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特許7438939CD137を標的とする抗体とその利用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】CD137を標的とする抗体とその利用方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20240219BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240219BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240219BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240219BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
A61K39/395 N
A61P35/00
C12N15/13
C12P21/08
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020520050
(86)(22)【出願日】2018-10-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-24
(86)【国際出願番号】 EP2018077514
(87)【国際公開番号】W WO2019072870
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】17195780.6
(32)【優先日】2017-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】18167092.8
(32)【優先日】2018-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】18180815.5
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515310984
【氏名又は名称】ヌマブ セラピューティクス アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100170852
【弁理士】
【氏名又は名称】白樫 依子
(72)【発明者】
【氏名】テア グンデ
(72)【発明者】
【氏名】マティーアス ブロック
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ヘス
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル シモナン
【審査官】藤澤 雅樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-501744(JP,A)
【文献】特表2006-500921(JP,A)
【文献】国際公開第2012/032433(WO,A1)
【文献】TIMOTHY S FISHER,TARGETING OF 4-1BB BY MONOCLONAL ANTIBODY PF-05082566 ENHANCES T-CELL FUNCTION AND PROMOTES ANTI-TUMOR ACTIVITY,CANCER IMMUNOLOGY, IMMUNOTHERAPY,2012年03月11日,VOL:61, NR:10,PAGE(S):1721 - 1733,http://dx.doi.org/10.1007/s00262-012-1237-1
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
Google/Google Scholar
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のHCDR1配列、配列番号2のHCDR2配列、配列番号3のHCDR3配列と、配列番号18のLCDR1配列、配列番号19のLCDR2配列、配列番号20のLCDR3配列を含む、ヒトCD137に対する結合特異性を有する単離された抗体であって、ここで、該抗体は、配列番号14、15、16、17からなる群から選択されたアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と;配列番号27、28、29、30からなる群から選択されたアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み;そして該抗体は、
(i)表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定するとき、ヒトCD137に5 nM未満の解離定数(KD)で結合し、ここで該抗体はscFvであり;および
(ii)Macaca fascicularis(カニクイザル)CD137と交差反応性であり、かつSPRによって測定するとき、5 nM未満のKDでカニクイザルCD137と結合し、ここで該抗体はscFvであり;および
(iii)SPRによって測定するとき、ヒトCD40および/またはヒトOX40に結合せず;
(iv)競合ELISAによって測定するとき、CD137とそのリガンドCD137Lの間の相互作用を抑制せず;および
(v)競合ELISAによって測定するとき、ウレルマブおよびウトミルマブのCD137への結合と交差競合せず;および
(vi)マウスCD137と交差反応性であり、かつSPRによって測定するとき、600 nM未満のKDでマウスCD137と結合し、ここで該抗体は、CD137とは異なる標的タンパク質に対する結合特異性を有する第2の結合ドメインを含むscDB形式であり、
ただし、配列番号14のアミノ酸配列と同一であるアミノ酸を含む重鎖可変領域と、配列番号27のアミノ酸配列と同一であるアミノ酸を含む軽鎖可変領域を含むscFvフラグメントは除かれる、
抗体。
【請求項2】
前記抗体が、配列番号17のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号30のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
(a)配列番号14のVH配列と配列番号27のVL配列;または(b)配列番号15のVH配列と配列番号28のVL配列;または(c)配列番号16のVH配列と配列番号29のVL配列;または(d)配列番号17のVH配列と配列番号30のVL配列を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の抗体であって、該抗体は、
(vii)scFv形式であるとき、150 mMのNaClを含むpH 6.4の50 mMのリン酸塩-クエン酸塩バッファーを用いた示差走査蛍光光度測定によって求まる融点(Tm)が少なくとも55℃であり;および/または
(viii)scFv形式であるとき、本発明の抗体の出発時の濃度が10 mg/mlである場合、4℃で少なくとも2週間にわたって150 mMのNaClを含むpHが6.4の50 mMのリン酸塩-クエン酸塩バッファーで保管した後に、モノマー含量の損失が1%未満であり;および/または
(ix)scFv形式であるとき、本発明の抗体の出発時の濃度が10 mg/mlである場合、40℃で少なくとも4週間にわたって150 mMのNaClを含むpHが6.4の50 mMのリン酸塩-クエン酸塩バッファーで保管した後にモノマー含量の損失が2%未満である
抗体。
【請求項5】
単離された抗体が、FvおよびscFvから選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項6】
前記scFvが、配列番号33、配列番号34、配列番号35からなる群から選択されたアミノ酸配列を有する、請求項5に記載の抗体。
【請求項7】
前記scFvが、配列番号35のアミノ酸配列を有する、請求項6に記載の抗体。
【請求項8】
少なくとも2つ以上の異なる標的上または同じ標的上の2つ以上の異なるエピトープに結合する多重特異性抗体である、請求項1~4のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の抗体と、医薬として許容可能な担体を含む医薬組成物。
【請求項10】
薬として用いるための、請求項1~8のいずれか1項に記載の抗体、または請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
がんの処置に用いるための、請求項1~8のいずれか1項に記載の抗体、または請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1~8のいずれか1項に記載の抗体をコードする核酸。
【請求項13】
請求項12に記載の核酸を含む宿主細胞を培養する工程を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の抗体を作製する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトCD137に特異的に結合する単離された抗体と、この抗体の医薬組成物および利用法に関する。本発明はさらに、この抗体をコードする核酸と、この核酸を含むベクターと、この核酸またはこのベクターを含む宿主細胞と、この抗体を作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー(TNFRSF)は、細胞外ドメイン内のシステインが豊富な擬似反復を介して腫瘍壊死因子(TNF)に結合する能力を特徴とする受容体のタンパク質スーパーファミリーである(Locksley他、2001年、Cell. 第104巻:487~501ページ)。現時点でTNFファミリーのメンバーは27種類が同定されている。TNFRSFのメンバーとそのリガンドは大半が免疫細胞の表面で発現し、T細胞を媒介とした免疫反応において免疫調節の役割を果たしている。TNFRSFのメンバーは、樹状細胞の生存の増強、T細胞のプライミング能力の増強、エフェクタT細胞の最適な生成、最適な抗体反応、炎症反応の増幅において役割を果たしている。
【0003】
CD137(4-1BB、TNF受容体スーパーファミリー9、TNFRSF9)は、TNFRスーパーファミリーの表面糖タンパク質である。CD137は、誘導性共刺激T細胞受容体である。CD137の発現は活性化に依存していて免疫細胞の広い範囲のサブセットにわたり、そのサブセットには、活性化されたNK細胞とNKT細胞、調節性T細胞、樹状細胞(DC)(濾胞性DCが含まれる)、刺激されたマスト細胞、分化している骨髄細胞、単球、好中球、好酸球(Wang他、Immunol Rev. 第229巻(1):192~215ページ(2009年))、活性化されたB細胞(Zhang他、J Immunol. 第184巻(2):787-795ページ(2010年))が含まれる。それに加え、CD137の発現は、腫瘍血管系(Broil K他、Am J Clin Pathol. 第115巻(4):543~549ページ(2001年);Seaman他、Cancer Cell第11巻(6):539~554ページ(2007年))とアテローム動脈硬化性内皮 (Olofsson他、Circulation 第117巻(10):1292~1301ページ(2008年))でも実証されている。
【0004】
TNFファミリーの分子であるCD137-リガンド(CD137L、または4-1BBL、またはtnfsf9)は、CD137に関して知られている天然の細胞間リガンドである(Alderson, M. R.他、Eur. J. Immunol. 第24巻:2219~2227ページ(1994年);Pollok K.他、Eur. J. Immunol. 第24巻:367~374ページ(1994年);Goodwin, R. G.他、Eur. J. Immunol. 第23巻:2631~2641ページ(1993年))。CD137のリガンドがホモ三量体を形成すると、その三量体化したリガンドによって架橋状態で細胞の表面に結合する分子からCD137を通じたシグナル伝達が進行する(Won, E. Y.他、J. Biol. Chem. 第285巻:9202~9210ページ(2010年))。シグナル伝達の媒介にはCD137のより高次のクラスター化が必要であることが示唆された。CD137は細胞質尾部の中でTRAF-2およびTRAF-1というアダプタと合わさって共免疫沈降するが、この共免疫沈降は、T細胞の中でCD137が活性化すると増大する(Saoulli, K.他、J. Exp. Med. 第187巻:1849-1862ページ(1998年);Sabbagh, L.他、J. Immunol. 第180巻:8093~8101ページ(2008年))。TRAF-1とTRAF-2がCD137によってリクルートされるとNFκBとマイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼカスケード(ERK、JNK、p38 MAPが含まれる)の下流が活性化される。NFκBの活性化により、Bcl-2ファミリーの生存促進メンバーであるBfl-1とBcl-XLが上方調節される。アポトーシス促進タンパク質Bimは、TRAF-1とERKに依存して下方調節される(Sabbagh他、J Immunol. 第180巻(12):8093~8101ページ(2008年))。CD137の主な作用は、2個以上のTRAF-2分子を互いに近接して配置することであることが示唆されている(Sanchez-Paulete, A. R.他、Eur. J. Immunology 第46巻(3):513~522ページ(2016年))。このことに基づき、CD137シグナル伝達を駆動する主要な因子は、形質膜のマイクロパッチの中でTRAF-2が集まったCD137部分の相対密度であると推定された(Sanchez-Paulete, A. R.他、Eur. J. Immunology第46巻(3):513~522ページ(2016年))。結局、CD137シグナル伝達は多量体化によって促進されるため、架橋するCD137分子が、CD137共刺激活性における重要な因子であるという提案がなされた。
【0005】
CD137はT細胞を同時に刺激してエフェクタ機能を実行する。エフェクタ機能に含まれるのは、定着した腫瘍を根絶すること、一次CD8+ T細胞応答を拡張すること、抗原特異的CD8+ T細胞の記憶プールを増強すること、インターフェロン-γ(IFN-γ)の合成を誘導することなどである。CD8+ T細胞の機能と生存におけるCD137からの刺激という決定的に重要な役割は、CD137/CD137Lの機能を操作することを通じて腫瘍の治療に利用できる可能性があると考えられる。実際、マウスでの生体内効果の研究では、抗CD137抗体を用いて治療すると多くの腫瘍モデルにおいて腫瘍が退縮することが実証されている。例えばアゴニスト性抗マウスCD137抗体は、P815肥満細胞腫に対してと、免疫原性が小さい腫瘍モデルAg104に対して免疫反応を誘導することが実証された(I. Melero他、Nat. Med.、第3巻(6):682~685ページ(1997年))。単剤療法と併用療法の両方と抗腫瘍保護T細胞記憶応答について、予防環境と治療環境におけるCD137アゴニストmAbの効果がいくつかの研究で報告されている(Lynch 他、Immunol Rev. 第222巻:277~286ページ(2008年))。CD137アゴニストは、多彩な自己免疫モデルで自己免疫反応も示す(Vinay他、J Mol Med第84巻(9):726~736ページ(2006年))。
【0006】
CD137に対するさまざまな抗体がすでに知られており(例えばWO 00/29445とWO 2004/010947を参照されたい)、少なくとも2つの抗CD137抗体が現在臨床試験中である、すなわち、ウレルマブ(Myers Squibb社)という完全ヒト化IgG4 mAbと、ウトミルマブ(PF-05082566、Pfizer社)という完全ヒト化IgG2 mAb(Chester C.他、Cancer Immunol Immunother Oct;第65巻(10):1243~1248ページ(2016年))である。CD137のアゴニストとなる治療用抗体の利用は非常に有望な1つの治療戦略だが、この戦略は、抗CD137アゴニスト抗体の低い効果、大きな毒性、有害事象といった困難と一体である。CD137アゴニスト抗体によって免疫系と臓器機能が変化して毒性のリスクが上昇することがわかっている。ナイーブマウスと腫瘍を持つマウスにおける高用量のCD137アゴニスト抗体は、肝臓へのT細胞の浸潤と、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼおよびアラニンアミノトランスフェラーゼの上昇を誘導するため、肝炎発生と矛盾しないことが報告されている(Niu L.他、J Immunol第178巻(7):4194~4213ページ(2007年);Dubrot J他、Int J Cancer 第128巻(1):105~118ページ(2011年))。CD137アゴニスト抗体をヒトの治療に用いる初期の臨床試験でも、肝臓酵素の上昇と肝炎発生の増加が実証されている(Sznol M.他、J Clin Oncol第26巻(115S):3007ページ(2008年);Ascierto PA他、Semin Oncol第37巻(5):508~516ページ (2010年);Chester C.他、Cancer Immunol Immunother Oct;第65巻(10):1243~1248ページ(2016年))。以前に治療を受けたステージIII/IV黒色腫に関するBristol-Myers Squibb(BMS)第II相抗CD137試験(National Clinical Trial (NCT) 00612664)において、致命的になる可能性がある肝炎が観察された。この試験と他のいくつかの試験(NCT00803374、NCT00309023、NCT00461110、NCT00351325)は、有害事象を理由として中止された(Chester C.他、Cancer Immunol Immunother Oct;第65巻(10):1243~1248ページ(2016年))。そのような有害事象は、T細胞が全身で過剰に刺激されたことに起因する可能性が最も大きい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そのため本分野では、一般的な抗増殖薬に固有の副作用がなく、より大きな効果を持つ改善された治療用抗ヒトCD137抗体、特に現在利用できるCD137抗体と比べて毒性がより小さい治療用抗ヒトCD137抗体が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの目的は、ヒトCD137タンパク質に特異的に結合する抗体を提供することであり、この抗体は、治療に用いるための有益な特性(より大きな親和性、改善された効果、より小さな毒性、改善された生物物理学的特性(溶解性、開発可能性、安定性など))を有する。特に、結合したときにCD137のシグナル伝達が直接的かつ細胞表面の他の分子とは独立になされることのないCD137抗体は、まだ見いだされていない。
【0009】
1つの側面では、本発明は、新規なCD137抗体に関する。
【0010】
1つの側面では、本発明は、本発明の単離された抗体と、医薬として許容可能な担体(carrier)を含む医薬組成物に関する。
【0011】
別の1つの側面では、本発明は、薬として使用するための本発明の抗体、または本発明の組成物に関する。
【0012】
1つの側面では、本発明は、がんの処置を必要とする対象でがんの処置に用いるための本発明の抗体、または本発明の組成物に関する。
【0013】
1つの側面では、本発明は、がんの処置を必要とする対象でがんを処置するための薬の製造における、本発明の抗体、または本発明の組成物の利用に関する。
【0014】
別の1つの側面では、本発明は、がんの処置を必要とする対象でがんを処置する方法に関するものであり、この方法は、その対象に本発明の抗体、または本発明の組成物を治療に有効な量で投与することを含んでいる。
【0015】
さらに別の1つの側面では、本発明は、本発明の抗体をコードする核酸に関する。別の1つの側面では、本発明は、その核酸を含むベクターに関する。別の1つの側面では、本発明は、その核酸またはそのベクターを含む宿主細胞に関する。
【0016】
別の1つの側面では、本発明は、本発明の抗体を作製する方法に関するものであり、この方法は、本発明の核酸またはベクターを含む宿主細胞を培養する工程を含んでいる。
【0017】
下記の項目にまとめられている本発明の側面、有利な特徴、好ましい実施態様は、それぞれ単独で、または組み合わせて、本発明の目的を解決するのにさらに寄与する。
【0018】
1.ヒトCD137に対する結合特異性を有する単離された抗体であって、(a)配列番号1、4、5、8、11から選択された任意の1つのアミノ酸配列(好ましくは配列番号1のアミノ酸配列)を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)重鎖可変領域CDR1と;(b)配列番号2、6、9、12から選択された任意の1つのアミノ酸配列(好ましくは配列番号2のアミノ酸配列)を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)重鎖可変領域CDR2と;(c)配列番号3、7、10、13から選択された任意の1つのアミノ酸配列(好ましくは配列番号3のアミノ酸配列)を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)重鎖可変領域CDR3と;(d)配列番号18、21、24から選択された任意の1つのアミノ酸配列(好ましくは配列番号18のアミノ酸配列)を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)軽鎖可変領域CDR1と;(e)配列番号19、22、25から選択された任意の1つのアミノ酸配列(好ましくは配列番号19のアミノ酸配列)を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)軽鎖可変領域CDR2と;(f)配列番号20、23、26から選択された任意の1つのアミノ酸配列(好ましくは配列番号20のアミノ酸配列)を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)軽鎖可変領域CDR3を含む抗体。
【0019】
2.(a)配列番号1のHCDR1配列、配列番号2のHCDR2配列、配列番号3のHCDR3配列と、配列番号18のLCDR1配列、配列番号19のLCDR2配列、配列番号20のLCDR3配列;または(b)配列番号4のHCDR1配列、配列番号6のHCDR2配列、配列番号7のHCDR3配列と、配列番号21のLCDR1配列、配列番号22のLCDR2配列、配列番号23のLCDR3配列;または(c)配列番号5のHCDR1配列、配列番号6のHCDR2配列、配列番号7のHCDR3配列と、配列番号21のLCDR1配列、配列番号22のLCDR2配列、配列番号23のLCDR3配列;または(d)配列番号8のHCDR1配列、配列番号9のHCDR2配列、配列番号10のHCDR3配列と、配列番号18のLCDR1配列、配列番号19のLCDR2配列、配列番号20のLCDR3配列;または(e)配列番号11のHCDR1配列、配列番号12のHCDR2配列、配列番号13のHCDR3配列と、配列番号24のLCDR1配列、配列番号25のLCDR2配列、配列番号26のLCDR3配列を含む、項1に記載の抗体。
【0020】
3.(a)配列番号1のアミノ酸配列を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)HCDR1配列と;(b)配列番号2のアミノ酸配列を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)HCDR2配列と;(c)配列番号3のアミノ酸配列を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)HCDR3配列と;(d)配列番号18のアミノ酸配列を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)LCDR1配列と;(e)配列番号19のアミノ酸配列を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)LCDR2配列と;(f)配列番号20のアミノ酸配列を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)LCDR3配列を含む、項1に記載の単離された抗体。
【0021】
4.配列番号4または5のアミノ酸配列を含む(好ましくはそのどちらかのアミノ酸配列からなる)HCDR1配列と;(b)配列番号6のアミノ酸配列を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)HCDR2配列と;(c)配列番号7のアミノ酸配列を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)HCDR3配列と;(d)配列番号21のアミノ酸配列を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)LCDR1配列と;(e)配列番号22のアミノ酸配列を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)LCDR2配列と;(f)配列番号23のアミノ酸配列を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)LCDR3配列を含む、項1に記載の単離された抗体。
【0022】
5.重鎖可変領域(VH)を含んでいて、このVHがVH3またはVH4であり、好ましくはVH3である、項1~4のいずれか1項に記載の抗体。
【0023】
6.軽鎖可変領域(VL)を含んでいて、このVLが、VκフレームワークFR1、FR2、FR3(特にVκ1またはVκ3のFR1~FR3、好ましくはVκ1のFR1~FR3)と、フレームワークFR4(VκFR4(特にVκ1FR4、Vκ3FR4)とVλFR4(特に配列番号62~配列番号68のいずれかから選択されたアミノ酸配列と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%同一性を有するアミノ酸配列を含むVλFR4、好ましくは配列番号62~配列番号68のいずれかに記載されているVλFR4、好ましくは配列番号62または63に記載されているVλFR4、より好ましくは配列番号62に記載されているVλFR4)から選択されたFR4)を含む、項1~5のいずれか1項に記載の抗体。
【0024】
7.配列番号14、15、16、17からなる群、好ましくは配列番号14と17からなる群から選択されたアミノ酸配列、より好ましくは配列番号17のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と;配列番号27、28、29、30からなる群、好ましくは配列番号27と30からなる群から選択されたアミノ酸配列、より好ましくは配列番号30のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、項1~6のいずれか1項に記載の抗体。
【0025】
8.配列番号14、15、16、17からなる群、好ましくは配列番号14と17からなる群から選択されたアミノ酸配列、より好ましくは配列番号17のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と;配列番号27、28、29、30からなる群、好ましくは配列番号27と30からなる群から選択されたアミノ酸配列、より好ましくは配列番号30のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、項1~7のいずれか1項に記載の抗体。
【0026】
9.(a)配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むVHと、配列番号27のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むVL;または(b)配列番号15のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むVHと、配列番号28のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むVL;または(c)配列番号16のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むVHと、配列番号29のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むVL;または(d)配列番号17のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むVHと、配列番号30のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むVLを含む、項1~8のいずれか1項に記載の抗体。
【0027】
10.(a)配列番号14のVH配列と、配列番号27のVL配列;または(b)配列番号15のVH配列と、配列番号28のVL配列;または(c)配列番号16のVH配列と、配列番号29のVL配列;または(d)配列番号17のVH配列と、配列番号30のVL配列を含む、項1~9のいずれか1項に記載の抗体。
【0028】
11.項1~10のいずれか1項に記載の抗体であって、
a)特に表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定するとき、ヒトCD137に10 nM未満、特に5 nM未満、特に1 nM未満の解離定数(KD)で結合し、特にscFv(1価の親和性)である抗体;および/または
b)SPRによって測定するとき、ヒトCD137に10-3-1以下、または10-4-1以下、または10-5-1以下のKoff速度で結合し、特にscFvである抗体;および/または
c)SPRによって測定するとき、ヒトCD137に少なくとも104 M-1-1以上、または少なくとも105 M-1-1以上、または少なくとも106 M-1-1以上のKon速度で結合し、特にscFvである抗体;および/または
d)Macaca fascicularis(カニクイザル)CD137と交差反応性であり、SPRによって測定するとき、15 nM未満、特に10 nM未満、特に5 nM未満のKDでカニクイザルPDL1と特に結合し、特にscFvである抗体;および/または
e)特にSPRによって測定するとき、ヒトCD40および/またはヒトOX40に結合しない抗体、
である、抗体。
【0029】
12.ヒトCD137に5 nM未満のKDで結合する、項1~11のいずれか1項に記載の抗体。
【0030】
13.項1~12のいずれか1項に記載の抗体であって、
a)scFv形式であるとき、示差走査蛍光光度測定によって求まる融点(Tm)が少なくとも50℃、好ましくは少なくとも55℃、より好ましくは少なくとも60℃であり、特に150 mMのNaCl を含むpH 6.4の50 mMのリン酸塩-クエン酸塩バッファーで調製される抗体;および/または
b)scFv形式であるとき、本発明の抗体の出発時の濃度が10 mg/mlだと、4℃で少なくとも2週間、特に少なくとも4週間にわたって保管した後に、単量体含量の損失が5%未満、例えば4%未満、3%未満、2%未満、好ましくは1%未満であり、特に150 mMのNaClを含むpHが6.4の50 mMのリン酸塩-クエン酸塩バッファーで調製される抗体;および/または
c)scFv形式であるとき、本発明の抗体の出発時の濃度が10 mg/mlだと、40℃で少なくとも2週間、特に少なくとも4週間にわたって保管した後にモノマー含量の損失が5%未満、例えば4%未満、3%未満、2%未満、好ましくは1%未満であり、特に150 mMのNaClを含むpHが6.4の50 mMのリン酸塩-クエン酸塩バッファーで調製される抗体、
である、抗体。
【0031】
14.モノクローナル抗体、キメラ抗体、Fab、Fv、scFv、dsFv、scAb、STAB、および代替足場に基づく結合ドメインであって、アンキリンに基づくドメイン、フィノマー(Fynomer)、アビマー(Avimer)、アンチカリン(Anticalin)、フィブロネクチン、および抗体の定常領域に組み込まれている結合部位(例えばF-star社のModular Antibody Technology(商標))を含むがこれらに限定されない結合ドメインからなる群から選択され、好ましくはFvまたはscFvである、項1~13のいずれか1項に記載の単離された抗体。
【0032】
15.一本鎖可変フラグメント(scFv)である、項1~14のいずれか1項に記載の抗体。
【0033】
16.前記scFvが、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35からなる群、好ましくは配列番号32と配列番号35からなる群から選択されたアミノ酸配列、より好ましくは配列番号35のアミノ酸配列を持つ、項15に記載の抗体。
【0034】
17.IgG1、IgG2、IgG3、IgG4からなる群から選択されたIgGであり、好ましくはIgG4である、項14に記載の単離された抗体。
【0035】
18.キメラ抗体またはヒト化抗体である、項1~17のいずれか1項に記載の単離された抗体。
【0036】
19.項1~18のいずれか1項に記載の抗体と実質的に同じエピトープに結合する、単離された抗体。
【0037】
20.多重特異性分子であり、特に少なくとも1つの二次機能性分子を有する多重特異性分子である、項1~19のいずれか1項に記載の抗体。
【0038】
21.一本鎖ディアボディ(scDb)、タンデムscDb(Tandab)、直線状二量体scDb(LD-scDb)、環状二量体scDb(CD-scDb)、二重特異性T細胞エンゲージャ(BiTE;タンデムジ-scFv)、タンデムトリ-scFv、トリボディ(Fab-(scFv)2)またはバイボディ(Fab-(scFv)1)、Fab、Fab-Fv2、モリソン(IgG CH3-scFv融合体(モリソン L)またはIgG CL-scFv融合体(モリソン H))、トリアボディ、scDb-scFv、二重特異性Fab2、ジ-ミニ抗体、テトラボディ、scFv-Fc-scFv融合体、scFv-HSA-scFv融合体、ジ-ディアボディ、DVD-Ig、COVD、IgG-scFab、scFab-dsscFv、Fv2-Fc、IgG-scFv融合体(bsAb(軽鎖のC末端に結合したscFv)、Bs1Ab(軽鎖のN末端に結合したscFv)、Bs2Ab(重鎖のN末端に結合したscFv)、Bs3Ab (重鎖のC末端に結合したscFv)、Ts1Ab (重鎖と軽鎖両方のN末端に結合したscFv)、Ts2Ab(重鎖のC末端に結合したdsscFv)など)、へテロ二量体Fcドメインに基づく二重特異性抗体(ノブ-イントゥー-ホール抗体(KiH)など);Fv、scFv、scDb、タンデム-ジ-scFv、タンデムトリ-scFv、Fab-(scFv)2、Fab-(scFv)1、Fab、Fab-Fv2、へテロ二量体Fcドメインまたは他の任意のヘテロ二量体化ドメインのどちらかの鎖のN末端および/またはC末端に融合したCOVD、MATCH、デュオボディからなる群から選択された形式である、項20に記載の抗体。
【0039】
22.項1~21のいずれか1項に記載の抗体と、医薬として許容可能な担体を含む医薬組成物。
【0040】
23.薬として用いるための、項1~21のいずれか1項に記載の抗体、または項22に記載の組成物。
【0041】
24.がんの処置を必要とする対象でがんの処置に用いるための、項1~21のいずれか1項に記載の抗体、または項22に記載の組成物。
【0042】
25.がんの処置を必要とする対象のがんを処置するための、項1~21のいずれか1項に記載の抗体、または項22に記載の組成物の利用。
【0043】
26.がんの処置を必要とする対象のがんを処置するため薬の製造における、項1~21のいずれか1項に記載の抗体、または項22に記載の組成物の利用。
【0044】
27.がんの処置を必要とする対象のがんを処置する方法であって、項1~21のいずれか1項に記載の抗体または項22に記載の組成物を治療に有効な量で前記対象に投与することを含む方法。
【0045】
28.項1~21のいずれか1項に記載の抗体をコードする核酸。
【0046】
29.項28の核酸を含むベクター。
【0047】
30.項28の核酸または項29のベクターを含む宿主細胞。
【0048】
31.項1~21のいずれか1項に記載の抗体を作製する方法であって、項28の核酸または項29のベクターを含む宿主細胞を培養する工程を含む方法。
【0049】
32.項1~21のいずれか1項に記載の抗体または項22に記載の組成物を含むキット。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】競合ELISAにおいてCD137LへのCD137の結合は抑制されない。CD137へのCD137Lの結合を評価する競合ELISAで測定された吸光度が、PRO885(A)またはPRO951(B)それぞれの増加していく濃度の関数として表わされている。抑制性抗体であるヤギ抗ヒトCD137を参照基準とした。
図2】PRO885、PRO951、ウレルマブ、ウトミルマブのエピトープビニングの結果を示すヒートマップ。結合レベルは理論的Rmaxに規格化し、固定化された分子(行)に対する分析物分子(列)の割合(%)で表わしてある。結合なし(濃い灰色)は同じエピトープを意味し、明るい灰色は、二次的分子(分析物)が結合できるために固定化された分子以外の別のエピトープを有することを意味する。
図3】PRO885のエピトープビニングセンサーグラム。PRO885をセンサーチップの表面に固定化し、最初の工程(左側)でCD137をPRO885によって捕獲した後、異なる4種類の抗体を注入した(右側)。PRO951と競合抗体は、捕獲されたCD137に結合できたのに対し、注入されたPRO885はまったく結合を示さなかった。
図4】PRO951のエピトープビニングセンサーグラム。PRO951をセンサーチップの表面に固定化し、最初の工程(左側)でCD137をPRO885によって捕獲した後、異なる4種類の抗体を注入した(右側)。PRO885とウレルマブは、捕獲されたCD137に結合できたのに対し、注入したウトミルマブとPRO951は、さらなる結合を示さなかった。
図5】NFκB-ルシフェラーゼレポータ遺伝子アッセイで評価した、PRO885とPRO951によるCD137活性化。PDL1を発現している細胞の存在下では、PRO885とPRO951はJurkat細胞の中でCD137シグナル伝達を活性化したのに対し、CHO野生型細胞を試験したときには、活性化がまったく観察されなかった。ウレルマブは、PDL1の発現とは独立にCD137シグナル伝達を活性化した。Jurkatレポータ細胞を添加してから6時間後に発光を読み取り、シグモイド曲線4PLフィット(GraphPad Prism社)を利用してデータをフィットさせた。
図6】NFκB-ルシフェラーゼレポータ遺伝子アッセイにおける、PDL1とCD137に対する親和性が異なるscDbによるCD137活性化。PDL1を発現しているCHO細胞の存在下では、すべてのscDbがJurkat細胞の中でCD137シグナル伝達を活性化したのに対し、CHO野生型細胞を試験したときには活性化がまったく観察されなかった。ウレルマブは、PDL1の発現とは独立にCD137シグナル伝達を活性化した。Jurkatレポータ細胞を添加してから6時間後に発光を読み取り、シグモイド曲線4PLフィット(GraphPad Prism社)を利用してデータをフィットさせた。
図7】NFκB-ルシフェラーゼレポータ遺伝子アッセイにおける、PDL1とCD137に対する親和性が異なるscDbによるCD137活性化。PDL1を発現しているHCC827細胞の存在下では、すべてのscDbがJurkat細胞の中でCD137シグナル伝達を活性化した。ウレルマブは、CD137シグナル伝達の相対活性化を評価するための参照分子として機能した。効力は、PDL1とCD137に対する親和性が大きくなるにつれてわずかに上昇した。高濃度での信号の減少(釣り鐘型曲線)は、CD137への親和性が大きくなるにつれてより顕著になったのに対し、PDL1への親和性の増加はこの効果に寄与しなかった。Jurkatレポータ細胞を添加してから6時間後に発光を読み取り、シグモイド曲線4PLフィット(GraphPad Prism社)を利用してデータをフィットさせた。
図8】NFκB-ルシフェラーゼレポータ遺伝子アッセイにおける、PDL1とCD137に対する親和性が異なるscDbによるCD137活性化。10 ng/mlのIFNγで24時間刺激した、PDL1を発現しているHCC827細胞の存在下では、STRを移植したscDbが、Jurkat細胞の中でCD137シグナル伝達を活性化した。ウレルマブは、CD137シグナル伝達の相対活性化を評価するための参照分子として機能した。効力は、PDL1とCD137に対する親和性が大きくなるにつれてわずかに上昇した。高濃度での信号の減少(釣り鐘型曲線)は、CD137への親和性が大きくなるにつれてより顕著になったのに対し、PDL1への親和性の増加はこの効果に寄与しなかった。Jurkatレポータ細胞を添加してから6時間後に発光を読み取り、シグモイド曲線4PLフィット(GraphPad Prism社)を利用してデータをフィットさせた。
図9】6時間後のNFκB-ルシフェラーゼレポータ遺伝子アッセイにおける、血清半減期が長い分子によるCD137活性化。PDL1を発現しているCHO細胞の存在下では、半減期が長い分子はJurkat細胞の中でCD137シグナル伝達を活性化したのに対し、CHO野生型細胞を試験したときには、活性化はまったく観察されなかった。ウレルマブは、PDL1の発現とは独立にCD137シグナル伝達を活性化した。興味深いことに、PRO1057は、両方の標的に対する親和性がPRO1058と似ているにもかかわらず、PRO1058よりもはるかに大きな信号最大値を示した。さらに、1価のscDb-scFv PRO1057は、それぞれの2価モリソン形式PRO1060よりも強い活性化を示した。Jurkatレポータ細胞を添加してから6時間後に発光を読み取り、シグモイド曲線4PLフィット(GraphPad Prism社)を利用してデータをフィットさせた。
図10】24時間後のNFκB-ルシフェラーゼレポータ遺伝子アッセイにおける、血清半減期が長い分子によるCD137活性化。PDL1を発現しているCHO細胞の存在下では、半減期が長い分子はJurkat細胞の中でCD137シグナル伝達を活性化したのに対し、CHO野生型細胞を試験したときには、活性化はまったく観察されなかった。ウレルマブは、PDL1の発現とは独立にCD137シグナル伝達を活性化した。興味深いことに、PRO1057は、両方の標的に対する親和性がPRO1058と似ているにもかかわらず、PRO1058よりもはるかに大きな信号最大値を示し、24時間後にはscDb PRO885の活性さえも超えた。さらに、1価のscDb-scFv PRO1057は、それぞれの2価モリソン形式PRO1060よりも強い活性化を示した。Jurkatレポータ細胞を添加してから24時間後に発光を読み取り、シグモイド曲線4PLフィット(GraphPad Prism社)を利用してデータをフィットさせた。
図11】(A)血清半減期が長い分子による24時間後のCD137活性化。刺激していないHCC827細胞の存在下、または10 ng/mlのIFNγで24時間刺激したHCC827細胞の存在下では、半減期が長い分子はJurkat細胞の中でCD137シグナル伝達を活性化した。ウレルマブは、CD137シグナル伝達の相対活性化を評価するための参照分子として機能した。1価のscDb-scFv PRO1057は、それぞれの2価モリソン形式PRO1060よりも活性化の最大値が大きかった。Jurkatレポータ細胞を添加してから24時間後に発光を読み取り、シグモイド曲線4PLフィット(GraphPad Prism社)を利用してデータをフィットさせた。(B)CD137活性アッセイにおいて、10 ng/mlのIFNγで6時間または24時間刺激したHCC827細胞の存在下にて、三重特異性scDb-scFv分子PRO1430、PRO1431、PRO1432、PRO1473、PRO1476、PRO1479、PRO1482を試験した。この実験では、PRO885が、CD137シグナル伝達の相対活性化を評価するための参照分子として機能した。三重特異性scDb-scFv分子PRO1186を各プレートに入れ、その活性を他のscDb-scFv分子と比較した。Jurkatレポータ細胞を添加してから6時間後または24時間後に発光を読み取り、試験した分子のうちでRLU値が増加している分子の濃度だけを、シグモイド曲線4PLフィット(GraphPad Prism社)を利用してデータをフィットさせた。
図12】生体外でのT細胞活性化。PRO885によるPDL1とCD137の共刺激エンゲイジメントが示されており、それによってIL-2が産生されて明らかにバックグラウンドのIL-2のレベルを超える。CHO-A2細胞は、PDL1を発現しているトランスジェニックCHO細胞である。
図13】生体外でのT細胞活性化アッセイ。PBMCを10 ng/mlのSEAで刺激し、scFv PRO997またはscDb PRO885の系列希釈液で96時間処理した。回収した上清の中のIL-2をELISAで定量することによってT細胞の活性化を評価した。PRO885とPRO951で処理するとIL-2が顕著に分泌された。PRO997はアベルマブよりも大きな効力を示した。PRO885はアベルマブと比べてはるかに大きな効果を示した。データは、シグモイド曲線4PLフィット(GraphPad Prism社)を利用してフィットさせた。
図14】免疫不全NOGマウス系統と同種異系ヒト末梢血単球細胞(hPBMC)を用いた、ヒトHCC827 NSCLC異種移植片における抗CD137(PRO1138またはウレルマブ)療法の抗腫瘍活性。マウスに抗CD137(PRO1138またはウレルマブ)またはビヒクルを0日目、3日目、7日目、10日目に腹腔内投与して処理した。マウスを17日目または18日目に安楽死させるまで、腫瘍の体積を週に2回測定した。腫瘍の体積は、処理開始時の腫瘍の体積に規格化した(相対腫瘍体積)。(A)2人のドナーからのPBMCで再構成したマウスの相対腫瘍体積の平均値(群ごとにn=8匹のマウス)。点線は、処理の時点を示す。(B)ドナーBからのPBMCで再構成したマウスの相対腫瘍体積の平均値(群ごとにn=4匹のマウス)。(C)2人のドナーからのPBMCで再構成したマウスの個別の相対腫瘍体積。それぞれの記号は、同じ処理群の中の個々のマウスを表わす。(D)ドナーBからのPBMCで再構成したマウスの個別の相対腫瘍体積。それぞれの記号は、同じ処理群の中の個々のマウスを表わす。
図15】抗CD137(PRO1138またはウレルマブ)または対照ビヒクルで処理したときの、hPBMCで置換したHCC827異種移植片NOGマウスの体重。マウスを17日目または18日目に安楽死させるまで、体重を週に2回測定した。体重は、処理開始時の体重に規格化した(相対体重)。
図16】ヒト臍帯血由来のCD34+造血幹細胞(UCB HSC)を移植したNOGマウスにおける、抗CD137抗体PRO1138(配列番号88と89)と抗PDL1抗体PRO1196(配列番号154と155)の組み合わせの抗腫瘍効果の評価。PRO1138にPRO1196(それぞれ0.1 mg)を組み合わせた抗腫瘍効果を、ビヒクル処理パリビズマブ(0.1 mg)、抗PDL1 IgG1(0.1 mg;PRO1196またはアベルマブ)、抗CD137 IgG4(0.1 mg;ウレルマブ)と比較した。マウスは、0日目、5日目、10日目、15日目、20日目に処理した(点線)。腫瘍の増殖と体重を週に2回記録した。腫瘍の体積は、処理開始時の腫瘍の体積に規格化した(相対腫瘍体積、RTV)。
図17】ヒト臍帯血由来のCD34+造血幹細胞(UCB HSC)を移植したNOGマウスにおける、抗CD137抗体PRO1138と抗PDL1抗体PRO1196の併用療法の24日後の相対腫瘍体積。腫瘍の体積は、処理開始時の腫瘍の体積に規格化した(相対腫瘍体積、RTV)。すべての統計値を、GraphPad Prism Version 6を利用して計算した。統計的有意性は、ボンフェローニ補正を適用した一元配置分散分析検定を利用して求めた。グラフは、平均値と95%CI(信頼区間)を示している。
図18】ヒト臍帯血由来のCD34+造血幹細胞(UCB HSC)を移植したNOGマウスにおける、抗CD137抗体PRO1138と抗PDL1抗体PRO1196の併用療法の24日後の反応分析。腫瘍の体積は、処理開始時の腫瘍の体積に規格化した(相対腫瘍体積、RTV)。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明により、ヒトCD137に特異的に結合する抗体と、このような抗体の医薬組成物と、このような抗体および組成物の作製方法および利用法が提供される。
【0052】
特に断わらない限り、あらゆる科学技術用語は、本発明が関係する分野の当業者が一般に理解するのと同じ意味を持つ。
【0053】
「含む」、「包含する」という用語は、本明細書では、特に断わらない限り、数に制限がなく、非限定的であるという意味で用いられる。後者の具体例に関しては、「含む」という用語は、より狭い「からなる」という用語を包含する。
【0054】
本発明を記述する文脈(特に下記の請求項の文脈)における「1つの」、「その」という用語と、それと類似した言及は、そうでないことが本明細書に示されている場合や、文脈から明らかにそうでない場合を除き、単数と複数の両方をカバーすると解釈すべきである。例えば「1つの細胞」という用語は、複数の細胞を包含し、その中にはその混合物も含まれる。複数形は、化合物、塩などで使用され、単一の化合物、塩なども意味すると解釈される。
【0055】
第1の側面では、本発明は、ヒトCD137に特異的に結合する抗体に関する。
【0056】
「抗体」などの用語は、本明細書では、完全抗体またはその一本鎖;任意の抗原結合フラグメント(すなわち「抗原結合部分」)またはその一本鎖;抗体のCDR、またはVH領域、またはVL領域を含む分子(その非限定的な例に多重特異性抗体が含まれる)を包含する。天然の「完全抗体」は、ジスルフィド結合によって互いに接続された少なくとも2本の重(H)鎖と2本の軽(L)を含む鎖糖タンパク質である。それぞれの重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略する)と重鎖定常領域からなる。重鎖定常領域は、3つのドメインCH1、CH2、CH3からなる。それぞれの軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略する)と軽鎖定常領域からなる。VH領域とVL領域はさらに、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性のある領域に分割することができ、CDRの間には、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域が存在している。それぞれのVHとVLは3つのCDRと4つのFRからなり、アミノ末端からカルボキシ末端に向かってFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順番で配置されている。重鎖と軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有している。抗体の定常領域は、免疫グロブリンが宿主の組織または因子(その中には、免疫系のさまざまな細胞(例えばエフェクタ細胞)や古典的補体系の第1の成分(C1q)が含まれる)に結合するのを媒介する。
【0057】
「抗原結合フラグメント」、「その抗原結合フラグメント」、「抗原結合部分」などの用語は、本明細書では、完全抗体の1つ以上のフラグメントで、所与の抗原(例えばCD137)に特異的に結合する能力を保持しているものを意味する。抗体の抗原結合機能は、完全抗体のフラグメントによって実現することができる。抗体の「抗原結合部分」という用語に包含される結合フラグメントの例に含まれるのは、Fabフラグメント(すなわちVLドメイン、VHドメイン、CLドメイン、CH1ドメインからなる1価フラグメント);F(ab)2フラグメント(すなわちヒンジ領域でジスルフィド結合によって結合された2つのFabフラグメントを含む2価フラグメント);VHドメインとCH1ドメインからなるFdフラグメント;抗体の1本のアームのVLドメインとVHドメインからなるFvフラグメント;代替足場に基づく結合ドメインであって、アンキリンに基づくドメイン、フィノマー、アビマー、アンチカリン、フィブロネクチン、および抗体の定常領域に組み込まれている結合部位(例えばF-star社のModular Antibody Technology(商標))を含むがこれらに限定されない結合ドメインである。
【0058】
「相補性決定領域」(「CDR」)という用語は、多数ある周知のスキームのうちの任意のスキームを用いて決定された境界を持つアミノ酸配列である。そうしたスキームに含まれるのは、以下のスキーム、すなわちKabat他(1991年)、『Sequences of Proteins of Immunological Interest』、第5版、公衆衛生局、国立衛生研究所、ベセスダ、メリーランド州(「Kabat」番号づけスキーム)、Al-Lazikani他(1997年)JMB 第273巻、927~948ページ(「Chothia」番号づけスキーム)、ImMunoGenTics(IMGT)番号づけ(Lefranc, M.-P.、The Immunologist, 第7巻、132~136ページ(1999年);Lefranc, M.-P.他、Dev. Comp. Immunol.第27巻、55~77ページ(2003年)(「IMGT」番号づけスキーム)、HoneggerとPluckthun、J. Mol. Biol. 第309巻(2001年)657~670ページに記載されている番号づけシステム(「AHo」番号づけ)である。例えばKabatのもとでの古典的な形式では、重鎖可変ドメイン(VH)の中のCDRアミノ酸残基は、31~35(HCDR1)、50~65(HCDR2)、95~102(HCDR3)と番号づけられ;軽鎖可変ドメイン(VL)の中のCDRアミノ酸残基は、24~34(LCDR1)、50~56(LCDR2)、89~97(LCDR3)と番号づけられる。Chothiaのもとでは、VHの中のCDRアミノ酸は、26~32(HCDR1)、52~56(HCDR2)、95~102(HCDR3)と番号づけられ; VLの中のアミノ酸残基は、24~34(LCDR1)、50~56(LCDR2)、89~97(LCDR3)と番号づけられる。KabatとChothia両方のCDRの定義を組み合わせることにより、CDRは、ヒトVHではアミノ酸残基26~35(HCDR1)、50~65(HCDR2)、95~102(HCDR3)からなり、ヒトVLではアミノ酸残基24~34(LCDR1)、50~56(LCDR2)、89~97(LCDR3)からなる。IMGTのもとでは、VHの中のCDRアミノ酸残基は、ほぼ26~35(HCDR1)、51~57(HCDR2)、93~102(HCDR3)と番号づけられ、VLの中のCDRアミノ酸残基は、ほぼ27~32(LCDR1)、50~52(LCDR2)、89~97(LCDR3)と番号づけられる(「Kabat」に従う番号づけ)。IMGTのもとでは、抗体のCDRは、プログラムIMGT/DomainGap Alignを用いて求めることができる。本発明の文脈では、特に断わらない限り、HoneggerとPluckthun(「AHo」)が提案している番号づけシステムを使用する(Honegger とPluckthun、J. Mol. Biol. 第309巻(2001年)657~670ページ)。さらに、以下の残基がAHo番号づけスキームに従ってCDRとして定義される:LCDR1(CDR-L1とも呼ばれる):L24~L42;LCDR2(CDR-L2とも呼ばれる):L58~L72;LCDR3(CDR-L3とも呼ばれる):L107~L138;HCDR1(CDR-H1とも呼ばれる):H27~H42;HCDR2(CDR-H2とも呼ばれる):H57~H76;HCDR3(CDR-H3とも呼ばれる):H108~H138。明確にするため、HoneggerとPluckthunに従う番号づけシステムは、天然の抗体において、異なるVHサブファミリーとVLサブファミリー(特にCDR)の両方に見られる長さの多様性を考慮しているため、配列内にギャップを提供する。したがって所与の抗体可変ドメインにおいて位置1~149のすべてがアミノ酸残基で占められることは通常はない。
【0059】
抗原結合部分は、マキシボディ、ミニボディ、イントラボディ、ディアボディ、トリアボディ、テトラボディ、scDb-scFv、v-NAR、ビス-scFvにも組み込むことができる(例えばHolligerとHudson、2005年、Nature Biotechnology、第23巻、1126~1136ページを参照されたい)。抗体の抗原結合部分は、フィブロネクチンIII(Fn3)などのポリペプチドに基づいて足場に移植することができる(フィブロネクチンポリペプチド単量体が記載されているアメリカ合衆国特許第6,703,199号を参照されたい)。抗原結合部分は、一対のタンデムFvセグメント(VH-CH1-VH-CH1)を含む一本鎖分子に組み込むことができ、これらセグメントが相補的な軽鎖ポリペプチドと合わさって一対の抗原結合領域を形成する(Zapata他、1995年 Protein Eng. 第8巻(10):1057~1062ページ;アメリカ合衆国特許第5,641,870号)。
【0060】
「結合特異性」という用語は、本明細書では、個々の抗体結合部位が1つの抗原決定基と反応するが、異なる抗原決定基とは反応しない能力を意味する。本明細書では、「に特異的に結合する」または「に対して特異的」という表現は、測定可能かつ再現可能な相互作用(標的と抗体の間の結合など)を意味し、それは、存在している分子(生体分子が含まれる)の異種集団の中に標的が存在していることを決定づける。例えば標的(エピトープが可能である)に特異的に結合する抗体は、この標的に、他の標的に結合するよりも大きな親和性で、および/またはアビディティで、および/またはより容易に、および/またはより長時間にわたって結合する抗体である。「特異的に結合する」は、最も一般的な形では(そして決められた基準への言及がないときには)、例えば本分野で知られている特異性アッセイに従って調べるとき、抗体が、興味ある標的と、関連性のない分子を識別する能力を意味する。そのような方法の非限定的な例に含まれるのは、ウエスタンブロット試験、ELISA試験、RIA試験、ECL試験、IRMA試験、SPR(表面プラズモン共鳴)試験、ペプチド走査である。例えば標準的なELISAアッセイを実施することができる。数値化は、標準的な発色(例えば二次抗体とセイヨウワサビペルオキシダーゼ、テトラメチルベンジジンと過酸化水素)によって実現できる。いくつかのウエルの中の反応を、例えば450 nmでの光学密度によって数値化する。典型的なバックグラウンド(=陰性反応)は約0.1 ODであり、典型的な陽性反応は約1 ODである可能性がある。これは、陽性の数値と陰性の数値の比が10倍以上になりうることを意味する。別の一例ではSPRアッセイを実施することができ、この場合には、バックグラウンドと信号の間に少なくとも10倍、好ましくは少なくとも100倍の差があることが、特異的な結合であることを示している。典型的には、結合特異性の判断は、単一の参照分子ではなく、関連性のない約3~5個の分子のセット(ミルク粉末、トランスフェリンなど)を用いることによる。本発明の抗体は、ヒトCD137に対する結合特異性を有する。特別な一実施態様では、本発明の抗体は、特にSPRによって調べるとき、ヒトCD137に対する結合特異性を持ち、ヒトCD40および/またはヒトOX40には結合しない。
【0061】
本発明の抗体は、単離された抗体であることが好適である。「単離された抗体」という用語は、本明細書では、異なる抗原特異性を持つ他の抗体が実質的に含まれていない抗体を意味する(例えばCD137に特異的に結合する単離された抗体には、CD137以外の抗原に特異的に結合する抗体は実質的に含まれない)。しかしCD137に特異的に結合する単離された抗体は、他の抗原(他の種からのCD137分子など)に対する交差反応性を有する。したがって一実施態様では、本発明の抗体は、ヒトCD137とMacaca fascicularis(カニクイザルまたは「Cynomologus」としても知られる)CD137に対する結合特異性を有する。さらに、単離された抗体は、他の細胞材料および/または化学物質を実質的に含んでいない可能性がある。
【0062】
本発明の抗体は、モノクローナル抗体であることが好適である。「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」という用語は、本明細書では、アミノ酸配列が実質的に同じ複数の抗体、または同じ遺伝子供給源に由来する複数の抗体を意味する。モノクローナル抗体組成物は、特定の1つのエピトープに対する1つの結合特異性と親和性、または特定の複数のエピトープに対する複数の結合特異性と親和性を示す。
【0063】
本発明の抗体にはキメラ抗体とヒト化抗体が含まれるが、それらに限定されない。
【0064】
「キメラ抗体」という用語は、(a)定常領域またはその一部が変えられて、または置換されて、または交換されて、抗原結合部位(可変領域)が、異なるか変化したクラスおよび/またはエフェクタ機能および/または種の定常領域に結合しているか、まったく異なる分子(例えば酵素、毒素、ホルモン、成長因子、薬など)に結合している抗体分子;または(b)可変領域またはその一部が、抗原特異性が異なるか変化した可変領域を用いて変えられた、または置換された、または交換された抗体分子である。例えばマウス抗体は、その定常領域をヒト免疫グロブリンからの定常領域で置き換えることによって改変することができる。キメラ抗体は、ヒト定常領域で置換したことが理由で、抗原を認識する際の特異性を保持できる一方で、ヒトでの抗原性が元のマウス抗体と比べて低下している。
【0065】
「ヒト化」抗体という用語は、本明細書では、非ヒト抗体の反応性を保持している一方で、ヒトでの免疫原性がより小さい抗体である。これは、例えば非ヒトCDR領域を保持したまま、抗体の残部をヒトの対応物(すなわち定常領域と、可変領域のフレームワーク部分)で置換することによって実現できる。追加のフレームワーク領域の改変は、ヒトフレームワーク配列内と、別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列内で実行することができる。本発明のヒト化抗体は、ヒト配列によってコードされていないアミノ酸残基を含んでいる可能性がある(例えばインビトロでのランダムな突然変異誘発または部位特異的突然変異誘発によって、または生体内の体細胞変異によって導入される変異、または安定性を促進したり作製しやすくしたりするための保存的置換)。例えばモリソン他、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第81巻:6851~6855ページ、1984年;モリソンとOi、Adv. Immunol.、第44巻:65~92ページ、1988年;Verhoeyen他、Science、第239巻:1534~1536ページ、1988年;Padlan、Molec. Immun.、第28巻:489~498ページ、1991年;Padlan、Molec. Immun.、第31巻:169~217ページ、1994年を参照されたい。ヒト操作技術の非限定的な別の例に含まれるのは、アメリカ合衆国特許第5,766,886号に開示されているXoma技術である。
【0066】
「組み換えヒト化抗体」という用語は、本明細書では、組み換え手段によって調製、発現、作製、単離されたあらゆるヒト抗体を包含し、その例として、形質転換によって例えばトランスフェクトーマからヒト化抗体を発現するようにされた宿主細胞から単離された抗体や、ヒト免疫グロブリン遺伝子の全体または一部のスプライシングによって配列を他のDNA配列にすることを含む他の任意の手段によって調製、発現、作製、単離された抗体がある。
【0067】
本発明の抗体はヒト化されていることが好適である。本発明の抗体は、ヒト化されていてウサギ由来のCDRを含むことが好適である。
【0068】
「CD137」という用語は、特にUniProt ID番号Q07011を持つヒトCD137を意味し、本明細書では配列番号61に再現されている。本発明の抗体は、CD137を標的とすること、特にUniProt ID番号Q07011に示されていて本明細書では配列番号61に再現されているヒトCD137を標的とすることが好適である。本発明の抗体は、ヒトとカニクイザル(Macaca fascicularis)のCD137を標的とすることが好適である。本発明の抗体は、CD137に特異的に結合する。特に本発明の抗体は、特にSPRによって測定するとき、ヒトOX40および/またはヒトCD40に結合しない。本発明の抗体は、CD137/CD137L相互作用を阻止しないことが好ましい。
【0069】
本発明の抗体はCD137アゴニストであることが好適である。「活性化因子」または「活性化抗体」または「アゴニスト」または「アゴニスト抗体」は、抗原に結合することによってシグナル伝達を増強したり開始させたりするものである。本発明の文脈では、「CD137アゴニスト」という用語は、CD137-抗原結合フラグメントがクラスター化したときCD137シグナル伝達を活性化させることのできる本発明の抗体を包含する。例えばそのCD137-抗原結合フラグメントが少なくとも2つ結合することにより、結合したCD137分子の多量体化と活性化が可能になる。いくつかの実施態様では、アゴニスト抗体は、天然リガンドが存在していなくてもシグナル伝達を活性化させる。
【0070】
本発明の抗体の非限定的な例に含まれるのは、実施例に含まれていて、本明細書に記載されているようにして単離されたヒト化モノクローナル抗体である。そのようなヒトCD137抗体の例は、表1に配列が掲載されている抗体である。本明細書に記載されている抗体の生成と特徴づけに関する追加の詳細は、実施例に提示されている。
【0071】
ヒトCD137に対する結合特異性を持つ本発明の単離された抗体は、重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)を含んでいて、(a)そのVHは、順番に並んだ3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2、HCDR3を含んでおり、(b)そのVLは、順番に並んだ3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2、LCDR3を含んでいる。
【0072】
本発明により、表1に掲載されているVH CDRのいずれか1つのアミノ酸配列を有するVH CDRを含んでいてCD137タンパク質に特異的に結合する抗体が提供される。特に本発明により、表1に掲載されているVH CDRのいずれか1つのアミノ酸配列を有する1つ、または2つ、または3つ、またはそれよりも多数のVH CDRを含んでいてCD137タンパク質に特異的に結合する抗体が提供される。
【0073】
本発明により、表1に掲載されているVL CDRのいずれか1つのアミノ酸配列を有するVL CDRを含んでいてCD137タンパク質に特異的に結合する抗体も提供される。特に本発明により、表1に掲載されているVL CDRのいずれか1つのアミノ酸配列を有する1つ、または2つ、または3つ、またはそれよりも多数のVL CDRを含んでいてCD137タンパク質に特異的に結合する抗体が提供される。
【0074】
本発明の他の抗体に含まれるのは、変異しているがそれでもCD137に特異的に結合し、そして表1に記載されている配列に示されるCDR領域と、CDR領域において少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有するアミノ酸配列である。1つの側面では、本発明の他の抗体に含まれるのは、CD137に特異的に結合する変異アミノ酸配列であって、表1に記載されている配列内のCDR領域と比較して、CDR領域内で1個以下、または2個以下、または3個以下、または4個以下、または5個以下のアミノ酸が変異しているものである。
【0075】
「同一(identical)」または「同一性(identity)」という用語は、2つ以上の核酸配列またはポリペプチド配列の文脈では、2つ以上の配列または部分配列が同じであることを意味する。核酸配列、ペプチド配列、ポリペプチド配列、抗体配列いずれかに関する「百分率(%)配列同一性(Percent (%) sequence identity)」と「相同性」は、その具体的な核酸配列、ペプチド配列、ポリペプチド配列のいずれかと候補配列のアラインメントを作り、必要な場合にはギャップを導入して配列同一性の百分率を最大にした後に、配列同一性の一部としていかなる保存的置換も考慮しない場合の、候補配列の中にあって、その具体的な核酸配列、ペプチド配列、ポリペプチド配列いずれかの中のヌクレオチドまたはアミノ酸残基と同一のヌクレオチドまたはアミノ酸残基の百分率と定義される。アミノ酸配列同一性の百分率を求めることを目的としたアラインメントは、本分野で知られているさまざまなやり方で実現することができ、例えば公開されているコンピュータソフトウエア(BLAST、BLAST-2、ALIGNソフトウエアなど)を利用する。当業者は、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決めることができ、そのパラメータには、比較する配列の全長にわたって最大のアラインメントを実現するのに必要とされる任意のアルゴリズムが含まれる。
【0076】
配列を比較するには、典型的には1つの配列が参照配列として機能し、試験配列がその参照配列と比較される。配列比較アルゴリズムを利用するときには、試験配列と参照配列がコンピュータに入力され、必要な場合には部分配列座標が指定され、配列アルゴリズムプログラムパラメータが指定される。デフォルトのプログラムパラメータを用いるか、代わりのパラメータを指定することができる。その後、配列比較アルゴリズムが、プログラムパラメータに基づき、参照配列に対する試験配列の配列同一性の百分率を計算する。
【0077】
配列同一性の百分率と配列類似性を求めるのに適したアルゴリズムの2つの例は、BLASTとBLAST 2.0アルゴリズムであり、これらはそれぞれAltschul他、Nucl. Acids Res. 第25巻:3389~3402ページ、1977年と、Altschul他、J. Mol. Biol. 第215巻:403~410ページ、1990年に記載されている。BLAST解析を実施するためのソフトウエアは、National Center for Biotechnology Informationを通じて公に入手することができる。
【0078】
2つのアミノ酸配列の間の同一性の百分率は、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているE. MeyersとW. Miller(Comput. Appl. Biosci.、第4巻:11~17ページ、1988年)のアルゴリズムを利用して求めることもできる。そのとき、PAM120重み残基表を用い、ギャップ長のペナルティを12、ギャップペナルティを4にする。それに加え、2つのアミノ酸配列の間の同一性の百分率は、GCGソフトウエアパッケージ(www.gcg.comで入手可能)のGAPプログラムに組み込まれているNeedlemanとWunsch(J. Mol, Biol. 第48巻:444~453ページ、1970年)のアルゴリズムを利用して求めることができる。そのとき、Blossom 62マトリックスまたはPAM250マトリックスを利用し、ギャップの重みを16、14、12、10、8、6、4のいずれかにし、長さの重みを1、2、3、4、5、6のいずれかにする。
【0079】
「アミノ酸」という用語は、天然アミノ酸と合成アミノ酸のほか、天然アミノ酸と機能が似ているアミノ酸類似体とアミノ酸模倣体を意味する。天然アミノ酸は、遺伝暗号によってコードされているアミノ酸のほか、あとで修飾されたアミノ酸(例えばヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、O-ホスホセリン)である。「ポリペプチド」と「タンパク質」という用語は本明細書では交換可能に用いられ、アミノ酸残基のポリマーを意味する。これらの用語は、1個以上のアミノ酸残基が対応する天然アミノ酸の人工的な化学的模倣体であるアミノ酸ポリマーのほか、天然アミノ酸ポリマーと非天然アミノ酸ポリマーに当てはまる。特に断わらない限り、個々のポリペプチド配列には、保存的修飾がなされたバリアントも暗黙に包含される。
【0080】
本発明により、ヒトCD137に対する結合特異性を有する単離された抗体として、(a)配列番号1、4、5、8、11、39、42、45から選択されたいずれか1つのアミノ酸配列(好ましくは配列番号1のアミノ酸配列)を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)重鎖可変領域CDR1(HCDR1)と;(b)配列番号2、6、9、12、40、43、46から選択されたいずれか1つのアミノ酸配列(好ましくは配列番号2のアミノ酸配列)を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)重鎖可変領域CDR2(HCDR2)と;(c)配列番号3、7、10、13、41、44、47から選択されたいずれか1つのアミノ酸配列(好ましくは配列番号3のアミノ酸配列)を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)重鎖可変領域CDR3(HCDR3)と;(d)配列番号18、21、24、49、52、55から選択されたアミノ酸配列(好ましくは配列番号18のアミノ酸配列)を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)軽鎖可変領域CDR1(LCDR1)と;(e)配列番号19、22、25、50、53、56から選択されたアミノ酸配列(好ましくは配列番号19のアミノ酸配列)を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)軽鎖可変領域CDR2(LCDR2)と;(f)配列番号20、23、26、51、54、57から選択されたアミノ酸配列(好ましくは配列番号20のアミノ酸配列)を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)軽鎖可変領域CDR3(LCDR3)を含んでいて、ヒトCD137に特異的に結合する抗体が提供される。ヒトCD137に対する結合特異性を持つ本発明のこの単離された抗体は、(a)配列番号1、4、5、8、11、39、42、45のいずれか1つ(好ましくは配列番号1)と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有する重鎖可変領域CDR1と;(b)配列番号2、6、9、12、40、43、46のいずれか1つ(好ましくは配列番号2)と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有する重鎖可変領域CDR2と;(c)配列番号3、7、10、13、41、44、47のいずれか1つ(好ましくは配列番号3)と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有する重鎖可変領域CDR3と;(d)配列番号18、21、24、49、52、55のいずれか1つ(好ましくは配列番号18)と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有する軽鎖可変領域CDR1と;(e)配列番号19、22、25、50、53、56のいずれか1つ(好ましくは配列番号19)と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有する重鎖可変領域CDR2と;(f)配列番号20、23、26、51、54、57のいずれか1つ(好ましくは配列番号20)と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有する軽鎖可変領域CDR3を含むことが好適である。
【0081】
一実施態様では、ヒトCD137に対する結合特異性を有する本発明の抗体は、(a)配列番号1のHCDR1配列、配列番号2のHCDR2配列、配列番号3のHCDR3配列と、配列番号18のLCDR1配列、配列番号19のLCDR2配列、配列番号20のLCDR3配列;(b)配列番号4のHCDR1配列、配列番号6のHCDR2配列、配列番号7のHCDR3配列と、配列番号21のLCDR1配列、配列番号22のLCDR2配列、配列番号23のLCDR3配列;(c)配列番号5のHCDR1配列、配列番号6のHCDR2配列、配列番号7のHCDR3配列と、配列番号21のLCDR1配列、配列番号22のLCDR2配列、配列番号23のLCDR3配列;(d)配列番号8のHCDR1配列、配列番号9のHCDR2配列、配列番号10のHCDR3配列と、配列番号18のLCDR1配列、配列番号19のLCDR2配列、配列番号20のLCDR3配列;(e)配列番号11のHCDR1配列、配列番号12のHCDR2配列、配列番号13のHCDR3配列と、配列番号24のLCDR1配列、配列番号25のLCDR2配列、配列番号26のLCDR3配列;(f)配列番号36のHCDR1配列、配列番号37のHCDR2配列、配列番号38のHCDR3配列と、配列番号49のLCDR1配列、配列番号50のLCDR2配列、配列番号51のLCDR3配列;(g)配列番号39のHCDR1配列、配列番号40のHCDR2配列、配列番号41のHCDR3配列と、配列番号52のLCDR1配列、配列番号53のLCDR2配列、配列番号54のLCDR3配列;(h)配列番号42のHCDR1配列、配列番号43のHCDR2配列、配列番号44のHCDR3配列と、配列番号49のLCDR1配列、配列番号50のLCDR2配列、配列番号51のLCDR3配列;(i)配列番号45のHCDR1配列、配列番号46のHCDR2配列、配列番号47のHCDR3配列と、配列番号55のLCDR1配列、配列番号56のLCDR2配列、配列番号57のLCDR3配列を含んでいる。好ましい一実施態様では、ヒトCD137に対する結合特異性を有する本発明の抗体は、配列番号1のHCDR1配列、配列番号2のHCDR2配列、配列番号3のHCDR3配列と、配列番号18のLCDR1配列、配列番号19のLCDR2配列、配列番号20のLCDR3配列を含んでいる。
【0082】
ヒトCD137に対する結合特異性を有する本発明の抗体は、(a)配列番号1、2、3のぞれぞれと少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有するHCDR1配列、HCDR2配列、HCDR3配列と、配列番号18、19、20のそれぞれと少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有するLCDR1配列、LCDR2配列、LCDR3配列;(b)配列番号4、6、7のぞれぞれと少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有するHCDR1配列、HCDR2配列、HCDR3配列と、配列番号21、22、23のそれぞれと少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有するLCDR1配列、LCDR2配列、LCDR3配列;(c)配列番号5、6、7のぞれぞれと少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有するHCDR1配列、HCDR2配列、HCDR3配列と、配列番号21、22、23のそれぞれと少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有するLCDR1配列、LCDR2配列、LCDR3配列;(d)配列番号8、9、10のぞれぞれと少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有するHCDR1配列、HCDR2配列、HCDR3配列と、配列番号18、19、20のそれぞれと少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有するLCDR1配列、LCDR2配列、LCDR3配列;(e)配列番号11、12、13のぞれぞれと少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有するHCDR1配列、HCDR2配列、HCDR3配列と、配列番号24、25、26のそれぞれと少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有するLCDR1配列、LCDR2配列、LCDR3配列;(f)配列番号36、37、38のぞれぞれと少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有するHCDR1配列、HCDR2配列、HCDR3配列と、配列番号49、50、51のそれぞれと少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有するLCDR1配列、LCDR2配列、LCDR3配列;(g)配列番号39、40、41のぞれぞれと少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有するHCDR1配列、HCDR2配列、HCDR3配列と、配列番号52、53、54のそれぞれと少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有するLCDR1配列、LCDR2配列、LCDR3配列;(h)配列番号42、43、44のぞれぞれと少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有するHCDR1配列、HCDR2配列、HCDR3配列と、配列番号49、50、51のそれぞれと少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有するLCDR1配列、LCDR2配列、LCDR3配列;(i)配列番号45、46、47のぞれぞれと少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有するHCDR1配列、HCDR2配列、HCDR3配列と、配列番号55、56、57のそれぞれと少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有するLCDR1配列、LCDR2配列、LCDR3配列を含んでいることが好適である。好ましい一実施態様では、ヒトCD137に対する結合特異性を有する本発明の抗体は、配列番号1、2、3のぞれぞれと少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有するHCDR1配列、HCDR2配列、HCDR3配列と、配列番号18、19、20のそれぞれと少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有するLCDR1配列、LCDR2配列、LCDR3配列を含んでいる。ヒトCD137に対する結合特異性を有する本発明の抗体は、(a)配列番号1と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有するアミノ酸配列を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)HCDR1と;(b)配列番号2と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有するアミノ酸配列を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)HCDR2と;(c)配列番号3と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有するアミノ酸配列を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)HCDR3と;(d)配列番号18と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有するアミノ酸配列を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)LCDR1と;(e)配列番号19と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有するアミノ酸配列を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)LCDR2と;(f)配列番号20と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有するアミノ酸配列を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)LCDR3を含んでいることが好適である。
【0083】
別の一実施態様では、ヒトCD137に対する結合特異性を有する本発明の抗体は、(a)配列番号4または5のアミノ酸配列を含む(好ましくはそのどちらかのアミノ酸配列からなる)HCDR1と;(b)配列番号6のアミノ酸配列を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)HCDR2;(c)配列番号7のアミノ酸配列を含む、好ましくはそのアミノ酸配列からなるHCDR3;(d)配列番号21のアミノ酸配列を含む、好ましくはそのアミノ酸配列からなるLCDR1;(e)配列番号22のアミノ酸配列を含む、好ましくはそのアミノ酸配列からなるLCDR2;(f)配列番号23のアミノ酸配列を含む、好ましくはそのアミノ酸配列からなるLCDR3を含んでいる。ヒトCD137に対する結合特異性を有する本発明の抗体は、(a)配列番号4または5と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有するアミノ酸配列を含む(好ましくはそのどちらかのアミノ酸配列からなる)HCDR1と;(b)配列番号6と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有するアミノ酸配列を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)HCDR2と;(c)配列番号7と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有するアミノ酸配列を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)HCDR3と;(d)配列番号21と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有するアミノ酸配列を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)LCDR1と;(e)配列番号22と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有するアミノ酸配列を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)LCDR2と;(f)配列番号23と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有するアミノ酸配列を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)LCDR3を含んでいることが好適である。
【0084】
さらに別の一実施態様では、ヒトCD137に対する結合特異性を有する本発明の抗体は、(a)配列番号36のアミノ酸配列を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)HCDR1と;(b)配列番号37のアミノ酸配列を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)HCDR2と;(c)配列番号38のアミノ酸配列を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)HCDR3と;(d)配列番号49のアミノ酸配列を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)LCDR1と;(e)配列番号50のアミノ酸配列を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)LCDR2と;(f)配列番号51のアミノ酸配列を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)LCDR3を含んでいる。ヒトCD137に対する結合特異性を有する本発明の抗体は、(a)配列番号36と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有するアミノ酸配列を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)HCDR1と;(b)配列番号37と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有するアミノ酸配列を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)HCDR2と;(c)配列番号38と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有するアミノ酸配列を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)HCDR3と;(d)配列番号49と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有するアミノ酸配列を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)LCDR1と;(e)配列番号50と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有するアミノ酸配列を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)LCDR2と;(f)配列番号51と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有するアミノ酸配列を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)LCDR3を含んでいることが好適である。
【0085】
別の一実施態様では、ヒトCD137に対する結合特異性を有する本発明の抗体は、(a)配列番号39のアミノ酸配列を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)HCDR1と;(b)配列番号40のアミノ酸配列を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)HCDR2と;(c)配列番号41のアミノ酸配列を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)HCDR3と;(d)配列番号52のアミノ酸配列を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)LCDR1と;(e)配列番号53のアミノ酸配列を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)LCDR2と;(f)配列番号54のアミノ酸配列を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)LCDR3を含んでいる。ヒトCD137に対する結合特異性を有する本発明の抗体は、(a)配列番号39と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有するアミノ酸配列を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)HCDR1と;(b)配列番号40と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有するアミノ酸配列を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)HCDR2と;(c)配列番号41と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有するアミノ酸配列を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)HCDR3と;(d)配列番号52と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有するアミノ酸配列を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)LCDR1と;(e)配列番号53と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有するアミノ酸配列を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)LCDR2と;(f)配列番号54と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有するアミノ酸配列を含む(好ましくはそのアミノ酸配列からなる)LCDR3を含んでいることが好適である。
【0086】
別の一実施態様では、本発明により、CD137(例えばヒトCD137タンパク質)に特異的に結合する単離された抗体として、VHドメインとVLドメインを含む抗体が提供される。本発明の文脈では、「VH」(可変重鎖)、「VL」(可変軽鎖)、「Vκ」、「Vλ」という用語は、配列の同一性と相同性に従って分類された抗体の重鎖配列と軽鎖配列のファミリーを意味する。配列の相同性を例えば相同性検索マトリックス(BLOSUM(Henikoff, S.とHenikoff, J. G.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 第89巻(1992年)10915~10919ページ)など)を利用して求める方法と、相同性に従って配列を分類する方法が、当業者によく知られている。VHに関しては、VκとVλの異なるサブファミリーを、例えばKnappik他、J. Mol. Biol. 第296巻(2000年)57~86ページに示されているようにして同定することができ、VHをVH1A、VH1B、VH2~VH6に分類し、VκをVκ1~Vκ4に分類し、VλをVλ1~Vλ3に分類する。生体内では、抗体のVκ鎖、Vλ鎖、VH鎖は、生殖系列κ鎖のVセグメントとJセグメント、生殖系列λ鎖のVセグメントとJセグメント、重鎖のVセグメント、Dセグメント、Jセグメントがそれぞれランダムに再構成された結果である。所与の抗体可変鎖がどのサブファミリーに属するかは、対応するVセグメント(特にフレームワーク領域FR1~FR3)によって決まる。したがって本出願において特定のフレームワーク領域のセットHFR1~HFR3だけを特徴とする任意のVH配列を、任意のHFR4配列(例えば重鎖生殖系列Jセグメントの1つから取られたHFR4配列、または再構成されたVH配列から取られたHFR4配列)と組み合わせることができる。
【0087】
本発明により、CD137(例えばヒトCD137タンパク質)に特異的に結合する単離された抗体として、VH4ドメインまたはVH3ドメイン(好ましくはVH4ドメイン、より好ましくはVH3ドメイン)を含む抗体が提供されることが好適である。
【0088】
VH3ファミリーに属するVHの具体的な一例は、配列番号17によって表わされる。特に配列番号17から取られたフレームワーク領域FR1~FR4が、VH3ファミリーに属する(表1、太字ではない領域)。VH3ファミリーに属するVHは、本明細書では、配列番号17のFR1~FR4と配列が少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%同一性を有するFR1~FR4を含むVHであることが好適である。
【0089】
VH4ファミリーに属するVHの具体的な一例は、配列番号14によって表わされる。特に配列番号14から取られたフレームワーク領域FR1~FR4が、VH4ファミリーに属する(表1、太字ではない領域)。VH4ファミリーに属するVHは、本明細書では、配列番号14のFR1~FR4と配列が少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%同一性を有するFR1~FR4を含むVHであることが好適である。
【0090】
VH配列の別の例は、Knappik 他、J. Mol. Biol. 第296巻(2000年)57~86ページに見いだすことができる。
【0091】
本発明により、CD137(例えばヒトCD137タンパク質)に特異的に結合する単離された抗体として、VκフレームワークFR1、FR2、FR3(特にVκ1フレームワークFR1~FR3またはVκ3フレームワークFR1~FR3、好ましくはVκ1フレームワークFR1~FR3)と、フレームワークFR4(その選択は、VκFR4から、特にVκ1FR4、Vκ3FR4、VλFR4からなされる)を含む抗体が提供されることが好適である。適切なVκ1フレームワークFR1~FR3は、配列番号27に記載されている(表1、FR領域は非太字で記されている)。適切なVκ1フレームワークFR1~FR3は、配列番号27から取られてFR1~FR3に対応するアミノ酸配列と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%同一性を有するアミノ酸配列を含んでいる(表1、FR領域は非太字で記されている)。
【0092】
Vκ1配列の別の例と、Vκ2配列、Vκ3配列、Vκ4配列の例は、Knappik 他、J. Mol. Biol. 第296巻(2000年)57~86ページに見いだすことができる。
【0093】
適切なVλFR4は、配列番号62~配列番号68に記載されている。好ましい一実施態様では、VλFR4は、配列番号62または63に記載されており、より好ましくは、VλFR4は配列番号62に記載されている。一実施態様では、本発明により、CD137(例えばヒトCD137タンパク質)に特異的に結合する単離された抗体として、配列番号62~配列番号68から選択されたいずれか1つのアミノ酸配列(好ましくは配列番号62または63から選択されたアミノ酸配列、より好ましくは配列番号62のアミノ酸配列)と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%同一性を有するアミノ酸配列を含むVλFR4を含む抗体が提供される。
【0094】
一実施態様では、ヒトCD137に対する結合特異性を持つ本発明の抗体に含まれるのは、
(i)a.配列番号1のHCDR1配列、配列番号2のHCDR2配列、配列番号3のHCDR3配列と、配列番号18のLCDR1配列、配列番号19のLCDR2配列、配列番号20のLCDR3配列;または
b.配列番号36のHCDR1配列、配列番号37のHCDR2配列、配列番号38のHCDR3配列と、配列番号49のLCDR1配列、配列番号50のLCDR2配列、配列番号51のLCDR3配列と;
(ii)VH3ドメインまたはVH4ドメインのフレームワーク配列FR1~FR4(好ましくはVH3ドメインのフレームワーク配列FR1~FR4)と;
(iii)VκフレームワークFR1、FR2、FR3(特にVκ1フレームワークFR1~FR3またはVκ3フレームワークFR1~FR3、好ましくはVκ1フレームワークFR1~FR3)と、フレームワークFR4(その選択は、VκFR4から、特にVκ1FR4、Vκ3FR4、VλFR4から、特に配列番号62~配列番号68から選択されたいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%同一性を有するアミノ酸配列を含むVλFR4から、さらに特定するならば配列番号62~配列番号68から選択されたいずれか1つのアミノ酸配列を含むVλFR4からなされ、好ましくは配列番号62のアミノ酸配列を含むVλFR4である)を含むVLフレームワークを含むVLドメインである。
【0095】
一実施態様では、本発明により、ヒトCD137に対する結合特異性を持つ抗体として、
(i)a.配列番号4のHCDR1配列、配列番号6のHCDR2配列、配列番号7のHCDR3配列と、配列番号21のLCDR1配列、配列番号22のLCDR2配列、配列番号23のLCDR3配列;または
b.配列番号5のHCDR1配列、配列番号6のHCDR2配列、配列番号7のHCDR3配列と、配列番号21のLCDR1配列、配列番号22のLCDR2配列、配列番号23のLCDR3配列;または
c.配列番号39のHCDR1配列、配列番号40のHCDR2配列、配列番号41のHCDR3配列と、配列番号52のLCDR1配列、配列番号53のLCDR2配列、配列番号54のLCDR3配列と;
(ii)VH3ドメインまたはVH4ドメインのフレームワーク配列FR1~FR4(好ましくはVH4ドメインのフレームワーク配列FR1~FR4、より好ましくはVH3ドメインのフレームワーク配列FR1~FR4)と;
(iii)VκフレームワークFR1、FR2、FR3(特にVκ1フレームワークFR1~FR3またはVκ3フレームワークFR1~FR3、好ましくはVκ1フレームワークFR1~FR3)と、フレームワークFR4(その選択は、VκFR4から、特にVκ1FR4、Vκ3FR4、VλFR4から、特に配列番号62~配列番号68から選択されたいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%同一性を有するアミノ酸配列を含むVλFR4から、さらに特定するならば配列番号62~配列番号68から選択されたいずれか1つのアミノ酸配列を含むVλFR4からなされ、好ましくは配列番号62のアミノ酸配列を含むVλFR4である)を含むVLフレームワークを含むVLドメインを含む抗体が提供される。
【0096】
一実施態様では、本発明により、ヒトCD137に対する結合特異性を持つ抗体として、
(i)CDRドメインCDR1、CDR2、CDR3と;
(ii)ヒトVκフレームワーク領域FR1~FR3(特にヒトVκ1フレームワーク領域FR1~FR3)と;
(iii)(a)FR4のためのヒトVλ生殖系列配列(特に配列番号62~配列番号68のリストから選択されたVλ生殖系列配列、好ましくは配列番号62)と、(b)Vλに基づく配列であって、配列番号62~配列番号68から選択されたいずれか1つのアミノ酸配列(好ましくは配列番号62のアミノ酸配列)を含むFR4のための最も近いヒトVλ生殖系列配列と比べて1個または2個の変異(特に1個の変異)を有する配列から選択されたFR4を含む抗体が提供される。
【0097】
好ましい一実施態様では、本発明により、ヒトCD137に対する結合特異性を持つ抗体として、
(i)a.配列番号4のHCDR1配列、配列番号6のHCDR2配列、配列番号7のHCDR3配列と、配列番号21のLCDR1配列、配列番号22のLCDR2配列、配列番号23のLCDR3配列;または
b.配列番号5のHCDR1配列、配列番号6のHCDR2配列、配列番号7のHCDR3配列と、配列番号21のLCDR1配列、配列番号22のLCDR2配列、配列番号23のLCDR3配列;または
c.配列番号39のHCDR1配列、配列番号40のHCDR2配列、配列番号41のHCDR3配列と、配列番号52のLCDR1配列、配列番号53のLCDR2配列、配列番号54のLCDR3配列と;
(ii)VH4ドメインのフレームワーク配列と;
(iii)Vκ1フレームワークFR1、FR2、FR3と、配列番号62~配列番号68から選択されたいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%同一性を有するアミノ酸配列を含むVλFR4(特に配列番号62~配列番号68、好ましくは配列番号62に記載されているVλFR4)を含むVLドメインを含む抗体が提供される。
【0098】
より好ましい一実施態様では、本発明により、ヒトCD137に対する結合特異性を持つ抗体として、
(i)配列番号1のHCDR1配列、配列番号2のHCDR2配列、配列番号3のHCDR3配列と、配列番号18のLCDR1配列、配列番号19のLCDR2配列、配列番号20のLCDR3配列と;
(ii)VH3ドメインフレームワーク配列と;
(iii)Vκ1フレームワークFR1、FR2、FR3と、配列番号62~配列番号68から選択されたいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%同一性を有するアミノ酸配列を含むVλFR4(特に配列番号62~配列番号68、好ましくは配列番号62に記載されているVλFR4)を含むVLドメインを含む抗体が提供される。
【0099】
本発明により、CD137(例えばヒトCD137タンパク質)に特異的に結合する単離された抗体として、表1に掲載されているVHドメインを含む抗体が提供される。
【0100】
本発明により、CD137(例えばヒトCD137タンパク質)に特異的に結合する単離された抗体として、表1に掲載されているVHドメインを含むとともに、フレームワーク配列(例えばCDRではない配列)の約10個以下のアミノ酸が変異している(変異の非限定的な例は、付加、置換、欠失である)抗体も提供される。
【0101】
本発明により、CD137(例えばヒトCD137タンパク質)に特異的に結合する単離された抗体として、表1に掲載されているVHドメインを含むとともに、フレームワーク配列(例えばCDRではない配列)の約20個以下のアミノ酸が変異していて(変異の非限定的な例は、付加、置換、欠失である)抗体も提供される。
【0102】
本発明の他の抗体は、変異しているがそれでもCD137に特異的に結合し、そして表1に記載されている配列に示されるVH領域と、VH領域において少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有するアミノ酸を含む。
【0103】
本発明により、CD137(例えばヒトCD137タンパク質)に特異的に結合する単離された抗体として、表1に掲載されているVLドメインを含む抗体が提供される。
【0104】
本発明により、CD137(例えばヒトCD137タンパク質)に特異的に結合する単離された抗体として、表1に掲載されているVLアミノ酸配列を含むとともに、フレームワーク配列(例えばCDRではない配列)の約10個以下のアミノ酸が変異している(変異の非限定的な例は、付加、置換、欠失である)抗体も提供される。
【0105】
本発明により、CD137(例えばヒトCD137タンパク質)に特異的に結合する単離された抗体として、表1に掲載されているVLアミノ酸配列を含むとともに、フレームワーク配列(例えばCDRではない配列)の約20個以下のアミノ酸が変異している(変異の非限定的な例は、付加、置換、欠失である)、も提供される。
【0106】
本発明の他の抗体は、変異しているがそれでもCD137に特異的に結合し、表1に記載されている配列に示されるVL領域と、VL領域において少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有する、アミノ酸を含む。
【0107】
本発明により、CD137に特異的に結合する単離された抗体として、配列番号14、15、16、17、48からなる群から選択されたアミノ酸配列(好ましくは配列番号17のアミノ酸配列)と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と;配列番号27、28、29、30、58からなる群から選択されたアミノ酸配列(好ましくは配列番号30のアミノ酸配列)と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体が提供される。
【0108】
一実施態様では、ヒトCD137に対する結合特異性を有する本発明の抗体は、配列番号14、15、16、17、48からなる群から選択されたアミノ酸配列(好ましくは配列番号17のアミノ酸配列)を含む重鎖可変領域と;配列番号27、28、29、30、58からなる群から選択されたアミノ酸配列(好ましくは配列番号30のアミノ酸配列)を含む軽鎖可変領域を含んでいる。
【0109】
一実施態様では、ヒトCD137に対する結合特異性を有する本発明の抗体に含まれるのは、
(a)配列番号4のHCDR1配列、配列番号6のHCDR2配列、配列番号7のHCDR3配列と、配列番号21のLCDR1配列、配列番号22のLCDR2配列、配列番号23のLCDR3配列と、配列番号14と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含むVH配列と、配列番号27と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含むVL配列;または
(b)配列番号4のHCDR1配列、配列番号6のHCDR2配列、配列番号7のHCDR3配列と、配列番号21のLCDR1配列、配列番号22のLCDR2配列、配列番号23のLCDR3配列と、配列番号15と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含むVH配列と、配列番号28と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含むVL配列;または
(c)配列番号5のHCDR1配列、配列番号6のHCDR2配列、配列番号7のHCDR3配列と、配列番号21のLCDR1配列、配列番号22のLCDR2配列、配列番号23のLCDR3配列と、配列番号16と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含むVH配列と、配列番号29と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含むVL配列;または
(d)配列番号39のHCDR1配列、配列番号40のHCDR2配列、配列番号41のHCDR3配列と、配列番号52のLCDR1配列、配列番号53のLCDR2配列、配列番号54のLCDR3配列と、配列番号48と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含むVH配列と、配列番号58と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含むVL配列である。
【0110】
一実施態様では、ヒトCD137に対する結合特異性を有する本発明の抗体に含まれるのは、
(a)配列番号1のHCDR1配列、配列番号2のHCDR2配列、配列番号3のHCDR3配列と、配列番号18のLCDR1配列、配列番号19のLCDR2配列、配列番号20のLCDR3配列と、配列番号14と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むVH配列と、配列番号27と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むVL配列;または
(b)配列番号1のHCDR1配列、配列番号2のHCDR2配列、配列番号3のHCDR3配列と、配列番号18のLCDR1配列、配列番号19のLCDR2配列、配列番号20のLCDR3配列と、配列番号15と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むVH配列と、配列番号28と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むVL配列;または
(c)配列番号1のHCDR1配列、配列番号2のHCDR2配列、配列番号3のHCDR3配列と、配列番号18のLCDR1配列、配列番号19のLCDR2配列、配列番号20のLCDR3配列と、配列番号16と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むVH配列と、配列番号29と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むVL配列;または
(d)配列番号1のHCDR1配列、配列番号2のHCDR2配列、配列番号3のHCDR3配列と、配列番号18のLCDR1配列、配列番号19のLCDR2配列、配列番号20のLCDR3配列と、配列番号17と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むVH配列と、配列番号30と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むVL配列(ただしVH配列はG51C変異(AHo番号づけ)を含み、VL配列はT141C変異(AHo番号づけ)を含んでいることが好ましい);または
(e)配列番号36のHCDR1配列、配列番号37のHCDR2配列、配列番号38のHCDR3配列と、配列番号49のLCDR1配列、配列番号50のLCDR2配列、配列番号51のLCDR3配列と、配列番号48と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むVH配列と、配列番号58と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むVL配列である。
【0111】
好ましい一実施態様では、ヒトCD137に対する結合特異性を有する本発明の抗体は、配列番号1のHCDR1配列、配列番号2のHCDR2配列、配列番号3のHCDR3配列と、配列番号18のLCDR1配列、配列番号19のLCDR2配列、配列番号20のLCDR3配列と、配列番号17と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むVH配列と、配列番号30と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むVL配列を含むとともに、好ましくは、VH配列はG51C変異(AHo番号づけ)を含み、VL配列はT141C変異(AHo番号づけ)を含んでいる。本発明のこの抗体が変異してフレームワーク領域の中に人工的なドメイン間ジスルフィド架橋を形成し、特にシステインのペアが、VH上のGly 51(AHo番号づけ)およびVL上のThr 141(AHo番号づけ)と置き換わっていることが好適である。驚くべきことに、ドメイン間ジスルフィド架橋を含む本発明のこのような抗体は、熱安定性が顕著に増大していることが見いだされた。
【0112】
ジスルフィド架橋(「S-S架橋」または「diS」)に関する「人工的な」という用語は、S-S架橋が野生型抗体によって自然に形成されることはなく、親分子を操作した変異体によって形成されて、少なくとも1個の外来アミノ酸がそのジスルフィド架橋に寄与していることを意味する。部位特異的操作による人工的なジスルフィド架橋は、自然の免疫グロブリンまたはモジュール式抗体で自然に利用できるジスルフィド架橋(例えばWO 2009/000006A1に記載されているジスルフィド架橋)とは明らかに異なっている。なぜなら人工的なジスルフィド架橋の架橋支柱の部位の少なくとも1つは、典型的には野生型抗体のCys残基の位置の横に位置するため、フレームワーク領域の中に、別のジスルフィド架橋、または追加のジスルフィド架橋を提供するからである。本発明の人工的なジスルフィド架橋は、抗体のドメイン内で操作して(「ドメイン内架橋」)、βシート構造を安定化させること、またはドメイン同士を架橋して(「ドメイン間架橋」)、またはドメインの鎖同士を架橋して(「鎖間架橋」)、本発明による多重特異性抗体の構造を拘束し、結合する可能性のあるパートナーとの相互作用をサポートすることができると考えられる。
【0113】
別の一実施態様では、ヒトCD137に対する結合特異性を有する本発明の単離された抗体は、(a)配列番号14のVH配列と、配列番号27のVL配列;または(b)配列番号15のVH配列と、配列番号28のVL配列;または(c)配列番号16のVH配列と、配列番号29のVL配列;または(d)配列番号17のVH配列と、配列番号30のVL配列;または(e)配列番号48のVH配列と、配列番号58のVL配列を含んでいる。好ましい一実施態様では、ヒトCD137に対する結合特異性を有する本発明の単離された抗体は、配列番号17のVH配列と、配列番号30のVL配列を含んでいる。
【0114】
一実施態様では、CD137に特異的に結合する抗体は、表1に記載されている抗体である。一実施態様では、CD137に特異的に結合する抗体は、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号60のいずれかに記載されている。一実施態様では、CD137に特異的に結合する抗体は、配列番号34に記載されている。一実施態様では、CD137に特異的に結合する抗体は、配列番号32または配列番号35に記載されている。好ましい一実施態様では、CD137に特異的に結合する抗体は、配列番号35に記載されている。
【0115】
本発明の他の抗体に含まれるのは、アミノ酸、またはアミノ酸をコードする核酸が、変異しているが、それでも表1に記載されている配列と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または95%同一性を有する抗体である。一実施態様では、抗体は、表1に記載されている配列の中の可変領域と比べたときに可変領域で1個以下、または2個以下、または3個以下、または4個以下、または5個以下のアミノ酸が変異している一方で、実質的に同じ治療活性を保持している変異アミノ酸配列を含んでいる。「実質的に同じ活性」という表現は、本明細書では、親抗体(例えば本発明の抗体、特に表1に記載されている本発明の抗体)で求めた活性の少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも98%、それどころか少なくとも100%、または少なくとも110%、または少なくとも120%、または少なくとも130%、または少なくとも140%、または少なくとも150%、または少なくとも160%、または少なくとも170%、または少なくとも180%、または少なくとも190%(例えば200%まで)の活性と実質的に同じ活性によって示される活性を意味する。
【0116】
これら抗体のそれぞれがCD137に結合でき、抗原結合特異性は主にCDR1領域、CDR2領域、CDR3領域によって提供されるため、VHのCDR1配列、CDR2配列、CDR3配列と、VLのCDR1配列、CDR2配列、CDR3配列を「混合してマッチさせる」ことができる(すなわち、それぞれの抗体が、VHのCDR1配列、CDR2配列、CDR3配列と、VLのCDR1配列、CDR2配列、CDR3配列を含有していて、本発明の他のCDR結合分子を作り出せるはずであるにもかかわらず、異なる抗体からのCDRを混合してマッチさせることができる)。このように「混合してマッチさせた」CD137結合抗体は、本分野で知られている結合アッセイと実施例に記載されている結合アッセイ(例えばELISA)を利用して試験することができる。VH CDR配列を混合してマッチさせるとき、特定の1つのVH配列からのCDR1配列および/またはCDR2配列および/またはCDR3配列を、構造が似たCDR配列で置き換えるべきである。同様に、VL CDR配列を混合してマッチさせるとき、特定の1つのVL配列からのCDR1配列および/またはCDR2配列および/またはCDR3配列を、構造が似たCDR配列で置き換えるべきである。当業者にとって、新規なVH配列とVL配列の創出が、VH CDR領域および/またはVL CDR領域の1つ以上の配列を、本発明のモノクローナル抗体について本明細書に示されているCDR配列からの構造が似た配列を用いて変異させることによって可能になることは明らかであろう。
【0117】
さらに別の一実施態様では、本発明により、表1に記載されている配列と相同なアミノ酸配列を含んでいて、CD137に結合するとともに、表1に記載されている抗体の望む機能的特性を保持している抗体が提供される。
【0118】
例えば本発明により、重鎖可変領域と軽鎖可変領域を含む単離されたモノクローナル抗体として、重鎖可変領域が、配列番号14、15、16、17、48からなる群から選択された1つのアミノ酸配列(好ましくは配列番号17のアミノ酸配列)と少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含み;軽鎖可変領域が、配列番号27、28、29、30、58からなる群から選択された1つのアミノ酸配列(好ましくは配列番号30のアミノ酸配列)と少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含んでいて、ヒトCD137タンパク質に特異的に結合する抗体が提供される。
【0119】
一実施態様では、VHおよび/またはVLのアミノ酸配列は、表1に記載されている配列と50%、または60%、または70%、または80%、または90%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一であり得る。一実施態様では、VHおよび/またはVLのアミノ酸配列は、1個以下、または2個以下、または3個以下、または4個以下、または5個以下のアミノ酸位置のアミノ酸置換を除いて同一であり得る。
【0120】
一実施態様では、本発明の抗体は、CDR1配列、CDR2配列、CDR3配列を含む重鎖可変領域と、CDR1配列、CDR2配列、CDR3配列を含む軽鎖可変領域を持ち、これらCDR配列の1つ以上は、本明細書に記載されている抗体に基づく特定のアミノ酸配列、またはその保存的変更配列を持ち、この抗体は、本発明のCD137結合抗体の望ましい機能的特性を保持している。
【0121】
「保存的変更がなされたバリアント」または「保存的バリアント」という用語は、アミノ酸配列と核酸配列の両方に適用される。個々の核酸配列に関し、保存的変更がなされたバリアントは、同じアミノ酸配列または実質的に同じアミノ酸配列をコードしている核酸を意味する。あるいはその核酸がアミノ酸をコードしていない場合には、実質的に同じ配列を意味する。遺伝暗号は縮重しているため、どのタンパク質も、機能が同じ多数の核酸によってコードされる。例えばコドンGCA、GCC、GCG 、GCUはすべて、アラニンというアミノ酸をコードしている。したがって1つのコドンによってアラニンが指定されるすべての位置で、コードされるポリペプチドを変化させることなく、このコドンを、記載されている任意の対応するコドンに変えることができる。このような核酸バリエーションは「サイレントバリエーション」であり、保存的変更がなされたバリエーションの一種である。1つのポリペプチドをコードする本明細書のそれぞれの核酸配列は、その核酸の可能なあらゆるサイレントバリエーションも記述している。当業者は、核酸内の各コドン(通常はメチオニンのための唯一のコドンであるAUGと、通常はトリプトファンのための唯一のコドンであるTGGは除く)を変更して機能が同じ分子を生成させることが可能であることを認識しているであろう。したがって1つのポリペプチドをコードする核酸の各サイレントバリエーションは、記載されている各配列に暗黙に含まれている。
【0122】
ポリペプチド配列については、「保存的変更がなされたバリアント」または「保存的バリアント」に、ポリペプチド配列に対する個々の置換、欠失、付加が含まれ、その結果としてアミノ酸が化学的に似たアミノ酸で置換される。機能が似たアミノ酸を示す保存的置換の表は、本分野では周知である。このような保存的変更がなされたバリアントは、本発明の多型バリアント、種間相同体、アレルに追加されるものであり、これらが除外されることはない。以下の8つの群には、互いに保存的な置換となるアミノ酸が含まれている:1)アラニン(A)、グリシン(G);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リシン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);7)セリン(S)、トレオニン(T);8)システイン(C)、メチオニン(M)(例えばCreighton、『Proteins』(1984年)を参照されたい)。一実施態様では、「保存的配列変更」という用語は、そのアミノ酸配列を含有する抗体の結合特性に顕著な影響を与えないか、その結合特性を顕著に変化させないアミノ酸の変更を意味する。
【0123】
したがって本発明により、CDR1配列、CDR2配列、CDR3配列を含む重鎖可変領域と、CDR1配列、CDR2配列、CDR3配列を含む軽鎖可変領域を含むか、この重鎖可変領域とこの軽鎖可変領域からなる単離されたモノクローナル抗体として、
重鎖可変領域CDR1配列が、配列番号1、4、5、8、11、36、39、42、45から選択されたいずれか1つのアミノ酸配列(好ましくは配列番号1のアミノ酸配列)またはその保存的バリアントを含み(好ましくはそのアミノ酸配列またはその保存的バリアントからなり);重鎖可変領域CDR2配列が、配列番号2、6、9、12、37、40、43、46から選択されたいずれか1つのアミノ酸配列(好ましくは配列番号2のアミノ酸配列)またはその保存的バリアントを含み(好ましくはそのアミノ酸配列またはその保存的バリアントからなり);重鎖可変領域CDR3配列が、配列番号3、7、10、13、38、41、44、47から選択されたいずれか1つのアミノ酸配列(好ましくは配列番号3のアミノ酸配列)またはその保存的バリアントを含み(好ましくはそのアミノ酸配列その保存的バリアントからなり);
軽鎖可変領域CDR1配列が、配列番号18、21、24、49、52、55から選択されたいずれか1つのアミノ酸配列(好ましくは配列番号18のアミノ酸配列)またはその保存的バリアントを含み(好ましくはそのアミノ酸配列またはその保存的バリアントからなり);軽鎖可変領域CDR2配列が、配列番号19、22、25、50、53、56から選択されたいずれか1つのアミノ酸配列(好ましくは配列番号19のアミノ酸配列)またはその保存的バリアントを含み(好ましくはそのアミノ酸配列またはその保存的バリアントからなり);軽鎖可変領域CDR3配列が、配列番号20、23、26、51、54、57から選択されたいずれか1つのアミノ酸配列(好ましくは配列番号20のアミノ酸配列)またはその保存的バリアントを含み(好ましくはそのアミノ酸配列またはその保存的バリアントからなり);
CD137に特異的に結合するとともに、追加の架橋ありで、またはなしでCD137シグナル伝達の活性化が可能な抗体が提供される。
【0124】
一実施態様では、本発明の抗体は、哺乳動物の細胞の中での発現が最適化されていて、重鎖可変領域と軽鎖可変領域を持ち、これら配列の1つ以上が、本明細書に記載の抗体に基づく特定のアミノ酸配列、またはその保存的変更配列を持ち、この抗体は、本発明のCD137結合抗体の望ましい機能的特性を保持している。したがって本発明により、哺乳動物の細胞中での発現が最適化された単離されたモノクローナル抗体として、重鎖可変領域が、配列番号14、15、16、17、48から選択されたいずれか1つのアミノ酸配列(好ましくは配列番号17のアミノ酸配列)またはその保存的バリアントを含み;軽鎖可変領域が、配列番号27、28、29、30、58から選択されたいずれか1つのアミノ酸配列(好ましくは配列番号30のアミノ酸配列)またはその保存的バリアントを含み;CD137に特異的に結合するとともに、追加の架橋ありで、またはなしでCD137シグナル伝達の活性化が可能な抗体が提供される。
【0125】
一実施態様では、本発明の抗体は、哺乳動物の細胞中での発現が最適化されていて、完全長重鎖配列と完全長軽鎖配列を持ち、これら配列の1つ以上が、本明細書に記載の抗体に基づく特定のアミノ酸配列、またはその保存的変更配列を持ち、この抗体は、本発明のCD137結合抗体の望ましい機能的特性を保持している。
【0126】
本明細書では、「最適化された」という用語は、産生細胞または産生生物(一般に真核細胞、例えばピキア属の細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、ヒト細胞)において好ましいコドンを用いてアミノ酸配列がコードされるよう、ヌクレオチド配列が変更されていることを意味する。最適化されたヌクレオチド配列は、出発ヌクレオチド配列(「親」配列としても知られる)によって元々コードされているアミノ酸配列を完全に、またはできるだけ保持するように操作されている。本明細書の最適化された配列は、哺乳動物の細胞において好ましいコドンとなるように操作されている。しかし他の真核細胞または原核細胞におけるこれらの配列の最適な発現も、本明細書では想定されている。最適化されたヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列も、最適化されていると呼ぶ。
【0127】
別のタイプの可変領域変更は、VHおよび/またはVLのCDR1領域および/またはCDR2領域および/またはCDR3領域の中のアミノ酸残基を変異させて興味ある抗体の1つ以上の結合特性(例えば親和性)を改善することである(「親和性成熟」として知られる)。部位特異的突然変異誘発、またはPCRを媒介とした突然変異誘発を実施して変異を導入し、抗体結合に対する効果、または興味ある他の機能的特性を、本明細書に記載されていて実施例に提示されているインビトロアッセイまたは生体内アッセイで評価することができる。(上記の)保存的変更を導入することができる。変異として、アミノ酸の置換、付加、欠失が可能である。さらに、CDR領域内の典型的には1個以下、または2個以下、または3個以下、または4個以下、または5個以下の残基が、変更される。
【0128】
「親和性成熟した」抗体は、この抗体の1つ以上の可変領域に1つ以上の変更があって、抗原に対するこの抗体の親和性が、このような変更のない親抗体と比べて改善されている抗体である。一実施態様では、親和性成熟した抗体は、標的抗原に対するナノモルの親和性、それどころかピコモルの親和性を有する。親和性成熟した抗体は、本分野で知られている手続きによって作製される。例えばMarksら、Bio/Technology 第10巻:779~783ページ(1992年)は、VHドメインとVLドメインのシャッフリングによる親和性成熟を記載している。超可変領域(HVR)および/またはフレームワークの残基のランダムな突然変異誘発は、例えばBarbas他、Proc Nat. Acad. Sci. USA 第91巻:3809~3813ページ(1994年);Schier他、Gene第169巻:147~155ページ(1995年);Jackson他、J. Immunol. 第154巻(7):3310~3319ページ(1995年);Hawkins他、J. Mol. Biol. 第226巻:889~896ページ(1992年)に記載されている。
【0129】
一実施態様では、本発明の「親和性成熟した」抗体は、I44V変異;F89V変異;Y105F変異を含んでいて、特に配列番号15に従うアミノ酸配列を含むVH4と、A51P変異を含んでいて、特に配列番号28に従うアミノ酸配列を含むVLを含んでいる。
【0130】
別の一実施態様では、本発明の「親和性成熟した」抗体は、V25A変異;I44V変異;V82K変異;F89V変異;Y105F変異を含んでいて、特に配列番号16に従うアミノ酸配列を含むVH4と、I2L変異;A51P変異を含んでいて、特に配列番号29に従うアミノ酸配列を含むVLを含んでいる。
【0131】
本発明の抗体はさらに、改変された抗体を操作するための出発材料として本明細書に示されている1つ以上のVH配列および/またはVL配列を有する抗体を用いて調製することができ、その改変された抗体は、出発抗体から変化した特性を持っていてもよい。一方または両方の可変領域(すなわちVHおよび/またはVL)の中(例えば1つ以上のCDR領域および/または1つ以上のフレームワーク領域の中)の1つ以上の残基を改変することによって抗体を操作することができる。それに加え、またはその代わりに、定常領域の中の残基を改変することによって抗体を操作し、例えば抗体のエフェクタ機能を変化させることができる。
【0132】
実施できる可変領域操作の1つのタイプは、CDR移植である。抗体は、主に重鎖と軽鎖の6つの相補性決定領域(CDR)の中に位置するアミノ酸残基を通じて標的抗原と相互作用する。それが理由で、CDR内のアミノ酸配列は、CDRの外部の配列よりも個々の抗体間の多様性が大きい。CDR配列は大半の抗体-抗原相互作用を担っているため、特定の天然抗体からのCDR配列を、異なる特性を持つ異なる抗体からのフレームワーク配列に移植された状態で含む発現ベクターを構成することにより、その特定の天然抗体の特性を模倣した組み換え抗体を発現させることが可能である(例えばRiechmann, L. 他、1998年Nature第332巻:323~327ページ;Jones, P. 他、1986年Nature第321巻:522~525ページ;Queen, C.他、1989年 Proc. Natl. Acad. U.S.A. 第86巻:10029~10033ページ;Winterに付与されたアメリカ合衆国特許第5,225,539号、Queenらに付与されたアメリカ合衆国特許第5,530,101号;第5,585,089号;第5,693,762号;第6,180,370号を参照されたい)。
【0133】
このようなフレームワーク配列は、生殖系列の抗体遺伝子配列または再構成された抗体配列を含む公開DNAデータベースまたは公開された参考文献から取得することができる。例えばヒトの重鎖と軽鎖の可変領域遺伝子に関する生殖系列DNA配列は、「VBase」ヒト生殖系列配列データベース(www.mrc-cpe.cam.ac.uk/vbase)のほか、Kabat, E. A.他、1991年「Sequences of Proteins of Immunological Interest」第5版、アメリカ合衆国保健福祉省、NIH Publication第91-3242号;Tomlinson, I. M.他、1992年 J. fol. Biol. 第227巻:776~798ページ;Cox, J. P. L.他、1994年 Eur. J Immunol. 第24巻:827~836ページに見いだすことができる(それぞれの内容は、参照によって本明細書に明示的に組み込まれている)。例えばヒトの重鎖と軽鎖の可変領域遺伝子に関する生殖系列DNA配列と再構成された抗体配列は、「IMGT」データベース(www.imgt.org;Lefranc, M.P.他、1999年 Nucleic Acids Res. 第27巻:209~212ページを参照されたい;それぞれの内容は、参照によって本明細書に明示的に組み込まれている)に見いだすことができる。
【0134】
本発明の抗体で利用するためのフレームワーク配列の一例は、本発明の選択された抗体によって用いられるフレームワーク配列(例えば本発明のモノクローナル抗体によって用いられるコンセンサス配列および/またはフレームワーク配列)と構造が似た配列である。VHのCDR1配列、CDR2配列、CDR3配列と、VLのCDR1配列、CDR2配列、CDR3配列を、フレームワーク領域の出所となる生殖系列免疫グロブリン遺伝子に見られるのと同じ配列を持つフレームワーク領域に移植すること、またはCDR配列を、生殖系列配列と比べて1つ以上の変異を含有するフレームワーク領域に移植することができる。例えばいくつかの場合には、フレームワーク領域の中の残基を変異させて抗体の抗原結合能力を維持または増強すると有益であることが見いだされている(例えばQueenらに付与されたアメリカ合衆国特許第5,530,101号;第5,585,089号;第5,693,762号;第6,180,370号を参照されたい)。
【0135】
得られるポリペプチドが、CD137に特異的に結合する少なくとも1つの結合領域を含んでいる限り、多彩な抗体/免疫グロブリンのフレームワークまたは足場を利用することができる。このようなフレームワークまたは足場は、ヒト免疫グロブリンの5つの主要なイディオタイプと、その抗原結合フラグメントを含むとともに、他の動物種の(好ましくはヒト化された側面を持つ)免疫グロブリンを含んでいる。
【0136】
1つの側面では、本発明は、非免疫グロブリン足場として、その表面に本発明のCDRを移植できるものを用い、非免疫グロブリンに基づく抗体を作製する方法に関する。既知の、または将来の非免疫グロブリンフレームワークまたは非免疫グロブリン足場が、標的CD137タンパク質に対して特異的な結合領域を含んでいる限り、そのフレームワークまたは足場を用いることができる。既知の非免疫グロブリンフレームワークまたは非免疫グロブリン足場の非限定的な例に含まれるのは、フィブロネクチン(Compound Therapeutics, Inc.社、ウォルサム、マサチューセッツ州)、アンキリン(Molecular Partners AG社、チューリヒ、スイス国)、リポカリン(Pieris Proteolab AG社、フライシンク、ドイツ国)、小型モジュール式免疫薬(Trubion Pharmaceuticals Inc.社、シアトル、ワシントン州)、マキシボディ(Avidia, Inc.社、マウンテン・ヴュー、カリフォルニア州)、プロテインA(Affibody AG社、スウェーデン国)、アフィリン(γ-クリスタリンまたはユビキチン)(Scil Proteins GmbH社、ハレ、ドイツ国)である。
【0137】
本発明の抗体は、CD137に特異的に結合して、以下に示すパラメータの1つ以上を特徴とすることが好適である:
(i)特に表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定するとき、ヒトCD137に50 nM未満、特に5 nM未満、特に1 nM未満、特に500 pM未満の解離定数(KD)で結合し、scFvである抗体;および/または
(ii)SPRによって測定するとき、ヒトCD137に10-3-1以下、または10-4-1以下、または10-5-1以下のKoff速度で結合する抗体; および/または
(iii)SPRによって測定するとき、ヒトCD137に少なくとも104 M-1-1以上、または少なくとも105 M-1-1以上、または少なくとも106 M-1-1以上のKon速度で結合する抗体; および/または
(iv)場合によっては、ウレルマブおよび/またはウトリムマブと交差競合しない抗体;および/または
(v)Macaca fascicularis(カニクイザル)CD137と交差反応性であり、SPRによって測定するとき、特にカニクイザルPDL1と15 nM未満、特に10 nM未満、特に5 nM未満のKDで結合し、特にscFvである抗体;および/または
(vi)特にSPRによって測定するとき、ヒトCD40および/またはヒトOX40に結合しない抗体;
(vii)場合によっては、特に競合ELISAによって測定するとき、CD137とそのリガンドCD137Lの間の相互作用を抑制しない抗体。
【0138】
本明細書では、「親和性」という用語は、単一の抗原部位における抗体と抗原の間の相互作用の強さを意味する。各抗原部位の中で、抗体の「アーム」の可変領域は、弱い非共有結合力を通じて抗原と多数の部位で相互作用する。その相互作用が多いほど親和性は強くなる。
【0139】
「結合親和性」は、一般に、分子(例えば抗体)の単一の結合部位と、対応する結合パートナー(例えば抗原)の間の非共有結合相互作用を合計した強さを意味する。特に断わらない限り、本明細書では、「結合親和性」、「に結合する」、「に結合している」は、結合しているペアのメンバー(例えば抗体フラグメントと抗原)の間の1:1相互作用を反映した固有の結合親和性を意味する。分子Xの対応するパートナーYに対する親和性は、一般に、解離定数(KD)によって表わすことができる。親和性は、本分野で知られている一般的な方法によって測定することができ、その方法には本明細書に記載されているものが含まれる。低親和性抗体は一般に抗原にゆっくりと結合し、容易に解離する傾向があるのに対し、高親和性抗体は一般に抗原により速く結合し、より長く結合したままである傾向がある。結合親和性を測定する多彩な方法が本分野で知られており、そのうちの任意の方法を本発明の目的で用いることができる。結合親和性(すなわち結合強度)を測定するための具体的かつ代表的な実施態様は以下に記載されている。
【0140】
「Kassoc」、「Ka」、「Kon」という記号は、本明細書では、特定の抗体-抗原相互作用の会合速度を意味するのに対し、「Kdis」、「Kd」、「Koff」という記号は、本明細書では、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度を意味する。一実施態様では、「KD」という記号は、本明細書では解離定数を意味し、Kaに対するKdの比、すなわちKd/Kaから得られ、モル濃度(M)として表わされる。本発明による「KD」、「KD値」、または「KD」、「KD値」は、一実施態様では、MASS-1 SPR装置(Sierra Sensors社)を用いた表面プラズモン共鳴アッセイを利用して測定される。親和性を測定するため、ウサギIgG(Bethyl Laboratories社、カタログ番号A120-111A)のFc領域に対して特異的な抗体を、標準的なアミンカップリング手続きを利用してセンサーチップ(SPR-2 Affinity Sensor、High Capacity Amine、Sierra Sensors社)の表面に固定化する。固定化された抗ウサギIgG抗体を用いてB細胞上清の中のウサギモノクローナル抗体を捕獲する。十分な捕獲が可能であるためには、B細胞上清の中に必要とされるIgG濃度の最小値がある。モノクローナル抗体を捕獲した後、ヒトCD137 ECD(Peprotech社、カタログ番号310-15-1MG)をフローセルの中に90 nMの濃度で3分間注入し、センサーチップの表面に捕獲されたIgGからタンパク質を5分間にわたって解離させた。各注入サイクルの後、10 mMのグリシン-HClを2回注入して表面を再生させる。1:1ラングミュア結合モデルを用いてMASS-1解析ソフトウエア(Analyzer、Sierra Sensors社)で見かけの解離速度定数(kd)、見かけの会合速度定数(ka)、見かけの解離平衡定数(KD)を計算し、フィットを相対χ2(分析物の外挿最大結合レベルに規格化したχ2)に基づいてモニタする。これが、曲線フィッティングの品質の1つの指標である。χ2の値が小さいほど、1:1ラングミュア結合モデルへのフィッティングがより正確である。結果を有効であると見なすのは、リガンドの結合に関する応答単位(RU)が抗体の捕獲に関するRUの少なくとも2%である場合である。リガンドの結合に関するRUが抗体の捕獲に関するRUの2%未満であるサンプルを、捕獲された抗体にCD137が特異的に結合しないと見なす。平衡解離定数(KD)は、比koff/konとして計算される。例えばChen他、J. Mol. Biol. 第293巻:865~881ページ(1999年)を参照されたい。
【0141】
CD137に対する本発明の抗体の親和性を、CD137に対するCD137Lの親和性と同等にできるか、それよりも大きくできることが好適である。CD137に対する本発明の抗体の親和性を、CD137に対するウレルマブの親和性と同等にできるか、それよりも大きくできることが好適である。CD137抗体がCD137に関して1価の抗体であるとき、その抗体の親和性がより大きいことが、特に使用に適している可能性のあることがわかるであろう。抗体の結合親和性は、例えば解離定数(KD)によって求めることができる。より大きな親和性は、より小さなKDによって表わされ、より小さな親和性は、より大きなKDによって表わされる。
【0142】
したがって適切な一実施態様では、本発明の抗体は、特にSPRによって測定するとき、KDとして、5~50,000 pM、5~40,000 pM、5~30,000 pM、5~20,000 pM、5~10,000 pM、5~5,000 pM、5~2,500 pM、5~1,000 pM、5~750 pM、5~500 pM、5~250 pM、5~100 pM、5~75 pM、5~50 pM、5~30 pMの値を持つことができる。別の一実施態様では、本発明の抗体は、特にSPRによって測定するとき、ヒトCD137に、10 nM~10 pM、好ましくは10 nM~0.1 nM、より好ましくは5 nM~1 nMのKDで結合する。
【0143】
適切な一実施態様では、本発明の抗体は、特にSPRによって測定するとき、KDとして、約50 nM未満、約45 nM未満、または約40 nM未満、約35 nM未満、約30 nM未満、約25 nM未満、約20 nM未満、約15 nM未満、約10 nM未満、約9 nM未満、約8 nM未満、約7 nM未満、約6 nM未満、約5 nM未満、約4 nM未満、約 3 nM未満、約2 nM未満、約1 nM未満、約0.5 nM未満、約0.25 nM未満、約0.1 nM未満、約50 pM未満、約40 pM未満、約30 pM未満、約20 pM未満の値を持つことができる。本発明の抗体は、特にSPRによって測定するとき、10 nM未満のKDを持つことが好適である。本発明の抗体は、特にSPRによって測定するとき、ヒトCD137に5 nM未満のKDで結合することが好ましい。本発明の抗体は、特にSPRによって測定するとき、ヒトCD137に1 nM未満のKDで結合することが好適である。本発明の抗体は、特にSPRによって測定するとき、ヒトCD137に50 pM未満のKDで結合することが好適である。
【0144】
本発明の抗体は、表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定するとき、ヒトCD137に、少なくとも103 M-1-1以上、少なくとも104 M-1-1以上、少なくとも5×104 M-1-1以上、少なくとも105 M-1-1以上、少なくとも5×105 M-1-1以上、少なくとも106 M-1-1以上、少なくとも5×106 M-1-1以上、少なくとも107 M-1-1以上、少なくとも5×107 M-1-1以上のKon速度で結合することが好適である。本発明の抗体は、SPRによって測定するとき、少なくとも104 M-1-1以上、特に少なくとも105 M-1-1以上のKon速度を持つことが好適である。
【0145】
本発明の抗体は、表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定するとき、ヒトCD137に、10-3-1以下、3×10-3-1以下、5×10-3-1以下、10-4-1以下、5×10-4-1以下、10-5-1以下、5×10-5-1以下、10-6-1以下、10-7-1以下のKoffで結合することが好適である。本発明の抗体は、SPRによって測定するとき、10-4-1以下、特に10-5-1以下のKoff速度を持つことが好適である。
【0146】
本発明の抗体は、有益な生物物理学的特性を有することが好適である。
【0147】
本発明の抗体は、特に150 mMのNaCl を含む50 mMのリン酸塩-クエン酸塩バッファー(pH 6.4)の中で調製されたものであり、scFv形式であるとき、差分走査フルオロメトリー(DSF)によって求めた融点(Tm)が、少なくとも50℃、好ましくは少なくとも55℃、より好ましくは少なくとも60℃であることが好適である。DSFは以前に報告されている(Egan他、MAbs、第9巻(1)(2017年)、68~84ページ;Niesen他、Nature Protocols、第2巻(9)(2007年)2212~2221ページ)。scFvコンストラクトが熱変性するための転移温度の中点は、SYPRO(登録商標)Orange蛍光染料を用いた示差走査熱測定によって求められる(WongとRaleigh、Protein Science 第25巻(2016年)1834~1840ページを参照されたい)。リン酸塩-クエン酸塩バッファー(pH 6.4)の中のサンプルを、最終タンパク質濃度50μg/mlで調製する。このサンプルは、全体積100μlの中に最終濃度の5×SYPRO(登録商標)Orangeを含有している。調製したサンプルを25μl、トリプリケートで白壁のAB遺伝子PCRプレートに添加する。熱サイクラーとして用いるqPCR装置の中でアッセイを実施し、蛍光の発光を、ソフトウエアの特製染料較正ルーチンを利用して検出する。試験サンプルを含有するPCRプレートに25℃から96℃までの温度勾配を1℃の増分で適用し、各温度増分の後には30秒間の休止期間を設ける。全アッセイ時間は約2時間である。Tmは、曲線点の屈曲点を計算するための数学的二次微分法を用いてGraphPadソフトウエアによって計算する。報告されたTmは、3つの測定の平均値である。
【0148】
本発明の抗体は、特に150 mMのNaClを含む50 mMのリン酸塩-クエン酸塩バッファー(pH 6.4)の中で調製されたものであり、scFv形式であるとき、出発時の濃度が10 mg/mlだと、4℃で少なくとも2週間、特に少なくとも4週間保管した後に、モノマー含量の損失が5%未満、例えば4%未満、3%未満、2%未満、好ましくは1%未満であることが好適である。本発明の抗体は、特に150 mMのNaClを含む50 mMのリン酸塩-クエン酸塩バッファー(pH 6.4)の中で調製されたものであり、scFv形式であるとき、出発時の濃度が10 mg/mlだと、40℃で少なくとも2週間、特に少なくとも4週間保管した後に、モノマー含量の損失が5%未満、例えば4%未満、3%未満、2%未満、好ましくは1%未満であることが好適である。モノマー含量の損失は、SE-HPLCクロマトグラムで計算した曲線よりも下の面積によって求められる。SE-HPLCは、USPの621章に概説されているように、固定固定相と液体移動相に基づく分離技術である。この方法では、疎水性固定相と水性移動相を利用して分子をそのサイズと形に基づいて分離する。分子の分離は、特定のカラムの排除体積(V0)と全浸透体積(VT)の間で起こる。SE-HPLCによる測定は、サンプルの注入が自動化されていて、検出波長を280 nmに設定したUV検出器を備えたChromaster HPLCシステム(日立ハイテク社)で実施する。この装置は、ソフトウエアEZChrom Elite(Agilent Technologies社、バージョン3.3.2 SP2)によって制御される。このソフトウエアは、得られるクロマトグラムの分析もサポートする。タンパク質サンプルは遠心分離によって分離し、オートサンプラーの中に4~6℃の温度で保管した後に注入する。scFvサンプルを分析するため、カラムShodex KW403-4F(昭和電工社、#F6989202)を、標準化された緩衝化生理食塩水移動相(50 mMのリン酸ナトリウムpH 6.5、300 mMの塩化ナトリウム)を推奨流速0.35 ml/分にして用いる。1回の注入ごとの標的サンプル装填量は5μgであった。サンプルは、UV検出器を用いて280 nmの波長で検出し、データを適切なソフトウエアスイートで記録した。得られたクロマトグラムをV0~VTの範囲で分析することで、溶離時間が10分間よりも長いピークに関係するマトリックスを除外する。
【0149】
一実施態様では、本発明の抗体は、結合に関してウレルマブと交差競合することがない。本発明により、ウレルマブとは異なるエピトープに結合する抗体が提供される。ウレルマブ(BMS-663513とも呼ばれる)は、Bristol-Myers Squibb社からの完全ヒト化IgG4モノクローナル抗体であり、WO 2004/010947、アメリカ合衆国特許第6,887,673号、第7,214,493号に記載されている(これらは、その内容全体が参照によって本出願に組み込まれている)。
【0150】
一実施態様では、本発明の抗体は、結合に関してウトミルマブと交差競合することがない。本発明により、ウトミルマブとは異なるエピトープに結合する抗体が提供される。ウトミルマブ(PF-05082566とも呼ばれる)は、Pfizar社からの完全ヒト化IgG2モノクローナル抗体であり、WO 2012/032433とアメリカ合衆国特許第8,821,867号に記載されている(これらは、その内容全体が参照によって本出願に組み込まれている)。
【0151】
別の一実施態様では、本発明の抗体は、結合に関してウレルマブおよびウトミルマブと交差競合することがない。本発明により、ウレルマブおよびウトミルマブとは異なるエピトープに結合する抗体が提供される。
【0152】
「認識する」という用語は、本明細書では、対応する立体的エピトープを見つけて相互作用する(例えば結合する)抗体を意味する。
【0153】
「競合する」または「交差競合する」と、これらに関係する用語は交換可能であり、本明細書では、標準的な競合結合アッセイにおいて、1つの抗体が、他の抗体または結合剤がCD137に結合するのを邪魔する能力を意味する。
【0154】
1つの抗体またはそれ以外の結合剤が、別の抗体または結合分子がCD137に結合するのを邪魔することのできる能力または程度、したがってそれを本発明に従う交差競合であると言えるかどうかは、標準的な競合結合アッセイを利用して判断することができる。1つの特に適切な定量的交差競合アッセイは、標識した(例えばHisタグを付けた、またはビオチニル化した、または放射性標識をした)抗体またはそのフラグメントと、他の抗体またはそのフラグメントが、標的への結合に関して競合するのを測定するのに、FACSまたはAlphaScreenに基づくアプローチを利用している。一般に、交差競合する抗体またはそのフラグメントは、例えば交差競合アッセイにおいて標的に結合することになる抗体またはそのフラグメントであるため、アッセイの間、第2の抗体またはそのフラグメントの存在下において、本発明による免疫グロブリン単一可変ドメインまたはポリペプチドについて記録される置換は、(例えばFACSに基づく競合アッセイでは)所与の量で存在していて交差競合を阻止する可能性のある試験すべき抗体またはそのフラグメントによる置換(例えば交差競合を阻止する必要がある冷たい(例えば標識のない)抗体またはそのフラグメントによる置換)の理論的最大値の100%までである。交差競合する抗体またはそのフラグメントは、記録される置換が10%~100%であることが好ましく、50%~100%であることがより好ましい。
【0155】
「エピトープ」という用語は、抗体への特異的な結合が可能なタンパク質決定基を意味する。エピトープは、通常は分子の化学的に活性な表面基(アミノ酸や糖側鎖など)からなり、通常は特定の三次元構造特性のほか、特定の帯電特性を有する。「立体的」エピトープと「直線状」エピトープは、前者には結合するが後者には結合しない性質が変性溶媒の存在下で失われることによって識別される。
【0156】
「立体的エピトープ」という用語は、本明細書では、抗原のアミノ酸残基であって、ポリペプチドの鎖が折り畳まれて天然タンパク質を形成するときに表面に集まり、Fabが結合することでHD交換の速度が顕著に低下するアミノ酸残基を意味する。立体的エピトープの非限定的な例に含まれるのは、機能的エピトープである。
【0157】
「直線状エピトープ」は、タンパク質と相互作用分子(抗体など)の間で相互作用するすべての点が、そのタンパク質の一次アミノ酸配列に沿って直線状になる(連続的になる)エピトープを意味する。
【0158】
本発明の抗体は、ウレルマブまたはウトミルマブがCD137タンパク質に結合するのを抑制しない。これは、本発明の抗体が、CD137への結合に関してウレルマブまたはウトミルマブと競合しないことを実証している。このような抗体は、非限定的な理論によれば、CD137上でウレルマブまたはウトミルマブとは異なる(例えば構造が異なる、または空間的に離れている)エピトープに結合する。
【0159】
本発明により、表1に掲載されているCD137結合抗体が結合するのと同じエピトープに結合する抗体も提供される。したがって追加の抗体は、CD137結合アッセイにおいて本発明の他の抗体と交差競合する(例えば統計的に有意に、結合を競合的に抑制する)能力に基づいて同定することができる。
【0160】
本発明の単離された抗体は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、IgG抗体、Fab、Fv、scFv、dsFv、scAb、STAB、および代替足場に基づく結合ドメインであって、アンキリンに基づくドメイン、フィノマー、アビマー、アンチカリン、フィブロネクチン、および抗体の定常領域に組み込まれている結合部位(例えばF-star社のModular Antibody Technology(商標))を含むがこれらに限定されない結合ドメインからなる群から選択されることが好適である。
【0161】
本発明の単離された抗体はFvであることが好適である。本発明の単離された抗体はscFv抗体フラグメントであることが好適である。「一本鎖Fv」または「scFv」または「sFv」抗体フラグメントは、抗体のVHドメインとVLドメインを含んでおり、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖となって存在している。一般にFvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインの間にポリペプチドリンカーをさらに含んでいるため、このsFvは抗原が結合するための望む構造を形成することができる。「一本鎖Fv」または「scFv」抗体フラグメントは、抗体のVHドメインとVLドメインを含んでおり、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖となって存在している。一般にscFvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインの間にポリペプチドリンカーをさらに含んでいるため、このscFvは抗原が結合するための望む構造を形成することができる(例えばPluckthun、『The pharmacology of Monoclonal Antibodies』、第113巻、RosenburgとMoore編(Springer-Verlag社、ニューヨーク、1994年)、269~315ページを参照されたい)。特別な実施態様では、この機能的フラグメントは、配列番号31に従うリンカーを含むscFv形式である。別の一実施態様では、本発明の単離された抗体は、配列番号27、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号60のいずれか(好ましくは配列番号35)に示されている一本鎖フラグメント(scFv)である。一実施態様では、本発明の単離された抗体は、配列番号33に示されている一本鎖フラグメント(scFv)である。一実施態様では、本発明の単離された抗体は、配列番号34に示されている一本鎖フラグメント(scFv)である。好ましい一実施態様では、本発明の単離された抗体は、配列番号35に示されている一本鎖フラグメント(scFv)である。
【0162】
本発明の単離された抗体は、IgG抗体フラグメントであることが好適である。「アイソタイプ」という用語は、重鎖定常領域の遺伝子によって提供される抗体のクラス(例えばIgM、IgE、IgG(IgG1、IgG4など))を意味する。アイソタイプには、これらのクラスのうちの1つの改変バージョンも含まれる。その場合、改変によってFc機能が変化し、例えばエフェクタ機能やFc受容体への結合が、増強または低下している。一実施態様では、本発明の単離された抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4からなる群から選択されたIgG(好ましくはIgG4)である。本発明の単離された抗体は、配列番号4のHCDR1配列、配列番号6のHCDR2配列、配列番号7のHCDR3配列と、配列番号21のLCDR1配列、配列番号22のLCDR2配列、配列番号23のLCDR3配列と、配列番号14と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含むVH配列と、配列番号27と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含むVL配列を含むIgG4であることが好適である。より特別な一実施態様では、本発明の抗体は、配列番号4のHCDR1配列、配列番号6のHCDR2配列、配列番号7のHCDR3配列と、配列番号21のLCDR1配列、配列番号22のLCDR2配列、配列番号23のLCDR3配列と、配列番号89と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含む重鎖配列と、配列番号88と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖配列を含むIgG4である。本発明の単離された抗体は、配列番号1のHCDR1配列、配列番号2のHCDR2配列、配列番号3のHCDR3配列と、配列番号18のLCDR1配列、配列番号19のLCDR2配列、配列番号20のLCDR3配列と、配列番号14と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含むVH配列と、配列番号27と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含むVL配列を含むIgG4であることが好適である。より特別な一実施態様では、本発明の抗体は、配列番号1のHCDR1配列、配列番号2のHCDR2配列、配列番号3のHCDR3配列と、配列番号18のLCDR1配列、配列番号19のLCDR2配列、配列番号20のLCDR3配列と、配列番号89と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含む重鎖配列と、配列番号88と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖配列を含むIgG4である。別の特別な一実施態様では、本発明の単離された抗体は、配列番号1のHCDR1配列、配列番号2のHCDR2配列、配列番号3のHCDR3配列と、配列番号18のLCDR1配列、配列番号19のLCDR2配列、配列番号20のLCDR3配列と、配列番号17と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含むVH配列と、配列番号30と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含むVL配列を含むIgG4である。
【0163】
別の特別な一実施態様では、本発明の単離された抗体は、多重特異性分子であり、特に少なくとも1つの第2の機能性分子を有する多重特異性分子(例えば二重特異性分子、三重特異性分子、四重特異性分子、五重特異性分子、六重特異性分子)である。
【0164】
「多重特異性分子」または「多重特異性抗体」という用語は、本明細書では、少なくとも2つ以上の異なる標的(例えばCD137と、CD137とは異なる別の標的)の表面にある2つ以上の異なるエピトープに結合する抗体、または同じ標的の2つ以上の異なるエピトープに結合する抗体を意味する。「多重特異性分子」という用語には、二重特異性抗体、三重特異性抗体、四重特異性抗体、五重特異性抗体、六重特異性抗体が含まれる。「二重特異性抗体」という用語は、本明細書では、2つの異なる標的に結合する抗体、または同じ標的の表面にある2つの異なるエピトープに結合する抗体を意味する。「三重特異性抗体」という用語は、本明細書では、3つの異なる標的に結合する抗体、または同じ標的の表面にある3つの異なるエピトープに結合する抗体を意味する。
【0165】
本発明の抗体を誘導体にして、または別の機能性分子(例えば別のペプチドまたはタンパク質(例えば受容体のための別の抗体またはリガンド))に連結させて、少なくとも2つの結合部位および/または異なる標的分子に結合する多重特異性分子を作製することができる。実際、本発明の抗体を誘導体にして、または他の2つ以上の機能性分子に連結させて、2つ以上の異なる結合部位および/または標的分子に結合する多重特異性分子を作製することができる。本発明の多重特異性分子を作製するには、本発明の抗体を他の2つ以上の結合分子(別の抗体、抗体フラグメント、ペプチド、結合模倣体など)に(例えば化学的カップリング、遺伝子融合、非共有会合などによって)機能的に連結させ、多重特異性分子を得る。
【0166】
したがって本発明には、CD137に対する少なくとも1つの第1の結合特異性と、第2の標的エピトープに対する第2の結合特異性を有する多重特異性分子が含まれる。例えば第2の標的エピトープは、CD137とは異なる別の標的分子の表面に存在している。
【0167】
2価CD137抗体は、外来性クラスタリングがないとシグナル伝達を誘導する能力が一般に弱いことが示されている。それを具体的に説明すると、抗CD137抗体であるウトミルマブは、抗ヒトF(ab')2二次抗体に架橋したとき、または組織培養プラスチックに固定化されたときだけ、CD137シグナル伝達を活性化することができる(Fisher 他、Cancer Immunol Immunother 第61巻:1721~1733ページ(2012年))。TNFRSFの別のメンバーであるCD40(TNFRSF5)に対する齧歯類アゴニスト抗体での研究は、Fcγ受容体との相互作用を通じて外来性クラスタリングを部分的に実現できることを示唆していた(Li F、Ravetch JV、Science第333巻(6045):1030~10ページ(2011年);White AL他、J Immunol 第187巻(4):1754~1763ページ(2011年))。しかしFcγ受容体との相互作用は、エフェクタ機構を通じてCD137発現細胞を激減させる可能性がある。したがってCD137を標的とする現在の2価抗体は、有効でないアゴニストであるか、CD137陽性細胞を激減させることになる。多重特異性分子の第2の結合特異性が、本発明のCD137結合抗体の追加の架橋を提供できることが好適である。したがって本発明には、CD137に対する少なくとも1つの第1の結合特異性と、第2の標的エピトープに対する第2の結合特異性を有する多重特異性分子が含まれる。例えば第2の標的エピトープは、第1の標的エピトープとは異なるCD137の別のエピトープである。多重特異性分子はさらに、第1と第2の標的エピトープに加えて第3の結合特異性を有することができる。
【0168】
別の一実施態様では、本発明には、CD137特異性に関して1価、または2価、または多価の多重特異性分子が含まれるが、好ましいのは1価である。
【0169】
本発明の別の特別な一実施態様では、本発明の単離された抗体は、CD137特異性に関して1価または多価(例えば2価、3価、4価、5価、6価)の分子である。
【0170】
「1価分子」または「1価抗体」という用語は、本明細書では、標的分子(CD137など)の表面にある単一のエピトープに結合する抗体を意味する。
【0171】
「多価抗体」という用語は、2以上の価数を持つ単一の結合分子を意味する。「価数」は、同じ標的分子上のエピトープに結合する抗原結合部分の数と説明される。そのため単一の結合分子は、2つ以上の標的分子に結合すること、または複数コピーのエピトープを含有する1つの標的分子上の2つ以上の結合部位に結合することができる。多価抗体の非限定的な例に含まれるのは、2価抗体、3価抗体、4価抗体、5価抗体などである。「2価抗体」という用語は、本明細書では、2つの抗原結合部分を持っていて、そのそれぞれが同じエピトープに結合する抗体を意味する。
【0172】
本発明の単離された抗体は、CD137特異性分子に関して多重特異性分子(例えば二重特異性分子)および/または多価分子(例えばCD137特異性に関して1価の分子、CD137特異性に関して2価の分子)であることが好適であり、本分野で知られている適切な任意の多重特異性(例えば二重特異性)形式から選択された抗体形式である。抗体形式の非限定的な例に含まれるのは、一本鎖ディアボディ(scDb)、タンデムscDb(Tandab)、直線状二量体scDb(LD-scDb)、環状二量体scDb(CD-scDb)、二重特異性T細胞エンゲージャ(BiTE;タンデムジ-scFv)、タンデムトリ-scFv、トリボディ(Fab-(scFv)2)またはビボディ(Fab-(scFv)1)、Fab、Fab-Fv2、モリソン(IgG CH3-scFv融合体(モリソン L)またはIgG CL-scFv融合体(モリソン H))、トリアボディ、scDb-scFv、二重特異性Fab2、ジ-ミニ抗体、テトラボディ、scFv-Fc-scFv融合体、scFv-HSA-scFv融合体、ジ-ディアボディ、DVD-Ig、COVD、IgG-scFab、scFab-dsscFv、Fv2-Fc、IgG-scFv融合体(bsAb(軽鎖のC末端に結合したscFv)、Bs1Ab(軽鎖のN末端に結合したscFv)、Bs2Ab(重鎖のN末端に結合したscFv)、Bs3Ab (重鎖のC末端に結合したscFv)、Ts1Ab (重鎖と軽鎖両方のN末端に結合したscFv)、Ts2Ab(重鎖のC末端に結合したdsscFv)など)、へテロ二量体Fcドメインに基づく二重特異性抗体(ノブ-イントゥー-ホール抗体(KiH)(KiH技術によって調製した二重特異性IgG)など);Fv、scFv、scDb、タンデム-ジ-scFv、タンデムトリ-scFv、Fab-(scFv)2、Fab-(scFv)1、Fab、Fab-Fv2、へテロ二量体Fcドメインまたは任意の他のヘテロ二量体化ドメインのどちらかの鎖のN末端および/またはC末端に融合したCOVD、MATCH(WO 2016/0202457;Egan T.他、mAbs第9巻(2017年)68~84ページに記載)、デュオボディ(デュオボディ技術によって調製した二重特異性IgG)(mAbs. 2017年2月/3月;第9巻(2):182~212ページ。doi: 10.1080/19420862.2016.1268307)に基づく形式である。
【0173】
「ディアボディ」という用語は、2つの抗原結合部位を有する抗体フラグメントを意味し、その抗体フラグメントは、同じポリペプチド鎖の中にVLに接続されたVHを含んでいる(VH-VL)。同じ鎖上の2つのドメイン間でペアを形成させるには短すぎるリンカーを用いることにより、これらのドメインを別の鎖の相補的ドメインと強制的にペア形成させて、2つの抗原結合部位を生成させる。特別な実施態様では、このポリペプチドリンカーは、4個のグリシンアミノ酸残基と1個のセリンアミノ酸残基からなる単位を1つまたは2つ含んでいる(GGGGS)n(nは1または2であり、1であることが好ましい)。ディアボディは、2価または二重特異性であることが可能である。ディアボディは、例えばEP404097、WO 93/01161、Hudson他、Nat. Med. 第9巻:129~134ページ(2003年)、Holliger他、Proc. Natl. Acad. Sci. USA第90巻:6444~6448ページ(1993年)に、より完全な記載がある。トリアボディとテトラボディも、Hudson他、Nat. Med. 第9巻:1129~134ページ(2003年)に記載されている。
【0174】
二重特異性scDb(特に二重特異性単量体scDb)は、特に、2つの可変重鎖ドメイン(VH)またはそのフラグメントと、2つの可変重鎖ドメイン(VL)またはそのフラグメントを、リンカーL1、L2、L3によって接続された状態で含んでおり、その順番は、VHA-L1-VLB-L2-VHB-L3-VLA、VHA-L1-VHB-L2-VLB-L3-VLA、VLA-L1-VLB-L2-VHB-L3-VHA、VLA-L1-VHB-L2-VLB-L3-VHA、VHB-L1-VLA-L2-VHA-L3-VLB、VHB-L1-VHA-L2-VLA-L3-VLB、VLB-L1-VLA-L2-VHA-L3-VHB、VLB-L1-VHA-L2-VLA-L3-VHBである。これらの中のVLAドメインとVHAドメインは、合わさって第1の抗原のための抗原結合部位を形成し、VLBドメインとVHBドメインは、合わさって第2の抗原のための抗原結合部位を形成する。
【0175】
リンカーL1は、詳細にはアミノ酸が2~10個のペプチド、より詳細にはアミノ酸が3~7個のペプチド、最も詳細にはアミノ酸が5個のペプチドであり、リンカーL3は、詳細にはアミノ酸が1~10個のペプチド、より詳細にはアミノ酸が2~7個のペプチド、最も詳細にはアミノ酸が5個のペプチドである。特別な実施態様では、リンカーL1および/またはL3は、4個のグリシンアミノ酸残基と1個のセリンアミノ酸残基からなる単位を1つ以上含んでいる(GGGGS)n(nは1または2であり、nは1であることが好ましい)。
【0176】
中央のリンカーL2は、詳細にはアミノ酸が10~40個のペプチド、より詳細にはアミノ酸が15~30個のペプチド、最も詳細にはアミノ酸が20~25個のペプチドである。特別な実施態様では、リンカーL2は、4個のグリシンアミノ酸残基と1個のセリンアミノ酸残基からなる単位を1つ以上含んでいる(GGGGS)n(nは1、2、3、4、5、6、7、8のいずれかであり、nは4であることが好ましい)。
【0177】
本発明の一実施態様では、単離された抗体は、scDb-scFv形式の多重特異性抗体および/または多価抗体である。「scDb-scFv」という記号は、抗体の1つの形式を意味し、一本鎖Fv(scFv)フラグメントが可撓性Gly-Serリンカーによって一本鎖ディアボディ(scDb)に融合している。一実施態様では、この可撓性Gly-Serリンカーは、アミノ酸が2~40個(例えばアミノ酸が2~35個、2~30個、2~25個、2~20個、2~15個、2~10個、その中でも特にアミノ酸が10個)のペプチドである。特別な実施態様では、このリンカーは、4個のグリシンアミノ酸残基と1個のセリンアミノ酸残基からなる単位を1つ以上含んでいる(GGGGS)n(nは1、2、3、4、5、6、7、8のいずれかであり、nは2であることが好ましい)。
【0178】
本発明の一実施態様では、単離された抗体は、WO 2016/0202457;Egan T.他、mAbs 第9巻(2017年)68~84ページに記載されているMATCH形式の多重特異性抗体および/または多価抗体である。
【0179】
本発明の多重特異性分子および/または多価分子は、本分野で知られている従来からの任意の抗体作製法を利用して作製することができる(例えば二重特異性コンストラクトに関しては、Fischer, N.とLeger, O.、Pathobiology第74巻(2007年)3~14ページを;二重特異性ディアボディに関しては、Hornig, N.とFarber-Schwarz, A.、Methods Mol. Biol. 第907巻(2012年)713~727ページ、WO 99/57150を参照されたい)。本発明の二重特異性コンストラクトを調製する適切な方法のさらに別の具体例に含まれるのは、特に、Genmab技術(Labrijn他、Proc. Natl. Acad. Sci. USA第110巻(2013年)5145~5150ページを参照されたい)と、Merus技術(de Kruif 他、Biotechnol. Bioeng. 第106巻(2010年)741~750ページを参照されたい)である。機能性抗体Fc部を含む二重特異性抗体を作製する方法も本分野で知られている(例えばZhu他、Cancer Lett. 第86巻(1994年)127~134ページ);Suresh他、Methods Enzymol. 第121巻(1986年)210~228ページを参照されたい)。
【0180】
本発明の多重特異性分子と多価分子で使用できる他の抗体は、マウスモノクローナル抗体、キメラモノクローナル抗体、ヒト化モノクローナル抗体である。
【0181】
本発明の多重特異性分子は、構成要素である複数の結合特異性分子を本分野で知られている方法を利用して結合させることによって調製できる。例えば二重特異性分子のそれぞれの結合特異性分子を別々に生成させた後、互いに結合させることができる。結合特異性分子がタンパク質またはペプチドであるときには、多彩なカップリング剤または架橋剤を用いて共有結合させることができる。架橋剤の例に含まれるのは、プロテインA、カルボジイミド、S-アセチル-チオ酢酸N-スクシンイミジル(SATA)、5,5'-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)(DTNB)、o-フェニレンジマレイミド(oPDM)、3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸N-スクシンイミジル(SPDP)、4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボン酸スルホスクシンイミジル(スルホ-SMCC)である(例えばKarpovsky他、1984年 J. Exp. Med. 第160巻:1686ページ;Liu, M A他、1985年 Proc. Natl. Acad. Sci. USA第82巻:8648ページを参照されたい)。他の方法に含まれるのは、Paulus、1985年 Behring Ins. Mitt. 第78号、118~132ページ;Brennan他、1985年 Science第229巻:81~83ページ;Glennie他、1987年 J. Immunol. 第139巻:2367~2375ページに記載されている方法である。結合剤はSATAとスルホ-SMCCであり、両方ともPierce Chemical Co.社(ロックフォード、イリノイ州)から入手できる。
【0182】
結合特異性分子が抗体であるときには、それらの抗体を2本の重鎖のC末端ヒンジ領域のスルフヒドリル結合によって結合させることができる。特別な一実施態様では、ヒンジ領域を改変して奇数個(例えば1個)のスルフヒドリル残基が含まれるようにした後に結合させる。
【0183】
あるいは2個以上の結合特異性分子を同じベクターの中にコードし、同じ宿主細胞の中で組み立てて発現させることができる。この方法は、二重特異性分子が、mAb×mAb、mAb×Fab、Fab×F(ab')2、リガンド×Fab融合タンパク質のいずれかである場合に特に有用である。本発明の多重特異性分子として、1つの一本鎖抗体と1つの結合決定基を含む一本鎖分子、または2つの結合決定基を含む一本鎖多重特異性分子が可能である。多重特異性分子は、少なくとも2つの一本鎖分子を含むことができる。多重特異性分子を調製する方法は、例えばアメリカ合衆国特許第5,260,203号;第5,455,030号;第4,881,175号;第5,132,405号;第5,091,513号;第5,476,786号;第5,013,653号;第5,258,498号;第No. 5,482,858号に記載されている。
【0184】
二重特異性分子が対応する特異的標的に結合したことは、例えば酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(REA)、FACS分析、バイオアッセイ(例えば増殖抑制)、ウエスタンブロットアッセイのいずれかによって確認することができる。これらアッセイのそれぞれは、一般に、特に興味があるタンパク質-抗体複合体の存在を、興味あるその複合体に特異的な標識した試薬(例えば抗体)を用いて検出する。
【0185】
別の1つの側面では、本発明により、本発明の抗体をコードする核酸が提供される。本発明では、CD137タンパク質に特異的に結合する抗体のCDR、VH、VL、完全長重鎖、完全長軽鎖をコードする核酸配列も提供される。このような核酸配列は、哺乳動物の細胞の中で発現させるために最適化することができる。
【0186】
「核酸」という用語は、本明細書では「ポリヌクレオチド」という用語と交換可能に用いられ、一本鎖または二本鎖の形態になった1つ以上のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドとそのポリマーを意味する。この用語には、既知のヌクレオチド相同体や修飾された骨格残基または連結を含有する合成核酸、天然核酸、非天然核酸が包含され、これらの核酸は、参照核酸と似た結合特性を持ち、参照核酸と同様のやり方で代謝される。このような類似体の非限定的な例に含まれるのは、ホスホロチオエート、ホスホロアミデート、メチルホスホネート、キラル-メチルホスホネート、2-O-メチルリボヌクレオチド、ペプチド-核酸(PNA)である。特に断わらない限り、ある1つの具体的な核酸配列には、保存的修飾がなされたそのバリアント(例えば縮重コドン置換)、相補的な配列のほか、明示的に示されている配列も暗黙に包含される。具体的には、下に詳述するように、縮重したコドン置換は、選択された1つ以上(またはすべて)のコドンの第3位が、混合された塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を生成させることによって実現できる(Batzer他、Nucleic Acid Res. 第19巻:5081ページ、1991年;Ohtsuka他、J. Biol. Chem. 第260巻:2605~2608ページ、1985年;Rossolini他、Mol. Cell. Probes第8巻:91~98ページ、1994年)。
【0187】
本発明により、上記のCD137結合抗体の鎖のセグメントまたはドメインを含むポリペプチドをコードする実質的に精製された核酸分子が提供される。これら核酸分子によってコードされるポリペプチドは、適切な発現ベクターから発現させるとき、CD137抗原への結合能力を示すことができる。
【0188】
本発明では、表1に記載されているCD137結合抗体の重鎖または軽鎖に由来する少なくとも1つのCDR領域(通常は3つのCDR領域すべて)をコードするポリヌクレオチドも提供される。他のいくつかのポリヌクレオチドは、表1に記載されているCD137結合抗体の重鎖および/または軽鎖のすべての可変領域配列、または実質的にすべての可変領域配列をコードしている。暗号は縮重しているため、多彩な核酸配列がそれぞれの免疫グロブリンのアミノ酸配列をコードすることになろう。
【0189】
ポリヌクレオチド配列は、デノボ固相DNA合成によって生成させるか、CD137結合抗体またはその結合フラグメントをコードする既存の配列(例えば下記の実施例に記載されている配列)のPCR突然変異誘発によって生成させることができる。核酸の直接的な化学合成は、本分野で知られている方法によって実現できる。そうした方法の例は、Narang他、1979年、Meth. Enzymol. 第68巻:90ページのホスホトリエステル法;Brown他、Meth. Enzymol. 第68巻:109ページ、1979年のホスホジエステル法;Beaucage他、Tetra. Lett. 第22巻:1859ページ、1981年のジエチルホスホロアミダイト法;アメリカ合衆国特許第4,458,066号の固体支持法である。PCRによってポリヌクレオチド配列に変異を導入することは、例えば『PCR Technology: Principles and Applications for DNA Amplification』、H. A. Erlich(編)、Freeman Press社、ニューヨーク、ニューヨーク州、1992年;『PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications』、Innis 他(編)、Academic Press社、サンディエゴ、カリフォルニア州、1990年;Mattila 他、Nucleic Acids Res. 第19巻:967ページ、1991年;Eckert 他、PCR Methods and Applications第1巻:17ページ、1991年に記載されているようにして実現することができる。
【0190】
本発明では、上記のCD137結合抗体を作製するための発現ベクターと宿主細胞も提供される。
【0191】
「ベクター」という用語は、ポリヌクレオチド分子であって、このポリヌクレオチド分子に結合した別のポリヌクレオチドを運ぶことのできるものを意味する。1つのタイプのベクターは「プラスミド」である。プラスミドは、環状二本鎖DNAループであって、その中に追加のDNAセグメントを連結することのできるものを意味する。別のタイプのベクターはウイルスベクターであり、ウイルスベクターでは追加のDNAセグメントをウイルスゲノムに連結することができる。いくつかのベクター(例えば細菌の複製起点を有する細菌ベクター、エピソーマル哺乳動物ベクター)は、そのベクターが導入された宿主細胞の中で自律的に複製することができる。他のベクター(例えば非エピソーマル哺乳動物ベクター)は、宿主細胞の中に導入されると、その宿主細胞のゲノムへの統合が可能になることで、宿主のゲノムとともに複製される。
【0192】
さらに、いくつかのベクターは、そのベクターに作動可能に連結された遺伝子の発現を指示することができる。そのようなベクターは、本明細書では、「組み換え発現ベクター」(または単に「発現ベクター」)と呼ぶ。一般に、組み換えDNA技術で有用な発現ベクターはプラスミドの形態であることがしばしばある。本明細書では、「プラスミド」と「ベクター」は交換可能に使用することができる。なぜならプラスミドは、最も一般的にはベクターの形態で使用されるからである。しかし本発明は他の形態の発現ベクターも包含することを想定しており、その例は、ウイルスベクター(例えば複製に欠陥があるレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス)である。
【0193】
「作動可能に連結された」という表現は、2つ以上のポリヌクレオチド(例えばDNA)セグメントの間の機能的関係を意味する。典型的には、この表現は、転写調節配列と転写された配列の機能的関係を意味する。例えばプロモータ配列またはエンハンサ配列がコード配列に作動可能に連結されているのは、そのプロモータ配列またはエンハンサ配列が、適切な宿主細胞または他の発現系の中でそのコード配列の転写を刺激または調節する場合である。一般に、転写される配列に作動可能に連結されているプロモータ転写調節配列は、転写されるその配列と物理的に連続している。すなわちシス作用性である。しかしいくつかの転写調節配列(エンハンサなど)は、その配列によって転写が増進されるコード配列と物理的に連続していたり近接した位置にあったりする必要はない。
【0194】
さまざまな発現ベクターを用い、CD137結合抗体の鎖または結合フラグメントをコードするポリヌクレオチドを発現させることができる。ウイルスに基づく発現ベクターと非ウイルス発現ベクターの両方を用いて哺乳動物宿主細胞の中で抗体を産生させることができる。非ウイルスベクターと非ウイルス系に含まれるのは、プラスミド、エピソーマルベクター(典型的にはタンパク質またはRNAを発現させるための発現カセットを有する)、ヒト人工染色体(例えばHarrington他、Nat Genet. 第15巻:345ページ、1997年を参照されたい)である。例えば哺乳動物(例えばヒト)の細胞内でCD137結合ポリヌクレオチドとCD137結合ポリペプチドを発現させるのに有用な非ウイルスベクターに含まれるのは、pThioHis Aベクター、pThioHis Bベクター、pThioHis Cベクター、pcDNA3.1/Hisベクター、pEBVHis Aベクター、pEBVHis Bベクター、pEBVHis Cベクター(Invitrogen社、サンディエゴ、カリフォルニア州)、MPS Vベクターと、他のタンパク質を発現させるための本分野で知られている他の多数のベクターである。有用なウイルスベクターに含まれるのは、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルスに基づくベクター、SV40、パピローマウイルス、HBPエプスタイン-バーウイルス、ワクシニアウイルス、セムリキ森ウイルス(SFV)に基づくベクターである。Brent他、上記文献;Smith、Annu. Rev. Microbiol. 第49巻:807ページ、1995年;Rosenfeld他、Cell第68巻:143ページ、1992年を参照されたい。
【0195】
発現ベクターの選択は、そのベクターを発現させることを想定する宿主細胞に依存する。典型的には、発現ベクターは、プロモータと、CD137結合抗体をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたそれ以外の調節配列(例えばエンハンサ)を含有している。一実施態様では、誘導性プロモータを用いることで、挿入された配列が誘導条件下以外で発現することを阻止する。誘導性プロモータに含まれるのは、例えばアラビノース、lacZ、メタロチオネインプロモータ、熱ショックプロモータである。形質転換された生物の培養物を非誘導条件下で増やすとコード配列の集団の偏りをなくすことができ、それらコード配列の発現産物に対して宿主細胞はより寛容である。CD137結合抗体の効率的な発現には、プロモータに加え、他の調節エレメントも必要とされる可能性、または望ましい可能性がある。これらエレメントに含まれるのは、典型的には、ATG開始コドンと、隣接したリボソーム結合部位や他の配列である。それに加え、発現の効率は、使用する細胞系にとって適切なエンハンサを含めることによって増強される可能性がある(例えばScharf他、Results Probl. Cell Differ. 第20巻:125ページ、1994年;Bittner他、Meth. Enzymol. 第153巻:516ページ、1987年を参照されたい)。例えばSV40エンハンサまたはCMVエンハンサを用いて哺乳動物の宿主細胞の中での発現を増加させることができる。
【0196】
発現ベクターは、分泌シグナル配列の位置を提供して、挿入されたCD137結合抗体配列によってコードされるポリペプチドと融合タンパク質を形成することもできる。挿入されるCD137結合抗体配列は、シグナル配列に連結した後にベクターに含めることのほうが多い。CD137結合抗体の軽鎖と重鎖の可変ドメインをコードする配列を受け入れるのに用いられるベクターは、定常領域またはその一部もコードしていることがある。そのようなベクターにより、可変領域を、その定常領域との融合タンパク質として発現させることが可能になり、そのことによって完全な抗体とその抗原結合フラグメントの産生につながる。典型的には、そのような定常領域はヒトの定常領域である。
【0197】
「組み換え宿主細胞」(または単純に「宿主細胞」)という用語は、組み換え発現ベクターが導入された細胞を意味する。このような用語は、対象とする特定の細胞だけでなく、そのような細胞の子孫も意味することを理解すべきである。変異または環境の影響で後続世代にいくつかの改変が起こる可能性があるため、そのような子孫は実際には親細胞と同じではない可能性があるが、それでも本明細書で用いる「宿主」という用語の範囲に含まれる。
【0198】
CD137結合抗体の鎖を組み込んで発現させる宿主細胞として、原核細胞または真核細胞が可能である。大腸菌は、本発明のポリヌクレオチドのクローニングと発現に役立つ原核細胞宿主である。使用に適した他の微生物宿主に含まれるのは、細菌(枯草菌など)、他の腸内細菌科(サルモネラ、セラチア、さまざまなシュードモナス属の種)である。これらの原核細胞宿主では、典型的には宿主細胞に適合した発現制御配列(例えば複製起点)を含有する発現ベクターも作製することができる。それに加え、多彩な周知のプロモータ(ラクトースプロモータ系、トリプトファン(trp)プロモータ系、β-ラクタマーゼプロモータ系、ファージλからのプロモータ系など)が任意の数存在することになろう。プロモータは、典型的には、オペレータ配列を場合によっては用いて発現を制御するとともに、転写と翻訳を開始させて完了させるためのリボソーム結合部位などを有する。他の微生物(酵母など)を使用して本発明のCD137結合ポリペプチドを発現させることもできる。バキュロウイルスベクターと組み合わせた昆虫細胞も使用できる。
【0199】
一実施態様では、哺乳動物宿主細胞を用いて本発明のCD137結合ポリペプチドを発現させて産生させる。哺乳動物宿主細胞として、例えば内在性免疫グロブリン遺伝子を発現するハイブリドーマ細胞系、または外来発現ベクターが組み込まれた哺乳動物宿主細胞系が可能である。これらの中には、正常に死ぬ動物細胞またはヒト細胞や、正常または異常な不死の動物細胞またはヒト細胞がすべて含まれる。例えば完全な免疫グロブリンを分泌することのできる多数の適切な宿主細胞系が開発されており、その中にはCHO細胞系、さまざまなCos細胞系HeLa細胞、骨髄腫細胞系、形質転換されたB細胞、ハイブリドーマが含まれる。ポリペプチドを発現させるのに哺乳動物組織細胞培養物を用いることが一般に議論されているのは、例えばWinnacker、『FROM GENES TO CLONES』、VCH Publishers社、ニューヨーク、ニューヨーク州、1987年である。哺乳動物宿主細胞のための発現ベクターは、発現制御配列(複製起点、プロモータ、エンハンサなど)(例えばQueen他、Immunol. Rev. 第89巻:49~68ページ、1986年を参照されたい)と、必要な情報処理部位(リボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、転写停止配列など)を含むことができる。これら発現ベクターは、通常は、哺乳動物の遺伝子または哺乳動物のウイルスに由来するプロモータを含有している。適切なプロモータとして、構成的プロモータ、および/または細胞タイプ特異的プロモータ、および/または時期特異的プロモータ、および/または調節可能または制御可能なプロモータが可能である。有用なプロモータの非限定的な例に含まれるのは、メタロチオネインプロモータ、構成的アデノウイルス主要後期プロモータ、デキサメタゾン誘導性MMTVプロモータ、SV40プロモータ、MRP polIIIプロモータ、構成的MPS Vプロモータ、テトラサイクリン誘導性CMVプロモータ(ヒト最初期CMVプロモータなど)、構成的CMVプロモータ、本分野で知られているプロモータ-エンハンサの組み合わせである。
【0200】
興味あるポリヌクレオチド配列を含有する発現ベクターを導入する方法は、細胞宿主のタイプに応じてさまざまである。例えば塩化カルシウムトランスフェクションが原核細胞では一般に利用されるのに対し、他の細胞宿主ではリン酸カルシウム処理または電気穿孔を利用することができる(一般に、Sambrook他、上記文献を参照されたい)。他の方法に含まれるのは、例えば電気穿孔、リン酸カルシウム処理、リポソームを媒介とした形質転換、注入と微量注入、弾道飛行法、ウイロソーム、免疫リポソーム、ポリカチオン:核酸複合体、裸のDNA、人工ビリオン、ヘルペスウイルス構造タンパク質VP22への融合(ElliotとO'Hare、Cell 第88巻:223ページ、1997年)、薬剤で増強されたDNA取り込み、生体外形質導入である。組み換えタンパク質を長期にわたって高収量で産生させるには、安定な発現が望ましいことがしばしばある。例えばCD137結合抗体の鎖または結合フラグメントを安定に発現する細胞系は、ウイルスの複製起点または内在性発現エレメントと、選択マーカー遺伝子を含有する本発明の発現ベクターを用いて調製することができる。ベクターを導入した後、細胞を栄養強化培地の中で1~2日間増殖させ、次いで選択培地に切り換える。選択マーカーの目的は、選択に対する耐性を与えることであるため、その存在により、導入された配列をうまく発現する細胞は、選択培地の中で増殖することが可能になる。耐性のある安定にトランスフェクトされた細胞は、細胞の種類に合った組織培養技術を利用して増殖させることができる。そこで本発明により、本発明の抗体を産生させる方法として、本発明の抗体をコードする核酸またはベクターを含む(特に発現する)宿主細胞を培養することによって本発明の抗体またはそのフラグメントを発現させる工程を含む方法が提供される。
【0201】
別の1つの側面では、本発明は、本発明の抗体と、医薬として許容可能な担体を含む医薬組成物に関する。医薬として許容可能な担体は、組成物を増強または安定化したり、組成物の調製を容易にしたりする。医薬として許容可能な担体に含まれるのは、生理学的に適合性のある溶媒、分散媒体、コーティング、抗ウイルス剤、抗真菌剤、等張剤、吸収遅延剤などである。
【0202】
本発明の医薬組成物は、本分野で知られている多彩な方法で投与することができる。投与の経路および/または様式は、望む結果が何であるかに応じて異なる。投与は、静脈内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、皮下投与、または標的部位の近位への投与が可能である。医薬として許容可能な担体は、(例えば注射または輸液による)静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、非経口投与、脊髄投与、上皮投与に適していなければならない。投与経路に応じて活性化合物(すなわち抗体と多重特異性分子)をある材料で被覆し、その化合物を不活化する可能性のある酸やそれ以外の自然条件の作用からその化合物を保護することができる。
【0203】
本発明の医薬組成物は、本分野でよく知られていて日常的に実施されている方法に従って調製することができる。例えば『Remington: The Science and Practice of Pharmacy』、Mack Publishing Co.,社、第20版、2000年;『Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems』、J. R. Robinson編、Marcel Dekker, Inc.社、ニューヨーク、1978年を参照されたい。医薬組成物は、GMP条件下で製造されることが好ましい。典型的には、治療に有効な用量、または効果的な用量のCD137結合抗体を、本発明の医薬組成物で用いる。CD137結合抗体は、当業者に知られている通常の方法により、医薬として許容可能な剤形にされる。投与計画は、望ましい最適な反応(例えば治療反応)が得られるように調節する。例えば単一のボーラスを投与すること、または用量をいくつかに分割して時間をかけて投与すること、または治療状況の逼迫度に応じて用量を減らしたり増やしたりすることが可能である。投与を容易にするとともに用量を一定にするため、非経口組成物は単位剤形にすることが特に有利である。単位剤形は、本明細書では、処置する対象にとって単位用量として適した物理的に離散した単位を意味し、各単位は、望む治療効果を生じさせるように計算された所定量の活性化合物を、必要な医薬用担体とともに含有している。
【0204】
具体的な患者、組成物、投与様式にとって望ましい治療反応を患者への毒性なしに実現するのに有効な量の活性成分が得られるようにするため、本発明の医薬組成物に含まれる活性成分の実際の投与レベルは、変化させることができる。選択される投与レベルは、多彩な薬物動態因子(使用する本発明の具体的な組成物、またはそのエステル、塩、アミドの活性、投与経路、投与時間、使用する具体的な化合物の排泄速度、治療の期間、使用する具体的な組成物と組み合わせて使用される他の薬および/または化合物および/または材料、年齢、性別、体重、状態、一般的な健康、治療中の患者の以前の医療歴などが含まれる)に依存する。
【0205】
抗体は、通常は複数回投与される。1回の投与と1回の投与の間の間隔は、週、月、年が可能である。間隔は、患者のCD137結合抗体の血中レベルを測定することによってわかる不規則な間隔でもよい。あるいは抗体は、持続放出製剤として投与することができ、その場合には投与の頻度をより少なくする必要がある。用量と頻度は、患者の体内における抗体の半減期に依存して異なる。一般に、ヒト化抗体は、キメラ抗体や非ヒト抗体よりも長い半減期を示す。投与の用量と頻度は、処置が予防的か治療的かに応じて異なる可能性がある。予防的用途では、比較的少ない用量が、比較的少ない頻度で長期間かけて投与される。患者によっては残りの人生を通じて処置を受け続ける。治療的用途では、疾患の進行が遅延または終結するまで(好ましくは患者が疾患の症状の部分的または全面的な改善を示すまで)比較的短い間隔で比較的多い用量が必要とされることがある。その後は、その患者に予防的計画で投与することができる。
【0206】
1つの側面では、本発明により、上に定義した本発明の抗CD137抗体を、1つ以上の追加の治療剤(例えば1つ以上の抗がん剤、および/または細胞毒性剤または細胞増殖抑制剤、および/またはホルモン治療、および/またはワクチン、および/または他の免疫療法)とともに含む医薬組成物が提供される。本発明の抗CD137抗体は、抑制性(または免疫チェックポイント)分子の阻害剤と組み合わせて使用できることが好適であり、その抑制性分子の選択は、PD-1、PDL1、PDL2、CTLA-4、TIM-3、LAG-3、CEACAM(例えばCEACAM-1、および/またはCEACAM-3、および/またはCEACAM-5)、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4、TGFRβ、IDO(インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ)からなされる。抑制性分子の抑制は、DNA、RNA、タンパク質いずれかのレベルで抑制することによって実現できる。
【0207】
驚くべきことに、本発明の抗CD137抗体は、PDL1阻害剤と組み合わせて使用するとき、有益な強い相乗相互作用と改善された抗増殖活性を有することが見いだされた。したがって本発明により、特に増殖性疾患の治療または予防に使用するための医薬組成物として、上に定義した本発明の抗CD137抗体とPDL1阻害剤を含む医薬組成物が提供される。本発明はさらに、特に増殖性疾患の治療または予防において同時に、または別々に、または逐次的に用いるため、上に定義した本発明の抗CD137抗体とPDL1阻害剤を含む医薬組成物に関係している。
【0208】
「組み合わせ」または「医薬組み合わせ」という用語は、本明細書では、1つの単位剤形にされた固定された組み合わせ、または固定されていない組み合わせ、または組み合わせ投与のための複数の部分からなるキットを意味すると定義され、この組み合わせでは、複数の治療剤(例えば本発明の抗CD137抗体とPDL1阻害剤)が、まとめて、または同時に独立に、またはある時間範囲内に別々に投与されて、その組み合わされた複数のパートナーが協同効果(例えば相乗効果)を示すことができる。
【0209】
「固定された組み合わせ」という表現は、複数の治療剤(例えば本発明の抗CD137抗体とPDL1阻害剤)が、患者に単一の物体または単一の剤形の形態で同時に投与されることを意味する。
【0210】
「固定されていない組み合わせ」という表現は、2つの治療剤(例えば本発明の抗CD137抗体とPDL1阻害剤)が、患者に別々の物体または剤形で同時に、または合わせて、または時間制限なしに逐次的に投与されて、そのような投与により、その投与を必要とする対象(例えば哺乳動物またはヒト)の体内でその2つの治療剤の治療に有効なレベルが提供されることを意味する。
【0211】
「PDL1」という記号は、特にUniProtの ID番号Q9NZQ7を持つヒトPDL1を意味する。
【0212】
「ブロッカー」、「阻害剤」、「アンタゴニスト」という用語は、それが結合する標的分子の生物活性を抑制するか低下させる薬剤を意味する。いくつかの実施態様では、阻害剤は、標的分子の生物活性を実質的に、または完全に抑制する。適切なPDL1阻害剤は、PDL1が対応する結合パートナーに結合する能力を標的とし、その能力を低下させ、抑制することで、PDL1の機能に干渉する。特に、適切なPDL1阻害剤は、PDL1がPD-1と相互作用するのをブロックする。いくつかの実施態様では、適切なPDL1阻害剤は、PDL1がPD-1およびB7-1と相互作用するのをブロックする。本発明の医薬組成物で用いられるPDL1阻害剤は、抗PDL1抗体であることが好適である。
【0213】
「相乗効果」という用語は、本明細書では、2つの治療剤(例えば(a)本発明の抗CD137抗体と(b)PDL1阻害剤など)が、例えば増殖性疾患(特にがん)またはその症状を遅延させる上で、それぞれの治療剤それ自体の効果の単純な和よりも大きい効果を生じさせる作用を意味する。相乗効果は例えば適切な方法を利用して計算することができ、その方法として、シグモイド曲線-Emax式(Holford, N. H. G.とScheiner, L. B.、Clin. Pharmacokinet. 第6巻:429~453ページ(1981年))、Loewe相加性の式(Loewe, S.とMuischnek, H.、Arch. Exp. Pathol Pharmacol. 第114巻:313~326ページ(1926年))、半数影響濃度(median-effect)式(Chou, T. C.とTalalay, P.、Adv. Enzyme Regul. 第22巻:27~55ページ(1984年))などがある。上記のそれぞれの式を実験データに適用して対応するグラフを作成することで、薬の組み合わせの効果を評価しやすくすることができる。上記の式に伴う対応するグラフは、それぞれ、濃度-効果曲線、アイソボログラム曲線、併用指数曲線である。相乗性は、組み合わせの相乗スコアを当業者に知られている方法に従って計算することによっても示すことができる。
【0214】
「組み合わせ投与」という用語は、本明細書では、選択された治療剤を一人の患者に投与することを包含すると定義され、治療剤を必ずしも同じ投与経路では投与しない治療計画や、治療剤を必ずしも同時には投与しない治療計画を含むことが想定されている。
【0215】
「組み合わせ調製物」という用語は、上に定義した治療剤(a)と(b)を、独立に、または区別される量の治療剤(a)と(b)のさまざまな固定された組み合わせを利用することにより、同時に、または異なる時点に投与できるという意味で、本明細書では特に「複数部分からなるキット」を意味すると定義される。したがって複数部分からなるキットの複数部分は、例えば同時に、または時間的にずらして投与すること(すなわち複数部分からなるキットの任意の部分を異なる時点に、同じ時間間隔または異なる時間間隔で投与すること)ができる。組み合わせ調製物にして投与する治療剤(b)の合計量に対する治療剤(a)の合計量の比は、例えば処置する一部の患者集団の必要性、または一人の患者の必要性に対処するために変えることができる。
【0216】
「併用されて治療活性のある」または「併用治療効果」という表現は、本明細書では、複数の治療剤をこれら治療剤にとって好ましい時間間隔で別々に(時間的にずらして、特に特定の時系列にしたやり方で)与えても、処置する温血動物(特にヒト)で相変わらず有益な(好ましくは相乗的な)相互作用(併用治療効果)を示すことが可能であることを意味する。それが当てはまるかどうかは、特に血中レベルを追跡することによって判断することができる。なぜなら血中レベルは、両方の治療剤が処置するヒトの血液中に少なくともある期間は存在していることを示しているからである。
【0217】
本発明の医薬組み合わせは、特に増殖性疾患の治療または予防のため、上に定義した本発明の抗CD137抗体を含んでいる。好ましい一実施態様では、本発明の医薬組み合わせは本発明の抗体を含んでおり、この抗体は、配列番号4のHCDR1配列、配列番号6のHCDR2配列、配列番号7のHCDR3配列と、配列番号21のLCDR1配列、配列番号22のLCDR2配列、配列番号23のLCDR3配列と、配列番号14と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含むVH配列と、配列番号27と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含むVL配列を含むIgG4である。より特別な一実施態様では、本発明の医薬組み合わせは本発明の抗体を含んでおり、この抗体は、配列番号4のHCDR1配列、配列番号6のHCDR2配列、配列番号7のHCDR3配列と、配列番号21のLCDR1配列、配列番号22のLCDR2配列、配列番号23のLCDR3配列と、配列番号89と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含むVH配列と、配列番号88と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含むVL配列を含むIgG4である。別の好ましい一実施態様では、本発明の医薬組み合わせは本発明の抗体を含んでおり、この抗体は、配列番号1のHCDR1配列、配列番号2のHCDR2配列、配列番号3のHCDR3配列と、配列番号18のLCDR1配列、配列番号19のLCDR2配列、配列番号20のLCDR3配列と、配列番号17と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含むVH配列と、配列番号30と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含むVL配列を含むIgG4である。一実施態様では、本発明の医薬組み合わせは本発明の抗体を含んでおり、この抗体は、配列番号1のHCDR1配列、配列番号2のHCDR2配列、配列番号3のHCDR3配列と、配列番号18のLCDR1配列、配列番号19のLCDR2配列、配列番号20のLCDR3配列と、配列番号89と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含むVH配列と、配列番号88と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含むVL配列を含むIgG4である。
【0218】
本発明の医薬組み合わせはさらにPDL1阻害剤を含んでいる。一実施態様では、このPDL1阻害剤は抗PDL1抗体である。本発明の組み合わせで用いるのに適したPDL1阻害剤の非限定的な例に含まれるのは、
(i)アベルマブ(MSB0010718C;ヒトIgG1抗PDL1モノクローナル抗体;Merck-Serono社;WO 2013/079174に記載(その全体が、参照によって本出願に組み込まれている));
(ii)アテゾリズマブ(MPDL3280A、RG7446;ヒトIgG抗PDL1モノクローナル抗体;Hoffmann-La Roche社);
(iii)MDX-1105(BMS-936559;ヒトIgG4抗PDL1モノクローナル抗体;Bristol-Myers Squibb社;WO 2007/005874に記載(その全体が、参照によって本出願に組み込まれている));
(iv)ドゥルバルマブ(MEDI4736;ヒト化IgG1抗PDL1モノクローナル抗体;AstraZeneca社;WO 2011/066389とアメリカ合衆国特許出願公開第2013/034559号に記載(その全体が、参照によって本出願に組み込まれている));
(v)KN035(抗PDL1モノクローナル抗体;3D Medicines社);
(vi)LY3300054(抗PDL1モノクローナル抗体;Eli Lilly社);
(vii)YW243.55.S70(WO 2010/077634とアメリカ合衆国特許第8,217,149号に記載(その全体が、参照によって本出願に組み込まれている))である。
【0219】
本発明の組み合わせで用いるための好ましいPDL1阻害剤に含まれるのは、(a)配列番号90のHCDR1配列、配列番号91のHCDR2配列、配列番号92のHCDR3配列と、配列番号106のLCDR1配列、配列番号107のLCDR2配列、配列番号108のLCDR3配列を含む抗PDL1抗体;または(b)配列番号93のHCDR1配列、配列番号95のHCDR2配列、配列番号96のHCDR3配列と、配列番号109のLCDR1配列、配列番号110のLCDR2配列、配列番号111のLCDR3配列を含む抗PDL1抗体;または(c)配列番号94のHCDR1配列、配列番号95のHCDR2配列、配列番号96のHCDR3配列と、配列番号109のLCDR1配列、配列番号110のLCDR2配列、配列番号111のLCDR3配列を含む抗PDL1抗体;または(d)配列番号121のHCDR1配列、配列番号122のHCDR2配列、配列番号123のHCDR3配列と、配列番号137のLCDR1配列、配列番号138のLCDR2配列、配列番号139のLCDR3配列を含む抗PDL1抗体;または(e)配列番号124のHCDR1配列、配列番号126のHCDR2配列、配列番号127のHCDR3配列と、配列番号140のLCDR1配列、配列番号141のLCDR2配列、配列番号142のLCDR3配列を含む抗PDL1抗体;または(f)配列番号125のHCDR1配列、配列番号126のHCDR2配列、配列番号127のHCDR3配列と、配列番号140のLCDR1配列、配列番号141のLCDR2配列、配列番号142のLCDR3配列を含む抗PDL1抗体である。一実施態様では、本発明の組み合わせで用いるためのPDL1阻害剤に含まれるのは、(a)配列番号90、91、92のそれぞれと少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有するHCDR1配列、HCDR2配列、HCDR3配列と、配列番号106、107、108のそれぞれと少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有するLCDR1配列、LCDR2配列、LCDR3配列を含む抗PDL1抗体;または(b)配列番号93、95、96のそれぞれと少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有するHCDR1配列、HCDR2配列、HCDR3配列と、配列番号109、110、111のそれぞれと少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有するLCDR1配列、LCDR2配列、LCDR3配列を含む抗PDL1抗体;または(c)配列番号94、95、96のそれぞれと少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有するHCDR1配列、HCDR2配列、HCDR3配列と、配列番号109、110、111のそれぞれと少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有するLCDR1配列、LCDR2配列、LCDR3配列を含む抗PDL1抗体;または(d)配列番号121、122、123のそれぞれと少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有するHCDR1配列、HCDR2配列、HCDR3配列と、配列番号137、138、139のそれぞれと少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有するLCDR1配列、LCDR2配列、LCDR3配列を含む抗PDL1抗体;または(e)配列番号124、126、127のそれぞれと少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有するHCDR1配列、HCDR2配列、HCDR3配列と、配列番号140、141、142のそれぞれと少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有するLCDR1配列、LCDR2配列、LCDR3配列を含む抗PDL1抗体;または(f)配列番号125、126、127のそれぞれと少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有するHCDR1配列、HCDR2配列、HCDR3配列と、配列番号140、141、142のそれぞれと少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%同一性を有するLCDR1配列、LCDR2配列、LCDR3配列を含む抗PDL1抗体である。
【0220】
一実施態様では、本発明の医薬組み合わせはPDL1阻害剤を含んでおり、このPDL1阻害剤は、
(i)a.配列番号93のHCDR1配列、配列番号95のHCDR2配列、配列番号96のHCDR3配列と、配列番号109のLCDR1配列、配列番号110のLCDR2配列、配列番号111のLCDR3配列;または
b.配列番号124のHCDR1配列、配列番号126のHCDR2配列、配列番号127のHCDR3配列と、配列番号140のLCDR1配列、配列番号141のLCDR2配列、配列番号142のLCDR3配列;または
c.配列番号125のHCDR1配列、配列番号126のHCDR2配列、配列番号127のHCDR3配列と、配列番号140のLCDR1配列、配列番号141のLCDR2配列、配列番号142のLCDR3配列
というHCDR1配列、HCDR2配列、HCDR3配列、LCDR1配列、LCDR2配列、LCDR3配列と;
(ii)VH3ドメインまたはVH4ドメインのフレームワーク配列FR1~FR4(好ましくはVH4ドメインのフレームワーク配列FR1~FR4)と;
(iii)VκフレームワークFR1、FR2、FR3(特にVκ1またはVκ3のFR1~FR3、好ましくはVκ1のFR1~FR3)と、フレームワークFR4(VκFR4(特にVκ1FR4、Vκ3FR4)とVλFR4(特に配列番号62~配列番号68から選択されたいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%同一性を有するアミノ酸配列を含むVλFR4(好ましくは配列番号62~配列番号68に記載されているVλFR4、より好ましくは配列番号62に記載されているVλFR4))から選択される)を含むVLフレームワークを含むVLドメイン
を含む抗PDL1抗体である。
【0221】
一実施態様では、本発明の医薬組み合わせはPDL1阻害剤を含んでおり、このPDL1阻害剤は、
(i)配列番号94のHCDR1配列、配列番号95のHCDR2配列、配列番号96のHCDR3配列と、配列番号109のLCDR1配列、配列番号110のLCDR2配列、配列番号111のLCDR3配列と;
(ii)VH1Aドメイン、VH1Bドメイン、VH3ドメイン、VH4ドメインいずれかのフレームワーク配列(好ましくはVH1AドメインまたはVH1Bドメインのフレームワーク配列)と;
(iii)VκフレームワークFR1、FR2、FR3(特にVκ1またはVκ3のFR1~FR3、好ましくはVκ1のFR1~FR3)と、フレームワークFR4(VκFR4(特にVκ1FR4、Vκ3FR4)とVλFR4(特に配列番号62~配列番号68から選択されたいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%同一性を有するアミノ酸配列を含むVλFR4(好ましくは配列番号62~配列番号68から選択されたいずれか1つのアミノ酸配列を含むVλFR4、より好ましくは配列番号62に記載されているVλFR4))から選択される)を含むVLフレームワークを含むVLドメイン
を含む抗PDL1抗体である。
【0222】
一実施態様では、本発明の医薬組み合わせはPDL1阻害剤を含んでおり、このPDL1阻害剤は、
(i)配列番号90のHCDR1配列、配列番号91のHCDR2配列、配列番号92のHCDR3配列と、配列番号106のLCDR1配列、配列番号107のLCDR2配列、配列番号108のLCDR3配列と;
(ii)VH3ドメインまたはVH4ドメインのフレームワーク配列FR1~FR4(好ましくはVH3ドメインのフレームワーク配列FR1~FR4)と;
(iii)VκフレームワークFR1、FR2、FR3(特にVκ1またはVκ3のFR1~FR3、好ましくはVκ1のFR1~FR3)と、フレームワークFR4(VκFR4(特にVκ1FR4、Vκ3FR4)とVλFR4(特に配列番号62~配列番号68から選択されたいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%同一性を有するアミノ酸配列を含むVλFR4(好ましくは配列番号62~配列番号68に記載されているVλFR4、より好ましくは配列番号62に記載されているVλFR4))から選択される)を含むVLフレームワークを含むVLドメイン
を含む抗PDL1抗体である。
【0223】
一実施態様では、本発明の医薬組み合わせはPDL1阻害剤を含んでおり、このPDL1阻害剤は、
(i)配列番号121のHCDR1配列、配列番号122のHCDR2配列、配列番号123のHCDR3配列と、配列番号137のLCDR1配列、配列番号138のLCDR2配列、配列番号139のLCDR3配列と;
(ii)VH3ドメインまたはVH4ドメインのフレームワーク配列FR1~FR4(好ましくはVH4ドメインのフレームワーク配列FR1~FR4)と;
(iii)VκフレームワークFR1、FR2、FR3(特にVκ1またはVκ3のFR1~FR3、好ましくはVκ1のFR1~FR3)と、フレームワークFR4(VκFR4(特にVκ1FR4、Vκ3FR4)とVλFR4(特に配列番号62~配列番号68から選択されたいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%同一性を有するアミノ酸配列を含むVλFR4(好ましくは配列番号62~配列番号68から選択されたいずれか1つのアミノ酸配列を含むVλFR4、より好ましくは配列番号62に記載されているVλFR4))から選択される)を含むVLフレームワークを含むVLドメイン
を含む抗PDL1抗体である。
【0224】
一実施態様では、本発明の医薬組み合わせはPDL1阻害剤を含んでおり、このPDL1阻害剤は、
(i)CDRドメインCDR1 、CDR2、 CDR3と;
(ii)ヒトVκフレームワーク領域FR1~FR3(特にヒトVκ1フレームワーク領域FR1~FR3)と;
(iii)(a)FR4のためのヒトVλ生殖系配列(特に配列番号62~配列番号68のリストから選択されたVλ生殖系配列、好ましくは配列番号62のVλ生殖系配列)と、(b)配列番号62~配列番号68から選択されたいずれか1つのアミノ酸配列(好ましくは配列番号62のアミノ酸配列)を含むFR4のための最も近いヒトVλ生殖系配列と比べて1個または2個の変異(特に1個の変異)を持つ、Vλに基づく配列から選択されたFR4
を含む抗PDL1抗体である。
【0225】
一実施態様では、本発明の医薬組み合わせはPDL1阻害剤を含んでおり、このPDL1阻害剤は、
(a)配列番号90のHCDR1配列、配列番号91のHCDR2配列、配列番号92のHCDR3配列と、配列番号106のLCDR1配列、配列番号107のLCDR2配列、配列番号108のLCDR3配列と、配列番号103と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含むVH配列と、配列番号115と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含むVL配列を含む抗PDL1抗体;または
(b);配列番号90のHCDR1配列、配列番号91のHCDR2配列、配列番号92のHCDR3配列と、配列番号106のLCDR1配列、配列番号107のLCDR2配列、配列番号108のLCDR3配列と、配列番号105と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含むVH配列と、配列番号116と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含むVL配列を含む抗PDL1抗体;または
(c)配列番号93のHCDR1配列、配列番号95のHCDR2配列、配列番号96のHCDR3配列と、配列番号109のLCDR1配列、配列番号110のLCDR2配列、配列番号111のLCDR3配列と、配列番号103と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含むVH配列と、配列番号115と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含むVL配列を含む抗PDL1抗体;または
(d)配列番号94のHCDR1配列、配列番号95のHCDR2配列、配列番号96のHCDR3配列と、配列番号16のLCDR1配列、配列番号21のLCDR2配列、配列番号22のLCDR3配列と、配列番号104と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含むVH配列と、配列番号115と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含むVL配列を含む抗PDL1抗体;または
(e)配列番号121のHCDR1配列、配列番号122のHCDR2配列、配列番号123のHCDR3配列と、配列番号137のLCDR1配列、配列番号138のLCDR2配列、配列番号139のLCDR3配列と、配列番号135と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含むVH配列と、配列番号147と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含むVL配列を含む抗PDL1抗体;または
(f)配列番号121のHCDR1配列、配列番号122のHCDR2配列、配列番号123のHCDR3配列と、配列番号137のLCDR1配列、配列番号138のLCDR2配列、配列番号139のLCDR3配列と、配列番号136と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含むVH配列と、配列番号146と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含むVL配列を含む抗PDL1抗体;または
(g)配列番号124のHCDR1配列、配列番号126のHCDR2配列、配列番号127のHCDR3配列と、配列番号140のLCDR1配列、配列番号141のLCDR2配列、配列番号142のLCDR3配列と、配列番号134と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含むVH配列と、配列番号146と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含むVL配列を含む抗PDL1抗体;または
(h)配列番号125のHCDR1配列、配列番号126のHCDR2配列、配列番号127のHCDR3配列と、配列番号140のLCDR1配列、配列番号141のLCDR2配列、配列番号142のLCDR3配列と、配列番号135と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含むVH配列と、配列番号147と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含むVL配列を含む抗PDL1抗体である。
【0226】
一実施態様では、本発明の医薬組み合わせはPDL1阻害剤を含んでおり、このPDL1阻害剤は、
(a)配列番号103のVH配列と、配列番号115のVL配列を含む抗PDL1抗体;
(b)配列番号105のVH配列と、配列番号116のVL配列を含む抗PDL1抗体;
(c)配列番号103のVH配列と、配列番号115のVL配列を含む抗PDL1抗体;
(d)配列番号104のVH配列と、配列番号115のVL配列を含む抗PDL1抗体;
(e)配列番号135のVH配列と、配列番号147のVL配列を含む抗PDL1抗体;
(f)配列番号136のVH配列と、配列番号146のVL配列を含む抗PDL1抗体;
(g)配列番号134のVH配列と、配列番号146のVL配列を含む抗PDL1抗体;
(h)配列番号146のVH配列と、配列番号147のVL配列を含む抗PDL1抗体のいずれかである。
【0227】
好ましい一実施態様では、本発明の医薬組み合わせはPDL1阻害剤を含んでおり、このPDL1阻害剤は、配列番号121のHCDR1配列、配列番号122のHCDR2配列、配列番号123のHCDR3配列と、配列番号137のLCDR1配列、配列番号138のLCDR2配列、配列番号139のLCDR3配列と、(i)配列番号135と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含むVH配列と、配列番号147と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含むVL配列;または(ii)配列番号136と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含むVH配列と、配列番号146と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含むVL配列を含む抗PDL1 IgG1抗体である。
【0228】
好ましい一実施態様では、本発明の医薬組み合わせはPDL1阻害剤を含んでおり、このPDL1阻害剤は、配列番号93のHCDR1配列、配列番号95のHCDR2配列、配列番号96のHCDR3配列と、配列番号109のLCDR1配列、配列番号110のLCDR2配列、配列番号111のLCDR3配列と、配列番号103と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含むVH配列と、配列番号115と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含むVL配列を含む抗PDL1 IgG1抗体である。より特別な一実施態様では、本発明の医薬組み合わせはPDL1阻害剤を含んでおり、このPDL1阻害剤は、配列番号93のHCDR1配列、配列番号95のHCDR2配列、配列番号96のHCDR3配列と、配列番号109のLCDR1配列、配列番号110のLCDR2配列、配列番号111のLCDR3配列と、配列番号155と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含むVH配列と、配列番号154と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含むVL配列を含む抗PDL1 IgG1抗体である。
【0229】
別の特別な一実施態様では、本発明の医薬組み合わせはPDL1阻害剤を含んでおり、このPDL1阻害剤は、配列番号121のHCDR1配列、配列番号122のHCDR2配列、配列番号123のHCDR3配列と、配列番号137のLCDR1配列、配列番号138のLCDR2配列、配列番号139のLCDR3配列と、(i)配列番号135と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含むVH配列と、配列番号147と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含むVL配列;または(ii)配列番号136と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含むVH配列と、配列番号146と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含むVL配列を含む抗PDL1 IgG1抗体である。
【0230】
別の特別な一実施態様では、本発明の医薬組み合わせはPDL1阻害剤を含んでおり、このPDL1阻害剤は、配列番号124のHCDR1配列、配列番号126のHCDR2配列、配列番号127のHCDR3配列と、配列番号140のLCDR1配列、配列番号141のLCDR2配列、配列番号142のLCDR3配列と、配列番号134と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含むVH配列と、配列番号146と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含むVL配列を含む抗PDL1 IgG1抗体である。より特別な一実施態様では、本発明の医薬組み合わせはPDL1阻害剤を含んでおり、このPDL1阻害剤は、配列番号124のHCDR1配列、配列番号126のHCDR2配列、配列番号127のHCDR3配列と、配列番号126のLCDR1配列、配列番号127のLCDR2配列、配列番号142のLCDR3配列と、配列番号153と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含むVH配列と、配列番号152と少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または91%、または92%、または93%、または94%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%(好ましくは少なくとも90%)同一であるアミノ酸配列を含むVL配列を含む抗PDL1 IgG1抗体である。
【0231】
今後は、(a)上に定義した本発明の抗CD137抗体と(b)上に定義したPDL1阻害剤を含む医薬組み合わせを「本発明の組み合わせ」と呼ぶことにする。
【0232】
増殖性疾患の性質は多因子性である。所定の状況下では、作用機構が異なる複数の治療剤を組み合わせることができる。しかし異なる作用様式を持つ複数の治療剤の任意の組み合わせを考えるだけでは、必ずしも有利な効果を持つ組み合わせにならない。本発明の組み合わせの投与は、それぞれの単剤療法と比べて抗腫瘍活性を改善することが見いだされているため、増殖性疾患(特にがん)の治療に有効である可能性がある。本発明において本発明の組み合わせを投与すると、いずれかの単剤療法と比較して、例えば進行の遅延や、増殖性疾患またはその症状の抑制に関してより有益な効果(例えば相乗効果、または抗増殖効果の改善)が得られるだけでなく、さらに有益な効果(例えばより少ない副作用、生活の質の改善、死亡率の低下)も得られることが予想される。
【0233】
本発明の組み合わせは、それを必要とする対象の増殖性疾患の治療または予防に特に有用である。本発明の組み合わせによる複数の治療剤は、それを必要とする対象に、別々に、または同時に、または逐次的に投与することができる。これら治療剤は治療に有効な用量で投与されて、組み合わされたときに有益な効果を提供することが好ましい。したがって本発明の一実施態様では、本発明の組み合わせを増殖性疾患(特にがん)の治療または予防に使用する。
【0234】
1つの側面では、本発明は、薬として用いるための、本発明の抗体、または本発明の組成物、または本発明の組み合わせに関する。
【0235】
1つの側面では、本発明は、処置を必要とする対象の増殖性疾患(特にがん)の処置に用いるための、本発明の抗体、または本発明の組成物、または本発明の組み合わせに関する。
【0236】
別の1つの側面では、本発明は、処置を必要とする対象の増殖性疾患(特にがん)を処置するための、本発明の抗体、または本発明の組成物、または本発明の組み合わせの利用に関する。
【0237】
別の1つの側面では、本発明は、処置を必要とする対象の増殖性疾患(特にがん)を治療するための薬の製造における、本発明の抗体、または本発明の組成物、または本発明の組み合わせの利用に関する。
【0238】
1つの側面では、本発明により、処置を必要とする対象の増殖性疾患(特にがん)を治療する方法として、本発明の抗体、または本発明の組成物、または本発明の組み合わせを治療に有効な量でその対象に投与することを含む方法が提供される。
【0239】
「対象」という用語には、ヒトと非ヒト動物が含まれる。非ヒト動物に含まれるのはあらゆる脊椎動物であり、例えば哺乳動物と非哺乳動物(非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類)が挙げられる。特記する場合は除き、「患者」または「対象」という用語は、本明細書では交換可能である。
【0240】
「処置」、「処置している」、「処置する」、「処置した」などは、本明細書では、望む薬理学的効果および/または生理学的効果を得ることを意味する。効果として、疾患および/またはその疾患に帰することのできる副作用の部分的または完全な治癒という意味での治療、または疾患進行の遅延が可能である。「処置」は、本明細書では、哺乳動物(例えばヒト)の疾患のあらゆる処置をカバーしており、(a)疾患の抑制(すなわち疾患進行を停止させること)と;(b)疾患の緩和(すなわち疾患の退行を起こさせること)を含んでいる。
【0241】
「治療に有効な量」または「有効量」という用語は、疾患を処置するために哺乳動物や他の対象に投与されたとき、その疾患についてそのような処置をするのに十分な薬剤の量を意味する。「治療に有効な量」は、薬剤、疾患とその重症度、処置する対象の年齢、体重などに依存して異なるであろう。
【0242】
一実施態様では、増殖性疾患はがんである。「がん」という用語は、異常な細胞の急速かつ制御されない増殖を特徴とする疾患を意味する。がん細胞は、局所的に広がる可能性や、血流とリンパ系を通じて身体の他の部分に広がる可能性がある。「腫瘍」と「がん」という用語は本明細書では交換可能に用いられ、例えば両方の用語が、固形と液体(例えばびまん性または循環性)の腫瘍を包含する。本明細書では、「がん」または「腫瘍」という用語に、前がん状態のほか、悪性のがんと腫瘍が含まれる。「がん」という用語は、本明細書ではさまざまな腫瘍を意味し、その中にはあらゆる固形悪性腫瘍と血液悪性腫瘍が含まれる。そのような腫瘍の非限定的な例に含まれるのは、良性または悪性の腫瘍(特に悪性の腫瘍)、固形腫瘍、脳腫瘍、腎臓がん、肝臓がん、副腎がん、膀胱がん、乳がん、胃がん(例えば胃腫瘍)、食道がん 、卵巣がん、子宮頸がん、大腸がん、直腸がん、前立腺がん 、膵臓がん、肺がん(例えば非小細胞肺がんと小細胞肺がん)、膣がん、甲状腺がん、黒色腫(例えば切除不能の黒色腫、または転移性黒色腫)、腎細胞癌、肉腫、膠芽腫、多発性骨髄腫または消化器がん(特に結腸癌または大腸腺腫)、頭頸部の腫瘍、子宮内膜がん、カウデン症候群、レルミット-デュクロス病、バナヤン-ゾナナ症候群、前立腺過形成、新形成(特に上皮性の新形成、好ましくは乳癌または扁平上皮癌)、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病(例えばフィラデルフィア染色体陽性慢性骨髄性白血病)、急性リンパ芽球性白血病(例えばフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ芽球性白血病)、非ホジキンリンパ腫、形質細胞骨髄腫、ホジキンリンパ腫、白血病と、これらの任意の組み合わせである。好ましい一実施態様では、がんは、肺がん(好ましくは非小細胞肺がん(NSCLC))である。別の一実施態様では、がんは大腸がんである。
【0243】
本発明の抗体、または本発明の組成物、または本発明の組み合わせは、固形腫瘍の増殖だけでなく液体腫瘍も抑制する。別の一実施態様では、増殖性疾患は固形腫瘍である。「固形腫瘍」という用語は特に、乳がん、卵巣がん、結腸がん、直腸がん、前立腺がん、胃がん(stomac cancer)(特に胃がん(gastric cancer))、子宮頸がん、肺がん(例えば非小細胞肺がんと小細胞肺がん)、頭頸部の腫瘍を意味する。さらに、腫瘍のタイプと使用する具体的な組み合わせに応じ、腫瘍の体積を減少させることができる。本発明の抗体、または本発明の組成物、または本発明の組み合わせは、がんを持つ対象における腫瘍の転移による拡散の予防と、微小転移巣の増殖または発達の予防にも適している。
【0244】
「予防する」または「予防」という用語は、疾患の発達、または疾患のあらゆる二次的効果の完全な抑制を意味する。「予防する」または「予防」という用語には、本明細書では、疾患または状態が、その疾患になりやすい可能性があるがまだそうであるとは診断されていない個体で起こることの予防が含まれる。
【0245】
1つの側面では、本発明は、本発明の抗体、または本発明の医薬組成物、または本発明の組み合わせを含むキットに関する。このキットは、1つ以上の他の要素を含むことができ、その要素に含まれるのは、使用のための手引;他の試薬(例えば標識、治療剤、キレート化またはカップリングに有用な薬剤、標識または治療剤に対する抗体、放射線保護組成物);投与する抗体分子を調製するための装置または他の材料;医薬として許容可能な担体;対象に投与するための装置または他の材料である。特別な一実施態様では、キットは、医薬として有効な量の本発明の抗体を含んでいる。別の一実施態様では、キットは、医薬として有効な量の凍結乾燥形態の本発明の抗体と、希釈剤と、場合によっては使用のための手引を含んでいる。このキットはさらに、再構成するためのフィルタニードルと、注射のための針を含んでいる。
【0246】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【0247】
【表2】
【0248】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【表3-6】
【0249】
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【表4-4】
【表4-5】
【表4-6】
【表4-7】
【0250】
本出願のテキスト全体を通じ、明細書のテキスト(例えば表1~表3)と配列リストの間に齟齬がある場合には、明細書のテキストが優先する。
【0251】
明確にするため別々の実施態様の文脈で記載されている本発明のいくつかの特徴は、単一の実施態様の中で組み合わせて提示できることもわかる。逆に、簡潔にするため単一の実施態様の文脈で記載されている本発明のさまざまな特徴は、別々に、または適切な任意の部分的組み合わせで提示することもできる。本発明に関する実施態様のあらゆる組み合わせが本発明に具体的に包含されるとともに、あらゆるそれぞれの組み合わせが個別かつ明示的に開示されているかのように本明細書に開示されている。それに加え、さまざまな実施態様とその要素のあらゆる部分的組み合わせも本発明に具体的に包含されるとともに、あらゆるそれぞれの部分的組み合わせが個別かつ明示的に開示されているかのように本明細書に開示されている。
【0252】
本発明の範囲が、本明細書に記載されている具体的な実施態様によって制限されることはない。実際、当業者にとって、本明細書に記載した改変に加え、本発明のさまざまな改変は、これまでの記述から明らかであろう。そのような改変は、添付の請求項の範囲に入ることが想定されている。
【0253】
各国の特許法のもとで可能な限り、あらゆる特許、出願、刊行物、試験方法、文献、本明細書で引用されている他の材料は、参照によって本明細書に組み込まれている。
【0254】
以下の実施例は、上に記載した本発明を具体化しているが、いかなる意味でも本発明の範囲を制限することは想定されていない。当業者に知られている他の試験モデルでも、請求項の発明の有益な効果を判断することができる。
【実施例
【0255】
ヒトCD137に向けられる新規な抗体
【0256】
実施例1:ヒトCD137に向けられるウサギ抗体の生成
【0257】
組み換えによって作製して精製したヒトCD137細胞外ドメイン(Peprotech社、カタログ番号310-15-1MG)を用いてウサギを免疫化した。免疫化の間、抗原に対する検出可能なポリクローナル血清抗体の結合を相変わらず生じさせている各ウサギの血清の最大希釈度(力価)を求めることにより、抗原に対する液性免疫反応の強度を定量評価した。固定化された抗原(組み換えヒトCD137 ECD)に対する血清抗体力価を、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を利用して評価した。免疫化されたすべてのウサギが、少なくとも1:702,175の血清希釈度という非常に大きな力価を示した。最初に抗原を注射する前の同じウサギからの血清をバックグラウンド対照として用いた。
【0258】
実施例2:ヒットの同定と選択
【0259】
ヒット同定手続きの中で、親和性の大きいヒトCD137 ECD結合B細胞を特異的に検出してその単離を可能にするフローサイトメトリーに基づく選別手続きを開発した。CD137結合B細胞を同定するため、CD137 ECDに蛍光染料R-フィコエリトリン(RPE)を標識した。標識されたCD137上のCD137L結合部位と抗CD137抗体の結合部位は、かさばるRPE標識によって邪魔される可能性があるため、エピトープのアクセス可能性をフローサイトメトリーによって確認した。ヒトIgG1のFc部分に融合させたCD137L ECD、ウレルマブ、ウサギポリクローナル抗ヒトCD137、ヤギポリクローナル抗ヒトCD137のいずれかをプロテインGビーズの表面に捕獲し、R-PEで標識したCD137の結合をフローサイトメトリーによって確認した。蛍光強度は、ビーズの表面に固定化されたCD137Lに結合した標識したCD137の量に比例する。CD137がCD137Lと抗CD137抗体に結合することは見られたが、R-PEで標識したCD137がインフリキシマブに結合することはまったく検出されなかった。
【0260】
スクリーニング:
【0261】
ハイスループット培養のスケールでは個々のウサギ抗体を精製できないため、スクリーニング段階の間に得られた結果は、抗体分泌細胞(ASC)培養物の上清からの精製されていない抗体で実施したアッセイに基づいている。このような上清により、多数の抗体を互いに順位づけることができるが、結合親和性を除いて絶対値は得られない。少なくとも4週間にわたり、個別に培養したすべてのクローンからの上清を回収した。培養期間の終了時に各細胞培養物の上清に含まれるウサギモノクローナル抗体を、組み換えヒトCD137 ECDへの結合についてハイスループットELISAで特徴づけた。それに加え、CD137とCD137Lの相互作用、およびCD137とウレルマブの相互作用を中和する能力を競合ELISAによって調べた。安定に形質導入されたJurkat細胞の表面に発現している膜CD137への結合も評価した。上清のマウスCD137の結合能力を直接的なELISAによって分析し、結合動態を陽性の上清についてだけ調べた。
【0262】
直接的なELISA
【0263】
250 ng/mlのヒトCD137(Peprotech社、カタログ番号310-15-1MG)を含有するPBSを50μl添加することによってELISAプレートを4℃で一晩被覆した。翌日、プレートをオーバーフローモードでウエルごとに300μlの洗浄バッファー(PBS、0.005%トゥイーン20)を用いて3回洗浄した後、振盪せずに270μlのブロッキングバッファー(PBS、1%BSA、0.2%トゥイーン20)を各ウエルに室温で1時間かけて添加した。次いでプレートをオーバーフローモードで300μlの洗浄バッファーを用いて洗浄し、それぞれの上清を50μl添加し、軽く撹拌しながらプレートを室温で1.5時間インキュベートした。オーバーフローモードで300μlの洗浄バッファーを用いて3回洗浄した後、ブロッキングバッファーの中で1:5000に希釈したHRP結合ヤギ抗ウサギIgG抗体を50μl、各ウエルに添加した。撹拌ミキサー上で室温にて1時間インキュベートした後、プレートをオーバーフローモードでウエルごとに300μlの洗浄バッファーを用いて3回洗浄し、次いで50μlのTMB(3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン)を添加した。5~10分間発色させた後、ウエルごとに50μlの1 M HClを添加することによって酵素反応を停止させ、参照波長として690 nmを用いてプレートを450 nmで読み取った。
【0264】
SPRによるhCD137に対する親和性
【0265】
MASS-1 SPR装置(Sierra Sensors社)を利用してヒトCD137への抗体の結合親和性をSPRによって測定した。親和性をスクリーニングするため、標準的なアミンカップリング手続きを利用し、ウサギIgG(Bethyl Laboratories社、カタログ番号A120-111A)のFc領域に対して特異的な抗体をセンサーチップ(MASS-1 Affinity Sensor、High Capacity Amine、Sierra Sensors社)の表面に固定化した。B細胞上清に含まれるウサギモノクローナル抗体を、固定化された抗ウサギIgG抗体によって捕獲した。十分な捕獲が可能であるためにはB細胞上清の中のIgG濃度ができるだけ小さい必要がある。モノクローナル抗体を捕獲した後、ヒトCD137 ECD(Peprotech社、カタログ番号310-15-1MG)をフローセルの中に3分間かけて90 nMの濃度で注入し、センサーチップの表面に捕獲されたIgGからタンパク質を5分間にわたって解離させた。各注入サイクルの後、10 nMのグリシン-HClを2回注入して表面を再生させた。1:1ラングミュア結合モデルを用いてMASS-1分析ソフトウエア(Analyzer、Sierra Sensors社)で見かけの解離速度定数(kd)、見かけの解離速度定数(ka)、見かけの解離平衡定数(KD)を計算し、相対χ2(分析物の最大結合レベルの外挿値に規格化されたχ2)に基づいてフィットの質をモニタした。相対χ2は、曲線フィッティングの質に関する1つの指標である。相対χ2の値が小さいほど、1:1ラングミュア結合モデルへのフィッティングがより正確である。大半のヒットについて、相対χ2値は15%未満であった。リガンドの結合に関する反応単位(RU)が抗体捕獲に関するRUの少なくとも2%である場合に、結果を有効であると見なした。リガンドの結合に関するRUが抗体捕獲に関するRUの2%未満であるサンプルを、捕獲された抗体に対してCD137が特異的な結合を示すことはないと見なした。
【0266】
CD137/CD137L競合ELISA
【0267】
50 ng/mlのCD137 Fcキメラ(R&D Systems社、カタログ番号838-4B-100)を含有するPBSを50μl添加することによってELISAプレートを4℃で一晩被覆した。翌日、プレートをオーバーフローモードでウエルごとに450μlの洗浄バッファー(PBS、0.005%トゥイーン20)を用いて3回洗浄した後、撹拌ミキサー上で300μlのブロッキングバッファー(1%BSAと0.2%トゥイーン20を含むPBS)を各ウエルに室温で1時間かけて添加した。その後、陽性対照(中和用ヤギ抗CD137抗体)をソート38の100%陰性上清の中で希釈し、この中和抗体を50μl、結合プレートの対応するウエルに添加した。それに加え、陽性ヒットの上清50μlを結合プレートに移し、振盪しながら室温で1時間インキュベートした。次に、ELISAプレートをオーバーフローモードでウエルごとに450μlの洗浄バッファーを用いて3回洗浄した後、ブロッキングバッファーの中で希釈した20 ng/mlのビオチニル化組み換えヒトCD137リガンド(Acro Biosystem社、カタログ番号41L-H5257)を50μl、ウエルに添加した。振盪しながら室温で1時間インキュベートした後、ELISAプレートをオーバーフローモードでウエルごとに450μlの洗浄バッファーを用いて3回洗浄した。次に、ブロッキングバッファーの中で希釈した10 ng/mlのストレプトアビジン-ポリ-HRPを50μl、ELISAプレートの各ウエルに添加した。室温で1時間インキュベートした後、プレートを450μlの洗浄バッファーを用いて3回洗浄し、50μlのTMBを添加してから5~10分間発色させた。最後に、50μlの1 M HClを添加することによって酵素反応を停止させ、参照波長として690 nmを用いてプレートを450 nmで読み取った。
【0268】
SPRによる種特異性:カニクイザル
【0269】
ヒトCD137への結合に関して記載したのと同じSPRの設定を利用してカニクイザルCD137への結合動態も調べた。ただし、ヒトCD137 ECDをカニクイザルCD137 ECD(Acro Biosystem社、カタログ番号41B-C52H4)で置き換えた。
【0270】
ウレルマブ競合ELISA
【0271】
2μg/mlのウレルマブ(Evitria社、シュリーレン、スイス国が製造)を含有するPBSを50μl添加することによってELISAプレートを4℃で一晩被覆した。翌日、プレートをオーバーフローモードでウエルごとに450μlの洗浄バッファー(PBS、0.005%トゥイーン20)を用いて3回洗浄した後、撹拌ミキサー上で300μlのブロッキングバッファー(1%BSAと0.2%トゥイーン20を含むPBS)を各ウエルに室温で1時間かけて添加した。その後、7.5 ng/mlの5%ビオチニル化CD137 ECD(Peprotech社、カタログ番号310-15-1MG)を添加して1時間にわたってあらかじめインキュベートしたソート38の95%陰性上清の中でウレルマブを希釈し、結合プレートに移し、振盪しながら室温で1時間インキュベートした。次に、ELISAプレートをオーバーフローモードでウエルごとに450μlの洗浄バッファーを用いて3回洗浄した。その後、ブロッキングバッファーの中で希釈した10 ng/mlのストレプトアビジン-ポリ-HRPを50μl、ELISAプレートの各ウエルに添加した。室温で1時間インキュベートした後、プレートを450μlの洗浄バッファーを用いて3回洗浄し、50μlのTMBを添加してから5~10分間発色させた。最後に、50μlの1 M HClを添加することによって酵素反応を停止させ、参照波長として690 nmを用いてプレートを450 nmで読み取った。
【0272】
フローサイトメトリーによる、細胞に基づく結合アッセイ:ヒトCD137
【0273】
方法:Jurkat野生型細胞(CD137を発現していない対照細胞)とJurkat CD137細胞(クローンC6、1)を回収し、細胞数を求めた。細胞懸濁液を400×gで5分間遠心分離し、PBS-EB(1×DPBS、2%BCS H.I.、2 mM EDTA)の中で希釈した細胞懸濁液(40,000個の細胞)を40μl、非結合プレートの指定されたウエルに添加した。ソート38の陽性ヒットからの上清を、プレートのレイアウトに従って96ウエルのプレートに直接移した。陽性対照サンプル(ウレルマブ)をPBS-EBの中で希釈し、プレートに移した。最終サンプルは、ソート38の95%陰性上清であった。4℃で1時間インキュベートした後、プレートを100μlのPBS-EBで3回洗浄した。その後、細胞ペレットを、濃度が2μg/mlの二次抗体溶液(B細胞クローンに関しては:AF647で標識したヤギ抗ウサギIgG;ウレルマブに関しては:PEで標識したヤギ抗ヒトIgG)50μlとともに再懸濁させ、4℃で1時間インキュベートした。次に、細胞を再び100μlのPBS-EBを用いて3回洗浄した。その後、細胞ペレットを50μlのPBS-EBとともに再懸濁させ、NovoCyte 2060フローサイトメータ装置で分析した。各サンプルについて20,000の事象のPEとAF647の蛍光強度を記録し、蛍光強度の幾何平均MFIを計算した。データを最初に非特異的抗体の結合(ブランクとJurkat野生型細胞の結合)に関して補正し、次いでウレルマブで得られた結合レベルに規格化した。
【0274】
直接的なELISA:マウスCD137
【0275】
250 mg/mlのマウスCD137(Acro Biosystem社、カタログ番号41B-M52H7)を含有するPBSを50μl添加することによってELISAプレートを4℃で一晩被覆した。翌日、プレートをオーバーフローモードでウエルごとに300μlの洗浄バッファー(PBS、0.005%トゥイーン20)を用いて3回洗浄した後、振盪せずに270μlのブロッキングバッファー(PBS、1%BSA、0.2%トゥイーン20)を各ウエルに室温で1時間かけて添加した。その後、プレートをオーバーフローモードで300μlの洗浄バッファーを用いて3回洗浄し、それぞれの上清を50μl添加し、軽く撹拌しながらプレートを室温で1.5時間インキュベートした。オーバーフローモードで300μlの洗浄バッファーを用いて3回洗浄した後、ブロッキングバッファーの中で1:5000に希釈したHRP結合ヤギ抗ウサギIgG抗体を50μl、各ウエルに添加した。撹拌ミキサー上で室温にて1時間インキュベートした後、プレートをオーバーフローモードでウエルごとに300μlの洗浄バッファーを用いて3回洗浄し、次いで50μlのTMBを添加した。5~10分間発色させた後、ウエルごとに50μlの1 M HClを添加することによって酵素反応を停止させ、参照波長として690 nmを用いてプレートを450 nmで読み取った。このアッセイでは、85個のB細胞クローンからの上清が、明らかにバックグラウンドを超える信号を発生させた(0.1よりも大きなOD)。
【0276】
SPRによる種特異性:マウス
【0277】
ヒトCD137への結合に関して記載したのと同じSPRの設定を利用してマウスCD137への結合動態も調べた。しかしこの場合には、ヒトCD137 ECDをマウスCD137 ECD(Acro Biosystem社、カタログ番号41B-M52H7)で置き換えた。
【0278】
ヒットのスクリーニングによる選択
【0279】
B細胞上清に含まれる最終クローンのモノクローナル抗体の薬理学的特性が表4に示されている。次の工程において、選択されたクローンを用いてRNAを単離し、RT-PCRでウサギ抗体の軽鎖と重鎖の可変領域の配列(38-02-A04と38-27-C05)を増幅した。
【0280】
実施例3:ヒト化のためのクローンの選択
【0281】
ヒットをスクリーニングする間に得られたデータに基づき、2つのマウス交差反応CD137結合剤38-02-A04と38-27-C05のヒト化を、VH4またはVH3に基づくフレームワークにCDRを移植することによって実現し、抗PDL1ドメインとともにscDb形式にした。それに加え、選択されたクローンのCDR領域もVH3に基づくフレームワークに移植し、scFv形式のものを生成させた。最良の親和性と効力を実現するため、2つの異なる構造グラフトを用いたさらなる最適化(STRとIFの移植)を、scDbとしてヒトCD137に対する最良の親和性を示した1つのクローン(すなわち38-02-A04)で実施した。
【0282】
クローン38-02-A04について以下の移植バリアントを適用した:CDRグラフト(ヒトフレームワークへのウサギCDRの移植);IFグラフト(CDRグラフト+あらゆるウサギVL/VHインターフェイス残基の移植);FULLグラフト(CDRグラフト+AHoヒト化プロトコルに従うフレームワーク残基(変異の総数を減らすため、AIF残基((AHoに従うと)抗原に接触する可能性のあるウサギ残基)は、インターフェイスが形成されたときに溶媒のアクセス可能性が20%超変化する残基に限定した(ウサギフレームワーク残基))。バリアント38-02-A04 sc09と38-02-A04 sc13は両方ともVH3に基づくフレームワーク上のCDRグラフトであり、38-02-A04 sc13は、VH鎖上のG51C変異(AHo番号づけ)とVL鎖上のT141C変異(AHo番号づけ)を含んでいるため、フレームワーク領域内に人工的ドメイン間ジスルフィド架橋が形成される。驚くべきことに、ドメイン間ジスルフィド架橋を含む38-02-A04 sc13は、熱安定性が顕著に増大していることが見いだされた。
【0283】
(下記の表5に示されているように)小さなスケールでの発現を一晩かけて誘導することにより、不溶性封入体としての大腸菌の中でのタンパク質の異種発現を実施した。遠心分離プロトコルによって封入体を均質化された細胞ペレットから単離した。このプロトコルには、細胞残滓とそれ以外の宿主細胞不純物を除去する数回の洗浄工程が含まれていた。精製された封入体を変性バッファーの中に溶かし、scFvをスケーラブルなリフォールディングによってリフォールドすると、自然に折り畳まれた単量体scFvが数mg生成した。この時点で、標準化されたプロトコルを利用してscFvを精製した。リフォールディング後の生成物をアフィニティクロマトグラフィによって捕獲すると、精製されたscFvが得られた。表5に、作製されたscFv分子がまとめられている。CHOgro一過性トランスフェクションキット(Mirus社)を用いて哺乳動物コンストラクトをCHO-Sの中で発現させた。発現の5~7日後(細胞生存率は70%未満)に培養物を37℃で遠心分離によって回収し、タンパク質を、透明になった培養物上清からプロテインLアフィニティクロマトグラフィによって精製した後、必要な場合にはサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)によって最終精製した。作製した材料の品質を制御するため、標準的な分析法(SE-HPLC、UV280、SDS-PAGEなど)を利用した。
【0284】
実施例4:ヒト化scFvの薬力学的特徴
【0285】
4.1 ヒトCD137に対する親和性
【0286】
ヒトCD137に対するヒト化scFvの親和性を、T200装置(Biacore、GE Healthcare社)でのSPR分析によって求めた。この実験では、GE Healthcare社のヒト抗体捕獲キット(カタログ番号BR-1008-39)を用いてFcタグ付きヒトCD137(R&D Systems社、カタログ番号838-4B-100)を捕獲した。各分析物注入サイクルの後、抗ヒトFc特異的IgGを再生させ、新たな抗原を捕獲した。用量-反応多サイクル動態アッセイを利用し、分析物としてのscFvを、ランニングバッファーの中で0.19~0.45 nMの範囲の濃度に希釈して(3倍希釈ステップ)、捕獲されたCD137の上に注入した。会合時間と解離時間はそれぞれ300秒と720秒に設定した。得られたセンサーグラムは、1:1結合モデルを利用してフィットさせた。データは表6に示されている。
【0287】
4.2 種交差反応性(SPRによる、カニクイザルCD137とマウスCD137への結合)
【0288】
ヒトCD137への結合の測定に利用したのと同様のアッセイにおいて、カニクイザルFcタグ付きCD137(R&D Systems社、カタログ番号9324-4B-100)を用いてカニクイザルCD137に対する交差反応性を測定した。表7に、試験したすべてのscFvで得られた親和性がまとめられている。
【0289】
同系マウスがんモデルで抗体を試験するにはマウスCD137に対する交差反応性が必要であると考えられるため、直接的なヒト化のためのクローン選択に基づいて作製したscFvで、マウスCD137への結合を試験した。マウスCD137に対する交差反応性は、ヒトCD137への結合の測定に利用したのと同様のアッセイにおいて、Fcタグ付きマウスCD137(R&D Systems社、カタログ番号937-4B-050)を用いて測定した。表8に、試験したすべてのscFvで得られた親和性がまとめられている。
【0290】
4.3 競合ELISAによるCD137/CD137L相互作用の中和
【0291】
抗ヒトCD137 scFvはCD137へのCD137Lの結合に干渉しないことを示すのに、競合ELISAを利用した。市販されている抑制性ポリクローナル抗CD137ヤギ抗体(Antibodies online社、カタログ番号ABIN636609)を基準として用いた。実験設定に関しては、50 ng/mlのヒトCD137(Fcタグ付き、R&D Systems社、カタログ番号838-4B-100)でELISAプレートを一晩かけて被覆し、50μg/mlから出発したscFvの3倍ステップの系列希釈液をELISAプレートに添加した。その後、ビオチニル化CD137L(自社でのCD137Lのビオチニル化、Acro Biosystem社、カタログ番号41L-H5257)を添加し、結合したリガンドを、ストレプトアビジン-HRPを添加することによって検出した。最後に、HRP基質であるTMBを添加した。5分間発色させた後、1 MのHCl溶液を用いて反応を停止させた。690 nmを参照波長として吸光度を450 nmで測定した。データは、表9に示されている。38-02-A04クローンに基づくscFvは、CD137/CD137L相互作用を阻止しなかった。
【0292】
4.4 フローサイトメトリーによる、ヒトCD137を発現している細胞への結合
【0293】
選択されたscFvについて、ヒトCD137を発現している細胞への結合親和性の大きさも求めた。50,000個のCD137発現Jurkat細胞(または参照細胞系Jurkat NFAT)を、非組織培養物で処理した丸底96ウエルプレートに分布させた。細胞を100μlのPBSで2回、400×gで5分間遠心分離により洗浄した。細胞を、試験するscFvの染色バッファー(PBS、熱不活化2%BCS、2 mMのEDTA)と対照IgGウレルマブの染色バッファーの中に調製した10,000~0.64 ng/ml(scFvについては381.19~0.02 nM)の範囲の5倍ステップの系列希釈液100μlに再懸濁させた。撹拌ミキサー上で4℃にて1時間インキュベートした後、細胞を100μlの染色バッファーで3回洗浄した後、400×gで5分間遠心分離した。その後、scFvで処理した細胞を、APCで標識したプロテイン-Lを0.5μg/mlで含有する100μlの染色バッファーに再懸濁させ、ウレルマブ(ヒトIgG4)で処理した細胞を、APCで標識したヤギ抗ヒトIgGを2μg/mlで含有する100μlの染色バッファーに再懸濁させた。撹拌ミキサー上でプレートを4℃にて1時間インキュベートした後、100μlの染色バッファーで3回洗浄し、最終体積50μlの染色バッファーに再懸濁させた。最後に、ウエル1つにつき20,000事象のAPC信号を、Novocyteフローサイトメータシステム(ACEA Bioscience社)を用いてフローサイトメトリーによって分析した。各プレートでの個々のEC50値を、各プレートで得た参照分子ウレルマブのEC50に対して較正した(相対EC50:EC50(ウレルマブ)/EC50(試験するscFv))。
【0294】
表10にまとめられているように、38-02-A04クローンに基づくscFvについて、CD137を発現している細胞への結合を確認することができた。
【0295】
4.5 SPRによる、CD137に対する選択性 対 CD40とOX40に対する選択性
【0296】
抗ヒトCD137 scFvは、カニクイザルCD137に対する交差反応性を有することに加え、ヒトCD137に対して選択的に結合し、TNFRスーパーファミリーの他のメンバー(CD40やOX40など)には結合しないことが望ましい。そこで選択されたscFvがヒトCD40とヒトOX40に結合するかどうかを調べた。ヒトFcタグ付きCD40(AcroBiosystems社、カタログ番号CD0-H5253)とヒトFcタグ付きOX40(AcroBiosystems社、カタログ番号OX0-H5255)へのscFvの結合を、T200装置(Biacore、GE Healthcare社)でのSPR分析によって調べた。この実験では、ヒトFcタグ付きCD40とヒトFcタグ付きOX40は、GE Healthcare社のヒト抗体捕獲キット(カタログ番号BR-1008-39)を用いて捕獲した。各分析物注入サイクルの後、抗ヒトFc特異的IgGを再生させ、新たな抗原を捕獲した。scFvは、ランニングバッファーの中に希釈した180 nMという高濃度の分析物として注入した。会合時間と解離時間はそれぞれ300秒と720秒に設定した。得られたセンサーグラムを、1:1結合モデルを利用してフィットさせた。表11にまとめられているように、38-02-A04クローンに基づくscFvについては、ヒトFcタグ付きCD40またはヒトFcタグ付きOX40への結合はまったく観察されなかった。
【0297】
【表5】
【0298】
【表6】
【0299】
【表7】
【0300】
【表8】
【0301】
【表9】
【0302】
【表10】
【0303】
【表11】
【0304】
【表12】
【0305】
実施例5:ヒト化scFvの生物物理学的特徴づけ
【0306】
選択された分子を大規模に製造し(0.2l~1.2lの発現体積)、精製した後に遠心濃縮管を用いて10 mg/ml超に濃縮した(表12)。
【0307】
scFvで安定性の研究(例えば4週間の安定性研究)を実施した。この研究では、scFvを水性バッファー(150 mMのNaClを含む50 mMのリン酸塩クエン酸塩バッファー、pH 6.4)の中で10 mg/mlにし、-80℃未満と、4℃と、40℃で4週間保管した。最低限、この調製物の中の単量体とオリゴマーの一部を、1週間後と、2週間後と、各研究の終了時にSE-HPLCのピーク面積を積分することによって評価した。いくつかの分子については追加の時点を記録した。表13は、研究の7日目と、終点の28日目に得られた測定結果の比較である。
【0308】
それに加え、凍結-解凍(F/T)サイクルに対するscFv分子の適合性を評価した(コロイド安定性)。F/T安定性評価では、保管安定性の研究(SE-HPLC、SDS-PAGE)と同じ分析法とパラメータ(%単量体含量と%単量体損失)を適用し、5回のF/Tサイクルにわたって分子の品質をモニタした。表14は、F/Tサイクルを5回繰り返す間の単量体含量の変化を示している。どの分子もF/Tサイクルを繰り返した後に単量体含量の4%超の損失はない。
【0309】
蛍光染料SYPROオレンジを用いて分子の熱変性を評価した。関係する賦形剤条件でサンプルを調製し、qPCR装置でアッセイを実施した。蛍光の発生を、ソフトウエアのカスタム染料較正ルーチンを利用して検出した。試験サンプルを含有するPCRプレートに対して25℃から96℃までの温度勾配を1℃の増分で適用した。変性転移温度の中点(Tm)をソフトウエアGraphPad Prismにより数学的二次微分法を利用して計算し、曲線の屈曲点を得た。表15は、一般的なバッファー(150 mMのNaClを含むリン酸塩-クエン酸塩バッファー、pH 6.4)の中で調製した分子の融点を示している。
【0310】
選択された分子に対して短期間のpHストレス安定性研究を実施した。この研究では、scFv分子を、pH値が3.5~7.5の一連の水性(リン酸塩-クエン酸塩)バッファー系の中で1 mg/mlにした。それぞれのバッファー系の中で40℃にて2週間保管した後に単量体含量(単位は%)と%単量体損失を分析した(データは示さない)。研究中の単量体含量、単量体損失、濃度、濃度損失の時間経過を表にしてまとめたものを表16に示す。
【0311】
【表13】
【0312】
【表14】
【0313】
【表15】
【0314】
【表16】
【0315】
【表17】
【0316】
本発明の抗体を含む多重特異性分子
【0317】
本発明の抗体を含む多重特異性分子の代表例が表3に含まれている。
【0318】
実施例6:PDL1、CD137、HSA、MSAに対する親和性
【0319】
方法:
【0320】
異なる種のPDL1に対する親和性を、Biacore T200装置(GE Healthcare社)を用いたSPR測定によって求めた。ヒトIgGのFc領域に対して特異的な抗体を、アミンカップリングを利用してセンサーチップ(CM5センサーチップ、GE Healthcare社)の表面に固定化した。Fcを含有するモリソン形式を除くすべての形式について、異なる種からのPDL1-Fcキメラタンパク質を、固定化した抗体によって捕獲した。PDL1に対して特異的な分子の3倍系列希釈液(0.12~90 nM)をフローセルに3分間かけて注入し、解離を10分間モニタした。各注入サイクルの後、3 MのMgCl2溶液を1回注入して表面を再生させた。1:1ラングミュア結合モデルを用いて見かけの解離速度定数(kd)、見かけの解離速度定数(ka)、見かけの解離平衡定数(KD)を計算した。PDL1の場合と同じ設定を利用して、異なる種のCD137に対する親和性を求めた。しかし例外として、異なる種からのCD137-Fcキメラタンパク質は、固定化された抗体によって捕獲した。
【0321】
Fc含有形式を、ヒトIgGのFc領域に対して特異的な抗体によって直接捕獲した。PDL1細胞外ドメインまたはCD137細胞外ドメインの2倍系列希釈液(90~0.35 nMの範囲)を、バイオセンサーチップの表面に捕獲されたIgGへの結合に関して試験した。各注入サイクルの後、3 MのMgCl2溶液を1回注入して表面を再生させた。
【0322】
異なる種の血清アルブミン(SA)に対する分子の親和性を、Biacore T200装置(GE Healthcare社)を用いたSPR測定によって求めた。SAは、アミンカップリング化学を利用してCM5センサーチップ(GE Healthcare社)に直接カップルさせた。最良のアッセイ条件を見いだすために再生条件検討と表面性能試験を実施した後、用量-反応を測定し、得られた結合曲線を二重にチェックし(空の参照チャネルとゼロ分析物注入)、1:1ラングミュア結合モデルを用いてフィットして動態パラメータを再現した。アッセイは、pH 5.5の1×PBS-トゥイーンバッファーの中で実施した。
【0323】
結果:
【0324】
クローン38-02-A04と38-27-C-05に由来する2つのCD137特異的ヒト化コンストラクトのCDRグラフトについての結合動態の測定結果は、ほぼ同じ親和性を示している(表17の中のPRO885とPRO951の比較)。クローン38-02-04では、記載されている構造残基がフレームワーク領域に移植されることで、親和性が200倍超改善された(表17の中のPRO885とPRO1124の比較)。それに加え、クローン38-02-04に由来するコンストラクトはマウスCD137に結合することが観察されたが、親和性ははるかに低下していた。
【0325】
【表18】
【0326】
【表19】
【0327】
実施例7:ヒト化抗CD137ドメインによるCD137の抑制なしとCD137の中和
【0328】
PRO885が、CD137へのCD137リガンド(CD137L)の結合に干渉しないことを示すため、競合ELISAを利用した。市販の抑制性ポリクローナル抗CD137ヤギ抗体(Antibodies online社、カタログ番号ABIN636609)を参照基準とした。簡単に述べると、CD137でELISAプレートを一晩被覆し、PRO885の系列希釈液をELISAプレートに添加した。その後、ビオチニル化CD137Lを添加し、ストレプトアビジン-HRPを添加することにより、結合したリガンドを検出した。最後に、HRP基質であるTMBを添加した。5分間発色させた後、1 MのHCl溶液を用いて反応を停止させた。吸光度を450 nmで測定し、690 nmを参照波長とした。
【0329】
クローン38-02-A04に由来するCD137ドメインを含有するPRO885で得られた滴定曲線を図1Aに、クローン38-27-C-05に由来するCD137ドメインを含有するPRO951で得られた結合曲線を図1Bに示してある。参照抗体はCD137へのCD137Lの結合を完全に阻止したが、PRO885とPRO951はCD137へのCD137Lの結合を顕著には抑制しなかったため、非中和性であると定義した。
【0330】
実施例8:ウレルマブとウトリムマブに対する38-02-A04と38-27-C-05のエピトープビニング
【0331】
タンパク質PRO885(38-02-A04 CDRグラフトを含有するscDb)、PRO951(38-27-C-05 CDRグラフトを含有するscDb)、ウレルマブ(BMS社)、ウトリムマブ(Pfizer社)が結合するCD137上のエピトープを、SPRエピトープビニングアッセイにおいて、MASS-1装置(Sierra Sensors社)を用いて比較した。サンドイッチの構成を選択し、これら分子がCD137への互いの結合をブロックするかどうかを調べた。そこでPRO885とPRO951を高性能アミンセンサーチップ(HCA、Sierra Sensors社)の表面に固定化した。次に、抗原である90 nMのCD137をscDbの表面に捕獲した後、ただちに22.5 nMの二次抗体(PRO885、PRO951、ウレルマブ、ウトリムマブ)を注入した。各タンパク質の表面へのCD137の捕獲レベルと二次抗体の反応レベルを求めた(反応単位、RU)。関与するタンパク質の分子量と捕獲レベルに依存する理論的最大反応値(Rmax)を計算することにより、捕獲された抗原の表面でのタンパク質の相対結合レベル(%)を求めた。分子がCD137上で重複して結合したり似たエピトープに結合したりする場合には、捕獲されたCD137の上に注入される抗体の結合は観察されるはずがない。その帰結として、抗体の結合が観察されるときには、2つの抗体ペアが、重なっていないエピトープに結合している。
【0332】
PRO885がセンサーチップの表面に固定化されているとき、PRO951、ウレルマブ、ウトリムマブという3つの抗体すべてが、PRO885によって捕獲されたCD137への結合を示した。予想通り、対照として用いたPRO885に関する結合は観察されなかった(図2図3)。PRO951をセンサーチップの表面に固定化したとき、ウレルマブとPRO885は結合を示したが、ウトリムマブと、対照として用いたPRO951は、いかなる有意な結合も示さなかった(図2図4)。これらの結果は、クローン38-02-A04に由来するPRO885が、CD137の表面にあってウレルマブ、ウトリムマブ、38-27-C-05に由来するPRO951とは異なるエピトープに結合することを示している。それとは対照的に、PRO951は、ウトリムマブと重複するがウレルマブおよびPRO885とは重複しないエピトープに結合する。
【0333】
実施例9:CD137を発現しているトランスジェニックNFκB Jurkatレポータ細胞系の細胞に基づくアッセイを利用することによる、抗PDL1×CD137分子のCD137アゴニスト効果の評価
【0334】
このアッセイでは、Jurkat細胞でのCD137シグナル伝達の活性化を評価した。CD137シグナル伝達の活性は、Jurkatレポータ細胞系の中でCD137が誘導するNFκB活性化によって駆動されるルシフェラーゼの発現を測定することによって記録される。ルシフェラーゼの発現は、CD137の活性と直接相関している。さらに、シグナル経路の活性化に必要とされるCD137のクラスター化は、Jurkat細胞とPDL1発現細胞系の間の免疫学的シナプスの形成を通じて促進される。したがってレポータ細胞系の表面におけるCD137のクラスター化と活性化には、PDL1の発現が必要とされる。
【0335】
PDL1を発現しているCHO細胞(クローンA2)とHCC827細胞を、刺激なしで、またはPDL1の発現を増やすため10 ng/mlのIFNγで刺激して、96ウエルの培養プレート上にウエル1つ当たり25,000個の細胞という密度で播種した。陰性対照として、PDL1の発現がないCHO野生型細胞を同じ細胞密度で播種した。その後、抗PDL1×CD137分子のほか、競合するウレルマブの系列希釈液を調製し、これら細胞に添加した。次に、Jurkatレポータ細胞を、25 mg/mlのHSAを含有するアッセイ培地、または含有しないアッセイ培地の中に調製し、ウエル1つ当たり40,000個の細胞という細胞密度で添加した。ルシフェラーゼ試薬を添加してルシフェラーゼの発現を検出し、Jurkat細胞を添加してから6時間後または24時間後に蛍光リーダーで読み取った。試験サンプルの相対蛍光単位(RLU)をウレルマブで測定したRLU(図11A)またはPRO885で測定したRLU(図11B)に規格化することによってデータを分析し、CD137シグナル伝達活性化の相対値を得た。
【0336】
結果
【0337】
I.CHO-PDL1細胞を用いたPRO885とPRO951の試験:
【0338】
図5に示されているように、PRO885とPRO951は、PDL1を発現しているCHO細胞の存在下では、ウレルマブよりも効果的にCD137シグナル伝達を活性化した。PRO885が、最大の効力と、最大の活性化信号を示した(PRO885、EC50=11.72 ng/ml、PRO951:EC50=33.68 ng/ml;ウレルマブ:EC5=79.11 ng/ml、表18)。PDL1が不在だと、PRO885とPRO951のどちらもレポータ細胞の中でCD137を活性化できなかった一方で、ウレルマブは、PDL1とは独立にCD137シグナル伝達の活性化を示した。
【0339】
【表20】
【0340】
II.CHO-PDL1細胞を用いたSTR移植scDbの試験:
【0341】
図6と表19に示されているように、PDL1×CD137 scDb分子は、CD137シグナル伝達をウレルマブよりも効率的に刺激した。ウレルマブとは対照的に、PDLIを発現している標的細胞が存在しているときには、刺激効果はscDbでだけ見られた。すべてのscDbが同じ効力を示し、PDL1を発現しているCHO細胞の存在下ではNFκBレポータ遺伝子を高レベルで刺激した。次に、より少量のPDL1を発現している細胞の存在下で同じ分子を試験した。
【0342】
III.IFNγで刺激しないHCC827細胞を用いたSTR移植scDbの試験:
【0343】
図7と表20に示されているように、PDL1×CD137 scDb分子は、CD137シグナル伝達をウレルマブよりも効率的に刺激した。親和性が改善されたCD137ドメイン(STRグラフト38-02-A04、PRO1120、PRO1124)を有するscDbは、CDRを移植したCD137ドメインと比べてCD137活性化の効力が改善された(例えばPRO885、EC50=13.02 ng/ml、PRO1124:EC50=5.62 ng/ml、表22)。注目すべきことに、PDL1ドメインのSTRグラフト(PRO1126)で見られたようにPDL1に対する親和性が増大すると、親分子PRO885(PRO885、EC5=13.02 ng/ml、PRO1126:EC50=6.97 ng/ml、表20)と比べて効力も増大した。高濃度では、STRを移植したscDbは、活性化の信号が減少する傾向を示した。これは、STRを移植したCD137ドメイン(PRO1120とPRO1126)を持つ分子でより顕著であった。興味深いことに、PDL1ドメインのSTRグラフトをCD137のCDRグラフトと組み合わせると、高濃度での信号減少は観察されなかった(図7のPRO885とPRO1124の比較)。したがって効力は、CD137とPDL1への親和性が増加するにつれてわずかに増大した。高濃度での信号減少(釣り鐘型曲線)は、CD137への親和性が増大するにつれてより顕著になった一方で、PDL1に対する親和性増大はこの効果に寄与しなかった。したがって活性ができるだけ大きい濃度範囲を広げるには、CD137に対する親和性とPDL1に対する親和性の間の比のほうが、各ドメインの親和性の絶対値よりも重要であるように見える。
【0344】
【表21】
【0345】
IV.IFNγで刺激したHCC827細胞を用いたSTR移植scDbの試験:
【0346】
HCC827をIFNγで刺激すると、scDb分子の効力は変化せずに活性化の信号が増加した。注目すべきことに、試験したscDbの高濃度での信号低下はこの設定だと明白さが低下しており、PDL1の発現と相関していることを示唆する(図8と表21)。
【0347】
V.CHO-PDL1細胞を用いた、半減期が長い分子の試験:
【0348】
図9図10、表22、表23に示されているように、試験した半減期が長い抗PDL1×CD137分子は、CD137シグナル伝達をウレルマブと同程度に刺激した。モリソン形式(PRO1060、PRO1062)をscDb-scFv形式(PRO1057、PRO1058)と比較すると違いが存在していた。モリソン形式はより大きな効力を示した一方で、活性化信号の最大値は、scDb-scFvを試験したときのほうが顕著に大きかった。注目すべきことに、PRO1057は24時間インキュベートした後に著しく大きな活性化信号を示した。試験した半減期が長いすべての分子が、PDL1を発現している細胞の存在下でだけ、CD137シグナル伝達を活性化した。興味深いことに、両方の標的に対する親和性は似ているにもかかわらず、PRO1057はPRO1058よりもはるかに大きな信号最大値を示した。さらに、1価scDb-scFv PRO1057は、対応する2価モリソン形式PRO1060よりも強い活性化を示した。
【0349】
VI.IFNγで刺激しないHCC827細胞と、IFNγで刺激したHCC827細胞を用いた、半減期が長い分子の試験:
【0350】
図11と表24に示されているように、試験した半減期が長い抗PDL1×CD137分子は、より少量のPDL1を発現している細胞の存在下で、CD137シグナル伝達をウレルマブと同程度に刺激した。試験した分子の活性化最大値は、標的細胞をIFNγで刺激したときにさらに増大した。これは、CD137活性化と、標的細胞の表面でのPDL1の発現レベルが直接相関していることを示唆している。すでに述べたように、PRO1057は、モリソン形式と比べると、より高レベルのレポータ遺伝子活性化を示した。
【0351】
PDL1×CD137多重特異的コンストラクトによって活性化されるNFκBレポータ遺伝子のデータは、表26と表27にまとめられている。
【0352】
実施例10:ヒトPBMCと、PDL1を発現しているトランスジェニックCHO細胞を用いた細胞に基づくアッセイにおいて、PDL1阻害とCD137刺激の同時実施がT細胞刺激に及ぼす効果の評価
【0353】
抗ヒトCD3抗体であらかじめ被覆した96ウエルの培養プレートに、PDL1を発現しているCHO-A2細胞を、ウエル1つ当たり50,000~200,000個の範囲の3つの異なる密度で播種した。プレートを37℃、5%CO2で一晩インキュベートした。翌日、新鮮なヒト全血から末梢血単核細胞(PBMC)を密度勾配遠心分離によって単離した。ウエル1つ当たり100,000個のPBMCを96ウエルのプレートに添加した後、抗PDL1×CD137 scDb PRO885を、500、50、5 ng/mlの濃度で添加した。76時間インキュベートした後、細胞上清を回収した。BioLegend社のIL-2ヒトELISA MAXアッセイをキットの指示に従って利用して細胞上清の中のヒトインターロイキン-2(IL-2)のレベルを定量した。IL-2の濃度をIL-2標準曲線から内挿し、逆算し、PRO885の濃度に対してプロットしてEC50値を計算した。
【0354】
図12に示されているように、二重特異性分子PRO885の添加によってPD-1/PDL1相互作用の阻害とCD137の刺激が同時に起こり、IL-2がT細胞から分泌された。分泌されるIL-2のレベルは、抗CD3抗体とCFO-A2細胞の密度が大きくなるにつれて増大し、PRO885の濃度が大きくなるにつれて増大した。抗CD3抗体が不在だと、ベースとなるIL-2分泌と同等であった。PRO885だけが、抗CD3抗体との同時刺激によってT細胞を活性化させた。この知見は、PRO885だけが、活性化されたT細胞を刺激することを実証しているため、生体内PRO885は腫瘍特異的T細胞を特異的に刺激すると考えられることを示唆している。
【0355】
【表22】
【表23】
【表24】
【0356】
【表25】
【表26】
【表27】
【0357】
【表28】
【表29】
【表30】
【0358】
【表31】
【表32】
【0359】
【表33】
【表34】
【0360】
【表35】
【表36】
【0361】
【表37】
【0362】
【表38】
【0363】
【表39】
【0364】
実施例11:スーパー抗原SEAで刺激したヒトPBMCを用いた細胞に基づくアッセイにおいてPDL1阻害とCD137刺激を同時に実施する刺激効果の評価
【0365】
この実験では、PD-1/PDL1抑制とCD137アゴニズムの相乗効果を評価した。このアッセイでは、抗原提示細胞(APC)とT細胞それぞれの表面でPDL1の発現を誘導するとともに、T細胞の表面でCD137の発現を誘導するため、スーパー抗原ブドウ球菌エンテロトキシンA(SEA)で刺激した末梢血単核細胞(PBMC)を用いた。抗PDL1×CD137分子を適用することにより、2つのT細胞調節シグナル伝達経路を同時に標的とした。すなわち、二重特異性抗PDL1×CD137分子(PRO885)が媒介する免疫学的シナプスの形成を通じた抑制性PD-1/PDL1経路の抑制とCD137経路の活性化である。T細胞の活性化をインターロイキン-2(IL-2)の分泌によって評価し、ベンチマークとなる参照抗体アベルマブがPDL1を抑制することによって生じる効果と比較した。それに加え、抗PDL1 scFv(PRO997)を試験し、同じ実験設定でアベルマブと比較した。
【0366】
末梢血単核細胞(PBMC)を新鮮なヒト全血から密度勾配遠心分離によって単離した。その後、抗CD56抗体とMACS細胞分離キット(Miltenyi Biotec社)を用いてPBMCからNK細胞を欠乏させた。次に、ウエル1つ当たり100,000個のPBMCを96ウエルのプレートに添加し、次いでSEAを10 ng/mlの濃度で含有するアッセイバッファーの中のPRO885系列希釈液、PRO997系列希釈液、アベルマブ系列希釈液を添加した。37℃、5%CO2で96時間インキュベートした後、細胞上清を回収し、BioLegend社のIL-2ヒトELISA MAXアッセイをキットの指示に従って利用して細胞上清に含まれるヒトインターロイキン-2(IL-2)のレベルを定量した。IL-2の濃度をIL-2標準曲線から内挿し、逆算し、PRO885の濃度に対してプロットしてEC50値を計算した。
【0367】
図13に示されているように、二重特異性分子PRO885の添加によってPD-1/PDL1相互作用の阻害とCD137の刺激が同時に起こり、IL-2がT細胞から分泌された。PRO885は、アベルマブと比較すると、より大きなT細胞活性化とより優れた効力を示した(PRO885、EC50=39.92 ng/ml;アベルマブ、EC50=69.89、表28)。この知見は、二重特異性抗PDL1×CD137 scDb PRO885が、アベルマブによる単夏PDL1阻害よりもT細胞活性化を強く誘導できることを実証している。さらに、親和性が大きい抗PDL1 scFv PRO997は、アベルマブよりもT細胞を刺激する効力が大きいことが見いだされた(PRO997、EC50=40.86 ng/ml;アベルマブ、EC50=90.18 ng/ml、表28)。
【0368】
【表40】
【表41】
【0369】
実施例12:ヒト細胞系由来の肺がん異種移植片モデルHCC827における抗CD137抗体の抗腫瘍効果の評価
【0370】
抗CD137抗体であるPRO1138の抗腫瘍活性を、Taconic社の免疫不全NOGマウス系統と同種異系ヒト末梢血単核細胞を用い、ヒトHCC827 NSCLC異種移植片で評価した。移植されたヒトTリンパ球は、外来の主要組織適合性(MHC)クラスIおよびIIに対してと、マウス細胞からの他の抗原に対して異種反応性を示す。その結果として、Tリンパ球はさまざまな臓器で炎症性浸潤を引き起こし、数週間後にマウスは死に至る。これは、異種移植片対宿主病(xGVHD)として知られるプロセスである。免疫調節抗体(抗PDL1、抗CD137など)を用いて処置すると、xGVHDが悪化することが示された(Sanmamed MF他「ニボルマブとウレルマブは、Rag2-/-IL2Rgnull免疫不全マウスに移植されたヒトTリンパ球の抗腫瘍活性を増強する」Cancer Res 2015年;第75巻(17):3466~3478ページ)。
【0371】
研究の設定と処置スケジュール
【0372】
雌のNOGマウスの片側に5×106個のHCC827細胞を注射した。細胞は、PBS 中の50%細胞懸濁液と50%マトリゲルの混合物にして100μlの全注射体積で注射した。腫瘍細胞をNOGマウスに注射して腫瘍の移植(群の腫瘍体積中央値は80~100 mm3)が成功した後、マウスに静脈内注射することによって5×106個のヒトPBMCで置換した。無作為化の当日、各群の4匹のマウスをドナーAのPBMCで再構成し、別の4匹のマウスをドナーBのPBMCで再構成した。処置はPBMCを注入してから1~2時間後に開始し、以下のように適用した。
【0373】
【表42】
【0374】
体重の測定と、ノギスによる腫瘍体積の測定を、週に2回実施した。研究結果に応じて決められた時点でマウスの生を終わらせた。
【0375】
1匹を除く他のすべてのマウスの生を「同じ」時点(17日目と18日目)に終わらせた。1匹のマウスは異種移植片対宿主病(xGVHD)の発症を理由としてそれ以前の14日目に安楽死させた。各群の第1の半数のサンプル回収と処理を1日目に実施し、第2の半数のサンプル回収と処理を、処理能力が理由で翌日に実施した。異なる2人のドナーからのPBMCで再構成したマウスは、2つのサンプリングコホートの同等な代表であった。
【0376】
結果
【0377】
免疫不全NOGマウス系統と同系ヒト末梢血単球細胞(hPBMC)を用い、ヒトHCC827 NSCLC異種移植片における抗CD137 IgG4(PRO1138またはウレルマブ)の抗腫瘍活性を、腫瘍の体積を測定することによって評価した(図14)。腫瘍の体積は、マウスを17日目または18日目に安楽死させるまで、週に2回測定した。腫瘍の体積は、処置開始時の腫瘍の体積に規格化した(相対腫瘍体積)。図14に示されているように、PRO1138(抗CD137 IgG4)モノクローナル抗体を用いて処置すると、ビヒクル対照群またはウレルマブと比べて腫瘍の増殖が少なかった。注目すべきことに、PRO1138を用いて処置すると体重中央値は減少しないため、この分子が、試験したレベルの用量ではよく許容されることを示している一方で、ウレルマブを用いて処置すると、処置開始後17日目に体重中央値が減少した(図15)。
【0378】
実施例13:ヒト臍帯血由来のCD34+造血幹細胞(UCB HSC)を移植したNOGマウスにおける抗CD137抗体と抗PDL1抗体の併用療法の抗腫瘍効果の評価
【0379】
本発明の抗CD137 IgG4(PRO1138、配列番号88と89)と抗PDL1 IgG1(PRO1196、配列番号154と155)の併用療法の抗腫瘍活性を、ヒト臍帯血由来のCD34+造血幹細胞(UCB HSC)を移植したNOGマウス系統を用い、ヒトHCC827 NSCLC異種移植片で評価した。
【0380】
研究の設定と処置スケジュール
【0381】
ヒト臍帯血由来のCD34+造血幹細胞(UCB HSC)を移植した雌のNOGマウスにHCC827 NSCLC細胞を皮下注射した。マウスの片側に5×106個のHCC827細胞を注射した。細胞は、PBS中の50%細胞懸濁液と50%マトリゲルの混合物にして100μlの全注入体積で注射した。腫瘍細胞をNOGマウスに注射して腫瘍の移植が成功した(群の腫瘍体積中央値は80~100 mm3)後、マウス(n=10)を無作為化して複数の処置群に分けた。
【0382】
【表43】
【0383】
体重の測定と、ノギスによる腫瘍体積の測定を、週に2回実施した。
【0384】
結果
【0385】
本発明の抗CD137抗体とPDL1阻害剤の組み合わせ(PRO1138とPRO1196の組み合わせ)の抗腫瘍活性を、腫瘍の体積を測定することによって評価した(図16図18)。腫瘍の体積は、マウスを25日目または29日目または30日目に安楽死させるまで、週に2回測定した。腫瘍の体積は、処置開始時の腫瘍の体積に規格化した(相対腫瘍体積、RTV)。図16図18に示されているように、PRO1138とPRO1196の組み合わせは相乗効果をもたらし、腫瘍の増殖が明らかに安定化した。この併用療法では、単剤を用いた療法よりも腫瘍の増殖がはるかに少なかった。すべての統計値を、GraphPad Prismバージン6を用いて計算した。統計的有意性は、ボンフェローニ補正を適用した一元配置分散分析検定を利用して求めた。グラフは、平均値と95%CI(信頼区間)を示している。
【0386】
実施例14:同系MC38結腸がんモデルにおいてPDL1阻害とCD137局所的刺激を同時に実施する抗腫瘍効果の評価
【0387】
追加して、本発明の多重特異性抗体の抗腫瘍活性を、免疫系が完全な同系C57BL/6マウスにおけるMC38結腸がんモデルで試験する。このモデルは他の研究者によって使用されてきており、CD137アゴニストとPD-1/PDL1アンタゴニストの併用療法による増強された抗腫瘍活性が示されている(Chen S他「4-1BBアゴニストとPD-1アンタゴニストの組み合わせが、免疫原性が弱い腫瘍モデルにおいて抗腫瘍エフェクタ/記憶CD8 T細胞を活性化させる」Cancer Immunol Res 2014年;第3巻(2):149~160ページと、Rodriguez-Ruiz ME他「放射線療法のアブスコパル効果は、免疫刺激性mAbと組み合わせることによって増強されるとともに、CD8 T細胞とクロスプライミングに依存する」Cancer Res 2016年;第76巻 (20):5994~6005ページ)。
【0388】
本発明による多重特異性抗体の抗CD137ドメインと抗PDL1ドメインの両方ともマウスPDL1とは交差反応しないため、CrownBio社によって確立された改変ヒトCD137ノックインモデルを使用する。このモデルにおいてCRISPR/Cas9系を利用し、マウスCD137の細胞外ドメインと膜貫通ドメインを、C57BL/6マウスバックグラウンドの中でヒトCD137の各配列と置き換えた。それに加え、CMVプロモータの制御下でマウスPDL1の代わりにヒトPDL1を発現する改変MC38腫瘍細胞系を使用する。本発明の多重特異性抗体が腫瘍の体積に及ぼす効果を、ND021と同じPDL1特異的可変ドメインを含有するヒト化IgG1と、同じCD137特異的可変ドメインを有するヒト化IgG4を用いた組み合わせ処置と比較する。局在化した抗腫瘍免疫応答のさらなる証拠を提供するため、腫瘍の中に浸潤するリンパ球(CD8+T細胞、CD4+T細胞、制御性T細胞など)の数をフローセルによって分析する。抗CD137/抗PDL1で処置した後の全身の免疫系の調節を調べるため、肝臓と脾臓の中のCD4+ T細胞とCD8+ T細胞の数を、フローサイトメトリーと、可能であれば免疫組織化学によって分析する。さらに、全身のIFNγのレベルは、定量的ELISA法を利用して分析することができよう。抗CD137/抗PDL1併用療法の安全性プロファイルをさらに特徴づけるため、(臨床において抗CD137療法で観察された)肝臓毒性に主に関係する臨床化学病理学パラメータ(アラニンアミノトランスフェラーゼ、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼのレベル上昇など)を評価することができよう。
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
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図9
図10
図11
図12
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【配列表】
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