(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】シート給送装置、画像読取装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B65H 1/04 20060101AFI20240219BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20240219BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20240219BHJP
H04N 1/04 20060101ALI20240219BHJP
G03G 21/16 20060101ALN20240219BHJP
【FI】
B65H1/04 324
G03G15/00 107
H04N1/00 567Q
H04N1/12 Z
G03G21/16 195
(21)【出願番号】P 2020010968
(22)【出願日】2020-01-27
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 晃
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-040093(JP,A)
【文献】特開2002-247295(JP,A)
【文献】特開平06-022096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 1/04
G03G 15/00
H04N 1/00
H04N 1/04
G03G 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを支持するシート支持面を有するシート支持部材と、
前記シート支持部材によって支持されたシートを給送するシート給送手段と、
前記シート給送手段によって給送されたシートを排出方向に排出するシート排出手段と、
前記シート排出手段によって排出されるシートを支持するシート排出面を有する排出シート支持手段と、
前記シート支持面に設けられた一対の規制部材と、
前記シート支持部材における前記シート支持面の反対側である裏面に設けられる取付部材を有し、シートの給送方向に直交する幅方向において、前記一対の規制部材の一方の規制部材の移動に連動させて他方の規制部材を移動させる連動機構と、
前記幅方向における前記連動機構の位置を調節し、かつ前記連動機構の位置が調節された状態で前記取付部材を固定する調節固定手段と、
前記シート排出面に対向するように配置され、前記連動機構を覆うカバー部材と、を備え、
前記カバー部材は、前記調節固定手段を露出させる貫通穴を有する、
ことを特徴とするシート給送装置。
【請求項2】
前記取付部材は、前記幅方向に延びる長穴を有し、
前記調節固定手段は、ネジと、前記長穴と、前記シート支持部材に設けられ、かつ前記ネジが前記長穴を貫通した状態で前記ネジが差し込まれて締結可能なネジ穴と、によって構成される、
ことを特徴とする請求項1に記載のシート給送装置。
【請求項3】
前記貫通穴に進入したシートを前記シート排出面に向かって案内し、前記シート排出面に対向して配置される第1案内面を有し、前記シート排出面に対して前記カバー部
材の外面よりも内側に収納される第1リブと、
前記貫通穴に進入したシートを前記シート排出面に向かって案内し、前記シート排出面に対向して配置される第2案内面を有し、前記シート排出面に対して前記カバー部
材の外面よりも内側に収納され、かつ前記幅方向において前記第1リブと異なる位置に配置される第2リブと、を備え、
前記ネジは、前記幅方向において前記第1リブと前記第2リブとの間に配置され、
前記第1案内面及び前記第2案内面は、前記シート排出面までの距離が前記ネジよりも近くなるように形成されている、
ことを特徴とする請求項2に記載のシート給送装置。
【請求項4】
前記第1リブ及び前記第2リブは、前記貫通穴から露出する位置に配置され、前記幅方向に視て、シートの排出方向の上流端が前記シート排出面に対して前記カバー部
材の内面よりも遠い位置に配置され、前記排出方向の下流端が前記シート排出面に対して前記カバー部
材の内面よりも近くなるように配置され、
前記第1案内面は、前記第1リブにおいて前記排出方向の上流端から前記排出方向の下流端に向かって連続して形成され、
前記第2案内面は、前記第2リブにおいて前記排出方向の上流端から前記排出方向の下流端に向かって連続して形成される、
ことを特徴とする請求項3に記載のシート給送装置。
【請求項5】
前記第1案内面は、前記排出方向の下流ほど前記シート排出面に向かって傾斜した第1傾斜面を有し、
前記第2案内面は、前記排出方向の下流ほど前記排出面に向かって傾斜した第2傾斜面を有し、
前記第1傾斜面と前記第2傾斜面とは、前記幅方向に視て、前記貫通穴の上側の開口から前記貫通穴の下側の開口に向けて傾斜して配置される、
ことを特徴とする請求項4に記載のシート給送装置。
【請求項6】
前記調節固定手段による前記取付部材の固定が解除された状態において操作することで、前記幅方向における前記連動機構の位置を移動させる操作部材を備え、
前記操作部材は、前記貫通穴から露出する位置であり、かつ前記シート支持面に対して前記カバー部
材の外面よりも内側に収納される、
ことを特徴とする請求項3から5のいずれか1項に記載のシート給送装置。
【請求項7】
前記操作部材は、前記幅方向に視て、前記第1リブ及び前記第2リブよりも前記シート排出面に向かって突出して配置される、
ことを特徴とする請求項6に記載のシート給送装置。
【請求項8】
前記操作部材は、前記シート排出面に対向する端面が、前記排出方向の下流ほど前記シート排出面に向かって傾斜している、
ことを特徴とする請求項6又は7に記載のシート給送装置。
【請求項9】
前記貫通穴は、前記排出方向の下流側の側面が、前記排出方向の下流ほど前記シート排出面に向かって傾斜している、
ことを特徴とする請求項6から8のいずれか1項に記載のシート給送装置。
【請求項10】
前記幅方向における前記シート支持面に対する前記一対の規制部材の相対位置を示すメモリを備える、
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載のシート給送装置。
【請求項11】
前記連動機構を設計上の初期位置に固定するための設計固定手段を備える、
ことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載のシート給送装置。
【請求項12】
前記シート支持部材は、回動軸を中心に前記カバー部材と共に上方に回動可能に構成される、
ことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載のシート給送装置。
【請求項13】
請求項1から
12のいずれか1項に記載のシート給送装置と、
前記シート給送装置によって給送されたシートの画像を読み取る画像読取手段と、を備える、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項14】
請求項
13に記載の画像読取装置と、
前記画像読取装置によって読み取られた画像をシートに形成する画像形成手段と、を備える、
ことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを給送するシート給送装置、並びにこれを備える画像読取装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複合機等の画像形成装置として、給送トレイから用紙を分離給送して用紙の画像を読み取った上で排出トレイに排出する自動原稿搬送装置(以下、ADF:Auto Document Feeder)を備える構成が知られている。ADFによって画像を読み取る場合には、用紙の給送方向に直交する幅方向の適切な位置に用紙を搬送する必要がある。これに対して、特許文献1には、用紙の画像を所望の位置にて読み取れるように給送トレイ上の用紙の位置を規制する一対のサイド規制板を備える構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された構成によって幅方向における用紙の位置を規制した際に、画像形成装置の部品寸法や組み立てによるバラつきによって、読み取られた用紙の左端レジストが所望の位置からずれてしまう場合がある。「左端レジスト」とは、幅方向における読み取られた用紙の画像の左側端部の位置のことをいう。特許文献1では、給送トレイの内部に給送トレイとサイド規制板との相対的な位置を調節する調節機構が設けられている。そのため、搬送する用紙の位置を調節するには、給送トレイを分解しなければならず、作業性が低下するという課題がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、給送トレイに設けられたサイド規制板の位置の調節を容易に実行可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、シート給送装置、並びにこれを備える画像読取装置及び画像形成装置において、シートを支持するシート支持面を有するシート支持部材と、前記シート支持部材によって支持されたシートを給送するシート給送手段と、前記シート給送手段によって給送されたシートを排出方向に排出するシート排出手段と、前記シート排出手段によって排出されるシートを支持するシート排出面を有する排出シート支持手段と、前記シート支持面に設けられた一対の規制部材と、前記シート支持部材における前記シート支持面の反対側である裏面に設けられる取付部材を有し、シートの給送方向に直交する幅方向において、前記一対の規制部材の一方の規制部材の移動に連動させて他方の規制部材を移動させる連動機構と、前記幅方向における前記連動機構の位置を調節し、かつ前記連動機構の位置が調節された状態で前記取付部材を固定する調節固定手段と、前記シート排出面に対向するように配置され、前記連動機構を覆うカバー部材と、を備え、前記カバー部材は、前記調節固定手段を露出させる貫通穴を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、給送トレイに設けられたサイド規制板の位置の調節を容易に実行可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の実施例1の画像形成装置の全体構成図。
【
図4】実施例1の給送トレイの概略斜視図(A、B)。
【
図5】実施例1の調節ユニットの概要図(A、B)。
【
図6】実施例1のシート給送装置において給送トレイを回動させた状態を示す図。
【
図7】実施例1のシート給送装置のサイド規制板の連動機構を示す図。
【
図8】実施例1の第2リブと貫通穴との関係を示した図。
【
図9】実施例1の第1リブとツマミと貫通穴との関係を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施例について図面を参照して説明する。以下の説明においては、画像形成手段として電子写真方式の画像形成部200Aを備える画像形成装置200を例に挙げているものの、インクジェット方式等の電子写真方式以外の画像形成手段を備える場合にも、以下の説明と同様の構成を適用することができる。
【実施例1】
【0010】
まず、
図1を参照して実施例1の画像形成装置200の概略構成について説明する。
図1は、実施例1のシート給送装置を構成する原稿自動搬送装置(以下、ADF300とする)を備える画像形成装置200の概略構成図である。画像形成装置200は、装置本体202と、記録媒体としてのシートが収納されている給送カセット203と、原稿の画像読取を行うための画像読取装置201とによって構成される。給送カセット203は、装置本体202の下方に配置され、画像読取装置201は、装置本体202の上方に配置されている。画像形成装置200は、例えば、画像読取装置201を含んで構成されるファクシミリ装置、プリンタ及び複合機等である。
【0011】
装置本体202は、シートに画像を形成する画像形成手段としての画像形成部200Aを有して構成される。給送カセット203は、収納されているシートを画像形成部200Aに向けて給送する給送手段を有して構成される。また、装置本体202の上方には、シートの画像を読み取るCCD等を備えた画像読取装置201が配置されている。画像読取装置201は、CCD等の読取手段に向けてシートを搬送するシート給送装置としてのADF300を有して構成されている。そして、その画像読取装置201と装置本体202との間には、装置本体202で搬送されたシートを排出して積載する本体排出部204としての空間が設けられている。画像形成部200Aは、電子写真方式のプリントエンジンであり、不図示のレーザ書き込み部、電子写真プロセス部及び定着部等を内蔵している。給送カセット203には、収納されたシートを画像形成部200Aに向けて分離給送する不図示の給送ローラ等が設けられている。
【0012】
次に、画像読取装置201を構成するADF300とリーダ301の概略構成について説明する。
図2は、画像読取装置201の概略斜視図である。画像読取装置201は、シートの画像を読取るリーダ301と、リーダ301に向けて複数枚のシートからシートを1枚ずつ分離搬送するためのADF300とを備える。ADF300は、給送対象の原稿であるシートが支持される給送トレイ302と、給送トレイ302から搬送されて、排出されるシートが支持される排出シート支持手段としての排出トレイ303とを備える。そして、ADF300の下方には、ADF300によって搬送されたシートの画像を読み取ったり、ADF300を開閉して設置された書籍等の厚みのあるシートの画像を読み取るための画像読取手段としてのリーダ301が設けられている。
【0013】
次に、画像読取装置201の内部構造について説明する。
図3は、画像読取装置201の概略断面図である。ADF300は、給送トレイ302に支持された複数枚のシート束400からシートを1枚ずつ分離給送するために、ピックアップローラ401と、分離ローラ402と、を有する。本実施例のシート給送手段は、ピックアップローラ401と分離ローラ402とによって構成される。シート束400の上面にピックアップローラ401が当接して回転することにより、シート束400からシートが分離ローラ402に向けてピックアップされ、分離ローラ402によってシートが1枚ずつ分離されてシートが給送される。ADF300は、分離ローラ402から給送されたシートを搬送する引抜ローラ403と、第1リードローラ404と、第2リードローラ405と、排出ローラ406とを有する。
【0014】
分離ローラ402によって分離されて給送されたシートは、シートの給送方向において引抜ローラ403、第1リードローラ404、第2リードローラ405、排出ローラ406の順に搬送され、排出トレイ303に排出される。引抜ローラ403は、分離ローラ402から搬送されたシートを引き抜くためのローラである。引抜ローラ403によって搬送されたシートは、第1リードローラ404及び第2リードローラ405によって搬送されてシートの画像が読み取られ、シート排出手段としての排出ローラ406によって排出トレイ303に排出される。
【0015】
上述したようにADF300の下方には、シートの画像を読み取る画像読取手段としての第1読取手段409と、第2読取手段410とを有するリーダ301が設けられている。第1読取手段409は、ADF300で搬送されたシートの表面の画像を流し読みガラス407を介して読み取ったり、原稿台ガラス408に支持されたシートの画像を読み取る。ADF300で搬送されたシートの表面の画像を読み取る場合、第1読取手段409は、流し読みガラス407と対向する位置(
図3で示す位置)で静止する。一方で、原稿台ガラス408に支持されたシートの画像を読み取る場合、第1読取手段409は、リーダ301の内部に設けられた不図示のレール上を
図3の矢印RDの方向に移動して読み取りを行う。さらに、ADF300の内部には、搬送されたシートの裏面の画像を読み取る第2読取手段410が配置されている。第2読取手段410は、第1読取手段409と対向した位置に配置されている。このように、シートの搬送方向において第1リードローラ404と第2リードローラ405との間の位置に、第1読取手段409と第2読取手段410とが対向して配置されることで、搬送されたシートの表裏両面の画像を読み取ることが可能である。
【0016】
次に、給送トレイ302の構成について説明する。
図4(A)は、シートが支持されるシート支持面500Aから視た給送トレイ302の概略斜視図である。
図4(B)は、シート支持面500Aの反対側の裏面から視た給送トレイ302の概略斜視図である。
図4(A、B)に示すように、給送トレイ302は、シートを支持するシート支持面500Aを有するシート支持部材としての上部構造体500と、排出トレイ303(
図3参照)に対向して配置される下部構造体100とによって構成される。そして、上部構造体500には、シートSの搬送方向と直交する方向(幅方向W:
図4(A)参照)における、シート支持面500Aに支持されたシートSの端部の位置を規制するサイド規制板501A、501Bが設けられている。以後、サイド規制板501A、501Bを区別する必要がない場合には、「サイド規制板501」と記載する。本実施例の一対の規制部材がサイド規制板501である。
【0017】
図7に示すように、上部構造体500のシート支持面500Aの反対側である裏面500Bには、取付部103と、一対のラックギア900A、900Bと、ピニオンギア901とが設けられている。本実施例の取付部材としての取付部103は、上部構造体500のシート支持面500Aの反対側である裏面500Bに、幅方向Wに移動可能に取り付けられている。一対のラックギア900A、900Bと、ピニオンギア901とは、取付部103によって裏面500Bに取り付けられている。また、取付部103には、幅方向Wにおける一対のラックギア900A、900Bと、ピニオンギア901との位置を調節した上で固定するための調節ユニット130が設けられている。調節ユニット130の詳細については、後述する。ピニオンギア901は、一対のラックギア900A、900Bに噛み合うギアである。裏面500Bに配置されたラックギア900A、900Bと、ピニオンギア901とは、カバー部材としての下部構造体100によって覆われている。
【0018】
図4(A)に示すように、ラックギア900Aは、上部構造体500に設けられた溝を介してサイド規制板501Aと連結されている。また、
図4(A)に示すように、ラックギア900Bは、上部構造体500に設けられた溝を介してサイド規制板501Bと連結されている。このような構成により、サイド規制板501Aの移動に連動してサイド規制板501Bが移動する。例えば、サイド規制板501Aを
図4(A)のW1方向に移動させると、ラックギア900AもW1方向に移動する。そして、ラックギア900Aの移動によりピニオンギア901が回転して、ピニオンギア901の回転によってラックギア900Bが
図4(A)のW1´方向に移動する。サイド規制板501Bは、ラックギア900Bに連結されているため、ラックギア900Bの移動によって
図4(A)のW1´方向に移動する。
【0019】
また、例えば、サイド規制板501Aを
図4(A)のW2方向に移動させると、ラックギア900AもW2方向に移動する。そして、ラックギア900Aの移動によりピニオンギア901が回転して、ピニオンギア901の回転によってラックギア900Bが
図4(A)のW2´方向に移動する。サイド規制板501Bは、ラックギア900Bに連結されているため、ラックギア900Bの移動によって
図4(A)のW2´方向に移動する。つまり、本実施例の連動機構は、取付部103と、ラックギア900A、900Bと、ピニオンギア901とによって構成され、サイド規制板501A、501Bのいずれか一方の移動に連動して、サイド規制板501B、501Aの他方が移動する。なお、
図4(A)のW1方向、W1´方向、W2方向、及びW2´方向は、いずれも幅方向Wに平行な方向であり、かつシートの給送方向FDに直交する方向である。
【0020】
なお、上部構造体500と下部構造体100とを一体的に形成して、給送トレイ302の内部に空間が形成されるような構造としてもよい。この場合、ラックギア900A、900Bとピニオンギア901とは、いずれも給送トレイ302の内部空間に配置され、取付部103によって上部構造体500の裏面500Bに取り付けられる。
【0021】
また、上部構造体500には、給送トレイ302を回動可能に支持する回動軸502が設けられている(
図4(A、B)参照)。
図2に示す状態にあるADF300において、給送トレイ302を矢印RT方向に回動させると、
図6に示す状態となり、排出トレイ303と、下部構造体100とによって形成される角度が大きくなる。これにより、シートの排出方向EJにおいて下部構造体100の上流側にもユーザがアクセス可能な状態となる。本実施例において、給送トレイ302の下部構造体100には、調節ユニット130が露出する位置に貫通穴101が設けられている。
【0022】
ここで、調節ユニット130の詳細な構成について説明する。
図5(A)は、設計上の初期位置に取付部103を固定した状態における調節ユニット130と貫通穴101とを示す概要図である。また、
図5(B)は、設計上の初期位置以外の位置に取付部103を固定可能な状態における調節ユニット130と貫通穴101とを示す概要図である。調節ユニット130は、取付部103と、ネジ104と、上部構造体500の裏面500Bに形成され、ネジ104が差し込まれて締結可能な第1差し込み穴502A及び第2差し込み穴502Bとによって構成される。また、調節ユニット130は、下部構造体100に設けられた貫通穴101から露出して配置され、かつ貫通穴101を介してユーザが操作可能に配置されている(
図4(B)参照)。本実施例のネジ穴が第1差し込み穴502Aである。
【0023】
まず、
図5(B)を参照して、調節ユニット130を構成する取付部103の形状について説明する。取付部103には、第1取付穴103Aと、幅方向において第1取付穴103Aと異なる位置に配置される第2取付穴103Bとが形成されている。第1取付穴103Aは、幅方向Wに延びる長穴であり、第2取付穴103Bは、幅方向の長さが第1取付穴103Aよりも短い穴である。また、上部構造体500の裏面500Bには、ネジ104が差し込まれて締結可能である第1差し込み穴502A(
図5(A)参照)と、ネジ104が差し込まれて締結可能である第2差し込み穴502B(
図5(B)参照)とが形成されている。取付部103は、ネジ104によって上部構造体500の裏面500Bに固定することができる。本実施例では、例えば、
図5(A)又は
図5(B)に示すようにして上部構造体500の裏面500Bの裏面に対して取付部103が固定される。
【0024】
図5(B)には、ネジ104が第1取付穴103Aを貫通した状態で第1差し込み穴502Aに差し込まれた状態を示している。第1取付穴103Aは、上述したように幅方向Wに延びる長穴である。これによりネジ104は、第1取付穴103Aを貫通した状態で、かつ第1取付穴103Aの任意の位置で第1差し込み穴502Aに差し込まれて締結可能である。これにより、ネジ104が第1取付穴103Aを貫通した状態で第1差し込み穴502Aに差し込まれた場合には、幅方向Wにおける取付部103の位置を調節した上で上部構造体500の裏面500Bに固定することができる。つまり、この場合、幅方向Wにおけるラックギア900A、900Bと、ピニオンギア901との位置を調節した上で、ラックギア900A、900Bと、ピニオンギア901とを上部構造体500の裏面500Bに固定することができる。本実施例の調節固定手段は、ネジ104と、取付部103に形成された第1取付穴103Aと、上部構造体500の裏面500Bに形成された第1差し込み穴502Aとによって構成される。
【0025】
一方で、
図5(A)には、ネジ104が第2取付穴103Bを貫通した状態で第2差し込み穴502B(
図5(B)参照)に差し込まれた状態を示している。上述したように、第2取付穴103Bは幅方向の長さが第1取付穴103Aよりも短い。これによりネジ104は、第2取付穴103Bを貫通して第2差し込み穴502Bに差し込んだ状態で締結されることとなる。これにより、ネジ104が第2取付穴103Bを貫通した状態で第2差し込み穴502Bに差し込まれた場合には、幅方向Wにおける取付部103の位置を調節することができない。つまり、この場合、幅方向Wにおける取付部103の位置は、上部構造体500の裏面500Bの所定の位置に固定されることとなる。取付部103の所定の位置とは、例えば、給送トレイ302の設計上の取付部103の初期位置であり、この場合、幅方向Wにおけるラックギア900A、900B及びピニオンギア901も設計上の初期位置に固定されることとなる。本実施例の設計固定手段は、ネジ104と、取付部103に形成された第2取付穴103Bと、上部構造体500の裏面500Bに形成された第2差し込み穴502Bとによって構成される。
【0026】
以上説明したように、本実施例では貫通穴101を介して調節ユニット130を操作することができる。そして、ネジ104を緩めて取付部103の固定を解除した状態で、調節ユニット130を操作することで、上部構造体500に対する幅方向Wにおけるラックギア900A、900Bと、ピニオンギア901との位置を調節することが可能となる。つまり、シート支持面500Aにおける上部構造体500とサイド規制板501(
図4(A)参照)との相対的な位置を調節する場合に、
図6に示すように給送トレイ302を回動させればよく、給送トレイ302を分解する必要がない。したがって、ADF300において、サイド規制板501の位置の調節を行うに際し、給送トレイ302を分解することなく容易に行うことが可能となる。
【0027】
なお、
図5(A、B)には、ネジ104を1つだけ用いた調節ユニット130を例示したものの、ネジを2つ使って取付部103を上部構造体500の裏面500Bに取り付ける構成であってもよい。この場合、幅方向Wにおける取付部103の位置は、上部構造体500の裏面500Bの所定の位置に固定される。
【0028】
図5(A、B)に示すように、取付部103には、第1リブ106Aと第2リブ106Bとが設けられている。第2リブ106Bは、幅方向Wにおいて第1リブ106Aと異なる位置であり、かつ取付部103において貫通穴101から露出する位置に配置されている。第1リブ106Aも、取付部103において貫通穴101から露出する位置に配置されている。さらに、幅方向Wにおいて第1リブ106Aと第2リブ106Bとの間の位置にネジ104が配置される位置関係となっている。
図8及び
図9は、
図5の幅方向WにADF300を視たときの断面図である。なお、
図8及び
図9において、排出トレイ303においてシートが支持される面の仮想的な位置をシート排出面303Aとして示している。
【0029】
図8に示すように、第2リブ106Bは、シートをシート排出面303Aに向けて案内する第2案内面としての第2ガイド部160Bを有して形成され、幅方向Wに視て、下部構造体100の外面100Aよりも給送トレイ302の内側に配置されている。また、第2リブ106Bは、幅方向Wに視て、シート排出面303Aまでの距離が、ネジ104からシート排出面303Aまでの距離よりも短くなるように形成されている。
【0030】
また、第2ガイド部160Bは、シートの排出方向EJの下流ほどシート排出面303Aに向かって傾斜した第2傾斜面161Bを有して形成されている。第2傾斜面161Bは、幅方向Wに視て、シート排出面303Aに対向しない上側の貫通穴101の開口101Aからシート排出面303Aに対向する下側の貫通穴101の開口101Bに向けて傾斜して配置されている。第2リブ106Bは、幅方向Wに視て、シートの排出方向EJの上流端がシート排出面303Aに対して下部構造体100の内面100Bよりも遠い位置に配置され、かつ下流端がシート排出面303Aに対して内面100Bよりも近くなるように配置されている。また、第2リブ106Bにおいて、第2ガイド部160Bは、シートの排出方向EJの上流端から下流端に向けて連続して形成されている。
【0031】
このような形状により、貫通穴101に進入して第2リブ106Bに接触したシートは、第2ガイド部160Bによってシート排出面303Aに向けて案内された状態で排出トレイ303に排出される。したがって、貫通穴101へのシートの進入や第2リブ106Bとシートとの接触によるシートの損傷やジャムを抑制することができる。
【0032】
図9に示すように、第1リブ106Aは、シートをシート排出面303Aに向けて案内する第1案内面としての第1ガイド部160Aを有して形成され、幅方向Wに視て、下部構造体100の外面100Aよりも給送トレイ302の内側に配置されている。また、第1リブ106Aは、幅方向Wに視て、シート排出面303Aまでの距離が、ネジ104からシート排出面303Aまでの距離よりも短くなるように形成されている。
【0033】
また、第1ガイド部160Aは、シートの排出方向EJの下流ほどシート排出面303Aに向かって傾斜した第1傾斜面161Aを有して形成されている。第1傾斜面161Aは、幅方向Wに視て、シート排出面303Aに対向しない上側の貫通穴101の開口101Aからシート排出面303Aに対向する下側の貫通穴101の開口101Bに向けて傾斜して配置されている。第1リブ106Aは、幅方向Wに視て、シートの排出方向EJの上流端がシート排出面303Aに対して下部構造体100の内面100Bよりも遠い位置に配置され、かつ下流端がシート排出面303Aに対して内面100Bよりも近くなるように配置されている。また、第1リブ106Aにおいて、第1ガイド部160Aは、シートの排出方向EJの上流端から下流端に向けて連続して形成されている。
【0034】
このような形状により、貫通穴101に進入して第1リブ106Aに接触したシートは、第1ガイド部160Aによってシート排出面303Aに向けて案内された状態で排出トレイ303に排出される。したがって、貫通穴101へのシートの進入や第1リブ106Aとシートとの接触によるシートの損傷やジャムを抑制することができる。
【0035】
また、第1リブ106A及び第2リブ106Bは、幅方向Wに視て、シート排出面303Aまでの距離が、ネジ104からシート排出面303Aまでの距離よりも短くなるように形成されている。これにより、貫通穴101に進入したシートとネジ104との接触を防ぐことができるため、調節ユニット130が貫通穴101から露出していても、シートとネジ104との衝突によるシートの損傷やジャムの発生を抑制することができる。
【0036】
なお、シートの排出方向EJにおいて貫通穴101の下流側の側面603が、排出方向EJの下流ほどシート排出面303Aに向かって傾斜している形状としてもよい。このような傾斜を設けることにより、貫通穴101に進入して第1リブ106A及び第2リブ106Bを通過したシートをより確実にシート排出面303Aに向かって案内することが可能となる。
【0037】
図5(A、B)及び
図9に示すように、本実施例では、取付部103において貫通穴101から露出する位置にツマミ107等の操作部材が設けられている。ネジ104が第1取付穴103Aを貫通した状態で第1差し込み穴502Aに差し込まれた状態において、ツマミ107を操作することにより、幅方向Wにおける取付部103の位置を移動させることができる。つまり、ツマミ107を操作することにより、幅方向Wにおける取付部103と、ラックギア900A、900Bと、ピニオンギア901との位置を調節することができる。また、ツマミ107は、
図9に示すように、幅方向Wに視て、下部構造体100の外面100Aよりも給送トレイ302の内側に配置されている。さらに、ツマミ107は、第1リブ106A及び第2リブ106Bよりもシート排出面303Aに向かって突出しているため、操作性を向上させることができる。さらに、シート排出面303Aに対向するツマミ107の端面107Aを、シートの排出方向EJの下流ほどシート排出面303Aに向かって傾斜している形状としている。このような形状により、ツマミ107とシートとの衝突によるシートの損傷やジャムの発生を抑制することができる。
【0038】
また、
図5(A、B)に示すように、下部構造体100には、ツマミ107が移動する方向に沿って延びるメモリ102が形成されている。メモリ102は、ツマミ107の操作に応じて取付部103が移動することによるサイド規制板501の移動量を示すものである。つまり、メモリ102は、幅方向Wにおけるシート支持面500Aに対するサイド規制板501の相対位置を示している。ユーザは、メモリ102とツマミ107との位置を確認することにより、シート支持面500Aに対するサイド規制板501の相対位置を認識することができる。メモリ102の形状としては、
図5(A、B)に示すような下部構造体100に複数の溝を等間隔に設ける形状以外の形状としてもよい。例えば、取付部103と下部構造体100とにそれぞれ三角形等のマーカーを設けてもよい。この場合、取付部103のマーカーと下部構造体100のマーカーとのずれ量に応じてシート支持面500Aに対するサイド規制板501の相対位置を認識可能とすることができる。
【0039】
<その他の実施例>
実施例1の給送トレイ302に設けられている構成を、例えば、画像形成装置200の手差しトレイに設けてもよい。この場合、手差しトレイに設けられているサイド規制板の幅方向における位置を調節可能となり、画像形成部200Aに向けて手差しトレイからシートを給送する際に、シートの幅方向の位置を調節することが可能となる。
【符号の説明】
【0040】
100:下部構造体(カバー部材)/101:貫通穴/102:メモリ/103:取付部(取付部材、連動機構)/103A:第1取付穴(長穴、調節固定手段)/103B:第2取付穴(設計固定手段)/104:ネジ(調節固定手段、設計固定手段)/106A:第1リブ/106B:第2リブ/107:ツマミ/160A:第1ガイド部(第1案内面)/160B:第2ガイド部(第2案内面)/161A:第1傾斜面/161B:第2傾斜面/200:画像形成装置/200A:画像形成部(画像形成手段)/201:画像読取装置/302:給送トレイ/303:排出トレイ(排出シート支持手段)/401:ピックアップローラ(シート給送手段)/402:分離ローラ(シート給送手段)/406:排出ローラ(シート排出手段)/409:第1読取手段(画像読取手段)/410:第2読取手段(画像読取手段)/500:上部構造体(シート支持部材)/500A:シート支持面/500B:裏面/501、501A、501B:サイド規制板(一対の規制部材)/502A:第1差し込み穴(ネジ穴、調節固定手段)/502B:第2差し込み穴(設計固定手段)/900、900A、900B:ラックギア(連動機構)/901:ピニオンギア(連動機構)/EJ:排出方向/FD:給送方向/W:幅方向