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特許7438941テルペンの濃縮のための方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】テルペンの濃縮のための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/185 20060101AFI20240219BHJP
   A61K 31/352 20060101ALI20240219BHJP
   A61K 31/01 20060101ALI20240219BHJP
   B01D 11/02 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
A61K36/185
A61K31/352
A61K31/01
B01D11/02 A
B01D11/02 Z
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020524115
(86)(22)【出願日】2018-10-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-14
(86)【国際出願番号】 CA2018051374
(87)【国際公開番号】W WO2019084679
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-11-01
(31)【優先権主張番号】62/578,971
(32)【優先日】2017-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520098040
【氏名又は名称】ウィスラー テクノロジーズ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル エリク ランテラ
(72)【発明者】
【氏名】ブリシュナ ソラヤ カマル
(72)【発明者】
【氏名】ケルビン キン-ウィン ウォン
【審査官】柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0190442(US,A1)
【文献】国際公開第2016/116628(WO,A1)
【文献】特開平05-146287(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00-36/9068
B01D 11/00-12/00
C12M 1/00-3/10
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生の大麻植物又は冷凍した生の大麻植物から分離された大麻樹脂からの活性化した抽出製品の生産の方法であって、
前記大麻樹脂と疎水性の有機溶剤、又は、ココナツオイルと同じ成分を有する食用脂質の何れかを備える抽出剤との混合物を密封容器へ導入することと、
抽出された混合物を生産するために、前記大麻樹脂からカンナビノイド及びテルペンを抽出するために前記密封容器の中の前記混合物を加熱することと、
前記密封容器の中の前記抽出された混合物へ水を追加することと、
大気圧よりも約420kPaまで高い圧力下での摂氏約90度から140度の範囲の温度において約1時間から25時間の前記密封容器における前記抽出された混合物及び水の蒸煮による、カンナビノイドを脱カルボキシル化することと、
約8時間から24時間の前記密封容器の中における前記混合物及び水を冷却及び分離することと、
前記密封容器の上方側部分から活性化した抽出製品を取り出すことと、
を備えた方法。
【請求項2】
前記抽出された混合物及び水の蒸煮による前記カンナビノイドを脱カルボキシル化することは、摂氏約125度の温度及び大気圧よりも約150kPaまで高い圧力における蒸煮を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
大気圧よりも約80kPa高い圧力において2時間から3時間の蒸煮をすることを備えた、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記抽出製品は、テルペンに対するカンナビノイドの質量比が、約1:20から1:1の範囲となる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
テルペンは、前記活性化した抽出製品において少なくとも5%の活性化合物を備えた、請求項1から請求項4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
カンナビノイド及びテルペンを抽出した後の前記混合物から前記大麻樹脂をろ過することを備えた、請求項1から請求項5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記大麻樹脂をろ過することは、前記混合物を蒸煮することに先立って起こる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記抽出剤は、食用脂質を備えた、請求項1から請求項7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記抽出剤は、疎水性の有機溶剤を備えた、請求項1から請求項7の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記抽出製品から溶剤を蒸発させること及び残留物を除去することを備えた、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記抽出された混合物へ水を追加することは、追加する水が、前記抽出剤と1:1の質量比とされた、請求項1から請求項10の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記密封容器の底部からの残留混合物の除去することと、2次抽出製品を生産するための前記残留混合物から水及び抽出剤を分離することと、を備えた、請求項1から請求項11の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記2次抽出製品の前記混合物を伴って前記密封容器へ導入することを備えた、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
生の大麻植物から前記大麻樹脂を分離することによって前記混合物のための前記大麻樹脂を得ることを備えた、請求項1から請求項13の何れか1項に記載の方法。
【請求項15】
生の大麻植物から前記大麻樹脂を分離した後に、前記大麻樹脂は、前記抽出剤と速やかに混合される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記密封容器は、前記密封容器の下方側の部分における注入ポートと、前記密封容器の上方側の部分における製品ポートと、を有し、前記活性化した抽出製品を前記密封容器の上方側の部分から取り出すことは、前記活性化した抽出製品の上層の底部の高さが、前記製品ポートの高さの近くになるまで、追加の水を前記注入ポートへ導入することを備える、請求項1から請求項15の何れか1項に記載の方法。
【請求項17】
生の大麻植物又は冷凍した生の大麻植物から分離された大麻樹脂から活性化した抽出製品を生産するための装置であって、
前記大麻樹脂及び疎水性の有機溶剤、又は、ココナツオイルと同じ成分を有する食用脂質の何れかを備える抽出剤を受け入れるための頂部において密封可能な開口を有し、前記大麻樹脂と前記抽出剤との混合物から、抽出された混合物を生産する、密封筐体と、
前記密封筐体の下方側の側部において水を受け入れるための注入ポートと、
前記密封筐体の上方側の側部において高品質の活性化した抽出製品を取り出すための製品ポートと、
前記密封筐体の底部における排出ポートと、
前記密封筐体の内部において、前記製品ポートの高さから前記製品ポートの下方側の所定の高さまでの材料のための視界を使用者に提供するために配置された覗き窓と、
大気圧よりも約420kPaまで高い圧力下での摂氏約90度から140度の範囲の温度において約1時間から25時間の前記密封筐体における前記抽出された混合物及び水の蒸煮によってカンナビノイドを脱カルボキシル化するための加熱要素と、
圧力開放バルブを有する蓋と、
を備える、装置。
【請求項18】
生の大麻植物又は冷凍した生の大麻植物から分離された大麻樹脂からの活性化した抽出製品の生産の方法であって、
生の大麻植物又は冷凍した生の大麻植物から分離された前記大麻樹脂と、食用脂質と、水と、を密封容器へ導入することと、
前記密封容器の中の前記大麻樹脂からカンナビノイド及びテルペンを抽出することと、
大気圧よりも約420kPaまで高い圧力下での摂氏約90度から140度の範囲の温度において約1時間から25時間の前記密封容器における前記大麻樹脂、前記食用脂質及び水の蒸煮による、カンナビノイドを脱カルボキシル化することと、
約8時間から24時間の前記密封容器の中における混合物及び水を冷却及び分離することと、
前記密封容器の上方側部分から活性化した抽出製品を取り出すことと、
を備えた方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年10月30日に出願された米国仮特許出願第62/578,971号の優先権を主張する。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、大麻からの化合物の抽出及び脱カルボキシル化に関する。
【背景技術】
【0003】
大麻は、カンナビノイド及びテルペンを含む、医学的及び商業的に重要な多くの化合物を含んでいる。テルペンの大部分(しばしば、50%よりも大きい)は、植物の乾燥時に失われる。ほとんどの抽出は、最終生産物を作り出すために乾燥した材料に依存しており、抽出前のテルペンの大幅な損失が生じる。さらに、エタノール抽出のような現在の溶剤抽出法は、抽出の間に多量のテルペンを失う。結局、カンナビノイドの治療効果の利用を意図する大麻製品は、脱カルボキシル化処理並びに任意の脱ろう及び徐々に増す措置を受けなければならくなり、このことは、テルペンの更なる損失を生じる。
【0004】
発明者は、大麻からの化合物の抽出のための改良された方法及びシステムの必要性を判断した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2019/056126号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、大麻からの化合物の抽出及び脱カルボキシル化のための方法及びシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の1の態様は、大麻樹脂から活性化抽出製品を生産する方法を提供する。方法は、樹脂の混合物及び抽出剤を密封容器へ導入することと、カンナビノイド及びテルペンを樹脂から抽出するために混合物を加熱することと、混合物へ水を追加することと、カンナビノイドを脱カルボキシル化するために、大気圧よりも約0~420kPa高い範囲の圧力下での摂氏約90度~140度の範囲の温度における約1時間~25時間の期間の混合物と水の蒸煮(cooking)と、約8時間~24時間の期間の混合物及び水の冷却及び分離を許容することと、密封容器の上方側部分から活性化抽出製品を取り出すことと、を備える。
【0008】
抽出製品は、テルペンのカンナビノイドに対する質量比が1:1から1:20の範囲で構成してもよい。テルペンは、活性化した抽出製品において少なくとも5%の活性化合物を備えてもよい。生の大麻樹脂から生成するときは、活性化した抽出製品は、同じ栽培品種の乾燥大麻のテルペン含有量と比較して最大150%までテルペンを濃縮することができる。
【0009】
いくつかの実施形態では、方法は、カンナビノイド及びテルペンを抽出した後に、混合物から樹脂をろ過することを備える。いくつかの実施形態では、樹脂のろ過は、混合物の蒸煮に先立って起こる。
【0010】
いくつかの実施形態では、抽出剤は、食用脂質を備える。いくつかの実施形態では、抽出剤は、疎水性の有機溶剤を備える。いくつかの実施形態では、方法は、抽出製品からの溶剤を蒸発させること及び残留物を除去することを備える。
【0011】
いくつかの実施形態では、方法は、密封容器の底部から残留混合物を除去することと、二次的な抽出製品を生産するための残留混合物からの水及び抽出剤の分離と、を備える。いくつかの実施形態では、方法は、混合物を伴う二次的な抽出製品を密封容器へ導入することを備える。
【0012】
本発明のさらなる態様及び実施例の詳細は、以下に説明される。
【0013】
以下の図面は、同様の参照番号が、同様の部分を示す実施形態を説明する。実施形態は、添付の図面において、限定ではなく例として示されている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本開示の1つの実施形態によるテルペンが濃縮された抽出製品を生産する方法を実行するための容器の例を示す。
図2図2は、本開示の1つの実施形態によるテルペンが濃縮された抽出製品を生産する方法を実行するための容器のもう一つの例を示す。
図2A図2Aは、図2のA-A線に沿った断面図である。
図2B図2Bは、図2の容器の側面図である。
図2C図2Cは、図2の容器の平面図である。
図3A図3Aは、様々な系統の乾燥大麻及び本開示による方法例によって生成された抽出製品のテルペン含有量を示す。
図3B図3Bは、様々な系統の乾燥大麻に対する本開示による方法例によって生成された抽出製品のテルペンの増加率を示す。
図3C図3Cは、乾燥大麻及び本開示による方法例によって生成された抽出製品のテルペンの含有量の分布を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の開示は、単一容器での反応において大麻樹脂からテルペンが濃縮された大麻抽出物を作り出すための方法、関連する装置及びシステムを提供する。いくつかの実施形態では、使用される出発原料は、生又は冷凍の植物材料から分離された大麻樹脂である。いくつかの実施形態では、カンナビノイドは、テルペン、樹脂及び抽出剤と混合している間に脱カルボキシル化される。
【0016】
特定の実施形態は、脱カルボキシル化された抽出製品(「経口で有効な」抽出製品又は単に「活性化した」抽出製品と称されることもある)を生産するための方法及びシステムを提供する。以下で詳しく説明するように、乾燥大麻材料又は乾燥大麻材料からの抽出物において見受けられるものよりも高いテルペンのカンナビノイドに対する比率を保つ抽出物を生の又は冷凍の大麻(植物物質又は物理的に分離された大麻樹脂)から出発して生成することができる。乾燥した材料から出発しても、抽出及び脱カルボキシル化処理は、典型的な大麻抽出処理よりも多くのテルペンを保つ。生の大麻は、溶剤又は食用食品母材へ直接注入されると共に脱カルボキシル化されており、最終的な油が単一の加圧抽出容器へ分離される。油は、ろ過されると共に残存している水から分離される。
【0017】
説明の単純及び明確のために、参照番号は、相当する又は同等の要素を示すための図面の中で繰り返されてもよい。番号の詳細は、ここに記載される例の理解を提供するために説明される。例は、これらの詳細なく実行されてもよい。別の例では、よく知られた方法、手続き及び構成要素は、記載された例が曖昧になることを避けるために詳しく記載されていない。
【0018】
本開示による方法例では、バブルハッシュとして知られている生の大麻樹脂が抽出処理のための出発材料として使用されている。以下に記載されているように、樹脂は、疎水性の有機溶剤又はココナツオイルのような食用脂質を備える抽出剤と共に混合される。実施例では、樹脂の混合物及び抽出剤は、同じ出発材料を使用する他の方法によって生産された製品と比較して相対的に高レベルのテルペンを有する最終的な活性化した製品を生産するために、加熱されており、それから、特定の条件下で分離される。言い換えると、特定の実施形態は、現行技術において典型的に採用されている他の方法よりも少ないテルペンの損失をもたらす抽出方法を提供する。
【0019】
最高濃度のテルペンを伴う大麻の特定の束からの抽出物は、収穫後に抽出のために直接活用される(又は、収穫後に直接冷凍されており、その後抽出のために活用される)生の大麻材料から生成された大麻樹脂から生産される。大麻樹脂は、例えば、特許文献1に記載されたように植物材料を処理することにより得られてもよく、ここでは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0020】
バブルハッシュ又は大麻樹脂に生成された後、樹脂は、本開示による方法によって処理するために溶剤又は油に直ちに溶かされてもよく、又は、将来の使用のために凍らされてもよい。いくつかの実施形態では、抽出剤に対する樹脂の比率(質量比)は、抽出剤が食用脂質ならば、約1:1.5から1:3の範囲とされており、又は、抽出剤が疎水性のの有機溶剤ならば、約1:2から1:10の範囲とされている。
【0021】
樹脂及び抽出剤は、密封容器の中へ配置される。図1は、本開示によって抽出処理を実行するための容器100の例を示す。容器100は、撹拌機120と、圧力及び温度制御器130と、を有する密封筐体110を備える。筐体110は、樹脂と抽出剤の混合物を受け取るための入力ポート112と、水を受け取るための注入ポート114と、テルペンが濃縮された抽出物を除去するための製品ポート116と、水並びに樹脂及び抽出剤を除去する排出ポート118と、を有する。例えば、一群の処理の最後において、筐体110から沈殿した樹脂を除去するための樹脂出力ハッチ119が、容器の底部119に設けられてもよい。
【0022】
示された例では、撹拌機120は、モータ122、シャフト124及びインペラ126を備える。撹拌機120は、別の実施形態では別の形を採用してもよい。
【0023】
樹脂と抽出剤とは、樹脂と抽出剤との混合物を作り出すために容器100の中で撹拌機120によって混合され、混合物は、大麻物質(カンナビノイド及びテルペン)を抽出するために加熱される。いくつかの実施形態では、樹脂と抽出剤との混合物は、以下に示されるように、樹脂をろ過する又は水を追加する前に約20~60分の間加熱される。いくつかの実施形態では、消耗した樹脂のいくつか又は全ては、処理におけるこの時点で、任意に、混合物からろ過して取り除かれてもよい。例えば、樹脂がたくさんある状況において、多少の樹脂が、脱カルボキシル化の前にろ過して取り除かれてもよく、かつ、さらに、脱カルボキシル化の後に同じ抽出剤に溶解されてもよい。いくつかの実施形態では、消耗した樹脂は、任意で、脱カルボキシル化の後にろ過して取り除かれてもよい。
【0024】
脱カルボキシル化のために、水は、油又は溶剤に対して1:1の比率(質量比)で混合物に追加される。大麻樹脂、抽出剤及び水の混合物(樹脂が、既にろ過して取り除かれているならば、抽出剤と水の混合物)は、大気圧よりも約0~420kPa高い範囲の圧力下での摂氏約90度~140度の範囲の温度において、約1時間~24時間の間、脱カルボキシル化のために蒸煮される。いくつかの実施形態では、大麻樹脂、抽出剤及び水の混合物は、大気圧よりも約0~150kPa(又はいくつかの例では、約80kPa)高い範囲の圧力下での摂氏約125度の温度において、約2時間~3時間の間、蒸煮される。蒸煮の後、混合物は、通常、蒸煮期間の後約8時間~24時間の間冷却される。
【0025】
混合物が分離された後、容器の最上部の油又は溶剤は、高品質の抽出製品を形成しており、例えば、製品ポート116を通じた上澄み液の移動又は吸出しによって容器から取り除かれる。水は、高品質の抽出製品の上層と製品ポート116のレベルの近くの水/樹脂を伴う下層との間のインターフェイスのレベルを上げるために、注入ポート116を通じて容器100の底部に追加されてもよい。いずれも、又は、少なくとも有意でない量の容器の底部における樹脂又は水を含まない限りにおいては、容器の上方側の部分から抽出製品を取り出すための何らかの適切な処理が用いられてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、高品質の抽出製品の層は、ピペット又は抽出製品を静かに注ぐためのビーカーによって容器100から取り出されてもよい。いくつかの実施形態では、抽出製品は、フィルタを通過させてもよい。
【0026】
食用脂質が使用された場合は、製品ポート116から取り出された抽出製品は、最終生産物であり、かつ、最もテルペンが濃縮された抽出物となるであろう。溶剤が使用された場合には、溶剤はその後蒸発され、残留物は最終生産物を作り出すために取り除かれるが、いくらかのテルペンの損失をもたらす。これらの抽出製品(抽出剤として食用脂質又は溶剤の何れかを使用して得られているかどうかにかかわらず)は、高品質と考えられると共に何らかの残留水を有するべきではない、そして、ここでは、「1次抽出製品」と称される。
【0027】
上澄み液の移動の後に使い残された、残っている抽出剤、樹脂及び水の残留混合物は、例えば、排出ポート118を通じて、容器100から取り除かれ、それから、フィルタを通過すると共に樹脂が、水及び抽出剤から取り除かれる。水と抽出剤とは、漏斗において分離される。残っている油又は抽出物は、2次品質と考えられると共に残留水を含む、そして、ここでは、「2次抽出製品」と称される。
【0028】
2次抽出製品は、乾燥材を伴って乾燥されるてもよく又はをさらなる水を伴って再度加熱されてもよい、そして、1次抽出製品と同等の品質の高品質製品へ変えるために最初の品質が取り除かれる。2次抽出製品は、新しい生産サイクルの開始時点において投入する抽出剤の一部として追加されてもよい。
【0029】
ろ過(脱カルボキシル化前又は後の何れか)によって分離された樹脂は、乾燥させたときに、大抵カンナビノイドが5%まで含まれると共に、大麻を食用にするための代替品の粉末として使用することができる。
【0030】
図2、2A、2B及び2Cは、本開示によって抽出処理を実行するための容器200のもう一つの例を示す。容器200は、その上に圧力開放バルブ213を備えた蓋212を有する密封筐体210を備える。蓋212は、樹脂及び抽出剤を受け入れるために開放することができると共に、閉鎖機構211によって閉鎖したままとされている。撹拌機は、樹脂と抽出剤とを混合するために、蓋212が解放されている間に筐体210の内部に挿入することができる。筐体は、その下方側の側部の入力ポート214、その上方側の側部の製品ポート216並びに排出ポート218及び底部を有する。いくつかの実施形態では、排出ポート218は、作り付けのバルブを含む。いくつかの実施形態では、排出ポート218は、作り付けのフィルタを含む。
【0031】
筐体210は、その側部に沿って覗き窓219も有する。覗き窓219は、使用者が、分離された混合物の最上層における高品質の抽出製品の最上層の高さを知ることができるように、製品生産物216の高さから製品生産物216の下方側の所定の高さまでの筐体210の内部の含有量のための視界を使用者に提供するために配置される。
【0032】
いくつかの実施形態では、容器200は、その壁に組み込まれた加熱要素220を有する。容器の壁は、いくつかの実施形態において絶縁されてもよい。
【0033】
操作例では、樹脂及び抽出剤が、開放した蓋212を通じて追加され、任意で、手動又は撹拌装置を用いて混合される。いくつかの実施形態では、樹脂及び抽出剤は、ほぼ均質な溶液を作り出すために混合している間、加熱される。蓋212は閉鎖され、水が追加され、混合物は、カンナビノイドから脱カルボキシル化をするために蒸煮される。混合物は、例えば、上記で示したように高温下及び高圧下で蒸煮されてもよい。蒸煮後、近くに接続されたティー213を介して圧力が開放され、それから、製品ポート216の近くから得られる高品質の抽出製品の上層の底部まで水位レベルを上げるために、追加の水がポート214を通じて導入されているため、油は、製品ポート216を通じて排出する。ひとたび、高品質製品が取り除かれると、残された材料は、製品ポート216を開放することによって取り除かれる。材料は、重力とポート216を通じて導入された圧縮空気との組み合わせによって取り除かれてもよい。材料が取り残された後は、蓋212は、容器200の内部の清掃におけるアクセスのために開放される。
【0034】
いくつかの実施形態では、比率は、出発材料のために使用される大麻の系統に依存して変わり得るけれども、高品質の抽出製品は、テルペンのカンナビノイドに対する比率(質量比)が1:20から1:5の範囲を有している。例えば、図3Aから3Cは、抽出剤としてココナツオイルを使用し、様々な品種又は系統の生/冷凍の製品からの樹脂を使用して生成した高品質の抽出製品と同じ品種/系統の乾燥植物材料との間の比較結果を示す。図3Aは、様々な品種又は系統について、乾燥大麻及び本開示による方法例によって生成された抽出製品のテルペンの含有量を示し、図3Bは、様々な品種又は系統について、乾燥大麻から本開示による方法例によって生成された抽出製品へのテルペン増加率を示す。異なる系統からの乾燥大麻は異なるカンナビノイドに対するテルペンの比率を有し、本開示による方法例によって生成された抽出製品のカンナビノイドに対するテルペンの比率は、必ずしも乾燥大麻のカンナビノイドに対するテルペンの比率と対応しない。例えば、「ダンスホール」系統は、乾燥大麻のためにテストしたものの中でカンナビノイドに対するテルペンの比率の最も低い比率の1つを有し、抽出製品の中ではカンナビノイドに対するテルペンの比率が最も高い比率の1つを有する(高い濃縮度を有する)。一方、「CBDシャーク」系統は、乾燥大麻では(ダンスホールと比較して)わずかに高いカンナビノイドに対するテルペンの比率を有するが、抽出製品では有意に低いカンナビノイドに対するテルペンの比率を有する(低い濃縮度を有する)。しかしながら、乾燥大麻系統及び本開示による方法例によって生成された抽出製品のテルペン含有量の分布を示す図3Cに示されるように、例示されている全てのテストされた系統の抽出製品は、いずれの乾燥大麻よりも高いカンナビノイドに対するテルペンの比率を有する。
【0035】
いくつかの実施形態では、高品質の抽出製品は、高いテルペン含有量及び低いカンナビノイド含有量を伴う系統から出発するときには、約1:1のテルペンのカンナビノイドに対する比率(質量比)を有してもよい。乾燥大麻は、通常約1:15テルペンのカンナビノイドに対する比率を有し、従来技術ベースの溶剤によって製造された抽出物は、約1:75テルペンのカンナビノイドに対する比率を有する。本開示による方法例によって作り出された抽出製品は、このように、従来技術製品と比較して、有意にテルペンが濃縮されている。
【0036】
ここで示された実施例の完全な理解を提供するために、数多くの具体的な詳細が説明されていることが理解される。しかしながら、当該分野の通常のスキルを有する者によれば、ここで示された実施形態は、これらの具体的な詳細がなくても実施できることが理解されるであろう。別の例では、よく知られた方法、手順及び構成要素は、ここで示された実施形態を曖昧にしないように、詳細には記載されていない。さらに、ここでの記載は、とにかく、ここで示された実施形態の範囲を限定するものとしては考えられないが、むしろ、様々な例の実施を単に示すものとして考えられる。
【0037】
ここでの記載は、発明の主観的事項の多くの実施例を提供する。各実施形態は、発明要素の単独の組み合わせを代表するものであるけれども、発明の主観的事項は、開示された要素の全ての可能な組み合わせを含むと考えられる。このように、1つの実施形態が、要素A、B及びCを備えており、第2の実施形態が、要素B及びDを備えているとするならば、発明の主観的事項は、明示的に開示されていないとしても、A、B、C、Dの他の残りの組み合わせを含むと考えられる。
【0038】
前述の記載に照らして当該分野のスキルを有する者に明らかなように、ここで示された方法及びシステムについての多くの代替及び修正は可能である。多数の例示的な態様及び実施形態は、上記において説明されているが、当該分野のスキルを有する者は、これらの何らかの変更、並べ替え、追加及び小結合を認識することができるであろう。それゆえ、以下の添付される請求項及び以後紹介される請求項は、当該分野のスキルを有する者によって推測されるような全ての変更、並べ替え、追加及び小結合を含むように解釈されることが意図されている。請求項の範囲は、例によって説明されている実施形態に限定されるべきではないが、上述の開示と整合する広い解釈を与えるべきである。
【0039】
本開示は、その精神又は本質的な特徴から離れることなく、他の具体的な形式において具現化することができます。記載された実施形態は、全ての点で限定ではなく例示としてのみ考えられる。
態様(1)において、大麻樹脂からの活性化した抽出製品の生産の方法であって、樹脂と抽出剤との混合物を密封容器へ導入することと、抽出された混合物を生産するために、前記樹脂からカンナビノイド及びテルペンを抽出するために前記混合物を加熱することと、前記抽出された混合物へ水を追加することと、大気圧よりも約420kPaまで高い圧力下での摂氏約90度から140度の範囲の温度における約1時間から25時間の前記抽出された混合物及び水の蒸煮による、カンナビノイドを脱カルボキシル化することと、約8時間から24時間の前記混合物及び水の冷却及び分離を許容することと、密封容器の上方側部分から活性化した抽出製品を取り出すことと、を備えた方法。
態様(1)において、前記抽出された混合物及び水の蒸煮による前記カンナビノイドを脱カルボキシル化することは、摂氏約125度の温度及び大気圧よりも約150kPaまで高い圧力における蒸煮を備える。
態様(2)において、大気圧よりも約80kPa高い圧力において2時間から3時間の蒸煮をすることを備える。
態様(1)において、前記抽出製品は、カンナビノイドに対するテルペンの質量比が、約1:1から20:1の範囲となる。
態様(1)から(4)の何れか1つにおいて、テルペンは、前記活性化した抽出製品において少なくとも5%の活性化合物を備える。
態様(1)から(5)の何れか1つにおいて、カンナビノイド及びテルペンを抽出した後の前記混合物から樹脂をろ過することを備える。
態様(6)において、樹脂をろ過することは、前記混合物を蒸煮することに先立って起こる。
態様(1)から(7)の何れか1つにおいて、前記抽出剤は、食用脂質を備える。
態様(1)から(7)の何れか1つにおいて、前記抽出剤は、疎水性の有機溶剤を備える。
態様(9)において、前記抽出製品から溶剤を蒸発させること及び残留物を除去することを備える。
態様(1)から(10)の何れか1つにおいて、前記抽出された混合物へ水を追加することは、追加する水が、前記抽出剤と1:1の質量比とされる。
態様(1)から(11)の何れか1つにおいて、前記密封容器の底部からの残留混合物の除去することと、2次抽出製品を生産するための前記残留混合物から水及び抽出剤を分離することと、を備える。
態様(2)において、前記2次抽出製品の前記混合物を伴って前記密封容器へ導入することを備える。
態様(1)から(13)の何れか1つにおいて、生の植物材料から前記樹脂を分離することによって前記混合物のための前記樹脂を得ることを備える。
態様(14)において、生の植物材料から前記樹脂を分離した後に、前記樹脂は、前記抽出剤と速やかに混合される。
態様(1)から(15)の何れか1つにおいて、前記密封容器は、前記密封容器の下方側の部分における注入ポートと、前記密封容器の上方側の部分における製品ポートと、を有し、前記活性化した抽出製品を前記密封容器の上方側の部分から取り出すことは、前記活性化した抽出製品の上層の底部の高さが、前記製品ポートの高さの近くになるまで、追加の水を前記注入ポートへ導入することを備える。
態様(17)において、大麻樹脂から活性化した抽出製品を生産するための装置であって、樹脂及び抽出剤を受け入れるための頂部において密封可能な開口を有する密封筐体と、前記密封筐体の下方側の側部において水を受け入れるための注入ポートと、前記密封筐体の上方側の側部において高品質の活性化した抽出製品を取り出すための製品ポートと、前記密封筐体の底部における排出ポートと、前記密封筐体の内部において、前記製品ポートの高さから該ポートの下方側の所定の高さまでの材料のための視界を使用者に提供するために配置された覗き窓と、を備える、装置。
図1
図2
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C