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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】設備棚の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/16 20060101AFI20240219BHJP
【FI】
E04G21/16
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020053265
(22)【出願日】2020-03-24
(65)【公開番号】P2021152304
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(73)【特許権者】
【識別番号】000200367
【氏名又は名称】川田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水野 寛之
(72)【発明者】
【氏名】結城 勇
(72)【発明者】
【氏名】石川 浩司
(72)【発明者】
【氏名】則武 亮彦
(72)【発明者】
【氏名】青山 将也
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 康如
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 祐
(72)【発明者】
【氏名】藤原 聡
(72)【発明者】
【氏名】中谷 俊明
(72)【発明者】
【氏名】三尾 修一
【審査官】櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-057954(JP,A)
【文献】特開平04-237761(JP,A)
【文献】特開平06-323503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G21/14-21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊り上げられた設備棚の上段層の下に、前記設備棚の下段層であって、下段棚部材と、前記下段棚部材を吊り下げ支持する下段吊材と、を有する前記下段層を配置する下段層配置工程と、
前記下段層の上に前記上段層を吊り降ろし、前記下段吊材と前記上段層とを連結する上下段層連結工程と、
連結された前記下段層及び前記上段層を吊り上げ、支持体に取り付ける設備棚取付工程と、
を備える設備棚の施工方法。
【請求項2】
前記下段層配置工程において、前記下段層に設備を設置し、
前記上下段層連結工程において、前記設備の上に前記上段層を吊り降ろし、前記下段吊材と前記上段層とを連結する、
請求項1に記載の設備棚の施工方法。
【請求項3】
仮設支持部材によって前記上段層及び前記下段層の少なくとも一方を支持し、前記仮設支持部材に取り付けられた吊り材によって、前記上段層及び前記下段層の少なくとも一方を吊り上げ又は吊り降ろす、
請求項1又は請求項2に記載の設備棚の施工方法。
【請求項4】
前記支持体の下方で地組された前記上段層を吊り上げる上段層吊上げ工程を備え、
前記下段層配置工程において、前記上段層吊上げ工程で吊り上げられた前記上段層の下で前記下段層を地組する、
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の設備棚の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設備棚の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高所に設置される鉄骨構造枠の下面に、配管を取り付ける施工方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平4-237761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、複数層からなる設備棚を高所に設置する場合、例えば、床上で設備棚の下段層及び上段層を順に建て方した後、設備棚を高所に吊り上げることが考えられる。
【0005】
しかしながら、この場合、下段層の上に上段層を建て方するため、下段層に求められる建て方精度が高くなり、下段層の施工に手間がかかる可能性がある。
【0006】
本発明は、上記の事実を考慮し、下段層及び上段層を有する設備棚において、下段層の施工性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1態様に係る設備棚の施工方法は、吊り上げられた設備棚の上段層の下に、前記設備棚の下段層を配置する下段層配置工程と、前記下段層の上に前記上段層を吊り降ろし、前記下段層と前記上段層とを連結する上下段層連結工程と、連結された前記下段層及び前記上段層を吊り上げ、支持体に取り付ける設備棚取付工程と、を備える。
【0008】
第1態様に係る設備棚の施工方法によれば、下段層配置工程において、吊り上げられた設備棚の上段層の下に、設備棚の下段層を配置する。次に、上下段層連結工程において、下段層の上に上段層を吊り降ろし、下段層と上段層とを連結する。次に、設備棚取付工程において、連結された下段層及び上段層を吊り上げ、支持体に取り付ける。
【0009】
このように本発明では、上下段層連結工程において、下段層の上に上段層を吊り降ろし、下段層と上段層とを連結する。そのため、本発明では、下段層の上に上段層を建て方する場合と比較して、下段層に求められる建て方精度が緩和される。したがって、下段層の施工性が向上する。
【0010】
第2態様に係る設備棚の施工方法は、第1態様に係る設備棚の施工方法において、前記下段層配置工程において、前記下段層に設備を設置し、前記上下段層連結工程において、前記設備の上に前記上段層を吊り降ろし、前記下段層と前記上段層とを連結する。
【0011】
第2態様に係る設備棚の施工方法によれば、下段層配置工程において、下段層に設備を設置し、上下段層連結工程において、設備の上に上段層を吊り降ろし、下段層と上段層とを連結する。
【0012】
これにより、本発明では、下段層に上段層を連結した後に、下段層の上に設備を設置する場合と比較して、下段層の上に設備を容易に設置することができる。
【0013】
第3態様に係る設備棚の施工方法は、第1態様又は第2態様に係る設備棚の施工方法において、仮設支持部材によって前記上段層及び前記下段層の少なくとも一方を支持し、前記仮設支持部材に取り付けられた吊り材によって、前記上段層及び前記下段層の少なくとも一方を吊り上げ又は吊り降ろす。
【0014】
第3態様に係る設備棚の施工方法によれば、仮設支持部材によって上段層及び下段層の少なくとも一方を支持し、この仮設支持部材に取り付けられた吊り材によって、上段層及び下段層の少なくとも一方を吊り上げ又は吊り降ろす。
【0015】
ここで、例えば、上段層又は下段層の剛性が小さい場合、上段層又は下段層に吊り材を取り付けて吊り上げると、上段層又は下段層が自重により変形する可能性がある。また、上段層又は下段層の自重による変形を抑制するために、上段層又は下段層に取り付ける吊り材の数を増やすと、吊り材の取り付け作業に手間がかかる。
【0016】
これに対して本発明では、前述したように、仮設支持部材によって上段層及び下段層の少なくとも一方を支持し、この仮設支持部材に取り付けられた吊り材によって上段層及び下段層の少なくとも一方を吊り上げ又は吊り降ろす。そのため、仮設支持部材の剛性を高めることにより、吊り材を増やさずに、上段層又は下段層の変形を抑制することができる。
【0017】
第4態様に係る設備棚の施工方法は、第1態様第3態様の何れか1つに係る設備棚の施工方法において、前記支持体の下方で地組された前記上段層を吊り上げる上段層吊上げ工程を備え、前記下段層配置工程において、前記上段層吊上げ工程で吊り上げられた前記上段層の下で前記下段層を地組する。
【0018】
第4態様に係る設備棚の施工方法によれば、上段層吊上げ工程において、支持体の下方で地組された上段層を吊り上げる。次に、下段層配置工程において、上段層吊上げ工程で吊り上げられた上段層の下で下段層を地組する。これにより、上段層の下に下段層が配置される。
【0019】
このように、吊り上げられた上段層の下で下段層を地組することにより、例えば、施工スペースが狭い場合であっても、上段層及び下段層を地組することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明に係る設備棚の施工方法によれば、下段層及び上段層を有する設備棚において、下段層の施工性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】一実施形態に係る設備棚が設置された構造物を示す立面図である。
図2図1の2-2線断面図である。
図3図2の3-3線断面図である。
図4図1に示される設備棚の施工過程を示す立面図である。
図5図1に示される設備棚の施工過程を示す立面図である。
図6図1に示される設備棚の施工過程を示す立面図である。
図7図1に示される設備棚の施工過程を示す図2に対応する拡大断面図である。
図8図1に示される設備棚の施工過程を示す立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(設備棚)
先ず、一実施形態に係る設備棚の施工方法によって施工される設備棚の構成について説明する。
【0023】
図1には、本実施形態に係る設備棚20を備える構造物10が示されている。構造物10は、例えば、劇場又はコンサートホール等の大空間構造物とされる。この構造物10の内部には、図示しない舞台等が設置されるホール(広間)18が形成されている。
【0024】
構造物10は、柱12と、柱12に架設される天井梁(屋根梁)14とを有している。天井梁14は、上弦材14A、下弦材14B、束材14C、及び斜材14Dを有するトラス構造(トラス梁)とされている。この天井梁14の下に、設備棚20が設置されている。なお、天井梁14は、支持体の一例である。
【0025】
(設備棚)
設備棚20は、天井梁14から吊り下げられた吊り棚(付帯鉄骨)とされている。また、設備棚20は、ホール18の上方に配置されている。この設備棚20は、上下2層構造とされており、下段層30及び上段層50を有している。
【0026】
なお、本実施形態では、下段層30及び上段層50が連結梁22を介して構造物10の柱12に連結されているが、下段層30及び上段層50は、柱12に連結しなくても良い。
【0027】
下段層30には、例えば、舞台用の設備24(図2参照)が設置される。一方、上段層50には、図示しない空調ダクト等の設備が設置される。また、下段層30及び上段層50は、例えば、設備24等のメンテナンススペースとしても利用される。なお、図1等では、設備24の図示が省略されている。
【0028】
(下段層)
下段層30は、平面視にて格子状の下段棚部材32と、下段棚部材32を吊り下げ支持する複数の下段吊材40とを有している。図2に示されるように、下段棚部材32は、平面視にて格子状に接合された複数の梁(鉄骨梁)32Aを有している。複数の梁32Aは、例えば、H形鋼等の鉄骨部材によって形成されている。
【0029】
下段棚部材32の上には、複数の床材34が敷設されている。複数の床材34は、例えば、C形鋼によって形成されており、すのこ状に間隔を空けて配置されている。これらの床材34上に、例えば、舞台用の設備24が設置される。なお、床材34は、省略可能である。
【0030】
図3に示されるように、下段吊材40は、一対の柱状部材42を有している。一対の柱状部材42は、C形鋼によって形成されており、背合わせ状態で配置されている。この下段吊材40の下端部は、下段棚部材32に連結されている。なお、柱状部材42は、C形鋼に限らず、例えば、H形鋼等によって形成されても良い。
【0031】
より具体的には、下段棚部材32には、一対の柱状部材42の下端部の間に配置される連結ブラケット36が設けられている。この一対の柱状部材42の下端部及び連結ブラケット36をボルト44及びナットによって共締めすることにより、下段吊材40の下端部が下段棚部材32に連結されている。
【0032】
下段吊材40の上端部は、後述する上段棚部材52に連結されている。より具体的には、上段棚部材52には、一対の柱状部材42の上端部の間に配置される連結ブラケット54が設けられている。この一対の柱状部材42の上端部及び連結ブラケット54をボルト44及びナットによって共締めすることにより、下段吊材40の上端部が上段棚部材52に連結されている。
【0033】
(上段層)
上段層50は、平面視にて格子状の上段棚部材52と、上段棚部材52を吊り下げ支持する複数の上段吊材60とを有している。上段棚部材52は、平面視にて格子状に接合された複数の梁(鉄骨梁)52Aを有している。複数の梁52Aは、例えば、H形鋼等の鉄骨部材によって形成されている。この上段棚部材52の上には、例えば、図示しない空調ダクト等が設置される。
【0034】
なお、本実施形態では、上段棚部材52の上に床板が設けられていないが、上段棚部材52の上に床材が設けられても良い。
【0035】
複数の上段吊材60は、一対の柱状部材62を有している。一対の柱状部材62は、C形鋼によって形成されており、背合わせ状態で配置されている。この上段吊材60の下端部は、上段棚部材52に連結されている。なお、柱状部材62は、C形鋼に限らず、例えば、H形鋼等によって形成されても良い。
【0036】
より具体的には、上段棚部材52には、一対の柱状部材62の下端部の間に配置される連結ブラケット56が設けられている。この一対の柱状部材62の下端部及び連結ブラケット56をボルト64及びナットによって共締めすることにより、上段吊材60の下端部が上段棚部材52に連結されている。
【0037】
上段吊材60の上端部は、天井梁14に連結されている。より具体的には、天井梁14の下弦材14Bには、一対の柱状部材62の上端部の間に配置される連結ブラケット16が設けられている。この一対の柱状部材62の上端部及び連結ブラケット16をボルト64及びナットによって共締めすることにより、上段吊材60の上端部が下弦材14Bに連結されている。
【0038】
(設備棚の施工方法)
次に、設備棚の施工方法の一例について説明する。
【0039】
(上段層配置工程)
先ず、図4に示されるように、上段層配置工程において、設備棚20の設置場所の下方の施工スペースで、設備棚20の上段層50を組み立てる。具体的には、設備棚20が取り付けられる天井梁14の取付部の下方の床19に設置した架台70上で、上段層50の上段棚部材52及び複数の上段吊材60を地組する。この際、上段棚部材52の下に、H形鋼等によって形成された複数の仮設支持部材72(図7参照)を設置する。
【0040】
なお、架台70は、必要に応じて設ければ良く、適宜省略可能である。また、床19上に仮設された足場又は作業床上で、上段層50を組み立てることも可能である。
【0041】
(上段層吊上げ工程)
次に、上段層吊上げ工程において、仮設支持部材72の上に上段棚部材52を設置する。次に、天井梁14に複数の吊上げ装置80を設置し、吊上げ装置80の吊り材82を仮設支持部材72に取り付けられる。次に、図5に示されるように、吊上げ装置80によって仮設支持部材72及び上段層50を所定高さに吊り上げる。
【0042】
なお、上段層50の所定高さは、吊り上げられた上段層50の下方に、下段層30の施工スペース(設置スペース)を確保可能な高さとされる。また、吊上げ装置80は、例えば、ジャッキ式とされる。
【0043】
(下段層配置工程)
次に、下段層配置工程において、吊り上げられた上段層50の下で、下段層30を地組する。具体的には、吊り上げられた上段層50の下方の床19上で、下段層30の下段棚部材32及び複数の下段吊材40を地組する。この際、図2に示されるように、下段棚部材32の連結ブラケット36と下段吊材40の一対の柱状部材42の下端部とを連結するボルト44及びナットは仮留めとし、下段吊材40と下段棚部材32とを相対変位可能に連結する。また、地組した下段棚部材32の上に、設備24を設置する。
【0044】
(上下段層連結工程)
次に、図6に示されるように、上下段層連結工程において、複数の吊上げ装置80によって上段層50を下段層30に既に設置された設備24(図7参照)上方に吊り降ろし、下段層30と上段層50とを連結する。
【0045】
具体的には、図7に示されるように、複数の下段吊材40に対して上段棚部材52を位置決めし、下段吊材40の一対の柱状部材42の上端部の間に、上段棚部材52の連結ブラケット54を挿入する。そして、一対の柱状部材42の上端部、及び連結ブラケット54をボルト44(図2参照)及びナットによって共締めする。この際、ボルト44及びナットは仮留めとし、上段棚部材52と下段吊材40とを相対変位可能に連結する。
【0046】
次に、吊上げ装置80(図6参照)によって上段層50を、下段層30が地切りされるまで吊り上げる。ここで、上段層50を吊り上げると、上段棚部材52から複数の下段吊材40が略垂直に吊り下げられるとともに、複数の下段吊材40の下端部に連結された下段棚部材32が略水平姿勢となる。つまり、上段層50に対して、下段吊材40及び下段棚部材32が位置決めされる。
【0047】
この状態で、下段吊材40の上端部のボルト44及びナットを本締めするとともに、下段吊材40の下端部のボルト44及びナットを本締めし、上段層50と下段層30とを相対変位不能に連結(固定)する。これにより、下段層30及び上段層50の建て方精度が向上する。
【0048】
(設備棚取付工程)
次に、図8に示されるように、設備棚取付工程において、複数の吊上げ装置80によって、下段層30及び上段層50を天井梁14の直下まで吊り上げ、天井梁14の下弦材14Bに対して複数の上段吊材60を位置決めする。そして、図2及び図3に示されるように、下弦材14Bに対して複数の上段吊材60をボルト等によって接合する。
【0049】
次に、図1に示されるように、下段層30及び上段層50と柱12とを連結梁22を介して連結する。その後、仮設支持部材72及び吊上げ装置80を撤去する。これにより、設備棚20が施工される。
【0050】
(効果)
次に、本実施形態の効果について説明する。
【0051】
本実施形態に係る設備棚の施工方法によれば、上段層吊上げ工程において、設備棚20の設置場所の下方の施工スペースで地組された上段層50を吊り上げる。次に、下段層配置工程において、吊り上げられた上段層50の下で下段層30を地組する。
【0052】
このように吊り上げられた上段層50の下で下段層30を地組することにより、例えば、施工スペースが狭い場合であっても、上段層50及び下段層30を地組することができる。
【0053】
また、本実施形態では、上下段層連結工程において、下段層30の上に上段層50を吊り降ろし、下段層30と上段層50とを連結する。そのため、本実施形態では、下段層30の上に上段層50を建て方する場合と比較して、下段層30に求められる建て方精度が緩和される。したがって、下段層30の施工性が向上する。
【0054】
さらに、本実施形態では、下段層配置工程において、下段層30に設備24を設置し、上下段層連結工程において、既に設置された設備24の上方に上段層50を吊り降ろし、下段層30と上段層50とを連結する。
【0055】
これにより、本実施形態では、下段層30に上段層50を連結した後に、下段層30の上に設備24を設置する場合と比較して、下段層30の上に設備24を容易に設置することができる。
【0056】
また、前述したように、本実施形態では、上下段層連結工程において、上段層50と下段層30とを相対変位可能に連結(仮留め)した状態で、上段層50及び下段層30を吊り上げ、上段層50に対して下段層30を位置決めする。その後、上段層50と下段層30と相対変位不能に連結(固定)する。これにより、下段層30と上段層50とを容易に位置決めすることができる。
【0057】
ここで、例えば、上段層50の剛性が小さい場合、上段層50に吊り材82を取り付けて吊り上げると、上段層50が自重により変形する可能性がある。また、上段層50の自重による変形を抑制するために、上段層50に取り付ける吊り材82の数を増やすと、吊り材82の取り付け作業に手間がかかる。
【0058】
これに対して本実施形態では、前述したように、仮設支持部材72によって上段層50を支持し、この仮設支持部材72に取り付けられた吊り材82によって上段層50を吊り上げ又は吊り降ろす。そのため、仮設支持部材72の剛性を高めることにより、吊り材82を増やさずに、上段層50の変形を抑制することができる。
【0059】
(変形例)
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0060】
上記実施形態では、下段層配置工程において、下段棚部材32の上に設備24を設置した。しかし、下段層配置工程において、下段棚部材32の上に設備24を設置せず、例えば、下段層30と上段層50とを連結した後に、下段棚部材32の上に設備24を設置しても良い。また、天井梁14に設備棚20を取り付けた後に、下段棚部材32の上に設備24を設置しても良い。
【0061】
また、上記実施形態では、上段層配置工程において、設備棚20の設置場所の下方で、上段層50を地組した。しかし、例えば、設備棚20の設置場所の下方以外の場所で組み立てられた上段層50を、設備棚20の設置場所の下方に移動した後に配置しても良い。
【0062】
また、上記実施形態では、下段層配置工程において、吊り上げられた上段層50の下で、下段層30を地組した。しかし、例えば、吊り上げられた上段層50の下以外の場所で組み立てられた下段層30を、吊り上げられた上段層50の下に移動した後に配置しても良い。
【0063】
また、上記実施形態では、仮設支持部材72によって上段層50を支持し、仮設支持部材72に取り付けられた吊り材82によって、上段層50を吊り上げ、又は吊り降ろした。しかし、仮設支持部材72によって上段層50及び下段層30の少なくとも一方を支持し、仮設支持部材72に取り付けられた吊り材82によって、上段層50及び下段層30の少なくとも一方を吊り上げ、又は吊り降ろしても良い。
【0064】
また、仮設支持部材72を省略し、上段層50又は下段層30に直接、取り付けられた吊り材82によって、上段層50又は下段層30を吊り上げ、又は吊り降ろしても良い。
【0065】
また、上記実施形態の設備棚20は、上段層50及び下段層30の上下2層構造とされている。しかし、設備棚は、例えば、上段層、中段層、及び下段層の上下3層構造とされても良い。この場合、例えば、吊り上げられた上段層の下で中段層を建て方した後に、上段層と中段層とを連結する。次に、連結された上段層及び中段層の下で下段層を建て方した後に、中段層と下段層とを連結する。次に、連結された上段層、中段層、及び下段層を吊り上げ、支持体に取り付ける。これにより、3層構造の設備棚を施工することができる。
【0066】
また、上段層50及び下段層30の構成は、適宜変更可能である。例えば、下段吊材40は、柱隣り合う下段吊材40を梁やブレース等で補強しても良い。
【0067】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0068】
14 天井梁(支持体)
20 設備棚
24 設備
30 下段層
50 上段層
72 仮設支持部材
82 吊り材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8