(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】ターボチャージャ診断装置、及びターボチャージャ診断システム
(51)【国際特許分類】
F02B 39/16 20060101AFI20240219BHJP
F02B 37/24 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
F02B39/16 B
F02B37/24
F02B39/16 H
(21)【出願番号】P 2020070283
(22)【出願日】2020-04-09
【審査請求日】2023-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(72)【発明者】
【氏名】早川 拓
(72)【発明者】
【氏名】山口 征則
【審査官】藤田 和英
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-265846(JP,A)
【文献】特開2009-215926(JP,A)
【文献】特開2020-051404(JP,A)
【文献】特開2006-063873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 33/00 - 41/10
F02D 43/00 - 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の可変容量ターボチャージャの性能の変化を診断するターボチャージャ診断装置であって、
複数の検出期間が順次設定されており、複数の前記検出期間のそれぞれについて、前記検出期間内において検出された最大ブースト圧を収集するブースト圧収集部と、
収集された前記検出期間ごとの前記最大ブースト圧の変動に基づいて、前記可変容量ターボチャージャの性能の変化を診断する性能診断部と、
を備え、
前記性能診断部は、
前記可変容量ターボチャージャの性能の変化を診断するための基準となる基準ブースト圧を設定する基準設定部と、
時間的に隣接する前記最大ブースト圧同士を比較し、直前に検出された前記最大ブースト圧よりも値が低下した前記最大ブースト圧が検出された場合、値が低下した前記最大ブースト圧である第1の最大ブースト圧と前記基準ブースト圧とに基づいて、前記可変容量ターボチャージャの性能の変化を診断する診断部と、
を備え、
前記基準設定部は、前記第1の最大ブースト圧よりも過去に検出された直近の基準設定個数分の前記最大ブースト圧に基づいて、前記基準ブースト圧を設定
し、
前記診断部は、前記第1の最大ブースト圧が前記基準ブースト圧よりも診断閾値以上低下した場合、前記可変容量ターボチャージャの性能の変化として過給能力が低下していると診断する、ターボチャージャ診断装置。
【請求項2】
前記診断部は
、前記第1の最大ブースト圧が前記基準ブースト圧よりも前記診断閾値以上低下しておらず、且つ前記第1の最大ブースト圧の次に検出された前記最大ブースト圧である第2の最大ブースト圧が前記第1の最大ブースト圧よりも値が低下している場合、前記第2の最大ブースト圧が前記基準ブースト圧よりも前記診断閾値以上低下し
たときに、前記可変容量ターボチャージャの性能の変化として過給能力が低下していると診断する、請求項
1に記載のターボチャージャ診断装置。
【請求項3】
車両の可変容量ターボチャージャの性能の変化を診断するターボチャージャ診断装置であって、
複数の検出期間が順次設定されており、複数の前記検出期間のそれぞれについて、前記検出期間内において検出された最大ブースト圧を収集するブースト圧収集部と、
収集された前記検出期間ごとの前記最大ブースト圧の変動に基づいて、前記可変容量ターボチャージャの性能の変化を診断する性能診断部と、
を備え、
前記性能診断部は、
前記可変容量ターボチャージャの性能の変化を診断するための基準となる基準ブースト圧を設定する基準設定部と、
時間的に隣接する前記最大ブースト圧同士を比較し、直前に検出された前記最大ブースト圧よりも値が高くなった前記最大ブースト圧が検出された場合、値が高くなった前記最大ブースト圧である第1の最大ブースト圧と前記基準ブースト圧とに基づいて、前記可変容量ターボチャージャの性能の変化を診断する診断部と、
を備え、
前記基準設定部は、前記第1の最大ブースト圧よりも過去に検出された直近の基準設定個数分の前記最大ブースト圧に基づいて、前記基準ブースト圧を設定
し、
前記診断部は、前記第1の最大ブースト圧が前記基準ブースト圧よりも診断閾値以上高くなった場合、前記可変容量ターボチャージャの性能の変化として過給能力が上昇していると診断する、ターボチャージャ診断装置。
【請求項4】
前記診断部は
、前記第1の最大ブースト圧が前記基準ブースト圧よりも前記診断閾値以上高くなっておらず、且つ前記第1の最大ブースト圧の次に検出された前記最大ブースト圧である第2の最大ブースト圧が前記第1の最大ブースト圧よりも値が高くなっている場合、前記第2の最大ブースト圧が前記基準ブースト圧よりも前記診断閾値以上高
いときに、前記可変容量ターボチャージャの性能の変化として過給能力が上昇していると診断する、請求項
3に記載のターボチャージャ診断装置。
【請求項5】
前記基準設定部は、前記第1の最大ブースト圧よりも過去に検出された直近の基準設定個数分の前記最大ブースト圧の平均値に基づいて、前記基準ブースト圧を設定する、請求項2~
4のいずれか一項に記載のターボチャージャ診断装置。
【請求項6】
前記性能診断部の診断結果が前記車両外に設けられた報知装置から報知されるように前記報知装置に対して報知指示を行う報知指示部を更に備える、請求項1~
5のいずれか一項に記載のターボチャージャ診断装置。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか一項に記載のターボチャージャ診断装置と、
前記車両に搭載され、前記ターボチャージャ診断装置に前記最大ブースト圧を送信するブースト圧送信装置と、
を備え、
前記ブースト圧送信装置は、
前記可変容量ターボチャージャのブースト圧を検出するブースト圧センサと、
前記ブースト圧センサの検出結果に基づいて、複数の前記検出期間のそれぞれについて、前記検出期間内において検出された前記最大ブースト圧を特定する最大ブースト圧特定部と、
前記最大ブースト圧特定部で特定された前記最大ブースト圧を前記ターボチャージャ診断装置に送信する送信部と、
を有し、
前記ターボチャージャ診断装置は、前記送信部から送信された前記最大ブースト圧を受信する受信部を有し、
前記ブースト圧収集部は、前記受信部で受信された前記最大ブースト圧を収集する、ターボチャージャ診断システム。
【請求項8】
請求項
6に記載のターボチャージャ診断装置と、
前記車両外に設けられた前記報知装置と、
を備えるターボチャージャ診断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボチャージャ診断装置、及びターボチャージャ診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、可変容量ターボチャージャが記載されている。この可変容量ターボチャージャは、可変ノズル(ノズルベーン)を揺動させることによってタービン翼車に導入される排気ガスの流量を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述したような可変容量ターボチャージャは、可変ノズルの揺動軸周りの摩耗等によって性能の変化が生じ得るものの、例えば車両の走行距離が同じであったとしても、車両の走行状況によっては可変容量ターボチャージャの性能の変化度合いが異なっている。
【0005】
そこで、本発明は、可変容量ターボチャージャの性能の変化を適切に診断可能なターボチャージャ診断装置、及びターボチャージャ診断システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車両の可変容量ターボチャージャの性能の変化を診断するターボチャージャ診断装置であって、複数の検出期間が順次設定されており、複数の検出期間のそれぞれについて、検出期間内において検出された最大ブースト圧を収集するブースト圧収集部と、収集された検出期間ごとの最大ブースト圧の変動に基づいて、可変容量ターボチャージャの性能の変化を診断する性能診断部と、を備える。
【0007】
ここで、可変容量ターボチャージャにおいては、性能の変化によって最大ブースト圧が変動する。また、車両の走行状況によっても、可変容量ターボチャージャのブースト圧が変動する。そこで、本発明に係るターボチャージャ診断装置は、検出期間ごとの最大ブースト圧の変動に基づいて可変容量ターボチャージャの性能の変化を診断する。これにより、ターボチャージャ診断装置は、可変容量ターボチャージャの性能の変化の診断を行う際に、車両の走行状況によって変動するブースト圧の影響を抑制することができる。従って、ターボチャージャ診断装置は、可変容量ターボチャージャの性能の変化を適切に診断できる。
【0008】
ターボチャージャ診断装置において、性能診断部は、可変容量ターボチャージャの性能の変化を診断するための基準となる基準ブースト圧を設定する基準設定部と、時間的に隣接する最大ブースト圧同士を比較し、直前に検出された最大ブースト圧よりも値が低下した最大ブースト圧が検出された場合、値が低下した最大ブースト圧である第1の最大ブースト圧と基準ブースト圧とに基づいて、可変容量ターボチャージャの性能の変化を診断する診断部と、を備え、基準設定部は、第1の最大ブースト圧よりも過去に検出された直近の基準設定個数分の最大ブースト圧に基づいて、基準ブースト圧を設定してもよい。この場合、可変容量ターボチャージャごとに性能の差があったとしても、性能の変化を診断するための基準ブースト圧を可変容量ターボチャージャの最大ブースト圧に基づいて適切に設定できる。これにより、ターボチャージャ診断装置は、可変容量ターボチャージャの性能の変化をより適切に診断できる。
【0009】
ターボチャージャ診断装置において、診断部は、第1の最大ブースト圧が基準ブースト圧よりも診断閾値以上低下した場合、可変容量ターボチャージャの性能が変化していると診断し、第1の最大ブースト圧が基準ブースト圧よりも診断閾値以上低下しておらず、且つ第1の最大ブースト圧の次に検出された最大ブースト圧である第2の最大ブースト圧が第1の最大ブースト圧よりも値が低下している場合、第2の最大ブースト圧が基準ブースト圧よりも診断閾値以上低下しているか否かに基づいて性能の変化を再度診断してもよい。このように、ターボチャージャ診断装置は、第1の最大ブースト圧が基準ブースト圧よりも診断閾値以上低下していない場合、最大ブースト圧が低下する前の最大ブースト圧に基づいて設定された基準ブースト圧を用いて診断を行う。すなわち、ターボチャージャ診断装置は、性能に変動が生じる前の正常な最大ブースト圧に基づいて設定された基準ブースト圧を継続して用いつつ、次に検出された第2の最大ブースト圧と基準ブースト圧とを比較して診断する。これにより、ターボチャージャ診断装置は、例えば、可変容量ターボチャージャの性能が徐々に変化するような場合であっても、可変容量ターボチャージャの性能の変化をより適切に診断できる。
【0010】
ターボチャージャ診断装置において、性能診断部は、可変容量ターボチャージャの性能の変化を診断するための基準となる基準ブースト圧を設定する基準設定部と、時間的に隣接する最大ブースト圧同士を比較し、直前に検出された最大ブースト圧よりも値が高くなった最大ブースト圧が検出された場合、値が高くなった最大ブースト圧である第1の最大ブースト圧と基準ブースト圧とに基づいて、可変容量ターボチャージャの性能の変化を診断する診断部と、を備え、基準設定部は、第1の最大ブースト圧よりも過去に検出された直近の基準設定個数分の最大ブースト圧に基づいて、基準ブースト圧を設定してもよい。この場合、可変容量ターボチャージャごとに性能の差があったとしても、性能の変化を診断するための基準ブースト圧を可変容量ターボチャージャの最大ブースト圧に基づいて設定できる。これにより、ターボチャージャ診断装置は、可変容量ターボチャージャの性能の変化をより適切に診断できる。
【0011】
ターボチャージャ診断装置において、診断部は、第1の最大ブースト圧が基準ブースト圧よりも診断閾値以上高くなった場合、可変容量ターボチャージャの性能が変化していると診断し、第1の最大ブースト圧が基準ブースト圧よりも診断閾値以上高くなっておらず、且つ第1の最大ブースト圧の次に検出された最大ブースト圧である第2の最大ブースト圧が第1の最大ブースト圧よりも値が高くなっている場合、第2の最大ブースト圧が基準ブースト圧よりも診断閾値以上高くなっているか否かに基づいて性能の変化を再度診断してもよい。このように、ターボチャージャ診断装置は、第1の最大ブースト圧が基準ブースト圧よりも診断閾値以上高くなっていない場合、最大ブースト圧が高くなる前の最大ブースト圧に基づいて設定された基準ブースト圧を用いて診断を行う。すなわち、ターボチャージャ診断装置は、性能に変動が生じる前の正常な最大ブースト圧に基づいて設定された基準ブースト圧を継続して用いつつ、次に検出された第2の最大ブースト圧と基準ブースト圧とを比較して診断する。これにより、ターボチャージャ診断装置は、例えば、徐々に性能が変化するような場合であっても、可変容量ターボチャージャの性能の変化をより適切に診断できる。
【0012】
ターボチャージャ診断装置において、基準設定部は、第1の最大ブースト圧よりも過去に検出された直近の基準設定個数分の最大ブースト圧の平均値に基づいて、基準ブースト圧を設定してもよい。この場合、ターボチャージャ診断装置は、最大ブースト圧のばらつきを考慮して、基準ブースト圧をより適切に設定できる。
【0013】
ターボチャージャ診断装置は、性能診断部の診断結果が車両外に設けられた報知装置から報知されるように報知装置に対して報知指示を行う報知指示部を更に備えていてもよい。この場合、ターボチャージャ診断装置は、報知装置に報知指示を行うことによって、車外の作業者等に可変容量ターボチャージャの性能が変化したことを報知できる。
【0014】
本発明に係るターボチャージャ診断システムは、上記のターボチャージャ診断装置と、車両に搭載され、ターボチャージャ診断装置に最大ブースト圧を送信するブースト圧送信装置と、を備え、ブースト圧送信装置は、可変容量ターボチャージャのブースト圧を検出するブースト圧センサと、ブースト圧センサの検出結果に基づいて、複数の検出期間のそれぞれについて、検出期間内において検出された最大ブースト圧を特定する最大ブースト圧特定部と、最大ブースト圧特定部で特定された最大ブースト圧をターボチャージャ診断装置に送信する送信部と、を有し、ターボチャージャ診断装置は、送信部から送信された最大ブースト圧を受信する受信部を有し、ブースト圧収集部は、受信部で受信された最大ブースト圧を収集する。
【0015】
このターボチャージャ診断システムにおいて、車両に搭載されたブースト圧送信装置は、検出期間ごとの最大ブースト圧を特定し、ターボチャージャ診断装置に送信することができる。そして、ターボチャージャ診断装置において、ブースト圧収集部は、ブースト圧送信装置から送信された最大ブースト圧を収集し、性能診断部は、可変容量ターボチャージャの性能の変化を診断できる。これにより、ターボチャージャ診断システムは、可変容量ターボチャージャの性能の変化を適切に診断できる。
【0016】
本発明に係るターボチャージャ診断システムは、上記のターボチャージャ診断装置と、車両外に設けられた報知装置とを備える。
【0017】
このターボチャージャ診断システムは、可変容量ターボチャージャの性能の変化を適切に診断できる。そして、ターボチャージャ診断システムは、報知装置から診断結果を報知させることによって、車外の作業者等に可変容量ターボチャージャの性能の変化を報知できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、可変容量ターボチャージャの性能の変化を適切に診断できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、実施形態に係るターボチャージャ診断システム全体の概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、車両に搭載されたブースト圧送信装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、ブースト圧の変化を示すグラフである。
【
図4】
図4は、ターボチャージャ診断装置の構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、最大ブースト圧の変化を示すグラフである。
【
図6】
図6は、車両管理ステーションに設置された報知装置の構成を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、可変容量ターボチャージャの性能を診断する処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図において、同一又は相当する要素同士には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
図1に示されるように、ターボチャージャ診断システム100は、車両Vに搭載された可変容量ターボチャージャ27(
図2参照)の性能の変化を診断するシステムである。診断結果は、車両管理ステーションSに設けられた報知装置30から報知される。ターボチャージャ診断システム100は、ターボチャージャ診断装置10、ブースト圧送信装置20、及び報知装置30を備えている。
【0022】
ターボチャージャ診断装置10は、車両V以外の場所に設置されている。ターボチャージャ診断装置10は、車両Vのブースト圧送信装置20から送信された最大ブースト圧をネットワークNを介して収集し、収集した最大ブースト圧に基づいて可変容量ターボチャージャ27の性能の変化を診断する。
図1では、車両Vが1台のみ示されているが、ターボチャージャ診断装置10は、複数台の車両Vから送信された最大ブースト圧を収集することができる。そして、ターボチャージャ診断装置10は、複数の車両Vのそれぞれについて、可変容量ターボチャージャ27の性能の変化を診断することができる。
【0023】
具体的には、
図2に示されるように、車両Vに搭載されたブースト圧送信装置20は、ブースト圧センサ21、送信部22、及び送信ユニット23を備えている。また、車両Vは、エンジン26を過給する可変容量ターボチャージャ27を備えている。可変容量ターボチャージャ27は、可変ノズルを揺動させることによってタービン翼車に導入される排気ガスの流量を制御している。例えば、可変ノズルの揺動部分が摩耗すること等によって、可変容量ターボチャージャ27の性能の変化が生じ得る。本実施形態における可変容量ターボチャージャ27は、可変ノズルの揺動部分が摩耗すること等によって性能が変化した場合、過給能力が低下するものとする。
【0024】
ブースト圧センサ21は、可変容量ターボチャージャ27からエンジン26へ送られる圧縮空気のブースト圧(圧縮空気の圧力)を検出する。ブースト圧センサ21としては、周知の種々の圧力センサを用いることができる。ブースト圧センサ21は、ブースト圧を常時、又は所定の周期で繰り返し検出している。
【0025】
送信部22は、ネットワークNを介してターボチャージャ診断装置10と通信を行う通信装置である。送信部22は、無線通信によってターボチャージャ診断装置10と通信を行う。なお、送信部22は、有線通信によってターボチャージャ診断装置10と通信を行う構成であってもよい。送信部22は、後述する送信ユニット23の最大ブースト圧特定部24で特定された最大ブースト圧をターボチャージャ診断装置10に送信する。
【0026】
送信ユニット23は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及び、RAM(Random Access Memory)を備える電子制御ユニットである。送信ユニット23は、機能的には、最大ブースト圧特定部24、及び送信制御部25を備えている。
【0027】
最大ブースト圧特定部24は、ブースト圧センサ21の検出結果に基づいて、複数の検出期間のそれぞれについて、検出期間内において検出された最大ブースト圧を特定する。ここで、検出期間とは、エンジン26の稼働時間が予め定めれた時間を経過するまでの期間である。また、検出期間は、エンジン26の稼働に伴って予め定めれた時間ごとに順次設定される。最大ブースト圧特定部24は、エンジン26の稼働に伴って、ある検出期間が終了すると、ブースト圧センサ21の検出結果に基づいて、終了した検出期間内で最大のブースト圧である最大ブースト圧を特定する。例えば、
図3に示されるように、最大ブースト圧特定部24は、時刻t1から時刻t2までの間の検出期間Aの中で、ブースト圧センサ21で検出された最大のブースト圧A1を検出期間Aにおける最大ブースト圧として特定する。また、最大ブースト圧特定部24は、検出期間Aにおける最大ブースト圧を特定した後、次の検出期間Bにおいて検出されたブースト圧B1を検出期間Bにおける最大ブースト圧として特定する。
【0028】
送信制御部25は、送信部22が行う送信を制御する。送信制御部25は、送信部22を制御することにより、最大ブースト圧特定部24で特定された検出期間ごとの最大ブースト圧を送信部22を用いてターボチャージャ診断装置10へ送信する。ここで、送信制御部25は、送信制御部25によって特定された最大ブースト圧を、複数まとめて送信することができる。この場合、送信制御部25は、予め定められた時間ごとに複数の最大ブースト圧まとめて送信してもよく、予め定められた数の最大ブースト圧が特定されたときにこれらの最大ブースト圧をまとめて送信してもよい。但し、送信制御部25は、最大ブースト圧が特定されるごとに特定された最大ブースト圧を送信してもよい。
【0029】
図4に示されるように、ターボチャージャ診断装置10は、受信部11、送信部12、及び診断ユニット13を備えている。受信部11は、ネットワークNを介してブースト圧送信装置20と通信を行う通信装置である。受信部11は、ブースト圧送信装置20の送信部22から送信された検出期間ごとの最大ブースト圧を受信する。送信部12は、ネットワークNを介して車両管理ステーションSに設けられた報知装置30と通信を行う通信装置である。送信部12は、後述する診断ユニット13の報知指示部16の指示に基づいて報知指示を報知装置30に送信する。
【0030】
診断ユニット13は、例えばCPU、ROM、及び、RAMを備える電子制御ユニットである。診断ユニット13は、機能的には、ブースト圧収集部14、性能診断部15、及び報知指示部16を備えている。
【0031】
ブースト圧収集部14は、順次設定された複数の検出期間のそれぞれについて、検出期間内において検出された最大ブースト圧を収集する。ここでは、ブースト圧収集部14は、受信部11で受信された検出期間ごとの最大ブースト圧を、受信部11から収集する。
【0032】
性能診断部15は、収集された検出期間ごとの最大ブースト圧の変動に基づいて、可変容量ターボチャージャ27の性能の変化を診断する。性能診断部15は、収集された検出期間ごとの最大ブースト圧を、検出された時期が古いものから順に、過去の最大ブースト圧と比較することによって性能の変化を診断する。より詳細には、性能診断部15は、基準設定部15a、及び診断部15bを備えている。
【0033】
診断部15bは、収集された最大ブースト圧に基づいて、時間的に隣接する最大ブースト圧同士を比較する。診断部15bは、直前に検出された最大ブースト圧よりも値が低下した最大ブースト圧が検出された場合、可変容量ターボチャージャ27の性能変化の監視対象として車両Vを設定する。以下、直前に検出された最大ブースト圧よりも値が低下した最大ブースト圧を「第1の最大ブースト圧」とする。すなわち、第1の最大ブースト圧は、性能変化の監視対象として車両Vが設定される元となった最大ブースト圧である。診断部15bは、第1の最大ブースト圧が検出された場合、第1の最大ブースト圧と基準設定部15aで設定された基準ブースト圧とに基づいて、可変容量ターボチャージャ27の性能の変化を診断する。
【0034】
ここで、基準設定部15aは、可変容量ターボチャージャ27の変化を診断するための基準となる基準ブースト圧を設定する。基準設定部15aは、基準設定部15aによって可変容量ターボチャージャ27の性能変化の監視対象として車両Vが設定された場合に、基準ブースト圧を設定する。基準設定部15aは、診断部15bによって検出された第1の最大ブースト圧よりも過去に検出された直近の基準設定個数分の最大ブースト圧に基づいて、基準ブースト圧を設定する。基準設定個数は、予め設定されている。本実施形態では、基準設定個数を5個とする。また、基準設定部15aは、第1の最大ブースト圧よりも過去に検出された直近の基準設定個数分の最大ブースト圧の平均値を、基準ブースト圧として設定する。
【0035】
具体的には、例えば、
図5に示されるように、時間的に隣接して検出された最大ブースト圧n
1と最大ブースト圧m
1とがある。最大ブースト圧m
1は、最大ブースト圧n
1よりも値が低下している。すなわち、最大ブースト圧m
1は、診断部15bにおいて、第1の最大ブースト圧m
1として検出される。この場合、基準設定部15aは、第1の最大ブースト圧m
1の過去に検出された直近の5個分の最大ブースト圧n
1~n
5の平均値を、基準ブースト圧として設定する。
【0036】
診断部15bは、第1の最大ブースト圧m
1が基準ブースト圧よりも診断閾値X以上低下した場合、可変容量ターボチャージャ27の性能が変化していると診断する。具体的には、
図5に示されるように、第1の最大ブースト圧m
1が、基準ブースト圧よりも診断閾値X以上低い第1の最大ブースト圧m
1aである場合、診断部15bは可変容量ターボチャージャ27の性能が変化していると診断する。
【0037】
第1の最大ブースト圧m1が、基準ブースト圧よりも診断閾値X以上低下していない第1の最大ブースト圧m1b又はm1cである場合、診断部15bは、性能変化の監視を継続する。すなわち、第1の最大ブースト圧m1b及びm1cのように、第1の最大ブースト圧m1が基準ブースト圧よりも診断閾値X以上低下していない場合、第1の最大ブースト圧m1の次に検出された最大ブースト圧に基づいて性能の変化を再度診断する。ここで、第1の最大ブースト圧m1の次に検出された最大ブースト圧を「第2の最大ブースト圧m2」とする。
【0038】
より詳細には、診断部15bは、第2の最大ブースト圧m2が、第1の最大ブースト圧m1よりも値が低下しているか否かを判定する。第1の最大ブースト圧m1が第2の最大ブースト圧m2よりも値が低下している場合、第2の最大ブースト圧m2が基準ブースト圧よりも診断閾値X以上低下しているか否かに基づいて、可変容量ターボチャージャ27の性能の変化を再度診断する。
【0039】
例えば、
図5に示されるように、第1の最大ブースト圧m
1として第1の最大ブースト圧m
1bが検出され、その次に第2の最大ブースト圧m
2として第2の最大ブースト圧m
2aが検出された場合を例に説明する。この場合、診断部15bは、第2の最大ブースト圧m
2aが基準ブースト圧よりも診断閾値X以上値が低いため、可変容量ターボチャージャ27の性能が変化していると診断する。ここで、診断部15bは、第2の最大ブースト圧m
2aと比較する基準ブースト圧として、基準設定部15aにおいて最大ブースト圧n
1~n
5に基づいて設定された基準ブースト圧を用いる。すなわち、最大ブースト圧が低下を開始する前の最大ブースト圧に基づいて設定された基準ブースト圧を継続して使用する。
【0040】
また、例えば、
図5に示されるように、第1の最大ブースト圧m
1として第1の最大ブースト圧m
1cが検出され、その次に第2の最大ブースト圧m
2として第2の最大ブースト圧m
2bが検出された場合を例に説明する。この場合、診断部15bは、第2の最大ブースト圧m
2bが基準ブースト圧よりも診断閾値X以上低くないため、性能変化の監視を継続する。
【0041】
一方、診断部15bは、第2の最大ブースト圧m
2が、第1の最大ブースト圧m
1よりも値が高くなった場合、可変容量ターボチャージャ27の性能変化の監視を解除する。この場合、基準設定部15aは、設定した基準ブースト圧(最大ブースト圧n
1~n
5に基づいて設定した基準ブースト圧)をリセットする。具体的には、例えば、
図5に示されるように、第1の最大ブースト圧m
1として第1の最大ブースト圧m
1cが検出され、その次に第2の最大ブースト圧m
2として第2の最大ブースト圧m
2cが検出された場合を例に説明する。この場合、診断部15bは、第2の最大ブースト圧m
2cが第1の最大ブースト圧m
1cよりも値が高くなっているため、性能変化の監視を解除する。
【0042】
このように、診断部15bは、診断閾値X以上低下したか否かを判定する対象となる最大ブースト圧を、当該最大ブースト圧よりも時間的に後に検出された最大ブースト圧に順次更新していく。診断部15bは、診断閾値X以上低下したか否かを判定する対象として更新した最大ブースト圧myが、当該最大ブースト圧myの直前に検出された最大ブースト圧my-1よりも低下を続ける限り、最大ブースト圧myと基準ブースト圧とを比較して性能の変化の診断を継続する。
【0043】
すなわち、診断部15bにおいて性能変化の監視対象として車両Vが設定され続ける条件は、次の式(1)で表される。
n1>m1>m2>・・・>my (1)
また、性能が変化していると診断される条件は、次の式(2)で表される。
X≦(基準ブースト圧-my) (2)
【0044】
報知指示部16は、性能診断部15の診断結果を車両V外に設けられた報知装置30(車両管理ステーションSに設けられた報知装置30)が報知するように、報知装置30に対して報知指示を行う。ここでは、報知指示部16は、報知指示を送信部12を介して車両管理ステーションSの報知装置30に送信する。また、報知指示部16は、診断部15bにおいて可変容量ターボチャージャ27の性能が変化したと診断された場合に、報知指示を行う。
【0045】
次に、車両管理ステーションSに設けられた報知装置30について説明する。車両管理ステーションSは、車両Vの管理を行うステーションである。報知装置30は、例えば、車両Vのディーラー、整備工場、車両Vの運行を管理する事業所等であってもよい。車両管理ステーションS内に報知装置30が設けられていることにより、車両管理ステーションS内で作業をする作業者は、報知装置30から報知された報知内容を認識できる。
【0046】
図6に示されるように、報知装置30は、受信部31、報知制御ユニット32、及び報知部33を備えている。受信部31は、ネットワークNを介してターボチャージャ診断装置10と通信を行う通信装置である。受信部31は、ターボチャージャ診断装置10から送信された報知指示を受信する。
【0047】
報知制御ユニット32は、例えばCPU、ROM、及び、RAMを備える電子制御ユニットである。報知制御ユニット32は、機能的には、報知制御部34を備えている。報知制御部34は、報知部33が行う報知を制御する。報知制御部34は、受信部31で受信された報知指示に基づいて、報知部33を通じて報知を実行する。ここで、報知指示は、可変容量ターボチャージャ27の性能が変化した場合に行われる。このため、報知制御部34は、受信された報知指示に基づいて、可変容量ターボチャージャ27の性能が変化したことを報知部33を通じて報知する。
【0048】
報知部33は、例えば、表示装置等を有しており、各種情報を作業者に報知する装置である。報知部33は、報知制御部34の制御に基づいて、可変容量ターボチャージャ27の性能が変化したことを報知する。例えば、報知部33から報知される情報には、可変容量ターボチャージャ27の性能が変化したこと、及び当該車両Vの識別情報等が含まれていてもよい。
【0049】
これにより、車両管理ステーションS内の作業者は、車両Vに搭載された可変容量ターボチャージャ27の性能が変化していることを認識できる。従って、例えば、作業者は、可変容量ターボチャージャ27を交換するための事前準備(可変容量ターボチャージャ27の用意等)を行うことができる。このように、可変容量ターボチャージャ27の性能が変化したという、可変容量ターボチャージャ27が故障する前の段階で可変容量ターボチャージャ27の状態を認識できるため、車両Vの利用者の利便性を向上させることができる。
【0050】
次に、可変容量ターボチャージャ27の性能を診断する処理の流れについて、
図7を用いて説明する。なお、
図7に示される処理は、直前に検出された最大ブースト圧よりもブースト圧が低下したことが検出され、車両Vが性能変化の監視対象として設定された場合に開始される。すなわち、
図5に示される例では、最大ブースト圧n
1よりもブースト圧が低い最大ブースト圧m
1(第1の最大ブースト圧)が検出され、監視対象として設定された場合に開始される。
【0051】
図7に示されるように、最大ブースト圧が低下して監視対象として設定されると、基準設定部15aは、可変容量ターボチャージャ27の変化を診断するための基準となる基準ブースト圧を設定する(S101)。次に、診断部15bは、直前よりもブースト圧が低下した第1の最大ブースト圧m
1が基準ブースト圧よりも診断閾値X以上低下しているか否かを判定する(S102)。第1の最大ブースト圧m
1が基準ブースト圧よりも診断閾値X以上低下している場合(S102:YES)、診断部15bは、可変容量ターボチャージャ27の性能が変化していると診断する(S103)。性能が変化していると診断されると、報知指示部16は、報知装置30に対して報知指示を行う。そして、性能診断部15は、今回の診断処理を終了し、再度、直前の最大ブースト圧よりもブースト圧が低下したことが検出された場合(監視対象として設定された場合)に、
図7に示される処理を実行する。
【0052】
一方、第1の最大ブースト圧m1が基準ブースト圧よりも診断閾値X以上低下していない場合(S102:NO)、診断部15bは、診断閾値X以上低下したか否かを判定する対象となる最大ブースト圧を、当該最大ブースト圧よりも時間的に後に検出された最大ブースト圧に更新する(S104)。ここでは、診断閾値X以上低下したか否かを判定する対象となる最大ブースト圧を、第1の最大ブースト圧m1の次に検出された第2の最大ブースト圧m2に更新する。
【0053】
判定対象として更新された最大ブースト圧が、直前に検出された最大ブースト圧よりも低下しているか否かを判定する(S105)。例えば、更新された第2の最大ブースト圧m
2が、直前に検出された第1の最大ブースト圧m
1よりも低下しているか否かを判定する。判定対象として更新された最大ブースト圧が、直前に検出された最大ブースト圧よりも低下していない場合(S105:NO)、診断部15bは、車両Vに対して設定された可変容量ターボチャージャ27の性能変化の監視対象の設定を解除する(S107)。また、基準設定部15aは、設定した基準ブースト圧をリセットする。そして、性能診断部15は、今回の診断処理を終了し、再度、直前の最大ブースト圧よりもブースト圧が低下したことが検出された場合(監視対象として設定された場合)に、
図7に示される処理を実行する。
【0054】
また、判定対象として更新された最大ブースト圧が、直前に検出された最大ブースト圧よりも低下している場合(S105:YES)、診断部15bは、判定対象として更新された最大ブースト圧が基準ブースト圧よりも診断閾値X以上低下しているか否かを判定する(S106)。例えば、診断部15bは、第2の最大ブースト圧m2が基準ブースト圧よりも診断閾値X以上低下しているか否かを判定する。判定対象として更新された最大ブースト圧が基準ブースト圧よりも診断閾値X以上低下していない場合(S106:NO)、診断部15bは、上述したS104の処理に戻る。そして、診断部15bは、基準ブースト圧よりも診断閾値X以上低下したか否かを判定する対象となる最大ブースト圧を、次に検出された最大ブースト圧に更新し、上述したS105~S107の処理を実行する。
【0055】
判定対象として更新された最大ブースト圧が基準ブースト圧よりも診断閾値X以上低下している場合(S106:YES)、診断部15bは、上述したように、可変容量ターボチャージャ27の性能が変化していると診断する(S103)。
【0056】
以上のように、ターボチャージャ診断装置10は、複数の検出期間のそれぞれについて、検出期間内において検出された最大ブースト圧を収集するブースト圧収集部14と、検出期間ごとの最大ブースト圧の変動に基づいて、可変容量ターボチャージャ27の性能の変化を診断する性能診断部15とを備えている。ここで、可変容量ターボチャージャ27においては、性能の変化によって最大ブースト圧が変動する。また、車両Vの走行状況によっても、可変容量ターボチャージャ27のブースト圧が変動する。そこで、本実施形態のターボチャージャ診断装置10は、検出期間ごとの最大ブースト圧の変動に基づいて可変容量ターボチャージャ27の性能の変化を診断する。これにより、ターボチャージャ診断装置10は、可変容量ターボチャージャ27の性能の変化を診断を行う際に、車両Vの走行状況によって変動するブースト圧の影響を抑制することができる。従って、ターボチャージャ診断装置10は、可変容量ターボチャージャ27の性能の変化を適切に診断できる。
【0057】
性能診断部15は、基準ブースト圧を設定する基準設定部15aと、第1の最大ブースト圧と基準ブースト圧とに基づいて、可変容量ターボチャージャ27の性能の変化を診断する診断部15bとを備えている。ここで、基準設定部15aは、第1の最大ブースト圧よりも過去に検出された直近の基準設定個数分(
図5に示される例では最大ブースト圧n
1~n
5までの5個分)の最大ブースト圧に基づいて、基準ブースト圧を設定する。この場合、基準設定部15aは、可変容量ターボチャージャ27ごとに性能の差があったとしても、性能の変化を診断するための基準ブースト圧を可変容量ターボチャージャ27の最大ブースト圧に基づいて適切に設定できる。これにより、ターボチャージャ診断装置10は、可変容量ターボチャージャ27の性能の変化をより適切に診断できる。
【0058】
診断部15bは、第1の最大ブースト圧が基準ブースト圧よりも診断閾値X以上低下しておらず、且つ第2の最大ブースト圧が第1の最大ブースト圧よりも値が低下している場合、第2の最大ブースト圧が基準ブースト圧よりも診断閾値X以上低下しているか否かに基づいて性能の変化を再度診断する。このように、ターボチャージャ診断装置10は、第1の最大ブースト圧が基準ブースト圧よりも診断閾値X以上低下していない場合、最大ブースト圧が低下する前の最大ブースト圧(
図5に示される例では最大ブースト圧n
1~n
5)に基づいて設定された基準ブースト圧を用いて診断を行う。すなわち、ターボチャージャ診断装置10は、性能に変動が生じる前の正常な最大ブースト圧に基づいて設定された基準ブースト圧を継続して用いつつ、次に検出された第2の最大ブースト圧と基準ブースト圧とを比較して診断する。これにより、ターボチャージャ診断装置10は、例えば、可変容量ターボチャージャ27の性能が徐々に変化するような場合であっても、可変容量ターボチャージャ27の性能の変化をより適切に診断できる。
【0059】
基準設定部15aは、第1の最大ブースト圧m1よりも過去に検出された直近の基準設定個数分の最大ブースト圧の平均値に基づいて、基準ブースト圧を設定する。この場合、ターボチャージャ診断装置10は、最大ブースト圧のばらつきを考慮して、基準ブースト圧をより適切に設定できる。
【0060】
ターボチャージャ診断装置10は、性能診断部15の診断結果を車両管理ステーションSに設けられた報知装置30が報知するように、報知装置30に対して報知指示を行う報知指示部16を備えている。この場合、ターボチャージャ診断装置10は、報知装置30に報知指示を行うことによって、車両Vの外部の作業者等に可変容量ターボチャージャ27の性能の変化を報知できる。
【0061】
ターボチャージャ診断システム100は、ターボチャージャ診断装置10と、車両Vに搭載されたブースト圧送信装置20とを含んでいる。このターボチャージャ診断システム100において、車両Vに搭載されたブースト圧送信装置20は、検出期間ごとの最大ブースト圧を特定し、検出期間ごとの最大ブースト圧をターボチャージャ診断装置10に送信することができる。そして、ターボチャージャ診断装置10において、ブースト圧収集部14は、ブースト圧送信装置20から送信された最大ブースト圧を収集し、性能診断部15は、可変容量ターボチャージャ27の性能の変化を診断できる。これにより、ターボチャージャ診断システム100は、可変容量ターボチャージャ27の性能の変化を適切に診断できる。
【0062】
ターボチャージャ診断システム100は、ターボチャージャ診断装置10と、車両V外の車両管理ステーションSに設けられた報知装置30とを含んでいる。このターボチャージャ診断システム100においてターボチャージャ診断装置10は、可変容量ターボチャージャ27の性能の変化を適切に診断できる。そして、ターボチャージャ診断システム100は、報知装置30から診断結果を報知させることによって、車両V外の作業者等に可変容量ターボチャージャ27の性能の変化を報知できる。
【0063】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、可変容量ターボチャージャ27は、摩耗等によって性能が変化した場合に過給能力が低下する場合(ブースト圧が低下する場合)を例に説明した。しかしながら、上述したターボチャージャ診断システム100(ターボチャージャ診断装置10)は、摩耗等によって可変容量ターボチャージャ27の性能が変化した場合に過給能力が上昇する場合(ブースト圧が上昇する場合)であっても、実施形態で説明した場合と同様に、可変容量ターボチャージャ27の性能の変化を診断できる。
【0064】
具体的には、診断部15bは、時間的に隣接する最大ブースト圧同士を比較し、直前に検出された最大ブースト圧よりも値が高くなった最大ブースト圧が検出された場合、値が高くなった最大ブースト圧である第1の最大ブースト圧と基準ブースト圧とに基づいて、可変容量ターボチャージャ27の性能の変化を診断する。ここでは、診断部15bは、第1の最大ブースト圧が基準ブースト圧よりも診断閾値X以上高くなった場合、可変容量ターボチャージャ27の性能が変化していると診断すればよい。また、診断部15bは、第1の最大ブースト圧が基準ブースト圧よりも診断閾値X以上高くなっておらず、且つ第1の最大ブースト圧の次に検出された最大ブースト圧である第2の最大ブースト圧が第1の最大ブースト圧よりも値が高くなっている場合、第2の最大ブースト圧が基準ブースト圧よりも診断閾値X以上高くなっているか否かに基づいて性能の変化を再度診断すればよい。この場合であってもターボチャージャ診断装置10は、実施形態におけるターボチャージャ診断装置10と同様に、可変容量ターボチャージャの性能の変化をより適切に診断できる。
【0065】
また、ターボチャージャ診断装置10は、車両Vに搭載されていてもよい。この場合、ターボチャージャ診断装置10の受信部11は、ブースト圧送信装置20の送信部22から、ネットワークNを介さずに最大ブースト圧を受信すればよい。このように、ターボチャージャ診断装置10が車両Vに搭載されている場合であっても、ターボチャージャ診断装置10は、可変容量ターボチャージャ27の性能の変化を診断できる。また、ターボチャージャ診断装置10は、車両管理ステーションSに設けられていてもよい。
【0066】
報知装置30は、車両管理ステーションSに設けられていることに限定されない。報知装置30は、ターボチャージャ診断装置10と同じ場所に設けられていてもよく、車両Vに搭載されていてもよい。報知装置30が車両Vに搭載されている場合、ターボチャージャ診断システム100は、可変容量ターボチャージャ27の性能が変化したことを車両Vの乗員に報知してもよい。
【0067】
また、基準設定部15aは、第1の最大ブースト圧よりも過去に検出された直近の基準設定個数分の最大ブースト圧の平均値を、基準ブースト圧として設定することに限定されない。例えば、基準設定部15aは、基準設定個数分の最大ブースト圧の平均値に対して補正を行った値を、基準ブースト圧として設定してもよい。すなわち、基準設定部15aは、第1の最大ブースト圧よりも過去に検出された直近の基準設定個数分の最大ブースト圧の平均値に基づいて基準ブースト圧を設定してもよい。また、基準設定部15aは、基準設定個数分の最大ブースト圧の平均値に基づいて基準ブースト圧を設定することに限定されない。基準設定部15aは、第1の最大ブースト圧よりも過去に検出された直近の基準設定個数分の最大ブースト圧に基づいて基準ブースト圧を設定すればよい。
【0068】
以上に記載された実施形態及び種々の変形例の少なくとも一部が任意に組み合わせられてもよい。
【符号の説明】
【0069】
10…ターボチャージャ診断装置、11…受信部、14…ブースト圧収集部、15…性能診断部、15a…基準設定部、15b…診断部、16…報知指示部、20…ブースト圧送信装置、21…ブースト圧センサ、22…送信部、24…最大ブースト圧特定部、27…可変容量ターボチャージャ、30…報知装置、V…車両。