(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】パロノセトロン含有組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/473 20060101AFI20240219BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240219BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240219BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240219BHJP
A61P 1/08 20060101ALI20240219BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
A61K31/473
A61K47/12
A61K47/18
A61K47/26
A61P1/08
A61P43/00 111
(21)【出願番号】P 2020051745
(22)【出願日】2020-03-23
【審査請求日】2022-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】519273762
【氏名又は名称】シオノギファーマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】平 光
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 祐
【審査官】鶴見 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-137658(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1682728(CN,A)
【文献】特表2006-516583(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 47/00-47/69
A61P 43/00
A61P 1/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パロノセトロン類及びクエン酸類を含有し、
パロノセトロン類が、パロノセトロン及びパロノセトロンの塩から選択された少なくとも1種であり、
クエン酸類が、クエン酸及びクエン酸塩から選択された少なくとも1種であり、
パロノセトロン類の濃度が、パロノセトロンとして0.2
~3mg/m
L、
クエン酸類の濃度が8.5mg/mL以下である、組成物
(ただし、下記(1)又は(2)を充足する
(1)組成物が、パロノセトロン類をパロノセトロンとして0.30mg/mLの濃度、マンニトールを41.52mg/mLの濃度で含有する、pH5.0の組成物でない
(2)組成物が、さらに、エデト酸及びエデト酸塩から選択された少なくとも1種のエデト酸類を含む)。
【請求項2】
パロノセトロン類及びクエン酸類を含有し、
パロノセトロン類が、パロノセトロン及びパロノセトロンの塩から選択された少なくとも1種であり、
クエン酸類が、クエン酸及びクエン酸塩から選択された少なくとも1種であり、
パロノセトロン類の濃度が、パロノセトロンとして0.2
~3mg/m
L、
クエン酸類の割合が、パロノセトロン1質量部に対して30質量部以下である、組成物
(ただし、下記(1)又は(2)を充足する
(1)組成物が、パロノセトロン類をパロノセトロンとして0.30mg/mLの濃度、マンニトールを41.52mg/mLの濃度で含有する、pH5.0の組成物でない
(2)組成物が、さらに、エデト酸及びエデト酸塩から選択された少なくとも1種のエデト酸類を含む)。
【請求項3】
パロノセトロン類及びクエン酸類を含有し、
パロノセトロン類が、パロノセトロン及びパロノセトロンの塩から選択された少なくとも1種であり、
クエン酸類が、クエン酸及びクエン酸塩から選択された少なくとも1種であり、
パロノセトロン類の濃度が、パロノセトロンとして0.2
~3mg/m
L、
クエン酸類の濃度が8.5mg/mL以下、
クエン酸類の割合が、パロノセトロン1質量部に対して30質量部以下である、組成物
(ただし、下記(1)又は(2)を充足する
(1)組成物が、パロノセトロン類をパロノセトロンとして0.30mg/mLの濃度、マンニトールを41.52mg/mLの濃度で含有する、pH5.0の組成物でない
(2)組成物が、さらに、エデト酸及びエデト酸塩から選択された少なくとも1種のエデト酸類を含む)。
【請求項4】
パロノセトロン類がパロノセトロン塩酸塩であり、パロノセトロン類の濃度が、パロノセトロンとして0.25~0.5mg/mLである請求項1~3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
パロノセトロン類がパロノセトロン塩酸塩であり、クエン酸類の割合がパロノセトロン1質量部に対して25質量部以下である、請求項1~4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
クエン酸類が、クエン酸及びクエン酸塩である、請求項1~5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
クエン酸類がクエン酸及びクエン酸塩であり、クエン酸の濃度が2.9mg/mL以下、クエン酸塩の濃度が6.5mg/mL、クエン酸類の割合がパロノセトロン1質量部に対して1~25質量部である、請求項1~6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
クエン酸類が、クエン酸及びクエン酸ナトリウムであり、クエン酸の濃度が0.5~2.2mg/mL、クエン酸塩の濃度が1~5mg/mL、クエン酸類の割合がパロノセトロン1質量部に対して2~20質量部である
、請求項1~7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
さらに、
エデト酸及びエデト酸塩から選択された少なくとも1種のエデト酸類を含む、請求項1~8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
さらに、エデト酸類を含み、エデト酸類がエデト酸ナトリウムであり、エデト酸類の濃度が0.1mg/mL以上である、請求項1~9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
さらに、エデト酸を含み、エデト酸類がエデト酸ナトリウムであり、エデト酸類の濃度が0.2~3mg/mLである、請求項1~10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
さらに、等張化剤を含む、請求項1~11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
さらに、等張化剤を含み、等張化剤がマンニトールである、請求項1~12のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
さらに、等張化剤を含み、等張化剤の濃度が20~60mg/mLである、請求項1~13のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】
pHが4~6である、請求項1~14のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
さらに、エデト酸類及び等張化剤を含み、
パロノセトロン類がパロノセトロン塩酸塩、クエン酸類がクエン酸及びクエン酸ナトリウム、等張化剤がマンニトール、エデト酸類がエデト酸ナトリウムであり、
パロノセトロン類の濃度が、パロノセトロンとして0.3~0.45mg/mL、
クエン酸の濃度が1~2mg/mL、
クエン酸塩の濃度が2.5~4.5mg/mL、
クエン酸類の割合がパロノセトロン1質量部に対して1.5~20質量部、
エデト酸類の濃度が0.8~2mg/mL、
等張化剤の濃度が、30~50mg/mL、
pHが、4.5~5.5である、請求項1~15のいずれかに記載の組成物。
【請求項17】
酒石酸又はその塩を酒石酸換算で2.0mg以上20mg/mL以下で含む組成物でない、請求項1~16のいずれかに記載の組成物。
【請求項18】
酒石酸及び酒石酸の塩をいずれも含有しない、請求項1~17のいずれかに記載の組成物。
【請求項19】
酒石酸、酒石酸の塩及びグルコースのいずれも含有しない、請求項1~18のいずれかに記載の組成物。
【請求項20】
パロノセトロン類の濃度が、パロノセトロンとして0.33~0.45mg/mLである、請求項1~19のいずれかに記載の組成物。
【請求項21】
パロノセトロン類の濃度が、パロノセトロンとして0.35~0.4mg/mLであり、酒石酸、酒石酸の塩及びグルコースのいずれも含有しない、請求項1~20のいずれかに記載の組成物。
【請求項22】
パロノセトロン類、クエン酸類、エデト酸類及び等張化剤を含有し、
パロノセトロン類がパロノセトロン塩酸塩、クエン酸類がクエン酸及びクエン酸ナトリウム、エデト酸類がエデト酸ナトリウム、等張化剤がマンニトールであり、
パロノセトロン類の濃度が、パロノセトロンとして0.375mg/mLであり、
クエン酸の濃度が1~2mg/mLであり、
クエン酸ナトリウムの濃度が2.5~4.5mg/mLであり、
エデト酸類の濃度が0.8~2mg/mLであり、
等張化剤の濃度が、30~50mg/mLであり、
酒石酸、酒石酸の塩及びグルコースのいずれも含有せず、
pHが、4.5~5.5である、組成物。
【請求項23】
全量が5mL未満の製剤である、請求項1~
22のいずれかに記載の組成物。
【請求項24】
全量3mL以下のシリンジ製剤である、請求項1~
23のいずれかに記載の組成物。
【請求項25】
パロノセトロン類及びクエン酸類を含有し、
パロノセトロン類が、パロノセトロン及びパロノセトロンの塩から選択された少なくとも1種であり、
クエン酸類が、クエン酸及びクエン酸塩から選択された少なくとも1種であり、
パロノセトロン類の濃度が、パロノセトロンとして0.2
~3mg/m
Lである組成物において、パロノセトロン類の安定性を向上する方法であって、クエン酸類の濃度を8.5mg/mL以下、及び/又はクエン酸類の割合をパロノセトロン1質量部に対して30質量部以下とする、方法
(ただし、下記(1)又は(2)を充足する
(1)組成物が、パロノセトロン類をパロノセトロンとして0.30mg/mLの濃度、マンニトールを41.52mg/mLの濃度で含有する、pH5.0の組成物でない
(2)組成物が、さらに、エデト酸及びエデト酸塩から選択された少なくとも1種のエデト酸類を含む)。
【請求項26】
熱安定性及び/又は光安定性を向上する、請求項
25記載の方法。
【請求項27】
さらに、経時的なpH変化を抑制する、請求項
25又は
26記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パロノセトロン類を含有する組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
パロノセトロン(パロノセトロン塩酸塩)は、5-HT3受容体拮抗薬であり、「アロキシ静注0.75mg」が市販されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】アロキシ静注0.75mgの医薬品インタビューフォーム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、新規なパロノセトロン組成物(パロノセトロン製剤、パロノセトロン水性組成物)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の通り、パロノセトロンには、市販品として「アロキシ静注0.75mg」が知られている。この市販品は、1瓶(5mL)中に、パロノセトロン塩酸塩0.84mg(パロノセトロンとして0.75mg)、D-マンニトール207.5mg、エデト酸ナトリウム水和物2.5mg、クエン酸ナトリウム水和物18.5mg、クエン酸水和物7.8mgを含む、pH4.5~5.5、浸透圧比約1の製剤である。
【0006】
この製剤は、そのまま又は希釈して使用されるが、いずれの使用態様においても高濃度化することで、保管(省スペース)、取扱性等の点で有利となりうる。一方、製剤は、有効成分の機能や安定性等を考慮して厳密に設定されたものであり、仮に高濃度化するとしても、各成分の配合量は維持すべきものと考えられる。
【0007】
このような観点から、本発明者は、各成分の配合量を変化させず(すなわち、媒体たる水の量を変更して)、パロノセトロンを高濃度で含む製剤を調製した。
しかしながら、このような製剤では、意外なことに、各成分の配合量が同じであるにもかかわらず、安定性(保存安定性)が低下する等の不都合を生じる場合があった。しかも、このような不都合が生じる理由は全くわからず、その解決には困難を極めた。
【0008】
このような中、本発明者は、意外なことに、製剤を構成する特定成分の配合割合を選択することで、パロノセトロンを特定濃度に高濃度化しても、安定性の低下等を抑制ないし改善しうること等を見出し、さらに検討を重ね、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記の発明等に関する。
[1]
パロノセトロン類及びクエン酸類を含有し、
パロノセトロン類の濃度が、パロノセトロンとして0.2mg/mL以上、
クエン酸類の濃度が8.5mg/mL以下である、組成物。
[2]
パロノセトロン類及びクエン酸類を含有し、
パロノセトロン類の濃度が、パロノセトロンとして0.2mg/mL以上、
クエン酸類の割合が、パロノセトロン(パロノセトロン基準でパロノセトロン類)1質量部に対して30質量部以下である、組成物。
[3]
パロノセトロン類及びクエン酸類を含有し、
パロノセトロン類の濃度が、パロノセトロンとして0.2mg/mL以上、
クエン酸類の濃度が8.5mg/mL以下、
クエン酸類の割合が、パロノセトロン(パロノセトロン基準でパロノセトロン類)1質量部に対して30質量部以下である、組成物。
[4]
パロノセトロン類がパロノセトロン塩酸塩であり、パロノセトロン類の濃度が、パロノセトロンとして0.25~0.5mg/mLである[1]~[3]のいずれかに記載の組成物。
[5]
パロノセトロン類がパロノセトロン塩酸塩であり、クエン酸類の割合が、パロノセトロン(パロノセトロン基準でパロノセトロン類)1質量部に対して25質量部以下である、
[1]~[4]のいずれかに記載の組成物。
[6]
クエン酸類が、クエン酸及びクエン酸塩である、[1]~[5]のいずれかに記載の組成物。
[7]
クエン酸類がクエン酸及びクエン酸塩であり、クエン酸の濃度が2.9mg/mL以下、クエン酸塩の濃度が6.5mg/mL、クエン酸類の割合がパロノセトロン(パロノセトロン基準でパロノセトロン類)1質量部に対して1~25質量部である、[1]~[6]のいずれかに記載の組成物。
[8]
クエン酸類が、クエン酸及びクエン酸ナトリウムであり、クエン酸の濃度が0.5~2.2mg/mL、クエン酸塩の濃度が1~5mg/mL、クエン酸類の割合がパロノセトロン(パロノセトロン基準でパロノセトロン類)1質量部に対して2~20質量部であるである、[1]~[7]のいずれかに記載の組成物。
[9]
さらに、エデト酸類を含む、[1]~[8]のいずれかに記載の組成物。
[10]
さらに、エデト酸類を含み、エデト酸類がエデト酸ナトリウム(二ナトリウム)であり、エデト酸類の濃度が0.1mg/mL以上である、[1]~[9]のいずれかに記載の組成物。
[11]
さらに、エデト酸を含み、エデト酸類がエデト酸ナトリウム(二ナトリウム)であり、エデト酸類の濃度が0.2~3mg/mLである、[1]~[10]のいずれかに記載の組成物。
[12]
さらに、等張化剤を含む、[1]~[11]のいずれかに記載の組成物。
[13]
さらに、等張化剤を含み、等張化剤がマンニトールである、[1]~[12]のいずれかに記載の組成物。
[14]
さらに、等張化剤を含み、等張化剤の濃度が20~60mg/mLである、[1]~[13]のいずれかに記載の組成物。
[15]
pHが4~6である、[1]~[14]のいずれかに記載の組成物。
[16]
さらに、エデト酸類及び等張化剤を含み、
パロノセトロン類がパロノセトロン塩酸塩、クエン酸類がクエン酸及びクエン酸ナトリウム、等張化剤がマンニトール、エデト酸類がエデト酸ナトリウム(二ナトリウム)であり、
パロノセトロン類の濃度が、パロノセトロンとして0.3~0.45mg/mL、
クエン酸の濃度が1~2mg/mL、
クエン酸塩の濃度が2.5~4.5mg/mL、
クエン酸類の割合がパロノセトロン(パロノセトロン基準でパロノセトロン類)1質量部に対して1.5~20質量部、
エデト酸類の濃度が0.8~2mg/mL、
等張化剤の濃度が、30~50mg/mL、
pHが、4.5~5.5である、[1]~[15]のいずれかに記載の組成物。
[17]
全量が5mL未満の製剤である、[1]~[16]のいずれかに記載の組成物。
[18]
全量3mL以下のシリンジ製剤である、[1]~[17]のいずれかに記載の組成物。
[19]
パロノセトロン類及びクエン酸類を含有し、パロノセトロン類の濃度が、パロノセトロンとして0.2mg/mL以上である組成物において、パロノセトロン類の安定性を向上(又は改善)する方法であって、クエン酸類の濃度を8.5mg/mL以下、及び/又はクエン酸類の割合をパロノセトロン(パロノセトロン基準でパロノセトロン類)1質量部に対して30質量部以下とする、方法。
[20]
熱安定性及び/又は光安定性を向上(又は改善)する、[19]記載の方法。
[21]
さらに、経時的なpH変化を抑制する、[19]又は[20]記載の方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、新規なパロノセトロン組成物(パロノセトロン製剤)を提供できる。
【0011】
このような組成物は、市販品に比べて、高濃度でパロノセトロンを含んでおり、例えば、低容量ないし省スペース化[例えば、全量5mL未満(例えば、2mL等)の製剤]等が可能である。
【0012】
しかも、このような組成物では、高濃度でパロノセトロンを含んでいても、市販品の処方(組成)に比べ、十分な安定性を担保[例えば、市販品の処方(組成)と同等の安定性ないしより高い安定性を実現]しうる。このような組成物は、高濃度でありながら、長期保存に耐えうるものであり、非常に有用である。
【0013】
なお、安定性としては、保存安定性、光安定性、pH変化の大きさ等が挙げられる。保存安定性や光安定性は、例えば、パロノセトロンの類縁物質の生成(副生)量を測定することで、評価しうる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<組成物>
本発明の組成物(パロノセトロン組成物、パロノセトロン製剤、医薬組成物)は、パロノセトロン類及びクエン酸類を少なくとも含む。
【0015】
[パロノセトロン類]
パロノセトロン類としては、パロノセトロン(下記式で表される化合物)、パロノセトロンの塩(特に、薬理学的に許容可能な塩)、これらの水和物などが含まれる。
【0016】
【0017】
塩を形成する成分(塩)としては、特に限定されず、例えば、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等)、有機酸{例えば、カルボン酸[例えば、酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、o-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、グルコヘプタン酸、3-フェニルプロピオン酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸]、スルホン酸[例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタンジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸]、硫酸の部分エステル(例えば、ラウリル硫酸等)等}等の酸(酸の塩)が挙げられる。
これらの成分は、単独で又は2種以上組み合わせて、塩を形成してもよい。
【0018】
代表的なパロノセトロン類には、パロノセトロン、パロノセトロンと酸(例えば、無機酸)との塩などが挙げられ、特に、パロノセトロン塩酸塩(下記式で表される化合物)が好ましい。
【0019】
【0020】
なお、パロノセトロン塩酸塩は、前記の通り、市販品で使用のパロノセトロン類である。
【0021】
[クエン酸類]
クエン酸類としては、クエン酸、クエン酸塩等が挙げられる。
【0022】
クエン酸塩としては、例えば、クエン酸金属塩[例えば、アルカリ金属塩(例えば、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム等)、アルカリ土類金属塩(例えば、クエン酸カルシウム)等]等が挙げられる。
【0023】
好ましいクエン酸塩には、クエン酸ナトリウム等が含まれる。
【0024】
クエン酸類は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。2種以上組み合わせる場合、クエン酸とクエン酸塩とを組み合わせてもよいし、2種以上のクエン酸塩を組み合わせてもよいし、クエン酸と2種以上のクエン酸塩を組み合わせてもよい。
【0025】
これらの中でも、クエン酸及びクエン酸塩(例えば、クエン酸ナトリウム)が好ましく、特にこれらを組み合わせて使用するのが好ましい。
【0026】
なお、クエン酸類は、抗酸化剤及び/又は緩衝剤(緩衝液)として機能してもよい。
【0027】
クエン酸類は、水和物の形態(例えば、クエン酸水和物、クエン酸ナトリウム水和物)で組成物に含有(配合)されてもよい。
【0028】
なお、クエン酸(クエン酸水和物)及びクエン酸ナトリウム(クエン酸ナトリウム水和物)は、前記の通り、市販品で使用のクエン酸類である。
【0029】
[エデト酸類]
組成物は、エデト酸類を含んでいてもよい。
エデト酸類は、製剤に混入しうる金属成分を効率良くトラップできる等の観点から、好適に組成物に含有させうる。
【0030】
エデト酸類としては、エデト酸、エデト酸塩等が挙げられる。
エデト酸塩としては、例えば、エデト酸金属塩[例えば、アルカリ金属塩(例えば、エデト酸ナトリウム(二ナトリウム)、エデト酸カリウム等)等]等が挙げられる。
エデト酸類は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0031】
これらの中でも、エデト酸ナトリウムが好ましい。
【0032】
エデト酸類は、水和物の形態(例えば、エデト酸ナトリウム水和物)で組成物に含有(配合)されてもよい。
【0033】
なお、エデト酸ナトリウム(エデト酸ナトリウム水和物)は、前記の通り、市販品で使用のエデト酸類である。
【0034】
[等張化剤]
組成物は、等張化剤を含んでいてもよい。
等張化剤は、浸透圧の調整等の観点から、好適に組成物に含有させうる。
【0035】
等張化剤としては、例えば、有機成分[例えば、糖アルコール類(例えば、ソルビトール、マンニトール(D-マンニトール等)、キシリトール、トレハロース、グリセリンなど)、糖類(例えば、ブドウ糖、乳糖など)、グリコール類(例えば、プロピレングリコール)、アルコール類(例えば、ベンジルアルコール)、マクロゴール等]、無機成分[例えば、無機塩(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、臭化ナトリウム等のハロゲン化物)等]等が挙げられる。
等張化剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0036】
これらの中でも、糖アルコール類、糖類、ハロゲン化物(例えば、アルカリ金属やアルカリ土類金属とハロゲン化水素との塩)等が好ましく、特に、糖アルコール類(中でもマンニトール)が好ましい。
【0037】
なお、マンニトール(D-マンニトール)は、前記の通り、市販品で使用の成分(等張化剤)である。
【0038】
[pH調整剤]
組成物は、pH調整剤を含んでいてもよい。このようなpH調整剤としては、特に限定されず、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、ホウ酸など)、有機酸[例えば、カルボン酸(クエン酸、酒石酸、フマル酸、乳酸、マレイン酸、酢酸、シュウ酸、アジピン酸、グルコン酸など)、スルホン酸(メタンスルホン酸など)など]、水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどの水酸化アルカリ又はアルカリ土類金属塩など)、アミン類[例えば、アルカノールアミン(例えば、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリスヒドロキシメチルアミノメタンなど)]、アミノ酸(例えば、グリシンなど)、これらの塩などが挙げられる。
【0039】
これらの中でも、塩酸、水酸化ナトリウム等が代表的である。一方、本発明の組成物は、このようなpH調整剤(例えば、塩酸、水酸化ナトリウム等)を含んでいなくてもよい。
【0040】
pH調整剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0041】
[他の成分]
組成物は、本発明の効果を害しない範囲で、さらに、必要に応じて、他の成分[パロノセトロン類、クエン酸類、エデト酸類、等張化剤、及びpH調整剤以外の成分(非溶媒成分、固形分)]を含んでいてもよい。このような他の成分としては、例えば、界面活性剤、消泡剤、溶解剤、溶解補助剤、分散剤、防腐剤などが挙げられる。
【0042】
他の成分は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。組成物は、これらの他の成分を実質的に含んでいなくてもよい。
【0043】
[溶媒]
組成物は、通常、溶媒を含む組成物(液剤)であってもよい。なお、溶媒としては、通常、水性溶媒[例えば、水、水に混和する溶媒(アルコールなど)、これらの混合溶媒]が挙げられ、溶媒は、特に水(水のみ)であってもよい。
【0044】
液剤において、溶媒(水性溶媒、特に水)の割合は、例えば、70質量%以上、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であってもよい。
【0045】
[各成分の割合]
組成物において、パロノセトロン類(例えば、パロノセトロン塩酸塩)の割合(濃度)は、パロノセトロンとして(パロノセトロン基準でパロノセトロン類)0.2mg/mL以上の範囲から選択でき、好ましくは0.25mg/mL以上、さらに好ましくは0.3mg/mL以上、特に0.33mg/mL以上、特に好ましくは0.35mg/mL以上であってもよい。
パロノセトロン類(例えば、パロノセトロン塩酸塩)の割合(濃度)の上限値は、パロノセトロンとして、例えば、3mg/mL、2mg/mL、1mg/mL、0.8mg/mL等であってもよく、好ましくは0.7mg/mL以下(例えば、0.6mg/mL以下、0.5mg/mL以下、0.45mg/mL以下、0.4mg/mL以下、0.38mg/mL以下)であってもよい。
【0046】
本発明の組成物の第1の態様では、クエン酸類の割合(濃度、質量/体積割合)を調整する。このような組成物(第1の態様の組成物)において、クエン酸類[例えば、クエン酸及びクエン酸塩(クエン酸ナトリウム等)の総量]の割合(濃度)は、8.5mg/mL以下の範囲から選択してもよく、好ましくは8mg/mL以下、さらに好ましくは7.5mg/mL以下(例えば、7mg/mL以下)、特に6.5mg/mL以下(例えば、6mg/mL以下)、特に好ましくは5.5mg/mL以下(例えば、5.2mg/mL以下)であってもよい。
クエン酸類[例えば、クエン酸及びクエン酸塩(クエン酸ナトリウム等)の総量]の割合(濃度)の下限値は、例えば、0.1mg/mL、0.5mg/mL、1mg/mL、1.5mg/mL等であってもよく、好ましくは2mg/mL以上(例えば、2.5mg/mL以上、3mg/mL以上、3.5mg/mL以上、4mg/mL以上、4.5mg/mL以上)であってもよい。
【0047】
クエン酸類が、クエン酸とクエン酸塩を含有する場合、クエン酸の割合(濃度)は、例えば、7mg/mL以下、好ましくは6mg/mL以下、さらに好ましくは5mg/mL以下(例えば、4mg/mL以下、3.5mg/mL以下)、特に3mg/mL以下(例えば、2.9mg/mL以下、2.5mg/mL以下、2.2mg/mL以下)、特に好ましくは2mg/mL以下(例えば、1.8mg/mL以下)であってもよい。
クエン酸の割合(濃度)の下限値は、例えば、0.05mg/mL、0.1mg/mL、0.2mg/mL等であってもよく、好ましくは0.3mg/mL以上(例えば、0.5mg/mL以上、0.6mg/mL以上、0.7mg/mL以上、0.8mg/mL以上、1mg/mL以上、1.2mg/mL以上)であってもよい。
【0048】
クエン酸類が、クエン酸とクエン酸塩を含有する場合、クエン酸塩(クエン酸ナトリウム等)の割合(濃度)は、例えば、8mg/mL以下、好ましくは7.5mg/mL以下、さらに好ましくは7mg/mL以下(例えば、6.5mg/mL以下)、特に6mg/mL以下(例えば、5.5mg/mL以下)、特に好ましくは5mg/mL以下(例えば、4.5mg/mL以下)であってもよい。
クエン酸塩の割合(濃度)の下限値は、例えば、0.1mg/mL、0.3mg/mL、0.5mg/mL、0.8mg/mL等であってもよく、好ましくは1mg/mL以上(例えば、1.2mg/mL以上、1.5mg/mL以上、1.8mg/mL以上、2mg/mL以上、2.2mg/mL以上、2.5mg/mL以上)であってもよい。
【0049】
本発明の組成物の第2の態様では、パロノセトロン類(パロノセトロン)に対するクエン酸類の割合を調整する。このような組成物(第2の態様の組成物)において、クエン酸類[例えば、クエン酸及びクエン酸塩(クエン酸ナトリウム等)の総量]の割合は、パロノセトロン(パロノセトロン基準でパロノセトロン類)1質量部に対して、30質量部以下程度の範囲から選択してもよく、好ましくは25質量部以下、さらに好ましくは22質量部以下、特に20質量部以下、特に好ましくは18質量部以下(例えば、16質量部以下、15質量部以下)であってもよい。
第2の態様において、クエン酸類の割合の下限値は、例えば、パロノセトロン(パロノセトロン基準でパロノセトロン類)1質量部に対して、0.1質量部、0.3質量部、0.5質量部、0.8質量部等であってもよく、好ましくは1質量部以上(例えば、1.2質量部以上、1.5質量部以上、1.8質量部以上、2質量部以上、2.2質量部以上、2.5質量部以上、2.8質量部以上、3質量部以上、3.2質量部以上、3.5質量部以上、3.8質量部以上、4質量部以上、4.2質量部以上、4.5質量部以上、4.8質量部以上、5質量部以上、6質量部以上、8質量部以上、10質量部以上、12質量部以上等)であってもよい。
【0050】
クエン酸類が、クエン酸とクエン酸塩を含有する場合、クエン酸の割合は、パロノセトロン(パロノセトロン基準でパロノセトロン類)1質量部に対して、例えば、15質量部以下程度の範囲から選択してもよく、好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは8質量部以下、特に7質量部以下、特に好ましくは6質量部以下(例えば、5.5質量部以下、5質量部以下、4.5質量部以下)であってもよい。
クエン酸の割合の下限値は、パロノセトロン(パロノセトロン基準でパロノセトロン類)1質量部に対して、例えば、0.01質量部、0.05質量部、0.1質量部、0.3質量部等であってもよく、好ましくは0.5質量部以上(例えば、0.8質量部以上、1質量部以上、1.2質量部以上、1.5質量部以上、1.8質量部以上、2質量部以上、2.2質量部以上、2.5質量部以上、2.8質量部以上、3質量部以上、3.2質量部以上、3.5質量部以上、3.8質量部以上等)であってもよい。
【0051】
クエン酸類が、クエン酸とクエン酸塩を含有する場合、クエン酸塩の割合は、パロノセトロン(パロノセトロン基準でパロノセトロン類)1質量部に対して、例えば、30質量部以下程度の範囲から選択してもよく、好ましくは25質量部以下、さらに好ましくは20質量部以下、特に18質量部以下、特に好ましくは15質量部以下(例えば、14質量部以下、13質量部以下、12質量部以下、11質量部以下、10質量部以下)であってもよい。
クエン酸塩の割合の下限値は、パロノセトロン(パロノセトロン基準でパロノセトロン類)1質量部に対して、例えば、0.01質量部、0.05質量部、0.1質量部、0.3質量部等であってもよく、好ましくは0.5質量部以上(例えば、0.8質量部以上、1質量部以上、1.2質量部以上、1.5質量部以上、1.8質量部以上、2質量部以上、2.2質量部以上、2.5質量部以上、2.8質量部以上、3質量部以上、3.2質量部以上、3.5質量部以上、3.8質量部以上、4質量部以上、4.5質量部以上、5質量部以上、5.5質量部以上、6質量部以上、6.5質量部以上、7質量部以上、7.5質量部以上、8質量部以上、8.5質量部以上、9質量部以上等)であってもよい。
【0052】
なお、本発明の組成物は、通常、少なくとも第1の態様又は第2の態様を充足するが、これらの態様の双方(第1の態様及び第2の態様)を充足してもよい。
【0053】
組成物が、エデト酸類(例えば、エデト酸ナトリウム)を含有する場合、エデト酸類の割合(濃度)は、例えば、0.01mg/mL以上(例えば、0.05mg/mL以上)、好ましくは0.1mg/mL以上、さらに好ましくは0.2mg/mL以上、特に0.3mg/mL以上、特に好ましくは0.5mg/mL以上(例えば、0.8mg/mL以上、1mg/mL以上)であってもよい。
【0054】
エデト酸類の割合(濃度)の上限値は、例えば、10mg/mL、8mg/mL、7mg/mL、6mg/mL等であってもよく、好ましくは5mg/mL以下(例えば、4mg/mL以下、3mg/mL以下、2mg/mL以下、1.5mg/mL以下)であってもよい。
【0055】
組成物が、等張化剤(例えば、マンニトール)を含有する場合、等張化剤の割合(濃度)は、その種類に応じて選択できるが、例えば、1mg/mL以上(例えば、3mg/mL以上)、好ましくは5mg/mL以上、さらに好ましくは10mg/mL以上、特に15mg/mL以上、特に好ましくは20mg/mL以上(例えば、25mg/mL以上、30mg/mL以上)であってもよい。
【0056】
等張化剤の割合(濃度)の上限値は、例えば、500mg/mL、400mg/mL、300mg/mL、200mg/mL等であってもよく、好ましくは150mg/mL以下(例えば、120mg/mL以下、100mg/mL以下、80mg/mL以下、60mg/mL以下、50mg/mL以下)であってもよい。
【0057】
なお、これらの成分以外の成分の割合は、その用途、目的等に応じて適宜選択できる。例えば、組成物がpH調整剤を含む場合、pH調整剤の割合は、所望のpHに応じて適宜選択できる。
【0058】
[組成物の態様]
溶媒を含む組成物(液剤)のpHは、酸性、中性及びアルカリ性のいずれからも選択できるが、例えば、3~10(例えば、3~8)、好ましくは3.5~7.5、さらに好ましくは4~7(例えば、4.2~6)、特に4.5~5.5程度であってもよい。
【0059】
組成物の浸透圧は、例えば、生理食塩水に対する浸透圧比で、0.1~10(例えば、0.2~5)、好ましくは0.3~3(例えば、0.5~2)、さらに好ましくは0.6~1.4(例えば、0.7~1.3)、特に0.8~1.2(例えば、0.9~1.1)であってもよく、1(約1)であってもよい。
浸透圧(浸透圧比)は、常温(例えば、20~30℃、23℃等)における値であってもよい。浸透圧比は、例えば、日本薬局方に従って測定できる。
なお、市販品の浸透圧比は、約1である。
【0060】
本発明では、市販品と同様の浸透圧比としても、パロノセトロン類の高濃度化と優れた安定性とを両立しうる。
【0061】
組成物(液剤)における酸素濃度は、比較的低濃度(例えば、10体積%以下)であってもよく、例えば、5体積%以下(例えば、3体積%以下)、好ましくは2.5体積%以下、さらに好ましくは2.0体積%以下であってもよく、1.0体積%以下(例えば、0.8体積%以下、好ましくは0.7体積%以下、さらに好ましくは0.6体積%以下、特に0.5体積%以下)であってもよい。
なお、組成物における酸素濃度(溶存酸素濃度)は、慣用の方法(不活性ガスによるバブリングなど)などにより調整(低減)できる。
【0062】
組成物は、通常、無色であってもよく、特に無色澄明であってもよい。
【0063】
本発明の組成物(製剤、パロノセトロン製剤)は、容器に封入(密閉)されていてもよい。換言すれば、本発明には、組成物(パロノセトロン製剤)を含む容器(内部に含む容器)も含まれる。
【0064】
このような容器には、通常、前記組成物が封入又は密閉されていてもよい。本発明の組成物は、このような容器に封入(保存)されても、効率良く優れた安定性を実現しうる。
【0065】
容器としては、投与態様等に応じて適宜選択でき、例えば、バイアル、アンプル、注射器(又はシリンジ、例えば、プレフィルドシリンジ等)、バッグなどが挙げられる。
【0066】
特に、本発明の組成物は、パロノセトロン製剤を高濃度化できるため、バイアル、アンプル、シリンジ(特に、シリンジ)等に封入してもよい(例えば、シリンジ製剤であってもよい)。例えば、シリンジは、使用時の手間が少ない、採取ミスが無い、等の点で好適に使用できる。
【0067】
容器の材質は、特に限定されず、例えば、ガラス、金属、樹脂(プラスチック)等が挙げられる。容器は、2種以上の材質を組み合わせて形成してもよい。
【0068】
なお、容器(例えば、容器のうち、少なくとも組成物と接触する部分)は、適宜、表面処理(例えば、ブラスト処理、表面処理剤によるコート処理など)されていてもよい。
【0069】
容器において、組成物の量は、容器の種類・サイズ、パロノセトロン濃度(所望のパロノセトロン量)等に応じて適宜選択できるが、特に、5mL(市販品)未満、例えば、4.5mL以下(例えば、0.1~4.2mL)、好ましくは4mL以下(例えば、0.3~3.5mL)、さらに好ましくは3mL(例えば、0.5~2.5mL)、特に2.2mL以下であってもよい。具体的な組成物の量には、1mL、1.5mL、2mL、2.5mL、3mL、3.5mL、4mL等が挙げられ、代表的には2mLであってもよい。
【0070】
容器の内部は、前記組成物(液剤)のみで構成してもよく、空隙(空間)を有していてもよい。このような空隙(空隙部、ヘッドスペース)は、特に、不活性ガス(窒素ガスなど)で充填されている(又は置換されている)のが好ましい。
【0071】
さらに、このような空隙に含まれる酸素も、比較的少なくしてもよい。例えば、容器内の空隙中の酸素濃度は、例えば、10体積%以下であってもよく、例えば、5体積%以下(例えば、3体積%以下)、好ましくは2.5体積%以下、さらに好ましくは2.0体積%以下(例えば、1.5体積%以下)であってもよく、1.0体積%以下(例えば、0.8体積%以下、好ましくは0.7体積%以下、さらに好ましくは0.6体積%以下、特に0.5体積%以下)であってもよい。
【0072】
酸素濃度は、慣用の方法、例えば、前記組成物及び/又は容器内部に不活性ガスをバブリングする方法、前記組成物及び/又は容器内部を脱気する方法、容器内の空隙を不活性ガスで置換する方法、これらを組み合わせた方法などにより調整できる。
【0073】
本発明の組成物は、投与方法に応じて選択できるが、特に、注射剤(又は点滴静注)の形態であってもよい。
本発明には、組成物を投与する方法(投与方法)も含まれる、具体的な投与方法としては、例えば、静注(静脈注射)、筋肉注射、または皮下注射等が挙げられる。さらに具体的には、注射で動脈内、腹膜内、髄膜下、心室内、尿道内、胸骨内、頭蓋内等に投与してもよく、点滴静注により投与してもよい。
【0074】
なお、点滴静注等で投与する場合、前記組成物を輸液に混合し溶解させることで点滴静注液を調製してもよい。本態様において、前記組成物を輸液に混合させるときの比率は、該静注液を投与される患者等の対象の体表面積、年齢、性別、適用箇所、病状の程度等に応じて適宜選択してよく、特に限定されない。
【0075】
輸液としては、特に限定されないが、例えば、生理食塩液、糖水溶液(ブドウ糖水溶液、果糖水溶液など)、糖アルコール水溶液(D-ソルビトール水溶液、キシリトール水溶液など)、アミノ酸水溶液、リンゲル液などが挙げられる。
【実施例】
【0076】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【0077】
各種評価は以下のように行った。
【0078】
[総類縁物質]
サンプルを20mmol/Lリン酸カリウム緩衝液(pH2.5)/アセトニトリル/メタノール混液(8:1:1)にて希釈し,75μg/mL(パロノセトロンとして)とした液100μLにつき、次の条件で液体クロマトグラフィーにより試験を行い、各類縁物質の量をパロノセトンに由来する全ピーク面積中の各類縁物質のピーク面積の比率(%)から算出した。
【0079】
(試験条件)
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:242nm)
カラム:内径4.6mm、長さ25cmのステンレス管に3μmの液体クロマトグラフィー用フェニルシリル化シリカゲルを充填する。
カラム温度:45℃付近の一定温度
移動相A:20mmol/Lリン酸カリウム緩衝液(pH2.5)/アセトニトリル/メタノール混液(18:1:1)
移動相B:20mmol/Lリン酸カリウム緩衝液(pH2.5)/アセトニトリル/メタノール混液(2:1:1)
移動相の送液:移動相A及び移動相Bの混合比を次のように変えて濃度勾配制御する。
【0080】
【0081】
[pH]
日本薬局方pH測定法に従い、23℃において測定した。
【0082】
下記表(表1)に示す組成物を調製し、各種評価を行った。結果(評価)を下記表(表1)に合わせて示した。
なお、組成物は、次のように調製した。
【0083】
適量の注射用水に秤量したクエン酸ナトリウム水和物、クエン酸水和物、エデト酸ナトリウム水和物、D-マンニトール及びパロノセトロン塩酸塩を投入し、攪拌して溶解した。塩酸溶液又は水酸化ナトリウム水溶液を用いて必要に応じてpH調整を行った。注射用水を用いて全量を合わせ、フィルターにてろ過を行った。ろ過液をガラスバイアルに充填し、ゴム栓打栓を行い、アルミキャップにて密封した。このバイアルをオートクレーブで高圧蒸気滅菌した。
【0084】
下記表において、「80℃・10日」「60℃・1ヶ月」における湿度はなりゆき湿度で行い、「25℃・60万lx・hr」では60%RHとした。
【0085】
また、試験例Eの組成物では、調製段階で析出が生じたため、pH変化の測定については断念した。一方、試験例E以外の試験例の組成物は、調製段階において、析出が生じず、無色澄明であった。
【0086】
【0087】
上記表の結果から明らかなように、市販品(試験例A)の配合量を維持したまま、パロノセトロンを高濃度化すると、不安定化した(試験例B~E)。
【0088】
このような不安定化は、マンニトールの配合量を変更しても抑えることができず、光安定性はむしろ低下した(試験例DとFとの対比)。
【0089】
一方、クエン酸類(クエン酸、クエン酸ナトリウム)の配合量を変更することで、不安定化の程度を抑えることができた(試験例G~I)。
【0090】
また、これらの不安定化の程度を抑えられた処方間(試験例G~I)で対比すると、クエン酸類の濃度ないしパロノセトロンに対する配合量が低いもの(試験例G,H)は、総類縁物質の量が少なくなったものの、一方でpH変化は大きかった。
【0091】
さらに、このような処方(試験例G~I)では、エデト酸類及びマンニトールの配合量を変動させても、特段、安定性に差異が見られなかった。そうすると、マンニトールは、浸透圧調整の観点から、市販品と同程度の濃度に、エデト酸類は、市販品と同程度の配合量とすることが好ましいことが示唆された。
【0092】
そのため、これらを総合的に考慮すると、試験例Iが最も好ましい処方と考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明により、新規なパロノセトロン組成物を提供できる。