(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】コンクリートの配合方法
(51)【国際特許分類】
B28C 7/04 20060101AFI20240219BHJP
C04B 28/02 20060101ALI20240219BHJP
C04B 14/02 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
B28C7/04
C04B28/02
C04B14/02 Z
(21)【出願番号】P 2020036397
(22)【出願日】2020-03-04
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】黒野 聡
(72)【発明者】
【氏名】有馬 冬樹
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-002764(JP,A)
【文献】特開2015-189613(JP,A)
【文献】特開2019-171679(JP,A)
【文献】特開平05-149820(JP,A)
【文献】特開2012-107934(JP,A)
【文献】特開2018-076219(JP,A)
【文献】小野 義徳,7. フレッシュコンクリート,コンクリート総覧 THE CONCRETE ,第1版,飯田 眞理 技術書院
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28C 1/00-9/04
G01N 33/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の方法でコンクリートの材料の配合率を設定する第一ステップと、
設定された前記配合率で前記材料を含有する前記コンクリートの乾燥収縮量の推定値及び実測値を取得する第二ステップと、
前記実測値が前記推定値よりも所定値以上大きい
か否か、又は前記実測値が目標値
よりも大きいか否かに基づいて、前記配合率を再設定する
か否かを判断する第三ステップと、
前記第三ステップにおいて、前記実測値が前記推定値よりも所定値以上大きい場合、又は前記実測値が目標値よりも大きい場合、細骨材の含有率を所定量減少させるように前記配合率を再設定する第四ステップと、
を具備する、
コンクリートの配合方法。
【請求項2】
再設定された前記実測値と前記推定値との差が前記所定値未満となるまで、又は前記実測値が前記目標値
以下になるまで、前記第二ステップ
から前記第
四ステップを繰り返す、
請求項1に記載のコンクリートの配合方法。
【請求項3】
前記第
四ステップにおいて、前記細骨材の含有率を減少させた分だけ粗骨材の含有率を増加させる、
請求項1又は請求項2に記載のコンクリートの配合方法。
【請求項4】
前記第
四ステップにおいて、JIS A 1101に規定されたコンクリートのスランプ試験方法で測定したスランプが125mm以上175mm以下となる範囲内で、前記細骨材の含有率を減少させる、
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のコンクリートの配合方法。
【請求項5】
配合率を再設定した後の前記コンクリートの水セメント比を55%以下とする、
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のコンクリートの配合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの配合方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートの配合方法の技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、セメント、細骨材、石炭灰、AE剤、及び水を混練して、均一な混合物としての組成を有するモルタルを得るモルタル調製工程と、前記モルタルと粗骨材とを混練してコンクリートを得るコンクリート調製工程とを含むコンクリートの製造方法が記載されている。特許文献1に記載の製造方法においては、所定の配合率で各材料を配合している。
【0004】
ここで、コンクリートは、打設後、時間の経過とともに乾燥し、それに伴い収縮する。このように生じる乾燥収縮の量(乾燥収縮量)が大きいと、ひび割れが発生し易く、また発生するひび割れの幅が大きくなり易い。そのため、乾燥収縮量の小さいコンクリートが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、容易に乾燥収縮量を低減させることができるコンクリートの配合方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、所定の方法でコンクリートの材料の配合率を設定する第一ステップと、設定された前記配合率で前記材料を含有する前記コンクリートの乾燥収縮量の推定値及び実測値を取得する第二ステップと、前記実測値が前記推定値よりも所定値以上大きいか否か、又は前記実測値が目標値よりも大きいか否かに基づいて、前記配合率を再設定するか否かを判断する第三ステップと、前記第三ステップにおいて、前記実測値が前記推定値よりも所定値以上大きい場合、又は前記実測値が目標値よりも大きい場合、細骨材の含有率を所定量減少させるように前記配合率を再設定する第四ステップと、を具備するものである。
【0009】
請求項2においては、再設定された前記実測値と前記推定値との差が前記所定値未満となるまで、又は前記実測値が前記目標値以下になるまで、前記第二ステップから前記第四ステップを繰り返すものである。
【0010】
請求項3においては、前記第四ステップにおいて、前記細骨材の含有率を減少させた分だけ粗骨材の含有率を増加させるものである。
【0011】
請求項4においては、前記第四ステップにおいて、JIS A 1101に規定されたコンクリートのスランプ試験方法で測定したスランプが125mm以上175mm以下となる範囲内で、前記細骨材の含有率を減少させるものである。
【0012】
請求項5においては、配合率を再設定した後の前記コンクリートの水セメント比を55%以下とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0014】
請求項1においては、容易にコンクリートの乾燥収縮量を低減させることができる。
【0015】
請求項2においては、コンクリートの乾燥収縮量をより低減させることができる。
【0016】
請求項3においては、水及びセメントの含有率並びに水セメント比を変更する必要がないので、圧縮強度やワーカビリティを確保することができる。
【0017】
請求項4においては、ワーカビリティを確保しつつ、乾燥収縮量を低減させることができる。
【0018】
請求項5においては、乾燥収縮量を低減し易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係るコンクリートの配合方法を示したフローチャートである。
【
図2】コンクリートの材料の配合率の計算手順を示したブロック図である。
【
図3】細骨材率とスランプの関係を水セメント比ごとに示したグラフである。
【
図4】修正係数の値を骨材、セメント及び混和剤の種類ごとに示したものである。
【
図5】本発明の別例に係るコンクリートの配合方法を示したフローチャートである。
【
図6】本発明の別例に係るコンクリートの配合方法を示したフローチャートである。
【
図7】コンクリートの乾燥収縮量の試験結果を示した図。
【
図8】細骨材率と長さ変化試験値との関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、本発明の一実施形態に係るコンクリートの配合方法について説明する。
【0021】
本発明の一実施形態に係るコンクリートの配合方法は、例えば土間や腰壁等の非構造部材に使用するコンクリートの材料の配合率を決定するものである。当該配合方法によって決定された配合率に基づいて、乾燥収縮量(乾燥収縮ひずみ)が低減(抑制)されたコンクリートを製造することができる。コンクリートは、材料として少なくともセメント、水、細骨材及び粗骨材を含んでいる。また、コンクリートは、混和剤を含んでいてもよい。
【0022】
コンクリートに含まれるセメントは、コンクリートの材料として一般的に用いられるセメントを用いることができる。例えば、セメントとして、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント、アルミナセメント、ジェットセメント等を使用することができる。
【0023】
コンクリートに含まれる水は、コンクリートの材料として一般的に用いられる水を用いることができる。例えば、水として、水道水、工業用水、回収水、地下水、河川水、雨水等を使用することができる。
【0024】
コンクリートに含まれる細骨材は、コンクリートの材料として一般的に用いられる細骨材であれば特に限定されない。例えば、細骨材として、川砂、山砂、陸砂、海砂、砕砂、珪砂、スラグ細骨材、及び軽量細骨材、またはこれらの混合物等を使用することができる。
【0025】
コンクリートに含まれる粗骨材は、コンクリートの材料として一般的に用いられる粗骨材であれば特に限定されない。例えば、粗骨材として、川砂利、山砂利、陸砂利、海砂利、砕石、スラグ粗骨材、及び軽量粗骨材、又はこれらの混合物等を使用することができる。
【0026】
コンクリートに含まれる混和剤としては、例えば、減水剤、分散剤、硬化促進剤等を使用することができる。
【0027】
次に、
図1から
図4を参照して、本発明の一実施形態に係るコンクリートの配合方法の手順について説明する。
【0028】
以下において、水セメント比とは、水とセメントの質量比(水/セメント)を百分率(%)で表したものである。
また、単位水量とは、単位容積当たりのコンクリートに含まれる水の質量である。
また、単位セメント量とは、単位容積当たりのコンクリートに含まれるセメントの質量である。
また、単位細骨材量とは、単位容積当たりのコンクリートに含まれる細骨材の質量である。
また、単位粗骨材量とは、単位容積当たりのコンクリートに含まれる粗骨材の質量である。
また、細骨材率とは、全骨材(細骨材及び粗骨材)に対する細骨材の容積比を百分率(%)で表したものである。
【0029】
まず、ステップS11において、コンクリートの材料の配合率を設定(仮設定)する。当該配合率は、所望の圧縮強度及びワーカビリティ等が得られるように、通常の配合設計方法に従い決定することができる。通常の配合設計方法としては、例えば、「日本建築学会:コンクリートの調合設計指針・同解説、2015.2」に記載されている方法を用いることができる。
【0030】
具体的には、
図2に示すように、セメントの種類や細骨材の種類等に基づいて単位水量及び水セメント比を設定し、単位水量及び水セメント比等に基づいて単位セメント量を設定する。また、実績率と単位粗骨材かさ容積に基づいて単位粗骨材量を設定する。最後に単位水量、単位セメント量及び単位粗骨材量等に基づいて単位細骨材量を設定する。単位粗骨材量及び単位細骨材量が設定されることにより、細骨材率が設定されることとなる。
【0031】
ここで、細骨材率は、コンクリートのワーカビリティに影響を与える。
図3は、「日本建築学会:コンクリートの調合設計指針・同解説、2015.2,200頁」に記載されたものである。
図3に示すように、細骨材率が変化することにより、ワーカビリティの指標となるスランプ(JIS A 1101に規定されたコンクリートのスランプ試験方法で測定したスランプ)も変化する。また、
図3に示すように、適切なワーカビリティ(スランプ)を得るためには、水セメント比(W/C)の大きさに応じて細骨材率も変化させる必要がある。より詳細には、水セメント比が大きいほど、細骨材率も大きくする必要がある。
【0032】
また、土間や腰壁等の非構造部材に使用するコンクリートにおいて、ワーカビリティを適切なものとするためには、前記スランプを125mm以上175mm以下の範囲に設定することが好ましい。よって、ステップS11において、細骨材率は、水セメント比に応じて、前記スランプを125mm以上175mm以下としたときに設定可能な細骨材率の範囲内で設定されることが好ましい。
【0033】
また、水セメント比が大きすぎると(単位水量が多すぎると)、コンクリートの乾燥収縮量(乾燥収縮ひずみ)を低減することが困難となる。これを考慮し、本実施形態においては、ステップS11において、水セメント比が55%以下となるように配合率を設定する。
【0034】
このようにして、コンクリートの材料の配合率を設定(仮設定)する。
【0035】
次に、ステップS12において、コンクリートの乾燥収縮量の試験値及び計算値を取得する。より詳細には、ステップS11で仮設定された配合率で各材料を含有するコンクリートの乾燥収縮量の試験値(イ)及び計算値(ロ)を取得する。
【0036】
試験値(イ)とは、試験によって得られる値であって、コンクリートの乾燥収縮量の実際の値(実測値)である。試験値(イ)としては、JIS A 11129-2に従う方法により得られる長さ変化試験値を用いることができる。
【0037】
計算値(ロ)とは、計算によって得られる値であって、コンクリートの乾燥収縮量の理論上の値(推定値)である。計算値(ロ)は、例えば、「日本建築学会:鉄筋コンクリート造建築物の収縮ひび割れ制御設計・施工指針(案)・同解説、2006.2」に記載されている下記式(1)を用いて求められる。
εsh(t,t0)=k・t0
-0.08・{1-(h/100)3}・[(t-t0)/{0.16・(V/S)1.8+(t-t0)}]1.4(V/S)-0.18・・・(式1)
【0038】
なお、前記式(1)において、「1.4(V/S)」は底であり、「-0.18」は指数である。
【0039】
前記式(1)におけるkは、下記式2によって示される。
k=(11・W-1.0・C-0.82・G+404)・γ1・γ2・γ3・・・(式2)
【0040】
前記式1及び式2における各記号が示すものは、以下のとおりである。
εsh(t,t0):乾燥開始材齢t0日における材齢t日の収縮ひずみ(×10-6)
W:単位水量(kg/m3)
C:単位セメント量(kg/m3)
G:単位粗骨材量(kg/m3)
h:相対湿度(%)(40%≦h≦100%)
V:体積(mm3)
S:外気に接する表面積(mm2)
V/S:体積表面積比(mm)(V/S≦300mm)
γ1,γ2,γ3:それぞれ、骨材の種類の影響,セメントの種類の影響,混和剤の種類の影響を表す修正係数。
【0041】
図4に示すように、修正係数γ
1,γ
2,γ
3は、骨材、セメント及び混和剤の種類によって異なる。
【0042】
次に、ステップS13において、試験値(イ)-計算値(ロ)≧150μmであるか否かを判定する。なお、「150μm」とは、試験値(イ)と計算値(ロ)との差の閾値の一例である。当該閾値は任意の値とすることができる。また、試験値(イ)及び計算値(ロ)は、ステップS12で取得されたものである。(イ)-(ロ)≧150μmである場合(ステップS13で「YES」)、ステップS15に移行する。一方、(イ)-(ロ)≧150μmでない場合(ステップS13で「NO」)、ステップS16に移行する。
【0043】
なお、ステップS13で「YES」の場合とは、乾燥収縮量の実際の値(試験値(イ))と理論上の値(計算値(ロ))との乖離が比較的大きいことを示している。一方、ステップS13で「NO」の場合とは、乾燥収縮量の実際の値(試験値(イ))と理論上の値(計算値(ロ))との乖離が比較的小さいことを示している。
【0044】
ステップS16において、配合率を決定する。このステップにおいては、現在の配合率、すなわち(イ)-(ロ)<150μm(ステップS13で「NO」)となる配合率を、最終的な配合率として決定する。
【0045】
よって、ステップS11で設定した配合率のコンクリートが、(イ)-(ロ)<150μm(ステップS13で「NO」)となる場合、コンクリートの最終的な配合率は、ステップS11で設定した配合率のままとなる。
【0046】
一方、ステップS15において、配合率の再設定を行う。配合率の再設定においては、単位細骨材量を所定量減少させる。このとき、単位細骨材量を減少させた分(前記所定量)だけ、或いは当該減少分に近い量だけ単位粗骨材量を増加させる。これにより、単位水量及び単位セメント量(ひいては水セメント比)が変更されることなく、細骨材率が減少することとなる。
【0047】
ここで、単位細骨材量を極端に減らしてしまうと、ワーカビリティに悪影響を及ぼす可能性がある。よって、再設定後の単位細骨材量は、JIS A 1101に規定されたコンクリートのスランプ試験方法で測定したスランプが125mm以上175mm以下としたときに設定可能な単位細骨材量の範囲内に収まるように設定されることが好ましい。
【0048】
配合率の再設定(ステップS15)を行った後、再びステップS12に移行する。ステップS12においては、ステップS15で再設定した配合率のコンクリートの乾燥収縮量の試験値(イ)及び計算値(ロ)を取得する。
【0049】
ステップS15で再設定した配合率のコンクリートが、(イ)-(ロ)<150μm(ステップS13で「NO」)となる場合、コンクリートの最終的な配合率は、ステップS15で再設定した配合率となる。
【0050】
一方、ステップS15で再設定した配合率のコンクリートが、(イ)-(ロ)≧150μm(ステップS13で「YES」)となる場合、(イ)-(ロ)<150μm(ステップS13で「NO」)となるまで、ステップS12からステップS15までの処理を繰り返す。そして、(イ)-(ロ)<150μm(ステップS13で「NO」)となる配合率を、最終的な配合率として決定する。
【0051】
ステップS16において配合率が決定されると、
図1に示すフローを終了する。
【0052】
なお、コンクリートの配合率を決定するためのフローチャートは、
図1に示すものに限定されるものではない。
図1においては、ステップS12において乾燥収縮量の試験値(イ)及び計算値(ロ)を取得した後、試験値(イ)-計算値(ロ)≧150μmであるか否かを判定する(ステップS13)ものとしたが、例えば、
図5に示すように、
図1に示すステップS13に替えてステップS14を行うようにしてもよい。以下、
図5に示すフローチャートについてより詳細に説明する。
【0053】
図5に示すステップS14においては、試験値(イ)≦650μmであるか否かを判定する。試験値(イ)は、ステップS12で取得されたものである。
【0054】
(イ)≦650μmでない場合(ステップS14で「NO」)、ステップS15に移行する。一方、(イ)≦650μmである場合(ステップS14で「YES」)、ステップS16に移行する。ここで、「650μm」とは、乾燥収縮量の目標値の一例である。目標値は任意の値とすることができる。
【0055】
なお、ステップS14で「NO」の場合とは、乾燥収縮量の実際の値(試験値(イ))が目標値(650μm)を満たしていない(目標値を超えている)ことを示している。一方、ステップS14で「YES」の場合とは、乾燥収縮量の実際の値(試験値(イ))が目標値(650μm)を満たしている(目標値以下である)ことを示している。
【0056】
ステップS15及びステップS16については、前述のとおりであるので説明を省略する。なお、
図5に示すフローチャートにおいては、乾燥収縮量の計算値(ロ)を使用しないので、ステップS12において計算値(ロ)を取得しなくてもよい。
【0057】
このように、
図1に示す如く、乾燥収縮量の試験値(イ)と計算値(ロ)との差に基づいて配合率の再設定を行うか否かの判断を行ってもよく、或いは、
図5に示す如く、試験値(イ)が目標値以下であるか否かに基づいて配合率の再設定を行うか否かの判断を行ってもよい。
【0058】
また、
図6に示すように、ステップS13(
図1参照)及びステップS14(
図5参照)の両方を用いて、配合率の再設定を行うか否かの判断を行ってもよい。具体的には、(イ)-(ロ)≧150μmであっても(ステップS13で「NO」)、(イ)≦650μmでない場合には(ステップS14で「NO」)、配合率の再設定(ステップS15)を行うようにしてもよい。なお、ステップ13及びステップS14を行う順番は逆であってもよい。
【0059】
次に、
図7及び
図8を参照して、単位細骨材量を減少させたことにより乾燥収縮量がどのように変化するかを示す具体例(試験結果)について説明する。
【0060】
まず、4つの各工場(工場A、工場B、工場C及び工場D)において、通常の配合設計方法に従い材料の配合率を設定し、当該配合率で材料を含有するコンクリートを製造した。そして、JIS A 11129-2に従う方法によって、各コンクリートの長さ変化試験値(イ)を測定した。さらに、乾燥収縮率の基準を満足しない場合(詳細は、後述する)、配合率を再設定し、当該配合率で材料を含有するコンクリートを製造した。そして、JIS A 11129-2に従う方法によって、各コンクリートの長さ変化試験値(イ)を測定した。
【0061】
なお、
図7における各材料(セメント、水、細骨材及び粗骨材)の含有量は、コンクリート1m
3当たりに含まれる質量(単位セメント量、単位水量、単位細骨材及び単位粗骨材量)を示している。混和剤についても同様である。また、長さ変化試験値(イ)はステップS12で取得される試験値(イ)に相当し、乾燥収縮量計算値(ロ)は、ステップS12で取得される試験値(ロ)に相当するものである。また、以下においては、特に断りのない限り、
図1に示すフローチャートに基づいて説明を行う。
【0062】
工場Aにおける1回目の配合(ステップS11で設定した配合率)において、コンクリートの乾燥収縮量計算値(ロ)は、473.1μmであるのに対し、長さ変化試験値(イ)は709.6μmであった。この結果は、(イ)-(ロ)<150μm(
図1に示すステップS13で「NO」)という条件を満たさなかった。
【0063】
このため、配合率の再設定(ステップS15)を行った。2回目の配合(ステップS15)においては、単位細骨材量を866(kg/m3)から850(kg/m3)へと低減させるとともに、単位粗骨材量を983(kg/m3)から999(kg/m3)へと増加させた。すなわち、1回目の配合から、単位細骨材量を16(kg/m3)減少させるとともに、単位粗骨材量を16(kg/m3)増加させた。
【0064】
すると、工場Aにおける2回目の配合(ステップS15で再設定した配合率)のコンクリートにおいて、乾燥収縮量計算値(ロ)は467.9μmであるのに対し、長さ変化試験値(イ)は462.9μmとなった。すなわち、長さ変化試験値(イ)は、1回目の配合の長さ変化試験値(イ)の709.6μmから246.7μm低減された。これにより、(イ)-(ロ)<150μm(
図1に示すステップS13で「NO」)という条件を満たすようになった。すなわち、長さ変化試験値(イ)は、配合率の再設定(ステップS15)が必要ない程度まで低減された。
【0065】
また、工場Bにおける1回目の配合(ステップS11で設定した配合率)のコンクリートにおいて、乾燥収縮量計算値(ロ)は、471.5μmであるのに対し、長さ変化試験値(イ)は690.5μmであった。この結果は、(イ)-(ロ)<150μm(
図1に示すステップS13で「NO」)という条件を満たさなかった。
【0066】
このため、配合率の再設定(ステップS15)を行った。2回目の配合(ステップS15)においては、単位細骨材量を857(kg/m3)から842(kg/m3)へと低減させるとともに、単位粗骨材量を988(kg/m3)から1004(kg/m3)へと増加させた。すなわち、1回目の配合から、単位細骨材量を15(kg/m3)減少させるとともに、単位粗骨材量を16(kg/m3)増加させた。
【0067】
すると、工場Bにおける2回目の配合(ステップS15で再設定した配合率)のコンクリートにおいて、乾燥収縮量計算値(ロ)は466.3μmであるのに対し、長さ変化試験値(イ)は480.3μmとなった。すなわち、長さ変化試験値(イ)は、1回目の配合のコンクリートの長さ変化試験値(イ)の690.5μmから210.2μm低減された。これにより、(イ)-(ロ)<150μm(
図1に示すステップS13で「NO」)という条件を満たすようになった。すなわち、長さ変化試験値(イ)は、配合率の再設定(ステップS15)が必要ない程度まで低減された。
【0068】
また、工場Cにおける1回目の配合(ステップS11で設定した配合率)のコンクリートにおいて、乾燥収縮量計算値(ロ)は、461.8μmであるのに対し、長さ変化試験値(イ)は638.9μmであった。この結果は、(イ)-(ロ)<150μm(
図1に示すステップS13で「NO」)という条件を満たさなかった。
【0069】
このため、配合率の再設定(ステップS15)を行った。2回目の配合(ステップS15)においては、単位細骨材量を861(kg/m3)から840(kg/m3)へと低減させるとともに、単位粗骨材量を996(kg/m3)から1031(kg/m3)へと増加させた。すなわち、1回目の配合から、単位細骨材量を21(kg/m3)減少させるとともに、単位粗骨材量を35(kg/m3)増加させた。
【0070】
すると、工場Cにおける2回目の配合(ステップS15で再設定した配合率)のコンクリートにおいて、乾燥収縮量計算値(ロ)は428.8μmであるのに対し、長さ変化試験値(イ)は531.2μmとなった。すなわち、長さ変化試験値(イ)は、1回目の配合のコンクリートの長さ変化試験値(イ)の638.9μmから107.7μm低減された。これにより、(イ)-(ロ)<150μm(
図1に示すステップS13で「NO」)という条件を満たすようになった。すなわち、長さ変化試験値(イ)は、配合率の再設定(ステップS15)が必要ない程度まで低減された。
【0071】
また、工場Dにおける1回目の配合(ステップS11で設定した配合率)のコンクリートにおいて、乾燥収縮量計算値(ロ)は、482.3μmであるのに対し、長さ変化試験値(イ)は699.9μmであった。この結果は、(イ)-(ロ)<150μm(
図1に示すステップS13で「NO」)という条件を満たさなかった。
【0072】
このため、配合率の再設定(ステップS15)を行った。2回目の配合(ステップS15)においては、単位細骨材量を867(kg/m3)から831(kg/m3)へと低減させるとともに、単位粗骨材量を957(kg/m3)から994(kg/m3)へと増加させた。すなわち、1回目の配合から、単位細骨材量を36(kg/m3)減少させるとともに、単位粗骨材量を37(kg/m3)増加させた。
【0073】
すると、工場Dにおける2回目の配合(ステップS15で再設定した配合率)のコンクリートにおいて、乾燥収縮量計算値(ロ)は470.4μmであるのに対し、長さ変化試験値(イ)は576.4μmとなった。すなわち、長さ変化試験値(イ)は、1回目の配合のコンクリートの長さ変化試験値(イ)の699.9μmから123.5μm低減された。これにより、(イ)-(ロ)<150μm(
図1に示すステップS13で「NO」)という条件を満たすようになった。すなわち、長さ変化試験値(イ)は、配合率の再設定(ステップS15)が必要ない程度まで低減された。
【0074】
なお、
図5に示すフローを採用した場合でも、工場A~Dにおける1回目の配合のコンクリートは、(イ)≦650μm(
図5に示すステップS14で「YES」)という条件を満たさないため、配合の再設定(ステップS15)が必要と判断される。また、
図6に示すフローを採用した場合でも、工場A~Dにおける1回目の配合のコンクリートは、(イ)-(ロ)<150μm(
図6に示すステップS13で「NO」)という条件を満たさないため、配合の再設定(ステップS15)が必要と判断される。
【0075】
また、
図5に示すフローを採用した場合でも、工場A~Dにおける2回目の配合のコンクリートは、(イ)≦650μm(
図5に示すステップS14で「YES」)という条件を満たす。よって、長さ変化試験値(イ)は、配合率の再設定(ステップS15)が必要ない程度まで低減されているといえる。また、
図6に示すフローを採用した場合でも、工場A~Dにおける2回目の配合のコンクリートは、(イ)-(ロ)<150μm(
図6に示すステップS13で「NO」)という条件を満たし、かつ、(イ)≦650μm(
図6に示すステップS14で「YES」)という条件を満たす。よって、長さ変化試験値(イ)は、配合率の再設定(ステップS15)が必要ない程度まで低減されているといえる。
【0076】
図8は、上記試験結果について、細骨材率に対して配合修正前の乾燥収縮量の実測値(長さ変化試験値)と配合修正後の乾燥収縮量の実測値をプロットしたものである。
図8に示すように、単位細骨材量ひいては細骨材率を減少させることにより、配合修正前と比べて配合修正後のコンクリートの乾燥収縮量を低減させることができた。
【0077】
以上のように、コンクリートの乾燥収縮量の実測値(試験値(イ))が推定値(計算値(ロ))よりも所定値(本実施形態においては150μm)以上大きい場合、単位細骨材量(細骨材の含有率)を減少させることにより、乾燥収縮量を減少(乾燥収縮ひずみを改善)することができる。また、コンクリートの乾燥収縮量の実測値が目標値(本実施形態においては650μm)を満たさない場合(目標値よりも大きい場合)もまた、単位細骨材量(細骨材の含有率)を減少させることにより、乾燥収縮量を減少(乾燥収縮ひずみを改善)することができる。これにより、コンクリートのひび割れの発生を抑制することができるともに、ひび割れの幅や長さ、深さ等を小さくすることができる。
【0078】
また、本実施形態に係るコンクリートの配合方法においては、一から配合を見直すことなく、単位細骨材量(細骨材の含有率)を減少させるだけで容易に乾燥収縮量を低減させることができる。また、膨張剤を入れなくても乾燥収縮量を低減させることができるので、コンクリートの単価を抑えることができる。
【0079】
また、コンクリートの乾燥収縮量の実測値(試験値(イ))から推定値(計算値(ロ))を減算した値が所定値(150μm)未満となるまで(ステップS13で「NO」)、又は実測値(試験値(イ))が目標値(650μm)を満たすようになるまで(ステップS14で「YES」)、ステップS12からステップS15までの処理を繰り返すことにより、コンクリートの乾燥収縮量を推定値に近づけることができ、又は実測値(試験値(イ))を目標値以下とすることができる。よって、乾燥収縮量をより減少(乾燥収縮ひずみをより改善)することができる。
【0080】
また、配合率の再設定(ステップS15)においては、単位細骨材量を減少させた分だけ、或いはその減少分に近い量だけ単位粗骨材量を増加させる。すなわち、単位水量や単位セメント量をほとんど変えることなく細骨材率(細骨材/細骨材+粗骨材)を減少させる。これにより、通常の配合設計方針に従って設定された配合率(ステップS11)で確保される圧縮強度及びワーカビリティを維持することができる。
【0081】
また、配合率の再設定(ステップS15)においては、JIS A 1101に規定されたコンクリートのスランプ試験方法で測定したスランプが125mm以上175mm以下となる範囲内で、単位細骨材量を減少させる。これにより、通常の配合設計方針に従って設定された配合率(ステップS11)で確保されるワーカビリティを維持しつつ、乾燥収縮量を低減させることができる。
【0082】
また、通常の配合設計方針に従って配合率を設定する際(ステップS11)、水セメント比を55%以下とし、配合率の再設定(ステップS15)において水セメント比を変化させない。このため、配合率を再設定した後のコンクリートの水セメント比は55%以下となる。このように、水セメント比を抑えることにより、乾燥収縮量を低減し易くすることができる。
【0083】
また、
図8に示すように、細骨材率に対して、配合修正前の乾燥収縮量の実測値(長さ変化試験値)と配合修正後の乾燥収縮量の実測値をプロットすることにより、実測値と細骨材率との関係を数式化することができる(
図8の破線参照)。したがって、1回の再設定では所望の乾燥収縮量を達成しない場合であっても、所望の乾燥収縮量を得るためにどれだけ細骨材の含有率を減らせばよいか、把握することができる。よって、配合率の決定に要する時間を低減させることができる。
【0084】
以上の如く、本実施形態に係るコンクリートの配合方法は、所定の方法でコンクリートの材料の配合率を設定する第一ステップ(
図1、
図5又は
図6に示すステップS11)と、設定された前記配合率で前記材料を含有する前記コンクリートの乾燥収縮量の推定値(計算値(ロ))及び実測値(試験値(イ))を取得する第二ステップ(
図1、
図5又は
図6に示すステップS12)と、前記実測値が前記推定値よりも所定値以上大きい場合(
図1又は
図6に示すステップS13でYES)、又は前記実測値が目標値を満たさない場合(
図5又は
図6に示すステップS14でNO)、細骨材の含有率(単位細骨材量)を所定量減少させるように前記配合率を再設定する第三ステップ(
図1、
図5又は
図6に示すステップS15)と、を具備するものである。
このように構成されることにより、容易にコンクリートの乾燥収縮量を低減させることができる。
【0085】
また、本実施形態に係るコンクリートの配合方法は、再設定された前記実測値と前記推定値との差が前記所定値未満となる(
図1又は
図6に示すステップS13で「NO」)まで、又は前記実測値が前記目標値を満たすようになる(
図5又は
図6に示すステップS14で「YES」)まで、前記第二ステップ(
図1、
図5又は
図6に示すステップS12)及び前記第三ステップ(
図1、
図5又は
図6に示すステップS15)を繰り返すものである。
このように構成されることにより、コンクリートの乾燥収縮量をより低減させることができる。
【0086】
また、本実施形態に係るコンクリートの配合方法は、前記第三ステップ(
図1、
図5又は
図6に示すステップS15)において、前記細骨材の含有率(単位細骨材量)を減少させた分だけ粗骨材の含有率(単位粗骨材量)を増加させるものである。
このように構成されることにより、水及びセメントの含有率並びに水セメント比を変更する必要がないので、圧縮強度やワーカビリティを確保することができる。
【0087】
また、本実施形態に係るコンクリートの配合方法は、前記第三ステップ(
図1、
図5又は
図6に示すステップS15)において、JIS A 1101に規定されたコンクリートのスランプ試験方法で測定したスランプが125mm以上175mm以下となる範囲内で、前記細骨材の含有率(単位細骨材量)を減少させるものである。
このように構成されることにより、ワーカビリティを確保しつつ、乾燥収縮率を低減させることができる。
【0088】
また、本実施形態に係るコンクリートの配合方法は、配合率を再設定した後の前記コンクリートの水セメント比を55%以下とするものである。
このように構成されることにより、乾燥収縮量を低減し易くすることができる。
【0089】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は前記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0090】
例えば、本実施形態においては、配合率の再設定(
図1、
図5又は
図6に示すステップS15)において、単位水量及び単位セメント量ひいては水セメント比を変更しないものとしたが、水セメント比等を適宜変更してもよい。
【0091】
また、本実施形態においては、乾燥収縮量の推定値(計算値(ロ))は、前記式1(及び式2)によって取得されるものとしたが、他の方法によって取得されるものとしてもよい。
【0092】
また、本実施形態においては、配合率の再設定(
図1、
図5又は
図6に示すステップS15)において、JIS A 1101に規定されたコンクリートのスランプ試験方法で測定したスランプが125mm以上175mm以下となる範囲内で、単位細骨材量を減少させるものとしたが、スランプの範囲は125mm以上175mm以下でなくてもよく任意の範囲とすることができる。
【0093】
また、本実施形態においては、ステップS11において、水セメント比が55%以下となるように配合率を設定するものとしたが、水セメント比は55%以下でなくてもよく、任意の値とすることができる。
【0094】
また、本実施形態に係る配合方法は、例えば土間や腰壁等の非構造部材に使用するコンクリートの材料の配合率を決定するものとしたが、コンクリートの用途はこれに限定されるものではなく、任意の用途に使用するコンクリートについて採用可能である。