(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】中継通信のための中継装置、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 40/22 20090101AFI20240219BHJP
【FI】
H04W40/22
(21)【出願番号】P 2020019112
(22)【出願日】2020-02-06
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100131886
【氏名又は名称】坂本 隆志
(74)【代理人】
【識別番号】100170667
【氏名又は名称】前田 浩次
(72)【発明者】
【氏名】武田 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 伸吾
【審査官】石田 信行
(56)【参考文献】
【文献】Samsung,Overview on IAB node reestablishment,3GPP TSG RAN WG3 #104 R3-192612,Internet<URL:https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG3_Iu/TSGR3_104/Docs/R3-192612.zip>,2019年05月17日
【文献】Samsung,Overview on IAB node migration,3GPP TSG RAN WG3 #104 R3-192613,Internet<URL:https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG3_Iu/TSGR3_104/Docs/R3-192613.zip>,2019年05月17日
【文献】Samsung,Further discussion on IP address issues of IAB network,3GPP TSG RAN WG3 #105 R3-193979,Internet<URL:https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG3_Iu/TSGR3_105/Docs/R3-193979.zip>,2019年08月30日
【文献】Nokia, Nokia Shanghai Bell,Discussion on Forwarding Table Configuration,3GPP TSG RAN WG3 #106 R3-196759,Internet<URL:https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG3_Iu/TSGR3_106/Docs/R3-196759.zip>,2019年11月22日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00 - 99/00
H04B 7/24 - 7/26
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局装置と端末装置との間の通信を無線で中継する中継装置であって、
中継経路を介して第1の基地局装置と接続している間に中継経路における無線接続の接続先の装置が変更された場合、当該変更された接続先の装置を介して接続される基地局装置が前記第1の基地局装置であるか、前記第1の基地局装置と異なる第2の基地局装置であるかを判定する判定手段と、
前記変更された接続先の装置を介して接続される基地局装置が前記第2の基地局装置である場合に変更後の中継経路に関する第1の設定を実行し、前記変更された接続先の装置を介して接続される基地局装置が前記第1の基地局装置である場合に、前記第1の設定とは異なる第2の設定であって、変更後の中継経路に関する第2の設定を実行する設定手段と、
を有し、
前記設定手段は、前記第2の基地局装置と接続している間も、前記第1の基地局装置との間で設定されていた中継経路の設定を消去せずに保持する
ことを特徴とする中継装置。
【請求項2】
前記設定手段は、前記第2の設定として、前記第1の基地局装置との間で確立されていたF1インタフェースを維持しながら変更後の中継経路に関する設定を行う、ことを特徴とする請求項1に記載の中継装置。
【請求項3】
前記設定手段は、前記第1の設定として、前記第2の基地局装置との間でF1インタフェースを確立する処理を実行する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の中継装置。
【請求項4】
前記設定手段は、前記第1の設定として、F1 SETUP REQUESTを前記第2の基地局装置へ送信する、ことを特徴とする請求項3に記載の中継装置。
【請求項5】
前記中継経路に関する設定は、中継経路の識別子と、当該中継経路における信号の次の転送先を示す情報とを関連付けて記憶することを含む、ことを特徴とする請求項1から
4のいずれか1項に記載の中継装置。
【請求項6】
前記中継経路に関する設定は、中継伝送で用いられる前記中継装置を特定する情報を記憶することを含む、ことを特徴とする請求項1から
5のいずれか1項に記載の中継装置。
【請求項7】
前記判定手段は、前記変更された接続先の装置を介して受信された識別子に基づいて、当該変更された接続先の装置を介して接続される基地局装置が前記第1の基地局装置であるか前記第2の基地局装置であるかを判定する、ことを特徴とする請求項1から
6のいずれか1項に記載の中継装置。
【請求項8】
前記識別子はCellIdentityである、ことを特徴とする請求項
7に記載の中継装置。
【請求項9】
基地局装置と物理セル識別子とを関連付けた情報を事前に取得する取得手段を有し、
前記識別子は物理セル識別子である、ことを特徴とする請求項
7に記載の中継装置。
【請求項10】
基地局装置と端末装置との間の通信を無線で中継する中継装置によって実行される制御方法であって、
中継経路を介して第1の基地局装置と接続している間に中継経路における無線接続の接続先の装置が変更された場合、当該変更された接続先の装置を介して接続される基地局装置が前記第1の基地局装置であるか、前記第1の基地局装置と異なる第2の基地局装置であるかを判定することと、
前記変更された接続先の装置を介して接続される基地局装置が前記第2の基地局装置である場合に変更後の中継経路に関する第1の設定を実行し、前記変更された接続先の装置を介して接続される基地局装置が前記第1の基地局装置である場合に、前記第1の設定とは異なる第2の設定であって、変更後の中継経路に関する第2の設定を実行することと、
を含み、
前記第2の基地局装置と接続している間も、前記第1の基地局装置との間で設定されていた中継経路の設定が消去されずに保持される
ことを特徴とする制御方法。
【請求項11】
基地局装置と端末装置との間の通信を無線で中継する中継装置に備えられたコンピュータに、
中継経路を介して第1の基地局装置と接続している間に中継経路における無線接続の接続先の装置が変更された場合、当該変更された接続先の装置を介して接続される基地局装置が前記第1の基地局装置であるか、前記第1の基地局装置と異なる第2の基地局装置であるかを判定させ、
前記変更された接続先の装置を介して接続される基地局装置が前記第2の基地局装置である場合に変更後の中継経路に関する第1の設定を実行させ、前記変更された接続先の装置を介して接続される基地局装置が前記第1の基地局装置である場合に、前記第1の設定とは異なる第2の設定であって、変更後の中継経路に関する第2の設定を実行させる、
ためのプログラムであって、
前記第2の基地局装置と接続している間も、前記第1の基地局装置との間で設定されていた中継経路の設定が消去されずに保持される
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中継通信における経路設定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP)において、第5世代(5G)の無線通信ネットワークにおいて、端末装置がネットワークへアクセスする手法をバックホールリンクに応用して使用可能とする技術が検討されている(非特許文献1参照)。この技術は、Integrated Access and Backhaul(IAB)と呼ばれる。IABノードと呼ばれる中継装置が、例えば5Gの基地局装置(IABドナー)との間で無線リンクを用いて接続を確立する。このとき、IABノードは、IABドナーと無線リンクを確立して直接接続してもよいし、IABドナーと直接又は間接的に接続が確立されている他のIABノードと無線リンクを確立して、間接的にIABドナーと接続を確立してもよい。このようなシステムでは、IABドナーは、各IABノードを介して構成される各中継経路に対して、その中継経路を識別する識別子が付与される。そして、送信対象の信号は、その信号がどの経路で中継されるべきかを示すための情報として、いずれかの中継経路に対応する、BAP routing IDと呼ばれる識別子を含んだ状態で送信される。なお、BAPは、Backhaul Adaptation Protocolの頭字語である。また、信号には、中継経路における末端のノード(例えば下りリンクでは端末装置と直接無線リンクを確立しているノード)を示す宛先の情報を含む。各IABノードは、各中継経路における識別子と、その中継経路において次の信号の転送先のIABノードを特定する情報とを関連付けて記憶しておく。IABノードは、信号を受信すると、自装置がその信号の中継経路における末端のノードであるかを判定する。そして、IABノードは、自装置が中継経路の末端のノードである場合は他のIABノードへの信号の転送を行わず、自装置と接続中の端末装置へ送信する。一方、IABノードは、自装置が中継経路の末端のノードでない場合は、その信号に含まれる中継経路の識別子を確認し、その識別子に対応して自装置内に記憶されている他のIABノードを特定する。そして、IABノードは、その特定した他のIABノードへ信号を転送する。これにより、基地局装置が、広範囲の端末装置に通信サービスを提供することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】3GPP、TR38.874、V16.0.0、2018年12月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、中継経路を用いた通信を様々な状況に適用可能とするための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様による中継装置は、基地局装置と端末装置との間の通信を無線で中継する中継装置であって、中継経路を介して第1の基地局装置と接続している間に中継経路における無線接続の接続先の装置が変更された場合、当該変更された接続先の装置を介して接続される基地局装置が前記第1の基地局装置であるか、前記第1の基地局装置と異なる第2の基地局装置であるかを判定する判定手段と、前記変更された接続先の装置を介して接続される基地局装置が前記第2の基地局装置である場合に変更後の中継経路に関する第1の設定を実行し、前記変更された接続先の装置を介して接続される基地局装置が前記第1の基地局装置である場合に、前記第1の設定とは異なる第2の設定であって、変更後の中継経路に関する第2の設定を実行する設定手段と、を有し、前記設定手段は、前記第2の基地局装置と接続している間も、前記第1の基地局装置との間で設定されていた中継経路の設定を消去せずに保持する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、中継経路を用いた通信を様々な状況に適用可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】中継装置のハードウェア構成例を示す図である。
【
図4】中継装置が実行する処理の流れの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち2つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0009】
(システム構成)
図1に、本実施形態に係る無線通信システムの構成例を示す。本実施形態の無線通信システムは、上述のような基地局装置(IABドナー)と中継装置(IABノード)とを含んだ中継伝送を行う。なお、
図1には、説明を簡単にするため、IABドナー及びIABノードのみを図示しているが、これらの装置との間で無線リンクを確立して通信を行う端末装置が当然に存在しうる。なお、IABドナーは、各種制御を実行するCentral Unit(CU)と他のノードと同等の機能を有するDistributed Unit(DU)とを含み、IABノードはDUを含む。IABドナーのCUによる制御メッセージは、そのIABドナーのDUを介して他のIABノードへ転送され、また、IABノードからの制御メッセージは、IABドナーのDUを介してIABドナーのCUへ転送される。なお、以下では、説明を簡単にするため、IABドナーについて、必要のない限りCUとDUとの区別をせずに説明する。また、
図1には、説明を簡単にするため、1つのIABドナーと、5つのIABノードとを示しているが、複数のIABドナーが存在してもよいし、また、各IABドナーに接続されるIABノードの数は4つ以下又は6つ以上であってもよい。IABドナーは、例えば、自装置に接続されている端末装置との信号の送受信と共に、1つ以上のIABノードを介して、そのIABノードの少なくともいずれかと無線接続を確立している端末装置との間で信号を送受信することができる。なお、以下では、IABドナーを単にドナーと呼び、IABノードを中継ノード又はノードと呼ぶ場合がある。
【0010】
各中継ノードは、ドナーと接続していない状態において、直接、又は、そのドナーとの間で接続を確立している他の中継ノードのいずれかを介して、ドナーと接続を確立する。中継ノードは、接続の確立時には、端末として接続を確立する。なお、中継ノードは、実際には他の中継ノードと接続を確立する場合がありうるが、この場合も、この他の中継ノードがドナーと中継ノードとの間の信号を転送することにより、中継ノードはドナーとの間で接続を確立することができる。
【0011】
中継ノードがドナーとの間でRRC(無線リソース制御)接続を確立した場合、ドナーは、その中継ノードに対して、BAPにおける中継ノードのアドレス(BAP Address)と、その中継ノードに関する中継経路の識別子(BAP routing ID)とを設定する。なお、中継経路の識別子が設定される際に、その中継経路における信号の次の転送先が設定される。例えば、
図1において、ノード106が、ノード105を介してドナー101と接続を確立した場合に、ドナー101は、ノード106のBAP Addressを設定し、さらに、ノード106が上りリンクでドナー101へ信号を送信する場合の中継経路のBAP routing IDを通知する。また、この中継経路における次の転送先の情報として、ノード105のBAP Addressがドナー101からノード106へ通知される。ノード106は、自装置のBAP Addressを保持し、また、BAP routing IDと次の転送先の情報(ノード105のBAP Address)とを関連付けて保持する。なお、この場合、ノード105においても、そのBAP routing IDと、次の転送先の情報(ノード104のBAP Address)が記憶される。同様に、ノード104においても、そのBAP routing IDと、次の転送先の情報(ドナー101のBAP Address)が記憶される。ノード104やノード105は、例えば、ドナー101がノード106に対してBAP routing IDを通知するメッセージの転送過程においてこの情報を取得してもよいし、別途ドナーから受信した通知によってこの情報を取得してもよい。なお、ドナー101は、例えばRRCReconfigurationメッセージを用いて、ノード106に対して上述のような設定情報を通知する。
【0012】
また、ドナー101は、ノード106へ至る下りリンクの中継経路についても同様に、中継経路の識別子の設定を実行する。この場合、ドナー101は、例えば、ノード105に対して、ノード106を次の転送先とする中継経路のBAP routing IDを通知する。同様に、ノード104に対して、そのBAP routing IDと、次の転送先の情報(ノード105のBAP Address)とを通知する。なお、ドナー101は、BH ROUTING CONFIGURATIONメッセージを用いて、この通知を行いうる。
【0013】
その後、ノード106は、上述のようにして設定された上りリンクの中継経路を用いて、ドナー101に対して、F1インタフェースを設定するための要求メッセージを送信する。この要求メッセージは、例えば、F1 SETUP REQUESTメッセージであり、ドナー101は、このメッセージを受信した際に、F1 SETUP RESPONSEメッセージを送信して、F1インタフェースを確立する。F1インタフェースは、IABドナーとIABノードとの間で確立されるインタフェースであるが、これ以外のインタフェースが設定されてもよい。
【0014】
以上のようにして、ドナー101とノード106との間の中継経路が上りリンク及び下りリンクの双方において使用可能となる。ノード106は、ドナー101へ向けて信号を送信する際に、その信号に宛先情報としてドナー101の情報とBAP routing IDとを含めて、そのBAP routing IDに対応する次の転送先として自装置内に記憶されているノード105に送信する。ノード105は、その信号に含まれるBAP routing IDに基づいて、受信した信号を、そのBAP routing IDに対応する次の転送先として自装置内に記憶されているノード104に送信する。同様に、ノード104は、信号をドナー101へと転送する。これにより、ノード106によって送信された信号をドナー101へと到達させることができる。下りリンクにおいても同様に、ドナー101が、その信号に宛先情報としてノード106の情報とBAP routing IDとを含めて、そのBAP routing IDに対応する次の転送先であるノード104へ転送する。そして、ノード104が、信号に含まれるBAP routing IDに対応する次の転送先として記憶しているノード105へその信号を転送する。同様に、ノード105も、信号に含まれるBAP routing IDに対応する次の転送先として記憶しているノード106へその信号を転送する。これにより、ドナー101によって送信された信号をノード106へと到達させることができる。このように、ドナー101は、新たに中継ノードとの接続を確立した際に、その中継ノードを含んだ中継経路に対して識別子を設定し、各ノードに、その識別子と次の転送先の情報とを関連付けて記憶させることにより、その中継経路の使用を可能とする。なお、中継経路は、例えば、ドナーやノードが展開しているセルや周波数帯ごとに別個に設定されうる。例えば、ドナー101がノード104との間で第1周波数帯及び第2周波数帯で無線リンクを確立している場合、ドナー101とノード106との間での中継経路として、ドナー101とノード104との間で第1周波数帯が使用される第1中継経路と、ドナー101とノード104との間で第2周波数帯が使用される第2中継経路とが設定されうる。
【0015】
上述のような中継伝送は、ドナー101から放射した電波が通信サービスを提供可能な十分な電力レベルで到達する範囲またはドナー101に十分な電力レベルで到達するように電波を放射することができる端末装置が存在しうる範囲の外部において、ドナー101が通信サービスを提供するのに使用されうる。すなわち、ドナー101の通信可能範囲をノード102~ノード106の周囲にまで拡大するのに中継伝送が使用されうる。一例として、ノードが、部屋の窓際などの所定位置(ドナーと通信可能な位置)に配置されることにより、その部屋に存在する端末装置に対して十分な高品質で通信サービスを提供することが可能となる。
【0016】
また、例えば、電車やバスなどの多数の端末装置を同時に移動させる移動体にノードが配置されることにより、その移動体と共に移動する多数の端末装置に安定した通信サービスを提供することができる。なお、この場合、ノードは、その移動に伴って、例えば接続先のノードを切り替える必要が生じうる。同様に、静止しているノードにおいても、無線環境の変化等に応じて、接続先のノードを切り替える必要が生じる場合がありうる。この場合、そのノードは、周囲に存在するドナー又はノードに対して、再度、接続するようにする。しかしながら、ノードとこのときの接続先との間の無線リンクを含む経路については、BAP routing IDの設定などが実行されていないため、この経路は、有効な中継経路として機能しない。このため、ドナーは、切り替え後の中継経路について上述のような設定を再度実行する。これにより、切り替え後の中継経路を用いた通信が実行可能となる。
【0017】
なお、切り替えを実行したノードは、例えば、ドナーからそのノードへ送信された一部の中継経路を指定して設定を削除することを指示するメッセージにより、切り替え前の中継経路に関する設定を削除することができる。これにより、使用できなくなった中継経路についてのBAP routing IDが解放されるため、BAP routing IDの取りうる有限の値域を有効に活用することが可能となる。一方で、例えば意図せずに無線リンクが切断されてしまった場合等、ノードがドナーからのメッセージを受信することができない場合があり、この場合、ノードは、中継経路の設定を削除することができず、使用できない中継経路の設定情報を不必要に維持してしまいうる。また、中継経路の識別情報等は、ドナーごとに独自に設定されうる。すなわち、相異なる2つのドナーが、それぞれが使用可能な中継経路に対して同じ識別子を使用することが許容される。このため、ノードが、中継経路の設定を削除していないまま、切り替え前の経路における第1のドナーと異なる第2のドナーと接続すると、削除されていない設定に基づいて、本来転送する必要のない信号の転送や誤った転送先への信号の転送を行ってしまいうる。このため、最も簡単な手順によれば、ノードは、無線リンクが切断された場合(例えばRadio Link Failureが発生した場合)や接続先の変更があった場合に、中継経路の設定をリセット(削除)するように構成されうる。しかしながら、この手順によれば、ドナーの変更を伴わない接続先の変更時にも、中継経路の設定がリセットされてしまう。この結果、例えば、ノードにおいて複数の他のノードを介する中継経路が設定されている場合に、その複数の他のノードのうちの1つについて接続先が変更されただけで、全ての中継経路の設定が削除されてしまいうる。また、ノードは、接続先の切り替え前のドナーと接続先の切り替え後のドナーとが異なる場合に、F1インタフェースを再設定する必要がある。一方で、ノードは、接続先の切り替え前のドナーと接続先の切り替え後のドナーとが同じである場合には、F1インタフェースの再設定は必要ない。
【0018】
本実施形態では、上述のような状況に鑑み、ノードが、接続先の切り替え時にドナーの変更があったか否かを判定し、その判定結果に応じて、実行する処理を変更するようにする。
【0019】
例えば、ノードは、接続先の切り替え時にドナーの変更があった場合、F1インタフェースの設定(例えばF1 SETUP REQUESTの変更後のドナーへの送信)を含んだ第1の処理を実行する。また、第1の処理は、例えばノードに記憶されている中継経路の設定に関する情報のリセットを含んでもよい。このとき、ノードは、中継経路の設定と共に、その中継経路におけるドナーの情報をも消去しうる。なお、ノードは、記憶されている中継経路の設定を、ドナーごとに関連付けて記憶しておいてもよく、この場合、第1の処理は、変更後のドナーに関連付けられている中継経路の設定を読み出して設定することを含んでもよい。なお、ノードは、ドナーの変更の有無によらず、F1インタフェースの再設定処理を実行してもよい。すなわち、第1の処理は、F1インタフェースの設定を含まなくてもよい。
【0020】
一方、ノードは、接続先の切り替え時にドナーの変更がなかった場合、例えば、F1インタフェースの設定を維持した状態での中継経路の設定を含んだ第2の処理を実行しうる。この場合、ノードは、例えば、切り替え後の接続先とのRRC接続が確立したことに応じて、中継経路の設定処理のためのメッセージがドナーから送信されてくるのを待ち受ける。そして、ノードは、そのメッセージに応答して、例えば上りリンクの中継経路のBAP routing IDと次の転送先(切り替え後の接続先)のBAP Addressとを関連付けて記憶する処理を実行する。なお、ノードは、切り替え後の接続先を次の転送先とする中継経路の設定情報をすでに保持している場合は、その設定情報を使用するものとしてもよい。なお、ノードは、切り替え前の接続先に関する中継経路の設定情報は消去してもよいし、ドナーからの明示的な削除指示がない限りはそのまま残しておいてもよい。
【0021】
ノードは、上述のような処理のために、接続先の変更に伴ってドナーに変更があったか否かを判定する必要がある。ここで、ノードは、接続先を変更する際には、ドナーのCUに対応する物理セル識別子(physCellId)を含んだハンドオーバ指示(RRCReconfigurationメッセージ)を受信する。このため、ドナーが変更された場合には、その物理セル識別子が接続の切り替え前から変化することが想定される。一方で、同じドナーが複数の物理セル識別子に対応する場合があり、ノードは、物理セル識別子が変化した場合であっても、必ずしもドナーが変化したと判定することはできない。すなわち、物理セル識別子のみでは、ドナーを特定することができない。このため、本実施形態にかかる一例において、ドナーが、物理セル識別子とは異なる、ドナーであることを特定可能な識別子を中継装置へ通知する。例えば、物理セル識別子とは異なるCellIdentityが中継装置へ通知される。なお、CellIdentityは一例に過ぎず、他の情報が通知されてもよい。ドナーは、例えばRRCReconfigurationメッセージにそのような識別子を含めることによって、ドナーと初めて接続したノードや、接続先を切り替えたノードに対して、ドナーの識別子を通知することができる。また、CUと物理セル識別子との対応関係を示す情報を、事前に各中継装置へ通知しておいてもよい。例えば、ドナーとそのドナーに接続しているノードは、ブロードキャスト信号により、そのドナーのCUの物理セル識別子の情報を報知していてもよい。また、ドナーとそのドナーに接続しているノードは、新たに接続したノードに対して、そのドナーのCUの物理セル識別子を通知しうる。また、周囲の他のドナーのCUの物理セル識別子の情報が併せて通知されてもよい。これにより、ノードが、接続先の変更時に接続の切り替え後のドナーの物理セル識別子を受信したことに応じて、その接続先の変更に伴ってドナーが変化したかを判定することができるようになる。
【0022】
以下では、上述のような処理を実行するノードの構成と実行される処理の流れの例について説明する。
【0023】
(装置構成)
図2に、本実施形態に係る中継装置(IABノード)のハードウェア構成例を示す。中継装置は、一例において、プロセッサ201、ROM202、RAM203、記憶装置204、及び通信回路205を含んで構成される。プロセッサ201は、汎用のCPU(中央演算装置)や、ASIC(特定用途向け集積回路)等の、1つ以上の処理回路を含んで構成されるコンピュータであり、ROM202や記憶装置204に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、中継装置の全体の処理や、上述の各処理を実行する。ROM202は、中継装置が実行する処理に関するプログラムや各種パラメータ等の情報を記憶する読み出し専用メモリである。RAM203は、プロセッサ201がプログラムを実行する際のワークスペースとして機能し、また、一時的な情報を記憶するランダムアクセスメモリである。記憶装置204は、例えば着脱可能な外部記憶装置等によって構成される。通信回路205は、例えば、無線通信用の回路によって構成される。中継装置は、他の装置との通信のための通信回路205として、例えばセルラ通信用のベースバンド回路及びRF回路等とアンテナとを含んで構成される。なお、
図2では、1つの通信回路205が図示されているが、中継装置は、複数の通信回路を有しうる。例えば、中継装置は、端末装置との間の通信のための無線通信回路に加えて、基地局装置(IABドナー)や他の中継装置との通信のための無線通信回路を有してもよい。例えば、中継装置は、周波数帯ごとの無線通信回路を有してもよく、例えば相対的に高い周波数帯用の無線通信回路を基地局装置や他の中継装置との間の通信に使用し、相対的に低い周波数帯用の無線通信回路を端末装置との通信に使用してもよい。
【0024】
図3に、本実施形態に係る中継装置の機能構成例を示す。中継装置は、その機能構成として、通信部301、変更判定部302、及び、設定制御部303を含んで構成される。なお、これらの機能構成は、例えば、プロセッサ201が、ROM202や記憶装置204に記憶されているプログラムを実行することによって、実現されうる。ただし、これに限られず、例えば、これらの機能の少なくともいずれかが実装された専用のハードウェアが用意されてもよい。
【0025】
通信部301は、端末装置との間の無線通信に加え、基地局装置(IABドナー)又は他の中継装置(IABノード)との間の無線通信の制御を実行する。すなわち、通信部301は、基地局装置と端末装置との間の通信を中継するための各種通信制御を実行する。変更判定部302は、例えば、接続先の基地局装置又は他の中継装置を変更した場合に、その変更の前後で接続先の基地局装置(IABドナー)が変更されるか否かを判定する。例えば、変更判定部302は、上述のようにして、接続先の変更時のメッセージ等によってCellIdentity等の基地局装置(IABドナー)を特定可能な情報を特定し、その特定した情報に基づいて、基地局装置の変更があったかを判定しうる。また、変更判定部302は、事前に基地局装置と物理セル識別子とを関連付ける情報を取得して保持しておき、例えばRRCメッセージを受信した際に通知される物理セル識別子によって、基地局装置を特定し、その特定結果に基づいて基地局装置の変更があったかを判定してもよい。
【0026】
設定制御部303は、通信部301における通信設定や、中継伝送のための中継経路に関する設定等の各種設定を実行する。例えば、設定制御部303は、周囲に存在する基地局装置又は他の中継装置を検出したことに応じて、それらの装置のいずれかとの間でランダムアクセス手順を実行して接続を確立し、その後、上述のようにして中継経路を設定するための処理を実行する。例えば、設定制御部303は、基地局装置(IABドナー)から受信したメッセージにより、中継経路に対応するBAP routing IDと、その中継経路における信号の次の転送先のBAP Addressとを取得し、保持するようにする。また、自装置のBAP Addressをも保持する。これにより、中継伝送を行うことが可能となる。さらに、設定制御部303は、接続先の変更が発生した場合に変更判定部302に上述の判定を実行させ、その判定結果に応じた設定制御処理を実行する。
【0027】
例えば、設定制御部303は、接続先の変更に応じて基地局装置が変更された場合、第1の処理として、F1インタフェースの設定処理を変更後の基地局装置との間で実行する。また、第1の処理において、変更前の基地局装置に関して設定されていた中継経路の設定情報が全てリセットされうる。また、例えば、基地局装置ごとに中継経路の設定情報を保存しておいてもよく、この場合、基地局装置の変更前に使用されていた中継経路の設定情報は消去されずに、基地局装置を特定可能な情報(例えば、CellIdentity)と共に記憶装置204等に保持されうる。このとき、設定制御部303は、変更後の基地局装置に関連付けられて中継経路の設定情報が記憶されている場合は、その設定情報を使用する設定情報として記憶装置204等から読み出すようにしてもよい。
【0028】
また、設定制御部303は、接続先の変更に応じて基地局装置が変更されなかった場合、第2の処理として、F1インタフェースを維持する。すなわち、第2の処理では、F1インタフェースの設定処理が行われないようにしうる。この場合、F1インタフェースは維持されるが、新たな接続先を経由する中継経路に関する設定が行われる。なお、例えば、基地局装置からの指示に応じて、接続先の変更前に使用していた中継経路の設定情報が消去されてもよい。
【0029】
(処理の流れ)
図4に、本実施形態に係る中継装置(IABノード)が実行する処理の流れの例を示す。なお、各処理の詳細については上述した通りであるため、ここでは、処理の流れの概要を説明し、詳細な説明については省略する。ここで、本実施形態では、中継装置は、いずれかの基地局装置(IABドナー)と、直接又は他の中継装置を介して接続し、中継経路の設定とF1インタフェースの確立とが完了しているものとする。この状態で、中継装置は、例えば、確立済みの基地局装置又は他の中継装置との無線接続の無線品質が劣化したこと等に応じて、無線接続を他の装置との接続に切り替える(S401)。中継装置は、無線接続の切り替えがあったことに応じて、接続先の基地局装置(ドナー)が変更されるか否かを判定する(S402)。例えば、中継装置は、上述のように、物理セル識別子と異なり、CellIdentityなどの基地局装置を特定可能な情報に基づいて、S402の判定を実行しうる。また、中継装置は、例えば、事前に物理セル識別子と基地局装置との対応関係を示す情報を取得しておき、例えばS401の接続処理の際にRRCメッセージで取得した物理セル識別子に基づいて、S402の判定を実行してもよい。
【0030】
そして、中継装置は、基地局装置の変更があると判定した場合(S402でYES)、例えば、F1インタフェースの確立処理、保持している中継経路に関する設定(BAP routing ID、信号の次の転送先、BAP Address等)の削除などの第1の設定処理を実行する(S403)。なお、中継装置は、例えば、基地局装置を特定可能な情報と共にその基地局装置と接続する中継経路の設定情報を保持している場合、変更前の基地局装置に関連付けられた中継経路の設定情報を無効化しうる。また、中継装置は、変更後の基地局装置に関連付けられた中継経路の設定情報を保持している場合には、その設定情報を有効化してもよい。一方、中継装置は、基地局装置の変更がないと判定した場合(S402でNO)、例えば、F1インタフェースを維持しながら、無線接続の変更前に使用されていた中継経路に関する設定(BAP routing ID、信号の次の転送先、BAP Address等)の削除や無効化などの第2の設定処理を実行する(S404)。なお、中継装置は、この場合には、無線接続の変更前に使用されていた中継経路に関する設定情報を削除・無効化せず、保持していてもよい。なお、中継装置は、例えば、変更後の中継経路に関する設定情報を事前に保持していない場合は、その中継経路の設定処理を実行する。例えば、中継装置は、変更後の中継経路における基地局装置から指定されたBAP routing IDと信号の次の転送先の情報(及び必要に応じてBAP Address)を保持し、その後の中継伝送において使用するようにする。
【0031】
上述のような手順によれば、様々な変化のある状況において中継経路が柔軟に設定され、基地局装置と端末装置との間の中継伝送を適切に実行することが可能となる。
【0032】
本発明は上記実施の形態に制限されるものではなく、本発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、本発明の範囲を公にするために、以下の請求項を添付する。