(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】検出システム、制御方法、及び検出装置
(51)【国際特許分類】
G01N 29/265 20060101AFI20240219BHJP
B25J 19/02 20060101ALI20240219BHJP
G01N 29/22 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
G01N29/265
B25J19/02
G01N29/22
(21)【出願番号】P 2020135082
(22)【出願日】2020-08-07
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏昌
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0144262(US,A1)
【文献】特開2019-090727(JP,A)
【文献】特開2016-118532(JP,A)
【文献】特開2013-088242(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00-29/52
G01B 17/00-17/04
B25J 19/00-19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体又はゲルを通す第1配管を含む、多関節のアーム機構と、
前記アーム機構の先端部に設けられるエンドエフェクタと、
を備え、
前記エンドエフェクタは、
回転継手と、
前記回転継手を介して前記第1配管と接続される第2配管と接続され、前記液体又は前記ゲルを吐出する吐出器と、
回転ステージと、
前記回転ステージを介して前記先端部に設けられ、超音波の送信及び反射波の検出を行う検出器と、
を含み、
前記検出器の先端は、前記回転ステージの回転中心に位置する、検出システム。
【請求項2】
前記回転ステージは、第1方向まわりと、前記第1方向に垂直な第2方向まわりと、に回転可能であり、
前記検出器は、前記第1方向及び前記第2方向に平行な面と交差する方向に前記超音波を送信する、請求項1記載の検出システム。
【請求項3】
前記回転ステージは、前記第1方向まわりに回転する第1ステージと、前記第2方向まわりに回転する第2ステージと、を含み、
前記第1ステージの前記第1方向における位置は、前記検出器の前記先端の前記第1方向における位置と異なり、
前記第2ステージの前記第2方向における位置は、前記検出器の前記先端の前記第2方向における位置と異なる、請求項2記載の検出システム。
【請求項4】
前記第1方向及び前記第2方向に垂直な第3方向から見たときに、前記第1ステージの少なくとも一部は、前記第2ステージの少なくとも一部と重なっていない、請求項3記載の検出システム。
【請求項5】
前記検出器は、それぞれが前記超音波の送信及び前記反射波の受信を行う複数の検出素子を含み、
前記複数の検出素子は、互いに交差する第1配列方向及び第2配列方向に沿って配列され、
前記超音波が送信される前記方向は、前記第1配列方向及び前記第2配列方向に平行な面と交差する、請求項2~4のいずれか1つに記載の検出システム。
【請求項6】
前記第1配列方向は、前記第1方向に平行であり、
前記第2配列方向は、前記第2方向に平行である、請求項5記載の検出システム。
【請求項7】
前記アーム機構及び前記回転ステージを制御する制御装置をさらに備え、
前記制御装置は、
前記アーム機構を動作させ、前記検出器を対象に接触させる第1動作と、
前記検出器による前記反射波の検出結果に基づき、前記回転ステージを動作させ、前記検出器の前記先端の傾きを変化させる第2動作と、
を実行する、請求項1~6のいずれか1つに記載の検出システム。
【請求項8】
前記対象は、接合体の溶接部である、請求項7記載の検出システム。
【請求項9】
前記検出結果に基づき、前記検出器の前記先端の傾きを算出する処理装置をさらに備え、
算出された前記傾きが予め設定された第1範囲に含まれない場合、前記制御装置は、算出された前記傾きに基づいて前記回転ステージを動作させる、請求項7又は8に記載の検出システム。
【請求項10】
算出された前記傾きが前記第1範囲に含まれる場合、前記処理装置は、前記反射波の前記検出結果に基づいて前記対象を検査する、請求項9記載の検出システム。
【請求項11】
前記回転継手は、前記先端部に対して、前記先端部から前記エンドエフェクタに向かう方向まわりに回転可能である、請求項1~10のいずれか1つに記載の検出システム。
【請求項12】
前記吐出器は、前記回転ステージを介さずに前記先端部に取り付けられる、請求項1~11のいずれか1つに記載の検出システム。
【請求項13】
液体又はゲルを通す第1配管を含む、多関節のアーム機構と、
前記アーム機構の先端部に設けられ、
回転継手と、
前記回転継手を介して前記第1配管と接続される第2配管と接続され、前記液体又は前記ゲルを吐出する吐出器と、
回転ステージと、
前記回転ステージを介して前記先端部に設けられ、超音波の送信及び反射波の検出を行う検出器と、
を含むエンドエフェクタと、
を有するシステムの制御方法であって、
前記回転ステージの動作により、前記検出器の先端を前記回転ステージの回転中心上で回転させることで、前記検出器の前記先端の傾きを変化させる、制御方法。
【請求項14】
前記回転ステージを、第1方向まわりと、前記第1方向に垂直な第2方向まわりと、に回転させることで、前記検出器の前記傾きを変化させ、
前記検出器から、前記第1方向及び前記第2方向に平行な面と交差する方向に前記超音波を送信する、請求項13記載の制御方法。
【請求項15】
前記検出器による前記反射波の検出結果に基づき、前記回転ステージを動作させ、前記検出器の前記傾きを変化させる、請求項13又は14に記載の制御方法。
【請求項16】
前記検出結果に基づいて算出された前記傾きが予め設定された第1範囲に含まれない場合、算出された前記傾きに基づいて前記回転ステージを動作させる、請求項15記載の制御方法。
【請求項17】
前記検出結果に基づいて算出された前記傾きが前記第1範囲に含まれる場合、前記反射波の前記検出結果に基づいて対象を検査する、請求項16記載の制御方法。
【請求項18】
液体又はゲルを通す第1配管を含む、多関節のアーム機構と、
前記アーム機構の先端部に設けられ、
回転継手と、
前記回転継手を介して前記第1配管と接続される第2配管と接続され、前記液体又は前記ゲルを吐出する吐出器と、
回転ステージと、
前記回転ステージを介して前記先端部に設けられ、超音波の送信及び反射波の検出を行う検出器と、
を含むエンドエフェクタと、
を有するシステムを用いた検査方法であって、
前記回転ステージは、第1方向まわりと、前記第1方向に垂直な第2方向まわりと、に回転可能であり、
前記検出器から、前記第1方向及び前記第2方向に平行な面と交差する方向において、接合体の溶接部に向けて前記超音波を送信させ、
前記反射波の検出結果に基づいて算出される前記検出器の先端の傾きが、予め設定された第1範囲に含まれる場合、前記検出結果に基づいて前記溶接部を検査する、検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、検出システム、制御方法、及び検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
任意の対象を検査するシステム及び装置がある。これらのシステム及び装置について、使い勝手の向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、使い勝手を向上可能な、検出システム、制御方法、及び検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る検出システムは、多関節のアーム機構と、エンドエフェクタと、を備える。前記エンドエフェクタは、前記アーム機構の先端部に設けられる。前記エンドエフェクタは、回転ステージ及び検出器を含む。前記検出器は、前記回転ステージを介して前記先端部に設けられ、超音波の送信及び反射波の検出を行う。前記検出器の先端は、前記回転ステージの回転中心に位置する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態に係る検出システムを表す斜視図である。
【
図2】実施形態に係るエンドエフェクタを表す斜視図である。
【
図3】実施形態に係るエンドエフェクタを表す斜視図である。
【
図4】実施形態に係るエンドエフェクタを表す平面図である。
【
図5】実施形態に係る検出システムの動作を表すフローチャートである。
【
図6】第1動作の詳細を表すフローチャートである。
【
図9】検査における傾きの計算方法を説明するための図である。
【
図12】検出器を用いた検査方法を説明するための模式図である。
【
図13】変形例に係るエンドエフェクタを表す斜視図である。
【
図14】変形例に係るエンドエフェクタを用いた第1動作の詳細を表すフローチャートである。
【
図15】変形例に係る検出システムを表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
本願明細書と各図において、既に説明したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
図1は、実施形態に係る検出システムを表す斜視図である。
実施形態に係る検出システム1は、
図1に表したように、アーム機構100、エンドエフェクタ200、制御装置300、処理装置400、及び記憶装置410を含む。
【0009】
アーム機構100は、複数のリンク110及び複数の回転軸120を含む。リンク110の一端同士は、回転軸120により連結されている。モータにより回転軸120が駆動されると、一方のリンク110が他方のリンク110に対して回転する。
【0010】
アーム機構100の自由度は、4自由度以上であることが好ましい。例えば、アーム機構100は、垂直多関節ロボットであり、6自由度を有する。すなわち、アーム機構100は、その先端部の3方向のそれぞれの位置と、先端部の3方向まわりのそれぞれの角度と、を制御できる。
【0011】
エンドエフェクタ200は、アーム機構100の先端部に設けられる。
図1に表した検出システム1では、エンドエフェクタ200は、6自由度を取れるように設けられる。
【0012】
アーム機構100には、エンドエフェクタ200に電力及びカプラントを供給するための配線及び配管が取り付けられる。配線及び配管は、例えば、結束部材140により束ねられる。結束部材140には、例えば、スパイラルチューブ、クリップ、クランプ、又はバンドなどが用いられる。又は、配線及び配管は、各リンク110の内側を通して設けられても良い。
【0013】
制御装置300は、アーム機構100の各モータに駆動信号を送信する。各モータは、駆動信号に従って駆動され、各回転軸120の回転角度が制御される。これにより、アーム機構100の先端部の姿勢が制御される。例えば、制御装置300は、制御点の姿勢が所望の姿勢となるように、逆運動学計算により各回転軸120の回転角度を計算する。制御点とは、制御装置300によって位置および向きが制御される点である。制御点は、例えば、アーム機構100の先端部における任意の一点に設定される。又は、制御点は、エンドエフェクタ200の任意の一点に設定されても良い。
【0014】
処理装置400は、エンドエフェクタ200に設けられる検出器220の傾きを算出する。また、処理装置400は、検出器220による検出結果に基づいて、任意の対象を検査する。記憶装置410は、検出結果、処理装置400の処理によって得られたデータなどを記憶する。
【0015】
制御装置300及び処理装置400のそれぞれは、例えば、中央演算処理装置(CPU)、リードオンリーメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、記憶装置、入力インタフェース、出力インタフェース、通信インタフェース、及びこれらを接続するバスを含む。記憶装置410は、例えば、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)、及びネットワーク接続ハードディスク(NAS)から選択される少なくとも1つを含む。
【0016】
処理装置400には、入力装置420及び出力装置430が接続されても良い。入力装置420は、ユーザが処理装置400に対してデータを入力するために用いられる。入力装置420は、例えば、キーボード、マウス、タッチパッド、及びマイク(音声入力)から選択される少なくとも1つを含む。出力装置430は、処理装置400から送信されたデータを、ユーザに向けて出力する。出力装置430は、例えば、モニタ、スピーカ、プリンタ、及びプロジェクタから選択される少なくとも1つを含む。
【0017】
図2及び
図3は、実施形態に係るエンドエフェクタを表す斜視図である。
エンドエフェクタ200は、
図2及び
図3に表したように、回転ステージ210、検出器220、吐出器230、第1駆動部241、第2駆動部242、第3駆動部243、外筒251、回転継手252、及びセンサ260を含む。
【0018】
回転ステージ210は、アーム機構100の先端部に対して2自由度を有する。検出器220は、回転ステージ210を介してアーム機構100の先端部に取り付けられる。すなわち、検出器220は、アーム機構100の先端部に対して、2自由度を取れるように設けられる。検出器220の先端は、回転ステージ210の回転中心に位置する。検出器220の姿勢は、アーム機構100の先端部の姿勢及び回転ステージ210の状態により決定される。
【0019】
ここでは、姿勢とは、位置及び向きを意味する。姿勢は、互いに直交する3方向のそれぞれの位置と、各方向まわりの角度(ローリング、ピッチング、ヨーイング)と、により決定される。
【0020】
検出器220は、検査の対象に対して、探査(プロービング)を実行する。探査では、超音波の送信及び反射波の検出が行われる。超音波の送信方向は、検出器220の姿勢に応じて変化する。
【0021】
回転ステージ210は、第1ステージ211及び第2ステージ212を含む。第1ステージ211及び第2ステージ212の一方は、他方の回転ステージに取り付けられる。図示した例では、第1ステージ211の回転ステージに、第2ステージ212が取り付けられている。
【0022】
第1ステージ211は、X方向(第1方向)まわりに回転する。第2ステージ212は、Y方向(第2方向)まわりに回転する。X方向とY方向は、互いに直交する。X方向及びY方向は、アーム機構100の先端部からエンドエフェクタ200に向かうZ方向と交差する。例えば、第1ステージ211及び第2ステージ212が傾斜していない状態において、Z方向は、X方向及びY方向に対して垂直である。
【0023】
検出器220による超音波の送信方向(第3方向)は、X方向及びY方向に平行な面と交差する。例えば、超音波は、X方向及びY方向に垂直な方向に沿って送信される。第1ステージ211及び第2ステージ212が傾斜していない状態において、超音波の送信方向は、Z方向に平行である。
【0024】
例えば、第1ステージ211は、基台211a及び回転部211bを含む。基台211aは、アーム機構100の先端部に対して固定されている。基台211aは、X方向に平行であり且つ回転中心C1を中心とする円弧状の湾曲面を有する。回転部211bは、基台211aの湾曲面に沿ってX方向まわりに回転する。
【0025】
第1ステージ211の回転部211bは、第1駆動部241により回転される。第1駆動部241は、モータを含み、配線241aを通して電力が供給される。第1駆動部241が動作すると、動力が伝達部241bを介して第1ステージ211に伝達する。第1ステージ211がX方向まわりに回転することで、検出器220のX方向まわりの角度が変化する。
【0026】
例えば、第2ステージ212は、基台212a及び回転部212bを含む。基台212aは、回転部211bに対して固定されている。基台212aは、Y方向に平行であり且つ回転中心C2を中心とする円弧状の湾曲面を有する。回転部212bは、基台212aの湾曲面に沿ってY方向まわりに回転する。
【0027】
第2ステージ212の回転部212bは、第2駆動部242により回転される。第2駆動部242は、モータを含み、配線242aを通して電力が供給される。第2駆動部242が動作すると、動力が伝達部242bを介して第2ステージ212に伝達する。第2ステージ212がY方向まわりに回転することで、検出器220のY方向まわりの角度が変化する。
【0028】
第1駆動部241及び第2駆動部242は、Z方向における長さが、X方向又はY方向における長さよりも長い。第1駆動部241及び第2駆動部242のそれぞれのモータの回転軸方向は、X方向及びY方向と交差する。例えば、それぞれのモータの回転軸方向は、Z方向に平行である。モータの回転方向は、伝達部241b及び242bにより、それぞれX方向まわり及びY方向まわりに変換され、第1ステージ211及び第2ステージ212に伝達される。
【0029】
吐出器230は、液体又はゲルを吐出する。吐出される液体又はゲルは、カプラントとして用いられる。カプラントは、検出器220と検査対象との間で超音波の音響的整合をとるために用いられる媒体である。吐出器230は、Z方向に沿ってカプラントを吐出する。
【0030】
吐出器230は、回転ステージ210とは別にアーム機構100の先端部に取り付けられる。吐出器230の姿勢は、アーム機構100の先端部の姿勢に対応する。又は、吐出器230は、回転ステージ210を介してアーム機構100の先端部に取り付けられても良い。この場合、回転ステージ210が大型化する。また、回転ステージ210を回転させるために必要な、第1駆動部241及び第2駆動部242の出力も増大する。エンドエフェクタ200の小型化のために、吐出器230は、回転ステージ210とは別にアーム機構100の先端部に取り付けられることが好ましい。
【0031】
第3駆動部243は、回転ステージ210とは別にアーム機構100の先端部に取り付けられる。第3駆動部243は、アーム機構100の先端部に対して、吐出器230をZ方向に移動させる。例えば、第3駆動部243は、エアシリンダを含む。第3駆動部243は、アクチュエータを含んでも良い。
【0032】
第3駆動部243のピストンは、Z方向に沿って設けられる。ピストンは、後述する外筒251に固定された板部材243a上を、Z方向に摺動する。Z方向から見たときに、吐出器230及び第3駆動部243は、外筒251を挟んで互いに反対側に位置する。第3駆動部243のピストンには、連結部243bが連結される。連結部243bには、連結部243cが連結される。吐出器230は、連結部243cに対して固定される。連結部243bは、屈曲した板状の部材であり、摺動時に他の部材との干渉を回避できる形状に構成されている。連結部243cは、窪みがZ方向に延びる凹状の部材である。吐出器230の上部は、連結部243cの窪みの内側に固定される。連結部243bにより、外筒251を挟んで互いに反対側に位置する吐出器230及び第3駆動部243が連結される。第3駆動部243がZ方向に摺動すると、連結部243b及び243cを介して、吐出器230がZ方向に移動する。また、第3駆動部243には、スピードコントローラ243dが設けられる。スピードコントローラ243dは、シリンダを流れる気体の流量を制御する。
【0033】
回転ステージ210、吐出器230、第1駆動部241~第3駆動部243などは、外筒251を介してアーム機構100の先端部に取り付けられる。外筒251は、Z方向に延びる中空の筒状部材であり、アーム機構100の先端部に対して固定される。外筒251の内側には、回転継手252が設けられる。回転継手252は、外筒251に対して、Z方向まわりに回転可能である。
【0034】
外筒251の内側には、回転ステージ210、検出器220、及び吐出器230などに電力を供給するための配線、吐出器230にカプラントを供給するための配管(第2配管)などが通される。カプラントが通過する配管は、回転継手252を介して、結束部材140により結束された配管(第1配管)と接続される。すなわち、エンドエフェクタ200に取り付けられる配管は、アーム機構100に取り付けられる配管に対して、回転可能に設けられる。例えば、外筒251が回転軸120によりZ方向まわりに回転したとき、アーム機構100に取り付けられる配管は、回転継手252により実質的に回転しない。さらに、エンドエフェクタ200に取り付けられる配線が、回転継手252を介して、アーム機構100に取り付けられる配線と接続されても良い。
【0035】
外筒251内に設けられた、回転ステージ210に電力を供給するための配線は、不図示の配線を介して、配線241a及び242aと接続される。外筒251内に設けられたカプラントの配管は、継手231、不図示の配管、及び継手232を介して、吐出器230と接続される。外筒251内に設けられた気体の配管は、不図示の配管を介してスピードコントローラ243dと接続される。
【0036】
センサ260は、検出器220の検査対象への接触を直接的又は間接的に検知する。センサ260は、例えば、力センサ、加速度センサ、角速度センサ、遮光センサ、又は測距センサである。
【0037】
制御装置300は、エンドエフェクタ200の各構成要素を制御する。例えば、制御装置300は、第1駆動部241及び第2駆動部242に駆動信号を送信する。第1駆動部241及び第2駆動部242は、駆動信号に従って駆動される。制御装置300は、アーム機構100及びエンドエフェクタ200と、有線通信、無線通信、又はネットワークによって接続される。アーム機構100及びエンドエフェクタ200は、1つの制御装置300により制御されても良い。又は、アーム機構100及びエンドエフェクタ200は、複数の制御装置300により制御されても良い。例えば、回転軸120のモータ、第1駆動部241、及び第2駆動部242は、1つの制御装置300により制御される。吐出器230は、別の制御装置300により制御される。処理装置400は、検出器220と、有線通信、無線通信、又はネットワークによって接続される。検出器220による検出結果の処理、傾きの算出、検査などは、複数の処理装置400により実行されても良い。処理の一部が専用の処理装置400により実行され、処理の他部が汎用の別の処理装置400により実行されても良い。
【0038】
図4は、実施形態に係るエンドエフェクタを表す平面図である。
図4は、エンドエフェクタ200をZ方向から見たときの様子を表す。
図4では、第1ステージ211及び第2ステージ212が、破線で表されている。
【0039】
図2~
図4に表したように、検出器220の先端は、第1ステージ211の回転中心C1に位置する。
図4に表したように、第1ステージ211の回転中心C1のY方向における位置は、検出器220の先端のY方向における位置と同じである。第1ステージ211が回転したときに、検出器220の先端が回転中心C1上で回転する。これにより、第1ステージ211が回転したときに、検出器220の先端のY方向における位置の変化を抑制できる。例えば、検出器220の先端のY方向における位置が変化せずに、検出器220の先端のX方向まわりの傾きのみが変化する。
【0040】
また、検出器220の先端は、第2ステージ212の回転中心C2に位置する。第2ステージ212の回転中心C2のX方向における位置は、検出器220の先端のX方向における位置と同じである。第2ステージ212が回転したときに、検出器220の先端が回転中心C2上で回転する。これにより、第2ステージ212が回転したときに、検出器220の先端のX方向における位置の変化を抑制できる。例えば、検出器220の先端のX方向における位置が変化せずに、検出器220の先端のY方向まわりの傾きのみが変化する。
【0041】
処理装置400は、超音波の反射波の検出結果を検出器220から受信する。処理装置400は、検出結果に基づいて、対象に対する検出器220の傾きを算出する。制御装置300は、算出された傾きに基づき、回転ステージ210を回転させる。すなわち、検出器220の傾きについて、反射波の検出結果に基づくフィードバック制御が実行される。算出された傾きが予め設定された許容範囲(第1範囲)に含まれる場合、処理装置400は、検出結果に基づいて対象を検査する。
【0042】
図5は、実施形態に係る検出システムの動作を表すフローチャートである。
制御装置300は、第1動作を実行する(ステップS1)。第1動作において、制御装置300は、アーム機構100を動作させ、検出器220を移動させる。例えば、制御装置300は、アーム機構100の先端部の姿勢を、予め教示された姿勢に設定する。姿勢は、検出器220の先端が対象に接触するように設定される。
【0043】
例えば、センサ260は、遮光センサ又は測距センサである。検出器220は、回転ステージ210に対して、Z方向において僅かな距離を可動である。第1動作中に検出器220の先端が対象に接触すると、対象から検出器220への反力により、検出器220が回転ステージ210に対してZ方向に動く。センサ260は、検出器220の動きを検知する。センサ260により検出器220の動きが検知されると、制御装置300は、検出器220の先端が対象に接触したと判定する。制御装置300は、アーム機構100を停止させる。
【0044】
検出器220が対象に接触すると、検出器220は、探査を実行する(ステップS2)。検出器220は、反射波を検出し、その検出結果を処理装置400に送信する。処理装置400は、対象に対する検出器220の傾きを算出する(ステップS3)。処理装置400は、傾きが予め設定された許容範囲に含まれるか判定する(ステップS4)。
【0045】
傾きが許容範囲に含まれない場合、処理装置400は、算出された傾きを制御装置300に送信する。制御装置300は、第2動作を実行する(ステップS5)。第2動作では、制御装置300は、回転ステージ210を動作させ、検出器220の先端の傾きを変化させる。これにより、傾きと許容範囲との差が小さくなる。その後は、探査が再度実行される。傾きが許容範囲に含まれる場合、処理装置400は、検出結果に基づいて対象を検査する(ステップS6)。処理装置400は、検査結果を出力する(ステップS7)。
【0046】
図6は、第1動作の詳細を表すフローチャートである。
第1動作は、例えば、以下の動作を含む。制御装置300は、アーム機構100を動作させる(ステップS11)、これにより、吐出器230が、カプラントを対象へ吐出するための位置に配される。制御装置300は、吐出器230を対象へ接近させるために、第3駆動部243をZ方向に沿って摺動させる(ステップS12)。吐出器230が、対象に向けてカプラントを吐出する(ステップS13)。制御装置300は、吐出器230を対象から離すために、第3駆動部243をZ方向に沿って摺動させる(ステップS14)。制御装置300は、アーム機構100を動作させる(ステップS15)。これにより、検出器220の先端が対象に接触する。対象への接触は、センサ260の検知結果に基づいて判定される。その後、探査が実行される。
【0047】
実施形態の効果を説明する。
実施形態に係る検出システム1は、アーム機構100及びエンドエフェクタ200を含む。アーム機構100は、多関節であり、エンドエフェクタ200の姿勢を容易に調整できる。エンドエフェクタ200は、検出器220を含む。検出器220は、探査を実行する。探査される対象に対する検出器220の傾きには、好ましい範囲が存在する。検出器220の傾きを好ましい範囲内に設定して探査することで、その検出結果を用いた検査の精度が向上する。
【0048】
一方で、多関節のアーム機構100には、制御上の特異点が存在する。制御上の特異点とは、逆運動学計算によって各回転軸120の回転角度を決定できない姿勢(位置及び向き)を指す。特異点では、各回転軸120の回転角度を一意に決めることができない。このため、アーム機構100の姿勢を、そのような姿勢に設定することができない。また、特異点付近では、アーム機構100の動作が不安定となりうる。以下では、特異点と、特異点付近の姿勢と、をまとめて「特異点近傍」と呼ぶ。
【0049】
図7(a)及び
図7(b)は、特異点を説明するための模式図である。
図7(a)は、アーム機構100を側方から見たときの様子を表す。
図7(b)は、アーム機構100を上方から見たときの様子を表す。複数の回転軸120は、基台130からエンドエフェクタ200に向けて、回転軸121~126を含む。
図7(a)に表したように、回転軸124の回転中心と回転軸126の回転中心とが同一直線上に並んだ場合、エンドエフェクタ200の回転は、回転軸124及び126のいずれの回転によっても可能である。
図7(b)に表したように、回転軸121の回転中心と回転軸126の回転中心とが同一直線上に並んだ場合も、エンドエフェクタ200の回転は、回転軸124及び126のいずれの回転によっても可能である。
図7(a)及び
図7(b)に表した姿勢に対しては、逆運動学計算によって回転軸121~126のそれぞれの回転角度が一意に決まらない。このため、制御点の姿勢が特異点近傍にあると、アーム機構100が制御不能、又はアーム機構100の動作が不安定になる可能性がある。
【0050】
例えば、ティーチングプレイバック方式によってアーム機構100に全く同一の動きを繰り返させる場合には、制御点の姿勢が特異点近傍とならないように、アーム機構100に動作を教示できる。しかし、処理装置400による傾きの算出結果に基づいて制御点の姿勢を調整する場合には、制御点が教示されていない姿勢となりうる。このため、制御点の姿勢の調整中に、制御点の姿勢が特異点近傍となる可能性がある。
【0051】
この課題について、実施形態に係る検出システム1では、エンドエフェクタ200が回転ステージ210を含む。回転ステージ210は、アーム機構100の先端部に対して、検出器220を回転させる。また、検出器220の先端は、回転ステージ210の回転中心に位置している。このため、回転ステージ210は、検出器220の先端の位置の変化を抑制しつつ、検出器220の傾きを変化させることができる。回転ステージ210を用いることで、アーム機構100の制御点の姿勢が、予め教示された姿勢以外となることを抑制できる。このため、制御点の姿勢が、特異点近傍となる可能性を低減でき、不安定な動作の発生を抑制できる。実施形態によれば、動作がより安定した、使い勝手の良い検出システムが提供される。
【0052】
回転ステージ210は、アーム機構100に比べて、制御が容易であり、機械要素の数が少ない。検出器220の先端の傾きの調整に回転ステージ210を用いることで、アーム機構100を用いる場合に比べて、傾きをより高精度に調整できる。また、回転ステージ210は、3自由度以上のユニットを用いる場合に比べて、容易に大きな出力が得られる。このため、回転ステージ210を用いることで、エンドエフェクタ200の大型化を抑制できる。例えば、検出器220が対象に接触する際に、エンドエフェクタ200が他の部材に干渉することを抑制できる。
【0053】
エンドエフェクタ200は、回転ステージ210の第1ステージ211及び第2ステージ212をそれぞれ駆動させるために、第1駆動部241及び第2駆動部242を含む。第1駆動部241及び第2駆動部242のモータの回転方向は、伝達部241b及び242bにより、それぞれX方向まわり及びY方向まわりに変換され、第1ステージ211及び第2ステージ212に伝達される。この構成によれば、モータの回転軸方向がX-Y面に平行な場合に比べて、エンドエフェクタ200のX方向及びY方向におけるサイズを小さくできる。例えば、検査の対象部位が奥まった位置にあるときでも、エンドエフェクタ200が別の部材と接触し難くなる。エンドエフェクタ200の使い勝手を向上できる。
【0054】
図4に表したように、第1ステージ211及び第2ステージ212は、Z方向から見たときに、検出器220の先端と重なっていない。すなわち、第1ステージ211のX方向における位置は、検出器220の先端のX方向における位置と異なる。第2ステージ212のY方向における位置は、検出器220の先端のY方向における位置と異なる。この構成によれば、検出器220の配線をアーム機構100の先端部に向けて引き出す際に、配線が第1ステージ211及び第2ステージ212と干渉することを抑制できる。例えば、第1ステージ211及び第2ステージ212との干渉を回避するために、配線長を長くして配線を引き回す必要が無くなる。アーム機構100及びエンドエフェクタ200の動作時に、配線が他の部材と干渉することを抑制できる。
【0055】
図4に表したように、Z方向からみたときに、第1ステージ211の一部は、第2ステージ212の一部と重なっている。例えば、第1ステージ211の回転部211bの一部が、第2ステージ212の基台212a及び回転部212bと重なっている。この構成によれば、第1ステージ211と第2ステージ212が重なっていない場合に比べて、エンドエフェクタ200のX方向及びY方向におけるサイズを小さくできる。例えば、エンドエフェクタ200の使い勝手を向上できる。
【0056】
なお、対象に対する検出器220の傾きを調整する際に、傾きの変化量が回転ステージ210の回転可能な範囲を超えている場合は、アーム機構100により検出器220の傾きを調整しても良い。例えば、アーム機構100により検出器220の傾きを調整した後に、検出器220による再度の探査が実行される。その後、回転ステージ210により、検出器220の傾きが調整される。この場合も、傾きの調整に回転ステージ210を用いることで、アーム機構100による傾きの変化量を小さくし、制御点の姿勢が特異点近傍になることを抑制できる。
【0057】
検出システム1は、超音波を用いた非破壊検査に幅広く適用できる。また、検出システム1を検査に用いることで、検出器220の傾きを自動的に調整できる。これにより、人が検出器220を持って探査する場合に比べて、検査の精度を向上できる。また、検査結果が人の経験、感覚などに依存しないため、検査結果の信頼性を向上できる。
【0058】
例えば、検出システム1は、溶接された接合体の検査に適用される。ここでは、複数の部材がスポット抵抗溶接により接合された接合体の検査について説明する。スポット抵抗溶接では、複数の部材がスポット状に接合される。複数の部材の一部同士が溶融して混ざり合った後に凝固し、溶接部が形成される。例えば、検査では、この溶接部の径が十分に大きいかどうかを調べる。
【0059】
検出器220による探査の際には、カプラントを用いることが好ましい。カプラントを用いることで、検出器220と対象との間で超音波が伝搬し易くなる。吐出器230にカプラントを供給するために、回転継手252を設けることが好ましい。具体的には、アーム機構100には、カプラントを供給するための第1配管が設けられる。第1配管は、例えば結束部材140中に設けられる。エンドエフェクタ200には、第2配管が設けられる。第2配管の一端は、回転継手252を介して第1配管と接続される。第2配管の他端は、吐出器230と接続される。
【0060】
カプラントを吐出する際、吐出器230の位置を調整するために、エンドエフェクタ200をZ方向まわりに回転することがある。回転継手252が設けられない場合、エンドエフェクタ200の回転時に、カプラントを供給するための配管にねじれが生じる。配管の長さは、ねじれの分の余裕が必要となる。回転継手252が設けられる場合、エンドエフェクタ200の回転時における、配管のねじれを抑制できる。これにより、配管の長さを短縮でき、配管が別の部材と干渉する可能性を低減できる。
【0061】
同様に、配管以外の配線についても、回転継手252を介して設けられることが好ましい。これにより、配線の長さを短縮でき、配線が別の部材と干渉する可能性を低減できる。
【0062】
図8は、検出器先端の内部構造を表す斜視図である。
検出器220先端の内部には、
図8に表したように、素子アレイ221が設けられる。素子アレイ221は、複数の検出素子222を含む。検出素子222は、例えば、トランスデューサである。複数の検出素子222は、第1配列方向D1及び第2配列方向D2に沿って配列されている。第1配列方向D1及び第2配列方向D2は、互いに交差する。図示した例では、第1配列方向D1及び第2配列方向D2は、互いに直交する。
【0063】
検出器220の先端には、伝搬部223がさらに設けられる。素子アレイ221から送信された超音波は、伝搬部223を通して対象へ伝搬する。また、対象からの反射波は、伝搬部223を通して素子アレイ221へ伝搬する。伝搬部223は、超音波が伝搬し易い樹脂材料などにより構成される。対象の表面形状に応じた伝搬部223を設けることで、対象の内部まで超音波を伝搬させ易くなる。また、伝搬部223により、検出器220が対象へ接触した際の検出器220の変形、損傷などを抑制できる。伝搬部223は、対象への接触時の変形、損傷などを抑制するために、十分な硬さを有する。
【0064】
図8は、接合体5を検査する様子を表している。接合体5は、金属板51(第1部材)と金属板52(第2部材)が、溶接部53においてスポット溶接されて作製されている。溶接部53では、金属板51の一部と金属板52の一部が溶融し、混ざり合って凝固した凝固部54が形成されている。それぞれの検出素子222は、カプラント55が塗布された接合体5に向けて超音波USを送信し、接合体5からの反射波RWを受信する。
【0065】
より具体的な一例として、
図8に表したように、1つの検出素子222が溶接部53に向けて超音波USを送信する。超音波USの一部は、接合体5の上面または下面などで反射される。複数の検出素子222のそれぞれは、この反射波RWを受信(検出)する。それぞれの検出素子222が順次超音波USを送信し、それぞれの反射波RWを複数の検出素子222で受信する。これにより、溶接部53近傍の状態を示す反射波の検出結果が得られる。
【0066】
処理装置400は、検出結果に基づいて、対象に対する検出器220の第1配列方向D1まわりの傾き及び第2配列方向D2まわりの傾きを算出する。以降では、第1配列方向D1及び第2配列方向D2が、それぞれX方向及びY方向に平行である場合について説明する。
【0067】
図9は、検査における傾きの計算方法を説明するための図である。
図10及び
図11は、検査において得られた画像の一例である。
図10は、反射波の検出結果に基づいて描写される3次元のボリュームデータである。
図11(a)は、
図10に表したボリュームデータにおける溶接部53の表面を表す。
図11(b)は、
図10に表したボリュームデータにおける溶接部53近傍のY-Z断面を表す。
図11(c)は、
図10に表したボリュームデータにおける溶接部53近傍のX-Z断面を表す。
図11(b)及び
図11(c)では、上側が溶接部53の表面で、下向きに深さ方向のデータが示されている。輝度が高い部分は、超音波の反射強度が大きい部分である。超音波は、溶接部53の底面、未接合の部材同士の間の面などで強く反射される。
【0068】
検出器220の傾きは、
図9に表した、溶接部53に垂直な方向53aと、検出器220の方向220aと、の間の角度に対応する。検出器220の方向220aは、検出素子222の配列方向に対して垂直である。この角度は、第1配列方向D1まわりの角度及び第2配列方向D2まわりの角度によって表される。第1配列方向D1及び第2配列方向D2が、それぞれX方向及びY方向に平行である場合、方向53aと220aとの間の角度は、X方向まわりの角度θxと、Y方向まわりの角度θyと、によって表される。
【0069】
角度θxは、
図11(b)に表したように、Y-Z断面での検出結果に基づいて算出される。角度θyは、
図11(c)に表したように、X-Z断面での検出結果に基づいて算出される。処理装置400は、各断面について,3次元の輝度勾配の平均を角度θx及びθyとして算出する。処理装置400は、算出した角度θx及びθyを、検出器220の傾きとして、記憶装置410に記憶する。
【0070】
角度θx及び角度θyがゼロに近いほど、検査の精度を向上できる。制御装置300は、算出された角度θx及び角度θyがゼロに近づくように、回転ステージ210を動作させる。例えば、制御装置300は、第1ステージ211を動作させることで、検出器220のX方向まわりの角度を変化させ、角度θxを小さくする。制御装置300は、第2ステージ212を動作させることで、検出器220のY方向まわりの角度を変化させ、角度θyを小さくする。
【0071】
第1配列方向D1及び第2配列方向D2は、それぞれX方向及びY方向に平行であることが好ましい。上述したように、検出器220の対象に対する傾きは、第1配列方向D1まわりの角度、及び第2配列方向D2まわりの角度として算出される。第1配列方向D1及び第2配列方向D2が、それぞれX方向及びY方向に対して傾斜している場合、算出されたそれぞれの角度から、X方向まわりの角度及びY方向まわりの角度を算出する必要がある。第1配列方向D1及び第2配列方向D2がそれぞれX方向及びY方向に平行であると、X方向まわりの角度及びY方向まわりの角度の算出が不要となる。また、検出器220の傾き、回転ステージ210の傾きなどがユーザに向けて出力される場合に、ユーザがそれぞれの傾きを容易に理解できる。
【0072】
図12は、検出器を用いた検査方法を説明するための模式図である。
図12(a)に表したように、超音波USの一部は、金属板51の上面5aまたは溶接部53の上面5bで反射される。超音波USの別の一部は、接合体5に入射し、金属板51の下面5cまたは溶接部53の下面5dで反射する。
【0073】
上面5a、上面5b、下面5c、及び下面5dのZ方向における位置は、互いに異なる。すなわち、これらの面と検出素子222との間のZ方向における距離が、互いに異なる。検出素子222が、これらの面からの反射波を受信すると、反射波の強度のピークが検出される。超音波USを送信した後、各ピークが検出されるまでの時間を算出することで、どの面で超音波USが反射されているか調べることができる。
【0074】
図12(b)及び
図12(c)は、超音波USを送信した後の時間と、反射波RWの強度と、の関係を例示するグラフである。ここでは、反射波RWの強度を絶対値で表している。
図12(b)のグラフは、金属板51の上面5a及び下面5cからの反射波RWの受信結果を例示している。
図12(c)のグラフは、溶接部53の上面5b及び下面5dからの反射波RWの受信結果を例示している。
【0075】
図12(b)及び
図12(c)のグラフにおいて、ピークPe10は、伝搬部223の表面からの反射波RWに基づく。ピークPe11は、上面5aからの反射波RWに基づく。ピークPe12は、下面5cからの反射波RWに基づく。超音波USの送信からピークPe11及びピークPe12が検出されるまでの時間は、それぞれ、金属板51の上面5a及び下面5cのZ方向における位置に対応する。
【0076】
同様に、ピークPe13は、上面5bからの反射波RWに基づく。ピークPe14は、下面5dからの反射波RWに基づく。超音波USの送信からピークPe13及びピークPe14が検出されるまでの時間は、それぞれ、溶接部53の上面5b及び下面5dのZ方向における位置に対応する。
【0077】
処理装置400は、X-Y面内の各点におけるZ方向の反射波強度分布において、ピークPe12が存在するか判定する。具体的には、処理装置400は、ピークPe12が検出されうるZ方向の所定範囲におけるピークを検出する。処理装置400は、そのピークの強度を、所定の閾値と比較する。ピークが閾値を超えているとき、処理装置400は、そのピークがピークPe12であると判定する。ピークPe12の存在は、その点において下面5cが存在し、金属板51と52が接合されていないことを示す。処理装置400は、ピークPe12が検出された点を、接合されていないと判定する。処理装置400は、X-Y面内の各点が接合されているか、順次判定する。接合されていると判定された点の集合が、溶接部53に対応する。
【0078】
なお、反射波の強度は、任意の態様で表現されて良い。例えば、検出素子222から出力される反射波強度は、位相に応じて、正の値及び負の値を含む。正の値及び負の値を含む反射波強度に基づいて、各種処理が実行されても良い。正の値及び負の値を含む反射波強度を、絶対値に変換しても良い。各時刻における反射波強度から、反射波強度の平均値を減じても良い。又は、各時刻における反射波強度から、反射波強度の加重平均値、重み付き移動平均値などを減じても良い。反射波強度にこれらの処理を加えた結果を用いた場合でも、本願で説明する各種処理を実行可能である。
【0079】
(変形例)
図13は、変形例に係るエンドエフェクタを表す斜視図である。
図13に表したエンドエフェクタ200aは、エンドエフェクタ200と比べて、撮像装置270をさらに含む。撮像装置270は、対象を撮影する。撮像装置270又は処理装置400は、撮影して得られた画像から、検査すべき位置を判定する。制御装置300は、この判定結果に基づいてアーム機構100を動作させ、検出器220及び吐出器230を移動させる。
【0080】
図14は、変形例に係るエンドエフェクタを用いた第1動作の詳細を表すフローチャートである。
図14に表したフローチャートは、
図6に表したフローチャートと比べて、ステップS21及びS22をさらに含む。ステップS21において、撮像装置270は、対象を撮影する。ステップS22において、制御装置300は、画像に基づいて算出されたずれを補正するように、アーム機構100を動作させる。
【0081】
変形例に係るエンドエフェクタ200aによれば、対象の検査すべき位置が、検出システム1に対して予め教示された位置からずれている場合であっても、撮像装置270によってずれを補正できる。これにより、検査の精度を向上できる。
【0082】
以上では、検出システム1が、6自由度を有する垂直多関節のアーム機構100を含む例を説明した。アーム機構100は、4自由度又は5自由度であっても良い。又は、4自由度以上を有する水平多関節のアーム機構100が設けられても良い。いずれの形態においても、検出器220の傾きの調整に回転ステージ210を用いることで、制御点が特異点近傍となる可能性を低減できる。
【0083】
図15は、実施形態の変形例に係る検出システムを表す模式図である。
変形例に係る検出システム1aは、
図15に表したように、アーム機構100を含まない。検出システム1aは、検出装置200bを含む。検出装置200bの構成は、エンドエフェクタ200又は200aの構成と同じである。
【0084】
検出装置200bは、任意の物に取り付けられる。検出装置200bは、他の装置、設備、壁などに取り付けることが可能である。また、検出装置200bの向きは、任意である。検出器220が水平方向を向くように検出装置200bが取り付けられても良いし、検出器220が鉛直方向を向くように検出装置200bが取り付けられても良い。検出器220は、回転ステージ210により、取り付けられた物に対して、X方向まわり及びY方向まわりに回転可能である。
【0085】
例えば、搬送装置Tが、接合体5を搬送する。検出器220が接合体5に接触する位置まで、搬送装置Tが接合体5を搬送する。検出器220が接合体5に接触した後は、
図5に表したフローチャートのステップS2~S7が実行される。
【0086】
検出装置200bの構成として、上述したエンドエフェクタ200又は200aの構成を適用することで、検出装置200bの使い勝手を向上できる。すなわち、検出器220の先端は、回転ステージ210の回転中心に位置している。このため、回転ステージ210は、検出器220の先端の位置の変化を抑制しつつ、検出器220の傾きを変化させることができる。また、検出器220の傾きの調整に回転ステージ210を用いることで、3自由度以上のユニットを用いる場合に比べて、容易に大きな出力が得られる。例えば、検出装置200bを小型化でき、検出装置200bが他の部材に干渉することを抑制できる。
【0087】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0088】
1,1a:検出システム、 5:接合体、 5a:上面、 5b:上面、 5c:下面、 5d:下面、 51,52:金属板、 53:溶接部、 53a:方向、 54:凝固部、 55:カプラント、 100:アーム機構、 110:リンク、 120~126:回転軸、 130:基台、 140:結束部材、 200,200a:エンドエフェクタ、 200b:検出装置、 210:回転ステージ、 211:第1ステージ、 212:第2ステージ、 220:検出器、 220a:方向、 221:素子アレイ、 222:検出素子、 223:伝搬部、 230:吐出器、 231,232:継手、 241:第1駆動部、 241a:配線、 241b:伝達部、 242:第2駆動部、 242a:配線、 242b:伝達部、 243:第3駆動部、 243a:板部材、 243b,243c:連結部、 243d:スピードコントローラ、 251:外筒、 252:回転継手、 260:センサ、 270:撮像装置、 300:制御装置、 400:処理装置、 410:記憶装置、 420:入力装置、 430:出力装置、 C1,C2:回転中心、 D1:第1配列方向、 D2:第2配列方向、 Di1:距離、 Di2:距離、 Pe1~Pe4:ピーク、 RW:反射波、 T:搬送装置、 TD1,TD2:時間差、 US:超音波、 θx:角度、 θy:角度