(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】有効長の選択が可能な血管病変の治療用カテーテル
(51)【国際特許分類】
A61M 25/06 20060101AFI20240219BHJP
A61M 25/10 20130101ALN20240219BHJP
【FI】
A61M25/06 550
A61M25/10 550
(21)【出願番号】P 2020568022
(86)(22)【出願日】2018-06-26
(86)【国際出願番号】 EP2018067102
(87)【国際公開番号】W WO2019161941
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2020-09-30
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-01
(32)【優先日】2018-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517124859
【氏名又は名称】シーティーアイ バスキュラー アーゲー
【氏名又は名称原語表記】CTI Vascular AG
【住所又は居所原語表記】Industrieplatz 1e, 8212 Neuhausen am Rheinfall, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】ジアノッティ,マルク
(72)【発明者】
【氏名】フリッツ,ウルフ
【合議体】
【審判長】内藤 真徳
【審判官】佐々木 一浩
【審判官】栗山 卓也
(56)【参考文献】
【文献】特表平9-510894(JP,A)
【文献】国際公開第2012/104511(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0113023(US,A1)
【文献】特開平10-80473(JP,A)
【文献】国際公開第2017/008918(WO,A1)
【文献】特表2002-505173(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0082049(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効長の選択が可能なカテーテルシステム(100)であって、
カテーテルシャフト(115)を含むカテーテル(110)と、
ロックグリップ(120)と、
ハンドルを備えたマンドレル(130)と、
前記カテーテルシャフト(115)の側面において、該カテーテルシャフト(115)の軸方向の異なる位置に配置された2つ以上のガイドワイヤー出口ポート(113、116)と
を含み、
前記マンドレル(130)が、その先端(131)を各ガイドワイヤー出口ポート(113、116)に選択的に配置できるよう設計されており、そのように配置されることで、選択したガイドワイヤー出口ポートを通して可逆的にガイドワイヤーを誘導でき、
前記システムが、側面開口部を有する注入用ルーメンを有するマンドレル(130)を含むように構成され、治療提供者が、(1)約0.035インチの第1のガイドワイヤーを、第1のガイドワイヤー出口ポート(113)へと通すことができ、かつ、実質上同時に、(2)約0.014インチの第2のガイドワイヤーを、マンドレルハンドルにあるポートから第2のガイドワイヤー出口ポート(116)へと通すことができ、それによって、2本の異なるサイズのガイドワイヤーを実質上同時に使用できることを特徴とするカテーテルシステム(100)。
【請求項2】
前記マンドレル(130)の先端(131)が、半球状の偏向面として形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のカテーテルシステム。
【請求項3】
前記マンドレル(130)が、2つ以上のマーキング(133、134)を含むマンドレルシャフト(132)を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のカテーテルシステム。
【請求項4】
前記マーキングが、それぞれ独立して、治療提供者に視覚フィードバック、血管造影フィードバック、または触覚フィードバックを提供することを特徴とする、請求項3に記載のカテーテルシステム。
【請求項5】
前記マーキング(133、134)が、前記マンドレルシャフト(132)の異なる位置に配置されていることによって、前記マンドレル(130)の先端(131)が、選択したガイドワイヤー出口ポートに配置されているか否かが示され、そのように配置されることで、選択したガイドワイヤー出口ポートを通してガイドワイヤーを誘導できることを特徴とする、請求項3に記載のカテーテルシステム。
【請求項6】
前記マンドレル(130)の先端(131)が、放射線不透過性材料で作製されていることを特徴とする、請求項1または2に記載のカテーテルシステム。
【請求項7】
前記カテーテル(110)が、
カテーテル先端(111)と、
バルーン(112)と、
キンク防止スリーブ(118)と、
マニホールド(119)と
をさらに含み、
前記2つ以上のガイドワイヤー出口ポート(113、116)が、前記カテーテル先端と前記キンク防止スリーブ(118)の先端の間に配置されていることを特徴とする、
請求項5に記載のカテーテルシステム。
【請求項8】
前記ロックグリップ(120)が、
オス型ルアーコネクター(121)と、
第1のグリップ面(122)と、
第2のグリップ面(123)と、
メス型ルアーコネクター(124)と
を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のカテーテルシステム。
【請求項9】
前記マニホールド(119)が、
インフレーションポート(1191)と、
ガイドワイヤーポート(1192)と
を含むことを特徴とする、請求項7に記載のカテーテルシステム。
【請求項10】
前記カテーテルシャフト(115)が、インフレーションルーメン(1151)とガイドワイヤールーメン(1152)とを含むダブルルーメンシャフトとして構成されていることを特徴とする、
請求項9に記載のカテーテルシステム。
【請求項11】
前記ガイドワイヤールーメン(1152)を介して、前記カテーテルの先端(111)と、前記2つ以上のガイドワイヤー出口ポート(113、116)と、前記ガイドワイヤーポート(1192)とが連通していることを特徴とする、請求項10に記載のカテーテルシステム。
【請求項12】
前記マンドレル(130)のシャフト(132)が注入用ルーメン(1321)を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のカテーテルシステム。
【請求項13】
前記マンドレル(130)のシャフト(132)の外径が、前記ガイドワイヤールーメン(1152)の直径より小さく、前記マンドレル(130)のシャフト(132)が、前記ガイドワイヤールーメン(1152)内で摺動可能であることを特徴とする、請求項10に記載のカテーテルシステム。
【請求項14】
前記ロックグリップ(120)が前記カテーテル(110)の前記マニホールド(119)に装着されている場合、前記マンドレルシャフト(132)を、前記カテーテルシャフト(115)内の所定の位置で可逆的に固定できることを特徴とする、請求項7に記載のカテーテルシステム。
【請求項15】
ガイドワイヤーを偏向させる機構と、前記ガイドワイヤールーメン内で前記マンドレルシャフトを位置表示に従って長さ方向にロックする機構とを組み合わせることにより、前記ガイドワイヤーポートおよび前記2つ以上のガイドワイヤー出口ポートから選択される1つのポートに狙いを定めて選択することが可能であり、それにより、少なくとも3つの選択可能な有効長が治療提供者に選択肢として提供されることを特徴とする、請求項10に記載のカテーテルシステム。
【請求項16】
前記ロックグリップのロック機構により、前記マンドレルの挿入長を固定して前記カテーテルシャフトに挿入することで、治療提供者が、該カテーテルシャフトの柔軟性を長さ方向に可変的に調整することができ、それにより、前記カテーテルシステムの操縦性および押し込み性を向上させることができることを特徴とする、請求項1または2に記載のカテーテルシステム。
【請求項17】
前記マンドレルを用いて、様々な診断用液体、治療用液体および/または体液を注入または吸引することが可能であり、かつ、実質上同時に、前記マンドレルが別のガイドワイヤールーメンとして機能し得ることで、前記カテーテルと、挿入したマンドレルを留置したまま、ガイドワイヤーを簡便に交換できることを特徴とする、請求項1または2に記載のカテーテルシステム。
【請求項18】
前記有効長が、(1)第1と第2のガイドワイヤー出口ポートとの間、および(2)第2のガイドワイヤー出口ポートと前記キンク防止スリーブの先端との間で可変的に調整できることを特徴とする、請求項7に記載のカテーテルシステム。
【請求項19】
前記注入用ルーメン(1321)が、前記マンドレル先端(131)まで直線的に貫通していることを特徴とする、請求項12に記載のカテーテルシステム。
【請求項20】
前記注入用ルーメン(1321)が、前記マンドレル(130)のシャフト(132)の側面へと貫通していることを特徴とする、請求項12に記載のカテーテルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、血管病変の治療用カテーテルに関し、特に、様々な血管病態の治療に使用される、複数の有効長に対応する構造を有するカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
血管形成術用カテーテルは、患者の静脈内や動脈内で発生する様々な血管疾患の徴候を治療するために開発されたものであり、このような徴候は、多くの場合、治療を施さなければ、虚血、心臓発作、塞栓症や脳卒中などのさらに重篤な健康状態や合併症に至る。血管形成術用バルーンカテーテルは、通常、あらかじめ挿入したガイドワイヤーに沿って、大腿動脈、鎖骨下動脈、橈骨動脈、上腕動脈などの様々な血管アクセスポイントにおいて、患者の血管に挿入される。血管形成術用バルーンカテーテルは、ガイドワイヤーに沿って進められ、血管の標的部位またはその近傍に当該カテーテルの膨張部が配される。次いで、バルーンを膨張させて血管を機械的に拡張し、標的部位にある閉塞、病変などの問題を解消する。現在利用可能な血管形成術用カテーテルは、その有効長、すなわち、患者に挿入されるカテーテルのシャフトの長さ部分が固定されている。このため、治療提供者は、特定のアクセスポイントから特定の治療部位にアクセスするために、通常、解剖学的に適切な長さの、寸法的に適合するガイドワイヤーとカテーテルの組み合わせを選択する。しかし、多くの処置において、血管は複数箇所で閉塞している。したがって、多くの場合、治療提供者は、特定のアクセスポイントから2つ以上の閉塞箇所にアクセスして改善を図るために、長さの異なる2つ以上の血管形成術用バルーンカテーテルを使用する必要がある。血管形成術用バルーンカテーテルを用いる処置では、事前にガイドワイヤーを挿入する必要があるため、長さの異なる複数の血管形成術用バルーンカテーテルの挿入・抜去(挿抜)により、様々な複雑さや問題が連鎖的に生じる可能性がある。例えば、長さの異なる複数のガイドワイヤーの抜去、再挿入の必要性、処置中の各工程において無菌操作を継続して実行しなければならないことに関連する複雑さ、処置時間の増加、長時間の放射線照射や造影剤投与といった追加工程によって生じるさらなる合併症の可能性、などが挙げられる。また、医療機器産業により広範な規格外製品マトリックスが提供されるため、病院コスト、倉庫コストや管理コストの増加につながり、上記の問題はさらに大きくなる。また、病院では、経済的理由から在庫品の量、種類、サイズや形状については慎重にならざるを得ないため、治療提供者が必要なときに自由に使用できる所望の製品サイズを持ち合わせていないという最適とは言えない状況も頻繁に起こる。したがって、設計者、開発者や治療提供者は、血管病変を治療するための新規かつ改善された治療装置および治療方法を模索し続けている。
【0003】
上記の問題への対処における大きな進歩の1つは、医療器具の交換が、処置中にワイヤーを取り換えることなく、また標的部位へのアクセスを失うことなく、留置している1つのガイドワイヤーを用いて実施できるようになったことである。「オーバーザワイヤー(OTW)」式の交換では、処置中、常にワイヤー制御を維持するために、特別に長いガイドワイヤーが必要である。患者の体外に延びるワイヤー部分の長さが器具自体の長さと少なくとも同程度のガイドワイヤーを用いることで、ワイヤーの近位部を常に固定して長手方向の配置を維持することが可能になるが、この操作は、一般に、アシスタントが医師からかなり離れた位置に下がって行っている。例えば、クロスオーバー手術または橈骨動脈アプローチで使用される末梢用カテーテルは、優に150cmを超える長さであり、使用するガイドワイヤーも、交換中に血管内に留置できるよう300cmを超える長さ(例えば350cm)のものが必要である。このようなロングワイヤー上でカテーテルを操作することは、煩わしいだけでなく、カテーテルやワイヤーを無菌状態に保つことができないというリスクを常に伴う。
【0004】
「ロングワイヤー」式やOTW式の手法は、器具を交換する方法として現在もよく使用されているが、より短いガイドワイヤーを用いる手法や、医師によるワイヤー制御が可能な方法も開発されている。一般に、さらに
1.マルチ交換型(MX)
2.高速交換型(RX)、および
3.固定ワイヤー型(FW)
という3種類のワイヤーカテーテルシステムがある。
【0005】
OTWカテーテル、MXカテーテルおよびRXカテーテルは、カテーテルとは別に、ガイドワイヤーを使用する必要があるが、FWカテーテルは、カテーテルとガイドワイヤーが一体化している。OTWカテーテルは、カテーテルの全長にわたって延在するガイドワイヤールーメンを含む。この場合、ガイドワイヤーは、その遠位部と近位部以外は、カテーテルのガイドワイヤールーメン全体にわたって配置されており、ガイドワイヤーの遠位部と近位部は、それぞれカテーテルの遠位端と近位端より延出している。MXカテーテルは、患者の体内ではオーバーザワイヤー構造をとり、体外ではカテーテルの側面の長手方向のジッパー状スリット構造からワイヤーが出るような構成になっている。
【0006】
OTWカテーテルおよびMXカテーテルには、全長にわたってガイドワイヤールーメンが設けられているが、RXカテーテルには、遠位端またはその近傍にのみ短尺のガイドワイヤールーメンが設けられている。しかし、従来のOTWカテーテルやMXカテーテルにも、従来のRXカテーテルにも上述したような欠点がある。RXカテーテルは、ワイヤーとカテーテルの交換操作を簡便にする目的で開発されたものである。このタイプのカテーテルは、遠位部の比較的短い部分にのみ延びる短尺のガイドワイヤールーメンを有しており、このガイドワイヤールーメン以外では、ガイドワイヤーがカテーテルの外に配置されるように構成されている。RXカテーテルのガイドワイヤー用の近位の出口ポートは、一般に、カテーテルの遠位端から近位方向に約5cm~30cm離れた位置に配置されている。使用時には、患者の血管系にまずガイドワイヤーが配置される。次いで、ワイヤー上にRXカテーテルの遠位部が装着される。カテーテルの遠位部をガイドワイヤーに沿って摺動させながら、カテーテルをガイドワイヤーに沿わせて進めることができる。RXカテーテルにおいては、非常に長い交換ガイドワイヤーを使用することなく、また初めに配置したガイドワイヤーを抜去することなく、RXカテーテルを抜去したり、別のRXカテーテルと交換することが可能である。しかし、短尺のガイドワイヤーを使用する場合は、血管内の治療部位に効果的にアクセスできる範囲が狭くなるため、適用範囲が大幅に制限される。
【0007】
MXカテーテルは、カテーテルのほぼ全長に延びる長手方向のスリットを含み、このスリットからワイヤーを側方に外す(ピールオフ)ことができる。MXカテーテルの遠位端に、長手方向のスリットがない短尺部分があり、この部分は、RXカテーテルの短尺部分と性質的に類似している。使用時には、カテーテルの近位端にガイドワイヤーが挿入され、OTWカテーテルと同様に、カテーテルの中央ルーメンを通って進められる。ワイヤーを抜去せずにMXカテーテルを抜去する際には、カテーテル壁面に設けられているスリットを通して、(体外にある)ワイヤーの近位端を側方に外す。MX式の手法は、OTWと同様に、内部ルーメンを利用してワイヤーを送達するという利点があり、また、RXカテーテルと同様に、使用者は倍の長さのガイドワイヤーを使用しなくて済む。しかし、この「ピールオフ」手法は、ワイヤーの近位端をしっかり保持しておく必要があるため、うんざりするような操作であり、また、ワイヤーが破損しないよう細心の注意を払う必要があるため、注意深いピールオフ操作が必要である。このカテーテルは、ピールオフ過程で破損してしまう可能性が高いため、再挿入には適さない。
【0008】
上記の点を考慮すると、公知のOTWシステム、MXシステム、RXシステムおよびFWシステムの制限や欠点を解消したカテーテルシステムであって、医療処置中にカテーテルの有効長を選択し調整することができるカテーテルシステムを提供できれば望ましい。特に、公知のシステムの利点を組み合わせたシステムであって、取り扱いが容易で、特にその有効長の選択を容易に行えるカテーテルシステムを提供できれば望ましい。さらに、カテーテルおよび/またはガイドワイヤーの抜去および交換を行わずに、医療処置中に有効長を選択して変更できるカテーテルシステムを提供できれば望ましい。
【0009】
いくつかのカテーテルシステムが、以下の先行技術文献において開示されている。しかし、これらの公知のカテーテルシステムのいずれも、本発明のカテーテルシステムにおける特徴の組み合わせを含むものではないため、公知のシステムのいずれも上記の問題を解決するものではない。
【0010】
国際公開第2017/124059号は、血管壁を通って進めるためのワイヤーを配置するという技術課題に関するものである。この文献に記載のシステムおよび方法は、ワイヤーまたは器具を進めることを妨げる閉塞またはその他の障害を、腔内空間により迂回することを目的としている。具体的には、この出願において、2つのガイドワイヤーポートおよび2つの偏向面を含むバイパスカテーテルが開示されている。これらの偏向面は、2つのガイドワイヤーポートにそれぞれ固定して割り当てられており、カテーテルの壁により形成されうるものである。したがって、それぞれの偏向面の位置は、割り当てられたガイドワイヤーポートまたはシャフト位置から動かすことはできない。
【0011】
米国特許公開第2008/0082049号(A1)は、第1のガイドワイヤーに隣接して第2のガイドワイヤーを配置するという技術課題に関するものである。具体的には、この出願において、交換カテーテル、第1および第2のガイドワイヤー、および固定要素を含むガイドワイヤー交換カテーテルシステムが開示されている。この交換カテーテルは、ルーメンを有するシャフトと、第1および第2の区画とを有し、該第1および第2の区画のそれぞれの近位端にガイドワイヤーポートが設けられている。上記固定要素は、カテーテルシャフトに対して移動可能な要素であり、第2のガイドワイヤーを、交換カテーテルの所定の位置、すなわち、第2の区画にある最も近位のガイドワイヤーポートに固定する機能を有する。
【0012】
米国特許公開第2009/000574号(A1)は、患者の体内の管腔を有する作業部位に導入するための細長い医療器具に、ガイドワイヤーを着脱可能に固定するという技術課題に関するものである。具体的には、この出願において、ワイヤーストッパーおよび調整可能なハンドルアセンブリーを含む細長い係合部材が開示されている。この係合部材は、ガイドワイヤーのシャフトと摩擦によって係合するように構成された遠位端を有しており、この細長い係合部材の遠位端の、上記の細長い医療器具に対する相対位置は調整することができる。
【0013】
米国特許公開第2005/0113902号(A1)は、柔軟性が改善されたカテーテル送達システムに関するものである。具体的には、この文献において、外側部材、内側部材、ガイドワイヤー出口ポート、制御ハンドル、およびガイドワイヤーを有する高速交換型カテーテルシステムが開示されている。この制御ハンドルにより、内側部材と外側部材の、軸方向の相対運動が可能である。この内側部材の近位部は、支持マンドレルとして形成されうるものであり、内側部材の遠位部は、外側部材へと延びるガイドワイヤー受け部を含んでいてもよい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
今般、本発明者らは、上記の問題が、カテーテルシャフトを有するカテーテルとマンドレルとを含み、該カテーテルシャフトの側面において、2つ以上のガイドワイヤー出口ポートが該カテーテルシャフトの軸方向の異なる位置に配置されていること、および、該マンドレルが、その先端を各ガイドワイヤー出口ポートに選択的に配置できるよう設計されており、そのように配置されることで、選択したガイドワイヤー出口ポートを通してガイドワイヤーを誘導できることを特徴とするカテーテルシステムにより解決できることを見出した。
【0015】
本出願は、患者の血管内の変形、狭窄、障害、病変および閉塞を治療するための、有効長の選択が可能なカテーテル、ならびに有効長の選択が可能なカテーテルを使用して患者の血管内の変形、狭窄、障害、病変および閉塞を治療する方法に関する。本出願に係る、有効長の選択が可能なカテーテルのシャフトの有効長は、医療処置前および医療処置中に、複数の長さの中から選択することができる。多くの実施形態において、有効長を選択するにあたり、医療提供者に対して、有効長の選択の範囲が相対的に位置表示される。この表示は、視覚マーキング、触覚フィードバック、放射線不透過性マーキングおよび/またはその他の種類の表示から選択される1以上を含むことができる。多くの実施形態において、有効長の選択が可能なカテーテルにおける有効長の選択機構は、有効長を選択した後、機械的にロックすることが可能である。
【0016】
本開示の特定のいくつかの態様における主題は、付番した以下の項にて説明することができる。
1.軸方向に沿って近位端から遠位端(111)へと延びるカテーテル(110)であって、
遠位に配置された膨張バルーンと、
近位に配置されたガイドワイヤーポートから前記カテーテル遠位端(111)へと延びるガイドワイヤールーメンと、
近位に配置されたインフレーションポートから前記膨張バルーンへと延びるインフレーションルーメンと
を含み、
前記ガイドワイヤールーメンに連通する少なくとも2つのガイドワイヤー出口ポートが、カテーテルシャフト(115)の側面に設けられ、該ガイドワイヤー出口ポートが、前記カテーテルの軸方向のそれぞれ異なる位置に配置されていることを特徴とする、カテーテル(110)。
特に、前記ガイドワイヤー出口ポートが、前記ガイドワイヤールーメンと前記カテーテルの外部とを連通させるために設けられており、このガイドワイヤー出口ポートによって、ガイドワイヤーがカテーテル内を通ってカテーテルの外部に送出されたり、カテーテルの外部からカテーテル内に挿入されることは十分に理解できるであろう。ガイドワイヤー出口ポートは、前記ガイドワイヤールーメンから前記カテーテルの外側面へと延びている。
2.カテーテル(110)とマンドレルとを含むカテーテルシステムであって、
該カテーテル(110)が、軸方向に沿って近位端からカテーテル遠位端(111)に延びており、
該カテーテルが、
遠位に配置された膨張バルーンと、
近位に配置されたガイドワイヤーポートから前記カテーテル遠位端(111)へと延びるガイドワイヤールーメンと、
近位に配置されたインフレーションポートから前記膨張バルーンへと延びるインフレーションルーメンと
を含み、
前記ガイドワイヤールーメンに連通する少なくとも1つのガイドワイヤー出口ポートが、カテーテルシャフト(115)の側面に設けられ、
前記マンドレルがマンドレルシャフトを含み、該マンドレルシャフトの断面が、前記ガイドワイヤールーメン内に受け入れられる寸法および形状を有することを特徴とする、カテーテルシステム。
特に、前記ガイドワイヤー出口ポートが、前記ガイドワイヤールーメンと前記カテーテルの外部とを連通させるために設けられており、このガイドワイヤー出口ポートによって、ガイドワイヤーがカテーテル内を通ってカテーテルの外部に送出されたり、カテーテルの外部からカテーテル内に挿入されることは十分に理解できるであろう。ガイドワイヤー出口ポートは、前記ガイドワイヤールーメンから前記カテーテルの外側面へと延びている。
3.前記ガイドワイヤールーメンに連通する少なくとも2つのガイドワイヤー出口ポートが、カテーテルシャフト(115)の側面に設けられ、該ガイドワイヤー出口ポートが、前記カテーテルの軸方向のそれぞれ異なる位置に配置されていることを特徴とする、先行する項に記載のカテーテルシステム。
4.前記マンドレルが、前記マンドレルシャフト(132)の近位に装着されたハンドル(135)を含むことを特徴とする、先行するいずれかの項に記載のカテーテルシステム。
5.前記マンドレルが、軸方向ストッパーを含み、該ストッパーが、前記マンドレルのガイドワイヤールーメンへの挿入長を制限することができる寸法および形状を有し、該ストッパーが、前記マンドレルシャフトの近位端を示すものであることを特徴とする、先行する項のいずれかに記載のカテーテルシステム。
前記軸方向ストッパーは、例えば、厚みをつけた部分であってもよい。前記ハンドルおよび/または前記軸方向ストッパーは、前記ガイドワイヤールーメン内で前記マンドレルの位置が不明にならないようにするためのものであり、かつ/または前記マンドレルの遠位端が前記カテーテルの遠位端より遠位に進むことを防ぐためのものである。
6.前記マンドレルハンドル(135)が、遠位でルアーコネクター、特にメス型ルアーコネクターと連結できる形状を有することを特徴とする、先行する項に記載のカテーテルシステム。
7.ロックグリップ部(120)をさらに含み、該ロックグリップ部が、遠位で前記カテーテルの前記ガイドワイヤーポートと連結できる形状および構成を有し、該ロックグリップ部が、前記ガイドワイヤールーメンの近位の延長部となるよう構成されている内部ルーメンを含むことを特徴とする、先行するいずれかの項に記載のカテーテルシステム。
8.前記ロックグリップ部の内部ルーメンが、前記マンドレルシャフトを受け入れることができるサイズおよび形状を有することを特徴とする、先行する項に記載のカテーテルシステム。
9.前記ロックグリップ部が、前記内部ルーメンの軸方向に係合している第1のコネクターと第2のコネクターとを含み、前記第1のコネクターが、前記カテーテルの前記ガイドワイヤーポートと連結可能なサイズおよび形状を有する自由端部を含み、前記第2のコネクターの自由端部が、前記マンドレルハンドルの遠位側と連結可能なサイズおよび形状を有することを特徴とする、先行するいずれかの項に記載のカテーテルシステム。
10.前記ロックグリップ部の第1のコネクターが、前記自由端部にオス型ルアーコネクターを備えており、かつ/または前記ロックグリップ部の第2のコネクターの前記自由端部が、メス型ルアーコネクターとして形成されていることを特徴とする、先行する項に記載のカテーテルシステム。
【0017】
11.前記ロックグリップ部の第1および第2のコネクターが、それぞれ前面を含み、該前面同士が向かい合っていることを特徴とする、先行するいずれかの項に記載のカテーテルシステム。
12.前記2つの前面の間に弾性カフが設けられており、該カフが中央開口部を含み、該カフがニュートラルな状態にある場合に、該中央開口部が前記マンドレルシャフトを受け入れることができるように該中央開口部のサイズおよび形状が設計されており、該カフが前記ロックグリップ部の軸方向に働く押圧を受けると、該中央開口部のサイズと前記ロックグリップ部の内部ルーメンのサイズが縮小するように該カフが構成されていることを特徴とする、先行する項に記載のカテーテルシステム。
前記カフに軸方向の圧力が加えられると、前記開口部に受け入れられているマンドレルシャフトに対して締付力が働くように構成されていてもよい。
13.前記マンドレルシャフトが前記開口部に受け入れられた状態で前記カフがニュートラルな状態にある場合に、前記カフの開口部が前記マンドレルシャフトとともに止血シーリングを形成するように該開口部のサイズおよび形状が設計されていることを特徴とする、先行する項に記載のカテーテルシステム。
これは、前記カフに軸方向の圧力が加えられると、前記マンドレルシャフトに対して締付力が働くことを意味している。
14.前記ロックグリップ部の第1および第2のコネクターがねじ係合していることを特徴とする、先行する項に記載のカテーテルシステム。
15.前記カフが、前記ロックグリップ部の第1および第2のコネクターのそれぞれの前面の間に受け入れられており、該カフのサイズ、形状および構成が、ねじ接続を強めた際に前記カフに軸方向の圧力が加えられるように設計されていることを特徴とする、先行するいずれかの項に記載のカテーテルシステム。
16.前記マンドレルハンドルが、遠位で、前記ガイドワイヤールーメンポートおよび/または前記ガイドワイヤーポートに装着されているロックグリップ部の遠位端の少なくとも1つと連結できるよう構成されていることを特徴とする、先行するいずれかの項に記載のカテーテルシステム。
17.前記ガイドワイヤールーメンの近位端と前記ガイドワイヤーポートに装着された近位端のいずれか一方に、マンドレル受け入れポートが設けられており、前記マンドレルの軸方向の寸法が、前記マンドレルシャフトの遠位端(131)を前記ガイドワイヤールーメン内で、少なくとも、最も遠位にある側面のガイドワイヤー出口ポートまで、最大で、前記カテーテルの先端(111)まで進めることができるように設計されていることを特徴とする、先行する項のいずれかに記載のカテーテルシステム。
18.前記マンドレルシャフトにおいて、少なくとも遠位端(131)が放射線不透過性の材料で作製されていることを特徴とする、先行するいずれかの項に記載のカテーテルシステム。
19.前記マンドレルシャフトの遠位端(131)が、偏向先端として形成されていることを特徴とする、先行するいずれかの項に記載のカテーテルシステム。
20.前記マンドレルシャフトの遠位端が、斜めの形状および/または丸み形状の少なくとも1つの形状であることを特徴とする、先行する項に記載のカテーテルシステム。
【0018】
21.前記マンドレルシャフトの遠位端(131)が、斜面としての形状を有することを特徴とする、先行する2項のいずれかに記載のカテーテルシステム。
22.前記マンドレルシャフトの遠位端(131)が、球状、放物線状、双曲線状および楕円状の少なくとも1つの形状を含むことを特徴とする、先行する3項のいずれかに記載のカテーテルシステム。
23.前記マンドレルシャフトの遠位端(131)が、前記マンドレルシャフトの長軸に対して回転対称または回転非対称であることを特徴とする、先行する4項のいずれかに記載のカテーテルシステム。
24.前記マンドレルシャフトの遠位端(131)の遠位最末端が、前記マンドレルシャフトの断面の中心にあるか、中心から外れた位置にあることを特徴とする、先行する項に記載のカテーテルシステム。
25.前記マンドレルシャフトの複数の断面において、各断面が少なくとも本質的に円形状を示すか、非円形状を示すことを特徴とする、先行するいずれかの項に記載のカテーテルシステム。
26.前記マンドレルシャフトの断面のサイズおよび形状が、前記偏向先端を除いては、前記マンドレルシャフトの軸方向全体にわたって少なくとも本質的に一定であることを特徴とする、先行する項に記載のカテーテルシステム。
27.前記マンドレル内に、該マンドレルの遠位端および近位端の少なくとも一方から延びるマンドレルルーメン(1321)を含むこと、
-いくつかの実施形態において、該マンドレルルーメンが前記マンドレルの遠位端から近位端まで延びていること;ならびに/または
-いくつかの実施形態において、該マンドレルルーメンが前記マンドレル内の中心を通ること;ならびに/または
-いくつかの実施形態において、該マンドレルルーメンが円形状の断面を示すこと;ならびに/または
-いくつかの実施形態において、該マンドレルルーメンが、その軸方向全体にわたって一定の断面を示すこと
を特徴とする、先行するいずれかの項に記載のカテーテルシステム。
28.前記マンドレルシャフトに、前記マンドレルルーメンから前記マンドレルシャフトの外側面へと延びる側面ポートが少なくとも1つ設けられていることを特徴とする、先行するいずれかの項に記載のカテーテルシステム。
29.前記マンドレルシャフトが、棒体、ハイポチューブもしくはブレードチューブ、またはこれらの組み合わせとして提供されていることを特徴とする、先行するいずれかの項に記載のカテーテルシステム。
30.前記マンドレルシャフトに、少なくとも1つのマーキングが設けられており、該マーキングが前記マンドレルシャフトに配置されていることによって、前記マンドレルシャフトが前記ガイドワイヤールーメンに受け入れられた状態で前記マーキングと前記マンドレル受け入れポートの位置を軸方向で揃えたときに、前記マンドレルシャフトが遠位方向にガイドワイヤー出口ポートまで延在する、特に、正確にガイドワイヤー出口ポートの位置まで延在すること、ならびに
いくつかの実施形態において、前記マンドレルシャフトの遠位端が、ガイドワイヤー出口ポートの下に配置されていること
を特徴とする、先行するいずれかの項に記載のカテーテルシステム。
【0019】
31.前記カテーテルが、少なくとも2つのガイドワイヤー出口ポートを含み、前記マンドレルシャフトに、該側面ガイドワイヤー出口ポートの少なくとも1つに対応するマーキング、特に、各側面ガイドワイヤー出口ポートに対応するマーキングが設けられており、前記マーキングが前記マンドレルシャフトの軸方向に配置されていることによって、前記マンドレルシャフトが前記ガイドワイヤールーメンに受け入れられた状態でいずれかのマーキングと前記マンドレル受け入れポートの位置を軸方向で揃えたときに、前記マンドレルシャフトが遠位方向に特定の1つの前記ガイドワイヤー出口ポートまで延在することを特徴とする、先行する項に記載のカテーテルシステム。
32.前記マーキングが、それぞれ異なる特定の外観、例えば色などを示し、さらなるマーキングが、前記カテーテルシャフトの各側面ガイドワイヤー出口ポートの軸方向の位置に設けられ、前記カテーテルシャフトの各側面出口ポートの位置に設けられたマーキングが、それぞれ異なる特定の外観、例えば色などを示し、前記カテーテルシャフト上のマーキングおよび前記マンドレルシャフト上のマーキングが、それぞれ対応する外観を示し、対応する外観を示すマーキング同士が、前記カテーテルシャフトおよび前記マンドレルシャフトの軸方向に配置されていることによって、前記マンドレルシャフトが前記ガイドワイヤールーメンに受け入れられた状態で前記マンドレルシャフトの特定のマーキングと前記マンドレル受け入れポートの位置を軸方向で揃えたときに、前記マンドレルシャフトが遠位方向に特定の1つのガイドワイヤー出口ポートまで延在し、該ガイドワイヤー出口ポートの位置が前記カテーテルシャフト上で対応する外観を示すマーキングによって示されることを特徴とする、先行する項に記載のカテーテルシステム。
33.少なくとも1つの側面ガイドワイヤー出口ポートの軸方向の位置が、前記カテーテルシャフト上のマーキングによって示され、特に、少なくとも2つの側面ガイドワイヤー出口ポートの軸方向の位置が、前記カテーテルシャフト上のそれぞれ異なるマーキングによって示されることを特徴とする、先行するいずれかの項に記載のカテーテルまたはカテーテルシステム。
34.前記カテーテルシャフトおよび/または前記マンドレルシャフトの少なくとも一方に、2つ以上のシャフトマーキングが軸方向に離れて配置され、治療提供者に視覚フィードバック、血管造影フィードバック、または触覚フィードバックを提供することを特徴とする、先行するいずれかの項に記載のカテーテルまたはカテーテルシステム。
35.前記カテーテルが、カテーテルシャフトと、該カテーテルシャフトの近位に配置されたマニホールド(119)とを含み、前記ガイドワイヤールーメンおよび前記インフレーションルーメンが、前記マニホールド内へと延びており、前記ガイドワイヤーポートおよび前記インフレーションポートが、前記マニホールドから延びており、前記ポートの少なくとも1つが、ルアーコネクターとして、特にメス型ルアーコネクターとして形成されていてもよいことを特徴とする、先行するいずれかの項に記載のカテーテルまたはカテーテルシステム。
36.前記ガイドワイヤールーメンが前記マニホールドを通って直線的に延びており、それにより、前記ガイドワイヤーポートが軸方向に延びていることを特徴とする、先行する項に記載のカテーテルまたはカテーテルシステム。
37.前記インフレーションルーメンが前記マニホールド内で湾曲または折曲しており、それにより、前記インフレーションポートが側方に変位している、特に、前記マニホールドに隣接する前記カテーテルシャフトから片側に変位していることを特徴とする、先行する2項のいずれかに記載のカテーテルまたはカテーテルシステム。
38.前記側面ガイドワイヤー出口ポートの少なくとも1つが、前記カテーテルシャフトの同じ側に配置されており、特に、すべての前記側面ガイドワイヤー出口ポートが、前記カテーテルシャフトにおいて、前記インフレーションポートが変位している側と同じ側に配置されていることを特徴とする、先行する項に記載のカテーテルまたはカテーテルシステム。
39.前記マニホールドに隣接する位置に、前記カテーテルシャフトを覆うキンク防止スリーブ(118)が設けられていることを特徴とする、先行するいずれかの項に記載のカテーテルまたはカテーテルシステム。
【0020】
前記マンドレルが、ガイドワイヤーを前記カテーテルの1以上のガイドワイヤー出口ポートから選択的に送出するために提供されていることは十分に理解できるであろう。ガイドワイヤー出口ポートを選択する際、前記マンドレルを、前記カテーテルシャフトの前記ガイドワイヤールーメンに調整可能に挿入することにより、カテーテルシャフトの硬さを変えることが可能である。したがって、特定のいくつかの実施例において、前記マンドレルを補強用マンドレルと呼ぶ場合がある。
【0021】
上記の各項で開示された複数の主題および特徴をそれぞれ組み合わせることも可能である。本明細書で開示された主題が、上記の各項により制限されるものではなく、また、以下に記載の追加的および補足的な開示および主題を含むものであることは、当業者であれば理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】一実施例における、組み立てた状態のカテーテルシステムの斜視図である。
【
図2】いくつかの実施例における、分解した状態のカテーテルシステムの各構成要素の透視図である。
【
図3】いくつかの実施例におけるカテーテルシステムの各構成要素の寸法の関係を縦に並べて示した側面図である。
【
図4A-E】いくつかの実施例におけるカテーテルシステムの有効長を選択する過程をA~Eの5段階に分けて、各段階における構造を連続して縦に並べて示した側面図である。
【
図5】一実施例における、有効長の選択を可能にするガイドワイヤー偏向機構の断面図である。
【
図6】一実施例における、様々な診断用液体、治療用液体および/または体液の注入または吸引を可能にする、注入用ルーメンを有するマンドレルの断面図である。
【
図7A-B】いくつかの実施例における、オーバーザワイヤー(OTW)型(
図7A)と高速交換(RX)型(
図7B)で配置されたカテーテルシステムを2つ縦に並べて示した側面図である。
【
図8】いくつかの実施例における、有効長の選択、側枝アクセスならびに/または様々な診断用液体、治療用液体および/もしくは体液の注入もしくは吸引が可能な、側面開口部を有するガイドワイヤー用かつ/または注入用のルーメンを有するマンドレルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本出願は、血管病変を治療するために使用される、有効長の選択が可能なシャフトを有するカテーテルの様々な実施形態に関する。有効長の選択が可能な本発明のカテーテルは、血管内の1つの標的部位に対して治療を行う場合に限らず、複数の標的部位に対する治療を含む処置を行う場合でも、各治療に適用可能な有効長を選択することができる。有効長の選択が可能な本発明のカテーテルの有効なシャフト長さは、医療処置前および医療処置中に選択することができることから、カテーテルを患者の血管に挿入した後でも、最初の配置が適していなければ調整することが可能であり、かつ/またはガイドワイヤーとカテーテルの長さのミスマッチや変更にも、最初に挿入した第1のカテーテルおよび/またはガイドワイヤーの抜去や、異なる長さの第2のカテーテルおよび/またはガイドワイヤーの再挿入を行うことなく対応することができる。有効長の選択が可能な本発明のカテーテルでは、第1の標的部位の治療後、第2の標的部位の治療用にカテーテルを再配置するために、処置前および処置中にカテーテルの有効長を変更できることから、当該カテーテルを使用することによって、血管内の複数の標的部位の治療を極めて簡便に行うことができる。また、有効長の選択が可能な本発明のカテーテルであれば、少ない数でも人体の構造上様々な場所に生じ得る治療部位へのアクセスに必要な有効長を可能な限りカバーできるため、必要な器具の在庫を削減できる可能性がある。また、治療提供者は、カテーテルの有効全長より短いガイドワイヤーを選択することも可能であるため、取り扱いやすさが格段に向上するとともに、必要であれば器具の有効全長を利用することができるという選択肢も残されている。以下の説明において、有効長の選択が可能な血管形成術用バルーンカテーテルの実施例を図示して説明する。血管形成術用バルーンカテーテルは、様々な治療において一般に使用されるものである。血管形成術用バルーンカテーテルの様々な実施形態を参照して説明される「有効長の選択が可能である」という特性は、診断処置および治療処置に使用されるその他の種類のカテーテルにも適用および導入することが可能である。以下の記載において、カテーテルおよびカテーテルシステムについて、血管への適用、すなわち血管適用に関して説明していくが、適切であると認められる場合は、原理上、このカテーテルおよびカテーテルシステムをその他の体腔でも使用できること、すなわち非血管性適用も可能であることは理解されるであろう。
【0024】
カテーテルシステム
有効長の選択が可能な血管形成術用バルーンカテーテルシステムの各構成要素および特徴について、以下に、
図1~7を参照しながら説明する。
図1に、一実施例における、組み立てた状態の本出願のカテーテルシステムの斜視図を示す。
図1において、有効長の選択が可能なカテーテルシステムは、左から右へと順に、血管形成術用バルーンカテーテル110と、ロックグリップ120と、ハンドルを備えたマンドレル130とを含む。組み立てた状態においては、図示されるように、ロックグリップ120により、カテーテル110と、ハンドルを備えたマンドレル130が連結されている。
【0025】
図2に、いくつかの実施例における、分解した状態のカテーテルシステムの各構成要素を示した透視図を示す。
図2において、カテーテル110は、2つのポート、すなわち、(1)インフレーションポート1191および(2)ガイドワイヤーポート1192を有するマニホールド119を含み、該マニホールドから延びるこれら2つのポートは、メス型ルアーコネクターの形状を有する。このマニホールドは、カテーテルシャフト115の第1の端部に装着されている。カテーテルシャフト115の、マニホールド119に近接する部分は、キンク防止スリーブ118で覆われている。
図2に示す実施形態において、カテーテルシャフト115は、2つの内部ルーメン、すなわち、(1)インフレーションポート1191に連通するインフレーションルーメンとしての第1のルーメン、および(2)ガイドワイヤーポート1192に連通するガイドワイヤールーメンとしての第2のルーメンをさらに含む。
【0026】
インフレーションルーメンは、インフレーションポート1191に連通しており、カテーテルシャフトに沿って膨張式カテーテルバルーン112まで延びている。インフレーションルーメン内またはインフレーションポートがそれぞれ陽圧の状態では、造影剤、生理食塩水液剤、空気などの液体および/または気体を、インフレーションポート1191からインフレーションルーメンを経て膨張式カテーテルバルーン112まで送達することができ、それによってカテーテルバルーンが膨張する。この液体および/または気体は、インフレーションルーメン内またはインフレーションポートがそれぞれ陰圧の状態では、逆に、膨張したカテーテルバルーン112からインフレーションルーメンを経てインフレーションポート1191から外部へと送出され、カテーテルバルーンは収縮する。「陽圧」は、バルーン112周囲の圧力より高い圧力状態を示し、「陰圧」は、バルーン112周囲の圧力より低い圧力状態を示す。
【0027】
ガイドワイヤールーメンは、ガイドワイヤーポート1192からカテーテルシャフトの先端111まで延びている。このガイドワイヤールーメン構造により、オーバーザワイヤー(OTW)操作が可能である。すなわち、有効長の選択が可能なカテーテルをガイドワイヤー上に摺動可能に装着し、シャフトの一部を患者の血管に挿入した状態で、該カテーテルをガイドワイヤールーメンの内在部分全体に沿っていずれかの方向に並進させることが可能である。したがって、OTW型構造の場合、カテーテルの有効全長、すなわち、キンク防止スリーブ118の先端または遠位端からカテーテルの先端111までの長さを利用することができる。例示したカテーテルシャフト115は、少なくとも2つのガイドワイヤー出口ポート、すなわち、(1)第1のガイドワイヤー出口ポート113および(2)第2のガイドワイヤー出口ポート116をさらに含み、これらの出口ポートは、カテーテルシャフト115の第2の端部とキンク防止スリーブ118の先端の間に配置されている。ガイドワイヤー出口ポート113、116は、カテーテルシャフトの側面に形成されており、カテーテルシャフトの、インフレーションルーメンとは反対側の面からガイドワイヤールーメンへの側面アクセスを提供する。ガイドワイヤールーメンは、先端111から第1のガイドワイヤー出口ポート113へと延びる第1の部分、第1のガイドワイヤー出口ポート113から第2のガイドワイヤー出口ポート116まで延びる第2の部分、および第2のガイドワイヤー出口ポート116からガイドワイヤーポート1192まで延びる第3の部分を含むと考えることができる。したがって、ガイドワイヤーは、ガイドワイヤールーメンの第1の部分に位置するカテーテル先端111から、第1のシャフト軸に沿って遠位から近位に向かってガイドワイヤー出口ポート113までのガイドワイヤールーメン内に延在していてもよく;あるいは、ガイドワイヤールーメンの第1および第2の部分を合わせた部分に位置するカテーテル先端111から、シャフト軸の第1および第2の部分に沿ってガイドワイヤー出口ポート116までのガイドワイヤールーメン内に延在していてもよく;あるいは、ガイドワイヤールーメンの第1、第2および第3の部分を合わせた部分に位置するカテーテル先端111から、シャフト軸の第1、第2および第3の部分に沿ってガイドワイヤーポート1192までのガイドワイヤールーメン内に延在していてもよい。
図2に示す実施形態において、シャフト115は、限局した狭いシャフト部分114、117をさらに有していてもよく、これらのシャフト部分114、117は、それぞれ軸方向領域に対称的に設けられており、それぞれガイドワイヤー出口ポート113、116の軸方向の位置と一致している。シャフト部分114、117は、シャフトの表面、表面内部または表面下に形成された別の層を含み、(a)シャフト上で視覚的に、触覚的に、または血管造影により認識できる外観を示し、かつ、(b)ガイドワイヤー出口ポート113、116の軸方向領域の構造を補強するものである。特に、ガイドワイヤー出口ポート113、116により具体的に示した、このガイドワイヤールーメン構造により、カテーテルの高速交換(RX)操作が可能である。すなわち、有効長の選択が可能なカテーテルをガイドワイヤー上に摺動可能に装着し、シャフトの一部を患者の血管に挿入した状態で、ガイドワイヤーがガイドワイヤールーメンの第1または第2の部分を通るように当該カテーテルをいずれかの方向に並進させることが可能である。明瞭性のために、RX操作においては、ガイドワイヤーを内在部分内に配置したときに、ガイドワイヤーの一部がカテーテルシャフトの外表面に露出した状態で、該カテーテルシャフトに沿っていてもよい。一方、OTW操作においては、ガイドワイヤーを内在部分内に配置したときに、ガイドワイヤーはカテーテルシャフトで完全に覆われている。RX型構造の場合、カテーテルの有効長として選択可能な部分は、カテーテルシャフトの先端111から(1)ガイドワイヤー出口ポート113まで、またはカテーテルシャフトの先端111から(2)ガイドワイヤー出口ポート116までである。
図7A-Bは、ガイドワイヤーの可能な操作方法に関してさらに詳細に示したものである。
【0028】
インフレーションルーメンおよびガイドワイヤールーメンは完全に分離されているため、インフレーションルーメンを通して送られる液体および/または気体がガイドワイヤールーメンに漏出したり、ガイドワイヤールーメン内の流体がインフレーションルーメンに漏出したりする可能性はない。インフレーションルーメンおよびガイドワイヤールーメンは、側面に沿って平行して(並んで)延びている。ガイドワイヤー出口ポート113、116は、ガイドワイヤールーメンとインフレーションルーメンを隔てる壁とは反対側にあるガイドワイヤールーメンの側面に設けられている。
【0029】
図2に示す実施形態において、ロックグリップ120は、オス型ルアーコネクター121と、第1のグリップ面122と、第2のグリップ面123と、メス型ルアーコネクター124とを含む。このロックグリップの内部ルーメンは、コネクター121からコネクター124まで延びており、ロックグリップがカテーテルに装着されている場合は、ガイドワイヤールーメンの近位端に付属するルーメンを形成するよう構成されている。組み立てた状態では、ロックグリップ120のオス型ルアーコネクター121は、カテーテル110のガイドワイヤーポート1192のメス型ルアーに連結されている。マンドレル130は、シャフト132と、このシャフトの近位に装着されたハンドル135とを含む。シャフト132は、ロックグリップの近位のメス型ルアー124に挿入可能で、ロックグリップの内部ルーメン内およびガイドワイヤールーメン内に受け入れられる形状および寸法を有する。ロックグリップ内に、内断面寸法を有する中央開口部を有する変形可能なカフがあり、このカフは、ロックグリップの内部ルーメンの内面の一部を形成している(図示外)。ロックグリップの2つのグリップ面122、123が機械的に係合すると、カフが変形して、内部ルーメンの内断面寸法が縮小する。これら2つのグリップ面の係合を解除すると、カフは元の寸法に戻り、内部ルーメンも元の内断面寸法に戻る。マンドレルをロックグリップに通して挿入すると、ロックグリップとの機械的な係合により、マンドレルを所定の位置で固定するグリップ力が生じる。
【0030】
図2に示す実施形態において、マンドレル130は、偏向面として形成された先端131と、シャフト132と、2つ以上のシャフトマーキング133、134と、オス型ルアーの形状を有するハンドル135とを含む。組み立てた状態では、マンドレル130のシャフト132がロックグリップ120の内部ルーメンを通って、シャフト132の外径より大きい内径を有する、カテーテル110のガイドワイヤールーメン内へと摺動する。このマンドレルは、カフの開口部にぴったり適合して受け入れられるサイズの断面を有しており、カフがニュートラルで変形していない状態にある場合は、マンドレルの摺動動作が大きく制限されることはない。したがって、マンドレルシャフト132が、係合していない状態のロックグリップの内部ルーメンを通ると、カフがマンドレルシャフト132の表面をぴったりと包囲するため、止血シーリングが形成される。ロックグリップが係合した状態になると、ハンドルを備えたマンドレルの位置が、カテーテル110のシャフト115の位置に対して軸方向にロックされる。したがって、ロックグリップ120がカテーテル110に装着されている場合、ロックグリップ120により、止血シーリングが形成されるとともに、ハンドルを備えたマンドレル130の挿入長がロックされる。
図2に示す実施形態において、オス型ルアーの形状を有するハンドル135は、シャフト132に固定して装着されている任意の構成要素である。ハンドル135は、(a)操作時には、マンドレルの取り扱いやすさを向上させ、(b)カテーテルシステムの保管時には、ロックグリップ120のメス型ルアー124に可逆的に装着される。別のいくつかの実施形態において、マンドレルシャフトは、中空ハイポチューブ、強化(ブレード)チューブおよび/またはこれらの組み合わせにより形成されるルーメンを含んでいてもよい。また、オス型ルアーの形状を有するマンドレルハンドルは、マンドレルシャフトのルーメンに連通するポートを含んでいてもよい。
【0031】
寸法
図3に、いくつかの実施例におけるカテーテルシステムの各構成要素の寸法の関係を縦に並べて示した側面図を示す。カテーテルシステムの全長は、長さL1~L6(301~306)の和で示される。長さL1(301)は、カテーテル先端111から第1のガイドワイヤー出口ポート113までの長さである。長さL2(302)は、第1のガイドワイヤー出口ポート113から第2のガイドワイヤー出口ポート116までの長さである。長さL3(303)は、第2のガイドワイヤー出口ポート116からキンク防止スリーブ118の遠位端までの長さである。長さL4(304)は、キンク防止スリーブ118の遠位端からマニホールド119の近位端までの長さである。長さL5は、ロックグリップ120の近位端から遠位端までの長さである。長さL6は、マンドレルハンドル135の近位端から遠位端までの長さである。マンドレル130の全長は、L7~L9およびL6(307、308、309、306)の和で示される。長さL7(307)は、マンドレル先端131から第1のマーカー133までの長さである。長さL8(308)は、第1のマーカー133から第2のマーカー134までの長さである。長さL9(309)は、第2のマーカー134からマンドレルハンドル135の近位端までの長さである。長さL6(306)は、マンドレルハンドル135の近位端から遠位端までの長さである。
図3に示す実施形態において、マンドレルシャフト132の長さL14(314)(長さL7、L8、L9の和)は、血管形成術用バルーンカテーテルの全長L12(312)(長さL1~L4の和に、ロックグリップの長さL5を加えたもの)と等しいか、それより短い。長さL2、L3、L4、L5の和で示される長さL11(311)は、長さL7、L8の和で示される長さL13に等しい。長さL3、L4、L5の和で示される長さL10は、長さL7に等しい。さらに、2つのガイドワイヤー出口ポート113と116の間の距離を示す長さL2は、第1のマーカー133から第2のマーカー134までの距離L8に等しい。
図3に示す実施形態において、長さL1は50cm、L2は30cm、L3は55cm、L4は約8~10cm、L5は約2~4cm、L6は約1~2cmである。以上の寸法には、ルアー連結深さを考慮した許容値がさらに含まれる場合があり、また、治療提供者が視覚的に認識できるようにマーカーを露出させるための任意の提示長さが含まれる場合がある。
【0032】
有効長の選択
図4A-Eは、カテーテルシステムの有効長を選択する過程をA~Eの5段階に分けて、各段階における構造を連続して縦に並べて示した側面図である。
図4Aにおいて、カテーテルシステムは、完全に組み立てた状態で示されている。ロックグリップ120は、カテーテル110に装着されている。ハンドルを備えたマンドレル135は、ロックグリップを通してカテーテルシャフト115に完全に挿入されており、ガイドワイヤー出口ポート113および116の開口部はいずれも、マンドレルシャフトで軸方向に覆われている。この構造において、ロックグリップは、機械的な係合が解除されている、すなわち、ロックが解除されている状態であり、マンドレルのハンドル135は、ロックグリップに連結されている。ハンドル135を点線の円形矢印の方向に回転させると、マンドレル130がロックグリップから外れ、ハンドルを備えたマンドレルが、カテーテルのカテーテルシャフト115のガイドワイヤールーメン内で摺動可能になるため、ガイドワイヤールーメン内における位置調整またはガイドワイヤールーメンからの抜去が可能になる。別のいくつかの実施形態において、ハンドル135がない場合、ロックグリップ120は、可逆的かつ機械的にマンドレルと係合する。
【0033】
図4Bにおいて、ロックグリップ120により、カテーテル110のシャフト115に対するマンドレル130のシャフト132の位置は機械的に固定、すなわち、ロックされている。ロックグリップ110の第2のグリップ面123を点線の円形矢印の方向に回転させると、ロックグリップとマンドレルシャフト132の機械的な係合が解除される。この状態で、治療提供者は、マンドレルを近位方向に引いて、2つ以上のシャフトマーカー133、134を有するマンドレルシャフト132を引き出してもよい。このようにしてマンドレルの位置を変える場合、治療提供者は、以下の選択が可能である。(1)第1のシャフトマーカー133の位置をロックグリップの近位端に合わせる(
図4C);(2)第2のシャフトマーカー134の位置をロックグリップの近位端に合わせる(
図4D);および/または(3)マンドレルを完全に抜去する(
図4E)。
【0034】
図4Cにおいては、第2のシャフトマーカー134の位置が、ロックグリップの近位端(メス型ルアーコネクター)に揃うように調整されている。点線の円形矢印で示すように、ロックグリップ110の第2のグリップ面123を反対に回転させると、カテーテルシャフトに対するマンドレルの位置がロックされる。この位置では、マンドレル先端の偏向面が、第1のガイドワイヤー出口ポート113の下にくるように揃えられている。さらに、偏向面の近位端と、ガイドワイヤー出口ポートの近位端の位置が揃っている。この特徴については、
図5にてさらに詳細に示す。ここで、「下」は、絶対的な幾何学的な意味での「下」と解釈されるものではない。この第1の有効長に対応する構造において、ガイドワイヤールーメンの選択可能な部分は、カテーテル110の先端111から第1のガイドワイヤー出口ポート113まで延びており、この長さが第1の有効長UL1(451)に相当する。ガイドワイヤー上に器具を通すと、ガイドワイヤーは、カテーテル先端111から器具内を通って、指定された第1のガイドワイヤー出口ポート113で送出される。
図4Cの例示的な実施形態において、ガイドワイヤー出口ポート113は、例えば、カテーテル先端111から50cm離れた位置に設けられており、50cmの例示的な第1の有効長が提示されている。
【0035】
図4Dにおいては、第1のシャフトマーカー133の位置が、ロックグリップの近位端に揃うように調整されており、マンドレル先端の偏向面が、第2のガイドワイヤー出口ポート116の下にくるように配置されている。この第2の有効長に対応する構造において、ガイドワイヤールーメンの選択可能な部分は、カテーテル110の先端111から第2のガイドワイヤー出口ポート116まで延びており、この長さが第2の有効長UL2(452)に相当する。ガイドワイヤー上に器具を通すと、ガイドワイヤーは、カテーテルの先端111から器具内を通って、指定された第2のガイドワイヤー出口ポート116で送出される。
図4Dの実施形態において、ガイドワイヤー出口ポート116は、例えば、カテーテルの先端111から80cm離れた位置に設けられており、80cmの例示的な第2の有効長が提示されている。
【0036】
ガイドワイヤーをカテーテルの先端からガイドワイヤールーメンに挿入するとき、またはカテーテルをガイドワイヤー上で押し進めるときに、マンドレルの偏向先端131が、ガイドワイヤーを偏向させて各出口ポートから送出するのを補助することで、マンドレルによってガイドワイヤーの進行が妨げられるという事態(後述)が確実に回避されることは十分に理解できるであろう。
【0037】
図4の別のいくつかの実施形態において、シャフトマーキング133、134は、治療提供者に色で提示されるものであってもよい。第1のガイドワイヤー出口ポート113のシャフト部分114は、第2のマーカーバンド134と同一または第2のマーカーバンド134に対応する色を示していてもよく、第2のガイドワイヤー出口ポート116のシャフト部分117は、第1のマーカーバンド133と同一または第1のマーカーバンド133に対応する色を示していてもよい。
【0038】
図4Eにおいては、マンドレル130が、カテーテル110およびロックグリップ120から完全に抜去されている。この第3の有効長に対応する構造において、ガイドワイヤールーメンは、カテーテル110の先端111からガイドワイヤーポート1192まで延びている。ここでの有効長は、カテーテルの先端111からキンク防止スリーブ118の先端までの長さであり、この長さが第3の有効長UL3(453)に相当する。ガイドワイヤー上に器具を通すと、ガイドワイヤーは、カテーテル先端111から器具内を通って、指定された第3のガイドワイヤーポート1192で送出される。
図4Eの実施形態において、キンク防止スリーブ118の先端は、例えば、カテーテルの先端111から135cm離れた位置に設けられており、135cmの例示的な第3の有効長または有効全長が提示されている。別のいくつかの実施形態において、有効長の選択が可能なカテーテルの複数の有効長の構成は、上記したものと数、サイズ、配置、形状および構造が異なっていてもよい。
【0039】
ガイドワイヤー偏向機構
図5に、一実施例における、有効長の選択を可能にするガイドワイヤー偏向機構の断面図を示す。
図5において、カテーテルシャフト115は、(1)インフレーションルーメン1151および(2)ガイドワイヤールーメン1152を含むダブルルーメン構造で示されている。ガイドワイヤールーメンは、インフレーションルーメンに隣接して配置されている。シャフト115は、ガイドワイヤールーメン1152に連通する2つのガイドワイヤー出口ポート113、116を含む。マンドレルシャフト132は、ガイドワイヤールーメンに部分的に挿入された状態で示されている。傾斜した偏向面として形成されているマンドレル先端131は、シャフト部分114に存在する第1のガイドワイヤー出口ポート113の下に配置されている。シャフト部分117に存在する第2のガイドワイヤー出口ポート116の開口部は、マンドレルシャフト132で遮蔽されている。ガイドワイヤー140がマンドレル先端131の偏向面に当接すると、ガイドワイヤー先端または端部は、偏向面から離れてインフレーションルーメンとは反対方向に向けられ、第1のガイドワイヤー出口ポート113から送出される。別のいくつかの実施形態において、偏向先端は、例えば、丸み形状、球状、円錐形状のいずれであってもよく、マンドレルシャフトの長軸に対して対称であっても非対称であってもよい。偏向先端が非対称な形状であれば、ガイドワイヤーを特定の方向に偏向させる上で有利な可能性があり、偏向先端が対称な形状であれば、使いやすさという点で有利な可能性がある。
【0040】
図6に示す実施形態において、カテーテルシャフト115は、(1)インフレーションルーメン1151および(2)ガイドワイヤールーメン1152を含むダブルルーメン構造で示されている。ガイドワイヤールーメンは、インフレーションルーメンに隣接して配置されている。シャフト115は、ガイドワイヤールーメン1152に連通する2つのガイドワイヤー出口ポートを含むが、ここで図示されているのは出口ポート113のみである。マンドレルシャフト132は、ガイドワイヤールーメンに部分的に挿入されており、マンドレル先端131は、第1のガイドワイヤー出口ポート113の下に配置されている。マンドレル先端131は、丸み形状の偏向面として形成されており、放射線不透過性材料で作製されている。この偏向面が対称形、例えば、半球状または丸み形状の先端として形成されていれば、シャフトのガイドワイヤールーメン内で先細りの偏向面をガイドワイヤー出口ポートに向けるという潜在的な問題が緩和される。
【0041】
図6に示す実施形態において、マンドレルシャフトは、マンドレル先端131の偏向面からマンドレルシャフト132の第2の端部まで延びる注入用ルーメン1321をさらに含む。このマンドレルは、マンドレルハンドルの近位端まで延びている。マンドレル先端131が2つ以上のガイドワイヤー出口ポート113、116のいずれか一方の下に配置されている場合、マンドレルシャフト132内の注入用ルーメン1321により、様々な診断用液体、治療用液体および/または体液を注入または吸引することが可能であり、これらの液体は、マンドレルハンドルの近位端からマンドレルルーメン1321を通って2つ以上のガイドワイヤー出口ポート113、116のいずれか一方まで送られる。
図8に示す関連した実施形態において、マンドレルは、先端ではなくシャフト側面部を出口とするルーメンを含んでいてもよい。断面図において、この開口部は三日月形状を有していてもよく、この開口部は、斜めに延びてマンドレルシャフトのルーメンへとつながっている。
【0042】
図6に示す実施形態において、マンドレルシャフトに存在する注入用ルーメンの内径は、0.3556mmまたは0.014インチである。ガイドワイヤーを偏向させるために、対応するガイドワイヤーの外径は、0.4572mm以上または0.018インチ以上であることが好ましい。このようにガイドワイヤーの直径を注入用ルーメンの直径より大きく作製することで、ガイドワイヤーが近位方向からくる偏向面に当接した際に不注意に注入用ルーメンに入るのを防ぐことができる。あるいは、注入用ルーメンを利用して、0.014インチのガイドワイヤーを遠位方向に通す、すなわち、マンドレルハンドルの近位端から、丸み形状の偏向面として形成されたマンドレル先端を出口とする注入用ルーメン1321を通り、さらにカテーテルのガイドワイヤールーメン1152の第1または第2の部分を通ってカテーテルシャフト115の先端まで通すこともできる。したがって、別のガイドワイヤールーメンとして注入用ルーメンを使用することで、カテーテルと、挿入したマンドレルを留置したまま、ガイドワイヤーを簡便に交換することができる。さらに、注入用ルーメンを有するマンドレルを留置したまま、小さい直径のガイドワイヤーを通過させることができるため、カテーテルシャフトの硬さを変えるという目的でマンドレルを効果的に利用することも可能である。
【0043】
図8に、いくつかの実施例における、有効長の選択、側枝アクセスならびに/または様々な診断用液体、治療用液体および/もしくは体液の注入もしくは吸引が可能な、側面開口部を有するガイドワイヤー用かつ/または注入用のルーメンを有するマンドレルの断面図を示す。注入用ルーメン1321の出口が、マンドレル先端131の偏向面ではなく、マンドレルシャフト132の側面に設けられている場合、遠位方向に通される0.014インチのガイドワイヤー140Bは、斜めに偏向されてガイドワイヤー出口ポート113、116の1つ以上を通して送出される。このような構造により、(1)近位方向に通されるガイドワイヤー140Aの偏向および/または(2)遠位方向に通されるガイドワイヤー140Bの偏向が可能になる。したがって、治療提供者は、当該システムを使用して、(1)0.035インチの第1のガイドワイヤー140Aを、第1のガイドワイヤー出口ポート113へと通すことができ、かつ、実質上同時に、(2)0.014インチの第2のガイドワイヤー140Bを、マンドレルハンドルにあるポートから第2のガイドワイヤー出口ポート116へと通すことができる。このように注入用ルーメンを利用することにより、側枝血管へのアクセスおよび側枝血管の調査を簡便に行うことができる。治療提供者は、このような構造を利用することで、カテーテルを第1の治療部位に配置したままで、側枝にある第2の治療部位の準備ができるため、このような構造は有用である。別のいくつかの実施形態において、カテーテルシステムは、(1)直線の開口部を有する注入用ルーメンを含む、マンドレル先端を有するマンドレルと、(2)側面開口部を有する注入用ルーメンを含む、マンドレル先端を有するマンドレルをセットで含んでいてもよく、このようなマンドレルは治療提供者にとって最も汎用性が高い。
【0044】
図4C-Eに記載の少なくとも3つのガイドワイヤー配置の比較から明らかなように、カテーテルシャフトのガイドワイヤールーメン内において、偏向面として形成されたマンドレルの一部であるマンドレル先端の位置を選択して長さをロックすることにより、ガイドワイヤーの配置を変更することが可能であることから、治療提供者は、使用時に、2つの可能な操作モード、すなわち、(1)RX操作および(2)OTW操作を選択することができる。本発明のカテーテルシステムが備える、ガイドワイヤーの配置を変更することが可能であるという特徴により、治療提供者は、少なくとも3つの有効長、すなわち、上記の3つ以上のガイドワイヤールーメン構造により具体的に示した(1)UL1、(2)UL2および(3)UL3から選択することが可能である。また、ロックグリップのロック機構により、マンドレルの挿入長を固定してカテーテルシャフトに挿入することで、治療提供者は、カテーテルシャフトの柔軟性を長さ方向に可変的に調整することができ、それにより、カテーテルシステムの操縦性および押し込み性を向上させることができる。別のいくつかの実施形態において、マンドレル材料の選択およびカテーテルシャフトに対するマンドレルの挿入の程度によって、カテーテルシステムのシャフトの柔軟性および/または硬さを変えることが可能である。さらに別のいくつかの実施形態において、マンドレルを用いて、様々な診断用液体、治療用液体および/または体液を注入または吸引することが可能であり、かつ、実質上同時に、マンドレルが別のガイドワイヤールーメンとして機能し得ることで、カテーテルと、挿入したマンドレルを留置したまま、ガイドワイヤーを簡便に交換することができる。
【0045】
様々な有効長の選択
図7A-Bに、OTW型(
図7A)とRX型(
図7B)で配置されたカテーテルシステムを2つ縦に並べて示した側面図を示す。
図7A-Bにおいて、カテーテルシステム100Aおよび100Bは、バルーン112と、シャフト115と、第1のガイドワイヤー出口ポート113とを含む。いずれのシステムも、ガイドワイヤー140上に通され、イントロデューサーシース150内に通されている。カテーテル先端からイントロデューサーシースの近位端までの距離は、有効長または内在部分の長さと等しい。
【0046】
図7Aに示すOTW型の実施形態において、イントロデューサーシース150は、ガイドワイヤー出口ポート113の遠位に配置されている。ガイドワイヤー140は、バルーン112の遠位端から、カテーテルシャフト115の内部のガイドワイヤールーメンを通り、イントロデューサー150の近位端の近位に配置されているガイドワイヤー出口ポート113から送出されている。このOTW型構造において、ガイドワイヤーは、カテーテルの内在部分の全長にわたってカテーテルシャフトのガイドワイヤールーメン内を通っている。よって、有効長は、カテーテル先端からイントロデューサーシースの近位端までの距離に等しく、イントロデューサーシースの近位端と、ガイドワイヤー出口ポート113の位置が揃っている。カテーテル器具100Aを(イントロデューサーシース150を通して)さらに遠位に拡張することで、治療提供者は、OTW型構造から、
図7Bに示すRX型構造へと簡便に切り換えることが可能であり、それにより、カテーテルの有効長部分をさらに延ばすことができる。
【0047】
図7Bに示す実施形態において、イントロデューサーシース150は、ガイドワイヤー出口ポート113の近位に配置されている。ガイドワイヤー140は、バルーン112の遠位端から、カテーテルシャフト115の内部のガイドワイヤールーメンを通り、イントロデューサー150の遠位端の遠位に配置されているガイドワイヤー出口ポート113から送出されている。さらに、ガイドワイヤーは、カテーテルシャフト115と平行してイントロデューサーシース150のルーメンを通り、イントロデューサーシースの近位端に送出されている。このRX型構造において、ガイドワイヤーは、カテーテルシャフトのガイドワイヤールーメンの第1または第2の部分を通り、さらにカテーテルの内在部分の残りの部分にわたっては、シャフトと平行してイントロデューサーシース150のルーメン内を通っている。このRX型構造においては、有効長を、カテーテル先端からガイドワイヤー出口ポート113の位置を超えてイントロデューサーシースの近位端に至る長さまで延長できる。治療提供者によって、このようにOTW型構造からRX型構造へと切り換えられることは、ガイドワイヤーの交換またはカテーテルの取換を必要とせずにカテーテルシステムの有効長を延長できるという点で有益である。また、初めに選択したガイドワイヤー出口ポートを選択したままでよく、第2または第3のガイドワイヤー出口ポートへと切り換える必要がない。さらに、治療提供者は、有効長を、(1)第1と第2のガイドワイヤー出口ポートとの間、および(2)第2のガイドワイヤー出口ポートとキンク防止スリーブの先端との間で可変的に調整することもできる。
【0048】
したがって、有効長の選択が可能な血管形成術用バルーンカテーテルにより採用できる有効長のセットは、カテーテルシャフトに配置された2つ以上のガイドワイヤー出口ポート、およびカテーテルマニホールドにあるガイドワイヤーポートから得られる。治療提供者に提示される2つ以上のシャフトマーキングによって、カテーテルシャフトのガイドワイヤールーメン内におけるマンドレルの位置を選択し、次いで、マンドレルシャフトを長さ方向にロックするか、ガイドワイヤールーメンからマンドレルを抜去することにより、治療提供者は、医療処置前または医療処置中に、少なくとも3つの有効長に対応する構造の中からいずれかを選択して準備することができる。偏向面として形成されたマンドレル先端まで延びるマンドレルは、その先端を各ガイドワイヤー出口ポートの下に配置することで、カテーテル器具を通るガイドワイヤーを、カテーテルシャフトの選択した位置で体系的に偏向させることができる。
【0049】
したがって、本開示の主題の特定のいくつかの態様は、下記の有効長の選択が可能なカテーテルシステム(100)に関するものであってよい。
【0050】
カテーテル(110)と、ロックグリップ(120)と、ハンドルを備えたマンドレル(130)とを含むカテーテルシステム(100)であって、
【0051】
前記カテーテル(110)が、カテーテル先端(111)と、バルーン(112)と、シャフト(115)と、キンク防止スリーブ(118)と、該カテーテル先端と該キンク防止スリーブの先端の間に配置される2つ以上のガイドワイヤー出口ポート(131、116)と、マニホールド(119)とをさらに含むこと、
【0052】
前記マニホールド(119)が、インフレーションポート(1191)と、ガイドワイヤーポート(1192)とをさらに含むこと、
【0053】
前記カテーテルシャフト(115)が、インフレーションルーメン(1151)とガイドワイヤールーメン(1152)とをさらに含むダブルルーメンシャフト(115)として構成されていること、
【0054】
前記ガイドワイヤールーメン(1152)を介して、前記カテーテルの先端(111)と、前記2つ以上のガイドワイヤー出口ポート(113、116)と、前記ガイドワイヤーポート(1192)とが連通していること、
【0055】
前記マンドレル(130)が、偏向面として形成された先端(131)と、シャフト(132)と、ハンドル(135)とを含み、該マンドレルシャフト(132)が、2つ以上の表面マーキング(133、134)をさらに含むこと、
【0056】
前記マンドレルシャフト(132)が、任意選択で注入用ルーメン(1321)を含むこと、
【0057】
前記注入用ルーメン(1321)が、前記マンドレル先端(131)まで直線的に貫通しているか、
【0058】
前記注入用ルーメン(1321)が、前記マンドレルシャフト(132)の側面へと貫通していること、
【0059】
前記マンドレルが、側面開口部を有する注入用ルーメンを含む構成である場合、前記カテーテルシステムにより、ガイドワイヤーを近位ガイドワイヤーポートから前記注入用ルーメンを通って遠位方向に通すことが可能であり、かつ、実質上同時に、別のガイドワイヤーを前記カテーテルの遠位端から近位方向に、前記2つのガイドワイヤー出口ポート(113、116)の少なくとも1つへと通すことが可能であること、
【0060】
前記マンドレル先端(131)の偏向面が、任意選択で半球状に形成され、マンドレル先端(131)が、任意選択で放射線不透過性材料で作製されていること、
【0061】
前記マンドレルのシャフト(132)が、該シャフトの外径より大きい外径を有する、前記カテーテルシャフト(115)のガイドワイヤールーメン(1152)内で摺動可能であること、
【0062】
前記ロックグリップ(120)が、オス型ルアーコネクター(121)と、第1のグリップ面(122)と、第2のグリップ面(123)と、メス型ルアーコネクター(124)とを含むこと、
【0063】
前記ロックグリップ(120)が前記カテーテルマニホールド(119)に装着されている場合、前記マンドレルシャフトを、前記カテーテルシャフト(115)内の所定の位置で可逆的に固定することが可能であり、前記マンドレルの相対的な位置が、治療提供者に提示される前記シャフトマーキング(133、134)により決定されること、
【0064】
前記マンドレルが、前記2つ以上のシャフトマーキング(133、134)により位置決めされている場合は、偏向面として形成されたマンドレル先端(131)がガイドワイヤー先端(140)を偏向させることにより、該ガイドワイヤーが所定のガイドワイヤー出口ポート(113、116)から送出され、また、前記マンドレルが抜去されている場合(1192)もあること、
【0065】
上述した、ガイドワイヤーを偏向させる機構と、前記ガイドワイヤールーメン内で前記マンドレルシャフトを位置表示に従って長さ方向にロックする機構(ロックグリップのロック機構による)とを組み合わせることにより、前記ガイドワイヤーポートおよび前記2つ以上のガイドワイヤー出口ポートから選択される1つのポートに狙いを定めて選択することが可能であり、それにより、少なくとも3つの選択可能な有効長が治療提供者に選択肢として提供されること、
【0066】
前記有効長が、(1)第1と第2のガイドワイヤー出口ポートとの間、および(2)第2のガイドワイヤー出口ポートと前記キンク防止スリーブの先端との間で可変的に調整できること、
【0067】
前記ロックグリップのロック機構により、前記マンドレルの挿入長を固定して前記カテーテルシャフトに挿入することで、治療提供者が、該カテーテルシャフトの柔軟性を長さ方向に可変的に調整することができ、それにより、前記カテーテルシステムの操縦性および押し込み性を向上させることができること、さらに、このような特徴から、いくつかの実施形態において、前記マンドレルが補強用マンドレルと称される場合があること、
【0068】
前記マンドレルを用いて、様々な診断用液体、治療用液体および/または体液を注入または吸引することが可能であり、かつ、実質上同時に、前記マンドレルが別のガイドワイヤールーメンとして機能し得ることで、前記カテーテルと、挿入したマンドレルを留置したまま、ガイドワイヤーを簡便に交換できること、ならびに
【0069】
前記システムが、側面開口部を有する注入用ルーメンを有するマンドレルを含む構成である場合、治療提供者が、(1)0.035インチの第1のガイドワイヤーを、第1のガイドワイヤー出口ポート113へと通すことができ、かつ、実質上同時に、(2)0.014インチの第2のガイドワイヤーを、マンドレルハンドルにあるポートから第2のガイドワイヤー出口ポート116へと通すことができ、よって、2本の異なるサイズのガイドワイヤーを実質上同時に使用できること
を特徴とするカテーテルシステム(100)。
【0070】
本発明のカテーテルシステムのさらなる実施形態を、以下の項に記載する。
項1
有効長の選択が可能なカテーテルシステム(100)であって、
カテーテル(110)と、
ロックグリップ(120)と、
ハンドルを備えたマンドレル(130)と
を含むカテーテルシステム(100)。
項2
前記カテーテルが、
カテーテル先端(111)と、
バルーン(112)と、
シャフト(115)と、
キンク防止スリーブ(118)と、
該カテーテル先端と該キンク防止スリーブの先端の間に配置される2つ以上のガイドワイヤー出口ポート(131、116)と、
マニホールド(119)と
を含むことを特徴とする、項1のカテーテルシステム。
項3
前記ロックグリップ(120)が、
オス型ルアーコネクター(121)と、
第1のグリップ面(122)と、
第2のグリップ面(123)と、
メス型ルアーコネクター(124)と
を含むことを特徴とする、項1のカテーテルシステム。
項4
前記マンドレル(130)が、
偏向面として形成された先端(131)と、
シャフト(132)と、
ハンドル(135)と
を含むことを特徴とする、項1のカテーテルシステム。
項5
前記マニホールド(119)が、
インフレーションポート(1191)と、
ガイドワイヤーポート(1192)と
をさらに含むことを特徴とする、項2のカテーテルシステム。
項6
前記カテーテルシャフト(115)が、インフレーションルーメン(1151)とガイドワイヤールーメン(1152)とをさらに含むダブルルーメンシャフト(115)として構成されていることを特徴とする、先行するいずれかの項に記載のカテーテルシステム。
項7
前記ガイドワイヤールーメン(1152)を介して、前記カテーテルの先端(111)と、前記2つ以上のガイドワイヤー出口ポート(113、116)と、前記ガイドワイヤーポート(1192)とが連通していることを特徴とする、先行するいずれかの項に記載のカテーテルシステム。
項8
前記マンドレルシャフト(232)が、2つ以上のマーキング(133、134)をさらに含むことを特徴とする、先行するいずれかの項に記載のカテーテルシステム。
項9
前記マンドレルシャフト(132)が、注入用ルーメン(1321)をさらに含むことを特徴とする、先行するいずれかの項に記載のカテーテルシステム。
項10
前記2つ以上のシャフトマーキング(133、134)が、治療提供者に視覚フィードバック、血管造影フィードバック、または触覚フィードバックを提供することを特徴とする、先行するいずれかの項に記載のカテーテルシステム。
【0071】
項11
前記マンドレル先端(131)が、半球状の偏向面として形成されていることを特徴とする、先行するいずれかの項に記載のカテーテルシステム。
項12
前記マンドレル先端(131)が、放射線不透過性の材料で作製されていることを特徴とする、先行するいずれかの項に記載のカテーテルシステム。
項13
前記マンドレルのシャフト(132)が、該シャフトの外径より大きい外径を有する、前記カテーテルシャフト(115)のガイドワイヤールーメン(1152)内で摺動可能であることを特徴とする、先行するいずれかの項に記載のカテーテルシステム。
項14
前記ロックグリップ(120)が前記カテーテルマニホールド(119)に装着されている場合、前記マンドレルシャフト(132)を、前記カテーテルシャフト(115)内の所定の位置で可逆的に固定できることを特徴とする、先行するいずれかの項に記載のカテーテルシステム。
項15
前記カテーテルシャフト(115)に対するマンドレルシャフトの相対的な位置が、前記2つ以上のシャフトマーキング(133、134)によって治療提供者に提示されることを特徴とする、先行するいずれかの項に記載のカテーテルシステム。
項16
前記マンドレルが、前記2つ以上のシャフトマーキング(133、134)により位置決めされている場合、偏向面として形成されたマンドレル先端(131)がガイドワイヤー先端(140)を偏向させることにより、該ガイドワイヤーが前記2つのガイドワイヤー出口ポート(113、116)の1つから送出されることを特徴とする、先行するいずれかの項に記載のカテーテルシステム。
項17
ガイドワイヤーを偏向させる機構と、前記ガイドワイヤールーメン内で前記マンドレルシャフトを位置表示に従って長さ方向にロックする機構とを組み合わせることにより、前記ガイドワイヤーポートおよび前記2つ以上のガイドワイヤー出口ポートから選択される1つのポートに狙いを定めて選択することが可能であり、それにより、少なくとも3つの選択可能な有効長が治療提供者に選択肢として提供されることを特徴とする、先行するいずれかの項に記載のカテーテルシステム。
項18
前記ロックグリップのロック機構により、前記マンドレルの挿入長を固定して前記カテーテルシャフトに挿入することで、治療提供者が、該カテーテルシャフトの柔軟性を長さ方向に可変的に調整することができ、それにより、前記カテーテルシステムの操縦性および押し込み性を向上させることができることを特徴とする、先行するいずれかの項に記載のカテーテルシステム。
項19
前記マンドレルを用いて、様々な診断用液体、治療用液体および/または体液を注入または吸引することが可能であり、かつ、実質上同時に、前記マンドレルが別のガイドワイヤールーメンとして機能し得ることで、前記カテーテルと、挿入したマンドレルを留置したまま、ガイドワイヤーを簡便に交換できることを特徴とする、先行するいずれかの項に記載のカテーテルシステム。
項20
前記有効長が、(1)第1と第2のガイドワイヤー出口ポートとの間、および(2)第2のガイドワイヤー出口ポートと前記キンク防止スリーブの先端との間で可変的に調整できることを特徴とする、先行するいずれかの項に記載のカテーテルシステム。
【0072】
項21
前記注入用ルーメン(1321)が、前記マンドレル先端(131)まで直線的に貫通していることを特徴とする、先行するいずれかの項に記載のカテーテルシステム。
項22
前記注入用ルーメン(1321)が、前記マンドレルシャフト(132)の側面へと貫通していることを特徴とする、先行するいずれかの項に記載のカテーテルシステム。
項23
前記システムが、側面開口部を有する注入用ルーメンを有するマンドレルを含む構成である場合、治療提供者が、(1)0.035インチの第1のガイドワイヤーを、第1のガイドワイヤー出口ポート113へと通すことができ、かつ、実質上同時に、(2)0.014インチの第2のガイドワイヤーを、マンドレルハンドルにあるポートから第2のガイドワイヤー出口ポート116へと通すことができ、よって、2本の異なるサイズのガイドワイヤーを実質上同時に使用できることを特徴とする、先行するいずれかの項に記載のカテーテルシステム。
項24
前記マンドレルが、側面開口部を有する注入用ルーメンを含む構成である場合、前記カテーテルシステムにより、ガイドワイヤーを近位ガイドワイヤーポートから前記注入用ルーメンを通って遠位方向に通すことが可能であり、かつ、実質上同時に、別のガイドワイヤーを前記カテーテルの遠位端から近位方向に、前記2つのガイドワイヤー出口ポート(113、116)の少なくとも1つへと通すことが可能であることを特徴とする、先行するいずれかの項に記載のカテーテルシステム。