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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】殺菌ガス生成装置および容器殺菌装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/20 20060101AFI20240219BHJP
   B65B 55/10 20060101ALI20240219BHJP
   A61L 101/22 20060101ALN20240219BHJP
【FI】
A61L2/20 106
B65B55/10 A
A61L101:22
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020138496
(22)【出願日】2020-08-19
(65)【公開番号】P2022034683
(43)【公開日】2022-03-04
【審査請求日】2022-09-02
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】久保 智
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 喬俊
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-224469(JP,A)
【文献】特開平11-047242(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0007916(US,A1)
【文献】国際公開第2018/092812(WO,A1)
【文献】特開2005-087353(JP,A)
【文献】特開2012-075579(JP,A)
【文献】特開2019-026333(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/20
B65B 55/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管体と、
前記管体を加熱可能な加熱装置と、
前記管体の内側に過酸化水素水を噴霧可能な噴霧装置と、を有し、
前記管体の全体は、アルミニウム-マグネシウム合金を含む金属材料で構成されており、
前記管体は、前記噴霧装置を有する一端側の内径よりも他端側の内径が小さく、かつ、前記一端側の外径よりも前記他端側の外径が小さい、一体的な筒型形状であり、
前記加熱装置は、前記管体の外形に沿って設けられた鋳込みヒーターである殺菌ガス生成装置。
【請求項2】
前記管体と前記鋳込みヒーターの隙間には伝熱セメントが充填されている請求項1に記載の殺菌ガス生成装置。
【請求項3】
管体と、前記管体を加熱可能な加熱装置と、前記管体の内側に過酸化水素水を噴霧可能な噴霧装置と、を有し、過酸化水素を含む殺菌ガスを生成可能な殺菌ガス生成装置と、
前記殺菌ガスを容器の内部に噴射可能に構成されているガスノズルと、を備え、
前記管体の全体は、アルミニウム-マグネシウム合金を含む金属材料で構成されており、
前記管体は、前記噴霧装置を有する一端側の内径よりも他端側の内径が小さく、かつ、前記一端側の外径よりも前記他端側の外径が小さい、一体的な筒型形状であり、
前記加熱装置は、前記管体の外形に沿って設けられた鋳込みヒーターである容器殺菌装置。
【請求項4】
前記管体と前記鋳込みヒーターの隙間には伝熱セメントが充填されている請求項3に記載の容器殺菌装置。
【請求項5】
前記殺菌ガス生成装置から前記殺菌ガスを受け入れて前記ガスノズルに前記殺菌ガスを至らせる供給管と、
前記殺菌ガス中の過酸化水素の定量を行う測定ユニットと、をさらに備え、
前記測定ユニットは、
前記殺菌ガス生成装置と前記供給管とを接続する接続管から分岐し、前記供給管とは異なる方向に前記殺菌ガスを引き込む分岐管と、
前記分岐管と、前記接続管の前記分岐管への分岐位置よりも下流側とにそれぞれ設けられた開閉バルブと、
前記分岐管の前記開閉バルブより下流側に設けられた過酸化水素を検出可能なセンサと、を備え、
前記接続管の前記開閉バルブを閉止し前記分岐管の前記開閉バルブを開放することによって前記分岐管に引き込んだ前記殺菌ガスの過酸化水素を前記センサで検出する請求項3又は4に記載の容器殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌剤として過酸化水素を含む殺菌ガスを生成可能な殺菌ガス生成装置、および、当該殺菌ガス生成装置を備える容器殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
容器、特に飲料を充填する容器において、内容物を充填する前に容器を殺菌する場合がある。かかる殺菌の方法としては、殺菌剤として過酸化水素を含む殺菌ガスを、殺菌対象の容器に吹付ける方法が汎用される。たとえば特許文献1には、二流体スプレーから噴射された過酸化水素の水溶液を加熱して過酸化水素を気化させ、気化した過酸化水素を殺菌ガスとして排出する気化器を有する殺菌剤噴霧用ノズルが開示されている。特許文献1の技術によれば、過酸化水素を霧化してから加熱するので、過酸化水素の気化を促進でき、これによって、過酸化水素を含む殺菌ガスを効率よく得られる。
【0003】
上記のような過酸化水素を霧化および加熱して殺菌ガスを得る殺菌ガス生成装置においては、装置の運転を継続するうちに、気化器や配管などが閉塞する場合があった。これは、過酸化水素水溶液に添加される安定剤に起因して気化器や配管などの内部に付着物が生じることに依る現象である。一方、この閉塞を抑制するために安定剤の添加量を減らすと、ステンレスなどの金属容器中で過酸化水素水溶液を安定に貯蔵できない場合があった。以上の背景に鑑み、特許文献2には、過酸化水素水溶液の安定性を向上し、気化器などに付着する付着物を低減できる殺菌用過酸化水素水溶液の処方が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-23115号公報
【文献】国際公開第2018/142810号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような殺菌ガス生成装置において、装置の運転を継続するうちに、生成される殺菌ガス中の過酸化水素濃度が次第に低下する現象が生じる場合があった。特許文献2の技術によっては、閉塞の問題は解消できたが、殺菌ガス中の過酸化水素濃度が次第に低下する現象については、解消できなかった。
【0006】
そこで、継続的に運転した場合において、殺菌ガス中の過酸化水素濃度が次第に低下する現象を抑制しうる殺菌ガス生成装置、およびこれを備える容器殺菌装置の実現が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る殺菌ガス生成装置は、管体と、前記管体を加熱可能な加熱装置と、前記管体の内側に過酸化水素水を噴霧可能な噴霧装置と、を有し、前記管体の全体は、アルミニウム-マグネシウム合金を含む金属材料で構成されており、前記管体は、前記噴霧装置を有する一端側の内径よりも他端側の内径が小さく、かつ、前記一端側の外径よりも前記他端側の外径が小さい、一体的な筒型形状であり、前記加熱装置は、前記管体の外形に沿って設けられた鋳込みヒーターであることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る容器殺菌装置は、管体と、前記管体を加熱可能な加熱装置と、前記管体の内側に過酸化水素水を噴霧可能な噴霧装置と、を有し、過酸化水素を含む殺菌ガスを生成可能な殺菌ガス生成装置と、前記殺菌ガスを容器の内部に噴射可能に構成されているガスノズルと、を備え、前記管体の全体は、アルミニウム-マグネシウム合金を含む金属材料で構成されており、前記管体は、前記噴霧装置を有する一端側の内径よりも他端側の内径が小さく、かつ、前記一端側の外径よりも前記他端側の外径が小さい、一体的な筒型形状であり、前記加熱装置は、前記管体の外形に沿って設けられた鋳込みヒーターであることを特徴とする。
【0009】
これらの構成によれば、継続的に運転した場合において、殺菌ガス中の過酸化水素濃度が低下する現象を抑制しうる。さらに、管体の全体は、アルミニウム-マグネシウム合金を含む金属材料で構成されているので、リン酸イオンによる管体の内面の腐食を一層防止しやすく、管体の製造も容易になりうる。
【0010】
本発明者らは、従来の殺菌ガス生成装置において生じた付着物の成分を分析し、当該付着物に鉄が含まれることを明らかにした。この鉄は、従来の殺菌ガス生成装置において管体を構成する材料として用いられていたステンレス材が、過酸化水素水溶液に含まれる安定剤に由来するリン酸イオンにより腐食されて生じたと考えられる。そして、殺菌ガス中の過酸化水素濃度が低下する現象は、リン酸イオンとの反応によってステンレス材から溶出した鉄が過酸化水素と接触することによって過酸化水素が分解するために生じていると考えられる。本発明者らは、以上の知見および考察に基づいて、過酸化水素を気化させる管体の少なくとも内面を、過酸化水素との反応性を有さず、かつ、リン酸イオンにより腐食されない材料により構成することによって過酸化水素の分解を抑制することに想到し、当該材料としてアルミニウムを主成分とする金属材料を採用して本発明を完成した。
【0011】
以下、本発明の好適な態様について説明する。ただし、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定されるわけではない。
【0012】
本発明に係る殺菌ガス生成装置および容器殺菌装置は、一態様として、前記管体と前記鋳込みヒーターの隙間には伝熱セメントが充填されていることが好ましい。
【0013】
本発明に係る容器殺菌装置は、一態様として、前記殺菌ガス生成装置から前記殺菌ガスを受け入れて前記ガスノズルに前記殺菌ガスを至らせる供給管と、前記殺菌ガス中の過酸化水素の定量を行う測定ユニットと、をさらに備え、前記測定ユニットは、前記殺菌ガス生成装置と前記供給管とを接続する接続管から分岐し、前記供給管とは異なる方向に前記殺菌ガスを引き込む分岐管と、前記分岐管と、前記接続管の前記分岐管への分岐位置よりも下流側とにそれぞれ設けられた開閉バルブと、前記分岐管の前記開閉バルブより下流側に設けられた過酸化水素を検出可能なセンサと、を備え、前記接続管の前記開閉バルブを閉止し前記分岐管の前記開閉バルブを開放することによって前記分岐管に引き込んだ前記殺菌ガスの過酸化水素を前記センサで検出することが好ましい。
【0016】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】容器殺菌装置が設置された充填設備を示すブロック図である。
図2】容器殺菌装置が設置された殺菌部の概略平面図である。
図3】容器殺菌装置の概略図である。
図4】殺菌ガス生成装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る殺菌ガス生成装置および容器殺菌装置の実施形態について、図面を参照して説明する。以下では、本発明に係る殺菌ガス生成装置および容器殺菌装置を、飲料用ペットボトルB(容器の例。以下、単にボトルBと称する。)を殺菌する容器殺菌装置100に設けられた殺菌ガス生成装置1に適用した例について説明する。
【0019】
〔ボトルの概要〕
本実施形態において殺菌対象とするボトルBは、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどの熱可塑性樹脂を主材料とする容器である。ボトルBは、熱可塑性樹脂の射出成形により得られるプリフォームの、二軸延伸ブロー成形によって成形される。ボトルBの容量は、280mL、350mL、500mL、1L、2Lなどが例示されるが、特に限定されない。なお、ボトルBに充填する液体は特に限定されず、たとえば、清涼飲料水(ミネラルウォーター、コーヒー、ココア、茶、炭酸飲料水、果汁など)、アルコール飲料、乳料などの飲料、スープなどの液体状食品、ソースや醤油などの液体調味料、などでありうる。
【0020】
〔設備全体および殺菌部の概要〕
容器殺菌装置100は、ボトルBに飲料製品を充填する充填設備Pの一部として配置されている(図1)。充填設備Pは、工程順に、プリフォームからボトルBを成形する成形部M、成形部Mで成形されたボトルBを殺菌する殺菌部S、殺菌部Sで殺菌されたボトルBの内部を洗浄する洗浄部W、および、洗浄部Wにより洗浄されたボトルBに飲料製品を充填する充填部Fを備える。充填設備Pは、上記の各部によって、連続的に成形、殺菌、洗浄、および充填の各工程を実施するように構成されている。本実施形態に係る容器殺菌装置100は、殺菌部Sを構成する装置の一つとして設けられている。
【0021】
図2は、殺菌部Sの概略平面図である。図2に示すように、殺菌部Sは複数のホイールから構成されており、第一搬送ホイールC1、第二搬送ホイールC2、容器殺菌装置100、および第三搬送ホイールC3を、この順に有する。成形部Mで成形されたボトルBは、第一搬送ホイールC1、第二搬送ホイールC2の順に搬送されて容器殺菌装置100に至る。容器殺菌装置100では、ボトルBの内部が殺菌される。殺菌済のボトルBは、第三搬送ホイールC3を経由して、洗浄部Wに送られる。
【0022】
〔容器殺菌装置の構成〕
容器殺菌装置100は、殺菌ガス供給ユニット10と、ホイールユニット20と、測定ユニット30と、を備える(図3)。殺菌ガス供給ユニット10は、殺菌ガス生成装置1によって生成した殺菌ガスをホイールユニット20に対して送出する。ホイールユニット20は、ボトルBを搬送しながら、ボトルBの内部に殺菌ガスを噴霧する。測定ユニット30は、殺菌ガス供給ユニット10から送出された殺菌ガスに含まれる過酸化水素の量を定量できる。
【0023】
殺菌ガス供給ユニット10は、殺菌ガス生成装置1と、熱風供給装置11と、集合管12と、を有する。殺菌ガス生成装置1は、不図示の供給源から供給される過酸化水素水を加熱してこれを気化させ、過酸化水素を含む殺菌ガスを生成する。本実施形態では、殺菌ガス供給ユニット10に、六基の殺菌ガス生成装置1が設けられている。殺菌ガス生成装置1により生成された殺菌ガスは、集合管12において、熱風供給装置11から供給される熱風(加熱空気)と合流し、ホイールユニット20に送られる。
【0024】
ホイールユニット20は、殺菌ガス供給ユニット10から殺菌ガスを受け入れる供給管21と、ボトルBを把持するグリッパ22と、グリッパ22に把持されたボトルBに殺菌ガスを噴霧するガスノズル23と、複数のガスノズル23に殺菌ガスを分配する分配管24と、回転してボトルBを搬送するホイール25と、を有する(図2図3)。供給管21からホイールユニット20に進入した殺菌ガスは、分配管24を経由して各ガスノズル23に至り、ボトルBの内部に噴霧される。
【0025】
測定ユニット30は、コンピュータ31と、センサ32と、開閉バルブ33、34と、分岐管35と、を有する。平常時は、開閉バルブ34を閉止し、開閉バルブ33を開放してあるので、殺菌ガス供給ユニット10から送出された殺菌ガスは、ホイールユニット20に進入する。一方、殺菌ガス中の過酸化水素の定量を行うときは、開閉バルブ33を閉止し、開閉バルブ34を開放して、殺菌ガスを分岐管35に引き込む。分岐管35には過酸化水素を検出可能なセンサ32が設けられており、センサ32の検出値に基づいてコンピュータ31が殺菌ガス中の過酸化水素の濃度を決定する。なお、本実施形態では、センサ32は、近赤外線分光光度計である。
【0026】
〔殺菌ガス生成装置の構成〕
殺菌ガス生成装置1は、管体2と、ヒータ3(加熱装置の例)と、噴霧装置4とを有する。管体2は、その全体が、厚さ6mmのアルミニウム-マグネシウム合金AL5052(アルミニウムを主成分とする金属材料の例)により構成されている。したがって、管体2の内面は、アルミニウム-マグネシウム合金AL5052で構成されている。ヒータ3は、管体2の外形に沿って設けられた鋳込みヒータであり、管体2を外側から加熱できる。なお、管体2とヒータ3との隙間には、伝熱セメントが充填されている。噴霧装置4は、不図示の供給源から供給される過酸化水素水(35重量%)と不図示の供給源から供給される無菌エアとを混合して過酸化水素水を霧化し、これを管体2の内側に噴霧できる。本実施形態では、噴霧装置4は、二流体ノズルとして実装されている。なお、殺菌ガス生成装置1の運転および停止は、噴霧装置4に対する過酸化水素水の供給の有無により制御できる。
【0027】
〔殺菌方法〕
殺菌ガス生成装置1では、噴霧装置4から、管体2の内側に向けて過酸化水素水が噴霧される。管体2はヒータ3によって加熱されているため、噴霧されることによって比表面積が増した過酸化水素水は沸点以上まで瞬時に加熱され、管体2の内側においてほぼ完全に気化する。なお、ヒータ3の設定温度は、たとえば300℃である。気化した過酸化水素を含む殺菌ガスは、管体2の下側から集合管12に進入し、ここで他の殺菌ガス生成装置1により生成された殺菌ガスおよび熱風供給装置11から供給される熱風と混合される。なお、殺菌ガス生成装置1から集合管12に進入する殺菌ガスの温度は、たとえば105℃である。その後、殺菌ガスは、供給管21および分配管24を経てガスノズル23に至り、ボトルBの内部に噴霧される。このように、ボトルBの内部に過酸化水素を含む殺菌ガスが噴霧されることによって、ボトルBの内部の殺菌がなされる。
【0028】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明に係る殺菌ガス生成装置および容器殺菌装置のその他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0029】
上記の実施形態では、管体2の全体がアルミニウム-マグネシウム合金AL5052により構成されている例について説明した。しかし、本発明に係る殺菌ガス生成装置において、管体の少なくとも内面が、アルミニウムを主成分とする金属材料で構成されていればよい。
【0030】
すなわち、管体2の全体を単一の金属材料により構成する場合、当該金属材料はアルミニウムを主成分とする金属材料である限りにおいて限定されない。ここで、「アルミニウムを主成分とする金属材料」としては、純アルミニウムおよびアルミニウム-マグネシウム合金が例示される。ただし、耐食性の観点から、純アルミニウムおよびアルミニウム-マグネシウム合金の少なくとも一つを含むことが好ましい。なお、殺菌ガス生成装置1と同種の従来の殺菌ガス生成装置では、管体がステンレスなどの金属材料により構成されていることが一般的である。ここで、従来の殺菌ガス生成装置と異なり、上記のようにアルミニウムを主成分とする金属材料を用いることで、従来の殺菌ガス生成装置に比べて重金属の付着を低減または防止できる。管体の内部に生じる重金属の付着は、過酸化水素濃度低下の要因の一つと考えられており、当該重金属の付着を低減または防止できることは、過酸化水素濃度の低下の抑制につながる。
【0031】
「純アルミニウム」とは、純アルミニウム材料として一般に使用されている材料をいう。したがって「純アルミニウム」は、純度100%のアルミニウムに限定されず、JIS H 4000:2014に定められているAL1000番台の合金などを含む。
【0032】
同様に、「アルミニウム-マグネシウム合金」も、アルミニウムおよびマグネシウム以外の元素を含んでよく、JIS H 4000:2014に定められているAL5000番台の合金などでありうる。
【0033】
また、管体の少なくとも内面がアルミニウムを主成分とする金属材料で構成されていればよいのであるから、たとえば、SUS304などのステンレスで構成した管体の内面を、アルミニウムを主成分とする金属材料によってコーティングした管体を用いてもよい。この場合も、使用する金属材料としては、純アルミニウムおよびアルミニウム-マグネシウム合金が例示され、純アルミニウムおよびアルミニウム-マグネシウム合金の少なくとも一つを含む金属材料を用いることが好ましい。
【0034】
上記の実施形態では、管体2の全体が厚さ6mmのアルミニウム-マグネシウム合金AL5052により構成されている例について説明した。しかし、管体を構成する金属材料の厚さは、管体として十分な強度を有し、かつ、過酸化水素水が完全に気化しうる管体の内温を実現できるように、採用する金属材料の物性、加熱装置の出力、管体の形状などを考慮して適宜決定されうる。
【0035】
上記の実施形態では、容器殺菌装置100が測定ユニット30を備える構成を例として説明した。しかし、本発明に係る容器殺菌装置は、測定ユニットを備えなくてもよい。すなわち、殺菌ガス中の過酸化水素濃度を定量できなくてもよい。
【0036】
上記の実施形態では、殺菌ガス生成装置1が、ボトルBを殺菌する容器殺菌装置100に組み込まれている構成を例として説明した。しかし、本発明に係る殺菌ガス生成装置は、たとえばボトル内面以外の外面やキャップ、チャンバーなどの充填環境、医療用器具、医薬品、および半導体などを殺菌対象物とする殺菌ガス供給源としても使用しうる。また、上記の実施形態では、殺菌ガス生成装置1により生成された殺菌ガスが集合管12およびホイールユニット20を含む経路を通じてボトルBの内部に噴霧される例を示したが、本発明に係る殺菌ガス生成装置において発生した殺菌ガスを、殺菌対象物に対して直接に供給してもよい。
【0037】
その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。
【実施例
【0038】
以下では、実施例を示して本発明をさらに説明する。ただし、以下の実施例は本発明を限定するものではない。
【0039】
〔実施例1〕
(試験装置)
試験装置として、図3に示した容器殺菌装置100に準じた装置を用いた。ただし、図3の容器殺菌装置100では六基の殺菌ガス生成装置1が設けられているが、本実施例では、実施例、参考例および比較例の各例において、一基の殺菌ガス生成装置のみを設けた容器殺菌装置を用いた。実施例、参考例および比較例の各例では、管体を構成する金属材料の材質および厚さがそれぞれ異なる殺菌ガス生成装置を用いた。各例において用いた金属材料の条件は、以下の通りである。
実施例1:アルミニウム-マグネシウム合金AL5052,厚さ6mm,未使用品
参考例1:純アルミニウムAL1070,厚さ6mm,未使用品
比較例1:SUS316L,厚さ2mm,1年間使用後に洗浄
比較例2:SUS316L,厚さ2mm,1年間使用後未洗浄
【0040】
(試験方法)
実施例、参考例および比較例の各例について、生成される殺菌ガスに含まれる過酸化水素の濃度を測定した。このとき、殺菌ガス生成装置に供給する過酸化水素水(35重量%)の流量を変更して複数回の測定を行い、過酸化水素水の流量と殺菌ガス中の過酸化水素濃度との関係を調べた。
【0041】
(結果)
いずれの例においても、過酸化水素水の流量と殺菌ガス中の過酸化水素濃度との間に、概ね比例関係が見られた。実施例1、参考例1と比較例1、2とを比べると、アルミニウムを主成分とする金属材料で構成された管体を用いた実施例1、参考例1では、SUS316Lで構成された管体を用いた比較例1、2に比べて、過酸化水素濃度が高い傾向が見られた。また、比較例1、2を比べると、SUS316Lを用いた管体においては、1年間の使用により性能が低下すること、および、当該性能の低下は洗浄によりある程度回復可能であることが示された。しかし、洗浄後に測定した比較例1であっても、実施例1、参考例1の性能には及ばなかった。これにより、アルミニウムを主成分とする金属材料で構成された管体を用いることで、過酸化水素濃度が高い殺菌ガスを生成できることがわかった。
【0042】
表1:過酸化水素水の流量と殺菌ガス中の過酸化水素濃度との関係(単位:ppm)
【表1】
【0043】
〔実施例2〕
(試験装置)
試験装置として、図3に示した容器殺菌装置100に準じた装置を用いた。ただし、図3の容器殺菌装置100では六基の殺菌ガス生成装置1が設けられているが、本実施例では、四基の殺菌ガス生成装置を設けた。これらの四基の殺菌ガス生成装置のうち、一基は、上記の実施形態と同様に、管体の全体が厚さ6mmのアルミニウム-マグネシウム合金AL5052により構成された殺菌ガス生成装置とした(殺菌ガス生成装置1Aとする。)。一方、他の三基は、管体の全体が厚さ2mmのSUS316Lにより構成された殺菌ガス生成装置とした(殺菌ガス生成装置1B、1C、および1Dとする。)。
【0044】
(試験方法)
上記の構成の容器殺菌装置を、七か月間にわたって、一日当たり15時間運転した。所定の測定期(装置設置直後、1か月後、3か月後、4か月後、6か月後、および7か月後)において、殺菌ガス中に含まれる過酸化水素の濃度を測定した。なお、測定時には、殺菌ガス生成装置1A~1Dを一基ずつ運転し、それぞれの殺菌ガス生成装置により生成される殺菌ガスの過酸化水素濃度を個別に測定した。得られた測定値の理論値に対する割合(百分率)を、当該測定期における測定結果とした。なお、上記の理論値は、各殺菌ガス生成装置に供給される過酸化水素の全量が殺菌ガスに含まれると仮定した場合の過酸化水素濃度とした。
【0045】
(結果)
殺菌ガス生成装置1A、1B、1C、および1Dについて、設置後の経過月数ごとに測定結果(測定値/理論値×100)を示した。管体がアルミニウム-マグネシウム合金AL5052により構成されている殺菌ガス生成装置1Aでは、七か月経過後も、殺菌ガスの過酸化水素濃度が低下しなかった。一方、管体がSUS316Lにより構成されている殺菌ガス生成装置1B、1C、および1Dでは、殺菌ガスの過酸化水素濃度が徐々に低下する傾向が見られた。
【0046】
表2:殺菌ガス生成装置の性能の経時変化
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、たとえばペットボトルを殺菌する容器殺菌装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 :殺菌ガス生成装置
2 :管体
3 :ヒータ
4 :噴霧装置
10 :殺菌ガス供給ユニット
11 :熱風供給装置
12 :集合管
20 :ホイールユニット
21 :供給管
22 :グリッパ
23 :ガスノズル
24 :分配管
25 :ホイール
30 :測定ユニット
31 :コンピュータ
32 :センサ
33 :開閉バルブ
34 :開閉バルブ
35 :分岐管
100 :容器殺菌装置
S :殺菌部
C1 :第一搬送ホイール
C2 :第二搬送ホイール
C3 :第三搬送ホイール
F :充填部
M :成形部
P :充填設備
W :洗浄部
図1
図2
図3
図4