(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】モータ駆動制御装置およびファンユニット
(51)【国際特許分類】
H02P 25/22 20060101AFI20240219BHJP
【FI】
H02P25/22
(21)【出願番号】P 2020143925
(22)【出願日】2020-08-27
【審査請求日】2023-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】民辻 敏泰
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-039256(JP,A)
【文献】特開2017-169254(JP,A)
【文献】特開平08-066081(JP,A)
【文献】特開平07-322682(JP,A)
【文献】特開2020-054187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 4/00
H02P 21/00-25/03
H02P 25/04
H02P 25/08-31/00
H02P 6/00-6/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1系統のコイルと第2系統のコイルとを有するモータを駆動するモータ駆動制御装置であって、
電源電圧に基づいて、前記第1系統のコイルに通電する制御を行う第1モータ駆動回路と、
前記電源電圧に基づいて、前記第2系統のコイルに通電する制御を行う第2モータ駆動回路と、
前記電源電圧の大きさに応じて変化する電源相応電圧を生成する電圧生成回路と、
前記第1系統のコイルの中間点の電圧に基づく第1中間電圧と前記電源相応電圧の何れか大きい方の電圧に基づいて第1検出電圧を生成して出力する第1検出電圧出力回路と、
前記第2系統のコイルの中間点の電圧に基づく第2中間電圧と前記電源相応電圧の何れか大きい方の電圧に基づいて第2検出電圧を生成して出力する第2検出電圧出力回路と、
前記第1モータ駆動回路の動作と前記第2モータ駆動回路の動作を制御するとともに、前記第1検出電圧と前記第2検出電圧に基づいて前記モータの動作状態を判定する駆動制御回路と、を備える
モータ駆動制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のモータ駆動制御装置において、
前記電圧生成回路は、前記電源電圧が所定の大きさを超えた場合に、前記電源電圧を降圧した電圧を前記電源相応電圧として出力する電圧降下素子を含む
モータ駆動制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載のモータ駆動制御装置において、
前記第1検出電圧出力回路は、入力された電流に応じて前記第1検出電圧を生成する第1負荷と、前記第1系統のコイルの中間点側から前記第1負荷に電流を流す第1整流素子と、前記電圧降下素子側から前記第1負荷に電流を流す第2整流素子と、を有し、
前記第2検出電圧出力回路は、入力された電流に応じて前記第2検出電圧を生成する第2負荷と、前記第2系統のコイルの中間点側から前記第2負荷に電流を流す第3整流素子と、前記電圧降下素子側から前記第2負荷に電流を流す第4整流素子と、を有する
モータ駆動制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載のモータ駆動制御装置において、
前記電圧降下素子はツェナーダイオードであり、前記第1乃至第4整流素子はダイオードであって、
前記第1負荷の一端は、前記駆動制御回路に接続され、前記第1負荷の他端は、基準電位に接続され、
前記第2負荷の一端は、前記駆動制御回路に接続され、前記第2負荷の他端は、基準電位に接続され、
前記電圧降下素子のカソードには前記電源電圧が印加され、前記電圧降下素子のアノードは前記第2整流素子のアノードと前記第4整流素子のアノードに共通に接続され、
前記第2整流素子のカソードは、前記第1負荷の前記一端に接続され、
前記第1整流素子のアノードには前記第1中間電圧が印加され、前記第1整流素子のカソードは、前記第1負荷の前記一端に接続され、
前記第4整流素子のカソードは、前記第2負荷の前記一端に接続され、
前記第3整流素子のアノードには前記第2中間電圧が印加され、前記第3整流素子のカソードは、前記第2負荷の前記一端に接続されている
モータ駆動制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載のモータ駆動制御装置において、
前記電源電圧が供給される電源端子と、
前記第1モータ駆動回路および前記第2モータ駆動回路に電力を供給するための電源ラインと、
前記電源端子と前記電源ラインとの間に接続された保護用トランジスタとを更に有し、
前記電圧降下素子のアノードは、前記保護用トランジスタの制御電極に接続され、前記電圧降下素子のカソードは、前記電源端子側に接続されている
モータ駆動制御装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載のモータ駆動制御装置において、
前記駆動制御回路は、前記第1検出電圧と前記第2検出電圧の少なくとも一方が所定の閾値電圧を超えている場合に、前記モータが過電圧状態であると判定する
モータ駆動制御装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載のモータ駆動制御装置において、
前記駆動制御回路は、前記第1検出電圧と前記第2検出電圧との差が所定の大きさを超えている場合に、前記第1系統のコイル及び前記第2系統のコイルのいずれか一方が開放状態であると判定する
モータ駆動制御装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項に記載のモータ駆動制御装置と、
前記モータと、
前記モータの回転力によって回転するインペラと、を備える
ファンユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ駆動制御装置およびファンユニットに関し、例えば、2系統の駆動回路を有するモータ駆動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、サーバ等の電子機器の内部を冷却するためのファン(以下、「ファンモータ」とも称する。)において、モータを駆動するための駆動回路の故障によってモータを所定の方向に回転させる(正回転させる)ことができなくなった場合に、外力が作用してモータが正回転とは反対の方向に強制的に回転する(逆回転する)おそれがある。
【0003】
例えば、ハウジング内部に複数のファンモータが設けられたサーバにおいて、一つのファンモータが故障した場合に、他のファンモータの回転によって発生した風が故障したファンモータに流入すると、その故障したファンモータが逆回転する可能性がある。サーバ内の1つのファンモータが逆回転した場合、サーバの内圧低下により冷却機能が低下し、サーバの動作に悪影響を及ぼすおそれがある。そのため、サーバ等の電子機器に搭載されるファンモータには、正回転を可能な限り継続させることが求められている。
【0004】
上述の課題を解決するために、2系統の駆動回路を備えたモータ駆動制御装置が知られている。例えば、特許文献1には、2系統のコイルを有するモータを駆動するためのモータ駆動制御装置において、モータの各系統のコイルを夫々独立して駆動する2つの駆動回路を設け、2系統の駆動回路(コイル)のうちどちらが故障状態にあるかを検出することが開示されている。このモータ駆動制御装置によれば、一方の駆動回路が故障した場合においても、他方の駆動回路を用いてモータの駆動を継続することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、モータ駆動制御装置の保護機能として、モータに定格を超える電圧が印加される過電圧状態を検出する機能が求められている。上述した特許文献1のモータ駆動制御装置は、2系統の駆動回路(コイル)のどちらが故障状態にあるかを検出する機能を有しているが、モータの過電圧状態を検出する機能は有していない。
【0007】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、2系統の駆動回路を有するモータ駆動制御装置において、モータの過電圧状態を検出できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の代表的な実施の形態に係るモータ駆動制御装置は、第1系統のコイルと第2系統のコイルとを有するモータを駆動するモータ駆動制御装置であって、電源電圧に基づいて、前記第1系統のコイルに通電する制御を行う第1モータ駆動回路と、前記電源電圧に基づいて、前記第2系統のコイルに通電する制御を行う第2モータ駆動回路と、前記電源電圧の大きさに応じて変化する電源相応電圧を生成する電圧生成回路と、前記第1系統のコイルの中間点の電圧に基づく第1中間電圧と前記電源相応電圧の何れか大きい方の電圧に基づいて第1検出電圧を生成して出力する第1検出電圧出力回路と、前記第2系統のコイルの中間点の電圧に基づく第2中間電圧と前記電源相応電圧の何れか大きい方の電圧に基づいて第2検出電圧を生成して出力する第2検出電圧出力回路と、前記第1モータ駆動回路の動作と前記第2モータ駆動回路の動作を制御するとともに、前記第1検出電圧と前記第2検出電圧に基づいて前記モータの動作状態を判定する駆動制御回路と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る2系統の駆動回路を有するモータ駆動制御装置によれば、モータの過電圧状態を検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るモータ駆動制御システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】電圧生成回路と検出電圧出力回路の動作を説明するための図である。
【
図3】モータのコイルの中間点の電圧(絶対値)の波形例を示す図である。
【
図4】本実施の形態に係るモータ駆動制御装置によるモータの異常判定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】本実施の形態に係るモータ駆動制御装置1と比較例のモータ駆動制御装置1Xにおける電源電圧Vdcに対する検出電圧Vs1,Vs2の特性の一例を示す図である。
【
図6】本実施の形態に係るモータ駆動制御装置1の比較例としてのモータ駆動制御装置1Xの構成を示す図である。
【
図7】本発明の別の実施の形態に係るモータ駆動制御システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
【0012】
〔1〕本発明の代表的な実施の形態に係る、第1系統のコイル(6_1)と第2系統のコイル(6_2)とを有するモータ(3)を駆動するモータ駆動制御装置(1)は、電源電圧(Vdc)に基づいて前記第1系統のコイルに通電する制御を行う第1モータ駆動回路(10_1)と、前記電源電圧に基づいて前記第2系統のコイルに通電する制御を行う第2モータ駆動回路(10_2)と、前記電源電圧(Vdc)の大きさに応じて変化する電源相応電圧(Vc)を生成する電圧生成回路(31)と、前記第1系統のコイルの中間点の電圧に基づく第1中間電圧(Va)と前記電源相応電圧(Vc)の何れか大きい方の電圧に基づいて第1検出電圧(Vs1)を生成して出力する第1検出電圧出力回路(40_1)と、前記第2系統のコイルの中間点の電圧に基づく第2中間電圧(Vb)と前記電源相応電圧(Vc)の何れか大きい方の電圧に基づいて第2検出電圧(Vs2)を生成して出力する第2検出電圧出力回路(40_2)と、前記第1モータ駆動回路の動作と前記第2モータ駆動回路の動作を制御するとともに、前記第1検出電圧と前記第2検出電圧に基づいて前記モータの動作状態を判定する駆動制御回路(20)と、を備えることを特徴とする。
【0013】
〔2〕上記〔1〕に記載のモータ駆動制御装置において、前記電圧生成回路は、前記電源電圧が所定の大きさを超えた場合に、前記電源電圧を降圧した電圧を前記電源相応電圧として出力する電圧降下素子(ZD)を含んでもよい。
【0014】
〔3〕上記〔2〕に記載のモータ駆動制御装置において、第1検出電圧出力回路は、入力された電流に応じて前記第1検出電圧を生成する第1負荷(42_1)と、前記第1系統のコイルの中間点側から前記第1負荷に電流を流す第1整流素子(D1)と、前記電圧降下素子側から前記第1負荷に電流を流す第2整流素子(D2)と、を有し、第2検出電圧出力回路は、入力された電流に応じて前記第2検出電圧を生成する第2負荷(42_2)と、前記第2系統のコイルの中間点側から前記第2負荷に電流を流す第3整流素子(D3)と、前記電圧降下素子側から前記第2負荷に電流を流す第4整流素子(D4)と、を有してもよい。
【0015】
〔4〕上記〔3〕に記載のモータ駆動制御装置において、前記電圧降下素子はツェナーダイオードであり、前記第1乃至第4整流素子はダイオードであって、前記第1負荷(42_1)の一端は前記駆動制御回路に接続され、前記第1負荷の他端は基準電位(グラウンド電位)に接続され、前記第2負荷(42_2)の一端は前記駆動制御回路に接続され、前記第2負荷の他端は基準電位(グラウンド電位)に接続され、前記電圧降下素子(ZD)のカソードには前記電源電圧が印加され、前記電圧降下素子のアノードは前記第2整流素子(D2)のアノードと前記第4整流素子(D4)のアノードに共通に接続され、前記第2整流素子(D2)のカソードは、前記第1負荷の前記一端に接続され、前記第1整流素子(D1)のアノードには前記第1中間電圧(Va)が印加され、前記第1整流素子のカソードは、前記第1負荷の前記一端に接続され、前記第4整流素子(D4)のカソードは、前記第2負荷の前記一端に接続され、前記第3整流素子(D3)のアノードには前記第2中間電圧(Vb)が印加され、前記第3整流素子のカソードは、前記第2負荷の前記一端に接続されていてもよい。
【0016】
〔5〕上記〔4〕に記載のモータ駆動制御装置において、前記電源電圧(Vdc)が供給される電源端子(P1)と、前記第1モータ駆動回路および前記第2モータ駆動回路に電力を供給するための電源ライン(Lp)と、前記電源端子と前記電源ラインとの間に接続された保護用トランジスタ(Qa,Qb)とを更に有し、前記電圧降下素子(ZD)のアノードは前記保護用トランジスタの制御電極に接続され、前記電圧降下素子のカソードは前記電源端子側に接続されていてもよい。
【0017】
〔6〕上記〔1〕乃至〔5〕の何れか一項に記載のモータ駆動制御装置において、前記駆動制御回路(20)は、前記第1検出電圧(Vs1)と前記第2検出電圧(Vs2)の少なくとも一方が閾値電圧(Vth)を超えている場合に、前記モータ(3)が過電圧状態であると判定してもよい。
【0018】
〔7〕上記〔1〕乃至〔6〕の何れか一項に記載のモータ駆動制御装置において、前記駆動制御回路は、前記第1検出電圧と前記第2検出電圧との差が所定の大きさ(ΔVth)を超えている場合に、前記第1系統のコイル及び前記第2系統のコイルのいずれか一方が開放状態であると判定してもよい。
【0019】
〔8〕本発明の代表的な実施の形態に係るファンユニット(101)は、上記〔1〕乃至〔7〕の何れか一項に記載のモータ駆動制御装置(1)と、前記モータ(3)と、前記モータの回転力によって回転するインペラ(4)とを備えることを特徴とする。
【0020】
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。
【0021】
図1は、本発明の一実施の形態に係るモータ駆動制御システムの構成を示すブロック図である。
図1に示されるモータ駆動制御システム100は、駆動対象の負荷としてのモータ3と、モータ3を駆動するモータ駆動制御装置1と、モータ駆動制御装置1を制御する上位装置2とを備えている。
【0022】
モータ駆動制御システム100は、例えば、電気機器システムに用いられ、複数のファンの動作を1つの制御装置によって制御して、複数の冷却対象のそれぞれに対して送風するファンシステムを構成している。本実施の形態に係るモータ駆動制御システム100は、例えば、サーバ内の閉ざされた空間に配置されて、当該サーバを構成する各種の電子部品等を冷却する冷却システムを構成しているものとする。
【0023】
例えば、モータ3の出力軸(図示せず)にはインペラ(羽根車)4が接続されており、モータ3とインペラ4とは、モータ3の回転力によってインペラ4を回転させて風を発生させる一つのファン(ファンモータ)5を構成している。
【0024】
ファン5は、機器の内部で発生する熱を外部へ排出し、その機器の内部を冷却する冷却装置の一つとして利用可能であり、例えば、サーバ等の情報処理装置の他に、オイルミスト、切削屑、煙、埃などが発生する環境下で使用される工作機械等に搭載可能である。ファン5は、例えば、軸流ファンである。
【0025】
ファン5とモータ駆動制御装置1とは、一つのファンユニット101を構成している。なお、
図1には、一例として、一つのファンユニット101のみが図示されているが、モータ駆動制御システム100が備えるファンユニット101の個数は特に制限されない。
【0026】
上位装置2(ホストデバイス)は、例えば、ファン5を搭載したサーバ内のCPU等のプログラム処理装置である。上位装置2は、モータ駆動制御装置1に駆動指令信号Scを出力することにより、モータ駆動制御装置1を介してモータ3の回転を制御するとともに、モータ駆動制御装置1からモータ3(ファン5)の駆動状態に関するモータ駆動情報信号Soを取得してモータ3(ファン5)の動作を監視する。
【0027】
駆動指令信号Scは、モータ3の駆動に関する指令を含む信号である。駆動指令信号Scは、例えば、モータ3の目標回転速度(目標回転数)を指示する指令を含む。例えば、駆動指令信号Scは、モータ3の目標回転速度に対応したデューティ比のPWM(パルス幅変調)信号である。なお、駆動指令信号Scは、目標回転速度に対応する周波数を有するPFM信号やモータのトルクの目標値を示すトルク指令信号等、他の形式の信号であってもよい。
【0028】
モータ3は、例えば、ブラシレスDCモータである。例えば、モータ3は、ティース(図示せず)に巻回された2系統のコイル(第1,第2系統のコイルの一例)6_1,6_2を備えた単相のブラシレスモータである。各コイル6_1,6_2の周辺には、位置検出器7_1,7_2が設けられている。
【0029】
位置検出器7_1,7_2は、モータ3のロータの位置に応じて位置検出信号を出力する装置である。位置検出器7_1,7_2は、例えば、ホール素子を含んで構成されている。ホール素子は、位置検出信号として、例えば、正の極性を有するホール信号を出力する。
【0030】
位置検出器7_1は、コイル(第1系統のコイル)6_1に対応する位置に配置され、後述するモータ駆動回路(第1モータ駆動回路の一例)10_1の制御回路11_1に位置検出信号を出力する。位置検出器7_2は、コイル(第2系統のコイルの一例)6_2に対応する位置に配置され、後述するモータ駆動回路(第2モータ駆動回路の一例)10_2の制御回路11_2に位置検出信号を出力する。位置検出器7_1と位置検出器7_2は、例えば、相対位置が電気角でπ/2(90度)になる位置にそれぞれ配置されている。
【0031】
モータ駆動制御装置1は、モータ3の回転を制御するための装置である。モータ駆動制御装置1は、モータ3を構成する各単相のコイル6_1,6_2に周期的に駆動電流を流すことで、モータ3を回転させる。
【0032】
モータ駆動制御装置1には、外部から直流の電源電圧Vdcが供給され、電源電圧Vdcによってモータ駆動制御装置1内の回路が動作可能に構成されている。モータ駆動制御装置1は、上位装置2との間でデータの送受信(例えば、シリアル通信により)を行うことにより、上位装置2から各種指令を受信するとともに、受信した指令に対する応答等を上位装置2に送信する。
【0033】
モータ駆動制御装置1は、上位装置2から出力された駆動指令信号Scにしたがってモータ3を駆動する。また、モータ駆動制御装置1は、上位装置2に対して、モータ3の状態に関する情報を出力する。例えば、後述するように、モータ駆動制御装置1は、モータ3の実回転数に応じた信号や後述するモータの異常状態を示す信号をモータ駆動情報信号Soとして上位装置2に対して出力する。これにより、上位装置2は、モータ3の回転状態やモータ3の異常の有無等を知ることができる。
【0034】
具体的に、モータ駆動制御装置1は、モータ3の2系統のコイル6_1,6_2に夫々対応して設けられたモータ駆動回路10_1,10_2と、モータ駆動回路10_1,10_2の動作を制御する駆動制御回路20と、保護回路30と、電圧生成回路31と、モータの状態を監視するための電圧を出力する検出電圧出力回路(第1,第2検出電圧出力回路の一例)40_1,40_2とを備えている。
【0035】
モータ駆動制御装置1には、モータ3およびモータ駆動制御装置1を駆動するための主電源としての電源電圧Vdc(直流電圧)が供給される。電源電圧Vdcは、保護回路30を経由して電源ラインLpに供給される。電源ラインLpは、モータ駆動回路10_1,10_2を介してモータ3を駆動するための電力を供給する電力供給経路であり、例えば配線である。
【0036】
駆動制御回路20は、モータ駆動制御装置1の動作を統括的に制御する回路である。本実施の形態において、駆動制御回路20は、例えば、CPU等のプロセッサと、RAM,ROM、フラッシュメモリ等の各種記憶装置と、カウンタ(タイマ)、A/D変換回路、D/A変換回路、クロック発生回路、および入出力インターフェース回路等の周辺回路とがバスや専用線を介して互いに接続された構成を有するプログラム処理装置であり、例えば、マイクロコントローラ(MCU:Micro Controller Unit)である。
【0037】
本実施の形態において、駆動制御回路20は、一つの半導体装置(IC:Integrated Circuit)としてパッケージ化されているが、これに限られるものではない。
【0038】
駆動制御回路20は、主たる機能として、モータ駆動回路10_1,10_2の動作を制御する駆動制御機能と、モータ3等の異常の有無を判定する異常判定機能とを有している。具体的に、駆動制御回路20は、上記機能の実現するための機能部として、駆動制御部21および異常判定部22を有している。駆動制御部21および異常判定部22は、例えば、駆動制御回路20を構成するプログラム処理装置において、プロセッサが、メモリに記憶されたプログラムに従って各種演算処理を実行するとともに、カウンタやA/D変換回路等の周辺回路を制御することによって実現される。
【0039】
異常判定部22は、モータ3(ファン5)の動作状態を判定し、判定結果を出力する。異常判定部22は、検出電圧出力回路40_1,40_2によって生成された検出電圧(第1,第2検出電圧の一例)Vs1,Vs2に基づいて、ファン5の異常の有無を判定し、判定結果に基づいて、ファン5の状態を示すモータ駆動情報信号Soを上位装置2に対して出力する。なお、異常判定部22の詳細については後述する。
【0040】
駆動制御部21は、上位装置2からの駆動指令信号Scに基づいて、モータ3の駆動を指示する第1駆動指令信号Sc1および第2駆動指令信号Sc2を生成し、各モータ駆動回路10_1,10_2にそれぞれ供給する。なお、駆動制御部21は、1つの駆動指令信号を出力し、その駆動指令信号を分岐した2つの線路を介して各モータ駆動回路10_1,10_2にそれぞれ供給するようにしてもよい。
【0041】
ここで、第1駆動指令信号Sc1および第2駆動指令信号Sc2は、上述した駆動指令信号Scと同様に、モータ3の目標回転速度(目標回転数)を指示する指令を含み、例えば、モータ3の目標回転速度に対応したデューティ比のPWM信号である。なお、第1駆動指令信号Sc1および第2駆動指令信号Sc2は、例えば、目標回転速度に対応する周波数のPFM信号など、他の形式の信号であってもよい。
【0042】
モータ駆動回路10_1,10_2は、第1,第2駆動指令信号Sc1,Sc2に基づいてモータ3に通電する制御を行う回路である。モータ駆動回路10_1,10_2は、電源ラインLpから電力(電源電圧Vdc)が供給されることにより、動作可能に構成されている。モータ駆動回路10_1およびモータ駆動回路10_2は、例えば、互いに同一の回路構成を有している。
【0043】
モータ駆動回路10_1は、制御回路11_1と、制御回路11_1による制御に基づいてコイル6_1に通電するインバータ回路(通電回路)12_1を有している。モータ駆動回路10_2は、制御回路11_2と、制御回路11_2による制御に基づいてコイル6_2に通電するインバータ回路(通電回路)12_2とを有している。
【0044】
制御回路11_1と制御回路11_2は、1つの集積回路(IC)によってそれぞれ実現されている。本実施の形態において、制御回路11_1および制御回路11_2は、例えば、ハードウェアとして同一の回路構成を有する、市販のモータ駆動制御用の汎用ICを用いて構成されている。なお、制御回路11_1と制御回路11_2は、汎用ICによる構成に限定されず、例えば、マイクロコントローラ(MCU)で構成してもよい。また、制御回路11_1,11_2は、対応するインバータ回路12_1,12_2を含んだ一つのICとして実現されていてもよい。
【0045】
モータ駆動回路10_1,10_2は、一端が電源ラインLpに接続されたヒューズ19をそれぞれ有している。各モータ駆動回路10_1,10_2を構成するインバータ回路12_1,12_2および制御回路11_1,11_2には、電源ラインLpからヒューズ19を介して電源電圧Vdcが供給される。
【0046】
インバータ回路12_1は、制御回路11_1から出力された駆動制御信号Sd1に基づいて、出力端子16_1,17_1に接続されたモータ3のコイル6_1に通電する。インバータ回路12_2は、インバータ回路12_1と同様に、制御回路11_2から出力された駆動制御信号Sd2に基づいて、出力端子16_2,17_2に接続されたモータ3のコイル6_2の通電を制御する。駆動制御信号Sd1,Sd2は、例えば、PWM(パルス幅変調)信号である。
【0047】
インバータ回路12_1,12_2は、例えば、複数のスイッチ素子としてのトランジスタを含むHブリッジ回路である。具体的に、インバータ回路12_1は、電源ラインLpとグラウンド電位(基準電位)との間に電流検出用抵抗Rs1を介して直列に接続された2つの駆動用トランジスタQ1,Q2から成るスイッチングレグと、駆動用トランジスタQ3,Q4から成るスイッチングレグとを有している。また、インバータ回路12_2は、電源ラインLpとグラウンド電位(基準電位)との間に電流検出用抵抗 Rs2を介して直列に接続された2つの駆動用トランジスタQ5,Q6から成るスイッチングレグと、駆動用トランジスタQ7,Q8から成るスイッチングレグとを有している。
【0048】
インバータ回路12_1の駆動用トランジスタQ1と駆動用トランジスタQ2とが共通に接続された出力端子16_1は、第1系統のコイル6_1の一端に接続され、インバータ回路12_1の駆動用トランジスタQ3と駆動用トランジスタQ4とが共通に接続された出力端子17_1は、第1系統のコイル6_1の他端に接続されている。インバータ回路12_2の駆動用トランジスタQ5と駆動用トランジスタQ6とが共通に接続された出力端子16_2は、第2系統のコイル6_2の一端に接続され、インバータ回路12_2の駆動用トランジスタQ7と駆動用トランジスタQ8とが共通に接続された出力端子17_2は、第2系統のコイル6_2の他端に接続されている。
【0049】
インバータ回路12_1,12_2を構成する各駆動用トランジスタQ1~Q4,Q5~Q8は、制御回路11_1,11_2からそれぞれ出力される駆動制御信号(PWM信号)Sd1,Sd2によって、オン・オフが制御される。これにより、インバータ回路12_1の出力端子16_1,17_1に接続されたコイル6_1の通電と、インバータ回路12_2の出力端子16_2,17_2に接続されたコイル6_2の通電が、それぞれ制御される。
【0050】
制御回路11_1は、駆動制御回路20から供給される第1駆動指令信号Sc1と、位置検出器7_1から出力された位置検出信号とに基づいて、駆動制御信号Sd1を生成し、インバータ回路12_1を制御する。制御回路11_2は、駆動制御回路20から供給される第2駆動指令信号Sc2と、位置検出器7_2から出力された位置検出信号とに基づいて、駆動制御信号Sd2を生成し、インバータ回路12_2を制御する。
【0051】
例えば、制御回路11_1は、位置検出器7_1からの位置検出信号に基づいてモータ3の回転速度(実回転数)を検出し、モータ3の回転速度が第1駆動指令信号Sc1で指定された目標回転速度と一致するようにデューティ比を調整したPWM信号を生成し、駆動制御信号Sd1としてインバータ回路12_1に供給することにより、インバータ回路12_1の各スイッチング素子のオン、オフ動作を制御する。同様に、制御回路11_2は、位置検出器7_2からの位置検出信号に基づくモータの回転速度が第2駆動指令信号Sc2で指定された目標回転速度と一致するようにPWM信号を生成し、駆動制御信号Sd2としてインバータ回路12_2に供給する。
【0052】
インバータ回路12_1,12_2は、制御回路11_1,11_2から出力された駆動制御信号Sd1,Sd2に基づいて各駆動用トランジスタQ1~Q4,Q5~Q8をスイッチングすることにより、位置検出信号に応じたタイミングでモータ3のコイル6_1,6_2に流れる電流の向きが切り替わるように、コイル6_1,6_2に通電する。
【0053】
なお、制御回路11_1,11_2は、それぞれ、実回転速度に関わらず、第1,第2駆動指令信号Sc1,Sc2で指定された目標回転速度に対応したデューティ比のPWM信号を生成し、駆動制御信号Sd1,Sd2としてインバータ回路12_1,12_2に供給するようにしてもよい(フィードフォワード制御)。
【0054】
更に、制御回路11_1は、位置検出器7_1からの位置検出信号に基づいて、モータ3の実際の回転速度(実回転速度)に対応する周波数を有する回転速度信号である第1FG(Frequency Generator)信号(以下、「信号FG1」と称する。)を生成して出力する。制御回路11_2は、位置検出器7_2からの位置検出信号に基づいて、モータ3の実回転数に対応する第2FG信号(以下、「信号FG2」と称する。)を生成して出力する。
【0055】
信号FG1,FG2は、例えば、所定のデューティ比を有する矩形波状の信号であり、位相が互いに相違している。例えば、信号FG1,FG2は、モータ3の実回転速度に対応する周波数を有し、回転速度が一定の場合にデューティ比が50%になるように生成される2値信号(デジタル信号)である。
【0056】
保護回路30は、電源電圧Vdcを供給する外部電源からモータ駆動制御装置1の内部回路に異常電流が流れることによる電子部品の故障や不具合を防止するための回路である。保護回路30は、例えば、電源逆接続保護機能と突入電流抑制機能を有している。
【0057】
具体的に、保護回路30は、外部から電源電圧Vdcが供給される電源端子P1と電源ラインLpとの間に接続された保護用トランジスタQa,Qbと電圧降下素子ZDとを有する。保護回路30は、更に、抵抗R1およびキャパシタC1を有していてもよい。
【0058】
保護用トランジスタQaは、電源逆接続保護機能を実現するための素子であり、保護用トランジスタQbは、突入電流抑制機能を実現するための素子である。本実施の形態では、保護用トランジスタQa,QbがPチャネル型のMOSFETである場合を例示するが、Nチャネル型のMOSFETであってもよい。
【0059】
具体的に、保護用トランジスタQaの第1主電極としてのソース電極は、保護用トランジスタQbの第1主電極としてのソース電極に接続され、保護用トランジスタQaの第2主電極としてのドレイン電極は、外部電源から電源電圧Vdcが供給される電源端子P1に接続されている。保護用トランジスタQbの第2主電極としてのドレイン電極は、電源ラインLpに接続されている。保護用トランジスタQa,Qbの制御電極としてのゲート電極は、電圧降下素子ZDの一端に接続されている。
【0060】
キャパシタC1は、保護用トランジスタQa,Qbのゲート電圧の変化を緩やかにするための素子であり、保護用トランジスタQa,Qbのゲート電極とソース電極との間に接続されている。
【0061】
電圧降下素子ZDは、電源電圧Vdcが所定の大きさを超えた場合に、電源電圧Vdcを降圧した電圧を生成する。電圧降下素子ZDは、例えば、ツェナーダイオードである。なお、電圧降下素子ZDは、抵抗であってもよい。本実施の形態では、電圧降下素子ZDがツェナーダイオードであるとし、以下の説明では、「電圧降下素子ZD」を「ツェナーダイオードZD」とも称する。
【0062】
ツェナーダイオードZDは、保護用トランジスタQa,Qbのゲート・ソース間電圧が保護用トランジスタQa,Qbの耐圧を超えないように制限する保護素子として機能する。ツェナーダイオードZDは、保護用トランジスタQa,Qbのゲート電極とソース電極との間に接続されている。具体的には、ツェナーダイオードZDのアノードは、保護用トランジスタQa,Qbの制御電極としてのゲート電極にそれぞれ接続され、ツェナーダイオードZDのカソードは、電源端子P1側、すなわち保護用トランジスタQa,Qbのソース電極(第1主電極)にそれぞれ接続されている。
【0063】
ツェナーダイオードZDは、上述した保護素子としての機能に加えて、電源電圧Vdcの大きさに応じて変化する電源相応電圧Vcを生成する電圧生成回路31としても機能する。
【0064】
抵抗R1は、ツェナーダイオードZDから後述する検出電圧出力回路(第1,第2検出電圧出力回路の一例)40_1,40_2に流れる電流を制限するための素子である。抵抗R1の一端は、ツェナーダイオードZDのアノードに接続され、抵抗R1の一端は、検出電圧出力回路40_1,40_2にそれぞれ接続されている。なお、電流を制限する必要がない場合には、抵抗R1を設けなくてもよい。
【0065】
電圧生成回路31から出力される電源相応電圧Vcは、抵抗R1での電圧降下を無視した場合、ツェナーダイオードZDのツェナー電圧をVzとすると、Vc≒Vdc-Vzで表される。
【0066】
検出電圧出力回路40_1,40_2は、モータ3の異常状態の検出に用いる検出電圧Vs1,Vs2を出力する回路である。検出電圧出力回路40_1は、コイル(第1系統のコイルの一例)6_1の中間点の電圧に基づく中間電圧(第1中間電圧の一例)Vaと電源相応電圧Vcの何れか大きい方の電圧に応じた検出電圧(第1検出電圧の一例)Vs1を生成する。検出電圧出力回路40_2は、コイル(第2系統のコイルの一例)6_2の中間点の電圧に基づく中間電圧(第2中間電圧の一例)Vbと電源相応電圧Vcの何れか大きい方の電圧に応じた検出電圧(第2検出電圧の一例)Vs2を生成する。
【0067】
検出電圧出力回路40_1は、例えば、分圧回路41_1、負荷(第1負荷の一例)42_1、整流素子(第1整流素子の一例)D1、および整流素子(第2整流素子の一例)D2を含む。分圧回路41_1は、コイル6_1の中間点の電圧を分圧して中間電圧Vaを生成する回路である。分圧回路41_1は、例えば、コイル6_1としての巻き線の中間点と基準電位としてのグラウンド電位との間に直列に接続された2つの抵抗Ra,Rbを含んで構成されている。
【0068】
負荷42_1は、入力された電流に応じた電圧を発生させ、検出電圧Vs1として出力する。負荷42_1の一端は、駆動制御回路20の入力端子に接続され、負荷42_1の他端は、基準電位としてのグラウンド電位に接続されている。例えば、負荷42_1は、抵抗R2とキャパシタC2とが並列に接続された回路である。
【0069】
整流素子D1は、コイル6_1の中間点側から負荷42_1に電流を流す部品である。整流素子D2は、ツェナーダイオードZD側から負荷42_1に電流を流す部品である。整流素子D1および整流素子D2は、例えばダイオードである。以下の説明では、「整流素子D1」および「整流素子D2」をそれぞれ「ダイオードD1」および「ダイオードD2」とも称する。
【0070】
ダイオードD1のアノードには、中間電圧Vaが印加される。具体的には、ダイオードD1のアノードは分圧回路41_1の中間点(抵抗Raと抵抗Rbとの接続ノード)に接続されている。ダイオードD1のカソードは、負荷42_1(抵抗R2,キャパシタC2)の一端に接続されている。
【0071】
ダイオードD2のアノードには、電源相応電圧Vcが印加される。具体的には、ダイオードD2のアノードは、抵抗R1を介してツェナーダイオードZDのアノードに接続されている。ダイオードD2のカソードは、負荷42_1(抵抗R2,キャパシタC2)の一端に接続されている。
【0072】
検出電圧出力回路40_2は、検出電圧出力回路40_1と同様の回路構成を有している。例えば、検出電圧出力回路40_2は、分圧回路41_2、負荷(第2負荷の一例)42_2、整流素子(第3整流素子の一例)D3、および整流素子(第4整流素子の一例)D4を含む。
【0073】
分圧回路41_2は、コイル6_2の中間点の電圧を分圧して中間電圧Vbを生成する回路であり、例えば、コイル6_2としての巻き線の中間点とグラウンド電位との間に直列に接続された2つの抵抗Rc,Rdを含んで構成されている。
【0074】
負荷42_2の一端は、駆動制御回路20の入力端子に接続され、負荷42_2の他端は、グラウンド電位に接続されている。例えば、負荷42_2は、抵抗R3とキャパシタC3とが並列に接続された回路である。
【0075】
整流素子D3は、コイル6_2の中間点側から負荷42_2に電流を流す部品である。整流素子D4は、ツェナーダイオードZD側から負荷42_2に電流を流す部品である。整流素子D3および整流素子D4は、例えばダイオードである。以下の説明では、「整流素子D3」および「整流素子D4」をそれぞれ「ダイオードD3」および「ダイオードD4」とも称する。
【0076】
ダイオードD3のアノードには、中間電圧Vbが印加される。具体的には、ダイオードD3のアノードは分圧回路41_2の中間点(抵抗Rcと抵抗Rdとの接続ノード)に接続されている。ダイオードD3のカソードは、負荷42_2(抵抗R3,キャパシタC3)の一端に接続されている。
【0077】
ダイオードD4のアノードには、電源相応電圧Vcが印加される。具体的には、ダイオードD4のアノードは、抵抗R1を介してツェナーダイオードZDのアノードに接続されている。ダイオードD4のカソードは、負荷42_2(抵抗R3,キャパシタC3)の一端に接続されている。
【0078】
次に、電圧生成回路31と検出電圧出力回路40_1,40_2の動作について、図を用いて説明する。
【0079】
図2は、電圧生成回路31と検出電圧出力回路40_1,40_2の動作を説明するための図である。
図3は、コイル6_1の中間点の電圧(絶対値)の波形例を示す図である。
【0080】
図2には、一例として、コイル6_1側の電圧生成回路31および検出電圧出力回路40_1とそれらの周辺の回路のみが代表的に図示されている。
図3には、モータ3が過電圧状態でない時にモータ駆動制御装置1が動作しているときの、コイル6_1の中間点の電圧(絶対値)波形が示されている。
【0081】
なお、検出電圧出力回路40_1と検出電圧出力回路40_2とは同一の回路構成を有しているため、以下では、代表的に検出電圧出力回路40_1の動作について説明する。
【0082】
上述したように、検出電圧出力回路40_1には、モータ3側から中間電圧Vaが入力され、電源端子P1側から電源相応電圧Vcが入力される。ここでは、先ず、モータ3側から検出電圧出力回路40_1に入力される電圧について説明する。
【0083】
モータ3側から検出電圧出力回路40_1に入力される電圧は、コイル6_1の中間点の電圧VAである。コイル6_1の中間点の電圧VAは、
図3に示すように、コイル6_1の断線の有無に依存して大きさが相違する。例えば、
図3の下段に示されるように、コイル6_1に断線が発生していない正常時には、コイル6_1の中間点の電圧VAの絶対値は「Vdc/2」の大きさとなる。しかしながら、コイル6_1が断線した場合、コイル6_1に電流が流れなくなるため、
図3の上段に示されるように、所定の方向に電圧が印加されているときにのみ、コイル6_1の中間点の電圧VAの絶対値が「Vdc」の大きさになる。なお、コイル6_2の中間点の電圧についても、正常時とコイル6_2の断線時とはそれぞれ
図3に示されるものと同様の態様になる。
【0084】
正常な電圧範囲の電源電圧Vdcがモータ駆動制御装置1に供給され、インバータ回路12_1が正常に動作している場合には、
図2の参照符号P2で示される経路でコイル6_1から負荷42_1に電流が流れ込む。これにより、
図3に示されるコイル6_1の中間点の電圧VAを抵抗Ra,Rbで分圧した中間電圧Vaに応じた検出電圧Vs1が駆動制御回路20に入力される。
【0085】
次に、電源側から検出電圧出力回路40_1に入力される電圧について説明する。
電源側から検出電圧出力回路40_1に入力される電圧は、電源相応電圧Vcである。
例えば、ツェナーダイオードZDの降伏電圧(ツェナー電圧)をVz、ダイオードD1(D2)の順方向電圧Vfとしたとき、電源電圧Vdcが電圧(Vz+Vf)より低い場合には、ツェナーダイオードZDが降伏しないため、電源端子P1側から検出電圧出力回路40_1の負荷42_1に電流は流れない。
【0086】
一方、電源電圧Vdcが電圧(Vz+Vf)より高くなったとき、ツェナーダイオードZDが降伏する。これにより、
図2の参照符号P3に示される経路で、電源端子P1側から検出電圧出力回路40_1の負荷42_1に電流が流れ込む。これにより、電源相応電圧Vc(≒Vdc-Vz)に応じた検出電圧Vs1が駆動制御回路20に入力される。
【0087】
以上のことから、検出電圧出力回路(第1検出電圧回路の一例)40_1から出力される検出電圧(第1検出電圧の一例)Vs1は、電源電圧Vdcの大きさに依存することが理解される。すなわち、電源電圧Vdcが電圧(Vz+Vf)より低い場合には、ツェナーダイオードZD側から検出電圧出力回路40_1の負荷42_1に電流は流れないため、コイル(第1系統のコイルの一例)6_1側から負荷(第1負荷の一例)42_1に流れ込んだ電流に応じた電圧が負荷42_1(抵抗R3)の両端に発生し、検出電圧Vs1として駆動制御回路20に入力される。すなわち、コイル6_1の中間点の電圧VAに基づく中間電圧(第1中間電圧の一例)Vaに応じた電圧(Va-Vf)が検出電圧Vs1として駆動制御回路20に入力される。
【0088】
一方、電源電圧Vdcが電圧(Vz+Vf)より高く、且つ電源相応電圧Vcが中間電圧Vaよりも高い場合には、ツェナーダイオードZD側から検出電圧出力回路40_1の負荷42_1に電流が流れ込む。これにより、負荷42_1の両端には(Vc-Vf)の電圧が発生し、検出電圧Vs1として駆動制御回路20に入力される。
【0089】
なお、検出電圧出力回路(第2検出電圧出力回路の一例)40_2についても検出電圧出力回路40_1と同様に、電源電圧Vdcが電圧(Vz+Vf)より低い場合には、検出電圧出力回路40_2は、コイル(第2系統のコイルの一例)6_2の中間点の電圧に基づく中間電圧(第2中間電圧の一例)Vbに応じた電圧(=Vb-Vf)を検出電圧(第2検出電圧の一例)Vs2として駆動制御回路20に入力し、電源電圧Vdcが電圧(Vz+Vf)より高い場合には、検出電圧出力回路40_2は、電源相応電圧Vcに応じた電圧(=Vc-Vf)を検出電圧Vs2として駆動制御回路20に入力する。
【0090】
駆動制御回路20における異常判定部22は、検出電圧出力回路40_1,40_2から入力された検出電圧Vs1および検出電圧Vs2に基づいて、ファン5の異常の有無を判定する。
【0091】
具体的には、異常判定部22は、検出電圧Vs1と検出電圧Vs2の少なくとも一方が閾値電圧Vthを超えている場合に、モータ3が過電圧状態であると判定する。例えば、Vdc≧Vdc_maxの場合にモータ3が過電圧状態であると判定したい場合、異常判定部22による過電圧状態の判定のための判定基準値(閾値電圧)Vthとして、(Vdc_max-(Vz+Vf))を設定する。これによれば、電源電圧VdcがVdc_maxを超えた場合、ツェナーダイオードZDから検出電圧出力回路40_1に電流が流れ込むことによって、検出電圧Vs1および検出電圧Vs2が閾値電圧Vth(=Vdc_max-(Vz+Vf))を超える。これにより、異常判定部22は、モータ3が過電圧状態であると判定することができる。
【0092】
また、異常判定部22は、検出電圧Vs1と検出電圧Vs2との差分が所定の大きさ(以下、「差電圧閾値ΔVth」とも称する。)を超えている場合に、コイル6_1及びコイル6_2のいずれか一方が開放状態(断線等)であると判定する。
【0093】
図3に示したように、各コイル6_1,6_2の中間点の電圧の絶対値は、各コイル6_1,6_2の断線(開放故障(オープン故障))の有無に応じて異なる大きさとなる。したがって、モータ3が過電圧状態でないときに、コイル6_1,6_2の何れか一方が断線した場合(開放故障の場合)には、検出電圧出力回路40_1,40_2からそれぞれ出力される検出電圧Vs1と検出電圧Vs2とが互いに異なる大きさとなり、検出電圧Vs1と検出電圧Vs2との間に電圧差が生じる。したがって、検出電圧Vs1と検出電圧Vs2との間の差分を監視することにより、各コイル6_1,6_2の断線(開放故障(オープン故障))を検出することが可能となる。具体的には、異常判定部22は、検出電圧Vs1と検出電圧Vs2との差分が差電圧閾値ΔVthを超えている場合に、コイル6_1およびコイル6_2のいずれか一方が開放状態(断線等)であると判定する。
【0094】
なお、コイル6_1とコイル6_2の両方が断線している場合には、検出電圧Vs1と検出電圧Vs2との間に一定値以上の差は生じないが、モータ3の回転動作を継続することができなくなるため、信号FG1,FG2が出力されなくなる(周期信号ではなく一定の電圧となる)。そこで、異常判定部22は、検出電圧Vs1,Vs2のみならず、信号FG1,FG2も合わせて監視することにより、モータ3に何等かの異常が発生したことを検出することができる。
【0095】
異常判定部22は、モータ3が正常に回転しているとき、信号FG1,FG2を合成した信号FG(周期信号)を生成して、モータ駆動情報信号Soとして上位装置2に出力する。一方、モータ3の異常を検出した場合には、モータ駆動情報信号Soをハイレベルまたはローレベルに固定することにより、モータ3等に異常が発生したことを上位装置2に通知する。
【0096】
例えば、モータ3が過電圧状態であることを検出した場合には、異常判定部22は、モータ駆動情報信号Soを上位装置2に伝達するための信号線とグラウンド電位との間に接続されたスイッチ(例えばトランジスタ)Qcをオンすることにより、モータ駆動情報信号Soをローレベルに固定する(モータ駆動情報信号So=ローレベル固定)。これにより、上位装置2に対して、モータ3が過電圧状態であることを通知することができる。
また、モータ3のコイル6_1、6_2の何れか一方が開放故障であることを検出した場合には、異常判定部22は、例えば、モータ駆動情報信号Soを上位装置2に伝達するための信号線をハイインピーダンス(開放状態)にする。これによれば、例えば、当該信号線が上位装置2側でプルアップされている場合には、ハイレベルのモータ駆動情報信号Soが上位装置2に入力されるので、上位装置2は、モータ3のコイル6_1、6_2の何れか一方が開放故障であることを認識することが可能となる。
【0097】
なお、上位装置2に対する異常検出結果の通知方法は、上述したスイッチQcを用いる方法に限定されない。例えば、上位装置2および駆動制御回路20に異常検出結果の送受信用の外部端子を更に設け、その外部端子間で信号の送受信を行うことによって、駆動制御回路20から上位装置2にモータ3等に異常が発生したことを通知してもよい。
【0098】
次に、モータ駆動制御装置1によるモータ3の異常判定処理の流れについて説明する。
【0099】
図4は、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置1によるモータ3の異常判定処理の流れを示すフローチャートである。
【0100】
先ず、外部からモータ駆動制御装置1の電源端子P1に電源電圧Vdcが供給されるとモータ駆動制御装置1が起動する(ステップS1)。モータ駆動制御装置1の起動後、駆動制御回路20の異常判定部22が、検出電圧Vs1および検出電圧Vs2の少なくとも一方が閾値電圧Vthを超えているか否かを判定する(ステップS2)。
【0101】
検出電圧Vs1および検出電圧Vs2の少なくとも一方が閾値電圧Vthを超えている場合(ステップS2:YES)には、異常判定部22は、モータ3が過電圧状態であると判定する(ステップS9)。そして、異常判定部22は、上述した手法により、モータ3が過電圧状態であることを外部(上位装置2)に通知する(ステップS10)。
【0102】
一方、検出電圧Vs1および検出電圧Vs2のどちらも閾値電圧Vthを超えていない場合(ステップS2:NO)には、異常判定部22が、モータ3が過電圧状態でないと判定し、駆動制御部21が、異常判定部22の判定結果に応じて、上位装置2から受信した駆動指令信号Scに基づいて第1駆動指令信号Sc1および第2駆動指令信号Sc2を生成してモータ駆動回路10_1,10_2に出力することにより、モータ3の駆動を開始する(ステップS3)。
【0103】
ステップS3において、モータ駆動回路10_1,10_2によるモータ3の駆動が開始されると、モータ3が回転し、2系統のコイル6_1,6_2の夫々の中間点に電圧が発生する(ステップS4)。
【0104】
これにより、検出電圧出力回路40_1が、電源相応電圧Vcとコイル6_1の中間点の電圧に応じた中間電圧Vaの何れか大きい方の電圧に応じた検出電圧Vs1を生成する(ステップS5)。同様に、検出電圧出力回路40_2が、電源相応電圧Vcとコイル6_2の中間点の電圧に応じた中間電圧Vbの何れか大きい方の電圧に応じた検出電圧Vs2を生成する(ステップS5)。
【0105】
次に、駆動制御回路20において、異常判定部22が、検出電圧Vs1と検出電圧Vs2との電圧差|Vs1-Vs2|が差電圧閾値ΔVthを超えているか否かを判定する(ステップS6)。
【0106】
検出電圧Vs1と検出電圧Vs2との電圧差が差電圧閾値ΔVthを超えている場合には(ステップS6:YES)、異常判定部22は、モータ3のコイル6_1、6_2の何れか一方が開放故障(オープン故障)であると判定する(ステップS7)。そして、異常判定部22は、モータ3のコイル6_1、6_2の何れか一方が開放故障であることを、上述した手法により、外部(上位装置2)に通知する(ステップS10)。
【0107】
一方、検出電圧Vs1と検出電圧Vs2との電圧差が差電圧閾値ΔVthを超えていない場合には(ステップS6:NO)、異常判定部22は、検出電圧Vs1および検出電圧Vs2の少なくとも一方が閾値電圧Vthを超えているか否かを判定する(ステップS8)。
【0108】
検出電圧Vs1および検出電圧Vs2の少なくとも一方が閾値電圧Vthを超えている場合(ステップS8:YES)には、異常判定部22は、モータ3が過電圧状態であると判定する(ステップS9)。そして、異常判定部22は、モータ3が過電圧状態であることを、上述した手法により、外部(上位装置2)に通知する(ステップS10)。
【0109】
一方、検出電圧Vs1および検出電圧Vs2のどちらも閾値電圧Vthを超えていない場合(ステップS8:NO)には、異常判定部22は、ステップS6に戻り、ステップS6~S10の処理を再度実行する。
【0110】
以上、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置1は、電源電圧Vdcの大きさに応じて変化する電源相応電圧Vcを生成する電圧生成回路31と、モータ3のコイル(第1系統のコイルの一例)6_1の中間点の電圧に基づく中間電圧(第1中間電圧の一例)Vaと電源相応電圧Vcの何れか大きい方の電圧に応じた検出電圧(第1検出電圧の一例)Vs1を生成する検出電圧出力回路(第1検出電圧出力回路の一例)40_1と、モータ3のコイル(第2系統のコイルの一例)6_2の中間点の電圧に基づく中間電圧(第2中間電圧の一例)Vbと電源相応電圧Vcの何れか大きい方の電圧に応じた検出電圧(第2検出電圧の一例)Vs2を生成する検出電圧出力回路(第2検出電圧出力回路の一例)40_2と、を備えている。
【0111】
これによれば、検出電圧Vs1と検出電圧Vs2を監視することにより、モータ3の異常の有無を判定することが可能となる。すなわち、上述したように、コイル6_1,6_2の中間点の電圧は、コイル6_1,6_2の断線の有無に応じて大きさが相違するので、電源相応電圧Vcが中間電圧Va,Vbを超えていない状況では、コイル6_1,6_2の中間点の電圧に応じた検出電圧Vs1,Vs2が夫々生成される。この場合に、検出電圧Vs1と検出電圧Vs2とを比較することにより、コイル6_1,6_2の何れか一方に開放故障(断線)が発生しているか否かを判定することができる。例えば、上述したように、検出電圧Vs1と検出電圧Vs2との差分が差電圧閾値ΔVthを超えている場合に、モータ駆動制御装置1は、コイル6_1,6_2の何れか一方に開放故障(断線)が発生していると判定することができる。
【0112】
一方、電源相応電圧Vcが中間電圧Va,Vbを超えている状況においては、電源相応電圧Vcに応じた検出電圧Vs1,Vs2が生成される。この場合には、検出電圧Vs1,検出電圧Vs2が閾値電圧Vthを超えているか否かを判定することにより、モータ3が過電圧状態であるか否かを判定することができる。
【0113】
このように、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置1によれば、上述した手法によって生成した検出電圧Vs1および検出電圧Vs2を監視することにより、モータ3が過電圧状態であるか否かを判定することができるとともに、モータ3の2系統のコイル6_1,6_2の何れか一方が断線しているか否かを判定することができる。
【0114】
また、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置1によれば、単に各コイル6_1,6_2の中間点の電圧を監視する場合に比べて、モータ3の過電圧状態をより高精度に検出することが可能となる。以下、図を用いて詳細に説明する。
【0115】
図5は、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置1と比較例のモータ駆動制御装置1Xにおける電源電圧Vdcに対する検出電圧Vs1,Vs2の特性の一例を示す図である。
【0116】
図6は、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置1の比較例としてのモータ駆動制御装置1Xの構成を示す図である。
図6に示す比較例のモータ駆動制御装置1Xは、保護回路30XのツェナーダイオードZDが検出電圧出力回路40X_1,40X_2に接続されず、各コイル6_1,6_2の中間点の電圧のみ検出電圧出力回路40X_1,40X_2に入力される点において、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置1と相違し、その他の点においてはモータ駆動制御装置1と同様である。
【0117】
図5において、横軸は、電源電圧Vdc〔V〕を表し、縦軸は検出電圧Vs1,Vs2〔V〕を表している。
図5には、一例として、モータ駆動制御装置1,1Xにおいて、電圧生成回路31を構成するツェナーダイオードZDのツェナー電圧Vzを14.5Vとし、ダイオードD1,D2の順方向電圧Vfを0.5Vとし、通常動作時の電源電圧Vdcを15Vとし、電源電圧Vdcが18V付近まで上昇した場合に、異常判定部22がモータ3の過電圧状態を検出するように閾値電圧Vthを2.5Vに設定した場合の、電源電圧Vdcと検出電圧Vs1,Vs2との関係が示されている。
【0118】
図5において、参照符号301は、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置1の駆動制御信号Sd1,Sd2(PWM信号)のデューティ比が25%であるときの検出電圧Vs1,Vs2の特性を表し、参照符号302は、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置1の駆動制御信号Sd1,Sd2(PWM信号)のデューティ比が100%であるときの検出電圧Vs1,Vs2の特性を表している。
【0119】
また、参照符号301Xは、比較例に係るモータ駆動制御装置1Xの駆動制御信号Sd1,Sd2(PWM信号)のデューティ比が25%であるときの検出電圧Vs1,Vs2の特性を表し、参照符号302Xは、比較例に係るモータ駆動制御装置1Xの駆動制御信号Sd1,Sd2(PWM信号)のデューティ比が100%であるときの検出電圧Vs1,Vs2の特性を表している。
【0120】
通常、各コイル6_1,6_2の巻線の中間点の電圧は、駆動制御信号Sd1、Sd2としてのPWM信号のデューティ比によって変動する。すなわち、駆動制御信号Sd1,Sd2のデューティ比が小さくなる程、巻線の中間点の電圧は小さくなる傾向がある。そのため、巻線の中間点の電圧だけを監視して過電圧状態を判定しようとすると、駆動制御信号Sd1、Sd2としてのPWM信号のデューティ比によっては、適切に過電圧状態を検出することができない場合がある。
【0121】
例えば、本実施の形態の比較例のモータ駆動制御装置1Xが、入力可能な電源電圧範囲が7V-15Vであるモータ3に18Vを超える電源電圧Vdcが印加された場合に、モータ3が過電圧状態であると判定することを考える。
ここでは、
図5に示すように、モータ駆動制御装置1Xの異常判定部22が過電圧状態を検出するための閾値電圧(基準値)Vthxが“2.0V”に設定され、分圧回路41_1,41_2の分圧比が閾値電圧Vthxに応じた適切な値に設定されているものとする。
【0122】
例えば、モータ駆動制御装置1Xにおいて、駆動制御信号Sd1,Sd2のデューティ比が25%である場合、
図5の参照符号301Xに示すように、電源電圧Vdcが18Vに到達したとき、検出電圧Vs1,Vs2が閾値電圧Vthx(=2.0V)を超えるため、異常判定部22が、モータ3が過電圧状態であると判定する。しかしながら、駆動制御信号Sd1,Sd2のデューティ比が100%である場合、
図5の参照符号302Xに示すように、電源電圧Vdcが14.3Vに到達したとき、検出電圧Vs1,Vs2が閾値電圧Vthx(=2.0V)を超える。そのため、異常判定部22は、電源電圧Vdcがモータ3の入力可能な電源電圧範囲(7V-15V)内であるにも関わらず、電源電圧Vdcが14.3Vに到達したとき、モータ3が過電圧状態であると誤判定をしてしまう。
【0123】
この誤判定を防ぐために、閾値電圧Vthxを2.5Vまで上げた場合を考える。この場合において、駆動制御信号Sd1,Sd2のデューティ比が100%であるとき、
図5の参照符号302Xに示すように、電源電圧Vdcが18V付近まで上昇した場合にモータ3の過電圧状態を検出することができるようになる。しかしながら、駆動制御信号Sd1,Sd2のデューティ比が25%である場合には、
図5の参照符号301Xに示すように、電源電圧Vdcが21.3Vまで上昇しないと、モータ3の過電圧状態を検出することができない。
【0124】
したがって、モータ駆動制御装置1Xのように単純にコイル6_1,6_2の中間点の電圧のみを用いてモータ3の過電圧状態を検出した場合、駆動制御信号Sd1,Sd2のデューティ比によって過電圧状態の検出範囲が大きくばらついてしまう。
【0125】
これに対し、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置1は、コイル6_1,6_2の中間点の電圧とツェナーダイオードZDによって生成される電源相応電圧Vcの何れか大きい方の電圧に基づいて生成した検出電圧Vs1,Vs2を監視することにより、過電圧状態の判定を行う。
【0126】
例えば、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置1において、過電圧状態を判定するための閾値電圧(基準値)Vthを2.5Vに設定したとき、駆動制御信号Sd1,Sd2のデューティ比が100%である場合には、
図5の参照符号302に示すように、電源電圧Vdcが18V付近まで上昇すると検出電圧Vs1,Vs2が閾値電圧Vthを超える。
【0127】
一方、駆動制御信号Sd1,Sd2のデューティ比が25%である場合には、
図5の参照符号301に示すように、モータ駆動制御装置1において、電源電圧Vdcが15V(=Vz+Vf)を超えたとき、ツェナーダイオードZDから検出電圧出力回路40_1,40_2に電流が流れ込む。これにより、モータ駆動制御装置1では、モータ駆動制御装置1Xの場合に比べて検出電圧Vs1,Vs2の変化の割合(傾き)が大きくなり、駆動制御信号Sd1,Sd2のデューティ比が25%まで低下した場合でも、電源電圧Vdcが18V付近に到達したときに検出電圧Vs1,Vs2が閾値電圧Vthを超える。
【0128】
このように、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置1によれば、駆動制御信号Sd1,Sd2のデューティ比に起因する過電圧状態の検出範囲のばらつきを抑制することができるので、過電圧状態の検出精度を向上させることが可能となる。
【0129】
更に、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置1によれば、モータ3を駆動していない状況であっても、電源電圧Vdcに入力可能範囲を超える電圧が印加された場合には、ツェナーダイオードZDを介して電源相応電圧Vcが検出電圧出力回路40_1,40_2に入力される。これによれば、例えば、電源電圧の投入直後のモータ3の駆動を開始する前の時点で、モータ3が過電圧状態であることを検出することができるので、過電圧状態でモータ3の駆動を開始することによるモータ3や周辺回路の故障を防ぐことが可能となる。
【0130】
また、モータ駆動制御装置1によれば、ツェナーダイオードZDを、電圧生成回路31を構成する電圧降下素子と保護用トランジスタQa,Qbの耐圧保護のための保護素子として兼用することができるので、過電圧検出機能の追加に伴うモータ駆動制御装置1の回路規模の増大を抑えることが可能となる。
【0131】
≪実施の形態の拡張≫
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0132】
図7は、本発明の別の実施の形態に係るモータ駆動制御システムの構成を示すブロック図である。
【0133】
上記実施の形態では、検出電圧Vs1,Vs2が駆動制御回路20(MCU)の入力可能電圧範囲を超えないようにするために、モータ3の各コイル6_1,6_2の中間点の電圧を分圧して駆動制御回路20に入力する場合を例示したが、これに限られない。
例えば、各コイル6_1,6_2の中間点の電圧が駆動制御回路20(MCU)の入力可能な電圧範囲を超えない場合には、
図7に示すモータ駆動制御システム100Aにおけるモータ駆動制御装置1Aのように、検出電圧出力回路(第1および第2検出電圧出力回路の一例)40A_1,40A_2のそれぞれは、分圧回路41_1,41_2を設けなくてもよい。
【0134】
また、保護機能として突入電流抑制機能が不要である場合には、
図7に示すように、保護回路30Aは、保護用トランジスタQaを設けなくてもよい。
【0135】
また、上記実施の形態において、モータ駆動制御装置1を、2系統のコイル6_1,6_2を備えた単相のブラシレスモータを有するファンユニットに適用する場合を例示したが、これに限られない。例えば、モータ駆動制御装置1を、1系統のコイルを備えた単相のブラシレスモータを2つ有するファンユニットに適用してもよい。
【0136】
また、上記実施の形態において、モータ3が単相のブラシレスモータである場合を例示したが、モータ3の種類や相数等はこれに限定されない。
【0137】
また、上記実施の形態において、異常判定部22がMCUによるプログラム処理によって実現される場合を例示したが、これに限られない。例えば、異常判定部22は、OPアンプ等を用いたコンパレータ回路によって実現し、そのコンパレータ回路の比較結果信号を駆動制御回路20に入力し、駆動制御回路20が入力された比較結果信号に応じて、モータの異常の有無を上位装置2に通知してもよい。
【0138】
また、上述のフローチャートは、動作を説明するための一例を示すものであって、これに限定されない。すなわち、フローチャートの各図に示したステップは具体例であって、このフローに限定されるものではない。例えば、一部の処理の順番が変更されてもよいし、各処理間に他の処理が挿入されてもよいし、一部の処理が並列に行われてもよい。
【符号の説明】
【0139】
1,1A…モータ駆動制御装置、1X…モータ駆動制御装置(比較例)、2…上位装置、3…モータ、4…インペラ(羽根車)、5…ファン(ファンモータ)、6_1,6_2…コイル(第1,第2系統のコイルの一例)、7_1,7_2…位置検出器、10_1,10_2…モータ駆動回路(第1,第2モータ駆動回路の一例)、11_1,11_2…制御回路、12_1,12_2…インバータ回路、16_1,16_2,17_1,17_2…出力端子、19…ヒューズ、20…駆動制御回路、21…駆動制御部、22…異常判定部、30,30A…保護回路、30X…保護回路(比較例)、31…電圧生成回路、40_1,40A_1…検出電圧出力回路(第1検出電圧出力回路の一例)、40_2,40A_2…検出電圧出力回路(第2検出電圧出力回路の一例)、40X_1,40X_2…検出電圧出力回路(比較例)、41_1,41_2…分圧回路、42_1,42_2…負荷(第1,第2負荷の一例)、100,100A…モータ駆動制御システム、101,101A…ファンユニット、C1~C3…キャパシタ、D1~D4…整流素子(第1~第4整流素子の一例;ダイオード)、FG1…信号(第1FG信号)、FG2…信号(第2FG信号)、Lp…電源ライン、P1…電源端子、Q1~Q8…駆動用トランジスタ、Qa,Qb…保護用トランジスタ、Qc…スイッチ(トランジスタ)、R1~R3,Ra,Rb,Rc,Rd…抵抗、Rs1,Rs2…電流検出用抵抗、Sc…駆動指令信号、Sc1…第1駆動指令信号、Sc2…第2駆動指令信号、Sd1,Sd2…駆動制御信号、So…モータ駆動情報信号、Va,Vb…中間電圧(第1,第2中間電圧の一例)、Vc…電源相応電圧、Vdc…電源電圧、Vs1,Vs2…検出電圧(第1,第2検出電圧の一例)、Vth…閾値電圧(判定基準値)、ZD…電圧降下素子(ツェナーダイオード)、ΔVth…差電圧閾値。