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特許7438963複雑な透過性デバイスと少なくとも1つのマイクロ画像アレイとからなるアセンブリ、およびそれを含むセキュリティ文書
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】複雑な透過性デバイスと少なくとも1つのマイクロ画像アレイとからなるアセンブリ、およびそれを含むセキュリティ文書
(51)【国際特許分類】
   G02B 3/00 20060101AFI20240219BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20240219BHJP
   G02B 3/08 20060101ALI20240219BHJP
   B42D 25/328 20140101ALI20240219BHJP
   B42D 25/382 20140101ALI20240219BHJP
   B42D 25/387 20140101ALI20240219BHJP
   B41M 3/14 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
G02B3/00 A
G02B5/18
G02B3/08
B42D25/328
B42D25/382
B42D25/387
B41M3/14
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020552121
(86)(22)【出願日】2018-12-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2018084669
(87)【国際公開番号】W WO2019115664
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-09-24
(31)【優先権主張番号】1762169
(32)【優先日】2017-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】520209657
【氏名又は名称】オベルトゥール フィデュシエール エスアエス
【氏名又は名称原語表記】OBERTHUR FIDUCIAIRE SAS
【住所又は居所原語表記】7 AVENUE DE MESSINE, 75008 PARIS, FRANCE
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ ブーグルネ ドゥ ラ トクネイ、ジャン-ルイ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥジャン、マリー
(72)【発明者】
【氏名】ヌーリ、ヴァンサン
(72)【発明者】
【氏名】ギロー、ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】ボルド、グザヴィエ
【審査官】小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0135937(US,A1)
【文献】国際公開第2017/184581(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/00 - 1/18
G02B 3/00 ― 3/14
G02B 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方では、透過性デバイス、すなわち、光の位相に作用する屈折および/または回折デバイスからなり、他方では、少なくとも1つのマイクロ画像アレイからなるアセンブリ(E)であって、
前記透過性デバイスは、各瞳孔(PU)がマイクロ光学デバイス(1)を含む、個々の「瞳孔」(PU)で形成された周期的な二次元アレイ(RPU)で構成されており、前記マイクロ光学デバイス(1)の少なくとも一部が非中心光軸(10)を有し、前記マイクロ光学デバイス(1)の少なくとも一部が非周期的に、すなわち、前記アレイ(RPU)内において光軸のオフセットが可変に配置されており、
前記マイクロ画像アレイ(2)は、マイクロ光学デバイス(1)と同数のマイクロ画像からなり、
各マイクロ画像は、前記瞳孔(PU)の輪郭と同一の輪郭と、前記瞳孔(PU)の輪郭と最大で同一の表面とを有し、
各マイクロ画像(2)は、前記透過性デバイスが前記マイクロ画像アレイ(2)に面して配置され、観察者が前記透過性デバイスを通して前記アレイを観察したときに、前記観察者が、少なくとも所定の観察方向に沿って、前記方向に関連付けられたサムネイル画像の組み合わせによって再構成された画像(S)を目撃するように、少なくとも1つのサムネイル画像(20)に細分化され、少なくとも1つの前記サムネイル画像(20)の各々は細分化された要素を構成し、
前記透過性デバイスが前記マイクロ画像アレイ(2)に面して配置されたときに、前記サムネイル画像(20)がそれぞれ、前記マイクロ光学デバイス(1)の前記光軸に沿って配置されるように、前記マイクロ画像の区画内に、「第1グループ」を構成するいくつかのサムネイル画像が配置される、ことを特徴とする、アセンブリ(E)。
【請求項2】
前記マイクロ光学デバイス(1)のそれぞれが非中心光軸(10)を有し、前記マイクロ光学デバイスの全てが非周期的に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項3】
前記瞳孔(PU)が同一の形状および表面であることを特徴とする、請求項1または2に記載のアセンブリ。
【請求項4】
非中心光軸を有する前記マイクロ光学デバイス(1)がフレネルレンズからなることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項5】
非中心光軸を有する前記マイクロ光学デバイス(1)が円形のブレーズド回折格子からなることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項6】
各マイクロ画像(2)が少なくとも2つのサムネイル画像(20)に細分化されていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項7】
同じ区画内において、第2グループを構成する他のサムネイル画像は、前記透過性デバイスが前記マイクロ画像アレイ(2)に面して配置されたときに、前記サムネイル画像がそれぞれ前記マイクロ光学デバイスの光軸とは異なる同じ軸線に沿って配置されるように分散されていることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項8】
少なくとも1つの所定の観察角度から見た、各区画の前記サムネイル画像(20)の組み合わせによって再構成される前記画像が、認識可能な情報(S)を構成するか認識可能な視覚効果を有することを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項9】
前記透過性デバイスと前記マイクロ画像アレイ(2)とが同じ媒体によって担持されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項10】
前記透過性デバイスと前記マイクロ画像アレイ(2)とが異なる媒体によって担持されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項11】
記マイクロ画像アレイ(2)は、それが移動可能であるか否かにかかわらず、デジタルツール画面(5)である表示デバイスによって生成されることを特徴とする、請求項8に記載のアセンブリ。
【請求項12】
キュリティ文書であって、その反対側の面(30)の少なくとも1つが、請求項1~11のいずれか一項に記載のアセンブリの透過性デバイスを担持することを特徴とする、セキュリティ文書。
【請求項13】
前記透過性デバイスが、前記反対側の面(30)の1つによって担持される印刷の上に延在し、前記印刷が、請求項1~9のいずれか一項に記載の前記アセンブリの二次元マイクロ画像アレイ(2)を構成することを特徴とする、請求項12に記載のセキュリティ文書。
【請求項14】
前記透過性デバイスが、前記反対側の面で開放されるとともに請求項1~9のいずれか一項に記載の前記アセンブリの前記二次元マイクロ画像アレイ(2)を構成する印刷を含む窓(4)を通って延在し、前記窓(4)と前記印刷とは、少なくとも一時的に重ねられるように、互いに対して配置されていることを特徴とする、請求項12に記載のセキュリティ文書。
【請求項15】
前記印刷が、可視黒色インク、着色インク、艶消しインク、光沢インク、虹色効果を有するインク、メタリックインク、光学可変インク、不可視であるが紫外線(蛍光またはリン光)の下で可視、または赤外線の下で可視であるインク、からなる群から選択される少なくとも1つのインクからなることを特徴とする、請求項13~14のいずれか一項に記載のセキュリティ文書。
【請求項16】
前記透過性デバイスが透明ワニスの層でコーティングされ、それにより前記デバイスの上面が平面になっていることを特徴とする、請求項12~15のいずれか一項に記載のセキュリティ文書。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方では、複雑な透過性デバイス、すなわち、光の位相に作用する屈折および/または回折デバイスからなり、他方では、少なくとも1つのマイクロ画像アレイからなるアセンブリに関する。
【0002】
本発明はまた、そのようなアセンブリを含む紙幣のようなセキュリティ文書にも関する。
【背景技術】
【0003】
セキュリティ文書、より具体的には、紙幣などの受託者文書の分野において、光学的手段によって情報を符号化するための様々な技術が存在する。
【0004】
ホログラフィック式の技術は最も古いものである。たとえば国際公開第97/40464号に記載されているように、スマートカード上のホログラムは今もなお使用されている。
【0005】
同様に、モアレ効果を利用するデバイスは現在広く使用されている。これに関して、欧州特許出願公開第2811470号明細書を参照することができる。それらは、異なるピッチの位相アレイ(マイクロ光学デバイスなど)とマイクロ画像アレイとの間の結合に基づいている。
【0006】
さらに、米国特許出願公開第2014/177008号明細書に示されているように、いくつかの読み取り角度を優先する自動立体視の原理に関連する技術もかなり開発されている。
【0007】
上記の様々な効果を組み合わせた変形は、当然、特に国際公開第2016/183635号に提案されている。
【0008】
分極(たとえば、国際公開第2016/141420号を参照)または共振モード(たとえば、「プラズモン効果」を使用)などのより複雑な効果を実装する他の二次技術も提案されており、あるいは広く既存の保護を強化している(たとえば、国際公開第2015/113718号を参照)。
【0009】
最後に、国際公開第2017/184581号は、本出願の請求項1の前文に記載のアセンブリを説明している。
【0010】
これらすべての技術は、受託者文書などのセキュリティ文書に適用される場合、不正な複製を特に困難にすること、つまり偽造者の作業を複雑にすることを目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】国際公開第97/40464号
【文献】欧州特許出願公開第2811470号明細書
【文献】米国特許出願公開第2014/177008号明細書
【文献】国際公開第2016/183635号
【文献】国際公開第2016/141420号
【文献】国際公開第2015/113718号
【文献】国際公開第2017/184581号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、マルチ観察式の技術に基づいており、再現がさらにいっそう困難であり、関係する文書の真正性を検証するための特に効果的な手段を含む新たな変形を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって、本発明は、一方では、複雑な透過性デバイス、すなわち、光の位相に作用する屈折および/または回折デバイスからなり、他方では、少なくとも1つのマイクロ画像アレイからなるアセンブリに関し、
上記複雑な透過性デバイスは、各瞳孔がマイクロ光学デバイスを含む、個々の「瞳孔」で形成された周期的な二次元アレイで構成されており、マイクロ光学デバイスの少なくとも一部が非中心光軸を有し、マイクロ光学デバイスの少なくとも一部が非周期的に、すなわち、上記アレイ内において光軸のオフセットが可変に配置されており、
上記マイクロ画像アレイは、マイクロ光学デバイスと同数のマイクロ画像からなり、
各マイクロ画像は、関連する瞳孔の輪郭と同一の輪郭と、関連する瞳孔の輪郭と最大で同一の表面とを有し、
各マイクロ画像は、上記透過性デバイスが上記マイクロ画像アレイに面して配置され、観察者が上記透過性デバイスを通して上記アレイを観察したときに、観察者が、少なくとも所定の観察方向に沿って、上記方向に関連付けられたサムネイル画像の組み合わせによって再構成された画像を目撃するように、少なくとも1つのサムネイル画像に細分化され、
上記透過性デバイスが上記マイクロ画像アレイに面して配置されたときに、サムネイル画像がそれぞれ、上記関連するマイクロ光学デバイスの光軸に沿って配置されるように、同じ区画内において、いくつかのサムネイル画像、すなわち、「第1グループ」を構成するサムネイル画像の一部のみが分散される、ことを特徴とする。
【0014】
さらに、本発明の他の非限定的かつ有利な特徴によれば、
上記マイクロ光学デバイスのそれぞれが非中心光軸を有し、上記マイクロ光学デバイスの全てが非周期的に配置されており、
上記瞳孔が同一の形状および表面であり、
非中心光軸を有する上記マイクロ光学デバイスがフレネルレンズからなり、
非中心光軸を有する上記マイクロ光学デバイスが円形のブレーズド回折格子からなり、
各マイクロ画像が少なくとも2つのサムネイル画像に細分化されており、
同じ区画内において、第2グループを構成する他のサムネイル画像は、上記透過性デバイスが上記マイクロ画像アレイに面して配置されたときに、サムネイル画像がそれぞれ上記関連付けられたマイクロ光学デバイスの光軸とは異なる同じ軸線に沿って配置されるように分散されており、
少なくとも1つの所定の観察角度から見た、各区画のサムネイル画像の組み合わせによって再構成される画像が、認識可能な情報を構成するか認識可能な視覚効果を有し、
上記複雑な透過性デバイスと上記マイクロ画像アレイとが同じ媒体によって担持され、
上記複雑な透過性デバイスと上記マイクロ画像アレイとが異なる媒体によって担持され、
上記二次元マイクロ画像アレイは、それが移動可能であるか否かにかかわらず、デジタルツール画面などの表示デバイスによって生成される。
【0015】
本発明はまた、紙幣などのセキュリティ文書であって、その反対側の面の少なくとも1つが、上記のいずれか1つの特徴に記載のアセンブリの複雑な透過性デバイスを担持するセキュリティ文書に関する。
【0016】
有利には、
上記複雑な透過性デバイスが、上記反対側の面の1つによって担持される印刷の上に延在し、印刷が、上記のいずれか1つの特徴に記載の上記アセンブリの二次元マイクロ画像アレイを構成し、
上記複雑な透過性デバイスが、上記反対側の面で開放されるとともに上記のいずれか1つの特徴に記載の上記アセンブリの二次元マイクロ画像アレイを構成する印刷を含む窓を通って延在し、窓と印刷とは、少なくとも一時的に重ねられるように、互いに対して配置されており、
上記印刷が、可視黒色インク、着色インク、艶消しインク、光沢インク、虹色効果を有するインク、メタリックインク、光学可変インク、不可視であるが紫外線(蛍光またはリン光)の下で可視、または赤外線の下で可視であるインク、からなる群から選択される少なくとも1つのインクからなり、
上記透過性デバイスが透明ワニスの層でコーティングされ、それにより上記デバイスの上面が平面になっている。
【0017】
本発明の他の特徴および利点は、本発明の好ましい実施形態の以下の説明を読むと明らかになるであろう。この説明は、添付の図面を参照して行われる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】マルチ観察の原理を説明するための図である。
図2】自動立体鏡検査の場合を例示することを意図した図である。
図3】自動立体鏡検査の場合を例示することを意図した図である。
図4】レンズアレイの下に広がるマイクロ画像から異なる画像がどのように再構成されるかを説明するための図である。
図5】一方では屈折レンズとプリズムの組み合わせと、他方では光軸が偏心しているフレネルレンズとの間の等価性を示す図である。
図6A】関与するメカニズムの対称性、すなわち、レンズの光軸の偏心とサムネイル画像(画像部分)の位置の適合を示すことを意図した図である。
図6B】関与するメカニズムの対称性、すなわち、レンズの光軸の偏心とサムネイル画像(画像部分)の位置の適合を示すことを意図した図である。
図6C】関与するメカニズムの対称性、すなわち、レンズの光軸の偏心とサムネイル画像(画像部分)の位置の適合を示すことを意図した図である。
図6D】関与するメカニズムの対称性、すなわち、レンズの光軸の偏心とサムネイル画像(画像部分)の位置の適合を示すことを意図した図である。
図7A】本発明によるアセンブリの特定の実施形態を示す図である。
図7B】本発明によるアセンブリの特定の実施形態を示す図である。
図7C】本発明によるアセンブリの特定の実施形態を示す図である。
図8】マイクロレンズアレイの一部の2つの代替実施形態の上面図である。
図9】マイクロレンズアレイの一部の2つの代替実施形態の上面図である。
図10】上から見た紙幣を示す図であり、その紙面の1つは、本発明によるアセンブリを担持している。
図11A】前の図のアセンブリの非常に概略的な断面図である。
図11B】代替実施形態の図11Aと同様の図である。
図11C】代替実施形態の図11Aと同様の図である。
図12図10と同様の図であり、紙幣には、上記アセンブリの1つのレンズアレイのみを担持する透明な窓が設けられており、この図は、マイクロ画像アレイを表示できる画面上の電話も示している。
図13】第1の領域に、上記アセンブリの1つのレンズアレイのみを担持する透明な窓と、第2の領域に、マイクロ画像アレイの印刷とを含む紙幣を表す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明によれば、アセンブリは、単純な配置によって、2つの主要な要素、すなわち、紙幣などのセキュリティ文書に出現する可能性があり、透過効果がある、マイクロ光学デバイスからなる複雑な透過性デバイスと、複雑な透過性デバイスが面している媒体とからなるように形成されている。
【0020】
好ましくは、この媒体は、複雑な透過性デバイスが重ねられている場所に、媒体の基材(紙および/またはポリマーでできている)に直接貼り付けられてもよく、あるいは、たとえば、「スマートフォン」型の電話またはタッチパッドの画面上で可視であり、反射または透過で読み取ることができて肉眼では解釈できないパターンを収容できる。
【0021】
あるいは、パターンの一部は媒体の基板上にあってもよく、別の一部は上記のモバイル機器上にあってもよい。これらの2つの要素を正しく重ね合わせることにより、
・一定の数の観察位置(近見視力、つまり40cm付近)で異なる画像を形成して、レリーフまたは動きの錯覚を与えること、
・または、画像を立体視に組み合わせて、比色分析の組み合わせによって色を知覚できるようにすること、
・または、観察の正確な位置に第2の画像を形成し、この第2の画像がメイン画像に何らかの形で隠されるようにすること、ができる。
【0022】
したがって、個別に暗号化または符号化されたマイクロ画像アレイとマイクロ光学デバイスのアレイとの2つの平面の組み合わせ、つまり、最小構成単位の配置の組み合わせによる復号化が実装されており、マイクロ画像は相互にマイクロ光学系であり、肉眼でまたは補助(拡大鏡、顕微鏡)を用いて単に観察することで容易に認識できる対称性や複製(変換)の規則に従わない。
【0023】
別の方法として、媒体の基板上に直接、または媒体の基板に固定もしくは統合された別のベクター自体によって間接的に(たとえば、転写された要素、熱間圧延または冷間圧延された要素、部分的に埋め込まれたワイヤなど)、2つの平面の組み合わせを固定して、一度だけ作成することもできる。
【0024】
[本発明に特有の符号化の原理および最新技術]
本発明によるアセンブリのシステムは、組み合わされた符号化(暗号化)媒体+複雑な透過性デバイスに存在する。「複雑な透過性デバイス」とは、光の位相に作用する屈折デバイス、回折デバイス、または複合デバイス(たとえば、回折格子、レンズ、プリズムなど)を意味する。
【0025】
媒体の各画像は、マイクロ画像アレイのサブ要素に対応する「サムネイル画像」で構成される(最終的に、最小のサムネイル画像は画像自体の画素である)。
【0026】
マルチ観察の原理は、視線の傾きおよび方向に応じて異なる画像を視覚に提示することである。
【0027】
最もよく知られているのは、視差バリアまたはレンズアレイの使用である。本発明は、それを一般化することによってそこからインスピレーションを引き出す。
【0028】
実際、本発明によるアセンブリは、マイクロ画像アレイが配置される二次元屈折格子からなり、各サムネイル画像は、独立した画像を形成する目的で、レンズの光軸に対して真向かいにあるレンズの光軸に対してオフセットされ得る。
【0029】
過去には、この種の多くの成果がすでに提案されてきた。したがって、例えば、米国特許出願公開第2014/177008号明細書によれば、デバイスを傾けることにより、画像の移動、互いに対して移動するオブジェクトの移動、またはレリーフ、形状、外観/消失、ズームの効果を見ることができる。このため、画像の一部(それぞれが視野角に対応)は、各レンズの下で非常に特殊な方法で配置される。
【0030】
同様に、国際公開第2015/011493号では、視野角ごとに異なる画像が含まれている(レンズの中心で知覚される角度範囲はより大きいため、レンズの中心の下に配置された画像の部分は側に配置された部分よりも大きいという違いがある)。
【0031】
[定義]
本出願全体を通して、以下の用語および表現は、以下に与えられる定義を有する:
[マイクロ光学デバイス]:サイズが25μm~100μmのデバイスで構成される。その焦点距離は、10~400μm、好ましくは40μm~100μmの間で変動する。
[マイクロ画像アレイ]:サイズが2μmを超え、マイクロ光学デバイスの影響下で拡大されるサムネイル画像で構成される。これにより、大きな画像を形成することができる。
[画像]:画像は、一連のマイクロ光学デバイスを通して見たときに知覚されるものである。そのサイズは、上記アレイのサイズに対応し、すなわち、数平方ミリメートルと数平方センチメートルとの間である。サムネイル画像(別の方法として画像部分と呼ばれる)のセットで構成される。
[サムネイル画像または画像部分]:サムネイル画像は、マイクロ画像アレイの最小のサブ要素であり、画像を構成する。そのサイズは、マイクロ光学デバイスのサイズ以下である。これにより、特定のデバイスに対していくつかの可能なサムネイル画像を使用できる。したがって、マイクロ光学によって選択されたサムネイル画像は、見る角度によって異なり、これによって異なる画像が作成される。2つの連続した画像間で、視野角は数度異なる場合がある。
【0032】
[本発明の基礎となる原理]
実装される第1の原理は、3つの異なる要素に基づいている。
【0033】
第1の要素は、マイクロ画像アレイの上に配置された屈折格子の性質に関する。ここでは、マルチ観察の原理からインスピレーションを得て、画像化機能(レンズまたはアキシコン)とプリズム型の偏向機能とを組み合わせることを提案する。これらの条件下で、屈折格子は、有利には、プリズム(その角度および向きが固定されている)に結合された撮像素子(レンズまたはアキシコン)を含むマイクロ光学デバイスからなる。
【0034】
第2の要素は、マイクロ画像アレイの設計に基づいている。後者は、それらを光学要素に面して配置すると、凝視のいくつかの位置において異なる画像が作成されるように配置および設計される。
【0035】
第3の要素は、マイクロ光学デバイスの位相エイリアシングに関するものである。実際、この位相エイリアシングは、光学系に対する撮像対象の軸の並進の関数に変換することにより、撮像機能をプリズム機能と融合することを可能にする。このエイリアシングにより、光学系の製造および第2の要素の実装が簡素化される。
【0036】
第2の原則、つまりマイクロ光学デバイスのアレイが必ずしも周期的ではないという事実により、後者がアレイの表面にアクセスできないようにすることを目的としたワニスなどの補償層で覆われていない場合、アレイを複製することがより困難になる。この補償層が存在しない場合、本発明のおかげで、後者の最小構成単位の配置は、単純な観察では確かに推定できない。
【0037】
考慮された光学系のエイリアシングの原則に頼ることに加えて、簡単な解読を回避し、その結果、単純な観察から推定されない架空の忠実な複製によってのみ再現できるようにするため、画像化光学系の変換(エイリアシングによって可能)とサムネイル画像との両方が、明らかに集合的にランダムな方法で符号化される。
【0038】
したがって、マイクロ光学の構成につながる凝視の特定の数の位置でさまざまな画像を再構成することを可能にするデバイスと、関連するサムネイル画像とは、ランダムに相互接続され、このことは、初期画像の状態を維持するために、上記の相互接続から生じる偏向の再計算を前提としている。
【0039】
その結果、もはや均一ではないマイクロ光学の移動の分布が得られ、したがって、推定および/または再現するのがはるかに困難である。
【0040】
実際には、この相互接続は、位相マスクの計算時に製造上の制約によって制限される最大たわみ制約によって作成される。たとえば、p次のフレネルレンズの場合、マスクのエッジの2つの連続する画素間の位相偏差(つまり、最大の空間周波数)がpπより大きい場合に、限界に達する。それを超えると、サンプリング限界未満になる。
【0041】
図1は、マルチ観察の原理を示している。したがって、ここでは収束レンズLCが含まれるため、異なる視野角の異なる画像を見ることができる。視野角AV1の場合、収束レンズが光線を集中させるため、画像部分PI1のみが表示される。一方、視野角AV2では、画像部分PI2のみが見える。したがって、異なる画像間で交替することができる。
【0042】
図2および図3は、自動立体視の使用例を示している。したがって、図2を参照すると、レンズアレイRLが含まれ、これにより、上で説明したように、いくつかの視野角AV1およびAV2を優先することができ、サムネイル画像IG部分が各々の目に見えるようになる。これらの条件下では、レリーフ画像のように見える。同様に、図3を参照すると、各々の目が異なるサムネイル画像IGを見ることができるように、光線の一部を遮断する視差バリアBPを使用することができる。
【0043】
図4では、中心位置にマイクロ画像アレイMI1~MI4がある。レンズアレイRLの各レンズは、四角で区切られ、その下に4つの所与の視野角AV1~AV4に対して大きな画像GI1~GI4を再構成するように配置された4つのマイクロ画像が延在している。
【0044】
図5を参照すると、一方の、屈折レンズLC(光パワー)とプリズムP(光の偏向)との組み合わせと、他方の、偏心したフレネルレンズLFとの間に同等性がある。後者は同じ効果、つまり光の集中および偏向、を有する。利点は、偏向により並進が発生することである。
【0045】
これは添付の図には表されていないが、プリズムに関連付けられたアキシコンは、偏心した円形のブレーズド回折格子(「アキシコン位相ホログラム」)と同等である。
【0046】
図6A図6Dは、レンズの光軸の偏心の影響と、所望の視野角に応じてレンズを通して後者を見るかまたは見ないためのサムネイル画像(すなわち画像部分)の適合の両方を示す。図6Aの場合、画像部分PIは、レンズが中心にあるとき、視野角AV1に対して知覚される。
【0047】
しかしながら、レンズが右に偏心している場合、画像部分PIは、図6Cに示すようにレンズが中央にある場合に画像部分PIを左に移動させることになる視野角AV2(図6Bの場合)に対して見られる。偏心したレンズを用いて図6Aの場合と同等にするためには、図6Dに示すように、画像部分PIを移動させることも必要である。
【0048】
これらの機能を組み合わせて(すなわち、インターレースして)、関係する構成の構成パラメータの抽出をより困難にすることができることがわかる。
【0049】
図7A図7Cは、本発明によるアセンブリの特定の例示的な実施形態を表す。
【0050】
したがって、図7Aは、個々の「瞳孔」PU、すなわちここでは各瞳孔PUがマイクロ光学デバイスを含む正方形の位置で形成された二次元周期的アレイRPUからなる複雑な透過性デバイスを表す。図を読みやすくするために、各瞳孔PUの輪郭がここに表されているが、実際には見えない。
【0051】
さらに、読みやすさの理由から、この図は、このアレイ上に配置されたレンズ1の光学中心10のみを表している。これらのレンズは、アレイ内の光学中心からのオフセットが可変であることがわかる。
【0052】
図7Bでは、前述のアレイRPUが依然として表示されているが、今はマイクロ画像2のみが表されており、いくつかのサムネイル画像20は黒い四角で表されている。これらのサムネイル画像は、サムネイル画像全体の一部のみを構成し、「第1グループ」を構成する。それらの分布も非周期的であることに注意されたい。ただし、それらのいくつかの位置は、図7Aで識別された光学中心の位置と一致する。
【0053】
図7Cは、「最終的な状況」、すなわち、2つのアレイが重ね合わされた状況を表す。
【0054】
視線の方向がアレイの平面に垂直である場合、観察者の目には、図において灰色で表されている概して「O」字型の記号が表示される。この「O」は、図7Bのサムネイル画像20の組み合わせによって再構成された画像である。
【0055】
また、記号に属していない画素の場合、サムネイル画像はレンズの中心から遠く離れている。
【0056】
図7Aのレンズアレイまたは図7Bのサムネイル画像アレイを個別に取得した場合、それらの分布はランダムで無関係に見えるため、情報はない。前述の記号で構成される情報を示すのは、この2つの組み合わせだけである。
【0057】
これはここでは表されていないが、対応するサムネイル画像がすべて別の観察軸に沿って一緒に見える場合は、第2の記号(または追加の記号)が表され得る。
【0058】
したがって、これらのサムネイル画像(前述の「第1グループ」のサムネイル画像とは異なる)は、サムネイル画像の「第2グループ」を構成する。
【0059】
このようにして、観察者は、観察者の視線の方向がアレイの平面に垂直である場合、前述の「O」の存在を観察する。次いで、観察者の視線を別の方向に向けることにより(またはアセンブリの方向を変更することにより)、第2の記号が現れる。
【0060】
最終的に、他のすべての方向については、記号は現れない。
【0061】
図8および図9は、互いに独立してランダムに生成された2つのマイクロレンズアレイ1を表す。マイクロレンズのそれぞれについて、下に配置されたマイクロ画像はそれに応じて調整される。2つのアレイの違いにもかかわらず、まったく同じ視覚効果(たとえば、正方形の拡大)が得られるように、レンズとサムネイルの画像配置の組み合わせを作成することができる。
【0062】
レンズの不均一な分布は、特定の配置の再複製以外による複製を妨げることが観察され、この配置は無限に変化し得る。
【0063】
アレイに隠し記号を追加することにより、作成されたパターンがオリジナルの偽造ではないことを識別することができる。
【0064】
この記号は、たとえば、特定の角度でのみ観察可能な(したがって、他のすべての観察角度では非表示になる)第2の画像、またはレンズの表面での反射の観察可能なパターンであってもよく、それらの配置にリンクされていてもよい。
【0065】
それは、例えば、光軸が非周期的アレイにおいて整然とした方法でオフセットされて文字またはパターンを形成するレンズの有限セットであってもよい。これらのレンズを特定の角度から観察することにより(サムネイル画像が見えないようにかなり大きく)、文字やパターンを認識することができる。
【0066】
有利には、本発明のアセンブリEは、紙幣などのセキュリティ文書によって担持される。
【0067】
そのような紙幣3は、図10に非常に概略的に示されている。紙幣3は、その反対側の面の1つに、前記アセンブリEを担持している。
【0068】
図11の実施形態においてより具体的に示されるように、ここでのアセンブリEは、紙幣の表面30によって担持されるレンズアレイ1およびマイクロ画像アレイ2からなる。
【0069】
この場合、アセンブリEは、必ずしも連続的である必要はないが、紙幣3の基板上に直接2つのステップで作ることができる。
【0070】
アセンブリEは、アセンブリEを担持する安全ワイヤを断面図で示す図11Bに示されているように、適用ステップ(例えば、熱間転写フィルムもしくは冷間転写フィルム、熱間圧延フィルムもしくは冷間圧延フィルムなどの形態)または統合ステップの後に紙幣3に取り付けられた挿入物であってもよい。ワイヤは、基板の主要部に挿入されているが、一部の場所の表面に肉眼でそれを観察できる窓がある。
【0071】
最後に、アセンブリEは、紙幣3(たとえば、アレイ1に面している場合を除いて、一部の場所が不透明化された透明なポリマーで構成されている場合)を構成する基板(図11Cに示す)を通過していてもよい。
【0072】
マイクロ画像アレイ2に関しては、たとえば、画像、形状、パターン、情報などの形で構成できるようにする技術の認識可能な結果で構成され、これは、印刷、メタライゼーション/デメタライゼーション、レーザ彫刻によって制限されない。
【0073】
印刷技術のみを保持するために、後者は、以下のインク、すなわち、可視黒色インク、着色インク、艶消しインク、光沢インク、虹色効果を有するインク、メタリックインク、光学可変インク、不可視であるが、紫外線(蛍光またはリン光)の下で可視、または赤外線の下で可視であるインク、からなる群から選択される少なくとも1つのインクを塗布することを可能にする任意の既知の方法に従って実行される。
【0074】
さらに、レンズアレイ1は、永久的または一時的に、印刷の上に延在する。
【0075】
このレンズアレイは、第1のステップにおいて、例えば、フォトリソグラフィによって、樹脂S1813(供給業者シプリー)などの感光性樹脂内に彫刻され得る。
【0076】
その起源は次のとおりであってもよい。
【0077】
ガラス基板上に樹脂層が堆積される。次いで、樹脂化されたプレートが、彫刻される位相マスクに対応するマスクによって変調されたUVのレーザビームに露光される。現像後、露光されたマスクの領域が削除される(「ポジティブ」樹脂の場合、それ以外の場合は、露光されていない部分が削除される)。これは、版がレリーフで彫刻される方法であり、最大彫刻深度は露光時間とともに増加する。
【0078】
この起源から、複製プロセスは、ツールを取得し、その後、最終的な製品、つまりレンズアレイ1を紙幣3に直接、またはそれに統合できる形状(適用後または統合後の付属挿入物)で、あるいは、構成基板の透過性を活かした形状(上記の高分子基板で作られた紙幣の場合)でも取得する。
【0079】
最後に、このレンズアレイ1が取り外し可能であって紙幣3に取り付けられていない変形もあり、この場合のみ、アレイ2は紙幣によって永久的に担持される。
【0080】
好ましくは、レンズアレイの非平面の上面は、それを平面にし、直接の指紋採取による複製の不正な試みを回避するために、透明なワニスでコーティングされる。
【0081】
製造されたアレイは、上記で実装された印刷に適用される。
【0082】
図12の実施形態では、紙幣3は窓4を含む。この窓は、透明な基板(例えば、二方向ポリプロピレンに基づく紙幣)の場合、紙幣の残りの部分に取り付けられる。基板が不透明な場合(たとえば、綿繊維ベースの紙幣)、この窓は、透明なポリマー材料で塞がれた開口部からなり、後者はレンズアレイ1を収容する。
【0083】
マイクロ画像アレイに関しては、それがモバイルであるかどうかにかかわらず、スマートフォン型の電話5の画面50またはデジタルツールのデジタル表示画面に表示することができる。
【0084】
したがって、窓および画面に表示されたアレイを反対にすることにより、認識可能な情報が開示されているかどうか、または認識可能な視覚効果が強調表示されているかどうかに応じて、紙幣の真正性の検証に進むことができる。
【0085】
図13の実施形態では、アレイ1および2は紙幣3の2つの異なる領域に配置されているため、矢印fで示すようにこの紙幣にエイリアスを付けることにより、2つのアレイを重ね合わせて、認識可能な情報または視覚効果を表すことができる。
【0086】
図示されていない一実施形態では、レンズアレイに加えて、マイクロ画像アレイの一部(例えば半分)のみが窓に担持され、一方で、電話などの画面に表示される、図12のような紙幣が含まれ得る。
【0087】
最後に、図示されていない最終的な実施形態では、マイクロ画像アレイ2のみを担持する紙幣3があり得、レンズアレイ1は、取り外し可能な媒体上に構築され、認証の目的で一時的にのみ追加される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図12
図13