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特許7438953完全ヒト化抗B細胞成熟抗原(BCMA)の単鎖抗体およびその応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】完全ヒト化抗B細胞成熟抗原(BCMA)の単鎖抗体およびその応用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20240219BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240219BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240219BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240219BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240219BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240219BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240219BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240219BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240219BHJP
   A61P 37/00 20060101ALI20240219BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240219BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240219BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240219BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20240219BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240219BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240219BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240219BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20240219BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240219BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240219BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20240219BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240219BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61P35/00
A61P37/00
A61P35/02
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P21/04
A61P9/00
A61P17/00
A61P25/00
A61P7/06
A61P13/12
A61P43/00 105
A61P7/04
A61P37/04
A61K39/395 N
A61K39/395 T
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2020536606
(86)(22)【出願日】2019-02-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-20
(86)【国際出願番号】 CN2019074419
(87)【国際公開番号】W WO2019149269
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2021-12-15
(31)【優先権主張番号】201810100549.6
(32)【優先日】2018-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518049935
【氏名又は名称】イノベント バイオロジックス (スウツォウ) カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】リ、チユアン
(72)【発明者】
【氏名】チャイ、ティアンハン
(72)【発明者】
【氏名】チョウ、ショアイシアン
(72)【発明者】
【氏名】ユ、トーチャオ
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-535002(JP,A)
【文献】特表2016-500256(JP,A)
【文献】特表2017-515470(JP,A)
【文献】特表2018-500014(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C12N 5/10
C12P 21/08
A61P 35/00
A61P 37/00
A61P 35/02
A61P 19/02
A61P 29/00
A61P 21/04
A61P 9/00
A61P 17/00
A61P 25/00
A61P 7/06
A61P 13/12
A61P 43/00
A61P 7/04
A61P 37/04
A61K 39/395
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
SwissProt/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
B細胞成熟抗原(BCMA)と特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合断片であって、前記抗体が、配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号31のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、前記抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
前記抗体が以下の一つ以上の特性:
)ヒトBCMAの細胞外領域(ECD)におけるエピトープと特異的に結合する;
ii)ヒトBCMAを発現する多発性骨髄腫細胞の成長を阻害および抑制し、かつ/または前記細胞を死滅させる
を有する、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項3】
前記抗体が完全ヒト化抗体である、請求項1または2に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項4】
前記抗体が単鎖抗体である、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項5】
前記抗体が単鎖scFv抗体であり、前記単鎖scFvがN末端からC末端までに、VLドメイン-リンカー-VHドメインまたはVHドメイン-リンカー-VLドメインを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項6】
前記リンカーが、1個~約25個のアミノ酸、約5個~約20個のアミノ酸、または約10個~約20個のアミノ酸を含む、請求項5に記載の抗体。
【請求項7】
前記リンカーが配列番号93のアミノ酸配列を含む、請求項6に記載の抗体。
【請求項8】
前記単鎖scFv抗体が、配列番号99のアミノ酸配列、または配列番号99と少なくとも90%、92%、95%、97%、98%、99%またはより高い同一性を有するアミノ酸配列、または配列番号99に対して少なくとも1、2または3個であり、かつ10個以下のアミノ酸変異を有するアミノ酸配列を含む、請求項5~7のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項9】
求項5~8のいずれか一項に記載の単鎖scFv抗体およびFc領域を含む、B細胞成熟抗原(BCMA)と特異的に結合する単離された抗体。
【請求項10】
前記単鎖scFv抗体が、ヒンジ領域によってFc領域に接続される、請求項9に記載の抗体。
【請求項11】
前記ヒンジ領域が、配列番号95に示されるアミノ酸配列、または配列番号95のアミノ酸配列に対して少なくとも1、2または3個であり、かつ、5個以下のアミノ酸変異を有するアミノ酸配列を含むアミノ酸配列を含む、請求項10に記載の抗体。
【請求項12】
前記Fc領域がヒトIgG1またはIgG4のFc領域である、請求項9~10のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項13】
前記Fc領域が低フコシル化または無フコシル化されている、請求項12に記載の抗体。
【請求項14】
前記抗体が、配列番号101のアミノ酸配列、または配列番号101に対して少なくとも1、2または3個であり、かつ、10個以下または5個以下のアミノ酸変異を有するアミノ酸配列、または配列番号101と少なくとも90%、92%、95%、97%、98%、99%またはより高い同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項9~13のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片をコーディングする、単離された核酸。
【請求項16】
請求項15に記載の核酸を含む、ベクター。
【請求項17】
請求項16に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項18】
請求項1~14のいずれか一項に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片を製造する方法であって、前記抗体またはその抗原結合断片を発現するのに適する条件において請求項17に記載の宿主細胞を培養することを含む、前記方法。
【請求項19】
請求項1~14のいずれか一項に記載の抗体を含む、複合体または融合物。
【請求項20】
請求項1~14のいずれか一項に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片、または請求項19に記載の複合体または融合物、および任意に薬学的に許容可能な担体を含む、医薬組成物。
【請求項21】
試料におけるBCMAを検出する方法であって、
(a)前記試料と、請求項1~14のいずれか一項に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片、または請求項19に記載の複合体または融合物とを接触させること、および
(b)前記抗体またはその抗原結合断片、または前記複合体または融合物と、BCMAタンパク質との複合物の形成を検出すること
を含む、前記方法。
【請求項22】
B細胞関連疾患の治療における医薬として用いられる、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記B細胞関連疾患が、B細胞悪性腫瘍、形質細胞悪性腫瘍および自己免疫疾患から選択される、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記B細胞関連疾患が、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、未定悪性度のB細胞増殖、リンパ腫様肉芽腫症、移植後リンパ増生疾患、免疫調節疾患、関節リウマチ、重症筋無力症、特発性血小板減少性紫斑病、抗リン脂質症候群、シャーガス病、グレーヴス病、ウェゲナー肉芽腫症、結節性多発動脈炎、シェーグレン症候群、尋常性天疱瘡、強皮症、多発性硬化症、ANCA関連血管炎、グッドパスチャー病、川崎病、自己免疫性溶血性貧血、急速進行性糸球体腎炎、重鎖病、原発性または免疫細胞関連澱粉様変性、および意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症から選択される、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記B細胞関連疾患が多発性骨髄腫(MM)または非ホジキンリンパ腫(NHL)である、請求項22に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、B細胞成熟抗原(BCMA)と特異的に結合する新型抗体と抗体断片に関し、特に単鎖抗体(例えば、単鎖scFv)に関する。本発明は、更に、これらの抗体と抗体断片をコードする核酸、ベクターと前記核酸を発現する宿主細胞に関する。その他、本発明は、本発明の抗体を含む組成物およびその治療と診断における用途にも関する。
【背景技術】
【0002】
B細胞成熟抗原(BCMA)は、CD269またはTNFRS17とも呼ばれ、腫瘍壊死因子受容体のファミリーメンバーである。BCMAは、III型膜貫通タンパク質であり、細胞外ドメイン(ECD)にTNFRファミリーメンバーの特徴的なシステインリッチドメイン(CRD)を有し、当該ドメインはリガンド結合モチーフを形成する。BCMAとTNFRファミリーメンバー、膜貫通活性化因子CMAL相互作用体(TACI)とBAFF受容体(BAFF-R)は、機能上に関連している。BCMAは、膜貫通ドメインN末端のCRDで、TACIと一定の相似性を有することを発現する。その他、ヒトBCMAとマウスおよびアカゲザルのBCMAは、細胞外ドメインECDにおいてそれぞれ約65%と85%のアミノ酸配列の同一性を有する。
【0003】
研究によって、BCMAは、B細胞活性化因子受容体(BAFF)とB細胞増殖誘導リガンド(APRIL)と結合し、異なる発育段階におけるB細胞の生存を促進することができることが示される。しかし、異常な信号の伝達によりB細胞が異常に増殖することを促進することができ、自己免疫疾患と腫瘍を形成することを引き起こす。Rickert et al.、Immunological Riviews2011、第244巻:115-133を参照する。
【0004】
APRILは、G70とも呼ばれ、TNFリガンドファミリーのメンバーである。文献報道によれば、APRILは、前立腺がん、乳がん、アルツハイマー病、免疫疾患、炎症と胃腸障害に関連している。Hahne et al.(1998)、T.Exp.Med.188:1185-90を参照する。可溶性APRILとBCMAの結合により骨髄(BM)における形質細胞と形質芽球細胞の生存を促進することができ(BLOOD、2014年5月、123巻、20期、p3128-3138)、TACIとの結合によりT細胞の非依存性の抗体反応、B細胞調節とクラススイッチ組換えを引き起こすことができる(Vincent et al.、Nature Reviews Rheumotogy、2014第10卷:365-373を参照する)。
【0005】
BAFFはもう一つのTNFリガンドファミリーのメンバーである。BAFFとBCMAの結合により形質細胞の生存を促進することができる。BAFFはB細胞、形質芽球細胞と形質細胞の表面に発現されるBAFF受容体(BAFF-R)と結合し、未成熟のB細胞の生存と成熟を促進することができる。その他、BAFFはTACIと結合してもよく、T細胞の非依存性の抗体反応、B細胞調節とクラススイッチ組換えを引き起こす(Vincent et al.、Nature Reviews Rheumotogy、2014第10卷:365-373を参照する)。
【0006】
非腫瘍細胞において、BCMAは主に形質細胞と成熟したB細胞亜群に発現される。60-70%の多発性骨髄腫(MM)患者において、BCMAも癌化した形質細胞の表面に発現される。MM患者の血清におけるBCMAのレベルが上昇し、上昇したレベルが疾患の状況と、治療反応と全体の生存に関連する。BCMA遺伝子の欠陥あるマウスは、正常なB細胞レベルがあるが、その形質細胞の生存期間が著しく短くなる。従って、BCMAは、多発性骨髄腫の免疫治療の望ましい標的である。
【0007】
単鎖scFv抗体は、小分子の遺伝子工学抗体であり、DNAレベルで、遺伝子工学方法を利用して天然抗体の重鎖可変領域(VH)を軽鎖可変領域(VL)と接続して(通常、人工合成された接続ペプチド(または「リンカー」)によって接続される)なる小分子組換え抗体である。完全な抗体分子に比べると、scFv単鎖抗体は、完全な抗体可変領域を含み、元の抗体の抗原特異性と結合活性を保留し、抗体分子のFc領域を含まないので、免疫原性が弱く、人体に用いられて免疫反応を生じにくく、分子量が少なく、透過性が強く、組織に浸入しやすく、画像診断または治療に用いられる時、一般的な完全な抗体の到達できない組織の内部に入ることができ、糖化修飾をせずに機能付ける抗体分子を形成することができ、原核発現システムの大量生産に役立ち、操作しやすく、遺伝子工学構造として新性質を有するその他の抗原特異的結合分子、例えば全長抗体、scFv-Fcなどを製造することに適用されるというメリットを有する。
【0008】
BCMAのB細胞悪性腫瘍、特に多発性骨髄腫における治療標的とする有効性に鑑みて、本分野では、依然として新たなBCMAと特異的に結合する分子を必要とする。本発明は、高標的特異性と高親和性でBCMAと結合し、特に腫瘍細胞の表面に発現されるBCMAと結合して、低副作用を有する完全ヒト単鎖抗体を提供することによって、このニーズに満足する。本発明に係る完全ヒト単鎖抗体は、腫瘍と癌症の診断と治療に単独に用いられるだけでなく、より有利なのは、遺伝子工学構造として高BCMA標的性を有するその他の診断と治療分子、例えば様々な形式の抗体、scFv-Fcおよび抗体に基づく融合物と複合体などを製造することに適用される。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、完全ヒト化の抗ヒトBCMA抗体およびそのコーディング遺伝子並びに応用を提供する。遺伝子工学手段と酵母表面ディスプレイ技術によって、本発明者は、酵母表面にディスプレイされたヒト抗体ライブラリーから抗ヒトBCMAの完全ヒト化抗体を選択し、その可変領域の遺伝子配列を得て、それに基づいて完全ヒト単鎖scFv抗体およびそのヒトFc領域との融合構成物を構成し、哺乳動物の細胞発現、精製によって、scFv-hFc組換え単鎖抗体分子を得る。本発明に係る組換え単鎖抗体分子は、高親和性で非膜結合型ヒトBCMAと結合するだけではなく、高親和性で細胞表面に発現されるBCMAとも結合する。
【0010】
従って、本発明はBCMAと特異的に結合する抗体、特に単鎖抗体およびそれをコーディングする核酸分子並びにそれらの治療と診断における用途を提供する。
【0011】
一態様において、本発明はBCMA(ヒトBCMAタンパク質が好ましい)と特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を提供する。好ましい一実施形態において、本発明に係る抗体は単鎖抗体である。好ましい一実施形態において、本発明に係る抗体は単鎖scFv抗体である。他の好ましい一実施形態において、本発明に係る抗体はscFv-Fc抗体である。一部の実施形態において、本発明に係る抗体は、約100nM~5nMのKDでヒトBCMAタンパク質と結合し、ここでKD値は例えばバイオフィルム層光学干渉技術(例えば、Fortebio検出法)に従って測定する。一部の実施形態において、本発明に係る抗体は、約40nM~4nMのEC50で細胞表面に発現されるヒトBCMAタンパク質と結合し、ここでEC50値は、例えばフローサイトメトリー(例えばFACS)に従って測定する。本発明の一部の実施形態において、本発明の抗BCMA抗体またはその断片のBCMAに関連する病症の治療における用途を提供する。
【0012】
一部の実施形態において、本発明に係る抗体は、表1に示されるいずれか1つの抗体のVH領域配列またはその変異体を含む。他の一部の実施形態において、本発明に係る抗体は、表1に示されるいずれか一つの抗体のVL領域配列またはその変異体を含む。他の一部の実施形態において、本発明に係る抗体は、表1に示されるいずれか一つの抗体のVHとVL配列対またはその変異体を含む。他の一部の実施形態において、本発明に係る抗体は、表1に示されるいずれか一つの抗体のVH領域配列の1つ、2つまたは3つのCDR(好ましくは3つのCDRである)またはその変異体を含む。他の一部の実施形態において、本発明に係る抗体は、表1に示されるいずれか一つの抗体のVL領域配列の1つ、2つまたは3つのCDR(好ましくは3つのCDRである)またはその変異体を含む。一部の実施形態において、本発明に係る抗体は、表1に示されるいずれか一つの抗体の6つのCDR領域配列またはその変異体を含む。一実施形態において、抗体のCDR配列は、表2に示されるCDR配列である。
【0013】
一部の実施形態において、本発明に係る抗体は、単鎖scFv抗体である。好ましくは、scFv抗体はVH配列と、VL配列とリンカーを含む。好ましくは、scFv抗体は、N末端からC末端まで、VLドメイン-リンカー-VHドメイン、またはVHドメイン-リンカー-VLドメインを含む。
【0014】
一部の実施形態において、さらに本発明の単鎖scFv抗体と野生型または変えたFc領域から融合形成されたscFv-Fc抗体を提供する。一部の実施形態において、本発明に係る抗体のFc領域は低フコシル化または無フコシル化である。一部の実施形態において、scFv抗体は、ヒンジ領域によってFc領域と融合される。
【0015】
他の態様において、本発明は、本発明の抗体、特に、単鎖抗体に基づいて構成した融合物と複合体に関する。
【0016】
他の態様において、本発明は、B細胞に関連する病症を治療する方法と組成物に関して、前記対象に有効量の本発明の抗体またはその抗原結合断片、または本発明の融合物または複合体を投与する。一部の実施形態において、B細胞に関連する病症は、B細胞悪性腫瘍、形質細胞悪性腫瘍、自己免疫疾患から選択され、好ましくは、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、未定悪性度のB細胞増殖、リンパ腫様肉芽腫症、移植後リンパ増生疾患、免疫調節病症、関節リウマチ、重症筋無力症、特発性血小板減少性紫斑病、抗リン脂質症候群、シャーガス病、グレーヴス病、ウェゲナー肉芽腫症、結節性多発動脈炎、シェーグレン症候群、尋常性天疱瘡、強皮症、多発性硬化症、ANCA関連血管炎、グッドパスチャー病、川崎病、自己免疫性溶血性貧血と急速進行性糸球体腎炎、重鎖病、原発性または免疫細胞関連澱粉様変性、または意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症から選択される。一部の好ましい実施形態において、B細胞関連疾患は、B細胞悪性腫瘍であり、好ましくは、多発性骨髄腫(MM)または非ホジキンリンパ腫(NHL)である。一部の実施形態において、本発明の抗体分子、融合物または複合体は、他の治療剤と併用する。
【0017】
他の態様において、本発明は、試料におけるBCMAを検出する方法とキットに関し、前記方法は、(a)前記試料を本発明の抗体またはその抗原結合断片、融合物または複合体と接触することと、(b)前記抗体またはその抗原結合断片、融合物または複合体とBCMAタンパク質との間の複合物の形成を検出することとを含む。一部の実施形態において、試料は多発性骨髄腫(MM)患者に由来する。前記検出は、インビトロでもインビボでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、フローサイトメトリーにより測定し、酵母ディスプレイライブラリーから選択されて取得した本発明の例示的な抗BCMA抗体と多発性骨髄腫細胞系NCI-H929細胞の親和性を示す。
図2図2は、本発明の例示的なscFv-hFc組換え単鎖抗体の発現ベクタークローン策略を概略的に示す。
図3図3は、フローサイトメトリーにより測定し、本発明の例示的なscFv-hFc組換え単鎖抗体とNCI-H929細胞の親和性を示す。
図4図4は、本発明の抗体の例示的なCDR配列を示す。
図5図5は、本発明の抗体の例示的なVH配列を示す。
図6図6は、本発明の抗体の例示的なVL配列を示す。
図7図7は、ヒトBCMA抗原およびその細胞外ドメイン(ECD)の例示的なアミノ酸配列を示す。
図8図8は、本発明の例示的なscFv-Fc構成物の構造に用いられscFv-Fc構成物構造の参照に用いられるリンカー、ヒンジ領域とFc領域のアミノ酸配列とヌクレオチド配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
明確に反対すると指定しない限り、本発明における実施は、本分野の技術的な日常化学、生物化学、有機化学、分子生物学、微生物学、組換えDNA技術、遺伝学、免疫学と細胞生物学の方法を用いる。これらの方法の説明は、例えば、Sambrook et al.、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第3版、2001);Sambrook et al.、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版、1989);Maniatis et al.、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(1982);Ausubel et al.、Current Protocols in Molecular Biology(John WileyとSons、2008年7月に更新);Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology、Greene Pub.AssociatesとWiley-Interscience;Glover、DNA Cloning:A Practical Approach、vol.I&II(IRL Press、Oxford、1985);Anand、Techniques for the Analysis of Complex Genomes、(Academic Press、New York、1992);Transcription and Translation(B.Hames&S.Higgins、Eds.、1984);Perbal、A Practical Guide to Molecular Cloning(1984);HarlowとLane、Antibodies、(Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、1998);Current Protocols in Immunology Q.E.Coligan、A.M.Kruisbeek、D.H.Margulies、E.M.ShevachとW.Strober、eds.、1991);Annual Review of Immunology;およびAdvances in Immunologyのような定期刊行物専門書を参照する。
【0020】
定義
別に定義しない限り、本出願に用いられる全ての技術と科学用語はいずれも、当業者が通常に理解する意味と同じ意味を有する。本発明の目的のために、下記の用語を定義する。
【0021】
用語「約」は数値と共に使用されるとき、下限として記載数値より5%小さく上限として記載数値より5%大きい範囲における数値を含むことを意味する。
【0022】
用語「および/または」が2つまたは複数の選択可能オプションを接続するために用いられる時、選択可能オプションのうちのいずれか一項または選択可能オプションのいずれか2項または複数項を指すと理解すべきである。
【0023】
本出願に使用される場合、用語「包含する」または「含み」とは、前記要素、整数またはステップを含むが、他の要素、整数またはステップを排除しないことを意味する。本出願において、用語「包含する」または「含む」を用いる場合、特記しない限り、述べられた要素、整数またはステップからなる場合を含む必要がある。例えば、ある具体的な配列の抗体可変領域を「包含する」ことを言及する場合、当該配列からなる抗体可変領域を含むことを指す。
【0024】
本出願において、用語「抗原結合分子」は、標的抗原と結合する抗原結合領域または抗原結合部分の分子、例えばタンパク質またはポリペプチドを包含する。本発明において、標的抗原がB細胞成熟抗原(BCMA)である場合、BCMAと結合する抗原結合分子がBCMA結合分子とも呼ばれる。抗原結合分子は、例えば、抗体およびその抗原結合断片、単鎖scFv抗体、scFv-Fc抗体のようなscFvに基づいて構成した様々な融合物と複合体を含む。当業者が明瞭になるように、抗体の抗原結合部分は、通常、「相補性決定領域」または「CDR」に由来するアミノ酸残基を包含する。一部の場合には、上下文によって、「BCMA結合分子」が、「本発明の抗体」または「抗BCMA抗体」と切り替えて使用することができる。
【0025】
本出願において、用語「抗体」は、少なくとも軽鎖または重鎖免疫グロブリン可変領域を含むポリペプチドを指し、前記免疫グロブリン可変領域は、抗原を特異的に識別して結合する。当該用語は、様々な抗体構造を含むが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単鎖抗体または複数重鎖抗体、単特異性または多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、完全ヒト化抗体またはキメラ抗体またはヒト化抗体、全長抗体と抗体断片を含むが、これらに限定されず、所望の抗原結合活性を表現すればよい。
【0026】
当業者は、「全抗体」(本出願では、「全長抗体」、「完全抗体」、「完全な抗体」と切り替えて使用することができる)が少なくとも2本の重鎖(H)と2本の軽鎖(L)を包含することが明らかにする。各重鎖は、重鎖可変領域(本出願ではVHと略される)と重鎖定常領域からなる。重鎖定常領域は、3つのドメインCH1、CH2およびCH3からなる。各軽鎖は軽鎖可変領域(本出願ではVLと略される)と軽鎖定常領域からなる。軽鎖定常領域は、1つのドメインCLからなる。可変領域は、抗体の重鎖または軽鎖における抗体とその抗原の結合に参与するドメインである。定常領域は、抗体と抗原の結合に直接関与しないが、複数種のエフェクター機能を示している。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて2種類のタイプ(kappa(κ)とlambda(λ)と称される)における1種類に入れることができる。抗体の重鎖は、その重鎖定常領域のアミノ酸配列に基づいて主にIgA、IgD、IgE、IgGとIgMという5種類の異なるタイプに分けることができ、これらのタイプにおける数種類は更に、IgG1、IgG2、IgG3とIgG4、IgA1およびIgA2というサブタイプに分けることができる。異なる抗体タイプに対応する重鎖定常領域はそれぞれ、α、δ、ε、γおよびμと称される。例えばFundamental Immunology、Ch.7(Paul、W.編集、第二版、Raven Press、N.Y.(1989))(全ての目的で全体を参考としてここに引用される)。
【0027】
用語「抗体断片」は、完全な抗体でない分子を指し、完全な抗体における当該完全な抗体に結合される抗原を結合するための部分を包含する。組換えDNA技術、または酵素、または完全な抗体を化学的開裂することによって、抗原結合断片を製造することができる。抗原結合断片は、Fab、scFab、Fab’、F(ab’)、Fab’-SH、Fv、単鎖Fv、二重鎖抗体(diabody)、三重鎖抗体(triabody)、四重鎖抗体(tetrabody)、ミニ抗体(minibody)、単一ドメイン抗体(sdAb)および抗体断片から形成される多重特異性抗体を含むが、これらに限定されない。Fab断片は、VL、VH、CLとCH1ドメインからなる一価の断片であり、例えば、パパインで完全抗体を消化することによってFab断片を得ることができる。リンカーによってFabの軽鎖(L鎖)と重鎖(H鎖)を融合して単一なポリペプチド鎖、即ち単鎖Fab(scFab)(例えばUS20070274985A1を参照する)を構成することができる。その他、ペプシンがヒンジ領域のジスルフィド結合の下で完全抗体を消化することによってF(ab’)を生じることができ、それはFab’のダイマーであり、二価の抗体断片である。F(ab’)は、中性条件でヒンジ領域におけるジスルフィド結合を破壊することによって還元され、F(ab’)ダイマーからFab’モノマーに転換する。Fab’モノマーは、基本的に、ヒンジ領域を有するFab断片である。Fv断片は、抗体のシングルアームであるVLとVHドメインからなる。また、組換え法を用いて、Fv断片を独立してコーディングする2つドメインであるVLとVHの遺伝子を、接続ペプチド(リンカー)をコーディングする核酸配列によって接続し、組換えして発現して単鎖Fvを形成し、当該単一のタンパク鎖でVH領域とVL領域をペアリングさせて抗原結合部位を提供する。二重鎖抗体は、2つの抗原結合部位を有する抗体断片であり、当該断片は同一のポリペプチド鎖にショートリンカーによって接続されるVLとVHを包含する。二重鎖抗体において、リンカーが短く過ぎるため、同一の鎖におけるVHとVLとの2つのドメインの間にペアリングができず、他鎖の相補性ドメインとペアリングさせられて2つの抗原結合部位を生じる。二重鎖抗体は二価または二重特異性のものでもよい。二重鎖抗体の更に詳しい説明は、例えば、EP404、097;WO1993/01161;Hudson et al.、Nat.Med.9:129-134(2003);およびHollinger et al.、PNAS USA 90:6444-6448(1993)を参照することができる。三重鎖抗体と四重鎖抗体とミニ抗体は、Hudson et al.、Nat.Med.9:129-134(2003)と、邵栄光ら(編集)、抗体薬物研究と応用、人民衛生出版社(2013)に説明される。単一ドメイン抗体(sdAb)は通常、標的抗原を識別するようにもう一つの可変領域と互いに作用する必要がなく、1つの可変ドメイン(例えば、重鎖可変ドメイン(VH)または軽鎖可変ドメイン(VL)、ラクダ科の重鎖抗体に由来する重鎖可変ドメイン、魚類のIgNARに由来するVH様単一ドメイン(v-NAR))のみで抗原結合を与えることができる抗体を指す。(抗体断片に関する更に詳しい説明は、基礎免疫学(Fundamental Immunology)、W.E.Paul編集、Raven Press、N.Y.(1993)を参照することもできる。
【0028】
本出願に用いられる用語「モノクローナル抗体」は、基本的に同種の抗体群体から得られる抗体を表示し、即、通常の極少量で存在する変異可能な抗体(例えば、天然突然変異またはモノクローナル抗体の制品の製造中に発生する変異体抗体を含有する)を除き、前記群体を構成する各抗体は同じおよび/または同じエピトープと結合するものである。モノクローナル抗体は、数種類の技術によって製造でき、前記技術はハイブリドーマ方法と、組換えDNA方法と、酵母ディスプレイ方法と、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の全体または一部を包含する遺伝子導入動物を用いる方法を含むが、これらに限定されない。
【0029】
用語「ヒト抗体」または「完全ヒト化抗体」は本出願において切り替えて使用することができ、そのうちのフレームワーク領域とCDR領域の2つがいずれもヒト生殖系の免疫グロブリン配列に由来する可変領域を含む抗体を指す。そして、抗体に定常領域が含まれば、定常領域も、ヒト生殖系の免疫グロブリン配列に由来する。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖系の免疫グロブリン配列によってコーディングされないアミノ酸(例えば、インビトロでランダムにまたはスポットにおける特異的な変異誘発またはインビボの体細胞の突然変異による突然変異)を含むことができ、例えば、CDR、特にCDR3にある。しかし、本出願に用いられるように、用語「ヒト抗体」は、そのうちのCDR配列がその他の哺乳動物種(例えば、マウス)の生殖系に由来してヒトフレームワーク配列に移植される抗体を含むことを意図しない。
【0030】
本出願に用いられるように、用語「組換えヒト抗体」は、組換え方式によって製造、発現、発生または単離される全てのヒト抗体を含み、例えば、(a)ヒト免疫グロブリン遺伝子で遺伝子導入または染色体導入する動物(例えば、マウス)またはそれによって製造されたハイブリドーマから単離された抗体と、(b)ヒト抗体を発現する宿主細胞に自己転換し、例えば、遺伝子導入腫から単離された抗体と、(c)酵母ディスプレイライブラリーのような組換えヒト抗体ライブラリー、組合せのヒト抗体ライブラリーから単離された抗体と、(d)ヒト免疫グロブリン遺伝子をその他DNA配列に接続することを含む任意のその他の方式によって製造、発現、発生または単離された抗体とを含む。これらの組換えヒト抗体は、フレームワーク領域とCDR領域のヒト生殖系の免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する。しかし、一部の実施形態において、組換えヒト抗体をインビトロで変異誘発することができ(または、ヒトIg配列を用いて動物に遺伝子導入する時、体内における体細胞の変異誘発である)、それによって得られる組換え抗体のVHとVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系のVHとVL配列に由来してそれに関連するにも関わらず、体内のヒト抗体生殖系のライブラリーに天然に存在しない。
【0031】
用語「キメラ抗体」は、可変領域配列が1つの生物種に由来して、定常領域配列が別の生物種に由来する抗体、例えば、可変領域配列がマウスの抗体に由来し、定常領域配列がヒト抗体に由来する抗体を指す。
【0032】
用語「ヒト化抗体」は、他の哺乳動物種、例えばマウスの生殖系に由来するCDR配列をヒトフレームワーク配列に接続する抗体を指す。ヒトフレームワーク配列に余分なフレームワーク領域修飾を行うことができる。
【0033】
「単離された」抗体は、既にその天然環境における成分と単離された抗体である。一部の実施形態において、抗体を95%または99%より高い純度までに精製して、前記純度は、例えば電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)またはクロマトグラフィー(例えば、イオン交換または逆相HPLC)によって定められる。抗体の純度を評価する方法の概述について、例えば、Flatman、S. et al.、J.Chrom.B 848(2007)79-87を参照する。
【0034】
エピトープは、抗体の結合する抗原領域である。エピトープは、連続的なアミノ酸から形成されまたはタンパク質の3級フォールディングによって並列した非連続的なアミノ酸から形成される。
【0035】
用語「BCMA」と「B-細胞成熟抗原」が切り替えて使用することができ、ヒトBCMAの変異体、アイソタイプ、生物種ホモログおよびBCMA(例えばヒトBCMA)と少なくとも1つの同じエピトープを有する類似物を含む。図7は、例示的なヒトBCMA配列(配列番号74)を示す。BCMAタンパク質は、細胞外ドメインおよび細胞外ドメインの断片のようなBCMAの断片を含むこともでき、例えば、本発明の如何なる抗体と結合する能力を保持する断片である。
【0036】
用語「特異的に結合する」は、抗体が抗原と選択的にまたは優先して結合することを表示する。生物光干渉測量において、抗体が約5×10-7Mまたはさらに低く、約1×10-7Mまたはさらに低く、約5×10-8Mまたはさらに低く、約1×10-8Mまたはさらに低く、約5×10-9Mまたはさらに低いKで、ヒトBCMAと結合すれば、当該抗体は「ヒトBCMAと特異的に結合する」抗体である。
【0037】
「親和性」または「結合親和性」は、結合組のメンバーの間の相互作用を反映する固有結合の親和性を指す。分子Xのその配偶子Yに対する親和性は、通常、平衡解離定数(K)によって示され、平衡解離定数は、解離速度定数と結合速度定数(それぞれkdisとkonである)との比値である。親和性は本分野の既知の常用方法で測定される。親和性を測定するための具体的な方法は、本出願におけるForteBio動力学結合測定法である。
【0038】
BCMAのような抗原と結合する参照抗体「競合結合する抗体」は、競合検定に参照抗体と抗原(例えば、BCMA)との結合を50%またはさらに多くに阻害する抗体を指し、逆に、競合検定に参照抗体も当該抗体と抗原(例えば、BCMA)との結合を50%またはさらに多くに阻害する。例示的な競合検定は「Antibodies」、Harlow and Lane(Cold Spring Harbor Press、Cold Spring Harbor、NY)に説明される。競合結合する抗体は、参照抗体と同じエピトープ領域、例えば、同じエピトープ、隣接するエピトープまたは重複するエピトープと結合することができる。
【0039】
本出願における用語「Fc領域」は、少なくとも一部の定常領域を含有する免疫グロブリン重鎖のC-末端領域を定義するのに用いられる。当該用語は、天然配列Fc-領域と変異体Fc-領域を含む。一実施形態において、ヒトIgG重鎖Fc-領域は重鎖のCys226からまたはPro230からカルボキシル末端に延伸する。しかし、Fc-領域のC-末端のリシン(Lys447)が存在してもよく、存在しなくてもよい。本出願では特記しない限り、Fc-領域または定常領域におけるアミノ酸残基の番号付けは、EU番号付けシステムによるものであり、EU索引とも呼ばれる。例えば、Kabat、E.A. et al.、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MD(1991)、NIH Publication 91-3242に記載される。
【0040】
抗体に関連する用語「変異体」は、本出願において、既に少なくとも1個、例えば、1~30、1~20または1~10個、例えば、1または2または3または4または5個のアミノ酸の置換、欠如および/または挿入によってアミノ酸変異が生じた目標抗体領域(例えば、重鎖可変領域または軽鎖可変領域、または重鎖CDR領域または軽鎖CDR領域)を含む抗体を指し、ここで、変異体は基本的に変化前の抗体分子の生物学的特性を保持する。一態様において、本発明は、本出願に言及される如何なる抗体の変異体を含む。一実施形態において、抗体の変異体は変化前の抗体の少なくとも60%、70%、80%、90%、または100%の生物学的活性(例えば、抗原結合能力)を保持する。一部の実施形態において、前記変化は、抗体の変異体が抗原に対する結合を失うことを引き起こさないが、高くなる抗原親和性と異なるエフェクター機能などのような性質を任意に与えることができる。理解すべきことは、抗体の重鎖可変領域または軽鎖可変領域、または各CDR領域は単独に変化しまたは組み合わせて変化することができる。一部の実施形態において、1個または複数個または全ての3個の重鎖CDRにおけるアミノ酸変異は1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個を超えない。一部の実施形態において、1個または複数個または全ての3個の軽鎖CDRにおけるアミノ酸変異は1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個を超えない。一部の実施形態において、1個または複数個または全ての6個のCDRにおけるアミノ酸変異は1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個を超えない。好ましくは、前記アミノ酸変異はアミノ酸置換であり、保存的な置換が好ましい。一部の実施形態において、抗体の変異体と親抗体は目標抗体配列領域に少なくとも80%、85%、90%または95%または99%または更に高いアミノ酸同一性を有する。例えば、一実施形態において、本発明に係る抗体は、表1に示されるいずれかの抗体と比べ、重鎖可変領域に、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%または更に高い配列同一性を有する。もう一つの実施形態において、本発明に係る抗体は、表1に示されるいずれかの抗体と比べ、軽鎖可変領域に、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%または更に高い配列同一性を有する。もう一つの実施形態において、本発明に係る抗体は、表1に示される何れかの抗体と比べ、重鎖可変領域と軽鎖可変領域に、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%または更に高い配列同一性を有する。
【0041】
本出願において、「配列同一性」は、比較ウィンドウでヌクレオチドまたはアミノ酸を一つずつ比較してその配列が同じであることの割合を指す。以下の方式によって「配列同一性パーセント」を計算することができ、2本の最適に照合する配列を比較ウィンドウで比較して、マーチング位置の数を得るように2本の配列における同じ核酸塩基(例えば、A、T、C、G、I)または同じアミノ酸残基(例えば、Ala、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、CysとMet)の存在する位置の数を確定して、マーチング位置の数を比較ウィンドウにおける総位置数(即ち、ウィンドウの大きさ)で割り、その結果を100に乗じて、配列同一性パーセントを生成する。配列同一性パーセントを確定するための最適な照合は、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアのような公開されているパソコンソフトウェアを使用するように本分野に既知の様々な方式に従って実現することができる。当業者は、比較している全長配列範囲内または目標配列領域内の最大の照合に必要とする如何なるアルゴリズムを含む配列を照合するための適切なパラメータを確定することができる。
【0042】
本発明において、抗体配列にとって、アミノ酸配列同一性パーセントは、候補抗体の配列を参照抗体の配列と最適に照合した後、好ましい案にKabat番号付け規則に従って最適な照合を行ってから定められる。照合後、目標抗体領域(例えば、重鎖または軽鎖の可変領域全体、またはその一部、例えば、1つまたは複数のCDR領域)を参照抗体の同じ領域と比較する。目標抗体領域と参照抗体領域との間の配列同一性パーセントは、目標抗体領域と参照抗体領域の両者のうちに同じアミノ酸で占められる位置の数を2つの領域の照合位置総数(ブランクを記入しない)で割って100を乗じて得られるパーセントである。本出願において、目標抗体領域を指定しない場合、参照抗体配列の全長で照合することに適用される。一部の実施形態において、抗体にとって、配列同一性は重鎖可変領域全体および/または軽鎖可変領域全体に分布することができ、または配列パーセント同一性はフレームワーク領域のみに限定され、CDR領域に対応している配列は100%同じであるように保持する。
【0043】
A.本発明におけるBCMA結合分子と組成物
I.本発明における抗BCMA抗体
本発明の一態様において、高標的特異性と高親和性でBCMA(特に、膜結合性のBCMA)と結合する抗体、特に単鎖抗体(例えば、単鎖scFv抗体)を提供する。
【0044】
本発明に係る抗体は、以下の1つまたは複数の特性を有する。
(i)高親和性で、例えば、100nM未満、例えば50nM未満、例えば5~30nM、好ましくは10nM未満のKD値で、BCMA(例えば、ヒトBCMA)と結合する;
(ii)高親和性で、例えば、100nM未満、例えば50nM未満、例えば1~40nM、好ましくは20nM未満、より好ましくは10未満または5nMのEC50値で、細胞の表面に発現するBCMA(例えば、ヒトBCMA)と結合する;
(iii)BCMAにおける、特にBCMAの細胞外領域ECDにおけるエピトープと特異的に結合(例えば、表1に示されるいずれか一つの抗体と同じまたは類似するエピトープを識別する)する;
(iv)表1に示されるいずれか一つの抗体と同じまたは類似する結合親和性および/または特異性を示す;
(v)本出願に記載の抗体分子、例えば、表1に示されるいずれか一つの抗体分子とBCMAとの結合を抑制(例えば、競争的に抑制)する;
(vi)表1に示されるいずれか一つの抗体と同じまたは重複するエピトープと結合する;
(vii)表1に示されるいずれか一つの抗体とBCMAを競合結合しおよび/またはBCMAにおける同じエピトープと結合する;
(viii)ヒトBCMAと結合してサルBCMAと交差反応する;
(ix)本出願に記載の抗体分子、例えば、表1に示されるいずれか一つの抗体分子の1つまたは複数の生物学的特性を有する;
(x)本出願に記載の抗体分子、例えば、表1に示されるいずれか一つの抗体の1つまたは複数の薬物動態学的特性を有する;
(xi)BCMAの1つまたは複数の活性を抑制することによって、例えば、BCMAを発現するB細胞または形質細胞の数量を減少することと、前記細胞の存活または増殖を抑制することとの1つまたは複数を引き起こす;
(xii)基本的に、BAFF-RまたはTACIと結合しない;
(xiii)BCMAと、そのリガンド、例えばBAFFまたはAPRILまたは2つとの結合を抑制または減少する。
【0045】
一部の実施形態において、本発明の抗BCMA抗体分子は高親和性で、例えば、下記解離平衡定数(K)で、ヒトBCMA(例えば配列番号74のポリペプチド)と結合し、前記Kは約100nM未満であり、約80nM、70nM、60nMまたは50nM以下であり、更に好ましくは、約40nM、30nMまたは20nM以下であり、更に好ましくは、約10nM、9nM、8nM、7nM、6nM、5nM、4nM、3nMまたは2nM以下であり、例えば、光干渉による生体測定法(例えば、Fortebio親和測量法)によって測定する。
【0046】
一部の実施形態において、本発明の抗BCMA抗体分子とヒトBCMA(例えば配列番号74のポリペプチド)との結合の解離速度定数(Kdis)は、3×10-2、1.5×10-2、5×10-3または3×10-3-1未満であり、例えば、約1.46×10-3-1である。一部の実施形態において、抗BCMA抗体分子のBCMAとの結合の結合速度定数(Kon)は1×10、5×10、1×10、5×10または8×10-1-1より大きく、例えば、約7.29×10-1-1のKでBCMAと結合する。
【0047】
一部の実施形態において、本発明の抗BCMA抗体分子は高親和性でBCMAを発現する細胞と結合し、好ましくは、細胞の表面にヒトBCMAを発現する多発性骨髄腫細胞系(例えば、NCI-H929)であり、好ましくは、フローサイトメトリー(例えば、FACS)で測定され、前記抗体と細胞の結合するEC50値は約200nM、150nMまたは100nM未満であり、好ましくは、約80nM、70nM、60nMまたは50nM以下であり、更好ましくは、約40nM、30nMまたは20nM以下であり、更好ましくは、約10nM、9nM、8nM、7nM、6nM、5nM、4nM、3nMまたは2nM以下である。
【0048】
一実施形態において、抗体分子は、配列番号74のアミノ酸配列を含むヒトBCMAと結合する。一部の実施形態において、抗体分子はBCMAに結合し、好ましくはBCMAの細胞外領域におけるエピトープに結合する。
【0049】
一部の実施形態において、抗体分子は全長抗体である。他の一部の実施形態において、抗体分子は抗体断片である。例えば、本発明に係る抗体分子は、Fab、scFab、Fab’、F(ab’)、Fab’-SH、Fv、単鎖scFv抗体、二重鎖抗体(diabody)、三重鎖抗体、四重鎖抗体、ミニ抗体、または単一ドメイン抗体(sdAb)を含んでもよくまたはそれらであることができる。好ましい一実施形態において、本発明の抗体分子は、単鎖scFv抗体である。好ましい一実施形態において、本発明の抗体分子は、scFvおよびそれに接続するFc領域を含む。好ましい一実施形態において、本発明の抗体分子は、完全ヒト化のものである。
【0050】
抗体の可変領域
「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体の重鎖または軽鎖における抗体とその抗原との結合に参与するドメインである。重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)は、更に超可変領域(HVR、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれる)、その間に挿入されるより保存的な領域(即ち、フレームワーク領域(FR))に分けられる。各VHとVLは3個のCDRと4個のFRからなり、アミノ基末端からカルボキシル末端まで、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順に配列される。一部の状況において、単独のVHまたはVLドメインは抗原-結合特異性を十分に与える。その他、特定した抗原と結合する抗体は、前記抗原と結合する抗体に由来するVHまたはVLドメインを使用して相補VLまたはVHドメインライブラリーを選別して分離する(例えば、Portolano、S. et al.、J.Immunol.150(1993)880-887、Clackson、T. et al.、Nature 352(1991)624-628を参照する)。本出願において、「VH」または「VHドメイン」は、全長抗体、Fv、scFv、dsFv、Fab、scFabまたは本出願に開示されるその他の抗体断片の重鎖可変領域VHを含む。本出願において、「VL」または「VLドメイン」は、全長抗体、Fv、scFv、dsFv、Fab、scFabは本出願に開示されるその他の抗体断片の軽鎖可変領域VLを含む。
【0051】
一実施形態において、本発明の抗BCMA抗体分子は、(i)表1に示されるいずれか1つの抗体の抗原結合領域(例えば、重鎖可変領域と軽鎖可変領域対)と同じである抗原結合領域と、または(ii)アミノ酸配列では(i)の抗原結合領域と、例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%または更に高い同一性を有する抗原結合領域とを含む。
【0052】
もう一つの実施形態において、本発明の抗BCMA抗体分子は、(i)表1に示されるいずれか1つの抗体の重鎖可変領域と同じである重鎖可変領域と、または(ii)アミノ酸配列に(i)の重鎖可変領域と、例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%または更に高い同一性を有する重鎖可変領域と、または(iii)(i)の重鎖可変領域の変異体とを含み、前記変異体は少なくとも1個、かつ、30、20または10個を超えないアミノ酸変異(好ましくはアミノ酸置換であり、好ましくは保存的な置換である)を含み、かつ、好ましくは、前記変異体は3つの重鎖相補性決定領域(CDR)において合計10個を超えなく、好ましくは5~0個のアミノ酸変異(好ましくはアミノ酸置換である)を含む。
【0053】
もう一つの実施形態において、本発明の抗BCMA抗体分子は、(i)表1に示されるいずれか一つの抗体の軽鎖可変領域と同じである軽鎖可変領域と、または(ii)アミノ酸配列に(i)の軽鎖可変領域と、例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%または更に高い同一性を有する軽鎖可変領域と、または(iii)(i)の軽鎖可変領域の変異体とを含み、前記変異体は少なくとも1個、かつ、30、20または10個を超えないアミノ酸変異(好ましくはアミノ酸置換であり、好ましくは保存的な置換である)を含み、かつ、好ましくは、前記変異体が3つの軽鎖相補性決定領域(CDR)において合計10個を超えなく、好ましくは5~0個のアミノ酸変異(好ましくはアミノ酸置換である)を含む。
【0054】
もう一つの実施形態において、本発明の抗BCMA抗体分子は、重鎖可変領域と軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域は、
(i)表1に示されるいずれか一つの抗体の重鎖可変領域と同じである重鎖可変領域と、または
(ii)アミノ酸配列に(i)の重鎖可変領域と、例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%または更に高い同一性を有する重鎖可変領域と、または
(iii)(i)の重鎖可変領域の変異体とから由来し、前記変異体は少なくとも1個、かつ、30、20または10個を超えないアミノ酸変異(好ましくはアミノ酸置換であり、好ましくは保存的な置換である)を含み、かつ、好ましくは、前記変異体が3つの重鎖相補性決定領域(CDR)において合計10個を超えなく、好ましくは5~0個のアミノ酸変異(好ましくはアミノ酸置換である)を含む。
【0055】
かつ、前記軽鎖可変領域は、
(i)表1に示されるいずれか一つの抗体の軽鎖可変領域と同じである軽鎖可変領域と、または
(ii)アミノ酸配列に(i)の軽鎖可変領域と、例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%または更に高い同一性を有する軽鎖可変領域と、または
(iii)(i)の軽鎖可変領域の変異体とから由来し、前記変異体は少なくとも1個、かつ、30、20または10個を超えないアミノ酸変異(好ましくはアミノ酸置換であり、好ましくは保存的な置換である)を含み、かつ、好ましくは、前記変異体が3つの軽鎖相補性決定領域(CDR)において合計10個を超えなく、好ましくは5~0個のアミノ酸変異(好ましくはアミノ酸置換である)を含む。
【0056】
一部の実施形態において、本発明は、表1に示されるいずれか一つの抗体の重鎖可変領域と軽鎖可変領域対のアミノ酸配列を含む抗BCMA抗体またはその変異体を提供する。一好ましい実施形態において、前記抗体は、配列番号4/31、5/41、5/42、10/46、16/50、17/58、23/64、27/59、27/71と27/72から選択される選択されるアミノ酸配列対を含む。一好ましい実施形態において、前記変異体は、VHおよび/またはVLアミノ酸配列に、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%または更に高い同一性を有し、またはVHおよび/またはVLアミノ酸配列に、少なくとも1個、かつ、30、20または10個を超えないアミノ酸変異(好ましくはアミノ酸置換であり、好ましくは保存的な置換である)を含む。
【0057】
一部の実施形態において、本発明は、重鎖可変領域VHと軽鎖可変領域VLを含む抗BCMA抗体を提供し、前記VHは、配列番号4、5と6から選択される選択されるアミノ酸配列を含み、かつ、前記VLは配列番号31、41、42と43から選択される選択されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、配列番号6のアミノ酸配列において、Xは如何なるアミノ酸を表し、好ましくは、配列番号4または5の対応する位置にあるアミノ酸残基またはその保存的な置換残基を表す。一部の実施形態において、配列番号43のアミノ酸配列において、Xは如何なるアミノ酸を表し、好ましくは、配列番号41または42の対応する位置にあるアミノ酸残基またはその保存的な置換残基を表す。
【0058】
一部の実施形態において、本発明は、重鎖可変領域VHと軽鎖可変領域VLを含む抗BCMA抗体を提供し、前記VHは配列番号4のアミノ酸配列を含み、かつ前記VLは配列番号31のアミノ酸配列を含む。本発明は当該抗体の変異体、例えば、VHおよび/またはVLに少なくとも95~99%の同一性を有し、または10個を超えないアミノ酸変異を含む変異体も提供する。
【0059】
一部の実施形態において、本発明の抗BCMA抗体は重鎖可変領域VHと軽鎖可変領域VLを含み、前記VHは配列番号5のアミノ酸配列を含み、かつ前記VLは配列番号41と42から選択される選択されるアミノ酸配列を含む。本発明は当該抗体の変異体、例えば、VHおよび/またはVLに少なくとも95~99%の同一性を有し、または10個を超えないアミノ酸変異を含む変異体も提供する。
【0060】
一部の実施形態において、本発明は、重鎖可変領域VHと軽鎖可変領域VLを含む抗BCMA抗体を提供し、前記VHは配列番号10のアミノ酸配列を含み、かつ前記VLは配列番号46のアミノ酸配列を含む。本発明は当該抗体の変異体、例えば、VHおよび/またはVLに少なくとも95~99%の同一性を有し、または10個を超えないアミノ酸変異を含む変異体も提供する。
【0061】
一部の実施形態において、本発明の抗BCMA抗体は重鎖可変領域VHと軽鎖可変領域VLを含み、前記VHは配列番号16、17または19から選択される選択されるアミノ酸配列を含み、かつ前記VLは配列番号50と58から選択される選択されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、配列番号19のアミノ酸配列において、Xは如何なるアミノ酸を表し、好ましくは、配列番号16または17の対応する位置にあるアミノ酸残基またはその保存的な置換残基を表す。
【0062】
一部の実施形態において、本発明は、重鎖可変領域VHと軽鎖可変領域VLを含む抗BCMA抗体を提供し、前記VHは配列番号16のアミノ酸配列を含み、かつ前記VLは配列番号50のアミノ酸配列を含む。本発明は当該抗体の変異体、例えば、VHおよび/またはVLに少なくとも95~99%の同一性を有し、または10個を超えないアミノ酸変異を含む変異体も提供する。
【0063】
一部の実施形態において、本発明は、重鎖可変領域VHと軽鎖可変領域VLを含む抗BCMA抗体を提供し、前記VHは配列番号17のアミノ酸配列を含み、かつ前記VLは配列番号58のアミノ酸配列を含む。本発明は当該抗体の変異体、例えば、VHおよび/またはVLに少なくとも95~99%の同一性を有し、または10個を超えないアミノ酸変異を含む変異体も提供する。
【0064】
一部の実施形態において、本発明は、重鎖可変領域VHと軽鎖可変領域VLを含む抗BCMA抗体を提供し、前記VHは配列番号23のアミノ酸配列を含み、かつ前記VLは配列番号64のアミノ酸配列を含む。本発明は当該抗体の変異体、例えば、VHおよび/またはVLに少なくとも95~99%の同一性を有し、または10個を超えないアミノ酸変異を含む変異体も提供する。
【0065】
一部の実施形態において、本発明は、重鎖可変領域VHと軽鎖可変領域VLを含む抗BCMA抗体を提供し、前記VHは配列番号27のアミノ酸配列を含み、かつ前記VLは配列番号59、71、72と73から選択される選択されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、配列番号73のアミノ酸配列において、Xは如何なるアミノ酸を表し、好ましくは、配列番号71または72の対応する位置にあるアミノ酸残基またはその保存的な置換残基を表す。
【0066】
一部の実施形態において、本発明は、重鎖可変領域VHと軽鎖可変領域VLを含む抗BCMA抗体を提供し、前記VHは配列番号27のアミノ酸配列を含み、かつ前記VLは配列番号59のアミノ酸配列を含む。本発明は当該抗体の変異体、例えば、VHおよび/またはVLに少なくとも95~99%の同一性を有し、または10個を超えないアミノ酸変異を含む変異体も提供する。
【0067】
一部の実施形態において、本発明は、重鎖可変領域VHと軽鎖可変領域VLを含む抗BCMA抗体を提供し、前記VHは配列番号27のアミノ酸配列を含み、かつ前記VLは配列番号71または72のアミノ酸配列を含む。本発明は当該抗体の変異体、例えば、VHおよび/またはVLに少なくとも95~99%の同一性を有し、または10個を超えないアミノ酸変異を含む変異体も提供する。
【0068】
上記のいずれか1つの実施形態において、好ましくは、前記参考重鎖可変領域のアミノ酸配列に対して、本発明の抗体の重鎖可変領域は1つまたは複数のCDR(好ましくは全ての3つのCDRである)領域に10個を超えなく、好ましくは5個を超えない(例えば、3、2、1または0個)アミノ酸変異(好ましくはアミノ酸置換であり、好ましくは保存的な置換である)を含む。
【0069】
上記のいずれか1つの実施形態において、好ましくは、前記参考軽鎖可変領域アミノ酸配列に対して、本発明の抗体の軽鎖可変領域VLは1つまたは複数のCDR(好ましくは全ての3つのCDRである)領域に10個を超えなく、好ましくは5個を超えない(例えば、3、2、1または0個)アミノ酸変異(好ましくはアミノ酸置換であり、好ましくは保存的な置換である)を含む。
【0070】
抗体のCDR領域
「相補性決定領域」または「CDR領域」または「CDR」(本出願において超可変領域「HVR」と切り替えて使用する)は、抗体可変領域において主に抗原エピトープと結合することを担当するアミノ酸領域である。重鎖と軽鎖のCDRは通常、CDR1、CDR2とCDR3と呼ばれ、N-末端から順に番号付ける。抗体の重鎖可変ドメイン内に位置するCDRはHCDR1、HCDR2、HCDR3と呼ばれ、抗体の軽鎖可変ドメイン内に位置するCDRはLCDR1、LCDR2、LCDR3と呼ばれる。
【0071】
既定のVHまたはVLアミノ酸配列にそのCDR配列を定めるための複数の方案が本分野において周知される。例えば、Kabat相補性決定領域(CDR)は、配列変異性に基づいて定められるものであるとともに、最もよく用いられるものである(Kabat et al.、Sequences of Proteins of Immunological Interest、5th Ed.Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1991))。Chothiaは構造リングの位置を指す(ChothiaとLesk、J.Mol.Biol.196:901-917(1987))。AbM HVRは、Kabat HVRとChothia構造リングとの間の折衷であり、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアによって使用される。「接触性」(Contact)HVRが、取得可能な複雑な結晶構造の分析に基づいたものである。異なるCDR確定案によって、これらのHVRにおける各HVR/CDRの残基は以下のとおりである。
【0072】
【表1】
【0073】
HVRは、Kabat番号付けシステムに基づいて以下のようなKabat残基位置に位置付けるHVR配列である。
【0074】
VLにおける位置24-36または24-34(LCDR1)、位置46-56または50-56(LCDR2)と位置89-97または89-96位置(LCDR3)と、VHにおける位置26-35または27-35B(HCDR1)、位置50-65または49-65(HCDR2)と、位置93-102、94-102または95-102(HCDR3)である。
【0075】
一実施形態において、本発明の抗体のHVRは、Kabat番号付けシステムに基づいて以下のようなKabat残基位置に位置付けるHVR配列である。
【0076】
VLにおける位置24-34(LCDR1)、位置50-56(LCDR2)と、位置89-97(LCDR3)およびVHにおける位置27-35B(HCDR1)、位置50-65(HCDR2)と、位置93-102(HCDR3)である。
【0077】
HVRは、参考CDR配列(例えば、本発明の例示的なCDRのいずれか1つ)と同じKabat番号付け位置を有することに基づいて定められることができる。
【0078】
特記しない限り、本発明において、用語「CDR」または「CDR配列」または「HVR」または「HVR配列」は上記のいずれか一つの方式で定められるHVRまたはCDR配列を含む。
【0079】
特記しない限り、本発明において、抗体可変領域における残基位置(重鎖可変領域残基と軽鎖可変領域残基を含む)を言及する場合、Kabat番号付けシステム(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest、5th Ed.Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1991))に基づいた番号付け位置を指す。
【0080】
一好ましい実施形態において、本発明の抗体のHCDR1はAbM案に基づいて定められたCDR配列であるが、残りのCDRはKabat案に基づいて定められるCDR配列である。もう一つの好ましい実施形態において、本発明のCDR配列は表2に示されるようである。
【0081】
異なる特異性(即ち、異なる抗原に対する異なる結合部位)を有する抗体は、異なるCDRを有する。しかし、抗体と抗体との間にあるCDRが異なるにもかかわらず、CDRには限られた数のアミノ酸位置のみを抗原との結合に直接参与する。Kabat、Chothia、AbMとContact方法のうちの少なくとも2つを使用することにより、最小の重複領域を確定することができ、それによって抗原と結合するための「最小結合単位」を提供する。最小結合単位は、CDRの1つのサブ部分であることができる。当業者が明らかにしたように、抗体の構造とタンパク質のフォールディングによって、CDR配列の残り部分の残基を確定することができる。従って、本発明は、本出願に提供される如何なるCDRの変異体も考慮する。例えば、1つのCDRの変異体において、最小結合単位のアミノ酸残基はそのまま保持することができ、KabatまたはChothiaに基づいて定義された残りのCDR残基は保存的なアミノ酸残基で置換されることができる。
【0082】
一部の実施形態において、本発明に係る抗体は、表1に示されるいずれか1つの抗体に対応するCDRと同じである少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つのCDRまたはその変異体を含む。一部の実施形態において、本発明に係る抗体は、表1に示されるいずれか1つの抗体に対応する重鎖CDRと同じである少なくとも1つ、2つまたは3つのHCDRまたはその変異体を含む。一部の実施形態において、本発明に係る抗体は、表1に示されるいずれか1つの抗体に対応する軽鎖CDRと同じである少なくとも1つ、2つまたは3つのHCDRまたはその変異体を含む。本出願において、CDR変異体は、既に少なくとも1つ、例えば、1つまたは2つまたは3つのアミノ酸の置換、欠如および/または挿入によって修飾されるCDRであり、CDR変異体を含む抗原結合分子は基本的に未修飾のCDRの抗原結合分子の生物学的特性を保持し、例えば、少なくとも60%、70%、80%、90%または100%の生物学的活性(例えば抗原結合能力)を保持する。各CDRが単独で修飾されても組み合わせて修飾されてもよいことを理解できる。好ましくは、アミノ酸修飾はアミノ酸置換であり、特に保存的なアミノ酸置換であり、例えば、表Aに示される好ましい保存的なアミノ酸置換である。
【0083】
一部の実施形態において、本発明の抗体は、重鎖相補性決定領域3(HCDR3)を含む重鎖可変領域を含み、前記HCDR3は、
(i)表1に示されるいずれか一つの抗体の重鎖可変領域のHCDR3と同じであり、または、
(ii)(i)のHCDR3に対して、少なくとも一個、かつ、5個以下(好ましくは1~3個であり、またはより好ましくは1~2個である)のアミノ酸変異(好ましくは置換であり、より好ましくは保存的な置換である)を含む。
【0084】
一部の実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、重鎖可変領域と軽鎖可変領域を含み、かつ前記抗体の重鎖相補性決定領域3(HCDR3)と軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)は、
(i)表1に示されるいずれか一つの抗体の重鎖と軽鎖可変領域の配列のHCDR3およびLCDR3とは同じであり、または、
(ii)(i)のHCDR3とLCDR3に対して、合計で少なくとも一個、かつ、5個以下(好ましくは1~3個であり、より好ましくは1~2個である)のアミノ酸変異(好ましくは置換であり、より好ましくは保存的な置換である)を含む。
【0085】
一部の実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、重鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2とHCDR3は、
(i)表1に示されるいずれか一つの抗体の重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3とはそれぞれ同じであり、または、
(ii)(i)のHCDR1、HCDR2とHCDR3に対して、合計で少なくとも一個、かつ、10個以下を含み、好ましくは5個以下(好ましくは1、2または3個である)のアミノ酸変異(好ましくは置換、より好ましくは保存的な置換)を含み、かつ、好ましくはHCDR3領域におけるアミノ酸変異が3個以下(例えば、2、1または0個)である。
【0086】
一部の実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、重鎖可変領域と軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域は、重鎖相補性決定領域HCDR1、HCDR2とHCDR3を含み、かつ、前記軽鎖可変領域は、軽鎖相補性決定領域LCDR1、LCDR2とLCDR3を含み、前記HCDR1、HCDR2、HCDR3とLCDR3は、
(i)表1に示されるいずれか一つの抗体の重鎖と軽鎖可変領域のHCDR1、HCDR2、HCDR3およびLCDR3とはそれぞれ同じであり、または、
(ii)(i)のHCDR1、HCDR2、HCDR3とLCDR3に対して、合計で少なくとも一個、かつ、10個以下(好ましくは1~5個であり、好ましくは1、2または3個である)のアミノ酸変異(好ましくは置換であり、より好ましくは保存的な置換である)を含む。
【0087】
一部の実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、軽鎖可変領域を含み、前記軽鎖可変領域は、軽鎖相補性決定領域LCDR1、LCDR2とLCDR3を含み、前記LCDR1、LCDR2とLCDR3は、
(i)表1に示されるいずれか一つの抗体の軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3とはそれぞれ同じであり、または、
(ii)(i)のLCDR1、LCDR2とLCDR3に対して、合計で少なくとも一個、かつ、10個以下(好ましくは1~5個であり、好ましくは1、2または3個である)のアミノ酸変異(好ましくは置換であり、より好ましくは保存的な置換である)を含む。
【0088】
一部の実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、重鎖可変領域と軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域は、重鎖相補性決定領域HCDR1、HCDR2とHCDR3を含み、かつ前記軽鎖可変領域は、軽鎖相補性決定領域LCDR1、LCDR2とLCDR3を含み、前記LCDR1、LCDR2、LCDR3とHCDR3は、
(i)表1に示されるいずれか一つの抗体の軽鎖と重鎖可変領域のLCDR1、LCDR2、LCDR3およびHCDR3とはそれぞれ同じであり、または、
(ii)(i)のLCDR1、LCDR2、LCDR3とHCDR3に対して、合計で少なくとも一個、かつ、10個以下(好ましくは1~5個であり、好ましくは1、2または3個である)のアミノ酸変異(好ましくは置換であり、より好ましくは保存的な置換である)を含む。
【0089】
一部の実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、重鎖可変領域と軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域は、重鎖相補性決定領域HCDR1、HCDR2とHCDR3を含み、かつ前記軽鎖可変領域は、軽鎖相補性決定領域LCDR1、LCDR2とLCDR3を含み、前記抗体は、
(i)表1に示されるいずれか一つの抗体の重鎖と軽鎖可変領域の全ての6個CDR領域の配列を含み、または、
(ii)表1に示されるいずれか一つの抗体に対して、全ての6個CDR領域で10個以下、好ましくは5個以下(例えば、3、2、1または0個である)のアミノ酸変異(好ましくはアミノ酸置換、好ましくは保存的な置換)を含む。
【0090】
一実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、
(i)配列番号4または5に示される重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3配列、および、配列番号31、41または42に示される軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3配列、
(ii)配列番号10に示される重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3配列、および、配列番号46に示される軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3配列、
(iii)配列番号16または17に示される重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3配列、および、配列番号50または58に示される軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3配列、
(iv)配列番号23に示される重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3配列、および、配列番号64に示される軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3配列、または、
(v)配列番号27に示される重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3配列、および、配列番号59または71または72に示される軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3配列を含む。
【0091】
好ましい一実施形態において、本発明の抗体または抗原結合断片は、以下の重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)から選択される選択されるHCDR1、2と3配列とLCDR1、2と3配列を含む。
(i)配列番号4のVHと配列番号31のVL;
(ii)配列番号5のVHと配列番号41のVL;
(iii)配列番号5のVHと配列番号42のVL;
(iv)配列番号10のVHと配列番号46のVL;
(v)配列番号16のVHと配列番号50のVL;
(vi)配列番号17のVHと配列番号58のVL;
(vii)配列番号23のVHと配列番号64のVL;
(viii)配列番号27のVHと配列番号59のVL;
(ix)配列番号27のVHと配列番号71のVL;
(x)配列番号27のVHと配列番号72のVL。
【0092】
一部の実施形態において、本発明は、配列番号3、9、13、14、15、22と26のHCDR3と、当該HCDR3を含む抗体または抗原結合断片を提供する。
【0093】
一部の実施形態において、本発明は、(i)配列番号3のHCDR3、および、配列番号30、38、39と40から選択される選択されるLCDR3、または(ii)配列番号9のHCDR3、および、配列番号45のLCDR3、または(iii)配列番号13、14と15から選択されるHCDR3、および、配列番号49と55から選択されるLCDR3、または(iv)配列番号22のHCDR3と配列番号63のLCDR3、または(v)配列番号26のHCDR3、および、配列番号56、68、69と70から選択されるLCDR3から選択されるHCDR3とLCDR3配列の組み合せ、および当該組み合せを含む抗体または抗原結合断片を提供する。本発明は、前記CDR組み合せの変異体も提供し、例えば、前記CDRで、合計で少なくとも一個、かつ、20、10または5個以下のアミノ酸変異(好ましくはアミノ酸置換であり、好ましくは保存的な置換である)を含む変異体。本発明は、前記変異体を含む抗BCMA抗体または抗原結合断片も提供する。
【0094】
他の一部の実施形態において、本発明は、(i)配列番号1のHCDR1、配列番号2のHCDR2と配列番号3のHCDR3、(ii)配列番号7のHCDR1、配列番号8のHCDR2と配列番号9のHCDR3、(iii)配列番号11のHCDR1、配列番号12のHCDR2と配列番号13または14または15のHCDR3、(iv)配列番号20のHCDR1、配列番号21のHCDR2と配列番号22のHCDR3、(v)配列番号24のHCDR1、配列番号25のHCDR2と配列番号26のHCDR3から選択されるCDR配列の組み合せ、および、当該組み合せを含む抗体または抗原結合断片を提供する。一部の実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、配列番号11のHCDR1、配列番号12のHCDR2と配列番号13または14のHCDR3を含む。
【0095】
もう一つの実施形態において、本発明は、配列番号1/2/3、7/8/9、11/12/13、11/12/14、20/21/22、および、24/25/26というアミノ酸配列の組み合せから選択される重鎖CDR組み合せ(順番に従ってそれぞれHCDR1、HCDR2とHCDR3である)を提供する。本発明は、前記重鎖CDR組み合せの変異体も提供し、好ましい一実施形態において、前記変異体は、前記3つのCDR領域に、合計で少なくとも1個、かつ、20、10または5個以下のアミノ酸変異(好ましくはアミノ酸置換であり、好ましくは保存的な置換である)を含む。本発明は、前記重鎖CDR組み合せまたは前記変異体を含む抗BCMA抗体も提供する。
【0096】
一部の実施形態において、本発明は、(i)配列番号28のLCDR1、配列番号29のLCDR2と配列番号30のLCDR3、(ii)配列番号32または33または34のLCDR1、配列番号35または36または37のLCDR2と配列番号38または39または40のLCDR3、(iii)配列番号32のLCDR1、配列番号44のLCDR2と配列番号45のLCDR3、(iv)配列番号47のLCDR1、配列番号48のLCDR2と配列番号49のLCDR3、(v)配列番号51のLCDR1、配列番号54のLCDR2と配列番号55のLCDR3、(vi)配列番号61のLCDR1、配列番号62のLCDR2と配列番号63のLCDR3、(vii)配列番号52のLCDR1、配列番号62のLCDR2と配列番号56のLCDR3、(viii)配列番号65または66または67のLCDR1、配列番号62のLCDR2と配列番号68または69または70のLCDR3から選択されるCDR組み合せ、および、当該組み合せを含む抗体または抗原結合断片を提供する。
【0097】
もう一つの実施形態において、本発明は、配列番号28/29/30、32/35/38、33/36/39、32/44/45、47/48/49、51/54/55、61/62/63、52/62/56、65/62/68、および66/62/69というアミノ酸配列の組み合せから選択される軽鎖CDR組み合せ(順番に従ってそれぞれLCDR1、LCDR2とLCDR3である)を提供する。本発明は、前記軽鎖CDR組み合せの変異体も提供し、好ましい一実施形態において、前記変異体は、前記3つのCDR領域に、合計で、少なくとも1個、かつ、20、10または5個以下のアミノ酸変異(好ましくはアミノ酸置換であり、好ましくは保存的な置換である)を含む。本発明は、前記軽鎖CDR組み合せまたは前記変異体を含む抗BCMA抗体または抗原結合断片も提供する。
【0098】
一部の実施形態において、本発明は、(i)配列番号1のHCDR1、配列番号2のHCDR2と配列番号3のHCDR3、配列番号28のLCDR1、配列番号29のLCDR2と配列番号30のLCDR3、(ii)配列番号1のHCDR1、配列番号2のHCDR2と配列番号3のHCDR3、配列番号32または33または34のLCDR1、配列番号35または36または37のLCDR2と配列番号38または39または40のLCDR3、(iii)配列番号7のHCDR1、配列番号8のHCDR2と配列番号9のHCDR3、配列番号32のLCDR1、配列番号44のLCDR2と配列番号45のLCDR3、(iv)配列番号11のHCDR1、配列番号12のHCDR2と配列番号13または14または15のHCDR3、配列番号47のLCDR1、配列番号48のLCDR2と配列番号49のLCDR3、(v)配列番号11のHCDR1、配列番号12のHCDR2と配列番号13または14または15のHCDR3、配列番号51のLCDR1、配列番号54のLCDR2と配列番号55のLCDR3、(vi)配列番号20のHCDR1、配列番号21のHCDR2と配列番号22のHCDR3、配列番号61のLCDR1、配列番号62のLCDR2と配列番号63のLCDR3、(vii)配列番号24のHCDR1、配列番号25のHCDR2と配列番号26のHCDR3、配列番号52のLCDR1、配列番号62のLCDR2と配列番号56のLCDR3、(viii)配列番号24のHCDR1、配列番号25のHCDR2と配列番号26のHCDR3、配列番号65または66または67のLCDR1、配列番号62のLCDR2と配列番号68または69または70のLCDR3から選択されるCDR組み合せ、および、当該組み合せを含む抗体または抗原結合断片を提供する。
【0099】
もう一つの実施形態において、本発明は、配列番号1/2/3/28/29/30、1/2/3/32/35/38、1/2/3/33/36/39、7/8/9/32/44/45、11/12/13/47/48/49、11/12/14/51/54/55、20/21/22/61/62/63、24/25/26/52/62/56、24/25/26/65/62/68、および24/25/26/66/62/69というアミノ酸配列の組み合せから選択される重鎖と軽鎖CDR組み合せ(順番に従ってそれぞれHCDR1、HCDR2とHCDR3、LCDR1、LCDR2とLCDR3)を提供する。本発明は、前記CDR組み合せの変異体も提供し、好ましい一実施形態において、前記変異体は前記6個CDR領域に、合計で少なくとも1個、かつ、20、10または5個以下のアミノ酸変異(好ましくはアミノ酸置換であり、好ましくは保存的な置換である)を含む。本発明は、前記重鎖と軽鎖CDR組み合せまたは前記変異体を含む抗BCMA抗体または抗原結合断片も提供する。
【0100】
一部の実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1のHCDR1、配列番号2のHCDR2と配列番号3のHCDR3、配列番号28のLCDR1、配列番号29のLCDR2と配列番号30のLCDR3を含む。
【0101】
一部の実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1のHCDR1、配列番号2のHCDR2と配列番号3のHCDR3、配列番号32のLCDR1、配列番号35のLCDR2と配列番号38のLCDR3を含む。
【0102】
一部の実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1のHCDR1、配列番号2のHCDR2と配列番号3のHCDR3、配列番号33のLCDR1、配列番号36のLCDR2と配列番号39のLCDR3を含む。
【0103】
一部の実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、配列番号7のHCDR1、配列番号8のHCDR2と配列番号9のHCDR3、配列番号32のLCDR1、配列番号44のLCDR2と配列番号45のLCDR3を含む。
【0104】
一部の実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、配列番号11のHCDR1、配列番号12のHCDR2と配列番号13のHCDR3、配列番号47のLCDR1、配列番号48のLCDR2と配列番号49のLCDR3を含む。
【0105】
一部の実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、配列番号11のHCDR1、配列番号12のHCDR2と配列番号14のHCDR3、配列番号51のLCDR1、配列番号54のLCDR2と配列番号55のLCDR3を含む。
【0106】
一部の実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、配列番号20のHCDR1、配列番号21のHCDR2と配列番号22のHCDR3、配列番号61のLCDR1、配列番号62のLCDR2と配列番号63のLCDR3を含む。
【0107】
一部の実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、配列番号24のHCDR1、配列番号25のHCDR2と配列番号26のHCDR3、配列番号52のLCDR1、配列番号62のLCDR2と配列番号56のLCDR3を含む。
【0108】
一部の実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、配列番号24のHCDR1、配列番号25のHCDR2と配列番号26のHCDR3、配列番号65のLCDR1、配列番号62のLCDR2と配列番号68のLCDR3を含む。
【0109】
一部の実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、配列番号24のHCDR1、配列番号25のHCDR2と配列番号26のHCDR3、配列番号66のLCDR1、配列番号62のLCDR2と配列番号69のLCDR3を含む。
【0110】
一部の実施形態において、配列番号15におけるXは如何なるアミノ酸残基を表し、好ましくは在配列番号13または14の対応する位置にあるアミノ酸残基またはその保存的な置換残基であり、好ましくはSまたはRまたはその保存的な置換残基である。一部の実施形態において、配列番号34におけるXは、如何なるアミノ酸残基を表し、好ましくは配列番号32または33の対応する位置にあるアミノ酸残基またはその保存的な置換残基である。一部の実施形態において、配列番号37におけるXは、如何なるアミノ酸残基を表し、好ましくは配列番号35または36の対応する位置にあるアミノ酸残基またはその保存的な置換残基である。一部の実施形態において、配列番号40におけるXは、如何なるアミノ酸残基を表し、好ましくは配列番号38または39の対応する位置にあるアミノ酸残基またはその保存的な置換残基である。一部の実施形態において、配列番号67におけるXは、如何なるアミノ酸残基を表し、好ましくは配列番号65または66の対応する位置にあるアミノ酸残基またはその保存的な置換残基である。一部の実施形態において、配列番号70におけるXは、如何なるアミノ酸残基を表し、好ましくは配列番号68または69の対応する位置にあるアミノ酸残基またはその保存的な置換残基である。
【0111】
本発明の抗体の上記実施形態において、「保存的な置換」は、あるアミノ酸を化学の類似なアミノ酸に置換することを引き起こすアミノ酸変異を指す。機能上の類似なアミノ酸の保存的な置換表は、本分野において熟知するものである。本発明のいずれか一つの実施形態において、好ましい一態様において、保存的な置換残基は、以下の保存的な置換表Aに由来し、好ましくは表Aに示される好ましい置換残基である。
【0112】
【表2】
【0113】
例示的な抗体配列
本発明は、実施例のように分離して特徴づけされる、BCMAと特異的に結合(例えば、ヒトBCMA)する完全ヒト化抗体を提供する。下記表1に本発明のこれらの例示的な抗体の可変領域配列を示す。下記表2にこれらの抗体の例示的なCDR配列(図4にも示す)を示す。
【0114】
【表3】
【0115】
【表4】
【0116】
本発明は、上記抗体の変異体も提供する。一実施形態において、抗体のアミノ酸配列またはアミノ酸配列をコーディングする核酸が既に突然変異されたが、表1に説明された配列と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%または更に高い同一性を有する。一部の実施形態において、抗体は、突然変異された可変領域のアミノ酸配列を含み、表1に示される可変領域配列と比べる時、可変領域に1、2、3、4、5または10個以下のアミノ酸が既に突然変異されたが、基本的に同じ抗原結合活性を保留する。
【0117】
なお、上記抗体は、何れもBCMAと結合できるため、BCMAと結合する本発明のその他の抗体を生じるようにVHとVL(アミノ酸配列と前記アミノ酸配列をコーディングするヌクレオチド配列である)を「混合とマッチングする」ことができる。本分野に既知の結合測定法(例えば、ELISAと実施例部分に記述された他の測定法である)を使用してこのような「混合とマッチングした」抗体とBCMAとの結合を測定することができる。これらの鎖を混合とマッチングする時、好ましくは、具体的なVH/VL対に由来するVH配列を構造が類似するVH配列に切り替える。同様に、所定のVH/VL対に由来するVL配列は、構造上に類似するVL配列に切り替えることが好ましい。
【0118】
他の態様において、本発明は、上記抗体の変異体も提供する。一実施形態において、抗体は、1つまたは複数または全ての6個CDR領域におけるアミノ酸配列または当該アミノ酸配列をコーディングする核酸に、既に突然変異される。一部の実施形態において、突然変異されたCDR領域のアミノ酸配列は、表1の対応するCDR領域と比べる時、1、2、3、4または5個以下のアミノ酸が既に突然変異されたが、基本的に同じ抗原結合活性を保留する。
【0119】
その他、表1の各抗体が何れもBCMAと結合できかつ抗原結合特異性が主にCDR1、2と3領域から提供されるため、BCMAと結合する本発明のその他の分子を生じるように、VH CDR1、2と3配列とVL CDR1、2と3配列を「混合とマッチングする」(即ち、異なる抗体に由来するCDRを混合とマッチングすることができ、但し、各抗体は、VH CDR1、2と3とVL CDR1、2と3を含有することが好ましい)ことができる。本分野に既知の結合測定法(例えば、ELISA、SET、Biacore)と実施例に説明されたそれらの測定法を使用し、これらの「混合とマッチングした」抗体とBCMAとの結合を測定することができる。VH CDR配列を混合してマッチングする時、所定のVH配列に由来するCDR1、CDR2および/またはCDR3配列は、構造上の類似するCDR配列に切り替えることが好ましい。同様に、VL CDR配列を混合とマッチングする時、所定のVL配列に由来するCDR1、CDR2および/またはCDR3配列は、構造上に類似するCDR配列に切り替えることが好ましい。当業者は、本発明のその他の抗体を生じるように、1つまたは複数のVHおよび/またはVL CDR領域配列を本出願に示される抗体の構造上に類似するCDR配列に置換することができることを明らかにする。前記のほか、一実施形態において、本出願に記載される抗体の抗原結合断片は、VH CDR1、2と3、またはVL CDR1、2と3を含むことができ、当該断片は単領域の形でBCMAと結合する。
【0120】
II.単鎖scFv抗体
好ましい一態様において、本発明に係る抗体は単鎖scFv抗体である。
【0121】
本出願において、「単鎖scFv抗体」または「scFv」または「単鎖scFv」は、免疫グロブリンまたは抗体の重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)を含む単一ポリペプチド鎖を指し、当該単一タンパク鎖においてVH領域とVL領域がペアリングして抗原結合部位を提供する。
【0122】
好ましい実施形態において、本発明の単鎖scFv抗体のVH領域とVL領域は、例えば、可動性リンカーのようなリンカーによって共有結合的に接続される。用語「可動性リンカー」は、アミノ酸からなるペプチドリンカーである。このようなペプチドリンカーは、抗体における各可変ドメイン、例えば、VHとVL領域を接続することができる。ペプチドリンカーは、通常、フレキシブルを発現するグリシンおよび溶解性を発現するセリンまたはトレオニンに富む。例えば、グリシンおよび/またはセリン残基を単独に使用しても組み合わせて使用してもよい。可動性リンカーまたはペプチドリンカーの非限定的な例は、Shen et al.、Anal.Chem.80(6):1910-1917(2008)、WO2012/138475とWO2014/087010に開示され、その内容全体を参考として取り込まれる。本分野の既知のように、scFvの構成において、好ましくは、リンカーがVHとVLとのペアリングを促進するように役立ち、かつ、VHとVL対が機能の有効な抗原結合部位を形成することを干渉しない。
【0123】
一部の実施形態において、本発明に係るscFv単鎖抗体は、ペプチド結合で接続するアミノ酸残基からなる可動性リンカーまたはペプチドリンカーを含む。一部の実施形態において、前記アミノ酸は20種類の天然アミノ酸から選択される。他の一部の実施形態において、1つまたは複数のアミノ酸はグリシン、セリン、トレオニン、アラニン、プロリン、アスパラギン、グルタミンとリシンから選択される。好ましい一実施形態において、1つまたは複数のアミノ酸はGly、Ser、Thr、Lys、ProとGluから選択される。
【0124】
一部の実施形態において、リンカーの長さは、約1~30個のアミノ酸、または約10個から約25個のアミノ酸、約15個から約20個のアミノ酸または約10個から約20個のアミノ酸または如何なる途中に介するアミノ酸の長さである。好ましい実施形態において、リンカーは15~25個のアミノ酸残基の長さを有し、より好ましい実施形態において、15~18個のアミノ酸残基の長さを有する。一部の実施形態において、リンカーの長さは10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25個または更に多くのアミノ酸である。
【0125】
本発明のペプチドリンカーに用いられる実例は、グリシンポリマー(G)n、グリシン-セリンポリマー(G1-51-5)n、グリシン-アラニンポリマー、アラニン-セリンポリマー、および、本分野に既知のその他のフレキシブルリンカーを含み、但し、nは少なくとも1、2、3、4または5の整数である。当業者は、一部の実施形態において、VHとVLとの間のリンカーは全て可動性リンカーからなり、または可動性リンカー部分および小さいフレキシブル構造を付与する1つまたは複数の部分からなることが理解できる。
【0126】
好ましい一実施形態において、ペプチドリンカーは、GSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号93)である。一実施形態において、配列番号93のアミノ酸配列をコーディングするヌクレオチド配列は配列番号94に示される。一実施形態において、配列番号93のアミノ酸配列をコーディングするヌクレオチド配列は配列番号97に示される。
【0127】
一実施形態において、ペプチドリンカーはGly/Ser接続ペプチドである。一実施形態において、ペプチドリンカーは(GxS)nリンカーであり、ここで、G=グリシン、S=セリン(x=3、n=8、9または10)または(x=4とn=6、7または8)であり、一実施形態において、x=4、n=6または7である。一部の実施形態において、リンカーは、アミノ酸配列(GS)nを含むことができ、ここで、nは1以上の整数であり、例えば、nは1~7の整数である。好ましい一実施形態において、x=4であり、n=7である。一実施形態において、リンカーは(G4S)3である。一実施形態において、リンカーは(G4S)4である。一実施形態において、リンカーは(G4S)6G2である。
【0128】
その他の例示的なリンカーは、GGG、DGGGS、TGEKP(例えば、Liu et al.、PNAS5525-5530(1997)を参照する)、GGRR(Pomerantz et al.、1995、上記と同様である)、(GGGGS)n、ここで、n=1、2、3、4または5(Kim et al.、PNAS 93、1156-1160(1996)、EGKSSGSGSESKVD(Chaudhary et al.、1990、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.87:1066-1070)、KESGSVSSEQLAQFRSLD(Bird et al.、1988、Science242:423-426)、GGRRGGGS、LRQRDGERP、LRQKDGGGSERP、LRQKD(GGGS)2ERPというアミノ酸配列を含むが、これらに限定されない。選択的に、DNA-結合部位とペプチド自身をモデリングできるパソコンプログラム(Desjarlais&Berg、PNAS 90:2256-2260(1993)、PNAS91:11099-11103(1994))を使用することができ、またはバクテリオファージまたは酵母ディスプレイ方法によって、フレキシブルリンカーを合理的に設計することができる。
【0129】
本発明の単鎖scFv抗体におけるVHとVLはいずれか1つの方向を選択することができる。一部の実施形態において、scFvは、N末端からC末端まで、VH-リンカー-VL、またはVL-リンカー-VHを含む。好ましい一実施形態において、本発明単に係る単鎖scFv抗体は、N末端からC末端まで、VL-リンカー-VHを含む。好ましい一実施形態において、VLはそのC末端がリンカーによってVHのN末端に共有結合接続される。
【0130】
一部の実施形態において、リンカーの他に、VLとVHドメインとの間に所定の機能を有するその他のポリペプチド断片、例えば、免疫反応を調節する機能を有するポリペプチド断片、または細胞溶解または細胞殺滅を引き起こすことを有するポリペプチド断片を挿入することができる。
【0131】
一部の実施形態において、単鎖抗体を安定させるように、scFvにジスルフィド結合を導入することができる。例えば、鎖内または鎖間のジスルフィド結合を導入することによってscFvのVHとVLのフレームワーク領域を接続することができる。一実施形態において、抗体VHとVLの各1つのアミノ酸残基、例えば、Kabat番号付けシステムに基づくVHの44位とVLの100位、またはVHの105位とVLの43位をシステインに突然変異することができる。
【0132】
本発明の単鎖scFvポリペプチド抗体は、Huston et al.に記載(Proc.Nat.Acad.Sci.USA、85:5879~5883、1988)のように、VH-とVL-コーディング配列を含む核酸によって発現することができる。さらに、米国特許番号5,091,513、5,132,405と4,956,778および米国特許公開番号20050196754と20050196754を参照することもできる。一部の実施形態において、本発明の単鎖scFv抗体は、真核細胞、例えば酵母細胞、H293細胞またはCHO細胞のような哺乳動物細胞に発現される。一部の実施形態において、本発明の抗体は、抗BCMA scFvまたはその抗原結合断片であり、配列番号99のアミノ酸配列の抗原結合領域またはその変異体を含み、BCMAポリペプチド(例えば、配列番号74のアミノ酸配列を有するBCMAポリペプチドまたはその断片)と特異的に結合する。一部の実施形態において、変異体と配列番号99は少なくとも90%、92%、95%、97%、98%、99%または更に高い同一性を有する。一実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号100のヌクレオチドによってコーディングされる。
【0133】
一部の実施形態において、抗BCMA scFv抗体は、配列番号4のアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%、92%、95%、97%、98%、99%または更に高い同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号31のアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%、92%、95%、97%、98%、99%または更に高い同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、重鎖可変領域と軽鎖可変領域との間に任意に選択するリンカー、例えば、リンカーペプチドと、を含む。一部の実施形態において、リンカーは、配列番号93のアミノ酸配列を含む。
【0134】
一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号4のアミノ酸配列を有するVHを含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号31のアミノ酸配列を有するVLを含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号4に示される配列を有するVHと、配列番号31に示される配列を有するVLと、を含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号4に示される配列のVHの3つのHCDR配列および/または配列番号31に示される配列のVLの3つのLCDR配列を含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号3のHCDR3と配列番号30のLCDR3を含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号1のVH CDR1、配列番号2のVH CDR2と配列番号3のVH CDR3を含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号28のVL CDR1、配列番号29のVL CDR2と配列番号30のVL CDR3を含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号1のVH CDR1、配列番号2のVH CDR2と配列番号3のVH CDR3、および、配列番号28のVL CDR1、配列番号29のVL CDR2と配列番号30のVL CDR3を含む。
【0135】
一部の実施形態において、本発明の抗体は、抗BCMA scFvまたはその抗原結合断片であり、配列番号102のアミノ酸配列の抗原結合領域またはその変異体を含み、BCMAポリペプチド(例えば、配列番号74のアミノ酸配列を有するBCMAポリペプチドまたはその断片)と特異的に結合する。一部の実施形態において、変異体と配列番号102は少なくとも90%、92%、95%、97%、98%、99%または更に高い同一性を有する。一実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号103のヌクレオチドによってコーディングされる。
【0136】
一部の実施形態において、抗BCMA scFv抗体は、配列番号5のアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%、92%、95%、97%、98%、99%または更に高い同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号41のアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%、92%、95%、97%、98%、99%または更に高い同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、重鎖可変領域と軽鎖可変領域との間に任意に選択するリンカー、例えば、リンカーペプチドと、を含む。一部の実施形態において、リンカーは、配列番号93のアミノ酸配列を含む。
【0137】
一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号5のアミノ酸配列を有するVHを含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号41のアミノ酸配列を有するVLを含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号5に示される配列を有するVHと、配列番号41に示される配列を有するVLと、を含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号5に示される配列のVHの3つのHCDR配列および/または配列番号41に示される配列のVLの3つのLCDR配列を含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号3のHCDR3と配列番号38のLCDR3を含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号1のVH CDR1、配列番号2のVH CDR2と配列番号3のVH CDR3を含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号32のVL CDR1、配列番号35のVL CDR2と配列番号38のVL CDR3を含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号1のVH CDR1、配列番号2のVH CDR2と配列番号3のVH CDR3、および、配列番号32のVL CDR1、配列番号35のVL CDR2と配列番号38のVL CDR3を含む。
【0138】
一部の実施形態において、本発明の抗体は、抗BCMA scFvまたはその抗原結合断片であり、配列番号105のアミノ酸配列の抗原結合領域またはその変異体を含み、BCMAポリペプチド(例えば、配列番号74のアミノ酸配列を有するBCMAポリペプチドまたはその断片)と特異的に結合する。一部の実施形態において、変異体と配列番号105は少なくとも90%、92%、95%、97%、98%、99%または更に高い同一性を有する。一実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号106のヌクレオチドによってコーディングされる。
【0139】
一部の実施形態において、抗BCMA scFv抗体は、配列番号5のアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%、92%、95%、97%、98%、99%または更に高い同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号42のアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%、92%、95%、97%、98%、99%または更に高い同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、重鎖可変領域と軽鎖可変領域との間に任意に選択するリンカー、例えば、リンカーペプチドと、を含む。一部の実施形態において、リンカーは、配列番号93のアミノ酸配列を含む。
【0140】
一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号5のアミノ酸配列を有するVHを含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号42のアミノ酸配列を有するVLを含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号5に示される配列を有するVHと、配列番号42に示される配列を有するVLと、を含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号5に示される配列のVHの3つのHCDR配列および/または配列番号42に示される配列のVLの3つのLCDR配列を含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号3のHCDR3と配列番号39のLCDR3を含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号1のVH CDR1、配列番号2のVH CDR2と配列番号3のVH CDR3を含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号33のVL CDR1、配列番号36のVL CDR2と配列番号39のVL CDR3を含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号1のVH CDR1、配列番号2のVH CDR2と配列番号3のVH CDR3、および、配列番号33のVL CDR1、配列番号36のVL CDR2と配列番号39のVL CDR3を含む。
【0141】
一部の実施形態において、本発明の抗体は、抗BCMA scFvまたはその抗原結合断片であり、配列番号108のアミノ酸配列の抗原結合領域またはその変異体を含み、BCMAポリペプチド(例えば、配列番号74のアミノ酸配列を有するBCMAポリペプチドまたはその断片)と特異的に結合する。一部の実施形態において、変異体と配列番号108は少なくとも90%、92%、95%、97%、98%、99%または更に高い同一性を有する。一実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号109のヌクレオチドによってコーディングされる。
【0142】
一部の実施形態において、抗BCMA scFv抗体は、配列番号10のアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%、92%、95%、97%、98%、99%または更に高い同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号46のアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%、92%、95%、97%、98%、99%または更に高い同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、重鎖可変領域と軽鎖可変領域との間に任意に選択するリンカー、例えば、リンカーペプチドと、を含む。一部の実施形態において、リンカーは、配列番号93のアミノ酸配列を含む。
【0143】
一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号10のアミノ酸配列を有するVHを含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号46のアミノ酸配列を有するVLを含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号10に示される配列を有するVHと、配列番号46に示される配列を有するVLと、を含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号10に示される配列のVHの3つのHCDR配列および/または配列番号46に示される配列のVLの3つのLCDR配列を含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号9のHCDR3と配列番号45のLCDR3を含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号7のVH CDR1、配列番号8のVH CDR2と配列番号9のVH CDR3を含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号32のVL CDR1、配列番号44のVL CDR2と配列番号45のVL CDR3を含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号7のVH CDR1、配列番号8のVH CDR2と配列番号9のVH CDR3、および、配列番号32のVL CDR1、配列番号44のVL CDR2と配列番号45のVL CDR3を含む。
【0144】
一部の実施形態において、本発明の抗体は、抗BCMA scFvまたはその抗原結合断片であり、配列番号111のアミノ酸配列の抗原結合領域またはその変異体を含み、BCMAポリペプチド(例えば、配列番号74のアミノ酸配列を有するBCMAポリペプチドまたはその断片)と特異的に結合する。一部の実施形態において、変異体と配列番号111は少なくとも90%、92%、95%、97%、98%、99%または更に高い同一性を有する。一実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号112のヌクレオチドによってコーディングされる。
【0145】
一部の実施形態において、抗BCMA scFv抗体は、配列番号16のアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%、92%、95%、97%、98%、99%または更に高い同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号50のアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%、92%、95%、97%、98%、99%または更に高い同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、重鎖可変領域と軽鎖可変領域との間に任意に選択するリンカー、例えば、リンカーペプチドと、を含む。一部の実施形態において、リンカーは、配列番号93のアミノ酸配列を含む。
【0146】
一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号16のアミノ酸配列を有するVHを含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号50のアミノ酸配列を有するVLを含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号16に示される配列を有するVHと、配列番号50に示される配列を有するVLと、を含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号16に示される配列のVHの3つのHCDR配列および/または配列番号50に示される配列のVLの3つのLCDR配列を含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号13のHCDR3と配列番号49のLCDR3を含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号11のVH CDR1、配列番号12のVH CDR2と配列番号13のVH CDR3を含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号47のVL CDR1、配列番号48のVL CDR2と配列番号49のVL CDR3を含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号11のVH CDR1、配列番号12のVH CDR2と配列番号13のVH CDR3、および、配列番号47のVL CDR1、配列番号48のVL CDR2と配列番号49のVL CDR3を含む。
【0147】
一部の実施形態において、本発明の抗体は、抗BCMA scFvまたはその抗原結合断片であり、配列番号114のアミノ酸配列の抗原結合領域またはその変異体を含み、BCMAポリペプチド(例えば、配列番号74のアミノ酸配列を有するBCMAポリペプチドまたはその断片)と特異的に結合する。一部の実施形態において、変異体と配列番号114は少なくとも90%、92%、95%、97%、98%、99%または更に高い同一性を有する。一実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号115のヌクレオチドによってコーディングされる。
【0148】
一部の実施形態において、抗BCMA scFv抗体は、配列番号17のアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%、92%、95%、97%、98%、99%または更に高い同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号58のアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%、92%、95%、97%、98%、99%または更に高い同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、重鎖可変領域と軽鎖可変領域との間に任意に選択するリンカー、例えば、リンカーペプチドと、を含む。一部の実施形態において、リンカーは、配列番号93のアミノ酸配列を含む。
【0149】
一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号17のアミノ酸配列を有するVHを含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号58のアミノ酸配列を有するVLを含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号17に示される配列を有するVHと、配列番号58に示される配列を有するVLと、を含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号17に示される配列のVHの3つのHCDR配列および/または配列番号58に示される配列のVLの3つのLCDR配列を含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号14のHCDR3と配列番号55のLCDR3を含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号11のVH CDR1、配列番号12のVH CDR2と配列番号14のVH CDR3を含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号51のVL CDR1、配列番号54のVL CDR2と配列番号55のVL CDR3を含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号11のVH CDR1、配列番号12のVH CDR2と配列番号14のVH CDR3、および、配列番号51のVL CDR1、配列番号54のVL CDR2と配列番号55のVL CDR3を含む。
【0150】
一部の実施形態において、本発明の抗体は、抗BCMA scFvまたはその抗原結合断片であり、配列番号120のアミノ酸配列の抗原結合領域またはその変異体を含み、BCMAポリペプチド(例えば、配列番号74のアミノ酸配列を有するBCMAポリペプチドまたはその断片)と特異的に結合する。一部の実施形態において、変異体と配列番号120は少なくとも90%、92%、95%、97%、98%、99%または更に高い同一性を有する。一実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号121のヌクレオチドによってコーディングされる。
【0151】
一部の実施形態において、抗BCMA scFv抗体は、配列番号23のアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%、92%、95%、97%、98%、99%または更に高い同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号64のアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%、92%、95%、97%、98%、99%または更に高い同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、重鎖可変領域と軽鎖可変領域との間に任意に選択するリンカー、例えば、リンカーペプチドと、を含む。一部の実施形態において、リンカーは、配列番号93のアミノ酸配列を含む。
【0152】
一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号23のアミノ酸配列を有するVHを含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号64のアミノ酸配列を有するVLを含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号23に示される配列を有するVHと、配列番号64に示される配列を有するVLと、を含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号23に示される配列のVHの3つのHCDR配列および/または配列番号64に示される配列のVLの3つのLCDR配列を含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号22のHCDR3と配列番号63のLCDR3を含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号20のVH CDR1、配列番号21のVH CDR2と配列番号22のVH CDR3を含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号61のVL CDR1、配列番号62のVL CDR2と配列番号63のVL CDR3を含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号20のVH CDR1、配列番号21のVH CDR2と配列番号22のVH CDR3、および、配列番号61のVL CDR1、配列番号62のVL CDR2と配列番号63のVL CDR3を含む。
【0153】
一部の実施形態において、本発明の抗体は、抗BCMA scFvまたはその抗原結合断片であり、配列番号117のアミノ酸配列の抗原結合領域またはその変異体を含み、BCMAポリペプチド(例えば、配列番号74のアミノ酸配列を有するBCMAポリペプチドまたはその断片)と特異的に結合する。一部の実施形態において、変異体と配列番号117は少なくとも90%、92%、95%、97%、98%、99%または更に高い同一性を有する。一実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号118のヌクレオチドによってコーディングされる。
【0154】
一部の実施形態において、抗BCMA scFv抗体は、配列番号27のアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%、92%、95%、97%、98%、99%または更に高い同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号59のアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%、92%、95%、97%、98%、99%または更に高い同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、重鎖可変領域と軽鎖可変領域との間に任意に選択するリンカー、例えば、リンカーペプチドと、を含む。一部の実施形態において、リンカーは、配列番号93のアミノ酸配列を含む。
【0155】
一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号27のアミノ酸配列を有するVHを含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号59のアミノ酸配列を有するVLを含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号27に示される配列を有するVHと、配列番号59に示される配列を有するVLと、を含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号27に示される配列のVHの3つのHCDR配列および/または配列番号59に示される配列のVLの3つのLCDR配列を含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号26のHCDR3と配列番号56のLCDR3を含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号24のVH CDR1、配列番号25のVH CDR2と配列番号26のVH CDR3を含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号52のVL CDR1、配列番号62のVL CDR2と配列番号56のVL CDR3を含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号24のVH CDR1、配列番号25のVH CDR2と配列番号26のVH CDR3、および、配列番号52のVL CDR1、配列番号62のVL CDR2と配列番号56のVL CDR3を含む。
【0156】
一部の実施形態において、本発明の抗体は、抗BCMA scFvまたはその抗原結合断片であり、配列番号123のアミノ酸配列の抗原結合領域またはその変異体を含み、BCMAポリペプチド(例えば、配列番号74のアミノ酸配列を有するBCMAポリペプチドまたはその断片)と特異的に結合する。一部の実施形態において、変異体と配列番号123は少なくとも90%、92%、95%、97%、98%、99%または更に高い同一性を有する。一実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号124のヌクレオチドによってコーディングされる。
【0157】
一部の実施形態において、抗BCMA scFv抗体は、配列番号27のアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%、92%、95%、97%、98%、99%または更に高い同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号71のアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%、92%、95%、97%、98%、99%または更に高い同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、重鎖可変領域と軽鎖可変領域との間に任意に選択するリンカー、例えば、リンカーペプチドと、を含む。一部の実施形態において、リンカーは、配列番号93のアミノ酸配列を含む。
【0158】
一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号27のアミノ酸配列を有するVHを含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号71のアミノ酸配列を有するVLを含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号27に示される配列を有するVHと、配列番号71に示される配列を有するVLと、を含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号27に示される配列のVHの3つのHCDR配列および/または配列番号71に示される配列のVLの3つのLCDR配列を含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号26のHCDR3と配列番号68のLCDR3を含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号24のVH CDR1、配列番号25のVH CDR2と配列番号26のVH CDR3を含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号65のVL CDR1、配列番号62のVL CDR2と配列番号68のVL CDR3を含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号24のVH CDR1、配列番号25のVH CDR2と配列番号26のVH CDR3、および、配列番号65のVL CDR1、配列番号62のVL CDR2と配列番号68のVL CDR3を含む。
【0159】
一部の実施形態において、本発明の抗体は、抗BCMA scFvまたはその抗原結合断片であり、配列番号126のアミノ酸配列の抗原結合領域またはその変異体を含み、BCMAポリペプチド(例えば、配列番号74のアミノ酸配列を有するBCMAポリペプチドまたはその断片)と特異的に結合する。一部の実施形態において、変異体と配列番号126は少なくとも90%、92%、95%、97%、98%、99%または更に高い同一性を有する。一実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号127のヌクレオチドによってコーディングされる。
【0160】
一部の実施形態において、抗BCMA scFv抗体は、配列番号27のアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%、92%、95%、97%、98%、99%または更に高い同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号72のアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%、92%、95%、97%、98%、99%または更に高い同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、重鎖可変領域と軽鎖可変領域との間に任意に選択するリンカー、例えば、リンカーペプチドと、を含む。一部の実施形態において、リンカーは、配列番号93のアミノ酸配列を含む。
【0161】
一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号27のアミノ酸配列を有するVHを含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号72のアミノ酸配列を有するVLを含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号27に示される配列を有するVHと、配列番号72に示される配列を有するVLと、を含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号27に示される配列のVHの3つのHCDR配列および/または配列番号72に示される配列のVLの3つのLCDR配列を含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号26のHCDR3と配列番号69のLCDR3を含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号24のVH CDR1、配列番号25のVH CDR2と配列番号26のVH CDR3を含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号66のVL CDR1、配列番号62のVL CDR2と配列番号69のVL CDR3を含む。一部の実施形態において、抗BCMA scFvは、配列番号24のVH CDR1、配列番号25のVH CDR2と配列番号26のVH CDR3、および、配列番号66のVL CDR1、配列番号62のVL CDR2と配列番号69のVL CDR3を含む。
【0162】
III.scFv-Fc抗体
Fc領域を有する抗体は、いくつかのメリットを有し、Fc領域によってエフェクター機能、例えば、CDCとADCC免疫学的活性を介在できることと、Fc領域の二量化機能で二価の抗体を形成することによって、高い抗原と結合する親和性を提供し、および/または血漿中の半減期と腎臓クリアランス率を変化させることと、二価の抗体が単価のFaBまたはscFv抗体と異なる速度でインターナリゼーションし、免疫機能またはベクター機能を変えることができることとを含むが、これらに限定されない。例えば、α放射体は、インターナリゼーションすることで標的細胞を殺す必要がないが、多くの薬物と毒素が免疫複合物のンターナリゼーションから利益を受ける。
【0163】
従って、好ましい一実施形態において、本発明に係る単鎖scFv抗体と抗体Fc領域が融合して形成したscFv-Fc抗体を提供する。一部の実施形態において、前記抗体は、本発明の単鎖scFv抗体と野生型または変えられたFc領域を含む。好ましい一実施形態において、前記抗体は、N末端からC末端まで、Fc-VH-リンカー-VLまたはFc-VL-リンカー-VH、または、好ましくはVH-リンカー-VL-FcまたはVL-リンカー-VH-Fcを含む。好ましい一実施形態において、Fcは、ヒンジ領域によって可変領域(VHまたはVL)に接続される。一部の実施形態において、Fcは、ヒト免疫グロブリンのFc領域に由来し、好ましくはヒトIgG1またはIgG4 Fc領域に由来する。好ましい一実施形態において、Fc領域は、配列番号132に示されるアミノ酸配列、または配列番号132のアミノ酸配列に対して少なくとも1、2または3個であり、かつ、20個、10個または5個以下のアミノ酸変異を含むアミノ酸配列、または、配列番号132のアミノ酸配列と少なくとも95~99%の同一性を有する配列を有する。一部の実施形態において、本発明の単鎖scFv抗体は、ヒンジ領域によってFc領域に接続される。一実施形態において、ヒンジ領域はC8ヒンジ領域であり、例えば、配列番号95に示されるアミノ酸配列、または配列番号95のアミノ酸配列に対して少なくとも1、2または3個であり、かつ、5個以下のアミノ酸変異を含むアミノ酸配列を含む。
【0164】
一部の好ましい実施形態において、本発明は、BCMAポリペプチド(例えば、配列番号74のアミノ酸配列を有するBCMAポリペプチドまたはその断片である)と特異的に結合し、配列番号101、104、107、110、113、116、119、122、125と128から選択されるアミノ酸配列、またはそれに対して少なくとも1、2または3個であり、かつ、20個以下、10個以下または5個以下のアミノ酸変異を含むアミノ酸配列、またはそれと少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%または更に高い同一性を有するアミノ酸配列を含む抗体を提供する。
【0165】
下記表3に、本発明の一部の例示的なScFv-Fc抗体のアミノ酸配列およびその単鎖scFvを構成するためのアミノ酸配列とヌクレオチド配列を示す。表3にも、US20170226216A1の説明に基づいて構成したscFv-Fc組換え単鎖抗体を参照するアミノ酸配列とヌクレオチド配列を示す。これらのscFv-Fc抗体に用いられるリンカーとヒンジのアミノ酸配列とヌクレオチド配は、図8に示される。
【0166】
【表5】
【0167】
一部の実施形態において、本発明のscFv-Fc抗体は、エフェクター機能を有する。用語「エフェクター機能」は、抗体のFc-領域に起因するそれらの生物的活性を指し、抗体の種類によって変化する。IgA、IgD、IgE、IgGとIgMという主な5つの抗体種類が存在し、これらの一部は亜綱(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1とIgA2に更に分けることができる。異なる種類の免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインはそれぞれ、α、δ、ε、γとμと呼ばれる。抗体のエフェクター機能は、例えば、C1q結合と補体依存性細胞傷害(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞が介在する細胞傷害(ADCC)、貪食作用、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方調節とB-細胞活性化を含むが、これらに限定されない。一部の実施形態において、本発明のscFv-Fc抗体はエフェクター細胞が介在する細胞傷害(ADCC)活性によってBCMAを発現する細胞(特にMM細胞)の成長を阻害、抑制しおよび/または前記細胞を死滅させる。
【0168】
一部の実施形態において、Fc領域は、1つまたは複数のADCC活性を高めるアミノ酸置換、例えば、Fc-領域の位置298、333および/または334の置換(残基のEU番号付け)を有するFc-領域を含む。一部の実施形態において、Fc-領域を変化させることで、C1q結合および/または補体依存性細胞傷害(CDC)(例えば、US6,194,551、WO99/51642とIdusogie、E.E. et al.、J.Immunol.164(2000)4178-4184を参照する)の変更(即ち、向上または低減)を引き起こすことができる。
【0169】
他の一部の実施形態において、そのグリコシル化程度を増加または低減することおよび/またはそのグリコシル化モードを変えるようにFcを変化させることができる。Fcのグリコシル化部位の追加または欠如に対して、アミノ酸配列を変えて1つまたは複数のグリコシル化部位を生成または除去することによって容易に実現することができる。例えば、1つまたは複数のグリコシル化部位を解消するために1つまたは複数のアミノ酸置換を行うことができ、これによって当該部位のグリコシル化を解消することができる。種類を変えたグリコシル化抗体、例えば、フコシル残基の量を減少した低いまたは無フコシル化抗体またはバイセクティングGlcNac構造を追加した抗体を製造することができる。このような変えたグリコシル化モデルは既に抗体のADCC能力の向上が示されている。
【0170】
従って、一部の好ましい実施形態において、本発明は、Fc領域が低いまたは無フコシル化抗体であることで、抗体Fcドメインとエフェクター細胞に発現されたFcγ受容体(例えば、FcγRIIIa)の結合親和性を顕著に向上させることができ、それによって抗体が強化した抗体依存性細胞が介在する細胞傷害(ADCC)の活性を有することを引き起こす抗体を提供する。例えば、抗体におけるフコースの量は、1%から80%、1%から65%、5%から65%または20%から40%であることができる。MALDI-TOF質量分析法によって測定することができ、Asn297に接続される全ての糖構造(例えば、複合型、ヘテロ接合型および高マンノース型の構造である)の総和に対して、Asn297における糖鎖内のフコースの平均量を計算することによってフコースの量を確定し、例えば、WO2008/077546に記載された通りである。Asn297は、Fc領域における約位置297(Fc領域残基のEU番号付け)にあるアスパラギン残基を指し、しかし、抗体における微小な配列変化のため、Asn297は位置297の上位または下位約±3個のアミノ酸位置、即ち位置294と300との間に位置する可能性がある。例えばUS2003/0157108、US2004/0093621を参照する。「無フコシル化」または「低フコシル化」抗体変異体に関連する開示された実例は、さらに、US2003/0157108、WO2000/61739、WO2001/29246、US2003/0115614、US2002/0164328、US2004/0093621、US2004/0132140、US2004/0110704、US2004/0110282、US2004/0109865、WO2003/085119、WO2003/084570、WO2005/035586、WO2005/035778、WO2005/053742、WO2002/031140、Okazaki、A. et al.、J.Mol.Biol.336(2004)1239-1249、Yamane-Ohnuki、N. et al.、Biotech.Bioeng.87:614(2004)614-622を含む。無フコシル化または低フコシル化抗体の細胞株にこのような抗体変異体を生成することができる。このような細胞の実例は、タンパク質フコシル化に欠かるLec13 CHO細胞(Ripka、J. et al.、Arch.Biochem.Biophys.249(1986):533-545、US 2003/0157108とWO2004/056312、特に実施例11)、および、遺伝子ノックアウト細胞株、例えばα-1,6-フコース転移酵素遺伝子FUT8ノックアウトのCHO細胞(例えば、Yamane-Ohnuki、N. et al.、Biotech.Bioeng.87:614(2004)614-622、Kanda、Y. et al.、Biotechnol.Bioeng.94(2006)680-688とWO2003/085107を参照する)を含む。例えば、細胞株Ms704、Ms705およびMs709にフコース転移酵素遺伝子FUT8(α(1,6)-フコース転移酵素)に欠かることによって、Ms704、Ms705およびMs709細胞株にフコースに欠かる抗体を発現することができる。その他、EP1,176,195にも、機能が壊されたFUT8遺伝子を有する細胞株が説明されており、このような細胞株に発現された抗体は低フコシル化を示す。好ましくは、フコシダーゼを利用して抗体のフコシル残基を切除することができる。例えば、フコシダーゼα-L-フコシダーゼを利用して抗体からフコシル残基を除去する(Tarentino et al.(1975)Biochem.14:5516-23)。
【0171】
その他、本発明は、二分型(bisected)のオリゴ糖を有する抗体変異体、例えば、Fc領域に接続される二分岐のオリゴ糖がGlcNAcで二等分される抗体も考慮する。これらの抗体変異体は低減したフコシル化および/または向上したADCC機能を有することができる。これらの抗体変異体の実例は、例えばWO2003/011878、US6,602,684とUS2005/0123546に説明される。本発明は、Fc領域に接続されるオリゴ糖に少なくとも1つの半乳糖残基を有する抗体変異体も考慮する。これらの抗体変異体は向上したCDC機能を有することができる。これらの抗体変異体は、例えば、WO1997/30087、WO1998/58964とWO1999/22764に説明される。
【0172】
標的分子を評価するADCC活性のインビトロ測定試験の非限定的な実例は、US5,500,362(例えば、Hellstrom、I. et al.、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 83(1986)7059-7063とHellstrom、I. et al.、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 82(1985)1499-1502を参照する)、US 5,821,337(Bruggemann、M. et al.、J.Exp.Med.166(1987)1351-1361を参照する)に説明される。または、非放射性測定方法(例えば、フローサイトメトリーに用いられるACTI(商標)非放射性の細胞傷害測定(CellTechnology、Inc.Mountain View、CA)とCytoTox96(登録商標)非放射性の細胞傷害測定(Promega、Madison、WI)を参照する)を採用することができる。これらの測定に適用されるエフェクター細胞は、外周血単核細胞(PBMC)とナチュラルキラー(NK)細胞を含む。好ましくは、または、その他に、インビボで標的分子のADCC活性を評価することができ、例えば、Clynes、R. et al.、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA95(1998)652-656に開示された動物モデルに評価する。補体の活性化を評価するために、CDC測定(例えばGazzano-Santoro、H. et al.、J.Immunol.Methods 202(1996)163-171、Cragg、M.S. et al.、Blood 101(2003)1045-1052とCragg、M.S.とM.J.Glennie、Blood 103(2004)2738-2743を参照する)を行うことができる。抗体のC1q結合とCDC活性を確定するように、C1q結合を測定することができる。例えば、WO2006/029879とWO2005/100402のC1qとC3c結合ELISAを参照する。
【0173】
一部の実施形態において、本発明は、全部でないが一部のエフェクター機能を有する抗体変異体も考慮し、それをある応用の望ましい候補物になり、前記応用において抗体のインビボ半減期が重要であるが、一部のエフェクター機能(例えば、補体とADCC)が必要ではなくまたは有害である。CDCおよび/またはADCC活性の低減/喪失を確定するように、上記のようなインビトロおよび/またはインビボ測定試験を行うことができる。例えば、抗体がFcγR結合を欠如する(そのため、ADCC活性を欠如する恐れがある)ことを確保するがFcRn結合能力を保持するように、Fc受容体(FcR)の結合の測定を行うことができる。例えば、Fc領域は、エフェクター機能を解消又軽減する突然変異、例えば、突然変異のP329Gおよび/またはL234AとL235Aを有するヒトIgG1 Fc領域、または、突然変異のP329Gおよび/またはS228PとL235Eを有するヒトIgG4 Fc領域を含むことができる。
【0174】
一部の実施形態において、本発明のscFv-Fc領域抗体は、Fc領域の二量化作用によって二価の抗体を形成することができ、これによって、高くなる抗体総親和性と安定性を更に有し、または多重特異性、例えば双特異性を形成することができる。例えば、Fc領域は、i)ヒトIgG1の亜綱のホモ二量Fc-領域、またはii)ヒトIgG4の亜綱のホモ二量Fc-領域、または、iii)イソ二量Fc-領域を含むことができ、ここで、a)一つのFc-領域のポリペプチドは、突然変異のT366Wを含むが、もう一つのFc-領域のポリペプチドは、突然変異のT366S、L368AとY407Vを含み、またはb)一つのFc-領域のポリペプチドは、突然変異のT366WとY349Cを含むが、もう一つのFc-領域のポリペプチドは、突然変異のT366S、L368A、Y407VとS354Cを含み、またはc)一つのFc-領域のポリペプチドは、突然変異のT366WとS354Cを含むが、もう一つのFc-領域のポリペプチドは、突然変異のT366S、L368A、Y407VとY349Cを含む。
【0175】
一部の実施形態において、本発明のscFv-Fc組換え抗体は、Fc領域部分によって蛍光色素、細胞毒素、放射性同位体などを含むがこれらに限定されないその他の分子と直接融合または接合でき、例えば、抗原定量研究に用いられ、抗体を固定化して親和性の測定に用いられ、治療剤の標的輸送に用いられ、免疫エフェクター細胞Fc-の介在を用いる細胞毒性試験および多くのその他の用途である。
【0176】
B.ポリヌクレオチドと宿主
一態様において、本発明は、基本的に精製された核酸分子を提供し、前記核酸分子は、上記BCMAを結合する抗体鎖のセクションまたはドメインを含むポリペプチドをコーディングする。一部の実施形態において、本発明の核酸分子は、BCMAと結合する抗体鎖(例えば、本発明の如何なる抗体であり、単鎖scFv抗体とscFv-Fc抗体およびその断片を含む)をコーディングする。
【0177】
本発明の一部の核酸は、表1に示される如何なる抗体の重鎖可変領域またはその変異体をコーディングするヌクレオチド配列および/または表1に示される対応する抗体の軽鎖可変領域またはその変異体のヌクレオチド配列を含む。具体的な一実施形態において、核酸分子は、表1に示されるDNA VH配列および/またはDNA VL配列である。本発明の一部の他の核酸分子は、表1中に示される核酸分子のヌクレオチド配列と基本的に同じ(例えば、少なくとも65%、80%、95%、または99%の同一性)であるヌクレオチド配列を含む。適切な発現ベクターが発現する時、これらのポリヌクレオチドによってコーディングされるポリペプチドは、BCMA抗原結合能力を示すことができる。
【0178】
本発明において、さらにポリヌクレオチドを提供し、前記ポリヌクレオチドは上記記載されたBCMAと結合する抗体に由来する重鎖VHまたは軽鎖VL配列の少なくとも一つのCDR領域と通常の全ての3つのCDR領域をコーディングする。更なる一部の実施形態において、ポリヌクレオチドは、上記記載されたBCMAと結合する抗体の重鎖および/または軽鎖の完全または基本的に完全な可変領域配列をコーディングする。
【0179】
当業者が明らかになるように、遺伝暗号の退化性のため、各抗体またはポリペプチドアミノ酸配列は、複数の核酸配列によってコーディングすることができる。
【0180】
本発明の一部の核酸配列は、重鎖VHをコーディングするヌクレオチド配列を含み、それは、(i)配列番号75-82から選択されるヌクレオチド配列または例えば、少なくとも80%、90%または99%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。一部の他の核酸配列は、軽鎖VLをコーディングするヌクレオチド配列を含み、それは、配列番号83-92のヌクレオチド配列または例えば、少なくとも80%、90%または99%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0181】
一部の実施形態において、本発明の核酸配列は、本発明の上記如何なる単鎖scFv抗体をコーディングする。一部の実施形態において、scFv抗体をコーディングする本発明の核酸配列は、以下に選択される重鎖VH配列をコーディングするヌクレオチド配列と軽鎖VL配列をコーディングするヌクレオチド配列を含む。
【0182】
(i)配列番号75の配列またはそれと基本的に同じ配列、および配列番号83の配列またはそれと基本的に同じ配列であり、
(ii)配列番号76の配列またはそれと基本的に同じ配列、および配列番号84または85の配列またはそれと基本的に同じ配列であり、
(iii)配列番号77の配列またはそれと基本的に同じ配列、および配列番号86の配列またはそれと基本的に同じ配列であり、
(iv)配列番号78の配列またはそれと基本的に同じ配列、および配列番号87の配列またはそれと基本的に同じ配列であり、
(v)配列番号79の配列またはそれと基本的に同じ配列、および配列番号88の配列またはそれと基本的に同じ配列であり、
(vi)配列番号80の配列またはそれと基本的に同じ配列、および配列番号89の配列またはそれと基本的に同じ配列であり、
(vii)配列番号81の配列またはそれと基本的に同じ配列、および配列番号90の配列またはそれと基本的に同じ配列であり、
(viii)配列番号82の配列またはそれと基本的に同じ配列、および配列番号91または92の配列またはそれと基本的に同じ配列である。
【0183】
好ましい一実施形態において、scFv抗体をコーディングする本発明の核酸は、さらに、リンカーをコーディングするヌクレオチド配列、例えば、配列番号94に示される配列またはそれと基本的に同じ配列を含む。
【0184】
さらに好ましい一実施形態において、scFv抗体をコーディングする本発明の核酸は、配列番号100、103、106、109、112、115、118、121、124と127から選択される配列、またはそれと基本的に同じ配列を含む。
【0185】
上記のいずれか一つの実施形態において、好ましい一態様において、「基本的に同じ」ヌクレオチド配列は、参照ヌクレオチド配列と配列に少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または更に高い同一性を有する配列を指す。ヌクレオチド配列の同一性は、本分野の公知される各配列照合方法を使用して確定することができる。例えば、NCBI (National Center for Biotechnology Information、Bethesda、MD)のウェブサイトからBLAST配列照合検索ツールを入手することができる。典型的には、パーセント同一性は、NCBI Blastのデフォルトパラメータで行われる。
【0186】
初めから固相化DNAを合成すること、またはBCAMと結合する抗体またはその結合断片をコーディングする既存の配列(例えば、表1-3に示される配列)をPCR突然変異誘発することによって、これらのポリヌクレオチド配列を生成することができる。核酸の直接的な化学合成は、Narang et al.、1979、Meth.Enzymol.68:90のリン酸トリエステル法と、Brown et al.、Meth.Enzymol.68:109、1979のリン酸ジエステル法と、Beaucage et al.、Tetra. Lett.、22:1859、1981のジエチルホスホルイミド法と米国特許号4,458,066の固相支持法のような本分野に既知の方法によって完成することができる。PCRによるポリヌクレオチド配列の突然変異導入は、例えばPCR Technology:Principles and Applications for DNA Amplification、H.A.Erlich (編集)、Freeman Press、NY、NY、1992、PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications、Innis et al. (編集)、Academic Press、San Diego、CA、1990、Mattila et al.、Nucleic Acids Res.19:967、1991、and Eckert et al.、PCR Methods and Applications1:17、1991に説明されたように行うことができる。
【0187】
C.抗体の製造
抗体は、例えばUS4,816,567に記載されるように、組換え法と組成物を使用して製造することができる。
【0188】
一実施形態において、本出願に記載のBCMAと結合する抗体をコーディングする単離された核酸を含むベクターを提供する。この核酸は、抗体のVLを含むアミノ酸配列および/または抗体のVHを含むアミノ酸配列をコーディングすることができる。更なる実施形態において、ベクターは発現ベクターである。更なる実施形態において、本発明は、この核酸を含む宿主細胞を提供する。一実施形態において、宿主細胞は(例えば、既に以下のベクターで転化される)、(1)抗体VLを含有するアミノ酸配列と抗体VHを含有するアミノ酸配列をコーディングする核酸を含むベクター、または(2)抗体VLを含有するアミノ酸配列をコーディングする核酸を含む第1ベクターと抗体VHを含有するアミノ酸配列をコーディングする核酸を含む第2ベクターを含む。一実施形態において、宿主細胞は真核であり、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HEK293細胞、またはリンパ様細胞(例えば、Y0、NS0、Sp20細胞)である。一実施形態において、抗体の発現に適する条件で上記に提供したような抗体をコーディングする核酸を含む宿主細胞を培養し、かつ、任意的に宿主細胞(または宿主細胞培地)から抗体を回収する、抗BCMA抗体を製造する方法を提供する。
【0189】
抗BCMA抗体の組換え製造に対して、抗体をコーディングする核酸、例えば、上記のような核酸を分離することができ、さらにクローニングおよび/または宿主細胞における発現のために1つまたは複数のベクター内に挿入する。この核酸は、通常のプロセス(例えば、抗体の重鎖と軽鎖可変領域をコーディングする遺伝子と特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによる)によって、容易に分離しシークエンシングすることが可能である。
【0190】
複数の発現ベクターは、BCMAと結合する抗体鎖(例えば、本発明の如何なる抗体、scFv抗体と全長抗体を含む)をコーディングするポリヌクレオチドを発現するために用いられる。ウイルスに基づいた発現ベクターと非ウイルス発現ベクターは、何れも哺乳動物の宿主細胞に抗体を生成するために用いられる。非ウイルスベクターとシステムは、プラスミド、遊離したベクターと人工染色体を含み、一般的には、タンパク質またはRNAを発現するための発現カセット(例えば、Harrington et al.、Nat Genet 15:345、1997を参照する)を含む。有用なウイルスベクターは、ウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、疱疹ウイルスを逆転写するベクターと、SV40、パピローマウイルス、HBP EBウイルスウイルス、ワクシニアウイルスベクターとSemliki Forestウイルス(SFV)に基づくベクターとを含む。Smith、Annu.Rev.Microbiol.49:807、1995とRosenfeld et al.、Cell 68:143、1992を参照する。
【0191】
発現ベクターの選択は、それに存在し当該ベクターを発現する所望の宿主細胞に依存する。一般的に、発現ベクターは、BCMAと結合する抗体鎖またはポリペプチドをコーディングするポリヌクレオチドに有効に接続されるプロモーターを含有する。プロモーターの他に、BCMAと結合する抗体鎖または断片を効果的に発現するためのその他の調節素子を要求しまたは必要とする可能性がある。これらの素子は、通常、ATG開始コドンと近隣するリボソーム結合部位またはその他配列を含む。その他、使用される細胞システムに適用されるエンハンサーを取り込むことによって発現の効率(例えば、Scharf et al.、Results Probl.Cell Differ.20:125、1994とBittner et al.、Meth.Enzymol.、153:516、1987を参照する)を強化することができる。例えば、SV40エンハンサーまたはCMVエンハンサーは、哺乳動物の宿主細胞における発現を高めるために用いられる。
【0192】
発現ベクターは、さらに、BCMA結合ポリペプチドを含有する融合タンパク質を形成するように、分泌シグナル配列を提供することができる。または、ベクターを挿入する前に、BCMAと結合する抗体/ポリペプチド配列をシグナル配列に接続することができる。好ましい一実施形態において、シグナルペプチドは、配列番号133に示されるアミノ酸配列を含む。BCMAと結合する抗体の軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインをコーディングする配列を受け取るためのベクターは、さらに定常領域または他の部分をコーディングすることがある。このようなベクターは、可変領域を定常領域との融合タンパクに発現するように許可し、それによって完全な抗体またはその断片の生成を引き起こす。通常、このような定常領域は、ヒトの定常領域、例えば、ヒトIgG1 Fc領域である。好ましい一実施形態において、可変領域と融合するFc領域は、配列番号132に示されるアミノ酸配列を含む。
【0193】
ベクターのクローンまたは発現のための適切な宿主細胞は、原核または真核細胞を含む。例えば、特に、グリコシル化とFcエフェクター機能が不要な場合、抗体は細菌に生成することができる。抗体断片とポリペプチドの細菌における発現に対して、例えば、US5,648,237、US5,789,199とUS5,840,523を参照する。(さらに、Charlton、K.A.、Methods in Molecular Biology、第248卷、Lo、B.K.C.(編集)、Humana Press、Totowa、NJ(2003)、pp.245-254に示される、抗体断片の大腸菌における発現を参照する)。発現後、抗体が可溶性画分において細菌細胞のペースト状物から分離して、さらに精製することができる。原核生物の他、糸状菌または酵母などのような真核微生物は、抗体コーディングベクターのための適切なクローンまたは発現の宿主であり、グリコシル化経路が既に「ヒト化」される真菌と酵母菌株を含み、これは、一部または完全のヒトグリコシル化モードを有する抗体の生成を引き起こす。Gerngross、Nat.Biotech.22(2004)1409-1414とLi,H. et al.、Nat.Biotech(2006)24:210-215を参照する。グリコシル化抗体の発現のための宿主細胞は、多細胞生物(無脊椎動物と脊椎動物)に由来することもできる。無脊椎動物細胞の実例は、植物と昆虫細胞を含む。多くのバキュロウイルス株が昆虫細胞と組み合わせて使用することができ、特に、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞のトランスフェクションに用いられることが既に鑑定される。植物細胞の培養物も宿主として用いることができる。例えば、US5,959,177、US6,040,498、US6,420,548、US7,125,978とUS6,417,429(遺伝子導入植物において抗体を製造するPLANTIBODIESTM技術を説明する)を参照する。宿主として用いられる脊椎動物細胞は、例えば、浮遊状態における成長が適応化した有用の哺乳動物細胞系を含む。有用の哺乳動物宿主細胞系のその他の実例は、SV40形質転換のサル腎臓CV1系(COS-7)、ヒト胎児腎臓系(293または例えばGraham,F.L. et al.、J.Gen Virol.36(1997)59に説明した293細胞)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK);マウスセルトリ細胞(例えばMather, J.P.、Biol.Reprod.23(1980)243-251に説明したTM4細胞)、サル腎臓細胞(CV1)、アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76)、ヒト子宮頸がん細胞(HELA)、犬腎臓細胞(MDCK)、Buffaloラット肝細胞(BRL 3A)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝細胞(Hep G2)、マウス乳房腫瘍(MMT 060562)、TRI細胞、例えばMather,J.P. et al.、Annals N.Y.Acad.Sci.383 (1982)44-68に説明し、MRC 5細胞、とFS4細胞である。その他の有用の哺乳動物宿主細胞系は、中国ハムスタ-卵巣(CHO)細胞を含み、DHFRCHO細胞(Urlaub,G. et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA77(1980)4216-4220)とY0、NS0とSp2/0のような骨髄腫細胞系を含む。抗体の製造に適切な一部の哺乳動物宿主細胞系の概述に対して、例えば、Yazaki,P.とWu,A.M.、Methods in Molecular Biology、Vol.248、Lo.B.K.C.(編集)、Humana Press、Totowa、NJ(2004)pp.255-268を参照する。一部の好ましい実施形態において、哺乳動物宿主細胞はBCMAと結合する本発明の抗体のポリペプチドを発現して生成するために用いられる。
【0194】
D.抗体の選別、鑑定と特徴付け
本分野に既知の各種の試験によって、その物理的/化学的特性および/または生物的活性に対して、本出願に提供される抗BCMA抗体を選別、鑑定または特徴付けする。
【0195】
ヒト抗体を発現する酵母ディスプレイライブラリーから注目される標的抗原と高親和性で結合する酵母を選択することができる。酵母の表面に抗体または抗体断片をレンダリングまたはディスプレイしおよびライブラリーを選別する多くの方法が存在し、例えばUS20110076752A1、US9845464B2、Boder and Wittrup、1997、Nat.Biotechnol.、15,553-557、Blasie et al.2004、Gene、342、211-218、Sazinsky et al.2008、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、105、20167-20172、Tasumi et al.2009、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、106、12891-12896、KontermannとDubel、2010、Antibody Engineering、Springer Protocols、KurodaとUeda 2011、Biotechnol.Lett.、33、1-9、Rakestraw et al.2011、PEDS、24、525-530、邵栄光ら(編集)、抗体薬物研究と応用、人民衛生出版社(2013)を参照する。例えば、以下の非制限的な方式によって酵母ディスプレイライブラリー選別を行うことができ、先ず、磁気ビーズ選別(MACS)によって選別することができる。例えば、IgGまたは抗体断片をレンダリングする酵母群をビオチン化標的抗原としばらくの間に接触してから、洗浄して、ストレプトアビジン磁気ビーズ(Miltenyi、Biotecから得られる)と孵化することができ、LS磁気柱(Miltenyi、Biotecから得られる)に取得することで標的抗原と結合する酵母細胞をエンリッチメントする。その後、FACS技術によって複数回エンリッチメントすることができる。FACS分取において、酵母群体を、濃度を低減したビオチン化の標的抗原(高親和性抗体を選別するために)または異なる生物種に由来する抗原同族体(異なる生物種の交差反応性の傾向を有する抗体を選別するために)と接触した後、細胞を洗浄して、二種類標準溶液(例えば、ストレプトアビジン-PEと抗ヒトLC-FITCの混合物を含む)に再懸濁して氷で孵化し、細胞を洗浄してからFACS洗浄緩衝液のような緩衝液に再懸濁して、FACSAria(BD Bioscience)のようなフローサイトメトリーにLC-FITC陽性(IgGレンダリング)とストレプトアビジン-PE陽性(標的結合)に発現される酵母細胞を分取し、更なる増殖と選択のために用いられる。FACS分取において、標的抗原とIgGレンダリング酵母の代わりに、負選択試薬、例えばXu et al.(Protein Engineering、Design&Selection、2013、Vol26、No.10、pp663-670)に説明した多重特異性試薬(PSR)を用いて孵化を行うこともでき、上記の同じ二種類標準とFACS分取によって、抗体の非特異性結合および後続のドラッガブル問題を弱くする。
【0196】
抗体の鑑定に対して、その抗原結合活性をもって、例えば、ELISA、αLISA、ウエスタンブロッティング、抗体またはインバータアレイなどのような既知の方法および実施例に記載の方法によって、本発明の抗体を鑑定または特徴付けることができる。
【0197】
例えば、抗体をガラスまたはニトロセルロースチップに滴下することができる。BCMAを含む溶液でスライドを阻害して孵化して、未結合の抗体を除去するように洗浄し、蛍光でマークされた対応する二次抗体で結合された抗体を検出する。蛍光スライドスキャナーで蛍光信号を測定する。類似的に、インバータアレイに対して、組換えBCMA、細胞上清、細胞または組織溶解液、体液などをガラスまたはニトロセルロースチップに滴下する。スライドを密封してBCMAにおける所定のエピトープに対する抗体でアレイを孵化する。未結合の抗体を洗浄し、蛍光でマークされた対応する二次抗体で結合された抗体を検出する。蛍光信号が蛍光スライドスキャナーによって測定される(Dernick,G. et al.、J.Lipid Res.、52(2011)2323-2331)。
【0198】
ForteBio測定法で抗体を検出することができる。ForteBio親和性測定は、既存の方法(Estep、P et al.、High throughput solution Based measurement of antibody-antigen affinity and epitope binning.MAbs、2013.5(2):p.270-8)に従って行うことができる。例えば、AHQセンサーを分析緩衝液の正中線の下で30分間平衡を保ち、その後、正中線の上で60秒検出して基線を立てる。その後、精製された抗体を分析緩衝液の正中線で入れたAHQセンサーを、100nM抗原に暴露し5分間作用し、センサーを分析緩衝液に転移して分析緩衝液の正中線の下で5分間測定する。1:1の結合モデルを使用して動力学分析を行う。
【0199】
フローサイトメトリーによって抗体と表面にBCMAを発現する細胞との結合を検出することもできる。例えば、BCMAを発現するH929細胞と一連の希釈された抗体をPBS 1% BSAに、氷にしばらくの間に(例えば、30分間)孵化することができる。その後、二次抗体(例えば、フィコビリンでマークされた二次抗体)とPBS 1% BSAに、氷にしばらくの間に(例えば、30分間)孵化することができる。細胞を洗浄した後フローサイトメトリーによって細胞を分析する。フローサイトメトリーはAccuri C6システム(BD Biosciences)に行われ、GraphpadソフトウェアによってEC50値を計算する。
【0200】
E.融合物と複合体
他の態様において、本発明は、本発明に係る抗体を含む融合物または複合体を提供する。本発明の抗体を異種分子に融合または接合することによって融合物または複合体を生成することができる。一部の実施形態において、本発明に係る抗体のポリペプチドは、一つまたは複数の異種分子と融合または接合することができ、前記異種分子は、タンパク/ポリペプチド/ペプチド、マーカー、薬物と細胞傷害剤を含むが、これらに限定されない。タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドまたは化学分子が抗体と融合または接合する方法は本分野の既知のことである。例えば、米国特許号5,336,603、5,622,929とEP367,166を参照する。
【0201】
一実施形態において、本発明に係る抗体は、異種タンパクまたはポリペプチドまたはペプチドと組換えて融合することで融合タンパクを形成する。もう一つの実施形態において、本発明に係る抗体は、タンパク分子または非タンパク分子と接合することで複合体を生じる。
【0202】
一部の実施形態において、本発明に係る抗体は、全長抗体または抗体断片の形式で異種分子と融合または接合することができる。好ましい一実施形態において、本発明に係る単鎖scFv抗体は、融合または接合に用いられる。更に好ましい実施形態において、本発明に係る単鎖scFvを含む融合タンパクを提供する。このような融合タンパクは、本分野に既知の組換え法によって容易に製造することができる。もう一つの好ましい実施形態において、本発明に係る単鎖scFvを含む複合体、例えば、本発明のscFvと非タンパク薬物分子を含む複合体を提供する。
【0203】
リンカーは本発明に係る融合物および/または複合体における異なる実体を共有結合して接続するために用いられる。リンカーは、化学リンカーまたは単鎖ペプチドリンカーを含む。一部の実施形態において、本発明に係る単鎖抗体、例えば、scFv抗体は、ペプチドリンカーによってその他のペプチド断片またはタンパク質に融合される。一部の実施形態において、本発明に係る単鎖抗体、例えばscFv抗体は、化学リンカーによってその他の分子、例えば、マーカーまたは薬物分子に接合される。
【0204】
本発明を形成するためのペプチドリンカーは、アミノ酸残基からなるペプチドを含む。このようなリンカーペプチドは、通常、フレキシブルであり、scFvのようなそれに接続される抗原結合部分が独立して移動できる。リンカーペプチドの長さは、当業者が実際の状況によって容易に決定するものであり、例えば、長さが少なくとも4~15個のアミノ酸であり、またはより長く、例えば、約20~25個のアミノ酸である。
【0205】
本発明を形成するための化学リンカーは、例えば、各カップリング剤を含む。カップリング剤の実例は、N-スクシンイミド-3-(2-ピリジルジスルフィド基)プロピオン酸エステル(SPDP)、スクシンイミド-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボン酸エステル(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミド酸エステルの双官能誘導物(例えば、ヘキサジイミド酸二メチルHCl)、活性化エステル(例えば、オクタン二酸ジスクシンイミドエステル)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ジアゾ化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾ誘導物(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トルエン2,6-ジイソシアネート)および双活性フルオロ化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)がある。その他、リンカーは、ポリペプチドを標的部位に輸送した後の釈放に役立つ「細胞溶解の可能なリンカー」であることができる。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ感度リンカー、光不安定性リンカー、ジメチルリンカーまたは二硫化物を含むリンカー(Chari et al.、Cancer Research 52(1992)127-131;US5,208,020)を使用することができる。
【0206】
F.診断と検出のための方法と組成物
一態様において、本発明は、本発明に係る抗BCMA抗体、融合物または複合体の診断と検出における用途を提供する。本出願に提供される抗BCMA抗体、融合物または複合体はいずれも、生物試料におけるヒトBCMAの存在を検出するために用いられる。本出願に用いられる用語「検出」は、定量的または定性的な検出を含む。例示的な検出方法は、免疫組織化学、免疫細胞化学、フローサイトメトリー(例えば、FACS)、抗体分子による複合の磁気ビーズ、ELISA測定法、PCR-技術(例えば、RT-PCR)を含むが、これらに限定されない。一部の実施形態において、生物試料は、体液、細胞または組織を含む。一部の実施形態において、生物試料は、血、血清または生物に由来するその他の液体試料である。
【0207】
一実施形態において、抗BCMA抗体、融合物または複合体の診断または検出のための方法を提供する。更なる態様において、生物試料におけるBCMAの存在を検出する方法を提供する。一部の実施形態において、当該方法は、生物試料を抗BCMA抗体、融合物または複合体がBCMAとの結合を許可する条件において本出願に記載の抗BCMA抗体、融合物または複合体と接触し、抗BCMA抗体、融合物または複合体とBCMAとの間に複合物を形成するか否かを検出することを含む。このような方法は、インビトロでもインビボ方法でもよい。一部の実施形態において、抗BCMA抗体、融合物または複合体を、例えば、BCMAが患者の選択した生物的マーカーに用いられる場合、抗BCMA抗体治療に適切な対象を選択するために用いる。本発明の抗体、融合物または複合体を使用して診断できる例示的な病症は、B細胞関連疾患、例えば、多発性骨髄腫を含む。一部の実施形態において、本発明の抗体、融合物または複合体で多発性骨髄腫(MM)患者を分類する方法を提供し、前記方法は、前記患者のB細胞、好ましくは悪性B細胞が前記B細胞の表面にBCMAタンパク質を発現するか否かを決定することを含み、前記B細胞がその表面にBCMAタンパク質を発現すれば、前記患者がそれに応じてBCMAを標的部位としての治療剤(例えば、抗-BCMA抗体)を用いて治療する可能性がある。一部の実施形態において、抗BCMA抗体は、診断剤または検出可能な剤と接合することができる。一部の実施形態において、本発明は、本発明の如何なる抗BCMA抗体、融合物または複合体を含む診断または検出のための試薬キットを提供する。
【0208】
G.治療のための方法と組成物
他の態様において、本発明は、前記対象に有效量の本発明に係る抗体またはその抗原結合断片、または本発明の融合物または複合体を投与することを含むB細胞関連疾患の治療方法に関する。
【0209】
用語「個体」または「対象」は、互いに切り替えて用いることができ、哺乳動物を指す。哺乳動物は、家畜(例えば、ウシ、ヤギ、ネコ、イヌとウマ)、霊長類(例えば、ヒトとサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、げっ歯類(例えば、マウスとラット)を含むが、これらに限定されない。特に、対象はヒトである。
【0210】
用語「治療」は、治療を受けている個体における疾病の天然過程を変化させようとする臨床介入を指す。所望の治療效果は、疾病の出現または再発を防止すること、症状を軽減すること、疾病の如何なる直接的または間接的病理学結果を減少すること、転移を防止すること、病状進展速度を低減すること、疾病の状態を改善または緩和させること、および、予後を緩和または改善させることを含むが、これらに限定されない。
【0211】
B細胞関連疾患は、異常なB細胞の活性に関連する病症であり、B細胞悪性腫瘍、形質細胞悪性腫瘍、自身免疫疾病を含むが、これらに限定されない。BCMA抗体を使用して治療できる例示的な病症は、例えば、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、未定悪性度のB細胞増殖、リンパ腫様肉芽腫症、移植後リンパ増生疾患、免疫調節病症、関節リウマチ、重症筋無力症、特発性血小板減少性紫斑病、抗リン脂質症候群、シャーガス病、グレーヴス病、ウェゲナー肉芽腫症、結節性多発動脈炎、シェーグレン症候群、尋常性天疱瘡、強皮症、多発性硬化症、ANCA関連血管炎、グッドパスチャー病、川崎病、自己免疫性溶血性貧血と急速進行性糸球体腎炎、重鎖病、原発性または免疫細胞関連澱粉様変性、または意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症、全身性エリテマトーデス、リューマチ性関節炎を含む。
【0212】
実施例に示されるように、本発明者は、ヒト抗体ライブラリーから選別された抗体配列に基づいて本発明の抗体を構成する。従って、有利であることは、一部の実施形態において、本発明に係る抗体は完全ヒト化VH領域と完全ヒト化VL領域のアミノ酸配列を含む完全ヒト抗体であり、例えば、表1に示される抗体、および表3に示される単鎖scFvおよびそれによって構成されるヒトhFc断片を含むscFv-Fc抗体である。一部の実施形態において、本発明に係る複合体と融合物は、完全ヒト抗体、例えば完全ヒト単鎖scFvを含む複合体と融合物である。従って、好ましい一態様において、本発明の抗体、融合物と複合体は、特にヒトの治療応用に適用される。一部の好ましい実施形態において、本発明に係る抗体、融合物と複合体は、ヒトのB細胞関連疾患、例えば、B細胞悪性腫瘍、好ましくは、多発性骨髄腫(MM)または非ホジキンリンパ腫(NHL)の治療に用いられる。一部の実施形態において、本発明に係る抗BCMA抗体、融合物と複合体の抗腫瘍作用は、例えば、腫瘍の体積の減少、腫瘍細胞の数の減少、腫瘍細胞の増殖または腫瘍細胞の生存の減少を含むが、これらに限定されない。
【0213】
多発性骨髄腫は、成熟した形質細胞のB細胞悪性腫瘍である。骨髓に、クローン性形質細胞が異常に増生し、近隣の骨を侵入することができ、および、血液を侵入することがある。多発性骨髄腫の変異体形式は、顕性の多発性骨髄腫、スモウルダリング多発性骨髄腫、形質細胞白血病、非分泌型多発性骨髄腫、IgD型多発性骨髄腫、骨硬化性骨髄腫、骨孤立性形質細胞腫および髓外形質細胞腫を含む。(例えば、Braunwald et al.(編集)、Harrison’s Principles of Internal Medicine、第15版(McGraw-Hill 2001)を参照する)。
【0214】
複数の異なる種類の非ホジキンリンパ腫が存在する。例えば、非ホジキンリンパ腫は、侵入型(迅速に生長する)と不活性型(遅く成長する)に分けることができる。非ホジキンリンパ腫(NHL)は、バーキットリンパ腫、慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫(CLL/SLL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、免疫母細胞性大細胞リンパ腫、前体Bリンパ母細胞性リンパ腫およびマントル細胞リンパ腫を含む。骨髓または幹細胞の移植の後に発生するリンパ腫は、通常、B細胞非ホジキンリンパ腫である。
【0215】
本発明のBCMA抗体、融合物と複合体をその他の治療形式と組み合せて投与して、上記疾病、例えば、腫瘍の治療に用いることができることが理解すべきである。前記その他の治療形式は、治療剤、放射治療、化学療法、移植、免疫療法などを含む。一部の実施形態において、本発明に係る抗体分子、融合物と複合体とその他の治療剤と組み合わせて用いられる。例示的な治療剤は、サイトカイン、成長因子、ステロイド、NSAID、DMARD、抗炎剤、化学療法剤、放射治療剤、治療性抗体またはその他の活性剤と補助剤、例えば、抗腫瘍薬物を含む。
【0216】
H.組成物と製剤
本発明は、さらに本出願のいずれか一つまたは複数のBCMA結合抗体分子、融合物と複合体、ポリヌクレオチド、ベクターまたは宿主細胞を含む組成物を考慮する。組成物は、医薬組成物を含むが、それに限定されない。医薬組成物は、細胞または動物に単独で用いても一つまたは複数のその他の治療形式と組み合せ用いることができる。
【0217】
本発明に係る抗体、融合物と複合体の薬物製剤を製造でき、例えば、所望の純度を有する抗体、融合物と複合体を、一つまたは複数の好ましい薬剤として許容可能なベクター(Remington’s Pharmaceutical Science、第16版、Osol、A.(編集)(1980))と混合することによって、凍結乾燥製剤または水溶液の形式で製造する。薬剤として許容可能なベクターは、用いられる剤量と濃度下で受容者に対して一般的に毒がなく、かつ、リン酸塩、クエン酸塩とその他の有机酸のような緩衝剤;アスコルビン酸とメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;ベンゼンフェノール、ブタノールまたはベンジルアルコール;p-ヒドロキシ安息香酸メチルまたはp-ヒドロキシ安息香酸プロピルのようなp-ヒドロキシ安息香酸アルキル;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノールとm-クレゾール)、低分子量(約10個以下の残基)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンのようなタンパク質;ポリ(ビニルピロリドン)のような親水ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギナーゼ、ヒスチジン、アルギニンまたはリシンのようなアミノ酸;単糖、二糖、および、グルコース、マンノースまたはデキストリンを含むその他の炭水化物;EDTAのようなキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトールのような糖;ナトリウムのような塩形成対イオン;金属複合物(例えば、Zn-タンパク質複合物);および/またはポリエチレングリコール(PEG)のような非イオン型表面活性剤を含むが、これらに限定されない。
【0218】
例示的な凍結乾燥抗体製剤は、US6,267,958に説明される。水性抗体製剤は、US6,171,586とWO2006/044908に記載するものを含み、以下の製剤は、ヒスチジン-アセテート緩衝液を含む。
【0219】
本出願における製剤は、さらに、治療される所定の適応症に対して必要に応じて一つ以上の活性成分を含むことができ、好ましくは、相補活性かつ互いに不利な影響を与えない活性成分を有する。このような活性成分は、予期の目的に有効な量で適切に組み合わせた形で存在する。
【0220】
以下の実施例を本発明の理解を補助するように説明する。如何なる形式で実施例を、本発明の保護範囲を制限するものと解釈すべきではない。
【実施例
【0221】
実施例1.酵母ディスプレイ技術による抗BCMA完全ヒト化抗体の選別
酵母ディスプレイ技術によって、総多様性が1×10より大きい6個の合成抗体ライブラリーからBCMAと特異的に結合する完全ヒト化抗体(ライブラリーの設計と構成がWO2009036379、WO2010105256、WO2012009568を参照できる)を選別する。要するに、選別過程は、先ず、第1回目の選別は、磁気ビーズ分離方法(MACS)によってビオチンでマークされた、Fcと融合される組換えヒトBCMAで、6個の異なる合成抗体ライブラリーを選別することによって完成し、第2回目の選別は、基本的に、Chao et al. Nature Protocols、2006の方法に従って、フローサイトメトリー(FACS)によってFcと融合するサルおよびマウスのBCMAで完成し、第3回目の選別において、FACS技術によって、基本的にXu et al. Protein Engineering、Design&Selection、2013の説明に従って、多重特異性試薬(PSR)を用いて抗体ライブラリーにおける抗体を陰性選択し、抗体の非特異的な結合および後続のドラッガブル問題を弱くし、第4回目の選別は、FACS技術によって、Hisラベルのヒト化BCMA単体タンパクを用いて完成し、最後の選別は、FACS技術によって、それぞれヒト、サルとマウスのBCMA特異的な抗体をエンリッチメントする。
【0222】
量産最適化は、最初の選別における一般的なステップである。要するに、初期選別にエンリッチメントされる抗体群体の重鎖領域(本段階の多様性が10~10の間にある)を分離してそれを酵母菌における天然ヒト軽鎖配列ライブラリーと改めて組み合せることによって完成する。この過程は、軽鎖束の組換え(light chain batch shuffle、LCBS)と呼ばれ、最終に、ヒト化BCMA結合傾向を有する、重鎖/軽鎖ペアリングの多様性が10~10の間にある抗体ライブラリーを製造する。当該抗体ライブラリーは、上記段落に説明した1回の磁気ビーズ選別と4回のフローサイトメトリー選別を経て、ヒト、サルとマウスBCMAの特異的な抗体を更にエンリッチメントする。上記のように、この過程において、それぞれヒト、サルとマウスのBCMAとFcの融合タンパク、およびHisラベルのヒト化BCMA単体タンパクを使用して陽性選別とし、PSRを陰性選別とする。
【0223】
上記選別過程を完成した後、エンリッチメントされた特異的な抗体配列を含む酵母群体を寒天プレートに塗り、所定の抗体遺伝子を含む酵母単クローンコロニーを得ることができる。クローンを取って、sanger法によってその可変領域を順位付けし、約460個の配列が独特なH3:L3抗体(即ち、独特な重鎖CDR3領域と軽鎖CDR3領域対を有する抗体)が鑑定される。その後、酵母が発現しタンパクA親和クロマトグラフィーの方法を用いて精製して一部の抗体を得る。
【0224】
これらの抗体と複数の組換えBCMAタンパク質およびBCMA安定的組換えたCHO-S細胞系およびBCMA陽性腫瘍細胞系NCI-H929との結合能力を更に測定することで、最終的にNCI-H929との親和性がよい10株のクローン株を得て更なる分析を行う。これらの抗体もサルBCMAと一定の交差反応性を有することが示される。上記表1に、この10株の抗体分子のアミノ酸配列および対応するヌクレオチド配列を示す。
【0225】
実施例2.酵母発現抗体とNCI-H929細胞との親和性の検証
フローサイトメトリーによって、上記10株のNCI-H929と親和性がよい酵母発現抗体および1株のNCI-H929と親和性がない抗体(ADI-34819)(ネガティブコントロールとする)を更なる細胞結合検証を行う。具体的な方法は、以下のとおりである。
1.ヒトNCI-H929(ATCC、CRL-9068)細胞を取って、細胞の密度を2×10/mlに調整し、96メッシュのマイクロプレートの各孔に100μlを入れ、400Gで5min遠心して、上清を除去する。
2.抗BCMA抗体を400nM濃度から、0.1%牛血清アルブミン(BSA)を含むPBSに3倍の勾配で合計12個のスポットまでに希釈し続け、各メッシュに100μlの希釈した抗体を入れ、4℃で30min孵化する。
3.400Gで5min遠心して、PBSを入れて二回洗浄して、その後、各メッシュに100μlのPBS(1% BSA)に希釈された二次抗体(フィコビリンタンパク(Phycoerythrin、PE)でマークされた羊抗ヒトIgG抗体、SouthernBiotech、最終の濃度が5μg/ml)を入れ、4℃で30min孵化する(光を避ける)。
4.400Gで5min遠心して、PBSを入れて二回洗浄して各メッシュを100μl PBSで細胞を再懸濁する。Accuri C6システム(BD Bioscience)にフローサイトメトリーを行い、PE陽性信号を検出し、C6ソフトウェアに基づいてMFI計算する。GraphPadソフトウェアでEC50値を計算する。
【0226】
検出結果は図1と以下の表4に示される。実験結果から、10株の抗体が400nM濃度でいずれもNCI-H929細胞と強い親和性を有し、抗体濃度の希釈につれて、それとNCI-H929の親和性も次第に弱くなることが確認された。
【0227】
【表6】
【0228】
実施例3.scFv-hFc組換え単鎖抗体の発現ベクターの構成
scFvの形の候補抗と標的の親和性を検証するために、それぞれ上記10株の抗体の単鎖抗体の可変領域(scFv)とヒトFc断片の組換えタンパクの発現ベクターを構成する。同時に、ADI-34819抗体の組換え単鎖抗体の発現ベクター(ネガティブコントロールとする)、およびUS20170226216 A1に公開されるhuBCMA-10配列の組換え単鎖抗体の発現ベクター(標準品コントロールとする)も構成する。構成されたこれらのscFv-Fc組換えタンパクのアミノ酸配列およびその対応するコーディングヌクレオチド配列が上記表3に示される。
【0229】
表3に示されるscFv-Fc組換えタンパクを発現する発現ベクターを構成する。要するに、エンドヌクレアーゼによってマウスκ軽鎖シグナルペプチド(METDTLLLWVLLLWVPGSTG、配列番号133、番号配列ATGGAGACCGACACCCTGCTGCTCTGGGTCCTGCTGC TGTGGGT GCCCG GATCCACAGGA、配列番号134)とヒトIgG1 Fc番号配列(配列番号132)付きpDD1-hFcベクター(pDD1-hFcベクターがpTT5ベクターに基づき、前記シグナルペプチドとhFcコード遺伝子を挿入することで構成する)を制限し、同族組換えの方法によって合成されたscFv配列を軽鎖シグナルペプチドとhFcのコード遺伝子との間にクローニングして融合発現を形成する。図2はベクターの構成を示す模式図である。
【0230】
実施例4.scFv-hFc組換え単鎖抗体の発現
所要のトランスフェクションの体積によってHEK293細胞を培養し、トランスフェクションの前の日に細胞密度を1.2×10/mlに調整する。
1.3mLOptiMEM培地(Gibco、31985-070)を取ってトランスフェクション緩衝液として、それぞれ上記に対応するscFv-hFc組換え単鎖抗体のコード遺伝子を携帯するプラスミド30μgを均一まで混合してから濾過して5min静置する。
2.90μLの1mg/mLのポリエチレンイミン(PEI)(Polysciences、23966)をプラスミド-OptiMEM混合液に入れ、均一まで混合してから室温で15min孵化する。混合物を穏やかに細胞に入れ、36.5℃で、8%のCO下で培養する。
3.20h後、0.6mLの200g/LのFEED(大豆ペプトンPhytone Peptone(BD、211906)と植物ペプトンPhytone(BD、210931)同比例)、0.3mLの200g/Lのグルコース母溶液、30μLの2.2Mバルプロ酸ナトリウム塩(VPA)(Sigma、P4543)を追加する。
4.活力が60%より低いまでに培養し続けて、上清を収集し、濾過後親和クロマトグラフィー精製をする。
【0231】
実施例5.タンパクA法によるscFv-hFc組換え単鎖抗体の精製
1.超純水でフィラーおよび重力柱を洗浄し、フィラー保護液を除去する。
2.0.1M NaOHで重力柱およびフィラーを2h浸透する。各重力柱に300μLタンパクA親和クロマトグラフィーメディア(Mabselect sure)(GE Healthcare、17-5438-03)フィラーを添加する。
3.細胞成分溶液を8000r/minで40min遠心し、再び0.45μmフィルターで濾過し、4℃で保存して使用に供する。
4.大量の超純水で重力柱とフィラーを洗浄し、アルカリ液を除去する。
5.精製前、10ml結合/洗浄緩衝液(20mM Tris+150mM NaCl(pH7.2))でフィラーを平衡する。
6.試料を入れ、精製される上清がカラムを通る。
7.洗浄して、5~10ml結合/清洗緩衝液(20mM Tris+150mM NaCl(pH7.2))でフィラーを洗浄し、非特異的な結合タンパクを除去する。
8.リースして、1mLのリース緩衝液(100mMクエン酸ナトリウム/クエン酸緩衝液、pH 3.5)でフィラーを洗浄し、特異的な結合タンパクを収集する。
9.収集液に85μl/mlの比例で中和緩衝液(2M Tris)を入れ、pHが6~7になるまで調節する。
【0232】
実施例6.scFv-hFc組換え単鎖抗体のFortebio検出
光ファイバーバイオセンサーのバイオフィルム層光学干渉技術(BLI)に基づいて、抗体分子の動力学定数を測定する。
【0233】
BLIの基本原理は、生物分子がセンサーの表面に結合すると、生物膜を形成し、生物膜がセンサーを透過する光の波形に干渉現象を起こし、干渉現象が位相変移の方式で検出され、それによってセンサーに結合する分子数量の変化を検出でき、実時間応答値の変化によって動力学曲線をフィッティングし、結合定数(Kon)、解離定数(Kdis)、親和性(KD)を計算することである。
【0234】
実験に用いられるFortebio設備番号がOctet Red96であり、ForteBio親和性測定は、従来方法(Estep、P et al.、High throughput solution Based measurement of antibody-antigen affinity and epitope binning.MAbs、2013.5(2):p.270-8)に従って行われる。具体的なフローは以下のとおりである。
【0235】
1.実験が始まる前の30分に、試料の数量によって、適切な数量のAHC Sensorを取ってSD buffer(50mlPBS+0.1%BSA+0.05%Tween-20)に浸透する。
2.100μlのSD buffer、scFv-hFc抗体、ヒトBCMA-His抗原(ACRO BIOSYSTEMS、BCA-H522Y)を取って、それぞれ96メッシュの黒色のポリスチレン半分のマイクロプレートに入れる。
3.試料の位置によってマイクロプレートを配置し、センサー位置を選択し、運転ステップおよび時間を設け、Baseline、Loading~1nm、Baseline、AssociationとDissociation時間が試料の結合、解離速度に決められて、回転数が1000rpmであり、温度が30℃である。
4.表5には、10個のscFv-hFc組換え単鎖抗体とヒトBCMA-His親和性の検出結果が示される。
【0236】
【表7】
参照scFv-Fc*がUS20170226216A1のBCMA-10配列におけるscFvによって構成されるscFv-hFc組換えタンパク(実施例3、配列番号131を参照する)の親和性水平。
【0237】
上表のデータから、10株の単鎖抗体と単価のヒト化BCMA(BCMA-His)の親和性(KD値)がいずれも、参照単鎖抗体とBCMA-Hisとの親和性に相当する。そのうち、ADI-34857とADI-34860の2株の単鎖抗体とBCMA-Hisとの親和性は、参照単鎖抗体のものと最も近い。
【0238】
実施例7.scFv-hFc組換え単鎖抗体とNCI-H929の親和性の検出
scFv-hFc融合抗体の製造が完了した後、更にそれとNCI-H929との親和性を検証する。具体的な方法は、以下のとおりである。
1.ヒトNCI-H929(ATCC、CRL-9068)細胞を取って、細胞の密度を2×10/mlに調整し、96メッシュのマイクロプレートの各メッシュに100μlを入れ、400Gで5min遠心して、上清を除去する。
2.scFv-hFc抗体を400nM濃度から、0.1%牛血清アルブミン(BSA)を含むPBSに3倍の勾配で合計12個のスポットまでに希釈し続け、各メッシュに100μlの希釈した抗体を入れ、4℃で30min孵化する。
3.400Gで5min遠心して、PBSを入れて二回洗浄して、その後、各メッシュに100μlのPBS(1% BSA)に希釈された二次抗体((フィコビリンタンパク(Phycoerythrin、PE)でマークされた羊抗ヒトIgG抗体、SoutherBiotech、最終の濃度が5μgg/ml)を入れ、4℃で30min孵化する(光を避ける)。
4.400Gで5min遠心して、PBSを入れて二回洗浄して各メッシュを100μl PBSで細胞を再懸濁する。Accuri C6システム(BD Bioscience)にフローサイトメトリーを行い、PE陽性信号を検出し、C6ソフトウェアに基づいてMFI計算する。GraphPadソフトウェアでEC50値を計算する。
【0239】
検出結果は図3と以下の表6に示される。図における結果から、ADI-34846単鎖抗体の他に、その他の単鎖抗体とNCI-H929細胞との親和性(EC50値)がいずれも参照単鎖抗体とNCI-H929細胞との親和性に優れることが示される。
【0240】
【表8】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
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