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特許7438855重金属類含有物質の処理方法および処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】重金属類含有物質の処理方法および処理装置
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/20 20220101AFI20240219BHJP
   B09B 3/70 20220101ALI20240219BHJP
   G01N 33/2028 20190101ALI20240219BHJP
   B09B 101/30 20220101ALN20240219BHJP
【FI】
B09B3/20 ZAB
B09B3/70
G01N33/2028
B09B101:30
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020098563
(22)【出願日】2020-06-05
(65)【公開番号】P2021191567
(43)【公開日】2021-12-16
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村田 博一
(72)【発明者】
【氏名】川口 正人
【審査官】中田 光祐
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-080673(JP,A)
【文献】特開平8-309312(JP,A)
【文献】特開2005-305357(JP,A)
【文献】特開2009-125624(JP,A)
【文献】特開2013-031796(JP,A)
【文献】特開2021-035655(JP,A)
【文献】特開2020-116502(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 1/00- 5/00
B09C 1/00- 1/10
G01N 33/2028
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送経路上の重金属類含有物質に含まれる重金属類の含有量を所定の時間間隔で測定するステップと、
測定した重金属類の含有量に基づいて、重金属類の溶出を抑制するための薬剤の添加量を決定するステップと、
決定した添加量の薬剤を搬送経路上の重金属類含有物質に対して散布するステップと、
薬剤が散布される前後の重金属類含有物質の水溶液のpHとORPを測定するステップと、
測定したpHとORPに基づいて、薬剤の添加量を調整するステップとを有することを特徴とする重金属類含有物質の処理方法。
【請求項2】
搬送経路上の重金属類含有物質に含まれる重金属類の含有量を所定の時間間隔で測定する含有量測定手段と、
測定した重金属類の含有量に基づいて、重金属類の溶出を抑制するための薬剤の添加量を決定する添加量決定手段と、
決定した添加量の薬剤を搬送経路上の重金属類含有物質に対して散布する散布手段と、
薬剤が散布される前後の重金属類含有物質の水溶液のpHとORPを測定する水質測定手段と、
測定したpHとORPに基づいて、薬剤の添加量を調整する調整手段とを有することを特徴とする重金属類含有物質の処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭灰などの六価クロム含有物質を資材化するのに好適な重金属類含有物質の処理方法および処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、都市ごみ焼却灰等の燃え殻、煤塵、鉱滓、汚泥、コンクリート屑及び粉塵、汚染土壌など、生産活動に伴って発生する多くの副産物や未利用物の有効利用の課題は、利用先の目的に合った物理的指標と化学的指標を満たすことである。物理的指標についてはセメント添加により高強度に対する要求などをクリアすることが可能である。化学的要求については主に環境適合性が評価ポイントとなるので難しい。具体的には重金属類の溶出がネックとなっている。この溶出を抑えるためにはセメント等の配合量を増やすことで対応が可能となるのだが、要求される強度などの物理的指標を大幅に超えるセメント量を必要とするケースがほとんどである。よって、要求される物理的指標を広範囲に満たすには少量のセメント量での重金属類の溶出を抑制することが克服すべき課題となる。
【0003】
例えば、石炭火力発電所から排出される石炭灰は天然由来のため、多種の重金属類を含有しており、主に問題となる重金属類は六価クロム(Cr(VI))、ヒ素(As)、セレン(Se)、ホウ素(B)、フッ素(F)の5種類である。但し、As、Se、B、Fの4種は少量のセメント配合でも溶出抑制が可能であるが、Cr(VI)に関しては再溶出等の可能性があり、他の重金属類で必要なセメント量に比べ過剰な添加量が要求されるため、還元剤等によるCr(VI)に特化した対策が必要になる。
【0004】
図3に、石炭灰の種類と排出経路を示す。これまで資材化等に利用されなかった石炭灰(クリンカ、フライアッシュ)は、輸送設備やトラック等により運搬され貯灰場(灰捨地)に埋められている。このように埋められてしまう石炭灰には、輸送設備内でのクリンカの押出しや、サイロや中継タンクからの排出時、もしくは積載運搬時の粉塵対策のため、水が散布されている(図4を参照)。
【0005】
こうした石炭灰の資材化に向けた重金属類の従来の抑制技術として、還元剤や石灰、セメントや中性固化材、キレート剤、水を加え造粒等にすることで資源化する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。また、石炭灰の種類や粒径を管理し、複数のサイトを経由し、使用するサイトで使用時に混合することで資材化を目指している事例も知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-28594号公報
【文献】特開2010-75897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記の従来の特許文献1は、石炭灰に含有する重金属類に対して安全面を考慮し、最大値となる経験値から添加量を決定していたため、過剰な薬剤の添加量が必要になるという問題がある。また、石炭灰は日々炭種の違うものから発生していることから、含有量で還元剤等の溶出抑制量を決定していないため、その対応が難しく、煩雑さを招くおそれがある。
【0008】
また、上記の従来の特許文献2は、Cr(VI)対策として、蛍光X線装置でCr(VI)含有量を測定し、pHとの相関関係から溶出抑制剤等の添加量を決定していることから、水溶液になっていない乾燥試料への対応ができないという問題がある。また、Cr(VI)含有量とpHの関係では相関性が乏しく、適切な溶出抑制剤等の添加量決定が困難である。
【0009】
また、上記の従来の石炭灰に関しての散水の目的は、石炭灰等の輸送や粉塵対策がメインであるため、再利用を目的とした計画をしてきておらず、重金属類の溶出抑制処理が行われてこなかった。そのため、石炭灰等の灰捨地では、一定量の重金属類を含む排水が発生することから、排水処理施設が必要となり、安全面を考慮した重金属類の溶出対策が必要であった。また、一度灰捨地に運ばれた石炭灰等は重金属類が溶出することから、その資材の有効利用についても安全面の配慮から進んでいなかった。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、石炭灰などの重金属類含有物質からの重金属類の溶出を抑えるとともに、排水処理負荷を軽減することができる重金属類含有物質の処理方法および処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る重金属類含有物質の処理方法は、搬送経路上の重金属類含有物質に含まれる重金属類の含有量を所定の時間間隔で測定するステップと、測定した重金属類の含有量に基づいて、重金属類の溶出を抑制するための薬剤の添加量を決定するステップと、決定した添加量の薬剤を搬送経路上の重金属類含有物質に対して散布するステップと、薬剤が散布される前後の重金属類含有物質の水溶液のpHとORPを測定するステップと、測定したpHとORPに基づいて、薬剤の添加量を調整するステップとを有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る重金属類含有物質の処理装置は、搬送経路上の重金属類含有物質に含まれる重金属類の含有量を所定の時間間隔で測定する含有量測定手段と、測定した重金属類の含有量に基づいて、重金属類の溶出を抑制するための薬剤の添加量を決定する添加量決定手段と、決定した添加量の薬剤を搬送経路上の重金属類含有物質に対して散布する散布手段と、薬剤が散布される前後の重金属類含有物質の水溶液のpHとORPを測定する水質測定手段と、測定したpHとORPに基づいて、薬剤の添加量を調整する調整手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る重金属類含有物質の処理方法によれば、搬送経路上の重金属類含有物質に含まれる重金属類の含有量を所定の時間間隔で測定するステップと、測定した重金属類の含有量に基づいて、重金属類の溶出を抑制するための薬剤の添加量を決定するステップと、決定した添加量の薬剤を搬送経路上の重金属類含有物質に対して散布するステップと、薬剤が散布される前後の重金属類含有物質の水溶液のpHとORPを測定するステップと、測定したpHとORPに基づいて、薬剤の添加量を調整するステップとを有するので、石炭灰などの重金属類含有物質からの重金属類の溶出を抑えるとともに、排水処理負荷を軽減することができるという効果を奏する。
【0014】
また、本発明に係る他の重金属類含有物質の処理装置によれば、搬送経路上の重金属類含有物質に含まれる重金属類の含有量を所定の時間間隔で測定する含有量測定手段と、測定した重金属類の含有量に基づいて、重金属類の溶出を抑制するための薬剤の添加量を決定する添加量決定手段と、決定した添加量の薬剤を搬送経路上の重金属類含有物質に対して散布する散布手段と、薬剤が散布される前後の重金属類含有物質の水溶液のpHとORPを測定する水質測定手段と、測定したpHとORPに基づいて、薬剤の添加量を調整する調整手段とを有するので、石炭灰などの重金属類含有物質からの重金属類の溶出を抑えるとともに、排水処理負荷を軽減することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明に係る重金属類含有物質の処理方法の実施の形態を示す概略工程図である。
図2図2は、本発明に係る重金属類含有物質の処理装置の実施の形態を示す概略構成図である。
図3図3は、従来の石炭灰の種類と排出経路を示す図である。
図4図4は、従来の灰の運搬系統での加湿工程を示す図であり、(1)はエアエダクタ使用の場合、(2)はエアスライド使用の場合である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る重金属類含有物質の処理方法および処理装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0017】
(重金属類含有物質の処理方法)
まず、本発明に係る重金属類含有物質の処理方法の実施の形態について説明する。
本実施の形態は、重金属類の溶出が問題となる重金属類含有物質のうち、特に六価クロム(Cr(VI))の溶出が懸念される六価クロム含有物質に対して、還元剤等の溶出抑制剤(薬剤)による溶出抑制処理を実施するものである。六価クロムの溶出量が総クロム含有量に比例し、増加する傾向にあることを利用して、六価クロムに対する溶出抑制剤の添加量を総クロム含有量により事前に決定し、最適な添加量を添加できるようにする。本実施の形態では、六価クロム含有物質として石炭灰を想定しているが、本発明はこれに限るものではなく、他の六価クロム含有物質でもよい。また、六価クロム以外の重金属類を含有する重金属類含有物質に適用することも可能である。
【0018】
図1に示すように、本実施の形態に係る重金属類含有物質の処理方法は、搬送経路上の六価クロム含有物質に含まれる六価クロムの含有量を所定の時間間隔(例えば数分程度の間隔)で測定するステップS1と、測定した六価クロムの含有量に基づいて、六価クロムの溶出を抑制するための溶出抑制剤の添加量を決定するステップS2と、決定した添加量の溶出抑制剤を搬送経路上の六価クロム含有物質に対して散布するステップS3と、溶出抑制剤が散布される前後の六価クロム含有物質の水溶液のpHとORPを測定するステップS4と、測定したpHとORPに基づいて、溶出抑制剤の添加量を調整するステップS5とを有する。
【0019】
次に、各ステップS1~S5の具体的な処理内容について説明する。
ステップS1では、高周波誘導結合プラズマ(ICP)やエネルギー分散型蛍光X線(EDX)など、非接触非破壊で含有量を分析する方法や、レーザー照射により固体を昇華させガス体などとしてICP分光分析装置等により直接的に含有量を評価する方法等により、六価クロム含有物質の試料に含まれる総クロム含有量を測定する。これは短時間(数分~数時間)で測定可能である。続いて、例えば、総クロム含有量が六価クロムの含有量と相関関係(比例関係)にあることを利用して、測定した総クロム含有量から所定の相関関数を用いて六価クロムの含有量を推定する。
【0020】
ステップS2では、六価クロムの含有量と溶出量とが相関関係(比例関係)にあることを利用して、六価クロムの含有量から溶出量を推定し、この溶出量を抑制するのに好適な溶出抑制剤(還元剤)の添加量を決定する。これは短時間で決定可能である。
【0021】
例えば、石炭灰の場合には、以下の六価クロム含有量と溶出量の換算式を用いて、溶出量を推定してもよい。
六価クロム溶出量(mg/L)=六価クロム含有量(mg/kg)×比例定数×安全率
ただし、比例定数には、例えば0.003を、安全率には、例えば2.0を用いることができる。
【0022】
ステップS3では、決定した添加量の溶出抑制剤を散水設備に投入して溶出抑制剤を含む水を生成する。その後、散水設備から溶出抑制剤を含む水を、トラックやベルトコンベア等で搬送中の六価クロム含有物質に対して散布する。こうすることで、搬送経路において六価クロム含有物質からの六価クロムの溶出を抑制することができる。
【0023】
ステップS4では、含有量測定時(ステップS1)の六価クロム含有物質の試料と、溶出抑制剤投入後(ステップS3)の六価クロム含有物質の試料に対し、重量比で例えば1:10となるように加水した水溶液をそれぞれ作製し、一定の時間間隔(数分)で攪拌後、上澄み液のpHと酸化還元電位(ORP)を測定する。
【0024】
ステップS5では、含有量測定時のpHとORPの測定結果を、ステップS2における溶出抑制剤の添加量の決定処理に反映させる。一方、溶出抑制剤投入後のpHとORPの測定結果もフィードバックして、ステップS2における添加量の決定処理に反映させ、添加量を制御する。これにより、最適な添加量を添加できるようにする。
【0025】
本実施の形態によれば、六価クロム含有物質からの六価クロムの溶出を搬送経路上で抑えることができる。六価クロムの溶出が抑えられた資材を得ることができるので、石炭灰などの六価クロム含有物質の資源化利用の促進に資する。また、灰捨地のような埋立処分場に処分される前の搬送経路上で溶出抑制処理が行われるので、処分場における六価クロムを含む排水量が減る。したがって、処分場での排水処理装置への負荷を軽減することができる。本実施の形態は、特に、石炭灰のように天然由来の重金属を多く含んでいる資材に対し有効である。
【0026】
(重金属類含有物質の処理装置)
次に、本発明に係る重金属類含有物質の処理装置の実施の形態について説明する。本実施の形態は、上記の処理方法を処理装置として具現化したものである。
【0027】
図2は、石炭灰の搬送系統での散水設備を示している。この図に示すように、本実施の形態に係る重金属類含有物質の処理装置10は、電気集塵機EP等の石炭灰(六価クロム含有物質)の収集場所から石炭灰を外部に搬出または搬入するためのベルトコンベア等の搬送装置12(搬送経路)と、含有量測定手段14と、添加量決定手段16と、供給手段18と、散布手段20と、水質測定手段22と、調整手段24とを有する。
【0028】
含有量測定手段14は、搬送装置12上の石炭灰に含まれる六価クロムの含有量を所定の時間間隔(例えば数分の間隔)で測定するものである。含有量測定手段14は、例えば高周波誘導結合プラズマ(ICP)やエネルギー分散型蛍光X線(EDX)などを用いた非接触・非破壊方法で総クロム含有量を分析する分析装置を用いて構成することができる。この含有量測定手段14は、このような分析装置で測定した総クロム含有量に所定の相関関数を適用して六価クロムの含有量を推測する。
【0029】
添加量決定手段16は、測定した六価クロムの含有量に基づいて、溶出抑制剤の添加量を決定するものである。添加量決定手段16は、例えば、上記の換算式を用いて六価クロムの含有量から溶出量を推定し、この溶出量を抑制するのに好適な溶出抑制剤の添加量を決定する。
【0030】
供給手段18は、散布手段20に対して溶出抑制剤を供給するものであり、例えば薬剤タンクと供給管を用いて構成される。散布手段20に対する供給量は、添加量決定手段16により決定された添加量を基本とし、後述の調整手段24により適宜調整される。溶出抑制剤の供給処理は、図示しない制御手段によって制御される。
【0031】
散布手段20は、溶出抑制剤を含む水を搬送装置12上の石炭灰に対して散布するものである。散布手段20は、加湿機を用いた散水設備で構成されており、供給手段18から供給される溶出抑制剤を加湿器に備わるタンクに受け入れ可能である。このタンクでは、供給された溶出抑制剤と、水とを混合して溶出抑制剤を含む水を生成する。散布手段20は、この溶出抑制剤を含む水を搬送装置12上の石炭灰に対して散布する。こうすることで、石炭灰からの六価クロムの溶出を抑制する。
【0032】
水質測定手段22は、溶出抑制剤が散布される前後の石炭灰の水溶液のpHとORPを測定するものである。具体的には、含有量測定手段14による含有量測定時の石炭灰の試料と、散布手段20による溶出抑制剤投入後の石炭灰の試料をそれぞれサンプリングする。そして、これら試料に対し、重量比で例えば1:10となるように加水した水溶液を作製し、一定の時間間隔(数分)で攪拌後、上澄み液のpHと酸化還元電位(ORP)を測定する。
【0033】
調整手段24は、水質測定手段22で測定したpHとORPと、六価クロムの溶出量との相関関係を利用して、供給手段18から散布手段20への溶出抑制剤の供給量を調整制御するものである。具体的には、調整手段24は、含有量測定時のpHとORPの測定結果を、添加量決定手段16による溶出抑制剤の添加量の決定処理に反映させ、供給手段18からの供給量を調整する。一方、溶出抑制剤投入後のpHとORPの測定結果もフィードバックして、添加量決定手段16による添加量の決定処理に反映させ、供給手段18からの供給量を調整する。こうすることで、最適な添加量の溶出抑制剤が散布手段20から石炭灰に散布されるようにする。
【0034】
上記構成の動作および作用について説明する。
搬送装置12で搬送途中の石炭灰に対して、一定の時間間隔(例えば数分)で含有量測定手段14による分析処理を行い、六価クロムの含有量を測定する。同時に、試料を別途サンプリングして水溶液を調整し、水質測定手段22でpHとORPを測定する。
【0035】
続いて、添加量決定手段16は、含有量測定手段14、水質測定手段22の測定結果から短時間で溶出抑制剤の添加量を決定する。調整手段24は、測定されたpHとORPに基づいて溶出抑制剤の添加量を調整する。調整結果は、添加量決定手段16による添加量の決定処理に反映され、調整された添加量が供給手段18から散布手段20に供給される。
【0036】
次に、散布手段20によって、溶出抑制剤を含む水を搬送装置12の石炭灰に散布する。また、同時に、散布後の試料を別途サンプリングして水溶液を調整し、水質測定手段22でpHとORPを測定する。調整手段24が、測定されたpHとORPに基づいて溶出抑制剤の添加量を調整する。調整結果は、添加量決定手段16による添加量の決定処理に反映され、調整された添加量が供給手段18から散布手段20に供給される。こうすることで、最適な添加量の溶出抑制剤が石炭灰に散布されるようにする。
【0037】
本実施の形態によれば、石炭灰からの六価クロムの溶出を搬送装置12上で抑えることができる。六価クロムの溶出が抑えられた資材を得ることができるので、石炭灰の資源化利用の促進に資する。また、灰捨地に処分される前の段階で溶出抑制処理が行われるので、灰捨地における六価クロムを含む排水量が減る。したがって、灰捨地での排水処理装置への負荷を軽減することができる。
【0038】
以上説明したように、本発明に係る重金属類含有物質の処理方法によれば、搬送経路上の重金属類含有物質に含まれる重金属類の含有量を所定の時間間隔で測定するステップと、測定した重金属類の含有量に基づいて、重金属類の溶出を抑制するための薬剤の添加量を決定するステップと、決定した添加量の薬剤を搬送経路上の重金属類含有物質に対して散布するステップと、薬剤が散布される前後の重金属類含有物質の水溶液のpHとORPを測定するステップと、測定したpHとORPに基づいて、薬剤の添加量を調整するステップとを有するので、石炭灰などの重金属類含有物質からの重金属類の溶出を抑えるとともに、排水処理負荷を軽減することができる。
【0039】
また、本発明に係る他の重金属類含有物質の処理装置によれば、搬送経路上の重金属類含有物質に含まれる重金属類の含有量を所定の時間間隔で測定する含有量測定手段と、測定した重金属類の含有量に基づいて、重金属類の溶出を抑制するための薬剤の添加量を決定する添加量決定手段と、決定した添加量の薬剤を搬送経路上の重金属類含有物質に対して散布する散布手段と、薬剤が散布される前後の重金属類含有物質の水溶液のpHとORPを測定する水質測定手段と、測定したpHとORPに基づいて、薬剤の添加量を調整する調整手段とを有するので、石炭灰などの重金属類含有物質からの重金属類の溶出を抑えるとともに、排水処理負荷を軽減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上のように、本発明に係る重金属類含有物質の処理方法および処理装置は、石炭灰などの重金属類含有物質からの重金属類の溶出を抑えるのに有用であり、特に、その際の排水処理負荷を軽減するのに適している。
【符号の説明】
【0041】
10 重金属類含有物質の処理装置
12 搬送装置(搬送経路)
14 含有量測定手段
16 添加量決定手段
18 供給手段
20 散布手段
22 水質測定手段
24 調整手段
図1
図2
図3
図4