(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】タービン堆積物洗浄剤
(51)【国際特許分類】
F01D 25/00 20060101AFI20240219BHJP
C11D 7/08 20060101ALI20240219BHJP
C11D 7/32 20060101ALI20240219BHJP
C11D 3/04 20060101ALI20240219BHJP
C11D 3/26 20060101ALI20240219BHJP
C11D 1/72 20060101ALI20240219BHJP
C11D 1/70 20060101ALI20240219BHJP
C11D 3/37 20060101ALI20240219BHJP
C11D 1/75 20060101ALI20240219BHJP
C11D 1/68 20060101ALI20240219BHJP
C11D 3/43 20060101ALI20240219BHJP
C23G 1/18 20060101ALI20240219BHJP
B08B 3/00 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
F01D25/00 R
C11D7/08
C11D7/32
C11D3/04
C11D3/26
C11D1/72
C11D1/70
C11D3/37
C11D1/75
C11D1/68
C11D3/43
C23G1/18
B08B3/00
(21)【出願番号】P 2020557289
(86)(22)【出願日】2019-04-17
(86)【国際出願番号】 US2019027838
(87)【国際公開番号】W WO2019204415
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2022-03-17
(32)【優先日】2018-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510250467
【氏名又は名称】エコラボ ユーエスエー インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【氏名又は名称】河原 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100191444
【氏名又は名称】明石 尚久
(72)【発明者】
【氏名】ジャズバー エス.ギル
(72)【発明者】
【氏名】ディネーシュ マントリ
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-154668(JP,A)
【文献】特表2017-535408(JP,A)
【文献】特開平10-068723(JP,A)
【文献】特開2011-021543(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0296113(US,A1)
【文献】特開平09-206733(JP,A)
【文献】特開2007-002014(JP,A)
【文献】特開2004-217779(JP,A)
【文献】特公昭46-018201(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0176689(US,A1)
【文献】特開2007-016031(JP,A)
【文献】特開2009-263560(JP,A)
【文献】特開2009-040828(JP,A)
【文献】特開2004-068774(JP,A)
【文献】特開平01-130004(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 25/00
C11D 1/00-19/00
C23G 1/00-5/06
B08B 3/00-3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンを洗浄する方法であって、前記方法は:
タービンの表面上の堆積物を、テトラフルオロホウ酸および尿素成分を含む組成物と接触させることと、
前記タービンの前記表面から前記堆積物の少なくとも一部を除去することと
を含み、
前記堆積物が、
約25重量%~約95重量%のシリカ、
約1重量%~約20重量%の酸化鉄、
約1重量%~約15重量%の硫化鉄
、及び元素鉄を含
み、
前記方法は、前記タービンに供給される蒸気に添加される洗浄水ストリームに前記組成物を添加することをさらに含む、タービンを洗浄する方法。
【請求項2】
前記テトラフルオロホウ酸および前記尿素成分
の洗浄水ストリームにおける濃度が、合計して約2重量%~約20重量%
である、請求項1
に記載の方法。
【請求項3】
前記組成物が、約1対約3の前記尿素成分対前記テトラフルオロホウ酸のモル比を有する、請求項
1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記組成物が、アルコールアルコキシレート;アルキルフェノールアルコキシレート;エチレン、プロピレンおよびブチレンオキシドのブロック共重合体;アルキルジメチルアミンオキシド;アルキル-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミンオキシド;アルキルアミドプロピルジメチルアミンオキシド;アルキルアミドプロピル-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミンオキシド;アルキルポリグルコシド;ポリアルコキシル化グリセリド;ソルビタンエステル;ポリアルコキシル化ソルビタンエステル;アルコイルポリエチレングリコールエステルおよびジエステル;ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される界面活性剤をさらに含む、請求項1~
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記組成物が腐食防止剤をさらに含む、請求項1~
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物が溶媒をさらに含む、請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記組成物および前記洗浄水ストリームが、前記タービンが所定の速度に達するまで前記蒸気に添加される、請求項
1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記堆積物中の前記シリカが結晶質または非晶質である、請求項1~
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
タービンを洗浄する方法であって、前記方法は:
前記タービンの表面上に配置される堆積物を、塩基、
グルコン酸のアルカリ金属塩、及
びC
8~C
10ポリグリコシドを含む組成物と接触させることと、
前記タービンの表面から前記堆積物の少なくとも一部を除去することと
を含み、
前記堆積物が、
約25重量%~約95重量%のシリカ、
約1重量%~約20重量%の酸化鉄、
約1重量%~約15重量%の硫化鉄
、及び元素鉄を含
み、
前記方法は、前記タービンに供給される蒸気に添加される洗浄水ストリームに前記組成物を添加することをさらに含む、タービンを洗浄する方法。
【請求項10】
前記C
8~C
10ポリグリコシド
の洗浄水ストリーム中の濃度が約2重量%~約20重量%
である、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
溶液試料中のシリカおよび鉄の濃度を決定することにより、オフライン洗浄プロセスにおける前記タービンからの前記堆積物の除去を監視することをさらに含む、請求項1~
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
システム圧力または発電を監視することにより、オンライン洗浄プロセスにおいて前記タービンからの前記堆積物の除去を監視することをさらに含む、請求項1~
10のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.技術分野
本発明は、一般に、タービンからシリカ堆積物を洗浄するための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2.背景技術
地熱ブラインおよび蒸気は、電力および熱の構造を生成するためのエネルギー源として使用され得る。地熱蒸気の温度範囲は、約185℃~約370℃(約365°F~約700°F)である。蒸気は、フラッシングユニットを使用してブラインから分離される。低温ブラインはまた、二元ユニット(二次流体ユニット)で発電するためにも使用され得る。地熱ブラインは、約1000ppm未満~数十万ppmの塩分、および約6パーセントまでの非凝縮性ガスの含有量を有し得る。塩含有量および用途に応じて、地熱流体は、直接的に、または二次流体サイクルを介して、使用することができる。他のエネルギー源の存在量が減り、それらがより高価になるにつれて、エネルギー源としての地熱エネルギーの使用は、重要性を増している。地熱エネルギーは、持続可能で再生可能なエネルギー源であり、他の再生可能エネルギー源とは異なり、安定して利用可能である。
【0003】
鉱物堆積は、地熱エネルギーの生成におい生じる厳しい条件下での主要な問題であり、地熱地帯の開発を制限し得る。ケイ酸塩ベースの堆積物が地熱システムで発生する可能性がある。例えば、ケイ酸塩ベースの堆積物は、一部のボイラー、蒸発器、熱交換器、および冷却コイルで問題となる。シリカ/ケイ酸塩の堆積物が存在すると、システムの熱効率および生産性が大幅に低下し、運用/保守コストが増加し、場合によっては機器の故障につながる可能性がある。蒸気発生器および蒸発器は、高温、pH、および増加した濃縮サイクル(COC)で動作するため、特にケイ酸塩が堆積する傾向がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
化学処理プログラムを使用して、堆積物を最小限に抑えることができる。以前に使用されていた化学物質は、汎用の酸または苛性アルカリであり、通常、全ての堆積物およびスケールを溶解するのに完全に効果的であるわけではない。これらの洗浄剤は、機器および人員の両方に対して非常に危険である可能性がある。フッ化水素酸は、シリカベースの堆積物を効果的に洗浄できる酸の一例であるが、極めて危険である。さらに、これらの酸は、金属表面を腐食する。化学洗浄が落ちにくい堆積物を効果的に溶解しない場合は、機械的洗浄が行われる。機械的洗浄は、薄片状の堆積物を除去するのに役立ち得るが、より落ちにくい堆積物では除去することなくそれを研磨するだけとなる場合があり、経時的に層の堆積が続くことになる。機械的洗浄は時間がかかり、到達しやすい場所にのみ行うことができ、費用を要し(例えば廃棄物の除去/人件費のため)、生産が大幅に失われる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
いくつかの実施形態において、タービンを洗浄する方法が開示される。方法は、タービンの表面上の堆積物を、テトラフルオロホウ酸および尿素成分を含む組成物と接触させることであって、堆積物はシリカを含む、接触させることと、タービンの表面から堆積物の少なくとも一部を除去することとを含む。
【0006】
いくつかの実施形態において、方法は、タービンに蒸気を運ぶストリームに組成物を添加することを含み得る。
【0007】
いくつかの実施形態において、方法は、洗浄水ストリームに組成物を添加することと、堆積物を組成物および洗浄水ストリームと接触させることとを含み得る。
【0008】
いくつかの実施形態において、方法は、タービンに流れる蒸気に組成物および洗浄水ストリームを添加することを含み得る。
【0009】
いくつかの実施形態において、方法は、テトラフルオロホウ酸および尿素成分が一緒になって約2重量%~約20重量%の洗浄水ストリーム中の濃度を有するように、洗浄水ストリームに組成物を添加することをさらに含み得る。
【0010】
いくつかの実施形態において、組成物および洗浄水ストリームは、タービンが所定の速度に達するまで蒸気に添加される。
【0011】
いくつかの実施形態において、堆積物は、約25重量%~約95重量%のシリカを含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、堆積物中のシリカは、結晶質または非晶質である。
【0013】
いくつかの実施形態において、堆積物は、酸化鉄、硫化鉄、元素硫黄、およびそれらの任意の組み合わせから選択される成分を含み得る。
【0014】
いくつかの実施形態において、堆積物は、約25重量%~約95重量%のシリカ、約1重量%~約20重量%の酸化鉄、約1重量%~約15重量%の硫化鉄、および約1重量%~約10重量%の元素硫黄を含み得る。
【0015】
いくつかの実施形態において、組成物は、約1対約3の尿素成分対テトラフルオロホウ酸のモル比を有し得る。
【0016】
いくつかの実施形態において、組成物は、アルコールアルコキシレート;アルキルフェノールアルコキシレート;エチレン、プロピレン、およびブチレンオキシドのブロック共重合体;アルキルジメチルアミンオキシド;アルキル-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミンオキシド;アルキルアミドプロピルジメチルアミンオキシド;アルキルアミドプロピル-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミンオキシド;アルキルポリグルコシド;ポリアルコキシル化グリセリド;ソルビタンエステル;ポリアルコキシル化ソルビタンエステル;アルコイルポリエチレングリコールエステルおよびジエステル;ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される界面活性剤をさらに含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、組成物は、腐食防止剤をさらに含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、組成物は、溶媒をさらに含む。
【0019】
他の実施形態において、タービンを洗浄する方法が開示される。方法は、タービンの表面上に配置される堆積物を、塩基、グルコン酸などのキレート配位子のアルカリ金属塩、及び任意選択でC8~C10ポリグリコシドを含む組成物と接触させることであって、堆積物はシリカを含む、接触させることと、タービンの表面から堆積物の少なくとも一部を除去することとを含み得る。
【0020】
ある特定の実施形態において、方法は、C8~C10ポリグリコシドが約2重量%~約20重量%の洗浄水ストリーム中の濃度を有するように、洗浄水ストリームに組成物を添加することをさらに含み得る。
【0021】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される方法は、溶液試料中のシリカおよび鉄の濃度を決定することにより、オフライン洗浄プロセスにおけるタービンからの堆積物の除去を監視することを含み得る。
【0022】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される方法は、システム圧力または発電を監視することにより、オンライン洗浄プロセスにおいてタービンからの堆積物の除去を監視することを含み得る。
【0023】
他の実施形態において、本出願は、タービンからシリカを含む堆積物を除去するための、テトラフルオロホウ酸および尿素成分を含む組成物の使用を開示する。
【0024】
他の実施形態において、本出願は、タービンからシリカを含む堆積物を除去するための、C8~C10ポリグリコシドを含む組成物の使用を開示する。
【0025】
前述は、後に続く発明を実施するための形態をより良好に理解できるように、本開示の特徴および技術的利点を概括的に概説した。本願の特許請求の範囲の主題を形成する、本開示のさらなる特徴および利点は、以下に説明される。開示される概念および具体的な実施形態は、本開示と同じ目的を実行するための他の実施形態を修正または設計するための基礎として容易に利用され得ることが、当業者により理解されるべきである。そのような等価の実施形態はまた、添付の特許請求の範囲に明記される本開示の趣旨および範囲から逸脱しないことが、当業者により認識されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
発明の詳細な説明を、以下の図面に対する具体的な参照とともに本明細書において以下に説明する。
【0027】
【
図1】残渣分析に基づく合計%溶解、ならびに濾液分析に基づくSiO
2および鉄の溶解を示すグラフである。
【0028】
【
図2】経時的な濾液中のSiO
2の濃度(PPM)を示すグラフである。
【0029】
【
図3】経時的な濾液中の予想鉄分(ppm)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
さまざまな実施形態が以下に説明される。実施形態のさまざまな要素の関係性および機能は、以下の詳細な説明を参照することよってより良好に理解され得る。しかし、実施形態は、以下に例解されるものに限定されない。特定の例では、本明細書に開示される実施形態の理解のために必要ではない詳細は、省略することができる。
【0031】
いくつかの実施形態において、タービンを洗浄する方法が開示される。方法は、タービンの表面上の堆積物を、テトラフルオロホウ酸および尿素成分を含む組成物と接触させることを含み得る。方法は、タービンの表面から堆積物の少なくとも一部を除去することを含み得る。堆積物は、シリカを含み得る。
【0032】
一般にフルオロホウ酸(HBF4)と呼ばれるテトラフルオロホウ酸は、有機窒素塩基成分と組み合わせて、対応するテトラフルオロボレート塩を形成し得る。
【0033】
窒素塩基は、尿素、ビウレット、アルキル尿素、アルカノールアミン、アルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、アルキルテトラミン、ポリアミン、アクリルアミド、ポリアクリルアミド、ビニルピロリドン、ポリビニルピロリドンまたはそれらの組み合わせであってもよい。
【0034】
組成物は、テトラフルオロホウ酸および尿素成分を含み得る。本開示のより広い態様と一致して、塩基性強度に関して1つまたは複数の実質的に同等の塩基、または塩基性の機能性を付与する化合物を、尿素の代わりに、または尿素と組み合わせて使用することができる。他のそのような塩基成分の例には、ビウレット(尿素二量体)および他の可溶性尿素化合物、アルキル尿素誘導体、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンおよびモノエタノールアミンを含むアルカノールアミンが含まれるが、これらに限定されない。
【0035】
他に示されない限り、本明細書に記載される「アルキル」基は、単独でまたは別の基の一部として、任意に置換された直鎖飽和一価炭化水素基、または任意に置換された分岐飽和一価炭化水素基である。直鎖または分岐鎖アルキル基は、1~32個のいずれかの炭素原子を有し得る。非置換アルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、i-ペンチル、s-ペンチル、t-ペンチルなどが挙げられる。
【0036】
組成物は、約1:3~約5:1、好ましくは約1:2~約3:1の塩を調製するために使用される尿素成分対テトラフルオロホウ酸のモル比を有し得る。組成物は、約1対約3の尿素成分対テトラフルオロホウ酸のモル比を有し得る。
【0037】
窒素塩基、例えば尿素成分は、テトラフルオロホウ酸と反応して、尿素テトラフルオロホウ酸塩などの窒素塩基の塩を形成することができる。本開示の組成物中のテトラフルオロホウ酸および尿素成分の相対的な量および/または濃度は、組成物の所望の機能および/または必要な洗浄活性に応じて広く変動し得る。
【0038】
尿素成分の塩およびテトラフルオロホウ酸は、参照によりその内容が全体的に本出願に組み込まれる米国特許第8,389,453号および第8,796,195号に開示されており、Nalco-Championから製品番号EC6697Aとして、またNalcoWaterからGEO991として市販されている。
【0039】
組成物中の尿素成分およびテトラフルオロホウ酸の塩の濃度は、約5重量%~約90重量%、約10重量%~約80重量%、約50重量%~約70重量%、約50重量%~約60重量%、約60重量%~約90重量%、約60重量%~約80重量%、約60重量%~約70重量%、約70重量%~約90重量%、約80重量%~約90重量%、または約70重量%~約80重量%であってもよい。
【0040】
ある特定の地熱発電所では、地熱井から抽出された蒸気を運ぶストリームをタービンに供給して発電することができる。いくつかの実施形態において、タービンは、地熱源からの蒸気によって駆動することができる。
【0041】
いくつかの実施形態において、方法は、タービンに蒸気を運ぶストリームに組成物を添加することを含んでもよい。組成物は、タービンの上流側であるが蒸気から凝縮液を分離するために使用される任意のユニットの後に添加され得る。組成物は液体として注入されてもよく、発電プロセスのオンライン運転中にタービンに接触してもよい。
【0042】
いくつかの実施形態において、方法は、組成物を洗浄水ストリームに添加することと、堆積物を組成物および洗浄水ストリームと接触させることとを含み得る。洗浄水ストリームは、タービンに供給される蒸気に添加され得る水性ストリームである。
【0043】
いくつかの実施形態において、方法は、タービンに蒸気を運ぶストリームに組成物および洗浄水のストリームを添加することを含み得る。
【0044】
いくつかの実施形態において、方法は、テトラフルオロホウ酸および尿素成分が一緒になって約2重量%から約20重量%の洗浄水ストリーム中の濃度を有するように、洗浄水ストリームに組成物を添加することを含み得る。いくつかの実施形態において、洗浄水ストリーム中のテトラフルオロホウ酸および尿素成分の濃度は、約10重量%である。
【0045】
したがって、利用される重量比および/または濃度は、所望の洗浄特性を有する組成物および/または系を達成するように選択され得る。
【0046】
いくつかの実施形態において、組成物および洗浄水ストリームは、タービンが所定の速度に達するまで蒸気に添加される。タービンの所定の速度は、当業者によって容易に決定することができ、一般に、タービンの設計速度である。堆積物がほとんどまたはまったくないタービンは、タービンの設計速度またはそれに近い速度で回転する。堆積物のあるタービンはよりゆっくりと回転し、それによって発電に影響を与える。
【0047】
いくつかの実施形態において、方法は、システム圧力または発電を監視することにより、オンライン洗浄プロセスにおいてタービンからの堆積物の除去を監視することを含み得る。
【0048】
いくつかの実施形態において、方法は、溶液試料中のシリカおよび鉄の濃度を決定することにより、オフライン洗浄プロセスにおいてタービンからの堆積物の除去を監視することを含み得る。タービンがオフラインであるか、または発電していない場合、組成物は、洗浄水または任意の他の適切な溶媒などの溶媒で希釈し、タービンに噴霧して堆積物に接触させることができる。
【0049】
いくつかの実施形態において、組成物は、溶媒を含んでもよい。適切な溶媒には、アルコール、炭化水素、ケトン、エーテル、芳香族化合物、アミド、ニトリル、スルホキシド、エステル、グリコールエーテル、水系、およびそれらの組み合わせが含まれるが、それらに限定されない。ある特定の実施形態において、溶媒は、水、イソプロパノール、メタノール、エタノール、2-エチルヘキサノール、重芳香族ナフサ、トルエン、エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル(EGMBE)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、またはキシレンである。この組成物との配合に適した代表的な極性溶媒には、水、ブライン、海水、アルコール(直鎖または分枝脂肪族、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、2-エチルヘキサノール、ヘキサノール、オクタノール、デカノール、2-ブトキシエタノールなど)、グリコールおよび誘導体(エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコールなど)、ケトン(シクロヘキサノン、ジイソブチルケトン)、N-メチルピロリジノン(NMP)、N、N-ジメチルホルムアミドなどが含まれる。組成物との配合に適した代表的な非極性溶媒には、脂肪族、例えばペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、デカン、ドデカン、ディーゼルなど;芳香族、例えばトルエン、キシレン、重芳香族ナフサ、脂肪酸誘導体(酸、エステル、アミド)などが含まれる。
【0050】
組成物および洗浄水は、流出物がシリカおよび/または鉄で飽和するまで再循環させることができる。流出物は、組成物、洗浄水、および溶解または懸濁した堆積物成分を含む。
【0051】
オフライン洗浄における洗浄の進行状況は、流出物の溶液試料を定期的に採取し、湿式化学比色分析およびpHを使用してシリカおよび鉄の濃度を測定することで判断され得る。pHが5.5を超える場合は、タービンに追加の生成物を適用することが必要となり得る。洗浄流出物がシリカおよび鉄で飽和していると判断されたら、システムを排液して新しい生成物を追加することができる。
【0052】
堆積物は、約25重量%~約95重量%のシリカから構成され得る。いくつかの実施形態において、堆積物は、約50重量%~約95重量%のシリカ、約60重量%~約95重量%のシリカ、または約70重量%~約95重量%のシリカで構成され得る。堆積物は、シリカ、酸化鉄、硫化鉄、元素硫黄、およびそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0053】
いくつかの実施形態において、堆積物は、約25重量%~約95重量%のシリカ、約1重量%~約20重量%の酸化鉄、約1重量%~約15重量%の硫化鉄、および約1重量%~約10重量%の元素硫黄を含み得る。
【0054】
いくつかの実施形態において、堆積物中のシリカは、結晶質、非晶質、または結晶質と非晶質の混合物である。いくつかの実施形態において、堆積物中のシリカは、結晶質である。
【0055】
いかなる特定の理論にも束縛されないが、タービンへの堆積物は、湿潤蒸気中の鉱物がタービンブレード上で乾燥すること、または揮発したシリカがタービン上に堆積することから生じる。本質的に、これらの堆積物は硬く、石英状である。地熱システムの他の部分のシリカ堆積物は、シリカに関して過飽和になっている流体の温度変化によって形成する。過飽和溶液から形成する堆積物は、熱交換器またはボイラーに現れることがよくある。
【0056】
テトラフルオロホウ酸および尿素成分を含む組成物は、タービンからシリカを含む堆積物を除去するために使用され得る。
【0057】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される任意の組成物は、界面活性剤を含み得る。使用され得る界面活性剤の例には、アルコールアルコキシレート;アルキルフェノールアルコキシレート;エチレン、プロピレン、およびブチレンオキシドのブロック共重合体;アルキルジメチルアミンオキシド;アルキル-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミンオキシド;アルキルアミドプロピルジメチルアミンオキシド;アルキルアミドプロピル-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミンオキシド;アルキルポリグルコシド;ポリアルコキシル化グリセリド;ソルビタンエステル;ポリアルコキシル化ソルビタンエステル;アルコイルポリエチレングリコールエステルおよびジエステル;またはそれらの任意の組み合わせが含まれるが、それらに限定されない。
【0058】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される任意の組成物は、腐食防止剤を含み得る。組成物に含めるのに適した腐食防止剤には、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、またはアリールアミン四級塩;単環式または多環式芳香族アミン塩;イミダゾリン誘導体;モノ-、ジ-、またはトリ-アルキルまたはアルキルアリールホスフェートエステル;ヒドロキシルアミンのリン酸エステル;ポリオールのリン酸エステル;およびモノマーまたはオリゴマー脂肪酸が含まれるが、これらに限定されない。
【0059】
好適なアルキル、ヒドロキシアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、またはアリールアミン四級塩には、式[N+R5aR6aR7aR8a][X-]のアルキルアリール、アリールアルキル、およびアリールアミン四級塩が含まれ、式中、R5a、R6a、R7a、およびR8aは、1~18個の炭素原子を含有し、Xは、Cl、Br、またはIである。ある特定の実施形態において、R5a、R6a、R7a、およびR8aはそれぞれ独立して、アルキル(例えばC1~C18アルキル)、ヒドロキシアルキル(例えばC1~C18ヒドロキシアルキル)、およびアリールアルキル(例えばベンジル)からなる群から選択される。アルキルまたはアルキルアリールハライドとの単環式または多環式芳香族アミン塩は、式[N+R5aR6aR7aR8a][X-]の塩を含み、式中、R5a、R6a、R7aおよびR8aは、1~18個の炭素原子を含有し、Xは、Cl、BrまたはIである。
【0060】
適切な四級アンモニウム塩には、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラプロピルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラヘキシルアンモニウムクロリド、テトラオクチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、フェニルトリメチルアンモニウムクロリド、フェニルトリエチルアンモニウムクロリド、セチルベンジルジメチルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ジメチルアルキルベンジル四級アンモニウム化合物、モノメチルジアルキルベンジル四級アンモニウム化合物、トリメチルベンジル四級アンモニウム化合物、およびトリアルキルベンジル四級アンモニウム化合物が含まれるがそれらに限定されず、アルキル基は、約6個~約24個の炭素原子、約10個および約18個の炭素原子、または約12個~約16個の炭素原子を含有し得る。適切な四級アンモニウム化合物(クアット)には、トリアルキル、ジアルキル、ジアルコキシアルキル、モノアルコキシ、ベンジル、およびイミダゾリニウム四級アンモニウム化合物、それらの塩、ならびにそれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態において、四級アンモニウム塩は、アルキルアミンベンジル四級アンモニウム塩、ベンジルトリエタノールアミン四級アンモニウム塩、またはベンジルジメチルアミノエタノールアミン四級アンモニウム塩である。
【0061】
腐食防止剤は、モノマーまたはオリゴマー脂肪酸、例えばC14~C22飽和および不飽和脂肪酸、ならびにそのような脂肪酸のうちの1つ以上を重合することによって得られるダイマー、トリマーおよびオリゴマー生成物であってもよい。
【0062】
腐食防止剤は、トリアゾールであってもよい。トリアゾールは、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ブチルベンゾトリアゾール、ハロベンゾトリアゾール、ハロ-トリルトリアゾール、ニトロ化トリアゾール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0063】
腐食防止剤は、2-置換ベンズイミダゾールであってもよい。
【0064】
いくつかの実施形態において、腐食防止剤は、ベンジル-(C12~C16アルキル)-ジメチル-アンモニウムクロリドを含み得る。いくつかの実施形態において、腐食防止剤は、ベンジル-(C12~C16アルキル)-ジメチル-アンモニウムクロリド、エトキシル化アルコールホスフェート塩、イミダゾリン塩、2-メルカプトエタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、メタノール、2-ブトキシエタノール、および水を含む。いくつかの実施形態において、腐食防止剤は、グルコン酸ナトリウムを含む。
【0065】
組成物が腐食防止剤を含む場合、腐食防止剤は、組成物が添加される水性混合物の総濃度を基準として、以下の量で存在し得る。したがって、腐食防止剤は、約1ppm~約1000ppm、約1ppm~約800ppm、約1ppm~約600ppm、約1ppm~約500ppm、約1ppm~約500ppm、1ppm~約400ppm、約1ppm~約200ppm、約5ppm~約1000ppm、約5ppm~約800ppm、約5ppm~約600ppm、約5ppm~約500ppm、約5ppm~約400ppm、または約5ppm~約200ppmの濃度で使用され得る。
【0066】
他の実施形態において、タービンの表面に配置された堆積物を、塩基、グルコン酸などのキレート配位子のアルカリ金属塩、および任意選択でC8~C10ポリグリコシドを含む組成物と接触させることを含んでもよい、タービンを洗浄する方法が開示される。方法はまた、タービンの表面から堆積物の少なくとも一部を除去することを含む。いくつかの実施形態において、堆積物全体(または実質的に堆積物全体)がタービンの表面から除去される。堆積物は、シリカを含み得る。
【0067】
いくつかの実施形態において、方法は、C8~C10ポリグリコシドが約2重量%~約20重量%の洗浄水ストリーム中の濃度を有するように、洗浄水ストリームに組成物を添加することを含み得る。いくつかの実施形態において、C8~C10ポリグリコシドは、約10重量%の洗浄水ストリーム中の濃度を有する。
【0068】
任意選択でC8~C10ポリグリコシドを含む組成物は、キレート剤(例えばグリコール)、リン酸塩、ニトリロ三酢酸、クエン酸、アクリル酸およびマレイン酸のポリマー、スルファミン酸、メチルスルファミン酸、ヒドロキシホスホノ酢酸、および水酸化ナトリウムなどの他の添加剤を含んでもよい。
【0069】
任意選択でC8~C10ポリグリコシドを含む組成物は、タービンからシリカを含む堆積物を除去するために使用され得る。
【0070】
任意選択でC8~C10ポリグリコシドを含む組成物でオフラインでタービンを洗浄する場合、溶液のpHを監視することができる。pHが約12未満の場合は、タービンに追加の組成物を添加することが必要となり得る。洗浄流出物がシリカおよび鉄で飽和していると判断されたら、システムを排液して新しい組成物を追加することができる。
【0071】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される組成物は、硫黄分散剤を含み得る。硫黄分散剤は、C5~C25アルキルポリグリコシドを含み得る。アルキルポリグリコシドは非イオン性であり、親水性糖、および疎水性である可変炭素鎖長のアルキル基を含み得る。
【0072】
本明細書で使用される場合、「分散する」および「分散すること」とは、流体中で固体を懸濁させること、表面から固体を除去すること、または流体懸濁液中で固体を維持することを意味する。
【0073】
いくつかの実施形態において、硫黄分散剤は、C10~16アルキルポリグリコシドを含み得る。ある特定の実施形態において、硫黄分散剤は、C12アルキルポリグリコシド、C13アルキルポリグリコシド、C14アルキルポリグリコシド、C15アルキルポリグリコシド、C16アルキルポリグリコシド、およびそれらの任意の組み合わせであってもよい。
【0074】
いくつかの実施形態において、硫黄分散剤は、C10~16アルキルポリグリコシドおよびC8~10アルキルポリグリコシドなどの異なるアルキル鎖長を有する2種のアルキルポリグリコシドの混合物であってもよい。硫黄分散剤が2種以上のアルキルポリグリコシドの混合物である場合、アルキルポリグリコシドは同じまたは異なる場所で別々に添加されてもよく、システムへの添加の前に一緒に混合されてもよい。ある特定の実施形態において、硫黄分散剤は、水、C10~16アルキルポリグリコシド、およびC8~10アルキルポリグリコシドからなる。
【0075】
いくつかの実施形態において、硫黄分散剤は、約0.01ppm~約1000ppm、約0.01ppm~約500ppm、約0.01ppm~約250ppm、約0.01ppm~約150ppm、約0.01ppm~約50ppm、約0.01ppm~約25ppm、約0.01ppm~約5ppm、または約0.1ppm~約2ppmの量で洗浄水に添加されてもよい。いくつかの実施形態において、硫黄分散剤は、約1ppm~約10ppmの量で洗浄水に添加されてもよい。
【0076】
いくつかの実施形態において、方法は、ポリマー分散剤を洗浄水に添加することを含み得る。ポリマー分散剤は、硫黄分散剤と同時に添加され得る。ポリマー分散剤は、アクリル酸および2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸を含み得る。ポリマー分散剤は、約50~70重量%のアクリル酸および約30~50重量%の2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸を含むポリマーであってもよい。ポリマーの重量平均分子量は、約5,000Daから約50,000Daであってもよい。いくつかの実施形態において、ポリマーは約20,000Daの重量平均分子量を有し得る。
【0077】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される任意の組成物は、消泡剤を含み得る。消泡剤の例には、C5~C25アルキルアルコール、C5~C25アルキルアルコールエトキシレート、一塩基性ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸、ポリジメチルシロキサン、ソルビタンモノステアレート、水和シリカ、エトキシ化ソルビタンモノステアレート、キサンタンガム、および非晶質シリカが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、消泡剤には、水、ポリジメチルシロキサン、およびモノステアリン酸ソルビタンが含まれ得る。他の実施形態では、消泡剤は、水、ポリジメチルシロキサン、モノステアリン酸ソルビタン、水和シリカ、モノステアリン酸エトキシル化ソルビタン、およびキサンタンガムからなり得る。
【0078】
いくつかの実施形態において、消泡剤は、約0.001ppm~約100ppmの量で洗浄水に添加されてもよい。いくつかの実施形態において、消泡剤は、約0.001ppm~約10ppm、約0.001ppm~約5ppm、約0.01ppm~約10ppm、約0.05ppm~約5ppm、約0.05ppm~約2ppm、約0.05ppm~約10ppm、または約0.1ppm~約1ppmの量でプロセス水に添加され得る。
【0079】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される組成物に不活性トレーサーを含み得ることで、3D TRASAR(登録商標)技術(Nalco(登録商標)Company、Naperville,Ill.,USAから入手可能)などの蛍光追跡技術と適合するようにしてもよい。他の実施形態では、不活性蛍光トレーサーは本組成物中に含められて、投与量レベルを決定する手段を提供することができる。
【0080】
代表的な不活性蛍光トレーサーには、フルオレセインまたはフルオレセイン誘導体;ローダミンまたはローダミン誘導体;ナフタレンスルホン酸(モノ、ジ、トリなど);ピレンスルホン酸(モノ、ジ、トリ、テトラなど);スルホン酸を含有するスチルベン誘導体(蛍光増白剤を含む);ビフェニルスルホン酸;フェニルアラニン;トリプトファン;チロシン;ビタミンB2(リボフラビン);ビタミンB6(ピリドキシン);ビタミンE(a-トコフェロール);エトキシキン;カフェイン;バニリン;ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合ポリマー;フェニルスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物;リグニンスルホン酸;多環芳香族炭化水素;アミン官能基、フェノール官能基、スルホン酸官能基、カルボン酸官能基を任意の組み合わせで含有する(多)環芳香族炭化水素;N、O、またはSを有する(多)複素環芳香族炭化水素;ナフタレンスルホン酸、ピレンスルホン酸、ビフェニルスルホン酸、またはスチルベンスルホン酸のうちの少なくとも1つの部分を含有するポリマーが含まれる。
【0081】
本明細書に開示される組成物および方法の少なくとも1つの利点は、例えば、塩酸、フッ化水素酸、または硫酸などの従来の酸組成物で処理されたタービンと比較して、タービン表面の腐食が低減されることである。本明細書に開示される組成物を使用することは、塩酸、フッ化水素酸、硫酸、有機酸などを使用することと比較して、タービンからの金属損失を低減することができる。
【実施例】
【0082】
実施例1
【0083】
いくつかの組成物の溶解(洗浄)性能を、タービン堆積物に対して試験した。堆積物を溶解するための化学の有効性が主な焦点であった。
【0084】
地熱発電所で使用されるタービンからの堆積物試料。タービンは蒸気と接触していた。分析の前に、堆積物を約105℃で乾燥させた。蛍光X線およびX線回折を用いて堆積物を分析したところ、表1に示されるように、堆積物には主にシリカ、鉄、硫黄が含まれていることが観察された。XRD分析により、堆積物の主成分は石英シリカであり、硫化鉄、酸化鉄、および元素鉄の微量成分が含まれていることが確認された。重量分析では、約925℃で約2重量%の質量損失が見られた。
【表1】
【表2】
【0085】
溶解試験手順
【0086】
実験室では、堆積物を溶解するための化学物質の有効性を理解するために、以下で説明される試験手順に従った。より高い%溶解能力は、堆積物を洗浄する際のより良好な性能を意味する。
【0087】
各堆積物溶解剤の10%溶液(wt/wt)を調製した。組成物1は、尿素安定化テトラフルオロボレート化合物(製品番号EC6697AとしてNalco-Championから、およびGEO991としてNalco Waterから市販されている)であった。組成物2は、約0.2重量%のC8~C10ポリグリコシド、約3重量%のグルコン酸ナトリウム、約0.7重量%の六ナトリウムニトリロトリス(メチレンホスホネート)、約0.02重量%のエトキシル化プロポキシル化アルコール、約65重量%の水、約31重量%の水酸化ナトリウム、および約0.0005wt%のポリエチレングリコールを有していた。組成物3は、約60重量%の水、約38重量%のEDTA四ナトリウム、および約2重量%の水酸化ナトリウムを有していた。
【0088】
堆積物試料を粗く砕いて断片にし、乾燥させて水分を除去した。秤量した量(初期重量)の乾燥堆積物試料を、250mLのプラスチックボトルに移した。必要なスケール溶解剤の10%溶液約200グラムを、各ボトルに加えた。すべての試験ボトルをシェーカーに保持し、所望温度で数時間維持した。特定の間隔後、各ボトルからのアリコートを取り出し、濾過した。次いで、濾液を分析した。溶解期間の終わりに、ボトルの内容物全体を濾過した。それ以上の重量損失が観察されなくなるまで濾紙を残渣とともに乾燥させ、秤量した(最終重量)。溶解%は、(初期重量-最終重量)×100/初期重量として計算された。
【0089】
図1は、残渣分析に基づく合計%溶解、ならびに濾液分析に基づくSiO
2およびFeの溶解を示す。
図2及び
図3は、特定の時間間隔での溶液試料中のSiO
2および鉄の濃度を示す。堆積物の100%が溶解した場合、濾液は、約1316ppmのSiO
2(堆積物の約79%がシリカであったと仮定)および約166ppmの鉄(堆積物中の約10%の鉄を仮定)を有するはずである。
【0090】
本明細書に開示される任意の組成物は、本明細書に開示される化合物/成分のうちのいずれかを含むか、それから成るか、または本質的にそれからなり得る。本開示によれば、「から本質的になる(consist essentially of)」、「から本質的になる(consists essentially of)」、「から本質的になること(consisting essentially of)」などの語句は、特許請求の範囲を、特定の材料またはステップ、および特許請求された発明の基本的かつ新規な特徴(複数可)に実質的に影響を及ぼさない材料またはステップに限定する。
【0091】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、それらのそれぞれの試験測定値において見られる標準偏差から生じる誤差内にある引用された値を指し、それらの誤差が判定され得ない場合、「約」は、引用された値の10%以内を指す。
【0092】
本明細書で開示および特許請求される組成物および方法のすべては、本開示を考慮して、過度の実験を伴わずに作製および実行され得る。本発明は、多くの異なる形態で具現化され得、本発明の特定の好ましい実施形態が、本明細書で詳細に説明される。本開示は、本発明の原理の例示であり、本発明を例解された特定の実施形態に限定することを意図するものではない。加えて、明示的に反対の言及がない限り、「a(ある1つの)」という用語の使用は、「少なくとも1つの」または「1つ以上の」を含むことを意図する。例えば、「ある1つの分散剤」は、「少なくとも1つの分散剤」または「1つ以上の分散剤」を含むことを意図する。
【0093】
絶対項または近似項のいずれかで与えられる任意の範囲は、双方を包含することを意図するものであり、本明細書で使用されるいかなる定義も、明確にすることを意図するものであり、限定を意図するものではない。本発明の広範な範囲を明記する数値範囲およびパラメータは、近似値ではあるものの、特定の実施例で明記される数値は、可能な限り正確に報告される。しかしながら、いかなる数値も、それらのそれぞれの試験測定値において見られる標準偏差に必然的に起因する特定の誤差を本質的に含有する。さらに、本明細書に開示されるすべての範囲は、その中に包含されるあらゆる部分範囲(すべての小数値および全体値を含む)を包含するものとして理解されるべきである。
【0094】
さらに、本発明は、本明細書に記載のさまざまな実施形態の一部または全部の、あらゆる可能な組み合わせを包含する。また、本明細書に記載される本発明の好ましい実施形態に対するさまざまな変更および修正が、当業者にとって明らかであろうことも理解されるべきである。そのような変更および修正は、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく、かつその意図される利点を縮小することなく行われ得る。したがって、そのような変更および修正は、添付の特許請求の範囲によって網羅されることが意図される。以下の項目[1]~[21]に、本開示の実施形態の例を列記する。
[1]
タービンを洗浄する方法であって、上記方法は:
タービンの表面上の堆積物を、テトラフルオロホウ酸および尿素成分を含む組成物と接触させることであって、上記堆積物はシリカを含むことと、
上記タービンの上記表面から上記堆積物の少なくとも一部を除去することと
を含む、タービンを洗浄する方法。
[2]
上記タービンに蒸気を運ぶストリームに上記組成物を添加することをさらに含む、項目1に記載の方法。
[3]
洗浄水ストリームに上記組成物を添加することと、上記堆積物を上記組成物および上記洗浄水ストリームと接触させることとをさらに含む、項目1または2に記載の方法。
[4]
上記テトラフルオロホウ酸および上記尿素成分が一緒にして約2重量%~約20重量%の洗浄水ストリーム中の濃度を有するように、上記洗浄水ストリームに上記組成物を添加することをさらに含む、項目1または2に記載の方法。
[5]
上記堆積物が、約25重量%~約95重量%の上記シリカを含む、項目1~4のいずれか一項に記載の方法。
[6]
上記堆積物が、酸化鉄、硫化鉄、元素硫黄、およびそれらの任意の組み合わせから選択される成分をさらに含む、項目5に記載の方法。
[7]
上記堆積物が、約25重量%~約95重量%の上記シリカ、約1重量%~約20重量%の酸化鉄、約1重量%~約15重量%の硫化鉄、および約1重量%~約10重量%の元素硫黄を含む、項目1~6のいずれか一項に記載の方法。
[8]
上記組成物が、約1対約3の上記尿素成分対上記テトラフルオロホウ酸のモル比を有する、項目1~7のいずれか一項に記載の方法。
[9]
上記組成物が、アルコールアルコキシレート;アルキルフェノールアルコキシレート;エチレン、プロピレンおよびブチレンオキシドのブロック共重合体;アルキルジメチルアミンオキシド;アルキル-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミンオキシド;アルキルアミドプロピルジメチルアミンオキシド;アルキルアミドプロピル-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミンオキシド;アルキルポリグルコシド;ポリアルコキシル化グリセリド;ソルビタンエステル;ポリアルコキシル化ソルビタンエステル;アルコイルポリエチレングリコールエステルおよびジエステル;ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される界面活性剤をさらに含む、項目1~8のいずれか一項に記載の方法。
[10]
上記組成物が腐食防止剤をさらに含む、項目1~9のいずれか一項に記載の方法。
[11]
上記組成物が溶媒をさらに含む、項目1~10のいずれか一項に記載の方法。
[12]
上記タービンに流れる蒸気に上記組成物および上記洗浄水ストリームを添加することをさらに含む、項目3~11のいずれか一項に記載の方法。
[13]
上記組成物および上記洗浄水ストリームが、上記タービンが所定の速度に達するまで上記蒸気に添加される、項目12に記載の方法。
[14]
上記堆積物中の上記シリカが結晶質または非晶質である、項目1~13のいずれか一項に記載の方法。
[15]
タービンを洗浄する方法であって、上記方法は:
上記タービンの表面上に配置される堆積物を、塩基、キレート配位子のアルカリ金属塩、及び任意選択でC
8~
C
10
ポリグリコシドを含む組成物と接触させることであって、上記堆積物はシリカを含むことと、
上記タービンの表面から上記堆積物の少なくとも一部を除去することと
を含む、タービンを洗浄する方法。
[16]
上記C
8
~C
10
ポリグリコシドが約2重量%~約20重量%の洗浄水ストリーム中の濃度を有するように、上記洗浄水ストリームに上記組成物を添加することをさらに含む、項目15に記載の方法。
[17]
上記キレート配位子がグルコン酸である、項目15に記載の方法。
[18]
溶液試料中のシリカおよび鉄の濃度を決定することにより、オフライン洗浄プロセスにおける上記タービンからの上記堆積物の除去を監視することをさらに含む、項目1~17のいずれか一項に記載の方法。
[19]
システム圧力または発電を監視することにより、オンライン洗浄プロセスにおいて上記タービンからの上記堆積物の除去を監視することをさらに含む、項目1~17のいずれか一項に記載の方法。
[20]
タービンからシリカを含む堆積物を除去するための、テトラフルオロホウ酸および尿素成分を含む組成物の使用。
[21]
タービンからシリカを含む堆積物を除去するための、C
8
~C
10
ポリグリコシドを含む組成物の使用。