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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】床の施工方法及び床構造
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/16 20060101AFI20240219BHJP
   E04F 15/00 20060101ALI20240219BHJP
   E04G 23/02 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
E04F15/16 G
E04F15/00 F
E04F15/00 R
E04G23/02 H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020138654
(22)【出願日】2020-08-19
(65)【公開番号】P2022034787
(43)【公開日】2022-03-04
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000222495
【氏名又は名称】東リ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古谷 伸一
(72)【発明者】
【氏名】細谷 裕樹
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-184807(JP,A)
【文献】特開2006-307564(JP,A)
【文献】特開2011-052385(JP,A)
【文献】特開昭63-201256(JP,A)
【文献】すいすい,「はがせる両面テープ」を使って、トイレのクッションフロアをDIYで上張りしてみた!,「はがせる両面テープ」を使って、トイレのクッションフロアをDIYで上張りしてみた!,-,日本,イエナカ手帖,2018年04月30日,-,http://ienakanote.com/member/54/record/21539/,-
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/00-15/22
E04G 23/02
E03C 1/20
E04H 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室の床の表面に両面テープを貼り付ける貼付工程と、
前記両面テープを介して前記床の表面に床シートを敷設する敷設工程と、を有し、
前記両面テープは、外周テープと、内側テープと、を含み、
前記貼付工程では、前記床の表面の外周縁に沿って複数の前記外周テープを連ねて貼り付けるとともに、前記外周縁の内側においては、前記外周縁において上方に水栓又はシャワーが位置する所定箇所の前方の少なくとも一部領域で前記所定箇所の前方向に対して斜めを向くようにして複数の前記内側テープを間隔をあけて貼り付ける、ことを特徴とする床の施工方法。
【請求項2】
前記床の表面は略矩形状を呈し、前記床の表面の外周縁を構成する4つの側縁のいずれかの側縁に前記所定箇所があり、当該側縁と直交する方向に対して斜めを向くように前記内側テープが貼り付けられる、ことを特徴とする請求項1に記載の床の施工方法。
【請求項3】
前記床には排水口が設けられ、
前記床の表面の外周縁において前記排水口との境界では少なくとも一つの隙間が存在するように前記外周テープが貼り付けられており、
前記内側テープの両端部は、前記外周テープとの間に隙間が存在している、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の床の施工方法。
【請求項4】
前記内側テープは一方の端部が他方の端部よりも前記排水口に近付くように斜めを向いている、ことを特徴とする請求項3に記載の床の施工方法。
【請求項5】
浴室の床と、
前記床の表面に貼り付けられた両面テープと、
前記両面テープを介して前記床の表面に敷設された床シートと、を備え、
前記両面テープは、前記床の表面の外周縁に沿って連ねて貼り付けられる複数の外周テープと、前記外周縁の内側において互いに間隔をあけて貼り付けられる複数の内側テープと、を含み、
前記内側テープは、前記床の表面の外周縁において上方に水栓又はシャワーが位置する所定箇所の前方の少なくとも一部領域において、前記所定箇所の前方向に対して斜めを向くようにして貼り付けられる、ことを特徴とする床構造。
【請求項6】
前記床には排水口が設けられ、
前記床の表面の外周縁において前記排水口との境界では少なくとも一つの隙間が存在するように前記外周テープが貼り付けられており、
前記内側テープの両端部は、前記外周テープとの間に隙間が存在しており、
前記内側テープは一方の端部が他方の端部よりも前記排水口に近付くように斜めを向いている、ことを特徴とする請求項5に記載の床構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば浴室、洗面所、脱衣所などの床を新規に敷設する際又はリフォームする際に、新設又は既存の床の表面(床面)に両面テープを用いて床シートを敷設する床の施工方法及び施工後の床構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、一戸建て、マンション、寮、ホテル、老人保健施設、介護福祉施設、病院などでは、部屋、廊下、浴室、洗面所、脱衣所、トイレなどのリフォームが盛んに行われている。ここで、例えば浴室の床をリフォームする場合に、最上層の古くなった床材を新しい床材に交換することがある。しかし、この場合には、古い床材が接着剤で固定されていると引き剥がすことが困難であり、また、施工面に生じた不陸を平滑化する処理も必要となるなど、多くのコスト及び時間を要する。
【0003】
一方、古い床材を引き剥がさない簡易な床のリフォームとして、既存の床の表面に新しいシート状の樹脂製床材(床シート)を敷設する床施工方法が従来から行われている。この床施工方法により、リフォームに要する時間及びコストを低減できる。しかし、この床施工方法においても、床シートを接着剤により既存の床面に貼着しているため、(1)接着剤の床面への塗布作業に時間及び高度な専門技術を要する、(2)接着剤を床面に塗布した後、床シートを敷設するまでに一定時間の待ち時間(オープンタイム)が必要となり、施工作業開始から浴室が使用可能となるまでに相当の時間を要する、(3)床シートが接着剤により強固に床面に接着されるため、施工ミスや次回のリフォームの際に床シートを張り替える必要が生じた場合、床シートを床面から剥がす作業に労力及び時間を要するとともに、床面から強固にくっついた接着剤を剥ぎ取り、必要に応じて傷んだ箇所を補修する作業が必要となる。
【0004】
そこで、接着剤に代わって両面テープを用いた床施工方法が提案されている(例えば特許文献1を参照)。この両面テープを用いた床施工方法は、従来の接着剤を用いた床施工方法と比べて、(1)待ち時間(オープンタイム)なしで床シートを床面に貼着することができる、(2)両面テープの床面への貼付作業は接着剤の床面への塗布作業のように長時間及び高度な専門技術を要しないので、床シート材の施工作業を効率よく行うことができる、(3)床シートを張り替える場合に、床シートを床面から容易に剥がすことができ、接着剤のように床面から剥ぎ取り難いということがない、などの効果を奏するので、リフォーム時の作業性が改善される。
【0005】
両面テープを用いて床シートを既存の床面に貼着する床施工方法では、図9に示すように、平面視で矩形状の床面100に対して、床面100の外周縁に沿って両面テープ101を一周にわたり貼り付けるとともに、床面100の外周縁の内側においては両面テープ102を床面100の縦方向及び/又は横方向に間隔をあけて貼り付けるのが一般的である。なお、縦方向とは、床面100の対向する一対の側縁100Aの間を当該側縁100Aと直交して延びる方向(他の一対の側縁100Bと平行に延びる方向)であり、横方向は縦方向と直交する方向である。
【0006】
例えば浴室などにおいては、床シート103を敷設した床面100上にイス(バスチェア)104を置き、水栓105やシャワー106の前で人がイス104に座って身体や顔、頭髪を洗うことがある。このとき人の身体はイス104に支えられており、人が身体などを洗う際に動くと、イス104は床シート103を強く押さえつけるようにしながら床シート103に対してこするように動く。ここで、図7に示すように床面100に対して内側の両面テープ102が床面100の縦方向や横方向に沿って延びるように貼り付けられていると、イス104の動く方向が内側の両面テープ102の長手方向と平行な方向又は直交する方向と一致する。この場合、床シート103にはイス104の置かれた箇所にイス104の動きにより外力が集中して作用し、該箇所において床シート103はイス104によって強くしごかれるので、床シート103が既存の床面100から部分的に浮き上がるおそれがあるため、高い耐久性が求められる。また、オフィスや病院などの床面に床シートを敷設した場合は、イスのキャスターや車椅子、ストレッチャーなどの車輪といった他の外力でも浮き上がらない耐久性が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2018-131870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、床シートを床面に両面テープを用いた貼着により敷設して床の施工を行った際に、床シートの引き剥がしを容易にしつつ、イスなどの外力によって床シートが床面から浮き上がることを防止して長く使用できる施工方法及び床構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一態様は、床の表面に対して両面テープを用いた貼着により床シートを敷設する床の施工方法に関する。本発明の床の施工方法は、床の表面に両面テープを貼り付ける貼付工程と、前記両面テープを介して前記床の表面に床シートを敷設する敷設工程と、を有し、前記両面テープは、外周テープと、内側テープと、を含み、前記貼付工程では、前記床の表面の外周縁に沿って複数の前記外周テープを連ねて貼り付けるとともに、前記外周縁の内側においては、前記外周縁の所定箇所の前方の少なくとも一部領域で前記所定箇所の前方向に対して斜めを向くようにして複数の前記内側テープを間隔をあけて貼り付ける、ことを特徴とする。
【0010】
本発明の床の施工方法において好ましい態様は、隣り合う前記外周テープの端部同士が重ねられていない、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の床の施工方法において好ましい態様は、前記内側テープは複数が平行に並んでおり、前記内側テープの傾斜角度が30°以上50°以下である、ことを特徴とする。この態様においては、隣り合う前記内側テープの間隔は50mm以上250mm以下であることが更に好ましい。
【0012】
また、本発明の床の施工方法において好ましい態様は、前記床の表面は略矩形状を呈し、前記床の表面の外周縁を構成する4つの側縁のいずれかの側縁に前記所定箇所があり、当該側縁と直交する方向に対して斜めを向くように前記内側テープが貼り付けられる、ことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の床の施工方法において好ましい態様は、前記床は浴室の床であり、前記床には排水口が設けられ、前記床の表面の外周縁において前記排水口との境界では少なくとも一つの隙間が存在するように前記外周テープが貼り付けられており、前記内側テープの両端部は、前記外周テープとの間に隙間が存在している、ことを特徴とする。この態様においては、前記内側テープは一方の端部が他方の端部よりも前記排水口に近付くように斜めを向いていることが更に好ましい。
【0014】
本発明の第二態様は、床面に両面テープを用いた貼着により床シートが敷設された床構造に関する。本発明の床構造は、床と、前記床の表面に貼り付けられた両面テープと、前記両面テープを介して前記床の表面に敷設された床シートと、を備え、前記両面テープは、前記床の表面の外周縁に沿って連ねて貼り付けられる複数の外周テープと、前記外周縁の内側において互いに間隔をあけて貼り付けられる複数の内側テープと、を含み、前記内側テープは、前記床の表面の外周縁の所定箇所の前方の少なくとも一部領域において、前記所定箇所の前方向に対して斜めを向くようにして貼り付けられる、ことを特徴とする。
【0015】
本発明の床構造において好ましい態様は、前記床は浴室の床であり、前記床には排水口が設けられ、前記床の表面の外周縁において前記排水口との境界では少なくとも一つの隙間が存在するように前記外周テープが貼り付けられており、前記内側テープの両端部は、前記外周テープとの間に隙間が存在しており、前記内側テープは一方の端部が他方の端部よりも前記排水口に近付くように斜めを向いている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の施工方法及び床構造では、床シートを床面に両面テープを用いた貼着により敷設して床の施工を行った際に、床シートの引き剥がしを容易にしつつ、イスなどの外力によって床シートが床面から浮き上がることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態の床構造を適用した浴室の床の平面図である。
図2】床面に両面テープを貼り付けた状態の浴室の床の平面図である。
図3図2の一部を拡大して示す平面図である。
図4】浴槽との境界が曲線形状である床面に両面テープを貼り付けた状態の浴室の床の平面図である。
図5】(A)床面の浴槽又は浴室壁面との境界における縦断面図であり、(B)床面の排水口との境界における縦断面図である。
図6】他実施形態の床構造を適用した浴室の床の平面図である。
図7】他実施形態の床構造を適用した浴室の床の平面図である。
図8】他実施形態の床構造を適用した浴室の床の平面図である。
図9】従来の床構造を適用した浴室の床の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。本発明は、例えば浴室、洗面所、脱衣所などの新築やリフォームの際に好適に用いることができるものであり、新設の床又は既存の床の表面(床面)に対して両面テープを用いた貼着により床シートを敷設することで床の施工を行う床の施工方法、及び、新設又は既存の床面に両面テープを用いた貼着により床シートが敷設された床構造に関する。本発明は、新築及びリフォームのいずれにも用いることができるが、特に、リフォームの際、既存の床の表面への床シートの敷設に好適に用いることができる。
【0019】
本発明の適用対象の床は、主には、例えばイスや台などが床面上に置かれ、人がイスに座ったり台の上に立ったりしながら物事を行うケースが想定される床である。例えば浴室において身体や顔、頭髪などを洗うために水栓やシャワーを備えた洗い場の床が挙げられる。また、洗面所や脱衣所における、例えば顔や手などを洗うための洗面器及び洗面台、頭髪乾燥や整髪、化粧などをするための鏡付きの台(例えば化粧台、洗面台)などを備えた床が挙げられる。なお、上述の浴室には、在来工法で造られた浴室、浴槽(及び洗い場)のみが組み付けられた1点ユニットバスの他に、浴槽やシャワー室に加えて洗面台が設置されている浴室、浴槽・洗面器の2つが一体に組み付けられた2点ユニットバス、浴槽やシャワー室に加えて洗面台及び便器が設置されている浴室、浴槽・洗面器・便器の3つが一体に組み付けられた3点ユニットバスも含まれる。
【0020】
床シートが貼り付けられる床としては、新築の場合、床仕上げ材が敷設される前の合板、モルタルなどで作られた床であり、リフォームの場合、磁器質などのタイル、繊維強化プラスチック(FRP)、樹脂シートなどで仕上げられた床である。
【0021】
図1及び図2に示すように、本実施形態の床構造1は、既存の床の表面(床面)12に両面テープ2,3を用いた貼着により床シート4が敷設された床構造である。床構造1は、既存の床と、既存の床面12に貼り付けられた両面テープ2,3と、両面テープ2,3を介して既存の床面12に敷設された床シート4とを少なくとも備える。本実施形態の床の施工方法は、(i)既存の床面12に両面テープ2,3を貼り付ける貼付工程と、(ii)両面テープ2,3を介して既存の床面12に床シート4を敷設する敷設工程と、(iii)敷設した床シート4を既存の床面12に対して押さえつける押圧工程とを少なくとも有する。なお、床シート4が敷設される床は、上述している通り、既存の床には限定されず、新設の床であってもよい。
【0022】
本実施形態では、浴室の床を例にして説明しており、図1及び図2は、本実施形態の床の施工方法及び床構造1が適用された浴室の床を示す。以下の説明では、図1及び図2において、上下方向を床面12の縦方向とし、左右方向を床面12の横方向としている。
【0023】
図1及び図2に示す浴室は、浴槽10と、浴槽10に隣接した洗い場11を備えている。洗い場11の床は平面視で矩形状を呈しており、洗い場11の床には浴槽10の側の隅に排水口13が設けられている。床面12は、対向する一対の側縁12A,12Bと、他の対向する一対の側縁12C,12Dを含んでいる。床面12は、浴槽10に隣接する側縁12Aの一方の角(側縁12Cとの角)に排水口13が隣接していて、当該角が矩形状に欠けているので、全体として略矩形状を呈している。洗い場11の浴室壁面17には、身体を洗うための水栓14及びシャワー15が備え付けられており、図示例では、床面12の側縁12Cの上方に水栓14及びシャワー15が位置している。なお、床面12の側縁12Cにおける水栓14やシャワー15のある位置が、本開示における「外周縁の所定箇所」に相当する。
【0024】
まず、本実施形態の床の施工方法及び床構造1に用いられる両面テープ2,3及び床シート4について説明する。
【0025】
両面テープ2,3は、帯状の基材の両面に接着剤あるいは粘着剤が塗工されたものである。両面テープ2,3は、下地である既存の床面12に床シート4を貼着できるものであれば特に限定されず、従来公知のものを用いることができるが、接着強度、耐水性、下地不陸追従性、耐可塑剤性、クリープ性、剥離容易性などに優れるものを用いることが好ましい。例えば「バスナテープ(東リ株式会社製)」を両面テープ2,3に好適に用いることができる。
【0026】
両面テープ2,3の厚みは、特に限定されるものではないが、例えば0.37mm以上0.45mm以下であることが好ましく、0.38mm以上0.42mm以下であることが更に好ましい。両面テープ2,3の厚みが下限値以上であることにより、既存の床面12に対する床シート4の貼着を強固にすることができる。また、施工時の両面テープ2,3の意図しない切断を防止できるので、施工時の作業効率を向上できる上、床シート4の貼り替え時に両面テープ2,3を途中で切断することなく床面12から剥がすことが容易となり、次回のリフォーム時の作業効率も向上できる。一方で、両面テープ2,3の厚みが上限値以下であることにより、床面12の両面テープ2,3が存在する領域と存在しない領域との間の段差が床シート4の表面側に伝わり難くなり、床シート4の足触りに違和感が生じることを抑制できる。
【0027】
両面テープ2,3の幅は、特に限定されるものではないが、例えば30mm以上50mm以下であることが好ましく、35mm以上45mm以下であることが更に好ましい。両面テープ2,3の幅が下限値以上であることにより、床面12に貼り付ける両面テープ2,3の本数を大きく増やすことなく床面12と床シート4との貼着面積を十分にすることができる。よって、施工時の作業の手間を軽減しながら、床シート4を既存の床面12から剥がれ難くして、長期間、床シート4を床面12に固定することができる。一方で、両面テープ2,3の幅が上限値以下であることにより、床面12への両面テープ2,3の貼付面積が減るので、両面テープ2,3の床面12への貼り付け時に両面テープ2,3に皺が生じ難くなり、両面テープ2,3の貼り付け作業を容易にできる。また、施工時の床面12における作業スペースを十分に確保することができるため、施工時の作業効率を向上できる。
【0028】
両面テープ2,3は、既存の床面12の複数箇所に貼り付けられる。両面テープ2,3は、床面12の全域に貼り付けられず、床面12の一部領域に貼り付けられる。具体的に、床面12の外周縁に沿って両面テープ2(以下、「外周テープ2」ともいう。)が貼り付けられるとともに、床面12の外周縁の内側に間隔をあけて複数の両面テープ3(以下、「内側テープ3」ともいう。)が貼り付けられる。
【0029】
まず、外周テープ2は、図示例では、床面12の浴槽10、排水口13及び浴室壁面17との境界に沿って貼り付けられる。これにより、外周テープ2を介して床シート4の外周縁部を床面12に密着させることができるので、床面12と床面12に敷設した床シート4との間に水などが浸入することを抑制できる。
【0030】
床面12の外周縁に沿う外周テープ2は、床面12の外周縁のほぼ一周にわたって連続している。外周テープ2は、図示例では床面12の縦方向に延びる両面テープ及び横方向に延びる両面テープの複数の両面テープ2A~2Fが連なって構成されている。外周テープ2A~2Fのうち、床面12の浴槽10及び浴室壁面17との境界に沿う部分(床面12の側縁12A~12Dに沿う部分)2A~2Dは、隙間なく連続して床面12に貼り付けられていることが好ましい。つまり、直角をなすように隣り合う外周テープ2A,2D、外周テープ2D,2B及び外周テープ2B,2Cは端部同士を突き合わせること、すなわち、外周テープ同士の間隔が0mmで隙間なく繋がっていることが好ましい。これにより、床面12と床面12に敷設した床シート4との間に水などが浸入することを効果的に抑制することができる。
【0031】
なお、隣り合う外周テープの端部同士を突き合わせることが難しい場合には、端部同士を少し重ね合わせることで隙間なく繋げるよりも、図3に示すように、むしろ端部同士を重ね合わせずに端部同士を隙間S1があくように不連続としてもよい。隣り合う外周テープの端部同士が重ね合わされないことで、外周テープ2A~2Dの厚みが部分的に増加しないため、外周テープ2A~2Dの貼付により生じる床面12の段差が床シート4の表面側に伝わり難くなり、床シート4の足触りに違和感が生じることを抑制できる。上記隙間S1は、床面12と床面12に敷設した床シート4との間に水などが当該隙間S1から容易に浸入することをできる限り抑制する観点から、例えば10mm以下であり、好ましくは5mm以下である。
【0032】
一方で、外周テープ2A~2Fのうち、床面12の排水口13との境界に沿う部分2E,2Fは、図3に示すように、隙間S2が存在するように断続して床面12に貼り付けられていることが好ましい。つまり、直角をなすように隣り合う外周テープ2A,2E、外周テープ2E,2F及び外周テープ2F,2Cは端部同士を突き合わせたり重ね合わせたりすることなく、端部同士を隙間S2があくように不連続とするほうが好ましい。これにより、仮に床面12と床面12に敷設した床シート4との間に水などが浸入した場合であっても、浸入した水を隙間S2から排水口13に流入させて排水することができる。上記隙間S2は、床面12と床面12に敷設した床シート4との間に水などが当該隙間S2から容易に浸入することをできる限り抑制した上で当該隙間S2の排水機能を維持する観点から、例えば3mm以上15mm以下であることが好ましく、5mm以上10mm以下であることが更に好ましい。
【0033】
なお、図2では、床面12の浴槽10との境界に沿う側縁12Aが直線形状であるが、図4に示すように床面12の側縁12Aが曲線形状である場合には、複数の短い直線形状の外周テープ2A1~2A5を略曲線状に繋げることで、側縁12Aに沿って貼り付ける。外周テープ2A1~2A5は、隙間なく連続して床面12に貼り付けられていることが好ましい。つまり、外周テープ2A1~2A5の隣り合う外周テープを少なくとも一部同士が接触するように繋げることが好ましい。隣り合う外周テープの一部同士を接触させることが難しい場合には、外周テープ2A1~2A5は、上述の隙間S1があくように不連続で床面12に貼り付けてもよい。なお、図4では排水口13は三角形状をなしており、床面12の排水口13との境界に沿う外周テープ2E,2Fは、上述の隙間S2が存在するように断続して床面12に貼り付けられている。
【0034】
次に、床面12の外周縁の内側に貼り付けられる内側テープ3は、図1及び図2に示すように、床面12の外周縁の所定箇所を含む少なくとも一部分において、前記所定箇所の前方向に対して斜め方向に延びるように床面12に貼り付けられている。
【0035】
ここで、「床面の外周縁の所定箇所」とは、全身、顔、手、頭髪などを洗うための水栓やシャワー、頭髪乾燥、整髪、化粧などをするための鏡や鏡付きの台(例えば洗面台や化粧台)など、人が物事を行う際に用いる装備が備え付けられた位置に当たる箇所であり、その前方の床面12にイスや台などが置かれて、人がイスに座ったり台の上に立ったりしながら物事を行うことが想定される箇所である。
【0036】
また「床面の所定箇所の前方向」とは、所定箇所が位置する床面12の外周縁が直線状であれば、当該直線に対して垂直かつ床面12の内側を向く方向であり、所定箇所が位置する床面12の外周縁が円弧などの曲線状であれば、当該曲線の接線に対して垂直かつ床面12の内側を向く方向である。
【0037】
また「床面の所定箇所の前方の少なくとも一部領域」とは、所定箇所から前方に所定距離、例えば特に限定されないが前方に300mmから900mm離れた床面12の一部領域であってイスや台などが好適に置かれる部分を少なくとも含む領域である。図1及び図2の例では、床面12の全域において内側テープ3が斜め方向を向いているが、例えば床面12の縦方向においてイス16が置かれた側縁12C側の約1/3程度、好ましくは半分程度の領域で内側テープ3が斜め方向を向いていてもよい。
【0038】
また「床面の所定箇所の前方向に対して斜めを向く」方向とは、所定箇所の前方向に対して垂直でも平行でもない方向であり、図1及び図2の例では所定箇所の前方向が床面12の縦方向に相当していることから、床面12の縦方向に対して傾斜する方向である。そのため、複数の内側テープ3は、床面12の縦方向ないしは横方向に延びる外周テープ2A~2Fに対して斜めを向いている。
【0039】
例えば浴室の洗い場11において、所定箇所は主に水栓14やシャワー15、あるいは鏡が配置された箇所が想定される。かかる場所は、洗い場11の利用者が水栓14やシャワー15、鏡を利用するために、床シート4を敷設した床面12上にイス(バスチェア)16が置かれる。利用者が水栓14やシャワー15、鏡の前でイス16に座って髪や身体を洗う際に動くと、身体がイス16に支えられているため、イス16は床シート4を強く押さえつけられる。このため、イス16は床シート4に対してこするように動き、床面12の接着面に負荷がかかる。ここで、図1及び図2に示すように複数の内側テープ3が斜め方向を向くようにして床面12に貼り付けられていると、イス16の動く方向が内側テープ3の長手方向と平行な方向又は直交する方向と一致しない。そのため、床シート4にはイス16の置かれた箇所にイス16の動きによる外力が作用するが、この外力が床シート4のイス16が置かれた箇所に集中せずに分散するので、床シート4はイス16から局所的な力を受けない。よって、床シート4がイス16によってしごかれても、床シート4が既存の床面12から部分的に浮き上がることを抑制できる。
【0040】
内側テープの傾斜角度θ、つまりは、所定箇所の前方向に対して直交する方向、図1及び図2の例では床面12の横方向との間でなす角度θは、特に限定されないが、例えば30°以上60°以下であることが好ましく、40°以上50°以下であることがより好ましく45°であることが更に好ましい。傾斜角度θが上記範囲内であることにより、上述したように床シート4がイス16によってしごかれても、床シート4が既存の床面12から部分的に浮き上がることを効果的に抑制できる。
【0041】
複数の内側テープ3は、図1及び図2に示すように、全部が同じ方向を向いて延びており、互いに平行に並ぶようにして床面12に貼り付けられていることが好ましい。これにより、両面テープ2,3の床面12への貼り付け時に内側テープ3の貼り付け作業を容易にできる。この場合、隣り合う内側テープ3の間隔Dは、特に限定されないが、50mm以上250mm以下であることが好ましく、100mm以上200mm以下であることがより好ましく、150mmであることが更に好ましい。間隔Dを下限値以上として、床面12への内側テープ3の貼付面積を大きくしすぎないことにより、床面12への内側テープ3の貼り付けを容易にし、また、施工時の床面12における作業スペースを十分に確保することができるため、施工時の作業効率が良好となる。一方で、間隔Dが上限値以下であることにより、床シート4の床面12との貼着面積が十分に確保され、床シート4が床面12から剥がれ難くなる。よって、上述したように床シート4がイス16によってしごかれても、床シート4が既存の床面12から部分的に浮き上がることを効果的に抑制できる。
【0042】
なお、複数の内側テープ3は、一部が同じ方向を向いて延びているとともに残部が異なる同じ方向を向いて延びていてもよいし、全部が異なる方向を向いて延びていてもよい。
【0043】
複数の内側テープ3は、図1及び図2に示すように、その両端部が外周テープ2A~2Fとの間に隙間S3が存在するようにして床面12に貼り付けられていることが好ましい。この隙間S3は、内側テープ3と外周テープ2A~2Fとの間の最近接距離である。浴室の洗い場11の床面12は、一般的には、床面12上の水が排水口13に自然に向かうように排水口13に向かって緩やかに下降するよう傾斜している。そのため、仮に床面12と床面12に敷設した床シート4との間に水などが浸入した場合であっても、浸入した水は、床面12を伝って排水口13に導かれる。ここで、複数の内側テープ3の両端部が外周テープ2A~2Fと繋がっておらず、外周テープ2A~2Fから隙間S3をあけた離れた位置にあることで、浸入した水が床面12上の隣接する内側テープ3の間を通過して排水口13側の外周テープ2A,2Cの方まで導かれた際に、隙間S3を通り抜けること浸入した水を外周テープ2A,2Cに沿って排水口13まで導くことができる。よって、浸入した水を排水口13に流入させて排水することができる。上記隙間S3は、床シート4の外周縁部を床面12に良好に貼着可能とした上で当該隙間S3の通水機能を維持する観点から、例えば3mm以上15mm以下であり、好ましくは5mm以上10mm以下である。
【0044】
なお、既存の床に排水口13がない床構造1である場合には、複数の内側テープ3の両端部は外周テープ2A~2Fとの間に隙間なく繋がっていてもよい。
【0045】
複数の内側テープ3は、図1及び図2に示すように、一方の端部が他方の端部よりも排水口13に近付くように斜めを向いており、排水口13の方を向いて延びるようにして床面12に貼り付けられていることが好ましい。つまり、図1及び図2に示す例では、全ての内側テープ3は、床面12の左上の隅にある排水口13に向けて、他方の端部から一方の端部にかけて左斜め上方を向くように延びている。複数の内側テープ3が排水口13の方を向いて延びていることにより、上述したように仮に床面12と床面12に敷設した床シート4との間に水などが浸入した場合に、浸入した水を排水口13に向けてスムーズに導くことができるので、排水を促すことができる。
【0046】
なお、複数の内側テープ3は、必ずしも全部が排水口13の方を向いて延びている必要はなく、一部だけが排水口13の方を向いて延びていてもよいし、全部が排水口13の方を向いて延びていなくてもよい。
【0047】
次に、床シート4は、既存の床面12に敷設されて浴室などの意匠性や機能性を向上させるシート材である。床シート4の平面視形状は、特に限定されるものではなく、長尺状に形成されていてもよいし、床タイルのように矩形状又は多角形状に形成されていてもよいが、止水性及び施工性の観点から、床シート4は、目地のない1枚のシートからなることが好ましい。長尺状に形成された床シート4は、通常、ロールに巻かれて保管・運搬に供される。特に、浴室は内部空間が限られ、入口も狭いため、床シート4がロールに巻けることは、搬入しやすく、施工もしやすいので、大きな利点となる。
【0048】
床シート4の表面形状は、特に限定されるものではないが、例えば防滑性を有する突部や傾斜面を有する凹凸形状などとすることができる。また、床シート4の最も上側の表面層は、必要に応じて、耐侯剤、可塑剤、安定剤、充填剤、分散剤、染料、顔料などの着色剤、溶剤などを含んでいてもよい。
【0049】
床シート4の表面は、光沢度を高くするよりも低くする方が、下地である床面12の不陸や凹凸が床シート4の表面へ表出した際、人の目で視認し難くする効果があるので好ましい。また、テープ施工によって凹凸が表出した場合も、人の目で視認しにくいと目立たず問題とならなくなる。表出した凹凸などを人の目で視認し難くするためには、光沢度(60°)が0.3以上60以下とすることが好ましく、0.5以上30以下とすることがより好ましい。なお、光沢度(60°)は、例えばGM-3D(株式会社村上色彩技術研究所製)などの光沢度測定器を用いて測定することができる。光沢度を低くする方法としては、例えば、床シート4の表面層中にシリカ、又はプラスチックビーズなどの艶消剤を添加する方法や、防滑性を付与するために設ける突部や傾斜面とは別に表面に微細な凹凸を形成する方法などを挙げることができる。微細エンボスは、大きいよりも小さい方が、光沢度をより抑える傾向を持つ。微細な凹凸が形成されていることにより、床シート4の表面にあたった光が乱反射して光沢性が低くなる。微細な凹凸の表面粗さは、特に限定されないが、粗過ぎると光の反射方向によっては高い光沢を有するように見える場合があり、一方、細かすぎると鏡面状と殆ど変わらなくなる場合がある。このような観点から、表面粗さ(JIS B 0601に準拠した中心線平均粗さ(Ra))は、5μm以上15μm以下であることが好ましく、6μm以上10μm以下であることがより好ましい。床シート4の表面の凹凸や突部などは、通常はエンボス加工を行って形成するが、エンボス加工方法は特に限定されず、公知の枚葉式又は輪転式のエンボス機を用いることができる。凹凸形状としては、例えば、木目板導管溝、石板表面凹凸(花崗岩劈開面など)、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝、Vカット状、微細網状、微細点状、ストライプ状などを挙げることができる。微細な凹凸は、エンボス加工以外に、サンドブラストや鑢がけなどによって表面を粗くしたり、フィラーなどの微粒子を表面に埋め込むなどの方法によっても形成することができる。このような微細な凹凸を加えることによって、不陸による凹凸やテープ施工による凹凸をさらに隠蔽しやすくなる。
【0050】
床シート4の機能性としては、防滑性、クッション性、遮熱性、接触温熱感の向上などが挙げられる。床シート4は、防痛性を高めるため適度なクッション性を有し、さらに、浴室などに用いる場合にはヒートショックの低減及び温感を高めるため断熱性を有することが好ましく、発泡層を含むことが好ましい。床シート4は、その全体が発泡層で形成されていてもよいが、防滑性を増すためにシート本体の表面に潰れにくい突部や傾斜面を形成する場合は、非発泡の表層を有することが好ましい。また、簡易に保管・運搬できる上、施工時に浴室内に容易に搬入できるため、ロールに巻き取ることができるような柔軟性を有することが好ましい。
【0051】
床シート4の素材は、既存の床面12に敷設可能なものであれば特に限定されるものではなく、例えば、塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂などの柔軟性を有する樹脂製シートを用いることができる。これらの中でも、柔軟性を有する加工性、耐久性、コストに優れることから、主たる樹脂成分として塩化ビニル樹脂を用いることが好ましい。塩化ビニル系樹脂は、柔軟性に優れることにより、施工後に柔軟な床面を構成できるほか、ロールに巻き取って床シート4を簡易に保管・運搬できる上、施工時に浴室内に容易に搬入できるというメリットもある。また、リフォーム時に下地である床面12との密着性に優れるという点においても、塩化ビニル系樹脂を用いることが好ましい。
【0052】
床シート4は、単層構造であっても良いし、複数の層が積層されてなる多層構造であってもよい。多層構造の場合は、2層又はそれ以上の層構成を採用することができる。
【0053】
床シート4の厚みは、特に限定されるものではないが、例えば1.8mm以上5.0mm以下であることが好ましく、2.0mm以上4.0mm以下であることがより好ましい。床シート4の厚みは、エンボス加工が施されている場合などのように厚みが不均一な場合、その最大層厚みを指す。厚みが1.8mm以上であると強度を確保しやすく、厚みが5mm以下であると柔軟性が高まるので、施工する際の作業性が向上する。また、既存の床面12に床シート4を敷設したとしても、厚みを5mm以下とすることで、施工後の床面高さの変動が支障の出ない範囲に抑えられる上、リフォーム後の美観も保つことができる。さらに、床シート4の厚みが上記範囲内であれば、下地である床面12の不陸や凹凸が床シート4の表面に表出するのを抑制できる。
【0054】
床シート4には、その剛性を高め、寸法安定性を付与するための補強層を単数又は複数設けてもよい。補強層が厚み方向に複数設けられていると、既存の床面12に比較的大きい凹凸が存在する場合であっても、床シート4が床面12の凹凸に追随しにくく、床シート4の表面に凹凸が表出するのをさらに抑制できる。補強層としては、例えば、ガラスマット、ガラスネット、樹脂製マット、樹脂製ネット、無機繊維又は有機繊維からなる不織布又はフェルト、及び、織布などが挙げられるが、強度に優れ、かつ、寸法変化が小さいという点から、特にガラス繊維を用いることが好ましい。ガラス繊維を用いる場合、目付量が10g/m以上100g/m以下ガラス繊維織布又は不織布が特に好ましい。また、例えばポリエステル等の他の繊維を用いた織布又は不織布についても、同程度の目付量が好ましい。リフォーム施工時に剛性度が高まると、下地である床面12の全域に床シート4を貼着していなくてもずれ難くなり、変形もし難い。また、ガラス繊維の目付量が上記範囲内であれば、下地である床面12の不陸や凹凸が床シート4の表面に表出するのを抑制できる。
【0055】
また、床シート4の最も下側の裏面層に、両面テープ2,3との接着強度を高めるとともに、非貼着部分のずれを防ぐことを目的として基材層を設けてもよい。この基材層としては、特に限定されないが、例えば、不織布、織布、紙、フェルトなどの従来公知のシート材を用いることができる。不織布や織布を構成する繊維の材質は、特に限定されず、例えば、ポリエステル、ポリオレフィンなどの合成樹脂繊維;ガラス、カーボンなどの無機繊維;天然繊維などが挙げられる。不織布としては、スパンボンド不織布、サーマルボンド不織布、ケミカルボンド不織布、ニードルパンチ不織布、スパンレース不織布などが挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上を併用できる。中でも、薄くて強いことから、スパンボンド不織布が好ましく、さらに、ポリプロピレンスパンボンド不織布がより好ましい。
【0056】
基材層の厚みは、特に限定されないが、例えば0.1mm以上0.5mm以下であることが好ましく、0.2mm以上0.4mm以下であることがより好ましい。また、基材層の目付量は、特に限定されないが、例えば30g/m以上70g/m以下であることが好ましい。基材層の厚み及び目付量が上記範囲内であれば、下地である床面12の不陸や凹凸が床シート4の表面に表出するのを抑制できる。
【0057】
次に、図1及び図2を参照して、本実施形態の床の施工方法について説明する。
【0058】
まず、浴室の洗い場11の既存の床面12に凹凸の高さや幅の大きな不陸や亀裂などがある場合には、必要に応じて下地補修材を用いて平滑化処理を行う。既存の床面12が繊維強化プラスチック(FRP)やタイルの場合、下地補修材としては、例えば「バスナパテEPO(東リ株式会社製)」を好適に用いることができる。
【0059】
そして、既存の床面12上の所定箇所に両面テープ2,3を貼り付ける(両面テープの貼付工程)。具体的には、床面12の外周縁に沿って、つまりは、床面12上の浴槽10、排水口13及び浴室壁面17との境界において、その長さ方向に沿って外周テープ2A~2Fを貼り付ける。この際、床面12の側縁12A~12Dに沿う外周テープ2A~2Dについては隣り合う両面テープの端部同士が重なり合わないように床面12に貼り付ける。また、排水口13との境界に沿う外周テープ2E,2Fについては、隙間S2が存在するように床面12に貼り付ける。
【0060】
さらに、床面12の外周縁の内側において所定の間隔をあけて複数の内側テープ3を、床面12の縦方向ないしは横方向に対して斜めを向くように床面12に貼り付ける。この際、隣り合う内側テープ3の間隔Dは150mm程度が最も好ましく、内側テープの傾斜角度θは45°程度が最も好ましい。また、内側テープ3はその両端部と外周テープ2A~2Fとの間に隙間S3があくように床面12に貼り付ける。また、内側テープ3は一方の端部が他方の端部よりも排水口13に近付くような斜め向きで床面12に貼り付ける。
【0061】
両面テープの貼付工程が終わると、床シート4を両面テープ2,3を介して床面12に敷設する(床シートの敷設工程)。この際、カッターなどの切断器具を用いて床シート4をカットすることにより、床シート4の大きさを調整する。なお、床シート4を予め所望の寸法にカットしておいてもよい。
【0062】
床シート材の敷設工程が終わると、押圧ローラーなどによって、床面12上に敷設した床シート4の全面を押圧する(床シート材の押圧工程)。床シート4を押圧する方向は特に限定されないが、両面テープ2,3と同じ方向にすることが好ましい。これにより、床シート4と床面12と間の空気を抜くことで、床シート4と床面12との貼着を強固なものとする。
【0063】
最後に、床シート4の外周縁部のシール処理を行う。具体的に、図5(A)(B)に示すように、床シート4は、その外周縁部が床面12における浴槽10や浴室壁面17、あるいは排水口13との境界から隙間S4があけられた状態で床面12に貼り付けられている。この隙間S4は、床面12に貼り付けた床シート4の周囲をシーリング剤5でシール処理するために設けられたものであり、その大きさは例えば2mm以上10mm以下であり、好ましくは4mm以上6mm以下である。床面12の隙間4上にシーリング剤5をコーキングガンなどを用いて充填し、床シート4の外周面及び床シート4周囲の床面12、さらには図5(A)では浴槽10の壁面や浴室壁面17の一部をシーリング剤5で被覆する。これにより、シーリング剤5により、床面12と床シート4との間に水が浸入するのを防止する。シーリング剤5の幅は、例えば2mm~10mm、好ましくは4mm~6mmとなるが、幅が上述の範囲であることで、十分な水密性を確保できるうえで、シーリング剤5の露出が目立たないため、浴室の美観を損ねることを防止できる。なお、外周テープ2は、床シート4の外周縁部と隙間をあけない揃った状態であるのが好ましいが、シール処理をするので、上述の隙間S4の範囲であれば許容される。
【0064】
シーリング剤5は、特に限定されるものではないが、床シート4の外周面に接する側においては、床シート4の表面に乗り上げていることが好ましい。これにより、シーリング剤5によって床シート4の外周縁部の表面が覆われるので、床シート4の外周縁部の捲れを防止することができるうえ、床面12と床シート4との間への水の浸入をより効果的に防止することができる。また、シーリング剤5は、特に限定されるものではないが、図5(A)では、浴槽10の壁面や浴室壁面17に接する側が最も高く、床シート4の外周面に接する側が最も低くなるよう傾斜して設けられることが好ましい。これにより、浴槽10の壁面や浴室壁面17に付着した水をシーリング剤5の傾斜に沿って床シート4の表面上に良好に導いて排水することができる。また、図5(B)では、シーリング剤5は、床シート4の外周面に接する側が最も高く、排水口13との境界側が最も低くなるよう傾斜して設けられることが好ましい。これにより、床シート4上の水を排水口13に効率よく導くことができる。なお、シーリング剤5の形状は、図5(A)(B)に示す形状には限定されない。
【0065】
シーリング剤5としては、特に限定されるものではないが、例えば、1成分型シリコーン系シーリング剤、1成分型変性シリコーン系シーリング剤、2成分型シリコーン系シーリング剤、2成分型変性シリコーン系シーリング剤、2成分型エポキシ系シーリング剤、2成分型ポリサルファイド系シーリング剤、1成分型ポリウレタン系シーリング剤、2成分型ポリウレタン系シーリング剤などを用いることができる。
【0066】
以上説明した施工方法により、浴室の洗い場11の床面12の全域に両面テープ2,3を用いて床シート4が施工された床構造1が完成する。
【0067】
なお、本実施形態では、床面12の浴槽10に隣接する位置に排水溝がない場合の施工方法を説明しているが、排水溝がある床面12では、図示は省略するが、床面12の浴槽10と隣接する排水溝との境界に外周テープ2Aを貼り付け、上述の実施形態と同様にして床シート4を施工する。
【0068】
以上説明した本実施形態の床の施工方法及び床構造1によれば、図1及び図2に示すように、床面12の外周縁の内側において両面テープ3を斜めを向くようにして床面12に貼り付けて床シート4を床面12に敷設している。これにより、水栓14やシャワー15の前にイス16を置き、人がイス16に座って髪や身体を洗っている際に人が動くことでイス16によって床シート4がしごかれたとしても、イス16の動く方向が内側テープ3の長手方向と平行な方向又は直交する方向と一致しないため、イス16の動きによる外力が床シート4のイス16の置かれた箇所に作用してもこの外力を床シート4のイス16が置かれた箇所に集中させずに分散させることができる。よって、床シート4がイス16から局所的な力を受けることを緩和できるので、床シート4がイス16によってしごかれても床シート4が既存の床面12から部分的に浮き上がることを抑制できる。そのため、床シート4を長い期間にわたって良好な状態で使用することが可能となる。
【0069】
なお、図1及び図2では水栓やシャワーを備えた浴室の床を例にしているが、洗面所や脱衣所における、洗面器、鏡、鏡付き台(化粧台、洗面台)などを備えた床についても、同様にして、洗面器、鏡、鏡付き台などが設置された所定箇所の前方の少なくとも一部領域について、両面テープとして内側テープ3を、前記所定箇所の前方向に対して斜めを向くようにして床面12に貼り付けて床シート4を床面12に敷設する。これにより、床シート4が敷設された床面12の洗面器、鏡、鏡付き台などの前方に例えばイスを置き、人がイスに座って所望の物事を行っている際に人が動くことでイスによって床シート4がしごかれたとしても、イスの動く方向(前記前方向と平行な方向ないしはこれと直交する方向)が内側テープ3の長手方向と平行な方向又は直交する方向と一致しない。そのため、イスの動きによる外力が床シート4のイスの置かれた箇所に作用してもこの外力を床シート4のイスが置かれた箇所に集中させずに分散させることができる。よって、床シート4がイスから局所的な力を受けることを緩和できるので、床シート4がイスによってしごかれても床シート4が既存の床面12から部分的に浮き上がることを抑制できる。そのため、床シート4を長い期間にわたって良好な状態で使用することが可能となる。加えて、両面テープ2,3を適度な間隔をあけて床面12に設けており、数多くの両面テープを密に床面12に設けていないので、床シート4を張り替える必要が生じた場合に、床シート4の引き剥がしが容易である。
【0070】
また本実施形態の床の施工方法及び床構造1によれば、図1及び図2に示すように、床面12の外周縁に沿って両面テープ2を床面12に貼り付けて床シート4を床面12に敷設している。これにより、床シート4の外周縁部を床面12に密着させることができるので、床面12と床面12に敷設した床シート4との間に水などが浸入することを抑制できる。
【0071】
また本実施形態の床の施工方法及び床構造1によれば、図1及び図2に示すように、外周テープ2A~2Dは隣り合う両面テープの端部同士が重ね合わされていない、そのため、外周テープ2A~2Dの厚みが部分的に増加しないので、外周テープ2の貼付により生じる床面12の段差が床シート4の表面側に伝わり難くなり、床シート4の足触りに違和感が生じることを抑制できる。
【0072】
また本実施形態の床の施工方法及び床構造1によれば、図1及び図2に示すように、排水口13との境界において外周テープ2E,2Fが隙間S2が存在するように床面12に貼り付けられている。加えて、内側テープ3はその両端部が外周テープ2A~2Fとの間に隙間S3が存在するように床面12に貼り付けられている。これにより、仮に床面12と床面12に敷設した床シート4との間に水などが浸入した場合に、浸入した水は、床面12を伝いながら隙間S3や隙間S2を通り抜けて排水口13に導かれる。よって、浸入した水を良好に排水口13に流入させて排水することができる。また、隙間S3は、通常はパテで封止しておき、水が内部に侵入した場合に針などで細孔を開口して、水を排出させるようにすることが望ましい。そうすることによって、通常の使用時に隙間S3から水が内部に流入することを防止することができる。
【0073】
また本実施形態の床の施工方法及び床構造1によれば、図1及び図2に示すように、内側テープ3は一方の端部が他方の端部よりも排水口13に近付くように斜めを向いた状態で床面12に貼り付けられている。これにより、仮に床面12と床面12に敷設した床シート4との間に水などが浸入した場合に、浸入した水は排水口13にスムーズに導かれる。よって、浸入した水の排水を促すことができる。
【0074】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、上記実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないため、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変形が可能である。
【0075】
例えば一変形例として、内側テープ3は必ずしも排水口13の方を向いて延びている必要はなく、図6に示すように、排水口13の方を向いて延びていなくてもよい。この変形例においても、外周テープ2E,2Fが排水口13との境界で隙間S2が存在するように床面12に貼り付けられるとともに、内側テープ3がその両端部と外周テープ2A~2Fとの間に隙間S3が存在するように床面12に貼り付けられることにより、床面12と床面12に敷設した床シート4との間に水などが浸入しても、浸入した水を床面12を伝わせながら隙間S3や隙間S2を通過させて排水口13に導くことができる。よって、浸入した水を良好に排水口13に流入させて排水することができる。
【0076】
また他の変形例として、内側テープ3は必ずしも全部が同じ方向を向いて延びている必要はなく、図7及び図8に示すように、一部が同じ方向を向いて互いに平行に延びているとともに残部が異なる同じ方向を向いて互いに平行に延びていてもよい。図5及び図6の例では、排水口13が床面12の側縁12Aの角ではなく中央に位置しており、床面12の縦方向の奥側と手前側とで内側テープ3の向きが異なっている。図7の例では内側テープ3は排水口13の方を向いて延びており、図8の例では内側テープ3は排水口13の方を向いて延びていない。いずれの変形例においても、排水口13との境界の外周テープ2E~2Gが排水口13との境界で隙間が存在するように床面12に貼り付けられるとともに、内側テープ3がその両端部と外周テープ2A~2Gとの間に隙間が存在するように床面12に貼り付けられることにより、床面12と床面12に敷設した床シート4との間に水などが浸入しても、浸入した水を床面12を伝わせながら隙間S3や隙間S2を通過させて排水口13に導くことができる。なお、図7の例のほうが、浸入した水をスムーズに排水口13に導くことができる。
【0077】
なお、図示は省略するが、内側テープ3は全部が異なる方向を向いて延びていてもよく、例えば床面12の中心から外周縁に向けて放射状に延びていてもよく、排水口13から床面12に外周縁に向けて放射状に延びていてもよい。
【0078】
また他の変形例として、洗面所や脱衣所などの床のように、床面12は排水口13が隣接していなくてもよく、その場合には、内側テープ3の両端部と外周テープ2A~2Dとの間に必ずしも隙間S3をあける必要はない。ただし、内側テープ3の両端部を外周テープ2A~2Dに重ね合わせるよりも、内側テープ3の両端部を外周テープ2A~2Dに重ね合わせずに隙間S3をあけるほうが好ましい。
【0079】
また他の変形例として、両面テープ2,3に加えて接着剤を床面12の両面テープ2,3のない箇所に追加的に塗布して、床面12に床シート4を敷設してもよく、接着剤を用いた床の施工方法及び床構造も本発明の範囲に入るものとする。
【実施例
【0080】
以下、本発明の実施例を示す。ただし、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0081】
両面テープを用いて床シートを施工した床面に対して、床シートがイス、例えばバスチェアの動きでしごかれることにより、床シートが床面から浮き上がるかどうかを確認する試験を行った。
【0082】
床シートには、2種類の塩化ビニル樹脂製の浴室用床シート(東リ株式会社製のバスナフローレ(登録商標)及びバスナリアルデザイン(登録商標))を用いた。大きさが450mm×450mmの表面が平坦なスレートを下地とし、下地上に複数の両面テープ(東リ株式会社製の「バスナテープ」)により床シートを貼着した。複数の両面テープは、下地の縦方向に対し平行な方向、垂直な方向、斜めの方向に沿って延びるように下地の表面に貼り付け、隣り合う両面テープの間隔(上記実施形態の隣り合う内側テープ3の間隔Dに相当)を100mm、150mm、200mm、250mm、300mmとした。
【0083】
バスチェアの動きとしては、側面視で横100mm、縦5mm、厚み5mmのゴム片を金属製の板状体に取り付けたゴム取付治具を用いて再現した。ゴム片は、バスチェアの脚部の下端に取り付けられているものであり、滑り止めの役割を果たす。このゴム取付治具のゴム片を床シートに接触させた状態で、25kgの荷重をかけながら90mm/sの速度で床シート上をゴム片の厚み方向に450mm幅で往復移動させ、ゴム取付治具を3往復させた後の床シートの浮き上がりの有無を目視で観察した。その結果を表1に示す。表中の「テープの貼り付け方向」は、平面視での、ゴム取付治具の往復移動の方向に対するテープの貼り付け方向を意味する。表中の○、△、×は、次のことを表す。なお、上述の条件は、市販されている一般的なバスチェアに体重が80kgの人が座った場合の条件にほぼ等しい。
【0084】
○:床シートに浮き上がりが確認されなかった。△:床シートに僅かな浮き上がりが確認された。×:床シートに明らかな浮き上がりが確認された。
【0085】
【表1】
【0086】
表1によれば、両面テープ(上記実施形態の内側テープ3)を床面に斜めに貼り付けて床シートを貼着することにより、バスチェアなどの動きに起因した外力を床シートが受けた場合に、床シートが床面から浮き上がることを効果的に抑制できることが分かる。また、斜めに貼り付けられた両面テープの隣り合う間隔が250mm以下であることにより、床シートの床面からの浮き上がりが生じ難いことが分かる。
【0087】
なお、両面テープを床面に斜めに貼り付けた例について、両面テープの斜め貼りにより生じる床面の段差が床シートの表面側に現れるかどうかを目視で観察したが、テープ間隔100mmから300mmのいずれについても床シートの表面にテープによる段差は確認されず、仕上がりが綺麗であった。さらに、床シートを床面から人力で剥がしてみたところ、材料破壊などが生じることなく、問題なく床シートを床面から引き剥がせることが確認された。
【符号の説明】
【0088】
1 床構造
2,2A~2G 外周テープ(両面テープ)
3 内側テープ(両面テープ)
4 床シート
12 床面
13 排水口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9