(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】神経変性疾患の治療のためのロディオラ属植物とゲンゲ属植物の組合せ
(51)【国際特許分類】
A61K 36/481 20060101AFI20240219BHJP
A61K 36/41 20060101ALI20240219BHJP
A61K 31/7028 20060101ALI20240219BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240219BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240219BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
A61K36/481
A61K36/41
A61K31/7028
A61P25/28
A61P25/16
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2020543850
(86)(22)【出願日】2019-02-15
(86)【国際出願番号】 FR2019050342
(87)【国際公開番号】W WO2019158870
(87)【国際公開日】2019-08-22
【審査請求日】2022-01-25
(32)【優先日】2018-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(32)【優先日】2018-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】520307115
【氏名又は名称】ヒューマン バイ ネイチャー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100134784
【氏名又は名称】中村 和美
(72)【発明者】
【氏名】ジェラルド グデ
【審査官】春田 由香
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0081046(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0118583(US,A1)
【文献】Nabavi, S. F. et al.,Rhodiola rosea L. and Alzheimer's Disease: From Farm to Pharmacy,Phytotherapy Research,2016年,Vol.30, No.4,p.532-539,doi:10.1002/ptr.5569
【文献】Haiyan, H. et al.,Effect of Astragaloside IV on Neural Stem Cell Transplantation in Alzheimer's Disease Rat Models,Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine,2016年,Vol.2016,Article ID 3106980,8 pages,doi:10.1155/2016/3106980
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00-36/9068
A61K 31/00-31/80
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルツハイマー病および/またはパーキンソン病の治療または予防のための、ロディオラ属植物の抽出物とゲンゲ属植物の抽出物との
組合せ医薬であって、前記のロディオラ属植物の抽出物がロディオラ・ロゼアの抽出物であり、かつ、前記のゲンゲ属植物の抽出物がアストラガルス・メンブラナセウスの抽出物であり、前記ロディオラ属植物の抽出物およびゲンゲ属植物の抽出物が同時または別個に投与されるか、または経時的に分散され、前記ロディオラ・ロゼアの抽出物が、ロディオラ・ロゼアの乾燥抽出物の全重量に対して少なくとも1.5重量%のロサビンを含有する、
組合せ医薬。
【請求項2】
前記ロディオラ属植物の抽出物およびゲンゲ属植物の抽出物が同時に投与される、請求項1に記載の
組合せ医薬。
【請求項3】
予防および/または治療的処置のための、請求項1または2に記載の
組合せ医薬。
【請求項4】
ニューロンの治療的処置のための、請求項3に記載
の組合せ医薬。
【請求項5】
ロディオラ・ロゼアの抽出物の少なくとも50mg/日の用量を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の
組合せ医薬。
【請求項6】
前記ロディオラ・ロゼアの抽出物が、ロディオラ・ロゼアの乾燥抽出物の全重量に対して少なくとも0.25重量%のサリドロシドを含有する、請求項1~5のいずれか1項に記載
の組合せ医薬。
【請求項7】
アストラガルス・メンブラナセウスの抽出物の50mg/日の用量を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の
組合せ医薬。
【請求項8】
前記アストラガルス・メンブラナセウスの抽出物が、アストラガルス・メンブラナセウスの乾燥抽出物の全重量に対して少なくとも0.2重量%のアストラガロシドを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の
組合せ医薬。
【請求項9】
前記アストラガルス・メンブラナセウスの抽出物が、アストラガルス・メンブラナセウスの乾燥抽出物の全重量に対して少なくとも10重量%のポリサッカライドを含有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の
組合せ医薬。
【請求項10】
ロディオラ属植物の抽出物に対するゲンゲ属植物の抽出物の乾燥重量による比が0.5~1.5の間に含まれる、請求項1~9のいずれか
1項に記載の
組合せ医薬。
【請求項11】
トコフェロール、セレニウム、シリコン、亜鉛、マグネシウム、ロディオラ属植物およびゲンゲ属植物の抽出物から得られたもの以外のポリフェノール、またはその混合物から成る群から選択される構成要素をさらに含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の
組合せ医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経変性疾患、より特に、例えば、アルツハイマーまたはパーキンソンなどの疾患を治療するためのロディオラ属植物(Rhodiola)の抽出物およびゲンゲ属植物(Astragalus)の抽出物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
「変性疾患」とは、患者の欠損症および損傷の発症に向けて徐々に進行するすべての病状を意味する。一般的に遺伝的起源では、変性疾患もまた、生物学的、かつ、毒性である物質への大規模な曝露によって引き起こされ得る。
「神経変性疾患」とは、神経系の機能に徐々に影響を及ぼす疾患を意味する。概して、神経細胞、より特にニューロンの機能が変更されるようになる。これらの疾患は、異なった速度で発症し、不可逆的であることが多い。
【0003】
より特に、神経変性疾患とは、以下の疾患:アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、レビー小体型認知症、ピック病、進行性核上性麻痺、多発硬化症、ヒトまたは動物プリオン病、例えば、ウシ海綿状脳症など、およびミオパチー、を意味する。
平均余命の延長のせいで、例えば、アルツハイマー病またはパーキンソン病などの神経変性疾患の診断の付与は増加し続けている。
【0004】
65歳前には稀であるが、アルツハイマー病は、ニューロンの進行性退縮を特徴とし、そして、知的機能の損失:第一段階では、これは、特定の記憶損傷、高度機能の障害および時間と空間における方向性の問題にかかわる、に徐々につながってゆく疾患である。患者における疾患の漸進的進行は、認知症の不可逆的な定着につながる。
【0005】
45歳前には稀であるが、パーキンソン病は65歳より高齢のヒトの約1%に影響を及ぼしている。その発症がアルツハイマー病のように進行性、かつ、不可逆的であるこの疾患はニューロンの特定の集団の破壊を特徴とする。それは、例えば、動作の遅さ、動きの協調、筋の過度の硬直および震戦などのいわゆる「運動」症状、ならびに、例えば、認知障害、睡眠障害、平衡感覚障害および/またはうつ病などの「非運動」症状を引き起こす。
これらの二つの疾患向けに現在認定されている薬物はいずれも、それらを治癒させることも、またはそれらの発症を止めることもできない。それらは、その疾患発症を遅らせること、およびそれらの症状を治療することを試みることに主に対処する。
【0006】
発明者らの作業は、有効成分の新しい組合せが神経変性疾患、特にアルツハイマー病またはパーキンソン病などの特定の疾患が治療できることを示すことを可能にした。
【発明の概要】
【0007】
これにより、本発明は、神経変性疾患の治療において同時、別個または経時的に分散した使用のための組合せられた生成物としてロディオラ属植物の抽出物とゲンゲ属植物の抽出物を含有する生成物に関係する。
それはまた、神経変性疾患の治療における使用のためのロディオラ属植物の抽出物とゲンゲ属植物の抽出物の組合せ物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
(原文記載なし)
【発明を実施するための形態】
【0009】
「ロディオラ属植物の抽出物」とは、ロディオラ属植物の抽出物または抽出物の混合物を意味する。
「ゲンゲ属植物の抽出物」とは、ゲンゲ属植物の抽出物または抽出物の混合物を意味する。
【0010】
実施例2に示されているように、ロディオラ属植物の抽出物とゲンゲ属植物の抽出物の組合せ物には、神経変性疾患モデルとの関連において相乗的な治療効果がある。
さらに、実施例3に示されているように、ロディオラ属植物の抽出物とゲンゲ属植物の抽出物の組合せ物はまた、同じ神経変性疾患モデルとの関連において予防的な保護効果もある。
【0011】
より特に、神経変性疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、プリオン病、例えば、ウシ海綿状脳症など、レビー小体型認知症、ピック病およびミオパチーから成る群から選択される。
好ましくは、それは、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、ウシ海綿状脳症およびミオパチーから成る群から選択される疾患であり、より好ましくは、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病およびミオパチーである。
【0012】
より特に、それは、アルツハイマー病およびパーキンソン病から成る群から選択される疾患である。
【0013】
実は、発明者らは、ロディオラ属植物とゲンゲ属植物の抽出物の組合せ物が、神経変性疾患モデル、特にアルツハイマー病、において神経突起の長さを維持するだけではなく、それらの延長をもたらすことも可能にすることを示した。ロディオラ属植物またはゲンゲ属植物のみの抽出物が、神経変性疾患モデルにおいて神経突起の長さを改善できず、それを悪化さえさせる可能性があるので、この結果は驚くべきことである。
【0014】
生成物の使用は、同時であっても、別個であってもまたは経時的に分散させてもよい。
例として、生成物は、ロディオラ属植物の抽出物とゲンゲ属植物の抽出物を含む単回用量(錠剤、カプセル剤など)を介して、またはロディオラ属植物の抽出物を含む第一の用量およびゲンゲ属植物の抽出物を含む第二の用量である2つの別々の用量を介して投与されてもよい。この二つ目の場合では、二つの用量は、同時、別々にまたは経時的に分散されてもよい。
【0015】
有利なことには、混合生成物(すなわち、ロディオラ属植物の抽出物とゲンゲ属植物の抽出物)は、同時に使用される。
混合生成物としてのロディオラ属植物の抽出物とゲンゲ属植物の抽出物を含む生成物は、予防的および/または治療的処置のために使用されてもよい。
【0016】
実施例2および3に示されているとおり、本発明による混合生成物は、神経変性疾患モデルとの関連において、より特にアルツハイマー病のモデルとの関連において、予防的および治療的効果を示した。
好ましくは、混合生成物としてのロディオラ属植物の抽出物とゲンゲ属植物の抽出物を含む生成物は、特にアルツハイマー病との関連において、ニューロンの治療的処置に使用される。
【0017】
より特に、ニューロンの治療的処置は、特に前記ニューロンの神経突起の延長によってなされる。
有利なことには、混合生成物としてロディオラ属植物の抽出物とゲンゲ属植物の抽出物を含む生成物では、ロディオラ属植物の抽出物に対するゲンゲ属植物の抽出物の乾燥重量比は0.5~1.5の間に含まれる。
【0018】
本願との関連において、そして、別の方法で規定されていない場合、示した値の範囲が包括的であることが、理解されることに留意される。
好ましくは、ロディオラ属植物の抽出物に対するゲンゲ属植物の抽出物の乾燥重量比は0.8~1.2の間に含まれ、好ましくは1程度である。
【0019】
有利なことには、ロディオラ属植物の抽出物は、ロディオラ・ロゼア(Rhodiola rosea)の抽出物である。
好ましくは、混合生成物としてのロディオラ属植物の抽出物とゲンゲ属植物の抽出物を含む生成物は、少なくとも50mg/日の用量のロディオラ属植物の抽出物を含み、そして、前記抽出物はロディオラ・ロゼアの抽出物である。
【0020】
より特に、成人に関して、ロディオラ・ロゼアの抽出物の用量は、50~500mg/日、より好ましくは100~250mg/日の間に含まれても、より一層好ましくは150mg/日程度であってもよい。
より一般的には、動物に関して、混合生成物としてのロディオラ属植物の抽出物とゲンゲ属植物の抽出物を含む生成物は、少なくとも0.5mg/kg/日のロディオラ・ロゼアの乾燥抽出物の用量、好ましくは1~10mg/kg/日の間に含まれる用量、例えば、1.5~2mg/kg/日程度の用量を含んでもよい。
【0021】
好ましくは、これらの用量は乾燥抽出物の用量である。
好ましくは、抽出は、ロディオラ・ロゼア根茎の粉末からなされる。
また、ゴールデンルートまたは北極ルート(arctic root)とも呼ばれるロディオラ・ロゼアは、ベンケイソウ科の多年生植物であり、世界中の寒冷地域、例えば、アジア、シベリア、北アメリカおよびヨーロッパの山岳地帯など(アルプス、ピレネー、カルパチア(Carpathians)、スカンジナビア、アイスランド、英国およびアイルランド)の寒冷地域の寒冷地域などで主に生育している。この植物は、ストレスや気分障害を治すために、特に伝統中国医療で使用される。有利なことには、ロディオラ・ロゼアは、アジア、好ましくは中国由来である。
【0022】
有利なことには、ロディオラ・ロゼア根茎の抽出物は、水アルコール抽出物である。典型的には、抽出物のための抽出溶媒は、水-エタノール混合物、例えば、少なくとも50体積%、好ましくは少なくとも60体積%、例えば、70体積%などの水を含む水-エタノール混合物である。
有利なことには、水-エタノール混合物対ロディオラ・ロゼア根茎粉末の重量比は、16:1~4:1の間、好ましくは12:1~6:1の間にあり、例えば、10:1~8:1程度である。
ロディオラ属植物の抽出は、当業者に周知の一般的な方法(浸出、振出、煎出、冷浸)に従って実施される。好ましくは、粉末の抽出は何度か繰り返される。有利なことには、抽出は、高温、好ましくは適度な温度(40~100℃)にて実施される。抽出後に、抽出物は乾燥されることが好ましい。
有利なことには、ロディオラ・ロゼアの抽出物は、ロディオラ・ロゼアの乾燥抽出物の全重量に対して少なくとも1.5重量%のロサビンを含有する。
ロサビンは、ロディオラ属植物、特にロディオラ・ロゼアから抽出されるケイ皮アルコールのグリコシドを指す。
好ましくは、ロディオラ・ロゼアの抽出物は、ロディオラ・ロゼアの乾燥抽出物の全重量に対して、少なくとも2重量%のロサビン、より好ましくは少なくとも2.5重量%のロサビン、より一層好ましくは少なくとも3重量%のロサビンを含む。
【0023】
有利なことには、ロディオラ・ロゼア抽出物はまた、ロディオラ・ロゼアの乾燥抽出物の全重量に対して、少なくとも0.25重量%のサリドロシドを含む。
サリドロシド(「ロディオロシド」とも呼ばれる)は、ロディオラ属植物、特にロディオラ・ロゼアから抽出されたフェニルプロパノイドグルコシドを指す。
好ましくは、ロディオラ・ロゼアの抽出物は、ロディオラ・ロゼアの乾燥抽出物の全重量に対して、少なくとも0.5重量%のサリドロシド、より好ましくは少なくとも0.75重量%のサリドロシド、より一層好ましくは少なくとも1重量%のサリドロシドを含む。
【0024】
より特に、ロディオラ・ロゼア抽出物は、ロディオラ・ロゼアの乾燥抽出物の全重量に対して、少なくとも1.5重量%のロサビンと少なくとも0.25重量%のサリドロシド、好ましくは少なくとも2重量%のロサビンと少なくとも0.5重量%のサリドロシド、より好ましくは少なくとも2.5重量%のロサビンと少なくとも0.75重量%のサリドロシド、より一層好ましくは少なくとも3重量%のロサビンと少なくとも1重量%のサリドロシドを含む。
【0025】
ロディオラ属植物の抽出物、特にロディオラ・ロゼア乾燥抽出物はまた、有利なことには、ロサリンおよび/またはロジンを含んでもよい。
上述のように、ロディオラ属植物の抽出物は、ゲンゲ属植物の抽出物と組合せて使用される。
【0026】
有利なことには、ゲンゲ属植物の抽出物は、アストラガルス・メンブラナセウス(Astragalus membranaceus)の抽出物である。
好ましくは、混合生成物としてのロディオラ属植物の抽出物とゲンゲ属植物の抽出物を含む生成物は、少なくとも50mg/日の用量のゲンゲ属植物の抽出物を含み、そして、前記抽出物はアストラガルス・メンブラナセウスの抽出物である。
【0027】
より特に、成人に関して、アストラガルス・メンブラナセウスの抽出物の用量は、50~500mg/日、より好ましくは100~250mg/日の間に含まれても、より一層好ましくは150mg/日程度であってもよい。
より一般的には、動物に関して、混合生成物としてのロディオラ属植物の抽出物とゲンゲ属植物の抽出物を含む生成物は、少なくとも0.5mg/kg/日のアストラガルス・メンブラナセウスの乾燥抽出物の用量、好ましくは1~3mg/kg/日の間に含まれる用量、例えば、1.5~2mg/kg/日程度の用量を含んでもよい。
【0028】
好ましくは、これらの用量は乾燥抽出物の用量である。
好ましくは、抽出は、アストラガルス・メンブラナセウス根茎の粉末からなされる。
アストラガルス・メンブラナセウスは、アストラガルス・ペンドリフロルスまたはアストラガルス・プロピンクウスとも呼ばれ、アジア、特に北部中国、および雲南省と四川省に生育するマメ科植物である。この植物は、免疫系を刺激し、そして感染症を治すために、特に伝統中国医療で使用される。有利なことには、アストラガルス・メンブラナセウスは、アジア、好ましくは中国由来である。
【0029】
有利なことには、アストラガルス・メンブラナセウスの抽出物は、アストラガルス・メンブラナセウスの乾燥抽出物の重量に対して少なくとも0.2重量%のアストラガロシドを含む。
アストラガロシド(「アストランガロシド(astrangaloside)と呼ばれることもある)は、ゲンゲ属植物、特にアストラガルス・メンブラナセウスから抽出されたトリテルペンオリゴグリコシドを指す。
【0030】
好ましくは、アストラガルス・メンブラナセウスの抽出物は、アストラガルス・メンブラナセウスの乾燥抽出物の全重量に対して、少なくとも0.4重量%のアストラガロシド、より好ましくは少なくとも0.6重量%のアストラガロシド、より一層好ましくは少なくとも0.8重量%のアストラガロシドを含む。
有利なことには、その抽出物は、アストラガロシドの混合物、すなわち、アストラガロシドI、II、III、IV、V、VIおよびVIIから選択される少なくとも2つのアストラガロシドを含む。
【0031】
好ましくは、その抽出物は、7種類の前述のアストラガロシドの混合物を含有する。
有利なことには、アストラガルス・メンブラナセウスの抽出物は、アストラガルス・メンブラナセウスの乾燥抽出物の全重量に対して少なくとも10重量%のポリサッカライドを含有する。
好ましくは、アストラガルス・メンブラナセウスの抽出物は、アストラガルス・メンブラナセウスの乾燥抽出物の全重量に対して、少なくとも12重量%のポリサッカライド、より好ましくは少なくとも14重量%、より一層好ましくは少なくとも16重量%のポリサッカライドを含む。
【0032】
より特に、アストラガルス・メンブラナセウスの抽出物は、アストラガルス・メンブラナセウスの乾燥抽出物の全重量に対して、少なくとも0.2重量%のアストラガロシドと少なくとも10重量%のポリサッカライド、好ましくは少なくとも0.4重量%のアストラガロシドと少なくとも12重量%のポリサッカライド、より好ましくは少なくとも0.6重量%のアストラガロシドと少なくとも14重量%のポリサッカライド、より一層好ましくは少なくとも0.8重量%のアストラガロシドと少なくとも16重量%のポリサッカライドを含む。
【0033】
有利なことには、アストラガルス・メンブラナセウスの抽出物は、アストラガルス・メンブラナセウスの根茎の2種類の抽出物、水-アルコールである第一の抽出物と水性である第二の抽出物から調製される。
典型的には、第一の抽出物のための抽出溶媒は、水-エタノール混合物である。好ましくは、水-エタノール混合物は、少なくとも50体積%、好ましくは少なくとも75体積%、例えば、85体積%などのエタノールを含む。
【0034】
有利なことには、水-エタノール対アストラガルス・メンブラナセウス根茎粉末の重量比は、200:1~50:1、好ましくは150:1~100:1の間、例えば125:1程度などである。
【0035】
第二の抽出物の抽出は、水から成る溶媒によって実施される。
典型的には、水対アストラガルス・メンブラナセウス根茎粉末の重量比は、10:1~2:1の間、好ましくは7:1~3:1の間、例えば、5:1程度などに含まれる。
【0036】
ゲンゲ属植物の抽出はまた、当業者に周知の一般的な方法(浸出、振出、煎出、冷浸)に従っても実施できる。好ましくは、粉末の抽出は何度か繰り返される。有利なことには、抽出は、高温、好ましくは適度な温度(40~100℃)にて実施される。抽出後に、抽出物は乾燥されることが好ましい。
【0037】
本発明の特定の実施形態によると、混合生成物としてのロディオラ属植物の抽出物とゲンゲ属植物の抽出物を含む生成物は、トコフェロール、セレニウム、シリコン、亜鉛、マグネシウム、ロディオラ属植物およびゲンゲ属植物の抽出物から得られたもの以外のポリフェノール、またはその混合物から成る群から選択される構成要素をさらに含む。
【0038】
好ましくは、トコフェロールは、生成物の全重量に対して0.05重量%~2重量%含まれる量で生成物中に導入される。
好ましくは、セレニウムは、例えば、セレニウム酵母の形態で、生成物の全重量に対して、0.0001重量%~0.005重量%含まれる量で生成物中に導入される。
【0039】
好ましくは、シリコンは、例えば、天然型(未焼成)の珪藻、二酸化ケイ素、(単数もしくは複数の)ケイ酸塩および/またはオルトケイ酸(総称:有機シリコン、生体シリコン)の形態で、生成物の全重量に対して6重量%~10重量%含まれる量で、生成物中に導入される。
好ましくは、亜鉛は、例えば、(単数もしくは複数の)亜鉛塩、例えば、クエン酸亜鉛、硫酸亜鉛および/またはビスグリシン酸亜鉛などの形態で、生成物の全重量に対して0.01重量%~0.5重量%含まれる量で、生成物中に導入される。
【0040】
マグネシウムは、好ましくは、例えば、(単数もしくは複数の)マグネシウム塩、例えば、グリセロリン酸マグネシウムおよび/またはクエン酸マグネシウムなどの形態で、生成物の全重量に対して5重量%~50重量%含まれる量で生成物中に導入される。
ポリフェノールは、植物抽出物、例えば、ブドウ属ビニフェラ(Vitis vinifera)(一般的なブドウ)および/またはイタドリ(Polygonum cuspidatum)(日本のタデ)の抽出物などの導入によって生成物中に存在し得る。好ましくは、ポリフェノールは、生成物の全重量に対して1重量%~10重量%含まれる量で生成物中に導入される。
【0041】
好ましくは、1つのポリフェノールが、レスベラトール(天然または合成)である。有利なことには、レスベラトールは、生成物の全重量に対して0.1重量%~3重量%含まれる量で生成物中に導入される。
【0042】
本発明の好ましい実施形態において、混合生成物としての、ロディオラ属植物の抽出物とゲンゲ属植物の抽出物を含む生成物は、上記構成要素のすべてを含む。
この好ましい実施形態において、混合生成物としての、ロディオラ属植物の抽出物とゲンゲ属植物の抽出物を含む生成物は、そのとき、生成物の全重量に対して、少なくとも3.5重量%のロディオラ属植物の抽出物、好ましくは少なくとも4重量%、より好ましくは少なくとも4.5重量%のロディオラ属植物の抽出物を含んでもよい。
【0043】
それはまた、生成物の全重量に対して、少なくとも3.5重量%のゲンゲ属植物の抽出物、好ましくは少なくとも4重量%、より好ましくは少なくとも4.5重量%のゲンゲ属植物の抽出物を含んでもよい。
好ましくは、抽出物は乾燥抽出物である。
【0044】
有利なことには、ロディオラ属植物の抽出物とゲンゲ属植物の抽出物は、先に記載したとおりのものである。
【0045】
特に好ましい実施形態によると、本発明による生成物は、以下のものを含有する:
-ロディオラ・ロゼアの乾燥抽出物の全重量に対して、少なくとも1.5重量%のロサビンと少なくとも0.25重量%のサリドロシド、好ましくは少なくとも2重量%のロサビンと少なくとも0.5重量%のサリドロシド、より好ましくは少なくとも2.5重量%のロサビンと少なくとも0.75重量%のサリドロシド、より一層好ましくは少なくとも3重量%のロサビンと少なくとも1重量%のサリドロシドを含むロディオラ・ロゼアの抽出物、および
【0046】
-アストラガルス・メンブラナセウスの乾燥抽出物の全重量に基づいて、少なくとも0.2重量%のアストラガロシドと少なくとも10重量%のポリサッカライド、好ましくは少なくとも0.4重量%のアストラガロシドと少なくとも12重量%のポリサッカライド、より好ましくは少なくとも0.6重量%のアストラガロシドと少なくとも14重量%のポリサッカライド、より一層好ましくは少なくとも0.8重量%のアストラガロシドと少なくとも16重量%のポリサッカライドを含むアストラガルス・メンブラナセウスの抽出物。
【0047】
有利なことには、この特に好ましい実施形態によると、ロディオラ・ロゼアの抽出物とアストラガルス・メンブラナセウスの抽出物、ならびに前記抽出物を含む生成物は、その実施形態、特に先に記載した比、用量および重量パーセンテージを含めた先に記載したとおりのものである。
【0048】
本発明はまた、ロディオラ属植物の抽出物とゲンゲ属植物の抽出物を同時に、別々にまたは経時的に分散させて投与することを含む、神経変性疾患を治療する方法にも関する。それはまた、ロディオラ属植物の抽出物とゲンゲ属植物の抽出物を同時に、別々にまたは経時的に分散させて投与することを含む、神経変性疾患を予防する方法にも関係がある。
【0049】
有利なことには、ロディオラ属植物の抽出物とゲンゲ属植物の抽出物は、(単数もしくは複数の)カプセル剤、(単数もしくは複数の)丸薬および/または(単数もしくは複数の)錠剤の形態で患者に投与できる生成物、例えば、混合生成物などを形成する。
【0050】
本発明による方法の特定の、有利な、かつ、好ましい特徴は、特に抽出物、生成物および用量に関しては先に記載したとおりのものである。
本発明の他の特徴と利点は、図面に関して、実例として示された、以下の実施例に見られる:
【実施例】
【0051】
実施例1:本発明による使用のための生成物の調製
1.材料と方法
1.1 生成物
【0052】
以下の生成物を使用した:
-ロディオラ・ロゼアの粉砕根茎からの水アルコール抽出によって得られたロディオラ属植物の抽出物、8:1程度の溶媒対根茎粉末の重量比での、70体積%の水と30体積%のエタノールから成る抽出溶媒。ロディオラ属植物のこの抽出物は、ロディオラ属植物の乾燥抽出物の全重量に対して少なくとも3重量%のロサビンと少なくとも1重量%のサリドロシドを含む;
【0053】
-ゲンゲ属植物の粉砕根茎からの水アルコール抽出物によって得られたアストラガルス・メンブラナセウスの第一の抽出物、125:1程度の溶媒対根茎粉末の重量比での、
15%体積の水と85体積%のエタノールから成る抽出溶媒;
【0054】
-5:1程度の水対粉末根茎の重量比での、アストラガルス・メンブラナセウスの粉砕根茎からの純水を用いた抽出によって得られた第二のゲンゲ属植物の抽出物;
【0055】
-ロディオラ属植物の抽出物とゲンゲ属植物の抽出物の組合せ物を含む、HBNから市販されている製品「ADN-Telomeractives」。その製品はまた、トコフェロール、
酵母の形態のセレニウム、特に海洋珪藻の形態のシリコン、亜鉛、マグネシウム、ブドウの抽出物、ならびに25%のレスベラトールを含有するイタドリの抽出物も含有する。その製品はまた、様々なビタミンも含有する。
【0056】
ゲンゲ属植物の混合抽出物の調製:
上記の2種類のゲンゲ属植物の抽出物を、ゲンゲ属植物の乾燥抽出物の全重量に基づいて少なくとも16重量%のポリサッカライドと少なくとも0.8重量%のアストラガロシドI、II、III、IV、V、VIおよびVIIの混合物を含む混合ゲンゲ属植物抽出物を得るために混合する。
【0057】
ロディオラ属植物の抽出物とゲンゲ属植物の抽出物の組合せ物の調製:
本発明による使用のためのロディオラ属植物の抽出物とゲンゲ属植物の抽出物の組合せ物を、ロディオラ属植物の上記の抽出物をゲンゲ属植物の混合抽出物と1:1の重量比で混合することによって調製する。
【0058】
ロディオラ属植物の抽出物の水溶液、ゲンゲ属植物の混合抽出物の水溶液、抽出物の組合せ物の水溶液および製品「ADN-Telomeractives」の水溶液を、8つの終濃度の範囲(0.00125-0.0025-0.0050-0.0125-0.025-0.05-0.125-0.25mg/mL)で新たに調製した。
【0059】
1.2 細胞培養と分化
SH-SY5Y(ATCC、CRL-2266)細胞を培養し、そして、供給業者の推奨に従って移植した。
すべての試験を、96ウェルマイクロプレートを使用して、3連の技術的反復により実施した。播種後に、SH-SY5Y細胞を、4日間にわたるレチノイン酸(10μM)への曝露によって分化した。
【0060】
1.3 細胞固定と染色
各試験後に、細胞を、室温にて5分間メタノールとアセトンの混合物を使用して固定し、その後、Hoechstを用いて核を染色し、およびβ3チューブリンを免疫染色した(Alexa 488蛍光色素に結合した二次抗体)。
【0061】
1.4 細胞毒性
細胞毒性を、細胞核の染色とカウントを使用して評価した(細胞数をMetaXpress(Molecular Devices)を使用して評価した)。
【0062】
1.5 統計解析
対照条件に対する結果の統計的比較をt-検定を使用して実施した。p<0.05であるとき、有意性を記号「*」を用いて表した。
【0063】
2.ゲンゲ属植物、ロディオラ属植物、抽出物の組合せ物および製品「ADN-Telomeractives」(ADN-T)の細胞毒性の結果
細胞毒性を、ゲンゲ属植物抽出物、ロディオラ属植物の抽出物、抽出物の組合せ物および製品「ADN-Telomeractives」への48時間の曝露後に、分化SH-SY5Y(細胞)において評価した。細胞毒性効果を示した生成物はなかった(
図1を参照のこと)。ゲンゲ属植物およびロディオラ属植物は、対照と比較して生存率の上昇を引き起こした。抽出物の組合せ物および製品「ADN-Telomeractives」に曝露したSHSY-5Y(細胞)の生存率は、試験した用量に関係なく対照の生存率に近い。
【0064】
実施例2:本発明による使用のためのロディオラ属植物の抽出物とゲンゲ属植物の抽出物の相乗効果
1.材料と方法
生成物、細胞培養、分化、細胞固定、染色、細胞毒性および統計解析は、実施例1に示したとおりである。
【0065】
1.1 治療試験
神経変性疾患のモデルは、分化神経細胞株を使用して研究室において樹立できる。化学誘発剤(この場合、Aftin-5)を使用して、ヒト神経芽腫細胞株SH-SY5Yを用いてアルツハイマー病のモデルを入手できる。抽出物の組合せ物の神経保護および治療特性を、ニューロンをカウントすることおよび神経突起の長さを計測することにより神経毒性の攻撃性を評価する。
【0066】
細胞を10μMのAftin-5のみに2日間曝露した。次に、それらを、48時間、ロディオラ属植物、ゲンゲ属植物、抽出物の組合せ物、製品「ADN-Telomeractives」の水性希釈物または単なる水(対照)を用いて、Aftin-5(10μM)との同時インキュベーションにおいて処理した。固定化および標識化の後に、神経突起成長および細胞数をMetaXpress(Molecular Devices)を使用して評価した。
【0067】
1.2 細胞画像化と画像解析
20×対物レンズを備えた自動化されたImageXpress(登録商標)Micro XLS(Molecular Devices)顕微鏡を使用して、画像を得た。2つの二色性フィルタを同時に使用して、使用した別々のプローブを特異的に検出した。1ウェルあたり4つの領域を記録し、そして、個別に分析した。
画像を、MetaXpress(Molecular Devices)ソフトウェアを使用して分析した。
【0068】
2.結果:治療効果
結果を
図2に示す。
この図面では、ロディオラ属植物とゲンゲ属植物が、10μMのd’Aftin-5への48時間の曝露によって引き起こされた神経変性表現型を治癒しないことが観察される可能性がある。これに反して、すべての試験用量にて、対照によって提示された未満の神経突起の長さを観察した。
【0069】
対照的に、ロディオラ属植物の抽出物とゲンゲ属植物の抽出物の組合せ物は、誘発されたアルツハイマー表現型に対して用量依存的に増強された治療効果を示したことが観察できた。用量効果は、12.50μg/mLから250μg/mLまで増大した。250μg/mLにて、神経突起の長さが119.1%増大し、治療効果は対照と有意に異なっていた。25.00μg/mLにて神経突起の長さ125.9のピークを有する製品「ADN-Telomeractives」でもU字形の用量効果が観察された。この値は、対照に対して有意に異なっていなかったが、全細胞集団と比較して、t-検定によって統計的差異が示されている。
【0070】
ロディオラ属植物のみおよびゲンゲ属植物のみでは、神経突起の長さを改善できないという結果になる:これに反して、それは対照に対して悪化している。
対照的に、ロディオラ属植物の抽出物とゲンゲ属植物の抽出物の組合せ物は、驚いたことに、神経突起の長さを維持でき、むしろそれを伸長できる。
抽出物の組合せ物は、神経変性疾患のモデル、より具体的にはアルツハイマー病のモデルにおいて、相乗的な治療効果を有するという結果になる。
【0071】
図3は、あらかじめ10μMのAftin-5に48時間晒された分化SH-SY5Y(細胞)に対する250μg/mLのロディオラ属植物の効果を例示する3枚の写真を示す。対照と比較して、Aftin-5に曝露した細胞では、神経突起の長さが有意に低減したことを示すことがこの図面から観察できる。Aftin-5とロディオラ属植物に同時曝露した細胞は、Aftin-5のみに曝露したものより短い神経突起の長さを示す。
【0072】
図4は、あらかじめ10μMのAftin-5に48時間晒された分化SH-SY5Y(細胞)に対する250μg/mLのゲンゲ属植物の効果を例示する3枚の写真を示す。先の図面と同様に、対照と比較して、Aftin-5に曝露した細胞では、神経突起の長さが有意に低減したことを示すことがこの図面から観察できる。Aftin-5とゲンゲ属植物に同時曝露した細胞は、Aftin-5のみに曝露したものより短い神経突起の長さを示す。
【0073】
図5は、あらかじめ10μMのAftin-5に48時間晒された分化SH-SY5Y(細胞)に対する250μg/mLのロディオラ属植物の抽出物とゲンゲ属植物の抽出物の組合せ物の効果を例示する3枚の写真を含む。先の図面と同様に、対照と比較して、Aftin-5に曝露した細胞では、神経突起の長さが有意に低減したことを示すことがこの図面から観察される。Aftin-5と250μg/mLのロディオラ属植物の抽出物とゲンゲ属植物の抽出物の組合せ物に同時曝露した細胞は、Aftin-5のみに曝露したものより良好な生存率とより長い神経突起の長さを示す。
【0074】
図6は、あらかじめ10μMのAftin-5に48時間晒された分化SH-SY5Y(細胞)に対する25.00μg/mLの製品「ADN-Telomeractives」の効果を例示する3枚の写真を含む。先の図面と同様に、対照と比較して、Aftin-5に曝露した細胞では、神経突起の長さが有意に低減したことを示すことがこの図面から観察される。Aftin-5と25.00μg/mLの製品「ADN-Telomeractives」に同時曝露した細胞は、Aftin-5のみに曝露したものより良好な生存率とより長い神経突起の長さを示す。
【0075】
実施例3:本発明による使用のためのロディオラ属植物の抽出物およびゲンゲ属植物の抽出物の神経保護効果
1.材料と方法
生成物、細胞培養、分化、細胞固定、染色、細胞毒性および統計解析は、実施例1に示したとおりである。
【0076】
1.1 神経保護試験
細胞を、48時間にわたり、ロディオラ属植物、ゲンゲ属植物、抽出物の組合せ物および製品「ADN-Telomeractives」の水性希釈物に対して、30μMのAftin-5(アルツハイマー病の表現形誘導因子)と共に曝露した。固定化および標識化後に、神経突起成長および細胞数をMetaXpress(Molecular Devices)を使用して評価した。
【0077】
2.結果:神経保護効果
ロディオラ属植物、ゲンゲ属植物、抽出物組合せ物および製品「ADN-Telomeractives」は、Aftin-5(30μM)によって誘発されたアルツハイマー病の表現型に対して有意な保護効果を示した。ゲンゲ属植物およびロディオラ属植物は共に、1.25および2.50μg/mLにて神経保護効果を示し、そして、それぞれ神経突起の長さを129.9および127.9まで伸ばした。ゲンゲ属植物の抽出物とロディオラ属植物の抽出物の混合物は、対照と比較して、125.6%の神経突起の長さの延長を伴って、1.25μg/mLにて神経保護効果を誘発した。製品「ADN-Telomeractives」は、対照と比較して神経突起の長さが126.8%である、2.50μg/mLにて神経保護効果を誘発した。
【0078】
実施例4:製品「ADN-Telomeractives」のDNA修復系に対する効果
1.材料と方法
1.1 製品「ADN-Telomeractives」(ADN-T)の可溶化
製品「ADN-Telomeractives」を粉砕した後、水性原液を12.5mg/mLにて調製する。
それを37℃にて1時間撹拌する。次に、残基を1500rpmにて5分間の遠心分離によって取り除く。
【0079】
1.2 モデル
モデルは、遺伝毒性物質EMS(エチルメタンスルホナート)と接触させたHepG2細胞に対するインビトロアプローチを使用して、遺伝毒性物質に対する製品「ADN-Telomeractives」の保護効果におけるDNA修復系の関与を試験することで構成される。
【0080】
1.3 実験計画
1.「ADN-Telomeractives」製品の溶液を用いた細胞の前処理。
0日目:午前9:00、細胞をウェルに播種、次に、午後3:00、そして、40μg/mLの「ADN-Telomeractives」製品の添加。
【0081】
2.遺伝毒性化合物EMSの導入
2日目:午後3:00、2種類の濃度:0.2mMおよび1mMでのEMSの導入。
【0082】
3.「ADN-Telomeractives」製品の存在下に細胞を戻す。
3日目:午前8:00、40μg/mLにて「ADN-Telomeractives」の添加。
【0083】
4.採集と分析
4日目:午前8:00、採集。
「ADN-Telomeractives」製品なしの対照を並行して実施する。
【0084】
【0085】
1.4 分析
抽出物を、一連の特定のDNA損傷:
-8oxoG(8oxoG)
-エテノ塩基(Etheno)
-チミンとシトシンのグリコール(Glycols)
-無塩基部位(AbaS)
-光産物(ピリミジン二量体と6-4光産物)(CPD-64)
を含むプラスミドによって官能化したチップ上に置く。
【0086】
抽出物に含有されたDNA修復酵素は、損傷(またはその損傷を囲んでいるDNA断片)を切除し、DNA再合成中に蛍光標識(dCTP-Cy3)を取り込む。
蛍光シグナルを、スキャナを使用して定量化する。それは各損傷に関してそれぞれの抽出物の切除/再合成能力に比例している。
【0087】
この試験を、塩基除去修復(BER)とヌクレオチド除去修復(NER)システムを特徴づけるために使用する。
抽出物濃度は0.2mg/mLである。
【0088】
各サンプルを2つのチップで試験する。各チップには、1損傷あたり4つのスポットがある。次に、結果を正規化する(Normalizelt)。
対照プラスミド(損傷なし)の値を、各損傷について得られた全強度値から引き算する。
結果は、それぞれの損傷に関する総蛍光強度+/-標準偏差で与えられる。
【0089】
2.結果
結果を
図7、8および9を示す。
図7では、試験した無細胞毒性用量において、製品「ADN-Telomeractives」が、グリコールに対する明確な修復シミュレーション効果を除いて、DNA修復系に対して効果がないことが観察される。
【0090】
図8では、少なくとも試験した最高濃度にて、EMSが塩基除去修復(BER)を独占的に刺激することが観察される。ヌクレオチド除去修復(NER)によって管理される光産物(CPD-64)の修復は影響を受けない。この結果は、EMSによるわずかなアルキル化または酸化タイプ損傷の形成を支持し、そしてそれは、それらを管理する酵素の活性化を引き起こす。
この結果は期待されたものと一致する。
【0091】
最後に、
図9では、製品「ADN-Telomeractives」を用いた細胞の前処理が、DNA修復系に対して、最低濃度にて使用されるEMSの影響を完全に取り消すことが観察される。
【0092】
それでも、最高濃度のEMSでのDNA修復系の誘発は持続している。しかしながら、この誘発は、グリコール損傷を除いて、EMSのみを用いたものより低い。グリコール損傷の修復の刺激は、製品「ADN-Telomeractives」の効果を惹起する。
【0093】
したがって:
-無細胞毒性用量での「ADN-Telomeractives」製品のみは、グリコール修復を刺激することに関して有意な作用を有する。
-製品「ADN-Telomeractives」を用いた前処理は、最低用量のEMSの効果を取り消し、かつ、最高用量の効果を低減する。
【0094】
-最低用量のEMSにて、十分な量の「ADN-Telomeractives」製品は、DNAに対する遺伝子毒性効果に関してEMSを不活化する。
-最高用量のEMSにて、「ADN-Telomeractives」製品は、おそらく限界量において、存在するすべてのEMSを不活化するのに十分ではないが、その影響を低減するであろう。
【0095】
実施例5:本発明による使用のためのロディオラ属植物の抽出物とゲンゲ属植物の抽出物の特定の有効成分の効果
1.材料と方法
1.1 生成物
【0096】
以下の生成物を使用した:
-(アストラガルス・メンブラナセウスの粉砕根茎からの水アルコール抽出によって得た)実施例1に記載のゲンゲ属植物の第一の抽出物。この抽出物は、ゲンゲ属植物の乾燥抽出物の全重量に対して少なくとも4重量%のアストラガロシドI、II、III、IV、V、VIおよびVIIの混合物を含むが、ポリサッカライドを含まない。
【0097】
-(アストラガルス・メンブラナセウスの粉砕根茎からの純水を用いた抽出によって得た)実施例1に記載のゲンゲ属植物の第二の抽出物。この抽出物は、ゲンゲ属植物の乾燥抽出物の全重量に対して少なくとも20重量%のポリサッカライドを含むが、アストラガロシドを含まない。
【0098】
-ロディオラ属植物の乾燥抽出物の全重量に対して少なくとも3重量%のロサビンと少なくとも1重量%のサリドロシドを含む、実施例1に記載のロディオラ属植物の抽出物(ロディオラ抽出物1)。
【0099】
-ロディオラ属植物の乾燥抽出物の全重量に対して少なくとも3重量%のサリドロシドを含むが、(Gonmisolによって供給される)ロサビンは含まない、ロディオラ属植物の抽出物(ロディオラ抽出物2)。
【0100】
-以降、組合せ物4と呼ばれる、実施例1に記載のロディオラ属植物の抽出物とゲンゲ属植物の抽出物の組合せ物、そのロディオラ属植物の抽出物は、ロディオラ属植物の乾燥抽出物の全重量に対して、少なくとも3重量%のロサビンと少なくとも1重量%のサリドロシドを含み、およびそのゲンゲ属植物の抽出物は、ゲンゲ属植物の乾燥抽出物の全重量に対して、少なくとも16重量%のポリサッカライドと少なくとも0.8重量%のアストラガロシドI、II、III、IV、V、VIおよびVIIの混合物を含む。
【0101】
抽出物の組合せ物の調製
(その調製が実施例1に記載されている)組合せ物4に加えて、3種類の抽出物の他の組合せ物を調製する:
【0102】
-組合せ物1:この組合せ物を、ゲンゲ属植物の第二の抽出物(アストラガロシドを含まない)とロディオラ属植物抽出物1を4:5の重量比で混合することによって調製する。
【0103】
-組合せ物2:この組合せ物を、ゲンゲ属植物の第一の抽出物(ポリサッカライドを含まない)とロディオラ属植物抽出物1を1:5の重量比で混合することによって調製する。
【0104】
-組合せ物3:この組合せ物を、第一のゲンゲ属植物の抽出物、第二のゲンゲ属植物の抽出物および先に触れた、ロサビンを含まないロディオラ属植物の抽出物2を3:12:5の重量比で混合することによって調製する。
【0105】
抽出物の組合せ物からの水溶液の調製
各組合せ物に関して、2種類の水溶液を新たに調製して、アストラガロシド、ポリサッカライドおよびロサビンの効果を比較し、そして、その濃度を以下の表2および3に示した。
【0106】
【0107】
【0108】
1.2 細胞培養と分化
SH-SY5Y細胞を培養し、そして、供給業者の推奨に従って移植した。
すべての試験を、96ウェルマイクロプレートを使用して、3連の技術的反復により実施した。播種後に、SH-SY5Y細胞を、3日間にわたるスタウロスポリン(1%のウシ胎仔血清完全培養培地中に25nM)への曝露によって分化した。
【0109】
1.3 細胞固定と染色
各試験後に、細胞を、室温にて10分間(名称「ホルマリン10%」としてSigma-Aldrichによって市販されている)ホルムアルデヒドとメタノールの混合物を使用して固定し、続いて、30分間にわたり0. 5%のTween20(Sigma-Aldrichによって市販されているP2287)中で透過化し、そして最後に、Hoechstで核を染色し、および1時間にわたりβ3チューブリンを間接的に免疫細胞化学的に標識して(ウサギ抗β3チューブリン抗体(Abcamによって市販されているab18207)と(Ozymeによって市販されている)Alexa488蛍光色素に結合したウサギ抗IgG二次抗体)、神経突起を識別した。
【0110】
1.4 治療試験
細胞を10μMのAftin-5のみに2日間曝露した。次に、それらを、48時間、表2に示した水溶液または単なる水(対照)を用いて、Aftin-5(10μM)との同時インキュベーションにおいて処理した。固定化および標識化の後に、神経突起成長をMetaXpress(Molecular Devices)を使用して評価した。
【0111】
1.5 細胞画像化と画像解析
20×対物レンズを備えた自動化されたImageXpress(登録商標)Micro Confocal System(Molecular Devices)顕微鏡を使用して、画像を得た。2つの二色性フィルタを同時に使用して、使用した別々のプローブを特異的に検出した。1ウェルあたり4つの画像を記録し、そして、個別に分析した。
画像を、MetaXpress(Molecular Devices)ソフトウェアを使用して分析した。
【0112】
2.神経突起伸長の結果
神経突起伸長の結果を、組合せ物1、2および4については
図10に、ならびに組合せ物3および4については
図11に示す。
【0113】
2.1 アストラガロシドとポリサッカライドの組合せ物の影響
試験AおよびBの結果は、対照と比較して、組合せ物1および2が神経突起の伸長を可能にすることを示す。実は、組合せ物1は、試験Aで約16%および試験Bで約26%の神経突起伸長を可能にし、ならびに組合せ物2は、試験Aで約24%および試験Bで約21%の神経突起伸長を可能にする。
【0114】
しかしながら、組合せ物1(アストラガロシドを含まない)または組合せ物2(ポリサッカライドを含まない)の場合に得られた神経突起の伸長は、組合せ物4の場合に得られた神経突起の伸長と比較して小さい。実は、組合せ物4は、試験Aで約32%、さらに試験Bで約40%の神経突起の伸長を可能にする。
【0115】
そのため、アストラガロシドとポリサッカライドの両方を含む抽出物の組合せ物は、これらの有効成分のうちの一方のみを含む抽出物の組合せ物に比べて、神経突起のより大きな伸長を得ることを可能にする。
【0116】
2.2 ロサビンの影響
試験AおよびBの結果は、対照と比較して、ロサビンを含まない組合せ物3が試験Aで約5%および試験Bで約8%の神経突起の伸長を可能にすることを示している。
しかしながら、この組合せ物3の場合に得られた神経突起の伸長は、組合せ物4の場合に得られた神経突起の伸長と比較してかなり小さい。実は、組合せ物4は、試験Aで約32%、さらに試験Bで約40%の神経突起の伸長を可能にする。
そのため、ロサビンを含む抽出物の組合せ物は、ロサビンを含まない抽出物の組合せ物に比べて、はるかに大きい神経突起の伸長を提供する。