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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】文章構造描画装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 40/166 20200101AFI20240219BHJP
   G06F 40/211 20200101ALI20240219BHJP
【FI】
G06F40/166
G06F40/211
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020013798
(22)【出願日】2020-01-30
(65)【公開番号】P2021120790
(43)【公開日】2021-08-19
【審査請求日】2022-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000155469
【氏名又は名称】株式会社野村総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100199277
【弁理士】
【氏名又は名称】西守 有人
(72)【発明者】
【氏名】赤丸 孟史
(72)【発明者】
【氏名】須崎 正士
(72)【発明者】
【氏名】新井 克典
(72)【発明者】
【氏名】外園 康智
(72)【発明者】
【氏名】牧 純一郎
【審査官】長 由紀子
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-528672(JP,A)
【文献】特開2004-133896(JP,A)
【文献】特開2014-219833(JP,A)
【文献】特開2020-009330(JP,A)
【文献】新森 昭宏 外3名,手がかり句を用いた特許請求項の構造解析 Structure Analysis of Japanese Patent Claims Using Cue Phrases,情報処理学会論文誌 IPSJ Journal,日本,社団法人情報処理学会 Information Processing Society of Japan,2004年03月15日,第45巻 第3号,pp.891-905
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 40/00-58
G06Q 50/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特許請求の範囲の請求項の文章を取得する取得手段と、
取得された前記文章を構文解析する解析手段と、
前記構文解析の結果を、語または句または節をひとつのノードとする木構造の形式でディスプレイに表示させる表示制御手段と、を備え
前記木構造は、前記文章の末尾から逆向きに辿り動詞句が現れるまでのノード群を1つのレイヤとする階層的な構造を有し、
前記表示制御手段は、上位のノードからユーザにより指定されるレイヤのノード群までの範囲が表示され又は強調されるように、前記構文解析の結果の表示を制御可能である、
文章構造描画装置。
【請求項2】
表示された木構造に対する修正を受け付ける受付手段と、
修正された木構造に対応する修正された文章を生成する生成手段と、をさらに備える請求項1に記載の文章構造描画装置。
【請求項3】
前記表示制御手段は、ユーザからの要求に応じて、前記ディスプレイに表示された木構造とノード間の接続関係は同じだがノードの接続順を異にする木構造を、前記ディスプレイに表示させる請求項1または2に記載の文章構造描画装置。
【請求項4】
前記表示制御手段は、前記ディスプレイに表示された木構造に対して、所定の語または句または節に対応するオブジェクトを追加的に前記ディスプレイに表示させる、請求項1からのいずれか一項に記載の文章構造描画装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文章構造描画装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許出願は、国により多少の違いはあるが、基本的に明細書と特許請求の範囲と要約と図面とから構成される。これまで一般に、特許出願の特許請求の範囲(クレームとも称す)は弁理士により作成され、または企業の知的財産部の者により作成されてきた。
【0003】
近年、「人工知能(AI、Artificial Intelligence)」という言葉をよく目にするようになった(例えば、非特許文献1参照)。実際、AIは著しく進化しており、人間の脳のように、たくさんの画像や音声を認識して特定のパターンを見つけ出す認知機能を持つものも登場している。例えば、Google社はコンピュータに猫の画像を判別させることに成功した。このようにAIの性能が向上するにつれて、その適用範囲も広がってきている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】http://www.nri.com/jp/journal/2016/10/161031_4/、2018年4月10日検索
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、特許請求の範囲や明細書などの特許出願書類には独特の書き方が存在し、それゆえ、専門家ではない一般の者が特許出願書類を読み解くのには時間がかかる。AIにより生成される特許出願書類も、過去の特許出願書類から学習する以上、同様である。
【0006】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、特許出願書類などの比較的難読性の高い文章を分かりやすくするためのユーザインタフェース技術の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、文章構造描画装置に関する。この文章構造描画装置は、特許請求の範囲の請求項の文章を取得する取得手段と、取得された文章を構文解析する解析手段と、構文解析の結果を、語または句または節をひとつのノードとする木構造の形式でディスプレイに表示させる表示制御手段と、を備える。木構造は、文章の末尾から逆向きに辿り動詞句が現れるまでのノード群を1つのレイヤとする階層的な構造を有する。表示制御手段は、上位のノードからユーザにより指定されるレイヤのノード群までの範囲が表示され又は強調されるように、構文解析の結果の表示を制御可能である。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を装置、方法、システム、コンピュータプログラム、コンピュータプログラムを格納した記録媒体などの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、特許出願書類などの比較的難読性の高い文章を分かりやすくするためのユーザインタフェース技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態に係る作成サーバにより実現される画面の遷移を示す模式図である。
図2】実施の形態に係る特許出願書類作成支援システムの構成を示す模式図である。
図3図2の作成サーバのハードウエア構成図である。
図4図2の作成サーバの機能および構成を示すブロック図である。
図5図4の特許情報保持部の一例を示すデータ構造図である。
図6図2の作成サーバにおける一連の処理の流れを示すフローチャートである。
図7】ユーザ端末のディスプレイに表示される構文図解画面の代表画面図である。
図8】レイヤ表示レベル調整部の「1」ボタンを押し下げることによって得られる構文図解画面の代表画面図である。
図9】レイヤ表示レベル調整部の「2」ボタンを押し下げることによって得られる構文図解画面の代表画面図である。
図10図8の第1レイヤまでが表示されている状態で所定のノードの展開ボタンを押し下げることによって得られる構文図解画面の代表画面図である。
図11】照応関係表示切替部を押し下げることによって得られる構文図解画面の代表画面図である。
図12】方向指定領域で異なる方向を選択することによって得られる構文図解画面の代表画面図である。
図13】構文木描画領域において構文木の修正が行われている状態の構文図解画面の代表画面図である。
図14図13におけるドラッグアンドドロップにより修正された構文木を表示する構文木描画領域を含む構文図解画面の代表画面図である。
図15】構文木描画領域において構文木の修正が行われている状態の構文図解画面の代表画面図である。
図16図15におけるドラッグアンドドロップにより修正された構文木を表示する構文木描画領域を含む構文図解画面の代表画面図である。
図17】編集対象のノードの編集ボタンが押し下げられようとしている状態の構文図解画面の代表画面図である。
図18】編集ボタンを押し下げることによって得られる構文図解画面の代表画面図である。
図19】アプライボタンを押し下げることによって得られる構文図解画面の代表画面図である。
図20】修正クレーム生成ボタンを押し下げることによって得られる構文図解画面の代表画面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面において説明上重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0012】
図1は、実施の形態に係る作成サーバにより実現される画面の遷移を示す模式図である。作成サーバのユーザとしては、例えば企業の知的財産部の者が想定される。ユーザは、研究開発部門から提出された発明提案書などの技術文書を作成サーバにアップロードし、作成サーバはアップロードされた技術文書に基づいて特許請求の範囲の初版および明細書・要約書・図面(以下、明細書等と称す)の初版を自動生成する。
【0013】
作成サーバはまずユーザの端末のディスプレイ100に、電子ファイルのアップロードを受け付けるアップロード画面102を表示させる。ユーザは、アップロード画面102を通じて、発明提案書などの技術文書や、技術図面その他写真等の静止画や、動画等の各種電子ファイル(以下、文書等と称す)をアップロードすることができる。ユーザは、所望の電子ファイルをドラッグし、アップロード画面102の点線エリア内にドロップすることにより当該電子ファイルをアップロードすることができる。あるいはまた、ユーザは、アップロード画面102内の点線エリアをクリックすることで、ユーザの端末内の文書等を参照してアップロードすることができる。
【0014】
ユーザが文書等をアップロードすると、作成サーバは入力された文書等を取得する。作成サーバは、過去の特許出願の情報をAIに学習させることで生成、更新される特許出願書類生成AIエンジンを実装している。作成サーバは、入力された文書等をこの特許出願書類生成AIエンジンで処理することで、入力された文書等の内容に対応する特許請求の範囲の初版および明細書等の初版を自動的に生成する。作成サーバは、生成された特許請求の範囲の初版を表示する生成結果表示画面116をディスプレイ100に表示させる。生成結果表示画面116には、生成された特許請求の範囲の初版がテキストで表示されると共に、OKボタン118と、修正ボタン120と、が表示される。
【0015】
ユーザは、生成された特許請求の範囲の初版に満足する場合、OKボタン118をクリックする。生成サーバは、OKボタン118がクリックされると、明細書等の初版をユーザに提示する画面(不図示)をディスプレイ100に表示させる。ユーザは、生成された特許請求の範囲の初版の修正を望む場合、修正ボタン120をクリックする。作成サーバは、修正ボタン120がクリックされると、ユーザによる特許請求の範囲の修正を受け付けるための構文図解画面122をディスプレイ100に表示させる。
【0016】
構文図解画面122には、特許請求の範囲の初版に含まれる請求項の文章を入力情報として、所定の記述ルールに従って描画された構文木104が表示される。表示されている構文木104のノード106は、グラフ上で追加・編集・削除が可能なように構成されている。ユーザは、表示されている構文木104に対して所望の修正を行う。例えば、不要な構成要件がある場合、その構成要件に対応するノード106を指定して削除する。このように修正された構文木104を文章に戻すことで、特許請求の範囲(の請求項)の修正が行われる。
【0017】
ユーザが構文木104に対して所望の修正を施した後、反映ボタン124をクリックすると、作成サーバは修正を反映した特許請求の範囲を表示する修正結果表示画面126をディスプレイ100に表示させる。
【0018】
このように、作成サーバが提供する特許出願書類作成支援サービスによると、特許出願書類生成AIエンジンを用いるので、特許出願書類作成の際の属人的要素を低減または排除することができ、品質の均一化を図ることができる。また、特許出願書類作成にかかる時間を低減することができる。さらに、描画された構文木を用いたグラフィカルな修正作業が可能となるので、ユーザ利便性が向上する。
【0019】
図2は、実施の形態に係る特許出願書類作成支援システム2の構成を示す模式図である。特許出願書類作成支援システム2は、作成サーバ4と、ユーザ端末8と、を備える。作成サーバ4とユーザ端末8とはインターネットなどのネットワーク6を介して通信可能に接続されている。作成サーバ4は、過去の特許出願の情報を保持する特許情報保持部42を備え、また上述の通り特許出願書類生成AIエンジンを実装している。ユーザ端末8は、ユーザが用いる端末であり、例えばデスクトップPC、ラップトップPC、携帯端末などであってもよい。
【0020】
本実施の形態では、ユーザがユーザ端末8に情報を入力し、ユーザ端末8が該情報をネットワーク6を介して作成サーバ4に送信し、作成サーバ4が該情報を処理し、処理結果をネットワーク6を介してユーザ端末8に返し、ユーザ端末8が処理結果を表示する、いわゆるASP(Application Service Provider)を想定する。しかしながら、本実施の形態の技術的思想は、スタンドアローンの端末に特許出願書類生成AIエンジンを実装し、ユーザがその端末に情報を入力し、処理結果を得る場合など、ASP以外のシステムにも適用可能である。
【0021】
図3は、図2の作成サーバ4のハードウエア構成図である。ユーザ端末8は図3に記載のハードウエア構成と同様のハードウエア構成を有してもよい。作成サーバ4は、メモリ130と、プロセッサ132と、通信インタフェース134と、ディスプレイ136と、入力インタフェース138と、を含む。これらの要素はそれぞれバス140に接続され、バス140を介して互いに通信する。
【0022】
メモリ130は、データやプログラムを記憶するための記憶領域である。データやプログラムは、メモリ130に恒久的に記憶されてもよいし、一時的に記憶されてもよい。特にメモリ130は特許情報保持部42として割り当てられた領域を有する。プロセッサ132は、メモリ130に記憶されているプログラムを実行することにより、作成サーバ4における各種機能を実現する。通信インタフェース134は、作成サーバ4の外部との間でデータの送受信を行うためのインタフェースである。例えば、通信インタフェース134はネットワーク6にアクセスするためのインタフェースを含む。ディスプレイ136は、各種情報を表示するためのデバイスであり、例えば、液晶ディスプレイや有機EL(Electroluminescence)ディスプレイなどである。入力インタフェース138は、ユーザからの入力を受け付けるためのデバイスである。入力インタフェース138は、例えば、マウスやキーボードやディスプレイ138上に設けられたタッチパネルを含む。
【0023】
図4は、図2の作成サーバ4の機能および構成を示すブロック図である。ここに示す各ブロックは、ハードウエア的には、コンピュータのCPUをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウエア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウエア、ソフトウエアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、本明細書に触れた当業者には理解されるところである。
【0024】
作成サーバ4は、特許情報保持部42と、学習部402と、文書等取得部404と、特許出願書類生成AIエンジン406と、構文解析部408と、表示制御部410と、修正受付部403と、修正クレーム生成部405と、を備える。
【0025】
図5は、特許情報保持部42の一例を示すデータ構造図である。特許情報保持部42は、過去の特許出願の情報を保持する。特許情報保持部42は、特許出願を特定する特許IDと、該特許出願の出願番号と、該特許出願に付された筆頭IPCと、該特許出願の特許強度値と、該特許出願に付された審査官フリーワードと、該特許出願に付されたフリーキーワードと、該特許出願の特許請求の範囲と、該特許出願の課題と、該特許出願の審査の際に引用された文献と、該特許出願の明細書(不図示)と、該特許出願の図面(不図示)と、該特許出願の文書等(不図示)と、を対応付けて保持する。特許出願の文書等は、自社の先願の発明提案書関連の文書など、入手可能な場合にのみ登録されてもよい。
【0026】
特許強度値は、特許出願の質を示す指標のひとつである。特許強度値は、例えばNRIサイバーパテント株式会社が提供するTS(Technology Size)値であってもよい。あるいはまた、他の指標が用いられてもよい。
【0027】
フリーキーワードは、対象の特許出願を人が読むことにより設定されるキーワードであり、特にその人が対象の特許出願のポイントとして抽出したキーワードであってもよい。フリーキーワードは、例えばNRIサイバーパテント株式会社が提供するPATOLISキーワードであってもよい。
【0028】
図4に戻り、学習部402は、特許情報保持部42に保持されている情報を機械的に学習することにより特許出願書類生成モデルを生成する。その際、学習部402は、特許情報保持部42に保持される過去の特許出願の情報うち、質に関する所定の基準を満たさない過去の特許出願の情報は参照しないようにしてもよい。学習部402における特許出願書類生成モデルの生成は、公知の機械学習、人工知能に関する技術を用いて実現されてもよい。
【0029】
学習部402は、特許情報保持部42に保持される特許出願のうち、特許強度値がしきい値以上となる特許出願を特定してもよい。言い換えると、学習部402は特許強度値がしきい値未満の特許出願を学習の対象から外してもよい。なお、本実施の形態では質に関する所定の基準としてしきい値との大小関係を用いるが、これに限られず、例えばしきい値の代わりに特許強度値の範囲が用いられてもよい。
【0030】
特許出願書類生成モデルは、文書等を入力とし、処理の結果として特許請求の範囲および明細書等を出力するモデルである。学習部402は、生成された特許出願書類生成モデルを特許出願書類生成AIエンジン406に設定する。
【0031】
文書等取得部404は、アップロード画面102を表示するための画面情報を生成し、ネットワーク6を介してユーザ端末8に送信する。文書等取得部404は、ユーザ端末8のディスプレイ100に表示されたアップロード画面102を介してユーザがアップロードした文書等を、ネットワーク6を介してユーザ端末8から受信する。なお、文書等取得部404は、文書等のアップロードに加えてまたはそれに代えて、ユーザによるキーワードやテキストの入力を受け付けてもよい。
【0032】
特許出願書類生成AIエンジン406は、学習部402により生成された特許出願書類生成モデルに、文書等取得部404がユーザ端末8から受け付けた文書等を適用する。特許出願書類生成AIエンジン406は、特許出願書類生成モデルが出力する特許請求の範囲および明細書等を取得する。
【0033】
構文解析部408は、特許出願書類生成AIエンジン406によって取得された特許請求の範囲の請求項を構文解析する。構文解析部408における構文解析は公知の構文解析技術により実現されてもよい。
【0034】
表示制御部410は、構文解析部408における構文解析の結果を、語または句または節をひとつのノードとする木構造の形式でユーザ端末8のディスプレイ100に表示させる。ノードは語または句または節、すなわち意味のあるひとつのかたまりを表す。「語」は合成語や複合語を含む。「句」は動詞による文の形成に必要とされる名詞句を含む。「節」は動詞を含めたより大きなくくりを含む。構文解析が形態素解析を含む場合、語または句または節は単語を含む。表示制御部410は、構文解析の結果を木構造の形式すなわち構文木で表示する構文図解画面(後述)を生成し、当該構文図解画面の情報をネットワーク6を介してユーザ端末8に送信する。ユーザ端末8は、受信した情報に基づいて構文図解画面をディスプレイ100に表示させる。
【0035】
修正受付部403は、ユーザ端末8のディスプレイ100に表示された構文木に対する修正を、ユーザ端末8からネットワーク6を介して受け付ける。ユーザ端末8は、ユーザから、ディスプレイ100に表示された構文木に対する修正を受け付ける。ユーザ端末8は、受け付けた修正の内容を、ネットワーク6を介して作成サーバ4に送信する。修正受付部403は、そのように送信された修正の内容を受信する。
【0036】
修正クレーム生成部405は、修正された構文木に対応する修正された請求項を生成する。修正クレーム生成部405は、修正受付部403が受け付けた修正された構文木に対応する請求項を生成し、生成された修正請求項をユーザ端末8にネットワーク6を介して送信する。
【0037】
以上の構成による作成サーバ4の動作を説明する。
図6は、図2の作成サーバ4における一連の処理の流れを示すフローチャートである。作成サーバ4は、ユーザ端末8からネットワーク6を介して書類等を受信する(S602)。作成サーバ4は、受信した書類等を特許出願書類生成モデルに入力することで、特許出願書類の初版を生成する(S604)。作成サーバ4は、ネットワーク6を介してユーザ端末8と通信することで、ユーザ端末8のディスプレイ100に、特許出願書類の初版の特許請求の範囲の請求項を構文木で描画する(S606)。作成サーバ4は、ネットワーク6を介してユーザ端末8と通信することで、描画された構文木に対する修正をユーザから受け付ける(S608)。作成サーバ4は、修正された構文木に基づいて請求項を修正する(S610)。作成サーバ4は、ネットワーク6を介してユーザ端末8と通信することで、修正された請求項をユーザに提供する(S612)。
【0038】
図7は、ユーザ端末8のディスプレイ100に表示される構文図解画面122の代表画面図である。構文図解画面122は、クレーム原文入力領域702と、構文木にするボタン704と、方向指定領域706と、ツールバー708と、クレーム修正版表示領域710と、構文木描画領域712と、を有する。
【0039】
クレーム原文入力領域702には特許出願書類生成AIエンジン406によって取得された特許請求の範囲の請求項が入力される。この入力は、特許出願書類生成AIエンジン406によって自動的に行われてもよいし、ユーザ端末8のユーザが所望の請求項をクレーム原文入力領域702にコピーアンドペーストなどにより入力する形で行われてもよい。
【0040】
クレーム原文入力領域702に請求項が入力された状態で構文木にするボタン704が押し下げられると、構文解析部408は入力された請求項を構文解析し、表示制御部410はこの構文解析の結果として得られる構文木を構文木描画領域712に描画する。構文木描画領域712に描画される構文木は複数のノード732とそれらの間の接続関係を表す。各ノード732は、該ノード732に対応する語または句または節をその中に表示するテキストボックス730と、テキストボックス730の左上に埋め込まれて表示される展開ボタン728と、テキストボックス730の左上にテキストボックス730から離れて表示される編集ボタン726と、マイナスボタンと、プラスボタンと、を有する。
【0041】
方向指定領域706は、構文木描画領域712に描画される構文木の方向を、プルダウン形式で指定するための領域である。方向指定領域706の詳細は後述する。
【0042】
ツールバー708は、拡大率調整部714と、アンドゥ部716と、レイヤ表示レベル調整部718と、照応関係表示切替部720と、ファイル出力部722と、修正クレーム生成ボタン724と、を有する。
【0043】
拡大率調整部714は、構文木描画領域712に描画される構文木の拡大・縮小率の調整を可能とする。アンドゥ部716は、構文木描画領域712に描画される構文木に対して加えた修正の取り消しを可能とする。レイヤ表示レベル調整部718、照応関係表示切替部720は後述する。ファイル出力部722は、グラフ描画用のJsonファイルを出力するためのボタンである。
【0044】
ユーザが構文木描画領域712に描画される構文木を修正し、修正クレーム生成ボタン724を押し下げると、修正クレーム生成部405は、修正後の構文木に対応する修正された請求項のテキストをクレーム修正版表示領域710に表示させる。
【0045】
図8は、レイヤ表示レベル調整部718の「1」ボタンを押し下げることによって得られる構文図解画面122の代表画面図である。図9は、レイヤ表示レベル調整部718の「2」ボタンを押し下げることによって得られる構文図解画面122の代表画面図である。レイヤ表示レベル調整部718は、構文解析部408における構文解析の結果から得られるレイヤ値の情報を用いて、どのレベルまで構文木描画領域712に表示または強調するかを制御することを可能とする。本実施の形態におけるレイヤの定義は以下の通り。
開始値:0
レイヤ:文末尾からノードを逆向きに辿って、動詞句の手前のノードまでをひとつのレイヤとする。その動詞句から次の動詞句手前までを上位レイヤとし、レイヤ値をインクリメントする。
【0046】
図10は、図8の第1レイヤまでが表示されている状態で所定のノード734の展開ボタン736を押し下げることによって得られる構文図解画面122の代表画面図である。ノード734の展開ボタン736が押し下げられると、当該ノード734に直接的または間接的に接続される全てのノード738が、それまでの非表示状態を脱して表示状態となる。これにより、ユーザは、指定したノード734に関連する全てのノード738を容易に確認することができる。
【0047】
図11は、照応関係表示切替部720を押し下げることによって得られる構文図解画面122の代表画面図である。図11は、構文木描画領域712に表示された木構造に対して、所定の語または句または節に対応する表示オブジェクトを追加する表示制御部410の機能に対応する。照応関係表示切替部720が押し下げられると、表示制御部410は「前記」や「当該」や「該」などの、請求項内の単語間の関係を示す単語を参照し、そのような単語により関連付けられている二つのノードを特定する。表示制御部410は、特定された二つのノードの間に、関連性を示す表示オブジェクト、例えば矢印、を表示する。請求項内の単語間の関係を示す単語は予め作成サーバ4に登録されていてもよい。
【0048】
図11の例では、表示制御部410は、「前記○○」という名詞ノードがあった場合、文中で当該ノードの出現位置よりも前の「○○」の出現を探索し、照応するノードがあった場合に赤色の点線矢印740で連結する。
【0049】
図12は、方向指定領域706で異なる方向を選択することによって得られる構文図解画面122の代表画面図である。表示制御部410は、ユーザからの要求に応じて、構文木描画領域712に表示された木構造とノード間の接続関係は同じだがノードの接続順を異にする新たな木構造を、構文木描画領域712に表示させる機能を有する。図12はこの機能に対応し、特に、図7の状態で方向指定領域706において「Left-Right」(左から右)の選択を止めて「Right-Left」(右から左)を選択すると表示される画面である。図7の「Left-Right」(左から右)が選択されている状態では、構文木描画領域712の構文木は、左上からスタートして右向きに順番に辿り、分岐があった場合は同じ階層の左上のノードに移って右向きに辿る読み順に対応する。図12の「Right-Left」(右から左)が選択されている状態では、構文木描画領域712の構文木の読み順は図7の読み順の左右を逆にしたものとなる。
【0050】
例えば、ノードのテキストボックスに日本語と共に英語が併記してある場合、図7の「Left-Right」(左から右)は日本語の読み方に、図12の「Right-Left」(右から左)は英語の読み方に、それぞれ好適であるから、方向指定領域706によって日本語読みと英語読みを切り替えることができるのでユーザ利便性が向上する。あるいはまた、方向指定領域706で構文木の接続順を切り替える際に併せて、切り替え前の言語(例えば、日本語)を切り替え先の接続順に対応した言語(例えば、英語)に切り替えるようにしてもよい。この意味で、方向指定領域706は言語を指定する領域であってもよい。つまり、接続順を切り替えることに伴って言語を切り替えてもよく、逆に言語を切り替えることに伴って接続順を切り替えてもよい。
【0051】
図13は、構文木描画領域712において構文木の修正が行われている状態の構文図解画面122の代表画面図である。ユーザは、修正対象のノード742をドラッグアンドドロップにより移動させることができる。図14は、図13におけるドラッグアンドドロップにより修正された構文木を表示する構文木描画領域712を含む構文図解画面122の代表画面図である。修正対象のノード742がドロップ先のノード744に係るように構文木が修正されている。
【0052】
図15は、構文木描画領域712において構文木の修正が行われている状態の構文図解画面122の代表画面図である。ユーザは、修正対象のノード746をドラッグアンドドロップにより移動させることができる。図16は、図15におけるドラッグアンドドロップにより修正された構文木を表示する構文木描画領域712を含む構文図解画面122の代表画面図である。修正対象のノード746がドロップ先のノード748に係るように構文木が修正されている。
【0053】
図17は、編集対象のノード750の編集ボタン752が押し下げられようとしている状態の構文図解画面122の代表画面図である。図18は、編集ボタン752を押し下げることによって得られる構文図解画面122の代表画面図である。編集ボタン752が押し下げられると、構文図解画面122の全体が選択不可能状態となり、併せて編集内容を入力するためのダイアログ754が表示される。ダイアログ754は、編集対象のノード750の名前と、タイプと、色と、を編集可能なように構成される。ユーザは所望の名前やタイプや色をダイアログ754に入力し、アプライボタン756を押し下げる。
【0054】
図19は、アプライボタン756を押し下げることによって得られる構文図解画面122の代表画面図である。編集対象のノード750には、図18のダイアログ754に入力された修正内容が反映されている。
【0055】
図20は、修正クレーム生成ボタン724を押し下げることによって得られる構文図解画面122の代表画面図である。図19の状態で修正クレーム生成ボタン724が押し下げられると、修正受付部403は押し下げ時の構文木描画領域712に表示される修正された構文木を取得する。修正クレーム生成部405は、取得した構文木に基づいて請求項を修正し、修正後の請求項をクレーム修正版表示領域710に表示させる。
【0056】
上述の実施の形態において、保持部の例は、ハードディスクや半導体メモリである。また、本明細書の記載に基づき、各部を、図示しないCPUや、インストールされたアプリケーションプログラムのモジュールや、システムプログラムのモジュールや、ハードディスクから読み出したデータの内容を一時的に記憶する半導体メモリなどにより実現できることは本明細書に触れた当業者には理解される。
【0057】
本実施の形態に係る作成サーバ4によると、比較的難読性の高い特許請求の範囲を、文章そのままではなく構文木としてグラフィカルに提示することで、可読性を高め、ユーザによる理解をより容易にすることができる。
【0058】
また、本実施の形態に係る作成サーバ4では、ユーザは、描画された構文木に対するドラッグアンドドロップなどの直観的な図形操作で修正作業を行うことができる。これにより、特許請求の範囲の修正をより速く正確に行えるようになる。
【0059】
また、本実施の形態に係る作成サーバ4では、修正された構文木を読み込むことで対応する修正された請求項の文章が出力される。したがって、ユーザは修正結果を文章として利用することが可能となる。
【0060】
以上、実施の形態に係る特許出願書類作成支援システム2の構成と動作について説明した。この実施の形態は例示であり、各構成要素や各処理の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解される。
【0061】
実施の形態では、特許請求の範囲の初版を取得し、構文解析する場合を説明したが、これに限られず、より一般的に文章を取得し、構文解析し、構文解析の結果を木構造で表現してもよい。例えば、明細書の発明の詳細な説明の記載や契約書や設計書や条文などの文章を構文解析して木構造で描画することで、そのような文章の構文を視覚的に把握することができる。このように、本発明では、分かりづらい文章構造を視覚化することで、専門家でなくても意味を理解することができ、また、構文チェックの時間を短縮することができる。
【0062】
実施の形態では、AIにより生成された特許請求の範囲の初版を手動または自動で取得する場合を説明したが、これに限られない。例えば、NRIサイバーパテントデスクなどの特許情報検索システムにおいて、検索の結果得られた特許文献の特許請求の範囲を自動で取得し、構文解析し、構文木として描画してもよい。
【符号の説明】
【0063】
2 特許出願書類作成支援システム、 4 作成サーバ、 6 ネットワーク、 8 ユーザ端末。
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