(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】空気調和装置
(51)【国際特許分類】
F24F 11/54 20180101AFI20240219BHJP
F24F 11/49 20180101ALI20240219BHJP
F24F 110/10 20180101ALN20240219BHJP
【FI】
F24F11/54
F24F11/49
F24F110:10
(21)【出願番号】P 2020559983
(86)(22)【出願日】2019-12-04
(86)【国際出願番号】 JP2019047475
(87)【国際公開番号】W WO2020116530
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-03-18
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-26
(31)【優先権主張番号】P 2018229107
(32)【優先日】2018-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉崎 智子
(72)【発明者】
【氏名】菊池 泰久
(72)【発明者】
【氏名】浜田 義信
(72)【発明者】
【氏名】上重 淳
(72)【発明者】
【氏名】小牟禮 信哉
(72)【発明者】
【氏名】安藤 宏昭
【合議体】
【審判長】間中 耕治
【審判官】鈴木 充
【審判官】村山 美保
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-304696(JP,A)
【文献】特開平5-18618(JP,A)
【文献】特開2007-71401(JP,A)
【文献】特開2010-261617(JP,A)
【文献】特開2010-121798(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00-11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同じ1つの空調エリアに配置され、それぞれの空調負荷に応じてそれぞれの空調能力を制御する複数の空気調和機と、
前記各空気調和機の空調能力のうち最大の空調能力が設定値以上
で、かつその最大の空調能力と前記各空気調和機の空調能力のうち最小の空調能力との差が規定値以上の場合に、その最大の空調能力を抑制する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、
前記最大の空調能力の抑制に際し、抑制を開始した時点の空調能力より所定値低い空調能力を抑制の限度値として定め、前記最大の空調能力をその限度値へ向け
徐々に抑制
し、
前記最大の空調能力の抑制中、その抑制対象となっている空気調和機の空調負荷が第1閾値以上の状態を一定時間にわたり継続した場合またはその第1閾値より高い第2閾値に達しその状態が所定時間にわたり継続した場合に、抑制中の空調能力をその抑制対象となっている空気調和機の空調負荷に対応する値に向け徐々に増加する、
ことを特徴とする空気調和装置。
【請求項2】
前記各空気調和機のうち、前記抑制の対象となる空気調和機を除く残りの1つまたは複数の空気調和機は、前記空調能力の抑制分に対応する空調負荷を当該空気調和機の空調負荷として処理する、
ことを特徴とする請求項1に記載の空気調和装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記最大の空調能力の抑制中、
運転操作用および運転条件設定用の操作器が操作された場合に、その抑制中の空調能力をその抑制対象となっている空気調和機の空調負荷に対応する値に向け徐々に増加する、
ことを特徴とする請求項1に記載の空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の空気調和機を備え、これら空気調和機で同じ1つの空調エリアを空調する空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の空気調和機を備え、これら空気調和機で同じ1つの空調エリアを空調する空気調和装置においては、同じ1つの空調エリアであっても、それぞれの空気調和機にかかる空調負荷がそれぞれの空気調和機の設置場所などに応じて異なる。例えば、窓に近い場所に設置される空気調和機の空調負荷は太陽光や外気温度の影響を受け易く、窓から遠い場所に設置される空気調和機の空調負荷は太陽光や外気温度の影響を受け難い。
【0003】
このため、同じ1つの空調エリアであっても、高い空調能力で運転する空気調和機と中・低の空調能力で運転する空気調和機が混在する。中・低の空調能力で運転する空気調和機のエネルギー効率は良好であるが、高い空調能力で運転する空気調和機のエネルギー効率は低い。エネルギー効率の低下は、すなわち消費電力の増大につながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本実施形態の目的は、複数の空気調和機の良好なエネルギー効率を確保することができ、しかも空調負荷の急な変動に対し適切な空調能力を迅速に発揮することができて快適性の向上が図れる空気調和装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の空気調和装置は、同じ1つの空調エリアに配置され、それぞれの空調負荷に応じてそれぞれの空調能力を制御する複数の空気調和機と;これら空気調和機の空調能力のうち最大の空調能力が設定値以上の場合に、その最大の空調能力を抑制する制御手段と;を備える。制御手段は、前記最大の空調能力の抑制に際し、抑制を開始した時点の空調能力より所定値低い空調能力を抑制の限度値として定め、前記最大の空調能力をその限度値へ向け徐々に抑制する。さらに、制御手段は、前記最大の空調能力の抑制中、その抑制対象となっている空気調和機の空調負荷が第1閾値以上の状態を一定時間にわたり継続した場合またはその第1閾値より高い第2閾値に達しその状態が所定時間にわたり継続した場合に、抑制中の空調能力をその抑制対象となっている空気調和機の空調負荷に対応する値に向け徐々に増加する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】一実施形態の親機が実行する制御を示すフローチャート。
【
図3】一実施形態の親機および子機が実行する制御を示すフローチャート。
【
図4】一実施形態のパワー連係制御がない場合の各空気調和機の部分負荷率を示す図。
【
図5】
図4における窓側の空気調和機の部分負荷率とエネルギー効率との関係を示す図。
【
図6】
図4における非窓側の空気調和機の部分負荷率とエネルギー効率との関係を示す図。
【
図7】一実施形態のパワー連係制御がある場合の各空気調和機の部分負荷率を示す図。
【
図8】
図7における窓側の空気調和機の部分負荷率とエネルギー効率との関係を示す図。
【
図9】
図7における非窓側の空気調和機の部分負荷率とエネルギー効率との関係を示す図。
【
図10】一実施形態の各空気調和機の部分負荷率の変化および室内温度の変化を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0009】
図1に示すように、空気調和装置を構成する複数の空気調和機1a,1b,…1nの室内ユニット20が同一の1つの空調エリアRに配置されている。
【0010】
親機である空気調和機1aは、圧縮機11、四方弁12、室外熱交換器13、減圧器たとえば電動膨張弁14、室内熱交換器21を順次に配管接続してなるヒートポンプ式冷凍サイクルを備える。
【0011】
冷房運転時は、圧縮機11から吐出される冷媒が四方弁12を通って室外熱交換器(凝縮器)13に流入し、その室外熱交換器13から流出する冷媒が電動膨張弁14を通って室内熱交換器(蒸発器)21に流入し、その室内熱交換器21から流出する冷媒が四方弁12を通って圧縮機11に吸込まれる。
【0012】
暖房運転時は、四方弁12の流路の切換えにより、矢印で示すように、圧縮機11から吐出される冷媒が四方弁12を通って室内熱交換器(凝縮器)21に流入し、その室内熱交換器21から流出する冷媒が電動膨張弁14を通って室外熱交換器(蒸発器)13に流入し、その室外熱交換器13から流出する冷媒が四方弁12を通って圧縮機11に吸込まれる。
【0013】
外気を吸込んで室外熱交換器13に通す室外ファン15が室外熱交換器13の近傍に配置され、外気温度Toを検知する外気温度センサ16が室外ファン15の吸込み風路に配置されている。空調エリアの室内空気を吸込んで室内熱交換器21に通す室内ファン22が室内熱交換器21の近傍に配置され、室内空気の温度(室内温度という)Taを検知する室内温度センサ23が室内ファン22の吸込み風路に配置されている。
【0014】
上記圧縮機11、四方弁12、室外熱交換器13、電動膨張弁14、室外ファン15、外気温度センサ16が室外コントローラ18aと共に室外ユニット10に収容され、上記室内ユニット21、室内ファン22、室内温度センサ23が室内コントローラ24aと共に室内ユニット20に収容されている。室外コントローラ18aと室内コントローラ24aとが電源電圧同期のシリアル信号ライン31を介して相互に接続され、室内コントローラ24aには運転操作用および運転条件設定用のリモートコントロール式の操作器(リモコンと略称する)33がケーブル32を介して接続されている。リモコン33は、空調エリアの壁面等に取付けられ、ユーザによる容易な操作が可能である。
【0015】
室外コントローラ18aは、マイクロコンピュータおよびその周辺回路からなり、室内コントローラ24aからの指示に応じて圧縮機11、四方弁12、電動膨張弁14、室外ファン15を制御するとともに、外気温度センサ16の検知温度(外気温度という)Toおよび熱交温度センサ17の検知温度(熱交換器温度という)Teなどのデータをシリアル信号ライン31により室内コントローラ24aに送る。
【0016】
室内コントローラ24aは、マイクロコンピュータおよびその周辺回路からなり、リモコン33の操作、リモコン33で設定される運転条件、室外コントローラ18aからの伝送データなどに応じて当該空気調和機1aの運転を制御する。すなわち、室内コントローラ24aは、リモコン33で設定される目標室内温度Tsと室内温度センサ23の検知温度(室内温度)Taとの差ΔT(=|Ts-Ta|)を当該空気調和機1aの空調負荷として捕らえ、これら空調負荷ΔTが零となるようにつまり室内温度Taが目標室内温度Tsとなるように、圧縮機11の能力(運転周波数)つまり当該空気調和機1aの空調能力を制御する室内温度制御を実行する。
【0017】
この室内コントローラ24aと室内コントローラ24b~24nの相互間に、制御用およびデータ伝送用のバスライン40が接続されている。
【0018】
空気調和機1b~1nは、室外コントローラ18b~18nと室内コントローラ24b~24nを有する点が空気調和機1aと異なるだけで、基本的な構成は空気調和機1aと同じである。
【0019】
室内コントローラ24b~24nは、マイクロコンピュータおよびその周辺回路からなり、それぞれ室外コントローラ18b~18nからの伝送データおよび室内コントローラ24aからの指示に応じて空気調和機1b~1nの運転をそれぞれ制御する。すなわち、リモコン33で設定される目標室内温度Tsと各室内温度センサ23の検知温度(室内温度)Taとの差ΔT(=|Ts-Ta|)を空気調和機1b~1nのそれぞれの空調負荷として捕らえ、これら空調負荷ΔTが零となるように各圧縮機11の能力(運転周波数)つまり空気調和機1b~1nの空調能力をそれぞれ制御する。
【0020】
空気調和機1a,1b,…1nを1つのグループとして制御するグループ制御モードがリモコン33で設定された場合に、空気調和機1aの室内コントローラ24aが制御の中枢となる親機として機能し、残りの空気調和機1b~1nの室内コントローラ24b~24nが親機の指示に従う子機として機能する。
【0021】
空気調和機1aの室内コントローラ24aは、親機と子機のパワー連係に関わる主要な機能として第1制御部C1,第2制御部C2,第3制御部C3,第4制御部C4を備える。
【0022】
第1制御部C1は、室内コントローラ24a~24nの相互の通信をデータバスライン40を介して定期的および必要に応じて実行する。
【0023】
第2制御部C2は、空気調和機1b~1nの空調能力を第1制御部C1の通信により検出し、当該空気調和機1aおよび空気調和機1b~1nの空調能力のうち最大の空調能力(後述の部分負荷率L)が設定値以上の場合、かつその最大の空調能力と最小の空調能力との差が規定値以上の場合、空気調和機1a~1nにかかる各空調負荷ΔTの高低のバランスがエネルギー効率の面で良くない状態にあり解消するべきとの判断の下に、上記最大の空調能力を所定値(例えば5%)ずつ徐々に抑制し、この空調能力の抑制分に対応する空調負荷ΔT´の処理をその抑制対象となっている空気調和機を除く残りの空気調和機の運転に委ねる。この制御をパワー連係制御という。すなわち、空調能力の抑制対象となっている空気調和機を除く残りの1つまたは複数の空気調和機は、空調能力の抑制分に対応する空調負荷ΔT´を当該空気調和機の空調負荷ΔTの増加分として上乗せ的に自然に取り込み、取り込んだ空調負荷ΔT´を元の空調負荷ΔTと共に当該空気調和機の通常の室内温度制御による成り行き的な空調能力の増加により処理する。空調能力の抑制対象となっている空気調和機を除く残りの空気調和機が複数の場合は、上記空調負荷ΔT´が複数の空気調和機に適宜に按分された状態で上乗せられる。なお、この第2制御部C2は、空調能力の抑制に際し、抑制を開始した時点の空調能力(上記最大の空調能力)より所定値(例えば20%)低い空調能力を抑制の限度値(後述の上限負荷率Ls)として定め、上記最大の空調能力をその限度値へ向け所定値(5%)ずつ徐々に抑制する。
【0024】
第3制御部C3は、第2制御部C2による空調能力の抑制中、その抑制対象となっている空気調和機の空調負荷ΔTが閾値以上に上昇した場合に、抑制中の空調能力を、抑制対象となっている空気調和機の現時点の空調負荷ΔTに対応する値に向け、徐々に増加する。
【0025】
なお、この第3制御部C3は、具体的には、第2制御部C2による空調能力の抑制中、その抑制対象となっている空気調和機の空調負荷ΔTが、第1閾値(例えば2℃)以上の状態を一定時間(例えば30分)にわたり継続した場合、またはその第1閾値より高い第2閾値(>第1閾値)に達した場合に、抑制中の空調能力を、抑制対象となっている空気調和機の現時点の空調負荷ΔTに対応する値に向け、所定値(5%)ずつ徐々に増やす。
【0026】
第4制御部C4は、第2制御部C2による空調能力の抑制中、リモコン33が操作された場合に、第3制御部C3と同様、抑制中の空調能力を、抑制対象となっている空気調和機の現時点の空調負荷ΔTに対応する値に向け、徐々に増加する。
【0027】
[親機の制御]
親機の室内コントローラ24aが実行する制御を
図2のフローチャートを参照しながら説明する。フローチャート中のステップS1,S2…については、単にS1,S2…と略称する。
【0028】
冷房運転または暖房運転の開始操作がリモコン33でなされた場合(S1のYES)、室内コントローラ24aは、運転開始を室内コントローラ24b~24nに指示するとともに、リモコン33の操作により設定される目標室内温度(設定温度ともいう)Tsを室内コントローラ24b~24nに通知する(S2)。
【0029】
そして、室内コントローラ24aは、上記パワー連係制御が実行中であるか否かの指標となる制御フラグfに“0”をセットし(S3)、空気調和機1a~1nが現時点で発揮している空調能力をそれぞれ部分負荷率L(%)として検出する(S4)。部分負荷率L(%)は、空気調和機1a~1nが実際に発揮する空調能力がそれぞれの空気調和機1a~1nの定格空調能力に占める割合のことである。
【0030】
続いて、室内コントローラ24aは、この時点では制御フラグfが“0”なので(S5のYES)、空気調和機1a~1nのそれぞれ部分負荷率(空調能力)Lのうち最大の部分負荷率(最大の空調能力)Lmaxを選定し、その最大の部分負荷率Lmaxが設定値(例えば50%)以上の高負荷率状態にあるか否かを判定する(S6)。
【0031】
このS6の判定結果が肯定の場合(S6のYES)、室内コントローラ24aは、空気調和機1a~1nのそれぞれ部分負荷率Lのうち最小の部分負荷率(最小の空調能力)Lminを選定し、最大の部分負荷率Lmaxとその最小の部分負荷率Lminとの差ΔL(=Lmax-Lmin)が規定値(例えば20%)以上の状態にあるか否かを判定する(S7)。
【0032】
このS7の判定結果が肯定の場合(S7のYES)、室内コントローラ24aは、空気調和機1a~1nのそれぞれの空調負荷ΔTのバランスがエネルギー効率の面で良くない状態にあって直ちに解消すべきとの判断の下に、最大の部分負荷率Lmaxより所定値(例えば20%)低い部分負荷率Lをパワー連係制御の上限負荷率Lsとして設定し、その上限負荷率Lsを最大の部分負荷率Lmaxで運転している空気調和機(抑制対象となる空気調和機)の室内コントローラに通知する(S8)。
【0033】
この上限負荷率Lsの設定および通知に伴い、室内コントローラ24aは、制御フラグfに“1”をセットし(S9)、リモコン33の停止操作を監視する(S10)。リモコン33の停止操作がない場合(S10のNO)、室内コントローラ24aは、最大の部分負荷率Lmaxで運転している空気調和機(抑制対象となっている空気調和機)の室内コントローラからの“抑制終了”通知を監視する(S12)。
【0034】
“抑制終了”通知がない場合(S12のNO)、室内コントローラ24aは、上記S4に戻って空気調和機1a~1nのそれぞれ部分負荷率Lを再び検出し(S4)、制御フラグfを確認する(S5)。この時点の制御フラグfは“1”なので(S5のNO)、室内コントローラ24aは、上記S6~S9の処理を迂回して上記S10に移行し、リモコン33の停止操作を監視する(S10)。
【0035】
上記“抑制終了”通知がある場合(S12のYES)、室内コントローラ24aは、制御フラグfに“0”をセットする(S13)。続いて、室内コントローラ24aは、上記S4に戻って空気調和機1a~1nのそれぞれ部分負荷率Lを再び検出し(S4)、制御フラグfを確認する(S5)。この時点の制御フラグfは“0”なので(S5のYES)、室内コントローラ24aは、上記S6~S10の処理を繰り返す。
【0036】
リモコン33の停止操作がある場合(S10のYES)、室内コントローラ24aは、運転停止を室内コントローラ24b~24nに指示する(S11)。
【0037】
[親機および子機の制御]
親機の室内コントローラ24aおよび子機の室内コントローラ24b~24nが実行する制御を
図3のフローチャートを参照しながら説明する。
【0038】
室内コントローラ24a~24nは、上記運転開始の指示があるとき(S21のYES)、空気調和機1a~1nの運転を開始する(S22)。そして、室内コントローラ24a~24nは、各室内温度センサ23の検知温度(室内温度)Taと上記目標室内温度Tsとの差ΔT(=|Ta-Ts|)をそれぞれの空調負荷ΔTとして検出し、これら空調負荷ΔTに応じて空気調和機1a~1nの部分負荷率(空調能力)Lをそれぞれ制御する(S23)。
【0039】
この運転開始から一定時間たとえば15分が経過して空気調和機1a~1nの運転が安定したところで(S24のYES)、室内コントローラ24a~24nは、上限負荷率Lsの設定および通知があるか否かを監視する(S25)。上限負荷率Lsの設定および通知がない場合(S25のNO)、室内コントローラ24a~24nは、上記運転停止の指示があるか否かを監視する(S35)。
【0040】
上記運転停止の指示がない場合(S35のNO)、室内コントローラ24a~24nは、上記S25の処理に戻って上限負荷率Lsの設定および通知があるか否かを再び監視する(S25)。上記運転停止の指示がある場合(S35のYES)、室内コントローラ24a~24nは、空気調和機1a~1nの運転を停止する(S36)。
【0041】
以下、例えば空気調和機1bの空調負荷ΔTが急増し、それに応じて空気調和機1bの部分負荷率Lが最大の部分負荷率Lmaxとなった場合の制御について説明する。
【0042】
最大の部分負荷率Lmaxが設定値以上の高負荷率状態にある場合(S6のYES)、かつ最大の部分負荷率Lmaxとその最小の部分負荷率Lminとの差ΔLが規定値以上の状態にある場合(S7)、上限負荷率Lsが室内コントローラ24aで設定されてそれが室内コントローラ24aから室内コントローラ24bに通知される(S8)。
【0043】
室内コントローラ24bは、室内コントローラ24aから上限負荷率Lsの通知を受けた場合(S25のYES)、その上限負荷率Lsと空気調和機1bの部分負荷率L(=Lmax)とを比較する(S26)。空気調和機1bの部分負荷率Lが上限負荷率Lsより高い場合(S26のYES)、室内コントローラ24bは、空気調和機1bの部分負荷率Lを所定値(5%)だけ抑制する(S27)。
【0044】
この抑制に際しては、空気調和機1bの空調負荷ΔTのうち、部分負荷率Lの抑制分に対応する空調負荷ΔT´が空気調和機1bで処理されない状態となる。この空調負荷ΔT´の処理は、同じ1つの空調エリアRに存する空気調和機1a,1c~1nの運転に委ねられる。
【0045】
すなわち、空気調和機1a,1c~1nは、空気調和機1bの部分負荷率Lが抑制されたことで未処理となる空調負荷ΔT´を当該空気調和機1a,1c~1nのそれぞれの空調負荷ΔTの増加分として上乗せ的に自然に取り込み、取り込んだ空調負荷ΔT´をそれぞれの元の空調負荷ΔTと共に当該空気調和機1a,1c~1nの通常の室内温度制御による成り行き的な各部分負荷率Lの増加により処理する。この場合、空気調和機1a,1c~1nは、それぞれの空調負荷ΔTに応じてそれぞれの部分負荷率Lを制御する通常の基本的な運転を継続するだけである。
【0046】
空気調和機1bの部分負荷率Lの抑制を開始してから15分が経過したところで(S28のYES)、室内コントローラ24bは、空気調和機1bの空調負荷ΔTが第1閾値(2℃)以上の状態を一定時間(30分)にわたり継続しているかどうかを判定する(S29)。この判定結果が否定の場合(S29のNO)、室内コントローラ24bは、空気調和機1bの空調負荷ΔTが第2閾値(3℃)に達してその状態を所定時間(1分)にわたり継続しているかどうかを判定する(S30)。この判定結果が否定の場合(S30のNO)、室内コントローラ24bは、リモコン33が操作されたかどうかを判定する(S31)。この判定結果が否定の場合(S31のNO)、室内コントローラ24bは、上記S26に戻って部分負荷率Lと上限負荷率Lsとを再び比較する(S26)。
【0047】
部分負荷率Lが上限負荷率Lsより高い場合(S26のYES)、室内コントローラ24bは、部分負荷率Lを所定値(5%)だけさらに抑制し(S27)、上記S28~S31の判定に移行する。上記S29,S30,S31の判定結果が共に否定であれば、上記S27による部分負荷率Lの所定値(5%)の抑制が15分ごとに繰り返される。
【0048】
抑制が進んで部分負荷率Lが上限負荷率Ls以下になった場合(S26のNO)、室内コントローラ24bは、上記S27,S28の処理を実行することなく上記S29の判定に移行し、部分負荷率Lの抑制状態を保ちながら上記S29,S30,S31の判定結果のいずれかが肯定となるのを待つ。
【0049】
空気調和機1bの空調負荷ΔTが第1閾値(2℃)以上の状態を一定時間(30分)にわたり継続した場合(S29のYES)、室内コントローラ24bは、空気調和機1bの能力が不足気味の状態にあって空気調和機1bで検知される室内温度Taを目標室内温度Tsに維持することが難しいとの判断の下に、抑制中の部分負荷率Lを、抑制対象である空気調和機1bの現時点の空調負荷ΔTに対応する値に向け、所定値(5%)だけ増加する(32)。
【0050】
空気調和機1bの空調負荷ΔTが第1閾値(2℃)を超えて第2閾値(3℃)に達しその状態が所定時間(1分)にわたり継続した場合(S29のNO,S30のYES)、室内コントローラ24bは、空気調和機1bの能力不足が大きくて空気調和機1bにおける室内温度Taを目標室内温度Tsに維持できないとの判断の下に、抑制中の部分負荷率Lを、抑制対象である空気調和機1bの現時点の空調負荷ΔTに対応する値に向け、所定値(5%)だけ増加する(32)。
【0051】
冷房時は、室内温度Taが少しでも上昇すると不快に感じるので、空調負荷ΔTの変化に関する上記S29,S30の判定処理は必須となる。暖房時は、室内温度Taが少しくらい低下しても不快とは感じないので、空調負荷ΔTの変化に関する上記S29,S30の判定処理をなくてもよい。
【0052】
空調エリアRの在室者によりリモコン33に対する何らかの操作がなされた場合(S29のNO,S30のNO,S31のYES)、室内コントローラ24bは、空調エリアRの快適性が悪化しているとの判断の下に、抑制中の部分負荷率Lを、抑制対象である空気調和機1bの現時点の空調負荷ΔTに対応する値に向け、所定値(5%)だけ増加する(S32)。
【0053】
上記S32による部分負荷率Lの増加に続き、室内コントローラ24bは、増加した部分負荷率Lが抑制対象である空気調和機1bの現時点の空調負荷ΔTに対応する値に達したか否かを判定する(S33)。この判定結果が否定の場合(S33のNO)、室内コントローラ24bは、上記S32による部分負荷率Lの増加を繰り返す(S32)。
【0054】
上記S33の判定結果が肯定の場合(S33のYES)、室内コントローラ24bは、“抑制終了”を室内コントローラ24aに通知し(S34)、室内コントローラ24aからの運転停止の指示を監視する(S35)。運転停止の指示がない場合(S35のNO)、室内コントローラ24bは、上記S25に戻って新たな上限負荷率Lsの設定および通知があるか否かを監視する(S25)。運転停止の指示がある場合(S35のYES)、室内コントローラ24bは、空気調和機1bの運転を停止する(S36)。
【0055】
以上のように、空気調和機1bの空調負荷ΔTが急増して空気調和機1bの部分負荷率L(=Lmax)が設定値以上の高負荷率状態に増加した場合、しかもその空気調和機1bの部分負荷率L(=Lmax)と最小の部分負荷率Lminとの差ΔLが規定値(20%)以上の状態にある場合、空気調和機1a~1nのそれぞれの空調負荷ΔTのバランスがエネルギー効率の面で良くない状態にあって直ちに解消すべきとの判断の下に、空気調和機1bの部分負荷率Lを抑制し、その部分負荷率Lの抑制分に対応する空調負荷ΔT´を抑制対象となっている空気調和機1bを除く残りの空気調和機1a,1c~1nの通常の室内温度制御による基本的な運転により処理するので、空気調和機1bの空調負荷ΔTが急増しても、空気調和機1bのエネルギー効率の悪化を防ぎながら、かつ空気調和機1a,1c~1nの良好なエネルギー効率を維持しながら、空気調和機1bの空調負荷ΔTの急増に対して応答遅れのない適切な空調能力を得ることができる。空調エリアRの快適性が向上する。
【0056】
部分負荷率L(=Lmax)を抑制する場合、その抑制を所定値ずつ徐々に行うので、抑制対象となっている空気調和機が存する場所の室内温度Taの急な低下を防ぐことができる。空調エリアRの在室者に不快を感じさせることがない。
【0057】
抑制中の部分負荷率L(=Lmax)を抑制対象である空気調和機の現時点の空調負荷ΔTに対応する値に向け増加する場合、その増加を所定値ずつ徐々に行うので、抑制対象となっている空気調和機の消費電力の急な増加を防ぐことができる。
【0058】
図4に示すように、窓の近くの太陽光がよく当たる場所に空気調和機1aが配置され、窓から離れた場所に空気調和機1bが配置され、これら空気調和機1a,1bが冷房運転を実行する場合、空気調和機1aの空調負荷ΔTが空気調和機1bの空調負荷ΔTより大きくなる。これに伴い、空気調和機1aが例えば部分負荷率L=80%の高空調能力で運転し、空気調和機1bが例えば部分負荷率L=30%の低空調能力で運転する。この場合、
図5および
図6に示すように、低空調能力で運転する空気調和機1bのエネルギー効率は良好であるが、高空調能力で運転する空気調和機1aのエネルギー効率は低下する。
【0059】
このような状況において本実施形態のパワー連係制御が実行されると、
図7に示すように、空気調和機1aがそれまでの部分負荷率L=80%から部分負荷率L=60%の中空調能力の運転に移行し、空気調和機1bがそれまでの部分負荷率L=30%から部分負荷率L=50%の中空調能力の運転に移行する。この場合、
図8および
図9に示すように、空気調和機1aのエネルギー効率が上昇して良好となり、空気調和機1bのエネルギー効率も良好な状態を保つ。すなわち、空気調和装置の全体のエネルギー効率が向上する。
【0060】
空気調和機1a,1bのそれぞれの部分負荷率Lの変化、および空気調和機1aが配置されている場所の室内温度Taの変化を、本実施形態のパワー連係制御がある場合とない場合とで対比して
図10に示している。
【0061】
上記実施形態では、最大の部分負荷率Lmaxが設定値以上でしかも最大の部分負荷率Lmaxと最小の部分負荷率Lminとの差が規定値以上の場合に最大の部分負荷率Lmaxを抑制したが、最大の部分負荷率Lmaxが設定値以上の場合に直ちに最大の部分負荷率Lmaxを抑制する制御してもよい。
【0062】
その他、上記実施形態および変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態および変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、書き換え、変更を行うことができる。これら実施形態や変形は、発明の範囲は要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
1a~1n……空気調和機、10…室外ユニット、11…圧縮機、13…室外熱交換器、18a,18b,…18n……室外コントローラ、20…室内ユニット、24a~24n……室内コントローラ、33…リモコン、40…バスライン