(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】外科用インプラントのための包装材
(51)【国際特許分類】
A61B 17/12 20060101AFI20240219BHJP
【FI】
A61B17/12
(21)【出願番号】P 2020511731
(86)(22)【出願日】2018-04-27
(86)【国際出願番号】 US2018030033
(87)【国際公開番号】W WO2018208519
(87)【国際公開日】2018-11-15
【審査請求日】2021-04-21
(32)【優先日】2018-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517163722
【氏名又は名称】ニューロガミ メディカル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】ヘバート スティーブン ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ボジャノウスキ バルトシュ
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-508850(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0160953(US,A1)
【文献】特表2009-514561(JP,A)
【文献】特表2011-526162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管インプラント用の包装材であって、前記包装材は、第1の包装管および容器を有し、前記インプラントは、前記容器内に第1の状態で位置決めされ、前記インプラントは、前記容器から前記第1の包装管中に動くことができ、そして前記第1の包装管内に第2の状態で維持され、前記インプラントは、前記第1の状態で第1の横方向寸法を有するとともに前記第2の状態で第2の横方向寸法を有し、前記第2の横方向寸法は、前記第1の横方向寸法よりも小さく、前記容器は、前記インプラントの前記第1の横方向寸法よりも大きい内部空間を有し、前記第1の包装管は、前記容器の前記内部空間よりも小さい内径を有し、前記包装材は、ルーメンおよび前記ルーメン内に位置決めされたデリバリ部材を備えたデリバリシースをさらに有し、前記デリバリシースは、前記第1の包装管内に位置決めされ、前記インプラントは、前記第1の包装管内において前記デリバリシース内に前記第2の状態で維持されるよう前記デリバリ部材によって前記デリバリシース中に引き込まれ、前記インプラントの前記第1の横方向寸法は、前記デリバリシースの前記ルーメンの横方向寸法よりも大きい、包装材。
【請求項2】
第1の端部および反対側の第2の端部を備えた第2の包装管をさらに有し、前記第1の包装管は、前記容器に隣接して位置する第1の端部および反対側の第2の端部を有し、前記第2の包装管の前記第1の端部は、前記第1の包装管の前記第2の端部から間隔を置いて位置し、それにより前記第1の包装管と前記第2の包装管との間には隙間が形成されており、前記デリバリ部材の露出部分および前記デリバリシースの露出部分は、前記第1の包装管と前記第2の包装管との間の前記隙間内に露出されている、請求項1に記載の包装材。
【請求項3】
前記容器内に位置する支持部材をさらに有し、前記支持部材は、前記インプラントを非直線形態で嵌着させた細長い部材を有する、請求項1または2に記載の包装材。
【請求項4】
前記血管インプラントは、当初、前記デリバリシースの第1の端部に設けられた開口部に対して実質的に横方向の位置にある、請求項1~3のうちいずれか一に記載の包装材。
【請求項5】
前記第2の包装管は、前記第1の包装管の長さよりも大きい長さを有する、請求項
2に記載の包装材。
【請求項6】
前記第1の状態では、前記インプラントは、非拘束状態にある、請求項1~5のうちいずれか一に記載の包装材。
【請求項7】
前記容器は、前記血管インプラントを受け入れるための受け入れ空間を有し、前記第1の包装管は、前記受け入れ空間と連通状態にある開口部を有し、前記第1の包装管は、前記受け入れ空間に隣接して位置する第1の端部、反対側の第2の端部およびルーメンを有する、請求項1~6のうちいずれか一に記載の包装材。
【請求項8】
デリバリ部材が、前記第1の包装管を通して延び、臨床医によって把持可能なデリバリシースの露出部分を提供するよう前記第1の包装管の前記第2の端部の外側に延びる部分を有する、請求項7記載の包装材。
【請求項9】
デリバリシースが、臨床医によって把持可能な該デリバリシースの露出部分を提供するよう前記第1の包装管の前記第2の端部の外側に延びる部分を有する、請求項7または8記載の包装材。
【請求項10】
前記デリバリ部材の前記露出部分は、前記デリバリシースの前記露出部分の外側に延びている、請求項1または8を引用する場合の請求項9記載の包装材。
【請求項11】
前記第2の包装管の第1の端部が、前記第1の包装管の前記2の端部から間隔を置いて位置していて、前記第1の包装管と前記第2の包装管との間には隙間が形成される、請求項2を引用する場合の請求項8~10のうちいずれか一に記載の包装材。
【請求項12】
前記デリバリ部材は、前記第2の包装管中に延び、前記デリバリシースの近位端部は、前記第1の包装管と前記第2の包装管との間の前記隙間内で終端している、請求項1または8を引用する場合の請求項11記載の包装材。
【請求項13】
引く力を前記デリバリシースに対して前記デリバリ部材に加えることにより、前記血管インプラントは、該血管インプラントが非拘束状態で保持されている前記容器から前記デリバリシース中に引き込まれ、その結果、前記血管インプラントは、減少した横方向寸法を有するようになっている、請求項1または8を引用する場合の請求項12記載の包装材。
【請求項14】
血管インプラントを包装材から取り出す方法であって、前記包装材は、前記インプラントを受け入れる容器および第1の包装管を有し、前記方法は、
a)細長いデリバリ部材を第1の方向に引いて前記血管インプラントを前記第1の包装管内に位置決めされたデリバリシース中に引き込むステップと、
b)次に、前記デリバリシースを前記第1の方向に引き、ついには、前記デリバリシースの第1の端部には前記第1の包装管がないようにするステップと、
c)次に、前記デリバリ部材を前記第1の方向と反対の第2の方向に引き、ついには、前記デリバリ部材の第2の端部には第2の包装管がないようにするステップとを含む、方法。
【請求項15】
前記デリバリ部材を引いて前記血管インプラントを前記デリバリシース中に引き込むステップの実施により、前記インプラントを小さな横方向寸法を有するより拘束された状態に動かし、前記インプラントを前記デリバリシース中に引き込む前に、前記インプラントは、前記デリバリシースの横方向寸法よりも大きい横方向寸法を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記デリバリシースを前記第1の方向に引く前記ステップは、前記デリバリ部材を前記第1の方向に引くステップを更に含む、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1および前記第2の包装管のうちの一方または両方は、輸送中、コイル状形態で収納される、請求項14~16のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項18】
前記デリバリ部材の一部分および前記デリバリシースの一部分は、前記第1の包装管と前記第2の包装管との間の隙間内で露出される、請求項14~17のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項19】
前記インプラントを前記第1の包装管中に引き込み、次いで前記インプラントを身体管腔中に送達するために前記第1の包装管内に位置決めされたデリバリ部材をさらに有する、請求項1に記載の包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、外科用インプラントのための包装材に関する。本願はまた、外科用インプラントのためのデリバリシステムに関する。
【0002】
〔関連出願の参照〕
本願は、2017年5月6日に出願された米国特許仮出願第62/502,663号、2018年1月27日出願された米国特許仮出願第62/622,869号、および2018年4月13日に出願された実用特許出願第15/953,261号の優先権主張出願である。これら出願の各々を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。
【背景技術】
【0003】
動脈瘤は、任意の血管の壁ならびに心臓内でおこる場合のある局所化された血液充填バルーン様の膨らみである。動脈瘤について種々の治療が存在する。動脈瘤の血管内治療の一オプションは、人工血管またはステント‐グラフトを用いて損傷した血管の完全な再建である。ステント‐グラフトは、2つの部分、すなわち、ステントとグラフトで構成された植え込み可能な管状構造体である。ステントは、グラフトを支持するための足場またはスカフォールドとして機能する金属または合金で作られたメッシュ状構造体である。グラフトは、典型的には、血流に対して不浸透性でありかつステントを内張りする合成ファブリックである。ステント‐グラフトは、脳機能にとって致命的であると言える栄養補給血管に対する血流を遮断する恐れがあるので、頭蓋内動脈瘤のための治療オプションではない。ステント‐グラフトはまた、硬く、送達/引っ込みが困難であり、しかも患者の血管内で高い血栓形成性を示す場合があり、これら全ては、頭蓋内動脈瘤の治療にとって望ましくない特徴である。その結果、頭蓋内動脈瘤の血管内治療の中心は、高い充填または詰め込み密度を達成して血液の循環を止めるために動脈瘤に物質または器具を詰め込みまたは充填することにおかれているが、血液の循環を止めることにより、経時的に血栓の形成および動脈瘤の閉鎖が生じる。
【0004】
頭蓋内動脈瘤の嚢を充填するために記載された様々な物質および器具、例えば注入可能な流体、マイクロフィブリルコラーゲン、ポリマーフォームおよびビーズが存在する。ポリマー樹脂、例えばシアノアクリレートもまた用いられている。これら両方とも、典型的には、視覚化を助けるための放射線不透過性樹脂と混ぜ合わされる。これら物質は、不適切にまたは過度に運ばれた場合、分散を制御する上での困難さおよびこれらを回収する際の困難さに起因して相当大きなリスクをもたらす。
【0005】
機械的血流閉塞器具は、動脈瘤を充填するための別のオプションである。動脈瘤の嚢内に配置可能な機械的血流閉塞器具の一形式は、バルーンである。バルーンは、カテーテルの端に位置した状態で血管部位まで運ばれ、そして適当な流体、例えば重合可能な樹脂でインフレートされ、そしてカテーテルから放出される。バルーンの主要な利点は、バルーンが動脈瘤嚢を効果的に充填することができるということにある。しかしながら、バルーンは、回収するのが困難であり、造影剤で満たされていなければ視覚化できず、破損の恐れがあり、しかも様々な動脈瘤形状に適合しない。
【0006】
機械的血流閉塞器具の他の形式は、金属または合金および例えば生体適合性繊維で構成される。一般に、これら材料は、管状構造体、例えば螺旋コイルの状態に形成される。最も初期の繊維質コイルの1つは、Gianturcoコイル(クック・メディカル(Cook Medical)社製)であった。このコイルは、5cm長さの0.036インチ(0.914mm)ガイドワイヤ(内側コアを除く)で作られており、血栓形成を促進するためにコイルの一方の先端部に取り付けられたウールの4本の2インチ(5.08cm)のストランドを備えていた。この器具は、直径が3mm未満の曲がりくねった血管部位中に導入するのが困難であった。これは、一般的に、コイルが硬くて嵩張っており、しかも高い摩擦係数を有していたからである。
【0007】
チー等(Chee et al. )(米国特許第5,226,911号明細書)は、コイル本体の長さに直接取り付けられた繊維を有する送達性の高い繊維質コイルを導入した。このコイルは、コイルとともに送られる血栓形成物質の量を減少させることによって曲がりくねった解剖学的構造向きに設計されていた。コイルの他の例は、リットチャート等(Ritchart et al. )に付与された米国特許第4,994,069号明細書、両方ともグリエルミ等(Guglielmi et al.)に付与された米国特許第5,354,295号明細書およびその親出願である米国特許第5,122,136号明細書である。
【0008】
材料はまた、管/ストリング/編組縫合糸(これについては、例えば、ボオック(Boock)に付与された米国特許第6,312,421号明細書、セペトゥカ等(Sepetka et al.)名義の米国特許出願第11/229,044号明細書、リーズ(Rees)名義の米国特許出願第13/887,777号明細書、両方ともウー等(Wu et al.)名義の米国特許出願第13/552,616号明細書および同第10/593,023号明細書を参照されたい)、ケーブル(これについては、例えば、クルツ等(Kurz et al.)に付与された米国特許第6,306,153号明細書を参照されたい)、または組物の状態に形成される場合がある。金属コイルはまた、フロイデンタール(Freudenthal)名義の米国特許出願第12/673,770号明細書およびウォレス等(Wallace et al.)に付与された米国特許第6,280,457号明細書に記載されているような血栓形成繊維で巻回によって覆われる場合がある。
【0009】
他の管状構造体とは異なり、編組またはポリマーコイルは、非拡張型および自己拡張型器具に更に分割される場合がある。これら器具は、例えばテキスタイル、ポリマー、金属または複合材から公知の織成、編成、および編組技術および機器を用いて作られる場合がある。ウィーブまたは仕上げ状態の組物中には、追加の特徴または効果(例えば、放射線不透過性および血栓形成性)を付与するよう製造されたオプションとしてのモノフィラメントまたはマルチフィラメント繊維が含まれる場合がある。
【0010】
非拡張型組物(これについては、例えば、ベレンスタイン等(Berenstein et al.)に付与された米国特許第5,690,666号明細書、エンゲルソン等(Engelson et al.)に付与された米国特許第5,423,849号明細書、およびホー(Ho)に付与された米国特許第5,964,797号明細書を参照されたい)がインプラントとして働くことができ、そして主として、金属性であり、ポリマー製でありまたは金属とポリマーの組み合わせである場合がある。かかる設計例では、組物は、フィラメント(組物ストランド)相互間にある程度の最小限の空間を有し、その結果、連続気泡設計が得られている。加うるに、かかる設計例を採用した密な大抵の場合金属の組物の結果として、カテーテルを経て追跡するのが困難であり、または血管系に対する外傷をもたらす恐れがある硬い構造体が生じる。また、金属編組構造体は、被覆されなければまたは更に処理されなければ触るとざらざらしている場合がある。
【0011】
これら組物は、二次形状物、例えば固有の二次形状がほとんどなくまたは全くない状態に形成される場合があり、これら組物は、動脈瘤の壁に係合するよう寸法決め可能でありまたはこれら組物は、他の形状(例えば、ランダムな形状、「花」形状または三次元形状)を有する場合がある。これら構造体はまた、血液凝固を助けるために薬剤が注入された天然繊維または熱可塑性樹脂で作られている内部コア内に繊維の束を有する場合がありまたはかかる内部コア内に設けられまたはこれから突き出た繊維束を更に有する場合がある(これについては、例えば、エンゲルソン等(Engelson et al.)に付与された米国特許第5,423,849号明細書およびホートン(Horton)に付与された米国特許第5,645,558号明細書を参照されたい)。コイル状組物には生体活性または他の表面被膜付きで供給される場合がある(これについては、例えば、エーダー等(Eder et al. )に付与された米国特許第6,299,627号明細書を参照されたい)。
【0012】
非拡張型組物はまた、コアまたは一次構造体、例えばコイルまたは他の組物を覆っている場合がある(これについては、例えば、フェルプス等(Phelps et al.)に付与された米国特許第5,382,259号明細書、ベレンスタイン等(Berenstein et al.)に付与された米国特許第5,690,666号明細書、ビラール等(Villar et al.)に付与された米国特許第5,935,145号明細書、およびランジプア等(Ramzipoor et al.)に付与された米国特許第8,002,789号明細書を参照されたい)。上述の編組構造体に良く似たこれらのカバーは、連続気泡設計を有する(例えば、内側コイル構造体は、組物越しに見える)。
【0013】
形態の如何を問わず、これらの器具により高い充填密度および急な流れの淀みを達成することが困難であり、というのは、これら器具がこの壁を通る少なくとも幾分かの血流を可能にし、適切に圧縮することができず、しかも/あるいは制限された曲げ半径を有する場合がある連続気泡構造を有するからである。血流を止めまたは遅くするよう動脈瘤嚢に十分には詰め込まれない場合、動脈瘤の頸を通る流れは、鬱血を防ぎまたはコイルコンパクションを生じさせる場合があり、それにより動脈瘤の再開通が得られる。これとは逆に、大きなまたは巨大な動脈瘤内の金属コイルの緊密な充填は、隣接の脳の実質および脳神経に対する増大した質量効果(近くの組織の圧迫および動脈瘤嚢の引き伸ばし)を生じさせる場合がある。親血管中へのコイル脱出または移動は、特に広口動脈瘤において非拡張型器具についてもう1つの考えられる問題である。
【0014】
組物はまた、自己拡張型である場合があり、かかる組物を種々の形態、例えばボール、コイル、および組み合わせ型組物‐ステントの状態に形作られる場合がある。自己拡張型器具の例は、以下の特許文献、すなわち、ロスクエタ等(Rosqueta et al.)に付与された米国特許第8,142,456号明細書、アダムス(Adams)に付与された米国特許第8,361,138号明細書、アボイテス等(Aboytes et al.)名義の米国特許出願第13/727,029号明細書、ウォレス等(Wallace et al.)名義の米国特許出願第14/289,567号明細書、マルシャン等(Marchand et al.)名義の米国特許出願第13/771,632号明細書、およびグリーンハウシュ(Greenhalgh)名義の米国特許出願第11/148,601号明細書に開示されている。
【0015】
自己拡張型組物は、頸のところの流れを遮るとともに/あるいは塞栓形成を促進するよう動脈瘤の容積の全てまたは実質的に全てを占めることが見込まれる。これら設計例の大きな問題は、寸法決めである。インプラントは、拡張時にこれが動脈瘤全体、すなわちドームから頸までを充填するのに十分な容積を占めるよう正確に寸法決めされなければならない。器具が小さめであると、上述したように充填が不十分となり、これに対し、大きめであれば動脈瘤の破裂または親血管の閉塞の恐れがある。
【0016】
頸ブリッジは、頭蓋内動脈瘤を治療する更に別の方式である。頸ブリッジは、2つのカテゴリー、すなわち、コイル塊状体が親血管中に移動しないようにするための支持体(コイルリテーナ)として作用する頸ブリッジと動脈瘤中への流れを妨げるよう頸をまたぐ頸ブリッジに分類可能である。コイル塊状体を支持する頸ブリッジは、花弁/花の形に作られて動脈瘤の頸をまたぎまたは親血管と動脈瘤嚢との間に配置される傾向がある。コイル塊状体を支持する頸ブリッジの例が次の特許文献、すなわち、ケン等(Ken et al.)に付与された米国特許第6,193,708号明細書、ビラール等(Villar et al.)に付与された米国特許第5,935,148号明細書、マーフィ等(Murphy et al.)に付与された米国特許第7,410,482号明細書、エーダー(Eder)に付与された米国特許第6,063,070号明細書、テオ(Teoh)名義の米国特許出願第10/990,163号明細書、およびジョーンズ等(Jones et al.)に付与された米国特許第6,802,85号明細書に開示されている。
【0017】
動脈瘤頸を通る流れを妨げる頸ブリッジを動脈瘤の内部か外部かのいずれかに配備することができ、かかる頸ブリッジは、塞栓コイルの配備を必要としない場合がある。配備が動脈瘤嚢の底部のところで行われ、コンポーネントが頸中に延びる動脈瘤内頸ブリッジの例がウォレス(Wallace)に付与された米国特許第6,454,780号明細書、アベラネット等(Avellanet et al.)に付与された米国特許第7,083,632号明細書、ムルシー(Morsi )に付与された米国特許第8,292,914号明細書、およびエスクリッジ等(Eskridge et al. )に付与された米国特許第8,545,530号明細書に開示されている。動脈瘤の外部(親血管内)に配備される頸ブリッジの例がボオック(Boock)に付与された米国特許第6,309,367号明細書、サラマン等(Thramann et al.)に付与された米国特許第7,241,301号明細書、レイマー(Ramer )に付与された米国特許第7,232,461号明細書、コックス(Cox)に付与された米国特許第7,572,288号明細書、ハインズ(Hines)名義の米国特許出願第11/366,082号明細書、コックス等(Cox et al.)名義の米国特許出願第14/044,349号明細書、バーク(Burke)に付与された米国特許第8,715,312号明細書、コナー(Connor)に付与された米国特許第8,425,548号明細書、およびダッガール等(Duggal et al.)に付与された米国特許第8,470,013号明細書に開示されている。頸ブリッジは、レイモンド等(Raymond et al.)に付与された米国特許第6,626,928号明細書に開示されているように新生内膜形成を促進するための表面処理剤を更に有するのが良い。設計の如何を問わず、頸ブリッジは、頭蓋内動脈瘤を治療する際に幾つかの問題を提起する。第1の主要な難題は、これら器具の配備であり、かかる配備では、ブリッジを操作して多くの場合動脈瘤頸上に再位置決めして完全な被覆を補償する必要がある。第2に、再開通が起こった場合、動脈瘤の次の再処置は、接近が頸ブリッジまたはそのコンポーネントのうちの1つによって制限されているので妨げられる。
【0018】
ステントおよびフローダイバータは、機能の面で頸ブリッジに類似しているが、親血管再建向きであり、したがって動脈瘤の遠位側から近位側に延びて頸を覆う。かかる器具は、親血管内に配備されて嚢塞栓形成を誘起させ、塞栓コイルを安定化し、そしてコイル突出および/または移動を阻止するための物理的な血流バリヤとして働くようになっている。フローダイバータのポロシティが比較的低いので(高い被覆率)フローダイバータをコイルとともにまたはコイルなしで使用することができ、かかるフローダイバータは、動脈瘤嚢中への血流を制限することによって血栓形成を促進することが判明している。しかしながら、例えば再開通、遅延ステント血栓症、遅延動脈瘤破裂、およびステント移動のような合併症もまた観察されている。ステントの一例は、リヴェリ(Rivelli)に付与された米国特許第6,746,475号明細書に開示され、フローダイバータは、ベレーズ等(Berez et al.)に付与された米国特許第8,398,701号明細書に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【文献】米国特許第5,226,911号明細書
【文献】米国特許第4,994,069号明細書
【文献】米国特許第5,354,295号明細書
【文献】米国特許第5,122,136号明細書
【文献】米国特許第6,312,421号明細書
【文献】米国特許出願第11/229,044号明細書
【文献】米国特許出願第13/887,777号明細書
【文献】米国特許出願第13/552,616号明細書
【文献】米国特許出願第10/593,023号明細書
【文献】米国特許第6,306,153号明細書
【文献】米国特許出願第12/673,770号明細書
【文献】米国特許第6,280,457号明細書
【文献】米国特許第5,690,666号明細書
【文献】米国特許第5,423,849号明細書
【文献】米国特許第5,964,797号明細書
【文献】米国特許第5,645,558号明細書
【文献】米国特許第6,299,627号明細書
【文献】米国特許第5,382,259号明細書
【文献】米国特許第5,935,145号明細書
【文献】米国特許第8,002,789号明細書
【文献】米国特許第8,142,456号明細書
【文献】米国特許第8,361,138号明細書
【文献】米国特許出願第13/727,029号明細書
【文献】米国特許出願第14/289,567号明細書
【文献】米国特許出願第13/771,632号明細書
【文献】米国特許出願第11/148,601号明細書
【文献】米国特許第6,193,708号明細書
【文献】米国特許第5,935,148号明細書
【文献】米国特許第7,410,482号明細書
【文献】米国特許第6,063,070号明細書
【文献】米国特許出願第10/990,163号明細書
【文献】米国特許第6,802,85号明細書
【文献】米国特許第6,454,780号明細書
【文献】米国特許第7,083,632号明細書
【文献】米国特許第8,292,914号明細書
【文献】米国特許第8,545,530号明細書
【文献】米国特許第6,309,367号明細書
【文献】米国特許第7,241,301号明細書
【文献】米国特許第7,232,461号明細書
【文献】米国特許第7,572,288号明細書
【文献】米国特許出願第11/366,082号明細書
【文献】米国特許出願第14/044,349号明細書
【文献】米国特許第8,715,312号明細書
【文献】米国特許第8,425,548号明細書
【文献】米国特許第8,470,013号明細書
【文献】米国特許第6,626,928号明細書
【文献】米国特許第6,746,475号明細書
【文献】米国特許第8,398,701号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
上述の方法は、低侵襲法で頭蓋内動脈瘤を治療しようとするものであるが、現行の器具の欠点なしで動脈瘤嚢内の血流を遮断する高い応従性のかつ血栓形成性のフィラーが要望されている。例えば、曲がりくねった血管系を通って脳血管系中への前進を可能にするのに十分な可撓性を達成するとともに高濃度の血栓形成物質を維持しながら高い充填または詰め込み密度を達成する器具を提供することが有利である。また、血液の迅速な凝固を生じさせる器具を提供することが有利であろう。また、比較的短い期間内に組織内方成長を促進する器具を提供することが有利であろう。さらに、軟質であって圧縮性でありかつ血液を保持する吸収性のある器具を提供することが有利であろう。別の目的を犠牲にしながら1つの目的のえり好み/強調を行わずにこれらの目的を全て達成することは、困難な課題である。これは、有効性を犠牲にしないで構造が単純でありかつ製造が簡単なかかる器具を提供しようとすることによって悪化する。課題をさらに悪化させることは、この器具は、低侵襲挿入向きに設計されているので、頭蓋内部位のところに送達して配備するのが容易であるとともに頭蓋内血管系内での使用に足るほど小さなサイズで製造可能であることが必要である。すなわち、これらの要望の全ては、迅速な凝固を促進するとともに質量効果を減少させた状態で頭蓋内動脈瘤の治癒を促進しながら嚢または他の組織を損傷させないで動脈瘤に効果的に詰め込む構成で達成される必要がある。今日まで、これら全ての目的を効果的に達成する器具が存在せず、現行の器具は、せいぜい1つの目的を達成するが他の目的を犠牲にしている。
【0021】
加うるに、血管系を通って無傷的に前進させるのに十分に低プロフィールでありかつ可撓性であり、しかも血管系を通る前進中にかかる器具を固定的に保持するよう設計されたかかる器具用のデリバリシステムを提供することが有利である。かかるデリバリシステムは、インプラントのあらかじめ設定された非直線形態を考慮に入れる必要がある。また、かかる器具の再位置決めまたは抜き出しを可能にするよう標的部位への部分デリバリ後に器具の回収を可能にするかかるデリバリシステムを提供することが有利である。すなわち、デリバリ中に器具の確実なロックを維持するとともに部分デリバリ後、すなわち、器具を完全に配備する前にかかる器具を回収することができることが望ましい。かかるデリバリ器具は、種々の臨床用途において使用される。
【0022】
本発明は、先行技術の問題および欠点を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の一観点によれば、血管インプラント用の包装材が提供され、この包装材は、第1の包装管および容器を有する。インプラントは、容器内に第1の状態で位置決めされ、インプラントは、容器から第1の包装管中に動くことができ、そして第1の包装管内に第2の状態で維持される。インプラントは、第1の状態で第1の横方向寸法を有するとともに第2の状態で第2の横方向寸法を有し、第2の横方向寸法は、第1の横方向寸法よりも小さい。
【0024】
幾つかの実施形態では、包装材は、ルーメンおよびルーメン内に位置決めされたデリバリ部材を備えたデリバリシースをさらに有し、デリバリシースは、第1の包装管内に位置決めされ、インプラントは、第1の包装管内においてデリバリシース内に第2の状態で維持されるようデリバリ部材によってデリバリシース中に引き込まれる。幾つかの実施形態では、インプラントの第1の横方向寸法は、デリバリシースのルーメンの横方向寸法よりも大きい。
【0025】
幾つかの実施形態では、第1の端部および反対側の第2の端部を備えた第2の包装管が設けられ、第1の包装管は、容器に隣接して位置する第1の端部および反対側の第2の端部を有し、第2の包装管の第1の端部は、第1の包装管の第2の端部から間隔を置いて位置し、それにより第1の包装管と第2の包装管との間には隙間が形成されている。幾つかの実施形態では、第2の包装管は、第1の包装管の長さよりも大きい長さを有する。
【0026】
幾つかの実施形態では、支持部材が容器内に設けられ、支持部材は、インプラントを非直線形態で嵌着させた細長い部材を有する。
【0027】
別の観点によれば、本発明は、包装材と血管インプラントデリバリシステムの組み合わせであって、受け入れ空間を備えた容器と、受け入れ空間と連通状態にある開口部を備えた第1の包装管と、受け入れ空間に隣接して位置する第1の端部と、反対側の第2の端部およびルーメンとを有する組み合わせを提供する。デリバリシースが第1の包装管のルーメン内に位置決めされている。細長いデリバリ部材が血管インプラントをデリバリシースのルーメン内で動かすためにデリバリシースのルーメン内に位置決めされ、血管インプラントが容器内に支持されている。デリバリ部材は、第1の包装管を貫通するとともに第1の包装管の第2の端部の外側に延びて臨床医によって把持可能なデリバリ部材の露出部分を提供する。
【0028】
幾つかの実施形態では、デリバリシースは、臨床医によって把持可能なデリバリシースの露出部分を提供するよう第1の包装管の第2の端部の外側に延びる部分を有する。幾つかの実施形態では、デリバリ部材の露出部分は、デリバリシースの露出部分の外側に延びている。
【0029】
幾つかの実施形態では、デリバリシステムは、第2の包装管をさらに含み、第2の包装管の第1の端部は、第1の包装管の2の端部から間隔を置いて位置していて、第1の包装管と第2の包装管との間には隙間が形成され、デリバリ部材の露出部分およびデリバリシースの露出部分は、第1の包装管と第2の包装管との間の隙間内に露出されている。幾つかの実施形態では、デリバリ部材は、第2の包装管中に延び、デリバリシースの近位端部は、第1の包装管と第2の包装管との間の隙間内で終端している。
【0030】
幾つかの実施形態では、引く力をデリバリシースに対してデリバリ部材に加えることにより、血管インプラントは、この血管インプラントが非拘束状態で保持されている容器からデリバリシース中に引き込まれ、その結果、血管インプラントは、減少した横方向寸法を有するようになっている。幾つかの実施形態では、血管インプラントは、当初、デリバリシースの第1の端部に設けられた開口部に対して実質的に横方向の位置にある。
【0031】
本発明の別の観点によれば、血管インプラントを包装材から取り出す方法が提供され、包装材は、インプラントを受け入れる容器および第1の包装管を有し、この方法は、
a)細長いデリバリ部材を第1の方向に引いて血管インプラントを第1の包装管内に位置決めされたデリバリシース中に引き込むステップと、
b)次に、デリバリシースを第1の方向に引き、ついには、デリバリシースの第1の端部には第1の包装管がないようにするステップと、
c)次に、デリバリ部材を第1の方向と反対の第2の方向に引き、ついには、デリバリ部材の第2の端部には第2の包装管がないようにするステップとを含む。
【0032】
幾つかの実施形態では、デリバリ部材を引いて血管インプラントをデリバリシース中に引き込むステップの実施により、インプラントを小さな横方向寸法を有するより拘束された状態に動かし、インプラントをデリバリシース中に引き込む前に、インプラントは、デリバリシースの横方向寸法よりも大きい横方向寸法を有する。幾つかの実施形態では、デリバリシースを第1の方向に引くステップは、デリバリ部材を第1の方向に引くステップを更に含む。
【0033】
幾つかの実施形態では、第1および第2の包装管のうちの一方または両方は、輸送中、コイル状の形態で収納される。
【0034】
幾つかの実施形態では、デリバリ部材の一部分およびデリバリシースは、第1の包装管と第2の包装管との間の隙間内に露出される。
【0035】
本発明はまた、血管インプラント、例えば動脈瘤内マイクログラフトを患者の体内管腔中に送り込むシステムが提供され、このシステムは、近位部分のところに第1の係合部分を有する血管インプラントと、遠位部分のところに位置するとともにインプラントの第1の係合部分と解除可能に係合することができる第2の係合部分を有する細長いデリバリ部材と、デリバリ部材を貫通した細長い部材とを含む。細長い部材は、伸長位置と引っ込み位置を有し、伸長位置では、細長い部材は、インプラントの少なくとも一部分中に延びてデリバリ部材からのインプラントの放出を阻止し、引っ込み位置では、細長い部材は、デリバリ部材からのインプラントの放出を可能にする。
【0036】
幾つかの実施形態では、インプラントは、近位端部のところに位置する管を有し、この管は、第1の係合部分を有する。
【0037】
幾つかの実施形態では、デリバリ部材および管は各々、デリバリ部材とインプラントの結合状態を維持するよう細長い部材を挿通させるアイレットを有する。第1の放射線不透過性マーカーバンドが管内に位置決めされるのが良く、第2の放射線不透過性マーカーバンドがデリバリ部材内に位置決めされるのが良く、細長い部材は、伸長位置において第1および第2の放射線マーカーバンドを貫通している。幾つかの実施形態では、マーカーバンドは、アイレットを形成し、変形実施形態では、管は、マーカーバンドを備えておらず、アイレットを形成するよう連続円形周囲を備えている。
【0038】
幾つかの実施形態では、第1および第2の係合部分のうちの一方または両方は、カム面を有する。幾つかの実施形態では、デリバリ部材の第2の係合部分は、クレードルおよび切欠きを有し、血管インプラントの第1の係合部分は、切欠きおよびクレードルを有し、デリバリ部材のクレードルは、インプラントの切欠き内に嵌まり込んでいる。
【0039】
本発明の別の観点によれば、血管インプラントを患者の体内管腔中に送り込むシステムが提供され、このシステムは、血管インプラントと係合可能な細長いデリバリ部材と、細長いデリバリ部材の一部分に嵌着されたテキスタイル構造体と、デリバリ部材を貫通している細長い部材とを含む。細長い部材は、伸長位置および引っ込み位置を有し、伸長位置では、細長い部材は、インプラントの少なくとも一部分中に延びてデリバリ部材からのインプラントの放出を阻止し、引っ込み位置では、細長い部材は、デリバリ部材からのインプラントの放出を可能にするようインプラントから抜き出される。
【0040】
幾つかの実施形態では、デリバリ部材は、コイルを有し、テキスタイル構造体は、コイルに嵌着されている。テキスタイル構造体は、幾つかの実施形態では、組物の形態をしている。
【0041】
細長い部材の遠位側への運動を制限するよう細長い部材にはコイルが嵌着されるのが良い。幾つかの実施形態では、細長い部材は、血管系中のデリバリ部材の追跡中に細長い部材の時期尚早な引っ込みおよびインプラントの結合解除を阻止するために余分の長さを提供するようテキスタイル構造体の近位側でデリバリ部材内に位置する腰折れ部分を有する。
【0042】
デリバリシステムは、デリバリ部材に連結された解除機構体を含むのが良く、この解除機構体は、細長い部材およびデリバリ部材のための切り離し接合部を形成する切れ目を含む。
【0043】
本発明の別の観点によれば、血管インプラントを患者の動脈瘤中に送り込む方法が提供され、この方法は、
遠位部分のところに位置していて血管インプラントと解除可能に係合可能な係合部分を有する細長いデリバリ部材およびデリバリ部材を貫通した細長い部材を用意するステップと、
細長い部材がインプラントの放射線不透過性部分中に延びる血管インプラントの少なくとも一部分内に位置決めされた伸長位置に維持された状態で細長いデリバリ部材を血管系中に通して動脈瘤まで挿入するステップと、
細長い部材を引っ込めて血管インプラントをデリバリ部材から結合解除し、それにより血管インプラントを動脈瘤に送達するステップとを含む。
【0044】
幾つかの実施形態では、細長い部材を引っ込めるステップの実施により、血管インプラントおよびデリバリ部材のカム作用面が血管インプラントおよびデリバリ部材を互いに隔てた状態で半径方向に遠ざけることができる。
【0045】
幾つかの実施形態では、細長い部材は、デリバリ部材の組物内で動き、デリバリ部材の組物は、細長い部材の軟質または可撓性領域を提供する。幾つかの実施形態では、細長い部材は、デリバリ部材の遠位側への運動を制限するための停止部および細長い部材の運動への抵抗をもたらす半径方向に延びる構造体を有する。
【0046】
本発明の別の観点によれば、患者の血管系を閉塞するシステムが提供され、このシステムは、吸収性ポリマー構造体を有する血管マイクログラフト、血液を通すためのルーメン、外壁、および血管マイクログラフトに取り付けられた保持構造体を含む。デリバリ要素は、血管系を通るデリバリ要素による挿入中に血管マイクログラフトを保持するよう保持構造体と協働する係合構造体を有する。
【0047】
幾つかの実施形態では、血管マイクログラフトは、ポリマー材料の多数のマルチフィラメントヤーンで構成された非拡張組物として形成されたポリマー構造体である閉塞器具である。幾つかの実施形態では、ポリマー構造体は、吸収性であり、遠位側から近位側への方向における毛管作用により血液を吸い上げる。
【0048】
幾つかの実施形態では、インプラントは、非直線形態に形状設定されかつデリバリ部材上に同軸状に位置決めされた実質的に直線の形態から動脈瘤内に配置される同一のまたは異なる非直線形態に前進可能である。
【0049】
本明細書において開示する動脈瘤内マイクログラフトは、この長さを横切って長手方向に延びる一連の山部および谷部、または波形プロフィール(壁厚に応じる)を有する貫通ルーメンを有するテキスタイル構造を備えた管状本体を有するのが良い。管状本体の各端部のところに、オプションとして放射線不透過性であるのが良くかつ/あるいはデリバリシステムに結合可能に用いられることができるバンドが設けられるのが良い。構成の別の形態では、グラフトの一方の端部または両方の端部は、デリバリに役立つ“J”字形またはカールまたは他の形状を有するよう形状設定されるのが良い。構成のさらに別の形態では、作用剤がデリバリを助ける(可視化)とともに癌治療および/または内皮細胞成長を助けるよう管状本体の内周部または外周部に加えられるのが良い。
【0050】
本発明のこれらの特徴および他の特徴は、添付の図面と関連して以下の詳細な説明を読むと十分に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】本発明の一実施形態としての動脈瘤内マイクログラフトの部分切除側面図である。
【
図2A】大きな直径および薄い壁を備えた本発明の動脈瘤内マイクログラフトの別の実施形態の図である。
【
図2B】山部および谷部を強調するよう引き伸ばされたマイクログラフトを示していることを除き
図2Aとほぼ同じ側面図である。
【
図2C】曲げ配置位置にある
図2Aのマイクログラフトの側面図である。
【
図3A】螺旋形状に形作られた動脈瘤内マイクログラフトの別の実施形態の側面図である。
【
図3B】血流によって方向付けられるべきラッパ型に広がった端部を有する動脈瘤内マイクログラフトの別の実施形態の側面図である。
【
図4A】本発明の別の実施形態としての動脈瘤内マイクログラフトの部分切除側面図である。
【
図4B】
図4Aのマイクログラフトの近位端部の拡大図である。
【
図4C】本発明のマイクログラフトの変形実施形態の一端の側面図である。
【
図4D】クリンプ前においてマンドレルに嵌めて配置された
図4Aのマイクログラフトの断面側面図である。
【
図4E】クリンプ後における
図4Aのマイクログラフトの断面側面図である。
【
図4F】
図4Aのマイクログラフトの断面図であり、マイクログラフト全体を示す図である。
【
図4G】
図4Fに類似した断面図であり、マイクログラフトの変形実施形態を示す図である。
【
図4H】変形例としての管を備えた
図4Aのマイクログラフトの近位部分の側面図である。
【
図4I】
図4Aのマイクログラフトの下からみた斜視図であり、組物が内側コイルを示すよう切断された状態を示す図である。
【
図4J】組物内に内側コイルを示す前からみた斜視図である。
【
図4K】二次的螺旋形状に形成された
図4Aのマイクログラフトの斜視図である。
【
図5A】本発明の実施形態としての動脈瘤内マイクログラフトデリバリシステムの側面図である。
【
図5B】
図5Aのデリバリワイヤおよび取り付け状態のマイクログラフトの側面図である。
【
図5C】マイクログラフトとデリバリワイヤのテーパ部の結合状態を示す
図5Bの動脈瘤内マイクログラフトの拡大部分断面図である。
【
図5D】デリバリワイヤなしの
図5Aのプッシャカテーテルの側面図である。
【
図5E】本発明のマイクログラフトデリバリシステムの変形実施形態の側面図である。
【
図5F】ロック位置で示されている
図5Eのデリバリシステムの一部分の拡大断面図である。
【
図5G】デリバリシステムをロック解除位置で示す
図5Fと類似した図である。
【
図5H】デリバリシステムが引っ込められてマイクログラフトが完全に配備された状態を示す
図5Gに類似した図である。
【
図6】本発明の別の実施形態としてのマイクログラフト送達のための迅速交換プッシャカテーテルの側面図である。
【
図7】ロックアームを備えたプッシャワイヤを有する本発明の動脈瘤内マイクログラフトデリバリシステムの別の実施形態の側面図である。
【
図8】マイクログラフトを押すためのステントまたはフローダイバータを用いる本発明の動脈瘤内マイクログラフトデリバリシステムの別の実施形態の側面図である。
【
図9】本発明の別の実施形態としての動脈瘤内マイクログラフト導入器システムの側面図である。
【
図10】
図5Aの動脈瘤内マイクログラフトデリバリシステムをマイクロカテーテル中に装填する仕方を示す側面図である。
【
図11A】本発明の実施形態としての頭蓋内動脈瘤中への動脈瘤内マイクログラフトの送達の仕方を示す図であって、動脈瘤嚢中に挿入されたデリバリワイヤを示す図である。
【
図11B】本発明の実施形態としての頭蓋内動脈瘤中への動脈瘤内マイクログラフトの送達の仕方を示す図であって、ワイヤの取り出し部における頭蓋内動脈瘤中へのマイクログラフトの初期前進状態を示す図である。
【
図11C】本発明の実施形態としての頭蓋内動脈瘤中への動脈瘤内マイクログラフトの送達の仕方を示す図であって、
図11Bの位置に対応したカテーテルから出たマイクログラフトの拡大断面図である。
【
図11D】本発明の実施形態としての頭蓋内動脈瘤中への動脈瘤内マイクログラフトの送達の仕方を示す図であって、カテーテルから完全に配備されるとともに頭蓋内動脈瘤内に位置決めされたマイクログラフトを示す図である。
【
図11E】本発明の実施形態としての頭蓋内動脈瘤中への動脈瘤内マイクログラフトの送達の仕方を示す図であって、
図11Dの位置に対応した配備状態の血液充填マイクログラフトの拡大断面図である。
【
図11F】本発明の実施形態としての頭蓋内動脈瘤中への動脈瘤内マイクログラフトの送達の仕方を示す図であって、頭蓋内動脈瘤嚢内に位置決めされた
図11Eの多数のマイクログラフトを示す図である。
【
図12A】本発明の実施形態にしたがって動脈瘤中への動脈瘤内マイクログラフトのデリバリワイヤによる方向付けられた送達の仕方を示す図である。
【
図12B】本発明の実施形態にしたがって動脈瘤中への動脈瘤内マイクログラフトのデリバリワイヤによる方向付けられた送達の仕方を示す図である。
【
図12C】本発明の実施形態にしたがって動脈瘤中への動脈瘤内マイクログラフトのデリバリワイヤによる方向付けられた送達の仕方を示す図である。
【
図13】本発明の別の実施形態にしたがって頭蓋内動脈瘤中への長さの短い流れにより方向付けられた動脈瘤内マイクログラフトの送達の仕方を示す図である。
【
図14】本発明の別の送達方法にしたがってステントまたはフローダイバータのセルを通って動脈瘤内マイクログラフトを動脈瘤中に運ぶデリバリワイヤの送達の仕方を示す図である。
【
図15】
図7のアームを備えたデリバリワイヤを用いる動脈瘤中への動脈瘤内マイクログラフトの送達の仕方を示す図である。
【
図16A】
図1Aの場合と同様に波状プロフィールを示すよう本発明のクリンプされた組物の傍らに位置する非クリンプ状態の管状PET組物の写真図である。
【
図16B】本発明の実施形態にしたがってコイル状の形状にヒートセットされたクリンプマイクログラフト組物の傍らに位置するクリンプマイクログラフト編組の写真図である。
【
図16C】キャピラリー効果を示すために流体で部分的に充填された本発明のマイクログラフト管状本体を示す図である。
【
図18A】本発明のマイクログラフトを配置して配備する別の方法の概要を示す流れ図である。
【
図18B】本発明のマイクログラフトを配置して配備する別の方法の概要を示す流れ図である。
【
図19】本発明の実施形態にしたがって粘稠度ロック機能の概要を示す流れ図である。
【
図20A】本発明のデリバリシステムの変形実施形態の側面図である。
【
図20B】本発明のデリバリシステムの別の変形実施形態の側面図である。
【
図21A】本発明のマイクログラフトとインターロックされた状態で示された本発明のデリバリシステムの別の変形実施形態の側面図である。
【
図22A】本発明のマイクログラフトとインターロックされた状態で示された本発明のデリバリシステムの別の変形実施形態の側面図である。
【
図23A】本発明のデリバリシステムの別の変形実施形態の側面図である。
【
図23B】本発明のマイクログラフトとインターロックしている
図23Aのデリバリシステムの側面図である。
【
図24】マイクログラフトおよびフローダイバータをデリバリする本発明のデリバリシステムの別の実施形態の側面図である。
【
図25】クリンプ前後における(分かりやすくするために内側コイルが省かれている)組物の比較を示す図であり、クリンプ前における組物の拡大図(A)、クリンプ後における組物の拡大図(B)である。
【
図26】クリンプ前後における(分かりやすくするために内側コイルが省かれている)組物の比較を示す図であり、クリンプ前における組物の拡大図(A)、クリンプ後における組物の拡大図(B)である。
【
図27】クリンプ前後における(分かりやすくするために内側コイルが省かれている)組物の比較を示す図であり、クリンプ前における組物の横断面図(A)、クリンプ後における組物の横断面図(B)である。
【
図28】クリンプ前後における(分かりやすくするために内側コイルが省かれている)組物の比較を示す図であり、クリンプ前における組物の斜視図(A)、クリンプ後における組物の斜視図(B)である。
【
図29】本発明の一実施形態に係る血管インプラントのための包装材の平面図である。
【
図31】
図29の包装材から血管インプラントを取り出すステップを示す図であり、近位側への運動のためにデリバリワイヤの把持状態を示す図である。
【
図32】
図29の包装材から血管インプラントを取り出すステップを示す図であり、インプラントをシース中に引き込むようデリバリシースに対して近位側に引かれている状態のデリバリワイヤを示す図である。
【
図33】
図29の包装材から血管インプラントを取り出すステップを示す図であり、近位側への運動のためにシースおよびデリバリワイヤの把持状態を示す図である。
【
図34】
図29の包装材から血管インプラントを取り出すステップを示す図であり、包装材フープからシースおよびデリバリワイヤ(デリバリシステム)を引き出すよう近位側に縦一列に並んで引かれているシースおよびワイヤを示す図である。
【
図35】
図29の包装材から血管インプラントを取り出すステップを示す図であり、遠位側への運動のためのデリバリワイヤの把持状態を示す図である。
【
図36】
図29の包装材から血管インプラントを取り出すステップを示す図であり、包装材フープから遠位側に引き出されているデリバリワイヤを示す図である。
【
図37A】デリバリ部材の変形実施形態の斜視図であり、非結合状態のインプラント管とデリバリ部材を示す図であり、幾つかの部分が内部コンポーネントを示すよう透明な状態で示された図である。
【
図37B】デリバリ部材の変形実施形態の斜視図であり、非結合状態で示された
図37Aのインプラントおよびデリバリ部材の斜視図である。
【
図38】デリバリ部材の変形実施形態の斜視図であり、互いに結合状態にあるインプラント管とデリバリ部材を示す図であり、幾つかの部分が内部コンポーネントを示すよう透明な状態にありかつ内側ワイヤが伸長位置にある状態で示されている図である。
【
図39】デリバリ部材の変形実施形態の斜視図であって
図38に類似した図であり、互いに結合状態にあるインプラント管とデリバリ部材を示す図である。
【
図40】デリバリ部材の変形実施形態の斜視図であって
図38に類似した図であり、インプラントとデリバリ部材を結合解除するためにワイヤが引っ込み位置にある状態を示す図である。
【
図41】本発明のデリバリシステムの変形実施形態の側面図である。
【
図42】
図41のデリバリシステムの遠位領域の拡大図である。
【
図43】
図41のデリバリ部材内に嵌め込まれた外科用インプラントを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下の実施形態を、当業者が本発明を実施することができるようにするほど十分詳細に説明するが、理解されるように、構造的な変更は、本発明の範囲から逸脱することなく実施できる。したがって、以下の詳細な説明は、本発明を限定する意味にとられるべきではない。可能な場合、同一の参照符号は、図面全体を通じて、類似または同一のコンポーネントまたは特徴を意味するために用いられている。
【0053】
図1は、本発明の一実施形態としての頭蓋内動脈瘤中に挿入可能な動脈瘤内マイクログラフトの部分切除側面図である。全体を参照符号10で示されているこの実施形態のマイクログラフトは、剛性を減少させるとともに壁厚およびファブリック密度を増大させるようクリンプされた生体吸収性であるが非自己拡張型の吸収性編組ポリマーテキスタイル管状本体12を有する。マイクログラフト10は、以下に説明する利点を提供するのに十分な硬性ならびに十分な軟性を有する。マイクログラフトは、更に、以下にこれまた詳細に説明する血液凝固を促進する三重の毛管作用を実施可能にするよう構造化されている。マイクログラフトは、更に好ましくは、血液吸収量を増大させるための大きな表面積を有し、半径方向に変形可能であり、送達を容易にするために低摩擦性表面を有するとともに動脈瘤への詰め込みを促進するよう形状設定可能である。これらの特徴およびこれらの利点については以下に詳細に説明する。本発明のマイクログラフトは、動脈瘤を迅速に治療するために血液の淀みまたは凝血塊を生じさせるよう特別に設計されていることに注目されたい。マイクログラフトは、頭蓋内動脈瘤への送達が可能であるよう構成されているが、ただし、マイクログラフトは、身体の他の領域内の他の動脈瘤の閉塞ならびに他の血管領域または非血管領域内の閉塞を可能にするよう利用できる。
【0054】
オーバー・ザ・ワイヤ(over-the-wire)型デリバリシステムが本発明のマイクログラフトを動脈瘤に送達するために用意されている。本発明のこれらデリバリシステムの諸形態について以下に詳細に説明する。好ましくは、多数のマイクログラフトが動脈瘤嚢内に高密度に詰め込まれるよう送達される。
【0055】
最初に本発明の生体適合性マイクログラフト(デリバリシステムについては後で説明する)を参照すると、マイクログラフト10の好ましい管状本体12は、実質的に100%の20デニール/18フィラメントポリエステル(例えば、PET)多フィラメント織編されたヤーンで構成されているが、デニールおよびフィラメントの他の組み合わせ、例えば10デニール/16フィラメントヤーンまたは15デニール/16フィラメントヤーンで構成されても良い。すなわち、以下に説明する理由で、各ヤーンは、細孔または空間を間に有する複数のポリエステルフィラメントで構成され、複数のヤーンもまた、これらの間に細孔または空間を有する。管状本体は、近位端14および遠位端16を有し、「近位」という用語は、ユーザの近くに位置するものとして定義され、「遠位」という用語は、ユーザから遠くに位置するものとして定義され、したがって、遠位端が最初に動脈瘤中に挿入される。次に、血液がマイクログラフト10を通って遠位側から近位側の方向に流れる。管状本体12の好ましい内径は、約0.001インチ(0.025mm)から約0.068インチ(1.727mm)までの範囲にあり、より狭くは約0.006インチ(0.152mm)から約0.040インチ(1.016mm)までの範囲にあり、例えば、約0.008インチ(0.203mm)である。管状本体の長さは、約2mmから最大約150cmまでの範囲にあるとともにその好ましい外径は、約0.002インチ(0.051mm)から約0.069インチ(1.753mm)までの範囲、より狭くは約0.010インチ(0.254mm)から約0.041インチ(1.041mm)までの範囲、例えば約0.010インチ(0.254mm)から約0.020インチ(0.508mm)までの範囲にある。これらの範囲および寸法は、好ましい範囲および寸法であるが、他の範囲および他の寸法もまた想定されることに注目されたい。これらの寸法は、マイクログラフトを頭蓋血管内に配置可能に頭蓋血管系までナビゲートしてこれらの中に入れることができるほど十分小さなサイズのマイクログラフトを提供する。
【0056】
マルチフィラメントヤーンの各々は、多数の湿潤可能なマイクロフィラメントまたは繊維をこれらの間に繊維間空間または細孔と呼ばれる空間(細孔)が設けられた状態で組み立てたものである。細孔は、液体と接触したときに毛管作用を生じさせるのに十分に寸法決めされており、その結果、多孔性ヤーンに沿う液体の自発的な流れ(すなわち、吸い上げ)が生じる。ヤーン内の繊維の間(繊維間)のこの毛管現象は、「マイクロキャピラリー」作用と呼ばれている。その結果、十分に湿潤可能でありかつ多孔性のヤーンは、高い吸い上げ性を有するとともにその長さに沿って液体を運ぶ。多数のフィラメントはまた、大きな表面積を提供し、これら多数のフィラメントは、親水性であっても良く疎水性であっても良い。
【0057】
透過性構造体(例えば、テキスタイル)への2本または3本以上の吸い上げ可能なマルチフィラメントヤーンのこの集成の結果として、「マクロキャピラリー」作用が得られ、すなわち、液体がヤーン相互間でかつこの構造体全体を通じて運ばれる。かかるヤーンおよび/または繊維は、表面模様付けされていても良く、平坦であっても良く、撚り合わされていても良く、湿潤可能であっても良く、非湿潤可能であっても良く、種々の断面(トリローバル(三葉状)、マルチローバル、中空丸形など)のビード付きであっても良く、改質表面で被覆されていてもよくまたは改質表面を有していても良く、複合材であっても良く、多孔性であっても良く、あらかじめ収縮されていて良く、クリンプされていても良くまたは同様な熱処理または化学プロセスを用いてまたは改質されていても良い。
【0058】
編組機または他のテキスタイル製造機器および方法を用いてマルチフィラメントヤーンをテキスタイル管状構造体の状態に集成することができる。一般的に言って、編組機は、プログラムまたはレシピ、マルチフィラメントヤーンのスプールおよびオプションとしてのブレードオーバーすべきコアマンドレルを備えた状態でセットアップされるのが良い。所望の最終の構造的特性、例えば密度、1インチ当たりのピック(PPI)、ポロシティ、コンプライアンスなどに応じてマルチフィラメントヤーンの約8本から約288本までのうちのいずれかの本数のストランドを用いて管を形成することができる。所望ならば、コイルワインダと組み合わせて多数の編組機または1つの編組機を同時に稼動させてブレードオーバーブレード(組物上に組物)またはブレードオーバーコイル(コイル上に組物)設計を形成することができる。
【0059】
血管グラフト(マイクログラフト)は、血流が遠位端部中に、そしてルーメンを通って流れるようにするために近位端部のところに近位開口部を有するとともに遠位端部のところに遠位開口部を有する(近位開口部および遠位開口部は、長手方向軸線と整列している)、それにより連続した内側ルーメン(内周部)を通る血液の運搬のための導管が形成される。生体適合性構造体が血液に露出されると、血管グラフト内に毛管効果が生じ、その結果、血液は、血管グラフトの遠位開口部を通ってかつ血管グラフトを通って近位側の方向に運搬され、血管グラフト内で血液が凝固する。かくして、血液は、当初、遠位開口部を通り、血管グラフトを通り、そして近位開口部に向かって流れ、血液は、グラフト内で迅速に淀む。幾つかの場合、血液は、近位開口部を出るが(例えば、十分な圧力が存在する場合)、他の場合、毛管作用は、グラフトを満たすに過ぎず、近位開口部から出る流れを生じさせない。血管グラフトは、血液を保持し、凝固を促進するために血液で飽和状態になる。本明細書において開示する外側部材、すなわちテキスタイル構造体は、このテキスタイル構造体内での流れを可能にする管状部材として構成され、毛管または毛細管として機能する。すなわち、管状テキスタイル部材は、独立気泡方式に構成され、それにより管状テキスタイル構造体を通る流れのための管を形成し、すなわち、テキスタイル構造体内のルーメンは、毛管または毛細管としての機能を可能にするほど十分小径であるが、テキスタイル構造体は、依然として、本明細書において説明したようにヤーンおよびフィラメントを通りかつこれらに沿う血液を吸収するために十分なサイズの開口部/空間を有する。かくして、連続壁(連続内周部)が血液を保持する一方で血液を吸い上げたり吸収したりするために繊維相互間に狭い空間(マイクロ毛管)を維持するようテキスタイル構造体の長さに沿って形成される。この独立気泡または密なテキスタイル、例えば、編組構造体は、本明細書において開示する非拡張型実施形態において維持され、と言うのは、テキスタイル構造体の直径(およびかくして血管グラフトの直径)は、運搬位置とインプラント位置では変化しない。すなわち、テキスタイル構造体は、非拡張型であり、その結果、テキスタイル構造体が動脈瘤まで運搬されると、その外径Xは、デリバリ部材内に位置決めされたときのとの外径Xに等しい。拡張型テキスタイル構造体では、少なくとも、初期拡張時またはある特定のサイズ/割合までの拡張時、フィラメント相互間および/またはヤーン相互間の空間は、器具が大きな外径まで拡張すると増大し、それにより開口部を増大させて開放気泡構造を増大させまたは作る。幾つかの実施形態では、本明細書において開示する実施形態の独立気泡構造体は、非常に小さい開口部を形成するのでテキスタイル構造体によって覆われる内側要素、すなわちコア要素は、外側テキスタイル構造体越しには見えない。
【0060】
上述したように、管状テキスタイル構造体(これは、幾つかの実施形態では組物を形成する)は、フィラメント相互間および/またはヤーン相互間の大きな空間なしに長さに沿って連続円周方向壁を形成する。この連続壁は、
図4A~
図4Dの狭い空間内で示されており、かくして、流れを収用するとともに方向付けるための連続した外側部材(ポロシティの低い壁)を生じさせる。これとは対照的に、フィラメント相互間に大きな開放細孔を用いると、その結果として、血液がテキスタイル構造体のストランド(多孔性の高い壁を形成する)相互間の大きな細孔または隙間を半径方向に通過することができるようにする非連続壁を備えた外側部材(外側テキスタイル構造体)が得られ、したがって、この構造体は、血流を収容せずまたは方向付けず、かくして毛管作用(効果)は行われず、しかも血液を通過状態で運搬する血管グラフトのように挙動することはない。これとは異なり、この構造体は、血液のための導管というよりはむしろ、ネットまたはストレーナのように働くことになり、毛細管(管状構造体)でないことは言うまでもない。すなわち、テキスタイル構造体のヤーンは、好ましい実施形態では、壁を介してかつルーメン内の血液を吸い上げて運ぶための連続壁を形成するのに足るほど密である。
【0061】
毛管作用または毛管現象は、血液が壁(例えば、繊維表面)の湿潤に起因して生じる毛管力によって駆動される湿潤可能な壁を備えた細い隙間または空所を満たす液体の能力として定義できる。湿潤性または湿潤は、固体表面がこれと接触状態にある液体を引きつけて液体がこの表面上に広がってこれを湿潤させる能力である。吸い上げ性または吸い上げは、毛管力により駆動される液体の自発的な流れである。テキスタイル媒体を通る毛管流は、繊維およびヤーン相互間の顕微鏡的な相互連結空所に形成されたメニスカス(湿潤)に起因している。テキスタイルまたは繊維媒体中の吸い上げは、液体が繊維相互間の毛管状空間と集成された繊維を湿潤したときにのみ起こることができる。毛管力は、湿潤によって引き起こされるので、毛管現象を生じる構造体は、十分に小さくて相互に連結された隙間を備えた湿潤性繊維で構成される。本明細書において開示するテキスタイル構造体は、湿潤可能なヤーンで構成されかつヤーンが血液を吸い上げる湿潤可能な繊維で構成されているので、テキスタイル構造体のかかる構造体中の毛管流は、ヤーンの繊維相互間(繊維内)およびテキスタイル構造体の壁中のヤーン相互間(ヤーン内)の毛管状空間の充填としてみなすことができる。ヤーン相互間に形成される毛管状空間は、マクロキャピラリーと呼ばれる場合があり、ヤーンの個々の繊維相互間に形成される毛管状空間は、本明細書において説明するようにミクロキャピラリーと呼ばれる場合がある。理解されるべきこととして、毛管作用は、ヤーンがテキスタイル構造体の壁を構成することで起こり、ヤーンを構成する繊維は、本明細書において開示する血管グラフトのテキスタイル構造体中の場合のように吸い上げを誘起するミクロキャビティキャピラリーを生じさせるのに足るほど密に(例えば、
図4Aおよび
図4Mに示されているように)集成される。かくして、本明細書において開示する実施形態の管状テキスタイル構造体は、毛細管として働くよう3つの毛管作用(すなわち、内部(内側)ルーメン、ヤーン内およびフィラメント内毛管作用)を利用し、そしてまた、管状構造体内の血液保持を達成する。理解できるように、毛管現象は、細孔サイズに依存しており、このことは、テキスタイル構造体中の隙間が毛管流を開始させるのに十分に小さくなければならないことを意味している(すなわち、小さな細孔または空間の結果として良好な吸い上げが起こる)。テキスタイル構造体は、テキスタイル構造体の過度のポロシティが存在する場合には毛管作用を誘起しない。
【0062】
本発明の血管グラフトは、有利には、血液凝固を促進し、すなわち血液淀みおよび凝固を誘起して動脈瘤を迅速に治療する。これは、1つには血液がグラフトにいったんしみこむと、血管グラフトはこの中に血液を保持する構成によって達成される。血液は、幾つかの実施形態では、デリバリ部材によって依然として保持されるとともに動脈瘤内に配置されているときにグラフトにしみこむ。
【0063】
テキスタイル構造体を管状部材として形成し(内側要素へのフィラメントの巻き付け/編組ではなく)、次に外側テキスタイル構造体への取り付けのために管状部材内に内側コア要素を挿入/位置決めすることによって、テキスタイル構造体の内面が部分的に内側要素と接触関係をなす。幾つかの実施形態では、この接触部分は、端部分であるのが良い。他の実施形態では、これら接触部分は、クリンプされたテキスタイル構造体の谷部の領域であるのが良い。他の断続的な接触部分もまた想定される。現行の塞栓コイルは、使用中に延伸しまたはほどけるのを阻止するために内部耐延伸性部材を必要とする。本明細書において開示するテキスタイル構造体では、内部耐延伸性部材は、必要ではなく、と言うのは、内部要素、例えば放射線不透過性コイルが巻き戻りまたはほどける恐れが存在しないからであり、と言うのは、テキスタイル構造体が延伸抵抗をもたらすからである。かくして、本明細書において開示するインプラント構造には、かかる追加の内部耐延伸性部材がないのが良い。また、かかる耐延伸性部材がこの構造体内に存在していないことにより、遠位端部を通りかつ血管グラフトのルーメンを通る血流を妨害しまたは阻止しないように障害物のないルーメンが提供される。
【0064】
組物の内径(ID)を設定するコアマンドレル上にマイクログラフト10を編組する。コアマンドレルは、様々な材料、例えば金属、ワイヤ、ポリマーまたは他のテキスタイル繊維で作られるのが良い。コアマンドレルは、製造中、取り外しを助けるよう延伸または引き伸ばし可能な材料で形成されても良い。
【0065】
マイクログラフト10は、例えば、以下に説明する
図4Aの実施形態に示されている永続的なコア要素を更に有するのが良い。コア要素は、種々の材料で構成でき、コア要素はそれ自体、1本または2本以上のフィラメントで作られるのが良く、オプションとして、被覆されるのが良い。好ましい一実施形態では、コア要素は、ルーメンが設けられた金属コイルで形成される。コア要素は、白金‐タングステンまたは他の材料で構成されても良い。組物およびコイルは、組物を損傷させずまた崩さない温度でヒートセットされるのが良い。
【0066】
編組プロセスは、テンティング(それ自体の上に自己編組またはオーバーラップ)なしで密に織編された高密度の組物を製作するよう可能な限り最も高いPPIに合わせて調節可能である。しかしながら、幾つかの場合、使用可能な特徴、例えばロックまたは壁厚肉化のための組物バルジまたはリングを生じさせるためにテンティングが望ましい場合がある。組物は、コアマンドレルに依然として取り付けられたままの状態で、PPIを含む組物構造体をセットするとともに編組中に生じるフィラメント応力を除去するために製造後に熱処理されるのが良い。
【0067】
例えば編組されたままの状態の治療効果のある構造体のための好ましいPPIは、例えば、約16ストランド組物について約80から約200PPIまでの範囲、より狭くは、約120から約180PPIまでの範囲にあるのがよく、好ましくは約167PPIである。PPIは、編組するために用いられるストランドの本数、組物角度、および組物直径で決まり、したがって、120PPIおよび16ストランドを有する所与の直径の編組管は、同一直径で8ストランドを用いて編組されたときに60のPPIを有することになる(変数の全てを一定であると仮定する)。好ましいPPIは、コアが延伸可能でない場合、高密度織編パターンを作るのに足るほど高くあるべきであるが、コアマンドレル取り外しを邪魔するほど高くあってはならない。クリンプを用いてこの場合もまた最終の構造的要件に応じてPPI(および組物角度)を増大させるために使用されるのが良く、このクリンプについては、後で詳細に説明する。
【0068】
本発明の比較的高いPPIと組み合わせてマルチフィラメントヤーンを用いる結果として、幾分剛性であって比較的小さくまたは閉じられたセル(高いピック密度)の編組管が得られる。上述したように、結果として繊維間空間に起因した多孔性ヤーンに沿う液体の吸い上げを生じさせるマイクロキャピラリー効果と、ヤーン相互間および湿潤可能なマルチフィラメントヤーンの使用と関連したヤーン間ポロシティに起因したテキスタイル壁全体を通じる液体の流れを生じさせるマクロキャピラリー効果が存在する。製造された管の比較的小さな内径および十分に高密度の織編組物パターン(すなわち、流体を保持するのに十分に小さな細孔サイズを備えたフィラメント状壁構造体)に起因して第3のキャピラリー効果が作られる。適正に寸法決めされた場合、この第3のキャピラリー効果は、近位側の方向におけるマイクログラフトルーメン内の、例えば組物のルーメン内の液体の自発的な流れを生じさせる働きを持つ。内側要素を含む
図4Aの実施形態では、第3の毛管効果は、a)毛管効果が組物内ルーメン内に存在するよう組物のルーメン内に位置する内側要素のルーメン、および/またはb)管状組物の内周部と内側要素の外周部との間の隙間内からのいずれか一方または両方による。液体はまた、これが吸収されるときに他の方向に広がることができる。かくして、この構造の結果として、吸収性壁を有する軟質毛管(キャピラリーチューブ)が得られる。この三重のキャピラリー効果は、ヤーン、繊維状壁、およびマイクログラフトルーメンが血管で飽和状態になることができるということによって血流閉塞器具にとって有益である。マイクログラフトによって吸収される血液がこの構造体内に捕捉されるので、マイクログラフトは、血液が淀んだ状態になって迅速に血栓を形成しまたは凝血塊を形成する。例示の実施形態では、内径は、好ましくは、約0.003インチ(0.076mm)~約0.012インチ(0.305mm)、より好ましくは約0.007インチ(0.178mm)である。
【0069】
キャピラリー特性および凝固特性を達成するため、マイクログラフト10は、同一構造体内にポロシティと流体閉じ込めの最適なバランスを達成する。これは、血液の吸い上げおよび細胞内方成長を可能にする微孔性ヤーンの制御された織編によって達成される。例えば十分に高いPPIおよび張力をもって編組された場合、多孔性ヤーンは、ある程度の透過性を維持する流体バリヤを形成することができる。結果として得られる構造体(テキスタイル管)は、流体密管による毛管現象を生じさせるのに十分な密度で織編されるのが良い微孔性ヤーンの集成体である。ヤーンのこの織編またはフィラメントの集成は、テキスタイル製造プロセス、例えば織成、編成、またはエレクトロスピニング(electrospinning)を用いて達成できる。多孔性または半多孔性フィラメントもまた、所望の吸収性を達成するためにマルチフィラメントヤーンに代えて使用できる。加うるに、マイクログラフト構造体は、毛管現象を維持するために明確に規定された内側ルーメン、例えば組物またはコア要素の壁内に形成された規定されたルーメンを含む必要なく、別法として、液体の輸送を可能にするのに十分に互いに間隔を置いて配置された繊維の多孔性集成体(液体を吸い上げる縫合糸またはストリングに極めて良く似ている)または多孔性スカフォールドもしくは生体適合性連続気泡フォームであっても良い。
【0070】
上述したように形成される半多孔性マイクログラフト10は、血栓生成を助けるという所望の作用効果を有するが、このマイクログラフトは、フィラメントが上述したように密に詰め込まれまたは緊密に編組された結果として比較的剛性でもある。剛性の高密度組物の一利点は、これが低いPPI(密度が低い)組物と比較して、その非直線ヒートセット形状を維持することができるということにある。これは、動脈瘤周囲の初期充填のために用いられるフレーミング型器具としての剛性で密度の高い3D形状のマイクログラフトの使用を容易にすることができ、この場合、軟質のかつ応従性の高いマイクログラフトを塞栓形成手順の終わりに向かってフィラーまたは「仕上げ」器具として使用できる。例えば、高密度(または高いPPI)2×2(ツー・オーバー・ツー)形態の組物を初期の「フレーミング」器具として用いることができ、これに対し、低いPPIの1×2(ワン・オーバー・ツー・アンダー2)形態を有するこれよりも軟質のかつ応従性の高い組物を次に用いると、最初の器具内にフレーミングされた空間を充填することができる。しかしながら、例えフレーミング器具として用いられた場合でも、過度の剛性は、マイクロカテーテル送達にとって望ましくない機械的性質であり、というのは、過度に剛性の器具は、送達中にマイクロカテーテル先端部の望ましくない動きを生じさせる場合があり、これは、曲がりくねった血管系中の前進中にマイクロカテーテルのナビゲーションに悪影響を及ぼす場合がありまたは血管を損傷させる場合があるからである。過度の剛性はまた、剛性の器具が動脈瘤嚢の形態へのコンフォーマブルが少なく、かくして効果的な動脈瘤詰め込みを阻止するので、望ましくない特性である。
【0071】
したがって、送達および動脈瘤嚢への詰め込みを助けるよう剛性を減少させるため、製造の際、マイクログラフト管状本体(組物)12をクリンプし、すなわち長手方向に圧縮して熱硬化させる。組物12を圧縮しているとき、編組ストランドの軸方向配向を緩和し、それにより管状本体の長手方向軸線に対する組物角度を増大させ、それによりコイル状にしたときに可撓性の高い形態をとる真っ直ぐなワイヤに非常に良く似た構造体の全体的剛性に対するこれらの影響を減少させる。クリンプはまた、構造体およびフィラメントの束を軸方向に圧縮することによって組物のPPI、壁厚、および線形密度を効果的に像対させる。この圧縮により、外方への半径方向膨張および管の壁厚の増大が生じる。結果的に得られる組物は、組物構造および加えられた圧縮力に応じて、極めて高い偏向性を示し、減少した曲げ半径を有し、高い密度を有するとともに最高2倍から3倍以上のPPIの増大を示す。
【0072】
この軸方向圧縮はまた、組物構造体が
図1に示されているように「蛇行し」または螺旋波状形態を生じさせるようにし、これは、横から見て、正弦波形状の「マクロクリンプ」と呼ばれる一連のマクロ山部と谷部である。正弦波状起伏部(マクロクリンプ)は、代表的には、壁厚と全体的組物直径の比が大きい(すなわち、全体的直径が減少する)組物構造体において顕著である。十分なクリンプもまた、個々のヤーン繊維束を最も平たくされた(長手方向に組織化された断面)状態から圧縮(横方向に組織化された断面)状態に再配向させることができる。これにより、組物の表面の不均一さが増大し、その理由は、個々のヤーンが外方に膨らんで「マイクロクリンプ」(例えば
図4Bおよび
図25B参照)と呼ばれる組物表面上にマイクロ山部および谷部を生じさせるからであり、山部17は、ヤーンの最も高いところに位置し、谷部19は、隣り合うヤーン相互間に位置する。
【0073】
組物は、一連の同軸整列状態のフィラメントを有するのが良く、この組物は、フィラメントが実質的に横方向に(マンドレルの長手方向軸線に対して)配向するよう圧縮されるのが良い。
【0074】
種々の組物パターン(例えば、1×1、1×2、または2×2など)はまた、クリンプされると、様々な結果を生じさせる場合がある。例えば、1×1組物構造体は、一様な管状形状を有するとともに特異性の少ないマクロクリンプパターンを有する傾向があり、これに対し、1×2組物構造体は、個々の繊維束のマイクロ山部および谷部(マイクロクリンプ)に加えて、正弦波状(マクロ山部および谷部)のクリンプされた構造体を生じさせる。これら構造的変化の結果として、
図1の正弦波形状に示されているようにマクロ山部18および谷部20を備えた超高偏向性で密度が増大した波形壁構造体が得られる。
【0075】
編組可撓性、PPIおよび/または壁厚の増大の他に、様々なクリンプ量は、潜在的に望ましい特徴、例えば耐キンク性、耐圧潰性、曲げ半径の減少ならびに壁のアコーディオン状圧縮(すなわち、山部および谷部の形成)による単位長さ当たりの表面積の増大をもたらす。クリンプの山部および谷部の不均一なテキスチャはまた、局所化された血行力学的乱流および流れの淀みを生じさせるのを助け、その結果、血栓形成が向上する。クリンプは、器具を応従性にし、容易に偏向性にし、しかもコンフォーマブルにし、それにより血管系中の限定された空間または空所、例えば動脈瘤への詰め込みを容易にする。クリンプはまた、テキスタイル壁の吸い上げ性および透過性を変化させるためにも使用でき、その理由は、クリンプによりファブリックポロシティが減少するとともにヤーンの屈曲度が増大するからである。
【0076】
クリンプの実施場所、量および大きさを制御すると、互いに異なる大きさの可撓性および伸長度を構造体に与えてその所望の特性を達成することができる。例えば、過度のクリンプは、各ヤーン束内の個々の繊維が一緒になってそれ以上圧縮することができないようになるまで圧縮するよう利用することができ、それにより組物にある程度の剛性を与えるとともにマイクロカテーテルルーメン中への押し通し性を向上させることができる。クリンプおよびその結果として得られる長手方向パターンに影響を及ぼす他の要因は、繊維直径、繊維のこし(スチフネス)、組物中におけるヤーン張力、壁厚、壁ポロシティ(PPI)、フィラメントの本数およびマンドレルの直径である。
【0077】
例えば、大径で薄肉の、すなわち低い壁厚と外径の比を持つ管状本体(組物)は、小径の厚肉クリンプ管よりも密度が高くかつ視認性の高いマクロ山部および谷部を呈することができる。
図2A~
図2Cは、山部が互いに近く位置するにつれてクリンプが正弦波形態よりもアコーディオン状の折り目またはひだ構造体を形成することができるかかる大径薄肉の管の一例を示している。小径の組物(高い壁厚と外径の比を備えた組物)をクリンプすることにより、代表的には、全体的直径と比較して大きな波状の正弦波長手方向(マクロ)輪郭が生じるとともに、
図16Aおよび
図28Bに示されているように構造体の壁厚が増大する。注目されるべきこととして、正弦波状輪郭は、形態が代表的には三次元(螺旋状)であり、組物全ての側から見える。クリンプ中、管状本体の端もまた、互いに対して回転/より合わせを行うのが良く、次に、別の方法として熱硬化させると、偏向性が管状本体に与えられる。
【0078】
クリンプは、テキスタイル管状構造体を軸方向に圧縮して長さを減少させ、それにより長手方向に延びる波形状を生じさせることによって作られる。クリンプすることによって、繊維の軸方向向きが減少して組物角度が増大するとともに生体適合性管状構造体を軸方向に圧縮することによって線形密度および壁厚が増大し、そしてクリンプすることによって、壁の表面の長さに沿って、すなわち、長手方向軸線に沿って長手方向に一連の交互に位置する山部と谷部が形成されて長手方向に延びる波形正弦波形状が形成される。幾つかの実施形態では、クリンプすることにより、組物角度を少なくとも5°増大させることができる。他の実施形態では、クリンプすることにより、組物角度を1~4°増大させることができる。例えば、幾つかの実施形態では、クリンプする前における組物角度は、1°~約40°であるのが良く、クリンプした後における角度は、約35°~90°であるのが良い。他の角度もまた想定される。
【0079】
組物10は、組物角度またはPPIを変化させることにより、ヤーン張力を減少させることにより、切れ目/スリットを追加し、ヤーンまたはストランドの本数を変え、またはその長さに沿って繰り返しパターン(例えば、平坦な区分またはキンク)を熱硬化させることによってより可撓性に作ることも可能である。剛性の高い管が望まれる場合、高密度ヤーンおよび/または組物パターンを用いるのが良くまたはクリンプ度を減少させる。加うるに、マイクログラフト構造体は、特に細デニールテキスタイルを用いた場合に同軸構造(すなわち、グラフト内にグラフトを有する)またはマルチプライもしくはマルチルーメン壁設計を有することができる。ルーメン内組物インサート、例えば上述のコイルもまた、キャピラリー効果を促進するよう高い湿潤性/親水性の材料で構成されるのが良くまたは覆われるのが良い。例えば、マイクログラフトは、治療効果のある外面を維持しながら高い親水性かつ/あるいは放射線不透過性の二次組物または内部コイル構造体と同軸状に集成するのが良い。
【0080】
管状本体12は、モノフィラメントヤーン、マルチフィラメントヤーン、ストランド、縫合糸、マイクロファイバ、または剛性、半剛性、天然または熱可塑性であるワイヤから部分的にまたは完全に編組され、織成され、または編成されるのが良い。かかる材料としては、ダクロン(Dacron)、ポリエステルアミド(PEA)、ポリプロピレン、オレフィンポリマー、芳香族ポリマー、例えば液晶ポリマー、ポリエチレン、HDPE(高密度ポリエチレン)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPEまたはUHMW)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ePTFE、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ナイロン、PEBAX、TECOFLEX、PVC、ポリウレタン、サーモプラスチック、FEP、シルク、およびシリコーン、生体吸収性ポリマー、例えばポリグリコール酸(PGA)、ポリ‐L‐グリコール酸(PLGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ‐L‐乳酸(PLLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリエチルアクリレート(PEA)、ポリジオキサノン(PDS)および疑似ポラミノ(pseudo-polamino)型のチロシンを主成分とする酸、押し出しコラーゲンが挙げられるが、これらには限定されない。また、金属材料、金属合金材料または放射線不透過性材料が含まれるのが良い。かかる材料は、ストランドまたはフィラメントの形態をしているのが良く、かかる材料としては、例えば、白金、白金合金(例えば、白金‐イリジウムまたは白金‐金)、単一ステンレス鋼合金、多ステンレス鋼合金、ニッケルチタン合金(例えば、ニチノール)、硫酸バリウム、酸化亜鉛、チタン、ステンレス鋼、タングステン、タンタル、金、モリブデン合金、コバルトクロミウム、タングステンレニウム合金が挙げられる。
【0081】
好ましい実施形態では、テキスタイル構造体は、非吸収性材料、例えば上記において一覧表示した非吸収性材料(材料が組織中に吸収されるべきまたは人体によって吸収されるべき材料に関する医学的適応を備えていない材料)で形成される。
【0082】
管状本体を構成するための種々の製造方法または種々の材料の使用は、上述したキャピラリー効果に影響を及ぼす場合がある。例えば、材料または構成方法の変更の結果として、壁ではなく管の内側ルーメンにのみ毛管流が制限された単一の毛管を得ることができる。当業者には理解されるべきこととして、ストランドまたはフィラメントを編組し、織り合わせ、編成しまたは違ったやり方で組み合わせてファブリックまたはテキスタイル構造体を形成することができる。
【0083】
次に本発明のマイクログラフトの例示の実施形態を示す図面を参照すると、
図1のマイクログラフト10は、上述したように、近位端14および遠位端16を備えた管状本体12を有する。
【0084】
器具がX線透視(X線)下で見ることができるよう放射線不透過性をもたらすため、マイクログラフト10は、マイクログラフト10の端中に挿入された放射線不透過性マーカーバンド22を有するのが良い。
図17は、かかるマーカーバンドを備えたマイクログラフト10の端の絵画図である。コイルまたは球体の形態をしていても良いマーカーバンドは、タンタル、白金、白金合金(例えば、白金‐イリジウム合金)、金、タングステン、または任意適当な放射線不透過性材料、例えば放射線不透過性ポリマーで作られるのが良い。マーカーバンド22は、好ましくは、長さが約1mm以下であり、これらマーカーバンドは、管状本体12上でこれに沿って摺動するのに十分な内径のものであるか管状本体12内に嵌まるよう小さな直径かのいずれかのものであるのが良い。
図1は、管状本体の内側に嵌め込まれたマーカーバンド22の一例を示しており、マーカーバンド22は、組物を領域24のところでバンド(溶融繊維)上で溶融させることによって固定されても良くまたは接着によって取り付けられても良い。バンド22はまた、これらバンドをスエージ加工しまたは管状本体12の外部上に折り重ねることができるよう寸法が小さめでありかつ長さ方向にスライスされるのが良く、あるいは、寸法が小さめのバンド22を管状本体12に取り付けるために寸法が小さめのバンドを延伸/圧縮長さにわたって摺動させることができるよう管状本体12を延伸させるのが良い。変形実施形態では、バンドは、一端がラッパ状に広げられているのが良い。
【0085】
2つのマーカーバンドが図示されているが、変形実施形態では、1本または3本以上のバンドが放射線不透過性を向上させるようその長さの幾つかの部分に沿って管状本体周りに配置されても良い。長さに沿って位置決めされたバンドは、一端のところに設けられたマーカーバンドまたは両端のところに位置するマーカーバンドに替えてまたはこれらに加えて設けられるのが良い。放射線不透過性繊維を利用すると、これらのバンドを連結することができ、放射線不透過性繊維がテキスタイル構造体中に組み込まれても良くまたは管内に配置されても良い。これらのバンドは、金属で構成されるのが良くまたは変形例として非金属材料、例えば放射線不透過性収縮チューブまたはポリマーで構成されても良い。
【0086】
マーカーバンドは、接着剤を用いて、管状本体上への直接的なスエージ加工または巻回によって機械的に、あるいは材料のうちの1つを加熱し(可能な場合)、そして溶融させることによって管状本体12に取り付けられるのが良い。バンドは、変形例として、以下に説明するようにコア要素、例えば螺旋状コア要素に螺着されまたは螺入されることにより取り付けられても良く、ただし、好ましい実施形態では、組物は、本明細書では内側コイルが組物ストランド相互間では直接見えない、あるいは組物の隙間越しには直接見えないとして規定される独立気泡である。しかしながら、好ましい実施形態では、独立気泡形態は依然として、星眼詩において説明する毛管作用を介して血流のためのヤーンとフィラメントとの間の十分な空間を有する。
【0087】
マーカーバンドに代えてまたはこれに加えて、マイクログラフトを放射性不透過性物質、例えば造影剤溶液またはナノ粒子で被覆し、湿潤させ、染色し、または含浸させることによって放射線不透過性を得ることができる。これは、製造の際にまたは臨床手技の一部として手術室内で実施できる。繊維またはヤーンはこれら自体、上述したように放射線不透過性物質でドープされもしくは含浸されまたは被覆されるのが良い。マイクログラフトは、その長さに沿って一連の等間隔を置いて配置された放射線不透過性インサートを更に有するのが良く、その結果、臨床的セッティングにおいて視覚化にとって十分であると言える間欠的な放射線不透過性が得られる。
【0088】
放射線不透過性を提供することに加えて、バンド22は、マイクログラフトの送達について以下の説明で良好に理解されるように、すり減りを制御するための手段としてまたはデリバリシステムの一体部分(例えば、ストップカラー)として管状本体12内に構造的変化を指示するためにも使用できる。
【0089】
バンドの別の変形例として、漸増する放射線不透過性を示すよう作られているレーザカットされたニチノール構造体を利用しても良い。これら構造体を内周部か外周部かのいずれかについてマイクログラフトの近位端および/または遠位端に接着し、これら上に溶融させ、縫い付けまたは違ったやり方で取り付けるとともに/あるいは管状本体の長さに沿って取り付けるのが良い。マイクログラフトの幾つかの区分または編組ポリマーの溶融可能/融解可能スリーブもまた加熱してこれらを用いてバンドまたは他の放射線不透過性構造体(コンポーネント)をマイクログラフトに接着させるのが良い。変形例として、バンドまたは他の放射線不透過性コンポーネントを組物内のコイル巻線中への螺入によって取り付けても良い。バンドまたは他の放射線不透過性コンポーネントは、自己拡張性か非自己拡張性かのいずれであっても良い。以下に説明する運搬または送達ワイヤおよびプッシャカテーテルと結合されると、これらバンドまたは他の放射線不透過性コンポーネントは、ワイヤに対するマイクログラフトの直線運動を制御するのに役立ちうる。
【0090】
放射線不透過性を提供するバンドの変形例として、上述したような放射線不透剤を利用することができ、かかる放射線不透剤は、グラフトの全長の完全視覚化を可能にする。視覚化を提供する別の手法は、マイクログラフトの内側ルーメンの全長を横切って放射線不透過性コイルまたはインサートを設けることである。しかしながら、好ましくは、かかるコイルが構造体の半径方向スティフネスの望ましくない増大を追加するのを回避するためにかかるコイルの追加によりグラフトを全長にわたって放射線不透過性にし、また、X線視認性を最大にしながらかかるスティフネスを最小限に抑えるために、かかるコイルは、一般的にはX線透視法によっては見えない極めて細いワイヤを用いて巻回されるのが良いが、十分に小さいピッチ(各ループ相互間の間隔)でコイル状にされると、かかるコイルは、密度および視認性が漸増するようになる。コイルのピッチはまた、幾つかの区分を他の区分よりも高い放射線不透過性または可撓性にするよう変化しても良い。コイルは、例えば白金、白金‐イリジウム、タンタル、金、銀または医療器具視覚化に用いられる他の放射線不透過性物質のような材料で作られるのが良い。コイルは、使用に応じて、その長さに沿って連続直径または変化する直径を有するのが良い。コイルは、放射線不透過性バンド、被膜と組み合わせてまたはスタンドアロン型放射線不透過性解決策として使用されても良い。マイクログラフト内へのかかるコイルの挿入はまた、コイルと組物の半径方向並置状態に応じて、所望ならばクリンプ中に形成されるマイクロクリンプの大きさを減少させることも可能である。また注目されるべきこととして、コイルまたは他の内部インサートは、クリンプの大きさに応じて、組物壁越しに部分的に視認できるのが良い。
【0091】
必要ならば、単純な“J”形状を管状本体12中に熱硬化させて動脈瘤中への導入を助けるのが良い。また、送達および/または内皮細胞成長を助けるよう作用剤を管に添加するのが良い。例えば、親水性被膜を管状本体12の表面に被着させると、マイクロカテーテルを通る送達を助けることができまたは薬剤が注入された膨潤可能なヒドロゲルを追加すると、動脈瘤の薬剤治療および追加の充填をもたらすことができる。別の例は、凝固プロセスを遅らせるかまたは阻止するかのいずれかを行いあるいは凝血塊形成を促進するために追加されるのが良い凝固剤である。生体吸収性および生体適合性繊維状要素、例えばダクロン(ポリエチレンテレフタレート)、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、フルオロポリマー(ポリテトラフルオロエチレン)、ナイロン(ポリアミド)またはシルクを組物中に組み込みまたは表面に被着させると、管状本体12が血管系内の空間を埋める能力を促進させて凝血塊形成および組織成長を容易にすることができる。同様に、特定の使用(例えば、塞栓化学療法)に応じて、ヒドロゲル、薬剤、化学療法ビーズおよび/または繊維を管状本体12の内周部に添加しても良くあるいは壁、ヤーン、または繊維中に注入しても良い。マイクログラフトの仕上げ側(近位端)では、マイクロコイル(図示せず)を追加して動脈瘤嚢と親血管との間にバリヤをもたらすのが良い。
図1は、以下に説明する同様な特徴または機能を含むことができる。
【0092】
図2A~
図2Cは、大きな直径および薄い壁を有することを除き
図1のマイクログラフト10とほぼ同じマイクログラフトを示している。
図2Aは、山部および谷部を形成するよう上述したプロセスでクリンプされた薄肉マイクログラフト25を示しており、その結果、円周方向波形部または折り目が作られている。
図2Bは、管状本体を延伸することによって山部と谷部を強調するために例示目的で提供されている。
図2Cは、曲げ位置にあるマイクログラフト25の一部分を示している。幾つかの実施形態では、マイクログラフトは、動脈瘤嚢内への積み込み具合を向上させるようこの曲り部の状態に、例えばU字形形態にあらかじめ設定されている。図示のように、マイクログラフトの構造に起因して、マイクログラフトは、曲げられると、曲がりコイルとほぼ同じ仕方でその半径またはアールを維持する。(マイクログラフトは、以下に説明するように実質的に直線姿勢で運ばれる)。図示のように、圧縮および熱硬化(クリンプ)プロセスは、山部18′および谷部20′を備えた「アコーディオン状」構造を作る。
図2A~
図2Cでは、マイクログラフト25の壁は、きめの細かい組物またはテキスタイル構造体であり、かかる壁は、直接的な血流中に配置されると中実構造体に近くなり、高い流れの妨害度を生じさせる。グラフトの別の特徴は、その色が白色であるということであり、これは、PET形成および処理に応じて様々であって良い。所望ならば、白色以外の色を用いて例えば互いに異なる本体直径または機械的特性または治療特性の移り変わりを示すことができる。
【0093】
クリンプすることにより、管状組物の長手方向軸線に対するヤーン/フィラメントの方向/向きが変えられることに注目されたい。幾つかの実施形態では、クリンプした後、ヤーン/フィラメントは、長手方向軸線に対して実質的に横方向である。他の実施形態では、クリンプした後におけるヤーン/フィラメントは、長手方向軸線に対して約35°の角度をなしまたは約35°~約90°の角度をなす。変形実施形態では、クリンプした後におけるヤーン/フィラメントは、長手方向軸線に対して約45°の角度をなし、または約45°~約90°の角度をなす。クリンプしたことの作用効果は、長手方向軸線に対するヤーンまたはフィラメントの角度を増大させることにあり、すなわち、クリンプしなかった組物角度が長手方向軸線に対してXである場合、クリンプしたときの編組角度は、X+Y°である。好ましい実施形態では、Yは、5°を超え、ただし、Yの他の値もまた想定される。長手方向軸線に対する組物角度(代表的には、アルファ(α)角度と呼ばれる)は、編組構造体が真っ直ぐな向きにある間に測定されるが、この角度は、交差するヤーンまたはフィラメント相互間でも測定でき(この角度は、代表的には、ベータ(β)角度と呼ばれる)、この場合、値は、以下に説明する
図25Bに例示されているように(角度Bと角度Cを比較されたい)2倍(2X°)であることは当業者にとっては言うまでもない。
【0094】
本明細書において説明する編組構造体と関連して、例えば、16個の端部(ヤーン)および約40°(長手方向軸線に対して)を超える組物角度を備えた状態で編組された管は、処理するのがますます難題になり、非常に剛性が高く、しかも密な組物とマンドレルとの間の摩擦の増大により、組物の内側からのマンドレルの取り外しが阻止される。その結果、かかる組物は、代表的には、40°未満の組物角度で製造される。例えば、12または8個の端部を備えた状態で編組された管の場合、代表的な最大α組物角度は、さらに小さく、約30°である。したがって、二次的プロセスとして本明細書において説明するクリンプにより、柔らかさ/適合性/可撓性が維持された状態でPPIおよび組物角度の増大が可能である。
【0095】
クリンプすることにより、身体にさらされる血栓形成(繊維)表面の量が増大する。すなわち、クリンプすることにより、組物の長さが減少するとともに直径が増大するので、単位長さあたりの繊維材料の量が増大する。幾つかの実施形態では、一例を挙げると、管状本体の長さは、クリンプした結果として約50%減少することができ、ただし、長さの他の減少分もまた想定される。
【0096】
図4A、
図4B、
図4Dおよび
図4E~
図4Mは、変形実施形態としてのマイクログラフト10′を示している。マイクログラフト10′は、これが編組管12′で作られていて管12と同一の特徴および機能を有するとともに本明細書において説明する別の構成のうちの任意のものを有することができるので、マイクログラフト10とほぼ同じである。かくして、本明細書におけるフィラメント、ヤーン、キャピラリー効果、形状設定などの種々の説明は、
図4Aのマイクログラフト10′に完全に当てはまる。しかしながら、マイクログラフト10′は、好ましくは螺旋コイルで作られていて上述の毛管効果において血流のためのルーメンを有するコア要素27を有している。コイルは、螺旋形状に形成され、このコイルは、近位端部27a(
図4F)および遠位端部27bを有する。ルーメン27cが近位端部27aから遠位端部27bまでコイル27を貫通して延びている。好ましい実施形態では、コイル27は、例えば白金または白金タングステン合金で構成される。製造にあたり、管状組物12′の形態をしたテキスタイル構造体を、コイル27を覆って嵌める。すなわち、組物は、コイル27を受け入れるために近位端部から遠位端部まで延びるルーメンまたは長手方向に延びる開口部39を備えた管の形状に別個形成される。組物12′は、好ましくは、PETまたは他の血栓形成材料で構成される。組物12′は、本明細書に開示した形態をしているのが良く、この組物は、好ましくは、血液および/または血管/動脈瘤壁と接触可能な外面領域の大きな割合を提供する実質的に独立気泡設計のものである。しかしながら、一般に独立気泡設計であるが、これは、器具中への血流および/または器具を通る血流を可能にするよう本明細書において説明したヤーンとフィラメントとの間に空間を有する。かかる流れは、本明細書において説明した毛管効果を達成する。この形態は、比較的短い時間で、幾つかの実施形態では、30日の植え込み日数内で組織内方成長を促進する。組物12′を備えるとともに内側コイル27が取り付けられたマイクログラフト10′は、
図4Kに示されているような螺旋コイル形状に形成され、ルーメン39がその長さに沿って延びている。
【0097】
本明細書において説明したように、組物は、好ましくは、組物角度を増大させるとともに器具内の血栓形成表面積の軟度、圧縮性および大きさを増大させるようクリンプされる。かかるクリンプの構造的作用効果は、
図25A~
図28Bの比較図によって理解できる。
図25Aおよび
図26Aは、クリンプ前の組物12′を示し、組物12′は、管状に編組されたテキスタイル構造体12′の長手方向軸線Lに対して角度Aをなしている。
図25Bおよび
図26Bは、クリンプ後における組物12′を示し、組物12′は、管状の編組テキスタイル構造体12′の長手方向軸線Lに対して角度Bをなし、この角度Bは、角度Aよりも大きい。
図25Bの角度Cは、交差フィラメント相互間の測定によって組物角度を測定する別法を示している。
【0098】
フィラメント間およびヤーン間の上述の離隔距離およびその結果としての毛管効果は、
図4Lおよび
図4Mを参照すると理解できる。フィラメントおよび繊維33間には、血液吸収および血流を可能にする空間または隙間(空所)34が設けられている。フィラメント33で構成されたヤーン31(繊維束)相互間には、空間または隙間(空所)37が設けられている。これらにより、上述の第1のまたは第2の毛管効果が生じる。組物内側コイル27および覆っている組物12′(
図4J)を貫通して延びる長手方向開口部17cは、上述した第3の毛管効果を生じさせる。
【0099】
図4Aの実施形態のこの形態はまた、迅速な血液凝固を促進し、幾つかの場合においては、凝固は、植え込み直後に起こることができる。実際、この形態では、マイクログラフト(インプラント)10′は、血管/動脈瘤内で、しかしながら、デリバリシステムからの放出に先立って、デリバリシステム内に保持されると、マイクログラフト10′は、血液で部分的にまたは全体的に満たされた状態になり、その結果、血液淀みがマイクログラフト10′を放出して植え込む前であっても開始する場合があり、それにより血栓形成が促進される。デリバリ組立体内におけるマイクログラフトの飽和により、しかもいったん植え込まれると、血栓形成が促進されるとともに/あるいは向上する。
【0100】
組物繊維は、これらの材料に起因して血栓形成性(血小板および凝固を促進するタンパク質を引きつける)であるだけでなく、例えばPETをフィラメントとしてまたは血栓形成表面として用いることができるだけでなく、組物構造体が血液を捕捉すると、うっ滞を促進させる。
【0101】
図4Aの実施形態では、好ましくはニチノールで構成された管29が(他の材料を利用することができるが)、デリバリ器具と係合可能な構造体をもたらすために、螺旋コア要素(コイル)27の近位コイル内に嵌め込まれ、好ましくは螺旋コア要素27の近位コイル巻線中にねじ込まれまたは加撚状態で入れられている。組物は、管29を取り付けるために管29上に融着され、領域24aは、溶融繊維を示している。図示のように、管29(および管29′,29″,29′″)は、コア要素27の近位側に延びている。この管はまた、管状テキスタイル構造体12′の近位側に延び、したがって、近位領域がデリバリ部材と係合可能に露出されている。管29の遠位部分は、管状テキスタイル構造体内に位置している。コア要素巻線への取り付け可能に管29内にねじ山の形成により、テキスタイル構造体、例えば組物は、溶融してねじ山中に入り、それにより内側要素への外側テキスタイル構造体12′の取り付けの安定化/補強が行われる。すなわち、管29の切れ目特徴部は、溶融材料(テキスタイル構造体)がねじ山相互間の空間中に流れ込むと、テキスタイル構造体12′と管29との間に良好な接合部(増大した結合強度)をもたらす。ねじ山に代えて、レーザカット穴もしくはタブまたは他の係合特徴部がねじ込み、圧入または他のインターロック方法によって管を内側(コア)要素に取り付けるために設けられても良いことが想定される。すなわち、これら係合特徴部、例えば切れ目特徴部または表面隙間をコア(内側)要素の近位コイル中へのねじ込みまたは管の他の取り付けのためのねじ山に代えて、用いることができ、かかる特徴部はまた、溶融材料(テキスタイル構造体)を受け入れるために設けられても良い。また、他のレーザカット特徴部、例えば穴または表面隙間を管に設けて溶融材料が取り付け強度を増すための追加の空間を提供しても良い。これら追加の空間は、管を内側要素に取り付けるための特徴部に加えて存在するのが良い。幾つかの実施形態では、管29は、運搬方法と関連して以下に説明するデリバリワイヤを受け入れるための偏向可能なタブ29aおよび窓29bを有する。タブ29aは、
図4Bの整列位置に付勢され、このタブは、窓29bを通ってワイヤを受け入れる角度付きまたは斜めの位置まで動かされ、タブ29aは、以下に説明するデリバリシステムのワイヤと係合可能な係合/保持構造体を提供する。領域24a(
図4F)は、組物12′の繊維がコイル27の近位端部上で溶融される近位端部のところの領域を示している。
図4Fでは、別の管形態が示されており、管29′が
図22Aの場合のようにボールまたはフックを受け入れるスロットを有していることに注目されたい。
図4Gでは、インプラントの電解質取り外し法が開示され、ワイヤ230は、これが取り付けられ、例えば接着されまたは融着されるエポキシ232または他の材料によって管29″内に保持される。材料232は、ワイヤ230が管29″と接触しないようにするためのインシュレータとなる。
図4Hでは、別の実施形態としての管29′″が図示されている。管29′,29″,29′″および電解質取り外し法を除き、
図4F~
図4Hのマイクログラフトは、
図4Aのマイクログラフト10′と同一である。管29′,29″,29′″を管29と同一の仕方でコア要素27のコイル中にねじ込むのが良い。理解されるべきこととして、管29′,29″,29′″(および電解質取り外し法)を
図4A~
図4Mの組物と共に、ならびに本明細書において開示した他のマイクログラフトおよび組物またはテキスタイル構造体実施形態のうちの任意のものと共に使用できる。
【0102】
上述したように、組物(編組管)12′は、各々が多数の繊維33を含むヤーン31で構成されている。編組機から取り外されると、管12′のヤーン31は、繊維33が水平に束ねられていて互いに間隔を置いて配置された状態で比較的平らな状態に置かれる(これについては、マンドレル35に嵌めた管12′を示す
図4Dを参照されたい)。
図4は、
図4Aの構造体への形成に先立ってクリンプされた編組管12′をつくるために万ドレス35上にクリンプされた編組管12′を示している。これはまた、製造方法と関連して以下において説明される。組物12′が1つまたは2つ以上の箇所でマンドレル35に固定され、長手方向力が組物に加えられると、ヤーン31中の繊維33は、互いに近づいて束となり、ミクロ山部17とミクロ山部17間にミクロ谷部19を作り(
図4Eおよび
図25B)、そして対応のマクロ山部18とマクロ谷部20を管長さに垂直に正弦波形状を作る(
図4Eおよび
図28B)。(本明細書に開示した
図1の山部および谷部は、同様な仕方で形成できる)。山部および谷部の広がりは、加えられる力の大きさおよび軟度の所望の大きさで決まる。管は、完全にクリンプされても良くまたはその長さに沿って間隔を置いて選択的にクリンプされても良い。
【0103】
例示の実施形態では、管状組物12′の内径は、好ましくは、約0.003インチ(0.076mm)~約0.012インチ(0.305mm)、好ましくは約0.007インチ(0.178mm)である。コイル27は、約0.002インチ(0.051mm)~約0.10インチ(2.54mm)の内径を有する。幾つかの実施形態では、コイルは、組物内径よりも約0.001インチ(0.025mm)~約0.002インチ(0.051mm)小さい内径を有するのが良い。他の実施形態では、コイルは、管状組物の内径よりも大きな内径を有するのが良く、と言うのは、組物は、クリンプ時に直径が拡張するからである。
【0104】
図4Cの変形実施形態では、ロックタブに代えて、マーカーバンド22′が送達ワイヤに取り付けられている構造体に係合するための保持構造体を提供するよう管に取り付けられている。他の全ての観点では、
図4Cのマイクログラフトは、
図4Aのマイクログラフト10′と同一であり、したがって、
図4Cのマイクログラフトは、同一の参照符号でラベル表示されている。
【0105】
上述したように、インプラントの組物は、好ましくは、非拡張性である。すなわち、形成後、インプラント(組物およびコイル)の横断面を通って測定した寸法は、デリバリ部材内のデリバリ位置の寸法と配置位置の寸法で同一である。しかしながら、インプラントは、運搬のために減少プロフィール位置に延伸可能であり、次に、上述したそのコイル形状を取るよう配置可能に解除できる。しかしながら、組物が運搬位置から配置位置に動いても、組物は、拡張しない。インプラント(組物およびコイル)に対するかかる変化にもかかわらず、デリバリ部材内の直線形状から人体内のその二次的螺旋形状まで、組物およびコイルの組み合わせ厚さ(すなわち、組物の外径)は、運搬および配置中、一定のままである。これは、デリバリ部材から露出されたときおよび配置位置において組物の直径が増大する拡張可能な組物とは対照的である。本明細書において説明するように、かかる拡張は、組物の内径を増大させ、そして、少なくとも初期拡張の際またはある割合への拡張の際、組物中の気孔サイズ(開口部)を増大させることができる。
【0106】
次に、
図4Aのインプラントの製造方法について説明する。この方法では、組物を管状の形態に別個に形成し、次にコイルを組物内に位置決めし、その後組物を加熱してこれをコイル上に溶融させることに注目されたい。かくして、理解できるように、組物は、コイル上に巻かれず、別個に形成され、そして次に2つの要素/コンポーネント(構造体)を互いに取り付ける。
【0107】
以下において、
図4Aの血管インプラント(マイクログラフト)を作るために利用できる製造方法の一例が記載されており、他の方法もまた利用できることは言うまでもない。加うるに、他の製造方法を必要とする場合のある種々のインプラント構造体が本明細書に開示されている。例示の製造方法のステップは次の通りである。
1)組物(上述のフィラメントで形成されている)をマンドレル上に形成する。組物は好ましい実施形態ではPETで構成されているが、上述したように他の材料が想定されることに注目されたい。(本明細書において説明したように、変形例として、テキスタイル構造体が織製テキスタイル構造体、1本または2本以上のポリマー繊維で形成されたエレクトロスパン構造体、または以下のステップ2の場合のように管の形状に形成される他の互いにオーバーラップした繊維配列体/構造体の形態をしていても良いことに注目されたい)。
2)組物を弛緩させてアニールし、それにより管の形状(管状構造体)にする。
3)冷却後、管状組物をマンドレル上で圧縮して組物をクランプ加工し、それにより単位長さあたりの繊維の量を増大させるとともに/あるいはある特定の実施形態では、上述したように山部および谷部を形成する。管状組物を圧縮する際、内側コイルは、組物内には位置せず、その結果、クリンプは、コイルに悪影響を及ぼさない。
4)管状組物を再び加熱して圧縮状態にする。
5)冷却後、組物をマンドレルから取り外して内側要素、すなわち金属製コイルにいつでも取り付け可能にする。
6)ワイヤをマンドレルに巻き付けて螺旋形状にすることによって金属製コイルを形成し、コイルワイヤの互いに反対側の端部をマンドレル周りに引っ張り状態で取り付け、または接着する。張力の加えられた金属製コイルを管状組物内に位置決めし、すなわち管状組物中に挿入し、あるいは、管状組物を張力の加えられた金属製コイル状でこれに沿って滑らせ、このことは、いずれの場合においても、金属製コイルが組物「中に挿入可能である」ことを意味している。この張力が加えられた位置では、金属製コイルをマンドレルに密巻きし、この金属製コイルは、減少高さ(コイルの長さに沿って最も上の箇所からコイルの長さに沿って最も下の箇所まで測定した直径または横断方向寸法として定義された高さ)のものである。上述したように、コイルワイヤは、好ましい実施形態では、放射線不透過性が得られるよう白金金属で構成され、ただし、他の放射線不透過性材料もまた利用できる。
7)管状組物内にいったん位置すると、張力の加えられたコイルの取り付け状態の接着端部を切断し、それによりコイルは、僅かにスプリングバックして巻き戻り、その結果、組物に向かってある程度の拡張(全体的コイル直径の増大)が生じ、コイルの幾つかの部分は、組物に接触する。幾つかの実施形態では、コイルの幾つかの接触部分だけが管状組物に接触し、コイルの他の部分は、組物と接触状態にはない(組物から間隔を置いて位置する)。この一例が
図4Fの断面図に示されており、この場合、接触部分は、近位および遠位端部27a,27bのところだけである。他の実施形態では、多くの部分が管状組物に接触する。幾つかの実施形態では、管状組物がクリンプに起因して山部および谷部を有するので、コイルワイヤ27は、谷部の内面のうちの幾つかまたは全てに接触し、山部には接触しない。この一例が
図4Gの断面図に示されており、この場合、コイル27は、組物12′の内方部分に接触する。
8)管状組物の一端部を加熱してコイル上に溶融させ、それにより管状組物とコイルを(溶融接合部のところで)取り付けて、組物/ワイヤ組立体(インプラント)を形成する。マンドレルは、溶融中、残されたままであるのが良く、または変形例として、溶融に先立って取り外される。
9)フィラメント(ヤーンまたはワイヤ)を器具ルーメン中に通して(したがって、器具は、フィラメント上でこれに沿って摺動することができる)第2の器具形態の形成を助ける。
10)フィラメント(ヤーンまたはワイヤ)を組物/コイル組立体(器具)がマンドレルまたは他の固定具上に位置した状態で巻いて二次的螺旋形状にし、次にこの組立体を加熱して二次的形状にする。幾つかの実施形態では、連続した加熱処理の各々は、この処理の形状保持を向上させるとともに組物の収縮を制御するよう高い温度でかつ/あるいは長い持続時間の状態にある。先の加熱を制御することによって、最終の熱処理を用いて組物の最も大きな収縮を与えて二次的形状にするのを助ける。図示の実施形態では、二次的形状は、螺旋の形をしているが、変形例として、二次的形状は、他の3D形状、例えば球形、円錐形などであっても良い。
11)器具(取り付け状態の組物およびコイル)をオーブンから取り出して冷却し、フィラメントおよび造形マンドレル/固定具を取り出し、後には、組立体(インプラント)がその設定された二次的形状の状態で残される。
12)ニチノール管、例えば上述した管29(または変形例とし、ステンレス鋼管)を管状組物の一端部のところでコイル中に挿入する。管は、一端部中に切断形成された螺旋特徴部を有する。幾つかの実施形態では、管を回転させまたは管をコイルワイヤの巻線相互間にねじ込むことによってこの管を取り付け、したがって、螺旋特徴部は、巻線とインターロックする。ニチノールが弾性をもたらし、この弾性がデリバリシステムのプッシャによりロックコンポーネントとして作用するときに破断する恐れを減少させる。また、ニチノールは、より望ましいMRI可視化(干渉が少ない)をもたらす。管は好ましくはニチノールで作られているが、変形例として、他の材料、例えばステンレス鋼を利用できることに注目されたい。好ましくは、管の内径および外径は、コイルワイヤの内径および外径と同一または実質的に同一であり、その結果、管とコイルワイヤは実質的に同一平面上に位置する。しかしながら、コイルおよび管が段状表面を有しても良いこともまた想定される。
13)次のステップでは、組物を加熱してニチノール管およびコイルの端部上に溶融させ、それにより管を組物およびコイルに取り付け、それにより最終組立体(マイクログラフト/インプラント)を形成する。幾つかの実施形態では、溶融した組物領域が金属製コイルの管およびコイルの螺旋特徴部(ねじ山)を絡み合わせた領域全体を覆うことに注目されたい。螺旋特徴部中に流れ込む材料は、接合部を補強する。
【0108】
クリンプは、管状組物を軟らかくし、と言うのは、管状組物壁が縮む余地があるからである。圧縮性の増大により、動脈瘤中の高い実装密度の実現が可能であり、すなわち、より多くのプラントを動脈瘤中に嵌め込むことができ、そして大きな容積を満たすことができる。器具の単位長さあたりの血栓形成繊維の量の増大はまた、クリンプの量(圧縮)に正比例するとともに、上述したように、組物フィラメント形式またはパターンに応じて、かかる増大の結果として、常に山部および谷部が形成されるとは限らない。しかしながら、かかる増大は、組物気泡サイズを減少させる一方で、組物角度および外径を増大させる。一例として、管状組物を50%(軸方向圧縮により)クリンプすると、実際には、結果として得られる構造体の単位長さあたりの繊維の本数を2倍にする。これを用いると、二次的(編組後)ステップとして編組器具中の血栓形成材料の量および表面積を増大させることができる。
【0109】
マルチフィラメントヤーンを備えた状態で作られた本明細書に開示する十分にクリンプされた組物(大きい組物角度)は、たとえ二次的形状に偏向されまたはコイル状にされた場合であっても、曲がり部外面上に独立気泡構造体を維持する。すなわち、管状組物がそのコイル状の二次的形状においてその曲がり部半径の内側でヤーン/フィラメントの圧縮を受けるとともに曲がり部半径の外側でクリンプされたヤーンの延伸/拡張を受けるが、管状組物は、組物表面越しの内部コイルの視認性を依然として可能にはしない。換言すると、クリンプされた組物は、直線形態ならびに非直線、例えば曲げまたは湾曲もしくはコイル状形態においてその独立気泡形態を維持する。これとは対照的に、非クリンプおよびモノフィラメント管状組物の場合、曲がり部内面は、圧縮および気泡サイズならびにポロシティの減少を生じ、これに対し、曲がり部外面は、気泡/細孔サイズの増大を受ける(その結果、開放気泡構造が得られる)。
【0110】
理解できるように、例示の実施形態では、インプラントは、器具ルーメン中へのフィラメントの挿入後に二次的形状に形成される。また、理解できるように、内側コイルは、いったん管状組物内に位置すると、張力の加えられた位置から解除されてその張力が加えられていない弛緩位置に動く。この位置では、幾つかの実施形態では、コイルの幾つかの部分は、組物との接触関係をなしていないままであるのが良い。
【0111】
内側コイルなしで組物をクリンプすることによって、コイルの圧縮の回避が達成され、その結果、組物およびコイル材料の互いに異なるヒートセット温度に起因して、コイルは、短い長さに形状設定されず、組物に対して引っ張り状態のままである。また、クリンプが組物の内径を増大させるので、組物の内径を設定することができ、次にコイルを組物内に位置決めすることができ、コイルは、幾つかの場合において、クリンプされていない組物の内径よりも大きな外径を有する場合がある。これにより、大きなコイルを用いることができる。別の方法では、組物をコイル状ワイヤが内部に位置決めされた状態で圧縮するが、コイル状ワイヤが閉ピッチコイルであり、したがって、これは圧縮性ではないことに注目されたい。この別の製造方法では、閉ピッチコイルをマンドレルに機械的にクランプし、その結果、組物をクリンプしたとき、コイルは、長さが変化することができず、したがって、張力下にはない。いずれの方法においても、組物の圧縮が内側コイルワイヤの圧縮および引っ張りなしで達成されることに注目されたい。先の方法は、加熱を容易にする開ピッチコイルを利用する。さらに別法では、編組管状構造体を金属製部材上に直接形成し、それにより金属製部材を解除することにより金属製部材が組物内で拡張するようにする。
【0112】
図3Aは、動脈瘤内マイクログラフトの別の実施形態を示している。管状本体28を備えた可変スティフネス型マイクログラフト26が
図1を参照して上述したのと同一の特徴および機能を有しまたは、その変形例、例えばマルチフィラメントヤーン、キャピラリー効果などを有する。しかしながら、この実施形態では、マイクログラフト26は、形成およびクリンプ後、図示のように二次コイル形状を形成するようマンドレルに巻き付けられる。これは、
図16Bにも示されており、
図16Bでは、マイクログラフト26は、編組およびクリンプ後(依然として真っ直ぐである)およびマイクログラフトがかかる編組およびクリンプ構造体の形成後にコイルの状態に巻かれた後の両方の状態で図示されている。かかる螺旋形態もまた
図4Kに示されており、この場合、
図4Aのマイクログラフト10′の二次的形態が形成されている。本明細書において説明する様々な特徴を備えた本発明において説明する他のマイクログラフトもまた巻いて所望ならば
図3Aのコイル形状にすることができる。マイクログラフト26の管状本体28は、近位剛性区分30および遠位可撓性区分32をそなえた可変スティフネス型組物で構成され、漸変スティフネスは、上述した仕方で達成される。管状本体28はまた、一次直径Dを有する。放射線不透過性バンド36がX線透視下における視覚化を可能にするよう提供されるのが良く、この放射線不透過性バンドは、組物のスティフネスが移行する組物のほぼ中心に位置した状態で示されている。変形例として、放射線不透過性バンド36を他の場所に配置しても良く、多数のバンドを提供しても良い。変形例として、放射線不透過性を上述した種々の仕方で達成しても良い。
【0113】
器具26は、
図3A(および
図16B)のあらかじめ付勢された(二次)螺旋形状の状態に熱により形状設定されている。これは、器具26の送達後の形状設定形態である。この器具は、二次形状を形成するのに必要な延伸、曲げおよび加熱に起因して、マイクログラフト10のような顕著な山部および谷部を備えなくても良い。しかしながら、もとのクリンプにより、所望の特性が得られるとともにマイクログラフトがより応従性になる。また、クリンプの部分延伸または部分復元の結果として、編組ルーメンは、積み込み具合の向上のために半径方向により応従性になる。
【0114】
図示のように、螺旋形状の状態で示されているが、器具26は、任意の複雑な三次元形態に形状設定でき、かかる形態としては、クローバー形、8の字形、花の形、渦形、卵形、不規則形状、または実質的に球形の形状が挙げられるが、これらには限定されない。上述したように、視覚化を助けるために軟質の開放ピッチコイルを組物の内周部に追加するのが良い。かかる金属コイルのスティフネスが十分に低い場合、ポリマー組物の二次形状設定は、器具の全体的形状の実現を促進することになる。換言すると、組物の二次形状は、通常、ポリマーのガラス繊維温度よりも極めて高い温度で形状設定する形の定まっていない金属コイルを成形する。
【0115】
マイクログラフト26は、器具の一端のところに示されたほつれた状態の端部繊維38を更に有する。変形例として、これらばらばらのほつれた状態の繊維を所望ならば(本明細書において開示する他のマイクログラフトがかかるほつれた状態の端部を更に有する場合)、組物の両端のところに位置しても良い。これらほつれた端部が同一の特徴を備えた動脈瘤嚢内の別の組物と接触したとき、互いに結合する端部は、ベルクロ(登録商標)(Velcro)のように働き、それによりマイクログラフトがインターロックするとともに一緒に動くことができる。カテーテル中への送り込みおよび導入のため、器具26は、細長く、例えば実質的に直線状の形態に動かされ、そして一次直径Dを受け入れるのに十分なサイズの内径を備えたローディング管中に挿入される。オプションとしてのフィラメント(図示せず)が動脈瘤頸のところでの流れを妨げるよう放出時にステントまたはフローダイバータと親血管壁との間でのマイクログラフトのはさみ付け/固着を可能にするよう組物の近位端から延びるのが良い。包装および送達については以下に詳細に説明する。
【0116】
図3Bは、動脈瘤内マイクログラフトの別の実施形態を示している。スライスされた状態のマイクログラフト40が先の実施形態について説明したのと同一の特徴および機能、例えばマルチフィラメントヤーン、キャピラリー効果などを含むのが良い管状本体42を有している。管状本体42は、長手方向切れ目44を有し、この管状本体は、その内面46を露出するよう形状設定されており、それにより、ラッパ状に広がった遠位端部が提供されている。マイクログラフト40は、流動中の血液によって制限される表面積を最大にするとともに血流による運動を助けるために露出された内径の一部分を備えた状態で構成されている。器具40は、視覚化のために近位マーカーバンド48(または変形例として、他の上述した放射線不透過性特徴部のうちの任意のもの)を有する。レーザカットまたは他の方法によって形成された穴50,52が血液との連通を可能にする。マイクログラフト40は、デリバリシステムによって手動か動脈瘤内の血流の循環による運動かのいずれかにより動脈瘤の頸のところへの配置に特に適している。動脈瘤へのマイクログラフト46の送達の結果として、マイクログラフトが既存の血流内に捕捉されて動脈瘤頸のところで堆積すると頸/ステントインターフェースのところで血液凝固が生じる場合がある。この構造は、丸形の管、平たい管、または血流によって容易に動かされる他の形状物であっても良い。
【0117】
上記実施形態の管状本体は、クリンプされた編組管を説明したが、かかる管は、他の製造方法、例えば織成、編成、押し出し、またはエレクトロスピニングを用いて製作できる。構造体はまた、様々な直径または様々な断面が交互に位置した状態で、例えば、扁平な状態から丸形の状態に製造されても良い。加うるに、管は、所望の管状または実質的に円筒形の構造体の状態に形成されるロールドシートまたは他の材料で作られるのが良い。次に、例えばクリンプか選択的レーザ切断かのいずれかによって構造的可撓性を調節するのが良い。所望ならば、管状本体もまた、薄肉テープを作るために平たくされても良くまたは卵形の区分を形成するよう熱圧されても良い。
【0118】
また、クリンプまたは山部および谷部を作るためにクリンプまたは軸方向/長手方向圧縮および熱の使用を説明されたが、山部と谷部を構成する他の製造方法を利用しても同様の効果を達成することができる。例えば、ワイヤをマンドレル上に配置された組物にしっかりと巻き付けても良い。巻線相互間の隙間は、山部を作り、集成体をヒートセットし(長手方向圧縮によりまたはこれを用いないで)ワイヤを取り外すと、ワイヤが組物を圧縮した場所に谷部が作られ、組物を露出させたところに山部が形成される。
【0119】
図16A~
図16Cおよび
図17は、20デニール/18フィラメントポリエステルヤーンで構成されたマイクログラフト10の管状本体12の一部分を示している。
図16Aは、形成されたマクロ山部および谷部を示すためにクリンプされたマイクログラフト10の管状本体12の傍らに位置する非クリンプ管状本体171の例を示している。
図16Bは、
図3Aと類似したクリンプ後の状態の螺旋コイル172の状態に形状設定された管状本体の傍らに位置するクリンプされた状態の管状本体を示している。
図16Cは、上述したキャピラリー作用によりマイクログラフト中に引き込まれた流体174を有するマイクログラフト10を示している。
図17は、
図1の場合と同様に本体に取り付けられたマーカーバンド(ストップカラー)22を備えた管状本体を示している。
【0120】
次にマイクログラフトの送達に注目すると、本発明のデリバリシステムの幾つかの実施形態が開示される。デリバリシステムのうちの多くは、カテーテル内でのマイクログラフトの蛇行を最小限に抑えるとともに長い長さのマイクログラフトの送達を可能にするオーバー・ザ・ワイヤ型挿入を可能にする。デリバリシステムはまた、部分配備後における、幾つかの実施形態では完全配備後においてであってもマイクログラフトの再取り出しを可能にする。
【0121】
第1の実施形態を参照するとともに
図5A~
図5Dを参照すると、動脈瘤内マイクログラフトデリバリシステムが示されており、このデリバリシステムは、全体が参照符号54で指示されている。マイクログラフト10を送達するデリバリシステムについて以下に説明するが、理解されるべきこととして、このデリバリシステム(ならびに本明細書において説明する他のデリバリシステム)は、本明細書において開示するマイクログラフトのうちの任意のものを送達するために使用できる。デリバリシステム54は、マイクログラフトおよびプッシャカテーテル58を運ぶためのあらかじめ装填された(予備装填状態の)デリバリワイヤ62を有し、あらかじめ装填された状態のデリバリワイヤ62は、プッシャカテーテル58内に配置されている。オプションとして、このシステムは、以下に説明する
図7のローディングシースとほぼ同じローディングシースを有するのが良く、このシステムは、マイクログラフトをデリバリワイヤ62に取り付けた状態に保持するようこのローディングシステム上に位置決めされる。デリバリシステムの個々のコンポーネントをこの手技中に包装材から取り出すことができ、そしてデリバリワイヤ62を、カテーテル58を通って近位側に挿入することによって集成することができ、それによりマイクログラフト10の近位端およびプッシャカテーテル58の遠位端のところに接合部57が作られる。変形例として、これらをデリバリワイヤ62がプッシャカテーテル58内に既に位置決めされるとともに
図7のローディングシーストほぼ同じ保護ローディングシースがマイクログラフト10をデリバリワイヤ62に取り付けた状態で保持するようデリバリワイヤ上に位置決めされた状態であらかじめ包装されても良い。このデリバリシステムは、標的解剖学的構造に接近するためのスタンドアロン型デリバリシステムとして使用できまたは以下に説明するようにマイクロカテーテルと併用できる。任意の必要なフラッシングまたはコーティング活性化を患者の体内中への挿入に先立って医師の決定により実施できる。
【0122】
デリバリワイヤ62には領域56のところでマイクログラフト10が取り付けられている。デリバリワイヤ62は、近位端64から遠位端66まで延びる長さを備えた本体を有し、この長さは、約20cmから約400cmまでの範囲にあり、特に約100cmから約300cmまでの範囲にあるのが良く、特に約200cmであるのが良い。デリバリワイヤ62の適当な直径は、約0.0025インチ(0.064mm)から約0.040インチ(1.016mm)までの範囲にあるのが良く、より狭くは約0.002インチ(0.051mm)から約0.035インチ(0.889mm)までの範囲になるのが良い。デリバリワイヤの外径は、連続しているのが良く、例えば約0.014インチ(0.356mm)であるのが良く、または、ワイヤは、近位側の方向から遠位側の方向にテーパしているのが良く、例えば約0.007インチ(0.178mm)から約0.003インチ(0.076mm)までテーパしているのが良い。他のサイズもまた、手技に用いられるプッシャカテーテルおよび/またはマイクロカテーテルIDに応じて想定される。
【0123】
デリバリワイヤ62の遠位部分68は、コイルを有するのが良く、デリバリワイヤ62のまさしく遠位側の先端部66は、球形であって良く、増大した直径のものであって良く、あるいはマーカーバンドまたはコイルを備えるのが良い。デリバリワイヤの遠位部分68は、放射線不透過性であるのが良くかつ追跡、血管選択、および動脈瘤内操作を助けるよう形状設定可能であるのが良い。例えば、遠位部分は、以下に説明する
図11Aの場合のようにJ字形に形状設定されるのが良い。デリバリワイヤ62はまた、親水性被膜で被覆されるのが良い。デリバリワイヤ62は、マイクログラフト10をデリバリワイヤに取り付けた状態に保持するのを助ける保持構造体、例えばテーパ付き領域を有する。変形実施形態では、保持を更に助けるためまたはかかる保持構造体、例えば標準型ガイドワイヤを備えていないデリバリワイヤが利用される場合、保護ローディングシースを利用するのが良い。別の実施形態では、マイクログラフトは、
図9を参照して以下に説明するマイクログラフト導入器システム136を用いて取り付けられるのが良い。
【0124】
デリバリワイヤ62は、マイクログラフト10を取り付けるための係合構造体を形成するテーパ付き領域70(
図5C)を有する。近位ストップカラー22がテーパ付き領域70に嵌められるのが良い。ストップカラー22は、デリバリワイヤ62に取り付けられるのが良く、または変形例としてかつ好ましくは、マイクログラフト10の内側部分に取り付けられた保持特徴部を形成するのが良い。いずれの場合においても、マイクログラフト10の近位端は、デリバリワイヤ62と摩擦係合してこれによって保持される。マイクログラフト10は、ワイヤ遠位先端部66から距離Lのところでワイヤ62に同軸状に(かつ摺動可能に)取り付けられている。距離Lは、
図5Cに示されているようにワイヤテーパ部70と相互作用する近位ストップカラー22によってまたはワイヤに取り付けられた他のハードストップ(例えば、マーカーバンド)およびマイクログラフトの全長によって設定される。例えば、長いマイクログラフトは、短い距離Lを有するのが良い。幾つかの実施形態では、距離Lは、ゼロであっても良く、ハードストップは、デリバリワイヤ62がグラフトの遠位端を通過するのを阻止するようデリバリワイヤ62の遠位端に設けられた膨らみ、球部または頭部(例えば、以下に説明する
図5Eの頭部184)と相互作用するようマイクログラフト10の遠位端上に、遠位端内にまたはこの近くに設けられるのが良い。この場合、マイクログラフト10の遠位先端部は、
図5Eの実施形態の場合と同様にデリバリワイヤ62の遠位端に隣接して位置する。
【0125】
図5Cは、マイクログラフト10の近位端の拡大断面図であり、ストップカラー22は、デリバリワイヤ62のテーパ付き領域70に係合している。図示のストップカラー22は、視覚化のための放射線不透過性を提供するためのマーカーバンドの形態をしている。ワイヤテーパ部70は、ワイヤ62上でこれに沿うマイクログラフト10の近位側への運動を阻止するための近位ストップとして働く。
【0126】
マイクログラフトとデリバリワイヤ62を結合しまたは組み合わせる他の手法もまた想定される。上述したように、近位側および遠位側のニチノール部品をストップとしてマイクログラフトに追加することができまたは他の部品および/または特徴部(例えば、白金マーカーバンド、切欠き、膨らみなど)をストップとして働くようデリバリワイヤに追加することができる。幾つかの場合、ストップカラーが設けられなくても良く、ストップは、組物の遠位端に設けられても良く(上述したように)、プッシャカテーテルが近位ストップとして働くことができまたはマイクログラフト10は、デリバリワイヤの全長にわたって近位側から遠位側に自由に摺動することができるよう寸法決めされても良い。
【0127】
予備装填デリバリワイヤ62を保護カバー、例えば
図7のカバー92で覆われた1つまたは2つ以上のマイクログラフト付きで供給するのが良い。このカバー92は、マイクロカテーテルまたはそのコンポーネントのルーメン中に導入可能な小さな外寸までテーパしたテーパ付き先端部を有する。
【0128】
幾つかの実施形態では、2つ以上のマイクログラフトをデリバリワイヤに取り付けた状態で装填することができる。これらは、
図3を参照して上述したほつれた状態のベルクロ(登録商標)状端部38のうちの1つを用いて送達可能にデリバリワイヤ上で互いに連係させることができまたはこれらマイクログラフトを通って延びる同軸デリバリワイヤの助けにより直ぐに連結されても良い。すなわち、この器具は、幾つかの実施形態では、複数のマイクログラフトがデリバリワイヤに沿って一列に並んであらかじめ包装された状態で供給されても良い。
【0129】
上述したように、デリバリシステム54は、デリバリワイヤ62を挿通させるルーメンを有するプッシャカテーテル58を含む。プッシャカテーテル58は、カテーテル本体72およびルアー(Luer)ロック74を有する。カテーテル本体72は、好ましくは、硬い近位区分、軟らかい中間区分、および更に軟らかい遠位区分を備えた可変スティフネス構造のものである。カテーテルの個々の区分は、近位側から遠位側までスティフネスを制御するよう様々なデュロメータを有するポリマー管類で構成されるのが良い。本体は、例えばステンレス合金またはニチノールで作られた可変スティフネスのレーザカットされた管で作られても良い。ポリマー管が用いられる場合、カテーテルは、楕円化しないようにするために補強された組物またはコイルであるのが良い。例えばPTFE、ePTFEまたはFEPのような材料で作られた滑らかなライナもまたこの構造体に追加されるのが良い。
【0130】
プッシャカテーテル58の外径は、約0.008インチ(0.203mm)から約0.070インチ(1.778mm)までの範囲にある内径を備えたマイクロカテーテル内で自由に摺動するよう寸法決めされている。カテーテル本体72は、減摩性が得られるようその外周部上に被着された親水性被膜を有するのが良い。カテーテル本体72の長さは好ましくは、1つのマイクログラフト(または多数のマイクログラフト)が遠位端に取り付けて装填している間、デリバリワイヤ62への近位側からの接近を可能にし、すなわちワイヤ62を保護するようデリバリワイヤ62よりも僅かに短い。プッシャカテーテル本体72または遠位端の内周部は、デリバリワイヤ62の遠位側への前進または近位側への引っ張り中にマイクログラフト10をカテーテル本体72内に押し込むことができないように寸法決めされるとともに形作られている。プッシャカテーテル58内への装填時、デリバリワイヤ62は、好ましくは、自由に回転することができるとともにプッシャカテーテル58に対して直線状の(前後の)運動状態で自由に動くことができる。加うるに、プッシャカテーテル58は、標的解剖学的構造へのステントもしくは他の器具または流体の送り出しを許容するよう設計されているのが良い。幾つかの実施形態では、送達部材の外寸と閉塞器具の内寸との間の間隙は、動脈瘤中への送り出し前には実質的に流体密であるが、閉塞器具に対する送達部材の摺動可能な運動を可能にするほど十分である。
【0131】
プッシャカテーテル本体72の遠位端のところまたはその近くには、放射線不透過性マーカーバンド76が設けられ、この放射線不透過性マーカーバンドは、白金/イリジウムで作られるのが良く、そして接着剤、熱収縮チューブ、スエージ加工プロセス、または他の公知の方法で取り付けられるのが良い。変形例として、マーカーバンドは、デリバリワイヤ62がマーカーバンドを通過した状態でプッシャカテーテル58内に配置されても良い。マーカーバンド76の他の適当な放射線不透過性物質としては、例えば、金、銀、および放射線不透過性収縮チューブまたは金属コイルが挙げられる。ルアーロック74がカテーテル58の近位端のところに位置決めされるのが良く、プッシャカテーテル58の内周部を通る生理的食塩水、薬剤、造影剤または他の流体の導入を可能にするための回転止血弁(RHV)78がルアーロック74に取り付けられている。RHV78はまた、RHV78がワイヤ上に締め付けられると(これにクランプされると)、プッシャカテーテル58と予備装填デリバリワイヤ62との相対運動を停止させるためのロックとしての役目を果たす。幾つかの実施形態では、プッシャカテーテル58をアクセサリとしてRHV付きであらかじめ包装状態でかつ無菌状態で送り出すことができる。同軸カテーテルステントデリバリシステムが用いられる実施形態では、ステントデリバリカテーテルによるステント配備後の場合のようにプッシャカテーテルを必要としない場合があり、マイクログラフト装填デリバリワイヤをステントデリバリカテーテル中に挿入してマイクログラフトを配備することができる。
【0132】
上述したように、デリバリワイヤ62を従来型ガイドワイヤの場合のように一次アクセスワイヤとして使用することができる。
図6は、オーバー・ザ・ワイヤ型プッシャカテーテルの別の設計例を示しており、このプッシャカテーテルは、全体が参照符号80で示されている迅速交換式プッシャカテーテルである。迅速交換(RX)プッシャカテーテル80は、遠位端にマーカーバンド76を備えたカテーテル本体82および硬いプッシャワイヤ84を有する。カテーテル本体82は、上述したカテーテル本体72の中間区分および遠位区分と同じ特徴のうちの多くを共有しており、かかる特徴としては皮膜が挙げられる。テーパしているのが良い硬いプッシャワイヤ84は、ステンレス鋼合金、ニチノール、または他の適当な材料で作られるのが良い。プッシャワイヤ84は、変形例として、レーザ切断が行われまたは行われていないハイポチューブまたは非丸形断面を特徴とするワイヤであっても良い。器具は、あらかじめ包装状態でかつ無菌状態で供給されるのが良い。使用にあたり、RXカテーテルを動脈瘤にワイヤで接近する前または接近した後において、デリバリワイヤまたはガイドワイヤ上でこれに沿って挿入するのが良い。
【0133】
図5E~
図5Gは、
図4Aのマイクログラフト10′を送達するデリバリシステム180を示している。デリバリシステムは、プッシャ部材186および拡大頭部184を備えたデリバリワイヤ182を含む。
図5Eの初期位置では、マイクログラフト10′のタブ29aは、下方に曲げられており、デリバリワイヤ182は、窓29bを貫通している。デリバリワイヤ182は、マイクログラフト10′内でマイクログラフト10′の遠位端まで延びている。この位置では、頭部184は、マイクログラフト10′に設けられたストップ22、例えば遠位マーカーバンド22の近位縁に係合している。
【0134】
プッシャ部材またはカテーテル186は、その遠位端のところに設けられていてマイクログラフト10′を押すのを助けるとともにプッシャ部材の内周部中へのマイクログラフト10′の運動を阻止する内部ストップ188を有している。プッシャカテーテル186は、一例としてルアー取り付け部なしで示されている。プッシャカテーテル186とデリバリワイヤ182の両方は、上述したように構成されるのが良い。加うるに、図示されていないが、システム180は、
図7のローディングシース92に類似していてマイクログラフトの運動を制限するとともにマイクロカテーテル中へのマイクログラフトの導入を助ける保護導入器シースを含むのが良い。
【0135】
初期位置では、マイクログラフト10′のタブ29aは、下方に曲げられ、デリバリワイヤ182は、窓29bを貫通している(
図5E)。デリバリワイヤ182は、上述したように、拡大頭部184がストップ22の近位縁に接触するようマイクログラフト10′内で延びている。ストップ22は、開放したものとして示されているが、このストップは、完全に閉じることができるということに注目されたい。また、ストップを省いても良く、組物は、ワイヤ182が出るのを阻止するよう組物の遠位端を狭くしまたは閉じるよう融解されるのが良い。また、遠位ストップの使用により、マイクログラフト10′を引っ張り状態に保つ目的が達成され、これにより、マイクログラフト10′の外周部を延伸するとともにその外径を減少させることによって送達が助けられる。
【0136】
タブ29aは、マイクログラフト10′をワイヤ182に取り付けた状態に保持するようデリバリワイヤ182に対して力をもたらす。送達時、ワイヤ182を
図5Fの位置まで引っ込め、この位置では、デリバリワイヤの拡大先端部184は、タブ29aに係合する。この位置まで、マイクログラフト10′を動脈瘤から引っ込めるとともに/あるいはこの中で操作することができる。次に、プッシャカテーテル186を前進させて(または、ワイヤ先端部を引っ込めて)タブ29aを
図5Gの位置まで押しやり、したがって、窓29bを通るデリバリワイヤ182の拡大頭部184の完全引っ込みを可能にし、それによりマイクログラフト10′をデリバリワイヤ182から解除することができる。
図5Hは、タブ29aがデリバリシステムの引っ込み後にマイクログラフト10′と長手方向に整列したその元の位置に戻された状態を示している。
【0137】
図7は、全体が参照符号86で示された動脈瘤内マイクログラフトデリバリシステムの別の実施形態を示している。デリバリシステム86は、プッシャワイヤ88およびローディング管92を含む。プッシャワイヤ88は、ステンレス鋼で作られるのが良く、または変形例としてニチノール、プラスチックまたは不活性もしくは生体適合性材料またはこれらの組み合わせで作ることができる細長いテーパ付きの軟性ワイヤを含む。ワイヤとして図示されているが、プッシャワイヤは、変形例として、ルアーロック付きのハイポチューブであっても良い。
【0138】
プッシャワイヤ88の遠位端のところには、拡張型グラスパ(把持)部材またはアーム94,98が設けられている。4つのグラスパアームがこの設計例において設けられているが、5本以上または3本以下のアームを使用することができる。アーム94,98は、形状記憶材料、例えばニチノール、ばね焼戻しステンレス鋼、放射線不透過性金属、または他の適当な材料で構成されるのが良い。アーム94,98は、変形例として、偏向可能なアームを作るようレーザカットされた金属または弾性管で製作されても良い。グラスパアームのうちの1つまたは2つ以上の遠位端には放射線不透過性バンド(バンド102,106,108として示されており、第4のバンドは図示されておらず、というのは、第4のアームが図示されていないからである)が取り付けられている。バンドは、グルー、はんだ、または他の方法で取り付けられるのが良い。アームの近位端は、コイル110によってプッシャワイヤ88に取り付けられ、コイル110は、例えば巻きステンレス鋼または白金‐イリジウムで作られるのが良い。取り付け方法としては、接着、溶接、またははんだ付けが挙げられる。把持アームの使用は、マイクログラフトの取り出し/取り外しを行いまたは動脈瘤内でのマイクログラフトの操作/再位置決めを行うよう完全配備後にマイクログラフトの把持を可能にするという利点を有し、これについては、以下に説明する。
【0139】
プッシャアーム88は、約20cmから約400cmまで、より狭くは約100cmから約300cmまでの範囲にあり、例えば約200cmの長さ(アームを含む)を有する。プッシャワイヤ88の適当な直径は、約0.006インチ(0.152mm)から約0.040インチ(1.016mm)までの範囲にあり、より狭くは約0.008インチ(0.203mm)から約0.035インチ(0.889mm)までの範囲にあるのが良い。プッシャワイヤ88の全体的直径は、近位側から遠位側までテーパしているのが良く、例えば、約0.014インチ(0.356mm)から約0.003インチ(0.076mm)までテーパしている。プッシャワイヤ88は、一部か全体かのいずれかが減摩性が得られるよう親水性またはPTFE被膜で被覆されるのが良い。
【0140】
ローディング管92は、金属かプラスチックかのいずれかで作られ、好ましくは、マイクロカテーテルルアーテーパ部と結合するための遠位テーパ部112を有する。ローディング管92は、好ましくは、マイクログラフト90全体およびコイル110の少なくとも一部分を覆うのに十分な長さを有する。ローディング管92の内径は、好ましくは、これが結合するマイクロカテーテルの内径に近い。内径の範囲は、約0.008インチ(0.203mm)から約0.070インチ(1.778mm)までであるのが良い。ローディング管は、プッシャワイヤ88に対する相対運度を阻止するようクリンプまたは他の固定手段を有するのが良い。近位端にルアーまたは他の取り付け部が設けられた構造体に用いられる場合、導入器は、取り外し(すなわち、剥離)を助けるよう長さ方向スリットを有するのが良い。
【0141】
近位バンド114、例えばマーカーバンドを有するマイクログラフト90を装填する一手法は、ローディング管92を2対のグラスパアーム94,98のすぐ近位側でプッシャワイヤ88上に位置決めしてこれらグラスパアームがこれらの通常の拡張位置にあるようにすることである。次に、マイクログラフト90に取り付けられているバンド114をバンド102,104(アーム94の各アームに1つずつ)と、アーム98のバンド106,108との間に位置決めする。軸方向に間隔を置いたバンドの配置を達成するためには、アーム94は、アーム98よりも短いのが良く、その結果、バンド102,104は、バンド106,108の近位側に位置しまたは変形例としてアーム94,98は、同一サイズのものであるのが良く、バンド102,104は、バンド106,108をアーム98の遠位端またはより遠位側の位置に配置することができる間、アーム94のより近位側の位置(遠位端から間隔を置いて位置する)上に配置するのが良いことに注目されたい。次に、ローディング管92を前方に(遠位側に)前進させ、それによりプッシャアーム94,98を圧縮して押し潰しまたは圧縮位置に至らせ、それによりバンド114に係合して(これを把持して)マイクログラフト90を定位置に保持する。かくして、バンド114は、マイクログラフト90をワイヤ88に取り付けた状態に保持するようプッシャ(デリバリ)ワイヤ88と係合可能な係合または保持構造体を形成する。
【0142】
マイクログラフト90は、編組構造体の一部分周りに位置決めされている近位バンド114を除き、マイクログラフト10とほぼ同じであることに注目されたい。
【0143】
変形例として、単一の近位マーカーバンドを有するマイクログラフトに代えて、マイクログラフトが2つの近位バンドを有しても良く、この場合、プッシャワイヤのバンドがローディング管のルーメン内で圧縮されたときにロックを生じさせるよう着座することに注目されたい。変形例として、内部コイルを備えたマイクログラフトは、プッシャワイヤのバンドによる半径方向圧縮および把持を可能にする隙間を有するよう互いに間隔を置いて配置された近位コイル巻線を有するのが良い。
【0144】
図8は、全体が参照符号116で示された動脈瘤内マイクログラフトデリバリシステムの更に別の実施形態を示している。デリバリシステム116は、神経血管用ステント‐グラフトキットであり、この神経血管用ステント‐グラフトキットは、遠位バンド120を備えたプッシャワイヤ118、バンド124,126を備えた近位アームおよびバンド128,130を備えた遠位アームを有するステントまたはフローダイバータ122、近位バンド134を備えたマイクログラフト132、およびローディング管133を含む。マイクログラフト132は、ステント122、ステントバンド128,130およびローディング管133によって近位側にロックされる。ステントまたはフローダイバータ122は、バンド124,126がバンド120によって制止されるという技術と同様なロック技術を用いてプッシャワイヤ118に対してロックされる。両方のロックシステムのためのアームの本数は、3本以上または1本以下であるよう様々であって良い。デリバリシステム116はまた、ガイドワイヤ運搬のための貫通ルーメンを有するよう構成されているのが良い。
【0145】
デリバリシステム116は、神経血管用ステント‐グラフトを形成するよう現場で組み合わせることができるマイクログラフトとステントを送達することができる単一のデリバリシステムを提供する。変形例として、ステントは、プッシャワイヤに永続的に取り付けられても良く、このステントは、グラフトを動脈瘤中に押し込む仮のステントとして働く。
【0146】
図9は、医療手技前または医療手技中、マイクログラフトをデリバリワイヤまたはガイドワイヤに取り付けるために用いることができるマイクログラフト導入器システム136を示している。マイクログラフトローダ導入器システム136は、マイクログラフト10が装填された導入器シース138を含む。導入器シースは、管状本体140、ルアーロック142、およびストップ管144を有する。管状本体140は、金属、プラスチックまたはこれら材料の組み合わせで構成でき、この管状本体は、約0.008インチ(0.203mm)から約0.070インチ(1.778mm)までの範囲にある内径およびマイクログラフト10の全てまたは実質的に全てを覆う長さを有する状態で寸法決めされている。管状本体140の遠位先端部は、真っ直ぐであっても良くまたはマイクログラフトの導入および取り扱いを助けるようテーパしていても良い。ルアーロックは、流体、例えば生理的食塩水または造影剤、ガイドワイヤまたはデリバリワイヤおよびプッシャカテーテルの導入を可能にするRHV、例えば
図5DのRHV78に取り付けられるのが良い。オプションであるストップ管144は、貫通ルーメンを有し、このストップ管は、プラスチックまたは金属で作られるのが良く、しかも近位側から遠位側へのテーパ部を有するのが良い。ストップ管の目的は、ローディングに先立ってマイクログラフトが管状本体140から出るのを阻止するとともに管状本体を挿入に先立って取り出すことができるようにすることにある。
【0147】
図9は、たった1つのマイクログラフトを示しているが、多数のグラフトを単一の導入器シース内に入れた状態で送達することができる。これらマイクログラフトは、互いに対して自由に動くことができ、または、例えば上述したようにほつれた端部による方法を利用して互いに連係させることができる。二次形状を有するマイクログラフトは、一般に、導入器シース内に装填されるときには全体として直線状でありまたは真っ直ぐであり、したがって、これらマイクログラフトは、同心である。
【0148】
導入器シース136は、あらかじめ包装された状態でかつ無菌状態で運搬される。いったん開かれると、RHVおよび注射器をルアーに取り付けて流体を導入するのが良い。デリバリワイヤまたはガイドワイヤを導入器シール138内に押し込んでマイクログラフトをワイヤに取り付けるのが良く、または、変形例として導入器シース138をマイクロカテーテルの近位端と結合して、ワイヤが付いたまたはワイヤなしのプッシャカテーテルを用いまたは市販のプッシャワイヤを用いてマイクログラフトをシース138中に通してマイクロカテーテル中に近位側に押し込むのが良い。
【0149】
本明細書において開示されるマイクログラフトは、非直線形態にあらかじめ設定されているのが良く、そしてこれらマイクログラフトを実質的に直線状の形態で動脈瘤まで前進させるのが良く、次に動脈瘤内の空間において、動脈瘤中に送り込まれたときに同じ非直線形態または異なる非直線形態に戻るのが良い。
【0150】
図10~
図11Fは、
図5Aの動脈瘤内マイクログラフトデリバリシステム54を用いて
図1のマイクログラフト10を配備する好ましい方法を示している。(本明細書において説明する他のマイクログラフトを同様な仕方で挿入することができる)。マイクログラフト送達方法ならびに「粘稠度または粘稠性ロック」機能(以下において説明する)は、
図18および
図19に流れ図の形態で示されている。植え込み前に、デリバリシステムを上述したように患者挿入に先立ってまたは医師によって好ましいように準備するのが良い。
【0151】
典型的な頭蓋内動脈瘤への接近には、ガイドワイヤを大腿動脈中に挿入し、次に動脈瘤部位に達するまで血管系を通って一次ガイドワイヤと組み合わせてマイクロカテーテルを追跡することが必要である。動脈瘤部位にいったん位置すると、一次ガイドワイヤを取り出し、これに代えて塞栓形成システムを用いる。
図10は、
図5Aのマイクログラフトデリバリシステム54がユニットとしてマイクロカテーテル146(RHV148が取り付けられた状態)の近位端内に挿入されている状態を示しており、マイクロカテーテル146は、ガイドカテーテルを通って投入され、そして動脈瘤部位まで送り進められ、一次ガイドワイヤが抜去されている。
【0152】
図11Aは、動脈瘤150内に位置決めされ、そして「拘留」ステント留置法を用いて定位置に保持されているマイクロカテーテル146を出たデリバリワイヤ62の遠位先端部66が血液152によって包囲された状態を示している。拘留は、マイクロカテーテルの遠位先端部を親血管内膜とステントまたはフローダイバータ154との間にピン留めしてマイクロカテーテル先端部が動脈瘤内に保持され、そして送り出された閉塞器具、例えばマイクログラフト10が親血管管腔から閉め出されたままにするようなステントまたはフローダイバータ154の使用を意味している。拘留に代えて用いることができる他の技術としては、一次的ステント留置およびバルーンリモデリングが挙げられる。また、かかる親血管支持(ステントまたはフローダイバータ)器具を用いないで本発明のマイクログラフトを配備することが想定される。
【0153】
システムが
図11Aに示されているようにいったん定位置に位置すると、図示のようにあらかじめ曲げられた曲線を有する露出状態のデリバリワイヤ先端部66をゆっくりとマイクログラフト10中に引っ込める。引っ込めは、数センチメートルの小刻みなステップで行われるのが良くまたはこれがプッシャ/マイクログラフト接合部57(
図5A参照)のところまたはその近くの場所に達するまで完全に行われるのが良い。デリバリワイヤ62を接合部57に向かって近位側に引っ込めているとき、血液152がマイクログラフトの内側ルーメン内に引き込まれて
図11Bおよび
図11Cに示されているようにデリバリワイヤ62によって先に占められていた容積部を充填する。この充填作用は、上述したマイクログラフトの特有の内部キャピラリー特徴部の組み合わせによりかつ引っ込み中のワイヤの注射器状「ピストン」効果に起因して起こる。
【0154】
デリバリワイヤ62が引き戻されるとともに幾つかの実施形態では、
図5Fの実施形態の場合のようにタブ21aに当たるロック位置まで引き戻された状態で、プッシャカテーテル58(
図5A)を遠位側に前進させてこれがマイクログラフト10の近位端に係合しているときにプッシャカテーテル58を用いてマイクログラフト10をワイヤ62から離して
図11Dに示されているように動脈瘤中に前方に押し込むのが良い。デリバリシステムがプッシャカテーテル58またはデリバリワイヤ62をマイクログラフト10に物理的に連結する機械的ロックを備えていない場合、マイクログラフト10は、いったん粘稠な液体(例えば、血液)によって包囲された状態でデリバリシステムコンポーネントとマイクログラフトとの間でマイクロカテーテル146内に形成される「粘稠度ロック」(以下において説明する)に起因して依然として、回収可能である。このロックにより、所望の配置状態が達成されるまでマイクログラフト10をマイクログラフト10の近位端がマイクロカテーテル146のルーメン内に位置したままの状態で前進させたり引っ込めたりすることができる。
【0155】
ワイヤ62が既に接合部57のところに位置決めされていない場合、マイクログラフト10をプッシャカテーテル58によって前方に押し、そしてワイヤ62を接合部57まで更に近位側に引くのが良い。ワイヤ62が接合部57にいったん達すると、マイクログラフト10の内側ルーメンは、ワイヤ62に取って代わった血液152および存在しているなんらかの液体(例えば、造影剤)で完全に満たされる。今や血液がマイクログラフト10の内側ルーメンを満たし、そして上述のキャピラリー作用により組物壁に浸透しているので、飽和状態の器具は、一部が患者の血液で構成される。血液が送達後のマイクログラフト(インプラント)内に捕捉されて淀んだ状態になっているときに血栓形成および微孔性ヤーンを通る細胞内方成長が促進される。
【0156】
血液が編組構造体を通って吸収されているときに血液がルーメンの遠位開口部をとおってかつ/あるいは遠位端から間隔を置いて位置するルーメンの他の中間または近位領域を通ってマイクログラフト10のルーメンに入ることができることに注目されたい。血液がかかる中間または近位領域に入っているときに、血液は、種々の寸法方向に広がるとともに上述のキャピラリー作用に起因して近位側に差し向けられる。
【0157】
マイクログラフト10が動脈瘤中に配備されているとき、このマイクログラフトは、
図11Dおよび
図11Eに示されているように動脈瘤壁またはステント/フローダイバータ154との接触に起因して任意のあらかじめ設定された二次形状およびランダムな形状を取る。すなわち、これらの図では、マイクログラフト10は、図示のようにあらかじめ設定されたU字形を有するが、この形状は、マイクログラフトが動脈瘤壁および/またはステント154に接触しているときに変化することができる。マイクログラフト10の近位端がマイクロカテーテル内に位置したままであれば、マイクログラフト10を上述したような完全配備に先立つ任意の時点で引っ込めて再位置決めすることができる。マイクログラフト10は、プッシャカテーテル58の遠位先端部がマイクロカテーテル146の遠位端にいったん達しまたはこれを出ると、完全に配備され、そしてこのマイクログラフトはデリバリシステムから離脱することになる。
図11Eは、
図11Dの完全に配備されたあらかじめ形作られている血液充填マイクログラフト10の拡大断面を示している。
【0158】
第1のマイクログラフト10を配備した後、デリバリワイヤ62およびプッシャカテーテル58を抜去し、そして必要ならば、別のマイクログラフト10をワイヤ62上に装填しまたは新たなデリバリシステムを開き、そして配備プロセスを上述したように繰り返す。上述のステップを繰り返すことによって多数のマイクログラフトを配備するのが良く、ついには、動脈瘤に
図11Fに示されているように十分に詰め込まれるようになる(医師の判断により)。必要ならば、マイクロカテーテル先端部またはデリバリワイヤ62を詰め込み相互間または詰め込み中に用いてマイクログラフトを動脈瘤内で動かしまたは圧縮する。動脈瘤にいったん十分に詰め込むと、マイクロカテーテルを抜去し、ステントまたはフローダイバータ154は、引き続き拡張して動脈瘤158の頸を覆い、それにより動脈瘤嚢からマイクログラフト10が出るのを制止する。マイクログラフト10とステントまたはフローダイバータ154は一緒になって、
図11Fに示されているように神経血管ステント‐グラフト160を形成する。
【0159】
上述したように、デリバリシステム54は、マイクロカテーテル内に一次的液体シールまたは「粘稠度ロック」効果を生じさせることを特徴としており、それにより、配置中、マイクログラフトの限定された回収性(プッシュ/プル)を可能にする。ロックの「プル」は、プッシャカテーテル58の先端部によって生じ、それにより、流体充填マイクロカテーテル146内に注射器状「ピストン」を生じさせる。このロックの機能性は、マイクロカテーテルルーメンと近位マイクログラフト10本体、隣接のプッシャ58の先端部、デリバリワイヤ62相互間の間隙ならびに流体媒体の粘性および粘稠性と粘着性で決まる。
【0160】
図19の流れ図は、粘稠度ロック機能のステップを記載しており、これらステップは、次の通りである。
1)動脈瘤内においてデリバリワイヤ62の先端部をマイクログラフト10の遠位端に整列させる。
2)ワイヤ62を引っ込めて血液をプッシャ接合部57までマイクログラフトルーメン内に引き込む。
3)デリバリシステム(プッシャ58+ワイヤ62)を押してマイクログラフト10を前進させてこれをカテーテル146から出す。
4)マイクログラフト10の近位端をカテーテル146内に維持した状態で、デリバリシステムを引いてマイクログラフト10を引っ込める。
5)いったん再位置決めされると、デリバリシステムを押すことによってマイクログラフト10を再配備する。
6)マイクログラフト10の近位端をカテーテル146から押し出すことによって血液充填マイクログラフト10を解除する。
7)プロセスを繰り返して別のマイクログラフト10を送達しまたはデリバリシステムを抜去し、追加のマイクログラフト10を遠位ワイヤ先端部上に装填する。
【0161】
粘稠度ロックが働くようにするためには、粘稠性液体(すなわち、血液)は、マイクログラフト/プッシャ接合部を越えてマイクロカテーテルを充填しなければならない。粘稠性流体がマイクログラフト10をマイクログラフト10およびプッシャ接合部57の隙間をいったん満たすと、粘稠性流体は、押しのけ中(すなわち、プッシャを引っ込めているとき)、プッシャ/マイクログラフト接合部57の周りの「ガスケット」またはシールとして作用する。プッシャ58(すなわち、ピストン)をマイクログラフトの近位端に隣接したところに引く作用により、今や、低圧容積部が作られる。これにより、血液中に浮遊状態のマイクログラフト10は、吸引された状態になってマイクロカテーテル146内に引っ込む。
【0162】
マイクログラフト10はまた、デリバリワイヤ遠位先端部66をプッシャ58の遠位先端部の近位側に引き戻しまたは完全に抜去すると、引っ込み可能である。高い摩擦力または耐引っ張り性は、「粘稠性ロック」を壊す可能性が多分にあり、したがって、この回収方法の好ましい用途は、短い低摩擦器具を用いる場合または関与する屈曲度および抵抗力が最小限の場合である。
【0163】
マイクログラフトデリバリシステムの幾つかの実施形態では、プッシャワイヤまたはデリバリワイヤは、マイクログラフトルーメン内に存在していない場合があり、そして血液によるマイクログラフトの内部充填が患者の循環系からの圧力によってまたは毛管力によって引き起こされることになる。毛管現象は、上述したように、マイクログラフトが適当に寸法決めされた内径または細孔を有することによって達成できる。それ故、
図11Cに示されているマイクログラフト中への血液の吸収は、デリバリワイヤまたは外力が血液を引き込むのに用いられない場合であっても血液との接触時に起こることができる。
【0164】
図20A~
図24は、本発明のデリバリシステムの変形実施形態を示しており、これらデリバリシステムは、標的部位への前進を容易にするよう遠位側に方向付けられた力をマイクログラフトに加える圧縮コイルを含む。このコイルは、デリバリカテーテル内に装填されたときにマイクログラフトによって圧縮され、係合部材がマイクログラフトとの係合状態から解除されると、ばねは、その通常の状態に戻って力をマイクログラフトに及ぼす。偏向可能なタブ29aが設けられていないことを除き、
図4のマイクログラフト10′と同一のマイクログラフト100が
図21A~
図22C、
図23B、および
図24のデリバリシステム内に示されているが、理解されるべきこととして、
図20A~
図24のデリバリシステムを利用して本明細書に開示されている他のマイクログラフトならびに他のマイクログラフト構造体または他の植え込み型器具を運搬または送達することができる。
【0165】
最初に
図20Aの実施形態を参照すると、このバージョンは、マイクログラフトルーメン内に設けられて上述した毛管効果を達成するためにマイクログラフト形態を利用したプッシャワイヤまたはデリバリワイヤを備えていない。
図20Aのロックシステムは、全体が参照符号190で示されており、このロックシステムは、遠位端部194を備えた圧縮コイル192、遠位部分のところにボール198の形態をしたロック/係合部材を備えるワイヤまたはリボン196の形態をした細長い部材、およびマーカーバンド200を含む。フード202がロックボール198ならびにロックワイヤ196およびコイル192の一部分を覆った状態で設けられるのが良い。ロックボール198は、以下に説明するようにマイクログラフトに解除可能に係合するよう構成されている。
【0166】
圧縮コイル192は、ばね焼戻しステンレス鋼、ニチノール、ポリマーまたは放射線不透過性物質、例えば白金/イリジウムを含む圧縮コイルの製造に適した任意他の材料で作られるのが良い。圧縮コイルは、幾つかの実施形態では、約2mm~約5cmの長さ、より狭くは約3mm~約2cm、例えば約5mmの長さを有する。圧縮コイル192の適当な直径は、幾つかの実施形態では、約0.006インチ(0.152mm)から約0.035インチ(0.889mm)までの範囲、より狭くは約0.010インチ(0.254mm)から約0.018インチ(0.457mm)までの範囲にあるのが良い。他の長さおよび直径もまた想定される。コイルは、開放ピッチであっても良く、閉鎖ピッチであっても良く、このコイルは、オプションとして、正方形または研削端部を有するのが良く、かかる端部は、オプションとして、溶接されるのが良く、例えばレーザ溶接されるのが良い。
【0167】
コイル192の遠位端部194のところには、ロックボール198の頂部上に延びるフード202が設けられるのが良い。フード202は、プラスチックまたは金属で作られるのが良いが、好ましくは、フードはプラスチックで作られる。フードは、例示として、コイル192の最初の2~3個の遠位巻線上に延びるが、異なる数のコイル上に延びるよう異なる長さで作られても良い。フード202は、種々の方法、例えば熱風源および取り外し可能な収縮チューブを用いてフードをコイル巻線中に溶融することにより、または他の方法、例えばオーバーモールド成形によってコイル192に固定される。フード202は、コイル192の遠位側を超えて延びるのが良く、このフードは、結合コンポーネントに応じてある角度をなして切断されても良く(図示のように)、正方形であっても良く、または結合コンポーネントに応じてコイルと面一をなしても良い。フード202は、ロックボール198の垂直運動(すなわち、ボールロックワイヤ196の長手方向軸線に対して横方向運動)を制限し、そしてこのロックボールが血管系を通って標的部位までのシステムの追跡中にマイクログラフトから離脱しないよう保つ。フード202は、カテーテル内での摩擦を減少するよう滑らかな外面を有するのが良い。ロックボール198の垂直(横方向)運動を制御する別法は、材料(例えば、グルーまたははんだ)をロックワイヤ196またはロックボール198の頂面に付け足すことである。
【0168】
ロックボール198を備えたボールロックワイヤ196は、平べったい、丸形の、または漸変断面を備えた材料で作られるのが良く、この材料の一端部は、ボールまたは拡大特徴部を作るよう溶解されまたは形成される。ロックワイヤ材料は、ばね焼き戻しステンレス鋼、ニチノール、ポリマーまたは放射線不透過性物質、例えば白金/タングステンを含むボールエンドワイヤの製造に適した任意他の材料であって良い。ボールロックワイヤ196は、幾つかの実施形態では、圧縮コイル192の長さに等しいまたはこれよりも長い長さを有する。ロックボール198は、ワイヤの端部のところでは、幾つかの実施形態では、約0.004インチ(0.102mm)から約0.040インチ(1.016mm)までの範囲、より狭くは約0.006インチ(0.152mm)から約0.012インチ(0.305mm)までの範囲にある直径を有するのが良い。ロックボール198は、これが結合するようになっている構造体に応じてワイヤ196の長手方向軸線上に心出しされても良くまたはこれに対してオフセットしていても良い。
図20Aの実施形態では、ロックボールは、オフセットした状態で示されている。
【0169】
図20Aのロックシステムサブアセンブリは、ボールロックワイヤ196を圧縮コイル192中に挿入してロックボール198がフード202によって覆われるようボールロックワイヤを整列させることによって組み立てられるのが良い。ロックボール198は、圧縮コイル192内にまたは所望のコイル圧縮(解除ロック)に応じてコイル192の遠位端部194から距離を置いて位置決めされても良い。ボール198(オフセットされている場合)の大きい方の部分は、好ましくは、下に向きまたはフード202から遠ざかる方向に向く。オプションとしてのマーカーバンド200がコイル192の近位端部中に部分的にまたは完全に挿入され、それによりワイヤ196をバンド200とコイル192との間にピン留めする。次に、互いに結合されたコンポーネントをはんだ付けしまたは接着して圧縮コイル192の近位端部のところに接合部を形成し、その結果ロックシステムサブアセンブリ190が得られる。
【0170】
ロックシステムサブアセンブリ190は、グラスパアームが設けられていないことを除き、
図7の実施形態で上述したプッシャワイヤ88とほぼ同じプッシャワイヤ188(
図20A)に取り付けられるのが良い。プッシャワイヤ188は、所望ならば中実であるのが良く、と言うのは、デリバリワイヤを利用する必要がないからである。変形例として、ロックシステムサブアセンブリ190は、プッシャ部材またはカテーテル、例えば
図5Eの実施形態で上述したプッシャ部材186とほぼ同じ
図20Bのプッシャ189に取り付けられても良い。
図20Bのこの実施形態では、プッシャ部材189を貫通して、デリバリワイヤを受け入れるルーメンが設けられている。
【0171】
図20Aのデリバリシステムの組み立てにあたり、プッシャワイヤ188の遠位端部を内部に位置決めされているマーカーバンド200に通して滑らせ、この遠位端部は、コイル192の近位端部の外側(近位側)に部分的に延びるのが良く、そして定位置でマーカーバンド200にはんだ付けされまたは接着されるのが良い。かくして、マーカーバンド200が用いられる場合、ロックワイヤ196は、マーカーバンド200(およびコイル192に直接取り付けられる。マーカーバンドが用いられない場合、ロックワイヤ196をプッシャワイヤ188(およびコイル192)に直接はんだ付けするのが良くまたは違ったやり方で取り付けるのが良い。また、収縮チューブ(図示せず)を接合部の近位端部上に溶融して任意のエッジを滑らかにして曲がり部周りの追跡具合を向上させるのが良い。変形例として、プッシャワイヤ188をその遠位端部のところで平たくしまたは丸形にしても良く、そしてロックボール、例えばロックボール198をその先端部上に形成しても良く、それによりボールロックワイヤ196が不要になる。ロックシステムコンポーネントもまた、個々にしかも上述したようにサブアセンブリとしてではなく、プッシャワイヤに取り付けるのが良い。
【0172】
ロック組立体190がプッシャ部材(プッシャ管)、例えば
図20Bに示されているプッシャ部材189に取り付けられる実施形態では、マーカーバンド200は、これを貫通してデリバリワイヤ182を受け入れる開放ルーメンを有するのが良く、このデリバリワイヤはまた、プッシャ部材189に設けられたルーメンを貫通する。バンド200は、これを組み立てのためにプッシャ部材189中に挿入することができるようコイル192の近位端部から僅かに近位側に延びている。オプションとして、収縮チューブ(図示せず)を接合部の近位端部上に溶融して任意のエッジを覆って曲がり部周りの追跡具合を向上させるのが良い。ロックシステムコンポーネントもまた、プッシャ部材に個々にかつ上述したようにサブアセンブリとしてではなく取り付けるのが良い。
【0173】
図20Bは、プッシャ管189に取り付けられた別のロック機構体を示しているが、上述したように、
図20Aのロック機構体190をプッシャ管189とともに用いることができることに注目されたい。
図20Bの実施形態では、ロックボールに代えて、ロック機構体191のロックワイヤまたはリボン(細長い部材)は、長手方向軸線に対して横方向に(
図20Bの向きで見て下方に)曲げられた扁平なワイヤ形態204を有する。これは、マイクログラフトに係合するようV字形フック状構造体を形成する。この実施形態は、デリバリワイヤ182、例えば拡大ヘッド183を備えた
図5A~
図5Eのデリバリワイヤ182と併用状態で示されていることに注目されたい。
図20Aの実施形態と同様、ロックサブアセンブリは、ワイヤ(またはリボン)204およびマーカーバンド200上に位置決めされた圧縮コイル192を含み、ワイヤ204の長手方向に延びる部分がコイル192とマーカーバンド200との間にピン留めされている。
【0174】
ロックワイヤおよびロックボールは、
図22A~
図22Cの実施形態に示されているように単一のレーザカット管218で形成されるのが良く、この単一のレーザカット管は、組み立ておよび運搬を助けるようマイクログラフト100の圧縮コイル192、プッシャ部材(例えば、プッシャ部材189(図示せず))、および管129′内で延び、例えば、これらと同心である。これは、管壁の長くて薄い区分をレーザ切断して管218から近位端部上で移行するロックワイヤ214を作ることによって達成され、他方、長くて薄い区分の遠位端部は、ロックボール216中に溶融される。レーザカット管218の材料は、ニチノールであるが、これは、十分な可撓性および引っ張り強度を備えた任意他の形状記憶材料、金属もしくはポリマー、または他の材料であって良い。変形例として、一体的に形成されるのではなく、ロックボールは、放射線不透過性物質をロックワイヤの端部に接合しまたは融着し、例えば白金/イリジウムマーカーバンドをロックワイヤの遠位先端部にはんだ付けすることによって形成されても良い。
図22A~
図22Cの実施形態では、ロックボール216は、マイクログラフトの管129′に設けられた切欠きと係合関係をなして示されている。
図22Aの実施形態におけるように圧縮コイル192が管218からレーザカットされたワイヤ214と同心状態で組み立てられることに注目されたい。管218は、マーカとしても機能するよう放射線不透過性であるのが良いことに注目されたい。
【0175】
図21Aおよび
図21Bは、フード202を使用せず、デリバリワイヤ182を使用した
図20Aのロックサブアセンブリ190を示している。ロックアセンブリ190は、プッシャ部材189に装着され、そして一例としてマイクログラフト100にロックされた状態で示されている。ロック組立体190は、導入器シース208内に位置した状態で示されている(断面で示されている)。コア要素101(
図4Aのコア要素27と同一である)がマイクログラフト100内で位置決めされ(断面で示されている)、このコア要素は、コア27および管29とほぼ同じ仕方で管129(
図4Aの管29とほぼ同じであるが、タブ29aが設けられていない)に連結されている。管129は、この管に受け入れ部分を形成し、上から見て(
図21Aの向きで見て)ロックボール198の挿入(および解除可能な係合)を許容するよう構成された窓(開口部)または切欠き(スロット)206を有している。管129に設けられた窓206の近位側には、長さ方向スロット210を有することを除き、
図4Cの実施形態のマーカーバンド22′とほぼ同じマーカーバンド22′が設けられている。マーカーバンド22′は、溶接、はんだ付け、接着剤、または他の方法により管129に取り付けられるのが良い。マーカーバンドスロット210は、ロックシステムがマイクログラフト100と係合すると、ボールロックワイヤ196のワイヤ部分がスロット210内に嵌まるよう寸法決めされるとともに位置決めされている。管129は、任意の金属管、例えばステンレス鋼または白金/イリジウムもしくは白金/タングステンのような他の合金からレーザ切断されるのが良い。
【0176】
マイクログラフト100をプッシャ部材189に取り付けられたロックシステムに結合するため、デリバリワイヤ182をコイル192の遠位端部194を超えて前進させ、次にマイクログラフト100をデリバリワイヤ182上でこれに沿って滑らせ、ついには、管129がロックボール198と接触するようになる。次に、管129をさらに近位側に押し(ロックボール198を邪魔にならないところに押し)、コイル192の遠位端部194に押し当て、それによりコイル192が縮むようにする。コイル192を十分に圧縮すると、ロックボール198は、管129の窓(開口部)206中に滑り込んでこれと嵌合する。コイル192を圧縮状態に保つとともにロックボール198を窓206内に嵌め込んだ状態に保ちながら、導入器シースまたはカテーテル208を組立体上でこれに沿って前進させてロックボール198が偏向して窓206から出るのを阻止するとともにロックを完了させる。ロックは、管129およびロックボール198がシース208内に留まっている限り働く。いったんシース208の外部に位置すると、圧縮状態のコイル192は、その通常の非圧縮形態に戻り、管129を遠位側に方向付けられた力で遠位側に押し、それによりロックボール198が滑り出てマイクログラフト100を離脱させてマイクログラフト100を標的部位に押す。(デリバリワイヤ182は、マイクログラフト100から引っ込められていることに注目されたい)。ロックシステムがプッシャワイヤ組立体、例えば
図20Aのプッシャワイヤ188上に配置される実施形態では、マイクログラフトをロックにロックする結合ステップは、プッシャワイヤ設計では存在しないデリバリワイヤ182を挿入することを除いて同一である。マイクログラフトは、ボールがシース(および設けられる場合にはフード)の境界部から自由にされてボールが側方に動いて管129から離脱するので上述したのと同じ方式で解除される。また、
図20Bの実施形態のロックフック204は、上述したのと同一の仕方で(
図20Bの場合のようにプッシャ部材189に取り付けられているか、あるいはプッシャワイヤ、例えば
図20Aのプッシャワイヤ188に取り付けられているかに応じて)マイクログラフトへの組み付け/結合が行われることに注目されたい。マイクログラフトは、ロックボール198がシース(および設けられている場合にはフード)から解除されてロックボールが管129から離脱することができるのと同一の仕方でフック204から係合解除される。
【0177】
図22A~
図22Cの実施形態は、
図21Aおよび
図21Bの実施形態とほぼ同じであるが、マーカーバンド22′のスロット210に加えて、管129′は、
図22Bの断面図に示されているように合致スロット212を有し、この合致スロットは、窓(開口部)206から管129′の近位端部まで長さ方向に延びている。その他の点においては、管129′は、管129とほぼ同じである。また、
図22A~
図22Cは、上述したように、これらの図がレーザカットロックワイヤ214およびボール216を含む単一のレーザカット管218から形成されたロックシステム190のバージョンを示しているように互いに異なっている。レーザカット管218の内側および外側寸法は、管129の内側および外側寸法とオーバーラップするのが良い。すなわち、ワイヤ領域214のところの管218の寸法は、管129′の寸法よりも大きくても良く、小さくても良く、あるいはこれに等しくても良い。
図22Bは、ワイヤ部分214の寸法が管129′の寸法よりも小さい一例を提供している。同一直径の管を利用することにより、レーザカットロック管218および管129′の積み重ねが阻止され、しかもロックワイヤおよびボールが管129′のスロットおよび窓内に嵌まりこんでいる間、最小限の半径方向プロフィールが達成される。
図21Aでは、ロックワイヤ196は、管129とシース208の内壁との間に位置決めされたマーカーバンド22′のスロット210内の管129の外部に延び、他方、
図22Aでは、ロックワイヤ214は、マーカーバンド22′の内側に位置し、このロックワイヤは、管129′のスロット212内で延びている。スロット210とスロット212は、整列すると、マーカーバンド22′および管129′の壁を横切ってみてV字形の断面を形成し、それによりロックボールに引っ張り状態にある間(コイルが圧縮されているとき)スロットの広い部分に向かって半径方向に滑る傾向が与えられる。ロックボール216の直径は、この組立体が導入器シースまたはデリバリカテーテル内に位置している時にボールが管/マーカーバンドV字形スロットから引き出されるのを阻止するのに足るほど大きい。ボール216は、圧縮コイル192が押す力を、解除されたマイクログラフト100に加えている状態で、システムを前進させてシース208から出すと、容易に滑り出て管129′から離脱する。ロックシステムのこのバージョンは、デリバリワイヤ182とともにまたはこれなしで使用できる。このスロット付き管129′の設計は、上述のロックボールまたはフック設計のうちの任意のものに使用できる。
【0178】
図23Aおよび
図23Bは、プッシャワイヤ188に取り付けられたロックシステムの別のバージョンを示している。ロックシステムのこのバージョンは、ロックワイヤ(細長い部材)219を有し、このロックワイヤは、ロックワイヤ219の長手方向軸線に対して角度をなして曲がっている曲がり部またはエルボ220を備えている。このロックが働くために、ボール221をマイクログラフト100の管129中に挿入し、その結果、エルボ220は、ボール221が窓206の内側に位置決めされた状態で管129のルーメンの内側に部分的にまたは完全に嵌まり込み、他方、コイル192は、マイクログラフト(上述したのと同様な仕方で結合されている)の結合によって圧縮されるようになる。導入器シース208を係合状態のロックシステム上でこれに沿って前進させると、この組立体は、湾曲したロックワイヤ219が管129に引っかけられてマイクログラフト100が運搬のために結合されるよう拘束される。システムを前進させてシース208から出すと、圧縮コイルは、マイクログラフト100をロックワイヤから押し離してロックワイヤ219から外す(放出する)。
【0179】
係合部材が本明細書において説明しているデリバリシステムではボールロックまたはフックの形態で示されているが、他の係合構造体もまた想定されることに注目されたい。また、理解されるべきこととして、本明細書において説明しているロック組立体をデリバリワイヤとともにまたはこれなしで利用することができ、フードがこれらシステムのうちの任意のものに提供できる。
【0180】
図37A~
図40は、インプラントのためのデリバリシステムのロックシステムの別の変形実施形態を示している。この実施形態では、デリバリ部材がインプラントと係合可能であり、細長い内側部材、例えばワイヤがインプラントとデリバリ部材の結合状態を維持する。
【0181】
より具体的に説明すると、デリバリ部材240は、プッシャ管の形態をしている。デリバリ部材240は、領域244のところにクレードルを形成するようレーザ切断された遠位延長部242を有する。領域244は、バンド249を受け入れるよう三日月形の形をしており、U字形チャネルを形成している。遠位延長部242は、好ましくは、斜面またはカム作用面243を形成するよう少なくとも45°の角度をなして切断される。隙間または幅の狭い区分248が領域244の近位側に形成されている。血管インプラント250は、近位端部のところにニチノール、ステンレス鋼、または他の材料で作られかつ
図4Fの管29′とほぼ同じ管252を有するとともに領域254のところにクレードルを形成するためにレーザ切断部を有する。管252は、血管インプラント250のコイル状内側要素に結合されている。インプラント管252およびデリバリ部材管240は、これらの管が同心状に嵌めあわせられると、すなわち、結合されるとまたはロック位置に位置すると、低プロフィールを達成するよう同一の管から切り出されるのが良い。管240,252は、異なるパターンを有しても良くまたは同一もしくは対称切断パターンを有して機能性を維持しても良い。管252の領域254は、バンド259を受け入れるよう三日月の形をしていて、U字形チャネルを形成している。領域254は、好ましくは、斜面またはカム作用面253を形成するよう少なくとも45°の角度をなして切断される。カム作用面243,253は、インプラントおよびデリバリ部材を一方が他方に対して引かれてこれらの表面に沿って滑っているときにインプラントとデリバリ部材を押し離すことによってインプラントとデリバリ部材の分離を容易にする。すなわち、デリバリ部材(管)240が以下に説明するワイヤの引っ込み後に近位側に引かれると、管240,252はカム作用面に起因して長手方向に変位するとともに側方に変位する。隙間または幅の狭い区分257が領域254の遠位側に形成されている。
【0182】
管252は、管29,29′と同じ仕方でインプラント250に取り付けられるのが良く、例えば、管252の遠位端部は、インプラント250を形成している管状組物内のコイル(内側要素)の近位端部中に挿入された螺旋特徴部251を有し、この螺旋特徴部をコイルの巻線相互間で回転させまたはかかる巻線相互間にねじ込むことによって管252の遠位端部をコイルの近位端部に取り付けるのが良く、したがって、螺旋特徴部は、巻線とインターロックする。他の取り付け方法もまた想定される。領域(クレードル)254は、管252の近位延長部255の近位端部のところに位置し、この領域254は、
図38および
図39に示されているようにデリバリ部材240の幅の狭い区分248内に嵌まり込むよう構成されている。壁258とクレードル254との間に形成された幅の狭い区分257は、デリバリ部材240のクレードル244を受け入れる。
図39が結合状態にある管252とインプラント250の側面から見た斜視図であり、
図38は、内部特徴部を示すよう結合状態の管252とインプラント250の部分的に透明な図であることに注目されたい。
【0183】
デリバリ部材240は、領域244内に設けられ、例えば溶接されたバンド249、例えば放射線不透過性マーカーバンドまたは他の放射線不透過性構造体を有する。インプラント250の管252は、領域254内に設けられ、例えば溶接されたバンド259、例えば放射線不透過性マーカーバンドまたは他の構造体を有する。バンド249,259は各々、それぞれ、細長い部材260を受け入れるアイレット249a,259aを有し、この細長い部材260は、以下に説明するように結合状態を維持し、それによりインプラントとデリバリ部材の同心位置合わせを可能にする。デリバリ部材は、外側領域を覆ったコイル262を有するのが良い。デリバリ部材は、その遠位端のところに、例えば最も遠位側の縁から訳3cmのところに放射線不透過性マーカをさらに有するのが良く、そこで、放射線不透過性マーカは、可視化を助けるようデリバリ部材のコイルに結合され、ただし、他の距離もまた想定され、デリバリ部材は、コイル262を覆うPETまたは他のプラスチックカバーを有するのが良い。デリバリ部材240と管252は、互いに嵌まり合うのが良く、それにより減少しかつ滑らかなプロフィールが得られる。これらは、同一の管で作られるのが良く、そして互いに異なる切欠きパターンまたは同一の切欠きパターンを有することができる。
【0184】
変形実施形態では、管252は、円形である端部を有し、そこで、デリバリ部材のためのアイレットを形成するよう周囲が連続している。かかる実施形態では、管252は、マーカーバンド259を備えておらず、ただし、変形実施形態では、マーカーバンドが設けられても良い。かくして、この形態は、ループまたはリングの形態をしていて、別個の/互いに間隔を置いた耳部を備えたクレードルの形態をしてはいない。この実施形態では、管252がデリバリ部材240と嵌め合わされると、管252は、完全には同心ではなく、と言うのは、管252とデリバリ部材240との間には僅かな隙間が存在するからである。
【0185】
例示としてワイヤの形態をしているが、変形例としては、管または他の細長い器具の形態をしていても良い細長い部材260がデリバリ部材240の遠位延長部242に沿ってインプラント250の近位延長部255のバンド259のアイレット259aを通って、デリバリ部材240のバンド249中に延び、そしてアイレット249aを通って出ている。結合位置またはロック位置または伸長位置(引っ込み位置に対して)と呼ばれる場合のあるワイヤ260のこの位置では、インプラント250とデリバリ部材240は、互いに結合状態のままであり、すなわち、これらは、ワイヤ260がこれらの分離を妨害するので、これらを分離すること(解除すること)ができない。インプラント250をデリバリ部材240から分離する(解除する)ことが望ましい場合、すなわち、体内領域中に挿入して体内にいつでも配置可能な状態にした後、ワイヤ260をこれがデリバリ部材240のバンド249(アイレット249a)からかつインプラント250のバンド259(アイレット259a)から近位側に動かして、
図40の位置まで引っ込める。ワイヤ260のこのロック解除位置(引っ込み位置または分離位置とも呼ばれる)では、インプラント250をデリバリ部材240から分離する(結合解除する)ことができる。上述したように、マーカーバンド249,259は各々、
図38に示されているようにワイヤ260を通すプッシャアイレットまたはインプラントロックアイレットとも呼ばれる開口部またはアイレットを有する。領域244,254は、バンド249,259を貫通させることによって細長い部材、例えばワイヤを挿通させる開口部を有し、それによりアイレットが形成される。さらに、ワイヤ260は、引っ込められたときに領域254(の近位側の)すぐ外側に引っ込められた状態で示されているが、ワイヤをさらに近位側に引っ込めることができるということもまた想定されることに注目されたい。また、伸長位置では、ワイヤ260は、領域244(の遠位側の)すぐ外側に位置した状態で示されているが、ワイヤは、このワイヤが伸長位置にあるときに図示されたところよりも領域244のさらに遠位側に延びることもまた想定されることに注目されたい。ワイヤ260は、デリバリ部材240の外側で近位側に延びるのが良く、そこで、このワイヤの近位端部がユーザによって把持されて引っ込められるのが良い。変形例として、ユーザが接近可能な機構体がワイヤを引っ込めるためにワイヤに作動的に結合されても良い。
【0186】
幾つかの実施形態では、細長い部材260は、デリバリ部材240の内周部(壁)内に接触領域を形成するよう近位端部のところに非直線領域、例えば波部、曲がり部、コイルなどを有するのが良い。これは、輸送中における細長い部材260の長手方向運動および側方運動を制限する僅かな締め代(摩擦係合)をもたらすが、これがデリバリ部材の機能性に悪影響を及ぼさず、すなわち、使用中におけるその所望の近位側への運動を制限しないほど最小限である。変形実施形態では、かかる締め代を達成するため、近位端部のところに設けられた突出部、例えばバンプまたはボールが細長い部材260から延びてデリバリ部材の内壁に係合するのが良い。別の実施形態では、摩擦点または領域を達成するため、デリバリ部材は、細長い部材260との係合を可能にするようその内寸を減少させるようクリンプされるのが良い。
【0187】
図41~
図43は、インプラントを血管系内で運搬するデリバリシステムの変形実施形態を示している。デリバリシステム270は、皮下注射管(ハイポチューブ)272を含み、このハイポチューブは、外径が0.014インチ(0.356mm)以下、内径が約0.010インチ(0.254mm)以下のステンレス鋼または他の適当な金属もくしは複合材管で作られるのが良い。他の寸法もまた想定される。この管は、管直径を減少させるよう遠位端部のところにテーパ部274を有しても良く、またはその長さに沿って連続直径のものであっても良い。直径の減少により、デリバリシステムの直径を増大させないで遠位側に位置する材料をハイポチューブに追加的に嵌めることができ、それによりカテーテル内の摩擦を増大させるとともに/あるいはデリバリシステムの可撓性を減少させることができる。
【0188】
ステンレス鋼コイル278が接合部276のところでハイポチューブに溶接されている。コイル278の内径および外径は、連続した内側および外側プロフィールを維持するようハイポチューブ直径が合致するよう寸法決めされるのが良い。代表的には長さが1mm~2mmの放射線不透過性マーカーバンド280がコイル278の遠位端部に取り付けられているが、他の長さも想定される。バンド280は、好ましくは、コイル278から組物282の近位端部内まで延びる。バンド280は、コイル278の内径よりも大きなまたはこれに等しい外径を有し、ただし、変形実施形態では、バンドの外径は、コイル278の内径よりも小さくても良い。バンド280は、溶接または他の適当な方法によってコイル278に取り付けられるのが良い。外側組物282がバンド280に取り付けられている。組物282は、その遠位端部が遠位接合部283のところで管287に結合されており、この組物は、バンド280を覆って近位側に延び、組物282は、近位端部が近位接合部286のところでバンド280に結合され、好ましくは、近位端部および遠位端部のところで熱により結合されるが、他の方法を用いることもできる。図示のように、バンド280は、組物282から近位側に延びている。
【0189】
組物282は、運搬を助けるデリバリシステムのための軟質の先端部(柔らかい遠位端部)を提供する。すなわち、代表的には、インプラントは、J字形先端部を備えたカテーテルにより動脈瘤に送達される。このJ字形先端部付きカテーテルは、蛇行性血管系を通る運搬を可能にするよう内側ガイドワイヤによって真っ直ぐにされる。カテーテル先端部は、動脈瘤に到達すると、ガイドワイヤを抜去し、先端部は、そのJ字形状に戻る。多くの場合、インプラントがカテーテルを通って挿入されると、デリバリシステムの剛性は、不都合にも、J字形先端部をその90°の角度から真っ直ぐな位置に動かし、例えば、このJ字形先端部を70°以下に動かす場合がある。90°の位置からこれよりも小さい角度へのこの運動は、動脈瘤内におけるインプラントの配置に悪影響を及ぼす。
図41~
図43のデリバリシステムの組物282は、J字形先端部の偏向を最小限に抑え、例えば真っ直ぐにするよう軟質先端部(剛性の減少した先端部)をもたらす。
【0190】
組物282は、接着部および接合部をもたらすよう各端部が溶融されるのが良い一連のマルチフィラメントPETヤーンで作られる。組物282は、その可撓性を増大させるようクリンプされるのが良いが、組物は、増大した延伸抵抗および外側低プロフィールをもたらすようクリンプされなくても良いことは言うまでもない。組物は、閉鎖ピッチ内側コイル289のために長手方向に縮むことがないことに注目されたい。アイレットとも呼ばれるマーカーバンド288を備えたレーザカットロック管287が組物282の遠位端部に取り付けられている。このロック管287は、
図37Aの遠位ロックとほぼ同じである。ロック管287の幅の狭い区分は、
図37A~
図40の場合のように血管インプラントの近位管252のクレードルを受け入れる。レーザカット管287の近位端部は、端と端を付き合わせた状態で小径の金属コイル289の遠位端部289aに結合されており、この金属コイル289は、近位端部がマーカーバンド280に取り付けられている。コイル289は、コイル278のコイル内遠位側を延びるのが良い近位端部289bを有する。コイル289は、溶接部などによりマーカーバンド280の内側ルーメンに当たってこれに取り付けられるのが良く、また変形例として、このコイルは、バンド280の内径および外径に合致して端と端を付き合わせて結合しても良く、例えば、コイル289の近位端部は、マーカーバンド280の遠位端部に当接しても良い。マーカーバンド288は、
図37Bに示されているようにマーカーバンド249が上述の実施形態の管242内に嵌め込まれるのとほぼ同じ仕方で管287内に位置決めされる。マーカーバンド288は、デリバリワイヤ291のためのアイレットを形成する開口部を有する。コイル289の外径は、このコイルが組物282内に嵌まり込んで溶融接合部283により組物282に取り付けられるよう寸法決めされており、またはこのコイルは、これが組物282内のつがい関係をなすコイルまたは管287のつがい関係をなす螺旋切断ねじ山に螺入するよう最も遠位側の開放ピッチ巻線を有するのが良い。かくして、このやり方は、近位端部のところのインプラント管/コイル/組物としての同一の取り付け方法であるのが良い。
【0191】
PET収縮チューブ285がステンレス鋼コイル278を覆っており、このPET収縮管285収縮チューブは、ハイポチューブ272のテーパ付き区分274上を近位側にかつマーカーバンド280上を遠位側に編組溶融接合部286の近位端部まで延びている。収縮チューブカバー285は、滑らかで低摩擦外面および延伸抵抗または可撓性をデリバリシステムに提供する他のポリマーまたは被膜であっても良い。変形例として、金属ワイヤまたはリボンが延伸抵抗部材としてシステムに加えられても良く、それによりかかるワイヤの近位端部は、チューブ272に溶接され、ワイヤの遠位端部は、マーカーバンド280に溶接される。かかる実施形態では、チューブおよび/またはマーカーバンドは、ワイヤのそれぞれの端部を受け入れかつ溶接を容易にするとともにコイル278内へのワイヤの配置を可能にして外側デリバリシステムプロフィールを最小限に抑えるようスロット付きであるのが良く、あるいは、変形例として、ワイヤは、コイル278の外部に配置されても良い。追加の小径コイルまたは管状部材がプルワイヤ291をこれに通すことができるようコイル278の内側に配置されるのが良く、それにより延伸抵抗ワイヤに起因したもつれまたは摩擦の増大を阻止するのが良い(すなわち、小径コイルは、デリバリシステムの内側ルーメン内の延伸抵抗ワイヤに隣接して位置するプルワイヤのためのシースとして役立つ)。
【0192】
デリバリシステム270の解除管サブアセンブリ290は、
図43に示されているように、つがい関係にあるアイレット、すなわち、デリバリシステム270のロック管287(およびマーカーバンド288)のアイレットおよび血管インプラント250の近位端部のところの管252(およびバンド259)のアイレットを介して血管インプラントをデリバリシステム270にロックする。放射線不透過性マーカーバンド288が管287内に位置しかつ放射線不透過性マーカーバンド259がインプラント250の管252のクレードル内に位置し、両方のバンドが開口部ならびに管287,252を有する場合、アイレットは、これらマーカーバンド288,259および/または細長い部材、例えばワイヤを挿通させる管287,252に設けられている開口部をさらに有するものとみなされることが可能である。
【0193】
図41のサブアセンブリ290は、ワイヤ291で構成され、このワイヤは、デリバリシステムの長さにわたってインプラント(図示せず)の近位端部内に延び、それにより、両方のアイレットが
図38の細長い部材260の場合のように互いに結合されて位置合わせされる(同心状になる)と、ロックを形成する。かくして、ワイヤ291は、互いに結合された(位置合わせされた)アイレットを通ってデリバリ部材270とインプラント250をロックする。ワイヤ291は、好ましくは0.002インチ(0.0508mm)直径のニチノールワイヤで作られるが、任意のこれよりも大径のまたは小径のものであって良くかつ他の可撓性材料で作られても良い。コイル292の形態をしたストッパがワイヤ291の遠位端部のところでこのワイヤ上に固定的に位置決めされており、このストッパは、放射線不透過性材料で作られている。ストッパコイル292は、インプラントの近位端部中へのワイヤ291の遠位側への運動を阻止し、と言うのは、ストッパコイル292は、バンド288のアイレットの内径よりも大きな外径を有するからである。ストッパコイル292は、遠位結合部292aのところでワイヤ291の遠位端部の近くに結合される。ストッパコイル292はまた、近位結合部292bのところでワイヤ291に近位端部のところで結合されるのが良い。ストッパコイル292は、図示のように閉鎖ピッチであるのが良い。変形例として、ストッパコイルは、ワイヤ291上に被さっているストッパコイル292の圧縮を可能にしてインプラント中へのワイヤ291の遠位側の運動を徐々に制限するよう開放ピッチであっても良い。すなわち、開放ピッチが設けられている場合、ストッパコイル292がデリバリ部材のアイレットに押しつけられると、このストッパコイルは、圧縮される。他の半径方向突出部または特徴部、例えばワイヤ曲がり部、溶接部、溶融固体部、ポリマーなどがストッパコイルに代えて用いられても良いことに注目されたい。これら半径方向突出部または特徴部は、放射線不透過性であっても良く、非放射線不透過性であっても良い。
【0194】
ワイヤ291は、折れ曲がり部(バックリング)291aがワイヤ291の圧縮に起因してその長さに沿って位置した状態で示されている。圧縮折れ曲がり部の目的は、血管系中での追跡中に時期尚早な離脱、すなわちインプラントをロック解除する(結合解除する)場合のあるワイヤ291の望ましくない近位側への運動を阻止するために余分のワイヤ長さを提供することにある。
【0195】
ワイヤ291の近位端部には内部引き管294が連結されており、この内部引き管は、溶融PET収縮チューブ298または他の接着材料を用いることによってワイヤ291に取り付けられている。引き管294を任意の材料で作ることができるが、ステンレス鋼が好ましい。管294は、ワイヤ291の意図しない運動および過剰なワイヤ291の引っ込みに起因したインプラントの考えられる時期尚早な離脱を阻止するためにハイポチューブ272の内壁に係合する追加の摩擦要素(摩擦係合部材)を提供する曲がり部またはバンプ294aをさらに有するのが良い。外部引き管295が内部引き管294を覆って取り付けられている。内部管294と同様、外部引き管295は、好ましくは、ステンレス鋼で作られるが、他の材料を使用することができる。引き管295は、PET収縮管285収縮チューブ、溶融接合部、溶接部、接着剤または他の機械的接合部を用いて内部管294に取り付けられている。外部引き管295は、図示のように同一の外径を有し、または、変形例として、ハイポチューブ272よりも小さい直径を有し、これらは、切れ目297を備えたPET収縮チューブ296を用いて互いに接合される。収縮チューブ296は、チューブをつかむ場所をユーザに指示するよう暗い色または明るい色であるのが良い(極めて見えやすいのが良い)。切れ目297は、インプラントの離脱を可能にするよう外部引き管295の容易な引き込みを可能にするよう切り離し接合部の実現を可能にするよう弱体区分を形成している。切れ目297のところの収縮チューブ296の分離はまた、引き管295が引っ込められてインプラントが離脱されたことを臨床医に指示する。
【0196】
インプラント250をデリバリシステム270から離脱させるため、オペレータは、切れ目297のところの収縮チューブ296をちぎるのに足るほどの力で引き管295を近位側に引き、それにより解除管組立体290およびワイヤ291の近位側への運動が可能になる。ワイヤ291が引っ込むと、このワイヤは、デリバリシステムアイレットおよびインプラントアイレット(これは、
図39の実施形態の場合のように嵌め込まれたときにデリバリシステムアイレットの近位側に位置する)から引かれて出て、それにより、これらもはや同心状には拘束されず、それによりこれらは互いに離脱する。この離脱は、
図37A~
図40の離脱と同一の仕方で行われ、カム作用面は、上述したように離脱を容易にする。
【0197】
図24は、全体が参照符号222で示された動脈瘤内マイクログラフトデリバリシステムの別の実施形態を示している。デリバリシステム222は、マイクログラフト取り付けのために一例としてロックシステム190を用いてフローダイバータ224を単一のデリバリワイヤ226に取り付けられているマイクログラフト100と組み合わせて運搬するよう設計されている。1つまたは2つ以上のマイクログラフトが効率の良い運搬が可能となるようステントまたはフローダイバータと縦一列に並んでデリバリワイヤ(上述した方法を用いて)上に装填されるのが良い。また、フローダイバータではなく、ステントがシース208内に装填されても良い。フローダイバータ(またはステント)は、マイクログラフトの送達後の運搬のためにマイクログラフトの近位側に位置決めされる。
図24のロックボール構造体が示されているが、本明細書において説明した他のロックシステムもまた利用できる。
【0198】
使用にあたり、システム222をマイクロカテーテル中に導入してこれを通って追跡し、マイクロカテーテルは、その遠位先端部が動脈瘤内に位置した状態で位置決めされている。マイクログラフト100を最初に動脈瘤中に配備し、次にマイクロカテーテル先端部を親血管中に引き戻してフローダイバータ(またはステント)の運搬のために位置決めする。次に、フローダイバータを運搬する。フローダイバータ224がいったん運搬されると、マイクロカテーテルを抜去する。この設計のため、ロックシステム190およびデリバリワイヤ226は、フローダイバータの遠位側にコイルを有するのが良く、これらコイルおよび/またはフローダイバータは、インターベンション手技中にワイヤの位置を識別するのを助けるよう放射線不透過性であるのが良い。
【0199】
図12A~
図12Cは、頭蓋内動脈瘤内への
図1のマイクログラフト10の方向付けられた送達の仕方を示している。本明細書において説明する他のマイクログラフトを同様の仕方で送達することができる。上述の
図10および
図11A~
図11Fに記載されたマイクログラフト送達とは異なり、
図12Aおよび
図12Bの実施形態では、異形デリバリワイヤ62′は、動脈瘤内に位置したままであり、したがって、マイクログラフト配備を動脈瘤嚢内の標的場所(頸)に差し向けることができるようになっている。
図12Aは、“J”の状態に形状設定されるとともに“J”が動脈瘤の頸を覆っているステントまたはフローダイバータ154に向くように配備されたデリバリワイヤ62′の遠位先端部66′を示している。プッシャカテーテル58を遠位側に前進させているとき、マイクログラフト10の配備が行われ、このマイクログラフトは、そしてステントまたはフローダイバータ154に向かう矢印162によって示された方向にデリバリワイヤ62′に沿って続く。
【0200】
図12Bは、“J”を有する状態に形状設定されて動脈瘤の円蓋中に送り進められたデリバリワイヤ62′を示している。マイクログラフト10を前進させているときに、マイクログラフトは、矢印164によって示された方向でワイヤ62′の曲率をたどる。
【0201】
図12Cは、マイクロカテーテル146を用いて動脈瘤内へのマイクログラフトの配備を方向付けることができることを示している。デリバリワイヤは、動脈瘤158の頸内に嵌め込まれたマイクロカテーテル146中に引き戻されている。マイクログラフト10を前進させているときに、このマイクログラフトは、矢印166によって示された方向をたどる。マイクロカテーテル146の先端部は、マイクログラフト10を方向付けるよう湾曲しているのが良い。マイクログラフト10が障害物、例えば動脈瘤壁に当たると、マイクログラフトは、図示のように方向を容易に変えるであろう。
【0202】
図13は、頭蓋内マイクログラフトデリバリシステム54を用いた流れにより方向付けられたマイクログラフト168の配備状態を示しており、デリバリシステム54は、その先端部のところに“J”形状を有するとともにマイクロカテーテル146から延びるデリバリワイヤ62′を含む。マイクログラフト168は、本明細書において説明した他のマイクログラフトと同一の構造を有するのが良い。流れにより方向付けられるマイクログラフト168は、任意の長さのものであって良いが、この実施形態では、血流と一緒に動くよう例えば約2mm~約5mmの短い長さが利用される。流れにより方向付けられるマイクログラフト168は、動脈瘤を満たすよう構成されたマイクログラフトよりも短い傾向があるので、多くのより流れにより方向付けられるマイクログラフトをデリバリワイヤ上に装填して
図13に示されているように連続的に配備することができる。マイクログラフト168は、“C”字形に形状設定されているが、上述したように他の形状もまた想定される。
【0203】
各マイクログラフト168をデリバリワイヤ62′から離して遠位側に前進させているとき、このマイクログラフトは、動脈瘤の頸から出ている血流内に捕捉されることになる。ステントまたはフローダイバータ154が頸158を閉塞するので、マイクログラフト168は、親血管170中に出るのが制限されることになる。十分な量のマイクログラフト168が動脈瘤中に導入されると、マイクログラフトは、積み重なってステント/フローダイバータと頸のインターフェースのところを詰まらせまたはかかるインターフェースのところに局所化グラフトを作ることになる。経時的に、血栓が詰まり部の上方に生じて動脈瘤の閉塞を助ける。小さくて短いマイクログラフトが動脈瘤頸のところに完全な閉塞部をもたらしまたは動脈瘤頸のところの空所を満たすようになっている。
【0204】
図14は、親血管170内に位置決めされたマイクロカテーテル146を示している。この実施形態では、ステント154と親血管170との間の空間内に延びるのではなく、マイクロカテーテル146がステントまたはフローダイバータ154のストラットまたは細孔を貫通する点において先の実施形態とは異なっている。他の全ての点においては、このシステムは、上述のシステムの点と同じである。マイクログラフト10がマイクロカテーテル146を出て動脈瘤中に入っている状態で示されていることに注目されたい。長さの長いまたは長さの短いマイクログラフトを送り出すことができる。
【0205】
上述したように、デリバリワイヤ62は、ガイドワイヤであるのが良い。したがって、所望ならば、ガイドワイヤを備えたマイクログラフトデリバリシステムをカテーテル配置に先立ってマイクロカテーテル中に装填するのが良い。次に、デリバリシステムのガイドワイヤを一次追跡ワイヤとして用いて、組立体、マイクロカテーテルおよびマイクログラフトデリバリシステム全体を動脈瘤部位まで追跡するのが良い。変形例として、ガイドワイヤおよびマイクロカテーテルを動脈瘤部位まで追跡し、そして
図6の迅速交換カテーテル、例えばプッシャカテーテル80をその後に前進させるのが良い。
【0206】
図15は、マイクログラフト90を配備する
図7の動脈瘤内マイクログラフトデリバリシステム86の遠位端を示している。マイクログラフト90をアーム94,98から解除し、このマイクログラフトは、あらかじめ付勢された(あらかじめ設定された)形状を取っている。上述したように、マイクログラフトを様々な形態にあらかじめ設定することができ、図示の形状は、例示として提供されている。所望ならば、マイクログラフト90は、構造体の一部分をアーム94,98相互間に捕捉し、マイクロカテーテル146をアーム上でこれに沿って前進させてアームを圧縮することによって回収されるのが良い。変形例として、デリバリアーム94,98を用いてマイクログラフトを圧縮しまたはマイクログラフトを動脈瘤の周りに動かして詰め込みを助けるのが良い。
【0207】
図18Aは、本発明のマイクログラフトを配置する一方法の流れ図を提供している。この方法は、
図5Aおよび
図5Cのデリバリシステムを利用している。方法ステップは次の通りである。
1)マイクログラフトをデリバリワイヤ62の遠位端上でこれに沿って挿入し、ついにはマイクログラフトがストッパまたはワイヤテーパ部70上に位置するようにする。
2)デリバリワイヤ62をプッシャカテーテル58中に挿入する。
3)デリバリシステムをマイクロカテーテルのRHV78中に挿入する。
4)デリバリシステムを追跡してついにはワイヤ先端部66が動脈瘤に達するようにする。
5)ワイヤ66を引き戻して動脈瘤内のマイクログラフトの遠位マーカーバンドと整列させる。
6)ワイヤ先端部66をマイクログラフト中に引っ込めることによってマイクログラフトを血液で満たす。
7)プッシャ58を前進させることによってマイクログラフトを配備する。近位端が依然としてマイクロカテーテルにあれば、器具を引っ込める。
8)デリバリシステムをマイクロカテーテルから取り外す。
9)必要ならば、上述のステップを繰り返して追加のマイクログラフトを配備する。
【0208】
図18Bは、本発明のマイクログラフトを配置する別の方法の流れ図を提供している。この方法は、
図5E~
図5Hと同じデリバリシステムを利用している。方法ステップは、次の通りである。
1)器具を包装材から取り出して取り扱い説明書(IFU)に従って準備する。
2)デリバリシステムをマイクログラフトとともにマイクロカテーテルRHV中に挿入する。
3)マイクログラフトがマイクロカテーテル内にいったん位置すると、存在していれば導入器シースを取り出す。
4)デリバリシステムを追跡し、ついには、ワイヤ先端部184およびマイクログラフトの遠位端が治療部位に達するようにする。
5)ワイヤ先端部184をマイクログラフトロック(タブ29a)の直ぐ遠位側に小刻みに引っ込めることによってマイクログラフトを血液で満たす。
6)デリバリシステム(プッシャ186およびワイヤ182)を前進させることによってマイクログラフトを配備する。デリバリシステムを引いてマイクログラフトを必要ならば引っ込める。
7)マイクロカテーテルからいったん出ると、ワイヤ182を引っ込めて(またはプッシャを前進させて)ついにはワイヤ球部184がマイクログラフトロック(タブ29a)を抜けてプッシャ186中に入ることによってマイクログラフトを離脱させる。
8)デリバリシステムをマイクロカテーテルから取り外す。
9)必要ならば、ステップを繰り返して追加のマイクログラフトを配備する。
【0209】
本明細書において開示したデリバリシステムおよび閉塞器具(マイクログラフト)は、頭蓋内動脈瘤の治療に用いるために説明したことに注目されたい。理解されるべきこととして、デリバリシステムおよび閉塞器具(マイクログラフト)は、身体の他の領域内の動脈瘤を治療するためもしくは他の血管系を治療するためまたは非血管疾患を治療するためにも利用できる。
【0210】
本明細書において開示したデリバリシステムを利用すると本明細書において開示した種々のマイクログラフトを送達することができそして特定のデリバリシステムと関連して説明した特定のマイクログラフトは例示として提供されていることに注目されたい。
【0211】
上述したデリバリシステムおよび技術的思想は、動脈瘤内マイクログラフトを送達する好ましいやり方である。しかしながら、変形例として、マイクログラフトは、計時されかつ制御された放出を提供する他のマイクロコイルデリバリシステム、例えば両方ともグリエルミ等(Guglielmi et al.)に付与された米国特許第5,354,295号明細書およびその親出願である米国特許第5,122,136号明細書に記載されている電解質取り外し方式、エンゲルソン(Engelson)に付与された米国特許第5,261,916号明細書に記載されているようなインターロックボール・キー方式、およびトワイフォード等(Twyford et al.)に付与された米国特許第5,304,195号明細書に記載されているような番関係をなすボール形態を備えたプッシャと組み合わせ連係するよう構成されても良い。
【0212】
幾つかの用途では、動脈瘤を閉塞するために、他の血管閉塞器具、例えば白金マイクロコイルを本発明のマイクログラフトと組み合わせて使用することができる。
【0213】
本明細書に開示したデリバリシステムは、頭蓋内動脈瘤を治療するための器具を運搬または送達するのに使用されるが、かかるデリバリシステムは、患者の他の胎内管腔を通ってまたはこれらの中で運搬または送達するために使用できることもまた想定される。
【0214】
図29~
図36は、本明細書において開示する血管インプラント用の包装材の一実施形態を示している。包装材は、本明細書において開示する血管インプラントのうちの任意のものに使用でき、この包装材は、
図29~
図36に例示目的で示されており、
図37の血管インプラント250は、
図4Kの血管インプラントと同様な二次的螺旋形状を有する。包装材はまた、本明細書に開示するインプラント以外のインプラント、例えば形状記憶インプラントにも使用できる。
【0215】
包装材は、全体が参照符号300で指示されており、この包装材は、輸送パウチまたはパッケージ(図示せず)内に入れられる。包装材300は、長い包装材フープ302および短い包装材フープ304を含む。フープ302,304は、それ程のキンクなしで示されているように巻くことができる材料、例えばHDPEまたはポリプロピレンで構成された管の形態をしており、これらフープ302,304は、管302,304内におけるコンポーネントの運動を阻止することができる。短い包装管304は、説明しやすくするために黒くした状態で
図29および
図30に示されているが、短い管304は、長い管302と同一の色のものであって良い。これらの管に沿って間隔を置いて配置された一連のクリップ306が管(フープ)302,304を図示のようにコイル状(螺旋状)形態で保持し、好ましくは、等間隔を置いて配置される。管302,304の各々を貫通してルーメンが設けられている。一例を挙げると、短い管304は、約10cmから約100cmまでの範囲にあり、より具体的には約70cmの長さを有するのが良く、長い管302は、約100cmから約280cmまでの範囲にあり、具体的には約240cmの長さを有するのが良い。他の長さもまた想定される。長い管302は、好ましくは、短い管304よりも長いが、幾つかの実施形態では、これらの管は、同一長さを有しても良く、あるいは管302は、管304よりも短くても良い。管302,304の端部は、隙間308をもたらすよう図示のように互いに間隔を置いて配置されている。具体的に説明すると、短い管302は、インプラント250に隣接して位置する第1の遠位端部303およびこれと反対側の第2の近位端部307を有する。長い管302は、近位端部305およびこれと反対側の遠位端部309を有する。長い管302の遠位端部309は、隙間308を形成するよう短い管304の近位端部307から間隔を置いて位置している。これにより、以下に説明するようにデリバリ部材およびデリバリシース(ともにデリバリシステムと称する)が露出される。隙間は、約2cm~約40cmであるのが良く、より具体的には約15cmであるが、他の寸法が想定される。隙間308は、短い管304の近位端部307と長い管302の遠位端部309との間に延びる円弧の長さとみなされる/測定されることができ、これは、管302,304相互間に露出されているデリバリシステムの長さと同等とみなされる。本明細書で用いられる管302,304に関する「遠位」および「近位」という用語は、管302,304を通る容器からのインプラントの経路に関する部分/端部を意味するために用いられ、―遠位端部/部分は、インプラントのための経路が始まる場所に隣接し(容器内のインプラントの初期位置の近くに位置し)、近位端部/部分は、インプラントの経路の開始部から見て遠くに位置するということに注目されたい。換言すると、遠位端部は、容器から管304へのインプラントの挿入場所のところに位置する。
【0216】
包装材300は、細長いフィンガまたは支持体322を備えた容器320をさらに有し、インプラントは、かかるフィンガまたは支持体上で二次的(例えば、螺旋)形状をなして取り付けられ、例えば嵌着されまたは巻き付けられる。支持体またはポスト322は、容器320の内部受け入れ空間323内で延びている。容器320に取り外し可能に取り付け可能であるとともにスナップ嵌め、ねじ山または他の方法で取り付け可能なキャップ324が設けられるのが良い。キャップ324は、インプラント250を輸送に先立って支持体に取り付けるために取り外し可能である。容器320は、短い管304の端部303に実質的に垂直に位置決めされるのが良く、その結果、フィンガ322は、短い管30の端部303およびその遠位端部に設けられた開口部311に実質的に垂直であり、すなわち、開口部311を通る長手方向軸線に実質的に横方向である。
図30に示されているように、インプラント250は、三次元螺旋形態(例えば、その二次的形状)のものであり、このインプラントは、インプラントの長手方向軸線がフィンガ支持体322の軸線に沿って位置するようフィンガ322上に嵌められている。インプラント250を輸送に先立ってフィンガ322の自由端部327または反対側の端部(キャップが取り外された状態にある)上をこれに沿って滑らせることができる。包装材またはトレイ(図示せず)に設けられた凹部または受け入れ空間もまた、幾つかの実施形態では、インプラントをフィンガ322上の定位置に維持するのを助けるために提供されるのが良い。
【0217】
図29~
図36の実施形態では、フィンガ322は、インプラントが開口部311に対して実質的に垂直の位置に保持されるようシース開口部に実質的に垂直である。(「実質的に」とは、例えば、80°~100°の角度を意味している)。理解されるべきこととして、変形例として、インプラントは、支持体、例えばフィンガが平行なまたは他の角度のついたもしくは斜めの位置に位置決めされた状態で、平行な位置または他の角度をなして保持されても良い。
【0218】
容器320は、内部空間323がインプラント250の横方向寸法Dよりも大きい状態で示されている。理解できるように、内部323に関する他の寸法もまた想定され、ただし、これら寸法は、本明細書において開示するように運搬または送達方法のためにインプラントを受け入れて容器320内におけるインプラント250の運動、例えば跳ね返りを制限することを条件とする。また、幾つかの実施形態では、包装材容器320は、インプラントをその二次形状で、すなわち弛緩または非拘束状態/形態で収容するよう寸法決めされるのが良く、しかも支持部材322を必要としないのが良いことが想定される。幾つかの実施形態では、容器は、製品を滅菌中、例えば酸化エチレンガス滅菌中に容器を通るガス透過および流れを可能にするよう孔が設けられるのが良くまたは非機密性であるのが良い。
【0219】
短い管304は、図示のように360°強のラップを形成している。長い管302は、多数回にわたって巻かれて隣接してまたは部分的にオーバーラップした状態で一連の円形ラップを形成し、それによりコイルまたは螺旋の状態に配置されている。短い管304は、長い管302に隣接して位置するのが良く、またはこれとオーバーラップするのが良い。図示のフープ302,304の長さ/ラップは、利用できる一例であり、図示されるとともに説明した長さとは異なる長さ(およびラップ)の管302,304もまた想定されることは言うまでもないことに注目されたい。短い管および長い管はまた、管304が管302よりも長いように改造されても良い。
【0220】
管302,304内にはデリバリ部材330およびシース332が収容されており、これらデリバリ部材およびシースは、インプラントのデリバリシステムの一部である。具体的に説明すると、デリバリ部材330は、インプラントに結合された状態でシース332を貫通している。デリバリシース332およびデリバリ部材330は、インプラントが取り付けられた(結合された)状態で患者の体内へのインプラントの挿入のために管302,304から取り出される。デリバリ部材330の種々の実施形態を利用することができ、このデリバリ部材は、インプラントに間接的に結合されても良くあるいは直接的に結合されても良い。
図29および
図30の実施形態では、デリバリ部材330は、上述の
図37~
図40に開示されている管の形態をしている。変形例として、デリバリ部材は、デリバリワイヤの形態を含む上述の形態のうちの任意のものであっても良い。さらに、他形式のデリバリ部材がインプラントを包装材容器320から引き出してインプラントを体の構造体、例えば頭蓋内動脈瘤中に前進させるよう設けられても良い。
【0221】
シース332は、短い管304内で容器320に隣接して位置する領域、すなわち短い管304の遠位端部303のところの開口部311に隣接した領域から延び、そして近位開口部313を通って管304の反対側の(近位)端部307のところで出る。シースの一部分333が短い管304と長い管302との間、すなわち短い管304の近位端部307と長い管302の遠位端部309との間の隙間308内に露出している。露出部分333は、約1cm~約39cmであるのが良いが、他の寸法も想定される。デリバリ部材330は、デリバリシース332のルーメンを貫通し、かくしてシース332と一緒に短い管304を貫通し、それによりシース332と一緒に管304の近位開口部313を出る。デリバリ部材330は、シース332の近位端部334のところで近位開口部335から延び出、その結果、一部分338は、シース332の端部334と長い管302の遠位端部309との間で露出するようになっている。露出部分338は、約1cm~約39cmであるのが良いが、他の寸法も想定される。デリバリ部材330は、端部309のところで遠位開口部312を貫通し、そして長い管302のルーメンを貫通している。デリバリ部材330は、長い管302内で終端するのが良くまたは変形例として、長い管304の近位端部305のところの開口部314から延び出るのに十分な長さのものであっても良い。
【0222】
理解できるように、血管インプラント250は、容器320内にその配置位置または状況(状態)で貯蔵される。すなわち、血管インプラントは、包装および輸送中、その二次的螺旋形状に対応した非拘束位置(状態)に維持される。これは、有利には、例えばこれがデリバリシースそれ自体に包装された場合に起こる恐れのある減少直径位置または非二次的形状でひずみを起こすインプラント250の機械的クリープ(形状回復の喪失)の恐れを減少させ、と言うのは、デリバリシースは、容器320の内径(内寸)よりも小さくかつ非拘束状態のインプラント250の外径または横方向寸法Dよりも小さい内径を有するからである。換言すると、インプラントは、同一の状態で、すなわち、これが体の中、例えば動脈瘤内に配置されるよう設計されたその二次的形状でまたはもしこれが小径のデリバリシース内に位置するとすればこの場合よりもその配置形状に近い形状で容器320内に、例えばフィンガ322上に維持され、かくして、インプラントがデリバリシース332の通過後かつ体内へのマイクロカテーテルの通過後、この状態に戻ることが良好に保証される。インプラント250がデリバリシース332内に位置した状態で輸送される場合、これは、減少横方向寸法(減少プロフィール)の拘束位置で保持され、その目的は、シース内に嵌まり込むことにあり、と言うのは、シースは、小さい直径を有するからである。これとは異なり、インプラントは、シースの横方向断面寸法または直径よりも大きな横方向断面寸法を有する非拘束状態でまたは拘束度の低い状態でデリバリシースの外側に保持され、その時点までには、インプラントは、いつでもシースからカテーテル中に挿入されて体内中に挿入される準備ができている。また、インプラントを3D二次的形態で包装することにより、臨床医は、体内への挿入に先立ってインプラントの寸法形状を目で見て確認することができる。インプラントがシースまたは包装材内に拘束状態で包装される場合、臨床医は、最初に、インプラントを包装材から取り出して、その二次的形状を視認し、次にこれを包装材またはシース中に再装填する必要がある。
【0223】
換言すると、容器320内における第1の状態では、インプラントは、第1の横方向寸法を有する。第2の状態では、デリバリシース内に引き込まれると、インプラントは、第1の横方向寸法よりも小さい第2の横方向寸法を有する。インプラント(非拘束状態にあるとき)の第1の横方向寸法は、デリバリシースの横方向寸法、例えば直径よりも大きい。横方向寸法をインプラントの長手方向軸線に垂直な全高とみなすことができ、この横方向寸法は、
図30では参照符号Dで示されていることに注目されたい。かくして、第1の想像線がインプラントの長手方向軸線の第1の側上で最も大きな山部に接する長手方向軸線の第1の側上に引かれるとともに第2の想像線が長手方向軸線の反対側の第2の側部上で最も大きな山部に接して引かれた場合、これら2本の想像線を結ぶとともにインプラントの長手方向軸線に垂直な直線距離は、横方向寸法を表わす。この横方向寸法は、インプラントの一時的直径寸法とは異なっていることに注目されたい。すなわち、この横方向寸法は、変化するインプラントの全体的形状の寸法であり、すなわち、容器内における非直線形状(その二次的形状に近いまたはその二次的形状)における非拘束(または拘束度の低い)状態からシース内の拘束状態の直線状またはより直線の形状(その一次的形状に近いまたはその一次的形状にある)まで動かされる。
【0224】
理解されるべきこととして、インプラントは、デリバリシース332から放出されると、体内空間を満たすよう動き、体内空間が二次的状態にあるインプラントの横方向寸法よりも小さい場合、インプラントは、デリバリシースの横方向寸法よりも依然として大きい体内空間の寸法部分に移動する。
【0225】
インプラント250を容器320からシース332中に装填して患者の体内管腔、例えば血管または動脈瘤中への運搬のためにマイクロカテーテル中に挿入する方法について説明する。この方法は、
図31~
図36を参照して理解できる。
【0226】
第1のステップでは(
図31)、デリバリ部材330を露出領域(部分)338およびシース332のところで臨床医がつかむ。上述したように、露出部分は、長い管302の遠位端部309と短い管304の近位端部307を超えて延びているシース332の近位端部334との間に位置する。臨床医は、デリバリ部材330を短い管304(
図32)から遠ざかる方向に(矢印を参照されたい)、例えば、デリバリシース332に対して近位側の方向に引く。図示した実施形態では、デリバリ部材330を
図37~
図40および
図41と関連して上述したように切欠き部分の係合によってインプラントに取り付ける。デリバリ部材330を引くことによって、インプラント250をフィンガ322から巻きだしてシース中にその遠位開口部を通って引き込み、そしてルーメン中において減少横方向寸法のより細長い、例えばより直線状の位置(拘束位置)に引き込む。インプラント250を容器320から引き出してシース332のルーメン内に完全に引き込んだ後、臨床医は次に(好ましくは、片手で)シース332の露出部分333を(好ましくは、その端部334のところでつかみ、そしてこれをつかんだデリバリ部材330と一緒に短い管304から遠ざかる方向に(デリバリワイヤ320を
図32の先のステップで引いたのと同一の方向に、すなわち、本明細書において定義した近位側に)引く。シース332およびデリバリ部材330を
図34の矢印の方向に引き、かつ短い管304の開口部313から引き出した後においては、シース332の遠位端部は、今や自由である(短い管304から露出されたシース332の自由(遠位)端部336を示す
図35を参照されたい)。次に、デリバリ部材330を臨床医がつかみ(これまた
図35に示されている)、そしてデリバリ部材330を長い管302から遠ざかる方向に引く。デリバリ部材をこの矢印の方向に引き、ついには、デリバリ部材330の近位端部を長い管302の端部309から露出させ、それによりデリバリ部材330の自由端部339を露出させる(
図36を参照されたい)。図示のように、インプラント250は、デリバリシース332内に依然として拘束されている。いまや、シース332およびデリバリ部材330が包装材フープ(管)302,304から取り出された状態で、シース332を内部に収容されたデリバリ部材330および結合状態のインプラント250とともにマイクロカテーテルに挿入しまたはこれと当接状態に配置するのが良く、それにより上述した方法ではマイクロカテーテルを通ってそして体内管腔、すなわち頭蓋内動脈瘤中にインプラントを送り込む。当接状態に配置されると、デリバリシースの遠位端部336は、カテーテルの近位端部に当接し、次にデリバリシースがカテーテルの外側に位置したままの状態で、デリバリ部材および結合状態のインプラントをカテーテルに設けられたルーメンを通って送り進める。
【0227】
上述した包装材形態320およびキャップ324は、インプラントを包装することができる1つの方法であるに過ぎないことに注目されたい。他の包装方法、例えば凹み領域のある成形トレイもまた採用してインプラントを拡張(二次的)状態で輸送することができるようにしても良い。
【0228】
図29および
図30は、
図37~
図40および
図43の方法であるインプラントへのデリバリ部材の一取り付け方法を示していることに注目されたい。理解されるべきこととして、他の取り付けを利用してデリバリ部材を容器から引き出してデリバリシース中に引き込むことができる。すなわち、デリバリ部材320およびインプラント250が上述の
図37~
図40および
図43の構成により係合した状態で示されているが、これらデリバリ部材およびインプラントを他の方法、例えば本明細書において説明した別法によって作動的に互いに連結することができ、その結果、デリバリ部材は、インプラント250をデリバリシース中に引き込むことができる。
【0229】
上述の説明は、多くの細部を含むが、これらの細部は、本発明の範囲に対する限定として解されるべきではなく、本発明の好ましい実施形態の例示として解されるべきである。当業者であれば、本明細書に添付された特許請求の範囲に記載された本発明の範囲および精神に含まれる他の多くの考えられる変形例を想到するであろう。