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特許7438801活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、及び化粧シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、及び化粧シート
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/67 20060101AFI20240219BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240219BHJP
   B32B 33/00 20060101ALI20240219BHJP
   C08F 20/12 20060101ALI20240219BHJP
   C08F 20/34 20060101ALI20240219BHJP
   C08F 20/58 20060101ALI20240219BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20240219BHJP
   C08G 18/04 20060101ALI20240219BHJP
   C08G 18/40 20060101ALI20240219BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20240219BHJP
   C09D 163/10 20060101ALI20240219BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
C08G18/67
B32B27/30 A
B32B33/00
C08F20/12
C08F20/34
C08F20/58
C08F290/06
C08G18/04
C08G18/40
C09D4/02
C09D163/10
C09D175/04
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020048829
(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公開番号】P2021147502
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000250384
【氏名又は名称】リケンテクノス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184653
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬田 寧
(72)【発明者】
【氏名】塩田智志
(72)【発明者】
【氏名】伊藤茂一
【審査官】前田 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-026832(JP,A)
【文献】特開2013-064098(JP,A)
【文献】特開2019-069582(JP,A)
【文献】特開2017-052931(JP,A)
【文献】特開2014-162833(JP,A)
【文献】国際公開第2018/079346(WO,A1)
【文献】特開2000-211090(JP,A)
【文献】特開2013-199568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
C08F
B32B
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)活性エネルギー線硬化性樹脂 100質量部;
(B)1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物 1~50質量部;及び、
(C)光重合開始剤 0.1~20質量部;並びに
(D)樹脂粒子 5~200質量部
を含み、ここで上記成分(A)活性エネルギー線硬化性樹脂は
(A1)エポキシ変性多官能(メタ)アクリレート 10~60質量%;
(A2)アルキルアルコールアミン変性多官能(メタ)アクリレート 5~45質量%;及び、
(A3)3‐フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、及び3‐フェノキシベンジル(メタ)アクリレート誘導体からなる群から選択される1種以上 5~45質量%;
を含み、ここで上記成分(A1)、上記成分(A2)、及び上記成分(A3)の配合割合の和は100質量%であり、
ここで上記成分(D)樹脂粒子が水酸基価1~100mgKOH/gの樹脂粒子を含む、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
(A)活性エネルギー線硬化性樹脂 100質量部;
(B)1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物 1~50質量部;及び、
(C)光重合開始剤 0.1~20質量部;並びに
(D)樹脂粒子 5~200質量部
を含み、ここで上記成分(A)活性エネルギー線硬化性樹脂は
(A1)エポキシ変性多官能(メタ)アクリレート 10~60質量%;
(A2)アルキルアルコールアミン変性多官能(メタ)アクリレート 5~45質量%;
(A3)3‐フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、及び3‐フェノキシベンジル(メタ)アクリレート誘導体からなる群から選択される1種以上 5~45質量%;及び、
(A4)1分子中に1個以上の水酸基を有するアクリルアミド化合物 1~20質量%;
を含み、ここで上記成分(A1)、上記成分(A2)、上記成分(A3)、及び上記成分(A4)の配合割合の和は100質量%であり、
ここで上記成分(D)樹脂粒子が水酸基価1~100mgKOH/gの樹脂粒子を含む、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
(A)活性エネルギー線硬化性樹脂 100質量部;
(B)1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物 1~50質量部;及び、
(C)光重合開始剤 0.1~20質量部;
を含み、ここで上記成分(A)活性エネルギー線硬化性樹脂は
(A1)エポキシ変性多官能(メタ)アクリレート 10~60質量%;
(A2)アルキルアルコールアミン変性多官能(メタ)アクリレート 5~45質量%;及び、
(A3)3‐フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、及び3‐フェノキシベンジル(メタ)アクリレート誘導体からなる群から選択される1種以上 5~45質量%;
を含み、ここで上記成分(A1)、上記成分(A2)、及び上記成分(A3)の配合割合の和は100質量%であり、
ここで上記成分(A1)エポキシ変性多官能(メタ)アクリレートは、下記一般式(1)で表される化合物を含み、
【化1】
式(1)中、R は水素又はメチル基を表し、R は水素又はメチル基を表し、R は水酸基を含む炭素数1~12の炭化水素基である活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
(A)活性エネルギー線硬化性樹脂 100質量部;
(B)1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物 1~50質量部;及び、
(C)光重合開始剤 0.1~20質量部;
を含み、ここで上記成分(A)活性エネルギー線硬化性樹脂は
(A1)エポキシ変性多官能(メタ)アクリレート 10~60質量%;
(A2)アルキルアルコールアミン変性多官能(メタ)アクリレート 5~45質量%;
(A3)3‐フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、及び3‐フェノキシベンジル(メタ)アクリレート誘導体からなる群から選択される1種以上 5~45質量%;及び、
(A4)1分子中に1個以上の水酸基を有するアクリルアミド化合物 1~20質量%;
を含み、ここで上記成分(A1)、上記成分(A2)、上記成分(A3)、及び上記成分(A4)の配合割合の和は100質量%であり、
ここで上記成分(A1)エポキシ変性多官能(メタ)アクリレートは、下記一般式(1)で表される化合物を含み、
【化1】
式(1)中、R は水素又はメチル基を表し、R は水素又はメチル基を表し、R は水酸基を含む炭素数1~12の炭化水素基である活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
更に(D)樹脂粒子を、上記成分(A)活性エネルギー線硬化性樹脂 100質量部に対して、5~200質量部含む請求項3又は4に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
上記成分(D)樹脂粒子が水酸基価1~100mgKOH/gの樹脂粒子を含む、請求項5に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
上記成分(A4)1分子中に1個以上の水酸基を有するアクリルアミド化合物がヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドを含む請求項2又は4に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
上記成分(A1)エポキシ変性多官能(メタ)アクリレートがグリセリンジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との付加反応物を含む請求項1~7の何れか1項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1~8の何れか1項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いて形成される塗膜。
【請求項10】
請求項1~8の何れか1項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いて形成される塗膜を有する化粧シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に関する。更に詳しくは、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、及びこれを用いて形成された塗膜を有する化粧シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、冷蔵庫、洗濯機、エアコン、モバイルフォン、及びパソコンなどの家電製品;飾り棚、収納箪笥、食器戸棚、及び机などの家具;あるいは床、壁、及び浴室などの建築部材;として、木材、合板、集成材、パーチクルボード、及びハードボードなどの木質系材料からなる基材;ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)、ポリカーボネート、及びポリエステルなどの樹脂系材料からなる基材;あるいは鉄、アルミニウムなどの金属系材料からなる基材;の表面に化粧シートを貼合して加飾化粧されたものが使用されている。化粧シートの表面(化粧シートが被着体の加飾化粧に用いられた状態において、通常視認される面)には、表面硬度、及び耐擦傷性などの機能を付与するため、硬化性樹脂塗料を塗工し、硬化塗膜を形成することが、しばしば行われている。硬化性樹脂塗料としては、表面硬度、及び耐擦傷性に優れ、硬化の所要時間が短く、生産性が高いことから、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物がしばしば用いられている。
【0003】
近年、商品の差別化ポイントとして、その意匠性がますます重視されるようになっている。そこで、化粧シートの表面に、エンボスロールにより押圧することにより、凹凸模様を施したり、被着体の化粧シート貼合面に、装飾の溝を彫り込むなど三次元形状を付与したりすることが行われている。しかし、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いて形成される硬化塗膜には、エンボスロールにより押圧することにより白化や割れなどの不良現象が起きてしまう、被着体の化粧シート貼合面に三次元形状が付与されている場合、化粧シートを被着体に貼合する際に、白化や割れなどの不良現象が起きてしまうという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019‐026832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、エンボスロールにより押圧することにより凹凸模様を施しても白化や割れなどの不良現象が起きない硬化塗膜を形成することのできる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を提供することにある。本発明の更なる課題は、表面硬度、及び耐擦傷性に優れ、エンボスロールにより押圧することにより凹凸模様を施しても白化や割れなどの不良現象が起きない硬化塗膜を形成することのできる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を提供することにある。本発明の別の更なる課題は、被着体の化粧シート貼合面に三次元形状が付与されている場合であっても白化や割れなどの不良現象が起きない硬化塗膜を形成することのできる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を提供することにある。本発明の更に別の更なる課題は、艶消し意匠を有し、耐汚染性、表面硬度、及び耐擦傷性に優れ、エンボスロールにより押圧することにより凹凸模様を施しても白化や割れなどの不良現象が起きない硬化塗膜を形成することのできる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意研究した結果、特定の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物により、上記課題を達成できることを見出した。
【0007】
即ち、本発明の諸態様は以下の通りである。
[1].
(A)活性エネルギー線硬化性樹脂 100質量部;
(B)1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物 1~50質量部;及び、
(C)光重合開始剤 0.1~20質量部;
を含み、ここで上記成分(A)活性エネルギー線硬化性樹脂は
(A1)エポキシ変性多官能(メタ)アクリレート 10~60質量%;
(A2)アルキルアルコールアミン変性多官能(メタ)アクリレート 5~45質量%;及び、
(A3)3‐フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、及び3‐フェノキシベンジル(メタ)アクリレート誘導体からなる群から選択される1種以上 5~45質量%;
を含み、ここで上記成分(A1)、上記成分(A2)、及び上記成分(A3)の配合割合の和は100質量%である活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
[2].
(A)活性エネルギー線硬化性樹脂 100質量部;
(B)1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物 1~50質量部;及び、
(C)光重合開始剤 0.1~20質量部;
を含み、ここで上記成分(A)活性エネルギー線硬化性樹脂は
(A1)エポキシ変性多官能(メタ)アクリレート 10~60質量%;
(A2)アルキルアルコールアミン変性多官能(メタ)アクリレート 5~45質量%;
(A3)3‐フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、及び3‐フェノキシベンジル(メタ)アクリレート誘導体からなる群から選択される1種以上 5~45質量%;及び、
(A4)1分子中に1個以上の水酸基を有するアクリルアミド化合物 1~20質量%;
を含み、ここで上記成分(A1)、上記成分(A2)、上記成分(A3)、及び上記成分(A4)の配合割合の和は100質量%である活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
[3].
上記成分(A4)1分子中に1個以上の水酸基を有するアクリルアミド化合物がヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドを含む[2]項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
[4].
上記成分(A1)エポキシ変性多官能(メタ)アクリレートがグリセリンジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との付加反応物を含む請求項1~3の何れか1項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
[5].
更に(D)樹脂粒子を、上記成分(A)活性エネルギー線硬化性樹脂 100質量部に対して、5~200質量部含む[1]~[4]項の何れか1項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
[6].
更に(D)樹脂粒子を、上記成分(A)活性エネルギー線硬化性樹脂 100質量部に対して、5~200質量部含み、ここで上記成分(D)樹脂粒子の水酸基価が1~100mgKOH/gである[1]~[5]項の何れか1項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
[7].
[1]~[6]項の何れか1項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いて形成される塗膜。
[8].
[1]~[6]項の何れか1項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いて形成される塗膜を有する化粧シート。
【発明の効果】
【0008】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、エンボスロールにより押圧することにより凹凸模様を施しても白化や割れなどの不良現象が起きない硬化塗膜を形成することができる。本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、実施形態の1つにおいて、表面硬度、及び耐擦傷性に優れ、エンボスロールにより押圧することにより凹凸模様を施しても白化や割れなどの不良現象が起きない硬化塗膜を形成することができる。本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、他の実施形態の1つにおいて、被着体の化粧シート貼合面に三次元形状が付与されている場合であっても白化や割れなどの不良現象が起きない硬化塗膜を形成することができる。本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、更に他の実施形態の1つにおいて、艶消し意匠を有し、耐汚染性、表面硬度、及び耐擦傷性に優れ、エンボスロールにより押圧することにより凹凸模様を施しても白化や割れなどの不良現象が起きない硬化塗膜を形成することができる。そのため本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、物品を化粧、加飾するための化粧シートに好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において「樹脂」の用語は、2種以上の樹脂を含む樹脂混合物や、樹脂以外の成分を含む樹脂組成物をも含む用語として使用する。本明細書において「フィルム」の用語は、「シート」と相互交換的に又は相互置換可能に使用する。本明細書において、「フィルム」及び「シート」の用語は、工業的にロール状に巻き取ることのできるものに使用する。「板」の用語は、工業的にロール状に巻き取ることのできないものに使用する。また本明細書において、ある層と他の層とを順に積層することは、それらの層を直接積層すること、及び、それらの層の間にアンカーコートなどの別の層を1層以上介在させて積層することの両方を含む。
【0010】
本明細書において数値範囲に係る「以上」の用語は、ある数値又はある数値超の意味で使用する。例えば、20%以上は、20%又は20%超を意味する。数値範囲に係る「以下」の用語は、ある数値又はある数値未満の意味で使用する。例えば、20%以下は、20%又は20%未満を意味する。また数値範囲に係る「~」の記号は、ある数値、ある数値超かつ他のある数値未満、又は他のある数値の意味で使用する。ここで、他のある数値は、ある数値よりも大きい数値とする。例えば、10~90%は、10%、10%超かつ90%未満、又は90%を意味する。更に、数値範囲の上限と下限とは、任意に組み合わせることができるものとし、任意に組み合わせた実施形態が読み取れるものとする。例えば、ある特性の数値範囲に係る「通常10%以上、好ましくは20%以上である。一方、通常40%以下、好ましくは30%以下である。」や「通常10~40%、好ましくは20~30%である。」という記載から、そのある特性の数値範囲は、一実施形態において10~40%、20~30%、10~30%、又は20~40%であることが読み取れるものとする。
【0011】
実施例以外において、又は別段に指定されていない限り、本明細書及び特許請求の範囲において使用されるすべての数値は、「約」という用語により修飾されるものとして理解されるべきである。特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限しようとすることなく、各数値は、有効数字に照らして、及び通常の丸め手法を適用することにより解釈されるべきである。
【0012】
1.活性エネルギー線硬化性樹脂組成物:
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、(A)活性エネルギー線硬化性樹脂;(B)1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物;及び、(C)光重合開始剤;を含む。本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、実施形態の1つにおいて、更に(D)樹脂粒子を含む。以下、各成分について説明する。
【0013】
(A)活性エネルギー線硬化性樹脂:
上記成分(A)活性エネルギー線硬化性樹脂は、紫外線や電子線等の活性エネルギー線により重合・硬化して、塗膜を形成する働きをする。
【0014】
上記成分(A)活性エネルギー線硬化性樹脂は、実施形態の1つにおいて、(A1)エポキシ変性多官能(メタ)アクリレート;(A2)アルキルアルコールアミン変性多官能(メタ)アクリレート;及び、(A3)3‐フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、及び3‐フェノキシベンジル(メタ)アクリレート誘導体からなる群から選択される1種以上;を含む。
【0015】
上記成分(A)活性エネルギー線硬化性樹脂は、他の実施形態の1つにおいて、(A1)エポキシ変性多官能(メタ)アクリレート;(A2)アルキルアルコールアミン変性多官能(メタ)アクリレート;(A3)3‐フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、及び3‐フェノキシベンジル(メタ)アクリレート誘導体からなる群から選択される1種以上;及び、(A4)1分子中に1個以上の水酸基を有するアクリルアミド化合物;を含む。
【0016】
本明細書において、(メタ)アクリレートはアクリレート又はメタクリレートを意味する。(メタ)アクリル酸はアクリル酸又はメタクリル酸を意味する。(メタ)アクリロイル基はアクリロイル基又はメタクリロイル基を意味する。
【0017】
(A1)エポキシ変性多官能(メタ)アクリレート:
本発明の上記成分(A)活性エネルギー線硬化性樹脂は、(A1)エポキシ変性多官能(メタ)アクリレートを含む。上記成分(A1)エポキシ変性多官能(メタ)アクリレートは、エポキシ基を有する化合物と(メタ)アクリル酸との付加反応により合成される(メタ)アクリレートであって、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。
【0018】
上記成分(A1)は、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有することから、活性エネルギー線により硬化して塗膜を形成する働きをする。上記成分(A1)は、エポキシ基を有する化合物のエポキシ基と(メタ)アクリル酸との付加反応により生成する水酸基を有しており、上記成分(B)1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物と反応してウレタン結合を形成し、塗膜の伸び性、耐クラック性、及び耐折曲性を良好にし、ひいてはエンボスロールにより押圧することにより凹凸模様を施しても、あるいは被着体の化粧シート貼合面に三次元形状が付与されている場合であっても、白化や割れなどの不良現象が起きないようにする働きをする。
【0019】
上記成分(A1)としては、例えば、アルキルジグリシジルエーテル、及びアルキルトリグリシジルエーテルなどの1分子中に2個以上のグリシジルエーテル基を有する化合物と(メタ)アクリル酸との付加反応物をあげることができる。
【0020】
上記アルキルジグリシジルエーテルとしては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1‐4ブタンジオールジグリシジルエーテル、及び1‐6ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、及びビスフェノールAジグリシジルエーテルの水素添加物などをあげることができる。
【0021】
上記アルキルトリグリシジルエーテルとしては、例えば、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルなどをあげることができる。
【0022】
上記アルキルジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との付加反応物は、典型的な実施形態の1つにおいて、下記一般式(1)で表される化合物であってよい
【0023】
【化1】
【0024】
式(1)中、Rは水素又はメチル基を表す。Rは水素又はメチル基を表す。Rは、炭素数1~100、好ましくは2~20、より好ましくは3~12の炭化水素基である。該炭化水素基Rは芳香環、脂肪族環状基、エーテル基、又はエステル基を含んでいてもよい。上記炭化水素基Rは直鎖であってもよく、分岐鎖であってもよい。また上記炭化水素基Rは好ましくは水酸基を含むものであってよい。
【0025】
これらの中で、上記成分(A1)としては、塗膜の硬化性の観点から、アルキルジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との付加反応物が好ましく、グリセリンジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との付加反応物がより好ましい。
【0026】
上記成分(A1)の有する(メタ)アクリロイル基の数は、塗膜の硬化性、及び塗膜の伸び性の観点から、好ましくは1分子中に2個であってよい。
【0027】
上記成分(A1)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0028】
(A2)アルキルアルコールアミン変性多官能(メタ)アクリレート:
本発明の上記成分(A)活性エネルギー線硬化性樹脂は、(A2)アルキルアルコールアミン変性多官能(メタ)アクリレートを含む。上記成分(A2)は、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有することから、活性エネルギー線により硬化して塗膜を形成する働きをする。上記成分(A2)は水酸基を有しており、上記成分(B)1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物と反応してウレタン結合を形成し、塗膜の伸び性、耐クラック性、及び耐折曲性を良好にし、ひいてはエンボスロールにより押圧することにより凹凸模様を施しても、あるいは被着体の化粧シート貼合面に三次元形状が付与されている場合であっても、白化や割れなどの不良現象が起きないようにする働きをする。また上記成分(A2)は活性エネルギー線照射による硬化反応の酸素障害を抑制する働きをする。
【0029】
理論に拘束される意図はないが、上記成分(A2)はアミン構造を有しており、該アミン構造中の窒素原子に隣接するメチレン基の水素が引き抜かれることにより発生するラジカルが、酸素ラジカルを捕捉し、酸素障害を抑制していると考察している。
【0030】
上記成分(A2)は、下記一般式(2)で表される化合物である。
【0031】
【化2】
【0032】
式(2)中、Rは、炭素数1~200、好ましくは3~100、より好ましくは12~60の炭化水素基であって、1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する。該炭化水素基Rは芳香環、脂肪族環状基、エーテル基、又はエステル基を含んでいてもよい。上記炭化水素基Rは直鎖であってもよく、分岐鎖であってもよい。Rは、炭素数1~200、好ましくは3~100、より好ましくは12~60の炭化水素基であって、1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する。該炭化水素基Rは芳香環、脂肪族環状基、エーテル基、又はエステル基を含んでいてもよい。上記炭化水素基Rは直鎖であってもよく、分岐鎖であってもよい。上記炭化水素基Rと上記炭化水素基Rとは同一であってもよく、異なっていてもよい。Rは水素又はメチル基を表す。Rは水素又はメチル基を表す。Rは炭素数60以下、好ましくは20以下、より好ましくは12以下、更に好ましくは6以下、最も好ましくは1~3の芳香環、脂肪族環状基、エーテル基、又はエステル基を含んでいてもよい炭化水素基である。
【0033】
上記成分(A2)は、アルキルアルコールアミンと多官能(メタ)アクリレートとを反応させることにより合成することができる。この反応は室温で十分に活性が高く、通常、加温したり、触媒を添加したりすることを必要としない。また反応液の粘度を適切な範囲に保ち、ゲル化を防止する観点から、溶剤を加えて見かけの濃度を低くすることは好ましい。
【0034】
上記アルキルアルコールアミンは、1分子中に1個以上のアミノ基と1個以上のアルコール性水酸基を有する化合物である。上記アルキルアルコールアミンは、典型的な実施形態の1つにおいて、1分子中に1個のアミノ基と1個のアルコール性水酸基を有する化合物であってよい。上記アルキルアルコールアミンは、好ましい実施形態の1つにおいて、1分子中に1個のアミノ基と1個の1級アルコール性水酸基を有する化合物であってよい。上記アルキルアルコールアミンの好ましいものとしては、例えば、下記一般式(2‐1)で表される化合物をあげることができる。
【0035】
NH‐(CH)n‐OH (2‐1)
【0036】
式(2‐1)中、nは通常1~12、好ましくは1~6、より好ましくは1~3の自然数、更に好ましくは2である。
【0037】
上記一般式(2‐1)で表される化合物としては、例えば、メタノールアミン、2‐アミノエタノール、3‐アミノ‐1‐プロパノール、4‐アミノ‐1‐ブタノール、及び6‐アミノ‐1‐ヘキサノールなどをあげることができる。
【0038】
上記アルキルアルコールアミンとしては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0039】
上記多官能(メタ)アクリレートは、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。上記多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6‐ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2‘‐ビス(4‐(メタ)アクリロイルオキシポリエチレンオキシフェニル)プロパン、及び2,2’‐ビス(4‐(メタ)アクリロイルオキシポリプロピレンオキシフェニル)プロパンなどの1分子中に2個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物;グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、及びトリメチロールエタントリ(メタ)アクリレートなどの1分子中に3個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどの1分子中に4個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの1分子中に6個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物;及び、これらの1種以上を構成モノマーとするプレポリマー又はオリゴマーであって、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物;などをあげることができる。上記多官能(メタ)アクリレートとしては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0040】
上記成分(A2)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0041】
(A3)3‐フェノキシベンジル(メタ)アクリレート,3‐フェノキシベンジル(メタ)アクリレート誘導体:
本発明の上記成分(A)活性エネルギー線硬化性樹脂は、(A3)3‐フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、及び3‐フェノキシベンジル(メタ)アクリレート誘導体からなる群から選択される1種以上を含む。上記成分(A3)は塗膜の硬化性、伸び性、耐クラック性、及び耐折曲性を良好にし、ひいてはエンボスロールにより押圧することにより凹凸模様を施しても、あるいは被着体の化粧シート貼合面に三次元形状が付与されている場合であっても、白化や割れなどの不良現象が起きないようにする働きをする。
【0042】
上記3‐フェノキシベンジル(メタ)アクリレートは、下記一般式(3‐1)で表される化合物である。
【0043】
【化3-1】
【0044】
式(3‐1)中、Rは水素又はメチル基を表す。
【0045】
上記3‐フェノキシベンジル(メタ)アクリレート誘導体は、上記3‐フェノキシベンジル(メタ)アクリレートのベンジル基の芳香環の水素原子の1、2、3、若しくは4個が置換された構造、又は/及び、上記3‐フェノキシベンジル(メタ)アクリレートのフェノキシ基の芳香環の水素原子の1、2、3、4、若しくは5個が置換された構造を有する化合物である。上記3‐フェノキシベンジル(メタ)アクリレート誘導体は、典型的には、下記一般式(3‐2)で表される化合物である。
【0046】
【化3-2】
【0047】
式(3‐2)中、Rは水素又はメチル基を表す。Rは水素、又は炭素数1~20、好ましくは1~10、より好ましくは1~4の炭化水素基である。該炭化水素基Rは直鎖であってもよく、分岐鎖であってもよい。上記炭化水素基Rは芳香環、脂肪族環状基、エーテル基、又はエステル基を含んでいてもよい。sは1~4の整数、好ましくは1である。sが2~4の整数のとき、Rは同一であってもよく、異なっていてもよい。Rは水素、又は炭素数1~20、好ましくは1~10、より好ましくは1~4の炭化水素基である。該炭化水素基Rは直鎖であってもよく、分岐鎖であってもよい。上記炭化水素基Rは芳香環、脂肪族環状基、エーテル基、又はエステル基を含んでいてもよい。tは1~5の整数、好ましくは1又は2である。tが2~5の整数のとき、Rは同一であってもよく、異なっていてもよい。RとRは同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0048】
上記成分(A3)としては、これらの中で、3‐フェノキシベンジル(メタ)アクリレートが好ましく、3‐フェノキシベンジルアクリレートがより好ましい。
【0049】
上記成分(A3)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0050】
理論に拘束される意図はないが、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いて形成される塗膜が、擦傷復元性を発現する理由を以下のように考察している。上記成分(A3)3‐フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、及び3‐フェノキシベンジル(メタ)アクリレート誘導体からなる群から選択される1種以上は、単官能(メタ)アクリレートであるにも係わらず良好な硬化性を有し、上記成分(A1)エポキシ変性多官能(メタ)アクリレート、上記成分(A2)アルキルアルコールアミン変性多官能(メタ)アクリレートと良好な硬化塗膜を形成することができる。一方、上記成分(A3)は単官能(メタ)アクリレートであることから、硬化塗膜の架橋密度を低下させる。言い換えると、硬化塗膜中に運動性の高い部分を導入することになる。その結果、擦傷復元性が発現する。
【0051】
ここで、擦傷復元性とは、塗膜表面に外圧をかけることにより生じた擦傷が、外圧を取り払った後、残留することなく復元するという性質を意味する。
【0052】
(A4)1分子中に1個以上の水酸基を有する(メタ)アクリルアミド化合物:
本発明の上記成分(A)活性エネルギー線硬化性樹脂は、好ましくは1分子中に1個以上の水酸基を有する(メタ)アクリルアミド化合物を更に含む。上記成分(A4)は水酸基を有しており、上記成分(B)1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物と反応してウレタン結合を形成し、塗膜の伸び性、耐クラック性、及び耐折曲性を良好にし、ひいてはエンボスロールにより押圧することにより凹凸模様を施しても、あるいは被着体の化粧シート貼合面に三次元形状が付与されている場合であっても、白化や割れなどの不良現象が起きないようにする働きをする。また上記成分(A4)は塗膜の耐擦傷性を良好にする働きをする。更に、上記成分(A4)は上記成分(B)との反応性が非常に高いことから、上記成分(B)が未反応のまま残留し、硬化塗膜の表面にブリードアウトすることによるトラブル(例えば、フィルムロール(フィルムをロール状に巻き取った巻回体)のブロッキングなど)を抑制する働きをする。
【0053】
上記成分(A4)としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、及びヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミドなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドをあげることができる。
【0054】
上記成分(A4)は、典型的な実施形態の1つにおいて、下記一般式(4)で表される化合物であってよい。
【0055】
【化4】
【0056】
式(4)中Rは、アルキル分岐、環状炭化水素基、又はエーテル基を有していてもよい脂肪族アルキル鎖を表す。Rは、典型的には「(CH)m」であってよい。ここでmは、通常1以上の自然数、好ましくは2~6、より好ましくは2~4の自然数であってよい。Rは水素又はメチル基を表す。上記成分(A4)の有する水酸基の数は、好ましくは1個であってよい。上記成分(A4)の有する水酸基は、好ましくは一級水酸基であってよい。
【0057】
これらの中で、上記成分(A4)としては、皮膚刺激性が少なく、活性エネルギー線硬化性とイソシアネートとの反応速度に優れる(反応速度が高い)ことから、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドが好ましく、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドがより好ましい。
【0058】
上記成分(A4)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0059】
上記成分(A)が、上記成分(A1)、上記成分(A2)、及び上記成分(A3)を含む実施形態における、各成分の配合割合について説明する。ここで、上記成分(A1)、上記成分(A2)、及び上記成分(A3)の配合割合の和は100質量%である。上記成分(A1)の配合割合は、上記成分(A1)の使用効果を確実に得る観点、及び塗膜の伸び性の観点から適宜決定する。上記成分(A1)の配合割合は、上記成分(A1)の使用効果を確実に得る観点から、通常10質量%以上、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、最も好ましくは35質量%以上であってよい。一方、塗膜の伸び性の観点から、通常60質量%以下、好ましくは55質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは45質量%以下であってよい。
【0060】
上記成分(A2)の配合割合は、上記成分(A2)の使用効果を確実に得る観点、及び耐汚染性の観点から適宜決定する。上記成分(A2)の配合割合は、上記成分(A2)の使用効果を確実に得る観点から、通常5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であってよい。一方、耐汚染性の観点から、通常45質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは30質量%以下であってよい。
【0061】
上記成分(A3)の配合割合は、上記成分(A3)の使用効果を確実に得る観点、及び架橋密度、ひいては塗膜の表面硬度を適正な範囲に保つ観点から適宜決定する。上記成分(A3)の配合割合は、上記成分(A3)の使用効果を確実に得る観点から、通常5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であってよい。一方、表面硬度の観点から、通常45質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは30質量%以下であってよい。
【0062】
上記成分(A)が、上記成分(A1)、上記成分(A2)、及び上記成分(A3)を含む実施形態において、上記成分(A)は、これらの成分(上記成分(A1)、上記成分(A2)、及び上記成分(A3))以外の活性エネルギー線硬化性樹脂を含むものであってよい。この場合、上記成分(A)中の上記成分(A1)、上記成分(A2)、及び上記成分(A3)の量の和は、上記成分(A)の各成分の量の総和を100質量%として、通常80質量%以上、好ましくは85質量%以上、より好ましくは90~100質量%であってよい。
【0063】
次に、上記成分(A)が、上記成分(A1)、上記成分(A2)、上記成分(A3)、及び上記成分(A4)を含む実施形態における、各成分の配合割合について説明する。ここで、上記成分(A1)、上記成分(A2)、上記成分(A3)、及び上記成分(A4)の配合割合の和は100質量%である。上記成分(A1)の配合割合は、上記成分(A1)の使用効果を確実に得る観点、及び塗膜の伸び性の観点から適宜決定する。上記成分(A1)の配合割合は、上記成分(A1)の使用効果を確実に得る観点から、通常10質量%以上、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、最も好ましくは35質量%以上であってよい。一方、塗膜の伸び性の観点から、通常60質量%以下、好ましくは55質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは45質量%以下であってよい。
【0064】
上記成分(A2)の配合割合は、上記成分(A2)の使用効果を確実に得る観点、及び耐汚染性の観点から適宜決定する。上記成分(A2)の配合割合は、上記成分(A2)の使用効果を確実に得る観点から、通常5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であってよい。一方、耐汚染性の観点から、通常45質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは30質量%以下であってよい。
【0065】
上記成分(A3)の配合割合は、上記成分(A3)の使用効果を確実に得る観点、及び架橋密度、ひいては塗膜の表面硬度を適正な範囲に保つ観点から適宜決定する。上記成分(A3)の配合割合は、上記成分(A3)の使用効果を確実に得る観点から、通常5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であってよい。一方、表面硬度の観点から、通常45質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは30質量%以下であってよい。
【0066】
上記成分(A4)の配合割合は、上記成分(A4)の使用効果を確実に得る観点、及び架橋密度、ひいては塗膜の表面硬度を適正な範囲に保つ観点から適宜決定する。上記成分(A4)の配合割合は、上記成分(A4)の使用効果を確実に得る観点から、通常1質量%以上、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは4質量%以上であってよい。一方、表面硬度の観点から、通常20質量%以下、好ましくは16質量%以下、より好ましくは12質量%以下、更に好ましくは10質量%以下であってよい。
【0067】
上記成分(A)が、上記成分(A1)、上記成分(A2)、上記成分(A3)、及び上記成分(A4)を含む実施形態において、上記成分(A)は、これらの成分(上記成分(A1)、上記成分(A2)、上記成分(A3)、及び上記成分(A4))以外の活性エネルギー線硬化性樹脂を含むものであってよい。この場合、上記成分(A)中の上記成分(A1)、上記成分(A2)、上記成分(A3)、及び上記成分(A4)の量の和は、上記成分(A)の各成分の量の総和を100質量%として、通常80質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、更に好ましくは97質量%以上、最も好ましくは99~100質量%であってよい。
【0068】
(B)1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物:
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、上記成分(B)1分子中に2個以上のイソシアネート基(-N=C=O)を有する化合物を含む。上記成分(B)は1分子中に2個以上のイソシアネート基を有することから、上記成分(A)活性エネルギー線硬化性樹脂の有する水酸基と反応してウレタン結合を形成し、上記成分(A)を硬化させて塗膜を形成する働きをする。またこのときウレタン結合が形成されることから、塗膜の伸び性、耐クラック性、及び耐折曲性を良好にし、ひいてはエンボスロールにより押圧することにより凹凸模様を施しても、あるいは被着体の化粧シート貼合面に三次元形状が付与されている場合であっても、白化や割れなどの不良現象が起きないようにする働きをする。
【0069】
上記成分(B)としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、メチレンビス‐4‐シクロヘキシルイソシアネート、及びジフェニルメタンジイソシアネートなどの1分子中に2個のイソシアネート基を有する化合物;トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、及びイソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体などの1分子中に2個のイソシアネート基を有する化合物のトリメチロールプロパンアダクト体であって、1分子中に3個のイソシアネート基を有する化合物;トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、及びイソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体などの1分子中に2個のイソシアネート基を有する化合物のイソシアヌレート体であって、1分子中に3個のイソシアネート基を有する化合物;ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体などの1分子中に2個のイソシアネート基を有する化合物のビウレット体であって、1分子中に3個のイソシアネート基を有する化合物;並びに、これらのブロック型イソシアネートなどのウレタン架橋剤などをあげることができる。
【0070】
上記成分(B)としては、塗膜の伸び性、耐クラック性、及び耐折曲性を良好にし、ひいてはエンボスロールにより押圧することにより凹凸模様を施しても、あるいは被着体の化粧シート貼合面に三次元形状が付与されている場合であっても、白化や割れなどの不良現象が起きないようにする観点から、1分子中に2個のイソシアネート基を有する化合物のトリメチロールプロパンアダクト体であって、1分子中に3個のイソシアネート基を有する化合物、1分子中に2個のイソシアネート基を有する化合物のイソシアヌレート体であって、1分子中に3個のイソシアネート基を有する化合物;及び、1分子中に2個のイソシアネート基を有する化合物のビウレット体であって、1分子中に3個のイソシアネート基を有する化合物;が好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、及びヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体がより好ましい。
【0071】
理論に拘束される意図はないが、これらはヘキサメチレン鎖の先の互いに離れた位置にイソシアネート基が存在するという構造上の特徴があり、そのため、得られるハードコートは、塗膜の伸び性、耐クラック性、及び耐折曲性が良好になり、ひいてはエンボスロールにより押圧することにより凹凸模様を施しても、あるいは被着体の化粧シート貼合面に三次元形状が付与されている場合であっても、白化や割れなどの不良現象が起きないようになると考察している。従って、同様にアルキル鎖の先の互いに離れた位置にイソシアネート基が存在するという構造上の特徴を有するものは、同様に好ましく用いることができると考えられる。
【0072】
上記成分(B)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。また本発明の目的に反しない限度において、所望により、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジエチルヘキソエートなどの触媒を添加してもよい。
【0073】
上記成分(B)の配合量は、その使用効果を確実に得る観点、及び活性エネルギー線による硬化性の観点から適宜決定すればよい。上記成分(B)の配合量は、上記成分(A)100質量部に対して、上記成分(B)の使用効果を確実に得る観点から、通常1質量部以上、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは10質量部以上であってよい。一方、活性エネルギー線による硬化性の観点から、通常50質量部以下、好ましくは40質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは25質量部以下であってよい。
【0074】
(C)光重合開始剤:
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、上記成分(C)光重合開始剤を含む。上記成分(C)は、活性エネルギー線の照射によりラジカルなどの活性種を発生する化合物である。上記成分(C)はラジカルなどの活性種を発生することにより、上記成分(A)活性エネルギー線硬化性樹脂を重合・硬化させ、塗膜を硬化する働きをする。
【0075】
上記成分(C)としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾイン系化合物、アセトフェノン系化合物、アルキルフェノン系化合物、アントラキノン系化合物、チオキサントン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、ビイミダゾール化合物、チタノセン系化合物、オキシムエステル系化合物、オキシムフェニル酢酸エステル系化合物、ヒドロキシケトン系化合物、トリアジン系化合物、及び、アミノベンゾエート系化合物などをあげることができる。
【0076】
上記ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、メチル‐o‐ベンゾイルベンゾエート、4‐メチルベンゾフェノン、4、4’‐ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、o‐ベンゾイル安息香酸メチル、4‐フェニルベンゾフェノン、4‐ベンゾイル‐4’‐メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’‐テトラ(tert‐ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、及び2,4,6‐トリメチルベンゾフェノンなどをあげることができる。
【0077】
上記ベンゾイン系化合物としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、及びベンジルメチルケタールなどをあげることができる。
【0078】
上記アセトフェノン系化合物としては、例えば、アセトフェノン、2、2‐ジメトキシ‐2‐フェニルアセトフェノン、1‐ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、及び2‐ヒロドキシ‐1‐{4‐[4‐(2‐ヒドロキシ‐2‐メチル‐プロピオニル)‐ベンジル]フェニル}‐2‐メチル‐プロパン‐1‐オンなどをあげることができる。
【0079】
上記アルキルフェノン系化合物としては、例えば、α‐ヒドロキシアルキルフェノン、及びアセトフェノンジメチルケタールなどをあげることができる。
【0080】
上記アントラキノン系化合物としては、例えば、メチルアントラキノン、2‐エチルアントラキノン、及び2‐アミルアントラキノンなどをあげることができる。
【0081】
上記チオキサントン系化合物としては、例えば、チオキサントン、2、4‐ジエチルチオキサントン、及び2、4‐ジイソプロピルチオキサントンなどをあげることができる。
【0082】
上記成分(C)としては、これらの中で、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、及びアルキルフェノン系化合物が好ましく;ベンゾフェノン系化合物とアセトフェノン系化合物又はアルキルフェノン系化合物との併用がより好ましく;ベンゾフェノン系化合物とヒドロキシアセトフェノン系化合物(水酸基を有するアセトフェノン系化合物)又はヒドロキシアルキルフェノン系化合物(水酸基を有するアルキルフェノン系化合物)との併用が更に好ましい。
【0083】
上記成分(C)の配合量は、塗膜を確実に硬化する観点、及び塗膜の着色を抑制する観点から、適宜決定すればよい。上記成分(C)の配合量は、上記成分(A)100質量部に対して、塗膜を確実に硬化する観点から、通常0.1質量部以上、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは2質量部以上、最も好ましくは3質量部以上であってよい。一方、塗膜の着色を抑制する観点から、通常20質量部以下、好ましくは15質量部以下、より好ましくは12質量部以下、更に好ましくは10質量部以下であってよい。
【0084】
(D)樹脂粒子:
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、実施形態の1つにおいて、更に(D)樹脂粒子を含むものであってよい。上記成分(D)は、塗膜の艶を消し、艶消し意匠を付与する働きをする。
【0085】
上記成分(D)としては、例えば、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、弗素系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エチレン系樹脂、セルロース誘導体系樹脂、及びアミノ系化合物とホルムアルデヒドとの硬化樹脂などの樹脂粒子をあげることができる。
【0086】
これらの中で、低比重、潤滑性、分散性、及び耐溶剤性の観点から、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、及び弗素系樹脂の粒子が好ましい。ハードコートが白濁感のあるものとならないようにする観点から、ウレタン系樹脂、及びアクリル系樹脂の粒子がより好ましい。
【0087】
上記成分(D)として水酸基を有する樹脂粒子を用いることは好ましい。本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いて形成される塗膜の耐擦傷性を向上させることができる。
【0088】
理論に拘束される意図はないが、上記成分(D)として水酸基を有する樹脂粒子を用いることにより、塗膜の耐擦傷性が向上するのは、上記成分(D)の有する水酸基と上記成分(B)1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物とが反応してウレタン結合を形成し、更には上記成分(B)が上記成分(A)活性エネルギー線硬化性樹脂の有する水酸基とウレタン結合を形成することにより、上記成分(D)が上記成分(B)を介して上記成分(A)と化学結合し、塗膜が擦傷されたとき、上記成分(D)の塗膜からの脱落が抑止されるためと考察している。
【0089】
上記成分(D)の水酸基価は、上述の効果を確実に得る観点から、通常1mgKOH/g以上、好ましくは3gKOH/g以上、より好ましくは4mgKOH/g以上、更に好ましくは5mgKOH/g以上であってよい。一方、耐水性の観点から、通常100mgKOH/g以下、好ましくは70mgKOH/g以下、より好ましくは50mgKOH/g以下、更に好ましくは40mgKOH/g以下、最も好ましくは30mgKOH/g以下であってよい。
【0090】
ここで上記成分(D)の水酸基価は、上記成分(D)1g中の水酸基と当量の水酸化カリウムのmg数であり、JIS K1557‐1:2007のA法に従い、電位差滴定法により測定する。上記成分(D)として、2種以上の混合物を用いる場合には、混合物としての水酸基価が上述の範囲の値となるようにすればよい。上記成分(D)の他の特性についても同様である。
【0091】
上記成分(D)としては、効率的に塗膜に艶消し意匠を付与する観点から、真球状のものが好ましい。
【0092】
上記成分(D)の平均粒子径は、塗膜に効率的に艶消し意匠を付与する観点、塗膜が白濁感のあるものとならないようにする観点、及び良好な触感を付与する観点から適宜決定すればよい。上記成分(D)の平均粒子径は、塗膜に効率的に艶消し意匠を付与する観点から、通常0.5μm以上、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上、更に好ましくは3μm以上であってよい。一方、塗膜が白濁感のあるものとならないようにする観点、及び良好な触感を付与する観点から通常20μm以下、好ましくは15μm以下、より好ましくは12μm以下、更に好ましくは10μm以下であってよい。
【0093】
ここで上記成分(D)の平均粒子径は、レーザー回折・散乱法により、レーザー回折・散乱式粒度分析計を使用して測定される粒子径分布曲線において、粒子の小さい方からの累積が50質量%となる粒子径である。上記レーザー回折・散乱式粒度分析計としては、例えば、日機装株式会社のレーザー回折・散乱式粒度分析計「MT3200II(商品名)」などをあげることができる。
【0094】
上記成分(D)樹脂粒子としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0095】
上記成分(D)の配合量は、所望の艶消し意匠の程度によって適宜決定すればよい。上記成分(D)の配合量は、上記成分(A)100質量部に対して、所望の艶消し意匠の程度にもよるが、通常5質量部以上、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは25質量部以上、最も好ましくは30質量部以上であってよい。一方、塗膜の耐クラック性、及び耐折曲性の観点から、通常200質量部以下、好ましくは150質量部以下、より好ましくは100質量部以下であってよい。
【0096】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物には、本発明の目的に反しない限度において、所望により、上記成分(A)~(D)以外のその他の任意成分を含ませることができる。上記その他の任意成分としては、例えば、帯電防止剤、界面活性剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、汚染防止剤、印刷性改良剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、耐光性安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、無機粒子、無機着色剤、及び有機着色剤などの添加剤;などをあげることができる。上記その他の任意成分の配合量は、上記成分(A)100質量部に対して、通常10質量部以下、あるいは0.1~10質量部程度であってよい。上記その他の任意成分としては、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0097】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物には、塗工し易い濃度に希釈するため、所望により、溶剤を含ませてもよい。上記溶剤は上記成分(A)~(D)、及びその他の任意成分と反応したり、これらの成分の自己反応(劣化反応を含む)を触媒(促進)したりしないものであれば、特に制限されない。上記溶剤としては、例えば、1‐メトキシ‐2‐プロパノール、2‐プロパノール、酢酸エチル、酢酸n‐ブチル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ダイアセトンアルコール、及びアセトンなどをあげることができる。上記溶剤としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0098】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、これらの成分を混合、攪拌することにより得ることができる。
【0099】
2.化粧シート:
本発明の化粧シートは、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いて形成された塗膜を有する。本発明の化粧シートは、典型的な実施形態の1つにおいて、フィルム基材の片面の上に、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いて形成された塗膜を有し、該塗膜が化粧シートの表面(化粧シートが被着体の加飾化粧に用いられた状態において、通常視認される面)を形成する。
【0100】
上記フィルム基材としては、例えば、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステルなどのポリエステル系樹脂;アクリル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂;セロファン、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、及びアセチルセルロースブチレートなどのセルロース系樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体、スチレン・エチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体、及びスチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体などのスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリ塩化ビニリデン系樹脂;ポリフッ化ビニリデンなどの含弗素系樹脂;その他、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、ポリエーテルエーテルケトン、ナイロン、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエーテルイミド、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン;などの樹脂フィルムをあげることができる。これらのフィルムは、無延伸フィルム、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムを包含する。またこれらの1種以上を2層以上積層した積層フィルムを包含する。更にこれらのフィルムは透明であってもよく、不透明であってもよく、隠蔽性を有するものであってもよく、着色されたものであってもよく、固有の色を有するものであってもよい。
【0101】
上記フィルム基材の厚みは、上記フィルム基材が化粧シートの構成層の1つである場合、化粧シートに付与すべき特性、及びウェブハンドリング性を勘案して適宜決定する。上記フィルム基材の厚みは、上記フィルム基材が化粧シートの構成層の1つである場合、ウェブハンドリング性の観点から、通常20μm以上、好ましくは30μm以上であってよい。意匠性の観点から、より好ましくは50μm以上、更に好ましくは80μm以上であってよい。一方、化粧シートを物品に被着させる際の作業性の観点から、観点から、通常2000μm以下、好ましくは800μm以下、より好ましくは300μm以下、より好ましくは250μm以下であってよい。
【0102】
上記フィルム基材の厚みは、上記フィルム基材の面の上に形成された塗膜を他のフィルム基材に転写して用いる場合、ウェブハンドリング性、及び経済性を勘案して適宜決定する。上記フィルム基材の厚みは、上記フィルム基材の面の上に形成された塗膜を他のフィルム基材に転写して用いる場合、ウェブハンドリングの観点から、通常20μm以上、好ましくは30μm以上であってよい。一方、経済性の観点から、通常100μm以下、好ましくは75μm以下であってよい。
【0103】
上記フィルム基材は、典型的な実施形態の1つにおいて、化粧シートを貼合することにより物品を化粧、加飾する目的から、着色され隠蔽性を有するものであってよい。
【0104】
上記フィルム基材の実使用状態において正面となる面の上には、所望により、意匠感を高めるため、印刷層を設けてもよい。上記印刷層は、高い意匠性を付与するために設けるものであり、任意の模様を任意のインキと任意の印刷機を使用して印刷することにより形成することができる。ここで、実使用状態とは、化粧シートが各種物品の表面の化粧、加飾に用いられた状態をいう。また実使用状態において正面となる面とは、実使用状態において通常視認される面をいう。
【0105】
印刷は、直接又はアンカーコートを介して、上記フィルム基材の実使用状態において正面となる面の上に、全面的に又は部分的に、施すことができる。模様としては、ヘアライン等の金属調模様、木目模様、大理石等の岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、寄木模様、及びパッチワークなどをあげることができる。印刷インキとしては、バインダーに顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、及び硬化剤等を適宜混合したものを使用することができる。上記バインダーとしては、例えば、ポリウレタン系樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合体樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル・アクリル系共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ブチラール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、及び酢酸セルロース系樹脂などの樹脂、及びこれらの樹脂組成物を使用することができる。またアルミニウム、錫、チタン、及びインジウムなどの金属、並びにこれらの金属酸化物を、上記フィルム基材の実使用状態において正面となる面の上に、全面的に又は部分的に、公知の方法により蒸着してもよい。形成される金属又は金属酸化物の薄膜層により、金属調の意匠が施される。
【0106】
上記印刷層の面の上に、更に透明樹脂層を形成してもよい。化粧シートに深みのある意匠感を付与することができる。上記透明樹脂層は、透明樹脂フィルムを積層したり、透明な熱可塑性樹脂を溶融押出したりすることにより形成することができる。
【0107】
本発明の化粧シートが有する、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いて形成された塗膜は、通常は、上記フィルム基材の実使用状態において正面となる面の上に直接又はアンカーコートを介して形成される。上記フィルム基材の実使用状態において正面となる面の上に、上記印刷層を形成する実施形態にあっては、通常は、上記印刷層の面の上に直接又はアンカーコートを介して形成される。上記印刷層の面の上に、更に上記透明樹脂層を形成する実施形態にあっては、通常は、上記透明樹脂層の面の上に直接又はアンカーコートを介して形成される。
【0108】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いて形成される塗膜は、化粧シートの構成層の面の上に直接塗工して形成してもよく、他のフィルム基材の面の上に形成した後、化粧シートの構成層の面の上に転写することにより形成してもよい。
【0109】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いて塗膜を形成する方法は特に制限されず、公知のウェブ塗布方法を使用することができる。上記方法としては、例えば、ロッドコート、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、キスリバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアナイフコート、及びダイコートなどの方法をあげることができる。これらの方法の中で安定した膜厚の塗膜を形成する観点から、ロッドコートが好ましく、ロッドとしてメイヤーバーを用いるロッドコート(以下、「メイヤーバー方式」と略すことがある)がより好ましい。
【0110】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いて塗膜を形成する際の塗布量(硬化後の質量)は、塗膜に期待する特性、機能を勘案し、適宜決定する。本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いて塗膜を形成する際の塗布量(硬化後の質量)は、表面硬度、及び耐擦傷性の観点から、通常0.5g/m以上、好ましくは1g/m以上、より好ましくは2g/m以上、更に好ましくは3g/m以上、最も好ましくは5g/m以上であってよい。一方、塗膜の伸び性、耐クラック性、及び耐折曲性を良好にし、ひいてはエンボスロールにより押圧することにより凹凸模様を施しても、あるいは被着体の化粧シート貼合面に三次元形状が付与されている場合であっても、白化や割れなどの不良現象が起きないようにする観点から、通常50g/m以下、好ましくは40g/m以下、より好ましくは30g/m以下、更に好ましくは20g/m以下、最も好ましくは15g/m以下であってよい。
【0111】
図1は、本発明の化粧シートの1つの実施形態の断面の概念図である。化粧シートの表面から順に、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物であって、上記成分(D)樹脂粒子を含むものを用いて形成された塗膜1、透明樹脂フィルムの層2、印刷層3、及び着色され隠蔽性を有する樹脂フィルムの層4を有している。
【実施例
【0112】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0113】
測定方法
(イ)引張伸び:
JIS K7127:1999に準拠し、化粧シートから、該化粧シートのマシン方向と引張方向とが一致するように採取した試験片タイプ2(幅15mm、全長150mm)の試験片を用い、標線間距離50mm、チャック間の初期距離100mm、及び試験速度10mm/分の条件で測定した。引張試験中、上記試験片を目視観察し、上記試験片の塗膜にクラックが生じた瞬間の伸びを、上記化粧シートの引張伸びとした。なお技術的に、上記試験(イ)引張伸びの値は、上記化粧シートが有している塗膜の引張伸びに相当すると考えられる。
【0114】
(ロ)エンボス加工性:
化粧シートの塗膜面側を、赤外線ヒーターを使用して温度150℃に予熱した後、エンボスロールと受けロール(温度コントロールをしなかった)との間に、化粧シートの塗膜面がエンボスロール側となるように供給し、押圧してエンボス模様を施した。ここで上記エンボスロールとしては、その金属表面に、ロールの回転軸方向と直交する方向に線状の溝が彫刻されたストライプ模様(溝の深さ50μm、幅1mm、ピッチ(溝と溝との間隔)2mm。)を有するものを使用した。上記受けロールとしては、シリコンゴム表面を有するものを使用した。化粧シートの塗膜面に施されたエンボス模様を目視観察し、以下の基準で評価した。
A:凹凸模様が非常に良好に形成された。形成された凹凸模様の凹凸の角にエッジ感があった。
B:凹凸模様が良好に形成された。
C:形成された凹凸模様の凹凸の角に丸み感があった。
D1:凹凸模様が十分に形成されなかった。
D2:塗膜の白化が観察された。
E:塗膜に割れが生じた。
【0115】
(ハ)耐引掻き傷性:
テスター産業株式会社製のテーバー式スクラッチテスター(型番HA‐201)、及び引掻き刃として針の先端の曲率半径Rが25mmのダイヤ針を使用した。上記ダイヤ針を上記スクラッチテスターの針固定用冶具にセットし、化粧シートから採取した半径6cmの円形の試験片を上記スクラッチテスターの試験片固定用冶具にセットした。このとき、上記ダイヤ針の先端が回転する試験片から逃げるように、上記ダイヤ針の先端と試験片とが接する点における試験片に対する法線と上記ダイヤ針とが22度の角度をなすように、及び上記ダイヤ針の先端と試験片とが接する点と試験片の回転中心とを結ぶ直線と、上記ダイヤ針とが直角をなすように、セットされることになる。次に、所定の荷重、1回転/60秒の回転速度で1回転して試験片の塗膜面を擦った後、当該摩擦箇所に傷が生じたか否かを目視観察により評価した。所定の荷重を0.1N間隔で変化させ、傷が観察されなかった最大の荷重を耐引掻き傷性の指標として求めた。
【0116】
(ニ)耐擦傷性(耐スチールウール性):
縦150mm、横50mmの大きさで、化粧シートのマシン方向が試験片の縦方向となるように採取した試験片を、塗膜が表面となるようにJIS L0849:2013の学振形試験機(摩擦試験機2形)に置いた。続いて、学振形試験機の摩擦端子に#0000のスチールウールを取り付けた後、250g荷重を載せ、摩擦端子の移動速度300mm/分、移動距離30mmの条件で、試験片の塗膜面を往復5回擦った後、当該摩擦箇所を目視観察した。傷が認められない場合には、更に往復5回擦った後、当該摩擦箇所を目視観察する作業を繰り返し、以下の基準で評価した。
A:往復15回後でも傷は認められなかった。
B:往復10回後では傷を認められなかったが、往復15回後には傷を認めることができた。
C:往復5回後では傷を認められなかったが、往復10回後には傷を認めることができた。
D:往復5回後で傷を認めることができた。
【0117】
(ホ)三次元成形性:
(ホ‐1)有限会社徳永NCのミディアムデンシティファイバーボード(以下、「MDF」という。)「MDF加工品(商品名)。」(表面の平滑なMDF)を、縦300mm、横200mm、厚み18mmにカットし、曲面加工(3~10R)を施し、更に天面に装飾の溝を彫り込み、被着体を得た。得られた被着体の写真を図2に示す。
(ホ‐2)得られた被着体の全面にKLEIBERIT社の接着剤「630.2(商品名)」をスプレー塗付した。
(ホ‐3)WEMHONER社のメンブレン成形機「PRESSEN KT-M-139/280-24(商品名)」の所定の位置に台座(大きさ縦290mm、横180mm、厚み18mmの表面の平滑なMDF製。)を置き、該台座の上に、上記被着体を、その天面とは反対側の面が台座側となるように、上記台座の縦方向と上記被着体の縦方向とが一致するように、及び上記台座の縦横面の対角線の交点と上記被着体の縦横面の対角線の交点とが一致するように置き、更にその上に、裁断した化粧シート(マシン方向450mm、横方向350mmの大きさ)を、その塗膜面とは反対側の面が貼着面となるように、上記被着体の縦方向と上記化粧シートのマシン方向とが一致するように、及び上記被着体の縦横面の対角線の交点と上記裁断した化粧シートの縦横面の対角線の交点とが一致するように載せた。
(ホ‐4)上記メンブレン成形機のメンブレンの表面温度が80℃となるように予熱した後、温度110℃、押圧時間60秒、及び圧力0.39MPaの条件で、メンブレン成形を行い、成形体を得た。
(ホ‐5)上記で得た成形体の外観を肉眼(矯正視力1.0)又はルーペ(拡大倍率25倍)を用いて目視観察し、以下の基準で評価した。
A:被着体の立体形状に化粧シートが均一に追従し、色柄が均一に伸びていた。
B:被着体の立体形状に化粧シートが追従して伸びていた。しかし、大きく延伸される部分において、塗膜に、肉眼では認められないが、ルーペを用いると認められる程度の微細なクラックが入っていた。
C:被着体の立体形状に化粧シートが追従して伸びていた。しかし、大きく延伸される部分において、塗膜に、肉眼で認められるクラックが入っていた。
D:被着体の立体形状に化粧シートが追従できていない部分があった。
【0118】
(ヘ)擦傷復元性:
上記試験(ニ)耐擦傷性(耐スチールウール性)の試験後の試験片(摩擦箇所に傷が認められた試験片。ランクAの場合は、往復回数を摩擦箇所に傷が認められるまで増やした。)を、該試験で摩擦箇所を目視観察してから1時間後、及び1日後に再び目視観察し、以下の基準で評価した。
A:1時間後に目視観察したとき、傷が認められなくなっていた。
B:1時間後に目視観察したときは傷を認めることができたが、1日後に目視観察したときは傷が認められなくなっていた。
C:1日後に目視観察したときにも傷を認めることができた。
【0119】
(ト)60度光沢値:
JIS Z8741:1997に準拠し、コニカミノルタ株式会社のマルチアングル光沢計「GM-268」(商品名)を使用し、塗膜表面の60度光沢値を測定した。
【0120】
(チ)耐汚染性:
化粧シートの塗膜面に縦10mm、横10mm、厚み2mmの脱脂綿を静置し、株式会社パイロットの万年筆用赤色インキ「パイロットインキレッド(商品名)」を、上記脱脂綿がインキを十分に含んだ状態になるまで上記脱脂綿に滴下し(通常1mL程度)、室温25℃、相対湿度50%の環境下で24時間放置した後、上記脱脂綿を除去し、汚染箇所をライオン株式会社の食器洗い用洗剤「ママレモン(商品名)」を用い、スリーエム社の食器洗い用スポンジ「スコッチ・ブライト抗菌ウレタンスポンジたわし、リーフ型/3層、研磨粒子なし(商品名)」を使用して、食器を洗うように水洗した後、汚染箇所を目視観察し、以下の基準で評価した。
A:汚染はほぼ完全に除去された。
B:汚染が僅かに残り、汚染箇所を判別することができた。
C:汚染が残り、汚染箇所は赤味を呈していた。
D:汚染が著しく残り、汚染箇所は水洗後も赤色のままであった。
【0121】
使用した原材料
(A)活性エネルギー線硬化性樹脂:
(A1)エポキシ変性多官能(メタ)アクリレート:
(A1‐1)共栄社化学株式会社のグリセリンジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物「エポキシエステル80MFA(商品名)」、アクリロイル基数2個、水酸基数3個。
(A1‐2)日本化薬株式会社のヘキサメチレンジオールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物「KAYARAD R‐167(商品名)」、アクリロイル基数2個、水酸基数2個。
【0122】
(A2)アルキルアルコールアミン変性多官能(メタ)アクリレート:
(A2‐1)ダイセル・オルネクス株式会社の多官能(メタ)アクリレート(グリセリンプロポキシトリアクリレート)「OTA480(商品名)」と2‐アミノエタノールを前者2モルに対し後者1モルの割合の量でガラス製の反応容器に仕込み、攪拌しながら、温度23℃で72時間反応し、1分子中に4個のアクリロイル基を有するアルキルアルコールアミン変性多官能(メタ)アクリレートを得た。
(A2‐2)ダイセル・オルネクス株式会社の多官能(メタ)アクリレート(トリプロピレングリコールジアクリレート)「TPGDA(商品名)」と2‐アミノエタノールを前者2モルに対し後者1モルの割合の量でガラス製の反応容器に仕込み、攪拌しながら、温度23℃で72時間反応し、1分子中に2個のアクリロイル基を有するアルキルアルコールアミン変性多官能(メタ)アクリレートを得た。
【0123】
(A3)3‐フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、及び3‐フェノキシベンジル(メタ)アクリレート誘導体からなる群から選択される1種以上:
(A3‐1)共栄社化学株式会社の3‐フェノキシベンジルアクリレート(CAS番号409325‐06‐0)「ライトアクリレートPOB‐A(商品名)」。
【0124】
(A4)1分子中に1個以上の水酸基を有するアクリルアミド化合物:
(A4‐1)ヒドロキシエチルアクリルアミド
【0125】
(B)1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物:
(B‐1)ライトケミカル工業株式会社の1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物(ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体)「RV2(商品名)」。
【0126】
(C)光重合開始剤:
(C‐1)IGM Resins社のアセトフェノン系光重合開始剤(2‐ヒロドキシ‐1‐{4‐[4‐(2‐ヒドロキシ‐2‐メチル‐プロピオニル)‐ベンジル]フェニル}‐2‐メチル‐プロパン‐1‐オン)「Omnirad127(商品名)」。
(C‐2)和光純薬工業株式会社のベンゾフェノン。
【0127】
(D)樹脂粒子:
(D‐1)根上工業株式会社のウレタン樹脂粒子「アートパールC‐800TH(商品名)」、平均粒子径8μm、水酸基価18mgKOH/g。
(D‐2)積水化成品工業株式会社の架橋ポリメタクリル酸ブチル樹脂粒子「テクポリマーBM30X‐8(商品名)」、平均粒子径8μm、水酸基価0.0mgKOH/g。
【0128】
フィルム基材:
(α‐1)リケンテクノス株式会社の厚み120μmのポリ塩化ビニル系樹脂フィルム「S23018Fc24458(商品名)」。
【0129】
例1
(1)活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の調製:
上記成分(A1‐1)40質量部、上記成分(A2‐1)25質量部、上記成分(A3‐1)30質量部、上記成分(A4‐1)5質量部、上記成分(B‐1)18質量部、上記成分(C‐1)3質量部、上記成分(C‐2)3質量部、上記成分(D‐1)60質量部、1‐メトキシ‐2‐プロパノール(表には「PGM」と記載)100質量部、及び2‐プロパノール(表には「IPA」と記載)100質量部を混合攪拌し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を得た。ここで、1‐メトキシ‐2‐プロパノールと2‐プロパノール以外の成分は、何れも固形分換算の値である。
【0130】
(2)塗膜の形成:
上記フィルム基材(α‐1)の一方の面のハードコート形成面の上に、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体をメジウムとするインクを用いて厚み1μmの木目柄の印刷層を形成し、更にメイヤーバー方式の塗工装置を使用し、上記(1)で得た活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用い、塗布量(硬化後の質量)が11.7g/mとなるように、塗布し、乾燥し、積算光量240mJ/cmの条件で活性エネルギー線を照射して硬化して硬化塗膜を形成し、化粧シートを得た。
【0131】
(3)化粧シートの評価:
上記試験(イ)~(チ)を行った結果を表1に示す。
【0132】
例2~17
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の配合を表1又は2に示すように変更したこと以外は、例1と同様に行った。結果を表1又は2に示す。
【0133】
【表1】
【0134】
【表2】
【0135】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いて形成された硬化塗膜は、エンボスロールにより押圧することにより凹凸模様を施しても白化や割れなどの不良現象が起きないことが分かった。本発明の好ましい活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いて形成された硬化塗膜は、更に被着体の化粧シート貼合面に三次元形状が付与されている場合であっても白化や割れなどの不良現象が起きないことが分かった。また耐汚染性、表面硬度、及び耐擦傷性にも優れていた。更に所望により艶消し意匠を付与したり、高光沢意匠を付与したりすることのできることが分かった。従って、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、物品を化粧、加飾するための化粧シートに好適に用いることができると考察した。
【図面の簡単な説明】
【0136】
図1】本発明の化粧シートの1つの実施形態の断面の概念図である。
図2】三次元成形の評価に用いた被着体である。
【符号の説明】
【0137】
1:本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物であって、上記成分(D)樹脂粒子を含むものを用いて形成された塗膜
2:透明樹脂フィルムの層
3:印刷層
4:着色され隠蔽性を有する樹脂フィルムの層

図1
図2