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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】騒音制御システム
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/178 20060101AFI20240219BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
G10K11/178 100
B60R11/02 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020005471
(22)【出願日】2020-01-16
(65)【公開番号】P2021113860
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(72)【発明者】
【氏名】菅井 卓
【審査官】渡邊 正宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-258472(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 9/00-11/06
G10K 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
騒音を低減する騒音制御装置であって、
スピーカを備えたオーディオ出力部と、
前記騒音の主たる周波数となる単一の周波数を制御周波数として検出する制御周波数検出手段と、
前記騒音をキャンセルする、前記制御周波数の騒音キャンセル音を生成し、生成した騒音キャンセル音を前記オーディオ出力部に出力することにより前記スピーカから出力する騒音制御手段と、
前記騒音制御手段が前記オーディオ出力部に出力する騒音キャンセル音のレベルを調整する出力レベル制御手段と、
マイクと、
前記マイクで収音した音に含まれる、前記制御周波数のn(但し、nは2以上の整数)倍の周波数の成分の大きさを、高調波の大きさとして検出する高調波検出手段とを有し、
前記出力レベル制御手段は、前記高調波検出手段が検出した高調波の大きさが、所定のしきい値を超えたならば、当該超えた時点で前記騒音制御手段が前記オーディオ出力部に出力していた騒音キャンセル音のレベルより大きくならないように、前記騒音制御手段が前記オーディオ出力部に出力する騒音キャンセル音のレベルを調整することを特徴とする騒音制御システム。
【請求項2】
請求項1記載の騒音制御システムであって、
前記高調波検出手段は、高調波の大きさとして、前記マイクで収音した音に含まれる、前記制御周波数の2倍の周波数の成分の大きさと、前記マイクで収音した音に含まれる、前記制御周波数の3倍の周波数の成分の大きさとを少なくとも検出することを特徴とする騒音制御システム。
【請求項3】
請求項1または2記載の騒音制御システムであって、
前記騒音制御手段は、前記マイクで収音される騒音が最小化するように、前記制御周波数の騒音キャンセル音を生成することを特徴とする騒音制御システム。
【請求項4】
請求項1または2記載の騒音制御システムであって、
前記騒音制御手段は、前記制御周波数の余弦信号を入力とする第1適応フィルタと、前記制御周波数の正弦信号を入力とする第2適応フィルタと、前記第1適応フィルタの出力と前記第2適応フィルタの出力を加算して前記騒音キャンセル音を生成する加算器とを有し、
前記第1適応フィルタは、前記マイクで収音した音を誤差信号として、当該誤差信号が減少するように当該第1適応フィルタの伝達関数を適応させ、前記第2適応フィルタは、前記マイクで収音した音を誤差信号として、当該誤差信号が減少するように当該第2適応フィルタの伝達関数を適応させることを特徴とする騒音制御システム。
【請求項5】
請求項1、2、3または4記載の騒音制御システムであって、
当該騒音制御システムは、自動車に搭載され、当該自動車のエンジン音を前記騒音として低減するものであることを特徴とする能動型騒音制御装置。
【請求項6】
請求項5記載の騒音制御システムであって、
前記制御周波数検出手段は、前記自動車のエンジンの回転数から算定されるエンジン音の基本周波数を前記制御周波数として検出することを特徴とする能動型騒音制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、騒音を打ち消す騒音キャンセル音を放射することにより騒音を低減する騒音制御の技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
騒音を打ち消す騒音キャンセル音を放射することにより騒音を低減する騒音制御の技術としては、自動車のエンジン音を騒音として、乗員に聞こえるエンジン音を低減する能動型騒音制御(ANC; Active Noise Control)装置が知られている(たとえば、特許文献1)。
【0003】
このエンジン音を低減する能動型騒音制御装置では、エンジン音の基本周波数と同じ単一の周波数の余弦波信号と正弦波信号を生成し、生成した余弦波信号を適応フィルタを通した信号と正弦波信号を適応フィルタを通した信号とを加算して単一の周波数の騒音キャンセル音を生成し、生成した騒音キャンセル音をアンプを介してスピーカから放射することにより、乗員に聞こえるエンジン音を低減している。ここで、各適応フィルタの伝達関数は、所定の適応動作によって、マイクで収音されるエンジン音が最小化するように更新される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000- 99037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した、能動型騒音制御装置によれば、気温などの環境条件の変化に伴いアンプやスピーカの出力特性が変化して出力特性に高調波歪みが発生し、スピーカから出力される、騒音キャンセル音の周波数の整数倍の周波数の高調波成分が大きくなり、乗員に異音として聞こえてしまうことがあった。すなわち、たとえば、低温環境時に、スピーカの出力特性に高調波歪みが発生し、騒音キャンセル音の高調波の異音が乗員に聞こえてしまうことがあった。
【0006】
そこで、本発明は、騒音をキャンセルする騒音キャンセル音の高調波のノイズの出力を抑制する騒音制御システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題達成のために、本発明は、騒音を低減する騒音制御装置に、スピーカを備えたオーディオ出力部と、前記騒音の主たる周波数となる単一の周波数を制御周波数として検出する制御周波数検出手段と、前記騒音をキャンセルする、前記制御周波数の騒音キャンセル音を生成し、生成した騒音キャンセル音を前記オーディオ出力部に出力することにより前記スピーカから出力する騒音制御手段と、前記騒音制御手段が前記オーディオ出力部に出力する騒音キャンセル音のレベルを調整する出力レベル制御手段と、マイクと、前記マイクで収音した音に含まれる、前記制御周波数のn(但し、nは2以上の整数)倍の周波数の成分の大きさを、高調波の大きさとして検出する高調波検出手段とを備えたものである。ただし、前記出力レベル制御手段は、前記高調波検出手段が検出した高調波の大きさが、所定のしきい値を超えたならば、当該超えた時点で前記騒音制御手段が前記オーディオ出力部に出力していた騒音キャンセル音のレベルより大きくならないように、前記騒音制御手段が前記オーディオ出力部に出力する騒音キャンセル音のレベルを調整する。
【0008】
ここで、このような騒音制御システムは、前記高調波検出手段において、高調波の大きさとして、前記マイクで収音した音に含まれる、前記制御周波数の2倍の周波数の成分の大きさと、前記マイクで収音した音に含まれる、前記制御周波数の3倍の周波数の成分の大きさとを少なくとも検出するように構成してもよい。
【0009】
また、以上の騒音制御システムは、前記騒音制御手段において、前記マイクで収音される騒音が最小化するように、前記制御周波数の騒音キャンセル音を生成するように構成してもよい。
【0010】
また、以上の騒音制御システムは、前記騒音制御手段を、前記制御周波数の余弦信号を入力とする第1適応フィルタと、前記制御周波数の正弦信号を入力とする第2適応フィルタと、前記第1適応フィルタの出力と前記第2適応フィルタの出力を加算して前記騒音キャンセル音を生成する加算器とより構成し、前記第1適応フィルタにおいて、前記マイクで収音した音を誤差信号として、当該誤差信号が減少するように当該第1適応フィルタの伝達関数を適応させ、前記第2適応フィルタにおいて、前記マイクで収音した音を誤差信号として、当該誤差信号が減少するように当該第2適応フィルタの伝達関数を適応させるようにしてもよい。
【0011】
ここで、以上の騒音制御システムは、自動車に搭載され、当該自動車のエンジン音を前記騒音として低減するものであってよい。
また、この場合、前記制御周波数検出手段は、前記エンジンの回転数から算定されるエンジン音の基本周波数を前記制御周波数として検出するものであってよい。
以上のような騒音制御システムによれば、マイクで収音した音に含まれる、騒音キャンセル音の高調波の成分の大きさが大きくなると、騒音キャンセル音の出力のレベルは抑制され、これに伴い、高調波の音の出力レベルも抑制される。
【0012】
よって、気温などの環境条件の変化に伴いスピーカ等の出力特性が変化して出力特性に高調波歪みが発生した場合に、騒音キャンセル音の高調波が乗員に異音として聞こえてしまうことを、騒音キャンセル音による一定の騒音のキャンセルの効果をある程度維持しつつ抑止することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、騒音をキャンセルする騒音キャンセル音の高調波のノイズの出力を抑制する騒音制御システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る騒音制御システムの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態に係る騒音制御処理部の構成の詳細を示すブロックである。
図3】本発明の実施形態に係る出力制御処理を示すフローチャートである。
図4】本発明の実施形態に係る騒音制御システムの出力を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1に、本実施形態に係る騒音制御システムの構成を示す。
ここで、本実施形態に係る騒音制御システムは、自動車に搭載される装置であり、自動車のエンジン音を騒音として、乗員に聞こえるエンジン音を低減するシステムである。
図示するように、騒音制御システムは、スピーカ1、スピーカ1を駆動するアンプ2、マイク3、騒音制御処理部4を備えている。
騒音制御処理部4は、能動型騒音制御部41、出力レベル制御部42、第2高調波検出器43、第3高調波検出器44、以上の各部を制御するコントローラ45を備えている。
能動型騒音制御部41は、マイク3で収音した音をエラー信号として参照して、エラー信号が最小化する単一周波数の騒音キャンセル音、すなわち、乗員に聞こえるエンジン音が最小となる単一周波数の騒音キャンセル音を生成する。出力レベル制御部42は、能動型騒音制御部41が生成した騒音キャンセル音のレベルを調整しアンプ2を介してスピーカ1に出力する。
【0016】
第2高調波検出器43は、マイク3が収音した音に含まれる騒音キャンセル音の周波数の2倍の周波数成分である第2高調波成分の大きさを検出し、第3高調波検出器44は、マイク3が収音した音に含まれる騒音キャンセル音の周波数の3倍の周波数成分である第3高調波成分の大きさを検出する。
【0017】
コントローラ45は、自動車のエンジンの回転周波数f_Engに応じて、能動型騒音制御部41が生成する騒音キャンセル音の周波数を、エンジン音の基本周波数に制御する。また、コントローラ45は、第2高調波検出器43が検出した第2高調波成分の大きさや、第3高調波検出器44が検出した第3高調波成分の大きさが所定のしきい値を超えたならば、それ以上、アンプ2、スピーカ1に入力する騒音キャンセル音のレベルが大きくならないように、出力レベル制御部42に、アンプ2に出力する騒音キャンセル音のレベルを調整させる。
【0018】
次に、図2に、このような騒音制御処理部4の具体的な構成例を示す。
図示するように、この構成例では、能動型騒音制御部41は、コントローラ45の制御に従ってエンジン音の基本周波数と同じ周波数の周期信号ωDを生成する周波数信号生成器411、周期信号ωDに同期した周期信号ωDと同じ周波数の余弦波信号を生成する余弦波発生器412、余弦波発生器412が生成する余弦波信号とπ/2ラジアン位相が異なる信号である正弦波信号を生成する正弦波生成器413、余弦波信号を、設定されているフィルタ係数Wで畳み込んで出力するフィルタW414、正弦波信号をフィルタ係数W1で畳み込んで出力するフィルタW415、フィルタW414の出力とフィルタW415の出力を加算し騒音キャンセル音として出力する加算器416とを備えている。
【0019】
また、能動型騒音制御部41は、Filtered-x アルゴリズムによって、フィルタW414のフィルタ係数W、フィルタW415のフィルタ係数Wを更新する構成として、余弦波信号と正弦波信号に、加算器416からマイク3までの推定伝達関数C^を施して参照信号を生成する伝達系モデル417、フィルタW414のフィルタ係数Wを更新するW用LMS418と、フィルタW415のフィルタ係数Wを更新するW用LMS419を備えている。そして、W用LMS418は、伝達系モデル417が生成した参照信号に応じたステップで、マイク3で収音した音であるエラー信号が最小化するようにフィルタW414のフィルタ係数Wを更新し、W用LMS419は、伝達系モデル417が生成した参照信号に応じたステップで、マイク3で収音した音であるエラー信号が最小化するようにフィルタW415のフィルタ係数Wを更新する。
【0020】
そして、このような動作によって、フィルタW414のフィルタ係数WとフィルタW415のフィルタ係数Wは、エンジン音をできるだけキャンセルする騒音キャンセル音を生成するように自動的に適応される。
【0021】
次に、第2高調波検出器43は、周期信号2ωDの2倍の周波数の周期信号2ωDを生成する2倍倍周器431、周期信号2ωDに同期して周期信号2ωDと同じ周波数の余弦波信号を生成する2倍余弦波発生器432、2倍余弦波発生器432が生成する余弦波信号とπ/2ラジアン位相が異なる信号である正弦波信号を生成する2倍正弦波生成器433、余弦波信号を、設定されているフィルタ係数W20で畳み込んで出力するフィルタW20434、正弦波信号をフィルタ係数W21で畳み込んで出力するフィルタW21435、フィルタW20434の出力とフィルタW21435の出力を加算し2倍比較信号を生成する2倍加算器436、2倍比較信号とマイク3で収音したと音を加算し2倍差分信号を生成する2倍差分検出用加算器437、フィルタW20434のフィルタ係数W20を更新するW20用LMS438と、フィルタW21435のフィルタ係数W21を更新するW21用LMS439を備えている。そして、W20用LMS438は、2倍差分信号が最小化するようにフィルタW20434のフィルタ係数W20を更新し、W21用LMS439は、2倍差分信号が最小化するようにフィルタW21435のフィルタ係数W21を更新する。
【0022】
ここで、このような第2高調波検出器43の動作により、2倍比較信号の大きさが、マイク3が収音した音に含まれる第2高調波成分の大きさと一致するように、フィルタ係数W20とフィルタ係数W21は適応される。
【0023】
したがって、2倍比較信号の大きさは、マイク3が収音した音に含まれる第2高調波成分の大きさを表し、2倍比較信号は、2倍余弦波発生器432が生成する余弦波信号と2倍正弦波発生器が生成する正弦波信号の振幅を1として、
A sin(x) + B cos(x) = (A2 + B2)1/2 sin(x + 定数)
の合成公式より、振幅が(W20 +W21 )の1/2乗の正弦波として表すことができる。そして、音の大きさは振幅の実効値の2乗で表されるので、W20 +W21 は、マイク3が収音した音に含まれる第2高調波成分の大きさや音圧レベル(dB)を表す評価値として用いることができる。
【0024】
次に、第3高調波検出器44は、周期信号2ωDの3倍の周波数の周期信号3ωDを生成する3倍倍周器441、周期信号3ωDに同期して周期信号3ωDと同じ周波数の余弦波信号を生成する3倍余弦波発生器442、3倍余弦波発生器442が生成する余弦波信号とπ/2ラジアン位相が異なる信号である正弦波信号を生成する3倍正弦波生成器443、余弦波信号を、設定されているフィルタ係数W30で畳み込んで出力するフィルタW30444、正弦波信号をフィルタ係数W31で畳み込んで出力するフィルタW31445、フィルタW30444の出力とフィルタW31445の出力を加算し3倍比較信号を生成する3倍加算器446、3倍比較信号とマイク3で収音した音を加算し3倍差分信号を生成する3倍差分検出用加算器447、フィルタW30444のフィルタ係数W30を更新するW30用LMS448と、フィルタW31445のフィルタ係数W31を更新するW31用LMS449を備えている。そして、W30用LMS448は、3倍差分信号が最小化するようにフィルタW30444のフィルタ係数W30を更新し、W31用LMS449は、3倍差分信号が最小化するようにフィルタW31445のフィルタ係数W31を更新する。
【0025】
ここで、このような第3高調波検出器44の動作により、3倍比較信号の大きさが、マイク3が収音した音に含まれる第3高調波成分の大きさと一致するように、フィルタ係数W30とフィルタ係数W31は適応される。
【0026】
そして、第2高調波成分のW20 +W21 と同様に、W30 +W31 は、マイク3が収音した音に含まれる第3高調波成分の大きさや音圧レベル(dB)を表す評価値として用いることができる。
【0027】
次に、コントローラ45が行う出力制御処理について説明する。
図3に、出力制御処理の手順を示す。
図示するように、この処理においてコントローラ45は、まず、出力レベル制御部42にレベル調整無を設定する(ステップ302)。
ここで、出力レベル制御部42は、レベル調整無が設定されている期間中は、騒音制御処理部4から入力する騒音キャンセル音を、そのままアンプ2に出力する。
そして、次に、マイク3が収音した音に含まれる第2高調波成分の大きさの評価値P2と第3高調波成分の大きさの評価値P3を算定する(ステップ304)。
ここで、ステップ302では、騒音制御処理部4の構成として、図2に示した構成を用いる場合には、フィルタW20434のフィルタ係数W20とフィルタW21435のフィルタ係数W21を取得し、W20 +W21 を評価値P2とすると共に、フィルタW30444のフィルタ係数W30とフィルタW31445のフィルタ係数W31を取得しW30 +W31 を評価値P3とする。
【0028】
そして、評価値P2が所定のしきい値Th2より大きいかと、評価値P3が所定のしきい値Th3より大きいかを調べ(ステップ306)、いずれも大きくない場合にはステップ304からの処理に戻る。
【0029】
ここで、しきい値Th2は、それ以上、評価値P2が大きいと、スピーカ1から出力される、騒音キャンセル音の周波数の2倍の周波数の音が乗員に聞こえてしまうこととなる値、もしくは、当該値から所定のマージンを差し引いた値を用い、しきい値Th3は、それ以上、評価値P3が大きいと、スピーカ1から出力される、騒音キャンセル音の周波数の2倍の周波数の音が、乗員に聞こえてしまうこととなる値、もしくは、当該値から所定のマージンを差し引いた値を用いる。
【0030】
一方、評価値P2が所定のしきい値Th2より大きいか、評価値P3が所定のしきい値Th3より大きいかのいずれか、または、双方であった場合には(ステップ306)、現在の能動型騒音制御部41からの騒音キャンセル音の出力レベルをリミット値として算出する(ステップ308)。
【0031】
現在の能動型騒音制御部41からの騒音キャンセル音の出力レベルは、能動型騒音制御部41が出力する騒音キャンセル音が、余弦波発生器412が生成する余弦波信号と正弦波発生器が生成する正弦波信号の振幅を1として、振幅が(W +W )の1/2乗の正弦波として表すことができるので、能動型騒音制御部41からフィルタW414のフィルタ係数WとフィルタW415のフィルタ係数Wを取得して算出することもできる。
【0032】
そして、次に、出力レベル制御部42に、算出したリミット値を設定し、レベル調整を開始させる(ステップ310)。
ここで、出力レベル制御部42は、レベル調整を開始すると、アンプ2に出力する騒音キャンセル音のレベルが、設定されたリミット値を超えないように、騒音キャンセル音のゲインを調整する。
【0033】
この調整は、たとえば、能動型騒音制御部41から入力する騒音キャンセル音のレベルが、設定されたリミット値を超えている場合に、騒音キャンセル音をリミット値を超えないレベルまで減衰させてアンプ2に出力することにより行う。また、この場合において、能動型騒音制御部41から入力する騒音キャンセル音のレベルは、能動型騒音制御部41からフィルタW414のフィルタ係数WとフィルタW415のフィルタ係数Wを取得して算出するようにしてもよい。
【0034】
そして、以降は、評価値P2がしきい値Th2より大きくなく、かつ、評価値P3がしきい値Th3より大きくなくなるまで(ステップ314)、マイク3が収音した音に含まれる第2高調波成分の大きさの評価値P2と第3高調波成分の大きさの評価値P3の算定を繰り返し(ステップ312)、評価値P2がしきい値Th2より大きくなく、かつ、評価値P3がしきい値Th3より大きくなくなったならばステップ302からの処理に戻る。
【0035】
以上、コントローラ45が行う出力制御処理について説明した。
以上のような出力制御処理の作用について、騒音キャンセル音の周波数が40Hzである場合を例にとり図4に示す。
出力レベル制御部42によるレベル調整を行わなかった場合には、図4a1のような40Hzの騒音キャンセル音の出力のレベル増大に伴って、その高調波である図4a2の80Hzの音と図4a3の120Hzの音が、図中にハッチングで示した乗員に聞こえる領域に達する大きさのレベルで出力されることとなる場合に、出力レベル制御部42によるレベル調整によって、図4b1に示すように、40Hzの騒音キャンセル音の出力のレベルは抑制され、これに伴い、図4b2、b3に示すように、その高調波である80Hzの音と120Hzの音のレベルも、乗員に聞こえる領域に達する大きさのレベルまで達しないように抑制される。
【0036】
また、このように40Hzの騒音キャンセル音の出力のレベルを抑制した場合でも、一定のエンジン音のキャンセルの効果を得ることができる。
以上、本発明の実施形態について説明した。
ところで、以上の実施形態では、騒音キャンセル音の第2高調波と第3高調波の成分のみを考慮したが、これは、より高次の高調波の成分まで考慮するようにしてもよい。
また、以上では、出力レベル制御部42を、能動型騒音制御部41が生成した騒音キャンセル音のレベルを調整するように設けたが、これは、出力レベル制御部42を、能動型騒音制御部41のフィルタW414の出力のレベルと、フィルタW415の出力のレベルをそれぞれ調整するように設けてもよい。この場合には、余弦波発生器412が生成する余弦波信号と倍正弦波発生器が生成する正弦波信号の振幅を1として、出力レベル制御部42において、フィルタW414の出力の振幅がリミット値設定時のフィルタ係数Wを超えないように、フィルタW415の出力の振幅がリミット値設定時のフィルタ係数Wを超えないように調整する。
【0037】
また、以上の実施形態は、エンジン音以外の騒音の低減を行う場合にも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1…スピーカ、2…アンプ、3…マイク、4…騒音制御処理部、41…能動型騒音制御部、42…出力レベル制御部、43…第2高調波検出器、44…第3高調波検出器、45…コントローラ、411…周波数信号生成器、412…余弦波発生器、413…正弦波生成器、414…フィルタW、415…フィルタW、416…加算器、417…伝達系モデル、418…W用LMS、419…W用LMS、431…2倍倍周器、432…2倍余弦波発生器、433…2倍正弦波生成器、434…フィルタW20、435…フィルタW21、436…2倍加算器、437…2倍差分検出用加算器、438…W20用LMS、439…W21用LMS、441…3倍倍周器、442…3倍余弦波発生器、443…3倍正弦波生成器、444…フィルタW30、445…フィルタW31、446…3倍加算器、447…3倍差分検出用加算器、448…W30用LMS、449…W31用LMS。
図1
図2
図3
図4