(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】加湿および凝縮液管理を行うための微細構造を備える医療用部品
(51)【国際特許分類】
A61M 16/16 20060101AFI20240219BHJP
【FI】
A61M16/16 B
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020061177
(22)【出願日】2020-03-30
(62)【分割の表示】P 2018053415の分割
【原出願日】2013-06-25
【審査請求日】2020-04-17
【審判番号】
【審判請求日】2022-05-18
(32)【優先日】2012-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2013-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504298349
【氏名又は名称】フィッシャー アンド ペイケル ヘルスケア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】ライス、アディーブ、ハーメズ
【合議体】
【審判長】佐々木 正章
【審判官】村上 哲
【審判官】栗山 卓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-119239(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0044810(US,A1)
【文献】特開平5-200329(JP,A)
【文献】特開2005-36451(JP,A)
【文献】国際公開第2011/077250(WO,A1)
【文献】特開2007-198685(JP,A)
【文献】登録実用新案第3157009(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスクアセンブリを備えた呼吸療法用の患者インターフェースであって、
マスク壁によって形成された呼吸チャンバと、
患者の顔に接触するように構成されたマスクシールと、
を備え、
前記マスク壁は内表面を備え、前記マスク壁の前記内表面は、その少なくとも一部に微細構造を備えており、
前記微細構造は、前記マスク壁の前記内表面に沿って延びる連続的な複数のマイクロチャネルを備えており、前記複数のマイクロチャネルは、前記複数のマイクロチャネルの長さの少なくとも一部分に沿って表面力により凝縮水を広げて、前記内表面上にあ
る凝縮水からの液滴の形成を防止するかあるいは凝縮水から形成される液滴を減らすように構成されかつ配置されており、前記複数のマイクロチャネルの深さおよび幅は1~1000μmの範囲内であり、
前記複数のマイクロチャネルは前記マスクアセンブリの縦軸に垂直に延びており、前記縦軸に関して前記マスク壁の前記内表面は対称である、
患者インターフェース。
【請求項2】
接続ポートアセンブリをさらに備えた、請求項1に記載の患者インターフェース。
【請求項3】
前記マスク壁が少なくとも1つの加熱フィラメントを備える、請求項2に記載の患者インターフェース。
【請求項4】
前記マスクアセンブリは、表面エネルギーを高める添加材料をさらに含む、請求項1または2に記載の患者インターフェース。
【請求項5】
前記添加材料は、前記マスク壁のポリマーマトリックスに添加されるか、または前記マスク壁の前記内表面の少なくとも一部の表面処理として付加される、請求項4に記載の患者インターフェース。
【請求項6】
前記マスクアセンブリは、前記微細構造が施された前記内表面と連通するドレーンをさらに備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の患者インターフェース。
【請求項7】
前記マスク壁の前記内表面が、前記縦軸を挟んで第1の側にある第1の部分と第2の側にある第2の部分とを含み、前記マイクロチャネルは前記第1の部分および前記第2の部分に配置されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の患者インターフェース。
【請求項8】
前記第1の部分および前記第2の部分が、前記縦軸に関して互いに鏡像パターンを形成する、請求項7に記載の患者インターフェース。
【請求項9】
前記微細構造が施された前記内表面は金属フィルムから構成される、請求項1から8のいずれか一項に記載の患者インターフェース。
【請求項10】
前記金属フィルムには、型押しにより微細構造が施された内表面が形成されている、請求項9に記載の患者インターフェース。
【請求項11】
前記微細構造が施された前記内表面が、π/ 2ラジアン未満の平衡接触角を有する基板を備える、請求項1から9のいずれか一項に記載の患者インターフェース。
【請求項12】
前記マイクロチャネルが、距離とともに増加するアスペクト比を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の患者インターフェース。
【請求項13】
前記アスペクト比は、深さ対幅の比である、請求項12に記載の患者インターフェース。
【請求項14】
前記マイクロチャネルが、正弦曲線形状のチャネル、V字形状のチャネル、鋭いトレンチのチャネル、四角形のチャネル、及び楔形のチャネルのうちの少なくとも一つである、請求項1から13のいずれか一項に記載の患者インターフェース。
【請求項15】
前記微細構造が施された前記内表面は、熱源と連通するように構成されている、請求項1から14のいずれか一項に記載の患者インターフェース。
【請求項16】
前記熱源は、
前記患者インターフェースの近くにまたは前記患者インターフェースに接続された温度プローブに関連付けられるとともに、前記患者インターフェースの温度を調節するために用いられる加熱要素、及び/又は、
前記患者インターフェースに接続された加熱された呼吸チューブ、及び/又は、
呼吸チューブを介して前記患者インターフェースに接続された加熱された加湿器を含む、請求項15に記載の患者インターフェース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2013年3月14日出願の米国仮特許出願第61/785,895号明細書、および2012年6月25日出願の同第61/664,069号明細書の優先権を主張し、それら全体を参照することにより本書に援用する。
【0002】
本開示は、概して、医学的用途に好適な部品に関し、より具体的には、患者に加湿ガスをもたらすおよび/または患者から加湿ガスを除去するのに好適な部品、例えば気道陽圧(PAP)、レスピレーター、麻酔法、人工呼吸器、およびガス注入システムに関する。
【背景技術】
【0003】
医療用回路では、様々な部品が患者に対して加湿ガスを自然にまたは人為的に輸送する。例えば、PAPや支援型呼吸回路などの一部の呼吸回路では、患者が吸入したガスは、加熱-加湿器から吸息チューブを通って患者インターフェース、例えばマスクまで送達される。別の例として、ガス注入回路においては、チューブが加湿ガス(通常CO2)を腹腔まで送達できる。これは、患者の内部器官の「乾燥」を防止するのを助けることができ、かつ手術からの回復に必要な時間を削減できる。
【0004】
これらの医学的応用では、ガスは、好ましくは、飽和レベルに近い湿度を有しかつ体温付近の温度(通常33℃~37℃の温度)の条件において送達される。高湿度のガスが冷えるときに、部品の内面に凝縮または「レインアウト(rain-out)」が生じ得る。医療用回路における加湿および凝縮液管理が改善された部品が必要とされている。それゆえ、本明細書で説明するいくつかの部品および方法の目的は、従来技術のシステムの問題の1つ以上を改善することであるか、または少なくとも、一般の人に有用な選択肢を提供することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
加湿および/または凝縮液管理を行うための微細構造すなわちミクロ構造を備える医療用部品、およびそのような部品の製造方法が、様々な実施形態において開示されている。
【0006】
少なくとも1つの実施形態において、医療用回路において使用するための部品は、使用時に液体と接触する第1の領域;第1の領域とは別個である第2の領域;および第1の領域および第2の領域と連通して、使用時に、第1の領域から第2の領域へ液体をウィッキングするすなわち吸い上げるように構成された微細構造面を含み、微細構造面は、約π/2ラジアン未満の平衡接触角を有する基板を含む。
【0007】
様々な実施形態においては、上述の部品は、以下の特性の1つ、いくつか、または全て、ならびに本開示の他の箇所で説明する特性を有する。
【0008】
第2の領域は、使用時、より高速の空気に曝され、および第1の領域は、使用時、より低速の空気に曝され得る。第2の領域は、熱源と連通するように構成し得る。微細構造面は、熱源と連通するように構成し得る。微細構造面は、ほぼ平行なマイクロチャネルを含み得る。マイクロチャネルは、全体的に四角形状とし得る。マイクロチャネルに関する臨界接触角θは、式:
【数1】
(式中、Xは、四角形状のチャネルに関する高さ-対-幅のアスペクト比を表す)
を満たし得る。マイクロチャネルは全体的にV字形状とし得る。マイクロチャネルの臨界接触角θは、式:
【数2】
(式中、βは、V字形状の角度を表す)
を満たし得る。微細構造面はマイクロピラーを含み得る。マイクロピラーは、実質的に同じ断面寸法を有し得る。マイクロピラーの少なくともいくつかは、他のマイクロピラーとは異なる断面寸法を有し得る。
【0009】
様々な実施形態においては、上述の部品は、マスクに組み込まれ得る。マスクは、さらに、第2の領域と連通するドレーンを含み得る。
【0010】
様々な実施形態においては、上述の部品は導管に組み込まれ得る。部品は、導管の内壁の少なくとも一部分を形成し得る。部品は、導管の内側ルーメンへの挿入体とし得る。導管の壁は、熱源と連通するように構成し得る。
【0011】
少なくとも1つの実施形態において、医療用回路において使用するための部品は、液体を保持するように構成された溜め部分;溜め部分に隣接し、液体の蒸発を促すように構成された蒸発器部分;および溜め部分から蒸発器部分へ液体を輸送するように構成された微細構造面を含む。
【0012】
様々な実施形態においては、上述の部品は、以下の特性の1つ、いくつか、または全て、ならびに本開示の他の箇所で説明する特性を有する。
【0013】
蒸発器部分は加熱可能とし得る。微細構造面は、溜め部分付近で低くかつ蒸発器部分付近で高いアスペクト比を有するマイクロチャネルを含み、アスペクト比は、勾配に沿って増加し得る。微細構造面は、溜め部分付近でほぼ水平に延在する第1のマイクロチャネルと、蒸発器部分付近でほぼ垂直に延在する第2のマイクロチャネルとを含むことができ、第1のマイクロチャネルは、第2のマイクロチャネルへ液体を輸送するように構成されている。
【0014】
様々な実施形態においては、上述の部品は、マスクに組み込まれ得る。
【0015】
様々な実施形態においては、上述の部品は、加湿器ユニットと共に使用するのに好適なチャンバに組み込まれ得る。部品は、チャンバの内壁の少なくとも一部分を形成し得る。
チャンバは、加湿器ユニットのヒーターベースによって加熱されるように構成された壁を含み得る。チャンバは、加湿器ユニットとは別個の加熱部材によって加熱されるように構成された壁を含み得る。チャンバは、さらに、少なくとも蒸発器部分付近のチャンバの壁の上にまたはその壁を覆って配置された絶縁材を含み得る。
【0016】
様々な実施形態においては、上述の部品は導管に組み込まれ得る。微細構造面は、導管の内壁の少なくとも一部分を形成し得る。微細構造面は、導管の内側ルーメン内の挿入体に配置され得る。導管の壁は、熱源と連通するように構成されている。
【0017】
少なくとも1つの実施形態において、加湿ガスと共に使用するための医療用回路の部品は、内部に空間を画成する壁であって、壁の少なくとも一部が、平衡接触角が約π/2ラジアン未満の外側面を有する基板内およびその基板上に複数のマイクロチャネルを含む表面を備える壁を含み、マイクロチャネルが、使用時、液体の水を保持する第1の領域から、液体を、患者までまたは患者から流れる空気に曝される第2の領域までウィッキングするように、構成されており、およびマイクロチャネルは、側面部分、および基板の外表面よりも低い底部分を有する第1のマイクロチャネルと、基板の外表面よりも高い側面部分を有する第2のマイクロチャネルとを含み、第2のマイクロチャネルの側面部分は、第1のマイクロチャネルの周りまたはそれらの間の隆起によって形成されている。
【0018】
様々な実施形態においては、上述の医療用回路は、以下の特性の1つ、いくつか、または全て、ならびに本開示の他の箇所で説明する特性を有する。
【0019】
第1のマイクロチャネルは、全体的に四角形状とし得る。第1のマイクロチャネルに関する臨界接触角θは、式:
【数3】
(式中、Xは、四角形状のチャネルに関する高さ-対-幅のアスペクト比を表す)
を満たし得る。第1のマイクロチャネルは、全体的にV字形状とし得る。第1のマイクロチャネルの臨界接触角θは、式:
【数4】
(式中、βはV字形状の角度を表す)
を満たし得る。
【0020】
一部の実施形態では、医療用回路において使用するための部品は、ほぼ水平の平面的な微細構造面を含み、その上に液体を分散させるように構成されている。微細構造面は、流れるガスの経路に配置され、かつ液体ディスペンサーは、微細構造面上に液体を小出しにするように構成し得る。
【0021】
様々な実施形態においては、微細構造面は、表面不規則性を含む。
【0022】
様々な実施形態においては、表面不規則性は、顆粒、隆起、溝、チャネル、および粒子からなる群の少なくとも1つを含む。
【0023】
様々な実施形態においては、液体ディスペンサーは、液体を微細構造面上に一度に1滴で小出しするように構成された少なくとも1つのドロッパーを含む。
【0024】
様々な実施形態においては、液体ディスペンサーは、微細構造面の上側に、ある距離で位置決めされた実質的に平らなプレートを含み、プレートは複数の孔を含み、それらの孔を通って、液体は、下にある微細構造面に落ちることができる。
【0025】
これらのおよび他の実施形態を、下記で詳細に説明する。
【0026】
開示のシステムおよび方法の様々な特徴を実現する例示的な実施形態を、以下、図面を参照して説明する。図面および関連の説明は、実施形態を示すために提供し、および本開示の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、1つ以上の医療用チューブ、加湿チャンバ、および患者インターフェースを組み込む医療用回路の概略図を示す。
【
図3A-3B】
図3は、少なくとも1つの実施形態による例示的なチューブの内側部品の第1および第2の拡大縦断面を示す。
【
図5A】
図5Aは、チューブの内側部品の斜視的な前面図を示す。
【
図6】
図6は、チューブ内の気流速度および温度のプロファイルの概略図を示す。
【
図7】
図7は、例示的な加湿チャンバの斜視図を示す。
【
図8A】
図8Aは、微細構造の第1の構成を含む、例示的な加湿チャンバの斜視図を示す。
【
図8B-8C】
図8は、
図8Aの微細構造の第1および第2の拡大部分の前面の平面図を示す。
【
図9A】
図9Aは、微細構造の第2の構成を含む、例示的な加湿チャンバの斜視図を示す。
【
図9B-9C】
図9は、
図9Aの微細構造の第1および第2の拡大部分の前面の平面図を示す。
【
図10B】
図10Bは、伝導性フィラメントを組み込む例示的な患者インターフェースの前面の平面図を示す。
【
図11A】
図11Aは、微細構造を含む例示的な患者インターフェースの後面の平面図を示す。
【
図11D】
図11Dは、微細構造を含む例示的な患者インターフェースの後面の平面図を示す。
【
図12A】
図12Aは、微細構造を組み込まないインターフェースの表面上での水滴形成の概略図を示す。
【
図12B】
図12Bは、微細構造を組み込むインターフェースの表面上での拡水の概略図を示す。
【
図13】
図13は、微細構造からの蒸発に対する熱の追加の効果を概略的に示す。
【
図14】
図14は、ダイヘッドへのホッパー供給式のスクリューフィーダを含み、かつ波形で終端する医療用チューブの製造方法の概略図を示す。
【
図15】
図15は、医療用チューブの渦巻き形成の製造方法の概略図を示す。
【
図16】
図16は、連続的なマイクロチャネルにおけるウィッキングの例示的な条件のグラフを示す。
【
図18A-18L】
図18は、連続的な微細構造および個別の微細構造の画像を示す。
【
図19】
図19は、微細構造を組み込む入口チューブを有する加湿チャンバの斜視図を示す。
【
図20】粗い面を使用して蒸発を高め得る実施形態を示す。
【
図21】粗い面を使用して蒸発を高め得る別の実施形態を示す。
【
図22】表面上の一部の微細構造の不規則性を示す。
【
図23】蒸発スタックまたはタワーを含む加湿チャンバの実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図面全体を通して、参照する(または同様の)要素間の一致を示すために、参照符号が再使用されることが多い。さらに、各参照符号の初めの桁は、要素が初めて出現する図番を示す。
【0029】
以下の詳細な説明は、新規の医療用回路の部品、およびそのような部品、例えばガス注入、麻酔、または呼吸回路の部品などの形成方法を開示する。上記で説明したように、これらの部品は、加湿および/または凝縮液管理用の微細構造を含む。開示の微細構造は、様々な医療用回路における、チューブ(例えば、吸息呼吸(inspiratory breathing)チューブおよび呼息呼吸(expiratory breathing)チューブ、および呼吸回路の様々な要素、例えば人工呼吸器、加湿器、フィルタ、水トラップ(water trap)、サンプルライン、コネクタ、ガス分析器などの間の他のチューブ)、Y字コネクタ、カテーテルマウント、加湿器、および患者インターフェース(例えば、鼻と顔を覆うマスク、鼻マスク、カニューレ、鼻枕など)、フロート、プローブ、およびセンサーを含む、様々な部品に組み込まれ得る。医療用回路は広義語であり、およびその元のおよび通常の意味が当業者に与えられる(すなわち、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されない)。それゆえ、医療用回路は、開回路、例えば人工呼吸器/ブロワーと患者インターフェースとの間に単一の吸息呼吸チューブを含み得るいくつかのCPAPシステム、ならびに閉回路を含むことを意味する。
【0030】
本明細書で説明した装置および方法を実装するためのいくつかの説明に役立つ実施形態に関する詳細は、下記で図面を参照して説明する。本発明は、これらの説明の実施形態に限定されない。
【0031】
医療用回路
本開示をより詳細に理解するために、初めに、少なくとも1つの実施形態による医療用回路を示す
図1を参照して説明する。より具体的には、
図1は、例示的な呼吸回路を示す。そのような呼吸回路は、例えば、持続、変動、または両レベル設定の気道陽圧(PAP)システム、または呼吸療法の他の形態とし得る。下記で説明するように、呼吸回路は、1つ以上の医療用チューブ、加湿器、および患者インターフェースを含む。医療用回路のこれらの部品のいずれかまたは全て、および他の部品は、加湿および/または凝縮液管理用の微細構造を組み込み得る。微細構造は、一般的に、1~1000ミクロン(μm)(すなわち約1~1000μm)の範囲のマイクロスケールの寸法を有する構造として定義され得る。
【0032】
ガスは、以下の通り、
図1の回路を輸送され得る。乾燥ガスが、人工呼吸器/ブロワー105から、乾燥ガスを加湿する加湿器107まで通過する。いくつかの実施形態においては、人工呼吸器/ブロワー105は加湿器107と一体化され得る。加湿器107は、ポート111を介して吸息チューブ103の入口109(加湿ガスを受け取る端部)に接続され、それにより、加湿ガスを吸息チューブ103に供給する。吸息チューブは、患者に呼吸ガスを送達するように構成されたチューブである。ガスは、吸息チューブ103を通って出口113(加湿ガスを排出する端部)まで流れ、その後、出口113に接続された患者インターフェース115を通って患者101まで流れる。この例では、出口113はYピースアダプタである。呼息チューブ117も患者インターフェース115に接続される。呼息チューブは、呼気された加湿ガスを患者から離すように動かすように構成されたチューブである。ここでは、呼息チューブ117は、患者インターフェース115から呼気された加湿ガスを人工呼吸器/ブロワー105に戻す。少なくとも1つの構成による吸息チューブ103および/または呼息チューブ117は、微細構造を含み得る。これらのチューブ(または他のもの)について、下記で詳細に説明する。
【0033】
この例では、乾燥ガスは、通気口119を通って人工呼吸器/ブロワー105に入る。
ファン121が、空気または他のガスを、通気口119を通して吸い込むことによって、人工呼吸器/ブロワーに流入するガスの流れを改善し得る。ファン121は、例えば、可変速度のファンとしてもよく、電子制御装置123がファン回転速度を制御する。特に、電子制御装置123の機能は、主制御装置125からの入力、およびダイアル127によってユーザが設定した予め決定した圧力またはファン回転速度の必要値(既定値)に応答して、主電子制御装置125によって制御され得る。
【0034】
加湿器107は、ある量の水130または他の好適な加湿液を入れている加湿チャンバ129を含む。好ましくは、加湿チャンバ129は、使用後に加湿器107から取り外し可能である。取り外し可能であることによって、加湿チャンバ129をより容易に滅菌または廃棄できる。しかしながら、加湿器107の加湿チャンバ129の部分は、一体構造とし得る。加湿チャンバ129の本体は、非伝導性のガラスまたはプラスチック材料から形成され得る。しかし、加湿チャンバ129はまた、伝導成分を含み得る。例えば、加湿チャンバ129は、加湿器107の加熱板131と接触するかまたはそれに関連付けられる高熱伝導性ベース(例えば、アルミニウムベース)を含み得る。例として、加湿器107は、スタンドアロン型の加湿器、例えばFisher & Paykel Healthcare Limited(Auckland、ニュージーランド)の呼吸気加湿の範囲の加湿器のいずれかとし得る。例示的な加湿チャンバ129は、Simsへの米国特許第5,445,143号明細書に説明されており、その全体が参照することにより援用される。
【0035】
少なくとも1つの実施形態による加湿チャンバ129は、微細構造を含むことができ、および本明細書でさらに詳細に説明する。
【0036】
加湿器107はまた、電子制御を含み得る。この例では、加湿器107は、電子、アナログまたはデジタル主制御装置125を含む。好ましくは、主制御装置125は、関連のメモリに記憶されたコンピュータソフトウェアのコマンドを実行するマイクロプロセッサベースの制御装置である。ユーザインターフェース133を介してユーザが設定した湿度や温度の値の入力、例えば、および他の入力に応答して、主制御装置125は、加湿チャンバ129内の水130を加熱するためにいつ(またはどの程度のレベルで)加熱板131を付勢させるかを決定する。
【0037】
任意の好適な患者インターフェース115が組み込まれ得る。患者インターフェースは広義語であり、および当業者にはその元のおよび通常の意味が与えられ(すなわち、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されない)、および、限定されるものではないが、マスク(例えば気管マスク、フェイスマスクおよび鼻マスク)、カニューレ、および鼻枕を含む。温度プローブ135が、患者インターフェース115付近の吸息チューブ103に、または患者インターフェース115に接続され得る。温度プローブ135は、患者インターフェース115付近のまたはそこの温度を監視する。温度プローブに関連付けられた加熱フィラメント(図示せず)を使用して、患者インターフェース115および/または吸息チューブ103の温度を調整して、吸息チューブ103および/または患者インターフェース115の温度を、飽和温度超まで上昇させ、それにより、望まれない凝縮が生じる機会を減らす。
【0038】
少なくとも1つの実施形態による患者インターフェース115は、微細構造を含むことができ、かつ下記で詳細に説明する。
【0039】
図1では、呼気された加湿ガスは、患者インターフェース115から呼息チューブ117を介して人工呼吸器/ブロワー105へ戻される。吸息チューブ103に関して上記で説明したように、呼息チューブ117は、温度プローブおよび/または加熱フィラメントを有し、凝縮が生じる機会を減らすために呼息チューブに組み込まれ得る。さらに、呼息チューブ117は、呼気されたガスを人工呼吸器/ブロワー105に戻す必要はない。あるいは、呼気された加湿ガスは、周囲環境にまたは他の付属機器、例えばエアスクラバー/フィルター(図示せず)に直接通過させ得る。いくつかの実施形態においては、呼息チューブは完全に省略される。
【0040】
上述の通り、例示的な医療用回路の吸息チューブ103、呼息チューブ117、加湿チャンバ129、および/または患者インターフェース115は、微細構造を含み得る。これらの部品の説明が続く。本発明は、これらの実施形態によって限定されないが、開示の微細構造は、加湿空気などの加湿ガスに接触するおよび/またはそれを輸送する様々な医療用部品に組み込まれ得ることが考慮される。
【0041】
微細構造を備える医療用チューブ
図2は、少なくとも1つの実施形態による、医療用回路で使用するのに好適なチューブ201の斜視図を示す。
図2に示すように、チューブ201は波形にでき、これは、好都合にも、チューブの柔軟性を高める。しかしながら、いくつかの実施形態においては、チューブ201は、比較的滑らかで非波形の壁を有し得る。
【0042】
いくつかの実施形態においては、チューブ201は、乳児または新生児の患者へおよび/または乳児または新生児の患者からガスを輸送するために使用できる。いくつかの実施形態においては、チューブ201は、年長児および大人などの標準的な患者へおよび/または標準的な患者からガスを輸送するために使用できる。本明細書で説明する「乳児」および「標準」の医療用チューブのいくつかの例示的な寸法、ならびにこれらの寸法に対し好ましいいくつかの範囲は、共同所有された2011年6月3日出願の米国仮特許出願第61/492,970号明細書、および2012年3月13日出願の同第61/610,109号明細書に、および共同所有された国際公開第2011/077250A1号パンフレットに説明されており、その全体がそれぞれ、参照することにより援用される。乳児および標準のチューブの例示的な長さは、1~2m(または約1~2m)とし得る。
【0043】
少なくとも1つの実施形態において、チューブ201は、1種以上のポリマーを含む押出物から形成される。好ましくは、ポリマーは、得られるチューブ201が全体的に可撓性であるように、選択される。好ましいポリマーは、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリオレフィンプラストマー(Polyolefin Plastomer)(POP)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、軟質ポリ塩化ビニル(PVC)、またはこれらの材料の2種以上のブレンドを含む。1種またはそれ以上のポリマーは、押出物全体の少なくとも98.4(または約98.4)、98.5(または約98.5)、98.6(または約98.6)、98.7(または約98.7)、98.8(または約98.8)、98.9(または約98.9)、99.0(または約99.0)、99.1(または約99.1)、99.2(または約99.2)、99.3(または約99.)、99.4(または約99.4)、99.5(または約99.5)、99.6(または約99.6)、99.7(または約99.7)、99.8(または約99.8)、または99.9(または約99.9)重量パーセント(wt.%)を含む。特定の実施形態では、押出物は、99.488(または約99.488)wt.%または約99.49(または約99.49)wt.%のLLDPEを含む。いくつかの実施形態においては、同一出願人による国際公開第2001/077250A1号パンフレット(その全体が参照することにより援用される)に説明されているように、チューブ201は発泡ポリマーから形成される。
【0044】
一部の実施形態では、微細構造は、軟質金属材料、例えばアルミニウム箔、真鍮、および銅で形成され得る。そのようないくつかの実施形態では、選択された材料は、高い表面エネルギーを有し得る。一部の実施形態では、基板材料は被覆され、かつ基板材料の表面エネルギーを高める添加剤を含み得る。一部の実施形態では、微細構造に形成されることなく金属のみを使用することは、表面エネルギーが高いというだけの理由で、好都合とし得る。しかし、微細構造は、例えば、初めに軟質金属を膜または薄膜に形成し、それに続いて材料を型押しして微細構造を形成することにより、金属で形成され得る。その後、型押しされた材料を使用して、本開示の加湿装置にある任意の数の好適な部品を形成し得る。例えば、チューブ201の少なくとも内部は、微細構造を形成するために型押しされていてもまたはされていなくてもよい金属で形成され得る。および一部の実施形態では、型押しされた金属膜は、加湿チャンバ内の任意の数の構造(壁、タワー、フィン、ベースなど)に表面を形成し得る。
【0045】
いくつかの実施形態においては、チューブ201は、1つ以上の伝導性フィラメントを含み得る。いくつかの実施形態においては、チューブ201は、2つまたは4つの伝導性フィラメントを含み、および複数の対の伝導性フィラメントが、チューブ201の一方の端部または両端部で接続ループの形になり得る。1つ以上のフィラメントは、例えば、チューブ201の外側の周りに渦巻き状に巻かれて、チューブ201の外側に配置され得るか、または、例えば、ルーメン壁に沿ってその周りに渦巻き状に巻かれて、チューブ201の内壁に配置され得る。フィラメントを下記で詳細に説明する。
【0046】
液体と、専用の微細構造を含む表面との間の相互作用により、表面上に、および微細構造の内側または微細構造上に、液体を広げ得ることが分かった。この相互作用は、さらに、気液界面領域を増やし、および表面の上部の液体層の厚さを減らすことが分かった。表面領域の増大と厚さの低下との組み合わせによって、平面上の同じ量の液体と比較して、液体蒸発を高める。下記で説明するように、表面領域の増大、厚さの低下、および加熱の組み合わせはさらに、液体蒸発を高める。その結果、様々な実施形態においては、チューブ201の内壁は、
図3A(縮尺通りではない)に示すような微細構造301を含む。微細構造301の一部分の第1の拡大図を
図3Bに示す。
図3Bは、
図3Aよりも拡大した微細構造301を示す。
図3Aおよび
図3Bでは、微細構造301は、チューブ201に沿って軸方向に配置されている(すなわち、微細構造は、チューブ201の長尺方向すなわち縦方向の長さに垂直な方向に延在する)。
【0047】
ポリマーは、一般的に、低表面エネルギーを有し、湿潤性を不良にする。ポリマーチューブ201上での微細構造301の拡水能力を向上するために、表面エネルギーを増大させる1つまたは複数の材料を用いて、1種以上のポリマーを処理することが好都合とし得る。特に望ましい添加材料は、界面活性剤、例えばカチオン界面活性剤とし得る。好適な表面改質剤は、グリセロールモノステアレート(GMS)、エトキシル化アミン(ethoxylated amine)、アルカンスルホネートナトリウム塩(alkanesulphonate sodium salt)、およびラウリン酸ジエタノールアミド、およびこれらの物質を含む添加剤を含む。Clariant(New Zealand)Ltd.によって製品名「418 LD Masterbatch Antistatic」で供給されているMLDNA-418は、5(±0.25)%のグリセロールモノステアレート(CAS No.123-94-4)を活性成分として備える表面改質剤のマスターバッチである。好ましくは、表面改質剤は、押出物全体の少なくとも約0.05(または約0.05)、0.1(または約0.1)、0.15(または約0.15)、0.2(または約0.2)、0.25(または約0.25)、0.3(または約0.3)、0.35(または約0.35)、0.4(または約0.4)、0.45(または約0.45)、0.5(または約0.5)、1.1(または約1.1)、1.2(または約1.2)、1.3(または約1.3)、1.4(または約1.4)、または1.5(または約1.5)wt.%を含む。例えば、少なくとも1つの実施形態において、チューブ押出物は、0.25wt.%(または約0.25wt.%)の表面改質剤を含む。別の例として、少なくとも1つの実施形態において、チューブ押出物は、0.5wt.%(または約0.5wt.%)の表面改質剤を含む。
【0048】
他の材料、例えば他の界面活性剤または他の親水化剤も使用して、チューブ201または他の実施形態の拡水能力を高め得る。例えば、任意の好適なアニオン、カチオンまたは非イオン性界面活性剤または他の親水化剤、またはそのような界面活性剤または親水化剤の組み合わせを使用できる。好適な親水化剤は、全体的に組成物の親水性を高めることができる任意の1種または複数種の作用物質とし得る。一部の構成では、界面活性剤または親水化剤は、例えば欧州特許第0480238B1号明細書(その全体が参照することにより本書に援用される)に説明されているもののような、エトキシル化脂肪アルコール(ethoxylized fatty alcohol)を含み得る。一部の構成では、界面活性剤または親水化剤は、非イオン性界面活性物質、例えばノニルフェノールエトキシレート、ポリエチレングリコール-モノエステルおよびジエステル、ソルビタンエステル、ポリエチレングリコール-モノエーテルおよびジエーテル、および欧州特許第0268347B1号明細書に説明されているような他のものを、または国際公開第87/03001号パンフレットに説明されているような非イオン性ペルフルオロアルキル化(perfluoralkylated)界面活性物質を含み得る。これら文献全体を、参照することにより本書に援用する。一部の構成では、界面活性剤または親水化剤は、ケイ素部分を含有し得る。一部の構成では、界面活性剤または親水化剤は、湿潤剤、例えば上述の国際公開第87/03001号パンフレットおよび欧州特許第0231420B1号明細書(それらの全体が参照することにより本書に援用される)に説明されているような親水性のシリコン油を含み得る。一部の構成では、界面活性剤または親水化剤は、国際公開第2007/001869号パンフレット(その全体が参照することにより本書に援用される)の、特に13頁および14頁に説明されているようなポリエーテルカルボシランを含み得る。他のそのような好適な作用物質は、国際公開第2007/001869号パンフレットで参照されているように、米国特許第5,750,589号明細書、米国特許第4,657,959号明細書および欧州特許第0231420B1号明細書に説明されており、それらの全体を参照することにより本書に援用する。一部の構成では、界面活性剤または親水化剤は、上述の米国特許第4,657,949号明細書および国際公開第2007/001869号パンフレットで説明されているようなシロキサン可溶化基を含有するエトキシル化(ethoxylated)界面活性剤を含み得る。そのようなエトキシル化界面活性剤の例は、Momentive Performance Materials,Inc.(Albany、New York 米国)から入手可能な界面活性コポリマーのSILWET(登録商標)ライン(例えば、SILWET(登録商標)L-77)、およびEmerald Performance Materials,LLC(Cuyahoga Falls、Ohio 米国)から入手可能なMASIL(登録商標)SF19である。
【0049】
表面エネルギーを増大させるために他の方法も使用し得る。好適な方法は、物理的な、化学的な、および放射による方法を含む。物理的な方法は、例えば、物理吸着およびラングミュアー・ブロジェット膜(Langmuir-Blodgett film)を含む。化学的な方法は、強酸、オゾン処理、化学吸着、および火炎処理による酸化を含む。放射による方法は、プラズマ(グロー放電)、コロナ放電、光活性化(UV)、レーザ、イオンビーム、電子ビーム、およびガンマ線照射を含む。
【0050】
好適な表面改質方法または表面改質剤を選択することによって、角度計などの角度測定装置によって測定可能なように、接触角が50(または約50)、45(または約45)、40(または約40)、35(または約35)、30(または約30)、25(または約25)、20(または約20)度(°)未満である表面特性を有するチューブ壁を提供することが可能になる。例えば、接触角が35°(または約35°)未満である表面特性を有するチューブ壁は、有用な結果をもたらす。接触角は、π/2(または約π/2)未満であることが望ましい。接触角は0°または約0°であることがより望ましい。
【0051】
下記の表1は、表面改質剤で処理されたサンプル、および放射で処理されたサンプルを含む、様々なLLDPEサンプルに対する接触角の測定値を示す。接触角の測定値は、ASTM標準のD7334、2008、「Standard Practice for Surface Wettability of Coatings,Substrates and Pigments by Advancing Contact Angle Measurement」に従って実施した静的液滴形状試験法(static drop shape testing method)に基づいた。
【0052】
【0053】
5%のMLDNA-418表面改質剤を備えるサンプルは、試験した他の表面改質方法と比較して、最も小さい被測定接触角を生じた。
【0054】
上述の通り、いくつかの実施形態においては、添加材料は、バルクのポリマー押出物に添加される。添加材料が、チューブの有用寿命のために表面を補充するように、ポリマーマトリクスに材料を添加することが望ましいとし得る。いくつかの構成では、材料は、例えば、ポリマーの表面をその材料で被覆することによって、ポリマーの表面処理として追加され得る。例えば、微細構造面に対して、添加材料、例えばHYDRON防曇コーティング(MXL Industries(Lancaster、Pennsylvania))、HCAF-100(Exxene Corporation(Corpus Christi、Texas))などのEXXENE消泡コーティング、およびMAKROLON防曇(Bayer Corporation)でブラシングを行うか、噴霧するか、または他の方法で被覆を行って、添加材料の薄い(例えば、1μmまたはおよそ1μm)コーティングを生じ得る。表面コーティングは、低価格でありかつ製造が容易であるために、望ましいとし得る。
【0055】
いくつかの構成では、親水性材料の薄膜、例えば通気性ポリウレタン、例えば、ESTANE 58245(Lubrizol Corporation(Wickliffe、Ohio))、通気性ポリエステル、例えば、ARNITEL VT3108(DSM
Engineering Plastics(Sittard、オランダ))、または通気性ポリアミド、例えばPEBAX(Arkema(Colombes、フランス))を表面改質剤としてキャストし得る。これらの親水性材料は、水分を吸収し、非常に湿潤性に富むようになり得る。親水性薄膜の例示的な実装方法は、通気性ポリマーを溶媒中に溶解させ、混合物をキャストさせてから溶媒を蒸発させ、それゆえ通気性材料の薄膜を微細構造上に残すことを含む。例えば、ESTANE 58245ペレットは、ジメチルホルムアミド(DMF)溶媒のテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、かつマイクロミリングプロセスを使用して真鍮またはアルミニウムから機械加工された微細構造にキャストし得る。薄膜の典型的な寸法は、1~10μm(または約1~10μm)の範囲である。好ましくは、溶媒、通気性材料、および微細構造材料の組み合わせは、微細構造の形状および質が、例えば、溶媒を用いて微細構造を溶解することによって実質的に影響を受けないように、選択される。
【0056】
いくつかの実施形態は、
図3Aおよび
図3Bに示す垂直配置の構成が、好都合に加湿および凝縮液管理を改善するという認識を含む。
図1に示すように、チューブ(例えば、103および117)は、全体的に水平方向に延在するが、いくつかの部分、特にチューブの端部付近は、垂直に延在し、およびいくつかの部分は傾斜し得る。重力の作用下で、凝縮液は、チューブの垂直部分および傾斜部分では下の方へ流れ、かつほぼ水平のチューブの最下点に溜まる傾向を有する。微細構造が全体的に水平のチューブの底部に対して垂直であるとき、微細構造は、重力に抗して、溜まった凝縮液を垂直に動かす。この作用によって、チューブ壁上の凝縮液の量、それゆえ、気流に曝される凝縮液の表面領域を増加させる。凝縮液のより多くの表面領域を気流に曝すことにより、凝縮液が気流中に蒸発する可能性が増える。それゆえ、垂直配置の構成は、チューブに溜まった凝縮液を減らし、かつチューブを通って流れる空気が、飽和付近の所望のレベルの湿度を維持する可能性を高める。
【0057】
この構成は、ルーメンに延出する構造がないためにチューブのルーメン内の空気の流れの妨害を最小限にするため、好都合とし得る。少なくとも1つの実施形態は、蒸発を高めるために、微細構造がルーメンに延出する必要がないまたはルーメンを覆う必要がないという認識を含む。
【0058】
一部の実施形態によれば、微細構造は、チューブの方向に向けられ得る。例えば、
図19は、入口701において、微細構造1903を組み込んだチューブ1901が取り付けられているチャンバ129の実施形態を示す。チューブ1901は、蒸発チャンバ129の入口701に配置され得る。液体、例えば水が、入口701の少し上からチューブ1901に入れられて、水が微細構造1903を通っておよびそれに沿って加湿チャンバ129の方向に流れる。
【0059】
一部の構成では、チューブ1901の内表面への液体を計量することができ、制御して導入することにより、かつ微細構造および重力を使用して、液体を、チューブ1901の内表面に沿って、周囲に広げる。液体の導入は、任意の好適な速度制限装置を使用して制御し得る。チューブ1901に流入する水の速度は、速度制限装置を使用して、水とチューブ1901の微細構造1903との間の相互作用を最大にするように、調整し得る。例えば、チューブ1901内の水の量を増やすことは、発生する蒸発の量を増やし得る。しかしながら、微細構造1903は、水で完全には被覆されていないまたは覆われていない場合、最も有効とし得る。蒸発は、主に水のへりすなわち水際および周囲の構造に沿って、粗い面で発生することが判っている。それゆえ、水に対する水際の数を最大にするために、チューブ1901を通って流れる水の量を制御することが望ましいとし得る。
【0060】
一部の構成では、液体供給チューブが速度制限装置とカラーとの間に延在し得る。カラーは、スリーブの外表面上にマイクロチャネルを含み、マイクロチャネルは、チューブ1901上のマイクロチャネルと連通し得る。そのようなものとして、カラーを使用して、チューブ1901に液体を供給し得る。さらに、カラーは、ガス供給導管を接続し得る外表面を含み得る。加湿チャンバ129の方までチューブ1901を下の方へ流れるまたはそれを通る空気は、チューブ1901の内表面から水を蒸発させて、運び去り始める。それゆえ、加湿チャンバ129に達する空気は、既に、少なくともある程度の水蒸気を得ている。
【0061】
一部の実施形態では(図示せず)、加熱ジャケットがまた、チューブ1901の少なくとも一部分に組み込まれ得る、またはそれを取り囲み得る。加熱ジャケットは、さらに、流れるガスへの水や液体の蒸発を高め得る。一部の実施形態では、加熱ジャケットを有するのではなく、または加熱ジャケットを有することに加えて、チューブ1901は、チューブ1901の1つ以上の部分にプリントされたヒーターを有し得る。一部の実施形態では、チューブ1901は、厚膜加熱素子、エッチドフォイル、または加熱素子を提供するためのワイヤエレメントなどの構造を含み得る。
【0062】
微細構造1903を備えるチューブ1901は、任意の好適な方法でおよび任意の好適な材料を使用して、形成され得る。一部の実施形態では、チューブ1901は、親水性ポリマーから形成された波形シートで形成され得る。一旦形成されたら、波形材料は包まれて、チューブ1901を形成して、微細構造1903が、得られる構造の内表面の長さの少なくとも一部分に延びるようにし得る。一部の実施形態では、微細構造1903は、V字形状のトレンチである。一部の実施形態では、V字形状のトレンチは谷を含み、これらの谷は、シートが平らに広げられると、隣接する谷と約30μm離間している。一部の構成では、シート、それゆえ得られるチューブ1901は、約150mmの長さとし、チューブ1901を形成するように折り畳まれると、約20mmの直径を有し得る。
【0063】
図4は、例示的な微細構造301の断面を示す。この例示的な実施形態では、微細構造301は、楔のような構造を備える連続的なマイクロチャネルである。連続的なマイクロチャネルは、一般的に、1000μm(または約1000μm)以下の寸法を有する連続的なチャネルとして定義され得る。少なくとも1つの実施形態において、マイクロチャネルは、20~40μm(または約20~40μm)の深さd、20μm(または約20μm)の最大幅w、および30~60°(または約30~60°)の角度θを有する。いくつかの実施形態においては、チューブの表面は、マイクロチャネル-対-固体の比率が1:1(または約1:1)である。上述の寸法は限定ではなく、追加的な好適な寸法を下記で詳細に説明する。これらの例示的な実施形態と上述の例示的なチューブの寸法との間の規模の違いのために、微細構造面は、ラボオンチップ(lab-on-a-chip)などの閉鎖型システムではなく、開放型システムに存在し得るおよびそこで動作し得る。
【0064】
いくつかの実施形態は、マイクロチャネルでの液体の動きが、慣性力や重力ではなく、主に、表面力に基づいているという認識を含む。いくつかの実施形態はまた、表面力は、一般的に、微細構造の特性寸法が、
【数5】
(式中、γは表面張力を表し、ρは流体密度を表し、およびgは重力加速定数(9.8m/s
2)を表す)
として定義されるキャピラリー長(L
c)よりも小さい場合に、優勢となるという認識を含む。室温の水に関し、キャピラリー長は約2.3mmである。上述の認識によれば、約2.3mm未満のマイクロスケールの寸法は、室温の水に対して表面現象が観察できる。
しかしながら、微細構造のサイズは、常に、キャピラリーウィッキング、表面領域の増大、および/または膜厚の低下が観察できるかどうかを表すものではないことが判明した。
その結果、いくつかの実施形態においては、微細構造は、π/2(または約π/2)未満の平衡接触角を有するベース基板を含む。等温(またはほぼ等温)条件下、およびキャピラリー長よりも短い長さスケールで、ウィッキングの基準は、微細構造のアスペクト比および臨界平衡接触角に依存する基準であると規定され得る。四角形のトレンチでは、関係は
【数6】
(式中、Xは、高さ対幅のアスペクト比である)
として表わすことができる。V字形状の溝では、関係は、
【数7】
(式中、βは、溝の楔の角度である)
として表わすことができる。
図16は、連続的なマイクロチャネル、特に四角形の溝(1601)およびV字形状(1603)の溝でのウィッキングに対する例示的な条件のグラフである。曲線の下側の領域では、チャネルへのウィッキングが発生する傾向がある。曲線のわずかに上側の領域では、いくつものメタ-安定均衡に広がる液滴が観察されるが、ウィッキングは、発生しない傾向がある。曲線の十分に上側の領域では、液滴の広がりは観察されず、およびウィッキングは発生しない。特性寸法が、液体に対するキャピラリー長よりも小さいことを条件として(そのため表面張力が粘性力よりも優勢となる)、表面湿潤性とチャネルアスペクト比の異なる組み合わせが、マイクロチャネルへの液体ウィッキングを生じる。しかしながら、概して、θ
critが曲線を下回るような条件である場合、液体はチャネルにウィッキングされる。
【0065】
上述の認識によれば、ウィッキングを促すために、高アスペクト比および/または高表面エネルギー(低接触角)の構造が望ましいと判断された。上述したような界面活性剤は、0°に近い接触角を生じるため、ウィッキングは簡単に生じ得る。ほとんどのポリマー表面上での平衡接触角は、約0.87ラジアン(約50°)よりも大きいため、より深いチャネルを形成して、湿潤を容易にし得る。
【0066】
表面粗さまたは微細構造(例えば、規則的な微細構造)は、液滴の分散を促進し、それゆえ、平衡接触角が約90°未満であるとき、液滴の厚さ/深さを低下させ、それにより、液体/蒸気の表面領域を増やし得る。マイクロチャネルの表面粗さはまた、ウィッキングにおいて役割を果たす。マイクロチャネル内の微細構造すなわちミクロ構造またはナノ構造の突起は、固体/液体/蒸気の接触ラインを固定する役割を果たし、表面領域を増大させ、および/または凝縮のための核形成サイトの機能を果たすと考えられている。
図17は、
図18Cに示すものと同様であるが、環境制御型走査電子顕微鏡を使用して見たマイクロチャネルを示す。表面上の粗さがはっきりと分かる。一部の構成では、接触角が約90°超である場合に、表面粗さは、広がりおよび蒸発に対する悪影響を有し得る。なぜなら、液滴があまり広がらず、それにより液体/蒸気の表面領域を減少させるためである。少なくともこのため、約90°未満の平衡接触角を有する構造が、一般的に好ましい。
【0067】
微細構造の多くの異なる形状が、望ましい結果を達成し得る。例えば、連続的なマイクロチャネルのプロファイルは、正弦曲線のまたは鋭いトレンチとし得る。いくつかの実施形態においては、マイクロチャネルは、距離、例えば化学勾配または物理勾配と共に大きくなるアスペクト比を有する。一部の実施形態では、チャネルの深度勾配を使用して、特定の方向における液体の動きを制御する。液体は、より深いチャネルの方向に動く傾向があることが見出されている。勾配は、ヒステリシスが遅いことを条件として、基板は、液滴を、エネルギーを低下させるために高エネルギーの領域の方へ動かし得るため、望ましいとし得る。勾配はまた、液体のウィッキングを加速し得るか、またはそうでなければ改善し得る。例えば、一部の実施形態では、チャネルの深度勾配を使用して、より高速の空気の流れの領域の方へ液体を動かし、それにより蒸発を増やす。一部の実施形態では、構造の垂直壁に沿って、より大きなチャネルが使用され、水を、構造の底部から波形構造の上部へ方向付け、それにより、水を加熱素子に近づけて蒸発させる。
【0068】
さらに、微細構造は、連続的である必要はない。個別の微細構造は、液体を分散するのを助け、それにより、蒸発を加速する。粗い面では、ほとんどの蒸発が、固体構造と液体の移行領域の周り(すなわち、液体のへり、すなわち、際)で生じることが見出されている。その結果、構造全体の粗さが増すことによって移行領域が増大し、かつ蒸発を高める。例えば、表面は、個別の特徴、例えばシリンダー状、ピラミッド形、または立方体状のポストまたはピラーを含み得る。微細構造はまた、上述の特徴のヒエラルキーを含み得る。一部の実施形態では、個別の特徴は均一であるか、または部分的に均一である。一部の実施形態では、個別の特徴は、表面上にランダムに分布している。例えば、一部の実施形態は、表面に広がったまたは表面に接着された、不規則な形状を有する結晶を用いる。一部の実施形態では、凸凹した表面(すなわち、滑らかでない)は、好都合にも、蒸発を高め得る。
【0069】
図20および
図21は、凸凹したすなわち粗い面を用いて、液体の蒸発を高める実施形態を示す。
図20は、表面2001からある程度の距離Dに配置された小出し機構2003を使用して、液体が粗い面2001に適用され得ることを示し、小出し機構は、少量の液体を出す。一部の構成では、小滴が1度に1滴、放出される。一部の構成では、小滴は、接触するとはねて、小さな液滴を生じ得る。
【0070】
各小滴は、粗いすなわち凸凹した表面2001に接触して、表面2001上に速やかに広がり、それにより、液体の、表面2001の上側にわたって流れるガスへの蒸発を促進させる。一部の実施形態では、表面2001は加熱されて、液体は、表面の上側を通過するガスへの蒸発がさらに促進される。
図20の実施形態は、単一の液体ディスペンサー2003またはドロッパーのみを備えた状態で示すが、
図21に示すような一部の実施形態は、2つ以上の液体ディスペンサー2003を含み得る。複数の液体ディスペンサー2101は、表面2001の上方の様々な箇所に配置されて、表面2001上での液体の被覆率を高め得る。一部の実施形態では(図示せず)、複数の孔を含む表面が、液体ディスペンサー2101の機能を果たす。水などの液体は、その表面上を流れることができる。その後、液体は、表面にある複数の孔を通って、下にある粗いすなわち凸凹した表面2001まで下方に滴るまたは落ちる。ガスが、2つの表面(すなわち、第1の表面および粗いすなわち凸凹した表面2001)の間を流れて、液体が落ちるときに液体を蒸発させ、その後、粗いすなわち凸凹した表面2101の微細構造の周りで分散し得る。
図21は、さらに、一部の実施形態において、加湿されるべき空気のようなガスの流れが、粗い面2001上を覆って比較的平坦な流れを形成するように、送られ得るか、または形作られ得ることを示す。そのような構成は、さらにガスを粗い面2001と相互作用させ得る。
【0071】
図22は、高さおよび幅の異なる複数の隆起2201を含む、1つのタイプの粗い面を示す。高さ対幅の比率がより高い粗い面は(例えば、より急な傾斜)は、液体を広げて蒸発を高めると考えられている。一部の構成では、より急な傾斜を有することは、接触ラインの数を増加させると考えられている。一部の実施形態では、液体と粗い面との間の接触ラインの数の増加は、蒸発を高めると考えられている。一部の実施形態では、より高い隆起2201が存在することによって、液体と粗い面との間の接触ラインの数が増加し、それにより、低い隆起2203を有する表面と比較して、蒸発を高め得る。一部の実施形態では、粗い面に加えられ得る熱の使用は、特に接触ラインにおける蒸発速度を速め得る。
一部の実施形態では、一体型の微細構造を有する表面、すなわち、下側にある表面に一体的に接続された微細構造の使用は、下側にある表面を加熱する場合に、熱伝達をより良好にできるようにし得る。そのような構成は、液体の蒸発を支援する熱の能力を高め得る。
【0072】
図20~22に関する上述の説明は、粗いすなわち凸凹した表面に関するが、規則的なパターンを有する微細構造面は、同様の結果を達成し得る。粗い面上の液滴と同様に、微細構造を備える表面上の液滴は分散し、かつ微細構造のないまたは表面不規則性を有しない滑らかな表面よりも迅速に、通過ガスへと蒸発する。一部の実施形態では、微細構造は均一である。一部の実施形態では、微細構造は、全ての微細構造が同じでない場合も、パターンに従ってサイズが形成されかつそのように配置されている。
【0073】
上述のウィッキングの基準が満たされる場合、水は、Lucas-Washburnダイナミクスと称されるある種のダイナミクスでマイクロチャネルおよび/またはマイクロピラーにウィッキングされる。ウィッキングすなわち吸上げ長(L)は、チャネルの形状またはアスペクト比に関わらず、均一な断面である限り、時間(t)の平方根
【数8】
に比例して増加する。Aは、表面張力、粘度、チャネルの断面積、および接触角の関数である。それゆえ、この関係式の強さ(すなわち、Aの値)を決定するものは、これらのパラメータのいくつかまたは全てに依存する。
【0074】
いくつかの実施形態は、低接触角、高アスペクト比、高表面張力、および低粘度が、ウィッキングを向上させ得るという認識を含む。ウィッキング長は時間平方根に比例するため、ウィッキングの速度は、ウィッキング長に反比例し、かつ時間平方根に反比例する。
別の言い方をすれば、ウィッキングは、距離および時間の経過と共に速度が落ちる。
【0075】
図18A~18Lは、連続的な微細構造および個別の微細構造の画像を示す。
図18Aの基板材料は、ポリエチレンテレフタレート(PET)である。他の図面の基板材料は、アクリルである。
図18AのV字形状の溝は、両刃カミソリを使用して切断された。他の微細構造は、3Dプリンター(ProJet HD3000)を使用して作製された。一部の実施形態では、微細構造、または微細構造を組み込む表面は、直接射出成形または熱エンボス加工することによって、製造できる。これらの図面には示さないが、Performance Micro Tool(Janesville、Wisconsin)で販売されているものなどの、マイクロエンドミルを備えるCNC機械を使用して、微細構造を機械加工することも可能である。
図18Bおよび
図18Cは、四角形の溝を示す。
図18Dは、トポグラフィに勾配を有する四角形のマイクロチャネルアレイの前面図を示し、具体的には、マイクロチャネルの長い端部の前面図を示す。
図18Eは、
図18Dのマイクロチャネルの短い端部の前面図を示す。
図18Fは、
図18Dの四角形のマイクロチャネルアレイの側面図を示す。本明細書で説明するように、トポグラフィに勾配がある状態で、ウィッキングのダイナミクス(具体的には、速度-時間の関係)は、距離と共に深さを変更する微細構造を有することによって、修正される可能性がある。このトポグラフィは、液体が蒸発しかつ表面上に凝縮する方法に影響を及ぼすことが望ましいとし得る。
そのような可変の深さ構成は、エンボス加工、機械加工、またはキャスティングによって達成され得る。
図18Gは、界面活性剤で処理されていない四角形の溝上の液滴を示す。
図18Hは、界面活性剤で処理された四角形の溝上での液滴の広がりを示す。
図18Iおよび
図18Jは、異なる倍率のピラーのある表面の、上から見下ろした図を示す。
図18Kは、ピラーのある表面の側面図を示す。
図18Lは、
図18Aの微細構造の形状と逆である表面形状を規定する微細構造の別の実施形態を示す。
図18Lの微細構造は、交互に高い隆起と低い隆起とを含み、それら各々が、小さなチャネルすなわち第1のマイクロチャネルによって互いに分離されている。好ましくは、高い隆起は、低い隆起よりも実質的に高く、および低い隆起の高さの2~3倍以上の高さである。図示の配置では、低い隆起は、高い隆起よりも実質的に幅広であり、例えば、約3~5倍幅広である。小さいチャネルは、例えば高い隆起のほぼ幅のような任意の好適なサイズとし得る。さらに、高い隆起は、それらの間に大きなチャネルすなわち第2のマイクロチャネルを規定し、小さいチャネルと連通し得るかまたは隣接し得る。大きなチャネルの深さは、小さいチャネルの深さよりも深く、2~3倍以上の深さとし得る。小さいチャネルは、断面形状がほぼ三角形である一方、大きなチャネルは、逆台形とほぼ同様の断面形状を有し得る。低い隆起は、好ましくは、高い隆起よりも遥かに大きな領域を規定するため、低い隆起の上面は、材料または基板の外表面とみなすことができ、小さいチャネルは外表面から窪み、かつ高い隆起は外表面から突出している。
【0076】
微細構造301は、チューブ201の全長に沿って、またはチューブ201の長さの一部分、例えば凝縮液を収集する可能性がある中心部分に沿って延在し得る。あるいは、微細構造301は、規則的なまたは不規則な間隔でチューブ201に沿って延在し、微細構造のない部分で分離され得る。上述の図面は、チューブ201の内周を囲む微細構造301を示す。しかしながら、微細構造301は、全ての実施形態において内周全体を囲む必要はない。例えば、微細構造301は、周囲の半分または4分の1の周りに配置され得る。
【0077】
1滴の液体が、その半径の何倍にも広がり、かつ液体の下側にある基板に熱が供給される場合、液体の非常に効率的な蒸発が達成され得ることが判明した。その結果、いくつかの実施形態においては、上述の1つ以上のフィラメントは加熱フィラメントを含み得る。
加熱フィラメントは、チューブ201の壁に埋め込まれ得るかまたは入れられ得る。例えば、1つ以上のフィラメントは、チューブ201の壁において、チューブのルーメンの周りで渦巻き状に巻かれ得る。1つ以上のフィラメントは、Huddardらへの米国特許第6,078,730号明細書(参照することにより本書にその全体を援用する)に説明されているように、例えば、渦巻き状に巻かれた構成でチューブ201内に配置され得る。加熱フィラメントの配置は、上述の構成の1つに限定されない。さらに、加熱フィラメントは、上述の構成の組み合わせで配置し得る。
【0078】
いくつかの実施形態においては、チューブ201は、微細構造を含む内側部品を含む。
例示的な内側部品501を
図5に示す。内側部品501の拡大図を
図5Bに示す。例示的な内側部品501は、鋸歯状の条片である。内側部品510の鋸歯は、チューブの波形(図示せず)を補完して、チューブが全体的に内側部品501を適所に保持するようなサイズにされかつそのように構成され得る。
図5Bでは、微細構造301は垂直に延在して、内側部品501の長尺方向すなわち縦方向の長さに沿って内側部品501の両軸面を覆う。あるいは、微細構造301は、一方の軸面を覆い得る。いくつかの構成では、微細構造301は、縦方向の長さの一部分に沿って、または縦方向の長さの規則的なもしくは不規則な間隔に沿って延在し得る。内側部品501は、2つ以上の鋸歯状の条片を含み得る。
例えば、内側部品は、2つの鋸歯状の条片を含むことができ、かつ縦方向の長さに沿って鋸歯を有するプラス記号に似ている。これらの実施形態は限定ではない。多数の条片を組み込み得る。しかしながら、より少数の条片を有し、チューブのルーメンを通る空気の流れを改善することおよび/またはチューブの可撓性を高めることが好都合とし得る。
【0079】
内側部品501を含むことは好都合とし得る。なぜなら、内側部品501は、微細構造301がチューブのルーメンまで延在しかつチューブ201のルーメンの中心に達することができるようにするためである。
図6に示すように、気流速度は、チューブの壁からチューブのルーメン(中心線)の中心に向かうにつれて大きくなり、中心線で最大に達する。それゆえ、
図5Aおよび
図5Bの微細構造301から発生する水は、温かく高速の空気の流れに曝される。凝縮液をチューブの中心付近のより高速の気流に曝すことによって、凝縮液が気流に蒸発する可能性を高める。
【0080】
内側部品501には代替的な構成が可能である。例えば、内側部品501は、チューブ201の内側で巻かれ得る。この構成は、微細構造がチューブ201ルーメンまで、ある距離を延在できるようにし、それにより、チューブ201の壁よりも高速の気流に曝すため、望ましいとし得る。少なくとも1つの実施形態において、内側部品501の少なくとも一部分がチューブのルーメンの中心を横切るように、内側部品501は巻かれる。
【0081】
上述の通り、微細構造面に熱を追加することは、蒸発率を劇的に高め得ることが判明した。その結果、任意の上記の実施形態の内側部品501は、加熱フィラメントを組み込み、それにより、チューブに沿った空気の流れの加熱を改善し、それゆえ、マイクロチャネル内の凝縮液が空気の流れに蒸発する可能性を高め得る。1つ以上の加熱フィラメントを内側部品501に組み込むことはまた、温かい内側部品内に凝縮液が生じる可能性を低下させる。蒸発は、固体表面、液滴、および蒸発した蒸気が接触する接触領域において最大であることが判明した。これは、加熱面に近いことに起因する。固体に近いほど、質量移動は多くなる。その結果、いくつかの実施形態は、多数の狭小なチャネルを有することが望ましいとし得るという認識を含む。例えば、10個の100μmのチャネルを有する表面では、5個の200μmのチャネルを有する表面よりも高い蒸発率が達成され得る。
【0082】
微細構造の上述の構成は、1つまたは複数のポンプを使用せずに、液体を輸送するために使用し得るため、好都合とし得ることに留意されたい。さらに、いくつかの実施形態は、液体の動きが毛管作用によって駆動されているため、微細構造面が液体を方向付けるためにポンプを必要としないという認識を含む。
【0083】
チューブの製造方法
上述の通り、チューブは、1種以上の押出ポリマー成分から作製され得る。押出物の特性は(組成物、表面改質剤、表面エネルギーを高める方法を含む)、上記で説明されている。
【0084】
図14を参照して第1の製造方法を説明する。この方法は、縦軸と、縦軸に沿って延在するルーメンと、ルーメンを囲む壁とを有する細長い導管を押し出すことを含む。微細構造は、押し出し中に、導管に、プレス加工され得るかまたは他の方法で形成され得る。微細構造はまた、押し出し後に、導管に、成形、印刷、切り込み、熱成形、または他の方法で形成され得る。
図4、
図8D、および
図9Dに示すように、鋭い物体を使用して表面にマイクロチャネルを切り込むことによって、マイクロチャネルの上部の周りに隆起縁部を生じ得ることが観察された。その結果、一部の方法において、マイクロチャネルの形成後に表面を磨くかまたは研磨して、表面均一性を高めることが望ましいとし得る。この方法はまた、コルゲータ・ダイを用いるなどして、細長い導管に波形をつけることを含み得る。より具体的には、プロセスは、押出物材料のマスターバッチ(すなわち、押出材料)を混合または提供すること、マスターバッチを押出ダイヘッドに供給すること、上述の押出物を押し出すこと、および(任意選択的に)エンドレスチェーンの金型ブロックを使用して細長い導管をコルゲータに供給して、波形チューブを形成することを含む。
【0085】
図14は、全体的に、供給ホッパー1401が設けられた構成を示しており、供給ホッパーは、モータ1405によって駆動されるスクリューフィーダ1403を通じて、ダイヘッド1407の方へ向かう方向Aに送られる、生の原料または材料(例えばマスターバッチおよび他の材料)を受け入れる。溶けたチューブ1409がダイヘッド1411から押し出される。伝導性フィラメントは、任意選択的に、溶けたチューブ1409上にまたはその内部に同時押し出しされ得る。
【0086】
直径30~40mmのスクリュー、一般に、0.5~1.0mm間隙の12~16mmの環状ダイヘッドを備えるWelex押出機などの押出機が、低価格のチューブを迅速に作製するのに好適であることが見出されている。同様の押出機が、American Kuhne(ドイツ)、AXON AB Plastics Machinery(スウェーデン)、AMUT(イタリア)、およびBattenfeld(ドイツおよび中国)によって提供されている。Unicor(登録商標)(Hassfurt、ドイツ)によって製造され供給されているものなどのコルゲータは、波形化ステップに好適であることが見出されている。同様の機械は、OLMAS(Carate Brianza、イタリア)、Qingdao HUASU Machinery Fabricate Co.,Ltd(Qingdao Jiaozhou City、P.R.中国)、またはTop
Industry(Chengdu)Co.,Ltd.(Chengdu、P.R.中国)によって提供されている。
【0087】
製造中、溶けたチューブ1409は、押出機ダイヘッド1411を出た後、コルゲータ上の一連の回転金型/ブロック間を通過して、波形のチューブに形成される。溶けたチューブは、ブロックを貫通するスロットおよびチャネルを経由してチューブの外側に適用された真空、および/または押出ダイのコアピンの中心を通る空気チャネルを経由してチューブの内部に適用される圧力によって、形成される。内圧が適用される場合、ダイのコアピンから延在しかつ波形の内側に適合する、特別な形状にされた長い内部ロッドは、チューブに沿った縦方向の空気圧の逃げを防止する必要があり得る。
【0088】
チューブはまた、エンドコネクタ取付具に接続するための平らなカフ領域を含み得る。
それゆえ、製造中、成形プラスチックエンドコネクタ取付具は、摩擦嵌合、接着結合、オーバーモールディングによって、または熱溶接または超音波溶接によって、永久的に固定され得るおよび/または気密とし得る。
【0089】
本明細書で説明する実施形態によるチューブの別の好適な製造方法は、
図15に示すような渦巻きの形成を含む。概して、この方法は、テープを押し出し、押し出されたテープをマンドレルの周りで渦巻き状に巻き、それにより、縦軸と、縦軸に沿って延在するルーメンと、ルーメンを囲む壁とを有する細長い導管を形成することを含む。この方法はまた、任意選択的に、細長い導管に波形をつけることを含む。微細構造は、押し出し中に、テープに、プレス加工され得るかまたは他の方法で形成され得る。微細構造は、押し出し後に、テープに、成形、印刷、切り込み、熱成形または他の方法で形成され得る。さらに、微細構造はまた、組み立てられた導管に、成形、印刷、切り込み、熱成形または他の方法で形成され得る。一部の方法において、マイクロチャネル形成後に表面を磨くかまたは研磨して、表面均一性を高めることが望ましいとし得る。
【0090】
押出プロセスは、押出物材料のマスターバッチ(すなわち押出材料)混合するまたは提供すること、マスターバッチを押出ダイヘッドに供給すること、押出物をテープに押し出すことを含む。
【0091】
その後、押し出されたまたは予め形成されたテープをらせん状に巻きつける。一部の実施形態では、補強ビーズがテープの巻回の上に置かれる。ビーズは、チューブの押しつぶしに対するらせん状の補強をもたらし、かつまた、テープの重ね合わせられた部分を溶融または接合するための熱源、化学的または機械的接着剤をもたらし得る。
【0092】
図15に、コルゲータ1505に通過する前の、押出機のダイ1503から出る、溶けた押出チューブ1501が示されている。コルゲータ1505から出る際、ヒーター線1507が、形成されたチューブ状部品の外面の周りに巻かれる。
【0093】
図15を参照して上述した好ましいタイプのチューブの製造の1つの利点は、金型ブロックBのいくつかが、チューブ状部品と同時に形成されたエンドカフ特徴を含み得ることである。プロセスの複雑さを減らしおよび二次的な製造プロセスをなくすことによって、製造速度が著しく増し得る。この方法は、別個のカフ形成プロセスからの改善であるが、従来技術の平らなカフの欠点は、この領域のチューブの壁の厚さを増すことができるようにするために、コルゲータが減速する必要があることである(押出機は、同じ速度のままである)。カフの厚さを増して、カフアダプタ取付具を備えるフープ強度およびシール性の追加を達成する。さらに、この厚みのある領域の溶けたポリマーの熱は、コルゲータブロックとの限られた接触時間の最中に除去することが困難であり、およびこれは、チューブ生産ラインの最大運転速度を制限する重要な要因となり得る。
【0094】
微細構造を備える加湿チャンバ
次いで
図7を参照すると、少なくとも1つの実施形態による加湿チャンバ129が示されている。加湿チャンバ129は、一般的に、入口701および出口703を含む。チャンバ129は、加熱板(
図1の要素131として上記で説明した)に装着されて、チャンバのベース705が加熱板131に接触するように、構成されている。ベース705は、好ましくは、熱伝導率が良好な金属、例えばアルミニウムおよび銅を含む。加湿チャンバ129は、さらに、ある量の液体、例えば水を保持するように構成されている。使用時、液体は、ベース705のかなりの部分に接触する。加熱板131は、チャンバ129のベース705を加熱し、それにより、チャンバ129内の液体の少なくとも一部が蒸発するようにする。使用時、ガスは、入口701を経由してチャンバ129に流入する。ガスはチャンバ129内で加湿され、出口703を通ってチャンバ129から流出する。
【0095】
図8Aは、加湿チャンバ129の微細構造801の例示的な構成を示す。前のセクションで説明した微細構造801の特性は、参照することにより援用される。この例で示すように、微細構造801は、加湿チャンバ129の周囲に垂直に配置される。換言すると、微細構造は、チャンバ129のベース705に対して垂直(または、ほぼ垂直)である。
図8Aの微細構造は、説明するためだけに、実際のサイズよりも大きく示している。垂直微細構造801は、水130を、チャンバ129の側面の上方へ運ぶため、より大きな表面領域の水130が、チャンバ129内の空気の流れに曝される。少なくとも1つの実施形態において、微細構造は、チャンバのベースから、チャンバ129の高さの100%、99%、95%、95~99%、90%、または90~95%(またはおよそそれらの値)の距離まで延在する。チャンバ129の高さは、50mm(または約50mm)とし得る。いくつかの構成では、1つ以上の添加剤、例えばSILWET界面活性剤(Momentive Performance Materials,Inc.(Albany、New York 米国))が水130に含まれて、微細構造による取り込みを強化する。
【0096】
図8Aでは、微細構造801はチャンバ129の全周に配置されるが、いくつかの実施形態においては、微細構造801は全周に延在しなくてもよいことが理解されたい。例えば、微細構造801は、チャンバ129の単一部分に、またはチャンバ129の周りに、ランダムなもしくは一定の間隔で配置され得る。
【0097】
図8Bは、
図8Aの微細構造の一部分の第1の拡大図を示す。
図8Bに示すように、水は、垂直微細構造801を上方へ移動する。微細構造801内のまたは微細構造上のマイクロスケールの水滴が、チャンバ129内の空気の流れに曝される。
図8Cは、
図8Aの微細構造の一部分の第2の拡大図を示す。
図8Cに示すように、空気は、チャンバ129を通り微細構造801を横切って流れ、微細構造801において水滴の少なくとも一部を蒸発させる。微細構造801から蒸発した水は、蒸気として空気の流れに入る。
【0098】
前述の図に示すように、微細構造801は、チャンバ129にある水130のより大きな表面領域を、通過する空気の流れに曝し、それにより、微細構造が全くないチャンバと比較して、チャンバ129の効率を高める。
【0099】
図8Dは、例示的な微細構造801の断面を示す。この例示的な実施形態では、微細構造801は、楔形のマイクロチャネルである。チューブの構成のための上述の微細構造の特性はまた、加湿チャンバ構成のための微細構造に組み込まれ得る。
【0100】
図9Aは、加湿チャンバ129の微細構造の別の例示的な構成を示す。図示の通り、微細構造は、加湿チャンバ129内に垂直および水平に配置され得る。垂直に配置された微細構造は、ベース605に対して垂直(またはほぼ垂直)であり、かつ901の符号を付し、および水平に配置された微細構造は、ベース705に対して平行(またはほぼ平行)であり、かつ903の符号を付す。ここでも、微細構造は、説明するためだけに、実際のサイズよりも大きく示している。概して、
図9Aの構成では、垂直に配置された微細構造901は、水130を、チャンバ129の側面の上方へ運ぶ。水平に配置された微細構造903は、垂直に配置された微細構造901からのマイクロスケールの水滴を、チャンバ129の上部の周りに広げ、微細構造の全くないチャンバと比較して、より大きな水の表面領域を空気の流れに曝す。それにより、微細構造901および903は、チャンバの効率を高める。
【0101】
図9Bは、
図9Aの微細構造の一部分の第1の拡大図を示す。
図9Bに示すように、水は、垂直に配置された微細構造901を上方へ移動する。マイクロスケールの水滴がそのそれぞれの垂直に配置された微細構造901の上部に達すると、水滴は、その対応する水平に配置された微細構造903(または一群の微細構造)に沿って移動する。
図9Cは、
図9Aの微細構造の一部分の第2の拡大図を示す。
図9Cに示すように、空気は、チャンバ129を通って、および微細構造901および903を横切って流れ、微細構造901および903内の水滴の少なくとも一部を蒸発させる。微細構造901および903から蒸発した水は、蒸気として空気の流れに入る。代替的な構成(図示せず)では、チャンバ129は、重力に抗するのではなく、重力によって水を微細構造の下の方へ流れるように構成し得る。さらに、チャネルとピンの組み合わせは、任意の所望の方法で流れを方向付け得る。
【0102】
垂直微細構造901は、上記で
図8D、および本開示のどこか他の箇所で示したものと同様にでき、かつその形状および特性の上記の説明は、参照することにより本書に援用される。
図9Dは、例示的な水平微細構造903の断面を示す。
【0103】
図9A~9Dの垂直に配置された微細構造901および水平に配置された微細構造903の形状および構成は、説明のために示したにすぎない。本発明は、開示の実施形態に限定されない。
【0104】
チューブの実施形態に関して上記で説明した理由で、表面の湿潤性および拡水性を向上させるために、所望の表面エネルギーを有する表面と組み合わせて微細構造を用いることが望ましいとし得る。金属およびガラスは、比較的高い表面エネルギーおよび良好な湿潤性を有することが公知である。その結果、チャンバ129の内表面は、金属またはガラスを含み得る。アルミニウムや銅などの金属は、これらの材料はまた容易に熱を伝導し、それにより、チャンバ内の蒸発率を高め得るため、望ましいとし得る。ガラスは、光透過性により、使用者がチャンバ内の液面を視覚的に検査できるため、望ましいとし得る。プラスチックは、低コストでありかつ製造において使い勝手が良いため、チャンバ129に特に望ましい材料である。しかしながら、上記で説明したように、プラスチックの表面エネルギーは比較的低い。その結果、上記で説明したように、プラスチックを添加剤で処理して、表面エネルギーを高めることが望ましいとし得る。少なくとも1つの構成では、チャンバ129の壁は、内壁が伝導性の金属、例えば金の層で被覆された、ポリ(メチルメタクリレート)プラスチックを含む。別の構成では、チャンバ129の壁の内表面は、セラミック材料、ガーネット、またはTiO2などの焼結材料を含む。
【0105】
上述の通り、微細構造面に加えられた追加的な熱は、蒸発率を劇的に高めることが判明した。その結果、チャンバ129は、壁に加熱フィラメントを組み込み、それにより、壁の加熱を改善し、それゆえ、微細構造内のまたは微細構造上の液体が蒸発させる可能性を高め得る。少なくとも1つの構成では、チャンバ129の周りに加熱シュラウドが配置されて、チャンバ129への熱伝達を高め得る。さらに、チャンバ129の周りに絶縁ジャケットが配置されて熱損失を回避し、かつチャンバ129内の保温性を高め得る。
【0106】
図23は、表面の少なくとも一部に微細構造2305を有するいくつものスタック2303を含む加湿チャンバ2301の実施形態を示す。図示の通り、スタック2303は、いくつものフィンまたは壁として配置され得る;しかしながら、他の構成は、タワー、コラム、またはフィンとタワーとコラムとの組み合わせを含み得る。図示の通り、スタック2303は、加湿チャンバ2301を通る空気の流れの方向に向けられたフィンとして配置され得る。しかしながら、他の構成はまた、チャンバ2301を通る流れに延在するように使用され、かつ微細構造2305とのよりしっかりとした混合およびより大きな相互作用、それゆえ、蒸発を誘発し得る。さらに、一部の実施形態では、加湿チャンバ2301を通過するガスに不規則な流れパターンまたは乱流を生じるように、異なるスタックは異なる高さを有してもよい。
【0107】
図示の実施形態では、加湿チャンバ2301を加熱し得る。一部の実施形態では、複数のスタック2303の1つ以上は、熱伝導性材料、例えば金属を含み、蒸発をさらに高め得る。一部の実施形態では、各スタック2303の露出した全ての表面が、微細構造2305を組み込んでもよく、微細構造は、水2307をチャンバ2301の底部から、空気の流れの多いまたは空気の湿気が少ないチャンバ2301の部分へと上方へ取り込み、およびそれゆえ、水をより蒸発させる。チャンバ2301は、四角形のボックスとして示す;しかしながら、他の形状、例えば矩形、シリンダー、球形、ドームなどを使用し得る。
【0108】
微細構造は、加湿システム内の任意の数の構造に組み込まれ得る。そのような構造の1つは、加湿チャンバ自体のベースまたは底部である。一部の実施形態では、加湿チャンバの底部での微細構造または凸凹した表面特徴の使用は、流体を分散させ、かつ蒸発を高めるために大きな表面領域を生じ得る。一部の実施形態では、微細構造の使用は、液体の深さを浅くするように機能し、それにより、蒸発を高め得る。一部の実施形態では、微細構造は、パターン、例えば線状もしくは直線パターンまたは円形パターンに構成し得る。一部の実施形態では、線状または直線パターンは、円形パターンよりも良好に表面領域を広くし得る。一部の実施形態では、パターンがなく、かつ表面は、不規則な突起または表面不規則性を含み得る。
【0109】
微細構造を備える患者インターフェース
凝縮液の管理は、患者インターフェースの設計において重要な課題である。その結果、いくつかの実施形態は、限定されるものではないが、マスク(例えば気管マスク、フェイスマスクおよび鼻マスク)、カニューレ、および鼻枕を含む患者インターフェースに微細構造が組み込まれ得るという認識を含む。
【0110】
図10Aは、例示的なインターフェース115の斜視的な前面図を示す。インターフェース115は、呼吸療法の分野で使用され得る。インターフェース115は、陽圧呼吸療法の形態の特定の有用性を有する。例えば、インターフェース115は、持続気道陽圧(「CPAP」)治療を投与するために使用し得る。さらに、インターフェース115は、変動気道陽圧(「VPAP」)治療および両レベル設定気道陽圧(「BiPAP」)治療と共に使用され得る。インターフェース115は任意の好適なCPAPシステムと共に使用され得る。
【0111】
インターフェース115は、任意の好適なマスク構成を含み得る。例えば、本発明のいくつかの特徴、態様および利点は、鼻マスク、フルフェイスマスク、口鼻マスクまたは任意の他の陽圧マスクとの有用性を見出し得る。図示のインターフェースは、フルフェイスマスク1001である。マスク1001は、一般的に、マスクアセンブリ1003および接続ポートアセンブリ1005を含む。マスクアセンブリ1003は、一般的に、使用時に使用者の顔と接触するマスクシール1007を含む。
【0112】
図10Bは、1つ以上の伝導性フィラメント1009を組み込む、
図10Aのマスク1001の構成を示す。
図10Bに示すように、伝導性フィラメント1009は、全体的に曲がりくねったパターンに配置され得る。しかしながら、格子形状の構成、コイル、またはリングなどの様々な構成が可能である。
【0113】
1つ以上の伝導性フィラメント1009は、マスク1001の壁の外表面(すなわち、使用中、周囲空気に面するように構成されたマスク1001の表面)に取り付けられ得る。1つ以上の伝導性フィラメント1009はまた、マスク1001の壁の内表面(すなわち、使用中、患者に面するように構成されたマスク1001の表面)に取り付けられ得る。1つ以上の伝導性フィラメント1009はまた、マスク1001の壁に埋め込まれ得るまたは他の方法で組み込まれ得る。最後の構成は、患者が伝導性フィラメント1009に触れないようにし得るため、望ましいとし得る。上述の構成の組み合わせはまた、マスク1001に組み込まれ得る。さらに、マスク1001の壁自体、またはマスク1001の壁の少なくとも一部分は、伝導性とし得る。例えば、マスク1001は、伝導性ポリマーまたは伝導性金属を含み得る。
【0114】
図11Aは、
図10のマスク1001の後面立面図である。
図11Aは、全体的に、マスクの内面上の微細構造1101の例示的な構成を示す。先のセクションで説明した微細構造1101の特性は、参照することにより援用される。例示的なマスク1001は、縦軸LAおよび横軸TAを有する。マスク1001は、縦軸LAの一方の側に第1の部分1103、および経線軸LAの他方の側に第2の部分1105を含む。概して、微細構造1101は、横軸TAに平行してマスク1001の下側に沿って延在する。縦軸LAの両側の微細構造1101は、鏡像パターンを形成する。微細構造1101は、縮尺通りではなく、および説明のために示したにすぎない。
【0115】
図11Bは、
図11Aの微細構造1101の一部分の第1の拡大図を示す。
図11Cは、例示的な微細構造1101の断面を示す。この例示的な実施形態では、微細構造はマイクロチャネルである。微細構造は、上述のものと同様とし、かつそれらの形状および特性に関する説明は、参照することにより本書に援用される。
【0116】
下記で説明するように、いくつかの実施形態は、患者インターフェースに微細構造を組み込むことにより、マクロスケールの水滴(すなわち、直径が1000μm(または約1000μm)超の水滴)の形成を防止するまたは減らすことによって、凝縮液管理を改善し得るという認識を含む。
図12Aは、微細構造を組み込んでいないインターフェースの表面上での水滴形成の概略図を示す。対照的に、
図12Bは、微細構造を組み込んでいるインターフェースの表面上での拡水の概略図を示す。両図において、インターフェースの外表面(すなわち、使用中、周囲空気に面するように構成されたインターフェースの表面)には1201を付し、およびインターフェースの内表面(すなわち、患者に面するように構成されたインターフェースの表面)には1203を付した。
【0117】
患者インターフェースは、非常に高い湿度条件を経験する。ボックス1205および1207に示すように、水滴は、インターフェースの内表面1203が滑らか(または比較的滑らか)であると、患者インターフェースの内表面に容易に形成し得る。ボックス1209に示すように、使用時、これらの水滴は、患者インターフェースの下部領域へと下の方へ流れ、一緒に溜まるか、または患者の顔に滴る。ボックス1211~1213に示すように、患者インターフェースの内表面1203への微細構造の組み込みは、この問題を改善し得る。ボックス1211および1213に示すように、微細構造は、微細構造の長さ(または長さの少なくとも一部分)に沿って凝縮液を広げ、それにより、凝縮液が液滴を形成しないようにする。ボックス1215に示すように、凝縮液は、大きな表面領域にわたって微細構造に沿って広がるため、凝縮液はより容易に蒸発し得る。この広がる作用はまた、凝縮液が下部領域に溜まる可能性または患者の顔に滴る可能性を低下させる。いくつかの実施形態においては、内表面1203への微細構造の組み込みによって、凝縮液を、患者インターフェースから、吸収層(図示せず)、例えばスポンジまたは通気性膜へ向け直す。
【0118】
図11Dは、
図10Aのマスク1001の後面立面図を示す。
図11Dは、マスクの内表面上の微細構造1101に沿った凝縮液の広がりを概略的に示す。
【0119】
少なくとも一部の構成では、1つ以上の伝導性フィラメント1009(
図10B)は、マスク1001の壁を加熱するように構成された1つ以上の加熱フィラメントを含む。1つ以上の伝導性フィラメント1009が少なくとも1つの加熱フィラメントを含むとき、加熱フィラメントは、給電装置に接続され、それゆえ、マスク1001の本体に熱を適用し得る。
図13に示すように、追加的な加熱は、微細構造に広がった凝縮液の蒸発を加速する。
【0120】
本発明の上述の説明は、その好ましい形態を含む。本発明の範囲から逸脱せずに、修正がなされ得る。本発明に関係する当業者に、添付の特許請求の範囲に定義された本発明の範囲から逸脱せずに、構造における多くの変更、および大きく異なる実施形態、および本発明の適用を提案する。本明細書の開示および説明は、純粋に説明のためのものであり、および全く限定を意図しない。