択及び結果の解釈を補助するためのその使用が含まれる。ベータ細胞機能の緩慢な衰退に起因して、2型糖尿病においてCペプチドレベルと代謝制御及び慢性合併症との関係性はあまり分かっていないため、Bo et al.,(Acta Diabetol.2000;37(3):125-9)は2型糖尿病患者のコホートにおいてこれらの関連性を評価した。Cペプチドの生物学的効果は、インスリンとの相互作用により又は特異的若しくは非特異的な膜相互作用を介して媒介されると考えられている。当該技術分野における一部の研究は、まだ同定(indentified)されていないGPCRによる特異的相互作用の理論を支持する。しかしながら、CペプチドのD-エナンチオマーはL-エナンチオマーと同じ生物学的活性を有し(Ido et al.,Science,1997,277(5325):563-6)、したがってIDOらは、天然Cペプチドと等しい能力の反転(レトロ)及び全てDアミノ酸の(エナンチオ)Cペプチドを発見して、配列番号8(GGGPGAG)の活性は受容体により媒介されないと結論付けており、それによりCペプチドの受容体から遠ざける教示をしており、他の受容体非依存性の相互作用がCペプチド(C-peptde)の機能のために重要であることを当業者に示唆している。脂質二重層中のカチオン選択性チャネルの形成もまた、より非特異的な相互作用を示唆することに繋がった。したがって、Cペプチドの受容体は把握されていないままである。
【0008】
Ido et al.(Science,1997 Jul 25;277(5325):563-6;及び本出願の図1)は、ラット顆粒状組織においてグルコース誘導性の血管機能障害を正常化するために配列番号8(GGGPGAG)の疎水性中央部分を有するヒトCペプチド断片を示しているが、インスリンを用いるそれらのラットの処置と組み合わせたCペプチド断片の試験を提供しておらず、前記疎水性中央部分を有する断片の受容体媒介性の活性から遠ざける教示をしている。US20020107175において、配列番号9(ELGGGPGAG)のCペプチド断片及びより小さいその断片の一部がラット腎尿細管細胞のNa.sup.+K.sup.+ATPアーゼ活性を刺激している。US20060234914及びUS20070082842には、配列番号8(GGGPGAG)の上記で議論した疎水性中央部分の活性とは関係しない生物学的活性を提供する少なくとも1つのグルタミン(3文字表記でGlu;1文字表記でE)を含むN末端及び/又はC末端Cペプチド断片が列記されており、上記中央部分の配列はUS20060234914及びUS20070082842において列記されたいずれの断片にも見られない。
【0009】
1型糖尿病は、一般に、膵島ベータ細胞の自己免疫破壊によるインスリン及びCペプチドの欠乏により特徴付けられる。したがって、患者は、生命を維持するために外因性インスリンに依存する。例えば、遺伝的背景、環境要因及び一時的感染後の侵攻性の自己免疫反応といったいくつもの要因が疾患の病因にとって重要であり得る(Akerblom H K et al.:Annual Medicine 29(5):383-385,(1997))。現在、インスリンを必要とする患者は、Cペプチドから分離された外因性インスリンを提供されており、したがって外因性Cペプチド療法を受けていない。対照的に、ほとんどの2型糖尿病の対象は、初期にはまだインスリン及びCペプチドの両方を内因的に産生するが、一般に、他の組織の中でも骨格筋、脂肪組織及び肝臓においてインスリン抵抗性により特徴付けられる。
【0010】
多くの1型及び末期2型糖尿病患者(もはやインスリン及びCペプチドを産生しない)並びに他のインスリンを必要とする患者は結局、糖尿病の様々な長期血管合併症を発症して患い、これらは多くの場合、早期2型糖尿病(インスリン及びCペプチドがなおも産生されるが、患者はインスリンに抵抗性である)よりもさらに重篤及び広がっている。例えば、網膜、腎臓及び神経を伴う微小血管合併症は1型糖尿病又は末期2型糖尿病の患者における罹患及び死亡の主要な原因であるが、一般に、インスリンに抵抗性の患者において著明ではないと考えられている。インスリンを必要とする糖尿病患者の長期合併症の発症においてCペプチドの欠乏が役割を果たし得るという概念についてのサポートが増加しつつある。さらに、ヒト糖尿病モデル及び1型糖尿病患者におけるin vivoの他にin vitro研究は、Cペプチドがホルモン活性を有することを実証している(Wahren J et al.:American Journal of Physiology 278:E759-E768,(2000);Wahren J et al.:In International Textbook of Diabetes Mellitus Ferranninni E,Zimmet P,De Fronzo R A,Keen H,Eds.John Wiley & Sons,(2004),p.165-182))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許出願公開第2002/0107175号明細書
【文献】米国特許出願公開第2006/0234914号明細書
【文献】米国特許出願公開第2007/0082842号明細書
【非特許文献】
【0012】
【文献】Chen at al.,J Biochem.2002 Jun;131(6):855-9
【文献】Shafqat et al.,Cell Mol Life Sci.2002 Jul;59(7):1185-9.
【文献】Jones and Hattersley(Diabet Med.2013 Jul;30(7):803-17)
【文献】Bo et al.,(Acta Diabetol.2000;37(3):125-9)
【文献】Ido et al.,Science,1997,277(5325):563-6
【文献】Akerblom H K et al.:Annual Medicine 29(5):383-385,(1997)
【文献】Wahren J et al.:American Journal of Physiology 278:E759-E768,(2000)
【文献】Wahren J et al.:In International Textbook of Diabetes Mellitus Ferranninni E,Zimmet P,De Fronzo R A,Keen H,Eds.John Wiley & Sons,(2004),p.165-182)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
驚くべきことに、本発明は、広く知られたインスリンと共に1:1の比で産生される小タンパク質であるCペプチドによる、血管及びエラスチン修復に関与するタンパク質であるヒトエラスチン受容体のこれまで見過ごされてきたロック・アンド・キー(lock-and-key)活性化により、ヒトのメタボリックシンドロームにおけるいわゆる炎症が増大することを示す。エラスチン受容体は、Cペプチド中及びその分解産物(PGドメイン断片)中に見出されるアミノ酸のキーモチーフ(PGドメイン)により活性化されるロックである。2つの間のこのロック・アンド・キー相互作用はこれまで誰にも発見されておらず、エラスチン受容体(エラスチンペプチド)の通常のキーのみならず、食後に血液中にグルコースが生じるたびにインスリンと共に産生されるペプチドであるCペプチドがエラスチン受容体とロック・アンド・キー様式(ドック)で相互作用するという発見を活用して、メタボリックシンドロームの治療のための新規のペプチドの開発及びペプチドの使用における新規の進出が提供される。本発明は、ヒト疾患の治療において使用するためのヒトエラスチン受容体へのヒトCペプチドの結合を調整(模倣、アゴナイズ又はアンタゴナイズ)することができる単離された及び合成ペプチドを提供する。
【0014】
本発明は、ヒト疾患の治療、例えば、ヒト炎症の治療、並びに/又は1型糖尿病及び/若しくは末期2型糖尿病の治療、より好ましくは、微小血管合併症、好ましくは1型糖尿病及び/又は末期2型糖尿病に伴って見られる微小血管合併症の治療において使用するための単離された又は合成ペプチドであって、ペプチドが、少なくとも1つのヒトエラスチン受容体結合モチーフGxxPGを有し、少なくとも1つのアミノ酸Qを有し、Gが1文字表記でアミノ酸グリシンを表し、Pがアミノ酸プロリンを表し、Qがアミノ酸グルタミンを表し、xが任意のアミノ酸を表し、ペプチドが5~30アミノ酸からなる、ペプチドを提供する。典型的に、本明細書において提供される好ましいペプチドは、配列番号10、11、12、13、17、18、19、20、14、15、16、21、25、175、3、22、23、26、176、24、27、28、29、43、93及び94に列記されるペプチド、並びに配列番号10、11、12、13、17、18、19、20、14、15、16、21、25、175、3、22、23、26、176、24、27、28、29、43、93及び94に列記されるペプチドに由来するレトロインベルソバリアントペプチドの群から選択される。注記:レトロインバースペプチドは、親のL配列の順序から反転した順序で集合したDアミノ酸から構成され、したがって天然配列の全体的なトポロジーを維持している。グリシンの立体異性体は存在せず、ここで(及び例えばレトロインベルソGxxP又はxGxPモチーフを有するレトロインベルソペプチドにおいて)Gはそうではないが、それに対してL、P及びAなどの他のアミノ酸が、本明細書において提供されるレトロインベルソペプチドの全てDアミノ酸の特徴に寄与する。本発明はまた、合成ペプチドであって、ヒトエラスチン受容体結合モチーフであるGxxPGモチーフが少なくとも2回、好ましくは3回繰り返されており、任意選択的に前記繰返しがリンカーにより分離されており、そのようなリンカーが1つ以上のアミノ酸、例えば、グリシン、アラニン、ロイシン、バリン、イソロイシン又はグルタミンの群から選択される1つ以上のアミノ酸を含んでもよい、合成ペプチドも提供する。好ましい実施形態では、本発明は、細胞上のヒトエラスチン受容体と組み合わされることができ、ヒトエラスチン受容体へのヒトCペプチドの結合により典型的に産生されるものと同じ生理学的活性を開始させることができるペプチドを提供する。本発明はまた、ヒト疾患の治療、例えば、ヒト炎症の治療、並びに/又は1型糖尿病及び/若しくは末期2型糖尿病の治療、より好ましくは、微小血管合併症、好ましくは1型糖尿病及び/又は末期2型糖尿病に伴って見られる微小血管合併症の治療において使用するためのそのような単離された又は合成ペプチドであって、ペプチドが、少なくとも1つのヒトエラスチン受容体結合モチーフGxxPGを有し、少なくとも1つのアミノ酸Qを有し、Gが1文字表記でアミノ酸グリシンを表し、Pがアミノ酸プロリンを表し、Qがアミノ酸グルタミンを表し、xが任意のアミノ酸を表し、ペプチドが5~20アミノ酸からなる、ペプチドを提供する。典型的に、本明細書において提供される好ましいペプチドは、配列番号14、15、16、21、25、175、3、22、23、26、176、24、27、28、29、43、93及び94に列記されるペプチド、並びに配列番号14、15、16、21、25、175、3、22、23、26、176、24、27、28、29、43、93及び94に列記されるペプチドに由来するレトロインベルソバリアントペプチドの群から選択される。
【0015】
好ましい実施形態では、本発明はまた、細胞上のヒトエラスチン受容体と組み合わされることができ、ヒトエラスチン受容体へのヒトCペプチドの結合により典型的に産生されるものと同じ生理学的活性を開始させることができるペプチドを提供する。本発明はまた、ヒト疾患の治療、例えば、ヒト炎症の治療、並びに/又は1型糖尿病及び/若しくは末期2型糖尿病の治療、より好ましくは、微小血管合併症、好ましくは1型糖尿病及び/又は末期2型糖尿病に伴って見られる微小血管合併症の治療において使用するためのそのような単離された又は合成ペプチドであって、ペプチドが、少なくとも1つのヒトエラスチン受容体結合モチーフGxxPGを有し、少なくとも1つのアミノ酸Qを有し、Gが1文字表記でアミノ酸グリシンを表し、Pがアミノ酸プロリンを表し、Qがアミノ酸グルタミンを表し、xが任意のアミノ酸を表し、ペプチドが5~15アミノ酸からなる、ペプチドを提供する。典型的に、本明細書において提供される好ましいペプチドは、配列番号3、22、23、26、176、24、27、28、29、43、93及び94に列記されるペプチド、並びに配列番号3、22、23、26、176、24、27、28、29、43、93及び94に列記されるペプチドに由来するレトロインベルソバリアントペプチドの群から選択される。
【0016】
好ましい実施形態では、本発明はまた、細胞上のヒトエラスチン受容体と組み合わされることができ、ヒトエラスチン受容体へのヒトCペプチドの結合により典型的に産生されるものと同じ生理学的活性を開始させることができるペプチドを提供する。本発明はまた、ヒト疾患の治療、例えば、ヒト炎症の治療、並びに/又は1型糖尿病及び/若しくは末期2型糖尿病の治療、より好ましくは、微小血管合併症、好ましくは1型糖尿病及び/又は末期2型糖尿病に伴って見られる微小血管合併症の治療において使用するためのそのような単離された又は合成ペプチドであって、ペプチドが、少なくとも1つのヒトエラスチン受容体結合モチーフGxxPGを有し、少なくとも1つのアミノ酸Qを有し、Gが1文字表記でアミノ酸グリシンを表し、Pがアミノ酸プロリンを表し、Qがアミノ酸グルタミンを表し、xが任意のアミノ酸を表し、ペプチドが5~12アミノ酸からなる、ペプチドを提供する。典型的に、本明細書において提供される好ましいペプチドは、配列番号24、27、28、29、43、93及び94に列記されるペプチド、並びに配列番号24、27、28、29、43、93及び94に列記されるペプチドに由来するレトロインベルソバリアントペプチドの群から選択される。
【0017】
好ましい実施形態では、本発明は、細胞上のヒトエラスチン受容体と組み合わされることができ、ヒトエラスチン受容体へのヒトCペプチドの結合により典型的に産生されるものと同じ生理学的活性を開始させることができるペプチドを提供する。本発明はまた、ヒト疾患の治療、例えば、ヒト炎症の治療、並びに/又は1型糖尿病及び/若しくは末期2型糖尿病の治療、より好ましくは、微小血管合併症、好ましくは1型糖尿病及び/又は末期2型糖尿病に伴って見られる微小血管合併症の治療において使用するためのそのような単離された又は合成ペプチドであって、ペプチドが、少なくとも1つのヒトエラスチン受容体結合モチーフGxxPGを有し、少なくとも1つのアミノ酸Qを有し、Gが1文字表記でアミノ酸グリシンを表し、Pがアミノ酸プロリンを表し、Qがアミノ酸グルタミンを表し、xが任意のアミノ酸を表し、ペプチドが5~9アミノ酸からなる、ペプチドを提供する。典型的に、本明細書において提供される好ましいペプチドは、配列番号29、43、93及び94に列記されるペプチド、並びに配列番号29、43、93及び94に列記されるペプチドに由来するレトロインベルソバリアントペプチドの群から選択される。
【0018】
別の好ましい実施形態では、本発明は、ヒトCペプチドのCペプチドのモチーフGxxPGを通じたヒトエラスチン受容体への結合を阻害することができる(阻害する)ペプチドを提供し、より好ましい実施形態では、本発明は、ヒトCペプチドの生理学的活性を低減させることができる(低減させる)ペプチドを提供する。特に、本発明は、ヒト疾患の治療、例えば、ヒトインスリン抵抗性の治療及び/又はヒト脂質異常症の治療、及び/又はヒト高血圧、及び/又はヒト大血管(macrovasculat)合併症、好ましくは、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、末梢動脈疾患及び/又は新規発症2型糖尿病において見られる合併症の治療において使用するための、少なくともモチーフQDEA(配列番号31)を有する単離された又は合成ペプチドであって、ペプチドが、ヒトエラスチン受容体へのヒトCペプチドの結合を阻害し、ヒトCペプチドの生理学的活性を低減させ、ペプチドが4~40アミノ酸からなる、ペプチドを提供する。典型的に、本明細書において提供される好ましいペプチドは、配列番号99、100、101、131、102、103、104、105、31に列記されるペプチド及びこれらの機能的断片又はバリアント並びに配列番号99、100、101、131、102、103、104、105、31に列記されるペプチドに由来するレトロインベルソバリアントペプチド及びこれらの機能的断片又はバリアントの群から選択される。機能的断片又はバリアントは、典型的に、ヒトCペプチドのCペプチドのモチーフGxxPGを通じたヒトエラスチン受容体への結合を阻害するペプチドの能力を試験する本明細書において提供される走化性アッセイにおいて見出され、そのようなペプチドはヒトCペプチドの走化活性を低減させることができる(低減させる)。
【0019】
別の実施形態では、本発明はまた、ヒトCペプチドのCペプチドのモチーフGxxPGを通じたヒトエラスチン受容体への結合を阻害することができる(阻害する)ペプチドを提供し、より好ましい実施形態では、本発明は、ヒトCペプチドの生理学的活性を低減させることができる(低減させる)ペプチドを提供する。特に、本発明は、ヒト疾患の治療、例えば、ヒトインスリン抵抗性の治療及び/又はヒト脂質異常症の治療、及び/又はヒト高血圧、及び/又はヒト大血管(macrovasculat)合併症、好ましくは、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、末梢動脈疾患及び/又は新規発症2型糖尿病において見られる合併症の治療において使用するための、少なくともモチーフQDEA(配列番号31)を有する単離された又は合成ペプチドであって、ペプチドが、ヒトエラスチン受容体へのヒトCペプチドの結合を阻害し、ヒトCペプチドの生理学的活性を低減させ、ペプチドが4~20アミノ酸からなる、ペプチドを提供する。典型的に、本明細書において提供される好ましいペプチドは、配列番号131、102、103、104、105、31に列記されるペプチド及びこれらの機能的断片又はバリアント、並びに配列番号131、102、103、104、105、31に列記されるペプチドに由来するレトロインベルソバリアントペプチド及びこれらの機能的断片又はバリアントの群から選択される。
【0020】
別の実施形態では、本発明はまた、ヒトCペプチドのCペプチドのモチーフGxxPGを通じたヒトエラスチン受容体への結合を阻害することができる(阻害する)ペプチドを提供し、より好ましい実施形態では、本発明は、ヒトCペプチドの生理学的活性を低減させることができる(低減させる)ペプチドを提供する。特に、本発明は、ヒト疾患の治療、例えば、ヒトインスリン抵抗性の治療及び/又はヒト脂質異常症の治療、及び/又はヒト高血圧、及び/又はヒト大血管(macrovasculat)合併症、好ましくは、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、末梢動脈疾患及び/又は新規発症2型糖尿病において見られる合併症の治療において使用するための、少なくともモチーフQDEA(配列番号31)を有する単離された又は合成ペプチドであって、ペプチドが、ヒトエラスチン受容体へのヒトCペプチドの結合を阻害し、ヒトCペプチドの生理学的活性を低減させ、ペプチドが4~15アミノ酸からなる、ペプチドを提供する。典型的に、本明細書において提供される好ましいペプチドは、配列番号103、104、105、31に列記されるペプチド及びこれらの機能的断片又はバリアント、並びに配列番号103、104、105、31に列記されるペプチドに由来するレトロインベルソバリアントペプチド及びこれらの機能的断片又はバリアントの群から選択される。
【0021】
別の実施形態では、本発明はまた、ヒトCペプチドのCペプチドのモチーフGxxPGを通じたヒトエラスチン受容体への結合を阻害することができる(阻害する)ペプチドを提供し、より好ましい実施形態では、本発明は、ヒトCペプチドの生理学的活性を低減させることができる(低減させる)ペプチドを提供する。特に、本発明は、ヒト疾患の治療、例えば、ヒトインスリン抵抗性の治療及び/又はヒト脂質異常症の治療、及び/又はヒト高血圧、及び/又はヒト大血管(macrovasculat)合併症、好ましくは、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、末梢動脈疾患及び/又は新規発症2型糖尿病において見られる合併症の治療において使用するための、少なくともモチーフQDEA(配列番号31)を有する単離された又は合成ペプチドであって、ペプチドが、ヒトエラスチン受容体へのヒトCペプチドの結合を阻害し、ヒトCペプチドの生理学的活性を低減させ、ペプチドが4~9アミノ酸からなる、ペプチドを提供する。典型的に、本明細書において提供される好ましいペプチドは、配列番号105、31に列記されるペプチド及びこれらの機能的断片又はバリアント、並びに配列番号105、31に列記されるペプチドに由来するレトロインベルソバリアントペプチド及びこれらの機能的断片又はバリアントの群から選択される。
【0022】
本発明は、ヒト疾患の治療のためのヒトエラスチン受容体とのヒトCペプチドの相互作用のペプチドアゴニスト及び/又はペプチドアンタゴニストの使用に関し、それに限定される。それをもって、本発明は、ヒト疾患におけるペプチドの使用の3つの分野を提供する。
【0023】
薬物:抗炎症性ペプチドと称される本発明の第1の分野は、ヒト炎症性疾患に対抗する(制御し、低減させ又は治療する)ための薬物として使用するための任意のペプチド又はヒト炎症性疾患に対抗するための薬物の任意のペプチド成分又はヒト炎症性疾患に対抗するための薬物の調製において使用される任意のペプチドであって(この記載における対抗するは、一般に、治療する又は治療において使用するとしても同定される(indentified))、ペプチドが、少なくとも1つのヒトエラスチン受容体結合モチーフGxxP、又はそれと機能的に同等のxGxPを有し、少なくとも1つのアミノ酸Qを有し、及びGが1文字表記でアミノ酸グリシンを表し、Pがアミノ酸プロリンを表し、Qがアミノ酸グルタミンを表し、xが任意のアミノ酸を表すものを意味する。一部の実施形態では、前記Qは、機能的に同等のL(ロイシン)により置換されていてもよい。好ましくは、この第1の分野の前記ペプチドは、少なくとも1つのヒトエラスチン受容体結合モチーフxGxxPGを有する。そのようなペプチドは、インスリンなどの抗糖尿病性組成物と共に与えられた時に、炎症状態、例えば、急性腎損傷、及び急性の全身性炎症状態、例えば、血管損傷に繋がり、多くの場合に(多臓器の)臓器不全により悪化する敗血症若しくは全身性炎症応答症候群(SIRS)、又は糖尿病を伴う炎症状態の治療において有用である。
【0024】
薬物:Cペプチドアゴニストと称される本発明の第2の分野は、ヒト微小血管合併症を治療するための薬剤として使用するための任意のアゴニストペプチド又はヒト微小血管合併症を治療するための薬剤の任意のアゴニストペプチド成分又はヒト微小血管合併症を治療するための薬剤の調製において使用される任意のアゴニストペプチドであって、前記ペプチドが、少なくとも1つのヒトエラスチン受容体結合モチーフGxxP、又はそれと機能的に同等のxGxPを有し、少なくとも1つのアミノ酸Qを有し、Gがアミノ酸グリシンを表し、Pがアミノ酸プロリンを表し、Qがアミノ酸グルタミンを表し、xが任意のアミノ酸を表し、及び細胞上のヒトエラスチン受容体と組み合わされることができ、ヒトエラスチン受容体へのヒトCペプチドの結合により典型的に産生されるものと同じ生理学的活性を開始させることができるものを意味する。一部の実施形態では、前記Qは、機能的に同等のL(ロイシン)により置換されていてもよい。好ましくは、この第2の分野の前記ペプチドは、少なくとも1つのヒトエラスチン受容体結合モチーフxGxxPGを有する。そのようなペプチドは、インスリンなどの抗糖尿病性組成物と共に与えられた時に、炎症状態、例えば、急性腎損傷、及び急性の全身性炎症状態、例えば、血管損傷に繋がり、多くの場合に(多臓器の)臓器不全により悪化する敗血症若しくは全身性炎症応答症候群(SIRS)、又は糖尿病を伴う炎症状態の治療において有用である。
【0025】
薬物:Cペプチドアンタゴニストと称される本発明の第3の分野は、ヒトインスリン抵抗性、脂質異常症、高血圧若しくは大血管性合併症を治療するための薬剤として使用するための任意のアンタゴニストペプチド又はヒトインスリン抵抗性、脂質異常症、高血圧若しくは大血管性合併症を治療するための薬剤の任意のアンタゴニストペプチド成分又はヒトインスリン抵抗性、脂質異常症、高血圧若しくは大血管性合併症を治療するための薬剤の調製において使用される任意のアンタゴニストペプチドであって、前記アンタゴニストペプチドが、ヒトCペプチドのそのモチーフGxxPを通じたヒトエラスチン受容体への結合を阻害し、ヒトCペプチドの生理学的活性を低減させるものを意味する。
【0026】
本明細書において、PGドメインを有するペプチド又はペプチド断片は、少なくとも1つのxGxP、GxxP、GxxPG又はxGxPGモチーフを有するペプチドとして特に定義され、Gはグリシンであり、Pはプロリンであり、xは任意のアミノ酸であり、Pの後のアミノ酸は好ましくはVIII型ベータターンを可能とするものであり、該条件はPのC末端側にGが後続する場合に満たされる。本発明は、疾患を予防又は治療する方法であって、ヒトにエラスチン受容体をアゴナイズすることができるペプチドを提供することを含む、方法を提供する。本明細書において提供されるそのようなペプチドは、好ましくは、Cペプチドの断片及びその機能的同等物の群から選択される。
【0027】
第1の実施形態では、本発明は、好ましくは、それを必要とするヒト対象の、特に、1型糖尿病を患っていると診断されたヒト対象における、最も好ましくは、前記対象がインスリンを用いた治療もされている場合の、ヒト炎症の治療において使用するためのペプチドであって、前記ペプチドが、好ましくは単離された及び/又は合成の、好ましくは非ペグ化の、本出願の図1に列記される、配列番号17(EAEDLQVGQVELGGGPGAGSLQPL)のヒト1~24、配列番号20(DLQVGQVELGGGPGAGSLQPL)のヒト4~24、配列番号175(VGQVELGGGPGAGSLQPL)のヒト7~24、配列番号176(ELGGGPGAGSLQPL)のヒト11~24、配列番号10(DLQVGQVELGGGPGAGSLQPLALEGSLQ)のヒト4~31、配列番号13(GQVELGGGPGAGSLQPLALEGSLQ)のヒト8~31及び配列番号14(LGGGPGAGSLQPLALEGSLQ)のヒト12~31のCペプチド断片の群から選択され、前記ペプチドが配列番号38(GGGP)のGxxPモチーフを示し、及びラットにおいて30mMのグルコース誘導性の血管機能障害の有意な正常化(%)を示す、ペプチドを提供する。
【0028】
また、本明細書において提供される、本出願の図1に列記されるペプチドに機能的に同等な、特に、1型糖尿病を患っていると診断されたヒト対象における、最も好ましくは、前記対象がインスリンを用いた治療もされている場合の、ヒト炎症の治療において使用するための、配列番号38(GGGP)のモチーフを有するペプチドは、ヒトCペプチド配列から誘導可能な配列番号10(DLQVGQVELGGGPGAGSLQPLALEGSLQ)の合成の及び単離されたペプチドである。また、本明細書において提供される、本出願の図1に列記されるペプチドに機能的に同等な、特に、1型糖尿病を患っていると診断されたヒト対象における、最も好ましくは、前記対象がインスリンを用いた治療もされている場合の、ヒト炎症の治療において使用するための、配列番号38(GGGP)のモチーフを有するペプチドは、ヒトCペプチド配列から得られ得る配列番号11(LQVGQVELGGGPGAGSLQPLALEGSLQ)の合成の及び単離されたペプチドである。また、本明細書において提供される、本出願の図1に列記されるペプチドに機能的に同等な、特に、1型糖尿病を患っていると診断されたヒト対象における、最も好ましくは、前記対象がインスリンを用いた治療もされている場合の、最も好ましくは、前記対象がインスリンを用いた治療もされている場合の、ヒト炎症の治療において使用するための、配列番号38(GGGP)のモチーフを有するペプチドは、ヒトCペプチド配列から誘導可能な配列番号12(VGQVELGGGPGAGSLQPLALEGSLQ)の合成の及び単離されたペプチドである。また、本明細書において提供される、本出願の図1に列記されるペプチドに機能的に同等な、特に、1型糖尿病を患っていると診断されたヒト対象における、最も好ましくは、前記対象がインスリンを用いた治療もされている場合の、ヒト炎症の治療において使用するための、配列番号38(GGGP)のモチーフを有するペプチドは、ヒトCペプチド配列から誘導可能な配列番号13(GQVELGGGPGAGSLQPLALEGSLQ)の合成の及び単離されたペプチドである。また、本明細書において提供される、本出願の図1に列記されるペプチドに機能的に同等な、特に、1型糖尿病を患っていると診断されたヒト対象における、最も好ましくは、前記対象がインスリンを用いた治療もされている場合の、ヒト炎症の治療において使用するための、配列番号38(GGGP)のモチーフを有するペプチドは、ヒトCペプチド配列から誘導可能な配列番号14(LGGGPGAGSLQPLALEGSLQ)の合成の及び単離されたペプチドである。また、本明細書において提供される、本出願の図1に列記されるペプチドに機能的に同等な、特に、1型糖尿病を患っていると診断されたヒト対象における、最も好ましくは、前記対象がインスリンを用いた治療もされている場合の、ヒト炎症の治療において使用するための、配列番号38(GGGP)のモチーフを有するペプチドは、ヒトCペプチド配列から誘導可能な配列番号15(VGQVELGGGPGAGSLQPLAL)の合成の及び単離されたペプチドである。また、本明細書において提供される、本出願の図1に列記されるペプチドに機能的に同等な、特に、1型糖尿病を患っていると診断されたヒト対象における、最も好ましくは、前記対象がインスリンを用いた治療もされている場合の、ヒト炎症の治療において使用するための、配列番号38(GGGP)のモチーフを有するペプチドは、ヒトCペプチド配列から誘導可能な配列番号16(EVGQVELGGGPGAGSLQPL)の合成の及び単離されたペプチドである。別の実施形態では、本明細書において提供される、本出願の図1に列記されるペプチドに機能的に同等な、特に、1型糖尿病を患っていると診断されたヒト対象における、最も好ましくは、前記対象がインスリンを用いた治療もされている場合の、ヒト炎症の治療において使用するために提供される、配列番号38(GGGP)のモチーフを有するペプチドは、ヒトCペプチド配列から誘導可能な配列番号17(EAEDLQVGQVELGGGPGAGSLQPLAL)の合成の及び単離されたペプチドである。別の実施形態では、本明細書において提供される、本出願の図1に列記されるペプチドに機能的に同等な、特に、1型糖尿病を患っていると診断されたヒト対象における、最も好ましくは、前記対象がインスリンを用いた治療もされている場合の、ヒト炎症の治療において使用するための、配列番号38(GGGP)のモチーフを有するペプチドは、ヒトCペプチド配列から誘導可能な配列番号18(EAEDLQVGQVELGGGPGAGSLQPL)の合成の及び単離されたペプチドである。別の実施形態では、本明細書において提供される、本出願の図1に列記されるペプチドに機能的に同等な、特に、1型糖尿病を患っていると診断されたヒト対象における、最も好ましくは、前記対象がインスリンを用いた治療もされている場合の、ヒト炎症の治療において使用するための、配列番号38(GGGP)のモチーフを有するペプチドは、ヒトCペプチド配列から誘導可能な配列番号19(LQVGQVELGGGPGAGSLQPLAL)の合成の及び単離されたペプチドである。別の実施形態では、本明細書において提供される、本出願の図1に列記されるペプチドに機能的に同等な、特に、1型糖尿病を患っていると診断されたヒト対象における、最も好ましくは、前記対象がインスリンを用いた治療もされている場合の、ヒト炎症の治療において使用するための、配列番号38(GGGP)のモチーフを有するペプチドは、ヒトCペプチド配列から誘導可能な配列番号20(DLQVGQVELGGGPGAGSLQPL)の合成の及び単離されたペプチドである。別の実施形態では、本明細書において提供される、本出願の図1に列記されるペプチドに機能的に同等な、特に、1型糖尿病を患っていると診断されたヒト対象における、最も好ましくは、前記対象がインスリンを用いた治療もされている場合の、ヒト炎症の治療において使用するために提供される、配列番号38(GGGP)のモチーフを有するペプチドは、ヒトCペプチド配列から誘導可能な配列番号21(LQVGQVELGGGPGAGSLQPL)の合成の及び単離されたペプチドである。別の実施形態では、本明細書において提供される、本出願の図1に列記されるペプチドに機能的に同等な、特に、1型糖尿病を患っていると診断されたヒト対象における、最も好ましくは、前記対象がインスリンを用いた治療もされている場合の、ヒト炎症の治療において使用するための、配列番号38(GGGP)のモチーフを有するペプチドは、ヒトCペプチド配列から誘導可能な配列番号22(LGGGPGAGSLQPL)の合成の及び単離されたペプチドである。別の実施形態では、本明細書において提供される、本出願の図1に列記されるペプチドに機能的に同等な、特に、1型糖尿病を患っていると診断されたヒト対象における、最も好ましくは、前記対象がインスリンを用いた治療もされている場合の、ヒト炎症の治療において使用するための、配列番号38(GGGP)のモチーフを有するペプチドは、ヒトCペプチド配列から誘導可能な配列番号23(VGQVELGGGPGAGSL)の合成の及び単離されたペプチドである。別の実施形態では、本明細書において提供される、本出願の図1に列記されるペプチドに機能的に同等な、特に、1型糖尿病を患っていると診断されたヒト対象における、最も好ましくは、前記対象がインスリンを用いた治療もされている場合の、ヒト炎症の治療において使用するための、配列番号38(GGGP)のモチーフを有するペプチドは、ヒトCペプチド配列から誘導可能な配列番号24(GGGPGAGSLQ)の合成の及び単離されたペプチドである。
【0029】
本発明はまた、炎症及び組織修復を調整する特定の調節エレメントにおいて本明細書において同定される調節モデルエレメントペプチド又はその断片として本明細書において同定される、単離された及び/又は合成の、好ましくは非ペグ化の、ペプチドを提供する。本発明は、単離された及び/又は合成ペプチドであって、前記調節モデルエレメントペプチド又は断片が、好ましくは、xGxxPG又はxxGxPGモチーフを有し、好ましくは、例えば、本明細書の表3において同定されるタンパク質から誘導され得る、ペプチドを提供する。好ましい実施形態では、モデルエレメントは、それが少なくとも1つのN末端及び少なくとも1つのC末端の塩基性アミノ酸残基R(アルギニン)又はK(リシン)により隣接されている時に認識される。2つの隣接する塩基性残基を有しないエレメント内からのより小さい断片もまた炎症及び組織修復の調整において有用である。一実施形態では、本明細書において提供されるヒト炎症の治療において使用するための調節モデルエレメントペプチド断片は、ヒトCOL6A3配列(UniprotデータベースにおいてCOL6A3は識別記号P12111の下で公知であり、配列番号25(FRAAPLQGMLPGLLAPLRT)の配列は、おおよそ605~626の位置からのアイソフォーム1における配列中に見出される)から誘導可能な配列番号25(FRAAPLQGMLPGLLAPLRT)の合成の及び単離されたペプチドである。前記ペプチドが、及びその断片も同様に、ヒト炎症の治療及び/又は組織修復において有用であることが本明細書において提供される。別の実施形態では、本明細書において提供されるヒト炎症の治療及び/又は組織修復において使用するための調節モデルエレメントペプチド断片は、ヒトCOL6A3配列から誘導可能な配列番号26(AAPLQGMLPGLLAPL)の合成の及び単離されたペプチドである。別の実施形態では、本明細書において提供されるヒト炎症の治療及び/又は組織修復において使用するための調節モデルエレメントペプチド断片は、ヒトCOL6A3配列から誘導可能な配列番号27(LQGMLPGLLAPL)の合成の及び単離されたペプチドである。別の実施形態では、本明細書において提供されるヒト炎症の治療及び/又は組織修復において使用するための調節モデルエレメントペプチド断片は、ヒトCOL6A3配列から誘導可能な配列番号28(LQGMLPGLLA)の合成の及び単離されたペプチドである。別の実施形態では、本明細書において提供されるヒト炎症の治療及び/又は組織修復において使用するための調節モデルエレメントペプチド断片は、ヒトCOL6A3配列から誘導可能な配列番号29(LQGMLPG)の合成の及び単離されたペプチドである。別の実施形態では、本明細書において提供されるヒト炎症の治療及び/又は組織修復において使用するための調節モデルエレメントペプチド断片は、ヒトCOL6A3配列から誘導可能な配列番号30(GMLPGLLA)の合成の及び単離されたペプチドである。
【0030】
別の実施形態では、本明細書において提供されるヒト炎症の治療及び/又は組織修復において使用するための調節モデルエレメントペプチド断片は、ヒトヒトプロカルシトニン配列から誘導可能な配列番号177(CGNLSTCMLGTYTQDFNKFHTFPQTAIGVGAPG)の合成の及び単離されたペプチドである。
【0031】
別の実施形態では、本明細書において提供されるヒト炎症の治療及び/又は組織修復において使用するための調節モデルエレメントペプチド断片は、ヒトヒトプロカルシトニン配列から誘導可能な配列番号178(MLGTYTQDFNKFHTFPQTAIGVGAPG)の合成の及び単離されたペプチドである。
【0032】
別の実施形態では、本明細書において提供されるヒト炎症の治療及び/又は組織修復において使用するための調節モデルエレメントペプチド断片は、ヒトヒトプロカルシトニン配列から誘導可能な配列番号179(FNKFHTFPQTAIGVGAPG)の合成の及び単離されたペプチドである。別の実施形態では、本明細書において提供されるヒト炎症の治療及び/又は組織修復において使用するための調節モデルエレメントペプチド断片は、ヒトヒトプロカルシトニン配列から誘導可能な配列番号180(FPQTAIGVGAPG)の合成の及び単離されたペプチドである。別の実施形態では、本明細書において提供されるヒト炎症の治療及び/又は組織修復において使用するための調節モデルエレメントペプチド断片は、ヒトヒトプロカルシトニン配列から誘導可能な配列番号181(AIGVGAPG)の合成の及び単離されたペプチドである。
【0033】
別の実施形態では、本明細書において提供されるヒト炎症の治療及び/又は組織修復において使用するための調節モデルエレメントペプチド断片は、ヒトNTproBNP配列から誘導可能な配列番号182(SHPLGSPGSASDLETSGLQEQ)の合成の及び単離されたペプチドである。別の実施形態では、本明細書において提供されるヒト炎症の治療及び/又は組織修復において使用するための調節モデルエレメントペプチド断片は、ヒトNTproBNP配列から誘導可能な配列番号183(PLGSPGSASDLETSGLQEQ)の合成の及び単離されたペプチドである。別の実施形態では、本明細書において提供されるヒト炎症の治療及び/又は組織修復において使用するための調節モデルエレメントペプチド断片は、ヒトNTproBNP配列から誘導可能な配列番号184(PLGSPGSASDLETS)の合成の及び単離されたペプチドである。別の実施形態では、本明細書において提供されるヒト炎症の治療及び/又は組織修復において使用するための調節モデルエレメントペプチド断片は、ヒトNTproBNP配列から誘導可能な配列番号185(PLGSPGSAS)の合成の及び単離されたペプチドである。別の実施形態では、本明細書において提供されるヒト炎症の治療及び/又は組織修復において使用するための調節モデルエレメントペプチド断片は、ヒトNTproBNP配列から誘導可能な配列番号186(PLGSPG)の合成の及び単離されたペプチドである。別の実施形態では、本明細書において提供されるヒト炎症の治療及び/又は組織修復において使用するための調節モデルエレメントペプチド断片は、ヒトPOMC配列から誘導可能な配列番号187(EDVSAGEDCGPLPEGGPEPRSDGAKPGPREG)の合成の及び単離されたペプチドである。別の実施形態では、本明細書において提供されるヒト炎症の治療及び/又は組織修復において使用するための調節モデルエレメントペプチド断片は、ヒトPOMC配列から誘導可能な配列番号188(GEDCGPLPEGGPEPRSDGAKPGPREG)の合成の及び単離されたペプチドである。別の実施形態では、本明細書において提供されるヒト炎症の治療及び/又は組織修復において使用するための調節モデルエレメントペプチド断片は、ヒトPOMC配列から誘導可能な配列番号189(PLPEGGPEPRSDGAKPGPREG)の合成の及び単離されたペプチドである。別の実施形態では、本明細書において提供されるヒト炎症の治療及び/又は組織修復において使用するための調節モデルエレメントペプチド断片は、ヒトPOMC配列から誘導可能な配列番号190(PLPEGGPEPRSDGAKPG)の合成の及び単離されたペプチドである。別の実施形態では、本明細書において提供されるヒト炎症の治療及び/又は組織修復において使用するための調節モデルエレメントペプチド断片は、ヒトPOMC配列から誘導可能な配列番号191(SDGAKPG)の合成の及び単離されたペプチドである。
【0034】
別の実施形態では、本明細書において提供されるヒト炎症の治療及び/又は組織修復において使用するための調節モデルエレメントペプチド断片は、ヒトパイリン配列から誘導可能な配列番号192(RRNASSAGRLQGLAGGAPGQKECR)の合成の及び単離されたペプチドである。前記ペプチドが、及びその断片も同様に、ヒト炎症の治療及び/又は組織修復において有用であることが本明細書において提供される。別の実施形態では、本明細書において提供されるヒト炎症の治療及び/又は組織修復において使用するための調節モデルエレメントペプチド断片は、ヒトパイリン配列から誘導可能な配列番号193(RLQGLAGGAPGQKECR)の合成の及び単離されたペプチドである。別の実施形態では、本明細書において提供されるヒト炎症の治療及び/又は組織修復において使用するための調節モデルエレメントペプチド断片は、ヒトヒトパイリン(マレノストリン)配列から誘導可能な配列番号194(RRNASSAGRLQGLAGGAPGQ)の合成の及び単離されたペプチドである。
【0035】
別の実施形態では、本明細書において提供されるヒト炎症の治療及び/又は組織修復において使用するための調節モデルエレメントペプチド断片は、ヒトパイリン配列から誘導可能な配列番号195(LQGLAGGAPGQ)の合成の及び単離されたペプチドである。別の実施形態では、本明細書において提供されるヒト炎症の治療及び/又は組織修復において使用するための調節モデルエレメントペプチド断片は、ヒトパイリン配列から誘導可能な配列番号196(AGGAPG)の合成の及び単離されたペプチドである。本発明はまた、4~40アミノ酸、好ましくは4~20、より好ましくは4~15、より好ましくは4~12、最も好ましくは4~9アミノ酸からなるペプチドであって、少なくとも1つのPGドメイン、好ましくはxGxP又はGxxP、GxxPG又はxGxPGモチーフを含むペプチドのヒトにおける使用を提供する。
【0036】
本発明はまた、疾患を予防又は治療する方法であって、Cペプチド及び/又はエラスチンペプチドの断片のエラスチン受容体への結合をアンタゴナイズし、遮断し、阻害し又は予防することができるペプチドをヒトに提供することを含む、方法を提供する。本発明はまた、前記ペプチド又は断片が、エラスチン受容体への結合を可能とする結合部位を含む、方法を提供する。本発明はまた、前記結合部位が、VIII型ベータターンを可能とするアミノ酸配列モチーフGxxPを含む、方法を提供する。本発明はまた、前記結合部位がアミノ酸配列モチーフxGxPG又はGxxPGを含む、方法を提供する。本発明はまた、前記結合部位がアミノ酸配列モチーフxGxP又はGxxPを含み、前記PがVIII型ベータターンを可能とする、方法を提供する。本発明はまた、前記結合部位がアミノ酸配列モチーフGxxPGを含む、方法を提供する。
【0037】
本発明はまた、前記ペプチド断片が、エラスチン受容体への結合を可能とする結合部位を含む、方法を提供する。本発明はまた、前記結合部位が、VIII型ベータターンを可能とするアミノ酸配列モチーフxGxP又はGxxPを含む、方法を提供する。
【0038】
本発明はまた、前記結合部位がアミノ酸配列モチーフxGxPG又はGxxPGを含む、方法を提供する。
【0039】
本発明はまた、前記ペプチドがCペプチドのエラスチン受容体への結合を調整することを前記モチーフが可能とする組成物のヒトにおける使用を提供する。本発明はまた、4~40アミノ酸、好ましくは4~20、より好ましくは4~15、より好ましくは4~12、最も好ましくは4~9アミノ酸からなるペプチドを含む医薬組成物のヒトにおける使用であって、ペプチドが配列番号31(QDEA)のモチーフを含む、使用を提供する。
【0040】
本発明はまた、ヒトの疾患を予防又は治療する方法であって、Cペプチド及び/又はエラスチンペプチドの断片の前記ヒトのエラスチン受容体への結合をアンタゴナイズし、遮断し、阻害し又は予防することができるペプチドを前記ヒトに提供することを含む、方法を提供する。ヒトの疾患を予防又は治療する方法の一実施形態において。前記ペプチド又は断片が、エラスチン受容体への結合を可能とするアミノ酸モチーフを含むことが最も好ましい。
【0041】
本発明はまた、ヒトの疾患を予防又は治療する方法であって、前記ヒトのエラスチン受容体をアゴナイズすることができるペプチドを前記ヒトに提供することを含む、方法を提供する。
【0042】
本発明はまた、4~40アミノ酸、好ましくは4~20、より好ましくは4~15、より好ましくは4~12、最も好ましくは4~9アミノ酸からなるペプチドを含む組成物、好ましくは医薬組成物又は医薬のヒトにおける使用であって、ペプチドが少なくとも1つのxGxP、GxxP、GxxPG又はxGxPGモチーフを含み、前記モチーフが、好ましくは、前記ペプチドがCペプチドのエラスチン受容体への結合を調整することを可能とする、使用を提供する。好ましい実施形態では、前記組成物は、糖尿病の治療のため、好ましくは、内因性Cペプチドレベルが低い糖尿病、例えば、ヒトにおける1型糖尿病又は末期2型糖尿病を伴って見られる微小血管障害の治療又は予防のために調製される(prepeared)。
【0043】
本発明はまた、医薬、好ましくは、内因性Cペプチドレベルが低い糖尿病、例えば、1型糖尿病又は末期2型糖尿病を伴って見られる微小血管障害の治療又は予防のための医薬の製造のための、4~40アミノ酸、好ましくは4~20、より好ましくは4~15、より好ましくは4~12、最も好ましくは4~9アミノ酸からなるペプチドの使用であって、ペプチドが少なくとも1つのxGxP、GxxP、GxxPG又はxGxPGモチーフを含み、前記モチーフが、好ましくは、前記ペプチドがCペプチドのエラスチン受容体への結合を調整することを可能とする、使用を提供する。
【0044】
本発明はまた、好ましくは、本明細書で定義されるメタボリックシンドロームの状態の治療又は予防のための、好ましくは、心臓血管疾患又は大血管疾患又はアテローム性動脈硬化症などのアテローム性疾患又は動脈硬化症の治療又は予防のための、4~40アミノ酸、好ましくは4~20、より好ましくは4~15、より好ましくは4~12、最も好ましくは4~9アミノ酸からなるペプチドを含む組成物、好ましくは医薬組成物又は医薬のヒトにおける使用であって、ペプチドが配列番号31(QDEA)のモチーフを含み、好ましくは、前記モチーフが、前記ペプチドがCペプチドのエラスチン受容体への結合を調整することを可能とする、使用を提供する。
【0045】
本発明はまた、本明細書で定義されるメタボリックシンドロームの状態の治療又は予防のための、好ましくは、心臓血管疾患又は大血管疾患又はアテローム性動脈硬化症などのアテローム性疾患又は動脈硬化症の治療又は予防のための、4~40アミノ酸、好ましくは4~20、より好ましくは4~15、より好ましくは4~12、最も好ましくは4~9アミノ酸からなるペプチドのヒトにおける使用であって、ペプチドが配列番号31(QDEA)のモチーフを含み、好ましくは、前記モチーフが、前記ペプチドがCペプチドのエラスチン受容体への結合を調整することを可能とする、使用を提供する。
【0046】
本発明は、広く知られたインスリンと共に1:1の比で産生される小タンパク質であるCペプチドによる、血管エラスチン修復に関与するタンパク質であるエラスチン受容体のこれまで見過ごされてきたロック・アンド・キー(lock-and-key)活性化により、メタボリックシンドロームにおけるいわゆる炎症が増大することを示す。ヒトエラスチン受容体は、Cペプチド中及びその分解産物(GxxPドメイン断片)中に見出されるアミノ酸のキーモチーフ(GxxPドメイン)により活性化されるロックである。2つの間のこのロック・アンド・キー相互作用はこれまで誰にも発見されておらず、エラスチン受容体(エラスチンペプチド)の通常のキーのみならず、食後に血液中にグルコースが生じるたびにインスリンと共に産生されるペプチドであるCペプチドがエラスチン受容体とロック・アンド・キー様式で相互作用するという発見を活用して、メタボリックシンドロームの治療のための新規のペプチドの開発における新規の進出が提供される。要約すると、本発明は、過剰な摂食が直接的に、メタボリックシンドロームのロックを解除するキーとしてCペプチドのスイッチを入れるという洞察を提供する。毎日の過食は、血中のCペプチドレベル(及びGxxPモチーフを含有するその切断断片)の毎日の増加を結果としてもたらす。エラスチン受容体は主に、エラスチンを産生する細胞及び血管を修復する細胞(合わせて血管細胞と呼ばれる)上に見出されるので、過剰なCペプチド及びその断片によるエラスチン受容体の毎日のGxxPロック・アンド・キー活性化は、毎日為される血管損傷を結果としてもたらす。血管壁の30%はエラスチンから構成され、炎症細胞は血管に対して為される損傷を絶えず修復するので、エラスチン修復の障害及び血管の炎症の惹起は、帰結なしのままであることはできない。実際、Cペプチド及びGxxP断片による継続したエラスチン受容体活性化は、血管の過剰修復の状態を残し、この状態は、これまで炎症と呼ばれており、それ以外にアテローム性動脈硬化症と呼ばれており、メタボリックシンドロームの全ての状態の基礎となる活性化した炎症性の血管細胞を有する血管壁の肥厚により特徴付けられる状態である。長年にわたり、及び人により異なる徐々に起こる様式で、益々多くの損傷が様々な臓器(例えば、心臓、血管、膵臓、腎臓、脳)の脈管構造の弾性及び強度に対して起こり、これが一般にアテローム性動脈硬化症、高血圧及び脂質異常症に繋がり、最終的に、心臓血管疾患、2型糖尿病、慢性腎不全及び血管性認知症としての様々な発現に繋がる。
【0047】
該発見は、毎日の過剰な摂食が慢性炎症とも呼ばれる血管の過剰修復をどのように結果としてもたらすのかを説明する。簡潔に述べれば、グルコース(糖)を含む食品を消費するたびにインスリン及びしたがってCペプチドが産生され、多過ぎるグルコースを食するたびに益々多くのインスリン、及びしたがって益々多くの(過剰な)Cペプチドが産生される。過剰なエラスチン受容体活性化を引き起こし、炎症を伴う血管の過剰修復に繋がるモチーフGxxPのロックを解除するキーをなおも有するのはこの過剰なCペプチド及びその断片である。毎日の過食は、Cペプチド及びそのGxxP断片の過剰な産生を直接的に引き起こし、それが毎日足し合わさってエラスチン受容体誘導性の過剰修復となり、慢性の過剰修復及びいわゆる炎症、脂質異常症(dislipidaemia)、高血圧に繋がり、最終的にはメタボリックシンドロームにおいて見られる健常でない血管に繋がる。この洞察と共に、該発見は、GxxPロック・アンド・キー相互作用を遮断して、疾患、特に高血圧及びアテローム性動脈硬化症を予防するための製造物(免疫調整ペプチド(immunolatory peptides))を開発及び使用するための道を提供した。また、本発明は、座りがちの生活によるリスクの追加を説明する。簡潔に述べれば、筋肉の燃料として砂糖を含む食品を不健康的に摂取することを使用しないことにより、我々の身体が益々多くのインスリンを産生して肝臓が過剰な糖を脂肪に変化させることが促され、この脂肪が血液中に戻ってきて脂質異常症(dislipidaemia)となり得る。ここでもまた、過剰なCペプチドがインスリンと共に産生されて、ロック・アンド・キーによるエラスチン受容体活性化が発動され、記載した通りに脂肪代謝の調節解除にまで繋がる。第三に、本発明は、喫煙によるリスクの追加も説明する。簡潔に述べれば、喫煙(又は同様に、大気汚染)は、肺の弾性組織に損傷を引き起こし、それにより、エラスチン受容体活性化を引き起こすことが知られているGxxPモチーフ(本明細書においてエラスチンペプチドと呼ばれる)を有するエラスチンの断片を放出させる。したがって、喫煙は、GxxPモチーフを有するより多くのペプチドをそのモチーフを有する既に循環しているCペプチド断片に加える。食事誘導性のCペプチドのこの蓄積及び喫煙誘導性のエラスチンペプチドは、喫煙し及び食事で多過ぎる糖を好き放題に摂っている人々において、悪化した過剰修復及びいわゆる炎症、及びしたがって悪化した心臓血管又は慢性腎臓疾患となるまで積み重なる。本発明は、異なる生活様式条件、過食、座りがちであること及び喫煙により引き起こされる疾患の間の未だに充分に分かっていない共通の原因的関係性を示している。本発明は、GxxPロック・アンド・キー相互作用を遮断して疾患を予防するためのペプチドを提供する。Cペプチド及びエラスチンペプチドの両方、及びそれらの分解産物又は断片は、血中及び尿中で比較的安定である。インスリンは肝臓中で迅速に分解されて血液から消失するが、Cペプチド(及びGxxPモチーフを有する切断断片)の他にエラスチンペプチドは、血中ではるかに長い寿命を有し、腎臓によってのみ排出される。したがって、食事をして新しいCペプチドと共に新しいインスリンを産生するにせよ、喫煙を続けて肺のより多くのエラスチン分解を生じさせるにせよ、Cペプチド及びエラスチンペプチドのレベルが増大し、これが時間と共にエラスチン受容体のGxxP媒介性の活性化を介して益々多くの血管損傷を引き起こす。Cペプチド及びエラスチンペプチドの両方のGxxPロック・アンド・キー相互作用は、本明細書において提供されるこれらの診断試験の結果に応じて疾患を予防するために適切なペプチドを用いて遮断され得る。また、本発明は、GxxP-受容体結合を刺激し(アゴニスト)又は阻害する(アンタゴニスト)ペプチドを提供する。アゴニストは、Cペプチドレベルが低い患者、例えば、1型糖尿病又は末期2型糖尿病を患っている人々において使用され得る。アンタゴニストは、Cペプチドレベルが高い患者、特に、メタボリックシンドロームを患っている又は患う傾向がある人々において使用され得る。
【0048】
本発明はまた、メタボリックシンドローム又はインスリン抵抗性又は高血圧又はアテローム性動脈硬化症又は脂質異常症又は2型糖尿病又は関連する代謝障害をそれを患っている又はその治療若しくは予防を必要とするヒトにおいて治療又は予防する方法であって、Cペプチド/エラスチン結合タンパク質相互作用のアンタゴニストをヒトに投与することを含む、方法を提供する。さらなる実施形態では、前記方法は、Cペプチドの非存在下でインスリンをヒトに投与することをさらに含む。別の実施形態では、本発明は、メタボリックシンドローム又はインスリン抵抗性又は高血圧又はアテローム性動脈硬化症又は2型糖尿病又は代謝障害をそれを患っている又はその治療若しくは予防を必要とするヒトにおいて治療又は予防する方法であって、Cペプチド/エラスチン結合タンパク質相互作用のアンタゴニストをヒトに投与することを含み、アルファ-エノラーゼのアンタゴニストをヒトに投与することを追加的に含む、方法を提供する。さらなる実施形態では、前記方法は、Cペプチドの非存在下でインスリンをヒトに投与することをさらに含む。さらに別の実施形態では、本発明は、メタボリックシンドローム又はインスリン抵抗性又は高血圧又はアテローム性動脈硬化症又は2型糖尿病又は代謝障害をそれを患っている又はその治療若しくは予防を必要とするヒトにおいて治療又は予防する方法であって、Cペプチド/エラスチン結合タンパク質相互作用のアンタゴニストをヒトに投与することを含み、GPR146のアンタゴニストをヒトに投与することを追加的に含む、方法を提供する。さらなる実施形態では、前記方法は、Cペプチドの非存在下でインスリンをヒトに投与することをさらに含む。
【0049】
本発明はまた、Cペプチドのエラスチン受容体との結合若しくは相互作用を調整する剤としてのCペプチドの単離された断片のヒトにおける使用、及び/又はCペプチドのエラスチン受容体との結合若しくは相互作用を調整する剤としてのエラスチン受容体の単離された断片の使用を提供する。そのようなペプチド(断片又はバリアント)の例は、配列番号32(LGGGPGAG)若しくはその断片、若しくは配列番号33(LAGGPGAG)若しくはその断片を含むか、又は配列番号34(LGGGPG)若しくは配列番号35(LAGGPG)若しくはその断片を有するペプチドなどのペプチドを含み、好ましくは、ペプチド又は断片は、配列番号36(LGGGP)、配列番号37(LAGGP)、配列番号38(GGGP)及び配列番号39(GAGP)、又は配列番号32(LGGGPGAG)若しくはその断片、若しくは配列番号33(LAGGPGAG)若しくはその断片、若しくは配列番号34(LGGGPG)若しくは配列番号35(LAGGPG)若しくはその断片のレトロインベルソバリアントペプチドからなる群から選択され、好ましくは、ペプチド又は断片は、以下にさらに議論されるように、配列番号36(LGGGP)、配列番号37(LAGGP)、配列番号38(GGGP)のレトロインベルソバリアントからなる群から選択される。
【0050】
本発明はまた(als)、ヒト療法において使用するための、好ましくは、ヒト糖尿病及び/若しくはヒト糖尿病合併症の治療において使用するための、又は炎症活性を低減させるための、哺乳動物インスリンCペプチドの断片に由来するペプチドを提供する。前記ペプチド又は断片は、2~9アミノ酸長、より好ましくは3~6アミノ酸長、最も好ましくは4~5アミノ酸長であることが好ましい。本発明はまた(als)、哺乳動物インスリンCペプチドの断片に由来するペプチドであって、該ペプチドが、配列番号32(LGGGPGAG)若しくはその断片、若しくは配列番号33(LAGGPGAG)若しくはその断片を含むか、又は配列番号34(LGGGPG)若しくは配列番号35(LAGGPG)若しくはその断片を有し、好ましくは、ペプチド又は断片が、配列番号36(LGGGP)、配列番号37(LAGGP)、配列番号38(GGGP)及び配列番号39(GAGP)からなる群から選択され、前記ペプチドが、エラスチン受容体型結合と相互作用する又は自然免疫細胞の炎症活性を調整する能力を有する、ペプチドを提供する。前記ペプチド又は断片は、2~9アミノ酸長、より好ましくは3~6アミノ酸長、最も好ましくは4~5アミノ酸長であることが好ましい。本発明はまた(als)、哺乳動物インスリンCペプチドの断片に本質的に相同的な単離された又は合成ペプチドであって、該ペプチドが、配列番号32(LGGGPGAG)若しくはその断片、若しくは配列番号33(LAGGPGAG)若しくはその断片を含むか、又は配列番号34(LGGGPG)若しくは配列番号35(LAGGPG)若しくはその断片を有し、好ましくは、ペプチド又は断片が、配列番号36(LGGGP)、配列番号37(LAGGP)、配列番号38(GGGP)及び配列番号39(GAGP)からなる群から選択され、前記ペプチドが、エラスチン受容体型結合と相互作用する又は自然免疫細胞の炎症活性を調整する能力を有する、ペプチドを提供する。前記ペプチド又は断片は、2~9アミノ酸長、より好ましくは3~6アミノ酸長、最も好ましくは4~5アミノ酸長であることが好ましい。
【0051】
本発明はまた、配列番号32(LGGGPGAG)若しくはその断片、又は配列番号33(LAGGPGAG)若しくはその断片、又は配列番号34(LGGGPG)若しくは配列番号35(LAGGPG)若しくはその断片のレトロインベルソバリアントであって、好ましくは、ペプチド又は断片が、配列番号36(LGGGP)、配列番号37(LAGGP)、配列番号38(GGGP)又は配列番号39(GAGP)のレトロインベルソバリアントからなる群から選択される、レトロインベルソバリアントを提供する。前記レトロインベルソバリアントペプチドは、2~9アミノ酸長、より好ましくは3~6アミノ酸長、最も好ましくは4~5アミノ酸長であることが好ましい。
【0052】
本発明はまた、配列番号32(LGGGPGAG)若しくはその断片、若しくは配列番号33(LAGGPGAG)若しくはその断片を含むか、又は配列番号34(LGGGPG)若しくは配列番号35(LAGGPG)若しくはその断片を有するペプチドのヒトにおける使用であって、好ましくは、ペプチド又は断片が、配列番号36(LGGGP)、配列番号37(LAGGP)、配列番号38(GGGP)及び配列番号39(GAGP)からなる群から選択され、前記ペプチド又は断片が、エラスチン受容体型結合と相互作用する又は自然免疫細胞の炎症活性を調整する能力を有し、使用が、少なくとも1つの薬学的に許容される担体又は賦形剤を伴う、使用を提供する。前記ペプチド又は断片は、2~9アミノ酸長、より好ましくは3~6アミノ酸長、最も好ましくは4~5アミノ酸長であることが好ましい。好ましい実施形態では、前記ペプチドは、糖尿病、糖尿病合併症と戦うため、又は炎症状態を治療するために効果的な少なくとも1つの追加の活性剤、例えば、インスリン又はメトホルミンと組み合わせられ、及び/又は、追加の活性剤は、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト若しくはインターロイキン-1に対する、好ましくはインターロイキン-1-ベータに対する抗体、又はアルファ-エノラーゼのアゴニスト若しくはGPR146のアゴニストである。
【0053】
本発明はまた、配列番号32(LGGGPGAG)若しくはその断片、又は配列番号33(LAGGPGAG)若しくはその断片、又は配列番号34(LGGGPG)若しくは配列番号35(LAGGPG)若しくはその断片のレトロインベルソバリアントペプチドのヒトにおける使用であって、好ましくは、ペプチド又は断片が、配列番号36(LGGGP)、配列番号37(LAGGP)、配列番号38(GGGP)及び配列番号39(GAGP)のレトロインベルソバリアントからなる群から選択され、前記ペプチド又は断片が、エラスチン受容体型結合と相互作用する又は自然免疫細胞の炎症活性を調整する能力を有し、使用が、少なくとも1つの薬学的に許容される担体又は賦形剤を伴う、使用を提供する。前記ペプチド又は断片は、2~9アミノ酸長、より好ましくは3~6アミノ酸長、最も好ましくは4~5アミノ酸長であることが好ましい。好ましい実施形態では、前記ペプチドは、糖尿病、糖尿病合併症と戦うため、又は炎症状態を治療するために効果的な少なくとも1つの追加の活性剤、例えば、インスリン又はメトホルミンと組み合わせられ、及び/又は、追加の活性剤は、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト若しくはインターロイキン-1に対する、好ましくはインターロイキン-1-ベータに対する抗体、又はアルファ-エノラーゼのアゴニスト若しくはGPR146のアゴニストである。
【0054】
本発明はまた、糖尿病、糖尿病合併症を治療するため、又は炎症活性を低減させるため又は糖尿病及び糖尿病合併症を治療するため若しくは炎症活性を低減させるための医薬を調製するための、配列番号32(LGGGPGAG)若しくはその断片、若しくは配列番号33(LAGGPGAG)若しくはその断片を含むか、又は配列番号34(LGGGPG)若しくは配列番号35(LAGGPG)若しくはその断片を有する少なくとも1つのペプチドの使用であって、好ましくは、ペプチド又は断片が、配列番号36(LGGGP)、配列番号37(LAGGP)、配列番号38(GGGP)及び配列番号39(GAGP)又は配列番号32(LGGGPGAG)若しくはその断片、若しくは配列番号33(LAGGPGAG)若しくはその断片、若しくは配列番号34(LGGGPG)若しくは配列番号35(LAGGPG)若しくはその断片のレトロインベルソバリアントからなる群から選択され、好ましくは、ペプチド又は断片が、配列番号36(LGGGP)、配列番号37(LAGGP)、配列番号38(GGGP)又は配列番号39(GAGP)のレトロインベルソバリアントからなる群から選択され、前記ペプチド若しくは断片又はバリアントが、エラスチン受容体型結合と相互作用する又は自然免疫細胞の炎症活性を調整する能力を有し、前記使用が、好ましくは、インスリン又はインターロイキン-1受容体アンタゴニスト又はインターロイキン-1に対する、好ましくはインターロイキン-1-ベータに対する抗体の使用をさらに含む、使用を提供する。好ましい実施形態では、前記医薬は、1型糖尿病、任意選択的に腎症、ニューロパチー若しくは網膜症を伴う1型糖尿病を治療するため又は晩期2型糖尿病合併症の発症を遅らせるために利用され、又は前記医薬は炎症状態を治療するために利用される。
【0055】
本発明はまた、配列番号32(LGGGPGAG)若しくはその断片、若しくは配列番号33(LAGGPGAG)若しくはその断片の、又は配列番号34(LGGGPG)若しくは配列番号35(LAGGPG)若しくはその断片を有する少なくとも1つのペプチドを含有する製造物であって、好ましくは、ペプチド又は断片が、配列番号36(LGGGP)、配列番号37(LAGGP)、配列番号38(GGGP)及び配列番号39(GAGP)からなる群から選択され、前記ペプチド又は断片が、エラスチン受容体型結合と相互作用する又は自然免疫細胞の炎症活性を調整する能力を有し、又は製造物が、配列番号32(LGGGPGAG)若しくはその断片、又は配列番号33(LAGGPGAG)若しくはその断片、又は配列番号34(LGGGPG)若しくは配列番号35(LAGGPG)若しくはその断片のレトロインベルソバリアントを含有し、好ましくは、ペプチド又は断片が、配列番号36(LGGGP)、配列番号37(LAGGP)、配列番号38(GGGP)又は配列番号39(GAGP)のレトロインベルソバリアントからなる群から選択され、製造物が、糖尿病及び/又は糖尿病合併症の治療において同時の、別々の又は逐次的な使用のための組合せ調製物として糖尿病又は糖尿病合併症と戦うために効果的な少なくとも1つの追加の活性剤を含む、製造物を提供する。さらなる実施形態では、前記製造物は、微小血管疾患を治療するために効果的な少なくとも1つの追加の活性剤と共に提供される。本明細書において提供されるそのような製造物は、腎症を治療するため若しくは腎症を治療するための医薬を調製するため、又はニューロパチーを治療するため若しくはニューロパチーを治療するための医薬を調製するため、又は網膜症を治療するため若しくは網膜症を治療するための医薬を調製するために使用され得る。そのような製造物は、追加的に、血糖制御のための剤、好ましくは、インスリン又はインスリンと機能的に同等の抗糖尿病剤と共に使用又は提供されてよく、好ましくは、抗糖尿病剤は、通常のインスリン又はインスリン類似体、例えば、インスリンリスプロ、インスリングルリジン、インスリンアスパルト、インスリンデグルデク、インスリングラルギンを含み、又は抗糖尿病剤は、スルホニル尿素又はメグリチニド又はメトホルミンを含む。
【0056】
本発明はまた、医薬の製造のためのv14ペプチド(配列番号131)又はその誘導体(therof)などのペプチドの使用、又はヒトにおいて疾患を予防若しくは治療するためのそのペプチドの使用であって、前記ペプチドが、Cペプチド及びエラスチンペプチドの断片のエラスチン受容体への結合を遮断し、阻害し又は予防することができる、使用を提供する。好ましい実施形態では、本発明は、そのようなペプチド又はヒトにおいて疾患を予防若しくは治療するためのその使用(therof)であって、前記ペプチドが、Cペプチドの断片のエラスチン受容体への結合を遮断し、阻害し又は予防することができる、ペプチド又はその使用を提供する。
【0057】
本発明はまた、疾患を予防又は治療する方法であって、Cペプチドの断片(好ましくは、配列番号40(GGGPG)の配列を含む断片)及びエラスチンペプチドの断片(好ましくは、配列番号41(VGVAPG)の配列を含む断片)のエラスチン受容体への結合を遮断し、阻害し又は予防することができるペプチドをヒトに提供することを含み、好ましくは、前記ペプチド断片が、エラスチン受容体への結合を可能とする結合部位を含み、好ましくは、前記結合部位が、VIII型ベータターンを可能とするアミノ酸配列モチーフGxxPを含み、好ましくは、前記部位がアミノ酸配列モチーフGxxPGを含む、方法を提供する。
【0058】
本明細書において提供される、好ましくは、前記部位がアミノ酸配列モチーフGxxPGを含む、VIII型ベータターンを可能とするアミノ酸配列モチーフGxxPを有する合成ペプチドは、インスリンなどの抗糖尿病性組成物と共に与えられた時に、炎症状態、例えば、急性腎損傷、及び急性の全身性炎症状態、例えば、血管損傷に繋がり、多くの場合に(多臓器の)臓器不全により悪化する敗血症若しくは全身性炎症応答症候群(SIRS)、又は糖尿病を伴う炎症状態の治療において有用である。本発明のさらなる実施形態では、本明細書において提供される、好ましくは、前記部位がアミノ酸配列モチーフGxxPGを含む、VIII型ベータターンを可能とするアミノ酸配列モチーフGxxPを有するペプチドは、酸耐性カプセル中にカプセル封入される。そのような(薬学的)カプセルは、ヒト及び動物への投与のための経口投薬形態として製薬分野において広く使用されている。本発明によるペプチドが充填されて、そのようなカプセルは、少なくとも1つ、好ましくは2つ又は3つのペンタペプチドモチーフGxxPG又はxGxPG(Gはグリシンであり、Pはプロリンであり、xは任意のアミノ酸である)を付された合成ペプチドの経腸投与のために有用であり、好ましくは、1つの位置xにおける少なくとも1つのアミノ酸は、グリシン、アラニン、ロイシン、バリン又はイソロイシンの群から選択され、前記ペプチドはまた、少なくとも1つのグルタミンを付される。そのような投与は、腸内皮細胞が再生を必要とするクローン病などの疾患を軽減又は治療するであろう。また、そのような投与は、過剰な放射線後に得られる胃腸損傷の治療において有用であろう。本明細書において提供される、好ましくは、前記部位がアミノ酸配列モチーフGxxPGを含む、VIII型ベータターンを可能とするアミノ酸配列モチーフGxxPを有するペプチドはまた、有利には、他の治療用免疫調整剤、例えば、免疫調整ペプチド、例えば、配列番号1(LQGV)、AQG若しくは配列番号2(AQGV)を有するペプチド、又は他の免疫調整剤、例えば、TNF-アルファ、IL-1若しくはIL-6といったサイトカインに対する免疫調整抗体若しくはタンパク質と組み合わせられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】Ido et al.(Science,1997 Jul 25;277(5325):563-6)は、グルコース誘導性の血管機能障害を正常化する配列番号8(GGGPGAG)のヒトCペプチドの中央部分を示す。しかしながら、天然Cペプチドと同等の能力の反転した(レトロ)及び全てDアミノ酸の(エナンチオ又はインベルソ)Cペプチドを発見して、彼らは、配列番号8(GGGPGAG)の活性は受容体により媒介されないと結論付け、それにより、Cペプチドの受容体から遠ざける教示をしている。本明細書は、これとは反対が事実であることを示す。中央部分モチーフGxxP(ヒト及びラットCペプチドにおいて配列番号38(GGGP)、反転したCペプチドにおいて配列番号39(GAGP)及びD型のCペプチドにおいて立体化学的に同等のPGAG)を有する全てのペプチドは血管機能障害を正常化するが、そのモチーフを有しないいずれのペプチドもそれを正常化しない。したがって、配列番号8(GGGPGAG)におけるEBP結合モチーフGxxPは、血管機能障害を正常化するために必要及び充分である。それゆえ、ヒトCペプチドは、ERCを介して血管修復を調整するEBPのリガンドであると考えることができる。100nMのヒトCペプチドの効果の平均パーセントとして有効性を表す。30mMのグルコースについて有意に異なる:*P<0.05。 ペプチド中のGxxPモチーフは、VIII型ベータターンコンファメーション(confirmation)への接近を可能とする時にエラスチン受容体に結合し、この条件は、モチーフxGxxPGにより常に満たされると考えられる。 GxxPモチーフ(配列番号38(GGGP)又は配列番号39(GAGP)、又は全てL体の配列番号39(GAGP)と体積測定的に同等の全てD体のPGAG)を有する全てのペプチドは血管機能障害の有意な正常化を示すが、該モチーフを有しないいずれのペプチドも有意な効果を示さず、エラスチン受容体結合モチーフGxxPがCペプチドの生物学的活性を誘発するために必要及び充分であることを説明する。図はIdo Y,et al.Prevention of vascular and neural dysfunction in diabetic rats by C-peptide.Science 1997;277:563-66より採録した。
図2】GxxP過剰に対するGxxPペプチドの欠乏の病理学的血管効果の要約した説明。
図3】Vina/Autodock及びPyMOLを使用して様々なGxxPヘキサペプチドをエラスチン結合タンパク質(EBP)のペプチド結合部位にドッキングした(1、2、3)。各ペプチドの結合コンフォメーションを上位20のスコアリングポーズから選択した。EBPの相同性モデル(4)をドッキング手順における受容体として使用した。試験したペプチドは以下の通りであった: 配列番号41(VGVAPG)(EBPのプロトタイプGxxPペプチドリガンド(4)) 配列番号34(LGGGPG)(ヒトCペプチド(5)から選択) 配列番号43(QGQLPG)(本明細書において提供される免疫調整ペプチド) 配列番号44(PGAYPG)(ヒトガレクチン-3(6)から選択) 配列番号45(QGVLPA)(ヒトベータ-hCGのループ2(7)から選択) 参考文献: 1 Trott,O & Olson,AJ(2010) AutoDock Vina:improving the speed and accuracy of docking with a new scoring function,efficient optimization and multithreading,J Comp Chem 31:455-461. 2 Seeliger,D & de Groot,BL(2010) Ligand docking and binding site analysis with PyMOL and Autodock/Vina.J Comput-Aided Mol Des 24:417-422. 3 www.pymol.org 4 Blanchevoye, C et al.(2013) Interaction between the elastin peptide VGVAPG and human elastin binding protein,J Biol Chem 288:1317-28. 5 Ido,Y et al.(1997) Prevention of vascular and neural dysfunction in diabetic rats by C-peptide Science 277:563-6 6 De Boer,R et al.(2011) Plasma Galectin-3 Is Associated with Near-Term Rehospitalization in Heart Failure:A Meta-Analysis Journal of Cardiac Failure Vol 17,Issue 8,S93 7 Khan,NA et al.(2010) Mitigation of septic shock in mice and rhesus monkeys by human chorionic gonadotrophin-related peptides,Clin Exp Immunol 160:465-478 同様に、全てDアミノ酸のペプチドGPGAGもまた、配列番号41(VGVAPG)のプロトタイプエラスチンペプチドにドッキングするために設計されたEBPのモデルに適する。配列番号40(GGGPG)及び配列番号46(GAGPG)のL-アミノ酸ペプチドもまた該モデルに適する。EBPに関連する生物活性は、GXXPペプチドがプロリン(P)においてVIII型ベータターンコンファメーション(confirmation)をとることができるかどうかに依存すると考えられる。
図4】メタボリックシンドローム、アテローム性動脈硬化症及び糖尿病における病態生理学的経路の概要。
図5】この新しい観点は、アテローム性動脈硬化症及びインスリン抵抗性(resistence)に伴う疾患(例えば、心臓血管疾患、卒中、末梢動脈疾患、認知症、慢性腎臓疾患及び糖尿病に繋がるベータ細胞不全)に対して新たな光をあてる。それは、糖及び喫煙だけでなく、食事(過剰なエラスチンを含む精製デンプン又は加工肉製品の過剰な摂取)、又は生活様式(スモッグへの曝露又は運動不足)の結果としてもたらされる様々な他の共存するリスク因子を結び付ける。本発明は、メタボリックシンドロームにおけるインスリン抵抗性、高血圧及び慢性軽度炎症又は血管過剰修復の原因としてCペプチドによるエラスチン受容体活性化を提唱し、この症候群をインスリン抵抗性の他の条件、例えば、エラスチン由来のペプチドがエラスチン受容体を活性化させてインスリン抵抗性過剰修復を引き起こし得る喫煙及び特定の微細物質への曝露によるCOPDと結び付ける。
【発明を実施するための形態】
【0060】
メタボリックシンドロームの制御のため並びにメタボリックシンドローム及び糖尿病における微小血管合併症に対する免疫調整ペプチドの開発のための新たな標的、すなわち、エラスチン受容体とのCペプチドの相互作用が本明細書において提供される。本明細書は、メタボリックシンドローム及び糖尿病における微小血管合併症の原因に関する考えにおいて大きな飛躍を提供する。本出願は、医学界全体により見過ごされてきた事実である、ヒトCペプチド中のカノニカルなエラスチン受容体結合モチーフ、GxxP又はxGxxPGの存在を記載する。その上、該モチーフは、既に1997年にその生物学的活性の中心として同定されたが、潜在的な受容体結合部位として拒絶されたCペプチドの疎水性中央部分に位置する。本出願は、その拒絶が妥当でないことを示す。本発明は、メタボリックシンドロームにおけるインスリン抵抗性、高血圧及び慢性軽度過剰修復の原因としてCペプチドによるエラスチン受容体活性化を提唱し、この症候群をインスリン抵抗性の他の条件、例えば、エラスチン由来のペプチドがエラスチン受容体を活性化させてインスリン抵抗性及び過剰修復を引き起こし得る喫煙及び特定の微細物質への曝露によるCOPDと結び付ける。
【0061】
本明細書において提供される本発明のある特定の実施形態は、アンタゴニストペプチドの開発、メタボリックシンドロームの治療及び/又は予防のための方法を提供する。ある特定の実施形態では、アンタゴニストペプチドの開発、治療又は予防は、インスリン抵抗性、アテローム性動脈硬化症、心臓血管疾患、並びに/又は糖尿病に伴う微小及び大血管性病理のうちの1つ以上を標的とし得る。本明細書における全てのアミノ酸配列は、1文字表記で示される。Cペプチドは、膵臓の細胞によりインスリンと共に産生及び排出されるので、インスリンを産生する全ての哺乳動物において見出される。一般的なヒトCペプチドのアミノ酸配列は配列番号1(EAEDLQVGQVELGGGPGAGSLQPLALEGSLQ)である。多様な種からのCペプチドは、それらの疎水性中央部分(ヒトにおいて配列番号8(GGGPGAG))内にエラスチン受容体結合モチーフを有することが本明細書において開示される。
【0062】
Cペプチドの受容体がエラスチン結合タンパク質として本明細書において同定され、該タンパク質は、GLB1遺伝子(Ubiprot識別記号P16278)によりコードされるベータガラクトシダーゼに由来する選択的にスプライシングされたガラクトシダーゼとしてエラスチン受容体複合体中に見出すことができる。遺伝子産物のアイソフォーム1はベータガラクトシダーゼ(ベータ-Gal)に関する一方、アイソフォーム2は、選択的にスプライシングされたガラクトシダーゼ(S-Gal)に関する。http://www.piphuman.eu/site/home.html
【0063】
ベータ-Gal(アイソフォーム1)は、ガングリオシド、糖タンパク質及びグリコサミノグリカンからベータ結合末端ガラクトシル残基を切断し、主にリソソーム中に位置する。
【0064】
アイソフォーム2(S-Gal)はほとんど又は全くベータガラクトシダーゼ触媒活性を有しないが、細胞外弾性繊維の形成(弾性繊維形成)及び結合組織の発生において機能的役割を果たす。S-Galは、線維芽細胞、平滑筋細胞、軟骨芽細胞、白血球及びある特定のがん細胞種上に発現される非インテグリン細胞表面受容体の主成分であるエラスチン結合タンパク質(EBP)と同一であると考えられる。エラスチン産生細胞において、EBPは細胞内でトロポエラスチンと会合し、トロポエラスチンの分泌物及び弾性繊維へのそのアセンブリーを促進する再利用性分子シャペロンとして機能する。
【0065】
ある特定の実施形態では、アンタゴニストペプチドは、Cペプチド又はエラスチン受容体のいずれかに結合してもよく、又はそれと相互作用してもよい。さらに、アンタゴニストは、Cペプチド中のエラスチン受容体結合モチーフ又はエラスチン受容体結合モチーフに結合するエラスチン受容体中の部位に結合してもよい。若しくは、アンタゴニストは、Cペプチド中のエラスチン受容体結合モチーフ又はエラスチン受容体結合モチーフに結合するエラスチン受容体中の部位の近位又は遠位の部位に結合してもよいが、Cペプチド/エラスチン受容体相互作用のアンタゴニストとしての作用を可能とする。このようにして、アンタゴニストは、Cペプチドとエラスチン受容体との相互作用に影響する場合がある一方エラスチンと他の結合パートナーとの相互作用に干渉しない。
【0066】
メタボリックシンドローム又は関連する障害を患っている又は患っていると考えられるヒトを治療する方法も提供される。そのような方法は、典型的に、Cペプチドのエラスチン受容体との相互作用又は結合のアンタゴニストを合成又は単離すること及びアンタゴニストをヒトに提供することを含む。アンタゴニストは、薬理学的に許容される賦形剤と混合されてもよく、結果として生じる混合物は、メタボリックシンドローム若しくは関連する障害を治療するため、又はメタボリックシンドロームの予防のために適宜標識されてもよい。
【0067】
メタボリックシンドローム又は関連する障害を患うリスクがあると考えられるヒトを治療する方法が開示される。そのような方法は、典型的に、Cペプチドのエラスチン受容体との相互作用又は結合のアンタゴニストを合成又は単離すること及びアンタゴニストをヒトに提供することを含む。アンタゴニストは、薬理学的に許容される賦形剤と混合されてもよく、結果として生じる混合物は、メタボリックシンドローム若しくは関連する障害を患うリスクがあると考えられるヒトのために適宜標識されてもよい。
【0068】
2型糖尿病を患っている又は患っていると考えられるヒトを治療する方法が開示される。そのような方法は、典型的に、Cペプチドのエラスチン受容体との相互作用又は結合のアンタゴニストを合成又は単離すること及びアンタゴニストをヒトに提供することを含む。アンタゴニストは、薬理学的に許容される賦形剤と混合されてもよく、結果として生じる混合物は、2型糖尿病を治療するため、又は2型糖尿病の予防のために適宜標識されてもよい。
【0069】
2型糖尿病を患うリスクがあると考えられるヒトを治療する方法が開示される。そのような方法は、典型的に、Cペプチドのエラスチン受容体との相互作用又は結合のアンタゴニストを合成又は単離すること及びアンタゴニストをヒトに提供することを含む。アンタゴニストは、薬理学的に許容される賦形剤と混合されてもよく、結果として生じる混合物は、2型糖尿病の治療又は予防のために適宜標識されてもよい。
【0070】
機能に関する非限定的な理論として、ベータ細胞の損傷及び破壊は、1型糖尿病の原因だけでなく、1.5型及び2型糖尿病、同様にメタボリックシンドローム全体の発症においても見られ、インスリン抵抗性と共に見られる現象は膵ベータ細胞における初期事象に対して二次的又は並行したものである。ベータ細胞の損傷及び破壊は主にCペプチドの過剰産生により引き起こされ、Cペプチドは、これらの細胞により分泌され、その周囲に沈着し、エラスチン受容体を有する細胞とのCペプチドの相互作用によりベータ細胞及びランゲルハンス島の低グレード及び初期には異質性の慢性炎症に繋がり、該相互作用は、配列番号32(LGGGPGAG)の疎水性中央部分への受容体の結合によりヒトCペプチドにおいて媒介される。これらの初期事象の前、間又は後に、又はそれとの組合せで、及びCペプチドの過剰産生が維持された時に、低グレード炎症は周囲組織に広がり、そこでもCペプチドが沈着し、エラスチン受容体を有する細胞がまた刺激される。本明細書における実施形態は、Cペプチド/EBP相互作用のアンタゴニスト及びCペプチド/EBP相互作用をアンタゴナイズするようにヒトを治療する方法を提供する。
【0071】
さらなる実施形態では、ヒトCペプチド(UIniprot識別記号>sp|P01308|57-87)又は哺乳動物におけるその機能的同等物に由来するペプチドであって、GxxP又はxGxPモチーフ(Gはグリシンであり、Pはプロリンであり、xは任意のアミノ酸である)を含むオクタペプチド、ヘキサペプチド、ヘプタペプチド、ペンタペプチド又はテトラペプチド、及びxGxP又はGxxPモチーフを含むオクタペプチド、ヘキサペプチド、ヘプタペプチド、ペンタペプチド又はテトラペプチドのレトロインベルソバリアントからなる、ペプチドが提供される。なお、グリシンの立体異性体は存在せず、本明細書においてL-グリシン及びD-グリシンの両方はグリシンを表す。非限定的な例として、ペプチドは、自動ペプチド合成装置(例えば、モデル990;Beckman Instrument、Fullerton、CA)を用いて固相方法により合成されてもよい。ペプチドは、逆相高速液体クロマトグラフィー(例えば、Capcell Pak C-18、Shiseido、Tokyo、Japan)により精製されてもよい。ペプチドの配列は、質量分光計(例えば、Voyager、Linear-DE/K、Preseptive Biosystems、TX)を用いて確認されてもよい。
【0072】
ヒトCペプチドに由来するxGxP又はGxxPモチーフを含む本明細書において提供される例示的なオクタペプチドは、配列番号32(LGGGPGAG)のオクタペプチドであり、該オクタペプチドは、全体としてのヒトCペプチド配列から選択され、その由来となるCペプチドにおける8アミノ酸のストレッチにわたるその100%の相同性を考慮してヒトでの使用のために非常によく適する。レトロインベルソバリアント、全てDアミノ酸のペプチドGAGPGGGL、及び全てDアミノ酸のペプチドGAGPGGGLを含む最大で30、好ましくは最大で25、好ましくは最大で20、好ましくは最大で12、好ましくは最大で9アミノ酸のペプチド又はペプチド模倣物(peptidometics)も提供される。注記:グリシンの立体異性体は存在せず、ここにおいて(及び例えばレトロインベルソGxxP又はxGxPモチーフを有するレトロインベルソペプチドにおいて)Gはそうではないが、それに対して、L、P及びAなどの他のアミノ酸が、本明細書において提供されるレトロインベルソペプチドの全てDアミノ酸の特徴に寄与する。
【0073】
ヒトCペプチドに由来するxGxP又はGxxPモチーフを含む本明細書において提供される例示的なヘキサペプチドは、配列番号8(GGGPGAG)のヘキサペプチドであり、該ヘキサペプチドは、全体としてのヒトCペプチド配列から選択され、その由来となるCペプチドにおける7アミノ酸のストレッチにわたるその100%の相同性を考慮してヒトでの使用のために非常によく適する。レトロインベルソバリアント、全てDアミノ酸のペプチドGAGPGGG、及び全てDアミノ酸のペプチドGAGPGGGを含む最大で30、好ましくは最大で25、好ましくは最大で20、好ましくは最大で12、好ましくは最大で8アミノ酸のペプチド又はペプチド模倣物(peptidometics)も提供される。
【0074】
ヒトCペプチドに由来するxGxP又はGxxPモチーフを含む本明細書において提供される別の例示的なヘキサペプチドは、配列番号47(LGGGPGA)のヘプタペプチドであり、該ヘプタペプチドは、全体としてのヒトCペプチド配列から選択され、その由来となるCペプチドにおける7アミノ酸のストレッチにわたるその100%の相同性を考慮してヒトでの使用のために非常によく適する。レトロインベルソバリアント、全てDアミノ酸のペプチドGAGPGGG、及び全てDアミノ酸のペプチドAGPGGGLを含む最大で30、好ましくは最大で25、好ましくは最大で20、好ましくは最大で12、好ましくは最大で9、好ましくは最大で7アミノ酸のペプチド又はペプチド模倣物(peptidometics)も提供される。
【0075】
ヒトCペプチドに由来するxGxP又はGxxPモチーフを含む本明細書において提供される最も例示的なヘプタペプチドは、配列番号48(GGPGAG)のヘキサペプチドであり、該ヘキサペプチドは、全体としてのヒトCペプチド配列から選択され、その由来となるCペプチドにおける6アミノ酸のストレッチにわたるその100%の相同性を考慮してヒトでの使用のために非常によく適する。レトロインベルソバリアント、全てDアミノ酸のペプチドGAGPGG、及び全てDアミノ酸のペプチドGAGPGGを含む最大で30、好ましくは最大で25、好ましくは最大で20、好ましくは最大で12、好ましくは最大で9、好ましくは最大で6アミノ酸のペプチド又はペプチド模倣物(peptidometics)も提供される。
【0076】
ヒトCペプチドに由来するxGxP又はGxxPモチーフを含む本明細書において提供される別の例示的なヘプタペプチドは、配列番号34(LGGGPG)のヘプタペプチドであり、該ヘプタペプチドは、全体としてのヒトCペプチド配列から選択され、その由来となるCペプチドにおける6アミノ酸のストレッチにわたるその100%の相同性を考慮してヒトでの使用のために非常によく適する。レトロインベルソバリアント、全てDアミノ酸のペプチドGPGGGL、及び全てDアミノ酸のペプチドGPGGGLを含む最大で30、好ましくは最大で25、好ましくは最大で20、好ましくは最大で12、好ましくは最大で9、好ましくは最大で6アミノ酸のペプチド又はペプチド模倣物(peptidometics)も提供される。
【0077】
ヒトCペプチドに由来するxGxP又はGxxPモチーフを含む本明細書において提供される別の例示的なヘプタペプチドは、配列番号49(GGGPGA)のヘキサペプチドであり、該ヘキサペプチドは、全体としてのヒトCペプチド配列から選択され、その由来となるCペプチドにおける6アミノ酸のストレッチにわたるその100%の相同性を考慮してヒトでの使用のために非常によく適する。レトロインベルソバリアント、全てDアミノ酸のペプチドAGPGGG、及び全てDアミノ酸のペプチドAGPGGGを含む最大で30、好ましくは最大で25、好ましくは最大で20、好ましくは最大で12、好ましくは最大で9、好ましくは最大で6アミノ酸のペプチド又はペプチド模倣物(peptidometics)も提供される。
【0078】
ヒトCペプチドに由来するxGxP又はGxxPモチーフを含む本明細書において提供される最も例示的なペンタペプチドは、配列番号40(GGGPG)のヘプタペプチドであり、該ヘプタペプチドは、全体としてのヒトCペプチド配列から選択され、その由来となるCペプチドにおける6アミノ酸のストレッチにわたるその100%の相同性を考慮してヒトでの使用のために非常によく適する。レトロインベルソバリアント、全てDアミノ酸のペプチドGPGGG、及び全てDアミノ酸のペプチドGPGGGを含む最大で30、好ましくは最大で25、好ましくは最大で20、好ましくは最大で12、好ましくは最大で9、好ましくは最大で5アミノ酸のペプチド又はペプチド模倣物(peptidometics)も提供される。
【0079】
別の例示的なペンタペプチドは、配列番号46(GAGPG)のペプチド、及び配列番号46(GAGPG)のペプチドを含む最大で30、好ましくは最大で25、好ましくは最大で20、好ましくは最大で12、好ましくは最大で9、好ましくは最大で5アミノ酸のペプチド又はペプチド模倣物(peptidometics)である。
【0080】
別の例示的なペンタペプチドは、レトロインベルソバリアント、全てDアミノ酸のペプチドGPGAG、及び全てDアミノ酸のペプチドGPGAGを含む最大で30、好ましくは最大で25、好ましくは最大で20、好ましくは最大で12、好ましくは最大で9、好ましくは最大で5アミノ酸のペプチド又はペプチド模倣物(peptidometics)も提供される。
【0081】
ヒトCペプチドに由来するxGxP又はGxxPモチーフを含む本明細書において提供される最も例示的なテトラペプチドは、配列番号38(GGGP)のテトラペプチドであり、該テトラペプチドは、全体としてのヒトCペプチド配列から選択され、その由来となるCペプチドにおける6アミノ酸のストレッチにわたるその100%の相同性を考慮してヒトでの使用のために非常によく適する。レトロインベルソバリアント、全てDアミノ酸のペプチドPGGG、及び全てDアミノ酸のペプチドPGGGを含む最大で30、好ましくは最大で25、好ましくは最大で20、好ましくは最大で12、好ましくは最大で9、好ましくは最大で4アミノ酸のペプチド又はペプチド模倣物(peptidometics)も提供される。
【0082】
GxxPモチーフを含む本明細書において提供される別のテトラペプチドは配列番号39(GAGP)のテトラペプチドである。レトロインベルソバリアント、全てDアミノ酸のペプチドPGAG、及び全てDアミノ酸のペプチドPGAGを含む最大で30、好ましくは最大で25、好ましくは最大で20、好ましくは最大で12、好ましくは最大で9、好ましくは最大で4アミノ酸のペプチド又はペプチド模倣物(peptidometics)も提供される。
【0083】
ある特定の実施形態では、メタボリックシンドローム、好ましくは糖尿病の、好ましくは1型糖尿病の又は1型糖尿病に伴う腎症、ニューロパチー若しくは微小血管疾患のメタボリックシンドロームを治療するための、ヒトCペプチド(UIniprot識別記号>sp|P01308|57-87)又は哺乳動物におけるその機能的同等物に由来するペプチドの使用であって、ペプチドが、GxxP又はxGxPモチーフ(Gはグリシンであり、Pはプロリンであり、xは任意のアミノ酸である)を含むオクタペプチド、ヘキサペプチド、ヘプタペプチド、ペンタペプチド又はテトラペプチド、及びxGxP又はGxxPモチーフを含むオクタペプチド、ヘキサペプチド、ヘプタペプチド、ペンタペプチド又はテトラペプチドのレトロインベルソバリアントからなる、使用が提供される。
【0084】
そのため、ヒトの1型糖尿病を治療する方法が本明細書において提供される。そのような方法は、典型的に、ヒトCペプチド(UIniprot識別記号>sp|P01308|57-87)又は哺乳動物におけるその機能的同等物に由来するペプチドであって、GxxP又はxGxPモチーフ(Gはグリシンであり、Pはプロリンであり、xは任意のアミノ酸である)を含むオクタペプチド、ヘキサペプチド、ヘプタペプチド、ペンタペプチド又はテトラペプチド、及びxGxP又はGxxPモチーフを含むオクタペプチド、ヘキサペプチド、ヘプタペプチド、ペンタペプチド又はテトラペプチドのレトロインベルソバリアントからなる、ペプチドをヒトに投与することを含む。ある特定の実施形態では、治療の方法は、腎症、ニューロパチー又は微小血管疾患が挙げられるがこれらに限定されない1型糖尿病に伴う1つ以上の病理のためのものであってもよい。
【0085】
ある特定の実施形態では、メタボリックシンドローム、好ましくは糖尿病の、好ましくは1型糖尿病の又は1型糖尿病に伴う腎症、ニューロパチー若しくは微小血管疾患のメタボリックシンドロームを治療するための、ヒトCペプチド(UIniprot識別記号>sp|P01308|57-87)又は哺乳動物におけるその機能的同等物に由来するペプチドであって、GxxP又はxGxPモチーフ(Gはグリシンであり、Pはプロリンであり、xは任意のアミノ酸である)を含むオクタペプチド、ヘキサペプチド、ヘプタペプチド、ペンタペプチド又はテトラペプチド、及びxGxP又はGxxPモチーフを含むオクタペプチド、ヘキサペプチド、ヘプタペプチド、ペンタペプチド又はテトラペプチドのレトロインベルソバリアントからなる、ペプチドが提供される。
【0086】
メタボリックシンドローム、好ましくは糖尿病の、好ましくは1型糖尿病の又は1型糖尿病に伴う腎症、ニューロパチー若しくは微小血管疾患のメタボリックシンドロームを治療するための医薬を製造するための、ヒトCペプチド(UIniprot識別記号>sp|P01308|57-87)又は哺乳動物におけるその機能的同等物に由来するペプチドの使用であって、ペプチドが、GxxP又はxGxPモチーフ(Gはグリシンであり、Pはプロリンであり、xは任意のアミノ酸である)を含むオクタペプチド、ヘキサペプチド、ヘプタペプチド、ペンタペプチド又はテトラペプチド、及びxGxP又はGxxPモチーフを含むオクタペプチド、ヘキサペプチド、ヘプタペプチド、ペンタペプチド又はテトラペプチドのレトロインベルソバリアントからなる、使用が提供される。
【0087】
そのため、ヒトの1型糖尿病を治療するための医薬を製造する方法が本明細書において提供される。そのような方法は、典型的に、ヒトCペプチド(UIniprot識別記号>sp|P01308|57-87)又は哺乳動物におけるその機能的同等物に由来するペプチドであって、GxxP又はxGxPモチーフ(Gはグリシンであり、Pはプロリンであり、xは任意のアミノ酸である)を含むオクタペプチド、ヘキサペプチド、ヘプタペプチド、ペンタペプチド又はテトラペプチド、及びxGxP又はGxxPモチーフを含むオクタペプチド、ヘキサペプチド、ヘプタペプチド、ペンタペプチド又はテトラペプチドのレトロインベルソバリアントからなる、ペプチドを合成又は単離することを含む。
【0088】
ベータ細胞において、インスリンは、同じ前駆体分子であるプレプロインスリンからCペプチドと共に産生される。インスリン及びCペプチドの両方は血中に等量で排出され、それによりインスリンは、約5分の半減期を有して短い時間のみ周囲組織に作用することができる。しかしながら、Cペプチドは、30分の半減期を有すると報告されており、血中においてはるかに長く循環する。Cペプチドの機能は長い間理解されていなかったが、炎症促進活性などの多くの活性が現在それに帰せられている。これらの炎症促進活性の原因は説明されていない。本明細書において提供されるように、Cペプチドの構造解析はエラスチン受容体結合モチーフの存在を明らかにし、特定の理論に縛られないが、これが炎症促進効果の原因である。
【0089】
一般的なヒトCペプチドのアミノ酸配列は配列番号1(EAEDLQVGQVELGGGPGAGSLQPLALEGSLQ)である。配列番号42(ELGGGPGAGS)の中央部分は、追加のこれまで気付かれなかった特徴的なPGドメインを有し、これはCペプチドのいわゆる炎症促進性の特徴を説明し、特に、2型糖尿病及びメタボリックシンドロームと共に見られる低グレード及び初期には異質性の慢性炎症(本明細書において血管過剰修復として同定される)を説明し、より特には、2型糖尿病の全体としての発症、病因を説明する。配列番号42(ELGGGPGAGS)は、エラスチン結合タンパク質EBPと反応性のペプチドにおいて見出されるカノニカルなxGxP、GxxP、GxxPG及びxGxPG(xは任意のアミノ酸、好ましくは疎水性アミノ酸である)配列を有することが本明細書において認識される。リソソームのベータガラクトシダーゼのスプライシングされたバリアントであるエラスチン結合タンパク質(EBP)は、例えば、気腫、動脈瘤及びがんの進行と関連付けられているエラスチンペプチドの一次受容体である。EBPにより認識される配列は、多数のマトリックスタンパク質中、顕著には、配列番号41(VGVAPG)のモチーフが繰り返されるエラスチン中に見出されるGxxPコンセンサスパターンを共有する。本明細書において初めて、Cペプチドは、EBP又はエラスチン受容体のリガンドとして認識される。Cペプチドはしたがって、細胞外マトリックス(ECM)タンパク質に由来する公知のエラスチンペプチドが有する同じセットの走化性の、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)を活性化させる、増殖活性及び低炎症活性又は血管修復活性を有する。この受容体相互作用は、糖尿病研究又は代謝障害研究の当業者によっても、ECM又はエラスチンペプチド研究の当業者によっても、以前には公に認識されていなかった。
【0090】
Cペプチド中の結合部位EBPを同定したので、Cペプチドによる血管修復又は低炎症性モジュレーションをこれより説明する。周細胞、平滑筋細胞、線維芽細胞、脂肪組織細胞、膵星細胞、及び他の結合組織細胞は、内皮細胞と共に、及び循環する自然免疫細胞、例えば白血球及び単球は、インターロイキン-1-ベータ媒介性の増殖及び低グレード炎症活性化によりEBPのGxxPG含有タンパク質及びペプチドへの結合に応答し得る。ヒトプロテオームの解析は、複数のGxxPGモチーフを有するタンパク質が細胞外マトリックス(ECM)に高度に関連することを示す。複数のGxxP、xGxP又はGxxPG部位を有するマトリックスタンパク質としては、フィブリリン-1、-2及び-3、エラスチン、フィブロネクチン、ラミニン並びにいくつものテネイシン及びコラーゲンが挙げられる。
【0091】
第二に、循環する白血球及び単球は、GxxP、xGxP、GxxPG又はxGxPG含有タンパク質及びペプチドに対して強い走化性を示し、したがってCペプチドは、Cペプチドがどこに存在していてもそれらの細胞を引き付ける。
【0092】
第三に、GxxP、xGxP、xGxPG又はGxxPG含有タンパク質及びペプチドへのEBPの結合は、細胞表面からのEBPのシェディング及びインターロイキン-1-ベータに親和性を有するインターロイキン-I受容体の提示の増加と関連付けられており、Cペプチド沈着がどこに存在していようと、エンドサイトーシスの妨害又は継続的なインターロイキン-1-ベータ媒介性の増殖及び炎症活性化を可能とする。
【0093】
第四に、GxxP又はGxxPG含有タンパク質及びペプチドへのEBPの結合は、ノイラミニダーゼの活性化、及び、特に脂肪細胞及び肝細胞の、インスリン抵抗性を誘導するタンパク質からのシアル酸の放出と関連付けられている。
【0094】
第五に、GxxP又はGxxPG含有タンパク質及びペプチドへの結合性EBPは、細胞表面からのEBPのシェディング及びエンドセリン-1に対するタンパク質分解活性を有するPPCAの提示の減少と関連付けられており、それにより、PPCAのタンパク質分解活性(acitivity)の減少に起因するエンドセリン-1レベルの増加は、高血圧の増加を結果としてもたらす。
【0095】
実施形態はまた、部分的には、Cペプチド又はCペプチド断片に結合し、したがって様々な障害、例えば、メタボリックシンドローム及び糖尿病などの免疫障害と関連付けられるCペプチド関連の生物活性を誘導する受容体型の同定に関する。本明細書に開示されるCペプチド又はCペプチド断片に結合し又はそれと相互作用するそのような受容体型は、エラスチンペプチドに結合することが公知の哺乳動物エラスチン受容体であり、これには、自然免疫細胞、細胞外マトリックス細胞、線維芽細胞、血管平滑筋細胞及びある特定の腫瘍細胞上に遍在的に見出される、ベータガラクトシダーゼのスプライシングされたバリアントとして同定された67kDaのエラスチン結合タンパク質(EBP)、並びにその関連するホモログ及びアイソフォームなどのエラスチン受容体複合体が含まれるがこれらに限定されない。これもエラスチン結合タンパク質型の結合活性を有すると本明細書において理解される膵エラスターゼもまたこれらのモチーフに結合する。典型的には細胞外マトリックスタンパク質、例えば、エラスチン、ラミニン、IV型コラーゲン及びフィブリリン-1中のカノニカルなxGxP、GxxP、GxxPG及びxGxPG(xは任意のアミノ酸、好ましくは疎水性アミノ酸である)モチーフに結合するエラスチン結合タンパク質型、及びそのようなモチーフは、本明細書において初めてCペプチド中に同定される。エラスチン結合タンパク質/エラスチンペプチド相互作用はまた、インテグリン及びガレクチン、EBP、インテグリン及びガレクチン、及び本明細書において一般的にエラスチン結合タンパク質型と呼ばれるxGxP、GxxP、GxxPG及びxGxPGモチーフに結合することができる他の受容体と共に見出すことができる。Cペプチドと相互作用して代謝障害及び免疫障害と関連付けられる生物学的応答の調整を促進する「エラスチン受容体」の同定は、次いで、以下に必ずしも限定されないが、様々な障害を治療するための方法、使用及び同定されたペプチドなどの追加の実施形態を実施する場合の価値のある必須成分を提供する。
【0096】
ある特定の実施形態は、Cペプチド又はCペプチド断片と相互作用して、腎症(nephrophaties)及び1型糖尿病における内皮機能障害の軽減と関連付けられる抗炎症効果を促進するものとして本明細書に開示される「エラスチン結合タンパク質型」の受容体型のモジュレーターを同定する方法に関する。特に関心のあるモジュレーターは、エラスチン結合タンパク質型へのアゴニストとして作用するペプチドである。そのようなアゴニストは、1型糖尿病、又は後期2型糖尿病などの相対的又は絶対的なCペプチド欠乏により特徴付けられる他の障害の治療において有用であり得る。理論により縛られるものではないが、そのようなペプチドは、細胞外マトリックス細胞又は白血球(例えば、線維芽細胞又は単球細胞)へのシグナルを媒介して、走化性及び増殖効果を引き起こす能力、例えば、白血球走化性又は平滑筋細胞若しくは線維芽細胞増殖を引き起こす能力を示す。アゴニストは、例えば、GxxP、xGxPG、GxxPx、GxxPG、xGxxP、xGxxPx、xGxxPGモチーフを有するペプチド、例えば、配列番号32(LGGGPGAG)、配列番号8(GGGPGAG)、配列番号49(GGGPGA)、配列番号38(GGGP)、配列番号40(GGGPG)、配列番号46(GAGPG)、配列番号50(GGGPE)、配列番号51(GAIPG)、配列番号52(GGVPG)、配列番号53(GVAPG)、配列番号54(YTTGKLPYGYGPGG)、配列番号55(YGARPGVGVGIP)、配列番号56(PGFGAVPGA)、配列番号57(GVYPG)、配列番号58(GFGPG)、配列番号59(GVLPG)、配列番号51(GAIPG)、配列番号60(PGAIPG)、配列番号61(PGAVGP)、配列番号62(VGAMPG)、配列番号63(VGSLPG)、配列番号64(VGMAPG)、配列番号65(VPGVG)、配列番号66(IPGVG)、配列番号63(VGSLPG)、配列番号41(VGVAPG)、配列番号67(VGVPG)、配列番号68(AGAIPG)、配列番号69(VPGV)、配列番号70(LGITPG)、配列番号71(GDNP)、配列番号72(GAIP)、配列番号73(GKVP)、配列番号74(GVQY)、配列番号75(GVLP)、配列番号76(GVGP)、配列番号77(GFGP)、配列番号78(GGIP)、配列番号79(GVAP)、配列番号80(GIGP)、配列番号39(GAGP)、配列番号81(GGIPP)、配列番号82(GQFP)、配列番号83(GLSP)、配列番号84(GPQP)、配列番号85(GGPQP)、配列番号86(GPQPG)、配列番号87(GGPQPG)、配列番号88(GIPP)、配列番号89(GIPPA)、配列番号90(GGIPPA)若しくは配列番号91(GGYPGASYPGAYPGQAPPGAYPGQAPPGAYPGAPGAYPGAPAPGVYPGPPSGPGAYPS)若しくは配列番号92(GGYPGASYP)若しくは配列番号93(GAYPGQAPP)若しくは配列番号94(GAYPGQA)若しくは配列番号95(GAYPGAP)若しくは配列番号96(GAYPG)若しくは配列番号97(APAPGVYPG)若しくは配列番号98(GAYPS)のペプチド又は又はこれらのレトロインベルソ若しくはそれ以外に機能的に関連するペプチドから選択することができる。理論により縛られるものではないが、そのようなアゴニストペプチドは、細胞外マトリックス細胞又は白血球(例えば、線維芽細胞又は単球細胞)へのシグナルを媒介して、走化性及び増殖効果を刺激する能力、例えば、白血球走化性又は平滑筋細胞若しくは線維芽細胞増殖を刺激する能力を示す。
【0097】
特に関心のある別のモジュレーターは、エラスチン結合タンパク質型へのアンタゴニストとして作用するペプチドである。そのようなアンタゴニストは、2型糖尿病、又はメタボリックシンドロームの発症後のアテローム性動脈硬化症、関節リウマチ、大血管疾患及び心臓血管疾患などの相対的又は絶対的なCペプチド過剰により特徴付けられる他の障害の治療又は予防において有用であり得る。有用なアンタゴニストは、GxxP、xGxPG、GxxPx、GxxPG、xGxxP、xGxxPx、xGxxPGモチーフに結合するペプチド又は結合ドメイン、例えば、V32又はV14ペプチド(と一般的に呼ばれるもの)並びにこれらの機能的断片及びその機能的バリアント(therof)、例えば、配列番号99(QTLPGSCGQVVGSPSAQDEASPLSEWRASYNSAGSNITDA)、配列番号100(LPGSCGQVVGSPSAQDEASPLSEWRASYNSAG)、配列番号101(VVGSPSAQDEASPLSEWRASY)、配列番号102(VVGSPSAQDEASPLS)、配列番号103(PSAQDEASPL)、配列番号104(SPSAQDEASP)、配列番号105(AQDEAS)、配列番号106(PSAQ)、配列番号107(SAQD)、配列番号108(DEAS)、配列番号31(QDEA)、配列番号109(SPSA)、配列番号110(VVGGTEAQRNSWPLQ)、配列番号111(VVGGTEAQRNSWPSQ)、配列番号112(TEAQRNSWP)、配列番号113(AQRN)、配列番号114(IVGGRRARPHAWPFM)、配列番号115(VVGGEDAKPGQFPWQ)、配列番号116(VVGGRVAQPNSWPWQ)、配列番号117(RVAQPNSW)、配列番号118(VVGGAEARRNSWPSQ)、配列番号119(AEARRNSW)、配列番号120(VVGGQEATPNTWPWQ)、配列番号121(QEATPNTW)、配列番号122(VVGGEEARPNSWPWQ)、配列番号123(EEARPNSW)、配列番号124(VVGGTEAGRNSWPSQ)、配列番号125(TEAGRNSWP)、配列番号126(EDYRPSQQDECSPRE)、配列番号127(PSQQDECSP)、配列番号128(QQDEC)、QDE、又は関連するペプチド、例えば、上記に列記したV32又はV14ペプチドに由来するレトロインベルソバリアントペプチド並びにこれらの機能的断片及びその機能的バリアント(therof)から選択されてもよい。本明細書に開示されるそのようなレトロインベルソペプチドは、好ましくは、コアD-アミノ酸配列AEDQを有し、例えば、レトロインベルソV14ペプチドバリアントである全てD体のLPSAEDQASPSGVV又は全てD体のPSAEDQASPS又は全てD体のWESLPSAEDQASPSGVVQGCを有する。機能的断片又はバリアントは、典型的に、ヒトCペプチドのCペプチドのモチーフGxxPGを通じたヒトエラスチン受容体への結合を阻害するペプチドの能力を試験する本明細書において提供される走化性アッセイにおいて見出され、そのようなペプチドはヒトCペプチドの走化活性を低減させることができる(低減させる)。理論により縛られるものではないが、そのようなアンタゴニストペプチドは、細胞外マトリックス細胞又は白血球(例えば、線維芽細胞又は単球細胞)へのシグナルを調整して、走化性及び増殖効果を阻害する能力、例えば、白血球又は平滑筋細胞又は線維芽細胞増殖を阻害する能力を示す。
【0098】
他の有用なアゴニスト又はアンタゴニストペプチドは、例えば、ヒトEBPのエラスチン結合部位の相同性モデルを用いてin silicoで見出され得る。Blanchevoyらは最近、このタンパク質の相同性モデルを構築し、このモデルにおける配列番号41(VGVAPG)のドッキングを示した(Blanchevoye et al,INTERACTION BETWEEN THE ELASTIN PEPTIDE VGVAPG AND HUMAN ELASTIN BINDING PROTEIN,doi:10.1074/jbc.M112.419929 jbc.M112.419929.;結合部位の関連する原子座標などのその内容は参照により本明細書に含められる)。
【0099】
本開示はまた、エラスチン結合タンパク質型を活性化させるモジュレーター(例えば、エラスチン結合タンパク質型アゴニストペプチド)のヒトへの投与を通じた、本明細書に開示される1型糖尿病などのCペプチド欠乏に関連する1つ以上の障害を治療する方法に関する。そのようなエラスチン結合タンパク質型アゴニストペプチドは、本明細書に記載される方法を通じて同定されてもよく、1型糖尿病が挙げられるがこれに限定されない障害の治療において有用である。特定の実施形態では、本明細書において提供されるそのようなエラスチン結合タンパク質アゴニストは、好ましくは、アルファ-エノラーゼのアゴニスト(例えば、配列番号129(LALEGSLQ)又は配列番号6(EGSLQ)のペンタペプチド又はこれらの機能的部分を含むペプチド)又はGPR146のアゴニストと共に使用されてもよい。本発明はまた、1型糖尿病又は相対的若しくは絶対的なCペプチド欠乏を含む障害を治療するためのエラスチン結合タンパク質型のアゴニストの使用を提供し、有用なアゴニストは、xGxP、GxxP、xGxPG、GxxPx、GxxPG、xGxxP、xGxxPx、xGxxPGモチーフを有するペプチド、例えば、配列番号32(LGGGPGAG)、配列番号8(GGGPGAG)、配列番号49(GGGPGA)、配列番号38(GGGP)、配列番号40(GGGPG)、配列番号46(GAGPG)、配列番号50(GGGPE)、配列番号51(GAIPG)、配列番号52(GGVPG)、配列番号53(GVAPG)、配列番号54(YTTGKLPYGYGPGG)、配列番号55(YGARPGVGVGIP)、配列番号56(PGFGAVPGA)、配列番号57(GVYPG)、配列番号58(GFGPG)、配列番号59(GVLPG)、配列番号51(GAIPG)、配列番号60(PGAIPG)、配列番号61(PGAVGP)、配列番号62(VGAMPG)、配列番号63(VGSLPG)、配列番号64(VGMAPG)、配列番号65(VPGVG)、配列番号66(IPGVG)、配列番号63(VGSLPG)、配列番号41(VGVAPG)、配列番号67(VGVPG)、配列番号68(AGAIPG)、配列番号69(VPGV)、配列番号70(LGITPG)、配列番号71(GDNP)、配列番号72(GAIP)、配列番号73(GKVP)、配列番号74(GVQY)、配列番号75(GVLP)、配列番号76(GVGP)、配列番号77(GFGP)、配列番号78(GGIP)、配列番号79(GVAP)、配列番号80(GIGP)、配列番号39(GAGP)、配列番号81(GGIPP)、配列番号82(GQFP)、配列番号83(GLSP)、配列番号84(GPQP)、配列番号85(GGPQP)、配列番号86(GPQPG)、配列番号87(GGPQPG)、配列番号88(GIPP)、配列番号81(GGIPP)、配列番号89(GIPPA)、配列番号90(GGIPPA)のペプチド、又はペプチド、例えば、配列番号32(LGGGPGAG)、配列番号8(GGGPGAG)、配列番号49(GGGPGA)、配列番号38(GGGP)、配列番号40(GGGPG)、配列番号46(GAGPG)、配列番号50(GGGPE)、配列番号51(GAIPG)、配列番号52(GGVPG)、配列番号53(GVAPG)、配列番号54(YTTGKLPYGYGPGG)、配列番号55(YGARPGVGVGIP)、配列番号56(PGFGAVPGA)、配列番号57(GVYPG)、配列番号58(GFGPG)、配列番号59(GVLPG)、配列番号51(GAIPG)、配列番号60(PGAIPG)、配列番号61(PGAVGP)、配列番号62(VGAMPG)、配列番号63(VGSLPG)、配列番号64(VGMAPG)、配列番号65(VPGVG)、配列番号66(IPGVG)、配列番号63(VGSLPG)、配列番号41(VGVAPG)、配列番号67(VGVPG)、配列番号68(AGAIPG)、配列番号69(VPGV)、配列番号70(LGITPG)、配列番号71(GDNP)、配列番号72(GAIP)、配列番号73(GKVP)、配列番号74(GVQY)、配列番号75(GVLP)、配列番号76(GVGP)、配列番号77(GFGP)、配列番号78(GGIP)、配列番号79(GVAP)、配列番号80(GIGP)、配列番号39(GAGP)、配列番号81(GGIPP)、配列番号82(GQFP)、配列番号83(GLSP)、配列番号84(GPQP)、配列番号85(GGPQP)、配列番号86(GPQPG)、配列番号87(GGPQPG)、配列番号88(GIPP)、配列番号81(GGIPP)、配列番号89(GIPPA)、配列番号90(GGIPPA)若しくは配列番号91(GGYPGASYPGAYPGQAPPGAYPGQAPPGAYPGAPGAYPGAPAPGVYPGPPSGPGAYPS)若しくは配列番号92(GGYPGASYP)若しくは配列番号93(GAYPGQAPP)若しくは配列番号94(GAYPGQA)若しくは配列番号95(GAYPGAP)若しくは配列番号96(GAYPG)若しくは配列番号97(APAPGVYPG)若しくは配列番号98(GAYPS)のペプチドのようなペプチドのレトロインベルソバリアント又は関連するペプチド(又はこれらのレトロインベルソバリアント)から選択することができる。
【0100】
哺乳動物インスリンCペプチドの断片に本質的に相同的な配列を有するペプチドのヒトにおける使用も提供され、ペプチドは、配列番号32(LGGGPGAG)の配列若しくはその断片、又は配列番号33(LAGGPGAG)の配列若しくはその断片を含み、及びエラスチン結合タンパク質型結合と相互作用し又は自然免疫細胞の炎症活性を調整する能力を有し、本発明は、好ましくは、配列番号34(LGGGPG)若しくは配列番号35(LAGGPG)の配列又はその断片を有する、最も好ましくはそれからなるペプチドを提供し、好ましくは、断片は、配列番号36(LGGGP)、配列番号37(LAGGP)、配列番号38(GGGP)、配列番号130(AGGP)から選択され、これらは、例えば、インスリンとインターロイキン-1受容体アンタゴニストと組み合わせられてもよい。
【0101】
哺乳動物インスリンCペプチドの断片に本質的に相同的な単離された又は合成ペプチドのヒトにおける使用も提供され、ペプチドは、配列番号32(LGGGPGAG)の配列若しくはその断片、又は配列番号33(LAGGPGAG)の配列若しくはその断片を含み、及びエラスチン結合タンパク質型結合と相互作用し又は自然免疫細胞の炎症活性を調整する能力を有し、ペプチドは、好ましくは、配列番号34(LGGGPG)若しくは配列番号35(LAGGPG)の配列又はその断片を有し、最も好ましくはそれからなり、好ましくは、断片は、配列番号36(LGGGP)、配列番号37(LAGGP)、配列番号38(GGGP)、配列番号130(AGGP)から選択され、これらは、例えば、インスリンとインターロイキン-1受容体アンタゴニストと組み合わせられてもよい。
【0102】
Cペプチドの疎水性中央部分に関連するペプチド又は断片のレトロインベルソバリアントのヒトにおける使用も提供され、その例は、全てDアミノ酸のペプチドGAGPGGGL、GAGPGGAL、AGPGGGL、GPGGGPA、GPGGAL、GPGGGL、GPGGG、GPGAGであり、これらは、例えば、インスリンとインターロイキン-1受容体アンタゴニストと組み合わせられて医薬組成物とされてもよい。好ましくは1型糖尿病(tyope 1 diabetes)における微小血管合併症の治療に使用するための、これらのレトロインベルソバリアントは、4~8アミノ酸長であることが好ましい。これらのバリアントは、例えば、糖尿病及び/若しくは糖尿病合併症を治療するため、又は、例えば1型糖尿病における、炎症活性を低減させるために、本明細書において提供される。
【0103】
少なくとも1つの薬学的に許容される担体又は賦形剤と共に、全てDアミノ酸のペプチドGAGPGGGL、GAGPGGAL、AGPGGGL、GPGGGPA、GPGGAL、GPGGGL、GPGGG、GPGAGの群から選択される少なくとも1つのペプチド又は断片を含む医薬組成物のヒトにおける使用も提供され、医薬は、糖尿病若しくは糖尿病合併症と戦うため又は炎症状態を治療するために効果的な少なくとも1つの追加の活性剤をさらに含んでもよく、例えば、追加の活性剤は、インスリン又はインターロイキン-1受容体アンタゴニスト又はインターロイキン-1に対する抗体、好ましくはインターロイキン-1-ベータに対する抗体である。これらの組成物のヒトにおける使用は、糖尿病及び糖尿病合併症の治療において使用するため又は炎症活性を低減させるために提供される。他の使用もまた提供され、それは例えば、医薬が1型糖尿病、任意選択的に、腎症、ニューロパチー又は網膜症を伴う1型糖尿病を治療するため又は後期2型糖尿病合併症の発症を遅らせるために使用されるものであり、又は医薬が炎症状態を治療するために使用されるものである。ペプチドは、糖尿病及び/又は糖尿病合併症の治療における同時の、別々の又は逐次的な使用のための組合せ調製物として糖尿病又は糖尿病合併症と戦うために効果的な少なくとも1つの追加の活性剤と共に使用されてもよく、又は関節リウマチに対して若しくは関節リウマチを治療するための医薬を調製するため、アテローム性動脈硬化症を治療するため若しくはアテローム性動脈硬化症を治療するための医薬を調製するため又は大血管疾患を治療するため若しくは大血管疾患を治療するための医薬を調製するため又は離断性骨軟骨炎(osteochondrosis disseccans)を治療するため若しくは離断性骨軟骨炎を治療するための医薬を調製するため又は微小血管疾患を治療するため若しくは微小血管疾患を治療するための医薬を調製するため又はメタボリックシンドロームを治療するため若しくはメタボリックシンドロームを治療するための医薬を調製するため又は腎症を治療するため若しくは腎症を治療するための医薬を調製するため又はニューロパチーを治療するため若しくはニューロパチーを治療するための医薬を調製するため又は網膜症(retinapathy)を治療するため若しくは網膜症を治療するための医薬を調製するため又はインターロイキン(interleukine)-1媒介性の炎症を治療するため若しくはインターロイキン-1媒介性の炎症を治療するための医薬を調製するために効果的な少なくとも1つの追加の活性剤と共に使用されてもよい。
【0104】
本開示はまた、Cペプチドに結合してその作用を遮断することによりエラスチン結合タンパク質型を直接的に、又は間接的に阻害するモジュレーター(例えば、エラスチン結合タンパク質型アンタゴニスト)の哺乳動物宿主(ヒトが挙げられるがそれに限定されない)への投与を通じて、本明細書に開示される通り、Cペプチド過剰に関連する1つ以上の障害、例えば、インスリン抵抗性、高血圧、アテローム性動脈硬化症及び早期段階の2型糖尿病を治療する方法に関する。そのようなエラスチン結合タンパク質型アンタゴニストは、メタボリックシンドローム、2型糖尿病及び関連する障害などの障害の治療において有用である。特定の実施形態では、本明細書において提供されるそのようなエラスチン結合タンパク質アンタゴニストは、好ましくは、アルファ-エノラーゼ又はGPR146のアンタゴニストと共に使用されてもよい。有用なエラスチン結合タンパク質アンタゴニストは、配列番号99(QTLPGSCGQVVGSPSAQDEASPLSEWRASYNSAGSNITDA)、配列番号100(LPGSCGQVVGSPSAQDEASPLSEWRASYNSAG)、配列番号101(VVGSPSAQDEASPLSEWRASY)、配列番号102(VVGSPSAQDEASPLS)、配列番号103(PSAQDEASPL)、配列番号104(SPSAQDEASP)、配列番号105(AQDEAS)、配列番号106(PSAQ)、配列番号107(SAQD)、配列番号108(DEAS)、配列番号31(QDEA)、配列番号109(SPSA)、配列番号110(VVGGTEAQRNSWPLQ)、配列番号111(VVGGTEAQRNSWPSQ)、配列番号112(TEAQRNSWP)、配列番号113(AQRN)、配列番号114(IVGGRRARPHAWPFM)、配列番号115(VVGGEDAKPGQFPWQ)、配列番号116(VVGGRVAQPNSWPWQ)、配列番号117(RVAQPNSW)、配列番号118(VVGGAEARRNSWPSQ)、配列番号119(AEARRNSW)、配列番号120(VVGGQEATPNTWPWQ)、配列番号121(QEATPNTW)、配列番号122(VVGGEEARPNSWPWQ)、配列番号123(EEARPNSW)、配列番号124(VVGGTEAGRNSWPSQ)、配列番号125(TEAGRNSWP)、配列番号126(EDYRPSQQDECSPRE)、配列番号127(PSQQDECSP)、配列番号128(QQDEC)、QDE、又はこれらのレトロインベルソ若しくはそれ以外に機能的に関連するペプチドなどのペプチドから選択することができる。
【0105】
例示的には、インターロイキン1受容体アンタゴニスト(IL-1Ra)は組換えタンパク質(rIL-1Ra)、好ましくは組換えヒトタンパク質(rhIL-1Ra)、好ましくはアナキンラである。
【0106】
本発明はまた、Cペプチドのエラスチン結合タンパク質との結合又は相互作用を調整する剤としてのCペプチドの単離された断片のヒトにおける使用及びCペプチドのエラスチン結合タンパク質との結合又は相互作用を調整する剤としてのエラスチン結合タンパク質の単離された断片の使用を提供する。
【0107】
ヒトの治療(treatmet)のための組合せ薬剤に含まれる有用なアンタゴニストは、配列番号99(QTLPGSCGQVVGSPSAQDEASPLSEWRASYNSAGSNITDA)、配列番号100(LPGSCGQVVGSPSAQDEASPLSEWRASYNSAG)、配列番号101(VVGSPSAQDEASPLSEWRASY)、配列番号102(VVGSPSAQDEASPLS)、配列番号103(PSAQDEASPL)、配列番号104(SPSAQDEASP)、配列番号105(AQDEAS)、配列番号106(PSAQ)、配列番号107(SAQD)、配列番号108(DEAS)、配列番号31(QDEA)、配列番号109(SPSA)、配列番号110(VVGGTEAQRNSWPLQ)、配列番号111(VVGGTEAQRNSWPSQ)、配列番号112(TEAQRNSWP)、配列番号113(AQRN)、配列番号114(IVGGRRARPHAWPFM)、配列番号115(VVGGEDAKPGQFPWQ)、配列番号116(VVGGRVAQPNSWPWQ)、配列番号117(RVAQPNSW)、配列番号118(VVGGAEARRNSWPSQ)、配列番号119(AEARRNSW)、配列番号120(VVGGQEATPNTWPWQ)、配列番号121(QEATPNTW)、配列番号122(VVGGEEARPNSWPWQ)、配列番号123(EEARPNSW)、配列番号124(VVGGTEAGRNSWPSQ)、配列番号125(TEAGRNSWP)、配列番号126(EDYRPSQQDECSPRE)、配列番号127(PSQQDECSP)、配列番号128(QQDEC)、QDE、又は関連するペプチドなどのGxxP、xGxPG、GxxPx、GxxPG、xGxxP、xGxxPx、xGxxPGモチーフ結合ペプチドから選択することができ、またこれらは、例えば、インスリンと共にインターロイキン-1受容体アンタゴニスト共に医薬組成物中に組み合わせてもよい。
【0108】
詳細な説明
ヒトCペプチドはヒトエラスチン受容体のリガンドであることが分かる。
【0109】
エラスチン受容体 細胞表面上又は細胞内部の化学基又は分子であって、アミノ酸モチーフGxxPを有するペプチドに対して親和性を有するものを意味し、ここで、Gは1文字表記でアミノ酸グリシンを表し、Pはアミノ酸プロリンを表し、xは任意のアミノ酸を表し、Pの後のアミノ酸は好ましくはVIII型ベータターンを可能とするものであり、該条件はPのC末端側にGが後続する場合に満たされ、前記エラスチン受容体はヒトにおいて、典型的に、識別記号P16278-2の下でGLB1-アイソフォーム2として公的にアクセス可能なデータベースUniprotにおいて知られているエラスチン結合タンパク質により表される。
【0110】
Cペプチド 典型的に、インスリンと共に膵臓中でベータ細胞により産生されるペプチドを意味し、前記Cペプチドはヒトにおいて、識別記号P01308-1、位置57~87の下でINS-アイソフォーム1として公的にアクセス可能なデータベースUniprotにおいて知られているペプチドにより表される。
【0111】
ヒトCペプチドは、未熟なインスリンA鎖及びB鎖を接続し、成熟したインスリンと共に1:1の比で門脈循環中に分泌され、その生物学的活性の証拠が増加しているとはいえ、不活性であると伝統的に考えられてきた。過剰な食事において、過剰な血清Cペプチドが慢性低グレード炎症、インスリン抵抗性及び高血圧に繋がり、メタボリックシンドロームの原因となることを本発明者は示す。Cペプチドは、エラスチンペプチドのエラスチン受容体への結合に特異的なこれまで認識されていなかったxGxxPGモチーフを有し、前記受容体は組織炎症及び組織修復において様々な役割を果たすことを本発明者は示す。最近の発見は、この受容体が、いずれもメタボリックシンドロームに特徴的な、インスリン抵抗性、脂質異常症(dislipidaemia)、高血圧及びアテローム発生を促進することを示す。この発見は、Cペプチドを注目させ、循環するエラスチン由来のペプチドがCペプチドと組み合わされてエラスチン受容体媒介性のインスリン抵抗性及び炎症を刺激し得る時に、COPDなどのインスリン抵抗性の他の状態とメタボリックシンドロームを結び付ける。
【0112】
インスリン抵抗性
インスリン抵抗性(IR)はメタボリックシンドロームの中心である1,2。それは、アテローム硬化性心臓血管疾患及び2型糖尿病のような慢性炎症性の、生活様式、食事又は年齢に関連する状態の病因において極めて重要な位置を占める。メタボリックシンドロームの特徴は、IR、高血圧、脂質異常症、高インスリン血症及び耐糖能障害である。IRの原因について不確実性が存在する。単純化された主要な見解1,3は、慢性低グレード炎症がIR及びその後の高インスリン血症を推進すると主張し、これに反対すると思われる見解は、高インスリン血症の増加がIR及びその後の炎症を推進すると主張する。
【0113】
ヒトにおいて、過剰な食事において過剰な血清Cペプチドが慢性低グレード炎症の他にIR及び高血圧を引き起こしてメタボリックシンドロームに繋がるが、Cペプチドはエラスチン受容体のリガンドとしてこれまで認識されていなかった。
【0114】
エラスチン受容体
ヒトエラスチン受容体4~6は、白血球の走化性及びマトリックスメタロプロテイナーゼの活性化、内皮細胞遊走及び血管新生並びに線維芽細胞及び血管平滑筋細胞の増殖に関与する。該受容体は、組織損傷又は炎症後の肉芽組織において細胞外マトリックスの(タンパク質分解)断片により活性化され、組織修復に向けた何でも屋の仕事を遂行する。
【0115】
該受容体は、ヒトベータガラクトシダーゼの選択的にスプライシングされたバリアントからなる。それは、エラスチン及びフィブリリン-1などの細胞外マトリックスタンパク質(のタンパク質分解断片)中のヘキサペプチドx-Gly-x-x-Pro-Gly(xGxxPG)モチーフに結合する。モチーフの最もよく知られた代表は、(トロポ)エラスチン中に見出される配列番号41(VGVAPG)のヘキサペプチドであるが、一般にエラスチンペプチドと呼ばれるシグネチャー配列xGxxPGに従う多くの他の生物学的に活性のペプチドがアゴニストとして報告されている4,5。生物学的活性のために必須の最小の配列はGxxPであり、PにおいてペプチドはVIII型ベータターンをとる。受容体の結合部位に対応するV14ペプチド(配列番号131(VVGSPSAQDEASPL))は、エラスチンペプチド結合をアンタゴナイズするために使用される
【0116】
エラスチン受容体は、細胞表面上のノイラミニダーゼ(Neu-1)及び保護タンパク質-カテプシンA(PPCA)と複合体を形成する。そのリガンドへの結合後、複合体は細胞中のエンドソーム区画内に移行し、多数の細胞応答を誘発する。マウスにおいて、エラスチンペプチドは、Neu-1を通じてアテローム性動脈硬化症を増強し、Neu-1とインスリン受容体との相互作用によりIRを調節する。さらに、マウスにおいて、PPCAは弾性繊維のアセンブリー及びエンドセリン-1の不活性化のために必要とされ、エンドセリン-1の活性化の障害は高血圧を結果としてもたらす
【0117】
Cペプチド
本明細書において認識されるヒトCペプチド(配列番号1(EAEDLQVGQVELGGGPGAGSLQPLALEGSLQ)31)はxGxxPGモチーフ(下線)を含有し、驚くべきことにエラスチン受容体のリガンドとしてそれを同定する。その発見の広範囲に及ぶ含意を以下に議論する。古典的に、Cペプチドは、インスリン遺伝子から膵ベータ細胞中で産生されるプレプロインスリン中のインスリンのA鎖及びB鎖を接続し、A鎖、B鎖(A en B)のフォールディング及び結合を促進する。作用後、成熟したインスリン及びCペプチドは門脈循環中に分泌される。質素な食事の下であっても過剰な食事の下であっても、インスリン及びCペプチドは等モル濃度で産生及び分泌される。しかしながら、Cペプチドの血漿中半減期は約30分であるのに対してインスリンの半減期は約4分であり10、過剰な食事により、インスリンより高レベルの循環するCペプチドが持続的に維持される。伝統的な見解は、循環するCペプチドは本質的に不活性であり、そのより長い半減期のため、インスリン放出のサロゲートマーカーとして特に有用であると主張する。しかしながら、Cペプチドの生物学的機能を指摘する証拠が蓄積されつつある11~14。マウスでの実験において過剰なCペプチドは脈管系中及び糸球体周囲において炎症効果を誘発し、またCペプチドは患者のアテローム硬化性病変中に沈着していることが判明している15。空腹時血清Cペプチドレベルは、非糖尿病の成人における心臓血管及び全体の死の危険と有意に関係している16。これらの最近の発見は、Cペプチドそれ自体の病態生理学的重要性を確立する。
【0118】
ペンタペプチド27配列番号6(EGSLQ)31
1つ目は、ペンタペプチド27配列番号6(EGSLQ)31に関し、これはヒトCペプチドのC末端の5残基に対応し、全長ペプチドのいくつもの効果を模倣する。ペンタペプチドは、細胞膜結合Cペプチドに取って代わり、細胞内Ca(2+)を増加させ、MAPキナーゼシグナル伝達経路及びNa(+),K(+)-ATPアーゼを刺激する。注記として、27位のグルタミン酸は、Cペプチドによるアルファ-エノラーゼの活性化に必須であることが示されており14、C末端ペンタペプチド部位がCペプチドのアルファ-エノラーゼとの相互作用に関与し得ることを暗示している。
【0119】
中央部分13配列番号8(GGGPGAG)19
第2の部位、並びに本出願が主に焦点を当てる13配列番号8(GGGPGAG)19のヒトCペプチドの中央部分は、血管機能障害に対するその効果を媒介するために不可欠なCペプチドの構造的特徴をラットにおける皮膚チャンバー肉芽組織モデルにおいて調べた時に検出された1413配列番号8(GGGPGAG)19は、Cペプチドの生物学的活性の中心であることが示された。しかしながら、合成のリバース配列(レトロ)及び全てD体のアミノ酸(エナンチオ)Cペプチドは天然Cペプチドと同等の能力を有することが判明したので、その時には14、この中央部分の効果は非キラル相互作用に依拠しなければならないと結論付けられ、それにより、13配列番号8(GGGPGAG)19に結合するいかなる可能な立体特異的受容体から遠ざける教示が為された。それ以来、この教示がCペプチドに関する学識を支配してきた。しかしながら、xGxxPGエラスチン受容体結合モチーフはCペプチドの生物活性のある中央部分(配列番号1(EAEDLQVGQVELGGGPGAGSLQPLALEGSLQ)31)と重なり合い、肉芽組織における血管機能に対する効果と確固として関連付けられ、Cペプチドはエラスチン受容体の生物学的に活性のリガンドとして同定されることを本発明者はここに結論付ける。
【0120】
Cペプチド受容体
現在までに、確固としたCペプチド受容体は分かっていない。ヒト細胞膜へのCペプチドの結合研究12は、少なくとも2つのCペプチド/受容体複合体の存在を指し示しており、1つは高い親和性及び低いモビリティを有し、1つは低い親和性及び高いモビリティを有し、また最近の研究は、プラスミノーゲンの細胞表面受容体であるアルファ-エノラーゼ17、又はGPR14618は、Cペプチドのあり得る受容体候補として、脂質異常症と関連付けられる19ことを示唆する。Cペプチド中の生物学的に活性の部位。少なくとも2つの生物学的に活性の部位がCペプチド中に同定されている。
【0121】
非キラリティーは撤回される
驚くべきことに、参考文献14を改めて検討すると、xGxxPGモチーフもまた生物学的に活性のレトロCペプチド(配列番号136(QLSGELALPQLSGAGPGGGLEVQGVQLDEAE)31)中に存在する。また、生物学的に活性のエナンチオCペプチド(D--EAEDLQVGQVELGGGPGAGSLQPLALEGSLQ31)は、レトロ-エナンチオ配列D--GPGAGSとして隠されている該モチーフを有し、レトロ-エナンチオペプチドはそれらの親ペプチドと立体的にほぼ同一であり、異なるN末端及びC末端の終端であるが全体的な側鎖のトポロジーを維持する20。これらの観察は非キラリティーの教示14を撤回させ、その代わりに、前記モチーフを認識する受容体、すなわちエラスチン受容体へのこれらのペプチドの立体特異的結合を可能とする。
【0122】
Cペプチドはエラスチンペプチドの属の種である。
【0123】
さらに、ヒトCペプチドの断片の追加の例が本明細書において提供され、また14、中央部分のヘキサペプチド12配列番号34(LGGGPG)17を有する全てはいずれも血管機能障害を予防したが、これに対してヘキサペプチドの中央部分が破壊された他のヒトCペプチド断片は活性がないことが判明した。ヘキサペプチド(12配列番号134(LGGGPE)17)GxxPモチーフ(Pは、生物学的活性のために必要とされるVIII型ベータターンを可能とする)を含むラットCペプチドもまた活性であることが判明したが、これに対してエラスチン結合モチーフにおいて必須のPを含有しないブタCペプチド(中央部分12配列番号135(LGGGLG)17)は活性がないことが判明した。注記として、GxxPモチーフを有する11個全てのCペプチド(断片)は血管機能障害を予防したが、これに対して該モチーフを有しない5つ全ては予防せず、循環するCペプチドの断片であっても、GxxPモチーフ及びVIII型ベータターンが存在する限り、エラスチン受容体活性化に寄与し得ることを示す。ヒトCペプチド及びそのxGxxPG含有断片は、したがって、ペプチドのより大きいクラスの属の予想外の種、すなわちエラスチン受容体活性化が可能なエラスチンペプチドと考えることができ、過剰なCペプチドはエラスチン受容体媒介性の組織修復に干渉して、慢性低グレード炎症、IR及び高血圧を調整し得る。インスリン抵抗性はメタボリックシンドロームを超えて広がっている。上記に基づいて、食事が過剰であり及びメタボリックシンドロームを発症する傾向があるヒトにおいて、過剰なCペプチドがエラスチン受容体に結合して少なくとも3つの効果、すなわち、慢性低グレード炎症(むしろ、過剰な血管修復活性として見られる)、インスリン抵抗性及び高血圧を誘発することを本発明者は提起する。該発見は、メタボリックシンドロームと共に見られる状態を、喫煙により若しくは粒子状微細物質(スモッグ)への曝露により、又は妊娠及び成長などの生理的条件により引き起こされる、COPDなどの循環するエラスチン分解産物により恐らくは引き起こされ、Cペプチド及びエラスチン由来のペプチドの両方が増加した時に累積した病理を可能とする状態と結び付け、メタボリックシンドローム及びIRの他の生活様式又は年齢に関連する状態の原因に関する我々の理解における大幅な飛躍を提供する。エラスチンペプチド/エラスチン受容体の結合は、配列番号41(VGVAPG)などの合成ペプチドについて実証されており、アンタゴニストV14ペプチドにより阻害される4~6。配列GxxPを有して又は有さずに提供される合成のヒトCペプチドバリアント又は断片を用いてこれらの試験を行って、結合の阻害を研究するための古典的エラスチン受容体アンタゴニストV14ペプチドなど、結合を研究することが提供される。同様に、血管機能の皮膚チャンバー肉芽組織モデル14においてCペプチド試験を行うこと、又はアテローム性動脈硬化症、Neu-1媒介性のIR若しくはPPCA媒介性の高血圧の確立されたモデル7~9において合成の、誘導可能に若しくは構成的に発現されるCペプチドを試験することができる。例えば、古典的なボイデンチャンバー実験において、1%の血清培地中のCD4+免疫細胞の遊走の100%の増加が10nMのCペプチドによりin vitroで実証され、このCD4遊走はその後、1.3マイクロMのV14ペプチドにより50%を超えて阻害され、アンタゴナイズされ及び減少し、エラスチン受容体アンタゴニストV14ペプチドによるCペプチド特異的生物学的活性の低減を具体的に実証した。
【0124】
本明細書に含まれる参考文献は参照により含められる。
【0125】
【表1】
【0126】
再びとなるが、我々は、過食した時に、膵臓のベータ細胞に継続的なグルコースシグナル伝達を提供してインスリンを産生させ、周囲の肝臓、筋肉及び脂肪細胞中に食品に由来する過剰なグルコースを宿させる。過剰に食事した時に、ベータ細胞からの絶えず増加したインスリン産生を必要とし、それと共にベータ細胞からのCペプチドの絶えず増加した産生を必要とし、Cペプチド及びインスリンは等量で産生及び排出される。インスリンは約3~4分の典型的な半減期を有するので、過剰なインスリンの条件は容易に対処され得る。しかしながら、Cペプチドは典型的には30分を超えるはるかに長い半減期を有し、過剰なCペプチド(及び部分的又は全体的に作用されていないプロインスリン)の沈着が、ベータ細胞及びランゲルハンス島の周囲、並びにまた血管の血管壁中に形成される。周細胞、平滑筋細胞、線維芽細胞、脂肪組織細胞、膵星細胞、及びその他は、内皮細胞と共に、及び恐らくは循環する白血球は、GxxPGを有するCペプチドへのEBPの結合に応答し、それにより、ランゲルハンス島のベータ細胞中及びその周囲において、インターロイキン-1-ベータ媒介性の増殖及びその後の低グレード炎症活性化を伴うマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)誘導性の加水分解を引き起こす。このようにIL-1-ベータは組織炎症を推進し、この組織炎症は、ベータ細胞の機能的集団に影響し、並びにまたその後に、2型糖尿病においてインスリン感受性を推進し得る。CペプチドのGxxPG配列へのEBPの結合は、細胞表面からのEBPのシェディング及びインターロイキン-I受容体の提示の増加をさらに促進して、Cペプチドの沈着がどこに存在していようと、継続的なインターロイキン-1-ベータ媒介性の増殖及び炎症活性化を可能とすることがあり、これもまた2型糖尿病においてインスリン感受性を推進する。そのようにして発症した2型糖尿病又はメタボリックシンドロームの患者において膵臓におけるベータ細胞の損傷及び破壊が、それらの細胞による過剰なCペプチド産生に続く。一般的にインスリン抵抗性として見られる現象は、多くの場合、膵ベータ細胞における初期事象に対して二次的なものであり、血管又は末梢Cペプチドの過負荷との線維芽細胞、平滑筋細胞、周細胞及び白血球の相互作用から生じる。
【0127】
Cペプチドは、そのGXXPG及びXGXPGモチーフのエラスチン結合タンパク質との相互作用を介して走化活性及び生物活性の効果を発揮する。本発明者らは本出願において、Cペプチドはエラスチン結合タンパク質(EBP)との相互作用を介して単球、周細胞、平滑筋細胞、線維芽細胞及び他の細胞に対して走化活性及び生物活性の影響を発揮することを教示する(Privitera et al.,J.Biol.Chem.1998;273:6319-6326)。この受容体は、Cペプチド中に見出されるGly-X-X-Pro-Gly(XGXXPG)又はX-Gly-X-Pro-Gly(XGXPG)モチーフを認識し、Xは任意のアミノ酸、好ましくは疎水性アミノ酸であり得る。一般的にエラスチン結合タンパク質(EBP)と呼ばれるこの受容体タンパク質の素性は、酵素的に不活性の、ベータガラクトシダーゼの選択的にスプライシングされたバリアントとして確立されている。EBPは、保護タンパク質/カテプシンA(PPCA)及びリソソームシアリダーゼ(ノイラミニダーゼ-1、Neu-1)と複合体を形成する。Cペプチドはインスリンと共に等モル濃度で放出されるがはるかに長い半減期を有するので、増加した食物摂取の結果としてのインスリン排出の増加は、いっそう高いCペプチドレベルを結果としてもたらす。これはCペプチドの過剰供給を引き起こし、Cペプチドの沈着がベータ細胞の周囲、さらには(微小)脈管系において観察され、そこでこれらのCペプチドの沈着は、一般的にインスリン抵抗性と呼ばれるものに非常に典型的な低グレード炎症を引き起こす。EBPに結合するGXXPG及びXGXPGモチーフは、血管及び結合組織細胞のインターロイキン-Iベータ媒介性の増殖を誘導する。
【0128】
周細胞、平滑筋細胞、線維芽細胞、脂肪組織細胞、膵星細胞、及びその他は、内皮細胞と共に、及び循環する白血球は、インターロイキン-1-ベータ媒介性の増殖及び低グレード炎症活性化によりGxxPG又はxGxPG含有タンパク質及びペプチドへのEBPの結合に応答する。ヒトプロテオームの解析は、複数のGxxPG又はxGxPGモチーフを有するタンパク質が細胞外マトリックス(ECM)に高度に関連することを示す。複数のGxxPG又はxGxPG部位を有するマトリックスタンパク質としては、フィブリリン-1、-2及び-3、エラスチン、フィブロネクチン、ラミニン並びにいくつものテネイシン及びコラーゲンが挙げられる。
【0129】
最近の研究は、EBP複合体のNeu-1成分が細胞活性化の誘発に関与することを示している。EBPは、様々な種類の白血球、間葉細胞、血管平滑筋細胞及び皮膚線維芽細胞などの多くの細胞種上に存在する。これに対して、ヒトエラスチン中の反復配列である配列番号41(VGVAPG)のヘキサペプチドがこの受容体の最もよく認識されるリガンドであるが、Cペプチド、ガレクチン-3、ヒトコラーゲン6 A3(COL6A3、Uniprot識別記号P1211)中の配列番号25(FRAAPLQGMLPGLLAPLRT)のアミノ酸配列及びヒトコリオゴナドトロピン(hCG)のベータ-2ループもまた本明細書においてEBPに結合できるものとして認識される。配列番号41(VGVAPG)に加えて、モチーフGXXPG又はXGXPG(Xは疎水性アミノ酸である)に従う(全てのエラスチン由来の)ペプチドはin vitroで単球に対して走化性を示す(Bisaccia F,et al.,Int.J.Pept.Protein Res.1994;44:332-341,Castiglione Morelli MA,et al.,J.Pept.Res.1997;49:492-499)。以前には観察されていなかったが、これは注目に値し、何故ならば、霊長動物のCペプチド配列は配列番号41(VGVAPG)の配列を含有しないが、霊長動物のCペプチドは、類似の活性を示す有意な量のGXXP、GXXPG及びXGXPGモチーフの両方を含有するからである。CペプチドのGxxP、GxxPG及びxGxPGの相互作用は、IL-1-ベータの関与を説明する。CペプチドのGxxP、GxxPG及びxGxPGの相互作用は、糖尿病又は代謝障害研究の当業者の他に、エラスチンペプチド及び細胞外マトリックス(ECM)研究の当業者にこれまで見過ごされてきた。この以前には観察されなかった事実は、例えば2型糖尿病を患っている患者の脂肪組織において見られるように、マクロファージ支配的な、IL-1-ベータ媒介性の慢性炎症性疾患過程を説明し、アテローム性動脈硬化症、糖尿病の初期において見られるような膵臓中のベータ細胞の周囲の直接的な膵島炎及び膵島周囲炎、並びに同様に過食の帰結として患者がCペプチド過剰産生及びCペプチド沈着を患うメタボリックシンドロームの多くの他の疾患発現を患っている患者の血管において見られる脈管内膜の肥厚及び平滑筋細胞増殖を説明する。CペプチドのGxxP、GxxPG及びxGxPGの相互作用はまた、白血球の関与を説明する。加えて、IL-1-ベータのシグナル伝達は炎症促進性メディエーターの産生を結果としてもたらし、該メディエーターは、ベータ細胞及び局所的な自然免疫細胞においてフィードフォワードのオートクライン/パラクラインの様式で作用してこれらの効果を増幅し、この増幅は、循環する白血球がGxxPG又はxGxPG含有タンパク質及びペプチドに対して強い走化性を示すという事実により為され、したがってここでもまた、Cペプチドは、Cペプチドがどこに存在していようと、またCペプチド過剰負荷又はさらにはCペプチド沈着の状況においてそれらの細胞を引き付け、これが疾患を悪化させる。本明細書において指し示されるように、Cペプチド及びその分解産物がGxxPG及びxGxPGモチーフを介してマクロファージ支配的な慢性炎症性疾患過程を推進し得るという概念は、全ての種類の糖尿病の病因を解明し、冠動脈疾患、末梢血管疾患及び大動脈瘤などの脈管系に富んだ臓器及び組織において起こる全ての疾患に適用可能である。
【0130】
「ペプチド」により本発明者は、アミノ酸残基がペプチド(-CO-NH-)連結により連結された分子だけでなく、ペプチド結合が反転した機能的に同等の分子も含める。レトロインバースペプチドは、親のL配列の順序から反転した順序で集合したDアミノ酸から構成され、したがって天然配列の全体的なトポロジーを維持している。そのようなレトロインベルソペプチド模倣物は、当該技術分野において公知の方法、例えば、Meziere et al.(1997) J.Immunol.159,3230-3237及びCarver et al.(1997) Biopolymers.1997 Apr 15;41(5):569-90(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている方法を使用して調製することができる。このアプローチは、側鎖の方向ではなく、骨格を伴う変更を含有する偽ペプチドを調製することを伴う。Meziereら及びCarverら(1997年)は、これらの偽ペプチドが有用であることを示している。レトロインバースペプチドは、タンパク質分解に対してはるかに耐性である。レトロインバーションは、ペプチド物質をタンパク質分解から保護する方法である。それは、ペプチド結合の方向を反転させることにより酵素加水分解を最も受けやすいペプチド結合のレトロインバーションを要する。「レトロインベルソペプチド」は、参照ペプチドの構造異性体であり、そのため、酵素加水分解により耐性でありながらそれらの生物学的活性を保存する。ペプチド模倣物は、ペプチドを模倣するように設計された小さいタンパク質様の鎖である。それらは典型的に、分子の特性を変化させるために既存のペプチドの修飾から生じる。例えば、それらは、分子の安定性又は生物学的活性を変化させる修飾から生じ得る(ペプチドの生物学的活性がキラルの場合にのみ有用)。化学合成されたペプチドは一般に、遊離のN及びC末端を有する。N末端アセチル化及びC末端アミド化はペプチドの全体的な電荷を低減させ、したがって、その全体的な溶解性が減少する可能性がある。しかしながら、ペプチドの安定性もまた増加し得る可能性があり、その理由は、末端のアセチル化/アミド化は天然タンパク質のより近い模倣を生成するからである。これらの修飾はペプチドの生物学的活性を増加させる可能性があり、それもまた本明細書において提供される。
【0131】
ペプチド合成
合成のPGドメイン又はGxxP型ペプチド、例えば、配列番号41(VGVAPG)、配列番号138(GVAPGV)、配列番号139(VAPGVG)、配列番号140(APGVGV)、配列番号141(PGVGVA)、配列番号142(GVGVAP)、配列番号60(PGAIPG)、配列番号137(LGTIPG)、配列番号32(LGGGPGAG)、配列番号8(GGGPGAG)、配列番号49(GGGPGA)、配列番号38(GGGP)、配列番号40(GGGPG)、配列番号46(GAGPG)、配列番号50(GGGPE)、配列番号51(GAIPG)、配列番号52(GGVPG)、配列番号53(GVAPG)、配列番号54(YTTGKLPYGYGPGG)、配列番号55(YGARPGVGVGIP)、配列番号56(PGFGAVPGA)、配列番号57(GVYPG)、配列番号58(GFGPG)、配列番号59(GVLPG)、配列番号51(GAIPG)、配列番号60(PGAIPG)、配列番号61(PGAVGP)、配列番号62(VGAMPG)、配列番号63(VGSLPG)、配列番号64(VGMAPG)、配列番号65(VPGVG)、配列番号66(IPGVG)、配列番号63(VGSLPG)、配列番号41(VGVAPG)、配列番号67(VGVPG)、配列番号68(AGAIPG)、配列番号69(VPGV)、配列番号70(LGITPG)、配列番号71(GDNP)、配列番号72(GAIP)、配列番号73(GKVP)、配列番号74(GVQY)、配列番号75(GVLP)、配列番号76(GVGP)、配列番号77(GFGP)、配列番号78(GGIP)、配列番号79(GVAP)、配列番号80(GIGP)、配列番号39(GAGP)、配列番号81(GGIPP)、配列番号82(GQFP)、配列番号83(GLSP)、配列番号84(GPQP)、配列番号85(GGPQP)、配列番号86(GPQPG)、配列番号87(GGPQPG)、配列番号88(GIPP)、配列番号81(GGIPP)、配列番号89(GIPPA)、配列番号90(GGIPPA)又はこれらのレトロインベルソバリアントは、古典的な固相合成にしたがって合成される。PGドメイン、特にモチーフGxxPを有するエラスチンペプチドと相互作用するS-Galの配列を再現するペプチドであるV14ペプチドはNeosystem(Strasbourg、France)から得られる。若しくは、V14ペプチド及びそのバリアントは、本明細書に記載される通りに合成される。ペプチドの純度は、高速液体クロマトグラフィー及び高速原子衝突質量分析により確認される。
【0132】
伝統的に、ペプチドは2~50アミノ酸からなる分子として定義され、これに対してタンパク質は50以上のアミノ酸から構成される。加えて、ペプチドは、二次、三次及び四次構造として公知の複雑なコンフォメーションをとり得るタンパク質よりもうまく定義されていない構造をとる傾向がある。ペプチドとタンパク質との間で機能的な区別も為され得る。しかしながら、ペプチドは、少ないアミノ酸(例えば、2~30-50)を有するペプチド、及び多くのアミノ酸(>50)を有するポリペプチドにさらに分けられることがある。タンパク質は、連結されて一緒になった1つ以上のポリペプチドから形成される。それゆえ、タンパク質は本質的に、非常に大きいペプチドである。実際、多くの研究者の他に、本出願は、ペプチド、又はそれ以外に比較的短いアミノ酸鎖を具体的に指すためにペプチドという用語を使用し、ポリペプチドという用語は、タンパク質、又は50個より多い若しくはそれよりはるかに多くのアミノ酸の鎖を記載するために使用される。
【0133】
Cペプチド又はその断片(fragments therof)を用いる培養細胞の処理
細胞を24ウェルマイクロプレート又は32mmの直径のペトリ皿中に450個/mmの密度でプレートし、2~4日間培養するか、又は上記の通りの培養を行ってもよい。培養の2日目に、細胞を様々なCペプチド(好ましくは表1から選択される)又はそのペプチド断片を用いて1日又は2日処理する。実験では、細胞をCペプチド(1マイクロM)又はポリクローナル抗67kDaエラスチン受容体抗体(抗S-Gal抗体)(10ng/ml)の組合せを用いて2日間処理した。処理の終わりに、細胞をトリプシン処理し(0.25%)、コールターカウンターを用いて細胞数を決定してもよい。チミジン取込みの決定のために、処理の最後の18時間にわたり50マイクロCiの[メチル-H]チミジン(3.2TBq/mmol;Amersham)を用いて細胞を標識する。取り込まれたチミジンを液体シンチレーション分光計(Beckman LS9800)を用いてトリクロロ酢酸沈殿性の数として決定する。V32ペプチド若しくはV32ペプチド断片又はV14ペプチド若しくはV14ペプチド断片を加えることにより結合をアンタゴナイズしてもよい。
【0134】
67kDaのエラスチン受容体の検出。細胞中の67kDaのエラスチン受容体を選択するため又はその存在を確認するために、細胞性RNA及びエクソン2~5の領域にわたる配列の上流及び下流のベータガラクトシダーゼcDNA配列に対応する合成オリゴプライマーを使用して逆転写ポリメラーゼ連鎖反応を行う。90℃で1分間の変性、50℃で2分間のアニーリング及び72℃で5分間の伸長の40サイクルの反応をDNA Thermal Cycler(Perkin-Elmer Cetus)において実行する。ポリメラーゼ連鎖反応生成物は、好ましくは、1%アガロースゲル上で分析される。
【0135】
本明細書におけるタンパク質又はペプチドの組成、構造及び機能の記載において、アミノ酸が参照される。本明細書において、アミノ酸残基は以下の略語を使用することにより表される。また、それ以外に明示的に指し示されなければ、ペプチド及びタンパク質のアミノ酸配列は、左の末端から右の末端へとN末端からC末端として同定され、N末端は最初の残基として同定される。Ala:アラニン残基;Asp:アスパラギン酸残基;Glu:グルタミン酸残基;Phe:フェニルアラニン残基;Gly:グリシン残基;His:ヒスチジン残基;Ile:イソロイシン残基;Lys:リシン残基;Leu:ロイシン残基;Met:メチオニン残基;Asn:アスパラギン残基;Pro:プロリン残基;Gln:グルタミン残基;Arg:アルギニン残基;Ser:セリン残基;Thr:スレオニン残基;Val:バリン残基;Trp:トリプトファン残基;Tyr:チロシン残基;Cys:システイン残基。アミノ酸は、従来の1文字表記の略語により称されることもある;A=Ala;T=Thr;V=Val;C=Cys;L=Leu;Y=Tyr;I=Ile;N=Asn;P=Pro;Q=Gln;F=Phe;D=Asp;W=Trp;E=Glu;M=Met;K=Lys;G=Gly;R=Arg;S=Ser;及びH=His。
【0136】
概要1.エラスチン分解及びGxxPモチーフを有するエラスチンペプチドは血管疾患と関連付けられる。
【0137】
エラスチン由来のペプチド及びエラスチン受容体複合体(ERC)に媒介される血管疾患
タンパク質分解により分解されたエラスチンペプチドによるERCの活性化は血管疾患と関連付けられる。
【0138】
- Matrix ageing and vascular impacts:focus on elastin fragmentation.Duca L,et al;Cardiovasc Res.2016 Jun 1;110(3):298-308.
- Hellenthal FA,Buurman WA,Wodzig WK,Schurink GW.Biomarkers of AAA progression.Part 1:extracellular matrix degeneration.Nat Rev Cardiol 2009;6:464-474.
- Monocyte chemotactic activity in human abdominal aortic aneurysms:role of elastin degradation-peptides and the 67-kD cell surface elastin receptor.Hance KA,et al;J Vasc Surg 2002;35:254-261.
- Elastin degradation is associated with progressive aortic stiffening and all-cause mortality in predialysis chronic kidney disease.Smith ER,et al;Hypertension.2012 May;59(5):973-8
【0139】
プロトタイプの合成エラスチンペプチド、配列番号41(VGVAPG)
配列番号41(VGVAPG)のERCとの相互作用はアテローム性動脈硬化症を引き起こす可能性があり、マクロファージの走化性及び血管新生に関与することの証拠。
【0140】
- Elastin-derived peptides potentiate atherosclerosis through the immune Neu1-PI3Kγ pathway.Gayral S,et al;Cardiovasc Res.2014 Apr 1;102(1):118-27.
- Induction of macrophage chemotaxis by aortic extracts from patients with Marfan syndrome is related to elastin binding protein.Guo G,et al;PLoS One.2011;6(5):e20138.
- Elastin-derived peptides enhance angiogenesis by promoting endothelial cell migration and tubulogenesis through upregulation of MT1-MMP.Robinet A,et al;J Cell Sci.2005 Jan 15;118(Pt 2):343-56.
【0141】
タンパク質分解により分解された配列番号143(VPGVGISPEA)及び配列番号144(GVAPGIGPGG)のエラスチンペプチド
【0142】
配列番号143(VPGVGISPEA)及び配列番号144(GVAPGIGPGG)はヒトアテローム硬化性病変において局在していること及び配列番号144(GVAPGIGPGG)の血清レベルは急性心筋梗塞と関連付けられることの証拠。注記:以下の著者らのいずれも配列番号143(VPGVGISPEA)及び配列番号144(GVAPGIGPGG)中のGxxPモチーフを認識していない
【0143】
- Acute Myocardial Infarction and Pulmonary Diseases Result in Two Different Degradation Profiles of Elastin as Quantified by Two Novel ELISAs.Skjot-Arkil H,et al;PLoS One.2013 Jun 21;8(6):e60936.
【0144】
ERCと相互作用し、生物学的活性を有する追加のエラスチン由来のペプチドは以下において大規模に議論されている:
【0145】
- Degradation of tropoelastin by matrix metalloproteinases--cleavage site specificities and release of matrikines.Heinz A,et al;FEBS J.2010 Apr;277(8):1939-56
【0146】
概要2.GxxPモチーフを有し、血管疾患と関連付けられる非エラスチンペプチド。
【0147】
配列番号8(GGGPGAG)の中央部分を有するCペプチド
Cペプチドはヒトアテローム硬化性病変において局在し、マクロファージの走化性及び血管新生を誘導すること、Cペプチドはアテローム性動脈硬化症を引き起こし得ること並びにCペプチドの血清レベルは全体的な、心臓血管の及び糖尿病の死亡と関連付けられることの証拠。Cペプチドの典型的な分解産物は、配列番号145(VELGGGPGAGSLQP)、配列番号146(LGGGPGAGSLQP)及び配列番号147(LGGGPGAGS)である。注記:以下の著者のいずれもCペプチド中のGxxPモチーフを認識していない。
【0148】
- C-peptide colocalizes with macrophages in early arteriosclerotic lesions of diabetic subjects and induces monocyte chemotaxis in vitro.Marx N,et al;Arterioscler Thromb Vasc Biol.2004 Mar;24(3):540-5.
- Proinsulin C-peptide prevents impaired wound healing by activating angiogenesis in diabetes.Lim YC,et al;J Invest Dermatol.2015 Jan;135(1):269-78.
- C-peptide promotes lesion development in a mouse model of arteriosclerosis.Vasic D,et al;J Cell Mol Med.2012 Apr;16(4):927-35.
- Fasting serum C-peptide levels predict cardiovascular and overall death in nondiabetic adults.Patel N,et al;J Am Heart Assoc.2012 Dec;1(6):e003152.
- C-peptide levels are associated with mortality and cardiovascular mortality in patients undergoing angiography:the LURIC study.Marx N,et al;Diabetes Care.2013 Mar;36(3):708-14.
- Serum C-peptide levels and risk of death among adults without diabetes mellitus.Min JY,Min KB.
CMAJ.2013 Jun 11;185(9):E402-8.
- Serum C-peptide levels as an independent predictor of diabetes mellitus mortality in non-diabetic individuals.Min JY,Min KB.Eur J Epidemiol.2013 Sep;28(9):771-4.
【0149】
配列番号148(AGAGGYPGASYPGAYPGQAPPGAYPGQAPPGAYPGAPGAYPGAPAPGVYPGPPSG)のN末端「コラーゲン様ストレッチ」を有するガレクチン-3
ガレクチン-3の血漿レベルは心不全と関連付けられることの証拠。注記:以下の著者のいずれもガレクチン-3中のGxxPモチーフを認識していない。
【0150】
- Galectin-3,a novel marker of macrophage activity,predicts outcome in patients with stable chronic heart failure.Van der Lok,D, et al;J Am Coll Cardiol 2007 49Suppl.A 98A[Abstract]
- Predictive value of plasma galectin-3 levels in heart failure with reduced and preserved ejection fraction.de Boer RA,et al;Ann Med.2011 Feb;43(1):60-8.
【0151】
配列番号149(EGFEPG)のモチーフを有するフィブリリニン-1(Fibrillinin-1)
配列番号149(EGFEPG)のERCとの相互作用はマクロファージの走化性に関与することの証拠。
【0152】
- Induction of macrophage chemotaxis by aortic extracts of the mgR Marfan mouse model and a GxxPG-containing fibrillin-1 fragment.Guo G,et al;Circulation 2006;114:1855-1862.
【0153】
配列番号137(LGTIPG)のモチーフを有するラミニン
ラミニンは配列番号137(LGTIPG)のモチーフを介してERCと相互作用し、線維芽細胞及び腫瘍細胞の走化性を誘導することの証拠。
【0154】
- The elastin receptor shows structural and functional similarities to the 67-kDa tumor cell laminin receptor.Mecham RP et al;J Biol Chem.1989 Oct 5;264(28):16652-7.
【0155】
【表2】
表1:Cペプチド、種間比較及びアライメント
【0156】
【表3】
表2 血管マトリックスタンパク質エラスチン及びフィブリリン中及びCペプチド中のエラスチン受容体結合モチーフGxxP(下線)の存在。ペプチドを各々の識別記号を用いて示し、アミノ酸をデータベースUniprotにおいて示される通りにナンバリングしている。
【0157】
ERCドッキング部位のさらなる(Furthert)同定
エラスチン受容体複合体(ERC)は、加齢又は喫煙後に細胞外マトリックス(ECM)のタンパク質分解に由来する過剰なペプチドリガンドに結合することによりヒトの血管疾患を引き起こすと考えられている。本発明者らは今回、顕著なことに血管疾患のCペプチド(高血中グルコースによりインスリンと共に誘導される)及びNTproBNP(心筋細胞ストレス下で誘導される)の周知のバイオマーカー中に、新規のERCリガンドを同定した。本発明者らは、A)ヒト血管疾患の中心的病因としてERCリガンドの蓄積を研究すること、B)いずれもヒト血管疾患を結果としてもたらし得る、リスクのある食事、生活様式及び加齢の蓄積から生じるERCリガンドについて試験することにより血管疾患リスクを早期に検出することを提案する。
【0158】
背景.ERCは、エラスチン結合タンパク質(EBP)、保護タンパク質/カテプシンA及びノイラミニダーゼ-1の複合体であり、白血球、線維芽細胞及び平滑筋細胞上に見出される。ERCリガンドは結合モチーフxGxxPG又はxxGxPG(Gはグリシン、Pはプロリン、xは任意のアミノ酸である)、又はVIII型ベータターンをとる場合はxGxxPxを確認する(confirm)。配列番号41(VGVAPG)及びその他、例えば、配列番号197(YGYGPG)、配列番号198(YGARPG)、配列番号199(FGAVPG)のプロトタイプERCリガンドは、エラスチン中の繰返し領域からのタンパク質分解により誘導される。他のものとしては、配列番号149(EGFEPG)(フィブリリン(fibrilin))及び配列番号137(LGTIPG)(ラミニン)である。EBPは別々にガラクトシドに結合する。EBPに結合するERCリガンドは、V14ペプチドによりアンタゴナイズされる。加齢又は喫煙によりエラスチンタンパク質分解から生成されるERCリガンドの循環レベルは、ヒトにおいてアテローム性動脈硬化症、動脈硬化、腹部大動脈瘤及び心筋梗塞と関連付けられており、ERC媒介性の血管疾患の早期の診断、予防及び治療を調査する豊富な基礎を提供する。構造解析及び薬物候補開発のためにEBPにおいてERCリガンドをドッキングさせるための複合のin silicoモデルが利用可能である。in vitroのERCリガンド/EBPの構造機能相関は、白血球走化性、及び平滑筋細胞の増殖を試験することによりヒト細胞において研究することができる。ERCリガンドは、マウスにおいてアテローム性動脈硬化症及びインスリンへの抵抗性を誘導し、ERC媒介性の血管疾患のin vivo研究を可能とする。
【0159】
非ECMタンパク質からタンパク質分解により誘導されるERCリガンドモチーフの同定
- 第1の発見はCペプチドであり、これはプレプロインスリン遺伝子からのプロホルモン転換酵素切断(PC)により誘導され、インスリンと等モル量で排出されるペプチドである。Cペプチドは、配列番号34(LGGGPG)のERCリガンドモチーフを有する。Idoらはどのように、配列番号8(GGGPGAG)のコアモチーフを有するCペプチド断片がラットにおいてグルコース誘導性の血管機能障害を軽減するか、ERCリガンドモチーフを認識しないか。Cペプチドはマウスにおいてアテローム発生性であり、ヒト血管疾患の独立したマーカーであることが見出されている。したがって、Cペプチド中の配列番号34(LGGGPG)の推定上のERCリガンドの発見は、ERC媒介性の血管疾患を高循環性Cペプチドレベルに切に関連付ける。それは驚くべきことに、喫煙後の他に高グルコース又は高デンプンの食事後の血管疾患の共通の病因を提供し、両方の病因はERCの循環性のリガンドに原因として関連付けられる。
【0160】
- 第2の発見は、配列番号44(PGAYPG)の推定上のERCリガンド繰返しモチーフを有する、タンパク質分解を受けやすいN末端ドメインを有する、ガレクチン-3である。ガレクチン-3は、ヒト血管疾患の他に、血管疾患の基礎となる肥満症の独立したマーカーである。ガレクチン-3及びEBPはいずれもガラクトシドに結合し、マウスにおいてインスリン抵抗性の原因となるので、推定上のERCリガンド-受容体相互作用の次にEBPへのガレクチン-3の第2の関係性を本発明者らは示唆する。
【0161】
- 第3の発見は、妊娠中に発現されるベータ絨毛性ゴナドトロピン(ベータ-hCG)のループ2における配列番号45(QGVLPA)のERCリガンドペプチドモチーフであり、このループは、ベータ-hCGからのタンパク質分解によりニックを入れられ、免疫調整及び血管新生に関与する。
【0162】
- 本発明者らは、EBPのin-silicoモデルにおいて、新たに発見された配列番号34(LGGGPG)、配列番号44(PGAYPG)及び配列番号45(QGVLPA)、及びプロトタイプの配列番号41(VGVAPG)をドッキングした。いずれもこの複合モデルにフィットする。また、事前のin-vitroの結果は、ERC-アンタゴニストV14ペプチドによるCペプチドの生物活性の阻害を示す。
【0163】
- 本発明者らは次に、PC切断部位が密接に隣接するxGxxPG又はxxGxPGモチーフを有するタンパク質のさらなる探索を行って、プロタンパク質から誘導し得るその調節(refulatory)モデルエレメントrf断片中のERCリガンドを同定した。本発明者らは、プロカルシトニン(PCT)、アミノ末端プロ脳ナトリウム利尿ペプチド(NTproBNP)、プロオピオメラナコルチン(pro-opiomelanacortin)(POMC)、コラーゲン6A3(COL6A3)及びパイリン中にそれぞれ配列番号200(GVGAPG)、配列番号186(PLGSPG)、配列番号201(DGAKPG)、配列番号202(QGMLPG)及び配列番号196(AGGAPG)を見出した。PCT及びNTproBNPはそれぞれ心不全と相関する。POMCは摂食挙動の調節に関し、COL6A3は肥満症及びインスリン抵抗性における脂肪細胞機能に関する。パイリンは自然免疫に関する。
【0164】
【表4】
【0165】
本発明者らは、血管疾患の3つの周知の循環性バイオマーカーであるCペプチド、アミノ末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)及びガレクチン-3、並びに他のものが、循環性のエラスチン由来ペプチド(EDP)とのほとんど知られていないドッキング部位を共有することを発見した。このドッキング部位を通じて、EDPは、ヒト動脈系の全体を通じて細胞上に発現されるエラスチン受容体複合体(ERC)を活性化させる。ERCは、エラスチン分解及び動脈壁リモデリングに寄与する。EDPによるERCの実験的活性化は、マウスにおいてインスリン抵抗性及びアテローム性動脈硬化症を誘導する。過剰なEDP/ERCのドッキングは、ヒト白血球の走化性及びヒト平滑筋細胞(SMC)の増殖を引き起こし、ヒトにおいて動脈弾性の喪失、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化の増加、腹部大動脈瘤及び心筋梗塞と関連付けられる。
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
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