IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ レフラテクニック ホルディング ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

特許7438944ジルコン酸カルシウム含有材料を製造するための合成方法、ならびに事前合成されたジルコン酸カルシウム含有粒子を有するバッチおよび粗セラミック耐火製品
<>
  • 特許-ジルコン酸カルシウム含有材料を製造するための合成方法、ならびに事前合成されたジルコン酸カルシウム含有粒子を有するバッチおよび粗セラミック耐火製品 図1
  • 特許-ジルコン酸カルシウム含有材料を製造するための合成方法、ならびに事前合成されたジルコン酸カルシウム含有粒子を有するバッチおよび粗セラミック耐火製品 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】ジルコン酸カルシウム含有材料を製造するための合成方法、ならびに事前合成されたジルコン酸カルシウム含有粒子を有するバッチおよび粗セラミック耐火製品
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/482 20060101AFI20240219BHJP
   C04B 35/66 20060101ALI20240219BHJP
   B22D 21/00 20060101ALI20240219BHJP
   C04B 35/106 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
C04B35/482
C04B35/66
B22D21/00 A
C04B35/106
【請求項の数】 72
(21)【出願番号】P 2020528910
(86)(22)【出願日】2018-11-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 EP2018082904
(87)【国際公開番号】W WO2019106052
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2021-10-04
(31)【優先権主張番号】102017128626.8
(32)【優先日】2017-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500261042
【氏名又は名称】レフラテクニック ホルディング ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】REFRATECHNIK Holding GmbH
【住所又は居所原語表記】Adalperostrasse 82, 85737 Ismaning Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤンセン,ヘルゲ
(72)【発明者】
【氏名】アネジリス,クリストス・ゲオルギオス
(72)【発明者】
【氏名】ヤーン,コンスタンティン
【審査官】神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102001705(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101759229(CN,A)
【文献】国際公開第2013/124183(WO,A2)
【文献】国際公開第2014/148133(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第104045341(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/482
C04B 35/66
B22D 21/00
C04B 35/106
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも1つの粉状Ca原料成分と少なくとも1つの粉状ZrO原料成分と水とから混合物を作製するステップと、
b)前記混合物を少なくとも1つのグリーン成形体をなすようにプレス成形するステップと、
c)前記成形体を焼結するステップと、
を包含する、
耐火性酸化物セラミックであるジルコン酸カルシウム含有材料を合成するための合成方法において、
前記原料成分と水とのみからなり、かつ前記混合物の乾燥質量に対して5重量%超過10重量%以下の含水率を有する混合物が作製されることを特徴とする、合成方法。
【請求項2】
前記混合物は、前記混合物の乾燥質量に対し7重量%以上8重量%以下の含水率を有する、請求項1に記載の合成方法。
【請求項3】
前記成形体は、焼結する前に乾燥させられる、請求項1または2に記載の合成方法。
【請求項4】
耐火性ジルコン酸カルシウム含有粒子材料が合成される、請求項1~3のいずれか1項に記載の合成方法。
【請求項5】
前記成形体は、粒子をなすように機械的に細砕されている、請求項4に記載の合成方法。
【請求項6】
前記成形体は、粒子をなすように破砕および/または粉砕されている、請求項5に記載の合成方法。
【請求項7】
前記混合物中のCaO/ZrOモル比が1.5:1~1:1.6である混合物が作製されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の合成方法。
【請求項8】
前記混合物中のCaO/ZrOモル比が1:1である混合物が作製されることを特徴とする、請求項7に記載の合成方法。
【請求項9】
材料の乾燥質量に対するCaZrO含有率が少なくとも98重量%のジルコン酸カルシウム含有材料が製造されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の合成方法。
【請求項10】
材料の乾燥質量に対するCaZrO含有率が少なくとも99重量%のジルコン酸カルシウム含有材料が製造されることを特徴とする、請求項9に記載の合成方法。
【請求項11】
純粋相のジルコン酸カルシウム含有材料が製造されることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の合成方法。
【請求項12】
Ca原料成分として、CaCO含有原料成分および/またはCaO含有原料成分および/またはCa(OH)含有原料成分および/またはCaC含有原料成分が使用されることを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載の合成方法。
【請求項13】
CaCO原料成分として、天然の粉砕された石灰石粉および/もしくは合成沈降炭酸カルシウムおよび/もしくは白亜が使用される、ならびに/またはCaO原料成分として、生石灰が使用される、ならびに/またはCa(OH)原料成分として、消石灰が使用されることを特徴とする、請求項12に記載の合成方法。
【請求項14】
ZrO原料成分として、合成により作製された二酸化ジルコニウムが使用されることを特徴とする、請求項1~13のいずれか1項に記載の合成方法。
【請求項15】
ZrO原料成分として、合成により作製された単斜晶の二酸化ジルコニウムが使用されることを特徴とする、請求項14に記載の合成方法。
【請求項16】
前記原料成分はそれぞれ、少なくとも96重量%の純度を有することを特徴とする、請求項1~15のいずれか1項に記載の合成方法。
【請求項17】
前記原料成分はそれぞれ、少なくとも99重量%の純度を有することを特徴とする、請求項16に記載の合成方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つのCa原料成分は、DIN EN 725-5:2007に準拠した≦200μmの粒度を有する、および/または前記Ca原料成分の平均粒径が500nm~5μmであることを特徴とする、請求項1~17のいずれか1項に記載の合成方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つのCa原料成分は、DIN EN 725-5:2007に準拠した≦50μmの粒度を有する、請求項18に記載の合成方法。
【請求項20】
前記少なくとも1つのCa原料成分は、DIN EN 725-5:2007に準拠した200nm~10μmの粒度を有する、請求項19に記載の合成方法。
【請求項21】
前記Ca原料成分の平均粒径は0.8~1μmである、請求項18~20のいずれか1項に記載の合成方法。
【請求項22】
前記少なくとも1つのZrO原料成分は、DIN EN 725-5:2007に準拠した≦200μmの粒度を有する、および/または前記ZrO原料成分の平均粒径が500nm~5μmであることを特徴とする、請求項1~21のいずれか1項に記載の合成方法。
【請求項23】
前記少なくとも1つのZrO原料成分は、DIN EN 725-5:2007に準拠した≦150μmの粒度を有する、請求項22に記載の合成方法。
【請求項24】
前記少なくとも1つのZrO原料成分は、DIN EN 725-5:2007に準拠した200nm~10μmの粒度を有する、請求項23に記載の合成方法。
【請求項25】
前記ZrO原料成分の平均粒径が0.7~1μmであることを特徴とする、請求項22~24のいずれか1項に記載の合成方法。
【請求項26】
前記プレス成形は、30~150N/mmのプレス圧で行われることを特徴とする、請求項1~25のいずれか1項に記載の合成方法。
【請求項27】
前記プレス成形は、50~80N/mmのプレス圧で行われることを特徴とする、請求項26に記載の合成方法。
【請求項28】
前記プレス成形は、一軸または静水圧プレス成形によって行われることを特徴とする、請求項1~27のいずれか1項に記載の合成方法。
【請求項29】
直方体状のグリーン成形体が作製されることを特徴とする、請求項1~28のいずれか1項に記載の合成方法。
【請求項30】
DIN EN993-17:1999に規定される2.0~3.0g/cmのかさ密度を有する、および/またはDIN66133:1993-06に準拠した30~60体積%の気孔率を有するグリーン成形体が作製されることを特徴とする、請求項1~29のいずれか1項に記載の合成方法。
【請求項31】
DIN EN993-17:1999に規定される2.1~2.5g/cmのかさ密度を有するグリーン成形体が作製される、請求項30に記載の合成方法。
【請求項32】
DIN66133:1993-06に準拠した40~50体積%の気孔率を有するグリーン成形体が作製されることを特徴とする、請求項30または31に記載の合成方法。
【請求項33】
DIN EN993-6:1995-04による少なくとも1MPaの冷間曲げ強度を有するグリーン成形体が作製されることを特徴とする、請求項1~32のいずれか1項に記載の合成方法。
【請求項34】
前記グリーン成形体は、DIN51078:2002-12に規定される0~2重量%の水分を残して乾燥されることを特徴とする、請求項3~33のいずれか1項に記載の合成方法。
【請求項35】
前記グリーン成形体は、DIN51078:2002-12に規定される0~0.5重量%の水分を残して乾燥されることを特徴とする、請求項34に記載の合成方法。
【請求項36】
前記グリーン成形体は、1200~1800℃の最終温度による保持段階で2~10hの間、焼結されることを特徴とする、請求項1~35のいずれか1項に記載の合成方法。
【請求項37】
前記グリーン成形体は、1400~1650℃の最終温度で焼結されることを特徴とする、請求項36に記載の合成方法。
【請求項38】
前記グリーン成形体は、保持段階で4~6hの間、焼結されることを特徴とする、請求項36または37に記載の合成方法。
【請求項39】
加熱中の中間保持段階が、400~1000℃の温度で1~3hの間行われることを特徴とする、請求項1~38のいずれか1項に記載の合成方法。
【請求項40】
加熱中の中間保持段階が、550~900℃の温度で行われることを特徴とする、請求項39に記載の合成方法。
【請求項41】
加熱中の中間保持段階が、1.5~2.5hの間行われることを特徴とする、請求項39または40に記載の合成方法。
【請求項42】
焼結時に、1~10K/minの加熱速度で加熱されることを特徴とする、請求項1~41のいずれか1項に記載の合成方法。
【請求項43】
焼結時に、2~5K/minの加熱速度で加熱されることを特徴とする、請求項42に記載の合成方法。
【請求項44】
前記焼結は、電気加熱炉またはガス加熱炉で行われることを特徴とする、請求項1~43のいずれか1項に記載の合成方法。
【請求項45】
DIN EN993-1:1995-04に規定される5~50体積%の開気孔率を有する焼結成形体が作製されることを特徴とする、請求項1~44のいずれか1項に記載の合成方法。
【請求項46】
DIN EN993-1:1995-04に規定される8~40体積%の開気孔率を有する焼結成形体が作製されることを特徴とする、請求項45に記載の合成方法。
【請求項47】
DIN EN993-1:1995-04に規定される2.50~4.50g/cmのかさ密度を有する焼結成形体が作製されることを特徴とする、請求項1~46のいずれか1項に記載の合成方法。
【請求項48】
DIN EN993-1:1995-04に規定される2.60~4.30g/cmのかさ密度を有する焼結成形体が作製されることを特徴とする、請求項47に記載の合成方法。
【請求項49】
DIN66133:1993に準拠した5~50体積%の粒子気孔率(開気孔率)を有する、および/またはDIN66133:1993に準拠した0.5~2μmの平均細孔径(d50)を有する機械的に細砕された粒子が作製されることを特徴とする、請求項5~48のいずれか1項に記載の合成方法。
【請求項50】
DIN66133:1993に準拠した10~40体積%の粒子気孔率(開気孔率)を有する機械的に細砕された粒子が作製されることを特徴とする、請求項49に記載の合成方法。
【請求項51】
DIN66133:1993に準拠した0.8~1.2μmの平均細孔径(d50)を有する機械的に細砕された粒子が作製されることを特徴とする、請求項49または50に記載の合成方法。
【請求項52】
DIN66137-2:2004によるヘリウム比重びん法により測定される4.40~4.70g/cmの純密度を有する粒子が作製されることを特徴とする、請求項4~51のいずれか1項に記載の合成方法。
【請求項53】
DIN66137-2:2004によるヘリウム比重びん法により測定される4.65~4.70g/cmの純密度を有する粒子が作製されることを特徴とする、請求項52に記載の合成方法。
【請求項54】
請求項1~53のいずれか1項に記載の合成方法で製造されるジルコン酸カルシウム含有材料を使用する使用方法であって、
前記ジルコン酸カルシウム含有材料は、粗セラミックの耐火性の定形または不定形製品を製造するためのバッチとして使用されることを特徴とする使用方法。
【請求項55】
機械的に細砕された前記ジルコン酸カルシウム含有材料を使用する、請求項54に記載の使用方法。
【請求項56】
粒度が200μmより大きい少なくとも1つのジルコン酸カルシウム含有粗粒子、および/または粒度が≦200μmの少なくとも1つのジルコン酸カルシウム含有粉粒子を使用する、請求項54または55に記載の使用方法。
【請求項57】
少なくとも1つの耐火性のジルコン酸カルシウム含有粒子を有する乾燥材料混合物からなるバッチにおいて前記ジルコン酸カルシウム含有材料を使用することを特徴とする、請求項54~56のいずれか1項に記載の使用方法。
【請求項58】
a)少なくとも1つの耐火性のジルコン酸カルシウム含有粒子を有する乾燥材料混合物と、
b)液体結合剤および/または乾燥結合剤および/または水および/または液体添加物とからなるバッチにおいて、前記ジルコン酸カルシウム含有材料を使用することを特徴とする、請求項54~56のいずれか1項に記載の使用方法。
【請求項59】
前記乾燥材料混合物は、乾燥材料混合物の全乾燥質量に対して10~90重量%の、>200μmの粒度の少なくとも1つのジルコン酸カルシウム含有粗粒子を有する、および/または≦200μmの粒度の少なくとも1つのジルコン酸カルシウム含有粉粒子を有することを特徴とする、請求項57または58に記載の使用方法。
【請求項60】
前記乾燥材料混合物は、乾燥材料混合物の全乾燥質量に対して80~90重量%の量の、>200μmの粒度の前記少なくとも1つのジルコン酸カルシウム含有粗粒子を有する、請求項59に記載の使用方法。
【請求項61】
前記乾燥材料混合物は、乾燥材料混合物の全乾燥質量に対して0~30重量%の、≦200μmの粒度の前記少なくとも1つのジルコン酸カルシウム含有粉粒子を有することを特徴とする、請求項59に記載の使用方法。
【請求項62】
前記乾燥材料混合物は、乾燥材料混合物の全乾燥質量に対して10~20重量%の、≦200μmの粒度の前記少なくとも1つのジルコン酸カルシウム含有粉粒子を有することを特徴とする、請求項61に記載の使用方法。
【請求項63】
前記乾燥材料混合物は、少なくとも1つの粉状Ca原料成分と少なくとも1つの粉状ZrO原料成分とを有することを特徴とする、請求項57~62のいずれか1項に記載の使用方法。
【請求項64】
前記乾燥材料混合物は、1.5:1~1:1.6のCaO/ZrOモル比で前記乾燥材料混合物中に含まれる、少なくとも1つの粉状Ca原料成分と少なくとも1つの粉状ZrO原料成分とを有することを特徴とする、請求項63に記載の使用方法。
【請求項65】
前記乾燥材料混合物は、1:1のCaO/ZrOモル比で前記乾燥材料混合物中に含まれる、少なくとも1つの粉状Ca原料成分と少なくとも1つの粉状ZrO原料成分とを有することを特徴とする、請求項64に記載の使用方法。
【請求項66】
前記乾燥材料混合物は、前記ジルコン酸カルシウム含有粒子だけを有する、請求項57~62のいずれか1項に記載の使用方法。
【請求項67】
前記乾燥材料混合物は、前記ジルコン酸カルシウム含有粒子と、前記少なくとも1つのCa原料成分と、前記少なくとも1つのZrO原料成分とだけを有する、請求項63~65のいずれか1項に記載の使用方法。
【請求項68】
請求項1~53のいずれか1項に記載の合成方法で製造されるジルコン酸カルシウム含有材料を含むバッチの使用方法であって、
前記ジルコン酸カルシウム含有材料は、粗セラミックの耐火性の焼成または不焼成の定形または不定形製品を製造するため使用されることを特徴とする、使用方法。
【請求項69】
前記バッチを、請求項55~67のいずれか1項で定義されるように使用する、請求項68に記載の使用方法。
【請求項70】
前記バッチを、流し込み成形材料、およびDIN66133:1993に準拠した5~15%の粒子気孔率(開気孔率)を有する、および/または>1550℃で焼結することによって製造された前記ジルコン酸カルシウム含有材料の製造のために使用することを特徴とする、請求項68または69に記載の使用方法。
【請求項71】
前記バッチを、石炭ガス化設備の耐火性コーティング製品の製造のために、またはガスタービンにおける熱保護タイル製品の製造のために、またはスライドプレートにおけるインレイ製品の製造のために、または非鉄金属のためのるつぼ製品の製造のために使用する、請求項68~70のいずれか1項に記載の使用方法。
【請求項72】
前記バッチを、石炭ガス化設備の機能内張りもしくは安全内張りの製造のために、チタン鋳造もしくはチタン合金のための、もしくはニッケル系合金のためのるつぼの製造のために用いられる、請求項71に記載の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、耐火性の、殊に機械的に細砕された、特に破砕された、および/または粉砕された粒子の形態のCaZrOからなる耐火性酸化物セラミック材料を製造するための合成方法、ならびに少なくとも1つの事前合成されたジルコン酸カルシウム含有耐火性粒子を含むバッチおよびセラミックの定形または不定形の耐火製品に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の範囲内で、「耐火性」という用語は、熔倒点(Kegelfallpunkt)を>1500℃と規定するISO836もしくはDIN51060による定義に限定されない。本発明の意味における耐火製品は、DIN EN ISO 1893:2009-09によるT0.5≧600℃、好ましくはT0.5≧800℃の荷重軟化点T0.5を有する。したがって本発明の意味における耐火性もしくはリフラクトリ(refraktaer)の粒状(koernig)材料もしくは粒子(Koernung)は、上記の荷重軟化点T0.5を有する耐火製品に適した材料もしくは粒子である。本発明による耐火製品は、600~2000℃、特に1000~1800℃の温度が支配的な集合設備における設備構造物を保護するために用いられる。
【0003】
すでに知られているように、セラミック製品は、粒度(Korngroesse)が6mmまで、特殊なケースでは25mmまでの粒子から製造される製品である(「Gerald Routschka/Hartmut Wuthnow、Praxishandbuch 「Feuerfeste Werkstoffe」、第5版、Vulkan-Verlag(以下、単に「Praxishandbuch」と称される)、2章を参照)。
【0004】
その際、本発明の意味における「粒子」もしくは「粒状材料」という用語は、多数の小さい固体粒からなるばら積み可能(schuettbar)な固形物を含む。粒が≦200μmの粒度を有する場合、これは、粉(Mehl)もしくは粉末(Pulver)である。粒が機械的細砕(Zerkleinern)、例えば破砕(Brechen)および/または粉砕(Mahlen)によって作製される場合、これは破砕顆粒(Brechgranulat)もしくは破砕粒子である。しかし粒子は、機械的に細砕することなしに造粒(Granulieren)もしくはペレット化(Pelletieren)によって作製される顆粒粒(Granulatkoerner)またはペレット粒(Pelletkoerner)も有し得る。粒子の粒度分布(Kornverteilung)は、通常、篩分けによって設定される。
【0005】
さらに、セラミック製品は、定形製品と不定形製品とに区別される。
定形セラミック製品は、殊にセラミック工場で、不焼成、焼戻し、またはセラミック焼成して製造された製造物、特にれんがまたはプレートである。定形セラミック製品は、特定のジオメトリを有しており、そのまま取り付けることができる。成形は、例えばプレス成形、押し固め、突き固め、または泥漿鋳込みによって行われる。定形製品、特にれんがは、例えばコーティングを形成するために、モルタルを用いて、またはモルタルを用いずに(「空(knirsch)で」)積まれる。セラミック定形製品の製造プロセスは、通常、以下のステップで構成される(Praxishandbuch、15頁/2.1節):
-準備ステップ
-混合ステップ
-成形ステップ
-乾燥ステップ
-800℃までの熱処理ステップ、焼成ステップ、または焼結ステップ
-後処理ステップ(必要な場合)
本発明による不定形製品は、大抵、利用者の元で、不定形材料または塊から、例えば流し込み成形、振動成形、棒突き成形(Stochern)、突き固め成形、または射出成形によって最終的な形にされる。
【0006】
不定形製品は使用現場において、大抵、比較的大きい区域で型枠の背後に導入され、硬化後にコーティングの一部を形成する。不定形製品は、例えば、射出成形コンパウンド(Spritzmassen)、押し固め成形コンパウンド(Stampfmassen)、流し込み成形コンパウンド(Giessmassen)、振動成形コンパウンド(Vibrationsmassen)、または注型コンパウンド(Vergussmassen)である。
【0007】
定形および不定形の本発明による製品は、セラミックバッチからそれ自体公知の仕方で製造される。
【0008】
ジルコン酸カルシウムは、CaO-ZrO相図において安定した化学量論組成である。ジルコン酸カルシウムは、2368℃の高い融解温度を有し、アルカリ耐食性である。ジルコン酸カルシウムは、まれにしか天然の鉱物として存在しないので、工業的に使用するために合成される必要がある。この事前合成(Vorsynthese)には、純粋相材料もしくはジルコン酸カルシウム100%の材料を製造するという目的がある。なぜならこのことは、事前合成された材料から製造される耐火製品の良好な特性を保証するからである。
【0009】
DE102012003483は、耐熱衝撃性および耐食性のジルコン酸カルシウム系セラミック製品を開示する。この場合、製品の組織が事前合成されたジルコン酸カルシウム含有破砕顆粒(Brechgranulat)からなる。破砕顆粒は、1.6:1~1:1.5のZrO/CaO比と、100μm~6mmの粒度を有する。これに加えて、破砕顆粒は、>50質量%の分量を有する。さらに、製品は、破砕顆粒を取り囲む、50nm~150μmの粒度の微細粒ジルコン酸カルシウムおよび/または二酸化ジルコニウムからなる、>1300℃で焼結された結合マトリックスを有する。
【0010】
ジルコン酸カルシウム含有破砕顆粒は、CaCOとZrOとから合成されたCaZrO系の焼結され壊された破砕顆粒であってもよく、焼結された破砕顆粒は、1300℃を超える温度で焼結されたものである。
【0011】
さらに、結合マトリックスは、50nm~150μmの粒度を有する炭酸カルシウムと、50nm~150μmの粒度を有する不安定化された二酸化ジルコニウムとの混合物から作製されてもよい。
【0012】
これに加えて、破砕顆粒は、殊に泥漿鋳込み技術によって作製される。しかし破砕顆粒は、可塑成形またはプレス成形技術によって作製されてもよい。
【0013】
DE102012003478A1は、少なくとも75重量%のCaZrOと最大25重量%のZrOとを有する酸化物セラミック材料の、石炭ガス化設備のためのライニング(内張り)材料としての使用に関するものである。材料の製造は、例えば泥漿鋳込み技術により行われる。そのために、DE102012003478A1によれば、ZrOがCaCOと、そしてさらに添加剤と混合され、水を加えながらスラリーに加工される。ZrO/CaCOモル比は、1.6:1~1:1.5である。スラリーは石膏型に流し込まれ、石膏型がスラリーから水を再び抜き、それにより成形体が得られる。成形体は乾燥され、続いて800~1700℃の温度で、好ましくは1300~1500℃の温度で酸化条件または還元条件下で焼結される。
【0014】
DE102012003478A1によれば、さらに別の方法で、泥漿鋳込みされたCaZrOからなる試料体がいくつかの異なった粒等級になるよう破砕され、さらなる添加剤を使用して粒子が流し込み成形可能もしくは振動成形可能なコンパウンドに加工される。
【0015】
続いて、粗粒および微細粒CaZrOと少分量のZrOとからなるこのコンパウンドは乾燥および焼結される。DE102012003478A1によれば、このようにして、20%までの開気孔率を有する大型部品を製造することができる。
【0016】
DE102012003478A1には、得られた材料が1400℃の焼結後に64%のCaZrOと36%のCa0.15Zr0.851.85とを有する実施例も含まれている。
【0017】
I.Erkin Gonenli and A.Cuneyt Tasの論文「Chemical Synthesis of Pure and Gd-doped CaZrO Powders」から、純粋相のCaZrO粉末の合成が読み取れる。製造は、相応の体積分率の塩化カルシウム水溶液(CaCl・2HO)とオキシ塩化ジルコニウム水溶液(ZrOCl・8HO)から行われる。ジルコン酸カルシウムの形成は、2つの異なった化学合成法で達成される。自己伝播燃焼合成法とEDTA存在下での酸性基の滴定による沈殿である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の課題は、殊にジルコン酸カルシウム含有粒子の形態の、好ましくは純粋相のジルコン酸カルシウム材料の簡単かつ安価な、経済的および生態学的に問題のない合成方法を提供することである。
【0019】
さらなる課題は、少なくとも1つの合成されたこのようなジルコン酸カルシウム含有粒子を有するセラミックの定形または不定形の耐火製品を製造するためのバッチおよびこのようなセラミックの耐火製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題は、請求項1の特徴を有する合成方法、請求項25の特徴を有するバッチ、および請求項31の特徴を有するセラミック製品により解決される。
【0021】
以下、本発明について図面をもとにして例示的に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明により純粋相のジルコン酸カルシウム材料から実施例1に従い作製された粒子のX線相図である。
図2】本発明により実施例2に従い作製された成形体のX線相図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の範囲内で、少なくとも1つのCa含有粉状原料成分と、少なくとも1つのZrO含有粉状原料成分と水とだけからなり、混合物の乾燥質量に対して>5~10重量%、殊に7~8重量%の水の含水率を有する混合物からプレス成形および焼結によって、好ましくは純粋相のジルコン酸カルシウム含有材料を製造可能であることが驚くべきことに発見された。
【0024】
したがって、本発明による合成方法は、
a)少なくとも1つのCa含有粉状原料成分と少なくとも1つのZrO含有粉状原料成分と水とから、混合物の乾燥質量に対して>5~10重量%、殊に7~8重量%の水の含水率を有する混合物を作製するステップと、
b)混合物を、グリーン成形体をなすようにプレス成形するステップと、
c)殊に、グリーン成形体を乾燥させるステップと、
d)成形体を焼結するステップと、
e)場合によっては、焼結した材料を、粒子をなすように機械的に細砕する、殊に破砕する、および/または粉砕するステップと
を包含する。
【0025】
したがって、本発明によれば、混合物は、従来のプレス成形において一般的であるより高い水分量を含む。これに加えて、本発明によれば、混合物は、他の構成要素、特に結合剤および/またはプレス助剤を含まない。
【0026】
その場合、本発明の範囲内で、驚くべきことに、結合剤および/またはプレス助剤がごく少量であっても、これらがジルコン酸カルシウムの合成を妨げることが発見された。例えば、有機の一時的な結合剤および/またはプレス助剤が、予め調整されたCaO/ZrOモル比を焼成中に変化させることがわかった。燃焼時に有機結合剤および/またはプレス助剤が、原料中に含まれるCaを還元するCOおよび/またはCOを遊離させると推察される。還元されたCaもまた気相へ移行して蒸発し、それによりCaO/ZrOモル比が変化する。約550℃の温度からこのような反応が起こる。したがって、有機結合剤および/またはプレス助剤によって、これらがごく少量であっても、特に純粋相材料の製造が不可能であるほど合成が妨げられる。
【0027】
本発明による高い含水率は、一方では、結合剤なしでもグリーン成形体の十分なまとまりをもたらす。しかもさらに驚くべきことに、混合物中の高い含水率が、純粋相材料を製造できることにも寄与することがわかった。というのは、高い含水率にもとづいて、焼結過程において焼結過程を促進する水蒸気雰囲気が形成されるからである。水蒸気雰囲気によって、原料の個々の粉粒の表面張力が低下し、このことが焼結性を向上させる。これに加えて、水蒸気雰囲気は、驚くべきことにCaOの蒸発を抑止する。
【0028】
これに加えて、純粋相の材料を製造できるようにするために、混合物中のCaO/ZrOモル比が実質的に等モルでなければならない。すなわち、混合物中のCaO/ZrOモル比は、殊に1:1である。少なくともモル比は殊に1.5:1~1:1.6である。モル比を決定する際、その都度理想化され、純粋原料が想定される。所望の比率を出発点としてモル質量から重量比が算出される。その際、当然のことながら、CaO担体が、他の構成要素、例えばCaCOにCOも含むことが考慮される。
【0029】
使用されるCa原料成分は、殊にCaCO含有および/またはCaO含有および/またはCa(OH)含有および/またはCaC含有原料成分である。殊にCaCO原料成分が使用される。
【0030】
CaCO原料成分は、殊に天然の粉砕された石灰石粉(GCC=ground calcium carbonate)または合成沈降炭酸カルシウム(PCC=precipitated calcium carbonate)または白亜である。特に、高純度であることからPCCが使用されることが特に好ましい。PCCの作製は、殊に二酸化炭素と石灰乳もしくは消石灰懸濁液との反応によって行われる。消石灰懸濁液は、生石灰を消和することによって、または水酸化カルシウムを水中に分散させることによって作製される。
【0031】
CaO原料成分は、殊に生石灰である。
Ca(OH)原料成分として、殊に消石灰が使用される。
【0032】
ZrO原料成分として、殊に合成により作製された二酸化ジルコニウムが使用される。殊に二酸化ジルコニウムは、安定化されていない(単斜晶)。しかし二酸化ジルコニウムは安定化されていてもよい。
【0033】
これに加えて、原料成分は、それぞれ殊に少なくとも96重量%、好ましくは少なくとも99重量%の純度を有する。すなわち、それぞれの化合物(CaCO、CaO、Ca(OH)、CaCもしくはZrO)の最低含有率は、殊に少なくとも96重量%、好ましくは少なくとも99重量%であり、それぞれDIN51001:2003による蛍光X線分析法(XRF)によって決定される。
【0034】
さらに、Ca原料成分は、DIN EN 725-5:2007に準拠した≦200μm、好ましくは≦50μm、特に好ましくは200nm~10μmの粒度を有する。さらに、Ca原料成分の平均粒径は、殊に500nm~5μm、好ましくは0.8~1μmである。
【0035】
ZrO原料成分は、DIN EN 725-5:2007に準拠した、殊に≦200μm、好ましくは≦150μm、特に好ましくは200nm~10μmの粒度を有する。さらにZrO原料成分の平均粒径(d50)は、殊に500nm~5μm、好ましくは0.7~1μmである。
【0036】
粒度および平均粒径は、DIN EN 725-5:2007に準拠したレーザ粒度測定法(Lasergranulometrie)によって決定される。そのためにそれぞれの粉を超音波によって、殊にエタノール中に分散させる。
【0037】
すでに説明したように、原料成分と水とのみからなる混合物のグリーン成形体への成形は、本発明によればプレス成形によって行われる。その場合、プレス成形は、殊に30~150N/mm、好ましくは50~80N/mmのプレス圧で行われる。さらに、プレス成形は、殊に一軸プレス成形によって行われる。しかし、静水圧プレス成形または振動プレス成形またはブリケット化またはペレット化によって行われてもよい。
【0038】
混合は、殊に強力混合機により、殊に向流法(旋回機と皿とが互いに逆方向に回転する)で行われる。
【0039】
さらに、特に従来のれんが規格寸法(Steinformat)の、殊に直方体状のグリーン成形体が作製される。グリーンプレス成形体は以下の寸法を有することが好ましい:
【0040】
【表1】
【0041】
さらに、グリーン成形体は、殊にDIN EN993-17:1999に規定される2.0~3.0g/cm、好ましくは2.1~2.5g/cmのかさ密度、および/またはDIN66133:1993-06に準拠した30~60体積%、好ましくは40~50体積%の気孔率を有する。
【0042】
グリーン成形体を取り扱い可能にするために、グリーン成形体は、殊にDIN EN993-6:1995-04による少なくとも1MPaの冷間曲げ強度を有する。
【0043】
すでに説明したように、プレス成形後、グリーン成形体は乾燥される。乾燥は、殊にDIN51078:2002-12に規定される0~2重量%、特に0~0.5重量%の水分を残して行われる。グリーン成形体は、殊に25~110℃、特に100~105℃で4~24h、好ましくは12~24hの時間乾燥される。
【0044】
本発明によれば、乾燥後に焼結が行われる。焼結は、殊に1200~1800℃、好ましくは1400~1650℃の最終温度による保持段階で2~10h、好ましくは4~6hの間行われる。その場合、殊に1~10K/min、好ましくは2~5K/minの加熱速度で加熱される。これに加えて、加熱中、殊に400~1000℃、好ましくは550~900℃の温度での中間保持段階が1~3h、好ましくは1.5~2.5hの間行われる。殊に炉内で自由冷却が行われる。
【0045】
さらに、焼結は、殊に中性条件または酸化条件下で行われる。そのために、焼結は、殊に電気加熱炉またはガス加熱炉で行われる。ガス加熱炉は、燃焼空気中の酸素量が制御可能(酸素過剰または酸素不足)であり、比較的高い加熱速度に達し、大抵の場合、燃焼室内の気体の流れ場が電気加熱炉とは(異なる)。
【0046】
これに加えて、焼結は、非連続または連続プロセスで、巨大設備では好ましくは連続プロセスで行われる。
【0047】
すでに説明したように、本発明による方法により、特に、非常に純粋な、特に純粋相のジルコン酸カルシウム材料を製造することが可能である。したがって、本発明により製造される純粋相のジルコン酸カルシウム材料は、特に遊離原料や混合相を有していない。すなわち、用いられる原料成分が完全にジルコン酸カルシウムに変換される。本発明により製造されるジルコン酸カルシウム材料は、少なくとも、ジルコン酸カルシウム材料の乾燥質量に対して少なくとも98重量%の、好ましくは少なくとも99重量%のCaZrO含有率を有する。
【0048】
本発明の実施例により製造された純粋相のジルコン酸カルシウム材料の例示的X線相図が図1に示される。
【0049】
その際、本発明の範囲内で、純粋相とは、X線回折による相組成の分析で、ジルコン酸カルシウム以外の相が検出されないか、もしくは検出可能でないことを意味する。このことは、図1に良好に見て取れる。つまり、ジルコン酸カルシウムに分類できるピークしかない。
【0050】
その際、相分析は、DIN13925-2:2003に準拠して行われる。このために、試料ホルダにおいて、乾燥させ細粉化した物質(<45μm)が調製される。試験装置は、殊に次の装置:PHILIPS PW1820である。評価は、殊に分析ソフトウェアX’Pert Pro MPD(PANalytical B.V.、Almelo、Netherlands)によって行われる。Sonneveld&Visserによりバックグラウンドが決定される。反射は、適当なPDFカードを選定することによりプログラムによって自動的に同定される(ここまでは半定量的試験である)。続いて、同様にプログラムによって自動的に、相の転移、半自動モードで散乱の精密化、そしてその後、リートベルト解析が行われる。
【0051】
さらに、本発明によるジルコン酸カルシウム材料からなる焼結成形体は、殊にDIN EN993-1:1995-04に規定される5~50体積%、好ましくは8~40体積%の開気孔率を有する。
【0052】
これに加えて、焼結成形体、特に焼結れんがは、殊にDIN EN993-1:1995-04に規定される2.50~4.50g/cm、特に2.60~4.30g/cmのかさ密度を有する。
【0053】
殊に、すでに説明したように、焼結成形体は、焼結後にさらに処理するために機械的に細砕され、好ましくは破砕され、および/または粉砕され、続いて篩分けによって各粒等級に分級される。篩分けは、篩い塔においてDIN EN933-1:2012による乾燥篩分けによって行われる。殊に、0.5mmの振幅で2分間、篩機Retsch AS 200 controlが使用される。
【0054】
粒群(Kornfraktion)もしくは粒等級(Kornklasse)という名称は、上篩に残る粒がなく、下篩から落下する粒がないことを意味する。すなわち過大粒(Ueberkorn)も過小粒(Unterkorn)もない。すなわち粒等級はそれぞれ、2つの上述の試験粒度間の粒度を有する。
【0055】
事前合成される本発明による粒子は、非常に良好な熱機械強度(thermomechanische Bestaendigkeit)を有する。
【0056】
これに加えて、本発明により作製される粒子は、殊にDIN66133:1993に準拠した5~50体積%、好ましくは10~40体積%の粒気孔率(開気孔率)、および/または殊にDIN66133:1993に準拠した0.5~2μm、好ましくは0.8~1.2μmの平均細孔径(d50)を有する。
【0057】
さらに、本発明により作製される粒子は、殊にDIN66137-2:2004によるヘリウム比重びん法により測定される4.40~4.70g/cm、好ましくは4.65~4.70g/cmの純密度を有する。
【0058】
その場合、本発明による粒子は、それ自体公知のように、定形または不定形のセラミック耐火製品を製造するためのセラミックのバッチに使用することができる。
【0059】
焼結成形体がペレットもしくは顆粒粒、またはそれに類するものである場合、これを機械的に細砕することなしにそのまま耐火性粒子としてさらに使用することができる。
【0060】
通常、セラミックのバッチは、少なくとも1つの耐火性粒子と添加剤(additiv)、殊に結合剤、および/または水および/または液体添加物とからなる乾燥材料混合物を有する。すなわち、結合剤(乾燥または液体)および/または水および/または液体添加物の量が付加的に(additiv)加えられ、(バッチの全質量にではなく)乾燥材料混合物の全乾燥質量に関係付けられる。
【0061】
不定形製品の場合、液体および/または固体もしくは乾燥した粉末状結合剤ならびに/あるいは液体添加物が、殊にバッチの他の乾燥構成要素から分離されて容器に一緒に包装される。
【0062】
結合剤は、耐火製品のために適した結合剤、殊に一時的結合剤である。このような結合剤は、例えばPraxishandbuch、28頁/3.2節に記載されている。
【0063】
添加物は、殊にプレス助剤である。
乾燥材料混合物は、本発明によれば、殊に乾燥材料混合物の全乾燥質量に対して10~90重量%の、好ましくは80~90重量%の量の、>200μmの粒度の事前合成された少なくとも1つのジルコン酸カルシウム含有粗粒子を有する、および/または殊に、乾燥材料混合物の全乾燥質量に対して0~30重量%の、好ましくは10~20重量%の量の、≦200μmの粒度の事前合成された少なくとも1つのジルコン酸カルシウム含有粉粒子を有する。
【0064】
粒子の粒度は、DIN EN933-1:2012による乾燥篩分けによって決定される。
【0065】
さらに、乾燥材料混合物は、ジルコン酸カルシウム材料からなる粉粒子の代わりに、またはこのような粉粒子に加えて、少なくとも1つの粉状Ca原料成分と少なくとも1つの粉状ZrO原料成分とを含んでもよく、これらの原料成分から、製品の焼成時にさらなるジルコン酸カルシウムがin situで作成される。したがって、Ca原料成分およびZrO原料成分は、上記の原料成分である。これらの原料成分は、純粋相のジルコン酸カルシウムを形成するために、殊に等モル比で乾燥材料混合物中に含まれる。
【0066】
乾燥材料混合物は、本発明による事前合成されたジルコン酸カルシウム含有粒子と、場合によっては少なくとも1つのCa原料成分と、少なくとも1つのZrO原料成分とだけを有し、特にこれらからなる。
【0067】
しかし乾燥材料混合物は、別の一般的な耐火性材料からなる>200μmの粒度の少なくとも1つの別の粗粒子、および/または≦200μmの粒度の少なくとも1つの別の粉粒子を有していてもよい。
【0068】
さらに、乾燥材料混合物は、耐火性材料のための、殊に全量が<5重量%の少なくとも1つの乾燥添加物質(Zusatzstoff)、および/または耐火性材料のための、殊に全量が<5重量%の乾燥添加物を有していてもよい。
【0069】
乾燥添加物質は、耐火製品のために適した添加物質である。この添加物質は、例えばPraxishandbuch、28頁/3.3節に記載されている。このような添加物質は、加工性もしくは成形性を改善するため、または製品の組織を改質するため、したがって特別な特性を得るために使用される。
【0070】
これに加えて、乾燥材料混合物の粗粒分(=バッチに含まれるすべての粗粒子)は、殊に最大8mmまで、好ましくは最大6mmまで、特に好ましくは最大4mmまでの粒度を有する。
【0071】
乾燥材料混合物の粗粒分の粒度分布は、殊に定常である。
乾燥材料混合物の粉粒分(=バッチに含まれるすべての粉粒子)の粒度分布は、殊に同様に定常である。
【0072】
そして全乾燥材料混合物の粒度分布も殊に定常である。
その場合、それ自体公知のように、粗粒分は支持粒(Stuetzkorn)として用いられる。焼成時に粉粒分から結合マトリックスが形成され、結合マトリックスに粗粒分が組み込まれる。
【0073】
すでに説明したように、本発明によるバッチは、不定形または定形のセラミック製品を製造するために用いられる。
【0074】
プレス成形製品、特にれんがを製造するために、少なくとも1つの液体結合剤および/もしくは固体結合剤ならびに/または水ならびに/またはプレス助剤を有する本発明によるバッチの乾燥材料混合物からなる混合物または可塑性コンパウンド(bildsame Masse)が作製される。バッチが液体結合剤および/またはプレス助剤を含む場合、水を加える必要はないが、加えることが可能である。しかし、水のみを加えてもよい。
【0075】
1つまたは複数の結合剤、および/または水および/またはプレス助剤の最適な分布のために、例えば3~10分間混合される。
【0076】
混合物が型に入れられプレス成形され、それにより成形体が作製される。プレス圧は、通常、例えば50~150MPa、好ましくは100~150MPaの範囲である。
【0077】
殊に、プレス成形後、例えば40~110℃、特に100~105℃で乾燥が行われる。乾燥は、殊にDIN51078:2002-12に規定される0~2重量%、特に0~1重量%の水分を残して行われる。
【0078】
乾燥およびプレス成形されたれんがは、不焼成で使用されてもよいし、または焼成されてもよい。
【0079】
焼成のために、殊に乾燥およびプレス成形されたれんがが、例えばトンネル炉などのセラミック焼成炉において、殊に1200~1800℃、特に1400~1700℃でセラミック焼成される。殊に、酸化焼成されるが、材料組成に応じて還元焼成も有利であり得る。
【0080】
しかし、定形製品の成形は、別の一般的な仕方で、殊に可塑性混合物を泥漿鋳込み、または押出法もしくはエクストルージョン法(Extrusionsverfahren)により、あるいは手動で、あるいは機械による押し固めもしくは突き固めによって行うこともできる。泥漿鋳込みの場合、混合物が相応に流動性である。
【0081】
殊に、焼成された定形製品、特にれんがは、DIN EN993-1:1995-04に規定される4.00~4.70g/cm、特に4.40~4.60g/cmのかさ密度を有する。
【0082】
本発明による焼成された定形製品、特にれんがのDIN EN993-6:1995-04による冷間曲げ強度は、殊に10~40MPaである。
【0083】
これに加えて、本発明による焼成された定形製品、特にれんがは、殊にDIN EN ISO12680-1:2007-05に準拠した80~200GPa、好ましくは90~120GPaの弾性率(E-Modul)を有する。
【0084】
不定形製品、特にコンパウンド、好ましくは射出成形コンパウンド、または振動成形コンパウンド、または流し込み成形コンパウンド、または棒突き成形コンパウンドを製造するために、同様に、少なくとも1つの乾燥結合剤および/または液体結合剤および/または水および/または少なくとも1つの液体添加物を有する本発明による乾燥材料混合物からなる混合物が製造され、混合物は、例えば型枠の背後に導入される。バッチが液体結合剤および/または添加物を含む場合、水を加える必要はないが加えることが可能である。しかし、水のみを加えてもよい。
【0085】
すでに説明したように、本発明による合成方法により、簡単、経済的、かつ生態学的に問題のない仕方で、好ましくは純粋相のジルコン酸カルシウム含有材料を製造することができる。製造方法(混合、プレス成形、焼成、殊に破砕)のコストは非常に少ない。これに加えて、焼結温度により粒特性を簡単に制御することができる。その際、より高い焼結温度は小さい気孔率をもたらす。より小さい気孔率の粒子は、流し込み成形コンパウンドのために特に良好に使用可能である。殊に、流し込み成形コンパウンドのための粒子は>1550℃で焼結される。事前合成された粒子のかさ密度が高ければ高いほど、そこから製造される材料の焼成時の収縮(Schwindung)も少ない。
【0086】
本発明による不定形および定形製品は、例えば石炭ガス化設備の耐火性コーティング、殊に機能内張りまたは安全内張りのために使用される。
【0087】
さらに、本発明による不定形および定形製品は、ガスタービンにおける熱保護タイルとして、スライドプレートにおけるインレイとして、チタン鋳造またはチタン合金(VIM)のためのるつぼ、他の非鉄金属(例えばニッケル系合金)のためのるつぼとして使用することができる。
【実施例
【0088】
以下の実施例をもとにして、本発明による方法および本発明によるセラミック製品の優越性を今一度明確にする。
【0089】
実施例1(CaCOと安定化されていないZrOとからのCaZrO粒子の作製):
Table 1は、プレス成形コンパウンドを作製するための組成を例示的に示す。この場合、Schaefer Kalk GmbH&Co.KG社、Diez、の炭酸カルシウム(PreCarb 400)と、Saint-Gobain社、Le Pontet Cedex、仏国、の単斜晶二酸化ジルコニウム(ZirPro CS02)とを使用した。
【0090】
【表2】
【0091】
まず、乾燥した原料を計量して強力混合機に入れた。10分の混合工程の後に、水を加えた。混合機を向流原理で動作させた(旋回機と皿とが互いに逆方向に回転する)。湿ったコンパウンドをさらに10分混合した。そうしてできたコンパウンドを液圧式プレス機のプレス凹部(Pressmulde)に充填した。50MPaまでのプレス圧でプレス成形した後に成形体ができた。離型後に100℃で24h乾燥させた。その後、試料を1400℃で5h、ランアップ段階(Auffahrphase)中に900℃で2hの保持時間を設けて焼結した。加熱速度は、3K min-1であった。炉内で自由冷却を行った。続いて、そのようにして得られた材料を粗く事前細砕し、続いてジョークラッシャで異なった粒等級に破砕し、それに続いて分級した。XRDによる試験は、CaZrOによるものと思われるピークのみを示す(図1を参照)。したがって材料は100%のCaZrOを含む。
【0092】
実施例2(異なった粒の細かさの実施例1による純粋相のジルコン酸カルシウム系の耐熱衝撃性および耐食性の成形体の作製):
Table 2は、このために合成されたCaZrOからなる粗粒の耐火成形体を作製するための組成を以下に示す。
【0093】
【表3】
【0094】
プレス成形コンパウンドを作製するために、まず乾燥原料を計量し、その際、微細なものから混合容器に充填した。混合のために、Toni Technik Baustoffpruefsysteme GmbH社のToniMix Baustoffmischer(建設材料混合機)を使用した。乾燥原料を5分間混合した。続いてバインダを加え、全部をさらに5分間混合した。その後、液圧式一軸プレス成形機でプレス成形を行った。150MPaで試料体を作製した。100℃で4hという短時間の乾燥を行った後、ランアップ段階において900℃で2hの保持時間を設けて1650℃で6時間焼結を行った。加熱速度は2K min-1であった。Table 3は、そのようにして製造した材料の選択特性を示す。
【0095】
【表4】
図1
図2