(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】カスケードポンプ
(51)【国際特許分類】
F04D 5/00 20060101AFI20240219BHJP
F04D 29/08 20060101ALI20240219BHJP
F04D 29/42 20060101ALI20240219BHJP
F04D 29/046 20060101ALI20240219BHJP
F04D 29/06 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
F04D5/00 H
F04D5/00 G
F04D29/08 B
F04D29/42 E
F04D29/046 B
F04D29/046 C
F04D29/06
(21)【出願番号】P 2020134945
(22)【出願日】2020-08-07
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000141174
【氏名又は名称】株式会社丸山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140682
【氏名又は名称】妙摩 貞茂
(72)【発明者】
【氏名】青山 良平
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-211792(JP,A)
【文献】特開昭61-034388(JP,A)
【文献】特開2004-300992(JP,A)
【文献】実公昭33-017180(JP,Y1)
【文献】実公昭29-002061(JP,Y1)
【文献】実公昭39-005938(JP,Y1)
【文献】特開平10-077982(JP,A)
【文献】特開昭51-066507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 5/00
F04D 29/42
F04D 29/046
F04D 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング(2)と、
前記ケーシング(2)内に収容され、外部の駆動源によって回転軸(AX)周りに回転させられるインペラ(4)と、
前記インペラ(4)における前記回転軸(AX)方向の一方側の外面である第1外面(42a)と、前記ケーシング(2)の内面(8a)との間に配置される第1摺動プレート(3)と、
前記インペラ(4)における前記回転軸(AX)方向の他方側の外面である第2外面(42b)と、前記ケーシング(2)の内面(9a)との間に配置される第2摺動プレート(5)と、
を備え、
前記ケーシング(2)の内部には、前記ケーシング(2)、前記第1摺動プレート(3)、及び前記第2摺動プレート(5)によって前記インペラ(4)の外周縁周りに昇圧水路(L)が形成され、
前記ケーシング(2)と、前記第1摺動プレート(3)及び前記第2摺動プレート(5)とは、互いに異なる材料によって形成さ
れ、
前記第1摺動プレート(3)は、前記インペラ(4)の外径よりも小さい外径を有する第1プレート本体部(31)と、前記第1プレート本体部(31)の外周縁から前記インペラ(4)の外側まで張り出す第1舌部(32)と、を有し、
前記第2摺動プレート(5)は、前記インペラ(4)の外径よりも小さい外径を有する第2プレート本体部(51)と、前記第2プレート本体部(51)の外周縁から前記インペラ(4)の外側まで張り出す第2舌部(52)と、を有し、
前記第1舌部(32)は、外側の端部の位置に、前記第2摺動プレート(5)側に向って突出する第1凸部(32a)を有し、
前記第2舌部(52)は、外側の端部の位置に、前記第1摺動プレート(3)側に向って突出する第2凸部(52a)を有し、
前記第1凸部(32a)の突出高さと前記第2凸部(52a)の突出高さとは、互いに同じであり、
前記第1凸部(32a)を有する前記第1舌部(32)及び前記第2凸部(52a)を有する前記第2舌部(52)によって、前記昇圧水路(L)における吸水路(L1)に接続される水路始点(La)と、前記昇圧水路(L)における吐出路(L2)に接続される水路終点(Lb)とが、互いに区画されている、カスケードポンプ(1)。
【請求項2】
前記昇圧水路(L)と、前記ケーシング(2)内における前記昇圧水路(L)以外の内部空間(R)とを接続する空気抜き流路(K)を更に備え、
前記空気抜き流路(K)は、前記昇圧水路(L)から前記内部空間(R)まで延在する前記ケーシングに設けられた溝(83)と、前記溝(83)
の開口部を覆う前記第1摺動プレート(3)とによって形成される、請求項
1に記載のカスケードポンプ(1)。
【請求項3】
前記第1摺動プレート(3)及び前記第2摺動プレート(5)は、前記ケーシング(2)よりも耐熱性が高く、
前記ケーシング(2)は、前記第1摺動プレート(3)及び前記第2摺動プレート(5)よりも引張伸び率が高い、請求項1
又は2に記載のカスケードポンプ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カスケードポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、液体を噴霧するために用いられるポンプとしてカスケードポンプが記載されている。このようなカスケードポンプは、ケーシング内に設けられたインペラを回転させて液体を加圧している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ケーシング内においてインペラが摺動する部位は、摺動熱に耐える必要がある。また、ケーシングは、ケーシング内に残る液体が凍結して膨張した場合であっても、この膨張に耐える強度を備えている必要がある。このように、カスケードポンプは摺動熱及び残液の凍結膨張の両方に対応する必要があるものの、ケーシングのみでは性質の異なるこれらの両方の要求に対して適切に対応することは困難であった。
【0005】
そこで、本発明は、摺動熱及び残液の凍結膨張に対してそれぞれ適切に対応可能なカスケードポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ケーシング(2)と、ケーシング(2)内に収容され、外部の駆動源によって回転軸(AX)周りに回転させられるインペラ(4)と、インペラ(4)における回転軸(AX)方向の一方側の外面である第1外面(42a)と、ケーシング(2)の内面(8a)との間に配置される第1摺動プレート(3)と、インペラ(4)における回転軸(AX)方向の他方側の外面である第2外面(42b)と、ケーシング(2)の内面(9a)との間に配置される第2摺動プレート(5)と、を備え、ケーシング(2)の内部には、ケーシング(2)、第1摺動プレート(3)、及び第2摺動プレート(5)によってインペラ(4)の外周縁周りに昇圧水路(L)が形成され、ケーシング(2)と、第1摺動プレート(3)及び第2摺動プレート(5)とは、互いに異なる材料によって形成されている。
【0007】
このカスケードポンプ(1)では、インペラ(4)とケーシング(2)との間に設けられた第1摺動プレート(3)と第2摺動プレート(5)とを備えている。これにより、カスケードポンプ(1)では、インペラ(4)が回転することによって生じる摺動熱に対しては、第1摺動プレート(3)及び第2摺動プレート(5)が対応すればよく、残液が凍結した場合の凍結膨張に対しては、ケーシング(2)が対応すればよい。すなわち、カスケードポンプ(1)は、摺動熱及び残液の凍結膨張という互いに異なる要求に対して異なる部材によってそれぞれ対応できる構成となっており、求められる要求に応じた部材を用いることができる。従って、このカスケードポンプ(1)は、摺動熱及び残液の凍結膨張に対してそれぞれ適切に対応することができる。
【0008】
カスケードポンプ(1)において、第1摺動プレート(3)は、インペラ(4)の外径よりも小さい外径を有する第1プレート本体部(31)と、第1プレート本体部(31)の外周縁からインペラ(4)の外側まで張り出す第1舌部(32)と、を有し、第2摺動プレート(5)は、インペラ(4)の外径よりも小さい外径を有する第2プレート本体部(51)と、第2プレート本体部(51)の外周縁からインペラ(4)の外側まで張り出す第2舌部(52)と、を有し、第1舌部(32)及び第2舌部(52)によって、昇圧水路(L)における吸水路(L1)に接続される水路始点(La)と、昇圧水路(L)における吐出路(L2)に接続される水路終点(Lb)とが、互いに区画されていてもよい。この場合、第1摺動プレート(3)の第1舌部(32)及び第2摺動プレート(5)の第2舌部(52)によって、昇圧水路(L)の水路始点(La)と水路終点(Lb)とを区画することができ、これらを区画するための専用の部材を備える必要がない。
【0009】
カスケードポンプ(1)は、昇圧水路(L)と、ケーシング(2)内における昇圧水路(L)以外の内部空間(R)とを接続する空気抜き流路(K)を更に備え、空気抜き流路(K)は、昇圧水路(L)から内部空間(R)まで延在するケーシングに設けられた溝(83)と、溝(83)の上部開口部を覆う第1摺動プレート(3)とによって形成されていてもよい。この場合、カスケードポンプは、この空気抜き流路(K)によって、カスケードポンプ(1)の使用後に昇圧水路(L)内に液体が封入されてしまうことを防止できる。
【0010】
カスケードポンプ(1)において、第1摺動プレート(3)及び第2摺動プレート(5)は、ケーシング(2)よりも耐熱性が高く、ケーシング(2)は、第1摺動プレート(3)及び第2摺動プレート(5)よりも引張伸び率が高くてもよい。この場合、カスケードポンプ(1)は、耐熱性が高い第1摺動プレート(3)及び第2摺動プレート(5)によって、インペラ(4)の回転によって生じる摺動熱に対して適切に対応することができる。また、カスケードポンプ(1)は、残液が凍結膨張した場合であっても、引張伸び率が高いケーシング(2)が凍結膨張に追従することによって、凍結膨張に対して適切に対応することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、摺動熱及び残液の凍結膨張に対してそれぞれ適切に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態に係るカスケードポンプの分解斜視図である。
【
図2】
図2は、カスケードポンプを回転軸に直交する方向に沿って切った断面図である。
【
図3】
図3は、カスケードポンプを
図2のIII-III線に沿って切った断面図である。
【
図4】
図4(a)は、第1摺動プレート及び第2摺動プレートの正面図である。
図4(b)は、第1摺動プレート及び第2摺動プレートの側面図である。
【
図5】
図5は、ケーシング蓋に設けられた溝及び第1摺動プレートによって形成される空気抜き流路を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図において、同一又は相当する要素同士には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
図1に示されるカスケードポンプ1は、例えば動力噴霧機に、液体タンク及び駆動源である内燃エンジンと共に搭載され、当該駆動源により駆動されて液体タンクに貯留された液体を噴霧させるため等に用いられる。なお、
図1は、カスケードポンプ1の内部構造を示すために、インペラ4の回転の軸である回転軸AX方向に各部を分解した状態が示されている。
【0015】
図1に示されるように、カスケードポンプ1は、ケーシング2、第1摺動プレート3、インペラ4、第2摺動プレート5、ホルダ6、及び軸部材7を備えている。
図1~
図3に示されるように、ケーシング2は、第1摺動プレート3、インペラ4、第2摺動プレート5、及びホルダ6を収容する内部空間R(
図2及び
図3参照)を内部に有する。ケーシング2は、ケーシング蓋8、及びケーシング本体9を備えている。ケーシング蓋8とケーシング本体9とは、ボルトによって互いに接合される。
【0016】
本実施形態において、ケーシング2の材料としては、カスケードポンプ1内に残る液体が凍結して膨張した場合であっても破損することを抑制できるように、引張伸び率の高い材料が用いられる。ここでは、ケーシング2の材料としては、第1摺動プレート3及び第2摺動プレート5よりも引張伸び率が高い材料が用いられる。具体的には、ケーシング2の材料として、例えば、ガラス充填ナイロン樹脂(PA-G)を用いることができる。
【0017】
軸部材7は、外部の駆動源の回転部に固定される。軸部材7は、外部の駆動源によって回転させられる。軸部材7は、回転軸AXに沿って延在する軸部71を備えている。軸部71は、先端部がケーシング2の内部空間R内に位置するようにケーシング本体9の孔91に差し込まれている。すなわち、軸部71の先端部は、ケーシング2の内部空間Rに位置している(
図3参照)。軸部71とケーシング本体9とは、相対回転可能となっている。
【0018】
ホルダ6には、回転軸AXに沿って貫通する嵌合孔61が設けられている。嵌合孔61には、軸部71の先端部が差し込まれている。ホルダ6の嵌合孔61と軸部71の先端部とは互いに嵌合している。これにより、ホルダ6は、回転軸AX周りに(回転軸AXを中心に)軸部材7と一体に回転する。
【0019】
インペラ4には、回転軸AXに沿って貫通する嵌合孔41が設けられている。嵌合孔41には、ホルダ6が差し込まれている。インペラ4の嵌合孔41と、ホルダ6の外周面とは互いに嵌合している。これにより、インペラ4は、回転軸AX周りに(回転軸AXを中心に)ホルダ6及び軸部材7と一体に回転する。すなわち、インペラ4は、外部の駆動源によって回転軸AX周りに回転させられる。
【0020】
インペラ4は、板状の円形部材からなる羽根板部42を備えている。羽根板部42の外縁部には、多数の羽根43が設けられている。ここで、
図2及び
図3に示されるように、ケーシング本体9の内側部分には、回転軸AXに沿って見たときに、インペラ4の羽根43を囲む環状の包囲部92が設けられている。同様に、
図3に示されるように、ケーシング蓋8の内側部分には、回転軸AXに沿って見たときに、インペラ4の羽根43を囲む環状の包囲部82が設けられている。すなわち、羽根43は、ケーシング蓋8の包囲部82とケーシング本体9の包囲部92とによって形成される環状の空間内に位置している。
【0021】
第1摺動プレート3及び第2摺動プレート5は、それぞれ、略環状を呈する板状の部材である。第1摺動プレート3及び第2摺動プレート5は、回転軸AX方向においてインペラ4を挟み込む。インペラ4は、回転時において、第1摺動プレート3及び第2摺動プレート5に対して摺動可能となっている。
【0022】
第1摺動プレート3及び第2摺動プレート5は、ケーシング2とは異なる材料によって形成されている。本実施形態において、第1摺動プレート3及び第2摺動プレート5の材料としては、インペラ4が摺動した際の摺動熱に耐えることができるように、耐熱性が高い材料が用いられる。ここでは、第1摺動プレート3及び第2摺動プレート5の材料としては、ケーシング2よりも耐熱性が高い材料が用いられる。具体的には、第1摺動プレート3及び第2摺動プレート5の材料として、例えば、熱硬化性樹脂であるPF(フェノール)樹脂を用いることができる。PF(フェノール)樹脂は表面硬度が比較的強いため、インペラ4が摺動することによる第1摺動プレート3及び第2摺動プレート5の摺動摩擦も抑制することができる。
【0023】
第1摺動プレート3は、
図3に示されるように、インペラ4とケーシング蓋8との間に配置されている。すなわち、第1摺動プレート3は、インペラ4の羽根板部42における回転軸AX方向の一方側の外面であるケーシング蓋側面42a(第1外面)と、ケーシング蓋8の内面8aとの間に配置される。第1摺動プレート3は、ケーシング蓋8の包囲部82に対してボルトによって固定されている。
【0024】
第2摺動プレート5は、
図3に示されるように、インペラ4とケーシング2との間に配置されている。すなわち、第2摺動プレート5は、インペラ4の羽根板部42における回転軸AX方向の他方側の外面であるケーシング本体側面(第2外面)42bと、ケーシング本体9の内面9aとの間に配置される。第2摺動プレート5は、ケーシング本体9の包囲部92に対してボルトによって固定されている。
【0025】
次に、第1摺動プレート3及び第2摺動プレート5の形状について説明する。
図4(a)及び
図4(b)に示されるように、第1摺動プレート3は、第1プレート本体部31、及び第1舌部32を有している。第1プレート本体部31は、インペラ4(羽根板部42)の外径よりも小さい外径を有する環状を呈する板状の部材である。第1舌部32は、第1プレート本体部31の外周縁からインペラ4(羽根板部42)の外側まで張り出している。第1舌部32は、外側の端部の位置に、第2摺動プレート5側に向って突出する第1凸部32aを有している。第1凸部32aの突出高さは、インペラ4の羽根板部42における回転軸AX方向の厚みの半分の高さとなっている。第1凸部32aは、インペラ4の外周面に対向する。
【0026】
第2摺動プレート5は、第2プレート本体部51、及び第2舌部52を有している。第2プレート本体部51は、インペラ4(羽根板部42)の外径よりも小さい外径を有する環状を呈する板状の部材である。第2舌部52は、第2プレート本体部51の外周縁からインペラ4(羽根板部42)の外側まで張り出している。第2舌部52は、外側の端部の位置に、第1摺動プレート3側に向って突出する第2凸部52aを有している。第2凸部52aの突出高さは、インペラ4の羽根板部42における回転軸AX方向の厚みの半分の高さとなっている。第2凸部52aは、インペラ4の外周面に対向する。
【0027】
すなわち、第1摺動プレート3と第2摺動プレート5とは、互いに同じ形状となっている。これにより、第1摺動プレート3と第2摺動プレート5とは、配置の向きが異なるだけで互いに同じ部品であり、部品の共用化を図ることができる。
【0028】
ここで、
図2及び
図3に示されるように、ケーシング2の内部においてインペラ4の羽根43の周りには、インペラ4の回転によって液体を昇圧するための昇圧水路Lが設けられている。昇圧水路Lは、ケーシング蓋8の包囲部82と、ケーシング本体9の包囲部92と、第1摺動プレート3の第1プレート本体部31の外周面と、第2摺動プレート5の第2プレート本体部51の外周面と、によってインペラ4の外周縁周り(羽根43の周り)に形成される。
【0029】
図2に示されるように、昇圧水路Lには、ケーシング本体9に設けられた吸水路L1と吐出路L2とが接続されている。昇圧水路L内には、吸水路L1から液体が導入される。インペラ4の羽根43は、回転軸AX周りにインペラ4が回転させられることにより、昇圧水路L内に導入された液体に粘性摩擦によって運動エネルギーを与え、液体を吐出路L2へ圧送する。
【0030】
なお、
図2に示されるように、昇圧水路Lにおける吸水路L1に接続される部位を水路始点Laとし、昇圧水路Lにおける吐出路L2に接続される部位を水路終点Lbとする。インペラ4の羽根43の周りにおいて、水路始点Laが昇圧水路Lの始点となり水路終点Lbが昇圧水路Lの終点となるように、水路始点Laと水路終点Lbとの間が第1摺動プレート3の第1凸部32aを有する第1舌部32及び第2摺動プレート5の第2凸部52aを有する第2舌部52によって区画されている(
図2及び
図3参照)。
【0031】
図1及び
図3に示されるように、ケーシング蓋8の内面8aには、環状の包囲部82の内側に凹部81が設けられている。凹部81は、ケーシング2内に差し込まれた軸部材7の軸部71の先端部がケーシング蓋8に当接しないように、軸部71の先端部を逃げている。
【0032】
図1及び
図5に示されるように、ケーシング蓋8の内面8aには、溝83が設けられている。より詳細には、溝83は、包囲部82を横切るように設けられ、第1摺動プレート3の第1プレート本体部31の外側に対応する位置から、凹部81まで延在している。すなわち、溝83は、昇圧水路Lから、ケーシング2内の内部空間Rのうち凹部81によって形成される内部空間Rまで延在している。
【0033】
また、包囲部82には第1摺動プレート3が重ねられるため、溝83の上部開口部が第1摺動プレート3によって覆われる。これにより、溝83と第1摺動プレート3とによって、昇圧水路Lから、凹部81内の内部空間Rまで延在するトンネル状の空気抜き流路Kが形成される。
【0034】
以上のように、カスケードポンプ1では、インペラ4とケーシング2との間に設けられた第1摺動プレート3と第2摺動プレート5とを備えている。これにより、カスケードポンプ1では、インペラ4が回転することによって生じる摺動熱に対しては、第1摺動プレート3及び第2摺動プレート5が対応すればよく、残液が凍結した場合の凍結膨張に対しては、ケーシング2が対応すればよい。すなわち、カスケードポンプ1は、摺動熱及び残液の凍結膨張という互いに異なる要求に対して、異なる部材によってそれぞれ対応できる構成となっており、求められる要求に応じた部材を用いることができる。従って、このカスケードポンプ1は、摺動熱及び残液の凍結膨張に対してそれぞれ適切に対応することができる。
【0035】
第1摺動プレート3の第1舌部32と第2摺動プレート5の第2舌部52とによって、昇圧水路Lの水路始点Laと水路終点Lbとが互いに区画されている。この場合、第1舌部32及び第2舌部52によって、昇圧水路Lの水路始点Laと水路終点Lbとを区画することができ、これらを区画するための専用の部材を備える必要がない。
【0036】
カスケードポンプ1には、昇圧水路Lと、ケーシング蓋8の凹部81内の内部空間R(ケーシング2内における昇圧水路L以外の内部空間R)とを接続する空気抜き流路Kが設けられている。この場合、カスケードポンプ1は、この空気抜き流路Kによって、カスケードポンプ1の使用後に昇圧水路L内に液体が封入されてしまうことを防止できる。また、この空気抜き流路Kは、ケーシング蓋8に設けられた溝83と第1摺動プレート3とによって、トンネル状に形成される。これにより、カスケードポンプ1に対して、安定した断面積を有する空気抜き流路Kを形成することができる。
【0037】
第1摺動プレート3及び第2摺動プレート5は、ケーシング2よりも耐熱性が高い。また、ケーシング2は、第1摺動プレート3及び第2摺動プレート5よりも引張伸び率が高い。この場合、カスケードポンプ1は、耐熱性が高い第1摺動プレート3及び第2摺動プレート5によって、インペラ4の回転によって生じる摺動熱に対して適切に対応することができる。また、カスケードポンプ1は、残液が凍結膨張した場合であっても、引張伸び率が高いケーシング2が凍結膨張に追従することによって、凍結膨張に対して適切に対応することができる。
【0038】
耐熱性が高いPF(フェノール)樹脂は比較的効果であるが、インペラ4の摺動熱を受け持つ第1摺動プレート3及び第2摺動プレート5にのみPF(フェノール)樹脂を用いればよく、ケーシング2の材料としてPF(フェノール)樹脂を用いる必要がない。このためカスケードポンプ1の材料コストの増加を抑制できる。また、ケーシング2についてもPF(フェノール)樹脂を用いて形成する場合に比べ、カスケードポンプ1の軽量化を図ることができる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、カスケードポンプ1は、動力噴霧機に適用されることに限定されず、種々の装置に適用され得る。
【符号の説明】
【0040】
1…カスケードポンプ、2…ケーシング、3…第1摺動プレート、4…インペラ、5…第2摺動プレート、31…第1プレート本体部、32…第1舌部、51…第2プレート本体部、52…第2舌部、42a…ケーシング蓋側面(第1外面)、42b…ケーシング本体側面(第2外面)、83…溝、AX…回転軸、K…空気抜き流路、L…昇圧水路、L1…吸水路、L2…吐出路、La…水路始点、Lb…水路終点、R…内部空間。