(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】積層型高温超電導コイル装置
(51)【国際特許分類】
H01F 6/06 20060101AFI20240219BHJP
【FI】
H01F6/06 110
H01F6/06 ZAA
(21)【出願番号】P 2020130710
(22)【出願日】2020-07-31
【審査請求日】2023-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111121
【氏名又は名称】原 拓実
(74)【代理人】
【識別番号】100118474
【氏名又は名称】寺脇 秀▲徳▼
(74)【代理人】
【識別番号】100141911
【氏名又は名称】栗原 譲
(72)【発明者】
【氏名】岩井 貞憲
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 寛史
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-071789(JP,A)
【文献】実開昭60-141104(JP,U)
【文献】特開2017-010958(JP,A)
【文献】特開2009-016622(JP,A)
【文献】特開平02-134802(JP,A)
【文献】特開2009-016620(JP,A)
【文献】特開2011-171624(JP,A)
【文献】特開2015-012199(JP,A)
【文献】実開昭61-129308(JP,U)
【文献】特開平06-005419(JP,A)
【文献】特開2014-170769(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 6/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁製の第1の巻枠の周囲に高温超電導線材を巻回してなる高温超電導コイルをコイル中心軸方向に複数積層した積層型高温超電導コイル装置であって、
各高温超電導コイルの前記第1の巻枠の内周面に沿って前記第1の巻枠よりもヤング率の高い金属製の第2の巻枠が
設けられ、前記第1の巻枠および前記第2の巻枠は固着もしくは連結固定されて設けられており、
コイル中心軸方向に隣接した前記第2の巻枠同士は連結固定または一体的に固定されていることを特徴とする積層型高温超電導コイル装置。
【請求項2】
少なくとも1つ以上の前記高温超電導コイルの積層の層間において、前記高温超電導コイル同士が非接着であるか、あるいは層間に離形材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の積層型高温超電導コイル装置。
【請求項3】
コイル中心軸方向に隣接した前記第2の巻枠同士は、この第2の巻枠それぞれの下端に形成された凸部と、前記第2の巻枠それぞれの上端に形成された凹部によって嵌合され、機械的に連結されることを特徴とする請求項1または2に記載の積層型高温超電導コイル装置。
【請求項4】
コイル中心軸方向に隣接した前記第2の巻枠同士にはピン穴が穿設され、棒形状のピンが相対する前記ピン穴に挿入されて嵌め合う構成としていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の積層型高温超電導コイル装置。
【請求項5】
前記第1の巻枠、もしくは前記第2の巻枠、あるいはその両方に、コイル中心軸方向に貫通するキー溝が形成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の積層型高温超電導コイル装置。
【請求項6】
積層された前記高温超電導コイルおよび前記第1の巻枠、前記第2の巻枠から成る巻枠の上下端には、フランジ部材が固定配置され、前記第2の巻枠と前記フランジ部材の対向する位置には凹部または凸部が形成されて嵌合され、機械的に連結されることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の積層型高温超電導コイル装置。
【請求項7】
複数積層される前記高温超電導コイルは、シングルパンケーキコイル、およびダブルパンケーキコイルのいずれか一方、もしくはその両方であることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の積層型高温超電導コイル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、巻枠に高温超電導線材を巻回してなる高温超電導コイルを複数積層した積層型の高温超電導コイル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高温超電導線材を巻枠に巻き回してなる超電導コイルを中心軸方向に複数積層した積層型の高温超電導コイル装置は、通電時の自己磁場や外部磁場によって電磁力を受ける。このような電磁力によって、コイル径方向に膨らむ方向の電磁応力、所謂フープ応力や、軸方向の圧縮応力が生じ、超電導コイルの巻線部は径方向や軸方向に変形する。
【0003】
このような変形が原因で、超電導コイルが僅かにでも動いてしまうと、電磁力のアンバランスにより超電導コイル同士の接続部など機械的に弱い箇所が破壊され、最悪の場合焼損してしまう。
【0004】
そこで、特許文献1では、コイルの最内周面に沿って中心軸方向に貫通するように設けられた筒材と、該筒材の両端に固定されたフランジ部材を軸方向に圧縮することで変位に追随し、超電導コイルの動きを防止可能な構成が提案されている。また、特許文献2では、軸方向に隣接した超電導コイルの巻枠同士を機械的に連結させることにより、巻枠を一体化させ、積層した超電導コイル全体の機械強度を向上させる構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6567334号公報
【文献】特許第6304955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
コイル巻線部の高温超電導線材が絶縁被覆されていない場合、前記巻枠は、高温超電導線材との電気絶縁を確保するため、一般的に繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastics:FRP)や補強型ポリテトラフルオロエチレン(補強型PTFE)等の絶縁材(絶縁製)で構成されている。そのため、10Tを超えるような強磁場の発生が要求される強磁場マグネットのように高い電磁力が発生する超電導磁石においては、積層した超電導コイルの各々の巻線部の電磁力による変形に引きずられ、絶縁製の巻枠が各々変形してしまう。
【0007】
したがって、特許文献1、2に記載されているように超電導コイル全体での動きを防止していても、絶縁製の巻枠が各々変形することによって、巻線部の変形がさらに促され、超電導コイル内で発生する応力が増大してしまう。また、巻線部の変形の増大によって超電導コイル同士の接続部など機械的に弱い箇所が破壊され、最悪の場合焼損してしまう可能性があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記実施形態に係る積層型超電導コイル装置は、絶縁製の第1の巻枠の周囲に高温超電導線材を巻回してなる高温超電導コイルをコイル中心軸方向に複数積層した積層型高温超電導コイル装置であって、各高温超電導コイルの前記第1の巻枠の内周面に沿って前記第1の巻枠よりもヤング率の高い金属製の第2の巻枠が固着もしくは連結固定されて設けられており、コイル中心軸方向に隣接した前記第2の巻枠同士は連結固定または一体的に固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態は、上述した課題を解決するためになされたものであり、積層型高温超電導コイル装置において、強磁場による高電磁力が発生するような場合であっても、巻枠、および巻線部の変形を抑制可能な積層型超電導コイル装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態に係る超電導コイルに用いられる高温超電導線材の一例を示す要部切断斜視図。
【
図2】本発明の実施の形態に係る積層型高温超電導コイル装置に用いられる超電導コイルの一例を示し、(a)はその超電導コイルの斜視図、(b)は断面図。
【
図3】本発明の第1の実施例を示す積層型高温超電導コイル装置の断面図。
【
図4】本発明の第1の実施例の変形例を示す積層型高温超電導コイル装置の断面図。
【
図5】本発明の第2の実施例を示す積層型高温超電導コイル装置の断面図。
【
図6】本発明の第2の実施例の変形例を示す積層型高温超電導コイル装置の断面図。
【
図7】本発明の第3の実施例を示す積層型高温超電導コイル装置の断面図。
【
図8】本発明の第3の実施例の変形例を示す積層型高温超電導コイル装置の断面図。
【
図9】本発明の第4の実施例を示す超電導コイル装置の最内周を上から見た部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
(高温超電導線材)
図1は、本発明の実施の形態に係る高温超電導コイル装置に用いられる高温超電導線材(高温超電導線材)の一例を示す要部切断斜視図である。
【0013】
この高温超電導線材1は、少なくとも、テープ基板2と、中間層3と、超電導層4とを有し、その両面が安定化層5で被覆されている。
【0014】
また、必要に応じて、テープ基板2と中間層3との間に配向層6を、超電導層4と安定化層5との間に保護層7を設けることもできる。
【0015】
テープ基板2は、例えば、ハステロイ(登録商標)やNiWといったNi基合金の高強度金属等の材質で形成される。
【0016】
中間層2は拡散防止層であり、例えば、酸化セリウム、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、酸化マグネシウム、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム、バリウムジルコニアなどの材質からなり、テープ基板2上に形成される。
【0017】
超電導層4は、例えば、RE123系の組成(RE1B2C3O7等)を有する超電導体薄膜からなる。なお、「RE1B2C3O7」の「RE」は希土類元素(例えば、ネオジム(Nd)、ガドリニウム(Gd)、ホルミニウム(Ho)、サマリウム(Sm)等)及びイットリウム元素の少なくともいずれかを、「B」はバリウム(Ba)を、「C」は銅(Cu)を、「O」は酸素(O)を意味している。
【0018】
安定化層5は、超電導層4に過剰に電気が流れた場合に超電導層4が燃焼するのを防止する目的で設けられ、導電性の銀等から形成される。
【0019】
配向層6は、テープ基板2上に中間層3を配向させて形成する目的で設けられ、酸化マグネシウム(MgO)等から形成される。なお、配向した基板を用いる場合には省略することができる。
【0020】
保護層7は、超電導層4が空気中の水分に触れて劣化するのを防止する等の目的で設けられ、銀等から形成される。なお、保護層7も超電導層4に過剰に電気が流れた場合に超電導層4が燃焼するのを防止する役割も果たす。
【0021】
このような多層からなる高温超電導線材1のテープ幅Wは例えば4~12mm、テープ厚さtは0.1~0.2mmとされる。そしてこの高温超電導線材1は、長手方向の機械強度に優れている一方、テープ面垂直方向の引張応力(剥離応力)には脆弱であるという特徴を持っている。
【0022】
さらに、高温超電導線材1の周囲をポリイミドやポリイミドアミドのような絶縁材で被覆した絶縁被覆高温超電導線材としても良い。
【0023】
(超電導コイル)
高温超電導線材1は、
図2(b)に示すように絶縁テープ線8と重ね合わせ、コイル巻線部との電気絶縁を確保するためにガラス繊維強化プラスチックや補強型PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の絶縁材で形成された絶縁製の第1の巻枠9の周囲に渦巻状に巻回されて巻線部11を形成する。さらに、複数の超電導コイルを積層する際、巻線部11を他層の巻線部から絶縁保護するため、巻線部11の上下面に絶縁層20を固着させて、
図2(a)に示すような超電導コイル10を構成する。
【0024】
さらに、超電導コイル10は、図示しないエポキシ等の樹脂で一体的に含浸硬化され、超電導コイル10の使用時における高温超電導線材1の機械的動きを抑制し、コイル強度を保持すると共に、高温超電導線材1のターン間における絶縁保護を行い、超電導コイル10の超電導状態が壊れる状態である「クエンチ」を防止するために有効であるとされている。
【0025】
(実施例1)
図3、
図4を用いて実施例1を説明する。
図3は本実施形態に係わる超電導コイル装置40の断面図である。
【0026】
本実施形態の積層型高温超電導コイル装置40は、
図2に示した超電導コイル11を
図3に示すようにコイル中心軸方向に複数積層しており、超電導コイル11同士は隣接しているが、軸方向の端面において図示しない樹脂などの層を介して接着はしていない。また、端面に樹脂などの層を設け、同じく図示しない樹脂との接着力が弱いフッ素樹脂、パラフィン、グリース、シリコンオイル等の離形材からなる層を挟むことで、超電導コイル11同士の接着力を弱めてもよい。
【0027】
なお、隣接する超電導コイル11同士は、図示しない位相の巻線部内周面および外周面において、金属製の接続部材や超電導線材などを介して電気的に接続される。このように構成することで、万が一、いずれかの超電導コイル10に超電導特性の低下が生じた場合、もしくはクエンチが発生した場合に、健全な超電導コイル10と容易に交換することができる。
【0028】
さらに、絶縁製の第1の巻枠9の内周面に沿って、金属製の第2の巻枠12が、第1の固着層30を介して設けられており、かつ、隣接する第2の巻枠12同士が、第2の固着層31を介して一体的に固定または固着されて構成される。なお、第1の固着層30に替えて、嵌め合い構造やボルト締結などで、絶縁製の第1の巻枠9と金属製の第2の巻枠12とを連結固定する構成としてもよい。
【0029】
また、積層された巻線部11、および第1、第2の巻枠9,12から成る巻枠の上下端には、軸方向の電磁応力や冷却による熱収縮によって圧縮することで変位に追随するためのフランジ部材21が、図示しないボルトの締結などにより第2の巻枠12、第1の巻枠9、あるいはその両方に固定されて配置されている。
【0030】
第1の固着層30、および第2の固着層31としては、例えば接着剤や、エポキシなどの樹脂、ゴム、ロウ材、ハンダなどが例示される。
【0031】
金属製の第2の巻枠12の材質としては、絶縁製の第1の巻枠よりもヤング率が高く、応力に対する変形量が小さいものが好適であり、また、積層型高温超電導コイル装置40の発生する磁場で磁化しない非磁性材料が好ましく、例えば銅やアルミ、銅合金、アルミ合金、ステンレス鋼などのNi基合金、真鍮といった金属が良い。
【0032】
また、フランジ部材21の材質としては、第2の巻枠12と同様に、銅やアルミ、銅合金、アルミ合金、ステンレス鋼などのNi基合金、真鍮といった金属だけでなく、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)や炭素繊維強化プラスチック(CRFP)、アラミド繊維強化プラスチック(AFRP)、補強型PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリカーボネートといった絶縁材を用いてもよい。
【0033】
このように構成された本実施の形態において、絶縁製の第1の巻枠9と金属製の第2の巻枠12は固着もしくは連結固定して一体化されており、かつ、軸方向に隣接した金属製の第2の巻枠12同士が連結固定または一体的に固定されている。
【0034】
本実施の形態によれば、絶縁製の第1の巻枠9は、よりヤング率が高い金属製の第2の巻枠12によって補強されるため、コイル巻線部との電気絶縁は確保しつつも、コイル中心軸と垂直方向のコイル径方向に膨らむ電磁応力、所謂フープ応力や、コイル中心軸方向の圧縮応力によって巻線部11が変形しようとしても、金属製の第2の巻枠12によって変形が抑制される。すなわち、強磁場による高電磁力が発生するような場合であっても、巻枠、および巻線部の変形を抑制可能な積層型超電導コイル装置を提供することができる。
【0035】
なお、本実施例は、所謂シングルパンケーキ形状の超電導コイルを積層した構成を示したが、ダブルパンケーキ形状の超電導コイルを用いた場合にも同様の効果が期待でき、シングルパンケーキ形状の超電導コイルとダブルパンケーキ形状の超電導コイルを組み合わせて積層してもよい。また、超電導コイルの形状としては、本実施例で示したような円形状に限定されるものではなく、レーストラック型、鞍型、楕円などの円形ではない非円形コイルでも同様の効果が得られる。
【0036】
さらに、本実施例の
図3では、第1の巻枠9と第2の巻枠12とを固着層により一体的に固定する構成を示したが、
図4に
図3と同一部品には同一符号を付して示した積層型高温超電導コイル装置41に示すように、隣接する2つの第2の巻枠12にコの字形状の連結固定部品13を嵌め込んで締結する構成でもよく、あるいは、連結板(図示せず)を当てて隣接する2つの第2の巻枠12にボルト固定する構成としてもよい。なお、第1および第2の固着層30,31を併用してもよく、さらに機械強度を向上させることができる。
【0037】
(実施例2)
次に、
図5、6を用いて実施例2を説明する。なお実施例1と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0038】
図5、6は本実施形態の実施例2に係わる積層型高温超電導コイル装置42,43の断面図である。本実施形態は、
図5に示すように、各々の第2の巻枠12bの上端に凹部16が設けられ、下端には上記凹部16に嵌合する凸部17が形成された構成となっている。
【0039】
このように構成された本実施の形態において、コイル中心軸方向に隣接した第2の巻枠12b同士が嵌合して機械的に連結固定される。
【0040】
本実施形態によれば、コイル中心軸方向に隣接した第2の巻枠12b同士が嵌合する構造によって機械的に連結固定されているため、コイル中心軸に対して垂直な方向であるコイル径方向に膨らむ方向の電磁応力、所謂フープ応力に対して、さらに強固となり、実施例1よりも、さらに第1および第2の巻枠、および巻線部の変形が抑制された積層型超電導コイル装置42を提供することができる。
【0041】
また、変形例として
図6に示すように、さらに第2の巻枠12cの上端部と下端部をテーパー形状の凹部16cと凸部17cにした構成でもよい。この場合、第2の巻枠12c同士の連結面の有効接触面積が増すことで、さらに機械強度を向上させることができる。また、第1および第2の固着層30,31を併用してもよく、さらに機械強度を向上させることができる。
【0042】
(実施例3)
次に、
図7、8を用いて実施例3を説明する。なお実施例1乃至2と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図7、
図8は本実施形態の実施例3に係わる超電導コイル装置44,45の断面図である。
【0043】
本実施形態は、
図7に示すように、コイル中心軸方向に隣接した第2の巻枠12dにピン穴18が穿設され、棒形状のピン14が相対するピン穴18に挿入されて嵌め合う構成となっている。
【0044】
このように構成された本実施の形態において、軸方向に隣接した第2の巻枠12d同士は、ピン14により連結固定部を周方向に離間させながら配置させることができる。
【0045】
本実施形態によれば、コイル中心軸方向に隣接した第2の巻枠12d同士の連結固定部を、周方向に離間させながら配置させることができるため、電磁力の微小なアンバランスによる周方向への変形に対しても抑制することができ、実施例1乃至2よりも、さらに第1、第2の巻枠9,12、および巻線部11の変形が抑制された積層型超電導コイル装置44を提供することができる。
【0046】
また、実施例3の変形例として
図8に示すように、第2の巻枠12d内にピン穴18を穿設し、ピン14bをコイル中心軸方向に延長して第2の巻枠12d内のピン穴18を貫通させて設置しても良い。また、前記固着層30を併用してもよく、さらに機械強度を向上させることができる。
【0047】
(実施例4)
次に、
図9を用いて実施例4を説明する。なお実施例1乃至3と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図9は本実施形態に係わる超電導コイル装置46の最内周を上から見た部分拡大図である。
【0048】
本実施形態は、
図9に示すように、絶縁製の第1の巻枠9e、固着層30e、金属製の第2の巻枠12eに跨って、軸方向に貫通可能なキー溝19が形成され、キー15が嵌め込まれた構成となっている。
【0049】
このように構成された本実施の形態において、絶縁製の第1の巻枠9e、固着層30e、金属製の第2の巻枠12eがキー15によって連結固定される。
【0050】
本実施形態によれば、絶縁製の第1の巻枠9e、固着層30e、金属製の第2の巻枠12eがキー15によって連結固定されるため、電磁力の微小なアンバランスによる周方向への変形に対して、実施例3に比べてさらに変形を抑制することができ、実施例1乃至3よりも、さらに第一、第二の巻枠、および巻線部の変形が抑制された積層型超電導コイル装置を提供することができる。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。
【0052】
これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。
【0053】
これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0054】
1…高温超電導線材(薄膜超電導線材)、2…テープ基板、3…中間層、4…超電導層、5…安定化層、6…配向層、7…保護層、8…絶縁テープ線、9,9e…絶縁製の第1の巻枠(第1の巻枠)、10…超電導コイル(高温超電導コイル)、11…巻線部、12,12b,12c,12d,12e…金属製の第2の巻枠(第2の巻枠)、13…コの字形状の連結固定部品、14,14b…ピン、15…キー、16,16c…凹部、17,17c…凸部、18…ピン穴、19…キー溝、20…絶縁層、21…フランジ部材、30,30e…第1の固着層、31…第2の固着層、40,41,42,43,44,45,46…積層型高温超電導コイル装置。