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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】CXCR3リガンド
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/19 20060101AFI20240219BHJP
   C07K 14/52 20060101ALI20240219BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240219BHJP
   C12P 21/00 20060101ALI20240219BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20240219BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
C12N15/19 ZNA
C07K14/52
C07K19/00
C12P21/00 C
A61K38/16
A61P43/00 111
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020559959
(86)(22)【出願日】2019-12-04
(86)【国際出願番号】 JP2019047382
(87)【国際公開番号】W WO2020116498
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-11-29
(31)【優先権主張番号】P 2018227353
(32)【優先日】2018-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003311
【氏名又は名称】中外製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】山本 陽平
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 実香
(72)【発明者】
【氏名】原谷 健太
【審査官】菅原 洋平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06562347(US,B1)
【文献】国際公開第2003/082335(WO,A1)
【文献】米国特許第06534626(US,B1)
【文献】国際公開第2018/097308(WO,A1)
【文献】特表2007-525188(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
C12N 15/00-15/90
C12P 21/00
A61P 29/00
A61P 37/02
A61P 43/00
A61K 47/68
A61K 38/17
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
DPPIVに対する耐性を有し、且つCXCR3を発現する細胞を遊走させる活性を有する、CXCR3リガンドであって、
前記CXCR3リガンドは
ヒトCXCL10改変体であって、
(a1) V-X1-L(X1はV、F、G、I、L、M、T、W、またはYである)、
(a2) X2-V-P(X2はA、G、I、L、N、Q、S、T、またはWである)、もしくは
(a3) V-X3-P(X3はA、F、G、I、M、P、TまたはVである)
のいずれかの配列をN末端に有する、CXCR3リガンド;または
ヒトCXCL11改変体またはヒトITIP改変体であって、
(a4) X4-F-P(X4はA、D、E、G、M、N、Q、S、T、V、またはYである
配列をN末端に有する、CXCR3リガンド。
【請求項2】
前記CXCR3リガンドのCXCR3を発現する細胞を遊走させる活性は、天然ヒトCXCL10のCXCR3を発現する細胞を遊走させる活性の30%以上である、または天然ヒトCXCL11もしくはヒトITIPのCXCR3を発現する細胞を遊走させる活性の25%以上である、請求項に記載のCXCR3リガンド。
【請求項3】
前記CXCR3リガンドのCXCR3を発現する細胞を遊走させる活性が最大となるときの前記CXCR3リガンド濃度は、天然ヒトCXCL10、天然ヒトCXCL11およびヒトITIPから選ばれる少なくとも一種類のタンパク質のCXCR3を発現する細胞を遊走させる活性が最大となるときの当該タンパク質の濃度より低い、請求項1または2に記載のCXCR3リガンド。
【請求項4】
前記CXCR3リガンドは
ヒトCXCL10改変体であって、
(b1) V-X1-L-S-R-T-V-R(X1はV、F、G、I、L、M、T、W、またはYである)、
(b2) X2-V-P-L-S-R-T-V-R(X2はA、G、I、L、N、Q、S、T、またはWである)、もしくは
(b3) V-X3-P-L-S-R-T-V-R(X3はA、F、G、I、M、P、TまたはVである)のいずれかの配列をN末端に有し;または
ヒトCXCL11改変体またはヒトITIP改変体であって、
(b4) X4-F-P-M-F-K-R-G-R(X4はA、D、E、G、M、N、Q、S、T、V、またはYである)の配列をN末端に有する、請求項1~3のいずれか一つに記載のCXCR3リガンド。
【請求項5】
ヒトCXCL10改変体であって、
(a1) V-X1-L(X1はV、F、G、I、L、M、T、W、またはYである)、
(a2) X2-V-P(X2はA、G、I、L、N、Q、S、T、またはWである)、もしくは
(a3) V-X3-P(X3はA、F、G、I、M、P、TまたはVである)
のいずれかの配列をN末端に有しまたは
ヒトCXCL11改変体またはヒトITIPであって、
(a4) X4-F-P(X4はA、D、E、G、M、N、Q、S、T、V、またはYである
配列をN末端に有する、CXCR3リガンド。
【請求項6】
ヒトCXCL10改変体であって、
(b1) V-X1-L-S-R-T-V-R(X1はV、F、G、I、L、M、T、W、またはYである)、
(b2) X2-V-P-L-S-R-T-V-R(X2はA、G、I、L、N、Q、S、T、またはWである)、もしくは
(b3) V-X3-P-L-S-R-T-V-R(X3はA、F、G、I、M、P、TまたはVである)
のいずれかの配列をN末端に有しまたは
ヒトCXCL11改変体またはヒトITIP改変体であって、
(b4) X4-F-P-M-F-K-R-G-R(X4はA、D、E、G、M、N、Q、S、T、V、またはYである)の配列をN末端に有する、請求項に記載のCXCR3リガンド。
【請求項7】
前記(b1)から(b5)の配列のC末端に、C-X-Cモチーフを有する、請求項または請求項に記載のCXCR3リガンド。
【請求項8】
前記CXCR3リガンドは、前記C-X-CモチーフのC末端に更に下記(c1)から(c5):
(c1) 配列番号:60の12番アミノ酸から77番アミノ酸までの配列;
(c2) 配列番号:61の12番アミノ酸から73番アミノ酸までの配列;
(c3) 配列番号:62の12番アミノ酸から103番アミノ酸までの配列;
(c4) 配列番号:1の12番アミノ酸から77番アミノ酸までの配列;
(c5) 配列番号:63の12番アミノ酸から77番アミノ酸までの配列;
のいずれかを有する、請求項に記載のCXCR3リガンド。
【請求項9】
前記CXCR3リガンドの配列は、下記(d1)から(d7):
(d1) 配列番号:5、6、8、10、11、16~20、24、26、28、30、32、34、35、37、39、42、43、45、48、50、54、55、110~112、114、119、120、122、124~126、128、167~169、171、176、177、179、181~183および185のいずれか一つで示す配列;
(d2) 配列番号:60と90%以上の配列同一性を示す配列;
(d3) 配列番号:61と90%以上の配列同一性を示す配列;
(d4) 配列番号:62と90%以上の配列同一性を示す配列;
(d5) 配列番号:63と90%以上の配列同一性を示す配列;
(d6) 配列番号:1と90%以上の配列同一性を示す配列;
(d7) 配列番号:1、5、6、8、10、11、16~20、24、26、28、30、32、34、35、37、39、42、43、45、48、50、54、55、60~63、110~112、114、119、120、122、124~126、128、167~169、171、176、177、179、181~183および185から選ばれる一つの配列に対して、アミノ酸の置換、挿入または欠失を10個以下含む配列;
のいずれかである、請求項1~8のいずれか一つに記載のCXCR3リガンド。
【請求項10】
前記CXCR3リガンドが、カバットナンバリングによるアミノ酸位置75位におけるアミノ酸のRからAへの置換を有する、請求項1~9のいずれか一つに記載のCXCR3リガンド。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一つに記載のCXCR3リガンドを含む融合タンパク質。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一つに記載のCXCR3リガンド、または請求項11に記載の融合タンパク質を含む、医薬組成物。
【請求項13】
N末端から2番目のアミノ酸がPあるいはAである親CXCR3リガンドにDPPIVに対する耐性を付与する方法であって、当該方法は下記のいずれかを含む:
前記親CXCR3リガンドが、天然ヒトCXCL10又はその改変体であり、
(1) 前記親CXCR3リガンドのN末端から2番目のアミノ酸をPからF、G、I、L、M、T、V、W、またはYに置換する、
(2) 前記親CXCR3リガンドのN末端に、更にA、G、I、L、N、Q、S、T、またはWを付加する、または
(3) 前記親CXCR3リガンドのN末端1番目、2番目のアミノ酸の間に、A、F、G、I、M、P、TまたはVを挿入する
方法。
【請求項14】
前記親CXCR3リガンドのN末端配列は、V-P-L-S-R-T-V-R(配列番号:86)またはV-A-L-S-R-T-V-R(配列番号:87)である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
DPPIVに対する耐性を有するCXCR3リガンドを製造する方法であって、当該方法はN末端から2番目のアミノ酸がPである親CXCR3リガンドに対し
(1) 前記親CXCR3リガンドのN末端から2番目のアミノ酸をPからF、G、I、L、M、T、V、W、またはYに置換する、
(2) 前記親CXCR3リガンドのN末端に、更にA、G、I、L、N、Q、S、T、またはWを付加する、または
(3) 前記親CXCR3リガンドのN末端1番目、2番目のアミノ酸の間に、A、F、G、I、M、P、TまたはVを挿入する
のいずれかの改変を行い、
前記親CXCR3リガンドが、天然ヒトCXCL10又はその改変体である、方法。
【請求項16】
前記親CXCR3リガンドのN末端配列は、V-P-L-S-R-T-V-R(配列番号:86)またはV-A-L-S-R-T-V-R(配列番号:87)である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
N末端から2番目のアミノ酸がPである親CXCR3リガンドにDPPIVに対する耐性を付与する方法であって、当該方法は下記を含む:
前記親CXCR3リガンドが、天然ヒトCXCL11若しくはその改変体又はヒトITIP若しくはその改変体であり、前記親CXCR3リガンドのN末端に、更にA、D、E、G、M、N、Q、S、T、V、またはYを付加す
法。
【請求項18】
前記親CXCR3リガンドのN末端配列は、F-P-M-F-K-R-G-R(配列番号:91)である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
DPPIVに対する耐性を有するCXCR3リガンドを製造する方法であって、当該方法はN末端から2番目のアミノ酸がPである親CXCR3リガンドに対し、前記親CXCR3リガンドのN末端に、更にA、D、E、G、M、N、Q、S、T、V、またはYを付加する改変を行
前記親CXCR3リガンドが、天然ヒトCXCL11若しくはその改変体又はヒトITIP若しくはその改変体である、方法。
【請求項20】
前記親CXCR3リガンドのN末端配列は、F-P-M-F-K-R-G-R(配列番号:91)である、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、CXCR3リガンド、CXCR3リガンドの製造方法、CXCR3リガンドの使用、CXCR3リガンドにDPPIVに対する耐性を付与する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ケモカイン受容体CXCR3(Chemokine receptor CXCR3、G protein-coupled receptor 9 (GPR9)、CD183とも呼ばれる)は、CXCケモカインレセプターファミリーに属し、ケモカインCXCL9、CXCL10及びCXCL11に結合するGタンパク質共役受容体である。CXCR3は、主に活性化したTヘルパー1型(Th1)リンパ球や細胞傷害性T細胞で発現するが、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、樹状細胞及びBリンパ球サブセットにも存在している。ケモカインCXCL9、CXCL10及びCXCL11は、天然に存在する3種のCXCR3リガンドである。CXCR3とそのリガンドの相互作用は、受容体を持つ細胞の、身体の特定部位、特に炎症、免疫障害及び免疫機能障害部位へのガイドに関わっている。
【0003】
CXCL10(C-X-C motif chemokine 10)は、「IP10(interferon gamma-induced protein 10)」や「small inducible cytokine B10」とも呼ばれており、CXCサブファミリーに属するケモカインの一種である。
【0004】
C-X-C motif chemokine 10 (CXCL10) はCXCR3を介してT細胞の遊走活性を促進することが知られている(非特許文献1)。さらにマウスの腫瘍中にCXCL10を直接投与すると、腫瘍中のT細胞が増加する事が報告されている(非特許文献2)。
【0005】
一方、CXCL10はDipeptidyl Peptidase-4 (DPPIV、DPP4)により、N末端の2アミノ酸が切断される事が知られている(非特許文献1)。切断されたCXCL10はヒト血中にも存在し、さらにヒト腫瘍中においても存在する事が報告されていることから、ヒト血中及び腫瘍中においてCXCL10がDPPIVにより切断されている事を示している(非特許文献3、4)。さらにDPPIVにより切断されたCXCL10は遊走活性が著しく減弱する事が報告されている事から、CXCL10の不活化メカニズムの1つとして考えられる(非特許文献1)。CXCL10はその立体構造が解かれており(非特許文献5、6)、構造予測されたCXCR3との複合体モデルも報告されている(非特許文献7)。この複合体モデルではCXCL10のN末端がCXCR3内部に入り込むように配置しており、この相互作用がCXCR3の活性化に重要であると考えられている。
【0006】
C-X-Cモチーフケモカイン11(C-X-C motif chemokine 11、C-X-C motif chemokine ligand 11、CXCL11)は、C-X-Cケモカインの一種であり、I-TAC(Interferon-inducible T-cell alpha chemoattractantまたはIP-9(Interferon-gamma-inducible protein 9)とも呼ばれ、天然のCXCL11は天然CXCL10や天然CXCL9より強くCXCR3に結合するとされている(非特許文献8、9)。天然のヒトCXCL11のN末端配列も、DPPIVにより切断されることが知られている(非特許文献1)。
C-X-Cモチーフケモカイン9(C-X-C motif chemokine 9、 C-X-C motif chemokine ligand 9、CXCL9)は、C-X-Cケモカインの一種であり、Monokine induced by gamma interferon (MIG)とも呼ばれ、天然のヒトCXCL9のN末端配列も、DPPIVにより切断されることが知られている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Proost P, Blood. 2001 Dec 15;98(13):3554-61.
【文献】Wang P, Cancer Immunol Immunother. 2010 Nov;59(11):1715-26.
【文献】Decalf J, EMBO Mol Med. 2016 Jun 1;8(6):679-83.
【文献】Rainczuk A, Int J Cancer. 2014 Feb 1;134(3):530-41.
【文献】Booth V, Biochemistry. 2002 Aug 20;41(33):10418-25.
【文献】Swaminathan GJ, Structure. 2003 May;11(5):521-32.
【文献】Trotta T, Mol Immunol. 2009 Dec;47(2-3):332-9.
【文献】Cole KE, The Journal of Experimental Medicine. 187 (12): 2009-21.
【文献】Tensen CP, The Journal of Investigative Dermatology. 112 (5): 716-22.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本開示は、DPPIVに対する耐性及びCXCR3発現細胞遊走活性を有するCXCR3リガンドおよび同CXCR3リガンドを使用する方法、同CXCR3リガンドの製造方法を提供する。本開示はまた、CXCR3リガンドにDPPIVに対する耐性を付与する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、DPPIVに対する耐性及びCXCR3発現細胞遊走活性を有するCXCR3リガンドを見出して本開示を完成させた。具体的に、DPPIVに対する耐性及びCXCR3発現細胞遊走活性に重要なN末端アミノ酸改変及びN末端アミノ酸配列を見出した。
【0010】
本開示は、具体的には以下に例示的に記載する態様を包含するものである。
[A-1] DPPIVに対する耐性を有し、且つCXCR3を発現する細胞を遊走させる活性を有する、CXCR3リガンド。
[A-2] 前記CXCR3リガンドは、C-X-Cモチーフを有する、[A-1]に記載のCXCR3リガンド。
[A-3] 前記C-X-Cモチーフに含まれる二つのシステインは、それぞれ前記CXCR3リガンドに含まれるC-X-Cモチーフ以外のシステインとジスルフィド結合を形成する、[A-2]に記載のCXCR3リガンド。
[A-4] 前記CXCR3 リガンドは下記(a1)から(a7):
(a1) V-X1-L(X1はF、G、I、K、L、M、T、V、W、またはYである);
(a2) X2-V-P(X2はA、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、またはYである);
(a3) V-X3-P(X3はA、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W、またはYである);
(a4) P-L-S;
(a5) X4-F-P(X4はA、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、S、T、V、W、またはYである);
(a6) F-X5-M(X5はA、D、E、G、H、I、M、N、Q、R、S、T、V、W、またはYである);
(a7) F-X6-P(X6はA、D、E、F、G、H、L、M、N、P、Q、S、T、W、またはYである);
のいずれかの配列をN末端に有する、[A-1]から[A-3]のいずれか一つに記載のCXCR3リガンド。
[A-5] 前記CXCR3リガンドは下記(b1)から(b7):
(b1) V-X1-L-S-R-T-V-R(X1はF、G、I、K、L、M、T、V、W、またはYである);
(b2) X2-V-P-L-S-R-T-V-R(X2はA、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、またはYである);
(b3) V-X3-P-L-S-R-T-V-R(X3はA、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W、またはYである);
(b4) P-L-S-R-T-V-R;
(b5) X4-F-P-M-F-K-R-G-R(X4はA、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、S、T、V、W、またはYである);
(b6) F-X5-M-F-K-R-G-R(X5はA、D、E、G、H、I、M、N、Q、R、S、T、V、W、またはYである);
(b7) F-X6-P-M-F-K-R-G-R(X6はA、D、E、F、G、H、L、M、N、P、Q、S、T、W、またはYである);
のいずれかの配列をN末端に有する、[A-1]から[A-4]のいずれか一つに記載のCXCR3リガンド。
[A-6] 前記CXCR3リガンドは下記(a1)から(a5):
(a1) V-X1-L(X1はF、G、I、L、M、T、V、W、またはYである);
(a2) X2-V-P(X2はA、G、I、L、N、Q、S、T、またはWである);
(a3) V-X3-P(X3はA、F、G、I、M、P、T、またはVである);
(a4) P-L-S;
(a5) X4-F-P(X4はA、D、E、G、M、N、Q、S、T、V、またはYである);
のいずれかの配列をN末端に有する、[A-1]から[A-3]のいずれか一つに記載のCXCR3リガンド。
[A-7] 前記CXCR3リガンドは下記(b1)から(b5):
(b1) V-X1-L-S-R-T-V-R(X1はF、G、I、L、M、T、V、W、またはYである);
(b2) X2-V-P-L-S-R-T-V-R(X2はA、G、I、L、N、Q、S、T、またはWである);
(b3) V-X3-P-L-S-R-T-V-R(X3はA、F、G、I、M、P、T、またはVである);
(b4) P-L-S-R-T-V-R;
(b5) X4-F-P-M-F-K-R-G-R(X4はA、D、E、G、M、N、Q、S、T、V、またはYである);
のいずれかの配列をN末端に有する、[A-1]から[A-3]のいずれか、または[A-6]に記載のCXCR3リガンド。
[A-8] 前記C-X-Cモチーフは、C-T-C(Cys-Thr-Cys)、C-L-C(Cys-Leu-Cys)、またはC-S-C(Cys-Ser-Cys)である、[A-2]から[A-7]のいずれか一つに記載のCXCR3リガンド。
[A-9] 前記CXCR3リガンドは、前記C-X-CモチーフのC末端に更に下記(c1)から(c5):
(c1) 配列番号:60の12番アミノ酸から77番アミノ酸までの配列;
(c2) 配列番号:61の12番アミノ酸から73番アミノ酸までの配列;
(c3) 配列番号:62の12番アミノ酸から103番アミノ酸までの配列;
(c4) 配列番号:1の12番アミノ酸から77番アミノ酸までの配列;
(c5) 配列番号:63の12番アミノ酸から77番アミノ酸までの配列;
のいずれかを有する、[A-2]から[A-8]のいずれか一つに記載のCXCR3リガンド。
[A-10] 前記CXCR3リガンドの配列は、下記(d1)から(d7):
(d1) 配列番号:2~57、92~147、149~204のいずれか一つで示す配列;
(d2) 配列番号:60と90%以上の配列同一性を示す配列;
(d3) 配列番号:61と90%以上の配列同一性を示す配列;
(d4) 配列番号:62と90%以上の配列同一性を示す配列;
(d5) 配列番号:63と90%以上の配列同一性を示す配列;
(d6) 配列番号:1と90%以上の配列同一性を示す配列;
(d7) 配列番号1~57、60~63、92~147、149~204から選ばれる一つの配列に対して、アミノ酸の置換、挿入または欠失を10個以下含む配列;
のいずれかである、[A-1]から[A-9]のいずれか一つに記載のCXCR3リガンド。
[A-11] 前記DPPIVに対する耐性は、0.2mg/mlの前記CXCR3リガンドまたはCXCR3リガンド-ヒトFcの融合タンパク質と、200 nM のヒトDPPIVの存在下において、37℃で1時間処理後に、前記CXCR3リガンドのN末端2残基が脱落しないことを指す、[A-1]から[A-10]のいずれか一つに記載のCXCR3リガンド。
[A-12] 前記CXCR3リガンドのCXCR3を発現する細胞を遊走させる活性は、天然ヒトCXCL10のCXCR3を発現する細胞を遊走させる活性の30%以上である、もしくは天然ヒトCXCL11のCXCR3を発現する細胞を遊走させる活性の25%以上である、[A-1]から[A-11]のいずれか一つに記載のCXCR3リガンド。
[A-13] 前記CXCR3リガンドのCXCR3を発現する細胞を遊走させる活性が最大となるときの前記CXCR3リガンド濃度は、天然ヒトCXCL10および/または天然ヒトCXCL11のCXCR3を発現する細胞を遊走させる活性が最大となるときの天然ヒトCXCL10および/または天然ヒトCXCL11濃度より低い、[A-1]から[A-12]のいずれか一つに記載のCXCR3リガンド。
[A-14] 前記CXCR3を発現する細胞は、CXCR3を発現するtransfectantもしくは生体から単離された細胞である、[A-1]から[A-13]のいずれか一つに記載のCXCR3リガンド。
【0011】
本開示はまた、以下に例示的に記載する態様を包含するものである。
[B-1] 下記(a1)から(a7):
(a1) V-X1-L(X1はF、G、I、K、L、M、T、V、W、またはYである);
(a2) X2-V-P(X2はA、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、またはYである);
(a3) V-X3-P(X3はA、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W、またはYである);
(a4) P-L-S;
(a5) X4-F-P(X4はA、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、S、T、V、W、またはYである);
(a6) F-X5-M(X5はA、D、E、G、H、I、M、N、Q、R、S、T、V、W、またはYである);
(a7) F-X6-P(X6はA、D、E、F、G、H、L、M、N、P、Q、S、T、W、またはYである);
のいずれかの配列をN末端に有する、CXCR3リガンド。
[B-2] 下記(b1)から(b7):
(b1) V-X1-L-S-R-T-V-R(X1はF、G、I、K、L、M、T、V、W、またはYである);
(b2) X2-V-P-L-S-R-T-V-R(X2はA、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、またはYである);
(b3) V-X3-P-L-S-R-T-V-R(X3はA、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W、またはYである);
(b4) P-L-S-R-T-V-R;
(b5) X4-F-P-M-F-K-R-G-R(X4はA、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、S、T、V、W、またはYである);
(b6) F-X5-M-F-K-R-G-R(X5はA、D、E、G、H、I、M、N、Q、R、S、T、V、W、またはYである);
(b7) F-X6-P-M-F-K-R-G-R(X6はA、D、E、F、G、H、L、M、N、P、Q、S、T、W、またはYである);
のいずれかの配列をN末端に有する、[B-1]に記載のCXCR3リガンド。
[B-3] 前記(a1)から(a7)の配列よりC末端側に、C-X-Cモチーフを有する、[B-1]または[B-2]に記載のCXCR3リガンド。
[B-4] 前記(b1)から(b7)の配列のC末端に、C-X-Cモチーフを有する、[B-2]に記載のCXCR3リガンド。
[B-5] 下記(a1)から(a5):
(a1) V-X1-L(X1はF、G、I、L、M、T、V、W、またはYである);
(a2) X2-V-P(X2はA、G、I、L、N、Q、S、T、またはWである);
(a3) V-X3-P(X3はA、F、G、I、M、P、T、またはVである);
(a4) P-L-S;
(a5) X4-F-P(X4はA、D、E、G、M、N、Q、S、T、V、またはYである);
のいずれかの配列をN末端に有する、CXCR3リガンド。
[B-6] 下記(b1)から(b5):
(b1) V-X1-L-S-R-T-V-R(X1はF、G、I、L、M、T、V、W、またはYである);
(b2) X2-V-P-L-S-R-T-V-R(X2はA、G、I、L、N、Q、S、T、またはWである);
(b3) V-X3-P-L-S-R-T-V-R(X3はA、F、G、I、M、P、T、またはVである);
(b4) P-L-S-R-T-V-R;
(b5) X4-F-P-M-F-K-R-G-R(X4はA、D、E、G、M、N、Q、S、T、V、またはYである);
のいずれか配列をN末端に有する、[B-5]に記載のCXCR3リガンド。
[B-7] 前記(a1)から(a5)の配列よりC末端側に、C-X-Cモチーフを有する、[B-5]または[B-6]に記載のCXCR3リガンド。
[B-8] 前記(b1)から(b5)の配列のC末端に、C-X-Cモチーフを有する、[B-6]に記載のCXCR3リガンド。
[B-9] 前記C-X-Cモチーフは、C-T-C(Cys-Thr-Cys)、C-L-C(Cys-Leu-Cys)、またはC-S-C(Cys-Ser-Cys)である、[B-3]、[B-4]、[B-7]、[B-8]のいずれか一つに記載のCXCR3リガンド。
[B-10] 前記CXCR3リガンドは、前記C-X-CモチーフのC末端に更に下記(c1)から(c5):
(c1) 配列番号:60の12番アミノ酸から77番アミノ酸までの配列;
(c2) 配列番号:61の12番アミノ酸から73番アミノ酸までの配列;
(c3) 配列番号:62の12番アミノ酸から103番アミノ酸までの配列;
(c4) 配列番号:1の12番アミノ酸から77番アミノ酸までの配列;
(c5) 配列番号:63の12番アミノ酸から77番アミノ酸までの配列;
のいずれかを有する、[B-3]、[B-4]、[B-7]、[B-8]、[B-9]のいずれか一つに記載のCXCR3リガンド。
[B-11] 前記CXCR3リガンドの配列は、下記(d1)から(d7):
(d1) 配列番号:2~57、92~147、149~204のいずれか一つで示す配列;
(d2) 配列番号:60と90%以上の配列同一性を示す配列;
(d3) 配列番号:61と90%以上の配列同一性を示す配列;
(d4) 配列番号:62と90%以上の配列同一性を示す配列;
(d5) 配列番号:63と90%以上の配列同一性を示す配列;
(d6) 配列番号:1と90%以上の配列同一性を示す配列;
(d7) 配列番号1~57、60~63、92~147、149~204から選ばれる一つの配列に対して、アミノ酸の置換、挿入または欠失を10個以下含む配列;
のいずれかである、[B-1]から[B-10]のいずれか一つに記載のCXCR3リガンド。
【0012】
本開示はまた、以下に例示的に記載する態様を包含するものである。
[C-1] [A-1]から[B-11]のいずれか一つに記載のCXCR3リガンドをエンコードする、単離された核酸。
[C-2] [C-1]に記載の核酸を含む宿主細胞。
[C-3] [A-1]から[B-11]のいずれか一つに記載のCXCR3リガンドの製造方法であって、CXCR3リガンドが製造されるように[C-2]に記載の宿主細胞を培養することを含む、方法。
[C-4] 前記宿主細胞から前記CXCR3リガンドを回収する工程を更に含む、[C-3]に記載の方法。
[C-5] [A-1]から[B-11]のいずれか一つに記載のCXCR3リガンドを含む融合タンパク質。
[C-6] [A-1]から[B-11]のいずれか一つに記載のCXCR3リガンドと抗体Fc領域が融合されている、[C-5]に記載の融合タンパク質。
[C-7] [A-1]から[B-11]のいずれか一つに記載のCXCR3リガンドと完全抗体または抗体断片が融合されている、[C-5]に記載の融合タンパク質。
[C-8] 前記CXCR3リガンドと前記抗体Fc領域、または前記CXCR3リガンドと前記完全抗体または抗体断片は、リンカーを介して融合されている、[C-6]または[C-7]に記載の融合タンパク質。
[C-9] [A-1]から [B-11]のいずれか一つに記載のCXCR3リガンド、または[C-5]から[C-8]のいずれか一つに記載の融合タンパク質を含む、医薬組成物。
【0013】
本開示はまた、以下に例示的に記載する態様を包含するものである。
[D-1] N末端から2番目のアミノ酸がPあるいはAである親CXCR3リガンドにDPPIVに対する耐性を付与する方法であって、当該方法は下記のいずれかを含む:
(1) 前記親CXCR3リガンドのN末端から2番目のアミノ酸をPまたはAからF、G、I、K、L、M、T、V、W、またはYに置換する;
(2) 前記親CXCR3リガンドのN末端に、更にA、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、またはYを付加する;
(3) 前記親CXCR3リガンドのN末端1番目、2番目のアミノ酸の間に、A、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W、またはYを挿入する;
(4) 前記親CXCR3リガンドのN末端のVを欠失させる;
方法。
[D-2] N末端から2番目のアミノ酸がPあるいはAである親CXCR3リガンドにDPPIVに対する耐性を付与する方法であって、当該方法は下記のいずれかを含む:
(1) 前記親CXCR3リガンドのN末端から2番目のアミノ酸をPまたはAからF、G、I、L、M、T、V、W、またはYに置換する;
(2) 前記親CXCR3リガンドのN末端に、更にA、G、I、L、N、Q、S、T、またはWを付加する;
(3) 前記親CXCR3リガンドのN末端1番目、2番目のアミノ酸の間に、A、F、G、I、M、P、T、またはVを挿入する;
(4) 前記親CXCR3リガンドのN末端のVを欠失させる;
方法。
[D-3] 前記親CXCR3リガンドは更にC-X-Cモチーフを有する、[D-1]または[D-2]に記載の方法。
[D-4] 前記C-X-Cモチーフは、C-T-C(Cys-Thr-Cys)、C-L-C(Cys-Leu-Cys)、またはC-S-C(Cys-Ser-Cys)である、[D-3]に記載の方法。
[D-5] 前記親CXCR3リガンドは、天然ヒトCXCL10またはその改変体、天然ヒトCXCL11またはその改変体、天然ヒトCXCL9またはその改変体のいずれかである、[D-1]から[D-4]のいずれか一つに記載の方法。
[D-6] 前記親CXCR3リガンドのN末端1番目のアミノ酸はVである、[D-1]から[D-5]に記載の方法。
[D-7] 前記親CXCR3リガンドのN末端配列は、V-P-L-S-R-T-V-R(配列番号:86)またはV-A-L-S-R-T-V-R(配列番号:87)である、[D-1]から[D-6]のいずれか一つに記載の方法。
[D-8] 前記C-X-Cモチーフは前記N末端配列「V-P-L-S-R-T-V-R(配列番号:86)」または「V-A-L-S-R-T-V-R(配列番号:87)」のC末端に位置する、[D-7]に記載の方法。
【0014】
本開示はまた、以下に例示的に記載する態様を包含するものである。
[E-1] DPPIVに対する耐性を有するCXCR3リガンドを製造する方法であって、当該方法はN末端から2番目のアミノ酸がPまたはAである親CXCR3リガンドに対し、下記のいずれか:
(1) 前記親CXCR3リガンドのN末端から2番目のアミノ酸をPまたはAからF、G、I、K、L、M、T、V、W、またはYに置換する;
(2) 前記親CXCR3リガンドのN末端に、更にA、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、またはYを付加する;
(3) 前記親CXCR3リガンドのN末端1番目、2番目のアミノ酸の間に、A、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W、またはYを挿入する;
(4) 前記親CXCR3リガンドのN末端のVを欠失させる;
の改変を行う、方法。
[E-2] DPPIVに対する耐性を有するCXCR3リガンドを製造する方法であって、当該方法はN末端から2番目のアミノ酸がPまたはAである親CXCR3リガンドに対し、下記のいずれか:
(1) 前記親CXCR3リガンドのN末端から2番目のアミノ酸をPまたはAからF、G、I、L、M、T、V、W、またはYに置換する;
(2) 前記親CXCR3リガンドのN末端に、更にA、G、I、L、N、Q、S、T、またはWを付加する;
(3) 前記親CXCR3リガンドのN末端1番目、2番目のアミノ酸の間に、A、F、G、I、M、P、T、またはVを挿入する;
(4) 前記親CXCR3リガンドのN末端のVを欠失させる;
の改変を行う、方法
[E-3] 前記親CXCR3リガンドは更にC-X-Cモチーフを有する、[E-1]または[E-2]に記載の方法。
[E-4] 前記C-X-Cモチーフは、C-T-C(Cys-Thr-Cys)、C-L-C(Cys-Leu-Cys)、またはC-S-C(Cys-Ser-Cys)である、[E-3]に記載の方法。
[E-5] 前記親CXCR3リガンドは、天然ヒトCXCL10またはその改変体、天然ヒトCXCL11またはその改変体、天然ヒトCXCL9またはその改変体のいずれかである、[E-1]から[E-4]のいずれか一つに記載の方法。
[E-6] 前記親CXCR3リガンドのN末端1番目のアミノ酸はVである、[E-1]から[E-5]に記載の方法。
[E-7] 前記親CXCR3リガンドのN末端配列は、V-P-L-S-R-T-V-R(配列番号:86)またはV-A-L-S-R-T-V-R(配列番号:87)である、[E-1]から[E-6]のいずれか一つに記載の方法。
[E-8] 前記親C-X-Cモチーフは前記N末端配列「V-P-L-S-R-T-V-R(配列番号:86)」または「V-A-L-S-R-T-V-R(配列番号:87)」のC末端に位置する、[E-7]に記載の方法。
[E-9] [E-1]から[E-8]のいずれか一つに記載の方法により製造された、CXCR3リガンド。
【0015】
本開示はまた、以下に例示的に記載する態様を包含するものである。
[F-1] N末端から2番目のアミノ酸がPである親CXCR3リガンドにDPPIVに対する耐性を付与する方法であって、当該方法は下記のいずれかを含む:
(1) 前記親CXCR3リガンドのN末端に、更にA、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、S、T、V、W、またはYを付加する;
(2) 前記親CXCR3リガンドのN末端から2番目のアミノ酸をPからA、D、E、G、H、I、M、N、Q、R、S、T、V、W、またはYに置換する;
(3) 前記親CXCR3リガンドのN末端1番目、2番目のアミノ酸の間に、A、D、E、F、G、H、L、M、N、P、Q、S、T、W、またはYを挿入する;
方法。
[F-2] N末端から2番目のアミノ酸がPである親CXCR3リガンドにDPPIVに対する耐性を付与する方法であって、当該方法は、前記親CXCR3リガンドのN末端に、更にA、D、E、G、M、N、Q、S、T、V、またはYを付加することを含む、方法。
[F-3] 前記親CXCR3リガンドは更にC-X-Cモチーフを有する、[F-1]または[F-2]に記載の方法。
[F-4] 前記C-X-Cモチーフは、C-T-C(Cys-Thr-Cys)、C-L-C(Cys-Leu-Cys)、またはC-S-C(Cys-Ser-Cys)である、[F-3]に記載の方法。
[F-5] 前記親CXCR3リガンドは、天然ヒトCXCL10またはその改変体、天然ヒトCXCL11またはその改変体、天然ヒトCXCL9またはその改変体のいずれかである、[F-1]から[F-4]のいずれか一つに記載の方法。
[F-6] 前記親CXCR3リガンドのN末端1番目のアミノ酸はFである、[F-1]から[F-5]に記載の方法。
[F-7] 前記親CXCR3リガンドのN末端配列は、F-P-M-F-K-R-G-R(配列番号:91)である、[F-1]から[F-6]のいずれか一つに記載の方法。
[F-8] 前記C-X-Cモチーフは前記N末端配列「F-P-M-F-K-R-G-R(配列番号:91)」のC末端に位置する、[F-7]に記載の方法。
【0016】
本開示はまた、以下に例示的に記載する態様を包含するものである。
[G-1] DPPIVに対する耐性を有するCXCR3リガンドを製造する方法であって、当該方法はN末端から2番目のアミノ酸がPである親CXCR3リガンドに対し、下記のいずれか:
(1) 前記親CXCR3リガンドのN末端に、更にA、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、S、T、V、W、またはYを付加する;
(2) 前記親CXCR3リガンドのN末端から2番目のアミノ酸をPからA、D、E、G、H、I、M、N、Q、R、S、T、V、W、またはYに置換する;
(3) 前記親CXCR3リガンドのN末端1番目、2番目のアミノ酸の間に、A、D、E、F、G、H、L、M、N、P、Q、S、T、W、またはYを挿入する;
の改変を行う、方法。
[G-2] DPPIVに対する耐性を有するCXCR3リガンドを製造する方法であって、当該方法はN末端から2番目のアミノ酸がPである親CXCR3リガンドに対し、前記親CXCR3リガンドのN末端に、更にA、D、E、G、M、N、Q、S、T、V、またはYを付加する改変を行う、方法。
[G-3] 前記親CXCR3リガンドは更にC-X-Cモチーフを有する、[G-1]または[G-2]に記載の方法。
[G-4] 前記C-X-Cモチーフは、C-T-C(Cys-Thr-Cys)、C-L-C(Cys-Leu-Cys)、またはC-S-C(Cys-Ser-Cys)である、[G-3]に記載の方法。
[G-5] 前記親CXCR3リガンドは、天然ヒトCXCL10またはその改変体、天然ヒトCXCL11またはその改変体、天然ヒトCXCL9またはその改変体のいずれかである、[G-1]から[G-4]のいずれか一つに記載の方法。
[G-6] 前記親CXCR3リガンドのN末端1番目のアミノ酸はFである、[G-1]から[G-5]に記載の方法。
[G-7] 前記親CXCR3リガンドのN末端配列は、F-P-M-F-K-R-G-R(配列番号:91)である、[G-1]から[G-6]のいずれか一つに記載の方法。
[G-8] 前記親C-X-Cモチーフは前記N末端配列「F-P-M-F-K-R-G-R(配列番号:91)」のC末端に位置する、[G-7]に記載の方法。
[G-9] [G-1]から[G-8]のいずれか一つに記載の方法により製造された、CXCR3リガンド。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A】hCXCL10改変体Fc fusionの模式図。
図1B】hCXCL10改変体作製のための、DPPIV認識・切断サイトおよびその周辺のアミノ酸改変位置を示す図。
図2】hCXCL10 (PeproTech, cat 300-12)とhCXCL10R75Aの細胞遊走活性を示す図。
図3a】各hCXCL10改変体Fc fusionの細胞遊走活性を示す図。
図3b】各hCXCL10改変体Fc fusionの細胞遊走活性を示す図。
図4A】hCXCL11またはhITIP改変体Fc fusionの模式図。
図4B】hCXCL11またはhITIP改変体作製のための、DPPIV認識・切断サイトおよびその周辺のアミノ酸改変位置を示す図。
図5】DPPIV処理前後のhCXCL10改変体の細胞遊走活性比較を示す図。
図6-1】各hCXCL11改変体Fc fusionの細胞遊走活性を示す図。
図6-2】図6-1の続きを示す。
図6-3】図6-2の続きを示す。図6-1から図6-3で示す活性は、同じ回の実験によるものである。
図7a】各hITIP改変体Fc fusionの細胞遊走活性を示す図。
図7b】各hITIP改変体Fc fusionの細胞遊走活性を示す図。
図7c】各hITIP改変体Fc fusionの細胞遊走活性を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の定義および詳細な説明は、本明細書において説明する本開示の理解を容易にするために提供される。
アミノ酸
本明細書において、たとえば、Ala/A、Leu/L、Arg/R、Lys/K、Asn/N、Met/M、Asp/D、Phe/F、Cys/C、Pro/P、Gln/Q、Ser/S、Glu/E、Thr/T、Gly/G、Trp/W、His/H、Tyr/Y、Ile/I、Val/Vと表されるように、アミノ酸は1文字コードまたは3文字コード、またはその両方で表記されている。
【0019】
アミノ酸の改変
CXCR3リガンドのアミノ酸配列中のアミノ酸の改変のためには、部位特異的変異誘発法(Kunkelら(Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1985) 82, 488-492))やOverlap extension PCR等の公知の方法が適宜採用され得る。また、天然のアミノ酸以外のアミノ酸に置換するアミノ酸の改変方法として、複数の公知の方法もまた採用され得る(Annu. Rev. Biophys. Biomol. Struct. (2006) 35, 225-249、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (2003) 100 (11), 6353-6357)。例えば、終止コドンの1つであるUAGコドン(アンバーコドン)の相補的アンバーサプレッサーtRNAに非天然アミノ酸が結合されたtRNAが含まれる無細胞翻訳系システム(Clover Direct(Protein Express))等も好適に用いられる。
【0020】
本明細書において、アミノ酸の改変部位を表す際に用いられる「および/または」の用語の意義は、「および」と「または」が適宜組み合わされたあらゆる組合せを含む。具体的には、例えば「33位、55位、および/または96位のアミノ酸が置換されている」とは以下のアミノ酸の改変のバリエーションが含まれる;
(a) 33位、(b)55位、(c)96位、(d)33位および55位、(e)33位および96位、(f)55位および96位、(g)33位および55位および96位。あるいは、「33位、55位、および/または96位のアミノ酸が置換されている」は、「33位、55位、および96位からなる群から選択される少なくとも1つ(1つ、2つ、または3つ)の位置のアミノ酸が置換されている」と同義である。
【0021】
本明細書において、アミノ酸の置換を表す表現として、特定の位置を表す数字の前後に改変前と改変後のアミノ酸の1文字コードまたは3文字コードを併記した表現が適宜使用され得る。例えば、CXCR3リガンドに含まれるアミノ酸の置換を加える際に用いられるP2AまたはPro2Alaという改変は、CXCR3リガンドのN末端から2位のProのAlaへの置換を表す。すなわち、数字はCXCR3リガンドのN末端から数えた場合のアミノ酸の位置を表し、その前に記載されるアミノ酸の1文字コード又は3文字コードは置換前のアミノ酸、その後に記載されるアミノ酸の1文字コードまたは3文字コードは置換後のアミノ酸を表す。
【0022】
本明細書において、アミノ酸の挿入を表す表現として、特定の挿入位置の後に、「ins」及び挿入されたアミノ酸の1文字コードまたは3文字コードを併記した表現が適宜使用され得る。挿入位置を表すのに、当該挿入位置の前後のアミノ酸の1文字コードまたは3文字コード及び位置を併記した表現が適宜使用され得る。例えば、CXCR3リガンドに含まれるアミノ酸配列にアミノ酸を挿入する際に用いられるV1_P2insAまたはVal1_Pro2insAlaという改変は、CXCR3リガンドのN末端から1位のアミノ酸Valと2位のアミノ酸Proの間へのAlaの挿入を表す。CXCR3リガンドのN末端から1位のアミノ酸ValよりN末端にアミノ酸を挿入する際に、例えば、G-1_V1insAまたはGly-1_Val1insAlaという表記で、CXCR3リガンドのN末端1位のVal、及び当該ValのN末端隣りに位置するシグナル配列中のGlyの間へのAlaの挿入を表し、シグナル配列中のGlyはCXCR3リガンドのN末端より更にN末端の1位のアミノ酸であるため、位置を「-1」と表記する。
【0023】
CXCR3
ケモカイン受容体CXCR3(Chemokine receptor CXCR3、G protein-coupled receptor 9 (GPR9)、CD183とも呼ばれる)は、CXCケモカインファミリーに属し、ケモカインCXCL9、CXCL10及びCXCL11に結合するGタンパク質共役受容体である。CXCR3は、主に活性化したTヘルパー1型(Th1)リンパ球で発現するが、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、樹状細胞及びBリンパ球サブセットにも存在している。ケモカインCXCL9、CXCL10及びCXCL11は、天然に存在する3種のCXCR3リガンドである。CXCR3とそのリガンドの相互作用(以後、CXCR3系(axis)と称する)は、受容体を持つ細胞の、身体の特定部位、特に炎症、免疫障害及び免疫機能障害部位へのガイドに関わっている。本明細書における用語「CXCR3」は、別段示さない限り、霊長類(例えば、ヒト)およびげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物供給源からの任意の天然型CXCR3を意味する。ヒトCXCR3の全アミノ酸配列は、Refseq:NP_001495(配列番号:88)で示される。
【0024】
ケモカイン、CXCケモカイン
ケモカインは、7~16 kDaの間の均質な血清タンパク質のファミリーであり、元来、白血球の遊走を誘導するその能力を特徴とした。ほとんどのケモカインは、4つの特徴的なシステイン(Cys)を有し、最初の2つのシステインによって示されるモチーフによって、C-X-C(又はアルファ、CXC)、C-C(又はベータ)、C(又はガンマ)及びCX3C(又はデルタ)のケモカインクラスに分類されている。2つのジスルフィド結合は、第1と第3のシステインの間、及び第2と第4のシステインの間に形成される。一般に、ジスルフィド架橋は必要であると考えられ、Clark-Lewisと共同研究者らは、少なくともCXCL10についてジスルフィド結合は、ケモカイン活性に決定的であることを報告した(Clark-Lewis et al., J. Biol. Chem. 269:16075-16081, 1994)。
さらに、C-X-C(又はアルファ、CXC)のサブファミリーは、第1のシステインに先行するELRモチーフ(Glu-Leu-Arg)の存在によって2つの群:ELR-CXCケモカイン及び非ELR-CXCケモカインに分類されている(たとえば、Clark-Lewis, 上記、 及びBelperio et al., J. Leukoc. Biol. 68:1-8, 2000を参照)。CXCL10、CXCL11、CXCL9は全て非ELR-CXCケモカインである。
【0025】
CXCL10
CXCモチーフケモカイン10(C-X-C motif chemokine 10、C-X-C motif chemokine ligand 10、CXCL10)は、C-X-Cケモカインの一種であり、インターフェロン誘導性のタンパク質-10(IP-10)とも呼ばれる。インターフェロン-γ及びTNF-αによって誘導され、角化細胞、内皮細胞、線維芽細胞及び単球によって産生される。CXCL10は、組織炎症部位への活性化T細胞の動員において役割を担っていると考えられる(Dufour, et al., J Immunol., 168:3195-204, 2002)。さらに、CXCL10は、過敏反応に役割を担っている可能性がある。また、炎症性脱髄神経障害の発生にも役割を担っている可能性がある(Kieseier, et al., Brain 125:823-34, 2002)。
【0026】
研究によって、CXCL10は、移植に続く幹細胞の生着(Nagasawa, T., Int. J. Hematol. 72:408-11, 2000)、幹細胞の動員(Gazitt, Y., J. Hematother Stem Cell Res 10:229-36, 2001; Hattori et al., Blood 97:3354-59, 2001)及び抗腫瘍免疫の亢進(Nomura et al., Int. J. Cancer 91:597-606, 2001; Mach and Dranoff, Curr. Opin. Immunol. 12:571-75, 2000)に有用である可能性があることが示されている。たとえば、当業者に既知の報告の中で、ケモカインの生物活性が議論されている(Bruce, L. et al., Methods in Molecular Biology (2000) vol. 138, pp129-134, Raphaele, B. et al., Methods in Molecular Biology (2000) vol. 138, pp143-148, Paul D. Ponath et al., Methods in Molecular Biology (2000) vol. 138, pp113-120)。CXCL10の生理活性は、細胞表面に発現するケモカイン受容体CXCR3との結合により発揮される(Booth V. et al, Biochemistry. 41 (33): 10418-25.)。
【0027】
本明細書でいう用語「CXCL10」は、別段示さない限り、霊長類(例えば、ヒト)およびげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物供給源からの任意の天然型CXCL10のことをいう。この用語は、「全長」のプロセシングを受けていないものではなく、細胞中でのプロセシングの結果により、細胞外に分泌される成熟されたCXCL10を指す。本明細書において、プロセシングを受けていないものは、CXCL10前駆体と呼ばれる。この用語はまた、自然に生じるCXCL10の変異体、例えば、スプライス変異体や対立遺伝子変異体も包含する。天然のヒトCXCL10は、CXCL10前駆体(Refseq Accession number: NP_001556)として発現された後、配列番号:60で示される配列のタンパク質として細胞外に分泌される。また、アカゲザルCXCL10前駆体の全アミノ酸配列は、Refseq Accession number: AKK95955で示されており、マウスCXCL10前駆体の全アミノ酸配列は、Refseq Accession number: NP_067249である。
天然型CXCL10または自然に生じるCXCL10の変異体に人工的なアミノ酸改変を加えたものは、「CXCL10改変体」と呼ばれる。
【0028】
CXCL11
C-X-Cモチーフケモカイン11(C-X-C motif chemokine 11、C-X-C motif chemokine ligand 11、CXCL11)は、C-X-Cケモカインの一種であり、I-TAC(Interferon-inducible T-cell alpha chemoattractantまたはIP-9(Interferon-gamma-inducible protein 9)とも呼ばれる。CXCL11の遺伝子発現は、IFN-γ及びIFN-βにより強く誘導され、IFN-αにも誘導される(Rani M.R., The Journal of Biological Chemistry. 271 (37): 22878-84.)。
【0029】
CXCL11はT細胞を活性化する生物的活性を有している。CXCL11は、細胞表面に発現されるケモカイン受容体CXCR3に結合することにより生物的活性を発揮すると知られており、天然のCXCL11は天然CXCL10や天然CXCL9より強くCXCR3に結合するとされている(Cole K.E., The Journal of Experimental Medicine. 187 (12): 2009-21.; Tensen C.P., The Journal of Investigative Dermatology. 112 (5): 716-22.)。
【0030】
本明細書でいう用語「CXCL11」は、別段示さない限り、霊長類(例えば、ヒト)およびげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物供給源からの任意の天然型CXCL11のことをいう。この用語は、「全長」のプロセシングを受けていないものではなく、細胞中でのプロセシングの結果により、細胞外に分泌される成熟されたCXCL11を指す。本明細書において、プロセシングを受けていないものは、CXCL11前駆体と呼ばれる。この用語はまた、自然に生じるCXCL11の変異体、例えば、スプライス変異体や対立遺伝子変異体も包含する。天然のヒトCXCL11は、CXCL11前駆体(Refseq Accession number: NP_005400)として発現された後、配列番号:61で示される配列のタンパク質として細胞外に分泌される。
天然型CXCL11または自然に生じるCXCL11の変異体に人工的なアミノ酸改変を加えたものは、「CXCL11改変体」と呼ばれる。
【0031】
CXCL9
C-X-Cモチーフケモカイン9(C-X-C motif chemokine 9、 C-X-C motif chemokine ligand 9、CXCL9)は、C-X-Cケモカインの一種であり、Monokine induced by gamma interferon (MIG)とも呼ばれる。 CXCL9はIFN-γにより誘導されるT-cell chemoattractantであり、細胞表面に発現されるケモカイン受容体CXCR3に結合することにより生物的活性を発揮すると知られている。
【0032】
本明細書でいう用語「CXCL9」は、別段示さない限り、霊長類(例えば、ヒト)およびげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物供給源からの任意の天然型CXCL9のことをいう。この用語は、「全長」のプロセシングを受けていないものではなく、細胞中でのプロセシングの結果により、細胞外に分泌される成熟されたCXCL9を指す。本明細書において、プロセシングを受けていないものは、CXCL9前駆体と呼ばれる。この用語はまた、自然に生じるCXCL9の変異体、例えば、スプライス変異体や対立遺伝子変異体も包含する。天然のヒトCXCL9は、CXCL9前駆体(Refseq Accession number: NP_002407)として発現された後、配列番号:62で示される配列のタンパク質として細胞外に分泌される。
天然型CXCL9または自然に生じるCXCL9の変異体に人工的なアミノ酸改変を加えたものは、「CXCL9改変体」と呼ばれる。
【0033】
CXCL10、CXCL11、CXCL9等の一部をお互いに融合させてキメラタンパク質を作製することが出来る。例えば、ヒトCXCL11(配列番号:61)のアミノ酸残基1番目から24番目までとヒトCXCL10改変体(配列番号:1)のアミノ酸残基25番目から77番目までを結合したヒトCXCL10-ヒトCXCL11 キメラタンパク質(hITIP)(配列番号:63)を作成することが出来る。このようなキメラタンパク質も、CXCR3に結合可能な限り、CXCR3リガンドと呼ぶことができる。また、このようなキメラタンパク質も、DPPIVによりN末端の2アミノ酸が切断されることがある。
ヒトCXCL11(配列番号:61)のアミノ酸残基1番目から24番目までとヒトCXCL10改変体(配列番号:1)のアミノ酸残基25番目から77番目までを結合したヒトCXCL10-ヒトCXCL11 キメラタンパク質(hITIP)(配列番号:63)に更にアミノ酸改変を加えたものは、「hITIP改変体」と呼ばれる。
【0034】
CXCR3リガンドとCXCR3の結合性の測定方法
CXCR3リガンドとCXCR3の結合活性の評価は、FACS、ELISAフォーマット、ALPHAスクリーン(Amplified Luminescent Proximity Homogeneous Assay)や表面プラズモン共鳴(SPR)現象を利用したBIACORE法、BLI(Bio-Layer Interferometry)法(Octet)等、周知の方法によって確認することができる(Proc. Natl. Acad. Sci. USA (2006) 103 (11), 4005-4010)。
ALPHAスクリーンは、ドナーとアクセプターの2つのビーズを使用するALPHAテクノロジーによって下記の原理に基づいて実施される。ドナービーズに結合した分子が、アクセプタービーズに結合した分子と相互作用し、2つのビーズが近接した状態の時にのみ、発光シグナルが検出される。レーザーによって励起されたドナービーズ内のフォトセンシタイザーは、周辺の酸素を励起状態の一重項酸素に変換する。一重項酸素はドナービーズ周辺に拡散し、近接しているアクセプタービーズに到達するとビーズ内の化学発光反応を引き起こし、最終的に光が放出される。ドナービーズに結合した分子とアクセプタービーズに結合した分子が相互作用しないときは、ドナービーズの産生する一重項酸素がアクセプタービーズに到達しないため、化学発光反応は起きない。
例えば、ドナービーズにビオチン標識されたCXCR3リガンドが結合され、アクセプタービーズにはグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)でタグ化されたCXCR3ペプチドが結合される。CXCR3ペプチドとしてN末端の細胞外ドメイン領域(1-53番目、配列番号:89)やその一部の断片(22-42、配列番号:90、 Biochemistry (2002) 41, 10418-10425)が使用可能である。また、CXCR3の27位Y残基、または/および29位Y残基は硫酸化修飾を受けているものがより望ましい(MOLECULAR AND CELLULAR BIOLOGY, Aug. 2006, p. 5838-5849)。競合するタグ化されていないCXCR3リガンドの非存在下では、CXCR3リガンドとCXCR3ペプチドは相互作用し520-620 nmのシグナルを生ずる。タグ化されていないCXCR3リガンドは、タグ化されたCXCR3リガンドとCXCR3ペプチド間の相互作用と競合する。競合の結果表れる蛍光の減少を定量することによって相対的な結合親和性が決定され得る。CXCL10等のCXCR3リガンドをSulfo-NHS-ビオチン等を用いてビオチン化することは公知である。CXCR3ペプチドをGSTでタグ化する方法としては、CXCR3ペプチドをコードするポリヌクレオチドとGSTをコードするポリヌクレオチドをインフレームで融合した融合遺伝子を発現可能なベクターを保持した細胞等においてGST融合CXCR3ペプチドを発現し、グルタチオンカラムを用いて精製する方法等が適宜採用され得る。得られたシグナルは例えばGRAPHPAD PRISM(GraphPad社、San Diego)等のソフトウェアを用いて非線形回帰解析を利用する一部位競合(one-site competition)モデルに適合させることにより好適に解析される。
【0035】
相互作用を観察する物質の一方(CXCR3リガンド)をセンサーチップの金薄膜上に固定し、センサーチップの裏側から金薄膜とガラスの境界面で全反射するように光を当てると、反射光の一部に反射強度が低下した部分(SPRシグナル)が形成される。相互作用を観察する物質の他方(アナライト、CXCR3リガンドを固定する場合アナライトとして全長CXCR3または前記のCXCR3ペプチドを使用できる)をセンサーチップの表面に流しCXCR3リガンドとアナライトが結合すると、固定化されているCXCR3リガンド分子の質量が増加し、センサーチップ表面の溶媒の屈折率が変化する。この屈折率の変化により、SPRシグナルの位置がシフトする(逆に結合が解離するとシグナルの位置は戻る)。Biacoreシステムは上記のシフトする量、すなわちセンサーチップ表面での質量変化を縦軸にとり、質量の時間変化を測定データとして表示する(センサーグラム)。センサーグラムのカーブからカイネティクス:結合速度定数(ka)と解離速度定数(kd)が、当該定数の比から解離定数(KD)が求められる。BIACORE法では阻害測定法や平衡値解析法も好適に用いられる。阻害測定法の例はProc. Natl. Acad. Sci. USA (2006) 103 (11), 4005-4010において、平衡値解析法の例はMethods Enzymol.2000;323:325-40.において記載されている。同様な方法で、全長CXCR3または前記のCXCR3ペプチドをセンサーチップの金薄膜上に固定し、CXCR3リガンドをアナライトとして流すことで、CXCR3リガンドとCXCR3の結合を測定することもできる。センサーチップの金薄膜上に固定する全長CXCR3または前記のCXCR3ペプチドは、精製されたものであってもよいし、それらを発現する細胞や、その細胞膜分画とすることもできる。
本開示のCXCR3リガンドは、全長CXCR3あるいは前記CXCR3ペプチドに100μM、10μM、1μM、100nM、50nM、10nM、5nM、1nM、500pM、400pM、350pM、300pM、250pM、200pM、150pM、100pM、50pM、25pM、10pM、5pM、1pM、0.5pM、または0.1pM以下の解離定数(KD)で特異的に結合することができる。
【0036】
あるいは固定化した全長CXCR3あるいは前記CXCR3ペプチドに対するCXCR3リガンドの結合活性がELISAの原理に基づいて評価され得る。たとえば、ELISAプレートのウェルに全長CXCR3あるいは前記CXCR3ペプチドが固定化される。CXCR3リガンド溶液をウェル内の固定化全長CXCR3あるいは前記CXCR3ペプチドに接触させ、固定化全長CXCR3あるいは前記CXCR3ペプチドに結合するCXCR3リガンドを、当該CXCR3リガンドに結合する抗体で検出される。また、ELISAプレートのウェルにCXCR3リガンドが固定化され、全長CXCR3あるいは前記CXCR3ペプチド溶液をウェル内の固定化CXCR3リガンドに接触させ、固定化CXCR3リガンドに結合する全長CXCR3あるいは前記CXCR3ペプチドを、全長CXCR3あるいは前記CXCR3ペプチドに結合する抗体で検出される。
【0037】
CXCR3リガンドとCXCR3の結合性を測定する方法として、放射性同位元素を用いてCXCR3リガンドを標記する方法もある。具体的に、放射性同位体でラベルされたCXCR3リガンドを用意し、CXCR3 発現細胞に加えてインキュベートする。インキュベート後のサンプルをfilterに通すことで、CXCR3に結合したCXCR3リガンドを細胞ごとfilterに吸着させる。Filterを乾燥させ、放射線量を計測することで、filterに吸着したCXCR3リガンドの量を測定することが出来る。この方法をCXCL10に適用した報告がある(MOLECULAR AND CELLULAR BIOLOGY, Aug. 2006, p. 5838-5849 Vol. 26, No. 15、THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY Vol. 278, No. 19, Issue of May 9, pp. 17066-17074, 2003)。
また、15NラベルしたCXCR3リガンドの15N-1H HSQC NMRスペクトル、2D NOESY NMRスペクトルを測定し、CXCR3ペプチドの添加前後で得られるNMRスペクトルを比較することで、CXCR3リガンド中のCXCR3結合に関わる残基や結合の強度を解析することもできる(Biochemistry, 2002, 41, 10418-10425)。
【0038】
CXCR3リガンド
本明細書の用語「CXCR3リガンド」は、CXCR3に結合可能な分子のことを言う。例えば、CXCR3のリガンド結合部位と相互作用する部位を含むタンパク質は、本開示におけるCXCR3リガンドに含まれる。この用語は、「全長」のプロセシングを受けていないものではなく、細胞中でのプロセシングの結果により、細胞外に分泌される成熟されたCXCR3リガンドを指す。本明細書において、プロセシングを受けていないものは、CXCR3リガンド前駆体と呼ばれる。
【0039】
特定の態様において、本明細書で提供されるCXCR3リガンドは、DPPIVに対する耐性、且つCXCR3を発現する細胞を遊走させる活性を有する。
【0040】
DPPIV(Dipeptidyl peptidase IV、Dipeptidyl peptidase 4、DPP4;EC3.4.14.5)は、腸管ホルモンであるインクレチンの不活化を行う酵素(セリンプロテアーゼ)であり、細胞膜上をはじめ可溶性タンパク質として血液中にも存在している。アデノシンデアミナーゼ(ADA、adenosine deaminase; EC 3.5.4.4)と結合して細胞内情報伝達を調節する働きも有しているため、アデノシンデアミナーゼ結合タンパク質(ADABP、adenosine deaminase binding protein)とも呼ばれる。DPPIVは、アミノ基側末端から2番目にプロリンあるいはアラニン残基を有するペプチドからジペプチドを切り出す働きがある。
ヒトのDPPIVは766個のアミノ酸から構成される110kDaのタンパク質であり、そのアミノ酸配列はRefseq accession number: NP_001926.2 で示される。
【0041】
対象タンパク質がDPPIVにより切断されるかについての評価は、DPPIVと対象タンパク質をインキュベートした後、LC/MS解析によって評価することが出来る。具体的には、0.2 mg/mlの対象タンパク質と終濃度200 nM のDPPIVを37℃で1時間反応させたのち、LC/MSによる質量分析を行い、反応により対象タンパク質の質量が減少する場合、対象タンパク質がDPPIVにより切断されたことが示唆される。また、タンパク質の質量が減少した場合に減少分の質量と対象タンパク質N末端2アミノ酸の理論質量が一致した場合、対象タンパク質のN末端2アミノ酸がDPPIVにより切り落とされたことが示唆される。本開示のCXCR3リガンドに対してこのようなDPPIV切断評価を行うとき、DPPIVと一緒にインキュベートするタンパク質はCXCR3リガンドそのものでも良く、CXCR3リガンドと他のポリペプチド(例えば、抗体Fc領域)を融合させた融合タンパク質でも良い。
本開示における「DPPIVに対する耐性」は、対象タンパク質のDPPIVにより切断されない性質を言う。より具体的には、上記のような切断評価を行うときに、DPPIV処理後の対象タンパク質の質量が減少しないことを指す。更に具体的には、上記のような切断評価を行うときに、DPPIV処理後の対象タンパク質の質量減少が対象タンパク質のN末端2アミノ酸の理論質量と一致しないことを指す。
【0042】
対象タンパク質のCXCR3を発現する細胞を遊走させる活性は、CXCR3を発現するtransfectantもしくは生体から単離された細胞を用いて測定することが出来る。具体的な方法の一例として、マウスCXCR3(mCXCR3)を発現するBa/F3トランスフェクタント細胞(以下BaF3/mCXCR3)またはヒトCXCR3(hCXCR3)を発現するBa/F3トランスフェクタント細胞(以下BaF3/hCXCR3)とHTS TranswellTM-96 Permeable Supports with 5.0μm Pore Polycarbonate Membrane (Cat. 3387、Corning) を用い、対象タンパク質をアナライトとする。分析対象となる各アナライトの溶液中終濃度が33nM, 100 nM, 300 nM, 1000 nMから選ばれる濃度になるように調整された後、それぞれ235 μLの溶液がLower chamberに移される。その後、Upper chamberにBaF3/mCXCR3またはBaF3/hCXCR3細胞を2.0×105 cells/wellとなるように75 μL/wellで播き、6時間または3時間反応が行われる。反応は5%炭酸ガス、37℃条件下で行われる。3時間、6時間、または18時間の反応後、Lower chamber中の溶液100 μLをOptiPlate-96(Cat. 6005299、PerkinElmer)に移し、CellTiter-GloTM Luminescent Cell Viability Assay溶液(Cat. G7571、Promega)を100 μL加える。室温で10分反応させた後、SpectraMax M3 マルチモードマイクロプレートリーダー(Molecular Devices)で発光値を測定し、Lower chamberへの細胞の遊走度が評価される。Lower chamberへ遊走した細胞の量は発光強度で反映される。
【0043】
特定の態様において、本明細書で提供されるCXCR3リガンドのCXCR3を発現する細胞を遊走させる活性は、天然ヒトCXCL10のCXCR3を発現する細胞を遊走させる活性の30%以上である。具体的には、天然ヒトCXCL10をコントロールとして前記CXCR3を発現する細胞を遊走させる活性の分析系に含め、測定に使用されるCXCR3細胞の状態を揃えるために、活性を対比したいCXCR3リガンドとコントロールの、同じ実験回から得られる発光強度を比較することが好ましい。天然ヒトCXCL10のCXCR3を発現する細胞を遊走させる活性の30%以上は、前記CXCR3を発現する細胞を遊走させる活性の分析系中のアナライト濃度を制限するものではないが、100 nM, 300 nM, 1000 nMの少なくとも一つの濃度において天然ヒトCXCL10のCXCR3を発現する細胞を遊走させる活性の30%以上を指すことが出来る。
CXCR3リガンドを含む融合タンパク質をCXCR3を発現する細胞を遊走させる活性分析のアナライトとするとき、コントロールとなる天然ヒトCXCL10についても、CXCR3リガンドを含む融合タンパク質と同様な分子フォーマットにする(本明細書で提供されるCXCR3リガンドの代わりに天然ヒトCXCL10を使用し融合タンパク質のコントロールを作製する)ことが好ましい。
【0044】
特定の態様において、本明細書で提供されるCXCR3リガンドのCXCR3を発現する細胞を遊走させる活性は、天然ヒトCXCL11のCXCR3を発現する細胞を遊走させる活性の25%以上である。具体的には、天然ヒトCXCL11をコントロールとして前記CXCR3を発現する細胞を遊走させる活性の分析系に含め、測定に使用されるCXCR3細胞の状態を揃えるために、活性を対比したいCXCR3リガンドとコントロールの、同じ実験回から得られる発光強度を比較することが好ましい。天然ヒトCXCL11のCXCR3を発現する細胞を遊走させる活性の25%以上は、前記CXCR3を発現する細胞を遊走させる活性の分析系中のアナライト濃度を制限するものではないが、33 nM, 100 nM, 300 nMの少なくとも一つの濃度において天然ヒトCXCL11のCXCR3を発現する細胞を遊走させる活性の25%以上を指すことが出来る。
CXCR3リガンドを含む融合タンパク質をCXCR3を発現する細胞を遊走させる活性分析のアナライトとするとき、コントロールとなる天然ヒトCXCL11についても、CXCR3リガンドを含む融合タンパク質と同様な分子フォーマットにする(本明細書で提供されるCXCR3リガンドの代わりに天然ヒトCXCL11を使用し融合タンパク質のコントロールを作製する)ことが好ましい。
【0045】
特定の態様において、本明細書で提供されるCXCR3リガンドのCXCR3を発現する細胞を遊走させる活性は、hITIPのCXCR3を発現する細胞を遊走させる活性の25%以上である。具体的には、hITIPをコントロールとして前記CXCR3を発現する細胞を遊走させる活性の分析系に含め、測定に使用されるCXCR3細胞の状態を揃えるために、活性を対比したいCXCR3リガンドとコントロールの、同じ実験回から得られる発光強度を比較することが好ましい。hITIPのCXCR3を発現する細胞を遊走させる活性の25%以上は、前記CXCR3を発現する細胞を遊走させる活性の分析系中のアナライト濃度を制限するものではないが、33 nM, 100 nM, 300 nMの少なくとも一つの濃度においてhITIPのCXCR3を発現する細胞を遊走させる活性の25%以上を指すことが出来る。
CXCR3リガンドを含む融合タンパク質をCXCR3を発現する細胞を遊走させる活性分析のアナライトとするとき、コントロールとなるhITIPについても、CXCR3リガンドを含む融合タンパク質と同様な分子フォーマットにする(本明細書で提供されるCXCR3リガンドの代わりにhITIPを使用し融合タンパク質のコントロールを作製する)ことが好ましい。
【0046】
特定の態様において、本明細書で提供されるCXCR3リガンドのCXCR3を発現する細胞を遊走させる活性が最大となるときのCXCR3リガンド濃度は、天然ヒトCXCL10、天然ヒトCXCL11、hITIPから選ばれる少なくとも一種類のタンパク質のCXCR3を発現する細胞を遊走させる活性が最大となるときの当該タンパク質の濃度より低い。
【0047】
特定の態様において、本明細書で提供されるCXCR3リガンドは、N末端から2番目のアミノ酸がPではない。特定の態様において、本明細書で提供されるCXCR3リガンドは、N末端から2番目のアミノ酸がAではない。
【0048】
特定の態様において、本明細書で提供されるCXCR3リガンドは下記(a1)から(a7):
(a1) V-X1-L(X1はF、G、I、K、L、M、T、V、W、またはYである);
(a2) X2-V-P(X2はA、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、またはYである);
(a3) V-X3-P(X3はA、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W、またはYである);
(a4) P-L-S;
(a5) X4-F-P(X4はA、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、S、T、V、W、またはYである);
(a6) F-X5-M(X5はA、D、E、G、H、I、M、N、Q、R、S、T、V、W、またはYである);
(a7) F-X6-P(X6はA、D、E、F、G、H、L、M、N、P、Q、S、T、W、またはYである);
のいずれかの配列をN末端に有する。
【0049】
特定の態様において、本明細書で提供されるCXCR3リガンドは、下記(b1)から(b7):
(b1) V-X1-L-S-R-T-V-R(X1はF、G、I、K、L、M、T、V、W、またはYである);
(b2) X2-V-P-L-S-R-T-V-R(X2はA、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、またはYである);
(b3) V-X3-P-L-S-R-T-V-R(X3はA、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W、またはYである);
(b4) P-L-S-R-T-V-R;
(b5) X4-F-P-M-F-K-R-G-R(X4はA、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、S、T、V、W、またはYである);
(b6) F-X5-M-F-K-R-G-R(X5はA、D、E、G、H、I、M、N、Q、R、S、T、V、W、またはYである);
(b7) F-X6-P-M-F-K-R-G-R(X6はA、D、E、F、G、H、L、M、N、P、Q、S、T、W、またはYである);
のいずれかの配列をN末端に有する。
【0050】
特定の態様において、本明細書で提供されるCXCR3リガンドは下記(a1)から(a5):
(a1) V-X1-L(X1はF、G、I、L、M、T、V、W、またはYである);
(a2) X2-V-P(X2はA、G、I、L、N、Q、S、T、またはWである);
(a3) V-X3-P(X3はA、F、G、I、M、P、T、またはVである);
(a4) P-L-S;
(a5) X4-F-P(X4はA、D、E、G、M、N、Q、S、T、V、またはYである);
のいずれかの配列をN末端に有する。
【0051】
特定の態様において、本明細書で提供されるCXCR3リガンドは下記(b1)から(b5):
(b1) V-X1-L-S-R-T-V-R(X1はF、G、I、L、M、T、V、W、またはYである);
(b2) X2-V-P-L-S-R-T-V-R(X2はA、G、I、L、N、Q、S、T、またはWである);
(b3) V-X3-P-L-S-R-T-V-R(X3はA、F、G、I、M、P、T、またはVである);
(b4) P-L-S-R-T-V-R;
(b5) X4-F-P-M-F-K-R-G-R(X4はA、D、E、G、M、N、Q、S、T、V、またはYである);
のいずれかの配列をN末端に有する。
【0052】
特定の態様において、本明細書で提供されるCXCR3リガンドは、C-X-Cモチーフを有する。C-X-Cモチーフに含まれる二つのシステインは、それぞれCXCR3リガンドに含まれるC-X-Cモチーフ以外のシステインとジスルフィド結合を形成することが出来る。CXCR3リガンド中のC-X-Cモチーフは、C-T-C(Cys-Thr-Cys)、C-L-C(Cys-Leu-Cys)、およびC-S-C(Cys-Ser-Cys)から選ぶことができる。
【0053】
CXCR3リガンド中のC-X-Cモチーフはまた、下記(b1)から(b7):
(b1) V-X1-L-S-R-T-V-R(X1はF、G、I、K、L、M、T、V、W、またはYである);
(b2) X2-V-P-L-S-R-T-V-R(X2はA、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、またはYである);
(b3) V-X3-P-L-S-R-T-V-R(X3はA、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W、またはYである);
(b4) P-L-S-R-T-V-R;
(b5) X4-F-P-M-F-K-R-G-R(X4はA、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、S、T、V、W、またはYである);
(b6) F-X5-M-F-K-R-G-R(X5はA、D、E、G、H、I、M、N、Q、R、S、T、V、W、またはYである);
(b7) F-X6-P-M-F-K-R-G-R(X6はA、D、E、F、G、H、L、M、N、P、Q、S、T、W、またはYである);
のいずれかのN末端配列のC末端となりに位置することができる。
【0054】
CXCR3リガンド中のC-X-Cモチーフはまた、下記(b1)から(b5):
(b1) V-X1-L-S-R-T-V-R(X1はF、G、I、L、M、T、V、W、またはYである);
(b2) X2-V-P-L-S-R-T-V-R(X2はA、G、I、L、N、Q、S、T、またはWである);
(b3) V-X3-P-L-S-R-T-V-R(X3はA、F、G、I、M、P、T、またはVである);
(b4) P-L-S-R-T-V-R;
(b5) X4-F-P-M-F-K-R-G-R(X4はA、D、E、G、M、N、Q、S、T、V、またはYである);
のいずれかの配列のC末端となりに位置することができる。
【0055】
特定の態様において、本明細書で提供されるCXCR3リガンドは、C-X-CモチーフのC末端に更に下記(c1)から(c5):
(c1) 配列番号:60の12番アミノ酸から77番アミノ酸までの配列;
(c2) 配列番号:61の12番アミノ酸から73番アミノ酸までの配列;
(c3) 配列番号:62の12番アミノ酸から103番アミノ酸までの配列;
(c4) 配列番号:1の12番アミノ酸から77番アミノ酸までの配列;
(c5) 配列番号:63の12番アミノ酸から77番アミノ酸までの配列;
のいずれかを有することができる。
【0056】
特定の態様において、本明細書で提供されるCXCR3リガンドは、CXCL10改変体、CXCL11改変体、CXCL9改変体、hITIP改変体及びそれらの改変体から作製されたキメラタンパク質のいずれかである。
【0057】
特定の態様において、本明細書で提供されるCXCR3リガンドは、下記(d1)から(d7):
(d1) 配列番号:2~57、92~147、149~204のいずれか一つで示す配列;
(d2) 配列番号:60と90%以上の配列同一性を示す配列;
(d3) 配列番号:61と90%以上の配列同一性を示す配列;
(d4) 配列番号:62と90%以上の配列同一性を示す配列;
(d5) 配列番号:63と90%以上の配列同一性を示す配列;
(d6) 配列番号:1と90%以上の配列同一性を示す配列;
(d7) 配列番号1~57、60~63、92~147、149~204から選ばれる一つの配列に対して、アミノ酸の置換、挿入または欠失を10個以下含む配列;
のいずれかである。
【0058】
特定の態様において、本明細書で提供されるCXCR3リガンドは、配列番号:1、60~63のいずれか一つの配列と90%以上の配列同一性、95%以上の配列同一性、96%以上の配列同一性、97%以上の配列同一性、98%以上の配列同一性、または99%以上の配列同一性を示す配列である。
【0059】
CXCR3リガンド変異体
特定の態様において、本明細書で提供されるCXCR3リガンドのアミノ酸配列変異体も、考慮の内である。CXCR3リガンドのアミノ酸配列変異体は、CXCR3リガンドをコードするヌクレオチド配列に適切な修飾を導入すること、または、ペプチド合成によって、調製されてもよい。そのような修飾は、例えば、CXCR3リガンドのアミノ酸配列からの欠失、および/または抗体のアミノ酸配列中への挿入、および/または抗体のアミノ酸配列中の残基の置換を含む。最終構築物が所望の特徴(例えば、DPPIVに対する耐性、またはCXCR3発現細胞を遊走させる活性)を備えることを前提に、欠失、挿入、および置換の任意の組合せが、最終構築物に至るために行われ得る。
【0060】
置換、挿入、および欠失変異体
特定の態様において、1つまたは複数のアミノ酸置換を有するCXCR3リガンド変異体が提供される。保存的置換を、表1の「好ましい置換」の見出しの下に示す。より実質的な変更を、表1の「例示的な置換」の見出しの下に提供するとともに、アミノ酸側鎖のクラスに言及しつつ下で詳述する。アミノ酸置換は目的のCXCR3リガンドに導入されてもよく、産物は、例えば、保持/改善されたDPPIVに対する耐性、またはCXCR3発現細胞を遊走させる活性などの、所望の活性についてスクリーニングされてもよい。
【0061】
【表1】
【0062】
アミノ酸は、共通の側鎖特性によって群に分けることができる:
(1) 疎水性:ノルロイシン、メチオニン (Met)、アラニン (Ala)、バリン (Val)、ロイシン (Leu)、イソロイシン (Ile);
(2) 中性の親水性:システイン (Cys)、セリン (Ser)、トレオニン (Thr)、アスパラギン (Asn)、グルタミン (Gln);
(3) 酸性:アスパラギン酸 (Asp)、グルタミン酸 (Glu);
(4) 塩基性:ヒスチジン (His)、リジン (Lys)、アルギニン (Arg);
(5) 鎖配向に影響する残基:グリシン (Gly)、プロリン (Pro);
(6) 芳香族性:トリプトファン (Trp)、チロシン (Tyr)、フェニルアラニン (Phe)。
非保存的置換は、これらのクラスの1つのメンバーを、別のクラスのものに交換することをいう。
【0063】
特定の態様において、置換、挿入、または欠失は、そのような改変がCXCR3リガンドの能力を実質的に減少させない限り、1つまたは複数の改変が行われ得る。上記のCXCRリガンド変異体の特定の態様において、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、もしくは10つのアミノ酸改変を含む。
【0064】
アミノ酸配列同一性
参照ポリペプチド配列に対する「パーセント (%) アミノ酸配列同一性」は、最大のパーセント配列同一性を得るように配列を整列させてかつ必要ならギャップを導入した後の、かつ、いかなる保存的置換も配列同一性の一部と考えないとしたときの、参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基の、百分率比として定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決める目的のアラインメントは、当該技術分野における技術の範囲内にある種々の方法、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、Megalign (DNASTAR) ソフトウェア、またはGENETYX(登録商標)(株式会社ゼネティックス)などの、公に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用することにより達成することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列のアラインメントをとるための適切なパラメーターを決定することができる。
【0065】
ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、ジェネンテック社の著作であり、そのソースコードは米国著作権庁 (U.S. Copyright Office, Wasington D.C., 20559) に使用者用書類とともに提出され、米国著作権登録番号TXU510087として登録されている。ALIGN-2プログラムは、ジェネンテック社 (Genentech, Inc., South San Francisco, California) から公に入手可能であるし、ソースコードからコンパイルしてもよい。ALIGN-2プログラムは、Digital UNIX V4.0Dを含むUNIXオペレーティングシステム上での使用のためにコンパイルされる。すべての配列比較パラメーターは、ALIGN-2プログラムによって設定され、変動しない。
アミノ酸配列比較にALIGN-2が用いられる状況では、所与のアミノ酸配列Aの、所与のアミノ酸配列Bへの、またはそれとの、またはそれに対する%アミノ酸配列同一性(あるいは、所与のアミノ酸配列Bへの、またはそれとの、またはそれに対する、ある%アミノ酸配列同一性を有するまたは含む所与のアミノ酸配列A、ということもできる)は、次のように計算される:分率X/Yの100倍。ここで、Xは配列アラインメントプログラムALIGN-2によって、当該プログラムのAおよびBのアラインメントにおいて同一である一致としてスコアされたアミノ酸残基の数であり、YはB中のアミノ酸残基の全数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、AのBへの%アミノ酸配列同一性は、BのAへの%アミノ酸配列同一性と等しくないことが、理解されるであろう。別段特に明示しない限り、本明細書で用いられるすべての%アミノ酸配列同一性値は、直前の段落で述べたとおりALIGN-2コンピュータプログラムを用いて得られるものである。
【0066】
CXCR3リガンドにDPPIVに対する耐性を付与する方法
本開示はまた、CXCR3リガンドにDPPIVに対する耐性を付与する方法に関する。
特定の態様において、本明細書で提供されるCXCR3リガンドにDPPIVに対する耐性を付与する方法は、親CXCR3リガンドのN末端付近配列を改変することを含む。
【0067】
特定の態様において、本明細書で提供されるCXCR3リガンドにDPPIVに対する耐性を付与する方法に使用される親CXCR3リガンドのN末端から2番目のアミノ酸がPあるいはAである。特定の態様において、本明細書で提供されるCXCR3リガンドにDPPIVに対する耐性を付与する方法に使用される親CXCR3リガンドのN末端から1番目のアミノ酸がVである。より具体的な態様において、本明細書で提供されるCXCR3リガンドにDPPIVに対する耐性を付与する方法に使用される親CXCR3リガンドのN末端配列はV-P-LまたはV-A-Lである。更に具体的な態様において、本明細書で提供されるCXCR3リガンドにDPPIVに対する耐性を付与する方法に使用される親CXCR3リガンドのN末端配列はV-P-L-S-R-T-V-R(配列番号:86)またはV-A-L-S-R-T-V-R(配列番号:87)である。
【0068】
特定の態様において、本明細書で提供されるCXCR3リガンドにDPPIVに対する耐性を付与する方法に使用される親CXCR3リガンドのN末端から2番目のアミノ酸がPである。特定の態様において、本明細書で提供されるCXCR3リガンドにDPPIVに対する耐性を付与する方法に使用される親CXCR3リガンドのN末端から1番目のアミノ酸がFである。より具体的な態様において、本明細書で提供されるCXCR3リガンドにDPPIVに対する耐性を付与する方法に使用される親CXCR3リガンドのN末端配列はF-P-Mである。更に具体的な態様において、本明細書で提供されるCXCR3リガンドにDPPIVに対する耐性を付与する方法に使用される親CXCR3リガンドのN末端配列はF-P-M-F-K-R-G-R(配列番号:91)である。
【0069】
特定の態様において、本明細書で提供されるCXCR3リガンドにDPPIVに対する耐性を付与する方法に使用される親CXCR3リガンドは、C-X-Cモチーフを有する。C-X-Cモチーフに含まれる二つのシステインは、それぞれ親CXCR3リガンドに含まれるC-X-Cモチーフ以外のシステインとジスルフィド結合を形成することが出来る。親CXCR3リガンド中のC-X-Cモチーフは、C-T-C(Cys-Thr-Cys)、C-L-C(Cys-Leu-Cys)、およびC-S-C(Cys-Ser-Cys)から選ぶことができる。具体的な態様において、親CXCR3リガンド中のC-X-Cモチーフは、N末端配列V-P-L-S-R-T-V-R(配列番号:86)またはV-A-L-S-R-T-V-R(配列番号:87)またはF-P-M-F-K-R-G-R(配列番号:91)のC末端となりに位置することができる。
【0070】
特定の態様において、本明細書で提供されるCXCR3リガンドにDPPIVに対する耐性を付与する方法に使用される親CXCR3リガンドは、C-X-CモチーフのC末端に更に下記(c1)から(c5):
(c1) 配列番号:60の12番アミノ酸から77番アミノ酸までの配列;
(c2) 配列番号:61の12番アミノ酸から73番アミノ酸までの配列;
(c3) 配列番号:62の12番アミノ酸から103番アミノ酸までの配列;
(c4) 配列番号:1の12番アミノ酸から77番アミノ酸までの配列;
(c5) 配列番号:63の12番アミノ酸から77番アミノ酸までの配列;
のいずれかを有することができる。
【0071】
特定の態様において、本明細書で提供されるCXCR3リガンドにDPPIVに対する耐性を付与する方法に使用される親CXCR3リガンドは、天然CXCL10、天然CXCL11、天然CXCL9、CXCL10改変体、CXCL11改変体、CXCL9改変体及びこれらから作製されたキメラタンパク質から選ばれる。
【0072】
特定の態様において、本明細書で提供されるCXCR3リガンドにDPPIVに対する耐性を付与する方法は、下記のいずれかを含む:
(1) 親CXCR3リガンドのN末端から2番目のアミノ酸をPまたはAからF、G、I、K、L、M、T、V、W、またはYに置換する;
(2) 親CXCR3リガンドのN末端に、更にA、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、またはYを付加する;
(3) 親CXCR3リガンドのN末端1番目、2番目のアミノ酸の間に、A、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W、またはYを挿入する;
(4) 親CXCR3リガンドのN末端のVを欠失させる。
言い換えれば、本明細書は、CXCR3リガンドにDPPIVに対する耐性を付与するための、下記のいずれか:
(1) 親CXCR3リガンドのN末端から2番目のアミノ酸をPまたはAからF、G、I、K、L、M、T、V、W、またはYに置換すること;
(2) 親CXCR3リガンドのN末端に、更にA、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、またはYを付加すること;
(3) 親CXCR3リガンドのN末端1番目、2番目のアミノ酸の間に、A、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W、またはYを挿入すること;
(4) 親CXCR3リガンドのN末端のVを欠失させること;
の使用を提供する。
【0073】
特定の態様において、本明細書で提供されるCXCR3リガンドにDPPIVに対する耐性を付与する方法は、下記のいずれかを含む:
(1) 親CXCR3リガンドのN末端から2番目のアミノ酸をPまたはAからF、G、I、L、M、T、V、W、またはYに置換する;
(2) 親CXCR3リガンドのN末端に、更にA、G、I、L、N、Q、S、T、またはWを付加する;
(3) 親CXCR3リガンドのN末端1番目、2番目のアミノ酸の間に、A、F、G、I、M、P、T、またはVを挿入する;
(4) 親CXCR3リガンドのN末端のVを欠失させる。
言い換えれば、本明細書は、CXCR3リガンドにDPPIVに対する耐性を付与するための、下記のいずれか:
(1) 親CXCR3リガンドのN末端から2番目のアミノ酸をPまたはAからF、G、I、L、M、T、V、W、またはYに置換すること;
(2) 親CXCR3リガンドのN末端に、更にA、G、I、L、N、Q、S、T、またはWを付加すること;
(3) 親CXCR3リガンドのN末端1番目、2番目のアミノ酸の間に、A、F、G、I、M、P、T、またはVを挿入すること;
(4) 親CXCR3リガンドのN末端のVを欠失させること;
の使用を提供する。
【0074】
特定の態様において、本明細書で提供されるCXCR3リガンドにDPPIVに対する耐性を付与する方法は、下記のいずれかを含む:
(1) 前記親CXCR3リガンドのN末端に、更にA、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、S、T、V、W、またはYを付加する;
(2) 前記親CXCR3リガンドのN末端から2番目のアミノ酸をPからA、D、E、G、H、I、M、N、Q、R、S、T、V、W、またはYに置換する;
(3) 前記親CXCR3リガンドのN末端1番目、2番目のアミノ酸の間に、A、D、E、F、G、H、L、M、N、P、Q、S、T、W、またはYを挿入する。
言い換えれば、本明細書は、CXCR3リガンドにDPPIVに対する耐性を付与するための、下記のいずれか:
(1) 前記親CXCR3リガンドのN末端に、更にA、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、S、T、V、W、またはYを付加すること;
(2) 前記親CXCR3リガンドのN末端から2番目のアミノ酸をPからA、D、E、G、H、I、M、N、Q、R、S、T、V、W、またはYに置換すること;
(3) 前記親CXCR3リガンドのN末端1番目、2番目のアミノ酸の間に、A、D、E、F、G、H、L、M、N、P、Q、S、T、W、またはYを挿入すること;
の使用を提供する。
【0075】
特定の態様において、本明細書で提供されるCXCR3リガンドにDPPIVに対する耐性を付与する方法は、前記親CXCR3リガンドのN末端に、更にA、D、E、G、M、N、Q、S、T、V、またはYを付加することを含む。
言い換えれば、本明細書は、CXCR3リガンドにDPPIVに対する耐性を付与するための、前記親CXCR3リガンドのN末端に、更にA、D、E、G、M、N、Q、S、T、V、またはYを付加することの使用を提供する。
【0076】
CXCR3リガンドを含む融合タンパク質
本開示の一態様では、CXCR3リガンドを含む融合タンパク質に関する。具体的な態様において、本開示の融合タンパク質は、CXCR3リガンドをN末端に含む融合タンパク質に関する。本開示の融合タンパク質は、CXCR3リガンドと抗体が融合されたものでもよく、CXCR3リガンドと抗体Fc領域やアルブミン等の他種タンパク質と融合されたものでも良い。具体的な一例として、例えば、CXCR3リガンドのC末端に、抗体(全長抗体や抗体断片を含む)や抗体Fc領域、アルブミン等の他種タンパク質が融合された融合タンパク質が挙げられる。CXCR3リガンドを含む融合タンパク質は、融合させたタンパク質に結合する物質を利用して精製することができる。たとえば、抗体Fc領域と融合させた場合、固定化プロテインAへの吸着を利用してCXCR3リガンドを回収することができる。
【0077】
本開示中の融合タンパク質において、CXCR3リガンドと融合相手をリンカー介して融合させることが出来る。CXCR3リガンドと融合相手を融合させるとき用いられるリンカーとして、遺伝子工学により導入し得る任意のペプチドリンカー、または合成化合物リンカー(例えば、Protein Engineering, 9 (3), 299-305, 1996参照)に開示されるリンカー等を用いることができる。
ペプチドリンカーの長さは特に限定されず、目的に応じて当業者が適宜選択することが可能である。例として、それだけに限定されないが、例えば、ペプチドリンカーの場合:
Ser
Gly・Ser(GS)
Ser・Gly(SG)
Gly・Gly・Ser(GGS)
Gly・Ser・Gly(GSG)
Ser・Gly・Gly(SGG)
Gly・Ser・Ser(GSS)
Ser・Ser・Gly(SSG)
Ser・Gly・Ser(SGS)
Gly・Gly・Gly・Ser(GGGS、配列番号:64)
Gly・Gly・Ser・Gly(GGSG、配列番号:65)
Gly・Ser・Gly・Gly(GSGG、配列番号:66)
Ser・Gly・Gly・Gly(SGGG、配列番号:67)
Gly・Ser・Ser・Gly(GSSG、配列番号:68)
Gly・Gly・Gly・Gly・Ser(GGGGS、配列番号:69)
Gly・Gly・Gly・Ser・Gly(GGGSG、配列番号:70)
Gly・Gly・Ser・Gly・Gly(GGSGG、配列番号:71)
Gly・Ser・Gly・Gly・Gly(GSGGG、配列番号:72)
Gly・Ser・Gly・Gly・Ser(GSGGS、配列番号:73)
Ser・Gly・Gly・Gly・Gly(SGGGG、配列番号:74)
Gly・Ser・Ser・Gly・Gly(GSSGG、配列番号:75)
Gly・Ser・Gly・Ser・Gly(GSGSG、配列番号:76)
Ser・Gly・Gly・Ser・Gly(SGGSG、配列番号:77)
Gly・Ser・Ser・Ser・Gly(GSSSG、配列番号:78)
Gly・Gly・Gly・Gly・Gly・Ser(GGGGGS、配列番号:79)
Ser・Gly・Gly・Gly・Gly・Gly(SGGGGG、配列番号:80)
Gly・Gly・Gly・Gly・Gly・Gly・Ser(GGGGGGS、配列番号:81)
Ser・Gly・Gly・Gly・Gly・Gly・Gly(SGGGGGG、配列番号:82)
(Gly・Gly・Gly・Gly・Ser(GGGGS、配列番号:69))n
(Ser・Gly・Gly・Gly・Gly(SGGGG、配列番号:74))n
[nは1以上の整数である]等を挙げることができる。但し、ペプチドリンカーの長さや配列は目的に応じて当業者が適宜選択することができる。
【0078】
合成化合物リンカー(化学架橋剤)は、ペプチドの架橋に通常用いられている架橋剤、例えばN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、ジスクシンイミジルスベレート(DSS)、ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート(BS3)、ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)(DSP)、ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート)(DTSSP)、エチレングリコールビス(スクシンイミジルスクシネート)(EGS)、エチレングリコールビス(スルホスクシンイミジルスクシネート)(スルホ-EGS)、ジスクシンイミジル酒石酸塩(DST)、ジスルホスクシンイミジル酒石酸塩(スルホ-DST)、ビス[2-(スクシンイミドオキシカルボニルオキシ)エチル]スルホン(BSOCOES)、ビス[2-(スルホスクシンイミドオキシカルボニルオキシ)エチル]スルホン(スルホ-BSOCOES)などであり、これらの架橋剤は市販されている。
【0079】
抗体
本明細書で用語「抗体」は、最も広い意味で使用され、所望の抗原結合活性を示す限りは、これらに限定されるものではないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)および抗体断片を含む、種々の抗体構造を包含する。
【0080】
抗体断片
「抗体断片」は、完全抗体が結合する抗原に結合する当該完全抗体の一部分を含む、当該完全抗体以外の分子のことをいう。抗体断片の例は、これらに限定されるものではないが、Fv、Fab、Fab'、Fab’-SH、F(ab')2;ダイアボディ;線状抗体;単鎖抗体分子(例えば、scFv);および、抗体断片から形成された多重特異性抗体を含む。
【0081】
Fc領域
本明細書で用語「Fc領域」は、少なくとも定常領域の一部分を含む免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために用いられる。この用語は、天然型配列のFc領域および変異体Fc領域を含む。一態様において、ヒトIgG重鎖Fc領域はCys226から、またはPro230から、重鎖のカルボキシル末端まで延びる。ただし、Fc領域のC末端のリジン (Lys447) またはグリシン‐リジン(Gly446-Lys447)は、存在していてもしていなくてもよい。本明細書では別段特定しない限り、Fc領域または定常領域中のアミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD 1991 に記載の、EUナンバリングシステム(EUインデックスとも呼ばれる)にしたがう。本発明において、Fc領域は、各種の改変を含むことができる。たとえば、Fcがヘテロ会合化した分子の収量を高めるための改変や、FcγRとの結合を抑制するための改変が公知である。
【0082】
核酸/ポリヌクレオチド
「単離された」核酸は/ポリヌクレオチド、そのもともとの環境の成分から分離された核酸/ポリヌクレオチド分子のことをいう。単離された核酸/ポリヌクレオチドは、その核酸/ポリヌクレオチド分子を通常含む細胞の中に含まれた核酸/ポリヌクレオチド分子を含むが、その核酸/ポリヌクレオチド分子は染色体外に存在しているかまたは本来の染色体上の位置とは異なる染色体上の位置に存在している。
【0083】
本開示はまた、CXCR3リガンドをエンコードする核酸/ポリヌクレオチド、あるいは当該CXCR3リガンドを含む融合タンパク質をエンコードする核酸/ポリヌクレオチドにも関する。
「CXCR3リガンドをコードする核酸/ポリヌクレオチド」は、CXCR3リガンドをコードする1つまたは複数の核酸分子のことをいい、1つのベクターまたは別々のベクターに乗っている核酸分子、および、宿主細胞中の1つまたは複数の位置に存在している核酸分子を含む。
【0084】
ベクター
本明細書で用いられる用語「ベクター」は、それが連結されたもう1つの核酸を増やすことができる、核酸分子のことをいう。この用語は、自己複製核酸構造としてのベクター、および、それが導入された宿主細胞のゲノム中に組み入れられるベクターを含む。あるベクターは、自身が動作的に連結された核酸の、発現をもたらすことができる。そのようなベクターは、本明細書では「発現ベクター」とも称される。
【0085】
宿主細胞
用語「宿主細胞」、「宿主細胞株」、および「宿主細胞培養物」は、相互に交換可能に用いられ、外来核酸を導入された細胞(そのような細胞の子孫を含む)のことをいう。宿主細胞は「形質転換体」および「形質転換細胞」を含み、これには初代の形質転換細胞および継代数によらずその細胞に由来する子孫を含む。子孫は、親細胞と核酸の内容において完全に同一でなくてもよく、変異を含んでいてもよい。オリジナルの形質転換細胞がスクリーニングされたまたは選択された際に用いられたものと同じ機能または生物学的活性を有する変異体子孫も、本明細書では含まれる。
【0086】
本開示はまた、CXCR3リガンドをエンコードする核酸/ポリヌクレオチド、あるいは当該CXCR3リガンドを含む融合タンパク質をエンコードする核酸/ポリヌクレオチドを含む宿主細胞に関する。
【0087】
CXCR3リガンドの製造方法
本開示におけるポリヌクレオチドは、通常、適当なベクターへ担持(挿入)され、宿主細胞へ導入される。該ベクターとしては、挿入した核酸を安定に保持するものであれば特に制限されず、例えば宿主に大腸菌を用いるのであれば、クローニング用ベクターとしてはpBluescriptベクター(Stratagene社製)などが好ましいが、市販の種々のベクターを利用することができる。
本開示のCXCR3リガンドまたはCXCR3リガンドを含む融合タンパク質を生産する目的においてベクターを用いる場合には、特に発現ベクターが有用である。発現ベクターとしては、試験管内、大腸菌内、培養細胞内、生物個体内でリガンド結合分子を発現するベクターであれば特に制限されないが、例えば、試験管内発現であればpBESTベクター(プロメガ社製)、大腸菌であればpETベクター(Invitrogen社製)、培養細胞であればpME18S-FL3ベクター(GenBank Accession No. AB009864)、生物個体であればpME18Sベクター(Mol Cell Biol. 8:466-472(1988))などが好ましい。ベクターへの本開示のDNAの挿入は、常法により、例えば、制限酵素サイトを用いたリガーゼ反応により行うことができる(Current protocols in Molecular Biology edit. Ausubel et al. (1987) Publish. John Wiley & Sons.Section 11.4-11.11)。
上記宿主細胞としては特に制限はなく、目的に応じて種々の宿主細胞が用いられる。CXCR3リガンドまたは融合タンパク質を発現させるための細胞としては、例えば、細菌細胞(例:ストレプトコッカス、スタフィロコッカス、大腸菌、ストレプトミセス、枯草菌)、真菌細胞(例:酵母、アスペルギルス)、昆虫細胞(例:ドロソフィラS2、スポドプテラSF9)、動物細胞(例:CHO、COS、HeLa、C127、3T3、BHK、HEK293、Bowes メラノーマ細胞)および植物細胞を例示することができる。宿主細胞へのベクター導入は、例えば、リン酸カルシウム沈殿法、電気パルス穿孔法(Current protocols in Molecular Biology edit. Ausubel et al. (1987) Publish. John Wiley & Sons.Section 9.1-9.9)、リポフェクタミン法(GIBCO-BRL社製)、マイクロインジェクション法などの公知の方法で行うことが可能である。
宿主細胞において発現したCXCR3リガンドまたは融合タンパク質を小胞体の内腔に、細胞周辺腔に、または細胞外の環境に分泌させるために、適当な分泌シグナルを目的のリガンド結合分子または融合タンパク質に組み込むことができる。これらのシグナルは目的のリガンド結合分子または融合タンパク質に対して内因性であっても、異種シグナルであってもよい。具体的な例として、シグナル配列MNQTAILICCLIFLTLSGIQG(配列番号:83)、MKKSGVLFLLGIILLVLIGVQG(配列番号:84)、MSVKGMAIALAVILCATVVQG(配列番号:85)、またはMGWSCIILFLVATATGVHS(配列番号:148)を使用することが出来る。
上記製造方法におけるCXCR3リガンドまたは融合タンパク質の回収は、本開示のCXCR3リガンドまたは融合タンパク質が培地に分泌される場合は、培地を回収する。本開示のCXCR3リガンドまたは融合タンパク質が細胞内に産生される場合は、その細胞をまず溶解し、その後にCXCR3リガンドまたは融合タンパク質を回収する。
組換え細胞培養物から本開示のCXCR3リガンドまたは融合タンパク質を回収し精製するには、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿、酸抽出、アニオンまたはカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーを含めた公知の方法を用いることができる。
【0088】
本明細書で提供されるCXCR3リガンドはまた、親CXCR3リガンドにDPPIVに対する耐性を付与することにより製造することが出来る。特定の態様において、本明細書で提供されるCXCR3リガンドの製造方法は、親CXCR3リガンドのN末端付近配列を改変することを含む。
【0089】
特定の態様において、本明細書で提供されるCXCR3リガンドの製造方法に使用される親CXCR3リガンドのN末端から2番目のアミノ酸がPあるいはAである。特定の態様において、本明細書で提供されるCXCR3リガンドの製造方法に使用される親CXCR3リガンドのN末端から1番目のアミノ酸がVである。より具体的な態様において、本明細書で提供されるCXCR3リガンドの製造方法に使用される親CXCR3リガンドのN末端配列はV-P-LまたはV-A-Lである。更に具体的な態様において、本明細書で提供されるCXCR3リガンドの製造方法に使用される親CXCR3リガンドのN末端配列はV-P-L-S-R-T-V-R(配列番号:86)またはV-A-L-S-R-T-V-R(配列番号:87)である。
【0090】
特定の態様において、本明細書で提供されるCXCR3リガンドの製造方法に使用される親CXCR3リガンドのN末端から2番目のアミノ酸がPである。特定の態様において、本明細書で提供されるCXCR3リガンドの製造方法に使用される親CXCR3リガンドのN末端から1番目のアミノ酸がFである。より具体的な態様において、本明細書で提供されるCXCR3リガンドの製造方法に使用される親CXCR3リガンドのN末端配列はF-P-Mである。更に具体的な態様において、本明細書で提供されるCXCR3リガンドの製造方法に使用される親CXCR3リガンドのN末端配列はF-P-M-F-K-R-G-R(配列番号:91)である。
【0091】
特定の態様において、本明細書で提供されるCXCR3リガンドの製造方法に使用される親CXCR3リガンドは、C-X-Cモチーフを有する。C-X-Cモチーフに含まれる二つのシステインは、それぞれ親CXCR3リガンドに含まれるC-X-Cモチーフ以外のシステインとジスルフィド結合を形成することが出来る。親CXCR3リガンド中のC-X-Cモチーフは、C-T-C(Cys-Thr-Cys)、C-L-C(Cys-Leu-Cys)、およびC-S-C(Cys-Ser-Cys)から選ぶことができる。具体的な態様において、親CXCR3リガンド中のC-X-Cモチーフは、N末端配列V-P-L-S-R-T-V-R(配列番号:86)またはV-A-L-S-R-T-V-R(配列番号:87)またはF-P-M-F-K-R-G-R(配列番号:91)のC末端となりに位置することができる。
【0092】
特定の態様において、本明細書で提供されるCXCR3リガンドの製造方法に使用される親CXCR3リガンドは、C-X-CモチーフのC末端に更に下記(c1)から(c5):
(c1) 配列番号:60の12番アミノ酸から77番アミノ酸までの配列;
(c2) 配列番号:61の12番アミノ酸から73番アミノ酸までの配列;
(c3) 配列番号:62の12番アミノ酸から103番アミノ酸までの配列;
(c4) 配列番号:1の12番アミノ酸から77番アミノ酸までの配列;
(c5) 配列番号:63の12番アミノ酸から77番アミノ酸までの配列;
のいずれかを有することができる。
【0093】
特定の態様において、本明細書で提供されるCXCR3リガンドの製造方法に使用される親CXCR3リガンドは、天然CXCL10、天然CXCL11、天然CXCL9、CXCL10改変体、CXCL11改変体、CXCL9改変体及びこれらから作製されたキメラタンパク質から選ばれる。
【0094】
特定の態様において、本明細書で提供されるCXCR3リガンドの製造方法は、下記のいずれかを含む:
(1) 親CXCR3リガンドのN末端から2番目のアミノ酸をPまたはAからF、G、I、K、L、M、T、V、W、またはYに置換する;
(2) 親CXCR3リガンドのN末端に、更にA、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、またはYを付加する;
(3) 親CXCR3リガンドのN末端1番目、2番目のアミノ酸の間に、A、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W、またはYを挿入する;
(4) 親CXCR3リガンドのN末端のVを欠失させる。
【0095】
特定の態様において、本明細書で提供されるCXCR3リガンドの製造方法は、下記のいずれかを含む:
(1) 親CXCR3リガンドのN末端から2番目のアミノ酸をPまたはAからF、G、I、L、M、T、V、W、またはYに置換する;
(2) 親CXCR3リガンドのN末端に、更にA、G、I、L、N、Q、S、T、またはWを付加する;
(3) 親CXCR3リガンドのN末端1番目、2番目のアミノ酸の間に、A、F、G、I、M、P、T、またはVを挿入する;
(4) 親CXCR3リガンドのN末端のVを欠失させる。
【0096】
特定の態様において、本明細書で提供されるCXCR3リガンドの製造方法は、下記のいずれかを含む:
(1) 前記親CXCR3リガンドのN末端に、更にA、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、S、T、V、W、またはYを付加する;
(2) 前記親CXCR3リガンドのN末端から2番目のアミノ酸をPからA、D、E、G、H、I、M、N、Q、R、S、T、V、W、またはYに置換する;
(3) 前記親CXCR3リガンドのN末端1番目、2番目のアミノ酸の間に、A、D、E、F、G、H、L、M、N、P、Q、S、T、W、またはYを挿入する。
【0097】
特定の態様において、本明細書で提供されるCXCR3リガンドの製造方法は、前記親CXCR3リガンドのN末端に、更にA、D、E、G、M、N、Q、S、T、V、またはYを付加することを含む。
本明細書で提供されるCXCR3リガンドの製造方法は、具体的な態様において、さらに付加的に、前記改変を含むCXCR3リガンドを回収する工程、あるいは単離する工程を含むこともできる。
【0098】
治療
本明細書で用いられる「治療」(および、その文法上の派生語、例えば「治療する」、「治療すること」など)は、治療される個体の自然経過を改変することを企図した臨床的介入を意味し、予防のためにも、臨床的病態の経過の間にも実施され得る。治療の望ましい効果は、これらに限定されるものではないが、疾患の発生または再発の防止、症状の軽減、疾患による任意の直接的または間接的な病理的影響の減弱、転移の防止、疾患の進行速度の低減、疾患状態の回復または緩和、および寛解または改善された予後を含む。いくつかの態様において、本開示のCXCR3リガンドは、疾患の発症を遅らせる、または疾患の進行を遅くするために用いられる。
【0099】
医薬組成物
用語「薬学的製剤」または「医薬組成物」は、その中に含まれた有効成分の生物学的活性が効果を発揮し得るような形態にある調製物であって、かつ製剤が投与される被験体に許容できない程度に毒性のある追加の要素を含んでいない、調製物のことをいう。
【0100】
薬学的に許容される担体
「薬学的に許容される担体」は、被験体に対して無毒な、薬学的製剤中の有効成分以外の成分のことをいう。薬学的に許容される担体は、これらに限定されるものではないが、緩衝液、賦形剤、安定化剤、または保存剤を含む。
【0101】
CXCR3リガンドまたはCXCR3リガンドを含む融合タンパク質を含む医薬組成物
また本開示は、本開示のCXCR3リガンドおよび医薬的に許容される担体を含む医薬組成物(薬剤)、本開示のCXCR3リガンドを含む融合タンパク質と医薬的に許容される担体を含む医薬組成物(薬剤)にも関する。
【0102】
本開示において、「CXCR3リガンドを含む医薬組成物」との用語は、「CXCR3リガンドを治療対象に投与することを含む疾患の治療方法」と言い換えることも可能であるし、「疾患を治療するための医薬の製造におけるCXCR3リガンドの使用」と言い換えることも可能である。「CXCR3リガンドを含む医薬組成物」との用語を、「疾患を治療するためのCXCR3リガンドの使用」と言い換えることも可能である。
「CXCR3リガンドを含む融合タンパク質を含む医薬組成物」との用語は、「CXCR3リガンドを含む融合タンパク質を治療対象に投与することを含む疾患の治療方法」と言い換えることも可能であるし、「疾患を治療するための医薬の製造におけるCXCR3リガンドを含む融合タンパク質の使用」と言い換えることも可能である。「CXCR3リガンドを含む融合タンパク質を含む医薬組成物」との用語を、「疾患を治療するためのCXCR3リガンドを含む融合タンパク質の使用」と言い換えることも可能である。
【0103】
本開示のいくつかの実施態様において、CXCR3リガンドを含む組成物を個体に投与することが出来る。本開示のいくつかの実施態様において、CXCR3リガンドを含む融合タンパク質を個体に投与することが出来る。
【0104】
本開示の医薬組成物は、当業者に公知の方法を用いて製剤化され得る。例えば、水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、又は懸濁液剤の注射剤の形で非経口的に使用され得る。例えば、薬理学上許容される担体もしくは媒体、具体的には、滅菌水や生理食塩水、植物油、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、結合剤等と適宜組み合わせて、一般に認められた製薬実施に要求される単位用量形態で混和することによって製剤化され得る。これら製剤における有効成分量は、指示された範囲の適当な容量が得られるように設定される。
【0105】
注射のための無菌組成物は注射用蒸留水のようなベヒクルを用いて通常の製剤実施にしたがって処方され得る。注射用の水溶液としては、例えば生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬(例えばD-ソルビトール、D-マンノース、D-マンニトール、塩化ナトリウム)を含む等張液が挙げられる。適切な溶解補助剤、例えばアルコール(エタノール等)、ポリアルコール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、非イオン性界面活性剤(ポリソルベート80(TM)、HCO-50等)が併用され得る。
油性液としてはゴマ油、大豆油が挙げられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル及び/またはベンジルアルコールも併用され得る。また、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液及び酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例えば、塩酸プロカイン)、安定剤(例えば、ベンジルアルコール及びフェノール)、酸化防止剤と配合され得る。調製された注射液は通常、適切なアンプルに充填される。
【0106】
本開示の医薬組成物は、好ましくは非経口投与により投与される。例えば、注射剤型、経鼻投与剤型、経肺投与剤型、経皮投与型の組成物が投与される。例えば、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射などにより全身または局部的に投与され得る。
投与方法は、患者の年齢、症状により適宜選択され得る。CXCR3リガンドを含有する医薬組成物の投与量は、例えば、一回につき体重1 kgあたり0.0001 mgから1000 mgの範囲に設定され得る。または、例えば、患者あたり0.001~100000 mgの投与量が設定され得るが、本開示はこれらの数値に必ずしも制限されるものではない。投与量及び投与方法は、患者の体重、年齢、症状などにより変動するが、当業者であればそれらの条件を考慮し適当な投与量及び投与方法を設定することが可能である。
【実施例
【0107】
以下は、本開示の方法および組成物の実施例である。上述の一般的な記載に照らし、種々の他の態様が実施され得ることが、理解されるであろう。
【0108】
実施例1.ヒトCXCL10(hCXCL10)改変体およびhCXCL10改変体Fc fusion の構築
ヒトCXCL10(hCXCL10、Refseq: NP_001556.2, Uniprot ID: P02778)を、Furinプロテアーゼに耐性を有するように変異させたhCXCL10改変体hCXCL10R75A(配列番号:1)、および、hCXCL10R75AのDipeptidyl peptidase IV(DPPIV)認識・切断サイトおよびその周辺にアミノ酸改変が導入されたヒトCXCL10改変体が構築された(DPPIV認識・切断サイトおよびその周辺のアミノ酸改変位置を図1B、設計されたヒトCXCL10改変体の名称、配列等を表2(表2-1、表2-2)に示す)。
【0109】
【表2-1】
【表2-2】
【0110】
各種hCXCL10改変体の精製を容易にするため、hCXCL10改変体とヒトIgG1抗体Fc domainを融合させたhCXCL10改変体Fc fusion が構築された。hCXCL10改変体Fc fusionの模式図を図1Aに示す。
前記hCXCL10改変体とヒトIgG1抗体(hIgG1)のFc domain改変体であるG1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R (G1T4k.one(配列番号:58)、VHn-G1T4h.one.H435R(配列番号:59))を融合したhCXCL10改変体Fc fusionが調製された。具体的には、各hCXCL10改変体のC末端とG1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R中のG1T4k.oneのN末端を連結させたペプチド鎖の遺伝子をコードする発現ベクターが当業者公知の方法で作製され、これらのペプチド鎖がVHn-G1T4h.one.H435R と組み合わせられ、hIgG1 Fc domain改変体にhCXCL10改変体が1つ結合されたhCXCL10改変体Fc fusionが当業者公知の方法でExpi 293 (Life Technologies)を用いた一過性発現により発現され、プロテインAを用いた当業者公知の方法により精製された。
本試験で使用しているFc domain改変体は、Fcがヘテロ会合化した分子の収量を高めるための変異、および、FcγRの結合を抑える変異が導入されている。
【0111】
実施例2. hCXCL10改変体Fc fusion の細胞遊走活性評価
実施例1で調製されたhCXCL10改変体Fc fusionがCXCL10受容体を発現する細胞の遊走を引き起こすか(細胞遊走活性)が評価された。細胞遊走活性のポジティブコントロールとしてhCXCL10R75Aが使用された。hCXCL10R75Aは当業者公知の方法でExpi293 (Life Technologies)を用いた一過性発現により発現され、ヘパリンセファロース(HiTrap Heparin HP Column GEヘルスケア)、SPセファロース(HiTrap SP HP Column GEヘルスケア)、ゲル濾過(HiLoadSuperdex75pg GEヘルスケア)を用いた当業者公知の方法により精製が行われた。
【0112】
細胞遊走活性は、マウスCXCR3(mCXCR3)を発現するBa/F3トランスフェクタント細胞(以下BaF3/mCXCR3)とHTS TranswellTM-96 Permeable Supports with 5.0μm Pore Polycarbonate Membrane (Cat. 3387、Corning) を用いて評価された。
アナライトとして、hCXCL10 (PeproTech, cat 300-12)、hCXCL10R75A 、および実施例1で調製された下記hCXCL10改変体Fc fusionが使用された:
hCXCL10R75A-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0001-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0002-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0003-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0004-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0005-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0006-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0007-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0009-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0010-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0011-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0012-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0013-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0014-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0015-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0016-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0017-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0018-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0019-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0020-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0021-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0023-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0025-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0027-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0029-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0031-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0033-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0034-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0036-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0038-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0039-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0040-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0041-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0042-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0044-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0047-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0048-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0049-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0053-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0054-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R。
【0113】
分析対象となる各アナライトの溶液中終濃度が100 nM, 300 nM, 1000 nMになるように調整された後、それぞれ235 μLの溶液がLower chamberに移された。その後、Upper chamberにBaF3/mCXCR3細胞を2.0×105 cells/wellとなるように75 μL/wellで播き、6時間または3時間反応が行われた。反応は5%炭酸ガス、37℃条件下で行われた。3または6時間の反応後、Lower chamber中の溶液100 μLをOptiPlate-96(Cat. 6005299、PerkinElmer)に移し、CellTiter-GloTM Luminescent Cell Viability Assay溶液(Cat. G7571、Promega)を100 μL加えた。室温で10分反応させた後、SpectraMax M3 マルチモードマイクロプレートリーダー(Molecular Devices)で発光値を測定し、Lower chamberへの細胞の遊走度が評価された。
【0114】
Lower chamberへ遊走した細胞の量は発光強度で反映される。hCXCL10 (PeproTech, cat 300-12)とhCXCL10R75Aの細胞遊走活性の比較と、hCXCL10R75A-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435Rとその他のhCXCL10改変体Fc fusionの細胞遊走活性の比較がそれぞれ行われた。
hCXCL10 (PeproTech, cat 300-12)とhCXCL10R75Aの細胞遊走活性の比較は6時間反応後に行われ、結果は図2、表3に示される。hCXCL10 (PeproTech, cat 300-12)とhCXCL10R75Aは共に濃度依存的な細胞遊走活性を示し、その依存性に大差はなかった。このことから、Furinプロテアーゼに耐性を有するように改変されたhCXCL10R75Aは野生型と同様の活性を持つことが示された。
【0115】
【表3】
【0116】
hCXCL10R75A-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435Rとその他のhCXCL10改変体Fc fusionの細胞遊走活性の比較は3時間反応後に行われ、結果は図3、表4(表4a、表4b-1、表4b-2)に示される。hCXCL10R75A-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435Rと比較して、
hCXCL10R75A.0001-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0004-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0005-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0007-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0009-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0010-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0015-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0016-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0017-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0018-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0019-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0023-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0025-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0027-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0029-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0031-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0033-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0034-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0036-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0038-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0041-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0042-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0044-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0047-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0049-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0053-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0054-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435Rは100 nM, 300 nM, 1000 nMの各濃度において同濃度のhCXCL10R75A-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435Rの30%以上の細胞遊走活性を保持していた。このことから、これらヒトCXCL10改変体Fc fusionに含まれるヒトCXCL10改変体は十分な活性を持つことが示された。
【0117】
【表4a】
【0118】
【表4b-1】
【表4b-2】
【0119】
実施例3. hCXCL10改変体Fc fusionのDPPIV切断耐性評価
実施例2で細胞遊走を引き起こしたhCXCL10改変体Fc fusionがDPPIVにより切断されるかが検証された。プロテアーゼとしてヒトに由来するDipeptidyl peptidase IV(human DPPIV, hDPPIV)(Biolegend, 764102)が用いられた。プロテアーゼによるhCXCL10改変体Fc fusionの切断は脱糖鎖処理後のLC/MS解析によって評価された。終濃度0.2 mg/mlのhCXCL10改変体Fc fusionと終濃度200 nM のhDPPIVを37℃で1時間反応させたのち、当業者公知の方法でLC/MSによる質量分析が行われ、hCXCL10改変体Fc fusionの切断が評価された。hCXCL10R75A-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435RおよびhCXCL10R75A.0001-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435Rではプロテアーゼ処理により、hCXCL10改変体Fc fusion中のhCXCL10改変体含有ペプチド鎖の質量が減少し、その質量はそれぞれのhCXCL10改変体含有ペプチド鎖のN末端2残基が脱落した配列の理論質量と一致した。このことから、hCXCL10R75A-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435RおよびhCXCL10R75A.0001-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435Rに含まれるヒトCXCL10改変体(hCXCL10R75A、hCXCL10R75A.0001)はhDPPIVによりN末端2残基が切断されることが示唆された。
【0120】
一方で、hCXCL10R75A.0004-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0005-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0007-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0009-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0010-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0015-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0016-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0017-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0018-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0019-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0023-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0025-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0027-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0029-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0031-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0033-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0034-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0036-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0038-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0041-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0042-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0044-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0047-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0049-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0053-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL10R75A.0054-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435RはhDDPIV処理による質量変化がなかった(表5)。この結果から、これらのhCXCL10改変体Fc fusionに含まれるhCXCL10改変体はhDPPIV切断耐性を示すことが示唆された。
【0121】
【表5】
【0122】
hCXCL10R75AはhDPPIVによりN末端2残基が切断されることから、上記hDDPIV処理による質量変化が見られなかったhCXCL10改変体に含まれるDPPIV認識・切断サイトおよびその周辺のアミノ酸改変は、hCXCL10にDPPIV耐性をもたらすために有用な改変であることが示唆された。
【0123】
実施例4.ヒトCXCL11(hCXCL11)改変体およびhCXCL11 Fc fusion の構築
ヒトCXCL11(hCXCL11、Refseq: NP_005400.1, Uniprot ID: O14625)(配列番号:61)、および、hCXCL11のDipeptidyl peptidase IV(DPPIV)認識・切断サイトおよびその周辺にアミノ酸改変が導入されたhCXCL11改変体が構築された(DPPIV認識・切断サイトおよびその周辺のアミノ酸改変位置を図4B、設計されたhCXCL11改変体の名称、配列等を表6に示す)。
各種hCXCL11改変体の精製を容易にするため、hCXCL11改変体とヒトIgG1抗体Fc domainを融合させたhCXCL11改変体Fc fusionが構築された。これらの模式図を図4Aに示す。
【0124】
前記hCXCL11改変体とヒトIgG1抗体(hIgG1)のFc domain改変体であるG1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R (G1T4k.one(配列番号:58)、VHn-G1T4h.one.H435R(配列番号:59))を融合したhCXCL11改変体Fc fusionが調製された。具体的には、各hCXCL11改変体のC末端とG1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R中のG1T4k.oneのN末端を連結させたペプチド鎖の遺伝子をコードする発現ベクターが当業者公知の方法で作製され、これらのペプチド鎖がVHn-G1T4h.one.H435R と組み合わせられ、hIgG1 Fc domain改変体にhCXCL11改変体が1つ結合されたhCXCL11改変体Fc fusionが当業者公知の方法でExpi 293 (Life Technologies)を用いた一過性発現により発現され、プロテインAを用いた当業者公知の方法により精製された。
【0125】
本試験で使用しているFc domain改変体は、Fcがヘテロ会合化した分子の収量を高めるための変異、および、FcγRの結合を抑える変異が導入されている。
【0126】
【表6】
【0127】
実施例5.ヒトCXCL10-ヒトCXCL11 キメラタンパク質(hITIP)およびhITIP Fc fusion の構築
hCXCL11(配列番号:61)のアミノ酸残基1番目から24番目までとhCXCL10改変体(配列番号:1)のアミノ酸残基25番目から77番目までを結合したヒトCXCL10, ヒトCXCL11 キメラタンパク質(hITIP)(配列番号:63)、および、hITIPのDipeptidyl peptidase IV(DPPIV)認識・切断サイトおよびその周辺にアミノ酸改変が導入されたhITIP改変体が構築された(DPPIV認識・切断サイトおよびその周辺のアミノ酸改変位置を図4B、設計されたhITIP改変体の名称、配列等を表7に示す)。
【0128】
各種hITIP改変体の精製を容易にするため、hITIP改変体とヒトIgG1抗体Fc domainを融合させたhITIP改変体Fc fusionが構築された。これらの模式図を図4Aに示す。
【0129】
前記hITIP改変体とヒトIgG1抗体(hIgG1)のFc domain改変体であるG1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R (G1T4k.one(配列番号:58)、VHn-G1T4h.one.H435R(配列番号:59))を融合したhITIP改変体Fc fusionが調製された。具体的には、各hITIP改変体のC末端とG1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R中のG1T4k.oneのN末端を連結させたペプチド鎖の遺伝子をコードする発現ベクターが当業者公知の方法で作製され、これらのペプチド鎖がVHn-G1T4h.one.H435R と組み合わせられ、hIgG1 Fc domain改変体にhITIP改変体が1つ結合されたhITIP改変体Fc fusionが当業者公知の方法でExpi 293 (Life Technologies)を用いた一過性発現により発現され、プロテインAを用いた当業者公知の方法により精製された。
【0130】
本試験で使用しているFc domain改変体は、Fcがヘテロ会合化した分子の収量を高めるための変異、および、FcγRの結合を抑える変異が導入されている。
【0131】
【表7】
【0132】
実施例6. DPPIV処理したhCXCL10改変体の細胞遊走活性評価
実施例3でhDPPIVによりN末端2残基の切断が確認されなかったhCXCL10改変体のいくつかについて、これらの改変体がDPPIV処理後もCXCR3を発現する細胞の遊走を引き起こすか(細胞遊走活性)が評価された。
【0133】
プロテアーゼとしてヒトに由来するDipeptidyl peptidase IV(human DPPIV, hDPPIV)(Biolegend, 764102)が用いられた。終濃度12 μMのhCXCL10改変体は終濃度400 nM のhDPPIVによりPBS中で37℃、1時間の条件で処理された。DPPIV処理されたhCXCL10改変体がCXCR3を発現する細胞の遊走を引き起こすか(細胞遊走活性)が評価された。細胞遊走活性は、マウスCXCR3(mCXCR3)を発現するBa/F3トランスフェクタント細胞(以下BaF3/mCXCR3)とHTS TranswellTM-96 Permeable Supports with 5.0μm Pore Polycarbonate Membrane (Cat. 3387、Corning) を用いて評価された。
アナライトとして、DPPIV処理された下記hCXCL10改変体が使用された:
hCXCL10R75A、hCXCL10R75A.0041、hCXCL10R75A.0042、hCXCL10R75A.0028。
【0134】
hCXCL10R75A、hCXCL10R75A.0041、hCXCL10R75A.0042およびhCXCL10R75A.0028は当業者公知の方法でExpi293 (Life Technologies)を用いた一過性発現により発現され、ヘパリンセファロース(HiTrap Heparin HP Column GEヘルスケア)、ゲル濾過(HiLoadSuperdex75pg GEヘルスケア)を用いた当業者公知の方法により精製が行われた。
【0135】
分析対象となる各アナライトの溶液中終濃度が1 nMから600 nMになるように調整された後、それぞれ235 μLの溶液がLower chamberに移された。その後、Upper chamberにBaF3/mCXCR3細胞を2.0×105 cells/wellとなるように75 μL/wellで播き、6時間反応が行われた。反応は5%炭酸ガス、37℃条件下で行われた。6時間の反応後、Lower chamber中の溶液100 μLをOptiPlate-96(Cat. 6005299、PerkinElmer)に移し、CellTiter-GloTM Luminescent Cell Viability Assay溶液(Cat. G7571、Promega)を100 μL加えた。室温で10分反応させた後、2104 EnVisionTM マルチラベルリーダー(PerkinElmer)で発光値を測定し、Lower chamberへの細胞の遊走度が評価された。
【0136】
Lower chamberへ遊走した細胞の量は発光強度で反映される。hCXCL10改変体の細胞遊走活性の比較が行われた。
【0137】
hCXCL10改変体の細胞遊走活性の比較は6時間反応後に行われ、結果は図5、表8に示される。DPPIV処理されたhCXCL10R75Aは1 nMから100 nMの範囲においてDPPIV処理されていないhCXCL10R75Aと比較して大きく低減した細胞遊走活性を示した。一方で、それぞれDPPIV処理されたhCXCL10R75A.0041、hCXCL10R75A.0042およびhCXCL10R75A.0028 は各濃度において同濃度のDPPIV処理されていないそれぞれの改変体と比較して同等の細胞遊走活性を示した。このことから、これらhCXCL10改変体はDPPIV処理された後にも十分な活性を持つことが示された。
【0138】
【表8】
【0139】
実施例7. hCXCL11改変体Fc fusion の細胞遊走活性評価
実施例4で調製されたhCXCL11改変体Fc fusionがCXCR3を発現する細胞の遊走を引き起こすか(細胞遊走活性)が評価された。細胞遊走活性は、ヒトCXCR3(hCXCR3)を発現するBa/F3トランスフェクタント細胞(以下BaF3/hCXCR3)とHTS TranswellTM-96 Permeable Supports with 5.0μm Pore Polycarbonate Membrane (Cat. 3387、Corning) を用いて評価された。
【0140】
アナライトとして、実施例4で調製された下記hCXCL11改変体Fc fusionが使用された:
hCXCL11-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0003-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0004-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0005-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0006-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0007-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0008-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0009-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0010-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0011-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0012-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0013-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0014-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0015-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0016-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0017-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0018-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0019-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0020-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0021-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0022-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0023-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0024-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0025-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0026-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0027-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0028-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0029-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0030-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0031-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0032-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0033-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0034-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0035-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0036-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0037-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0038-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0039-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0040-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0041-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0042-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0044-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0045-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0046-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0047-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0048-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0049-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0050-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0051-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0052-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0053-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0054-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0055-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0056-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0057-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0058-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R
【0141】
分析対象となる各アナライトの溶液中終濃度が33 nM, 100 nM, 300 nMになるように調整された後、それぞれ235 μLの溶液がLower chamberに移された。その後、Upper chamberにBaF3/hCXCR3細胞を2.0×105 cells/wellとなるように75 μL/wellで播き、18時間反応が行われた。反応は5%炭酸ガス、37℃条件下で行われた。18時間の反応後、Lower chamber中の溶液100 μLをOptiPlate-96(Cat. 6005299、PerkinElmer)に移し、CellTiter-GloTM Luminescent Cell Viability Assay溶液(Cat. G7571、Promega)を100 μL加えた。室温で10分反応させた後、2104 EnVisionTM マルチラベルリーダー(PerkinElmer)で発光値を測定し、Lower chamberへの細胞の遊走度が評価された。
【0142】
Lower chamberへ遊走した細胞の量は発光強度で反映される。hCXCL11-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435Rとその他のhCXCL11改変体Fc fusionの細胞遊走活性の比較が行われた。
【0143】
hCXCL11-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435Rとその他のhCXCL11改変体Fc fusionの細胞遊走活性の比較は18時間反応後に行われ、結果は図6図6-1、図6-2、図6-3)、表9に示される。hCXCL11-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435Rと比較して、
hCXCL11.0003-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0004-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0005-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0007-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0008-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0013-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0014-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0015-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0016-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0017-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0020-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0021-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0022-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0023-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0024-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0025-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0026-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0027-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0028-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0029-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0030-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0031-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0032-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0033-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0035-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0036-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0037-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0038-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0039-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0040-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0041-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0042-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0044-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0045-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0048-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0049-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0050-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0051-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0052-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0054-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0055-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435Rは33 nM, 100 nM, 300 nMの各濃度において同濃度のhCXCL11-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435Rの25%以上の細胞遊走活性を保持していた。このことから、これらhCXCL11改変体Fc fusionに含まれるhCXCL11改変体は十分な活性を持つことが示された。
【0144】
【表9】
【0145】
実施例8. hITIP改変体Fc fusion の細胞遊走活性評価
実施例5で調製されたhITIP改変体Fc fusionがCXCR3を発現する細胞の遊走を引き起こすか(細胞遊走活性)が評価された。細胞遊走活性は、ヒトCXCR3(hCXCR3)を発現するBa/F3トランスフェクタント細胞(以下BaF3/hCXCR3)とHTS TranswellTM-96 Permeable Supports with 5.0μm Pore Polycarbonate Membrane (Cat. 3387、Corning) を用いて評価された。
【0146】
アナライトとして、実施例5で調製された下記hITIP改変体Fc fusionが使用された:
hITIP-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0003-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0004-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0005-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0006-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0007-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0008-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0009-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0010-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0011-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0012-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0013-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0014-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0015-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0016-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0017-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0018-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0019-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0020-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0021-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0022-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0023-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0024-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0025-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0026-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0027-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0028-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0029-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0030-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0031-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0033-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0034-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0035-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0036-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0037-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0038-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0039-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0040-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0041-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0042-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0044-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0045-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0046-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0047-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0048-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0049-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0050-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0051-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0052-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0053-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0054-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0055-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0056-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0057-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0058-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R
【0147】
分析対象となる各アナライトの溶液中終濃度が33 nM, 100 nM, 300 nMになるように調整された後、それぞれ235 μLの溶液がLower chamberに移された。その後、Upper chamberにBaF3/hCXCR3細胞を2.0×105 cells/wellとなるように75 μL/wellで播き、18時間反応が行われた。反応は5%炭酸ガス、37℃条件下で行われた。18時間の反応後、Lower chamber中の溶液100 μLをOptiPlate-96(Cat. 6005299、PerkinElmer)に移し、CellTiter-GloTM Luminescent Cell Viability Assay溶液(Cat. G7571、Promega)を100 μL加えた。室温で10分反応させた後、2104 EnVisionTM マルチラベルリーダー(PerkinElmer)で発光値を測定し、Lower chamberへの細胞の遊走度が評価された。
【0148】
Lower chamberへ遊走した細胞の量は発光強度で反映される。hITIP-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435Rとその他のhITIP改変体Fc fusionの細胞遊走活性の比較が行われた。
【0149】
hITIP-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435Rとその他のhITIP改変体Fc fusionの細胞遊走活性の比較は18時間反応後に行われ、結果は図7図7a、図7b、図7c)、表10に示される。
hITIP0003-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0008-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0009-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0012-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0013-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0014-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0015-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0016-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0017-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0018-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0019-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0020-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0021-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0022-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0023-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0024-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0025-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0026-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0027-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0029-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0030-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0031-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0033-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0035-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0036-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0037-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0038-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0039-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0040-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0041-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0042-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0044-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0045-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0048-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0049-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0051-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0052-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0054-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0055-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0057-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R
hITIP0058-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435Rは33 nM, 100 nM, 300 nMの各濃度において同濃度のhITIP-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435Rの25%以上の細胞遊走活性を保持していた。このことから、これらhITIP改変体Fc fusionに含まれるhITIP改変体は十分な活性を持つことが示された。
【0150】
【表10】
【0151】
実施例9. hCXCL11改変体Fc fusionおよびhITIP改変体Fc fusionのDPPIV切断耐性評価
実施例7、8で細胞遊走を引き起こしたhCXCL11改変体Fc fusionおよびhITIP改変体Fc fusionがDipeptidyl peptidase IV (DPPIV)により切断されるかが検証された。DPPIVとしてヒトに由来するhuman DPPIV(hDPPIV)(Biolegend, 764102)が用いられた。DPPIVによるhCXCL11改変体Fc fusionおよびhITIP改変体Fc fusionの切断は脱N-型糖鎖、還元処理後のLC/MS分析によって評価された。終濃度0.2 mg/ml(3.3 μM)のhCXCL11改変体Fc fusionおよびhITIP改変体Fc fusionと終濃度200 nM のhDPPIVをPBS中で37℃で1時間反応させたのち、当業者公知の方法でLC/MSによる分析が行われ、hCXCL11改変体Fc fusionおよびhITIP改変体Fc fusionの切断が評価された。
【0152】
hCXCL11-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435RおよびhITIP-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435RではDPPIV処理により、それぞれhCXCL11改変体含有ペプチド鎖およびhITIP改変体含有ペプチド鎖の質量が減少し、その質量はそれぞれのhCXCL11改変体含有ペプチド鎖およびhITIP改変体含有ペプチド鎖のN末端2残基が脱落した配列の理論質量に相当するものであった。このことから、hCXCL11-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435RおよびhITIP-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435Rに含まれるhCXCL11およびhITIPはhDPPIVによりN末端2残基が切断されることが示唆された。
一方で、
hCXCL11.0021-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0022-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0023-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0025-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0030-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0031-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0033-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0035-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0036-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0037-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hCXCL11.0039-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0021-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0022-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0023-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0025-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0030-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0031-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0033-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0035-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0036-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0037-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
hITIP0039-G1T4k.one//VHn-G1T4h.one.H435R、
はhDDPIV処理によるペプチド結合の切断を示唆する質量変化はなかった。この結果から、これらのhCXCL11改変体Fc fusionおよびhITIP改変体Fc fusionに含まれるhCXCL11改変体およびhITIPはhDPPIV切断耐性を示すことが示唆された。
【0153】
hCXCL11およびhITIPはhDPPIVによりN末端2残基が切断されることから、上記hDDPIV処理による質量変化が見られなかったhCXCL11改変体およびhITIP改変体に含まれるDPPIV認識・切断サイトおよびその周辺のアミノ酸改変は、hCXCL11およびhITIPにDPPIV耐性をもたらすために有用な改変であることが示唆された。
【0154】
前述の発明は、明確な理解を助ける目的のもと、実例および例示を用いて詳細に記載したが、本明細書における記載および例示は、本開示の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。本明細書で引用したすべての特許文献および科学文献の開示は、その全体にわたって、参照により明示的に本明細書に組み入れられる。
【産業上の利用可能性】
【0155】
本開示により、DPPIVに対する耐性且つCXCR3を発現する細胞を遊走させる活性を有するCXCR3リガンドが初めて開示された。このようなCXCR3リガンドは、CXCR3を発現する細胞を遊走させることによる疾患治療/予防に有用である。
図1A
図1B
図2
図3a
図3b
図4A
図4B
図5
図6-1】
図6-2】
図6-3】
図7a
図7b
図7c
【配列表】
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