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特許7438964工作機械にワークピースを位置決めする方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】工作機械にワークピースを位置決めする方法
(51)【国際特許分類】
   B23Q 7/04 20060101AFI20240219BHJP
   B23F 23/02 20060101ALI20240219BHJP
   B23Q 3/18 20060101ALI20240219BHJP
   B23Q 17/22 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
B23Q7/04 A
B23F23/02
B23Q3/18 Z
B23Q17/22 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020553598
(86)(22)【出願日】2019-04-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-19
(86)【国際出願番号】 US2019025315
(87)【国際公開番号】W WO2019195234
(87)【国際公開日】2019-10-10
【審査請求日】2022-01-25
(31)【優先権主張番号】62/653,838
(32)【優先日】2018-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500094370
【氏名又は名称】ザ グリーソン ワークス
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ダブリュ.ロバーツ
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-505844(JP,A)
【文献】特開2002-187041(JP,A)
【文献】特開平06-238541(JP,A)
【文献】特開2014-157462(JP,A)
【文献】特開平11-239945(JP,A)
【文献】特開2001-030111(JP,A)
【文献】特開平03-170240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 7/04
B23B 15/00
B23F 23/02
B23Q 3/18
B23Q 17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械におけるワークピースの位置決めを決定するための方法であって、前記工作機械は、少なくとも1つのワークピースを把持するための手段を含むローダー機構を有し、前記ローダー機構は、ローダー線形駆動手段によってローダー軸に沿って直線的に移動可能であり、ローダー回転駆動手段によって前記ローダー軸周りに角度移動可能であり、前記ローダー線形駆動手段および前記ローダー回転駆動手段は、前記ローダー軸のための閉ループ位置決めシステムの一部であり、前記方法は、
第1の量の電流を前記ローダー線形駆動手段に印加し、前記第1の量は、前記ローダー線形駆動手段の定義されたまたは所定の全電力量の電流と比較して低減され、それにより、低減された前記第1の量の電流の結果として、前記ローダー線形駆動手段は、前記ローダー線形駆動手段のための定義されたまたは所定の全電力量のトルクと比較して低減されたそれぞれの出力トルクを提供することと、
第2の量の電流を前記ローダー回転駆動手段に印加し、前記第2の量は、前記ローダー回転駆動手段の定義されたまたは所定の全電力量の電流と比較して低減され、それにより、低減された前記第2の量の電流の結果として、前記ローダー回転駆動手段は、前記ローダー回転駆動手段のための定義されたまたは所定の全電力量のトルクと比較して低減されたそれぞれの出力トルクを提供することと、
前記工作機械の機械スピンドルにワークピースを位置決めし、前記ローダー機構の把持する手段で前記ワークピースを把持し、それにより、前記ローダー機構と前記機械スピンドルが機械的に結合され、前記機械スピンドルは、1つ以上のスピンドル運動軸に沿って直線的に移動可能および/または前記スピンドル運動軸の周りに回転可能であり、前記スピンドル運動軸のそれぞれが、それぞれのスピンドル線形駆動手段および/またはスピンドル回転駆動手段に関連付けられ、前記スピンドル線形駆動手段は、定義されたまたは所定の全出力量でトルクを出力し、および/または前記スピンドル回転駆動手段は、定義されたまたは所定の全電力量でトルクを出力することと、を含み、
前記スピンドル線形駆動手段の全出力トルクおよび/または前記スピンドル回転駆動手段の全出力トルクに対する前記ローダー機構の前記ローダー線形駆動手段および前記ローダー回転駆動手段の出力トルクの減少の結果として、前記ローダー機構は、前記ローダー軸に沿った方向に直線的に、および前記ローダー軸を中心に回転して再位置決めされ、それにより、機械的カップリングから生じる機械力が効果的に中和される、方法。
【請求項2】
前記ローダー機構の再位置決めは、前記機械スピンドルに対してある方向に第1の線形位置へと前記ローダー機構を直線的に移動することを含み、それにより、前記ローダー線形駆動手段は、前記ローダー線形駆動手段の低減されたトルク制限と同等かつ前記ある方向と反対する反対方向の抵抗を生成し、
前記ローダー機構の再位置決めは、前記機械スピンドルに対して前記ある方向と反対する反対方向に第2の線形位置へと前記ローダー機構を直線的に移動することを含み、それにより、前記ローダー線形駆動手段は、前記ローダー線形駆動手段の低減されたトルク制限と同等かつ前記ある方向の抵抗を生成し、
前記ローダー機構を前記第1の線形位置と前記第2の線形位置の間の最終線形位置に再位置決めすることと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記最終線形位置は、前記第1の線形位置と前記第2の線形位置との間の中間である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ローダー機構の再位置決めは、前記機械スピンドルに対してある回転方向に第1の回転位置へと前記ローダー機構を回転して移動することを含み、それにより、前記ローダー回転駆動手段は、前記ローダー回転駆動手段の低減されたトルク制限と同等かつ前記ある回転方向と反対する反対の回転方向の抵抗を生成し、
前記ローダー機構の再位置決めは、前記機械スピンドルに対して前記ある回転方向と反対する反対の回転方向に第2の回転位置へと前記ローダー機構を回転して移動することを含み、それにより、前記ローダー回転駆動手段は、前記ローダー回転駆動手段の低減されたトルク制限と同等かつ前記ある回転方向の抵抗を生成し、
前記ローダー機構を前記第1の回転位置と前記第2の回転位置の間の最終回転位置に再位置決めすることと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記最終回転位置は、前記第1の回転位置と前記第2の回転位置との間の中間である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ローダー機構が水平面内で直線的に移動可能であり、前記機械スピンドルが水平面内で直線的に移動可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ローダー機構が水平面内で直線的に移動可能であり、前記機械スピンドルが垂直面内で直線的に移動可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ローダー機構の把持手段にワークピースを位置決めすることであって、前記ローダー機構の把持手段は少なくとも一対のジョーを含み、前記ワークピースは円錐状面の幅部分を含む、位置決めすることと、
前記ジョーを閉じることと、
前記ローダー機構の直線軸に垂直な方向を有する軸に沿った位置に前記ワークピースを位置決めすることと、
少なくとも1つの前記ジョーが前記ワークピースの前記円錐状面の幅部分に接触するまで、前記ジョーと前記ワークピースを前記ローダー機構の前記直線軸の方向に相対的に移動させることと、
前記ジョーの接触点から前記機械スピンドルまでの距離を記録することと、
前記ジョーが前記ワークピースから離れるように、前記ジョーの動きの方向を反転することと、
前記ローダー機構の前記直線軸に垂直な方向に前記ワークピースの位置を調整することと、
前記位置決め、移動、記録、反転、調整のステップを複数回繰り返すことと、
記録された最小距離に対応する前記ローダー機構の前記直線軸に垂直な方向における前記ワークピースの位置に従って、前記ローダー機構の把持手段における前記ワークピースの位置を選択することと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
プログラム可能なコンピュータ制御装置を備える多軸歯車製造機であって、前記コンピュータ制御装置がプログラムされ、それにより前記多軸歯車製造機が請求項1の方法を実行するように動作する、多軸歯車製造機。
【請求項10】
前記工作機械は、傘歯車製造機を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ワークピースは、ベベルピニオンギアまたはベベルリングギアを含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械、特に工作機械のローダー機構、およびローダー機構を用いてワークピースの位置決めを決定することに関する。
【背景技術】
【0002】
ベベルリングギアおよびピニオンを含むギアなどのワークピースの機械加工では、工作機械の機械加工スピンドルにワークピースをロードおよび/またはアンロードするために様々な「ローダー」機構を利用することが一般的である。
【0003】
一般に、ローダーは、グリッパー内のワークピースを機械スピンドルに配置する、またはそのグリッパーを使用してワークピースをスピンドルから取り外す、のいずれかを行う。そのようなローダー機構の1つが米国特許第8,961,081号に示されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれ、グリッパーを備えた旋回移送アームが工作機械のワークピースカッタースピンドルにワークピースをロードし、ワークピースカッタースピンドルからワークピースを取り外し、ワークピースカッタースピンドルと補助スピンドルとの間でワークピースを移送する。補助スピンドルは、面取りやバリ取りなどの二次的な装置やプロセスに関連する場合がある。
【0004】
ロードおよびアンロードのための機械軸位置およびローダー軸位置は、ローダー機構の適切な機能および工作機械の適切な機能にとって重要である。通常、機械軸の位置とローダー軸の位置は、機械のオペレーターやセットアップ担当者が関与する手動のセットアッププロセスで決定される。
【0005】
図3の48および49などのグリッパージョーは、ある量の自動調心および整列能力を有する。ジョーが軸方向および半径方向の中心にないリングギアまたはピニオンブランクを把持する場合、ジョーは本質的に、グリッパー内でその部品を中央に配置して整列させる力を生み出す。たとえば、部品が工作機械のスピンドルにもチャッキングされている場合、これによりローダー軸が工作機械軸と衝突し、サーボ障害が発生する可能性がある。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、ローダー機構の線形および/または回転サーボモーターへの電流の量、したがってトルクを低減することによって、ローダー機構が、歯車製造機械、特に傘歯車およびハイポイド歯車を製造する機械などの工作機械内で適切なワークピース位置決めを決定するように動作可能である方法に関する。
【0007】
本発明は、ワークピースを把持するための手段を含むローダー機構を有する工作機械で工作機械におけるワークピース位置決めを決定するための方法を含む。ローダー機構は、線形駆動手段によってローダー軸に沿って直線的に移動可能であり、回転駆動手段によってローダー軸の周りに角度的に移動可能である。線形駆動手段および回転駆動手段は、ローダー軸のための閉ループ位置決めシステムの一部である。
【0008】
本方法は、第1の量の電流をローダーの線形駆動手段に印加し、第2の量の電流をローダーの回転駆動手段に印加することを含み、第1の量は、線形駆動手段用の定義されたおよび/または所定の全電力量の電流と比較して低減され、第2の量は、回転駆動手段用の定義されたおよび/または所定の全電力量の電流と比較して低減される。それぞれの低減された電流の結果として、線形駆動手段および回転駆動手段は、それぞれローダーの線形駆動手段および回転駆動手段のための定義されたおよび/または所定の全電力量のトルクと比較して低減されたそれぞれの出力トルクを提供する。
【0009】
ワークピースは、機械スピンドルに位置決めされ、ワークピースは、ローダー機構を把持するための手段で把持され、それにより、ローダー機構と機械スピンドルとが機械的に結合される。機械スピンドルは、1つまたは複数の運動軸に沿っておよび/またはその周りを移動可能であり、スピンドル運動の各軸は、線形駆動手段および/または回転駆動手段に関連付けられ、スピンドル線形駆動手段および/またはスピンドル回転駆動手段はそれぞれ、定義されたおよび/または所定の全電力量でトルクを出力する。スピンドル線形駆動手段の全出力トルクおよび/またはスピンドル回転駆動手段の全出力トルクに対するローダー機構の線形駆動手段および回転駆動手段の出力トルクの減少の結果として、ローダー機構は、ローダー軸に沿った方向に直線的に、ローダー軸を中心に回転するように再位置決めされ、それにより、機械的カップリングから発生する機械力が効果的に中和される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】静止位置にある移送アームまたはローダーアームを備えた歯車製造機械を示している。
図2】作動位置にある移送アームまたはローダーアームを備えた歯車製造機械を示している。
図3】ベベルピニオンをシャフトと共に保持するグリッパー機構の概略図である。
図4】一対のスピンドルと共にローダー機構のための閉ループ位置決め軸の概略図である。
図5図4に示されるようなローダー機構のための閉ループ位置決め軸の概略図であり、一組のグリッパーが、スピンドルにも位置決めされるワークピースを保持している。
図6図5に示されるようなローダー機構の閉ループ位置決め軸の概略図であるが、異なる組のグリッパーが、異なるスピンドルにも位置決めされるワークピースを保持している。
図7】スピンドルの1つの垂直方向の運動を含む、図4のローダー機構の閉ループ位置決め軸の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書で使用される「発明」、「本発明」、および「本発明」という用語は、この明細書の主題のすべて、および以下の任意の特許請求の範囲を広く指すことを意図されている。これらの用語を含む記述は、本明細書に記載された主題を限定するものと、または以下のいかなる特許請求項の意味もしくは範囲をも限定するものと理解されるべきではない。さらに、この明細書は、本出願のいかなる特定の部分、段落、記述、または図面において、あらゆる請求項によってカバーされる主題を説明または限定しようと努めるものではない。本主題は、明細書全体、すべての図面、および以下のあらゆる請求項を参照することによって理解されるべきである。本発明は、他の構成が可能であり、様々な方法で実施され、または実行されることが可能である。また、本明細書で使用される表現および用語は、説明のためのものであり、限定するものと見なされるべきではないことが、理解される。
【0012】
ここで、本発明の詳細を、単に例として、本発明を例証する添付図面を参照して論じる。図面において、類似の特徴または構成要素は、同様の参照番号によって言及される。本発明をより良く理解し、かつ見やすくするため、ドア、および任意の内部または外部の防護物は、図面から省略されている。
【0013】
本明細書の「含む(including)」、「有する(having)」、および「備える(comprising)」、ならびにその変形の使用は、それ以降に列挙された項目およびその等価物ならびに追加の項目を包含することを意味する。以下に、図面を説明する際、上部、下部、上方、下方、後方、底部、頂部、前、後などの方向に言及する場合があるが、これらの言及は、便宜上、図面に対して(通常、見られるように)示されている。これらの方向は、文字通りに解釈されること、またはいかなる形式においても、本発明が限定されることを意図していない。さらに、「第1」、「第2」、「第3」などの数字、文字、および/または用語は、説明の目的で本明細書に使用されており、特に明示されない限り、重要性、有意性、または順序を示すまたは暗示することを意図するものではない。
【0014】
図1は、歯車加工機械4、好ましくは、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,669,415号および第6,712,566号に開示されているタイプの多軸コンピュータ制御歯車切削または研削機械を示す。分かりやすく、見やすくするために、外側のシートメタルと一部のガードは省略されている。ツールヘッド3を備える面取りおよびバリ取り装置2は、歯車切削または研削機4(以下、歯車切削機に関して説明する)のワークピーススピンドル6の近くに位置決めされて示されている。ピボット移送アーム8は、ワークピーススピンドル6と補助スピンドル10の間でワークピースを移送する。これは、面取りおよびバリ取り装置2に関連付けられている場合がある。ただし、補助スピンドル10は、面取りおよびバリ取り以外のスピンステーション(研削または湿式切削後)またはストック分割ステーション(研削前)などのユニットも備えている場合がある。ワークピースを保持するための3ジョーチャック12がスピンドル10上に示されているが、当業者には理解できるように、他の適切なワーク保持装置を利用することができる。ワークピーススピンドル6はワークピース保持装置なしで示されている。しかしながら、当業者は、機械加工されるワークピースの形状に応じて適切なワーク保持装置が利用されることを理解するであろう。
【0015】
機械4の外側から、切削されるブランクワークピースなどのワークピースを補助スピンドル10に装填するとき、またはバリ取りされたおよび/または面取りされたワークピースなどの補助スピンドル10から機械加工されたワークピースを取り除くことによって機械4からワークピースをアンロードするとき、ローディングとアンローディングは手動で、または自動化機構(ガントリーまたはロボットのローディング/アンローディング機構など)を介して実行できる。
【0016】
図2は、ワークピースの移送を示している。ここでは、機械加工(例えば、切削)の完了時に、移送アーム8がその静止位置(図1に示す)から外向きに(すなわち、スピンドル6、10から離れて)作動し、回転してスピンドル6のカットギア44と補助スピンドル10のギアブランク46をグリッパー48、49(移送アーム8の両端に2つ以上)で同時に把持し、両方のワークピースをそれぞれのスピンドルから引き出し、回転(好適な実施形態では約180度)して、切削のためにブランクギア46を作業スピンドル6に、そして次の操作(例えば、面取り)のために、または、例えばパレットまたは運搬手段に配置するために手動または外部機構(例えば、ロボット)によって取り除かれるまで一時的に保持するために、カットギア44を補助スピンドル10に移動させる。次に、移送アーム8の内方への移動(すなわち、それぞれのスピンドルへの移動)が行われ、ギアブランク46およびカットギア44をそれらのそれぞれのスピンドルにロードする。ワークピースがロードされると、移送アーム8は図1に示すように静止位置に戻る。次の操作(ある場合)の後、カットギア44が補助スピンドル10から取り外され、別のワークピースが補助スピンドル10にロードされ、次の移送サイクルまで待機する。移送アーム8およびグリッパー48、49は、まとめて「ローダー」9(図3)と呼ばれることがある。
【0017】
移送アーム8は、好ましくは、図4の配置では軸Lである閉ループ位置決め軸のそれぞれの部分である2つのサーボモーター50、52によって駆動される。第1のサーボモーター50は、ローダー軸Lに沿った直線的な外向きおよび内向きの動き(X2方向)、ならびにとりわけワークピースの形状に依存する直線的な動きの範囲を制御する。これは、たとえば、ほとんどの設計のベベルリングギアなど、シャフトのない歯車の場合よりも、シャフトのあるベベルピニオンなどの長いワークピースに適切なクリアランスを提供するには、より大きな直線移動が必要であることが理解されるからである。そのようなサーボモーター駆動の直線運動システムの例には、ボールねじ、ラックおよびピニオン機構、およびベルトドライブが含まれる。
【0018】
スピンドル6、10間でワークピースを交換し、ワークピースをスピンドル6、10に対して適切に位置合わせするために、別のサーボモーター52(図4参照)が、ローダー軸L周りの移送アーム8の回転(すなわち、角度)運動(A2方向)のを制御する。閉ループ位置決め軸サーボモータードライブ50、52が好ましいが、移送アーム8の動きは、油圧または空圧手段などの他の閉ループ位置決め線形および回転/角度駆動手段によってもたらされてもよい。
【0019】
前述のように、図3の48などのグリッパージョーは、ワークピースを把持するときに、ある量の自動調心および整列能力(線形および回転)を有する。ジョーが軸方向(直線方向)および半径方向(回転方向)に中心合わせされていないリングギアまたはピニオンブランクを把持する場合、ジョーは本質的に、グリッパー内でその部品を中心に合わせ、位置合わせしようとする力を生み出す。部品が工作機械のスピンドル(図6のスピンドル6など)にもチャックされている場合、これにより、ローダー軸Lのサーボモーター50、52が、たとえば、ワークピーススピンドル軸SWまたは補助スピンドル軸SA図5)などの他の機械軸に関連付けられたサーボモーター(図示せず)と「競合」する場合があり、これにより、サーボ障害が発生する。
【0020】
ローダー機構の軸のための閉ループ位置決めシステムの線形および/または回転サーボモーター(例えば、50、52)への電流の量を減らして、結果として各サーボモーターからの出力トルクの減少させることにより、歯車製造機械、特に傘歯車とハイポイド歯車を製造する機械などの工作機械における適切なワークピースの位置決めの決定に、ローダー機構を利用できることがわかっている。
【0021】
一例として、サーボモーター50、52への電流の量を低減し、その結果、各サーボモーターからのトルクを低減することにより、ローダーは、効果的に「浮上」し、リングギアまたはピニオンブランクを把持するジョーによって生成される力に対し、そのような力が中和される位置にそれ自体を変位させることによって反応する。たとえば、電流を各サーボモーターの全(動作)電流の10~15%に減らすことは、通常、ローダーのX2および/またはA2方向の移動を可能にする十分なサーボモータートルクを提供するのに十分であるが、サーボモーター50、52がローダーに作用する特定の力(例えば、ジョーが工作機械のスピンドルにすでにチャッキングされているリングギアまたはピニオンブランクを中心に揃えようとするときに発生する力など)に反応せず、克服しようとしない程度に十分に低い。
【0022】
ローダーが正味の力が実質的にゼロである位置に移動すると、X2およびA2位置が記録される。その後、ローダーが変位位置でロードおよびアンロードタスクを実行して、後続の機械加工操作をフルパワーで実行できる。これにより、ワークピースの適切なセンタリングと位置合わせ、および不要な機械力の低減が実現される。
【0023】
図5を参照する別の例では、グリッパー49内のワークピースWは、ワークピースWのシャフト3の端部がワーク保持装置、例えばチャックの内側停止面11(図示せず)に接触するようにスピンドル10に向かって移動され、サーボモーター50の設定された低トルク制限により停止する。そして、ワークピースWをチャックする。ワークピースWがスピンドル10に固定され、グリッパー49がワークピース上で閉じた状態で、軸LおよびSA(すなわち、スピンドル10およびローダー要素8、49)は、互いに機械的に連結または結合される。ローダー移動方向X2は、好ましくは水平面内に位置し、移動X1及びX3のスピンドル方向はも、好ましくは水平面内に位置する。
【0024】
軸LおよびSAは互いに結び付けられているが、軸間の距離、および軸間の構成要素、すなわち移送アーム8、グリッパー49およびそれらの接続、ならびにローダーのX2方向の駆動手段(ボールねじなど)などのローダー要素の機械的剛性により、依然としてある程度のコンプライアンスがある。
【0025】
次に、ワークピースは、ローダーのX2方向への移動により、第1の方向(例えば、図5の右側)に押される。スピンドル10をX3方向に移動させるためのサーボモーター(図示せず)のトルク設定はフルトルクに維持されるので、スピンドル10は、そのより高いトルク制限のために軸方向に移動しない。ローダーは、スピンドル10(軸SA)へのカップリングのコンプライアンスおよび/またはたわみが、サーボモーター50に対して確立された減少したトルク制限と同等かつ反対方向の抵抗を生成する位置に到達するまで、X2方向に移動し、その後、ローダーはそれ以上は移動できない。
【0026】
次に、ローダーを反対のX2方向に移動させることにより、ワークピースを反対方向(図5の左側)に引っ張って、この反対方向においてコンプライアンスおよび/またはたわみがサーボモーター50の設定トルク制限に等しい位置を見つける。この「プッシュプル」プロセスの結果、左右のトルク制限位置の間、好ましくは中間の位置がX2の位置として選択される。これは、この位置が軸LとSA(すなわちローダーとスピンドル10)が互いに(軸方向に)最小の影響を与える位置であるからである。
【0027】
同様の手順は、回転方向A2に対しても実行され得る。サーボモーター52に設定された低トルク制限での時計回りおよび反時計回りの動きは、各回転方向のトルク制限位置を見つけるために利用される。反対のトルク制限位置の間、好ましくは中間の位置がA2の位置として選択される。これは、この位置が軸LとSA(すなわちローダー要素8、49とスピンドル10)が互いに(回転方向に)最小の影響を与える位置であるからである。
【0028】
上述のプッシュプル型プロセスは、スピンドル6(図6)に対しても実行され得る。軸LおよびSW(すなわち、ローダー要素8、48、およびスピンドル6)が互いに(軸方向および回転方向に)最小の影響を与えるX2およびA2方向の位置も決定できる。
【0029】
図7に示すように、軸SVに沿った方向Y1でのスピンドル6の垂直運動など、追加の機械運動の方向が存在する場合、本発明の方法も適用可能である。軸LおよびSV(つまり、ローダー要素8、48、およびスピンドル6)が互いに(軸方向および回転方向に)最小の影響を与えるX2およびA2方向の位置も決定できる。ローダー移動方向X2は、好ましくは水平面に位置し、スピンドル移動方向Y1は、好ましくは垂直面に位置する。
【0030】
必要に応じて、グリッパー内のワークピースの位置決めは、例えば、グリッパー48のアームを閉じ、グリッパーをX2方向に、スピンドル6(図4参照)にチャックされたワークピースに向かって接触するまで移動させることによって決定できる。その後、サーボモーター50に対して確立された低減されたトルク制限によって移動が停止される。グリッパー48のアームの「閉」位置は、好ましくは、グリッパー48のアーム間に十分な距離が存在し、それによってピニオンのヘッドを挿入することができ、グリッパーの少なくとも1つのアームがピニオンの円錐状面の幅部分に沿ったある場所に接触することになることに留意されたい。
【0031】
例えば、ローダーのX2位置が記憶される。Y1方向のスピンドル6(図7)の垂直位置を調整(たとえば0.1mm下に移動)しながら、グリッパー48をワークピースから少し離れて(たとえば2.0mm)反対のX2方向に移動し、このプロセスを複数回繰り返す(例:10-20回)。最も内側の(つまり、グリッパーアームがスピンドル6に最も近い)X2位置は、ワークピースがY1方向(SV軸に沿って)に中心合わせされた位置である。ワークピースを垂直方向(Y1の位置)に位置決め(センタリング)した後、グリッパー48は、サーボモーター50の低トルク制限によりワークピースと接触することによって停止されるまで、ワークピースに向かって移動する。次に、グリッパー48が開き、グリッパー48のアームを閉じてワークピースを適切に把持するのに十分な量だけ、グリッパー48がX2方向に動き続ける(図6)。
【0032】
上記のワークピース・グリッパー位置決めプロセスに続いて、上記のようなプッシュプルプロセスを実行することができる。本発明は、上述のプロセスを単独でまたは順次に使用可能であると想定している。電流の大きさおよび/または低減された電流は、すべてのサーボモーターについて同じである必要はないが、例えば、サーボモーター50については第1の値で提供され、サーボモーター52については第2の異なる値で提供され得ることも理解されたい。
【0033】
本発明はまた、機械スピンドルと補助スピンドルの一方または両方など複数のスピンドルからワークピースをロードおよび/またはアンロードするための適切なワークピースおよび/またはローダーの位置決めを決定するために自己プログラムする能力を備えた、プログラム可能なコンピュータ制御を有する工作機械を提供するように動作可能であり得る。
【0034】
本発明は、工作機械の内部に配置されたローダー機構を参照して説明されたが、本発明は、工作機械の外部に配置されたローダー機構にも適用可能である。
【0035】
本発明は、好ましい実施形態を参照しながら説明されてきたが、本発明は、これらの特定の実施形態に限定されないことを理解されるべきである。本発明は、添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲を逸脱することなく、本主題が属する、当業者にとっては明らかであると思われる変更を含むことが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7