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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】面材
(51)【国際特許分類】
   B32B 3/30 20060101AFI20240219BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
B32B3/30
E04F13/08 F
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020052061
(22)【出願日】2020-03-24
(65)【公開番号】P2020163853
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-12-07
(31)【優先権主張番号】P 2019067324
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】510114125
【氏名又は名称】株式会社エフコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】吉田 理人
(72)【発明者】
【氏名】瀧田 幸矢
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-237737(JP,A)
【文献】登録実用新案第3174008(JP,U)
【文献】特開2013-104230(JP,A)
【文献】特開2020-163854(JP,A)
【文献】特開2019-155919(JP,A)
【文献】特開昭48-047535(JP,A)
【文献】特開昭55-007413(JP,A)
【文献】特開2009-089843(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B
B05D
E04F 13/00-13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部を有する面材であって、
上記面材は、着色層、及びその表面に透明被膜を有し、
上記着色層は、粒状無機質粒子を含む組成物によって形成され、かつその表面に凹部、及び凸部が平坦な凸部平坦部を有し、
上記透明被膜は、上記着色層の少なくとも凹部と凸部の間に跨る部分(凹部縁部)で厚膜となっていることを特徴とする面材。
【請求項2】
上記着色透明被膜は、シリコーン樹脂及び前記シリコーン樹脂以外の合成樹脂を含むことを特徴とする請求項1に記載の面材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な面材に関する。本発明面材は、建築物、土木構造物等の表面被覆に適用することができ、具体的には建築物壁面の模様仕上げ等に適用することができる。
【背景技術】
【0002】
建築物壁面等においては、景観上の観点から美観性が求められている。近年、このような観点から、例えば、天然の石、土、植物等をイメージした模様仕上げが注目されている。
【0003】
このような模様仕上げ材として、例えば、合成樹脂を結合材とし、これに天然石等を粉砕してなる細骨材状の骨材を混合して調整した混合材を使用して、天然石の風合いを表現した装飾シート等が使用されている(例えば、特許文献1、特許文献2)。このような装飾シートでは、骨材を少量の樹脂で固定化し、天然石調の外観を表出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-138731号公報
【文献】特開2000-153570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述のような装飾シートでは、混合材中の樹脂量を少なく設定した場合、表面強度が不足し、脆くなり欠損するおそれがある。特に、凹凸模様を有する装飾シートの場合には、凹部や凸部の周囲(角部等)において、擦り傷や引っ掻き傷等の欠損を受けやすい。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、耐擦り傷性に優れた面材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討の結果、凹部を有する面材であって、その最表面に特定の透明被膜を有する面材に想到し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の面材は、下記の特徴を有するものである。
1.凹部を有する面材であって、
上記面材は、着色層、及びその表面に透明被膜を有し、
上記着色層は、粒状無機質粒子を含む組成物によって形成され、かつその表面に凹部、及び凸部が平坦な凸部平坦部を有し、
上記透明被膜は、上記着色層の少なくとも凹部と凸部の間に跨る部分(凹部縁部)で厚膜となっていることを特徴とする面材。
2.上記着色透明被膜は、シリコーン樹脂及び前記シリコーン樹脂以外の合成樹脂を含むことを特徴とする1.に記載の面材。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐擦り傷性に優れた面材が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明面材の一例を示す正面図である。
図2】本発明面材の一例を示す断面模式図である。
図3】本発明面材の一例を示す断面模式図である。
図4】本発明面材の着色層のバリエーションを示す断面模式図である。
【符号の説明】
【0011】
A.面材
A1:凹部
A2:凸部
A3:凹部縁部
1:着色層
11:凹部(11’:凹部平坦部)
12:凸部(12’:凸部平坦部)
13:凹部縁部
2:透明被膜層
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0013】
図1は本発明面材の一例を示す断面模式図である。
【0014】
(面材)
本発明面材Aは、着色層1、及び透明被膜2を有しており、図1に示すように、正面方向から見ると、その表面に凹部A1を有している。本発明では、凹部A1よりも突出した部分を凸部A2とする。図1のX-X’部の断面図を図2に示す。図2に示すように、断面方向から見ると、本発明面材Aの着色層1は、その表面に凹部11を有している。さらに、透明被膜2が、着色層凹部11の縁部13(以下「凹部縁部13」ともいう。)に偏在していることを特徴とするものである。図3図2のY部の拡大模式図)に示すように、透明被膜2は、着色層1の表面に設けられ、着色層凹部11の縁部13近傍で、その他の部分よりも厚膜を形成するように偏在している。
【0015】
このような特徴を有する本発明面材Aでは、凹部縁部A3の強度を効率的に高めることができ、擦り傷や引っ掻き傷等の欠損を抑制し、優れた耐擦り傷性を発揮することができる。なお、本発明において、凹部縁部とは、図3に示すように、少なくとも凹部と凸部の間に跨る部分を含む領域のことをいう。
【0016】
(着色層)
本発明の着色層1は、粒状無機質粒子、及び樹脂を含む組成物(着色層用組成物等)を硬化させることにより形成できる。これにより、粒状無機質粒子が樹脂によって固定化され、粒状無機質粒子にもとづく色調を呈する着色層が得られる。すなわち、着色層の色調は、粒状無機質粒子の色調にもとづくものとなる。また、着色層1は、異なる色調を有する複数の着色領域を有するものであってもよい。この場合、異なる色調を有する複数の着色層用組成物を硬化させることにより着色層を形成することができる。
【0017】
粒状無機質粒子としては、その母体の材質が無機質であれば、天然品、人工品のいずれも使用することができる。この粒状無機質粒子としては、少なくとも粒状着色無機質粒子を含む態様が好適である。このような粒状着色無機質粒子としては、特に、光透過率が3%未満の不透明なものが好適であり、光透過率が2%以下のものがより好適である。このような粒状着色無機質粒子として、具体的には、例えば、大理石、御影石、蛇紋岩、花崗岩、砂岩、粘板岩、玄武岩、斑れい岩、閃緑岩、安山岩、石灰岩及びこれらの粉砕物、陶磁器粉砕物、セラミック粉砕物、金属粒等が挙げられる。また、蛍石、寒水石、長石、珪石、珪砂、及びこれらの粉砕物、ガラス粉砕物、ガラスビーズ等を、上記条件を満たすように着色したもの等も使用できる。
【0018】
上記光透過率とは、濁度計による全光線透過率の値である。この測定では、粒状無機質粒子の試料を内厚5mmの透明ガラス製セル中に充填し、次いで徐々に水を充填した後、セル中の気泡を振動によって取り除いたものを用いる。
【0019】
上記粒状着色無機質粒子に加えて、粒状透明性無機質粒子を含む形態とすることもできる。このような粒状透明性無機質粒子の使用は、美観性向上の点で好適である。粒状透明性無機質粒子としては、光透過率が3%以上(より好ましくは3~50%、さらに好ましくは10~30%)であるものが好適である。粒状透明性無機質粒子としては、例えばシリカ、寒水石、長石、珪石等及びこれらの粉砕物、ガラス粉砕物、ガラスビーズ等が挙げられ、上記光透過率を満たすものであれば、無色、有色のいずれのタイプも使用できる。なお、本発明において「α~β」は「α以上β以下」と同義である。
【0020】
粒状無機質粒子の粒径は、好ましくは0.01mm~5mm、より好ましくは0.02mm~2mm、さらに好ましくは0.03~0.8mmである。粒径が異なる粒状無機質粒子を種々組み合せることによって、意匠性の幅を広げることもできる。なお、粒状無機質粒子の粒径は、JIS Z8801-1:2000に規定される金属製網ふるいを用いたふるい分けによって測定される。
【0021】
粒状無機質粒子を固定化する樹脂は、その被膜が透明性を有するものが好適である。このような樹脂の形態としては、例えば、溶剤可溶型樹脂、非水分散型樹脂、無溶剤型樹脂、水分散型樹脂、水溶性樹脂等が挙げられる。樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂、ケイ素樹脂、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体等、あるいはこれらの複合物等が挙げられる。このような樹脂は、架橋反応を生じる性質を有するものであってもよい。
【0022】
上記樹脂の比率は、固形分換算で、粒状無機質粒子の合計量100重量部に対し、好ましくは1重量部以上50重量部以下、より好ましくは2重量部以上30重量部以下、さらに好ましくは3重量部以上20重量部以下である。このような比率であれば、粒状無機質粒子の連接(凝集)による美観を活かした意匠性が付与されやすい。すなわち、粒状無機質粒子の連接体(凝集体)からなる着色層が得られやすい。また、光沢が抑えられ艶消し外観を表出しやすい。さらに、後述の透明被膜を介して視認した場合であっても、粒状無機質粒子に由来する微細な凹凸形状を有する凝集模様(例えば、石肌模様等)を視認することができる。
【0023】
着色層用組成物は、本発明の効果を著しく損なわない限り、必要に応じ、上記以外の成分(添加剤)を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、可塑剤、防藻剤、抗菌剤、消臭剤、吸着剤、難燃剤、増粘剤、消泡剤、架橋剤、造膜助剤、凍結防止剤、着色顔料、体質顔料、光輝性顔料、蓄光顔料、蛍光顔料、骨材、繊維、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、触媒等が挙げられる。
【0024】
本発明の着色層1は、その表面に凹部11を有することを特徴とする。凹部11は、着色層1に少なくとも凹み模様を形成するものである。このような着色層1の模様は、特に限定されず、種々の形状のものが挙げられ、石材調模様、木目調模様、目地模様等が挙げられ、その中でも、天然の石、土、植物等に形成されるような、例えば、巣穴状、虫食い状、樹皮模様、等の形状の凹み模様を有する場合に好適である。
【0025】
凹部11の大きさは、凹凸模様の形状にもよるが、その最大径(長径)が好ましくは0.2~50mm(より好ましくは0.5~30mm)である。また、凹部11の深さは、着色層1の厚みにもよるが、好ましくは0.1~5mm(より好ましくは0.2~3mm)である。
【0026】
また、本発明では、着色層1が複数の凹部11を有することが好ましく、その形状は、一定(同一)であっても、異なるものでもよい。さらには、複数の凹部11の配置は、規則的でもランダムでもよいが、本発明では、線状模様、縞状模様等を形成していることが好ましい。このような場合、天然の石、土、植物等をイメージした模様を表現しやすく、美観性に優れた面材を得ることができる。特に、本発明では、天然の石材(特に、トラバーチン調等)模様を表現するのに好適である。
【0027】
具体的に、上記模様を表現する着色層1としては、着色層1を断面方向から見た場合に凹部11及び凸部12より形成される凹凸模様を有するものであり、例えば、図4に示すように、
(a)その表面にランダムな凹部11と凸部12を有するもの、
(b)その表面に凹部11、及び凸部12が平坦な凸部平坦部12’を有するもの、
(c)その表面に凹部11が平坦な凹部平坦部11’、及び凸部12を有するもの、
及び上記(a)~(c)を組み合わせたもの等が挙げられる。本発明では特に、上記(b)、及び/または上記(c)の態様の凹凸模様を含む場合に効果的である。
【0028】
なお、上記(a)~(c)において、凹部縁部13は、少なくとも凹部11と凸部12の間に跨る部分を含む領域である。
【0029】
(透明被膜)
透明被膜2は、透明コーティング材により形成されるものであり、上記着色層の凹部縁部に偏在して形成されるものである。本発明の透明コーティング材としては、合成樹脂を含むものであれば特に限定されない。透明コーティング材の媒体としては、溶剤系、水系いずれでもよいが、本発明では媒体に水を含むことが好ましい。これにより、着色層1の凹部縁部13に、透明コーティング材が偏在しやすくなる。これにより、耐擦り傷性の効果を高めることができる。
【0030】
さらに本発明では、透明被膜が、合成樹脂として、シリコーン樹脂、及びシリコーン樹脂以外の合成樹脂を含むことが好ましい。これらを併用することにより、透明コーティング材が着色層の凹部縁部に偏在しやすく、耐擦り傷性の効果が高まるとともに、光沢を抑え、落ち着きのある美観性に優れた面材を得ることができる。
【0031】
シリコーン樹脂としては、例えば、ジメチルポリシロキサン等のジアルキルポリシロキサン、ポリジフェニルシロキサン等のポリアリールシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のポリアルキルアリールシロキサンからなるシリコーンオイルやシリコーン樹脂、あるいは、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシル変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン等の変性シリコーンオイルや変性シリコーン樹脂等が挙げられる。シリコーン樹脂の態様としては、水溶性樹脂、水分散性樹脂、溶剤可溶形樹脂、無溶剤形樹脂、非水分散系樹脂等のいずれでもよいが、本発明では、水分散性樹脂(樹脂エマルション)が好適である。
【0032】
シリコーン樹脂以外の合成樹脂としては、例えば、エチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、アクリルスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリオレフィン樹脂、エチレン樹脂、フッ素樹脂、ブタジエン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル・酢酸ビニル樹脂、アクリル・ウレタン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル・シリコン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、セルロース樹脂及びその誘導体等の有機樹脂、水ガラス系その他金属アルコキシド化合物などの無機樹脂等が挙げられる。また、合成樹脂の態様としては、水溶性樹脂、水分散性樹脂、溶剤可溶形樹脂、無溶剤形樹脂、非水分散系樹脂等のいずれでもよいが、本発明では、水分散性樹脂(樹脂エマルション)が好適である。
【0033】
特に本発明では、シリコーン樹脂以外の合成樹脂として、アクリル樹脂エマルション、及び/またはアクリルスチレンエマルションを含む態様が好適である。アクリル樹脂のガラス転移温度は、5~100℃(より好ましくは10~80℃)であることが好ましい。これにより、本発明の効果をより一層高めることができる。
【0034】
上記シリコーン樹脂と上記シリコーン樹脂以外の合成樹脂との固形分重量比率は、好ましくは5:95~90:10(より好ましくは10:90~80:20、さらに好ましくは15:85~60:40)である。このような場合、透明コーティング材が着色層凹部縁部に偏在しやすく、耐擦り傷性を高めることができる。
【0035】
さらに、透明コーティング材が、上記シリコーン樹脂と上記合成樹脂との固形分重量比率を満たすことにより、公知の艶消し剤等の粉体成分を使用しなくても、安定した艶消し効果を得ることができるとともに、形成された透明被膜は、その膜厚にかかわらず光沢ムラ(艶ムラ)を生じにくく、均一な艶消し面を形成することができる。このため、着色層の色調等の意匠性を損なうことなく、光沢ムラのない落ち着きのある美観性の高い面材を得ることができる。
【0036】
透明コーティング材は、固形分が好ましくは2~50重量%(より好ましくは5~30重量%)である。また、透明コーティング材は、塗付時に各種溶媒で希釈することができる。被覆材の希釈割合は、透明コーティング材に対して、好ましくは0~1000重量%(より好ましくは0~800重量%)の割合であり、塗付時の固形分は、好ましくは0.1~50重量%(より好ましくは0.2~30重量%、さらに好ましくは0.3~20重量%)である。このような場合、透明コーティング材が着色層凹部縁部に偏在しやすく、本発明の効果を高めることができる。
【0037】
また、透明コーティング材の単位面積あたりの塗付量は、好ましくは10~500g/m(より好ましくは20~400g/m、さらに好ましくは30~300g/m)であり、固形分換算では、好ましくは1~150g/m(より好ましくは1.5~80g/m、さらに好ましくは2~40g/m)である。このような場合、透明コーティング材が着色層凹部縁部に偏在しやすくなるとともに、十分な耐擦り傷性を得ることができる。
【0038】
透明コーティング材は、無色透明の被膜を形成するもの、あるいは、本発明の効果を阻害しない限り、多少の着色成分(着色顔料、染料、これらの分散液)等を含み、着色透明被膜を形成するものであっても良い。さらに、これらの透明コーティング材は、例えば、可塑剤、防藻剤、抗菌剤、消臭剤、吸着剤、難燃剤、増粘剤、消泡剤、造膜助剤、凍結防止剤、撥水剤、親水化剤、架橋剤、艶消し剤、体質顔料、光輝性顔料、蓄光顔料、蛍光顔料、骨材、繊維、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、触媒等を含むものであってもよい。
【0039】
本発明の透明被膜2は、着色層1の表面に設けられるものであり、上記着色層1の凹部縁部13に偏在していることを特徴とする。これにより、本発明の面材Aの凹部縁部(特に角部付近)の強度を効率的に高めることができ、擦り傷や引っ掻き傷等の欠損を抑制し、優れた耐擦り傷性を発揮することができる。透明被膜2が偏在している態様としては、例えば、透明被膜2が、
(I)凸部12(凸部平坦部12’)には設けられず、凹部縁部13のみに設けられている態様、
(II)凹部11(凹部平坦部11’)及び凸部12(凸部平坦部12’)を含む全体に設けられており、凹部縁部13で厚膜となっている態様、
(III)凹部11(凹部平坦部11’)及び凸部12(凸部平坦部12’)を含む全体に非連続(点在して)に、かつ凹部縁部13に設けられている態様、
(IV)凹部11(凹部平坦部11’)及び凸部12(凸部平坦部12’)を含む全体に非連続(点在して)に設けられており、凹部縁部13で厚膜となっている態様、
等が挙げられる。
【0040】
本発明では、上記(I)~(IV)のように、着色層1の凹部縁部13を縁取るように透明被膜2が偏在するものである。これにより、耐擦り傷性を高めることができる。なお、透明被膜2は、着色層1が複数の凹部を有する場合、全ての凹部縁部13に設けられてもよいし、一部に設けられてもよい。
【0041】
(補強材)
本発明面材は、補強材を有するものであってもよい。このような補強材は、着色層の内部及び/または裏面に設けることができる。補強材としては、例えば、織布、不織布、セラミックペーパー、合成紙、メッシュ、クロス、石膏ボード、合板、スレート板、金属板等が挙げられる。補強材は、上記2種以上の材料からなるものでもよい。このような補強材を用いることにより、面材の強度等を高めることができる。
【0042】
(製造方法)
本発明面材の製造方法は特に限定されず、種々の方法を採用することができる。一例として、型枠を用いた方法が挙げられる。この方法では、まず所望の模様に対応した凹部、及び凸部(着色層の凹部)を形成した型枠を用意する。型枠としては、特に限定されないが、例えば、シリコン樹脂、ウレタン樹脂製等の型枠、あるいは離型紙を設けた型枠等が使用できる。型枠を用いて製造する場合、型枠内面が面材の表面となるため、型枠内面の形状を調整することで、面材表面に所望の凹凸模様を付与することができる。
【0043】
上記型枠を用い、例えば、
・型枠内面に、着色層用組成物を充填し、硬化後に脱型し、着色層表面に透明コーティング材を塗付し、乾燥・硬化させる方法、
・型枠内面に、透明コーティング材を塗付し、乾燥・硬化後、着色層用組成物を充填し、硬化後に脱型する方法、
等により面材を製造することができる。
【0044】
着色層用組成物、透明コーティング材の塗付及び充填においては、公知の器具、例えば、スプレー、ローラー、鏝、刷毛、レシプロケータ、コーター等が使用できる。補強材を導入する場合は、例えば、着色層用組成物の硬化前に、着色層内部に補強材を埋め込んだり、着色層裏面に補強材を積層したりすればよい。
【0045】
具体的に、図1~3に示す面材は、例えば以下の方法によって製造することが好ましい。
(1)合成樹脂(好ましくはシリコーン樹脂と、シリコーン樹脂以外の合成樹脂)と、必要に応じ添加剤とを常法により混合・攪拌することによって、透明コーティング材を製造する。また、粒状無機質粒子と、樹脂と、必要に応じ添加剤とを常法により混合・攪拌することによって、着色層用組成物を製造する。
(2)内面に所望の凹部と凸部(着色層の凹部を形成)を有する型枠(所望の凹凸模様が転写された型枠)を用意し、型枠内面に、透明コーティング材を塗付、乾燥・硬化させる。
(3)次いで、型枠に着色層用組成物を充填し、硬化後に脱型する。
【0046】
以上の方法で得られた面材は、型枠内面の凸部が反転して着色層の凹部を形成するものである。また、着色層の表面に透明被膜を有し、その透明被膜が凹部縁部に偏在している。これによって、耐擦り傷性を発揮することができる。凹部と凸部を有する型枠に透明コーティング材を塗付した場合、上述の透明コーティング材は凸部の麓(ふもと)に偏在しやすい。特に、平坦部と凸部を有し、さらには凸部が傾きや丸味を有する形状(例えば、山なり状、放物線状、カーブ状)を有する型枠に、上述の透明コーティング材を塗付した場合、よりいっそう透明コーティング材は凸部の麓に偏在することができる。これにより、本発明の効果を十分に発揮できる面材を効率的に製造することができる。
【0047】
上記(2)において、透明コーティング材を塗付後、乾燥・硬化させることが好適である。乾燥・硬化過程において、透明コーティング材は型枠内面の凸部の麓(ふもと)によりいっそう偏在しやすい。このため透明コーティング材が未硬化の状態ではなく、硬化した状態で、上記(3)の着色層用組成物を充填した場合には、本発明の効果が十分に発揮できる。なお、上記(2)における硬化とは、指触乾燥以上(好ましくは半硬化、さらに好ましくは硬化乾燥)であればよい。さらに、本発明では、上記(2)工程の透明コーティング材に、着色顔料を添加した着色透明コーティング材を使用することにより、コントラスト、立体感(奥行き感)等を備えた美観性を付与することができる。
【0048】
本発明では、上記(1)~(3)の後、例えば(4)工程として、脱型後の面材表面(好ましくは全体に)に、さらに透明コーティング材を塗付・乾燥し透明被膜を設けることができる。これにより、上記(1)~(3)で製造された面材の透明被膜が偏在している凹部縁部に、さらに透明被膜を偏在(積層)して形成することができるため、よりいっそう耐擦り傷性を高めることができる。また、(4)工程の透明コーティング剤に、着色顔料を添加した着色透明コーティング材を使用することにより、コントラスト、立体感(奥行き感)等を備えた美観性を付与することもできる。
【0049】
上記(4)において、透明コーティング材の単位面積あたりの塗付量は、好ましくは5~500g/m(より好ましくは10~300g/m)であり、固形分換算では、好ましくは1~200g/m(より好ましくは1.5~100g/m、さらに好ましくは2~80g/m)である。上記効果を発揮することができる。
【0050】
本発明では、上記(4)において、面材表面の全体に透明被膜を設けた場合であっても、光沢ムラ等の不具合が生じにくく、落ち着きのある美観性を表出することができる。特に、本発明では、着色層が無機質粒子を少量の樹脂で固定化したものであること、透明コーティング材がシリコーン樹脂を含むこと、及び透明コーティング材の塗付け量を調整すること等から選ばれる手段の採用により、上記効果を得ることができる。この作用機構は、以下に限定されるものではないが、本発明の着色層に透明コーティング材を塗付した場合、透明コーティング材は着色層表面に浸透しつつ被膜を形成するため、着色層を形成する無機質粒子に由来する微細な凹凸の形状を保持した面材を得ることができる。これにより、上記効果を得ることができると推察される。
【0051】
上記(1)~(3)(さらに(4))より得られる面材は、60度における光沢度が8以下(より好ましくは1~7、さらに好ましくは1.5~6)であることが好ましい。光沢度がこのような範囲内であれば、落ち着きがあり、上品な美観性を付与することができる。さらに、本発明の面材は、85度における光沢度が8以下(より好ましくは1~7、さらに好ましくは1.5~6)であることが好ましい。さらに、60度と85度における光沢度の差が2以下(より好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1以下)であることが好ましい。このように60度及び85度における光沢度が上記範囲を満たすことによって、視認する角度(方向)による光沢のムラ等が抑制され、よりいっそう落ち着き感、美観性を高めることができる。なお、本発明における光沢度は、JIS K5600-4-7「鏡面光沢度」に準じて測定される値である。具体的に、光沢度計によって測定される60度または85度鏡面光沢度の値であり、面材Aの表面の任意の場所を10個所測定したその平均値である。
【0052】
本発明面材は、建築物壁面等を装飾する材料として使用できる。本発明面材を壁面等に固定する際には、例えば、接着材、接着テープ、釘、ネジ、ボルト、レール等を使用すればよい。建築物壁面等を構成する基材としては、例えば、コンクリート、モルタル、サイディングボード、押出成形板、石膏ボード、パーライト板、合板、煉瓦、プラスチック板、金属板、ガラス、磁器タイル等が挙げられる。これら基材は、その表面に、既に被膜(既存被膜、下塗被膜等)が形成されたものや、壁紙が貼り付けられたもの等であってもよい。
【実施例
【0053】
以下に実施例及び比較例を示して、本発明の特徴をより明確にする。
【0054】
(着色層用組成物の製造)
表1に示す混合比率にて、各原料を常法により均一に混合して着色層用組成物を製造した。なお、原料は以下に示すものを使用した。
・粒状着色無機質粒子[茶色系珪砂:赤褐色系珪砂:黄色系珪砂(重量比)=65:15:20)の混合物、粒径0.03~0.6mm、光透過率1%未満]
・粒状透明性無機質粒子[寒水石;粒径0.1~0.4mm、光透過率16%]
・樹脂成分[アクリル樹脂エマルション、固形分50重量%、媒体;水]
・添加剤[消泡剤、造膜助剤、水等]
【0055】
【表1】
【0056】
(透明コーティング材1~10の製造)
表2に示す混合比率にて、各原料を常法により均一に混合して透明コーティング材を製造した。なお、原料は以下に示すものを使用した。
・シリコーン樹脂エマルション[ジメチルポリシロキサンのポリオキシエチレンアルキルエーテル乳化物、固形分50重量%、媒体;水]
・アクリル樹脂エマルション[固形分50重量%、ガラス転移温度40℃、媒体;水]
・添加剤[消泡剤、造膜助剤、等]
(透明コーティング材1’の製造)
上記透明コーティング材1を20重量部、着色分散液(アクリル樹脂エマルション、顔料ペースト[オーカ顔料:アカサビ顔料:黒顔料(重量比)=25:55:20の混合液、固形分50重量%、樹脂固形分40重量%、顔料固形分10重量%、媒体;水])0.5重量部、及び水80重量部を均一に混合し、透明コーティング材1’(固形分3.2重量%)を製造した。
【0057】
【表2】
【0058】
<面材(I)の製造>
型枠として、平坦部に複数の凸部(凸部の高さ0.2~2mm、凸部の長径0.2~10mm)を有するトラバーチン模様が形成可能な長方形の型枠(30cm×60cm)を使用した。上記型枠に、透明コーティング材を塗付(単位面積当たりの重量100g/m)し、型枠の凸部に麓に偏在させた後、乾燥・硬化(23℃下、24時間)させた。
次いで、上記透明被膜の上に、着色層用組成物を塗付(単位面積当たりの重量3.3kg/m)し、硬化(65℃下、24時間)後、脱型し、面材(I)を製造した。なお、透明コーティング材と着色層組成物は、表3に示す組み合わせにて使用した(実施例1~11)。
【0059】
<面材(II)の製造>
上記と同様の型枠に、第1透明コーティング材を塗付(単位面積当たりの重量100g/m)し、型枠の凸部に麓に偏在させた後、乾燥・硬化(23℃下、24時間)させた。
次いで、上記第1透明被膜の上に、着色層用組成物を塗付(単位面積当たりの重量3.3kg/m)し、硬化(65℃下、24時間)後、脱型した。
さらに、第1透明被膜を有する面(平坦部及び凹部を有する面)の全体に、さらに第2透明コーティング材をそれぞれ塗付し(単位面積当たりの重量140g/m)、第2透明被膜層を設けた面材(II)を製造した。なお、透明コーティング材と着色層組成物は、表3に示す組み合わせにて使用した(実施例12~21)。
【0060】
<面材(III)の製造>
上記と同様の型枠に、着色層用組成物1を塗付(単位面積当たりの重量3.3kg/m)し、硬化(65℃下、24時間)後、脱型し、面材(III)を製造した(比較例1)。
【0061】
(実施例1~21、比較例1)
上記の方法で製造された各面材について、以下の試験を行った。結果は、表3に示す。
(耐擦り傷性)
得られた面材の表面をデッキ用ブラシ(樹脂製)で1000回擦った後、目視で面材表面を評価した。欠損なしのものをA、欠損ありのものをDとして4段階(A>B>C>D)で評価した。
【0062】
【表3】
【0063】
実施例1~21は、耐擦り傷性評価において良好な面材であった。一方、比較例1では、凹部縁部の周辺の欠損がみられた。
【0064】
さらに、得られた面材の外観について、以下の評価を行った。結果は、表3に示す。
(光沢度)
JIS K5600-4-7「鏡面光沢度」に準じて面材Aの表面の任意の場所を10個所測定(測定角度:60度、85度)し、その平均値を算出した。また、測定した10個所のうち、光沢度の最小値と最大値の差(絶対値)を算出し、光沢(艶)ムラを4段階(A>B>C>D)で評価(A:1以下、B:1超2以下、C:2超3以下、D:3超)。
【0065】
実施例1~21で得られた面材は、いずれも光沢が抑えられ、落ち着き感のあるものであった。また、実施例20、21では、着色層の表面の凹部縁部に、着色透明被膜が偏在し、立体感等が付与された美観性に優れる面材であった。


図1
図2
図3
図4