(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】シート搬送装置、画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B65H 5/06 20060101AFI20240219BHJP
【FI】
B65H5/06 L
(21)【出願番号】P 2020045161
(22)【出願日】2020-03-16
【審査請求日】2023-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関口 肇
(72)【発明者】
【氏名】中川 弘之
(72)【発明者】
【氏名】神成 勲
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 洋
(72)【発明者】
【氏名】田岡 桂太朗
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-107346(JP,A)
【文献】特開平03-102049(JP,A)
【文献】特開2002-072371(JP,A)
【文献】登録実用新案第3003391(JP,U)
【文献】特開平05-147782(JP,A)
【文献】特開2012-240819(JP,A)
【文献】特開平11-314775(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 1/00-3/68
B65H 5/02
B65H 5/06
B65H 5/22
B65H 29/12-29/24
G03G 15/00
F16H 55/32-55/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸と、前記軸を中心に回転可能な回転体と、シートを搬送するニップ部を前記回転体と共に形成する対向部材と、を有し、前記回転体を第1方向に回転させて前記ニップ部に挟持されたシートを搬送するシート搬送手段と、
回転駆動手段と、
前記回転駆動手段の回転駆動によって回転するベルトと、
前記軸を挿入可能な孔部と、前記ベルトがかけ渡される円周面と、前記円周面にかけ渡された前記ベルトの前記軸の軸方向における位置を規制可能であり、前記軸方向の一方に設けられる第1フランジ部と、前記軸方向の他方に向けて開口した被係合部と、を有し、前記ベルトの回転に伴って回転するプーリと、
前記プーリの回転を前記軸に伝達して前記回転体を前記第1方向に回転させ、かつ前記回転駆動手段の前記第1方向への回転駆動速度よりも前記回転体の前記第1方向への回転速度が大きい状態での前記回転体の回転を許容するワンウェイクラッチと、
前記プーリとは前記軸方向において異なる位置で前記ワンウェイクラッチを収容する収容部と、前記被係合部に係合可能な係合部と、前記係合部と前記被係合部とが係合した状態で前記円周面にかけ渡された前記ベルトの前記軸方向における位置を規制可能な第2フランジ部と、を有し、前記プーリと前記ワンウェイクラッチとを連結する連結部材と、を備える、
ことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
前記被係合部は、前記円周面の径方向において前記孔部から放射状に延びる切溝であり、
前記係合部は、前記切溝に嵌合可能な突起である、
ことを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項3】
前記切溝は、前記軸に装着され、前記軸の回転を前記プーリに伝達可能な部材が嵌合可能な形状であり、
前記ワンウェイクラッチは、前記切溝と前記突起とが嵌合することにより、前記プーリの回転を前記軸に伝達して前記回転体を前記第1方向に回転可能な状態とし、かつ前記回転駆動手段の前記第1方向への回転駆動速度よりも前記回転体の前記第1方向への回転速度が大きい状態での前記回転体の回転を許容する、
ことを特徴とする請求項2に記載のシート搬送装置。
【請求項4】
前記ベルトの回転軌道において前記駆動手段と前記プーリとの間に配置され、前記ベルトに張力を付与する張力付与機構、を備える、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項5】
前記シート搬送手段は、第1シート搬送手段であり、
シートの搬送方向において前記第1シート搬送手段よりも下流に配置される第2シート搬送手段、を備え、
前記ワンウェイクラッチは、前記第1シート搬送手段によるシートの搬送速度よりも前記第2シート搬送手段によるシートの搬送速度が大きい状態での前記回転体の回転を許容する、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項6】
シートが支持されるシート支持部と、
シートの搬送方向において前記第1シート搬送手段よりも上流に配置され、前記シート支持部に支持されたシートを給送可能な給送ローラと、
前記給送ローラと当接可能に配置され、前記給送ローラの回転に従動して回転可能である分離ローラと、を備え、
前記第1シート搬送手段は、前記給送ローラによって給送されたシートを前記第2シート搬送手段に向けて搬送する、
ことを特徴とする請求項5に記載のシート搬送装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のシート搬送装置と、
前記シート搬送装置によって搬送されるシートに画像を形成する画像形成手段と、を備える、
ことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを搬送するシート搬送装置、及びこれを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シートに画像を形成するプリンタ等の画像形成装置として、はがきや長尺紙等の不定形シート、OHPフィルムや封筒等の特殊シートを装置本体内部に搬送するシート搬送装置を備えるものがある。このようなシート搬送装置においては、回転するローラ対にシートを挟持させてシートを順次受け渡すことでシートが搬送される。また、ローラ対を回転させる駆動機構としては、ローラ対の軸が固定されたプーリに対してタイミングベルトによってモータの駆動を伝達してシートを搬送する構成が用いられている。このような駆動機構として、特許文献1には、プーリの内部にワンウェイクラッチと一体のハウジングを配置可能な形状と、プーリの外周面にタイミングベルトを摺接可能な形状とを設け、一定方向にシートを搬送する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、プーリの内部にワンウェイクラッチとハウジングとを保持可能な専用のプーリを成型する必要があり、コスト高の要因となる。ここで、低コストを実現するために、プーリに対してワンウェイクラッチを連結させるための部材を用いて、プーリとワンウェイクラッチとを連結させる構成について考察する。この場合、プーリのフランジ形状部に対してワンウェイクラッチを取り付けるため、軸方向における駆動機構の厚みがフランジ形状部の分だけ大きくなるという課題がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、ワンウェイクラッチを設けたプーリを用いてシートを搬送する際に、低コスト化と省スペース化とを両立可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、シート搬送装置、及びこれを備える画像形成装置において、軸と、前記軸を中心に回転可能な回転体と、シートを搬送するニップ部を前記回転体と共に形成する対向部材と、を有し、前記回転体を第1方向に回転させて前記ニップ部に挟持されたシートを搬送するシート搬送手段と、回転駆動手段と、前記回転駆動手段の回転駆動によって回転するベルトと、前記軸を挿入可能な孔部と、前記ベルトがかけ渡される円周面と、前記円周面にかけ渡された前記ベルトの前記軸の軸方向における位置を規制可能であり、前記軸方向の一方に設けられる第1フランジ部と、前記軸方向の他方に向けて開口した被係合部と、を有し、前記ベルトの回転に伴って回転するプーリと、前記プーリの回転を前記軸に伝達して前記回転体を前記第1方向に回転させ、かつ前記回転駆動手段の前記第1方向への回転駆動速度よりも前記回転体の前記第1方向への回転速度が大きい状態での前記回転体の回転を許容するワンウェイクラッチと、前記プーリとは前記軸方向において異なる位置で前記ワンウェイクラッチを収容する収容部と、前記被係合部に係合可能な係合部と、前記係合部と前記被係合部とが係合した状態で前記円周面にかけ渡された前記ベルトの前記軸方向における位置を規制可能な第2フランジ部と、を有し、前記プーリと前記ワンウェイクラッチとを連結する連結部材と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ワンウェイクラッチを設けたプーリを用いてシートを搬送する際に、低コスト化と省スペース化とを両立可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の実施例1の画像形成装置の概略構成図。
【
図3】実施例1のハウジングの構成を示す図(A、B)。実施例1のプーリの構成を示す図(C)。
【
図4】実施例1のプーリとハウジングが連結したときの構成を示す図(A、B)。
【
図5】ワンウェイクラッチを取り付けない場合のプーリを例示した図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための例示的な形態について図面を参照して説明する。
【0010】
<実施例1>
図1は、実施例1の手差しシート給送部40を備え、シート搬送装置としても機能する画像形成装置100の概略断面図である。画像形成装置100は、画像形成部PY、PM、PC、PKが中間転写ベルト506に対して並べて配置された中間転写タンデム方式のプリンタである。なお、インクジェット方式等、電子写真方式以外の構成を備えるプリンタや、モノクロ印刷を行うプリンタに対しても本実施例を適用することができる。
【0011】
<画像形成プロセス>
画像形成装置100においてシートに画像を形成する画像形成プロセスの一連の流れについて、画像形成装置100の各部の構成と共に説明する。本実施例の画像形成手段としての画像形成部PY、PM、PC、PKは、それぞれ、感光体1Y、1M、1C、1Kを有する電子写真ユニットである。また、画像形成部PY、PM、PC、PKは、それぞれ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のトナー像を形成する。画像形成部PY、PM、PC、PKは、現像プロセスで用いるトナーの色が異なる以外は共通化された構成である。そこで本実施例では、画像形成部PYを例に画像形成部の構成及び画像形成プロセスの一連の流れを説明し、画像形成部PM、PC、PKの説明は省略する。画像形成部PYは、感光体1Yと、露光装置511と、現像装置510と、一次転写装置507と、感光体クリーナ509と、を有する。感光体1Yは、予め帯電手段により表面を一様に帯電された状態で
図1中の矢印Aの方向に回転する。帯電している感光体1Yに対し、画像形成装置100に接続されている外部装置から送られてきた画像情報の信号に基づいて露光装置511から光が照射され、回折手段512等を経由して感光体1Yの表面に静電潜像が形成される。感光体1Yの表面に形成された静電潜像に対して現像装置510によるトナー現像が行われ、感光体1Yの表面にトナー像が形成される。その後、感光体1Yの表面のトナー像に対して一次転写装置507により所定の加圧力及び転写バイアスが与えられ、中間転写ベルト506上にトナー像が転写される。その後、感光体1Yに残った転写残トナーは、感光体クリーナ509により回収され、次の画像形成に備える。画像形成部PM、PC、PKにおいても、画像形成部PYと同様に各色のトナー像が形成され、中間転写ベルト506上にトナー像が転写される。
【0012】
<シートカセットからのシート給送>
画像形成装置100は、画像形成装置100本体から抜き差し可能なシート給送部51と、シート給送部51においてシートSが収納されるシートカセット52と、シートカセット52に収納されたシートSを給送するエア給送ヘッド部53と、を有する。シートカセット52には、例えば、A4サイズ等の定形サイズのシートSが収納される。シートカセット52に収納されたシートは、画像形成タイミングに合わせてエア給送ヘッド部53の不図示の吸引ファンにより搬送ベルトに吸着させられて給送される。エア給送ヘッド部53により1枚に分離されて送り出されたシートSは、搬送部54によって画像形成装置100本体の内部を搬送される。シートSは、搬送部50を通過して斜行補正部55において斜行補正が行われる。また、レジストレーションローラ対7は、中間転写ベルト506上のトナー像に合わせてシートSを搬送する、いわゆるタイミング補正を行う。具体的に、まず、レジストレーションローラ対7は、シートSの搬送速度一時的に増速した状態で搬送する。そして、シートSの先端がシート検知センサ8の検知位置を通過してシート検知センサ8によってシートSの先端が検知されると、レジストレーションローラ対7は、シートSの搬送速度を減速して搬送する。このようにしてレジストレーションローラ対7から二次転写部までの搬送区間において、中間転写ベルト506上のトナー像に合わせてシートSの搬送速度を加減速する制御を行い、タイミング補正が行われる。また、レジストレーションローラ対7によってシートSを搬送しているときには、シートSを挟持している他の搬送ローラ対によるシートSの搬送速度を同期させるように駆動モータの加減速制御が行われる。レジストレーションローラ対7に挟持されたシートSは、二次転写部である二次転写内ローラ503と二次転写外ローラ56により形成される転写ニップ部66Pに搬送されてシートSに対してトナー像が転写される。トナー像が転写されたシートSは、定着前シート搬送装置57により定着装置58へと搬送され、定着装置58において所定の加圧力とヒータ等による加熱効果とが付与されて、トナーが溶融固着した結果、シートSにトナーが定着される。トナーが定着されたシートSは、分岐搬送装置59により排出トレイ500に排出される。また、シートSの両面に画像形成を要する場合は、反転搬送装置501によってシートSを反転させ、両面搬送装置502へ向けてシートSを搬送する。両面搬送装置502に搬送されたシートSは、再び転写ニップ部66Pに向けて搬送されて表面への画像形成と同様に裏面に対して画像が形成される。
【0013】
<手差し給送部からのシート給送>
次に、
図1及び
図2を参照して、手差しシート給送部40の構成について説明する。
図2は、手差しシート給送部40の概略斜視図である。手差しシート給送部40は、手差しトレイ41と、給送ローラ対42と、第1搬送ローラ対46と、駆動モータ78と、を有する。本実施例のシート支持部としての手差しトレイ41は、シートSを支持する支持面を有し、画像形成装置100の本体に対して支持面が開閉可能に構成されている。給送ローラ対42は、シートSの搬送方向において、第1搬送ローラ対46よりも上流に配置される給送ローラ42aと、給送ローラ42aと当接可能に配置され、給送ローラ42aの回転に従動して回転可能である分離ローラ42bと、を有する。給送ローラ対42は、摩擦分離方式によってシートSを給送可能であり、手差しトレイ41に支持されたシートSを画像形成装置100の画像形成タイミングに合わせて給送する。具体的に、給送ローラ対42は、手差しトレイ41に支持されたシートSを給送ローラ42aによってピックアップし、ピックアップしたシートSを分離ローラ42bによって1枚ずつ分離して第1搬送ローラ対46へ給送する。
【0014】
給送ローラ対42は、第1搬送ローラ対46のニップ部NにシートSの先端が挟持されるタイミングで、給送ローラ対42を回転させる不図示の駆動手段の駆動伝達が遮断されて自由に回転可能な状態となる。なお、給送ローラ対42の不図示の駆動手段としては、例えば、駆動モータ78が回転し始めた後、ソレノイドがON状態となると欠歯ギアが回動し、給送ローラ42aに駆動が伝達される構成を用いることができる。このような構成において、欠歯ギアは、一回転した後に駆動モータ78からの駆動を遮断するため、給送ローラ対42によって手差しトレイ41に支持されたシートSを1枚ずつ分離給送することができる。
【0015】
給送ローラ対42によって給送されたシートSは、第1搬送ローラ対46に受け渡される。本実施例のシート搬送手段としての第1搬送ローラ対46は、本実施例の回転体としての搬送ローラ46aと、搬送ローラ46aの回転に従動して回転する従動ローラ46bとを有する。搬送ローラ46aは、本実施例の対向部材としての従動ローラ46bと共にニップ部Nを形成し、ニップ部NにシートSを挟持した状態で回転して、シートSを内部搬送ローラ対60に向けて搬送する。
【0016】
次に、第1搬送ローラ対46を回転するための構成について説明する。本実施例の回転駆動手段としての駆動モータ78のプーリ78aの円周面には、本実施例のベルトとしてのタイミングベルト74がかけ渡されている。タイミングベルト74は、プーリ78aの円周面と、プーリ72の円周面72bとに架け渡されており、駆動モータ78の回転駆動によってタイミングベルト74が回転すると、タイミングベルト74の回転によってプーリ72も回転する。また、本実施例では、
図2に示すように、タイミングベルト74の回転軌道において、駆動モータ78とプーリ72との間には、テンショナ73が配置されている。本実施例の張力付与機構としてのテンショナ73は、タイミングベルト74に対して張力を付与している。また、本実施例において、プーリ72には、
図2中の矢印RT方向のプーリ72の回転を軸71に伝達するワンウェイクラッチ77が収容されたハウジング75が取り付けられている。搬送ローラ46aは、軸71を中心に回転可能であるため、ワンウェイクラッチ77によって、
図2中の矢印RT方向のプーリ72の回転が軸71に伝達されると、軸71の回転によって
図2中の矢印RT方向に回転する。そして、搬送ローラ46aの回転に伴って従動ローラ46bが回転し、ニップ部Nに挟持されているシートSが搬送ローラ対46よりも搬送方向FDの下流に配置されている内部搬送ローラ対60、61へと順次搬送される。
図2中の矢印RT方向は、本実施例の第1方向の一例であり、また、本実施例の第1方向とは、搬送方向FDの上流から下流に向けてシートSが搬送されるときの搬送ローラ46aの回転方向である。
【0017】
そして、第1搬送ローラ対46によって搬送されたシートSは、画像形成装置100の本体内部の内部搬送ローラ対60、61に順次受け渡され、搬送部50に搬送される。搬送部50を通過したシートSは、斜行補正部55に搬送され、斜行補正部55によって斜行補正が行われる。斜行補正部55を通過したシートSは、レジストレーションローラ対7によってタイミング補正が行われて転写ニップ部66Pに搬送され、シートSに対してトナー像が転写される。トナー転写以降の動作はシート給送部51からシートSを給送したときと同じであるため、重複する説明を省略する。なお、搬送ローラ対46が本実施例の第1シート搬送手段である。また、シートSの搬送方向FDにおいて搬送ローラ対46よりも下流のローラ対、例えば、内部搬送ローラ対60、61やレジストレーションローラ対7、搬送部50や斜行補正部55が本実施例の第2シート搬送手段の一例である。
【0018】
ここで、手差しシート給送部40から長尺シートを給送したときの第1搬送ローラ対46の挙動とワンウェイクラッチ77との関係について説明する。なお、長尺シートとは、搬送方向FDにおけるシートの長さがシートカセット52に収納可能なシートよりも長いシートのことを指す。手差しシート給送部40から長尺シートを給送した場合には、長尺シートの後端が第1搬送ローラ対46のニップ部Nを通過する前に、長尺シートの先端がレジストレーションローラ対7に到達することがある。本実施例では、ワンウェイクラッチ77によってプーリ72の回転を軸71に伝達して搬送ローラ46aを回転させている。これにより、ワンウェイクラッチ77によって、駆動モータ78の回転駆動速度よりも搬送ローラ46aの回転速度が大きい状態での搬送ローラ46aの回転が許容されている。つまり、駆動モータ78の回転駆動速度よりも第1搬送ローラ対46の回転速度よりも速くなっても、ワンウェイクラッチ77の作用により、プーリ72が
図2中の矢印RT方向の逆方向に回転することがない。これにより、駆動モータ78の回転駆動速度よりも第1搬送ローラ対46の回転速度が速くなっても、搬送ローラ46aの回転が妨げられることがない。駆動モータ78の回転駆動速度より第1搬送ローラ対46の回転速度が速くなる状況としては、第1搬送ローラ対46とレジストレーションローラ対7とに長尺シートが挟持された状態でレジストレーションローラ対7の回転速度が増速した場合が考えられる。このように、本実施例では、レジストレーションローラ対7の回転速度が第1搬送ローラ対46の回転速度よりも速くなっても第1搬送ローラ対46を回転可能とすることで、搬送方向FDへの長尺シートの搬送を実行可能としている。そのため、長尺シートの後端が搬送ローラ46aに挟持された状態でレジストレーションローラ対7によるタイミング補正がされた場合に、タイミングベルト74の振動を抑制でき、プーリ72からのタイミングベルト74の脱落を抑制することができる。
【0019】
ところで、ローラ対を回転させる駆動機構としてプーリとワンウェイクラッチとを用いてシートを搬送する構成においては、タイミングベルトの張力によってラジアル方向の荷重がプーリに対して加わり、ワンウェイクラッチの動作に影響を与えることがある。これに対して、軸に対して軸受を介して設けられたプーリの内部にワンウェイクラッチを配置し、ワンウェイクラッチに対するラジアル方向の荷重の影響を低減させてシートを搬送可能としたものがある。この場合、ワンウェイクラッチに対するラジアル方向の荷重を低減させることが可能な一方で、ワンウェイクラッチを配置するための形状をプーリに設ける必要がある。これにより、ワンウェイクラッチの形状に応じて専用のプーリを成型しなければならず、コスト高の要因となってしまう。
【0020】
また、ローラ対を回転させる駆動機構としてプーリに対してワンウェイクラッチを連結させる部材を用いて、プーリとワンウェイクラッチとを連結させた構成について考察する。ベルトによってモータの動力をプーリに伝達する場合、プーリは、プーリの円周面に架け渡されたベルトの回転に従動して回転する。そのため、プーリには、軸方向へのベルトの脱落を防止する目的でフランジ形状部が設けられている。しかし、プーリに対してワンウェイクラッチを連結させる際には、プーリのフランジ形状部に対してワンウェイクラッチを連結させる部材を取り付けて、取り付けた部材に対してワンウェイクラッチを連結させなければならない。このような構成では、軸方向におけるプーリとワンウェイクラッチとの厚みが、プーリのフランジ形状部の厚み分だけ大きくなり、画像形成装置100の内部に駆動機構を配置するためのクリアランスを広く確保する必要がある。
【0021】
これに対して、本実施例では、プーリ72とワンウェイクラッチ77とを連結する連結部材としてのハウジング75によって、プーリ72に架け渡されたタイミングベルト74の軸方向AXにおける位置を規制可能とする。なお、軸方向AXとは、軸71の軸線に沿った方向(例えば、軸71の軸線と平行な方向)である。次に、本実施例のプーリ72とワンウェイクラッチ77とを連結するハウジング75の形状、及びプーリ72とワンウェイクラッチ77との連結状態を説明する。
図3は、プーリ72とワンウェイクラッチ77とを連結させる前の状態を説明する図であり、
図3(A)は、ワンウェイクラッチ77を収納した状態のハウジング75の側面斜視図である。
図3(B)は、ワンウェイクラッチ77を収納した状態のハウジング75の側面斜視図である。
図3(C)は、軸71を挿入した状態のプーリ72の上方斜視図である。
図4は、プーリ72とワンウェイクラッチ77との連結状態を説明する図であり、
図4(A)は、連結させた状態のプーリ72及びワンウェイクラッチ77を示す斜視図である。
図4(B)は、連結させた状態のプーリ72及びワンウェイクラッチ77を示す断面図である。
【0022】
図3(A)に示すように、軸方向AXにおいてaからa´の向きに視たときに、ハウジング75には、ワンウェイクラッチ77を収容する収容部75aと、フランジ形状75bと、が設けられている。また、
図3(B)に示すように、軸方向AXにおいてa´からaの向きに視たときに、ハウジング75には、軸方向AXにおいてフランジ形状75bを介して収容部75aとは反対側に配置される係合部75cが設けられている。つまり、ハウジング75には、軸方向AXの一方(例えば、軸方向AXのa側)に収容部75aが、他方(例えば、軸方向AXのa´側)に係合部75cが設けられている。収容部75aは、ワンウェイクラッチ77を収容可能であり、ワンウェイクラッチ77のアウターレースと係合可能な形状に形成されている。本実施例の第2フランジ部としてのフランジ形状75bは、中央部に軸71(
図4(B)参照)を挿入可能な挿入部75dを有して形成されている。
図3(C)に示すように、プーリ72は、軸71を挿入可能な孔部72aと、タイミングベルト74(
図2参照)がかけ渡される円周面72bと、第1フランジ部としてのフランジ形状72cと、係合部75cと係合可能な被係合部72dと、を有する。
図3(C)に示すように、軸方向AXにおいてaからa´の向きに視たときに、プーリ72には、軸方向AXの一方にフランジ形状72cが設けられている。被係合部72dは、軸方向AXにおいて、フランジ形状72cが設けられているプーリ72の側面(例えば、軸方向AXのa´側の側面)とは反対側のプーリ72の側面(例えば、軸方向AXのa側の側面)に向けて開口している。また、被係合部72dは、例えば、
図3(C)に示すように円周面72bの径方向において孔部72aから放射状に延びて開口し、開口から軸方向AXに沿った方向に凹んだ形状の切溝72d1、72d2である。つまり、プーリ72には、軸方向AXの一方にフランジ形状72cが、また、軸方向AXの他方に向けて開口した被係合部72dが設けられている。
【0023】
また、係合部75cは、例えば、
図3(B)に示すように、フランジ形状75bから突出した突起75c1、75c2であり、軸方向AXにおいてaからa´の向きに突出している。突起75c1は切溝72d1に、突起75c2は切溝72d2に対してそれぞれ嵌合可能な形状である。軸方向AXにおいてaからa´に向かって、突起75c1と切溝72d1とが、また、突起75c2と切溝72d2とがそれぞれ嵌合することにより、ワンウェイクラッチ77によってプーリ72の回転を軸71に伝達可能となる。つまり、係合部75cがプーリ72の被係合部72dに差し込まれる方向は、軸方向AXに沿った方向であり、例えば、
図4(A)の軸方向AXにおいてaからa´に向かう方向である。突起75c1と切溝72d1とが、また、突起75c2と切溝72d2とがそれぞれ嵌合すると、ワンウェイクラッチ77によって、駆動モータ78の回転駆動速度よりも搬送ローラ46aの回転速度が大きい状態での搬送ローラ46aの回転が許容される。
【0024】
なお、
図3(B)に示す係合部75cの形状と、
図3(C)に示す被係合部72dの形状は、
図3(B)及び
図3(C)に示す形状以外の形状としてもよい。例えば、他の一例として、被係合部72dとして孔部72aから円周面72bの径方向に放射状に延びる3つ以上の切溝を設けてもよい。この場合、係合部75cの形状を、孔部72aから円周面72bの径方向に放射状に延びる3つ以上の切溝に嵌合可能な形状にする。また、被係合部72dの形状の他の例として、孔部72aから円周面72bの径方向に放射状に延びた形状(例えば、
図3(C)に示す凹部72d3、72d4)としてもよい。この場合、係合部75cの形状を、凹部72d3、72d4に嵌合可能な形状にするとよい。
【0025】
ワンウェイクラッチ77が収容されたハウジング75の係合部75cとプーリ72の被係合部72dとを係合させると、
図4(A)に示すように、プーリ72及びワンウェイクラッチ77とがハウジング75によって連結された状態となる。そして、このとき、フランジ形状72c及びフランジ形状75bによって、軸71の軸方向AXにおけるタイミングベルト74の位置を規制可能な状態となる。具体的には、
図4(A)に示すように、係合部75cと被係合部72dとが係合した状態では、円周面72bにかけ渡されたタイミングベルト74の軸方向AXにおける位置が、フランジ形状72c及びフランジ形状75bによって規制可能となる。また、
図4(B)に示すように、プーリ72とワンウェイクラッチ77とがハウジング75によって連結された状態において、ワンウェイクラッチ77は、軸方向AXにおいてプーリ72と異なる位置に配置される。これは収容部75aの形状によるものであり、収容部75aの形状として、例えば、
図4(B)に示すように、軸71の軸方向AXにおいてフランジ形状75bを介してプーリ72とは反対にワンウェイクラッチ77を収容可能な形状とする。収容部75aの形状をこのようにすると、軸方向AXにおいてプーリ72と異なる位置にワンウェイクラッチ77を収容することができる。このように、ハウジング75を用いてワンウェイクラッチ77とプーリ72とを連結させると、タイミングベルト74の回転によるラジアル方向の荷重はプーリ72と軸71とに加わる状態になる。また、ハウジング75を用いてワンウェイクラッチ77とプーリ72とを連結させると、ワンウェイクラッチ77に対するラジアル方向の荷重を低減することが可能である。
【0026】
また、本実施例では、ハウジング75を用いてワンウェイクラッチ77とプーリ72とを連結させた状態において、軸71の軸方向AXにおけるタイミングベルト74の位置をフランジ形状72c及びフランジ形状75bによって規制可能としている。これにより、軸71の軸方向AXにおいてフランジ形状72cとは反対のプーリ72の端部にフランジ形状を設ける必要が無い。そのため、軸方向AXの厚みを小さくすることができ、画像形成装置100の本体内部におけるワンウェイクラッチ77とプーリ72とを配置するためのスペースを省スペース化することが可能となる。さらに、フランジ形状72c及びフランジ形状75bによって、軸71の軸方向AXにおけるタイミングベルト74の位置が規制されるため、軸方向AXにおけるプーリ72からのタイミングベルト74の脱落を抑制することができる。
【0027】
また、上述したように、タイミングベルト74の回転軌道上には、テンショナ73が配置されている。テンショナ73には、タイミングベルト74に張力を付与する以外の構成として、軸71の軸方向AXにおけるタイミングベルト74の位置を規制可能なフランジ形状が設けられている(
図2参照)。これにより、テンショナ73によって軸71の軸方向AXにおけるタイミングベルト74の位置が規制され、軸方向AXにおけるプーリ72からのタイミングベルト74の脱落を抑制する効果を高めることができる。
【0028】
なお、本実施例のプーリ72の切溝72d1、72d2は、ピン79,79が設けられた軸71´を嵌合可能な形状である。
図5に示すように、軸71´には、ピン79,79を装着するための不図示の孔が設けられている。ピン79,79の形状は、これ以外にも、例えば、軸方向AX及びプーリ72の側面に交差する方向に向かって軸71´からピン79,79が伸びた形状としてもよい。そして、切溝72d1、72d2とピン79,79とを嵌合させることにより、ワンウェイクラッチ77の有無に関わらず、軸71´の回転をプーリ72に伝達してプーリ72を回転させることが可能となる。つまり、プーリ72は、ピン79,79のように軸71´の回転をプーリ72に伝達する部材が切溝72d1、72d2に嵌合した状態で、軸71´の回転によってプーリ72を回転させる構成にも用いることができる。
【0029】
また、ハウジング75のフランジ形状75bの外径は、プーリ72のフランジ形状72cの外径と略同じ外径とした。このようにすることで、仮に、プーリ72の円周面72bの歯数が小さくなったとても、ハウジング75のフランジ形状75bで軸方向AXにおけるタイミングベルト74の位置を規制することができる。なお、
図2~
図5においては、円周面72bの表面の歯を省略して記載している。また、ハウジング75のフランジ形状75bの外径を、プーリ72のフランジ形状72cの外径よりも大きくして、ハウジング75を用いてタイミングベルト74の位置を規制可能なプーリ72の円周面72bの歯数の種類を多くすることができる。なお、タイミングベルト74としては、プーリ72の円周面72bの歯数に対応したコグドベルトや、歯が設けられていない円周面72bと摺動する平滑ベルト等を用いることができる。
【0030】
このように、本実施例では、歯数の異なるプーリ72にハウジング75を用いてワンウェイクラッチ77を連結させることができ、ワンウェイクラッチを収容する形状を設けた専用のプーリを成型する必要がない。また、ピン79,79のように軸71´の回転をプーリ72に伝達する部材が切溝72d1、72d2に嵌合した状態で、軸71´の回転によってプーリ72を回転させる構成にもプーリ72を転用できるため、低コスト化を実現することができる。さらに、本実施例では、ハウジング75によって軸71の軸方向AXのタイミングベルト74の位置を規制可能であり、フランジ形状72cとは反対のプーリ72の端部にフランジ形状を設ける必要が無い。そのため、軸方向AXの厚みを小さくすることができ、画像形成装置100の本体内部におけるワンウェイクラッチ77とプーリ72とを配置するためのスペースを省スペース化することが可能となる。
【符号の説明】
【0031】
7 レジストレーションローラ対(第2シート搬送手段)/41 手差しトレイ(シート支持部)/42a 給送ローラ/42b 分離ローラ/46 搬送ローラ対(シート搬送手段、第1シート搬送手段)/46a 搬送ローラ(回転体)/46b 従動ローラ(対向部材)/50、54 搬送部(第2シート搬送手段)/55 斜行補正部(第2シート搬送手段)/60、61 内部搬送ローラ対(第2シート搬送手段)/71 軸/72 プーリ/72a 孔部/72b 円周面/72c フランジ形状(第1フランジ部)/72d 被係合部/72d1、72d2 切溝/72d3、72d4 凹部(被係合部)/73 テンショナ(張力付与機構)/74 タイミングベルト(ベルト)/75 ハウジング(連結部材)/75a 収容部/75b フランジ形状(第2フランジ部)/75c 係合部/75c1、75c2 突起/77 ワンウェイクラッチ/78 駆動モータ(回転駆動手段)/79 ピン/100 画像形成装置(シート搬送装置)/PY、PM、PC、PK 画像形成部(画像形成手段)/AX 軸方向/FD 搬送方向/N ニップ部/S シート