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▶ ヤンセン ファッシンズ アンド プリベンション ベーフェーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】アデノウイルス及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/34 20060101AFI20240219BHJP
   C12N 15/861 20060101ALI20240219BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240219BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240219BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20240219BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20240219BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240219BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240219BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
C12N15/34 ZNA
C12N15/861 Z
C12N15/63 Z
C12N5/10
A61K35/761
A61K39/00 A
A61K48/00
A61P37/04
C12N7/01
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2020524224
(86)(22)【出願日】2018-10-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-14
(86)【国際出願番号】 EP2018079704
(87)【国際公開番号】W WO2019086450
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-09-14
(31)【優先権主張番号】17199347.0
(32)【優先日】2017-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516257833
【氏名又は名称】ヤンセン ファッシンズ アンド プリベンション ベーフェー
【氏名又は名称原語表記】JANSSEN VACCINES & PREVENTION B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149010
【弁理士】
【氏名又は名称】星川 亮
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ウィル,タコ,ギルス
(72)【発明者】
【氏名】ロイ,スミトラ
(72)【発明者】
【氏名】カーン,セリナ
(72)【発明者】
【氏名】カスターズ,ジェローム,エィチ.,エィチ.,ヴィ.
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-519058(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12N 5/10
A61K 35/761
A61K 39/00
A61K 48/00
A61P 37/04
C12N 7/01
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
SwissProt/GeneSeq
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
BB21ファイバーポリペプチド(配列番号2)、BB21ファイバー変異体ポリペプチド(配列番号3)、又はBB24ファイバーポリペプチド(配列番号4)から選択されるアミノ酸配列を含むファイバーポリペプチドをコードする単離された核酸。
【請求項2】
前記単離された核酸がさらに、配列番号5又は配列番号6から選択されるアミノ酸配列を含むヘキソン超可変領域包含ポリペプチドを含むヘキソンポリペプチドをコードする核酸配列を含む、請求項に記載の単離された核酸。
【請求項3】
前記ヘキソンポリペプチドが、BB21ヘキソンポリペプチド(配列番号7)又はBB24ヘキソンポリペプチド(配列番号8)から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項に記載の単離された核酸。
【請求項4】
配列番号5又は配列番号6から選択されるアミノ酸配列を含むヘキソン超可変領域包含ポリペプチドを含むヘキソンポリペプチドをコードする単離された核酸。
【請求項5】
前記ヘキソンポリペプチドが、BB21ヘキソンポリペプチド(配列番号7)又はBB24ヘキソンポリペプチド(配列番号8)から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項に記載の単離された核酸。
【請求項6】
請求項1~のいずれかに記載の核酸を含むベクター。
【請求項7】
アデノウイルスベクターであり、且つ導入遺伝子をさらに含む、請求項に記載のベクター。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のベクターを含む組換え細胞。
【請求項9】
(a)請求項に記載の組換え細胞を、前記ベクターを産生するための条件下で増殖させること;
(b)前記組換え細胞から前記ベクターを単離することを含む、
ベクターを作製する方法。
【請求項10】
請求項に記載のベクターを含む免疫原性組成物。
【請求項11】
必要とする対象において免疫応答を誘導する方法に用いるための、請求項10に記載の免疫原性組成物であって、前記方法が、前記免疫原性組成物を前記対象に投与することを含む、免疫原性組成物。
【請求項12】
(a)少なくとも1つの導入遺伝子;及び
(b)BB21ファイバーポリペプチド(配列番号2)、BB21ファイバー変異体ポリペプチド(配列番号3)、又はBB24ファイバーポリペプチド(配列番号4)から選択されるアミノ酸配列を含むファイバーポリペプチドをコードする核酸配列を含むアデノウイルスベクター
【請求項13】
配列番号5又は配列番号6から選択されるアミノ酸配列を含むヘキソン超可変領域包含ポリペプチドを含むヘキソンポリペプチドをコードする核酸配列をさらに含む、請求項12に記載のアデノウイルスベクター。
【請求項14】
前記ヘキソンポリペプチドが、BB21ヘキソンポリペプチド(配列番号7)又はBB24ヘキソンポリペプチド(配列番号8)から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項13に記載のアデノウイルスベクター。
【請求項15】
前記アデノウイルスベクターがさらにE1欠失を含む、請求項12~14のいずれか一項に記載のアデノウイルスベクター。
【請求項16】
前記アデノウイルスベクターがさらにE3欠失を含む、請求項12~15のいずれか一項に記載のアデノウイルスベクター。
【請求項17】
前記アデノウイルスベクターが、1種以上のヒトアデノウイルス核酸配列を含むキメラアデノウイルスベクターである、請求項12~16のいずれか一項に記載のアデノウイルスベクター。
【請求項18】
前記ヒトアデノウイルス核酸配列が、ヒトアデノウイルス-4、ヒトアデノウイルス-5、ヒトアデノウイルス-26、又はヒトアデノウイルス-35に由来する、請求項17に記載のアデノウイルスベクター。
【請求項19】
前記アデノウイルスベクターが、ヒトアデノウイルス-5(hAdV-5)E4 orf6を含む、請求項18に記載のアデノウイルスベクター。
【請求項20】
前記アデノウイルスベクターが、E1欠失部位、E3欠失部位、及び/又は右逆位末端配列(rITR)をさらに含み、前記導入遺伝子が、前記E1欠失部位、前記E3欠失部位、又は右逆位末端配列(rITR)に隣接して位置する、請求項12~19のいずれか一項に記載のアデノウイルスベクター。
【請求項21】
前記アデノウイルスベクターが、配列番号28、配列番号29、配列番号30、及び配列番号31からなる群から選択される核酸配列を含む、請求項12~20のいずれか一項に記載のアデノウイルスベクター。
【請求項22】
前記アデノウイルスベクターが、配列番号53又は配列番号57から選択される核酸配列を含む、請求項12及び15~21のいずれか一項に記載のアデノウイルスベクター。
【請求項23】
請求項12~22のいずれかに記載のアデノウイルスベクター及び薬学的に許容される担体を含むワクチン。
【請求項24】
必要とする対象において免疫応答を誘導する方法に用いるための請求項23に記載のワクチンであって、前記方法が、前記ワクチンを前記対象に投与することを含む、ワクチン。
【請求項25】
請求項12~22のいずれかに記載のアデノウイルスベクターを薬学的に許容される担体と組み合わせることを含む、ワクチンを作製する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオテクノロジーに関する。より詳細には、抗原を送達し、宿主において免疫応答を誘発するための複製欠損アデノウイルスベクターなどのアデノウイルスベクターの分野及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
組換えアデノウイルスベクターは、遺伝子治療適用及びワクチンに広く応用されている。AdV-5ベクターに基づくワクチンは、様々な動物モデルにおいて強力で保護的な免疫応答を誘発することが示されている(例えば、国際公開第2001/02607号パンフレット;国際公開第2002/22080号パンフレット;Shiver et al.,Nature 415:331(2002);Letvin et al.,Ann.Rev.Immunol.20:73(2002);Shiver and Emini,Ann.Rev.Med.55:355(2004))。しかしながら、組換えAdV-5ベクターに基づくワクチンの有用性は、ヒト集団におけるAdV-5特異的中和抗体(NAb)の高い血清有病率によって制限される可能性が高い。抗AdV-5免疫の存在は、マウス、アカゲザル、及びヒトにおける研究において、AdV-5に基づくワクチンの免疫原性を大幅に抑制することが示されている。
【0003】
最も一般的なヒトアデノウイルス、例えば、AdV-5により以前に感染又は治療された個体における既存の免疫の存在を回避するための一つの有望な戦略は、そのような既存の免疫に遭遇しないアデノウイルス血清型からの組換えベクターの開発を含む。1つのこのような戦略は、非ヒトサルアデノウイルスの使用に基づいているが、これは非ヒトサルアデノウイルスが通常ヒトに感染せず、ヒト試料では低い血清有病率を示すためである。非ヒトサルアデノウイルスは、これらのウイルスがインビトロでヒト細胞に感染できたことが示されたため、ヒトへの適用が可能である(国際公開第2003/000283号パンフレット;国際公開第2004/037189号パンフレット)。
【0004】
したがって、大量に生産可能で、宿主の既存の免疫に遭遇しないが依然として免疫原性があり、ベクターに挿入された異種核酸によってコードされる抗原に対して強い免疫応答を誘導することができる代替的なアデノウイルスベクターが、この分野では必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書では、単離された核酸配列が提供される。単離された核酸配列は、配列番号のアミノ酸6~375と少なくとも98%の同一性を有するファイバーポリペプチドをコードする。特定の実施形態では、ファイバーポリペプチドは、BB21ファイバーポリペプチド(配列番号)、BB21ファイバー変異体ポリペプチド(配列番号)、又はBB24ファイバーポリペプチド(配列番号)から選択されるアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、単離された核酸配列はさらに、配列番号又は配列番号から選択されるアミノ酸配列を有するヘキソン超可変領域を含むヘキソンポリペプチドをコードするヘキソン核酸配列を含む。特定の実施形態では、ヘキソンポリペプチドは、BB21ヘキソンポリペプチド(配列番号)又はBB24ヘキソンポリペプチド(配列番号)から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0006】
また、配列番号又は配列番号から選択されるアミノ酸配列を有するヘキソン超可変領域包含ポリペプチドを含むヘキソンポリペプチドをコードする単離された核酸配列も提供される。特定の実施形態では、ヘキソンポリペプチドは、BB21ヘキソンポリペプチド(配列番号)又はBB24ヘキソンポリペプチド(配列番号)から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0007】
本発明の実施形態はまた、本発明のファイバー及びヘキソン核酸配列によってコードされる単離されたファイバー及びヘキソンポリペプチドを含む。
【0008】
特定の実施形態において、本明細書では、本明細書で開示されるヘキソンポリペプチドのうちの少なくとも1つをコードするヘキソン核酸配列、及び本明細書で開示されるファイバーポリペプチドのうちの少なくとも1つをコードする核酸配列を含む単離された核酸が提供される。特定の実施形態において、本明細書では、本明細書に記載される単離された核酸を含むベクターが提供される。一実施形態では、ベクターはウイルスベクターである。別の実施形態では、ベクターは発現ベクターである。好ましい一実施形態では、ベクターはアデノウイルスベクターである。より好ましくは、ベクターはさらに導入遺伝子を含む。
【0009】
本明細書に記載されるベクターを含む組換え細胞も提供される。このような細胞は、組換えタンパク質の産生、組換えタンパク質の発現、又はベクター若しくはウイルス粒子の産生のために使用することができる。また、ベクターを作製する方法も提供される。方法は、(a)本明細書で開示される組換え細胞を、ベクターを産生するための条件下で増殖させること;及び(b)組換え細胞からベクターを単離することを含む。
【0010】
特定の実施形態では、本明細書で開示されるベクターを含む免疫原性組成物が提供される。また、本明細書で開示される免疫原性組成物を対象に投与することを含む、必要とする対象において免疫応答を誘導する方法も提供される。
【0011】
さらに、(a)少なくとも1つの導入遺伝子挿入部位;及び(b)ファイバーポリペプチドをコードする核酸配列を含むアデノウイルスベクターが提供され、ファイバーポリペプチドは、配列番号のアミノ酸6~375と少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、ファイバーポリペプチドは、BB21ファイバーポリペプチド(配列番号)、BB21ファイバー変異体ポリペプチド(配列番号)、又はBB24ファイバーポリペプチド(配列番号)から選択されるアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、アデノウイルスベクターはさらに、配列番号又は配列番号から選択されるアミノ酸配列を有するヘキソン超可変領域包含ポリペプチドを含むヘキソンポリペプチドをコードするヘキソン核酸配列を含む。特定の実施形態では、ヘキソンポリペプチドは、BB21ヘキソンポリペプチド(配列番号)又はBB24ヘキソンポリペプチド(配列番号)から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0012】
さらに、(a)少なくとも1つの導入遺伝子挿入部位;及び(b)ヘキソンポリペプチドをコードする核酸配列を含むアデノウイルスベクターが提供され、ヘキソンポリペプチドは、配列番号又は配列番号から選択されるアミノ酸配列を有するヘキソン超可変領域包含ポリペプチドを含む。特定の実施形態では、ヘキソンポリペプチドは、BB21ヘキソンポリペプチド(配列番号)又はBB24ヘキソンポリペプチド(配列番号)から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0013】
特定の実施形態では、本明細書で提供されるアデノウイルスベクターは、複製欠損アデノウイルスベクター(rAd)である。一実施形態では、アデノウイルスベクターは、E1欠失を含み得る。特定の実施形態では、本明細書で提供されるアデノウイルスベクターはさらに、E3欠失を含み得る。アデノウイルスベクターは、チンパンジーアデノウイルス(例えば、ChAd3);ゴリラアデノウイルス;又はアカゲザルアデノウイルス(例えば、rhAd51、rhAd52又はrhAd53)などの1種以上のサルアデノウイルス(SAdV)に由来するアデノウイルス核酸配列を含むサルアデノウイルスベクターであり得る。アデノウイルスベクターは、1種以上のヒトアデノウイルス(例えば、hAdV-4、hAdV-5、hAdV-26、hAdV-35)に由来するアデノウイルス配列を含むヒトアデノウイルスベクターであり得る。好ましくは、アデノウイルスベクターは、1種以上のヒトアデノウイルス核酸配列を含むキメラアデノウイルスベクターである。ヒトアデノウイルス核酸配列は、例えば、ヒトアデノウイルス-4(hAdV-4)、ヒトアデノウイルス-5(hAdV-5)、ヒトアデノウイルス-26(hAdV-26)、又はヒトアデノウイルス-35(hAdV-35)に由来し得る。アデノウイルスベクターは、例えば、ヒトアデノウイルス-5(hAdV-5) E4 orf6及びorf6/7を含み得る。
【0014】
特定の実施形態では、導入遺伝子挿入部位は、逆位末端配列(ITR)に隣接している。特定の実施形態では、導入遺伝子は、例えば、E4領域と右ITR(RITR)の間において、E1欠失にあるか又はE1欠失に隣接する導入遺伝子挿入部位、E3欠失にあるか又はE3欠失に隣接する導入遺伝子挿入部位、及びITRに隣接する導入遺伝子挿入部位からなる群から選択される1つ以上の導入遺伝子挿入部位で挿入される。
【0015】
特定の実施形態では、本明細書で提供されるアデノウイルスベクターは、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号53、及び配列番号57からなる群から選択される核酸配列を含む。
【0016】
また、本明細書に記載されるアデノウイルスベクター及び薬学的に許容される担体を含む免疫原性組成物又はワクチンが提供される。さらに、必要とする対象において免疫応答を誘導するための方法が提供される。方法は、対象に本明細書で開示されるワクチンを投与することを含む。さらに、ベクターを作製する方法が提供される。方法は、本明細書で開示されるアデノウイルスベクターを薬学的に許容される担体と組み合わせることを含む。
【0017】
上述の概要、及び下記の本願の好ましい実施形態の詳細な説明は、添付した図面とともに読む場合により十分に理解されることになる。しかしながら、本願は、図面に示される明確な実施形態に限定されないことを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1A】BB21.FLuc及びBB24.FLucによって誘導される細胞性免疫応答を示す。図1Aは実験構成を示し、この構成はまた、図2及び図3において示される実験についても使用された。図1Bはインターフェロンガンマ(IFN-γ)ELISPOT分析によって決定されるとおりのベクターにコードされた抗原(すなわち、Fluc、ホタルルシフェラーゼ)に対してAd26.FLuc、BB21.FLuc及びBB24.FLucによって誘導される細胞性免疫応答のグラフを示す。y軸は10個の脾細胞当たりのスポット形成単位(SFU)の数を示し、点線は中程度の刺激の95%パーセンタイルを示す。
図1B】(上記の通り。)
図2】Ad4Ptr13-BB21.FLuc及びAd4.FLucによって誘導される細胞性免疫応答を示す。グラフは、IFN-γ ELISPOT分析によって決定されるとおりのベクターにコードされた抗原(すなわち、Fluc)に対してAd26.FLuc、Ad4Ptr13-BB21.FLuc及びAd4.FLucによって誘導される細胞性免疫応答を示す。
図3】Ad4Ptr01-BB24.FLucによって誘導される細胞性免疫応答を示す。グラフは、IFN-γ ELISPOT分析によって決定されるとおりのベクターにコードされた抗原(すなわち、Fluc)に対してAd26.FLuc及びAd4Ptr01-BB24.FLucによって誘導される細胞性免疫応答を示す。
図4A】BB21.RSVF-2A-GLucによって誘導される細胞性及び体液性免疫応答を示す。図4Aは実験構成を示し、この構成はまた、図5及び図6において示される実験についても使用された。図4Bは3種の異なる濃度(10、10及び1010vp)のAd26.RSVF-2A-GLuc及びBB21.RSVF-2A-GLuc、又は1010vpのAd26.FLuc及びBB21.FLucによる免疫化後8週目に実施された呼吸器多核体ウイルス中和アッセイ(VNA)の結果を示す。グラフは、終点力価として計算された呼吸器多核体ウイルス株A2(RSV A2)に対するVNA力価を示す(log)。図4CはIFN-γ ELISPOT分析によって決定されるとおりのベクターにコードされた抗原RSV Fに対してAd26.RSVF-2A-GLuc及びBB21.RSVF-2A-GLucによって誘導される細胞性免疫応答を示す。図4Dは免疫化後8週目の免疫化マウスの血清中のAd26.RSVF-2A-GLuc及びBB21.RSVF-2A-GLucによって誘導されるRSV F特異的IgG結合抗体力価のグラフを示す。グラフは、終点力価として計算されたIgG ELISA力価を示す(log10)。
図4B】(上記の通り。)
図4C】(上記の通り。)
図4D】(上記の通り。)
図5A】BB24.RSVF-2A-GLucによって誘導される細胞性及び体液性免疫応答を示す。図5Aは3種の異なる濃度(10、10及び1010vp)のAd26.RSVF-2A-GLuc、BB24.RSVF-2A-GLuc及びAd48.RSVF-2A-GLuc、又は1010vpのAd26.FLuc、BB24.FLuc及びAd48.FLucによる免疫化後8週目に実施された呼吸器多核体ウイルス中和アッセイ(VNA)の結果を示す。グラフは、終点力価として計算されたRSV A2に対するVNA力価を示す(log)。図5BはIFN-γ ELISPOT分析によって決定されるとおりのベクターにコードされた抗原RSV Fに対してAd26.RSVF-2A-GLuc、BB24.RSVF-2A-GLuc及びAd48.RSVF-2A-GLucによって誘導される細胞性免疫応答を示す。図5Cは免疫化後8週目の免疫化マウスの血清中のAd26.RSVF-2A-GLuc、BB24.RSVF-2A-GLuc及びAd48.RSVF-2A-GLucによって誘導されるRSV F特異的IgG結合抗体力価のグラフを示す。グラフは、終点力価として計算されたIgG ELISA力価を示す(log10)。
図5B】(上記の通り。)
図5C】(上記の通り。)
図6A】Ad4Ptr01-BB24.RSVF-2A-GLuc及びAd4Ptr13-BB21.RSVF-2A-GLucによって誘導される細胞性及び体液性免疫応答を示す。図6Aは3種の異なる濃度(10、10及び1010vp)のAd26.RSVF-2A-GLuc、Ad4Ptr01-BB24.RSVF-2A-GLuc及びAd4Ptr13-BB21.RSVF-2A-GLuc、又は1010vpのAd26.FLuc、Ad4Ptr01-BB24.FLuc及びAd4Ptr13-BB21.FLucによる免疫化後8週目に実施された呼吸器多核体ウイルス中和アッセイ(VNA)の結果を示す。グラフは、終点力価として計算されたRSV A2に対するVNA力価を示す(log)。図6BはIFN-γ ELISPOT分析によって決定されるとおりのベクターにコードされた抗原RSV Fに対してAd26.RSVF-2A-GLuc、Ad4Ptr01-BB24.RSVF-2A-GLuc及びAd4Ptr13-BB21.RSVF-2A-GLucによって誘導される細胞性免疫応答を示す。図6Cは免疫化後8週目の免疫化マウスの血清中のAd26.RSVF-2A-GLuc、Ad4Ptr01-BB24.RSVF-2A-GLuc及びAd4Ptr13-BB21.RSVF-2A-GLucによって誘導されるRSV F特異的IgG結合抗体力価のグラフを示す。グラフは、終点力価として計算されたIgG ELISA力価を示す(log10)。
図6B】(上記の通り。)
図6C】(上記の通り。)
図7】アデノウイルスベクターAd4、Ad5、Ad26、Ad35、Ad49、BB21、BB24、Ad4Ptr13-BB21、及びAd4Ptr01-BB24で免疫化されたマウスにおいて誘導される同種及び異種アデノウイルス中和力価を示す。
図8】米国(US)及び欧州連合(EU)に居住する18歳~55歳までの成人に由来する200名のヒトコホート血清試料におけるAd5、Ad26、BB21、BB24、Ad4Ptr13-BB21、及びAd4Ptr01-BB24の血清有病率を示す。各ベクターに対してこれらの血清において測定された中和力価を、示されるとおりに図表において表される4種のカテゴリー(<16(陰性)、16~300、300~1,000、1000~4000及び>4000)に分けた。
図9】プラスミドpBB21.dE1.dE3(配列番号15)の概略図を示す。
図10】プラスミドpBB21.dE1.dE3.5IXP(配列番号16)の概略図を示す。
図11】プラスミドpBB24.dE1.dE3(配列番号17)の概略図を示す。
図12】プラスミドpBB24.dE1.dE3.5IXP(配列番号18)の概略図を示す。
図13】プラスミドpAd4.5orf6(配列番号20)の概略図を示す。
図14】プラスミドpAd4.Ptr01.BB24.5orf6(配列番号23)の概略図を示す。
図15】プラスミドpAd4.Ptr13.BB21.5orf6(配列番号24)の概略図を示す。
図16】BB21ファイバー(配列番号)、BB21ファイバー変異体(配列番号)、及びBB24ファイバー(配列番号)のアラインメントを示す。
図17】生産細胞株sPER.C6における新規のベクターBB21.Fluc及びBB24.Flucの生産性を示す。
図18】生産細胞株sPER.C6における新規のカプシドキメラベクターAd4Ptr13-BB21及びAd4Ptr01-BB24の生産性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本開示は、ヒトアデノウイルス種Eに割り当てられた新規のチンパンジーアデノウイルス単離物の単離及び同定、並びにチンパンジーヘキソン及びファイバーポリペプチドの可変領域をコードする核酸を含むワクチンベクターの構築及び評価に少なくとも部分的に基づく。本開示はさらに、ヒトアデノウイルス骨格及びキメラヘキソン若しくはファイバーポリペプチド配列又はチンパンジーヘキソン若しくはファイバーポリペプチド配列のうちの少なくとも1つを含むキメラアデノウイルスベクターの作製に少なくとも部分的に基づく。アデノウイルスベクターは、ヒトにおいて免疫応答を誘発するとともに、低い血清有病率を有することができる。アデノウイルスベクターは、ワクチンのために製剤化され、且つ目的の特異抗原に対する防御免疫を誘導するために使用され得る。
【0020】
背景技術の項で、また本明細書全体を通して、様々な刊行物、論文及び特許が引用又は記載されており、これらの参考文献はそれぞれ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本明細書に含まれる文献、行為、材料、装置、物品などの議論は、本発明の文脈を提供することを目的とする。そのような議論は、これらの内容のいずれか又は全てが、開示されている、又は特許請求されているあらゆる発明に関する先行技術の一部を形成することを認めるものではない。
【0021】
別途定義されていない限り、本明細書で使用する全ての技術用語及び科学用語は、本発明が関係する分野の当業者に一般に理解されている意味と同じ意味を有する。さもなければ、本明細書で使用される特定の用語は、本明細書で規定されている意味を有する。
【0022】
本明細書で使用する場合、及び添付した特許請求の範囲においては、単数形「a」、「an」及び「the」は、別途文脈が明白に規定していない限り、複数の言及を含むことに留意しなければならない。
【0023】
特に明記しない限り、本明細書に記載される濃度又は濃度範囲などの任意の数値は、全ての場合において、用語「約」によって修飾されていると理解されるべきである。したがって、数値は、通常、列挙された値の±10%を含む。例えば、濃度1mg/mLは、0.9mg/mL~1.1mg/mLを含む。同様に、1%(w/v)~10%(w/v)の濃度範囲は、0.9%(w/v)~11%(w/v)を含む。本明細書で使用する場合、数値範囲の使用は、全ての可能な部分的範囲、その範囲内の全ての個々の数値を明示的に含み、文脈に明らかに別段の指示がない限り、そのような範囲内の整数及び値の分数を含む。
【0024】
別段の指示がない限り、一連の要素に先行する「少なくとも」という用語は、一連のあらゆる要素を指すと理解すべきである。当業者は、通例の実験だけを使用して、本明細書に記載される本発明の特定の実施形態に対する多数の等価物を認識することになるか、又は確認することがきできるであろう。このような等価物は、本発明に包含されるものとする。
【0025】
本明細書で使用する場合、用語「~を含む(comprises)」、「~を含む(comprising)」、「~を含む(includes)」、「~を含む(including)」、「~を有する(has)」、「~を有する(having)」、「~を含有する(contains)」、若しくは「~を含有する(containing)」、又はそれらの任意の他の変形は、記載された整数又は整数群を包含することを意味するものと理解されるが、任意の他の整数又は整数群の排除を意味するものではなく、非排他的又はオープンエンドであることが意図されている。例えば、構成要素の一覧を含む組成物、混合物、プロセス、方法、物品、又は装置は必ずしもそれらの構成要素のみに限定されるものではなく、明示的に列挙されていない、又はそのような組成物、混合物、プロセス、方法、物品、若しくは装置が本来具備している他の構成要素を含むことができる。さらに、明確に反対のことを述べない限り、「又は」は包括的「又は」を意味し、排他的「又は」を意味しない。例えば、条件A又はBは、以下のいずれか1つによって満たされる。Aが真であり(又は、存在し)且つBが偽である(又は、存在しない)、Aが偽であり(又は、存在しない)且つBが真である(又は、存在する)、並びにA及びBの両方が真である(又は、存在する)。
【0026】
本明細書で使用する場合、多数の列挙された要素間の接続語「及び/又は」は、個々の選択肢及び組み合わせた選択肢の両方を包含すると理解される。例えば、2つの要素が「及び/又は」によって結合される場合、第1選択肢は第2要素を伴わない第1要素の適用性を指す。第2選択肢は、第1要素を伴わない第2要素の適用性を指す。第3選択肢は、第1及び第2要素を合わせた適用性を指す。これらの選択肢のいずれか1つは、本明細書で使用する用語「及び/又は」の意味の範囲内に含まれ、このため用語「及び/又は」の要件を満たすと理解される。2つ以上の選択肢の同時の適用性は、さらに用語「及び/又は」の意味の範囲内に含まれ、このため用語「及び/又は」の要件を満たすと理解される。
【0027】
本明細書で使用する場合、「~からなる(consists of)」という用語、又は「~からなる(consist of)」若しくは「~からなる(consisting of)」などのその変形は、本明細書及び特許請求の範囲を通して使用されるとき、記載された整数又は整数群を全て包含するが、その特定の方法、構造、又は組成物にさらなる整数又は整数群を加えることはできないことを意味する。
【0028】
本明細書で使用する場合、「実質的に~からなる(consists essentially of)」という用語、又は「実質的に~からなる(consist essentially of)」若しくは「実質的に~からなる(consisting essentially of)」などのその変形は、本明細書及び特許請求の範囲を通して使用されるとき、記載された整数又は整数群を全て包含し、且つ、その特定の方法、構造、又は組成物の基本の又は新規の特性を実質的に変化させない記載された整数又は整数群を任意選択的に包含することを意味する。M.P.E.P.2111.03節を参照されたい。
【0029】
本明細書で使用する場合、「対象」は、本発明の実施形態による方法によってワクチン接種されることになるか又はワクチン接種されたあらゆる動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトを意味する。用語「哺乳動物」は、本明細書で使用する場合、あらゆる哺乳動物を包含する。哺乳動物の例としては、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ネコ、イヌ、マウス、ネズミ、ウサギ、モルモット、サル、ヒトなど、より好ましくはヒトが挙げられるが、これに限定されない。
【0030】
語「右」、「左」、「下」及び「上」は、参照される図面における方向を指定する。
【0031】
また、本明細書で好ましい発明の構成要素の寸法又は特性に言及するときに使用される「約」、「略」、「一般に」、「実質的に」などの用語は、当業者に理解されるとおり、記載された寸法/特性が厳密な境界又はパラメータではなく、機能的に同じか又は類似している、そこからのわずかな変形を排除しないことを示すことは理解されたい。少なくとも、そのような数値パラメータを含む言及は、当該技術分野で受容されている数学的及び工業的原理(例えば、四捨五入、測定又はその他の系統誤差、製造上の公差など)を使用して、最下位数を変化させない変動を含むであろう。
【0032】
2つ以上の核酸又はポリペプチド配列(例えば、ヘキソン及びファイバーポリペプチド並びにそれらをコードするポリヌクレオチド)の文脈における用語「同一」又はパーセント「同一性」は、以下の配列比較アルゴリズムの1つを用いて、又は目視による調査によって測定されるとおり、最大の一致について比較及び整列される場合に、同じあるか、又は特定のパーセンテージの同じであるアミノ酸残基若しくはヌクレオチドを有する2つ以上の配列又は部分配列を指す。
【0033】
配列比較のために、通常1つの配列が参照配列として作用し、それに対して試験配列が比較される。配列比較アルゴリズムを使用するとき、試験配列及び参照配列をコンピューターに入力し、必要に応じて部分配列の座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。次に、配列比較アルゴリズムが、指定されたプログラムパラメータに基づいて参照配列に対する試験配列のパーセント配列同一性を計算する。
【0034】
比較のための配列の最適なアラインメントは、例えば、Smith & Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所相同性アルゴリズムによって、Needleman & Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)の相同性アラインメントアルゴリズムによって、Pearson & Lipman,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の類似性検索法、これらのアルゴリズムのコンピューターによる実行(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,WIのGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA)によって、又は目視による調査(一般に、Current Protocols in Molecular Biology,F.M.Ausubel et al.,eds.,Current Protocols,Greene Publishing Associates,Inc.とJohn Wiley & Sons,Inc.,の合弁事業(1995年増補版)(Ausubel)を参照のこと)によって実行され得る。
【0035】
パーセント配列同一性及び配列類似性を判定するのに好適なアルゴリズムの例は、BLAST及びBLAST2.0アルゴリズムであり、これらは、それぞれ、Altschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403-410及びAltschul et al.(1997)Nucleic Acids Res.25:3389-3402において記載される。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Informationを通して公的に入手可能である。このアルゴリズムは、データベース配列中の同一の長さの文字列とアラインメントさせた場合、いくつかの正の値の閾値スコアTと一致又はそれを満たす、クエリ配列中の長さWの短い文字列を同定することにより、高スコア配列対(HSP)をまず同定することを含む。Tは隣接文字列スコア閾値と称される(Altschul et al、上記)。これらの最初の隣接文字列ヒットは、より長いHSPを含む文字列を探し出すための探索を開始するためのシードとして作用する。次に、文字列ヒットは、累積アラインメントスコアが増加し得る限り、各配列に沿って両方向に伸長される。
【0036】
累積スコアは、ヌクレオチド配列に関して、パラメータM(一致残基の対に関する報酬スコア;常に>0)及びN(不適正残基に関するペナルティースコア;常に<0)を用いて計算される。アミノ酸配列に関して、スコアリングマトリックスは、累積スコアを計算するために使用される。各方向における文字列ヒットの伸長は、累積アラインメントスコアが、その最大到達値から量X減少する場合;1つ以上の負のスコアの残基のアラインメントが蓄積することにより、累積スコアが0以下となる場合;又はいずれかの配列の端に到達する場合に停止される。BLASTアルゴリズムのパラメータW、T、及びXは、アラインメントの感度及び速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)は、ワード長(W)が11、期待値(E)が10、M=5、N=-4、及び両鎖の比較を初期設定として使用する。アミノ酸配列に関して、BLASTPプログラムは、ワード長(W)が3、期待値(E)が10、及びBLOSUM62スコアリングマトリックスを初期設定として使用する(Henikoff & Henikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915(1989))。
【0037】
パーセント配列同一性を計算することに加えて、BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列間の類似性の統計分析を行う(Karlin & Altschul,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 90:5873-5787(1993))。BLASTアルゴリズムによりもたらされる類似性の1つの尺度は、2つのヌクレオチド又はアミノ酸配列間の一致が偶然に起こる確率を示す最小合計確率(P(N))である。例えば、試験核酸と参照核酸の比較における最小合計確率が約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、及び最も好ましくは約0.001未満である場合、核酸は参照配列と類似していると考えられる。
【0038】
2つの核酸配列又はポリペプチドが実質的に同一であることのさらなる指標は、以下に記載されるとおり、第1の核酸によってコードされるポリペプチドが、第2の核酸によってコードされるポリペプチドと免疫学的に交差反応性であることである。したがって、ポリペプチドは通常、例えば、2つのペプチドが保存的置換によってのみ異なる場合には第2のポリペプチドと実質的に同一である。2つの核酸配列が実質的に同一であることの別の指標は、以下に記載されるとおり、2つの分子がストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズすることである。
【0039】
本明細書で使用する場合、用語「防御免疫」又は「防御免疫応答」は、ワクチン接種された対象が、このワクチン接種を行った対象の病原性因子による感染を防除できることを意味する。病原性因子は、例えば、抗原性遺伝子産物若しくは抗原性タンパク質、又はその断片であり得る。通常、「防御免疫応答」が発現された対象は、軽度~中程度の臨床症状を発現するにすぎないか又は症状を全く発現しない。通常、特定の因子に対する「防御免疫応答」又は「防御免疫」を有する対象は、前記因子による感染の結果として死亡しない。
【0040】
用語「アジュバント」は、免疫系の刺激を引き起こす1種以上の物質として定義される。この文脈において、アジュバントは、本発明のアデノウイルスベクターに対する免疫応答を増強させるために使用される。
【0041】
本明細書で使用する場合、用語「抗原性遺伝子産物又はその断片」又は「抗原性タンパク質」は、細菌、ウイルス、寄生虫、若しくは真菌タンパク質、又はその断片を含み得る。好ましくは、抗原性タンパク質又は抗原性遺伝子産物は、宿主において防御免疫応答を高め、例えば、疾患又は感染症(例えば、細菌、ウイルス、寄生虫、若しくは真菌疾患又は感染症)に対する免疫応答を誘導し、且つ/又は疾患又は感染症に対して対象を保護する免疫を対象において疾患又は感染症に対してもたらす(すなわち、ワクチン接種する)ことができる。
【0042】
アデノウイルスベクター
特定のアデノウイルスへの曝露は、特定のアデノウイルス血清型に対する免疫応答をもたらし、アデノウイルスベクターの有効性に影響を及ぼす可能性がある。ヒトアデノウイルスによる感染はヒトにおいて一般的であるため、ヒト集団におけるヒトアデノウイルスに対する中和抗体の有病率は高い。個体におけるこのような中和抗体の存在は、ヒトアデノウイルス骨格に基づく遺伝子導入ベクターの有効性を低減すると予想され得る。有効性の低減を回避するための1つの方法は、中和抗体の標的であるアデノウイルスカプシドタンパク質上のエピトープを置き換えることである。カプシドタンパク質上の標的配列は、低い有病率であり、したがって中和抗体がヒト集団において希少である他のアデノウイルスに由来するタンパク質配列で置き換えられ得る。
【0043】
「カプシドタンパク質」は、特定のアデノウイルスの血清型及び/又は向性の決定に関与する、アデノウイルス(例えば、BB21、BB24、HAdV-4)又はその機能的断片若しくは誘導体のカプシド上のタンパク質を指す。カプシドタンパク質は通常、ファイバー、ペントン及び/又はヘキソンタンパク質を含む。特定の実施形態では、カプシドタンパク質は、アデノウイルスの全体又は全長カプシドタンパク質である。他の実施形態では、カプシドタンパク質は、アデノウイルスの全長カプシドタンパク質の断片又は誘導体である。特定の実施形態では、本発明のアデノウイルスベクターによってコードされるヘキソン、ペントン及びファイバーは、同じ又は異なるアデノウイルス骨格(すなわち、BB21ヘキソン及びBB21ファイバー、BB24ヘキソン及びBB24ファイバー、PrtoAdV-1ヘキソン及びBB21ファイバー変異体、PtroAdV-13ヘキソン及びBB24ファイバーなど)のものである。
【0044】
「ヘキソンポリペプチド」は、アデノウイルスヘキソンコートタンパク質、その機能的断片、及び誘導体を指す。
【0045】
「ファイバーポリペプチド」は、アデノウイルスファイバータンパク質、その機能的断片、及び誘導体を指す。
【0046】
アデノウイルスに対する中和抗体の1つの標的は、主要なコートタンパク質であるヘキソンタンパク質である。血清型を定義し、中和抗体に結合するヘキソンタンパク質又はヘキソンタンパク質内の可変配列を、本明細書に記載されるそれらのチンパンジーアデノウイルス配列などの、ヒト集団では希少なアデノウイルスに由来するヘキソンタンパク質又はヘキソンタンパク質内の可変配列で置き換えることは、ヒトで一般的に見られる抗体による中和の影響を受けにくいアデノウイルスベクターの構築を可能にし得る。
【0047】
アデノウイルスに対する中和抗体の第2の標的は、ファイバータンパク質である。ファイバータンパク質又はファイバータンパク質内の可変配列を、本明細書に記載されるそれらのチンパンジーアデノウイルス配列などの、ヒト集団では希少なアデノウイルスに由来するファイバータンパク質又はファイバータンパク質内の可変配列で置き換えることは、ヒトで一般的に見られる抗体による中和の影響を受けにくいアデノウイルスベクターの構築を可能にし得る。上記のファイバー置換とヘキソン置換との組合せは、ヒト集団に一般的に存在する抗体による中和に対する追加の抵抗性を付与することができる。
【0048】
本開示は、単離されたヒト及びサルアデノウイルス血清型に由来するヘキソンポリペプチド及び/又はファイバーポリペプチドをコードする単離された核酸配列及びキメラ核酸配列並びに単離された核酸配列及び/又はキメラ核酸配列のうちの少なくとも1つを含むアデノウイルスベクターを提供する。
【0049】
「アデノウイルスベクター」は、アデノウイルスゲノムの少なくとも一部分に由来するか又は含有する組換えベクターを指す。
【0050】
好ましい実施形態では、単離された核酸配列は、配列番号のアミノ酸6~375と少なくとも98%の同一性を有するファイバーポリペプチドをコードする。特定の実施形態では、単離された核酸配列は、配列番号のアミノ酸6~375と少なくとも99%の同一性を有するファイバーポリペプチドをコードする。特定の実施形態では、単離された核酸配列は、配列番号2に対して少なくとも98%、99%の同一性を有するファイバーポリペプチドをコードする。ファイバードポリペプチドは、例えば、BB21ファイバーポリペプチド(配列番号)、BB21ファイバー変異体ポリペプチド(配列番号)、又はBB24ファイバーポリペプチド(配列番号)から選択されるアミノ酸配列を含む。特定の好ましい実施形態では、単離された核酸配列はさらに、配列番号又は配列番号から選択されるアミノ酸配列を含むヘキソンポリペプチド超可変領域包含ポリペプチドを含むヘキソンポリペプチドをコードする核酸配列を含む。ヘキソンポリペプチドは、例えば、BB21ヘキソンポリペプチド(配列番号)又はBB24ヘキソンポリペプチド(配列番号)から選択されるアミノ酸配列を含み得る。
【0051】
好ましい実施形態では、単離された核酸配列は、ヘキソンポリペプチド超可変領域包含ポリペプチドを含むポリペプチド配列を含むヘキソンポリペプチドをコードし、ヘキソン超可変領域包含ポリペプチドは、配列番号又は配列番号から選択されるアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、ヘキソンポリペプチドは、BB21ヘキソンポリペプチド(配列番号)又はBB24ヘキソンポリペプチド(配列番号)から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0052】
好ましい実施形態では、本明細書で開示されるヘキソンポリペプチドのうちの少なくとも1つをコードするヘキソン核酸配列、及び本明細書で開示されるファイバーポリペプチドのうちの少なくとも1つをコードする核酸配列を含む単離された核酸が提供される。
【0053】
好ましい実施形態では、本発明の実施形態によるヘキソンポリペプチドをコードする単離された核酸配列及び/又はファイバーポリペプチドをコードする単離された核酸配列のうちの少なくとも1つを含むベクター、好ましくはアデノウイルスベクターが提供される。アデノウイルスベクターは、例えば、少なくとも1つの導入遺伝子挿入部位;並びにヘキソンポリペプチド及び/又はファイバーポリペプチドをコードする核酸配列を含み、ヘキソンポリペプチドは、本明細書で開示されるヘキソンポリペプチド超可変領域包含ポリペプチドを含むポリペプチドを含み、且つファイバーポリペプチドは、本明細書に記載されるファイバーポリペプチドを含む。
【0054】
典型的には、本発明のアデノウイルスベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、又はバキュロウイルスベクター上に組換えアデノウイルスゲノム全体を含む。本発明の核酸分子は、クローニングにより得られるか、又は合成的に生成されるRNAの形態又はDNAの形態であり得る。DNAは、二本鎖又は一本鎖であり得る。
【0055】
当業者であれば、複数の血清型に由来する要素が単一の組換えアデノウイルスベクター、例えば、ヒト又はサルアデノウイルスにおいて組み合わせ得ることを認識するであろう。したがって、異なる血清型から望ましい特性を組み合わせるキメラアデノウイルスベクターが生成され得る。したがって、いくつかの実施形態では、本発明のキメラアデノウイルスベクターは、サルヘキソン及び/又はファイバーポリペプチド配列の既存の免疫の不在を、rAd4、rAd5、rAd26又はrAd35などの現存するアデノウイルスベクターの高いレベルの抗原送達能力及び抗原提示能力と組み合わせることができた。
【0056】
ワクチンとして使用するためのアデノウイルスベクターの利点としては、報告されている膨大な数のアデノウイルスベクターを用いた研究、開発、製造及び臨床試験における長年の経験に基づく、操作の容易性、良好な大規模での製造可能性、及び優れた安全性の記録が挙げられる。ワクチンとして用いられるアデノウイルスベクターは一般に、導入遺伝子にコードされたタンパク質に対する良好な免疫応答、例えば細胞免疫応答をもたらす。本発明によるアデノウイルスベクターは、アデノウイルスの任意の型に基づいてもよく、特定の実施形態では、ヒトアデノウイルスであり、それは任意の群又は血清型であってもよい。好ましい実施形態では、組換えアデノウイルスは、群A、B、C、D、E、F又はGに由来するヒトアデノウイルスに基づく。他の好ましい実施形態では、組換えアデノウイルスは、ヒトアデノウイルス血清型5、11、26、34、35、48、49、又は50に基づく。他の実施形態では、それはサルアデノウイルス、例えばチンパンジーアデノウイルス又はゴリラアデノウイルスであり、それらは任意の血清型であってもよい。特定の実施形態では、組換えアデノウイルスは、チンパンジーアデノウイルス1、3、7、8、21、22、23、24、25、26、27.1、28.1、29、30、31.1、32、33、34、35.1、36、37.2、39、40.1、41.1、42.1、43、44、45、46、48、49、50、67、又はSA7P型に基づく。
【0057】
より好ましい実施形態では、第2の組成物のチンパンジーアデノウイルスベクターは、ChAdV3である。組換えチンパンジーアデノウイルス血清型3(ChAd3又はcAd3)は、ヒトアデノウイルス血清型5(Ad5)のものと類似した特性を有する亜群Cのアデノウイルスである。ChAd3は、C型肝炎ウイルス(HCV)のための候補ワクチンを評価するヒト試験において安全であり且つ免疫原性であることが示されている(Barnes E,et al.2012 Science translational medicine 4:115ra1)。ChAd3に基づくワクチンは、ヒトAd5ベクターワクチンに匹敵する免疫応答を誘導できたことが報告された。例えば、Peruzzi D,et al.2009 Vaccine 27:1293-300及びQuinn KM,et al.2013 J Immunol 190:2720-35;国際公開第2005/071093号パンフレット;並びに国際公開第2011/0130627号パンフレットを参照されたい。
【0058】
アデノウイルスベクター、その構築方法及びその増殖方法は、当該技術分野でよく知られており、例えば、米国特許第5,559,099号明細書、同第5,837,511号明細書、同第5,846,782号明細書、同第5,851,806号明細書、同第5,994,106号明細書、同第5,994,128号明細書、同第5,965,541号明細書、同第5,981,225号明細書、同第6,040,174号明細書、同第6,020,191号明細書及び同第6,113,913号明細書、並びにそれぞれVirology,B.N.Fields et al.,eds.,3d ed.,Raven Press,Ltd.,New York(1996)の67及び68章に収録のThomas Shenk,「Adenoviridae and their Replication」、M.S.Horwitz,「Adenoviruses」、並びに本明細書で言及している他の参考文献に記載されている。一般的には、アデノウイルスベクターの構築は、例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning,a Laboratory Manual,2d ed.,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989)、Watson et al.,Recombinant DNA,2d ed.,Scientific American Books(1992)、及びAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Wiley Interscience Publishers,NY(1995)、並びに本明細書で言及している他の参考文献に記載されているものなど、標準的な分子生物学的手法の使用を含む。
【0059】
特定の実施形態では、アデノウイルスベクターは、E1欠失及び/又はE3欠失を含む。E1又はE3欠失は、例えば、遺伝子の完全な欠失又は部分的な欠失を含むことができ、これによりE1又はE3遺伝子産物が機能的に欠損する。したがって、特定の実施形態では、アデノウイルスは、複製欠損であり、例えば、これは、ゲノムのE1領域に欠失を含むためである。当業者に知られるとおり、アデノウイルスゲノムから必須領域が欠失している場合、これらの領域でコードされる機能は、好ましくは、プロデューサー細胞によってトランスに提供される必要がある。すなわち、E1、E2及び/又はE4領域の一部又は全部がアデノウイルスから欠失している場合、これらは、プロデューサー細胞内、例えばそのゲノムに組み込まれるか、又はいわゆるヘルパーアデノウイルス若しくはヘルパープラスミドの形態で存在する必要がある。アデノウイルスは、E3領域内にも欠失を有し得るが、これは複製に不要であるため、そのような欠失は補完される必要はない。E1、E2、E3及びE4領域のうちの1つ以上はまた、目的の導入遺伝子(通常、プロモーターに連結されている)を不活性化されることになる領域に挿入するなど、他の手段によっても不活性化され得る。
【0060】
使用可能なプロデューサー細胞(当該技術分野及び本明細書では、「パッケージング細胞」又は「補完細胞」と称される場合がある)は、所望のアデノウイルスが増殖し得る任意のプロデューサー細胞であり得る。例えば、組換えアデノウイルスベクターの増殖は、アデノウイルス内の欠損を補完するプロデューサー細胞内で行われる。そのようなプロデューサー細胞は、好ましくは、それらのゲノム内に少なくとも1つのアデノウイルスE1配列を有し、それによりE1領域内に欠失を有する組換えアデノウイルスを補完することができる。任意のE1を補完するプロデューサー細胞、例えばE1により不死化されたヒト網膜細胞、例えば911又はPER.C6細胞(米国特許第5,994,128号明細書を参照)、E1形質転換羊膜細胞(欧州特許第1230354号明細書を参照)、E1形質転換A549細胞(例えば、国際公開第98/39411号パンフレット、米国特許第5,891,690号明細書を参照)、GH329:HeLa(Gao et al.,2000,Hum Gene Ther 11:213-19)、293などを用いることができる。特定の実施形態では、プロデューサー細胞は、例えば、HEK293細胞、又はPER.C6細胞、又は911細胞、又はIT293SF細胞などである。プロデューサー細胞内でのアデノウイルスベクターの産生は(Kovesdi et al.,2010,Viruses 2:1681-703)において概説される。
【0061】
特定の実施形態では、アデノウイルスベクターは、1種以上のヒトアデノウイルス核酸配列を含むキメラアデノウイルスベクターである。ヒトアデノウイルス核酸は、例えば、ヒトアデノウイルス-4(Ad-4)、ヒトアデノウイルス-5(Ad-5)、ヒトアデノウイルス-26(Ad-26)、又はヒトアデノウイルス-35(Ad-35)から選択され得る。特定の実施形態では、E1欠損アデノウイルスベクターは、ヒトAd5のアデノウイルスのE4-orf6コード配列を含む。これは、Ad5のE1遺伝子を発現するよく知られた補完細胞株、例えば293細胞又はPER.C6細胞におけるそのようなアデノウイルスの増殖を可能にする(例えば、全体が参照により本明細書に組み込まれるFallaux et al.,1998,Hum Gene Ther 9:1909-17,Havenga et al.,2006,J Gen Virol 87:2135-43;国際公開第03/104467号パンフレットを参照のこと)。
【0062】
特定の実施形態では、アデノウイルスベクターは導入遺伝子を含む。「導入遺伝子」は、ベクター中において天然に存在しない核酸である異種核酸を指し、本発明によれば、導入遺伝子は、対象において免疫応答を誘発する抗原性遺伝子産物又は抗原性タンパク質をコードし得る。導入遺伝子は、例えば、標準的な分子生物学的手法によってベクターに導入され得る。導入遺伝子は、例えば、アデノウイルスベクターの欠失したE1若しくはE3領域内、又はE4領域とrITRとの間の領域内にクローン化され得る。導入遺伝子は、一般に、発現制御配列に作動可能に連結される。好ましい実施形態では、導入遺伝子は、導入遺伝子挿入部位で挿入される。
【0063】
必要に応じて、本発明の実施形態によるヘキソン又はファイバーポリペプチドをコードする核酸配列、及び/又は導入遺伝子は、治療される宿主(例えば、ヒト)における適切な発現を確実にするためにコドン最適化され得る。コドン最適化は、当該技術分野において広く適用されている技術である。
【0064】
導入遺伝子は、アデノウイルス由来のプロモーター(例えば、主要後期プロモーター)の制御下に置かれ得る(すなわち、作動可能に連結され得る)か、又は異種プロモーターの制御下に置かれ得る。好適な異種プロモーターの例としては、CMVプロモーター及びRSVプロモーターが挙げられる。好ましくは、プロモーターは、発現カセット内部の目的の異種遺伝子の上流に位置する。
【0065】
好ましい実施形態では、アデノウイルスベクターは、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号53、及び配列番号57からなる群から選択される核酸配列を含む。
【0066】
免疫原性組成物
免疫原性組成物は、本発明における使用のための免疫学的有効量の精製された又は部分的に精製されたヒト又はサル(例えば、チンパンジー)アデノウイルスベクターを含む組成物である。前記組成物は、当該技術分野においてよく知られる方法に従ってワクチン(「免疫原性組成物」とも称される)として製剤化され得る。このような組成物は、免疫応答を増強させるためのアジュバントを含み得る。製剤における各々の構成成分の最適な比は、本開示に鑑みて当業者によく知られる技術によって決定され得る。
【0067】
本発明の実施形態による免疫原性組成物は、本開示に鑑みて当業者に知られる方法を用いて作製され得る。液体医薬組成物としては、一般に、水、石油、動物油若しくは植物油、鉱油、又は合成油などの液体担体が挙げられる。生理食塩水溶液、ブドウ糖若しくは他の糖類溶液、又はエチレングリコール、プロピレングリコール若しくはポリエチレングリコールなどのグリコールが含まれてもよい。
【0068】
本発明に有用な免疫原性組成物は、アジュバントを含み得る。本発明による同時投与に好適なアジュバントは、人において潜在的に安全であり、十分に耐容性を示し且つ有効であるものであるべきであり、QS-21、Detox-PC、MPL-SE、MoGM-CSF、TiterMax-G、CRL-1005、GERBU、TERamide、PSC97B、Adjumer、PG-026、GSK-I,AS01、AS03、AS04、AS15、GcMAF、B-alethine、MPC-026、Adjuvax、CpG ODN、Betafectin、Alum、及びMF59を含む。
【0069】
投与され得る他のアジュバントとしては、レクチン、増殖因子、サイトカイン及びリンホカイン、例えばアルファ-インターフェロン、ガンマインターフェロン、血小板由来増殖因子(PDGF)、顆粒球コロニー刺激因子(gCSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(gMCSF)、腫瘍壊死因子(TNF)、上皮増殖因子(EGF)、IL-I、IL-2、IL-4、IL-6、IL-8、IL-10、及びIL-12又はこれらのコード核酸が挙げられる。
【0070】
本発明の組成物は、薬学的に許容される賦形剤、担体、緩衝剤、安定剤又は当業者によく知られる他の物質を含み得る。このような物質は、無毒性でなければならず、活性成分の効力を阻害してはならない。担体又は他の材料の厳密な性質は、投与経路、例えば筋肉内、皮下、経口、静脈内、皮膚、粘膜内(例えば、腸)、鼻腔内又は腹腔内経路に依存し得る。
【0071】
防御免疫を誘導するための方法
本発明の別の一般的な態様は、必要とする対象において免疫応答を誘導する方法に関する。方法は、例えば、本明細書に記載されるアデノウイルスベクター及び薬学的に許容される担体を含むワクチンを対象に投与することを含み得る。また、本明細書ではワクチンを作製する方法も提供される。方法は、本明細書に記載されるアデノウイルスベクターを薬学的に許容される担体と組み合わせることを含む。
【0072】
本明細書に記載されるものを含むが、それらに限定されない本発明の実施形態による免疫原性組成物のいずれかは、本発明の方法においてワクチンとして使用され得る。
【0073】
ベクターを含む免疫原性組成物/ワクチンの投与は通常、筋肉内又は皮下である。しかしながら、静脈内、皮膚、皮内、生殖器又は経鼻などの他の投与様式も同様に想定され得る。免疫原性組成物の筋肉内投与は、アデノウイルスベクターの懸濁剤を注射するためのニードルを使用することにより行われ得る。代替法は、組成物を投与する無針注射デバイスの使用(例えばBiojector(商標)を使用する)、又はワクチンを含有する凍結乾燥粉末である。
【0074】
静脈内、皮膚若しくは皮下注射、又は罹患部位での注射のために、ベクターは、パイロジェンフリーであり且つ好適なpH、等張性及び安定性を有する非経口的に許容される水溶液の形態となる。当業者は、例えば、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、乳酸リンゲル注射液などの等張媒体を用いて好適な溶液を調製することが十分に可能である。必要に応じて、保存剤、安定剤、緩衝剤、抗酸化剤及び/又は他の添加剤が含まれ得る。徐放性製剤もまた利用され得る。
【0075】
通常、投与は、感染又は症状の発症の前に目的の抗原(例えば、細菌、ウイルス、寄生虫、及び/又は真菌病原体)に対する免疫応答を発生させる予防的な目的を有することになる。本発明により治療又は予防され得る疾患及び障害は、免疫応答が防御的又は治療的な役割を果たすことができるものを含む。他の実施形態では、アデノウイルスベクターは、曝露後の予防のために投与され得る。
【0076】
ヒト又はサル(例えば、チンパンジー)アデノウイルスベクターを含有する免疫原性組成物を対象に投与すると、対象において目的の抗原に対する免疫応答が生じる。検出可能な免疫応答を誘導するのに十分な組成物の量は、組成物の「免疫原的有効用量」又は「有効量」と定義される。本発明の免疫原性組成物は、体液性及び細胞性免疫応答を誘導することができる。典型的な実施形態において、免疫応答は、防御免疫応答である。
【0077】
投与される実際の量、及び投与の速度及び時間経過は、投与されているものの性質及び重症度に依存することになる。治療の処方、例えば、投与量などの決定は、一般開業医や他の医師、又は獣医の場合は獣医師の責任の範囲内であり、通常、治療対象の障害、個々の患者の状態、送達部位、投与方法、及び開業医に知られるその他の要因を考慮する。上述の手法及びプロトコルの例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,16th edition,Osol,A.ed.,1980において見出され得る。
【0078】
アデノウイルスベクターの作製及びこのような粒子の組成物への任意選択的な製剤化後、ベクターは、個体、特にヒト又は他の霊長類に投与され得る。投与は、ヒト又は別の哺乳動物、例えばマウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウマ、ウシ、ロバ、サル、イヌ又はネコに対するものであり得る。非ヒト哺乳動物への送達は、治療目的である必要はないが、実験の状況、例えばアデノウイルスベクターに対する免疫応答の機構の究明に使用するためであり得る。
【0079】
1つの例示的なレジメンにおいて、アデノウイルスベクターは、約10~1012ウイルス粒子/mlの濃度を含有する約100μl~約10mlの範囲の量で投与される(例えば、筋肉内)。好ましくは、アデノウイルスベクターは、0.1~2.0mlの範囲の量で投与される。例えば、アデノウイルスベクターは、100μl、500μl、1ml、2mlで投与され得る。より好ましくは、アデノウイルスベクターは、0.5mlの量で投与される。任意選択により、アデノウイルスベクターは、約10vp/ml、10vp/ml、10vp/ml、1010vp/ml、5×1010vp/ml、1011vp/ml、又は1012vp/mlの濃度で投与され得る。通常、アデノウイルスベクターは、ヒト対象に1回の投与で約10~約1012ウイルス粒子(vp)の量、より典型的には約1010~約1012vpの量で投与される。
【0080】
初回ワクチン接種の後、目的の抗原をコードする同じアデノウイルスベクターを含むワクチン/組成物又は目的の同じ抗原をコードする異なるアデノウイルスベクターを含むワクチン/組成物からのブースト又はキックが続き得る。
【0081】
組成物は、必要に応じて、活性成分を含有する1つ以上の単位投薬形態を含むものであり得るキット、パック又はディスペンサーで提示され得る。キットは、例えば、金属又はプラスチックのホイル、例えばブリスターパックを含み得る。キット、パック又はディスペンサーに投与のための使用説明書を付随させてもよい。
【0082】
本発明の組成物は、単独で又は他の治療と組み合わせて、治療対象の状態に応じて同時に又は順次に投与され得る。
【0083】
実施形態
本発明はまた、以下の非限定的な実施形態を提供する。
【0084】
実施形態1は、配列番号のアミノ酸6~375と少なくとも98%の同一性を有するファイバーポリペプチドをコードする単離された核酸配列である。
【0085】
実施形態2は、ファイバーポリペプチドが、BB21ファイバーポリペプチド(配列番号)、BB21ファイバー変異体ポリペプチド(配列番号)、又はBB24ファイバーポリペプチド(配列番号)から選択されるアミノ酸配列を含む、実施形態1の単離された核酸配列である。
【0086】
実施形態3は、単離された核酸配列がさらに、配列番号又は配列番号から選択されるアミノ酸配列を含むヘキソン超可変領域包含ポリペプチドを含むヘキソンポリペプチドをコードする核酸配列を含む、実施形態1又は2の単離された核酸である。
【0087】
実施形態4は、ヘキソンポリペプチドが、BB21ヘキソンポリペプチド(配列番号)又はBB24ヘキソンポリペプチド(配列番号)から選択されるアミノ酸配列を含む、実施形態3の単離された核酸である。
【0088】
実施形態5は、単離された核酸配列がさらに、Ptr01ヘキソンポリペプチド(配列番号10)又はPtr13ヘキソンポリペプチド(配列番号12)から選択されるアミノ酸配列を含むヘキソンポリペプチドをコードする核酸配列を含む、実施形態1又は2の単離された核酸である。
【0089】
実施形態6は、配列番号又は配列番号から選択されるアミノ酸配列を含むヘキソン超可変領域包含ポリペプチドを含むヘキソンポリペプチドをコードする単離された核酸配列である。
【0090】
実施形態7は、ヘキソンポリペプチドが、BB21ヘキソンポリペプチド(配列番号)又はBB24ヘキソンポリペプチド(配列番号)から選択されるアミノ酸配列を含む、実施形態6の単離された核酸配列である。
【0091】
実施形態8は、実施形態1~7のいずれか1つの核酸を含むベクターである。
【0092】
実施形態9は、アデノウイルスベクターであり、且つ導入遺伝子をさらに含む、実施形態8のベクターである。
【0093】
実施形態10は、実施形態8又は9のベクターを含む組換え細胞である。
【0094】
実施形態11は、(a)実施形態10の組換え細胞を、ベクターを産生するための条件下で増殖させること;及び(b)組換え細胞からベクターを単離することを含む、ベクターを作製する方法である。
【0095】
実施形態12は、実施形態8又は9のベクターを含む免疫原性組成物である。
【0096】
実施形態13は、実施形態12の免疫原性組成物を対象に投与することを含む、必要とする対象において免疫応答を誘導する方法である。
【0097】
実施形態14は、(a)少なくとも1つの導入遺伝子;及び(b)ファイバーポリペプチドをコードする核酸配列を含むアデノウイルスベクターであって、ファイバーポリペプチドが、配列番号のアミノ酸6~375と少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を含むアデノウイルスベクターである。
【0098】
実施形態15は、ファイバーポリペプチドが、配列番号のアミノ酸6~375と少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態14のアデノウイルスベクターである。
【0099】
実施形態16は、ファイバーポリペプチドが、配列番号と少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態14又は15のアデノウイルスベクターである。
【0100】
実施形態17は、ファイバーポリペプチドが、配列番号と少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態14~16のいずれか1つのアデノウイルスベクターである。
【0101】
実施形態18は、ファイバーポリペプチドが、BB21ファイバーポリペプチド(配列番号)、BB21ファイバー変異体ポリペプチド(配列番号)、又はBB24ファイバーポリペプチド(配列番号)から選択されるアミノ酸配列を含む、実施形態14~17のいずれか1つのアデノウイルスベクターである。
【0102】
実施形態19は、配列番号又は配列番号から選択されるアミノ酸配列を含むヘキソン超可変領域包含ポリペプチドを含むヘキソンポリペプチドをコードする核酸配列をさらに含む、実施形態14~18のいずれか1つのアデノウイルスベクターである。
【0103】
実施形態20は、ヘキソンポリペプチドが、BB21ヘキソンポリペプチド(配列番号)又はBB24ヘキソンポリペプチド(配列番号)から選択されるアミノ酸配列を含む、実施形態19のアデノウイルスベクターである。
【0104】
実施形態21は、(a)少なくとも1つの導入遺伝子挿入部位;及び(b)ヘキソンポリペプチドをコードする核酸配列を含むアデノウイルスベクターであって、ヘキソンポリペプチドが、配列番号又は配列番号から選択されるアミノ酸配列を含むヘキソン超可変領域包含ポリペプチドを含むアデノウイルスベクターである。
【0105】
実施形態22は、ヘキソンポリペプチドが、BB21ヘキソンポリペプチド(配列番号)又はBB24ヘキソンポリペプチド(配列番号)から選択されるアミノ酸配列を含む、実施形態21のアデノウイルスベクターである。
【0106】
実施形態23は、アデノウイルスベクターがさらにE1欠失又は不活性化E1を含む、実施形態14~22のいずれか1つのアデノウイルスベクターである。
【0107】
実施形態24は、アデノウイルスベクターがさらにE3欠失又は不活性化E3を含む、実施形態14~23のいずれか1つのアデノウイルスベクターである。
【0108】
実施形態25は、アデノウイルスベクターが、1種以上のヒトアデノウイルス核酸配列を含むキメラアデノウイルスベクターである、実施形態14~24のいずれか1つのアデノウイルスベクターである。
【0109】
実施形態26は、ヒトアデノウイルス核酸配列が、ヒトアデノウイルス-4(hAdV-4)、ヒトアデノウイルス-5(hAdV-5)、ヒトアデノウイルス-26(hAdV-26)、又はヒトアデノウイルス-35(hAdV-35)に由来する、実施形態25のアデノウイルスベクターである。
【0110】
実施形態27は、アデノウイルスベクターが、ヒトアデノウイルス-5(hAdV-5)E4 orf6を含む、実施形態26のアデノウイルスベクターである。
【0111】
実施形態28は、導入遺伝子挿入部位が、逆位末端配列(ITR)に隣接する、実施形態14~27のいずれか1つのアデノウイルスベクターである。
【0112】
実施形態29は、導入遺伝子が、E1欠失にある導入遺伝子挿入部位、E3欠失にある導入遺伝子挿入部位、及びITRに隣接する導入遺伝子挿入部位からなる群から選択される1つ以上の導入遺伝子挿入部位で挿入される、実施形態28のアデノウイルスベクターである。
【0113】
実施形態30は、アデノウイルスベクターが、配列番号28、配列番号29、配列番号30、及び配列番号31からなる群から選択される核酸配列を含む、実施形態14~29のいずれか1つのアデノウイルスベクターである。
【0114】
実施形態31は、アデノウイルスベクターが、配列番号53又は配列番号57から選択される核酸配列を含む、実施形態14~18及び23~29のいずれか1つのアデノウイルスベクターである。
【0115】
実施形態32は、(a)少なくとも1つの導入遺伝子;(b)BB21ヘキソンポリペプチド(配列番号)、BB24ヘキソンポリペプチド(配列番号)、Ptr01ヘキソンポリペプチド(配列番号10)、Ptr13ヘキソンポリペプチド(配列番号12)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むヘキソンポリペプチドをコードする核酸配列、及び(c)BB21ファイバーポリペプチド(配列番号)、BB21ファイバー変異体ポリペプチド(配列番号)、又はBB24ファイバーポリペプチド(配列番号)から選択されるアミノ酸配列を含むファイバーポリペプチドをコードする核酸配列を含むアデノウイルスベクターである。
【0116】
実施形態33は、ヘキソンポリペプチドが、Ptr01ヘキソンポリペプチド(配列番号10)又はPtr13ヘキソンポリペプチド(配列番号12)のアミノ酸配列を含み、且つファイバーポリペプチドが、BB21ファイバーポリペプチド(配列番号)、BB21ファイバー変異体ポリペプチド(配列番号)、又はBB24ファイバーポリペプチド(配列番号)のアミノ酸配列を含む、実施形態32のアデノウイルスベクターである。
【0117】
実施形態34は、ヘキソンポリペプチドがPtr01ヘキソンポリペプチドのアミノ酸配列(配列番号10)を含み、且つファイバーポリペプチドがBB24ファイバーポリペプチドのアミノ酸配列(配列番号)を含む、実施形態33のアデノウイルスベクターである。
【0118】
実施形態35は、ヘキソンポリペプチドがPtr13ヘキソンポリペプチドのアミノ酸配列(配列番号12)を含み、且つファイバーポリペプチドがBB21ファイバー変異体ポリペプチドのアミノ酸配列(配列番号)を含む、実施形態33のアデノウイルスベクターである。
【0119】
実施形態36は、ヘキソンポリペプチドがBB21ヘキソンポリペプチドのアミノ酸配列(配列番号)を含み、且つファイバーポリペプチドがBB21ファイバーポリペプチドのアミノ酸配列(配列番号)を含む、実施形態32のアデノウイルスベクターである。
【0120】
実施形態37は、ヘキソンポリペプチドがBB24ヘキソンポリペプチドのアミノ酸配列(配列番号)を含み、且つファイバーポリペプチドがBB24ファイバーポリペプチドのアミノ酸配列(配列番号)を含む、実施形態32のアデノウイルスベクターである。
【0121】
実施形態38は、アデノウイルスベクターがさらに、ヒトアデノウイルス-4(HAdV-4)、ヒトアデノウイルス-5(HAdV-5)、ヒトアデノウイルス-26(HAdV-26)、又はヒトアデノウイルス-35(HAdV-35)に由来する1種以上の核酸配列を含む、実施形態32~37のいずれかのアデノウイルスベクターである。
【0122】
実施形態39は、アデノウイルスベクターが、ヒトアデノウイルス-4(HAdV-4)に由来する1種以上の核酸配列及びヒトアデノウイルス-5(HAdV-5)E4 orf6の核酸配列を含む、実施形態38のアデノウイルスベクターである。
【0123】
実施形態40は、配列番号53及び配列番号57からなる群から選択される核酸配列を含む実施形態39のアデノウイルスベクターである。
【0124】
実施形態41は、実施形態14~40のいずれかによるアデノウイルスベクター及び薬学的に許容される担体を含むワクチンである。
【0125】
実施形態42は、実施形態41のワクチンを対象に投与することを含む、必要とする対象において免疫応答を誘導するための方法である。
【0126】
実施形態43は、実施形態14~40のいずれかによるアデノウイルスベクターを薬学的に許容される担体と組み合わせることを含む、ワクチンを作製する方法である。
【0127】
実施形態44は、配列番号又は配列番号から選択されるアミノ酸配列を含むヘキソン超可変領域包含ポリペプチドを含む単離されたヘキソンポリペプチドである。
【0128】
実施形態45は、ヘキソンポリペプチドが、BB21ヘキソンポリペプチド(配列番号)又はBB24ヘキソンポリペプチド(配列番号)から選択されるアミノ酸配列を含む、実施形態44の単離されたヘキソンポリペプチドである。
【0129】
実施形態46は、Ptr01ヘキソンポリペプチド(配列番号10)又はPtr13ヘキソンポリペプチド(配列番号12)から選択されるアミノ酸配列を含む単離されたヘキソンポリペプチドである。
【0130】
実施形態47は、ファイバーポリペプチドが、配列番号のアミノ酸6~375と少なくとも98%の同一性を有する、単離されたファイバーポリペプチドである。
【0131】
実施形態48は、ファイバーポリペプチドが、配列番号のアミノ酸6~375と少なくとも99%の同一性を有する、実施形態47の単離されたファイバーポリペプチドである。
【0132】
実施形態49は、ファイバーポリペプチドが、配列番号と少なくとも98%の同一性を有する、単離されたファイバーポリペプチドである。
【0133】
実施形態50は、ファイバーポリペプチドが、配列番号と少なくとも99%の同一性を有する、実施形態49の単離されたファイバーポリペプチドである。
【0134】
実施形態51は、ファイバーポリペプチドが、BB21ファイバーポリペプチド(配列番号)、BB21ファイバー変異体ポリペプチド(配列番号)、又はBB24ファイバーポリペプチド(配列番号)から選択されるアミノ酸配列を含む、実施形態49の単離されたファイバーポリペプチドである。
【0135】
実施形態52は、必要とする対象において免疫応答を誘導するための実施形態41のワクチンである。
【0136】
実施形態53は、必要とする対象において免疫応答を誘導するための薬物の製造のための実施形態41のワクチンの使用である。
【0137】
実施形態54は、アデノウイルスベクターが、配列番号40、配列番号41、配列番号48、配列番号49、配列番号54、配列番号55、配列番号58、及び配列番号59からなる群から選択される核酸配列を含む、アデノウイルスベクターである。
【0138】
実施形態55は、アデノウイルスベクターが、配列番号40の核酸配列を含む、実施形態54のアデノウイルスベクターである。
【0139】
実施形態56は、アデノウイルスベクターが、配列番号41の核酸配列を含む、実施形態54のアデノウイルスベクターである。
【0140】
実施形態57は、アデノウイルスベクターが、配列番号48の核酸配列を含む、実施形態54のアデノウイルスベクターである。
【0141】
実施形態58は、アデノウイルスベクターが、配列番号49の核酸配列を含む、実施形態54のアデノウイルスベクターである。
【0142】
実施形態59は、アデノウイルスベクターが、配列番号54の核酸配列を含む、実施形態54のアデノウイルスベクターである。
【0143】
実施形態60は、アデノウイルスベクターが、配列番号55の核酸配列を含む、実施形態54のアデノウイルスベクターである。
【0144】
実施形態61は、アデノウイルスベクターが、配列番号58の核酸配列を含む、実施形態54のアデノウイルスベクターである。
【0145】
実施形態62は、アデノウイルスベクターが、配列番号59の核酸配列を含む、実施形態54のアデノウイルスベクターである。
【実施例
【0146】
実施例1:新規のアデノウイルスベクター単離物BB21及びBB24に基づくE1及びE3欠失ベクターの作製
2つの新規のチンパンジーアデノウイルス単離物、BB21(JAd2-WTとも命名される)及びBB24(JAd3-WTとも命名される)が同定され、且つ配列決定された。チンパンジーアデノウイルス単離物は、系統学的にヒトアデノウイルス種E(HAdV-E)群に属することが見出された。BB21及びBB24の全ゲノムヌクレオチド配列は、それぞれ配列番号13及び配列番号14であると決定された。BB21ヘキソン及びファイバーポリペプチド配列は、それぞれ配列番号及びであると決定された。BB24ヘキソン及びファイバーポリペプチド配列は、それぞれ配列番号及びであると決定された。BB21及びBB24ファイバーポリペプチド配列のアラインメントは、図15において提供される。
【0147】
BB21及びBB24に基づくAdベクターの作製のために使用される単一のプラスミド系の説明
pBB21.dE1.dE3(配列番号15図9)、pBB21.dE1.dE3.5IXP(配列番号16図10)、pBB24.dE1.dE3(配列番号17図11)、及びpBB24.dE1.dE3.5IXP(配列番号18図12)は、単離物BB21及びBB24に基づく全長のE1及びE3欠失アデノウイルスベクターゲノムを保有するプラスミドである。これらのプラスミド内に含有されるAdベクターゲノム配列は、それぞれ配列番号28、配列番号29、配列番号30、及び配列番号31において記載される。これらのプラスミドの各々の内部において、アデノウイルスベクターゲノムは、2つのSwaI制限酵素部位に隣接する(すなわち、1つのSwaI部位が、ベクターゲノムいずれの末端にも位置する)。これらのSwaI部位は、好適なE1補完細胞(HEK293、911、及びPER.C6細胞など)のトランスフェクションによるウイルスレスキューの前にプラスミド骨格からのAdベクターゲノムの切除を容易にすることを意味する。これらのプラスミドによって構成されるAdベクターゲノムはさらに、E1欠失、E3欠失の位置、及び右逆位末端配列(RITR)に隣接して導入される特定の制限酵素部位を保有する。これらの制限酵素部位は、完全Adゲノムプラスミドの文脈において固有なものとして選択された。それらは、前記のそれぞれの位置又はその任意の組合せのいずれかで挿入される1つ以上の導入遺伝子発現カセットを保有するAdベクターの標準的な分子クローニング手法による容易な構築を可能にする「導入遺伝子挿入部位」となる。Adベクターの設計及びプラスミドの構築は、以下の節においてより詳細に記載される。
【0148】
BB21及びBB24に基づくAdベクターゲノムの設計
BB21及びBB24に基づくAdベクターゲノムはそれぞれ、E1欠失、E3欠失、異なる導入遺伝子挿入部位、並びに天然E4オープンリーディングフレーム(orf)6及びorf6/7のヒトアデノウイルス-5(HAdV-5)のものとの置換を含むように設計された。各アデノウイルスのE1領域は、AsiSI制限酵素部位配列を含む導入遺伝子挿入部位により欠失され、且つ置換された。各アデノウイルスのE3領域は、RsrII制限酵素部位配列を含む導入遺伝子挿入部位により欠失され、且つ置換された。別の導入遺伝子挿入部位は、各アデノウイルスの逆位末端配列(ITR)に隣接するPacI制限酵素部位配列の挿入によって作製された。E4 orf6及びorf6/7コード配列を含むBB21及びBB24配列は、それぞれ配列番号32及び配列番号42によって置換された。これらの置換配列は、ある種のAseI部位(クローニング目的のため)を排除する1つのサイレント変異を保有するように改変されたヒトアデノウイルス-5(HAdV-5)のE4 orf6及びorf6/7コード配列(GenBank配列AC_000008の塩基対32914-34077)を含む。
【0149】
2種類のE1領域欠失が設計され、構築された。それぞれpBB21.dE1.dE3及びpBB24.dE1.dE3によって構成されるBB21及びBB24に基づくAdベクターゲノムは、それぞれ配列番号13のヌクレオチド456~3027及び配列番号14のヌクレオチド457~3025の除去に相当するE1領域欠失を保有する。対照的に、それぞれpBB21.dE1.dE3.5IXP及びpBB24.dE1.dE3.5IXPによって構成されるBB21及びBB24に基づくAdベクターゲノムは、BB21又はBB24の全てのE1コード配列(すなわち、それぞれ配列番号13のヌクレオチド456~3418又は配列番号14のヌクレオチド457~3420)を除去するより広いE1領域を含む配列欠失を保有する。これらの後者の2つのAdベクターゲノムは、E1B 55KとpIXコード配列の間の非コード配列区間のHAdV-5のものとの置換を保有するように追加的に設計された(すなわち、配列番号13のヌクレオチド3419~3502又は配列番号14の3421~3504に相当する配列は、GenBank AC_000008のヌクレオチド3510~3608(すなわち、配列番号27)によって置換された)。
【0150】
BB21に基づくAdベクターゲノムを含む単一のプラスミドの構築
pBB21.dE1.dE3(配列番号15)は、遺伝子合成(GenScript;Piscataway、NJによって実施される)及び標準的な分子クローニング手順のいくつかの工程によって構築された。第一に、所望のAdベクターゲノムの右末端を含有する(すなわち、前述のE3欠失、部分的なE4配列置換、及びRITRに隣接する導入遺伝子挿入部位を内部に持つ)3576bp DNA断片(配列番号33)が合成され、EcoRI-AseI制限断片として、EcoRI及びNdeI消化pBR322(GenBank受入番号-J01749.1)に結合されて、BB21中間体プラスミド1を得た。第二に、所望のAdベクターゲノムの左末端を含有する(すなわち、前述のE1欠失を内部に持つ)4256bp断片(配列番号34)が合成され、SnaBI-EcoRI制限断片として、ZraI及びEcoRI消化BB21中間体プラスミド1に結合されて、BB21中間体プラスミド2を得た。第三に、中間のAdベクターゲノム断片を含有する4077bp断片(配列番号35)が合成され、EcoRI-HpaI制限断片として、EcoRI及びHpaI消化BB21中間体プラスミド2に結合されて、BB21中間体プラスミド3(配列番号36)を得た。第四に、BB21ウイルスゲノム(配列番号13)の18815bp AbsI-EcoRI制限断片が、AbsI及びEcoRI消化BB21中間体プラスミド3に結合されて、最終プラスミドpBB21.dE1.dE3(配列番号15)を得た。
【0151】
pBB21.dE1.dE3.5IXP(配列番号16)は、前述のBB21中間体プラスミド3(配列番号36)が最初に所望のE1欠失及びAd5 pIXプロモーター挿入を含有するように改変されたことを除いてpBB21.dE1.dE3と同じ方法で構築された。これは、後にAsiSI-FseI制限断片としてAsiSI及びFseI消化BB21中間体プラスミド3に結合された224bp断片(配列番号37)の合成によって行われた。
【0152】
pBB21.FLuc(配列番号38)及びpBB21.RSVF-2A-GLuc(配列番号39)は、それぞれE1欠失の位置で挿入された導入遺伝子発現カセットを備えるBB21に基づくAdベクターゲノムを内部に持つpBB21.dE1.dE3由来プラスミドである。これらのプラスミド内に保有されるAdベクターゲノム配列は、それぞれ配列番号40及び配列番号41において記載される。pBB21.FLucは、ホタルルシフェラーゼ(FLuc)に関する導入遺伝子発現カセットを保有する。このカセットは、サイトメガロウイルス主要前初期プロモーター(すなわち、「CMVプロモーター」)によって駆動され、且つSV40由来ポリアデニル化シグナルを含有する。pBB21.RSVF-2A-Glucは、「RSV-FA2-2A-GLuc」(RSVF-2A-GLuc)に関する導入遺伝子発現カセットを保有し、これは、呼吸器多核体ウイルス株A2融合糖タンパク質、口蹄疫ウイルス2Aペプチド、及びガウシアルシフェラーゼ(GLuc)で構成されるキメラタンパク質である。FLucカセットのように、このカセットは、CMVプロモーターによって駆動され、SV40ポリアデニル化シグナルを保有する。加えて、このカセットは、5’非翻訳領域内にヒトアポリポタンパク質A1遺伝子のイントロン2を含む配列を含有する。Fluc及びRSVF-2A-GLuc発現カセットはそれぞれ、いくつかの標準的な遺伝子合成及び分子クローニング工程によって構築された後、それらは、それぞれpBB21.dE1.dE3の固有のAsiSI制限酵素部位に結合されて、pBB21.FLuc及びpBB21.RSVF-2A-Glucを生成した。
【0153】
BB24に基づくAdベクターゲノムを含む単一のプラスミドの構築
pBB24.dE1.dE3(配列番号17)は、遺伝子合成(GenScriptによって実施される)及び標準的な分子クローニング手順のいくつかの工程によって構築された。第一に、所望のAdベクターゲノムの左及び右末端を含有する(すなわち、前述のE1欠失、E3欠失、部分的なE4配列置換、及びRITRに隣接する導入遺伝子挿入部位を内部に持つ)8144bp DNA断片(配列番号43)が合成され、MfeI-AseI制限断片として、EcoRI及びNdeI消化pBR322(GenBank受入番号-J01749.1)に結合されて、BB24中間体プラスミド1(配列番号44)を得た。第二に、BB24ウイルスゲノム(配列番号14)の22482bp NdeI-EcoRI制限断片が、NdeI及びEcoRI消化BB24中間体プラスミド1に結合されて、最終プラスミドpBB24.dE1.dE3を得た。
【0154】
pBB24.dE1.dE3.5IXP(配列番号18)は、同様の様式で構築された。第一に、前述のBB24中間体プラスミド1(配列番号44)が、所望のE1欠失及びAd5 pIXプロモーター挿入を保有するように改変された。これは、後にAsiSI-EcoRI制限断片としてAsiSI及びEcoRI消化BB24中間体プラスミド1に結合された2671bp断片(配列番号45)の合成によって行われた。第二に、BB24ウイルスゲノム(配列番号14)の19470bp XbaI-EcoRI制限断片が、改変プラスミド(XbaI及びEcoRIで消化された)に結合された。
【0155】
pBB24.FLuc(配列番号46)及びpBB24.RSVF-2A-GLuc(配列番号47)は、それぞれE1欠失の位置で挿入された導入遺伝子発現カセットを備えるBB24に基づくAdベクターゲノムを含有するpBB24.dE1.dE3由来プラスミドである。これらのプラスミド内に保有されるAdベクターゲノム配列は、それぞれ配列番号48及び配列番号49において記載される。pBB21.FLucは、pBB21.FLucに関して本明細書に記載されるものと同じFLuc発現カセットを保有する。pBB24.RSVF-2A-GLucは、pBB21.RSVF-2A-GLucに関して本明細書に記載されるものと同じRSVF-2A-GLuc発現カセットを保有する。これらの2つのカセットはそれぞれ、いくつかの標準的な遺伝子合成及び分子クローニング工程によって構築された後、それらは、それぞれpBB24.dE1.dE3の固有のAsiSI制限酵素部位に結合されて、pBB24.FLuc及びpBB24.RSVF-2A-GLucを生成した。
【0156】
BB21及びBB24に基づくアデノウイルスベクターの作製及び生産
それぞれアデノウイルスベクターゲノム配列配列番号40、配列番号41、配列番号48、及び配列番号49を含む、アデノウイルスベクターBB21.FLuc(JAd2NVT003とも命名される)、BB21.RSVF-2A-GLuc(JAd2NVT001とも命名される)、BB24.FLuc(JAd3NVT003とも命名される)、及びBB24.RSVF-2A-GLuc(JAd3NVT001とも命名される)は、対応するAdベクターゲノムプラスミド(すなわち、pBB21.FLuc、pBB21.RSVF-2A-GLuc、pBB24.FLluc、及びpBB24.RSVF-2A-GLuc)のE1補完PER.C6細胞へのトランスフェクションによって作製された。10%ウシ胎仔血清(FBS)及び10mM MgClが補充されたダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中の接着細胞培養物として増殖されたPER.C6細胞へのトランスフェクションの前に、Adベクターゲノムプラスミドは、SwaIで消化されて、プラスミドから対応するアデノウイルスベクターゲノムを放出した。トランスフェクションは、リポフェクタミントランスフェクション試薬(Invitrogen;Carlsbad、CA)を用いて標準的な手順に従って実施された。ウイルスレスキュートランスフェクションの回収後、PER.C6細胞培養物に対する複数回の連続的な感染ラウンドによって、ウイルスをさらに増幅した。ウイルスを、以前に記載された2工程の塩化セシウム(CsCl)密度勾配超遠心法を用いて粗製のウイルス回収物から精製した(Havenga et al.,「Novel replication-incompetent adenoviral B-group vectors:high vector stability and yield in PER.C6 cells」,J.Gen.Virol.87(8):2135-43(2006))。ウイルス粒子(VP)力価は、以前に記載された分光光度法に基づく手順によって測定された(Maizel et al.,「The polypeptides of adenovirus:I.Evidence for multiple protein components in the virion and a comparison of types 2,7A,and 12」,Virology, 36(1):115-25(1968))。
【0157】
実施例2:類人猿アデノウイルスに由来するヘキソン及びファイバー配列を内部に持つHAdV-4に基づくE1及びE3欠失ベクターの作製。
ヘキソン、又はヘキソン及びファイバー配列において改変されているヒトアデノウイルス4型(HAdV-4)に基づく複製能力がないアデノウイルスベクターを作製するために、E1及びE3欠失、導入遺伝子挿入、並びに下記のとおりのヘキソン及び/又はファイバー置換を内部に持つ完全HAdV-4ベクターゲノムを保有するプラスミドを構築した。導入遺伝子発現カセットを、ベクターのE1欠失に挿入した。HEK293又はPER.C6などのE1補完細胞株へのプラスミドのトランスフェクションは、カプシドタンパク質(ヘキソン、又はヘキソン及びファイバー)が、ある種の類人猿アデノウイルス単離物に由来する異種配列によって置換されているHAdV-4に基づくベクターのレスキューをもたらした。Adベクタープラスミドの設計及び構築は、以下の節において記載される。
【0158】
HAdV-4に基づくAdベクターゲノムを含む単一のプラスミドの設計及び構築
ベクター設計及び構築のために使用されるHAdV-4単離物の完全な配列(35990bp)は、以前に決定された(配列番号19)。
【0159】
HAdV-4に基づくベクターゲノムを保有する(複製能力をなくさせ、且つ外来導入遺伝子カセットの挿入のための余地を作り出すための欠失を内部に持つ)単一のプラスミドを、標準的な分子生物学及びDNAクローニング手法を用いて作製した。簡潔に述べると、所望のHAdV-4に基づくAdベクターの左右末端を含むDNA断片を、GenScriptで合成し、pBR322にクローニングした。その後、精製された野生型HAdV-4ゲノムDNAからHAdV-4ゲノムの欠落した中間部分であるおよそ19kbpのHindIII-HindIII制限断片を(制限酵素消化により)得て、左右末端を含有するpBR322に基づくプラスミドに結合した。これにより、プラスミドpAd4.dE1.dE3を作製した。このプラスミドは、SwaI部位に隣接したE1及びE3欠失HAdV-4に基づくAdベクターゲノムを保有する。これらのSwaI部位は、PER.C6又はHEK293細胞株などのE1補完細胞株のトランスフェクションによるアデノウイルスベクターのレスキューのためのプラスミドからのベクターゲノムの切除を可能にする。E1欠失の位置で、プラスミドは、AsiSI制限酵素部位で構成される導入遺伝子挿入部位を保有する。PacI部位で構成される別の導入遺伝子挿入部位は、右逆位末端配列に隣接して位置する。
【0160】
pAd4.dE1.dE3、pAd4.5orf6(配列番号20図13)のE4領域を改変したバージョンも作製した。pAd4.dE1.dE3は天然HAdV-4 E4配列を含有するように作製されたが、pAd4.5orf6は改変E4領域を含有するように作製され、その中で天然HAdV-4配列のヌクレオチド33018~34165は、HAdV-5に由来するE4 orf6及びorf6/7配列を含有する配列(すなわち、HAdV-5 GenBank配列AC_000008のヌクレオチド配列32914~34077(配列番号50))で置換された。pAd4.5orf6内に保有されるAdベクターゲノム配列は、配列番号51に記載される。pAd4.5orf6は、標準的なクローニング手法を用いて、記載された改変を保有する合成された配列(GenScriptにより作製された)によるpAd4.dE1.dE3の2.9kb PsiI-PacI断片の切除及び置換によって作製された。改変されたE4領域を除いて、プラスミドpAd4.dE1.dE3及びpAd4.5orf6は同じである。pAd4.5orf6のマップは図12において示される。E1及びE3欠失、並びにヘキソン及びファイバーをコードする領域が示される。
【0161】
HAdV-4に基づくベクターの両方のバージョンは、(HEK293及びPER.C6のような)好適なE1補完細胞における対応するプラスミド(すなわち、pAd4.dE1.dE3及びpAd4.5orf6)のトランスフェクションによりレスキューできた。しかしながら、HAdV-5からのE4 orf6-含有配列の使用は、ベクターの収量及び産生効率を改善することが見出された。以前に、HAdV-35に基づくベクターにおける類似の置換が同様の結果を示した(Havenga et al.,「Novel replication-incompetent adenoviral B-group vectors:high vector stability and yield in PER.C6 cells」,J.Gen.Virol.87(8):2135-43(2006))。
【0162】
pAd4.dE1.dE3及びpAd4.5orf6はそれぞれ、E1欠失の位置で固有のAsiSI制限部位及び右逆位末端配列に隣接する固有のPacI制限部位をAdベクターゲノム内に保有する。これらの部位は、標準的なクローニング手法によるAdベクターゲノムの対応する位置での導入遺伝子発現カセットの挿入を可能にする。例えば、このようなカセットの1つ以上は、これらの位置の1つ又は両方で挿入され得る。
【0163】
pAd4.FLuc及びpAd4.RSVF-2A-GLucは、それぞれホタルルシフェラーゼ(FLuc)をコードする導入遺伝子カセット並びに呼吸器多核体ウイルスA2融合糖タンパク質、口蹄疫ウイルス由来2Aペプチド、及びガウシアルシフェラーゼ(RSVF-2A-GLuc)を含む融合タンパク質を保有するpAd4.5orf6の導入遺伝子発現カセット含有バージョンである。それらは、標準的なクローニング手法による対応するカセットのpAd4.5orf6のAsiSI部位への挿入によって構築された。2つの導入遺伝子カセットは、BB21及びBB24に基づくアデノウイルスベクターの文脈において実施例1で利用されたものと同じである。
【0164】
ヘキソン及びファイバー配列置換を保有するHAdV-4に基づくベクターを含む単一のプラスミドの設計及び構築
ヘキソン及びファイバーコード配列が、類似のHAdV-4がヒトAd種Eに割り当てられているある種のチンパンジーアデノウイルス単離物のもので置換されたHAdV-4に基づくベクターゲノムプラスミドが構築された。これらの構築のためのヘキソン配列ドナーとして機能するアデノウイルス単離物は、部分的なヘキソンヌクレオチド配列が以前にGenBankにおいて(それぞれJN163971及びJN163983の下で)寄託されたPtroAdV-1及びPtroAdV-13である。構築のために使用されるファイバー配列は、本明細書の実施例1において記載される新規のチンパンジーアデノウイルス単離物BB21及びBB24に由来した。ヘキソン及びファイバー配列置換の2つの異なる組合せが、(HAdV-4に基づくベクターゲノムプラスミドの文脈において)作製された:(1)PtroAdV-1ヘキソンヌクレオチド配列は、BB24ファイバーをコードするヌクレオチド配列(配列番号)と組み合わされ且つ(2)PtroAdV-13ヘキソンヌクレオチド配列は、BB21ファイバー変異体(配列番号)をコードするヌクレオチド配列と組み合わされた。ヘキソン及びファイバー配列置換の前記第1の組合せを保有する構築されたプラスミドは、それぞれ配列番号53、配列番号54、及び配列番号55に記載されるとおりのAdベクターゲノム配列を内部に持つpAd4.Ptr01.BB24.5orf6(配列番号23図13)、pAd4.Ptr01.BB24.5orf6.Fluc(配列番号21)、及びpAd4.Ptr01.BB24.5orf6.RSVF-2A-Gluc(配列番号52)である。ヘキソン及びファイバー配列置換の前記第2の組合せを保有する構築されたプラスミドは、それぞれ配列番号57、配列番号58、及び配列番号59に記載されるとおりのAdベクターゲノム配列を含有するpAd4.Ptr13.BB21.5orf6(配列番号24図14)、pAd4.Ptr13.BB21.5orf6.Fluc(配列番号22)、及びpAd4.Ptr13.BB21.5orf6.RSVF-2A-Gluc(配列番号56)である。
【0165】
上記のヘキソン及びファイバーが改変されたAdベクターゲノムプラスミドは、それぞれ標準的な遺伝子合成及び分子クローニング手順によって構築された。それぞれの改変されたヘキソン及びファイバー配列を含む配列断片が(GenScriptによって)合成され、続いてそれらの配列をともにpAd4.5orf6に挿入する(その中で対応する天然HAdV-4ヘキソン及びファイバーを含む配列を置換する)連続的なサブクローニング工程にかけた。続いて、得られたプラスミドpAd4.Ptr01.BB24.5orf6及びpAd4.Ptr13.BB21.5orf6は、これらのプラスミドの固有のAsiSI部位へのこれらのカセットのクローニングによってFluc及びRSVF-2A-Glucのための前述の発現カセットを備えられた(pAd4.Ptr01.BB24.5orf6.Fluc、pAd4.Ptr01.BB24.5orf6.RSVF-2A-Gluc、pAd4.Ptr13.BB21.5orf6.Fluc、及びpAd4.Ptr13.BB21.5orf6.RSVF-2A-Glucの構築をもたらした)。
【0166】
本明細書で行われるヘキソン配列置換は、キメラヘキソンコード配列「Ptr01」(配列番号)及び「Ptr13」(配列番号11)の構築をもたらした。これらの配列は、超可変領域(HVR)コード配列がそれぞれPtroAdV-1及びPtroAdV-13のものによって置換されたHAdV-4ヘキソン遺伝子を構成する。Ptr01及びPtr13によってコードされるキメラヘキソンポリペプチドはそれぞれ、配列番号10及び配列番号12において記載される。
【0167】
本明細書で行われるファイバー配列置換は、本明細書の実施例1に記載されるファイバードナー単離物BB21及びBB24に由来する配列によるHAdV-4の完全なファイバーコード配列の置換を伴った。置換ヌクレオチド配列はそれぞれ、BB21ファイバー変異体(配列番号)及びBB24ファイバー(配列番号)をコードする。図16は、これらの2つのファイバー及びBB21ファイバー(配列番号)のポリペプチドアラインメントを示す。
【0168】
ヘキソン及びファイバー配列置換を保有するHAdV-4に基づくベクターの作製及び生産
それぞれアデノウイルスベクターゲノム配列配列番号54、配列番号55、配列番号58、及び配列番号59を含む、アデノウイルスベクターAd4Ptr01-BB24.Fluc(Ad4C1NVT003とも命名される)、Ad4Ptr01-BB24.RSVF-2A-GLuc(Ad4C1NVT001とも命名される)、Ad4Ptr13-BB21.Fluc(Ad4C2NVT003とも命名される)、及びAd4Ptr13-BB21.RSVF-2A-GLuc(Ad4C2NVT001とも命名される)は、それぞれSwaI消化AdベクターゲノムプラスミドであるpAd4.Ptr01.BB24.5orf6.FLuc、pAd4.Ptr01.BB24.5orf6.RSVF-2A-GLuc、pAd4.Ptr13.BB21.5orf6.FLuc、及びpAd4.Ptr13.BB21.5orf6.RSVF-2A-GLucのE1補完PER.C6細胞へのトランスフェクションによって作製された。同様に、対照アデノウイルスベクターのAd4.FLuc及びAd4.RSVF-2A-GLucはそれぞれ、プラスミドpAd4.FLuc及びpAd4.RSVF-2A-GLucから作製された。全てのトランスフェクション並びにその後のベクター増幅、精製、及びタイトレーションは、本明細書の実施例1におけるBB21及びBB24に基づくベクターに関して記載されたものと同じ標準的な手順に従ってなされた。
【0169】
HAdV-4ヘキソン及びファイバーの置換の結果としての抗アデノウイルス中和力価における低減の評価
(記載されるとおりに構築されたカプシドタンパク質のヘキソン及びファイバー置換を有する)ホタルルシフェラーゼを発現する組換えアデノウイルスを使用して、カプシドタンパク質のヘキソン及びファイバーの類人猿アデノウイルス由来の相同タンパク質による置換が、抗HAdV-4中和活性を有するヒト血清試料による中和において低減をもたらしたかどうかを判定した。
【0170】
簡潔に述べると、試験されることになるアデノウイルスの粗製のウイルス原液の同量の感染単位アリコートを、血清試料の段階希釈物とともにインキュベートした。これらのアッセイのために使用される開始希釈度は16倍であった。インキュベーション期間に続いて、アデノウイルスアリコートを使用して、血清とのインキュベーションの結果として中和されなかった任意のアデノウイルスが指標細胞に感染する可能性があるA549細胞などの指標細胞株に感染させた。次に、ウイルスで形質導入された細胞を、ホタルルシフェラーゼ導入遺伝子の発現が可能となるように一晩インキュベートした。抗アデノウイルス中和活性を有するいずれかの血清試料の中和力価は、血清とインキュベートしなかったアデノウイルスアリコートと比較して、レポーター細胞におけるルシフェラーゼ活性の90%の低減を達成することができた血清の最小希釈度であった。
【0171】
Ad4.FLuc中和抗体を有することが見出された(試験された79個の試料のうちの)22個のヒト血清試料における抗アデノウイルス中和力価が決定された(表1)。それぞれキメラアデノウイルスAd4.Ptr01-BB24.FLuc及びAd4Ptr13-BB21.FLucに対する同じ血清試料の中和力価と比較したとき、ヘキソン及びファイバーコード配列におけるカプシド改変の結果として抗アデノウイルス中和活性における顕著な低減があることが明らかであった。これらの結果は、アデノウイルスのヘキソン及びファイバータンパク質が、抗体媒介性のアデノウイルス中和の重要な抗原決定基を含有することを確証している。それらはまた、ヒトアデノウイルスに基づくベクターに対する(Ad4.FLuc、HAdV-4に基づくベクターの場合)ヒトにおける既存の抗ベクター体液性免疫が、ヒト集団において低血清有病率を有する可能性がある類人猿アデノウイルスのものによりベクターのヘキソン及びファイバータンパク質を交換することによって回避できたことを示す。
【0172】
まとめると、Ad4Ptr01-BB24.FLuc及びAd4Ptr13-BB21.Flucは、それらの親HAdV-4に基づくベクターであるAd4.Flucとは血清学的に異なることが判明した。さらに、一連のAd4.Fluc中和ヒト血清においてこれらの2つのベクターに対して見出される中和活性はないか(Ad4Ptr01-BB24.FLucの場合)又は限定的(Ad4Ptr13-BB21.FLucの場合)であった。
【0173】
【表1】
【0174】
新規のアデノウイルスベクターによって誘導される細胞性及び体液性免疫応答
実施例3~8は、本明細書で生成された4つの新規のベクターであるアデノウイルスベクターBB21、BB24、Ad4Ptr13-BB21、及びAd4Ptr01-BB24の免疫原性を評価するために実施された実験を記載する。これらの実験では、筋肉内免疫後のマウスにおいて、ベクターにコードされる(モデル)抗原に対する体液性及び細胞性免疫応答を誘導する能力について新規のベクターが評価された。ベクターは、2つの異なる抗原:ホタルルシフェラーゼ(FLuc)及びRSV-FA2-2A-GLuc(RSVF-2A-GLuc)を用いて試験された。RSVF-2A-GLucは、呼吸器多核体ウイルス株A2融合糖タンパク質、口蹄疫ウイルス2Aペプチド、及びガウシアルシフェラーゼ(GLuc)で構成されるキメラタンパク質である。各ベクターは、同じ抗原をコードする導入遺伝子カセットを保有するヒトアデノウイルス26型(HAdV-26、本明細書ではAd26とも称される)に基づくベンチマークベクターと並べて比較された。それぞれの抗原に対する免疫応答は、酵素免疫スポットアッセイ(ELISPOT)、酵素結合免疫吸着測定(ELISA)、及びRSVF-2A-GLuc抗原の場合は呼吸器多核体ウイルス中和アッセイ(VNA)などのよく知られる免疫学的アッセイを用いて測定された。
【0175】
実施例3:BB21.FLuc及びBB24.FLucによって誘導される細胞性免疫応答
新規のアデノウイルスベクターBB21及びBB24の細胞性免疫原性を評価するために、Balb/Cマウスを、Ad26.FLuc(陽性対照)、ホタルルシフェラーゼを発現するBB21若しくはBB24ベクター(すなわち、BB21.FLuc又はBB24.FLuc)、又は導入遺伝子をコードしないアデノベクター(空のAd26)で筋肉内において免疫化した。投与のために2つのベクター用量が試験された:マウス毎に10及び1010ウイルス粒子(vp)。免疫化の2週間後、マウスを屠殺し、脾細胞を単離した(図1A)。細胞性免疫応答を、15量体の重複FLucペプチドプールによる一晩の脾細胞刺激後にIFN-γ分泌細胞の相対的な数を測定するエクスビボELISPOTアッセイによって決定した(図1B)。結果は、高用量の免疫化(1010)で、BB21.Fluc及びBB24.Flucにより誘導される細胞性免疫応答が、Ad26.Flucに関して見られる応答とほとんど同程度に高かったことを示す。対照的に、低用量の免疫化(10)で、BB21.Fluc及びBB24.Flucの両方が、Ad26.Flucより高い応答をもたらした。全体的に見て、本発明のFLuc発現組換えBB21及びBB24アデノウイルスベクターにより誘導される細胞性免疫応答は、明らかにマウスにおけるこれらのベクターの強力な免疫原性を示している。
【0176】
実施例4:Ad4Ptr13-BB21.FLucによって誘導される細胞性免疫応答
新規の操作されたアデノウイルスベクターAd4Ptr13-BB21の細胞性免疫原性を評価するために、Balb/Cマウスを、それぞれホタルルシフェラーゼ(Fluc)を発現するAd4Ptr13-BB21、Ad26(陽性対照)、若しくはAd4(Ad4Ptr13-BB21の親ベクター)、又は導入遺伝子をコードしないアデノベクターである空のAd26で筋肉内において免疫化した。投与のために2つのベクター用量が試験された:マウス毎に10及び1010ウイルス粒子(vp)。免疫化の2週間後、BB21.Fluc及びBB24.Flucに関して使用されたものと同じ実験構成に従って(図1A)、マウスを屠殺し、脾細胞を単離した。細胞性免疫応答を、15量体の重複FLucペプチドプールによる一晩の脾細胞刺激後にIFN-γ分泌細胞の相対的な数を測定するエクスビボELISPOTアッセイによって決定した(図2)。結果は、高用量の免疫化(1010)で、Ad4Ptr13-BB21.FLucにより誘導される細胞性免疫応答が、ベンチマーク対照ベクターAd26.Flucに関して見られるものとほとんど同程度に高かったが、低用量の免疫化(10)で、Ad4Ptr13-BB21.FLucは、Ad26.Flucより若干高い応答をもたらしたことを示す。
【0177】
全体的に見て、BB21ファイバー変異体(配列番号)を含む、FLucを発現する新規の操作されたAd4Ptr13-BB21アデノウイルスベクターにより誘導される細胞性免疫応答は、明らかにマウスにおけるこのベクターの強力な免疫原性を示している。
【0178】
実施例5:Ad4Ptr01-BB24.FLucによって誘導される細胞性免疫応答
新規の操作されたアデノウイルスベクターAd4Ptr01-BB24.FLucの細胞性免疫原性を評価するために、Balb/Cマウスを、Ad26.FLuc(陽性対照)、FLucを発現するAd4Ptr01-BB24、又は導入遺伝子をコードしないアデノベクターである空のAd26で筋肉内において免疫化した。投与のために2つの用量が試験された:マウス毎に10及び1010ウイルス粒子(vp)。免疫化の2週間後、BB21.Fluc及びBB24.Flucに関して使用されたものと同じ実験構成に従って(図1A)、マウスを屠殺し、脾細胞を単離した。細胞性免疫応答を、15量体の重複FLucペプチドプールによる一晩の脾細胞刺激後にIFN-γ分泌細胞の相対的な数を測定するエクスビボELISPOTアッセイによって決定した(図3)。結果は、高用量で、Ad4Ptr01-BB24.FLucは、明らかにコードされた抗原に対する細胞性免疫応答を誘導し、陽性対照ベクターAd26.Flucについて見られたものに近いがいくぶん低い読み取り値を有したことを示す。
【0179】
全体的に見て、BB24ファイバー(配列番号)を含む、FLucを発現する新規の操作されたAd4Ptr01-BB24アデノウイルスベクターにより誘導される細胞性免疫応答は、明らかにマウスにおけるこのベクターの免疫原性を示している。
【0180】
実施例6:BB21.RSVF-2A-GLucによって誘導される細胞性及び体液性免疫応答
新規のアデノウイルスベクターBB21の免疫原性はさらに、ベクターにコードされた(モデル)ワクチン抗原としてRSV-FA2-2A-GLuc(RSVF-2A-GLuc)を用いて評価された。Balb/Cマウスを、Ad26.RSVF-2A-GLuc(陽性対照)若しくはBB21.RSVF-2A-GLuc(両方ともにマウス毎に10、10及び1010ウイルス粒子)、又はAd26.FLuc若しくはBB21.FLuc(両方ともにマウス毎に1010ウイルス粒子)で筋肉内において免疫化した。8週目にマウスを屠殺し、血清試料及び脾細胞を回収した(図4A)。様々な免疫パラメータを下記のとおりに評価した。
【0181】
ウイルス中和アッセイを、呼吸器多核体ウイルス中和抗体を誘発するBB21.RSVF-2A-GLucの能力を評価するために実施した。図4Bは、免疫化の8週後に回収された血清試料について測定された呼吸器多核体ウイルス株A2(RSV A2)VNA力価を示す。各点は1頭のマウスを表し、バーは群平均を表し、点線は定量下限に相当する(LLOQ=6,88;直線性試料の平均終点力価)。結果は、BB21.RSVF-2A-GLucによる1010vp用量の免疫化により、同じ抗原をコードするベンチマークのAd26について見られたものと同じ範囲のRSV A2中和力価が生じたことを示す。
【0182】
ベクターにコードされた抗原に対する細胞性免疫の誘導は、RSV-FA2特異的ELISPOTアッセイによって評価された。この目的のため、免疫化の8週間後、免疫化されたマウスから脾細胞を単離し、RSV-FA2タンパク質を架橋する15量体の重複ペプチドで一晩刺激し、細胞性免疫応答を、IFN-γ分泌細胞の相対的な数を測定するエクスビボELISPOTアッセイによって決定した。データは、BB21.RSVF-2A-GLucによって誘発される抗原特異的細胞性免疫応答が、用量依存的であり、且つベンチマークベクターであるAd26.RSVF-2A-GLucによって誘導されるものと用量毎に同様の大きさであったことを示す(図4C)。予想されるとおり、RSV-FA2特異的応答は、ホタルルシフェラーゼをコードするアデノベクターで免疫化されたマウスの血清から測定されなかった。
【0183】
RSV-FA2特異的IgG抗体を誘発するRSVF-2A-GLuc発現ベクターの能力を、ELISAによって評価した。RSVF-2A-GLuc又はホタルルシフェラーゼを発現するAd26又はBB21ベクターで免疫化されたマウスから免疫化の8週間後に回収された血清が、抗RSV FA2 IgG抗体ELISAにおいて試験された。特に、このELISAは、組換え安定型プレ融合RSV-FA2タンパク質(プレ-RSV-F)に対して結合可能なIgG抗体を検出する。結果は、BB21.RSVF-2A-GLucが、Ad26.RSVF-2A-GLucによって誘導されるものと同様のプレRSV-F特異的IgG抗体力価を用量依存的に誘発したことを示す(図4D)。対照的に、予想されるとおり、RSV-FA2特異的抗体力価は、ホタルルシフェラーゼをコードするベクターで免疫化されたマウス由来の血清において検出されなかった。
【0184】
まとめると、データは、BB21ベクターが、HAdV-26に基づくベンチマークベクターによって誘導されるものと同様の大きさの、コードされた抗原に対する強力な細胞性及び体液性免疫応答を誘導したことを示す。これらの免疫応答は、明らかにマウスにおけるBB21ベクターの強力な免疫原性を示す。
【0185】
実施例7:BB24.RSVF-2A-GLucによって誘導される細胞性及び体液性免疫応答
新規のアデノウイルスベクターBB24の免疫原性はさらに、ベクターにコードされた(モデル)ワクチン抗原としてRSV-FA2-2A-GLuc(RSVF-2A-GLuc)を用いて評価された。Balb/Cマウスを、Ad26.RSVF-2A-GLuc(陽性対照)、BB24.RSVF-2A-GLuc、若しくはAd48.RSVF-2A-GLuc(それぞれマウス毎に10、10及び1010ウイルス粒子)又はAd26.FLuc、BB24.FLuc、若しくはAd48.FLuc(それぞれマウス毎に1010ウイルス粒子)で筋肉内において免疫化した。BB21.RSVF-2A-GLucのために使用された同じ実験構成に従って(図4A)、免疫化後8週目にマウスを屠殺し、血液及び脾細胞を回収した。様々な免疫パラメータを下記のとおりに評価した。
【0186】
ウイルス中和アッセイを、呼吸器多核体ウイルス中和抗体を誘発するBB24.RSVF-2A-Glucの能力を評価するために実施した。図5Aは、免疫化の8週後に回収された血清試料について測定された呼吸器多核体ウイルス株A2(RSV A2)VNA力価を示す。各点は1頭のマウスを表し、バーは群平均を表し、点線は定量下限に相当する(LLOQ=6,88;直線性試料の平均終点力価)。3つのベクターに関して見られた結果は類似している:中和力価は、10及び1010vp用量の免疫化のいくつか又は全てに関して見られたが、10vp用量では中和力価はまったく検出されなかったか、又はほとんど検出されなかった。ベクターにコードされた抗原に対する細胞性免疫の誘導は、RSV-FA2特異的ELISPOTアッセイによって評価された。この目的のため、免疫化の8週間後、免疫化されたマウスから脾細胞を単離し、RSV-FA2タンパク質を架橋する15量体の重複ペプチドで一晩刺激し、細胞性免疫応答を、IFN-γ分泌細胞の相対的な数を測定するエクスビボELISPOTアッセイによって決定した。データは、BB24.RSVF-2A-GLucによって誘発される抗原特異的細胞性免疫応答が、用量依存的であり、且つ対照ベクターであるAd26.RSVF-2A-GLuc及びAd48.RSVF-2A-GLucによって誘導されるものと用量毎に少なくとも同様の大きさであったことを示す(図5B)。予想されるとおり、RSV-FA2特異的応答は、ホタルルシフェラーゼをコードするアデノベクターで免疫化されたマウスの脾細胞から測定されなかった。
【0187】
RSV-FA2特異的IgG抗体を誘発するRSVF-2A-GLuc発現ベクターの能力を、ELISAによって評価した。RSVF-2A-GLuc又はホタルルシフェラーゼを発現するAd26、Ad48、又はBB24ベクターで免疫化されたマウスから免疫化の8週間後に回収された血清が、抗RSV FA2 IgG抗体ELISAにおいて試験された。特に、このELISAは、組換え安定型プレ融合RSV-FA2タンパク質(プレ-RSV-F)に対して結合可能なIgG抗体を検出する。結果は、BB24.RSVF-2A-GLucが、Ad26.RSVF-2A-GLuc及びAd48.RSVF-2A-GLucによって誘導されるものと同様のプレRSV-F特異的IgG抗体力価を用量依存的に誘発したことを示す(図5C)。対照的に、予想されるとおり、RSV-FA2特異的力価は、ホタルルシフェラーゼをコードするベクターで免疫化されたマウス由来の血清において検出されなかった。
【0188】
まとめると、データは、BB24ベクターが、HAdV-26に基づくベンチマークベクターによって誘導されるものと同様の大きさの、コードされた抗原に対する強力な細胞性及び体液性免疫応答を誘導したことを示す。これらの免疫応答は、明らかにマウスにおけるBB24ベクターの強力な免疫原性を示す。
【0189】
実施例8:Ad4Ptr01-BB24.RSVF-2A-GLuc及びAd4Ptr13-BB21.RSVF-2A-GLucによって誘導される細胞性及び体液性免疫応答
新規の操作されたアデノウイルスベクターAd4Ptr01-BB24及びAd4Ptr13-BB21のそれぞれの免疫原性はさらに、ベクターにコードされた(モデル)ワクチン抗原としてRSV-FA2-2A-GLuc(RSVF-2A-GLuc)を用いて評価された。Balb/Cマウスを、Ad26.RSVF-2A-GLuc(陽性対照)、Ad4Ptr01-BB24.RSVF-2A-GLuc、若しくはAd4Ptr13-BB21.RSVF-2A-GLuc(それぞれマウス毎に10、10及び1010ウイルス粒子)又はAd26.FLuc、Ad4Ptr01-BB24.FLuc、若しくはAd4Ptr13-BB21.FLuc(それぞれマウス毎に1010ウイルス粒子)で筋肉内において免疫化した。BB21.RSVF-2A-GLucのために使用された同じ実験構成に従って(図4A)、免疫化後8週目に血液試料及び脾細胞を回収した。様々な免疫パラメータを下記のとおりに評価した。
【0190】
ウイルス中和アッセイを、呼吸器多核体ウイルス中和抗体を誘発するAd4Ptr01-BB24.RSVF-2A-GLuc及びAd4Ptr13-BB21.RSVF-2A-GLucの能力を評価するために実施した。図6Aは、免疫化の8週後に回収された血清試料について測定された呼吸器多核体ウイルス株A2(RSV A2)VNA力価を示す。各点は1頭のマウスを表し、バーは群平均を表し、点線は定量下限に相当する(LLOQ=6,88;直線性試料の平均終点力価)。結果は、Ad4Ptr01-BB24.RSVF-2A-GLuc及びAd4Ptr13-BB21.RSVF-2A-GLucによる1010vp用量の免疫化は両方ともに、RSV A2中和力価をもたらしたことを示す。
【0191】
ベクターにコードされた抗原に対する細胞性免疫の誘導は、RSV-FA2特異的ELISPOTアッセイによって評価された。この目的のため、免疫化の8週間後、免疫化されたマウスから脾細胞を単離し、RSV-F2Aタンパク質を架橋する15量体の重複ペプチドで一晩刺激し、細胞性免疫応答を、IFN-γ分泌細胞の相対的な数を測定するエクスビボELISPOTアッセイによって決定した。データは、Ad4Ptr13-BB21.RSVF-2A-GLuc及びAd4Ptr01-BB24.RSVF-2A-GLucの両方が、用量依存的な抗原特異的細胞性免疫応答を誘発できたことを示す(図6B)。予想されるとおり、RSV-FA2特異的応答は、ホタルルシフェラーゼをコードするアデノベクターで免疫化されたマウスの脾細胞から測定されなかった。
【0192】
RSV-FA2特異的IgG抗体を誘発するRSVF-2A-GLuc発現ベクターの能力を、ELISAによって評価した。RSVF-2A-GLuc又はホタルルシフェラーゼを発現するAd26(陽性対照)、Ad4Ptr13-BB21、又はAd4Ptr01-BB24ベクターで免疫化されたマウスから免疫化の8週間後に回収された血清が、抗RSV FA2 IgG抗体ELISAにおいて試験された。特に、このELISAは、組換え安定型プレ融合RSV-FA2タンパク質(プレ-RSV-F)に対して結合可能なIgG抗体を検出する。結果は、Ad4Ptr13-BB21.RSVF-2A-GLuc及びAd4Ptr01-BB24の両方が、用量依存的にプレRSV-F特異的IgG抗体力価を誘発できたことを示す(図6C)。予想されるとおり、RSV-FA2特異的力価は、ホタルルシフェラーゼのみをコードするベクターで免疫化されたマウス由来の血清において検出されなかった。
【0193】
まとめると、データは、それぞれBB21ファイバー変異体(配列番号)及びBB24ファイバー(配列番号)を含む、RSVF-2A-GLucを発現する新規の操作されたアデノウイルスベクターであるAd4Ptr13-BB21及びAd4Ptr01-BB24が、コードされた抗原に対する著しい細胞性及び体液性免疫応答を誘導できたことを示す。これらの免疫応答は、明らかにマウスにおけるAd4Ptr13-BB21及びAd4Ptr01-BB24の良好な免疫原性を示した。
【0194】
実施例9:新規及び既存のアデノウイルスベクター間の血清学的交差中和の評価
新規のアデノウイルスワクチンベクターとしてのそれらの潜在的な有用性に関して、本明細書で作製される新規アデノウイルスベクターは、好ましくは、ヒトアデノウイルス血清型HAdV-5及びHAdV-35に基づくベクターなどの、ワクチンベクターとして現在既に開発中の既存のアデノウイルスベクターとは血清学的に異なるであろう。したがって、交差中和試験を、HAdV-4、HAdV-5、HAdV-26、HAdV-35及びHAdV49に基づく新規のアデノウイルスベクターであるBB21、BB24、Ad4Ptr13-BB21、及びAd4Ptr01-BB24並びにいくつかの既存のベクター間で実施した。この目的のため、これらのアデノウイルスベクターの1つに対してそれぞれ産生されるマウス抗血清は、アデノウイルス中和アッセイにおいて各種ベクターの各々に対して試験された。このアッセイのために使用されるマウス抗血清は、マウス当たり1010ベクター粒子によるそれらの免疫化の2週間又は8週間後にBalb/Cマウスから回収された。アデノウイルス中和アッセイは、以前に記載されたとおりに行われた(Spangers et al 2003.J.Clin.Microbiol.41:5046-5052)。簡潔に述べると、1:16の希釈度から始めて、血清を2倍ずつ段階希釈し、続いてホタルルシフェラーゼ(FLuc)を発現するアデノウイルスベクターと事前に混合した後、A549細胞とともに(細胞当たり500個のウイルス粒子の感染の多重度で)一晩インキュベートした。感染の24時間後に測定された感染細胞ライセートにおけるルシフェラーゼ活性レベルは、ベクター感染効率を表した。所与のベクターに対する中和力価は、ベクター感染効率の90%の低減をもたらすことができる最高の血清希釈度として定義された。中和力価は、以下のカテゴリーに任意に分けられた:<16(中和なし)、16~200、200~2,000、及び>2,000。
【0195】
結果は、試験されたベクターの間で交差中和を示さないか又は非常に低いレベルの交差中和を示す(図7)。観察されたほんのわずかな中和交差は、ベクターBB21とAd4Ptr13-BB21の間であった。これらのベクターについて見られる相反的な交差中和力価は、これらの同じベクターについて得られたそれぞれの相同的な中和力価より著しく低かった。重要なこととして、新規のベクター(すなわち、BB21、BB24、Ad4Ptr13-BB21、及びAd4Ptr01-BB24)は、試験されたパネルに含まれるヒトアデノウイルスベクター、すなわち、Ad26、Ad35、Ad49、Ad5及びAd4と交差中和を示さなかった。したがって、新規のアデノウイルスベクターBB21、BB24、Ad4Ptr13-BB21、及びAd4Ptr01-BB24はそれぞれ、場合によっては、例えば、異種プライム-ブーストワクチン接種レジメンの文脈において、或いは又はさらに、異なる疾患若しくは抗原に対する一連の2回以上の継続的なワクチン接種の文脈において、連続的な免疫化におけるこれらの又は他の異なるアデノウイルスベクターの1種以上と組み合わせて使用され得る。
【0196】
実施例10:ヒト集団における新規のアデノウイルスベクターの血清有病率
有効なワクチンベクターとしてのそれらの潜在的な使用のために重要なことは、本明細書に記載される新規のアデノウイルスベクターが、ワクチン標的集団における高レベルの既存の抗ベクター体液性免疫によって妨げられないことである。したがって、ベクターBB21、BB24、Ad4Ptr13-BB21、及びAd4Ptr01-BB24はそれぞれ、米国(US)及び欧州連合(EU)に居住する18歳~55歳までの成人に由来する200名のヒトコホート血清試料内のそれらの血清有病率について評価された。各ベクターは、実施例9において実行され且つ以前に記載されたとおりの標準的なアデノウイルス中和アッセイを実施することによって、ヒト血清試料による中和について試験された(Sprangers et al 2003.J.Clin.Microbiol.41:5046-5052)。簡潔に述べると、1:16の希釈度から始めて、血清を2倍ずつ段階希釈し、続いてホタルルシフェラーゼ(FLuc)を発現するアデノウイルスベクターと事前に混合した後、A549細胞とともに(細胞当たり500個のウイルス粒子の感染の多重度で)一晩インキュベートした。感染の24時間後に測定された感染細胞ライセートにおけるルシフェラーゼ活性レベルは、ベクター感染効率を表した。所与のベクターに対する中和力価は、ベクター感染効率の90%の低減をもたらすことができる最高の血清希釈度として定義された。中和力価は、以下のカテゴリーに任意に分けられた:<16(中和なし)、16~300、300~1,000、1000~4000及び>4000。
【0197】
結果は、4種全ての新規のアデノウイルスベクター(すなわち、BB21、BB24、Ad4Ptr13-BB21、Ad4Ptr01-BB24)が、試験されたヒト対象において対照Ad5ベクターより著しく低い血清有病率を有することを示す(図8)。さらに、ベクターBB21、Ad4Ptr13-BB21、及びAd4Ptr01-BB24は、ベンチマークAd26ベクターより低い血清有病率をさらに示した。さらに、新規のベクターに対して見られた陽性中和力価は一般に、非常に低く、概して300より高くなかった。対照的に、Ad26及びAd5に対して見られた陽性中和力価の大部分は、300より高かった。
【0198】
まとめると、上のデータは、ベクターBB21、BB24、Ad4Ptr13-BB21、及びAd4Ptr01-BB24に対する既存の体液性抗ベクター免疫が、評価されたワクチン標的集団において低いと考えられ得ることを示し、これらのベクターがこれらの集団において有効なワクチンベクターとしての可能性を有することを示唆している。
【0199】
実施例11:懸濁PER.C6細胞中のアデノウイルスベクター生産性
臨床試験及びそれ以降に使用されるアデノウイルスベクターは、スケーラブルな無血清アデノウイルス生産プラットフォームで高力価まで容易に生産可能である必要がある。本明細書で懸濁PER.C6細胞又はsPER.C6とも呼ばれる懸濁適応PER.C6(登録商標)細胞は、バイオリアクターでのアデノウイルスベクターの大規模製造を支援し、高力価で臨床グレードのベクター製剤、例えば、HAdV-26又はHAdV-35に基づくE1欠損ベクターを大量にもたらすことが示されているため、このようなプラットフォームとなる(欧州特許第2536829B1号明細書、欧州特許第2350268B1号明細書)。
【0200】
本明細書に記載される新規のベクターが、sPER.C6細胞に基づく生産プロセスに合うかどうかに関する最初の評価として、小規模のベクター生産性実験を、振盪フラスコ中で培養されたsPER.C6細胞に対して実施した。これらの生産性実験は、実施例1及び2において記載される新規のベクターのFlucコード化バージョンを用いて実行された。ベンチマーク対照として、HAdV-26に基づくベクターAd26.Flucを使用した。4mMのL-グルタミン(Lonza)を補充した10mlの総量のPERMEXCIS(登録商標)培地(Lonzaから入手可能)中において1×10細胞/mlの密度で振盪フラスコに播種された懸濁PER.C6細胞培養物が、様々なウイルス粒子(VP)対細胞比率で各種ベクターにより感染され、4日間インキュベートされた。感染のために使用された様々なVP対細胞比率は、70、150及び900であった。感染細胞培養物の試料を毎日採取し、VP力価を、これらの試料中においてCMVプロモーター(試験された全てのベクターに存在する)に特異的なプライマー及びプローブを用いる定量的PCR(qPCR)に基づくプロトコルによって決定した。このプロトコルでは、遊離のベクターDNA(すなわち、ウイルス粒子にパッケージされていないベクターゲノム)を除去するために、qPCRの前に試験試料をDNA分解酵素処理する必要がある。
【0201】
新規のベクターBB21.FLuc及びBB24.Flucについて得られた生産性の結果を図17に示し、一方で、新規のキメラベクターAd4Ptr01-BB24.FLuc及びAd4Ptr13-BB21.FLuc、並びにそれらの親ベクターAd4.Flucについて見られたものを図18に示す。BB21.FLuc及びBB24.Flucは、全てのVP対細胞感染比率及び試験された回収時点で、ベンチマーク対照ベクターAd26.Flucよりも高いVP力価を示した。同様に、2種のキメラベクターAd4Ptr01-BB24.FLuc及びAd4Ptr13-BB21.FLucは良好な生産性を示し、Ad26.Flucについて得られたものよりも高いか又は同等のVP力価をもたらした(使用されたVP対細胞感染比率に依存する)。さらに、これらの2種のキメラベクターは、親の非カプシド改変ベクターAd4.Flucと比較して妥協のない生産性を示した。
【0202】
上の結果は、sPER.C6に基づく無血清懸濁細胞培養物モデルに対して新規のベクターの各々の良好な生産性を実証している。
【0203】
まとめると、上で示されるとおりの本発明の新規の組換えアデノウイルスベクターによって誘導される体液性及び細胞性免疫応答の試験は、明らかにマウスにおけるこれらのベクターの強力な免疫原性を示す。加えて、これらのベクターは、特定の既存のアデノウイルスワクチンベクター候補(例えば、Ad26及びAd35)に対して交差中和抗体応答を誘導しないか、又はその逆もまた同じであること、及び互いに交差中和抗体応答を誘導しないか、又は非常に低い交差中和抗体応答を誘導することを実証した。さらに、新規のベクターは、ヒトにおいて低い血清有病率を示した。最後に、新規のベクターは、高い収量で容易に生産され得る。低い血清有病率、強力な免疫原性及び生産性の組合せは、本発明の新規のアデノウイルスベクターが、様々な病原体に対する新規のワクチンベクター候補として有用である可能性があり、且つさらに遺伝子治療及び/又は診断において有用性を有し得ることを示唆する。
【0204】
上記の実施形態に対して、この広い発明概念から逸脱することなく変更を加えることができることが当業者に理解されるであろう。したがって、本発明は、開示される特定の実施形態に限定されるものではなく、本明細書によって規定される本発明の趣旨及び範囲に含まれる変形形態を包含することが意図されることを理解されたい。

以下の態様が包含され得る。
[1] 配列番号2のアミノ酸6~375と少なくとも98%の同一性を有するファイバーポリペプチドをコードする単離された核酸配列。
[2] 前記ファイバーポリペプチドが、BB21ファイバーポリペプチド(配列番号2)、BB21ファイバー変異体ポリペプチド(配列番号3)、又はBB24ファイバーポリペプチド(配列番号4)から選択されるアミノ酸配列を含む、上記[2]に記載の単離された核酸配列。
[3] 前記単離された核酸配列がさらに、配列番号5又は配列番号6から選択されるアミノ酸配列を含むヘキソン超可変領域包含ポリペプチドを含むヘキソンポリペプチドをコードする核酸配列を含む、上記[1]又は[2]に記載の単離された核酸配列。
[4] 前記ヘキソンポリペプチドが、BB21ヘキソンポリペプチド(配列番号7)又はBB24ヘキソンポリペプチド(配列番号8)から選択されるアミノ酸配列を含む、上記[3]に記載の単離された核酸配列。
[5] 配列番号5又は配列番号6から選択されるアミノ酸配列を含むヘキソン超可変領域包含ポリペプチドを含むヘキソンポリペプチドをコードする単離された核酸配列。
[6] 前記ヘキソンポリペプチドが、BB21ヘキソンポリペプチド(配列番号7)又はBB24ヘキソンポリペプチド(配列番号8)から選択されるアミノ酸配列を含む、上記[5]に記載の単離された核酸配列。
[7] 上記[1]~[6]のいずれかに記載の核酸分子を含むベクター。
[8] アデノウイルスベクターであり、且つ導入遺伝子をさらに含む、上記[7]に記載のベクター。
[9] 上記[7]又は[8]に記載のベクターを含む組換え細胞。
[10] (a)上記[9]に記載の組換え細胞を、前記ベクターを産生するための条件下で増殖させること;
(b)前記組換え細胞から前記ベクターを単離することを含む、
ベクターを作製する方法。
[11] 上記[8]に記載のベクターを含む免疫原性組成物。
[12] 必要とする対象において免疫応答を誘導する方法であって、上記[11]に記載の免疫原性組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
[13] (a)少なくとも1つの導入遺伝子;及び
(b)ファイバーポリペプチドをコードする核酸配列を含むアデノウイルスベクターであって、前記ファイバーポリペプチドが、配列番号2のアミノ酸6~375と少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、アデノウイルスベクター。
[14] 前記ファイバーポリペプチドが、BB21ファイバーポリペプチド(配列番号2)、BB21ファイバー変異体ポリペプチド(配列番号3)、又はBB24ファイバーポリペプチド(配列番号4)から選択されるアミノ酸配列を含む、上記[13]に記載のアデノウイルスベクター。
[15] 配列番号5又は配列番号6から選択されるアミノ酸配列を含むヘキソン超可変領域包含ポリペプチドを含むヘキソンポリペプチドをコードする核酸配列をさらに含む、上記[13]又は[14]に記載のアデノウイルスベクター。
[16] 前記ヘキソンポリペプチドが、BB21ヘキソンポリペプチド(配列番号7)又はBB24ヘキソンポリペプチド(配列番号8)から選択されるアミノ酸配列を含む、上記[15]に記載のアデノウイルスベクター。
[17] 前記アデノウイルスベクターがさらにE1欠失を含む、上記[13]~[16]のいずれか一項に記載のアデノウイルスベクター。
[18] 前記アデノウイルスベクターがさらにE3欠失を含む、上記[13]~[17]のいずれか一項に記載のアデノウイルスベクター。
[19] 前記アデノウイルスベクターが、1種以上のヒトアデノウイルス核酸配列を含むキメラアデノウイルスベクターである、上記[13]~[18]のいずれか一項に記載のアデノウイルスベクター。
[20] 前記ヒトアデノウイルス核酸配列が、ヒトアデノウイルス-4、ヒトアデノウイルス-5、ヒトアデノウイルス-26、又はヒトアデノウイルス-35に由来する、上記[19]に記載のアデノウイルスベクター。
[21] 前記アデノウイルスベクターが、ヒトアデノウイルス-5(hAdV-5)E4 orf6を含む、上記[20]に記載のアデノウイルスベクター。
[22] 前記導入遺伝子が、前記E1欠失部位、前記E3欠失部位、又は右逆位末端配列(rITR)に隣接して位置する、上記[13]~[21]のいずれか一項に記載のアデノウイルスベクター。
[23] 前記アデノウイルスベクターが、配列番号28、配列番号29、配列番号30、及び配列番号31からなる群から選択される核酸配列を含む、上記[13]~[22]のいずれか一項に記載のアデノウイルスベクター。
[24] 前記アデノウイルスベクターが、配列番号53又は配列番号57から選択される核酸配列を含む、上記[13]~[14]及び[17]~[23]のいずれか一項に記載のアデノウイルスベクター。
[25] 上記[13]~[24]のいずれかに記載のアデノウイルスベクター及び薬学的に許容される担体を含むワクチン。
[26] 必要とする対象において免疫応答を誘導する方法であって、上記[25]に記載のワクチンを前記対象に投与することを含む、方法。
[27] 上記[13]~[24]のいずれかに記載のアデノウイルスベクターを薬学的に許容される担体と組み合わせることを含む、ワクチンを作製する方法。
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7
図8
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図10
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【配列表】
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