(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】平面アンテナ付キャビネット
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/22 20060101AFI20240219BHJP
H01Q 3/08 20060101ALI20240219BHJP
H01Q 1/12 20060101ALI20240219BHJP
H05K 7/12 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
H01Q1/22 Z
H01Q3/08
H01Q1/12 E
H05K7/12 G
(21)【出願番号】P 2020023696
(22)【出願日】2020-02-14
【審査請求日】2022-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 典夫
【審査官】齊藤 晶
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-168314(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0366809(US,A1)
【文献】実開平05-039010(JP,U)
【文献】特開2017-017582(JP,A)
【文献】特開平02-261202(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/22
H01Q 3/08
H01Q 1/12
H05K 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器を収容する箱体のキャビネット本体と、前記キャビネット本体の前方に連結された平面アンテナとを備える平面アンテナ付キャビネットであって、
前記平面アンテナは、1つの上部連結金具と、2つの下部連結金具とを介して前記キャビネット本体に連結され、
前記上部連結金具は、前後方向に延びる
第1の長孔が設けられ、前記
第1の長孔を介して前記キャビネット本体の上面に摺動及び回動可能に取り付けられる板状の摺動部と、前記摺動部前部に回動可能に連結される一片と、前記平面アンテナへの取付状態で上下方向に延びる
第2の長孔が設けられ、前記
第2の長孔を介して前記平面アンテナの背面上部に上下方向で摺動可能に取り付けられる他片とを有し、水平方向を回転軸として回動可能なヒンジ部とを備え、
前記下部連結金具は、水平方向を回転軸として回動可能な蝶番形状で、前後方向に延びる
第3の長孔が設けられ、前記
第3の長孔を介して前記キャビネット本体の下面に摺動可能に取り付けられる基部と、前記平面アンテナ下面に固定される回動部とを有し、
前記平面アンテナが、前記上部連結金具及び前記下部連結金具とによって、前記キャビネット本体に対して一定の範囲内で任意の方向を向けて固定されることを特徴とする平面アンテナ付キャビネット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面アンテナ付キャビネットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、一般家庭を含め、平面アンテナの利用が普及している。一方、平面アンテナは、特に高周波で送受信の指向性が高いため、送受信精度の高い角度に傾斜させて取り付ける必要がある。そこで、所望の角度に平面アンテナを傾斜させた状態で取り付けるための技術が開示されている(特許文献1,2)。また、平面アンテナが風圧を受けることで生じる不具合の発生等の問題を解消するため、平面アンテナを所定の角度を維持しながら構造物に対して堅牢に固定する技術も開示されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5178674号公報
【文献】特開2002-223106号公報
【文献】実開平5-6917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1,2で開示されている平面アンテナの取付構造では、上下2箇所で平面アンテナを支持しているため、平面アンテナが風を受け、風圧によって平面アンテナの角度が変わることで受信精度が変わる恐れがある。また、特許文献3で開示されている平面アンテナの取付構造では、多数の固定箇所を設けることで平面アンテナを構造物に対して堅牢に固定することを可能としているが、予め設けられたセット孔及びピン孔と角度固定具との組み合わせの中でしか角度調整が行えないことに加え、構造上、上下方向での角度変更ができないため、角度調整の自由度の低さが課題が残されている。
また、基本的に平面アンテナは屋外に設置されており、例えば、衛星放送などの高周波電波を受信するために必要なコンバータや電源といった電気機器と平面アンテナとを接続する場合、平面アンテナが設置される構造物によっては、結線作業が煩雑になるといった課題も挙げられる。
【0005】
そこで、本発明の目的は、平面アンテナの角度調整の自由度が高く、調整された角度で確実に固定可能な平面アンテナ付キャビネットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、電気機器を収容する箱体のキャビネット本体と、キャビネット本体の前方に連結された平面アンテナとを備える平面アンテナ付キャビネットであって、平面アンテナは、1つの上部連結金具と、2つの下部連結金具とを介してキャビネット本体に連結され、上部連結金具は、前後方向に延びる第1の長孔が設けられ、第1の長孔を介してキャビネット本体の上面に摺動及び回動可能に取り付けられる板状の摺動部と、摺動部前部に回動可能に連結される一片と、平面アンテナへの取付状態で上下方向に延びる第2の長孔が設けられ、第2の長孔を介して平面アンテナ背面上部に上下方向で摺動可能に取り付けられる他片とを有し、水平方向を回転軸として回動可能なヒンジ部とを備え、下部連結金具は、水平方向を回転軸として回動可能な蝶番形状で、前後方向に延びる第3の長孔が設けられ、第3の長孔を介してキャビネット本体の下面に摺動可能に取り付けられる基部と、平面アンテナ下面に固定される回動部とを有し、平面アンテナが、上部連結金具及び下部連結金具とによって、キャビネット本体に対して一定の範囲内で任意の方向を向けて固定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、平面アンテナの向きを、一定の範囲内で無段階且つ任意の角度で調整できる。また、平面アンテナを3点で支持するため、風圧等で強い荷重が平面アンテナに加わっても、所定の角度を維持できる。また、平面アンテナとキャビネット本体との間に空間が生じるため、平面アンテナ及びキャビネット本体の放熱に寄与できる。加えて、電子機器を収容するキャビネット本体と平面アンテナとが近接しているため、設置時の結線作業等を容易に行う事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の平面アンテナ付キャビネットの説明図で、(A)は前方からの斜視、(B)は上面、(C)は底面をそれぞれ示す。
【
図2】(A)は上部連結金具を示す説明図、(B)は下部連結金具を示す説明図である。
【
図3】(A)は平面アンテナの背部を確認可能な状態とした平面アンテナ付キャビネットの右側面図、(B)は
図3A(A)における丸枠A内を拡大した拡大図である。
【
図4】平面アンテナを左に向けた状態の平面アンテナ付キャビネットの説明図で、(A)は前方からの斜視、(B)は上面、(C)は底面をそれぞれ示す。
【
図5】平面アンテナを下に向けた状態の平面アンテナ付キャビネットの説明図で、(A)は前方からの斜視、(B)は上面、(C)は底面をそれぞれ示す。
【
図6】平面アンテナを左下に向けた状態の平面アンテナ付キャビネットの説明図で、(A)は前方からの斜視、(B)は上面、(C)は底面をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の平面アンテナ付キャビネットの説明図で、(A)は前方からの斜視、(B)は上面、(C)は底面をそれぞれ示す。
平面アンテナ付キャビネット1は、
図1(A)に示すように、電気機器を収納する中空の箱体であるキャビネット本体2と、平面アンテナ3とを備える。
また、
図1(B)-(C)に示すように、平面アンテナ3は、後述する1つの上部連結金具4及び2つの下部連結金具9,9によって、キャビネット本体2に連結されている。
なお、キャビネット本体2は、その背面で図示しない所定の構造物に任意の固定方法で設置されている。
【0010】
図2(A)は上部連結金具を示す説明図、
図2(B)は下部連結金具を示す説明図である。
上部連結金具4は、
図2(A)に示すように、前後方向に延びる
第1の長孔6が設けられた板状の摺動部5を備え、例えばボルトのような容易に固定強度を変更可能な固定手段11を用いて、摺動部5の前部に水平方向に回動可能に連結される一片7aと、平面アンテナ3の背面に取り付けられる他片7bを有し、水平方向を回転軸として回動可能なヒンジ部7とを備える。また、他片7bには、平面アンテナ3への取付状態で上下方向に延びる
第2の長孔8が設けられている。
下部連結金具9は、
図2(B)に示すように、水平方向を回転軸として回動可能な蝶番形状であって、前後方向に延びる
第3の長孔10が設けられた基部9aと、回動部9bとを有している。また、下部連結金具9は、キャビネット本体2及び平面アンテナ3に対して電気的に接続しており、下部連結金具9を介してアースをとることができる。
【0011】
図3(A)は平面アンテナの背部を確認可能な状態とした平面アンテナ付キャビネットの右側面図、
図3(B)は
図3A(A)における丸枠A内を拡大した拡大図である。
上部連結金具4は、
図3(A),(B)に示すように、摺動部5のヒンジ部7の他片7bに設けられた
第2の長孔8を介して、固定手段12によって平面アンテナ3の背面上部中央に設けられた切欠部3aに沿って上下動可能に取り付けられると共に、
図1(B)に示すように、固定手段11を用いて、摺動部5に設けられた
第1の長孔6を介して、キャビネット本体2の上面2aの前方中央に取り付けられる。
下部連結金具9は、
図1(C)に示すように、固定手段11を用いて、
第3の長孔10を介して、キャビネット本体2の下面2bに取り付けられると共に、図示しない任意の固定手段によって平面アンテナ3の下面3bに固定される。
【0012】
続いて、平面アンテナ3の方向の調整について説明する。
図4は、平面アンテナを左に向けた状態の平面アンテナ付キャビネットの説明図で、(A)は前方からの斜視、(B)は上面、(C)は底面をそれぞれ示す。
まず、
図4(A)に示すように、平面アンテナ3をキャビネット本体2に対して、左方向を向ける場合を説明する。
最初に各固定手段11を緩め、上部連結金具4及び下部連結金具9,9が移動可能な状態とし、所望の角度で平面アンテナ3を傾けた後、再び固定手段11によって上部連結金具4及び下部連結金具9をキャビネット本体2に対して強固に固定する。この時、上部連結金具4は、
図4(B)に示すように、摺動部5に設けられた
第1の長孔6に沿って前方へ移動すると共に、左に回動する。加えて、ヒンジ部7も摺動部5に対して左に回動している。一方、下部連結金具9は、
図4(C)に示すように、基部9aに設けられた
第3の長孔10に沿ってそれぞれ前方に移動すると共に、左に回動している。
なお、平面アンテナ3を右方向に向ける場合、上部連結金具4及び下部連結金具9,9は、上記の移動と左右対称に機能する。
このようにして、平面アンテナ3は、キャビネット本体2に対して左右方向に任意の角度で固定することができる。
【0013】
次に、
図5(A)に示すように、平面アンテナ3をキャビネット本体2に対して、下方向を向ける場合を説明する。
図5は、平面アンテナを下に向けた状態の平面アンテナ付キャビネットの説明図で、(A)は前方からの斜視、(B)は上面、(C)は底面をそれぞれ示す。
上述した左方向を向ける際と同様に、各固定手段11を緩め、上部連結金具4及び下部連結金具9,9が移動可能な状態とし、所望の角度で平面アンテナ3を下に向けて傾けた後、再び固定手段11によって上部連結金具4及び下部連結金具9をキャビネット本体2に対して強固に固定する。この時、上部連結金具4は、
図5(B)に示すように、摺動部5に設けられた
第1の長孔6に沿って前方へ移動している。同時に、上部連結金具4は、ヒンジ部7の他片7bに設けられた
第2の長孔8に沿って平面アンテナ3に対して上方へ移動しながら、他片7bが後方へ回動している。一方、下部連結金具9は、回動部9bが下方へ回動している。
なお、平面アンテナ3を上に向ける場合、上部連結金具4及び下部連結金具9,9は、上記の移動と上下対称に機能する。
このようにして、平面アンテナ3は、キャビネット本体2に対して上下方向に任意の角度で固定することができる。
【0014】
さらに、
図6(A)に示すように、平面アンテナ3をキャビネット本体2に対して、左下方向を向ける場合を説明する。
図6は、平面アンテナを下に向けた状態の平面アンテナ付キャビネットの説明図で、(A)は前方からの斜視、(B)は上面、(C)は底面をそれぞれ示す。
上述の場合と同様に、各固定手段11を緩め、上部連結金具4及び下部連結金具9,9が移動可能な状態とし、所望の角度で平面アンテナ3を左下に向けて傾けた後、再び固定手段11によって上部連結金具4及び下部連結金具9をキャビネット本体2に対して強固に固定する。この時、上部連結金具4は、
図6(B)に示すように、摺動部5に設けられた
第1の長孔6に沿って前方へ移動すると共に、左に回動する。加えて、ヒンジ部7も摺動部5に対して左に回動している。さらに、上部連結金具4は、ヒンジ部7の他片7bに設けられた
第2の長孔8に沿って平面アンテナ3に対して上方へ移動しながら、他片7bが後方へ回動する。一方、下部連結金具9は、
図6(C)に示すように、基部9aに設けられた
第3の長孔10に沿ってそれぞれ前方に移動すると共に、左に回動しながら、回動部9bが下方へ回動する。
このように、左右方向での角度調整及び上下方向での角度調整を組み合わせることで、平面アンテナ3は、キャビネット本体2に対して一定の範囲内で任意の方向及び角度で固定することができる。従って、指向性の高い平面アンテナ3を所望の方向へ向けて強固に固定することができる。また、キャビネット本体2と平面アンテナ3との間に空間が生じるため、キャビネット本体2及び平面アンテナ3の放熱に寄与できる。加えて、電子機器を収容するキャビネット本体2と平面アンテナ3とが近接しているため、設置時の結線作業等を容易に行う事ができる。
【0015】
上記形態の平面アンテナ付キャビネット1は、電気機器を収容する箱体のキャビネット本体2と、キャビネット本体2の前方に連結された平面アンテナ3とを備え、平面アンテナ3は、1つの上部連結金具4と、2つの下部連結金具9,9とを介してキャビネット本体2に連結され、上部連結金具4は、前後方向に延びる第1の長孔6が設けられ、第1の長孔6を介してキャビネット本体2の上面2aに摺動及び回動可能に取り付けられる板状の摺動部5と、摺動部5前部に回動可能に連結される一片7aと、平面アンテナ3への取付状態で上下方向に延びる第2の長孔8が設けられ、第2の長孔8を介して平面アンテナ3の背面上部に設けられた切欠部3aに上下方向で摺動可能に取り付けられる他片7bとを有し、水平方向を回転軸として回動可能なヒンジ部7とを備え、下部連結金具9は、水平方向を回転軸として回動可能な蝶番形状で、前後方向に延びる第3の長孔10が設けられ、第3の長孔10を介してキャビネット本体2の下面2bに摺動可能に取り付けられる基部9aと、平面アンテナ3の下面3bに固定される回動部9bとを有し、平面アンテナ3が、上部連結金具4及び下部連結金具9,9とによって、キャビネット本体2に対して任意の方向を向けて固定される。
このように構成される平面アンテナ付キャビネット1によれば、平面アンテナ3の向きを、無段階且つ任意の角度で調整できる。また、平面アンテナ3を3点で支持するため、風圧等で強い荷重が平面アンテナに加わっても、所定の角度を維持できる。
【0016】
以上は、本発明を図示例に基づいて説明したものであり、その技術範囲はこれに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0017】
1・・平面アンテナ付キャビネット、2・・キャビネット本体、3・・平面アンテナ、4・・上部連結金具、5・・摺動部、6・・第1の長孔、7・・ヒンジ部、7a・・一片、7b・・他片、8・・第2の長孔、9・・下部連結金具、9a・・基部、9b・・回動部、10・・第3の長孔。