(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】記録材冷却装置、画像形成装置、及び画像形成システム
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20240219BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20240219BHJP
B65H 5/02 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
G03G15/20
G03G15/00 460
B65H5/02 T
(21)【出願番号】P 2020100038
(22)【出願日】2020-06-09
【審査請求日】2023-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片野 真吾
(72)【発明者】
【氏名】田中 健一
(72)【発明者】
【氏名】近藤 恵太
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-105164(JP,A)
【文献】特開2005-292612(JP,A)
【文献】特開2014-224915(JP,A)
【文献】特開2001-83763(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
G03G 15/00
B65H 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体に取り付けられ、加熱によりトナー像が定着された記録材を冷却する記録材冷却装置であって、
無端状の第一ベルトと、前記第一ベルトを張架する複数の第一ローラと、前記第一ベルトの内周面に当接して前記第一ベルトを冷却する冷却部材とを有する第一ユニットと、
前記第一ベルトの外周面に当接して記録材を挟持搬送するニップ部を形成する無端状の第二ベルトと、前記第二ベルトを張架する複数の第二ローラと、記録材の搬送方向に交差する幅方向に配置され、前記複数の第二ローラの両端部を支持する第一支持部材と第二支持部材とを有する第二ユニットと、
前記装置本体に固定され、前記第一支持部材を回動自在に保持する保持部材と、
前記保持部材に対し前記第一支持部材を任意の回動位置で固定する固定部材と、
を備える、
ことを特徴とする記録材冷却装置。
【請求項2】
前記保持部材に対し前記第一支持部材を任意の位置に回動させるための操作部材を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の記録材冷却装置。
【請求項3】
前記操作部材は、把持部と、前記保持部材に対し回動する回動部と、前記回動部に設けられた偏心カムとを有し、
前記第一支持部材と前記偏心カムとを一体動作可能に接続する接続部材を備え、
前記第一支持部材は、前記回動部の回動に応じて変位する前記偏心カムによって回動される、
ことを特徴とする請求項2に記載の記録材冷却装置。
【請求項4】
前記第二ローラのいずれかを傾動して前記幅方向に前記第二ベルトを往復移動させるステアリング手段を備える、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の記録材冷却装置。
【請求項5】
前記第一ユニットは、前記複数の第一ローラを回転可能に支持すると共に前記冷却部材を支持する第三支持部材と第四支持部材とを備え、
前記第一支持部材は、前記第三支持部材及び前記第四支持部材よりも剛性が低い、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の記録材冷却装置。
【請求項6】
前記第一ベルトと前記第二ベルトとが当接した当接位置と、前記第一ベルトと前記第二ベルトとが離間した離間位置とに、前記第一ユニットを前記第二ユニットに対し回動させる回動手段を備える、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の記録材冷却装置。
【請求項7】
前記回動手段は、前記第二支持部材に設けられる、
ことを特徴とする請求項6に記載の記録材冷却装置。
【請求項8】
前記冷却部材は、前記第一ベルトに接触して放熱する放熱板である、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の記録材冷却装置。
【請求項9】
装置本体と、
記録材にトナー像を形成する画像形成ユニットと、
前記画像形成ユニットにより形成されたトナー像を加熱して記録材に定着させる定着装置と、
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の記録材冷却装置と、を備える、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
記録材にトナー像を形成する画像形成ユニットと、トナー像が形成された記録材に加熱によりトナー像を定着させる定着装置とを有する画像形成装置と、
前記画像形成装置に連結される装置本体と、
前記装置本体に取り付けられて、前記画像形成装置から排出される記録材を冷却する、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の記録材冷却装置と、を備える、
ことを特徴とする画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトを介して記録材を冷却する記録材冷却装置、及びこれを備えた画像形成装置並びに画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置では、記録材に形成されたトナー像を定着装置で加熱、加圧することによって記録材にトナー像を定着させている。そのため、定着装置から搬送される記録材は定着前に比べて温度が高くなる。そして、トナー像定着後の記録材が温度の高いまま排出トレイに排出され積載されると、積載された記録材同士がトナーにより貼り付く虞がある。こうした記録材の貼り付きを抑制するために、トナー像定着後の記録材の温度を下げる記録材冷却装置が設けられている(特許文献1)。特許文献1に記載の記録材冷却装置はベルト冷却方式の装置であって、定着装置を通過した記録材を挟持搬送する一対のベルトの一方をヒートシンクにより冷却し、冷却したベルトを介して記録材の温度を下げるようにしている。こうした記録材冷却装置は、ベルトを張架する複数のローラを両端部で回転可能に支持する一対の支持板が例えば本体フレームなどに固定されることで、画像形成装置の装置本体に取り付けられる。
【0003】
上記のべルト冷却方式の記録材冷却装置では、ベルトを張架している複数のローラのうちのいずれかが他のローラに対し平行でなく相対的に傾いていると、回転するベルトが記録材搬送方向に交差する幅方向に移動し得る(所謂、ベルト寄り)。その場合に、ベルトが各ローラを支持している支持板に寄り過ぎて、ベルト端部が支持板に接触することがあり、ベルトや支持板などを破損させる虞があった。そこで、ベルトを張架する複数のローラのうちの1つ(ステアリングローラなどと呼ばれる)を、ベルト端部の位置に応じて傾動させることによりベルト寄りを抑制するステアリング制御が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のベルト寄りを生じさせるローラの相対的な傾きは、例えばベルトを張架する複数のローラや、各ローラを支持する一対の支持板などの、ベルトユニットを構成している各要素の部品公差によって生じ得る。そこで、従来ではベルトユニットにおける部品公差に起因して生じ得るローラの相対的な傾きを考慮して、上記のようにステアリング制御を行うことができるようにしている。
【0006】
しかしながら、従来ではステアリング制御を行っているにも関わらず、ベルトが寄り切ってしまい、ベルトや支持板などが破損することがあった。これは、記録材冷却装置や装置本体において取り付けに影響する箇所の部品公差に起因して、取り付け時に支持板が変位してしまい、ステアリング制御ではベルト寄りを抑制することが難しいほどのローラの相対的な傾きが生じ得るからである。
【0007】
本発明は上記問題に鑑み、記録材冷却装置を装置本体に取り付ける際に生じ得るローラの相対的な傾きを補正可能な記録材冷却装置、及びこれを備えた画像形成装置並びに画像形成システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る記録材冷却装置は、装置本体に取り付けられ、加熱によりトナー像が定着された記録材を冷却する記録材冷却装置であって、無端状の第一ベルトと、前記第一ベルトを張架する複数の第一ローラと、前記第一ベルトの内周面に当接して前記第一ベルトを冷却する冷却部材とを有する第一ユニットと、前記第一ベルトの外周面に当接して記録材を挟持搬送するニップ部を形成する無端状の第二ベルトと、前記第二ベルトを張架する複数の第二ローラと、記録材の搬送方向に交差する幅方向に配置され、前記複数の第二ローラの両端部を支持する第一支持部材と第二支持部材とを有する第二ユニットと、前記装置本体に固定され、前記第一支持部材を回動自在に保持する保持部材と、前記保持部材に対し前記第一支持部材を任意の回動位置で固定する固定部材と、を備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、記録材冷却装置を装置本体に取り付ける際に生じ得るローラの相対的な傾きを補正することが簡易な構成で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】第一ユニットが当接位置にある場合の記録材冷却装置を示す斜視図。
【
図4】第一ユニットが離間位置にある場合の記録材冷却装置を示す斜視図。
【
図5】圧解除レバーについて説明するための分解斜視図。
【
図7】記録材冷却装置を後支持板側から見た場合を示す斜視図。
【
図9】調整操作機構によるローラ調整について説明するための図であって、(a)調整板をJ方向に回転し調整する場合、(b)調整板をM方向に回転し調整する場合、(c)調整後。
【
図10】画像形成装置の外部に記録材冷却装置を設けた画像形成システムを示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<画像形成装置>
以下、本実施形態の記録材冷却装置について説明する。まず、本実施形態の記録材冷却装置を用いて好適な画像形成装置の概略構成について、
図1を用いて説明する。
図1に示す画像形成装置100は、電子写真方式のタンデム型のフルカラープリンタである。画像形成装置100は、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの画像を形成する画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdを有する。画像形成装置100は、装置本体100Aに接続された原稿読取装置(不図示)あるいは装置本体100Aに対し通信可能に接続されたパーソナルコンピュータ等の外部機器(不図示)からの画像情報に応じてトナー像を記録材Sに形成する。記録材Sとしては、普通紙、厚紙、ラフ紙、凹凸紙、コート紙等の用紙、プラスチックフィルム、布など、といった様々な種類のシート材が挙げられる。本実施形態の場合、画像形成部Pa~Pd、一次転写ローラ6a~6d、中間転写ベルト80、二次転写内ローラ14、二次転写外ローラ11、張架ローラ15、16により、記録材Sにトナー像を形成する画像形成ユニット200が構成されている。
【0012】
画像形成装置100の記録材Sの搬送プロセスについて説明する。記録材Sは給紙カセット10内に積載される形で収納されており、給紙ローラ13により画像形成タイミングに合わせて給紙カセット10から送り出される。給紙ローラ13により送り出された記録材Sは、搬送パス114の途中に配置されたレジストレーションローラ12へと搬送される。そして、レジストレーションローラ12において記録材Sの斜行補正やタイミング補正を行った後、記録材Sは二次転写部T2へと送られる。二次転写部T2は、二次転写内ローラ14と二次転写外ローラ11とにより形成される転写ニップ部であり、二次転写外ローラ11に二次転写電圧が印加されることに応じて記録材上にトナー像が転写される。
【0013】
以上説明した二次転写部T2までの記録材Sの搬送プロセスに対して、同様のタイミングで二次転写部T2まで送られて来る画像の形成プロセスについて説明する。まず、画像形成部について説明するが、各色の画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdは、現像装置1a、1b、1c、1dで使用するトナーの色がイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックと異なる以外はほぼ同様に構成される。そこで、以下では、代表としてブラックの画像形成部Pdについて説明し、その他の画像形成部Pa、Pb、Pcについては説明を省略する。
【0014】
画像形成部Pdは、主に現像装置1d、帯電装置2d、感光ドラム3d、感光ドラムクリーナ4d、及び露光装置5d等から構成される。矢印R1方向に回転される感光ドラム3dの表面は、帯電装置2dにより予め表面を一様に帯電され、その後、画像情報の信号に基づいて駆動される露光装置5dによって静電潜像が形成される。次に、感光ドラム3d上に形成された静電潜像は、現像装置1dにより現像剤を用いてトナー像に現像される。そして、画像形成部Pdと中間転写ベルト80を挟んで配置される一次転写ローラ6dに一次転写電圧が印加されることに応じて、感光ドラム3d上に形成されたトナー像が、中間転写ベルト80上に一次転写される。感光ドラム3d上に僅かに残った一次転写残トナーは、感光ドラムクリーナ4dにより回収される。
【0015】
中間転写ベルト80は、二次転写内ローラ14、張架ローラ15、16によって張架され、矢印R2方向へと駆動される。本実施形態の場合、張架ローラ16は中間転写ベルト80を駆動する駆動ローラを兼ねている。画像形成部Pa~Pdにより並列処理される各色の画像形成プロセスは、中間転写ベルト80上に一次転写された上流の色のトナー像上に順次重ね合わせるタイミングで行われる。その結果、最終的にはフルカラーのトナー像が中間転写ベルト80上に形成され、二次転写部T2へと搬送される。なお、二次転写部T2を通過した後の二次転写残トナーは、ベルトクリーナ22によって中間転写ベルト80から除去される。
【0016】
以上、それぞれ説明した搬送プロセス及び画像形成プロセスをもって、二次転写部T2において記録材Sとフルカラートナー像のタイミングが一致し、二次転写が行われる。その後、記録材Sは定着装置30へと搬送され、所定の圧力と熱量が加えられて記録材上にトナー像が定着される。定着装置30は、トナー像が形成された記録材Sを挟持搬送することにより、搬送される記録材Sを加熱、加圧してトナー像を記録材Sに定着させる。即ち、加熱、加圧によって記録材Sに形成されたトナー像のトナーが溶融、混合され、フルカラーの画像として記録材Sに定着される。このようにして、一連の画像形成プロセスは終了する。そして、本実施形態の場合、トナー像が定着された記録材Sは定着装置30から記録材冷却装置50へと搬送されて冷却される。例えば、記録材Sの温度は記録材冷却装置50の直前で90℃程度であるが、記録材冷却装置50の通過後で約60℃程度まで低下される。
【0017】
記録材冷却装置50により冷却された記録材Sは、片面画像形成の場合、一対の排出ローラ105に挟持搬送されて、そのまま排出トレイ120上に排出される。他方、両面画像形成の場合、切り替え部材110(フラッパーなどと呼ばれる)によって、搬送経路が排出トレイ120に続く経路から両面搬送パス111へ切り替えられ、排出ローラ105に挟持搬送される記録材Sは両面搬送パス111へと送られる。その後、反転ローラ112によって先後端が入れ替えられ、両面パス113を介して再び搬送パス114へと送られる。その後の搬送ならびに裏面(二面目)の画像形成プロセスに関しては、上述と同様なので説明を省略する。
【0018】
<記録材冷却装置>
次に、本実施形態の記録材冷却装置50について、
図2乃至
図9(c)を用いて説明する。本実施形態の記録材冷却装置50は、ベルト冷却方式の記録材冷却装置である。
図2に示すように、記録材冷却装置50は、第一ユニット501Uと第二ユニット502Uとを備えている。第一ユニット501Uは、無端状の第一ベルト501、第一ローラとしての第一ベルト張架ローラ(501a~501e)、ヒートシンク503、センサ部390等を有している。他方、第二ユニット502Uは、無端状の第二ベルト502、第二ローラとしての第二ベルト張架ローラ(502a~502e)、加圧ローラ(509a、509b)、センサ部390等を有している。
【0019】
第一ベルト501と第二ベルト502は共に、例えば強度の高いポリイミド樹脂などを用いて形成されたフィルム状のエンドレスベルトである。第二ベルト502は複数の第二ベルト張架ローラ502a~502eに掛け回され、第二ベルト張架ローラ502a~502eのうちの1つが、ベルト駆動モータ511によって回転される。本実施形態の場合、ベルト駆動モータ511により回転される第二ベルト張架ローラ502eは、第二ベルト502を駆動する駆動ローラに相当する。第二ベルト張架ローラ502eは、例えば直径が24.8mmのアルミ製のローラに、厚みが100μmのシリコーンゴムが外周面に形成されることで、第二ベルト502との摩擦係数が「1.1」に設定されている。
【0020】
そして、第二ベルト張架ローラ502aは後述するステアリングローラに相当し、例えば、直径が25mmのアルミ製のローラで、第二ベルト502との摩擦係数が第二ベルト張架ローラ502e(駆動ローラ)よりも小さい「0.5」に設定されている。第二ベルト張架ローラ502b~502dは第二ベルト502を張架するアイドラローラに相当し、例えば直径が25mmのアルミ製のローラで、第二ベルト502との摩擦係数が「0.1」に設定されている。ベルト駆動モータ511により第二ベルト張架ローラ502eが回転されることで、第二ベルト502は図中矢印C方向に回転する。
【0021】
また、本実施形態では、第二ベルト張架ローラ502eの軸端部に、駆動列504aが設設けられている。この駆動列504aは、ベルト駆動モータ511の回転駆動力を伝達して第一ベルト501を回転させるための駆動ギヤ列の一部を形成している。
【0022】
他方、第一ベルト501は複数の第一ベルト張架ローラ501a~501eに掛け回されて、第二ベルト502と当接し得るようにしている。そして、第一ベルト張架ローラ501a~501eのうち少なくともいずれか1つが、駆動列504a~504dからなる駆動ギヤ列を介したベルト駆動モータ511の駆動力により回転される。本実施形態の場合、駆動列504dにより回転される第一ベルト張架ローラ501eが、第一ベルト501を駆動する駆動ローラに相当する。第一ベルト張架ローラ501eは、例えば直径が24.8mmのアルミ製のローラに、厚みが100μmのシリコーンゴムが外周面に形成されることで、第一ベルト501との摩擦係数が「1.1」に設定されている。これにより、第一ベルト501は図中矢印B方向に回転する。即ち、第一ベルト501と第二ベルト502とは、同一の駆動源であるベルト駆動モータ511により、冷却ニップ部T4において同一方向に回転される。
【0023】
そして、第一ベルト張架ローラ501aは後述のステアリングローラに相当する。第一ベルト張架ローラ501aは、例えば直径が25mmのアルミ製のローラに、厚みが100μmのアクリル層が外周面に形成されることで、第一ベルト501との摩擦係数が第一ベルト張架ローラ501e(駆動ローラ)よりも小さい「0.5」に設定される。また、第一ベルト張架ローラ501b~501dは第一ベルト501を張架するアイドラローラに相当し、例えば直径が25mmのアルミ製のローラで、第一ベルト501との摩擦係数が「0.1」に設定されている。また、第一ベルト張架ローラ501eと第二ベルト張架ローラ502eとは互いにニップを形成していない。なお、上記のように駆動ローラ(501e、502e)の摩擦係数がステアリングローラ(501a、502a)の摩擦係数よりも大きい場合、駆動ローラが他のローラに対して相対的に傾いていると、ベルト寄りがより顕著にあらわれる。
【0024】
<ワンウェイクラッチ>
ベルト駆動モータ511の回転駆動力を伝達する駆動列504a~504dは、それぞれが歯車(ギヤ)である。そして、駆動列504a~504dのいずれかは駆動力の方向によって駆動力の伝達を遮断するワンウェイクラッチ505を有する。本実施形態の場合、ワンウェイクラッチ505は駆動列504dの内周に圧入され、駆動列504dの回転中心とワンウェイクラッチ505の回転中心とが同じになるように配設されている。即ち、駆動列504dは、ワンウェイクラッチ505を介して第一ベルト張架ローラ501eの回転軸に設けられている。
【0025】
ワンウェイクラッチ505は、第一ベルト張架ローラ501eと駆動列504dとが相対的に反対方向に移動する場合、駆動列504dによる駆動力を第一ベルト張架ローラ501eの回転軸に伝達しない。即ち、第一ベルト501の移動速度が第二ベルト502の移動速度よりも速くなると、ワンウェイクラッチ505により駆動列504dと第一ベルト張架ローラ501eの回転軸とが駆動遮断状態となる。その場合、第一ベルト張架ローラ501eが駆動列504dに対してフリー回転(空回り)する。つまり、駆動列504a~504dによる駆動伝達に関わらず、第一ベルト張架ローラ501eひいては第一ベルト501が回転する。
【0026】
ワンウェイクラッチ505を設けた場合、第一ベルト501の移動速度が第二ベルト502の移動速度より速くなると、駆動列504dはベルト駆動モータ511の駆動力を受け回転し、第一ベルト張架ローラ501eは第一ベルト501の回転を受け回転する。この場合、第一ベルト501は冷却ニップ部T4にて接触する第二ベルト502に連れ回っているだけであり、ベルト駆動モータ511による駆動力が付加されていない。したがって、第一ベルト501の移動速度は第二ベルト502の移動速度に倣って、第二ベルト502の速度と等しくなるように次第に低下する。
【0027】
上記のようにして、第一ベルト501の移動速度が低下することに伴い、第一ベルト張架ローラ501eの周速度がベルト駆動モータ511により駆動列504a~504cを介して駆動されている駆動列504dの周速度以下にまで低下する。すると、ワンウェイクラッチ505により駆動列504dと第一ベルト張架ローラ501eの回転軸とが再び駆動伝達状態となる。ワンウェイクラッチ505により駆動列504dと第一ベルト張架ローラ501eの回転軸とが駆動伝達状態になると、第一ベルト張架ローラ501eへベルト駆動モータ511の駆動力が伝達され、その力に従って第一ベルト張架ローラ501eが回転される。このとき、第一ベルト501の移動速度と第二ベルト502の移動速度とは同速度である。そして、再び第一ベルト501の移動速度が第二ベルト502の移動速度よりも速くなると、上記したようにワンウェイクラッチ505によって駆動遮断状態となる。
【0028】
このように、駆動列504dと第一ベルト張架ローラ501eの回転軸とにおける駆動の伝達と遮断とを変更可能に、ワンウェイクラッチ505が設けられる。そうすると、第一ベルト501の移動速度と第二ベルト502の移動速度とに速度差が生じた場合に、ワンウェイクラッチ505により、駆動列504dと第一ベルト張架ローラ501eの回転軸との間における駆動力の伝達の有無が繰り返される。これにより、第一ベルト501と第二ベルト502とに速度差が生じるのを抑制できる。
【0029】
<ヒートシンク>
トナー像が定着された記録材Sは、第一ベルト501と第二ベルト502との間に挟持され、これらが回転することによって搬送方向(矢印D方向)へと搬送される。その際に、記録材Sは、第一ベルト501と第二ベルト502とにより形成される冷却ニップ部T4を通過する。本実施形態の場合、第一ベルト501がヒートシンク503により冷却されている。ヒートシンク503は、記録材Sを効率よく冷却するために、冷却ニップ部T4を形成する箇所において第一ベルト501の内周面に当接するように配置されている。記録材Sは、冷却ニップ部T4を通過する際に第一ベルト501を介して冷却される。例えば、記録材Sの温度が記録材冷却装置50を通過する前で90℃程度である場合、記録材冷却装置50を通過した後で60℃程度になるように、記録材Sは冷却される。この記録材Sの冷却に伴い、記録材S上のトナーが冷やされて固着される。
【0030】
冷却部材としてのヒートシンク503は、例えばアルミなどの金属で形成された放熱板である。ヒートシンク503は、第一ベルト501に接触して第一ベルト501から熱を奪うための受熱部503aと、熱を放熱するための放熱部503bと、受熱部503aから放熱部503bに熱を伝導するためのフィンベース503cとを有する。放熱部503bは、空気との接触面積を稼いで効率のよい放熱を促すために、多数の放熱フィンにより形成されている。例えば、放熱フィンは厚みが1mm、高さが100mm、ピッチが5mmに設定され、フィンベース503cは厚みが10mmに設定される。そして、ヒートシンク503自体を強制的に冷却するために、ヒートシンク503(詳しくは放熱部503b)に向けて送風する1乃至複数の冷却ファン513が設けられている。この冷却ファン513の風量は、例えば2m3/minに設定される。なお、ヒートシンク503の冷却は、冷却ファン513に限らない。
【0031】
他方、第二ベルト502の内周側には、第二ユニット502Uのヒートシンク503に向かって第二ベルト502を加圧する加圧ローラ509a、509bが設けられている。加圧部材としての加圧ローラ509a、509bは、例えば9.8N(1kgf)の加圧力で第二ベルト502を加圧している。これにより、第二ベルト502を介し第一ベルト501をヒートシンク503(詳しくは後述の受熱部503a)に確実に当接させている。
【0032】
<ステアリング制御>
このような記録材冷却装置50では、第一ベルト501と第二ベルト502のような無端状のベルトを複数のローラで支持して回転させた場合に、回転しているベルトが幅方向に移動する蛇行現象が発生し得る。そこで、これら第一ベルト501と第二ベルト502をそれぞれ張架する複数のローラのうち1つをステアリングローラとして傾動し、これら第一ベルト501と第二ベルト502を幅方向に往復移動させることにより蛇行現象を抑制するようにしている。
【0033】
本実施形態において、第一ベルト張架ローラ501aと第二ベルト張架ローラ502aは、それぞれ第一ベルト501と第二ベルト502の寄りを制御するために設けられたステアリングローラである。これらのステアリングローラ(501a、502a)は、第一ベルト501と第二ベルト502のテンションが例えば約39.2N(約4kgf)になるように、第一ベルト501と第二ベルト502とを内周側から外側に向けて押圧する。そうするために、第一ベルト張架ローラ501aはバネ507aによって付勢され、第二ベルト張架ローラ502aはバネ508aによって付勢されている。ステアリングローラ(501a、502a)はステアリング機構400によって別々に、その回転軸線方向(幅方向)の中央部を回動支点として舵角が切られることにより、第一ベルト501や第二ベルト502の蛇行をコントロールする(ステアリング制御)。
【0034】
第一ベルト501と第二ベルト502それぞれの回転経路の一箇所には、第一ベルト501と第二ベルト502それぞれの端部位置を検出するセンサ部390が設けられている。このセンサ部390の検出信号に基づいて、回転中の第一ベルト501と第二ベルト502それぞれの端部位置が検出される。そして、検出した端部位置に基づいて上述したステアリング機構400が動作されることによって、ステアリングローラ(501a、502a)の舵角が調整される。
【0035】
<ベルトの接離について>
第一ユニット501Uは、冷却ニップ部T4を形成するように第一ベルト501と第二ベルト502とが当接した当接位置と、冷却ニップ部T4を形成しないように第一ベルト501と第二ベルト502とが離間した離間位置とに移動可能に設けられている。
図3は第一ユニット501Uが当接位置にある場合を示し、
図4は第一ユニット501Uが離間位置にある場合を示している。
【0036】
本実施形態の場合、第一ユニット501Uが第二ユニット502Uに対し、回動手段としての回動機構510の回動軸(不図示)を回動中心として上下に回動可能に設けられている。これは、記録材冷却装置50において、記録材Sが装置内に滞留する所謂ジャムが生じた場合に、作業者が第一ベルト501と第二ベルト502とを離間させて、冷却ニップ部T4に挟まれている記録材Sを除去できるようにするためである。また、後述のように、作業者が第一ベルト501や第二ベルト502を交換すべく、第一ベルト501や第二ベルト502を緩めることができるようにするためである。
【0037】
図3及び
図4に示すように、第一ベルト張架ローラ501a~501eの一端部側には第一前支持板524が配置されている。第一前支持板524は第一ベルト張架ローラ501a~501eの一端部側を回転可能に支持すると共に、ヒートシンク503の一端部側を支持している。また、第一ベルト張架ローラ501a~501eの他端部側には第一後支持板525が配置され、第一後支持板525は第一ベルト張架ローラ501a~501eの他端部側を回転可能に支持すると共に、ヒートシンク503の他端部側を支持している。これら第三支持部材としての第一前支持板524と、第四支持部材としての第一後支持板525は、それぞれが板金で形成された1枚の部材である。
【0038】
他方、第二ベルト張架ローラ502a~502eの一端部側には第二前支持板526が配置されており、第二前支持板526は第二ベルト張架ローラ502a~502e及び加圧ローラ509a、509b(
図2参照)の一端部側を回転可能に支持している。また、第二ベルト張架ローラ502a~502e及び加圧ローラ509a、509bの他端部側には、第二後支持板527が配置されている。第二後支持板527は、第二ベルト張架ローラ502a~502e及び加圧ローラ509a、509bの他端部側を回転可能に支持している。これら第一支持部材としての第二前支持板526と、第二支持部材としての第二後支持板527は、それぞれが板金で形成された1枚の部材である。
【0039】
<圧解除レバー>
本実施形態の記録材冷却装置50では、作業者が第一ベルト501を交換しやすくするために、第一ベルト501が張架された張架位置と、第一ベルト501が緩められた非張架位置との間で、ステアリングローラ(501a)を移動できるようにしている。ステアリングローラ(501a)が非張架位置にある場合、ステアリングローラ(501a)が張架位置にある場合よりも第一ベルト501への当接圧が小さくなり、第一ベルト501の張架が緩まる。同様に、作業者が第二ベルト502を交換するために、第二ベルト502が張架された張架位置と、第二ベルト502が緩められた非張架位置との間で、ステアリングローラ(502a)を手動操作により移動できるようにしている。
【0040】
図5に示すように、第一ユニット501Uと第二ユニット502Uのそれぞれにおいて、ステアリングローラ(501a、502a)の一端部側には、圧解除レバー(560、570)が回動自在に設けられている。作業者が圧解除レバー(560、570)を把持して回動することに応じて、ステアリングローラ(501a、502a)は張架位置と非張架位置との間を移動する。例えば、作業者により第一ユニット501Uの圧解除レバー560が矢印V方向に回動されると、第一ベルト501は張架された状態となり、圧解除レバー560が矢印V方向と反対方向に回動されると、第一ベルト501は張架されていない緩んだ状態となる。他方、作業者により第二ユニット502Uの圧解除レバー570が矢印W方向に回動されると、第二ベルト502は張架された状態となり、圧解除レバー570が矢印W方向の反対方向に回動されると、第二ベルト502は張架されていない緩んだ状態となる。
【0041】
そして、本実施形態の場合、第一ユニット501Uは、第一前支持板524に設けられているカバー取付部530、531のそれぞれに、ねじ等で取り付けられる前カバー550によって前面が覆われている。前カバー550は、第一ユニット501Uの圧解除レバー560を覆うように、カバー取付部530、531に着脱自在に取り付け可能である。そのため、第一ユニット501Uの場合、作業者は圧解除レバー560にアクセスして操作を行うために、前カバー550を取り外す必要がある。
【0042】
他方、第二ユニット502Uは、不図示の本体フレームに取り付けられる板金カバー555によって前面が覆われている。板金カバー555は、第二ユニット502Uの圧解除レバー570を覆うように配設された状態で、本体フレームに着脱自在に取り付けられる。そのため、作業者が圧解除レバー570にアクセスするには、板金カバー555を取り外す必要がある。ただし、第二ユニット502Uでは、圧解除レバー570の回動を抑制するために、作業者により把持される圧解除レバー570の把持部570aが、後述するユニット保持部850の前保持板851に形成されている嵌合孔851aに嵌合されている。この嵌合孔851aは、把持部570aの外形に倣う形状に形成されている。即ち、把持部570aが嵌合孔851aに嵌合されている状態では、圧解除レバー570が矢印W方向、矢印W方向の反対方向のどちらにも回動しないようにしている。したがって、第二ユニット502Uの場合、作業者は圧解除レバー570にアクセスして操作を行うために、板金カバー555だけでなく前保持板851をも取り外す必要がある。
【0043】
このように、本実施形態の場合、第一ユニット501Uでは、作業者が前カバー550を取り外すだけで圧解除レバー560を操作できるようにしている。その一方で、第二ユニット502Uでは、作業者が板金カバー555と前保持板851とを取り外さないと、圧解除レバー570を操作できないようにしている。これは、第一ユニット501Uの圧解除レバー560の方が、第二ユニット502Uの圧解除レバー570よりも使用頻度が高いためである。即ち、第一ベルト501は、ヒートシンク503と摺擦しているため、ヒートシンク503と摺擦しない第二ベルト502よりも摩耗しやすい。そのため、第一ベルト501の交換頻度が第二ベルト502の交換頻度よりも高く、作業者にとって交換頻度の高い第一ベルト501の交換性を向上させる観点から、上記のように第一ユニット501Uでは圧解除レバー560の操作を行いやすくしている。
【0044】
<除電針>
ベルト冷却方式の記録材冷却装置50の場合、第一ベルト501は回転時にヒートシンク503が摺擦することで帯電されやすく、第二ベルト502は第一ベルト501と接触して回転することで帯電されやすい。第一ベルト501や第二ベルト502が帯電した場合、記録材Sが第一ベルト501や第二ベルト502に貼りついたり、記録材Sがカールしたりして、記録材Sが装置内に滞留する所謂ジャムが生じやすくなる。また、第一ベルト501や第二ベルト502が帯電した状態では、冷却ニップ部T4(
図2参照)を通過した記録材Sが帯電され得る。記録材Sが帯電した場合、記録材Sが正しい姿勢で排出トレイ120(
図1参照)に排出され難くなって、排出トレイ120に適切に積載されない虞が生じ得る。
【0045】
そこで、
図6に示すように、第一ユニット501Uと第二ユニット502Uには、除電針600、601がそれぞれ冷却ニップ部T4(
図2参照)よりも記録材Sの搬送方向下流側に設けられている。具体的に、第一ユニット501Uにおいて、除電針600は貼り付け部材602(例えば、シールなど)によって、第一前支持板524と第一後支持板525とを連結している連結板金701に貼り付けられている。除電針600は、先端部が回転する第一ベルト501の外周面に接することで、第一ベルト501の帯電を抑制する。
【0046】
同様に、第二ユニット502Uにおいて、除電針601は貼り付け部材603(例えば、シールなど)によって、第二前支持板526と第二後支持板527とを連結している連結板金702に貼り付けられている。除電針601は、先端部が回転する第二ベルト502の外周面に接することで、第二ベルト502の帯電を抑制する。なお、連結板金701と連結板金702にはそれぞれ、冷却ニップ部T4を通過した記録材Sを両面側から抑えながら排出させるために、一対の排出ガイド700が設けられている。
【0047】
また、
図7に示すように、本実施形態では、第一ユニット501Uの第一後支持板525に、上記したステアリング機構400、冷却ファン513(ここでは1つ)が取り付けられている。他方、第二ユニット502Uの第二後支持板527にも、ステアリング機構400が取り付けられている。また、第一ユニット501Uの第一後支持板525と、第二ユニット502Uの第二後支持板527とに亘って、回動機構510が取り付けられている。それ故、回動機構510による第一ユニット501Uの回動に伴って、ステアリング機構400と冷却ファン513は第一ユニット501Uと共に回動する。
【0048】
第二後支持板527には、記録材冷却装置50を装置本体100A(
図1参照)に取り付ける際に位置決めするための位置決め部590が設けられている。位置決め部590は、記録材搬送方向に間隔を空けて配置され、幅方向に延設された複数の嵌合部591を有している。これら嵌合部591は例えば円筒の軸形状に形成され、装置本体100Aの本体フレームなどに形成されている被嵌合部に嵌め合わせられる。こうして、第二ユニット502Uの第二後支持板527側を基準にして、記録材冷却装置50が装置本体100Aに取り付けられるようにしている。
【0049】
そして、記録材冷却装置50はユニット保持部850を有している。ユニット保持部850は、第二前支持板526を保持する前保持板851と、第二後支持板527を保持する後保持板853と、前保持板851と後保持板853とを連結する2つの連結板852とにより、第二ユニット502Uを保持する保持枠体を形成する。
【0050】
前保持板851と連結板852には、取付ねじを挿通させる複数の取付孔がそれぞれ形成されている。本実施形態の場合、複数の嵌合部591がそれぞれ被嵌合部に嵌め合わせられた状態で、前保持板851と2つの連結板852のそれぞれが取付ねじによって本体フレームにねじ止めされることで、記録材冷却装置50は装置本体100Aに固定される。詳しくは後述するように、第二前支持板526は前保持板851に対し相対移動可能に設けられている(後述の
図8乃至
図9(c)参照)。なお、前保持板851は連結板852に対し着脱自在に設けられている。これは、上述したように、本実施形態の場合、前保持板851により圧解除レバー570の回動が抑制されており、作業者は圧解除レバー570を操作するために前保持板851を取り外す必要があるからである。
【0051】
ところで、従来のベルト冷却方式の記録材冷却装置では、ステアリング制御を行っているにも関わらず、ベルトが寄り切ってしまい、ベルトや、ベルトを張架するローラを支持している前支持板や後支持板などを破損させることがあった。特に、ヒートシンク503を有していない第二ユニット502Uにおいて顕著であった。これは、以下の理由による。
【0052】
ヒートシンク503を有する第一ユニット501Uでは、重量のあるヒートシンク503を支持するために、高剛性の板金によって第一前支持板524や第一後支持板525が形成されている。これに対し、第二ユニット502Uでは、ヒートシンク503を支持する必要がないために、低剛性の板金によって第二前支持板526が形成されている。第二後支持板527に関しては、回動機構510を取り付けるために、高剛性の板金を用いて形成されている。それ故、従来では記録材冷却装置や装置本体100Aにおける取り付けに影響する箇所の部品公差に起因して、第二前支持板526が変形し第二後支持板527に対して相対的に傾いた状態で、記録材冷却装置が装置本体100Aに取り付けられることがあった。
【0053】
例えば、記録材冷却装置における位置決め部590の嵌合部591やユニット保持部850の取付孔、装置本体100Aにおける嵌合部591に嵌め合わせられる被嵌合部や取付ねじが螺合される孔などの部品公差により、第二前支持板526は変形する。そうした場合、第二ベルト502を張架する各ローラに想定以上の相対的な傾きが生じてしまい、第二ユニット502Uにおいてステアリングローラ(502a)を傾動させるステアリング制御を行っても、第二ベルト502の寄りを抑制することが難しくなる。
【0054】
図2に示すように、第二前支持板526が第二後支持板527(
図3参照)に対し矢印G方向へ傾いた状態で、記録材冷却装置が装置本体100Aに固定されたとする。すると、ステアリングローラ(502a)の第二前支持板526に支持される一端部が、ステアリングローラ(502a)の第二後支持板527に支持される他端部よりも下方に位置するように、ステアリングローラ(502a)が第二ベルト502の外側に傾く。それ故、ステアリングローラ(502a)に張架されている第二ベルト502は、第二後支持板527側に移動しやすくなる。
【0055】
反対に、第二前支持板526が第二後支持板527(
図3参照)に対し矢印H方向へ傾いた状態で、記録材冷却装置が装置本体100Aに固定されたとする。すると、ステアリングローラ(502a)の第二前支持板526に支持される一端部が、ステアリングローラ(502a)の第二後支持板527に支持される他端部よりも上方に位置するように、ステアリングローラ(502a)が第二ベルト502の内側に傾く。それ故、ステアリングローラ(502a)に張架されている第二ベルト502は、第二前支持板526側に移動しやすくなる。
【0056】
そして、第二前支持板526の第二後支持板527に対する矢印G方向への傾きが大きければ大きいほど、ステアリング制御に伴い第二ベルト502が第二前支持板526へ向かうときの移動速度は、第二後支持板527へ向かうときの移動速度よりも速くなる。反対に、第二前支持板526の第二後支持板527に対する矢印H方向への傾きが大きければ大きいほど、ステアリング制御に伴い第二ベルト502が第二前支持板526へ向かうときの移動速度は、第二後支持板527側へ向かうときの移動速度よりも遅くなる。このように、第二前支持板526の第二後支持板527に対する傾きが大きくなると、第二ベルト502が第二前支持板526側へ向かうときの移動速度と、第二ベルト502が第二後支持板527側へ向かうときの移動速度との差が大きくなる。そして、第二ベルト502の移動速度が大きくなり過ぎると、第二ベルト502の幅方向の移動向きを反転させるためにステアリング制御が行われたとしても、第二ベルト502が過渡的な滑りを起こして反転することなく寄り切ってしまうことがあった。
【0057】
<調整操作機構>
上記点に鑑み、本実施形態では、作業者が記録材冷却装置50を装置本体100Aに取り付ける際に、第二前支持板526(及び第二後支持板527)に支持されているローラの相対的な傾きを調整できるようにしている。作業者はユニット保持部850(詳しくは、前保持板851、連結板852、後保持板853)を装置本体100Aに固定した後に、第二前支持板526に支持されているローラの相対的な傾きを調整し得る。そうできるようにするために、記録材冷却装置50には調整操作機構800が設けられている。作業者により調整操作機構800が操作されると、第二前支持板526が前保持板851に対し相対的に回動され、これに応じて第二前支持板526に支持されているローラの相対的な傾きが変わる。以下、この点について
図8乃至
図9(c)を用いて説明する。
【0058】
図8に示すように、第二ユニット502Uでは、第二前支持板526が本体フレームにねじ止めされる前保持板851に取り付けられている。保持部材としての前保持板851には、本体フレームにねじ止めする際に取付ねじ(不図示)を挿通させる複数(ここでは2つ)の取付孔970が形成されている。この取付孔970は幅方向に長い長孔であって、記録材搬送方向の上流側と下流側とにおいて、部品公差に起因する第二前支持板526の幅方向のずれを修正して、前保持板851を本体フレームに固定できるようにしている。
【0059】
第二前支持板526には、前保持板851へ向け突出する軸形状の第一突出軸520と第二突出軸521とが形成されている。第二前支持板526が前保持板851に対し第一突出軸520を回動中心として回動できるように、第一突出軸520は、その先端が前保持板851に形成された嵌合孔529に嵌め合わされている。また、第二前支持板526には、第二突出軸521を挟むように2つの支持孔957と、第一突出軸520と第二突出軸521との間に1つの取付部952とが形成されている。作業者は、後述するようにしてローラの相対的な傾きを調整した後に、固定部材としての固定ねじ950を取付部952に取り付けることで、第二前支持板526を任意の回動位置で前保持板851に固定できる。なお、前保持板851には第二前支持板526を固定するために用いる固定ねじ950を挿通させる長孔の貫通孔951が形成されている。
【0060】
前保持板851において第二前支持板526に面する側と反対側には、調整操作機構800が前保持板851に回動自在に設けられている。操作部材としての調整操作機構800は、調整板801と偏心カム802とを有している。回動部としての調整板801は略L字形状に形成され、使用者が把持する把持部801aを有する。この調整板801には、偏心カム802を嵌合させる略D字状の嵌合孔801bと、この嵌合孔801bを挟むようにして、ねじ955を挿通させる2つの円弧状の挿通孔801cとが形成されている。偏心カム802は嵌合孔801bに嵌合されることで、調整板801の回動にあわせて調整板801と一緒に回動し変位する。偏心カム802のカム面802bは、前保持板851に形成された孔部518aと係合している。そして、偏心カム802には、第二前支持板526の第二突出軸521の先端を支持する支持孔802aが形成されている。つまり、接続部材としての第二突出軸521により、第二前支持板526と偏心カム802とが一体動作可能に接続されている。
【0061】
なお、この調整操作機構800の回動範囲は、調整板801に形成された挿通孔801cのそれぞれに挿通された2つのねじ955によって制限される。ねじ955は、挿通孔801cと、前保持板851に形成された貫通孔956とを通されて、第二前支持板526に形成された支持孔957に取り付けられている。
【0062】
上述した構成によると、第二前支持板526は固定ねじ950により前保持板851に固定されていない状態で、使用者による調整板801の操作により第一突出軸520を回動中心に前保持板851に対して回動する。
図9(a)乃至
図9(c)に具体例を示す。
【0063】
図9(a)に示すように、第二ベルト張架ローラ502a~502e(
図2参照)を支持している第二前支持板526が矢印L方向に変形した状態で、ユニット保持部850が装置本体100Aに固定されたとする。この場合、第二ユニット502Uや装置本体100A(
図1参照)の部品公差に起因して第二前支持板526が変形することで、第二ベルト張架ローラ502a~502eの少なくともいずれかが相対的に傾き得る。また、このときの調整操作機構800の位置(初期位置)は、第二前支持板526の変形具合に応じて、より詳しくは第二前支持板526の第二後支持板527に対する傾きの程度に応じて変わる。
【0064】
図9(a)に示した状態である場合、作業者は固定ねじ950を用いて第二前支持板526を前保持板851に固定する前に、調整操作機構800の調整板801を矢印J方向に回動させる。作業者により調整板801が矢印J方向に回動されると、偏心カム802が第二前支持板526の第二突出軸521を重力方向に押し上げる。これにより、第二前支持板526が矢印M方向に回動される。なお、
図9(a)では、調整板801の矢印K方向への回動が2つのねじ955により制限されている状態を示している。
【0065】
あるいは、
図9(b)に示すように、第二前支持板526が矢印M方向に変形した状態で、ユニット保持部850が装置本体100Aに固定されたとする。この場合でも、第二ユニット502Uや装置本体100Aの部品公差に起因して第二前支持板526が変形することで、第二ベルト張架ローラ502a~502eの少なくともいずれかが相対的に傾き得る。
【0066】
図9(b)に示した状態である場合、作業者は固定ねじ950を用いて第二前支持板526を前保持板851に固定する前に、調整操作機構800の調整板801を矢印K方向に回動させる。作業者により調整板801が矢印K方向に回動されると、偏心カム802が第二前支持板526の第二突出軸521を重力方向に押し下げる。これにより、第二前支持板526が矢印L方向に回動される。なお、
図9(b)では、調整板801の矢印J方向への回動が2つのねじ955により制限されている状態を示している。
【0067】
上記のように、作業者が調整板801を矢印J方向や矢印K方向に回動すると、第二前支持板526が矢印M方向や矢印L方向に回動され、第二ユニット502Uや装置本体100Aの部品公差に起因する第二前支持板526の変形が補正される。第二前支持板526の変形が補正されると、補正前に第二前支持板526に支持されている第二ベルト張架ローラ502a~502eが相対的に傾いていても、
図9(c)に示すように、第二ベルト張架ローラ502a~502eが略平行な状態に調整される。その後、作業者は固定ねじ950を用いて第二前支持板526を前保持板851に固定する。第二前支持板526は固定ねじ950により前保持板851に固定されることで、部品公差に起因する変形が抑制された補正後の状態に維持される。このように、第二ベルト張架ローラ502a~502eを略平行な状態に調整することで、ステアリング制御によって第二ベルト502のベルト寄りを抑制することができる。
【0068】
上述した本実施形態では、第二ユニット502Uに調整操作機構800を設け、作業者が記録材冷却装置50を装置本体100Aに取り付ける際に、第二ユニット502Uや装置本体100Aの部品公差に起因する第二前支持板526の変形を補正し得る。これに対し、第一ユニット501Uには調整操作機構800を設けていない。これは、上述したように、第一ユニット501Uでは、ヒートシンク503を支持するために高剛性の第一前支持板524と第一後支持板525を用い、これに第一ベルト張架ローラ501a~501eを支持させているからである。第一前支持板524と第一後支持板525とが高剛性であれば、例え第一ユニット501Uが装置本体100Aに取り付けられるとしても、第一前支持板524と第一後支持板525には変形が生じ難い。したがって、第一ユニット501Uの第一ベルト張架ローラ501a~501eにおいては、第二ユニット502Uの第二ベルト張架ローラ502a~502eに比較して、ステアリング制御でベルト寄りを抑制し難くなるほどのローラの相対的な傾きが生じ難い。ヒートシンク503を有する第一ユニット501Uの場合、ステアリング制御により第一ベルト501のベルト寄りを十分に抑制できるのである。そうであるから、第一ユニット501Uには調整操作機構800を設けていない。
【0069】
以上のように、本実施形態では、ヒートシンク503を有しない第二ユニット502Uにおいて、前側板を第二前支持板526と前保持板851との2枚構成としている。そして、前保持板851は装置本体100A(本体フレームなど)に固定され、第二ベルト張架ローラ502a~502eを支持している第二前支持板526は前保持板851に対して回動可能に設けられている。また、前保持板851が装置本体100Aに固定された状態で、作業者が第二前支持板526を手動で回動し得るように、第二ユニット502Uには調整操作機構800が設けられている。作業者は調整操作機構800の調整板801を回動して、第二前支持板526を前保持板851に対し相対移動させ得る。第二前支持板526が前保持板851に対し相対移動すると、第二ユニット502Uや装置本体100Aの部品公差に起因する第二前支持板526の変形が補正される。これにより、第二前支持板526に支持される第二ベルト張架ローラ502a~502eは略平行な状態に調整される。こうして、第二ベルト張架ローラ502a~502eが略平行な状態に調整されることにより、第二ベルト502のベルト寄りをステアリング制御によって抑制することができる。
【0070】
<他の実施形態>
上述の実施形態では、第二前支持板526を前保持板851に対し回動させるため、第二前支持板526に第一突出軸520と第二突出軸521を設け、前保持板851に嵌合孔529と孔部518aを形成した例を示したが(
図8参照)、これに限らない。例えば、第一突出軸520の代わりに、前保持板851から第二前支持板526へ向け突出する回動軸を設けておき、第二前支持板526に回動軸を回動可能に支持する孔部を形成してもよい。また、第二突出軸521の代わりに、偏心カム955から第二前支持板526へ向け突出するカム突出軸を設けておき、第二前支持板526にカム突出軸を固定する孔部を形成してもよい。
【0071】
なお、上述した実施形態では、画像形成装置100内に記録材冷却装置50を設けた場合を例に示したが(
図1参照)、これに限らない。例えば、記録材冷却装置50は装置本体100Aの外部に設けられてもよい。
図10に、記録材冷却装置50が画像形成装置100の外部に設けられている画像形成システム1Xを示す。
【0072】
図10に示す画像形成システム1Xは、画像形成装置100と、画像形成装置100に連結された外部冷却ユニット101とを有する。外部冷却ユニット101は画像形成装置100の機能を拡張するために後付け可能な周辺機(オプションユニットなどと呼ばれる)の1つとして、画像形成装置100に連結可能に構成されている。外部冷却ユニット101は、画像形成装置100から排出される記録材Sを冷却して、定着前に比べて高い記録材Sの温度を所定温度以下に下げるために配設される。外部冷却ユニット101は、記録材Sを冷却するために上述した記録材冷却装置50を有している。
【0073】
外部冷却ユニット101により冷却された記録材Sは、排出ローラ85により外部冷却ユニット101から排出されて排出トレイ120に積載される。排出トレイ120は、外部冷却ユニット101や画像形成装置100に対し着脱自在に設けられている。即ち、排出トレイ120は、画像形成装置100に外部冷却ユニット101が連結されていない場合、画像形成装置100に装着されている(
図1参照)。そして、画像形成装置100に外部冷却ユニット101が連結される際に、作業者によって画像形成装置100から取り外されて外部冷却ユニット101に付け替えられる。なお、周辺機として、複数の外部冷却ユニット101が連結されてもよい。作業者は連結する外部冷却ユニット101の台数を増やすことによって、既存の画像形成装置100に対し記録材Sの冷却能力を向上させることが容易にできる。
【符号の説明】
【0074】
1X…画像形成システム、30…定着装置、50…記録材冷却装置、100…画像形成装置、100A…装置本体、200…画像形成ユニット、400…ステアリング手段(ステアリング機構)、501…第一ベルト、501a~501e…第一ローラ(第一ベルト張架ローラ)、501U…第一ユニット、502…第二ベルト、502a~502e…第二ローラ(第二ベルト張架ローラ)、502U…第二ユニット、503…冷却部材(放熱板、ヒートシンク)、510…回動手段(回動機構)、521…接続部材(第二突出軸)、524…第三支持部材(第一前支持板)、525…第四支持部材(第一後支持板)、526…第一支持部材(第二前支持板)、527…第二支持部材(第二後支持板)、800…操作部材(調整操作機構)、801…回動部(調整板)、801a…把持部、802…偏心カム、851…保持部材(前保持板)、950…固定部材(固定ねじ)、S…記録材、T4…ニップ部(冷却ニップ部)