(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
G03B 17/02 20210101AFI20240219BHJP
G05G 1/02 20060101ALI20240219BHJP
G05G 1/04 20060101ALI20240219BHJP
G05G 1/10 20060101ALI20240219BHJP
G05G 5/03 20080401ALI20240219BHJP
G06F 3/0362 20130101ALI20240219BHJP
F16F 9/53 20060101ALI20240219BHJP
H01H 13/02 20060101ALI20240219BHJP
H01H 13/20 20060101ALI20240219BHJP
H01H 19/03 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
G03B17/02
G05G1/02 B
G05G1/02 D
G05G1/04 Z
G05G1/10 B
G05G5/03 Z
G06F3/0362 461
G06F3/0362 463
F16F9/53
H01H13/02 B
H01H13/20 Z
H01H19/03
(21)【出願番号】P 2020111108
(22)【出願日】2020-06-29
【審査請求日】2023-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】土橋 英記
(72)【発明者】
【氏名】吉田 貴志
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 晋作
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 真吾
【審査官】藏田 敦之
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-091936(JP,A)
【文献】特開2017-146843(JP,A)
【文献】特開2018-045641(JP,A)
【文献】特開2019-160323(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 17/02
G05G 1/02
G05G 1/04
G05G 1/10
G05G 5/03
G06F 3/0362
F16F 9/53
H01H 13/02
H01H 13/20
H01H 19/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、
前記本体部の異なる場所に配置され且つ前記本体部に移動可能に支持された複数の移動部材と、前記本体部と前記複数の移動部材のそれぞれとの間もしくは前記複数の移動部材の間
の複数箇所にそれぞれ設けられた磁気粘性流体と、
前記複数箇所に設けられた前記磁気粘性流体に磁場をかけるための
共通の磁場発生部と、を有する制御装置
と、
複数の操作部材と、を備えた電子機器であって、
同一の容器内に、前記共通の磁場発生部、前記磁気粘性流体が含まれ、前記複数の移動部材が挿入され、
前記複数の操作部材と前記複数の移動部材は一対一で互いに接続され、
前記磁気粘性流体は配置する場所に応じて粘性抵抗が異なり、
前記制御装置は、前記共通の磁場発生部への電流値を可変することで前記磁気粘性流体は配置する場所に応じて異なる粘性抵抗力を可変させて、前記複数の操作部材の操作に対する抵抗力を可変するように制御することを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記複数の操作部材の各々は回転操作部材であり、前記複数の移動部材の各々はロータであり、前記ロータは磁性体である請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記共通の磁場発生部は、前記磁性体材料からなる複数のロータの各々と異なる対向箇所で対向配置され、前記対向箇所において対向する前記共通の磁場発生部と前記複数のロータのそれぞれとの間に前記磁気粘性流体が配置されており、前記異なる対向箇所の磁気粘性流体の粘性抵抗は異なる請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記複数の操作部材はレリーズボタンを含み、
前記磁気粘性流体が封入された内包部は、レリーズボタンに形成されたキートップの下部に形成されている請求項1に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気粘性流体を用いた制御装置およびこれを備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器には、制御値を変更するためのダイヤルやスライドレバーといった操作部材が配置されている。これらの操作部材には摺動部にゴムや高粘性のグリスなどを使用することで、操作部材の摺動トルクを適度に上げて感触よく回転できるようにしたものがある。また、クリック構造を取り入れることで制御値を一つ変える度に一つのクリック感が得られるようにしたものもあり、いずれも操作部材の操作感を向上させるために工夫されたものである。
【0003】
このような操作部材の操作感を制御する装置としてMR流体(Magneto Rheological fluid、磁気粘性流体)を用いた制御装置が提案されている。MR流体とは、オイルなどの溶媒に鉄などの強磁性体の微粒粉末(直径10μm程度)を溶かし込んだものである。これに磁場を与えると粉末同士が結合してMR流体の粘度を上げることができるという性質を持つ。また、磁場が強くなると粘度も高くなるという性質もあるため、磁場の強弱をコントロールすることにより粘度をコントロールすることが可能となる。
【0004】
MR流体を用いた操作感制御装置としてよく知られる構成としては、回転する移動体(ロータ)の周りにMR流体を封入しておき、近辺にコイルを配置してコイルに流す電流を変えることでロータの回転トルクを変化させるというものでる。このロータにダイヤルなどの操作部を接続することで回転の感触を自由に変えることができる。
【0005】
このような操作感制御装置はロータとコイルがそれぞれ一つ備えるような構成となっているため、複数の操作部材の感触を制御するためには複数の操作感制御装置が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、電子機器が備える複数の操作部材ごとにそれぞれ操作感制御装置を配置すると機器が大型化してしまいコストも高くなってしまう。
【0008】
そこで、本発明は、磁気粘性流体を用いた、低コストで小型の制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面としての電子機器は、本体部と、該本体部の異なる場所に配置され且つ移動可能に支持された複数の移動部材と、前記本体部と前記複数の移動部材のそれぞれとの間、もしくは前記複数の移動部材の間の複数箇所にそれぞれ設けられた磁気粘性流体と、前記複数箇所に設けられた該磁気粘性流体に磁場をかけるための共通の磁場発生部と、を有する制御装置と、複数の操作部材と、を備えた撮像装置であって、同一の容器内に、前記共通の磁場発生部、前記磁気粘性流体が含まれ、前記複数の移動部材が挿入され、前記複数の操作部材と前記複数の移動部材は一対一で互いに接続され、前記磁気粘性流体は配置する場所に応じて粘性抵抗が異なり、前記制御装置は、前記共通の磁場発生部への電流値を可変することで前記磁気粘性流体は配置する場所に応じて異なる粘性抵抗力を可変させて、前記複数の操作部材の操作に対する抵抗力を可変するように制御する。
【0010】
本発明の他の目的及び特徴は、以下の実施例において説明される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、磁気粘性流体を用いた、低コストで小型の制御装置を提供することが可能となる。また、この制御装置を電子機器に用いることで複数の操作部材の操作感を好みに変更可能な低コストで小型な電子機器を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施例1の操作感制御装置の断面図。
【
図2】MR流体にかかる磁力とMR流体のせん断応力の関係を示す図。
【
図3】本発明の実施例1の操作感制御装置を利用した電子機器の例を示す図。
【
図4】本発明の実施例2の操作感制御装置の断面図。
【
図5】本発明の実施例2の操作感制御装置を利用した電子機器の例を示す図。
【
図6】本発明の実施例3の操作感制御装置の断面図。
【
図7】本発明の実施例3の操作感制御装置を利用した電子機器の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
<実施例1>
図1は本発明の実施形態を実現するための制御装置としての操作感制御装置101の断面図である。
【0014】
操作感制御装置101の本体部は、ケーシングを兼ねた第1の本体部101aと第2の本体部101bから構成されている。第1の本体部101aはコア部101a1とカバー部101a2で2体化された構造となっている。
【0015】
本構成において、コア部101a1は鉄などの磁性体、カバー部101a2は樹脂材などの非磁性体で形成されている。第2の本体部101bは第1の本体部101aのカバー部101a2と同等の構成をなすものである。なお、第1の本体部101aおよび第2の本体部101bは同一の材料で構成されていてもよいし、一体化された構成であってもよい。
【0016】
コア部101a1の内部には内筒部101eが挿入されている。内筒部101eは、磁場発生部としてのコイル101e1を樹脂材のホルダー部101e2により封入することで、コイル101e1とホルダー部101e2の一体構造となっている。
【0017】
第1の本体部101aと内筒部101eに囲まれた空間には、感触を制御する操作部材である押しボタン形状のボタン装置102が備えられている。ボタン装置102は、
図1の上下方向に摺動して直進移動可能な直進操作部材である押しボタン式のスイッチの構成を示している。ボタン装置102は、直進移動部材であるキートップ102aとスイッチ部材であるスイッチ102bで構成され、キートップ102aがスイッチ102bを押圧することでスイッチをONするというものである。スイッチ102bの操作によりスイッチの電気的なON/OFFを切り替える。
【0018】
キートップ102aとコア部101a1の間には隙間が設けられており、この隙間にMR流体101d1が封入されている。なお、キートップ102aは基本的に磁性体材料で構成されているものであるが、磁性体部分は全体的であってもよいし、磁場が作用する先端部分のみであってもよい。
【0019】
次に、回転操作部材の感触を制御するための回転部材である第1のロータ101cが内筒部101eに回転可能に支持されている。第1のロータ101cのディスク部101c1とコア部101a1の間には隙間が設けられており、この隙間にMR流体101d2が封入されている。第1のロータ101cは磁性体で構成されているが、外部につながるロータ軸部101c2は非磁性体で構成するようにした方がよい。
【0020】
第1のロータ101cを封止するためのケーシングとして第2の本体部101bが取り付けられており、第2の本体部101bは、第1のロータ101cの回転支持部材としても利用されるよう構成されている。
【0021】
このような構成をなす操作感制御装置101において、コイル101e1に電流を流すと
図1の点線に示すような磁場Mが発生する。この磁場Mが通過する領域にMR流体101d1および101d2が備えられているため、磁場Mによる影響を受けて粘度を変化させることができる。MR流体101d1の粘度が上がるとキートップ102aの直進移動に際して粘性抵抗が生じ、MR流体101d2の粘度が上がると第1のロータ101cが回転する際にディスク部101c1とMR流体101d2の間で粘性抵抗が生じる。また、コイル101e1に流す電流値を上げるとMR流体101d1、101d2の粘度が上がるという性質があるため、コイル101e1に流す電流値を変えることでそれぞれの粘性抵抗を変えることができる。
【0022】
ここで、MR流体101d2を用いて動作原理についての説明を行う。
図2に示すように、コイル101e1に流す電流をT1とするとMR流体101d2のせん断応力がσ1となり、第1のロータ101cに回転抵抗R1が生じる。また、T1より高いT2とするとMR流体101d2のせん断応力がσ1よりも高いσ2となり、第1のロータ101cに回転抵抗R2(R2>R1)が生じる。これによりコイル101eに流す電流をT1にした時よりも第1のロータ101cを回転させるための力が必要となるため、これに接続される操作部材の操作感を重く(固く)することができる。
【0023】
本構成の操作感制御装置101を用いた電子機器の例として、
図3にカメラのレリーズ周りの操作部材に本構成の操作感制御装置101を適応したものを示している。
図1および
図3に示す形態で、ボタン装置102はレリーズ装置であり、直進操作部材であるキートップ102aはレリーズボタン、スイッチ102bはレリーズスイッチを示している。前述の通り、キートップ102aは操作感制御装置101に挿入されている。
【0024】
次に第1の回転操作装置103はダイヤル形状の回転操作部材であるダイヤル103aと、第1の基板103b、ダイヤル103aに取り付けられたダイヤルブラシ103cから成る。第1の基板103bには接点パターンが形成されており、ダイヤル103aを回転するとダイヤルブラシ103cも同時に回転し、接点パターンの上を摺動する。ダイヤルブラシ103cによる接点パターンの接続状態やタイミングを検出することでダイヤル103aの回転量やポジションや回転方向などを読み取ることができる。これにより電子機器の様々なパラメータなどの設定の変更(本実施形態においてはシャッタスピードの変更や撮影モードの変更など)を行うことができる。第1の回転操作装置103と操作感制御装置101の間には第1の接続部材105が取り付けられている。ダイヤル側接続部材105bは回転体であり、ダイヤル103aと摩擦接触やギヤなどの構造で回転力の伝達が行われる。ロータ軸部101c2に取り付けられたロータ側接続部材105aとダイヤル側接続部材105bも同様に摩擦接触やギヤなどの構造で回転の伝達が行われる。
【0025】
ダイヤル103aを回転すると、第1の接続部材105を介して操作感制御装置101の第1のロータ101cが回転させられるため、コイル101e1に流す電流を変化させることで第1のロータ101cの回転抵抗を変化させることができる。結果としてダイヤル103aの回転トルクを変化させ、回転時に指に掛かる感触を変化させることができる。
【0026】
ここで、操作感制御装置101による感触の変化であるが、コイル101e1に一定の電流を流し続けるとMR流体101d1、101d2は一定の粘度となる。このため第1のロータ101cは一定の回転トルクとなり、キートップ102aやダイヤル103aを操作した時には常に一定の操作抵抗力が感じられるようになる。コイル101e1に正弦波やパルス波といった時間変化する電流を流すと、第1のロータ101cを回転する際に時系列的なトルク変化が得られるようになる。このように時間変化する電流を流すことでダイヤル103aを回転した時に疑似的にクリック感が得られるようにすることができる。
【0027】
キートップ102aおよび第1のロータ101cに一対一に対応する操作部材としてのキートップ102aおよびダイヤル103aのどちらが操作されているかは、各操作部材に指の接触を検知する操作判別手段としての接触センサ(不図示)を配置することで検出することができる。また、エンコーダを設置して制御値の変化を検出することで、ダイヤル103aが操作されていると判断するようにすれば、ダイヤル103aに対して接触センサを配置しなくてもよい。この場合、通常はキートップ102aの操作感を制御するようにしておき、ダイヤル103aの操作が検出された時にのみダイヤル103aの操作感を制御するように変更すればよい。こうすることで、ダイヤル103aに対する接触センサを備えなくてもそれぞれの操作感を制御することができる。
【0028】
また、ボタン装置102は、移動位置を検出するための検出手段でありエンコーダを設置してキートップ102aの移動量を検知するように構成すれば、スイッチ102bを用いなくても移動量に応じて操作指示を行うように構成することができる。
【0029】
さらに、操作装置の形態や大きさなどに応じて操作感触を制御する際の特性を変えたい場合がある。そのような場合には、MR流体を配置する場所に応じてMR流体の溶媒を変えたり、含有する鉄粉の粒径や含有量を変えることで、初期の粘性と磁場をかけた時の粘性の変化様相を変えることができる。これにより操作感触の制御を行う部材に応じて最適な操作感触が得られるように構成することができる。
【0030】
以上により、複数の操作部材の操作方法に特化した形でそれぞれMR流体を配置し、それらを一つのコイルで制御するため、MR流体を用いた、低コストで小型の操作感制御装置の提供が可能となる。さらにこの操作感制御装置を電子機器に用いることで複数の操作部材の操作感を好みに変更可能な機器を低コストで小型化することが可能となる。
<実施例2>
図4は本発明の第2の実施形態を実現するための操作感制御装置201の断面を示す図である。実施例1と同一符号の部材は同一の作用を果たすものとする。
【0031】
実施例1と同様に、本体部はケーシングを兼ねた第1の本体部201aと第2の本体部201bから構成されている。第1の本体部201aはコア部201a1とカバー部201a2で2体化された構造となっている。本構成においては、コア部201a1は鉄などの磁性体、カバー部201a2および第2の本体部201bは樹脂材などの非磁性体で形成されている。コア部201a1の内部には内筒部201eが挿入されている。内筒部201eは、コイル201e1を樹脂材のホルダー部201e2により封入することで、コイル201e1とホルダー部201e2の一体構造となっている。第1の本体部201aに回転支持された回転部材である第2のロータ202cが備えられており、ディスク部202c1がコア部201a1および内筒部201eとカバー部201a2で囲まれた空間に存在する。第2のロータ202cのディスク部202c1とコア部201a1の間には隙間が設けられており、この隙間にMR流体201d1が封入されている。第2のロータ202cは磁性体で構成されているが、外部につながるロータ軸部202c2は非磁性体で構成するようにした方がよい。
【0032】
次に、回転部材である第1のロータ201cが内筒部201eに回転可能に支持されている。第1のロータ201cのディスク部201c1とコア部201a1の間には隙間が設けられており、この隙間にMR流体201d2が封入されている。
【0033】
第1のロータ201cを封止するためのケーシングとして第2の本体部201bが取り付けられており、第2の本体部201bは、第1のロータ201cの回転支持部材としても利用されるように構成されている。なお、第1のロータ201cは第2のロータ202cと同様に磁性体で構成されているが、外部につながるロータ軸部201c2は非磁性体で構成するようにした方がよい。
【0034】
このような構成をなす操作感制御装置201において、コイル201e1に電流を流すと
図4の点線に示すような磁場Mが発生する。この磁場Mが通過する領域にMR流体201d1および201d2が備えられているため、磁場Mによる影響を受けて粘度を上げることができる。MR流体201d1の粘度が上がると第2のロータ202cが回転する際にディスク部202c1とMR流体201d1の間で粘性抵抗が生じる。MR流体201d2の粘度が上がると第1のロータ201cが回転する際にディスク部201c1とMR流体201d2の間で粘性抵抗が生じる。また、前述の通り、コイル101e1に流す電流値を変えることでそれぞれの粘性抵抗を変えることができる。
【0035】
本構成の操作感制御装置201を用いた電子機器の例として、
図5にカメラのレリーズ周りの操作部材に本構成の操作感制御装置201を適応したものを示している。第1の回転操作装置103の動作原理と操作感制御方法については前述の通りであるため省略する。第2の回転操作装置104はカメラで言うところのレンズの焦点距離を変化させるズーム操作装置である。
【0036】
第2の回転操作装置104は、回転操作部材である回転レバー形状のズームスイッチとしてのズームレバー104aがキートップ102aと同軸で回転するように取り付けられており、第1の基板104b、ズームレバー104aに取り付けられたズームブラシ104cから成る。第2の基板104bには接点パターンが形成されており、ズームレバー104aを回転するとズームブラシ104cも同時に回転し、接点パターンの上を摺動する。第1の回転操作装置103と同様にズームブラシ104cによる接点パターンの接続状態を判別することで電子機器のパラメータの変更(本実施形態においてはレンズの焦点距離を変更)を行う。
【0037】
第2の回転操作装置104と操作感制御装置201の間には第2の接続部材106が取り付けられている。操作感制御装置201のロータ軸部202c2に取り付けられたロータ側接続部材106bとズームレバー104aに取り付けられたズームレバー側接続部材106aとの間で摩擦接触やギヤなどの構造で回転力の伝達が行われる。
【0038】
ズームレバー104aを回転すると、第2の接続部材106を介して操作感制御装置201の第2のロータ202cが回転させられる。この時、コイル201e1に流す電流を変化させることで第2のロータ202cの回転抵抗を変化させることができる。結果としてズームレバー104aの回転トルクを変化させ、回転時に指に掛かる感触を変化させることができる。
【0039】
前述の実施形態と同様にコイル201e1に時間変化する電流を流すことでクリック感が得られるようにすることもできる。
【0040】
第1および第2のロータ201c、202cに一対一に対応する操作部材としての第1および第2の回転操作装置103、104のどちらが操作されているかは、前述の通り、各操作装置に指の接触を検知する接触センサを配置することで検出してもよい。また、エンコーダなどを配置することで回転検出してもよいし、操作部材の操作による制御値の変化を検出して操作を判断するようにしてもよい。
【0041】
以上により、複数の操作部材の操作方法に特化した形でそれぞれMR流体を配置し、それらを一つのコイルで制御するため、MR流体を用いた、低コストで小型の操作感制御装置の提供が可能となる。さらにこの操作感制御装置を電子機器に用いることで複数の操作部材の操作感を好みに変更可能な機器を低コストで小型化することが可能となる。
<実施例3>
図6は本発明の第3の実施形態を実現するための操作感制御装置301の断面を示す図である。実施例1、2と同一符号の部材は同一の作用を果たすものとする。
【0042】
実施例1、2と同様に、本体部はケーシングを兼ねた第1の本体部301aと第2の本体部301bから構成されている。第1の本体部301aはコア部301a1とカバー部301a2で2体化された構造となっている。本構成において、コア部301a1は鉄などの磁性体、カバー部301a2および第2の本体部301bは樹脂材などの非磁性体で形成されている。コア部301a1の内部には内筒部301eが挿入されている。内筒部301eは、コイル301e1を樹脂材のホルダー部301e2により封入することで、コイル301e1とホルダー部301e2の一体構造となっている。
【0043】
回転部材である第2のロータ302cがカバー部301a2に回転可能に支持されている。また、これと同軸上に直進移動部材であるキートップ102aが第2のロータ302cと嵌合するように備えられている。キートップ102aはボタン装置102を構成する一部であって、
図6の上下方向に摺動する直進操作部材である。第2のロータ302cは磁性体で構成されているが、外部につながるロータ軸部302c2は非磁性体で構成するようにした方がよい。
【0044】
キートップ102aと第2のロータ302cの間には隙間が設けられており、この隙間にMR流体301d1が封入されている。また、第2のロータ302cとコア部301a1の間にも隙間が設けられており、この隙間にMR流体301d3が封入されている。MR流体301d1と301d3は図面上、それぞれ分離して配置するように記載してあるが、一体的に封入されていてもよい(内筒部301eとディスク部302c2の間にMR流体が存在してもよい)。
【0045】
次に、回転部材である第1のロータ301cが内筒部301eに回転可能に支持されている。第1のロータ301cのディスク部301c1とコア部301a1の間には隙間が設けられており、この隙間にMR流体301d2が封入されている。
【0046】
第1のロータ301cを封止するためのケーシングとして第2の本体部301bが取り付けられており、第2の本体部301bは、第1のロータ301cの回転支持部材としても利用されるように構成されている。なお、第1のロータ301cは第2のロータ302cと同様に磁性体で構成されているが、外部につながるロータ軸部301c2は非磁性体で構成するようにした方がよい。
【0047】
このような構成をなす操作感制御装置301において、コイル301e1に電流を流すと
図6の点線に示すような磁場Mが発生する。この磁場Mが通過する領域にMR流体301d1、301d2および301d3が備えられているため、磁場Mによる影響を受けて粘度を変化させることができる。MR流体301d1の粘度が上がるとキートップ102aの直進移動に際して粘性抵抗が生じる。MR流体301d2の粘度が上がると第1のロータ301cが回転する際にディスク部301c1とMR流体301d2の間で粘性抵抗が生じる。MR流体301d3の粘度が上がると第2のロータ302cが回転する際にディスク部302c1とMR流体301d2の間で粘性抵抗を生じる。また、前述の通り、コイル301e1に流す電流値を変えることでそれぞれの粘性抵抗を変えることができる。
【0048】
ここで、第2のロータ302cの制御を行うためにMR流体301d3が存在する訳であるが、本構成であればMR流体301d1が存在すればキートップ102aと第2のロータ302cの操作感の制御を合わせて行うことができる。このため、MR流体301d3はなくてもよい。しかし、MR流体301d1は第2のロータ302cの内径部に存在することから第2のロータ302cの制御を細かく行うことができない可能性がある。従って、第2のロータ302cのより径の大きい部分にMR流体301d3を利用することで必要な制御を行うことができるようになる。
【0049】
本構成の操作感制御装置301を用いた電子機器の例として、
図7にカメラのレリーズ周りの操作部材に本構成の操作感制御装置301を適応したものを示している。レリーズ装置であるボタン装置102のキートップ102aは操作感制御装置301に挿入されている。
【0050】
第1の回転操作装置103の動作原理と操作感制御方法については前述の通りであるため省略する。
【0051】
第2の回転操作装置104はカメラで言うところのレンズの焦点距離を変化させるズーム操作装置である。第2の回転操作装置104の回転操作部材であるズームレバー104aがキートップ102aと同軸で回転するように取り付けられていて回転移動するものとなっている。このズームレバー104aに同じくキートップ102aと同軸に配置された第2のロータ302cのロータ軸部302c2が接続されており、一体的に回転するようになっている。これによりズームレバー104aを回転されると第2のロータ302cが同時に回転するため、MR流体301d3の粘度を変化させると回転時の感触を変化させることができる。
【0052】
ボタン装置102と第2の回転操作装置104については前述の通り、MR流体301d1と301d2を用いて制御することによりそれぞれ操作感触を変更することができる。
【0053】
以上により、複数の操作部材の操作方法に特化した形でそれぞれMR流体を配置し、それらを一つのコイルで制御するため、MR流体を用いた、低コストで小型の操作感制御装置の提供が可能となる。さらにこの操作感制御装置を電子機器に用いることで複数の操作部材の操作感を好みに変更可能な機器を低コストで小型化することが可能となる。
【0054】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0055】
本体部 101a、101b、201a、201b、301a、301b
移動部材 101c,102a,201c,202c,301c,302c
MR流体 101d1,101d2,201d1,201d2,301d1,301d2,301d3
磁場発生部 101e1,201e1,301e1