(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】自律走行システム
(51)【国際特許分類】
G05D 1/43 20240101AFI20240219BHJP
A01B 69/00 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
G05D1/43
A01B69/00 301
(21)【出願番号】P 2021020288
(22)【出願日】2021-02-11
(62)【分割の表示】P 2017130505の分割
【原出願日】2017-07-03
【審査請求日】2021-02-16
【審判番号】
【審判請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【氏名又は名称】種村 一幸
(72)【発明者】
【氏名】上田 良平
【合議体】
【審判長】渋谷 善弘
【審判官】鈴木 貴雄
【審判官】田々井 正吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-93127(JP,A)
【文献】特開2016-67244(JP,A)
【文献】特開2004-8053(JP,A)
【文献】特開2016-52919(JP,A)
【文献】特開平9-178481(JP,A)
【文献】特開2004-254543(JP,A)
【文献】特開2016-93125(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02
A01B 69/00 - 69/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された走行経路に沿って走行車を自律走行させる自律走行システムであって、
前記走行車に装着された作業機の作業状態に応じて特定制御信号を出力する作業機側制御部と、
前記走行経路に沿って自律走行する前記走行車の目標車速を設定する目標車速設定部と、
前記走行車の車速が前記目標車速設定部によって設定される目標車速になるように、前記走行車の車速を制御する車速制御部と、
表示部による画像表示を制御する表示制御部と、を含み、
前記目標車速設定部は、前記特定制御信号が出力された場合、前記走行経路における走行車の位置に関わらず、前記特定制御信号に基づいて前記目標車速を設定
し、
前記表示制御部は、前記表示部に前記走行経路を表示させ、前記作業機側制御部から前記特定制御信号が出力されたときの前記走行車の位置を示す所定画像を、前記表示部に表示された前記走行経路上に表示させることが可能である、自律走行システム。
【請求項2】
前記走行経路を生成可能な経路生成部をさらに含み、
前記経路生成部は、前記表示部に複数表示された前記所定画像を通る他の走行経路を生成可能である、
請求項1に記載の自律走行システム。
【請求項3】
前記特定制御信号は、前記走行車の減速を要求する減速信号と、前記減速信号に基づいて前記走行車の車速が制御されている状態の解除を要求する減速解除信号と、前記作業機による作業を停止するための作業停止信号と、を含んでいることを特徴とする
請求項1または2に記載の自律走行システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律走行システムに関する。
【背景技術】
【0002】
予め定められた走行経路に沿って走行車を自律走行させる自律走行システムが開発されている。自律走行システムでは、走行経路上に設定された変速基準位置に走行車が達する際に、走行車の走行速度を減少または増大させる車速制御が採用されることがある。一方、下記特許文献1には、走行車に作業機を装着した場合において、作業機の作業負荷に応じて、走行車の走行速度を制御する車速制御が開示されている。具体的には、作業機に備えられた検出部が作業機の作業負荷を検出し、作業負荷の度合に応じて、走行車の走行速度を減少または増大させる制御信号を作業機側制御部が走行車に送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された車速制御の技術を自律走行システムに適用すると、作業機側制御部から送信される制御信号により行われる車速制御と、走行車が変速基準位置に達したことにより行われる車速制御とが、短時間の間に切り換えて実行されることが起こり得る。これでは、短時間の間に加速や減速が繰り返され、走行車の燃費が悪くなるおそれがある。また、走行車にユーザが搭乗する場合、ユーザに不快感を与えるおそれがある。
【0005】
そこで、この発明の主たる目的は、走行車を自律走行させる構成において、作業機から制御信号が与えられた際に最適な車速制御を行うことができる自律制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、予め設定された走行経路に沿って走行車を自律走行させる自律走行システムであって、前記走行車に装着された作業機が特定の作業状態になったときに所定の制御信号を出力する作業機側制御部と、前記走行経路に沿って自律走行する前記走行車の目標車速を設定する目標車速設定部と、前記走行車の車速が前記目標車速設定部によって設定される目標車速になるように、前記走行車の車速を制御する車速制御部とを含み、前記目標車速設定部は、前記所定の制御信号が出力された場合、前記走行経路における走行車の位置に関わらず、設定された前記目標車速に基づいて特定目標車速として設定する、自律走行システムを提供する。
【0007】
【0008】
【0009】
【0010】
【0011】
【0012】
【0013】
【0014】
【0015】
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る自律走行システムが適用されるトラクタの側面図である。
【
図3】
図3は、
図1のトラクタの座席の周囲に配置される各種の操作装置を示す平面図である。
【
図4】
図4は、
図1のトラクタの電気的構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、自律走行経路の一例を示す模式図である。
【
図6】
図6は、自律走行経路の接続路付近の模式図である。
【
図7】
図7は、作業機側制御部から所定の制御信号が出力されない場合に、変速基準位置付近を走行するトラクタの車速の変化を説明するためのグラフである。
【
図8A】
図8Aは、自律走行経路の自律作業路を等速で走行中に減速信号が出力されたときのトラクタの車速の変化を説明するためのグラフである。
【
図8B】
図8Bは、目標車速が第1基準車速から第2基準車速に切り換えられたことによってトラクタが変速されている途中に、減速信号が出力されたときのトラクタの車速の変化を説明するためのグラフである。
【
図8C】
図8Cは、自律走行経路の接続路を等速で走行中に減速信号が出力されたときのトラクタの車速の変化を説明するためのグラフである。
【
図8D】
図8Dは、目標車速が第2基準車速から第1基準車速に切り換えられたことによってトラクタが変速されている途中に、減速信号が出力されたときのトラクタの車速の変化を説明するためのグラフである。
【
図9A】
図9Aは、自律走行経路の自律作業路を等速で走行中に減速解除信号が出力されたときのトラクタの車速の変化を説明するためのグラフである。
【
図9B】
図9Bは、目標車速が第1基準車速に減速率を乗じた速度から第2基準車速に減速率を乗じた速度に切り換えられたことによってトラクタが変速されている途中に、減速解除信号が出力されたときのトラクタの車速の変化を説明するためのグラフである。
【
図9C】
図9Cは、自律走行経路の接続路を等速で走行中に減速解除信号が出力されたときのトラクタの車速の変化を説明するためのグラフである。
【
図9D】
図9Dは、目標車速が第2基準車速に減速率を乗じた速度から第1基準車速に減速率を乗じた速度に切り換えられたことによってトラクタが変速されている途中に、減速解除信号が出力されたときのトラクタの車速の変化を説明するためのグラフである。
【
図10】
図10は、自律走行システムによる車速制御処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図11】
図11は、
図10に示す自律走行システムによる車速制御処理において、減速信号に基づいて車速が制御されているときに行われる処理を説明するためのフローチャートである。
【
図12】
図12は、減速信号に基づく特定目標車速の演算処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図13】
図13は、減速解除信号に基づく特定目標車速の演算処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図14】
図14は、自律走行中に無線通信端末の表示部に表示される画像を説明するための図である。
【
図15】
図15は、トラクタが自律走行経路を走行し終えた後に無線通信端末の表示部に表示される画像を説明するための図である。
【
図16】
図16は、第2実施形態に係る自律走行システムによる、減速信号に基づく特定目標車速の演算処理の一例を示すフローチャートである。
【
図17】
図17は、第2実施形態に係る自律走行システムによる、減速解除信号に基づく特定目標車速の演算処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、この発明の実施の形態を添付図面を参照して詳細に説明する。 以下の実施形態では、作業車両として、作業機が装着された走行車を有するトラクタを例にとって説明する。作業車両は、トラクタの他、田植機、コンバイン、土木・建設作業車両、除雪車等、乗用型作業車両であってもよいし、歩行型作業車両であってもよい。また、以下の実施形態で、自律走行とは、トラクタが備える制御部(ECU)によりトラクタの走行機構が制御されて、予め定められた経路に沿ってトラクタが走行することをいう。自律作業とは、作業機が自動的に制御されることにより、自律走行経路に予め設定された作業位置において作業機が作業を行うことをいう。これに対して、手動走行・手動作業とは、トラクタが備える各機構がユーザにより操作され、走行および作業が行われることを意味する。
【0018】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る自律走行システムが適用されるトラクタ1の側面図である。
図2は、トラクタ1の平面図である。 トラクタ1は、手動走行および自律走行(自動走行)が可能にされている。この実施形態では、トラクタ1は、ユーザが搭乗しない状態で、経路生成システムが生成した自律走行経路(経路)に従って自律走行を行えるように構成されていてもよい。また、このトラクタ1は、ユーザが搭乗した状態で自律走行を行えるように構成されていてもよい。
【0019】
トラクタ1は、圃場内を自律走行する走行車としての走行機体2を備える。走行機体2には、例えば、ロールベーラ、耕耘機(管理機)、プラウ、施肥機、草刈機、播種機等の種々の作業機を選択的に装着することができる。本実施形態では、走行機体2に、作業機3としてロールベーラが装着されている例を説明する。 作業機3は、連結桿6を介して、走行機体2に連結されて、走行機体2が走行する際にけん引される。作業機3は、作業機機構部82および成形室81を含む。作業機機構部82は、走行機体2から伝達される駆動力によって作動する。作業機機構部82は、圃場の牧草等の被成形材料を拾い上げるピックアップ装置80と、ピックアップ装置80で拾い上げた牧草などの被成形材料を切断する切断部(図示せず)とを含んでいてもよい。成形室81は、ピックアップ装置80が拾い上げた被成形材料を収容し、被成形材料を円柱状のロールベール(図示せず)に圧縮成形する。
【0020】
作業機3は、圧縮成形されたロールベールに巻きつけるネット材等の被覆材を、成形室81内に繰り出し可能に保持する構成であってもよい。作業機3は、成形室81内で被覆材をロールベールに巻き付けた後、成形室81の後方側を開いてロールベールを排出するように構成されていてもよい。 トラクタ1の走行機体2は、
図2に示すように、その前部が左右一対の前輪7で支持され、その後部が左右一対の後輪8で支持されている。
【0021】
走行機体2の前部にはボンネット9が配置されている。本実施形態では、このボンネット9内に、トラクタ1の駆動源であるエンジン10等が収容されている。このエンジン10は、例えばディーゼルエンジンにより構成されていてもよいし、例えばガソリンエンジンにより構成されていてもよい。また、エンジン10に加えて、または代えて、電気モータ等の他の駆動源を採用してもよい。
【0022】
ボンネット9の後方には、ユーザが搭乗するためのキャビン11が配置されていてもよい。キャビン11の内部には、ユーザが操向操作するためのステアリングハンドル12、ユーザが着座可能な座席13、および、ユーザが各種の操作を行うための様々な操作装置等が設けられている。ただし、トラクタ1は、キャビン11付きのものに限られず、キャビン11を備えない構成であってもよい。
【0023】
走行機体2の下部には、トラクタ1のシャーシ20が設けられている。当該シャーシ20は、機体フレーム21、トランスミッション22、フロントアクスル23およびリアアクスル24等を含んでいる。 機体フレーム21は、トラクタ1の前部における支持部材であって、直接、または防振部材等を介してエンジン10を支持している。トランスミッション22は、エンジン10からの動力を変化させてフロントアクスル23およびリアアクスル24に伝達する。フロントアクスル23は、トランスミッション22から入力された動力を前輪7に伝達する。リアアクスル24は、トランスミッション22から入力された動力を後輪8に伝達する。
【0024】
図3は、座席13の周囲に配置される各種の操作装置を示す平面図である。
図3を参照して、操作装置としては、モニタ装置36、アクセルレバー15、リバーサレバー26、主変速レバー27、速度回転数選択切換スイッチ29、速度回転数設定変更ダイアル14、ダイアル設定切換スイッチ16、副変速レバー19、PTOスイッチ17、PTO変速レバー18、作業機昇降スイッチ28および作業
機下降速度調整ノブ25等を例として挙げることができる。これらの操作装置は、座席13の近傍、またはステアリングハンドル12の近傍に配置されている。
【0025】
モニタ装置36は、トラクタ1の様々な情報を表示可能に構成されている。また、モニタ装置36にはボタン、ダイアル等の信号入力部材が備えられており、この信号入力部材をユーザが操作することにより、トラクタ1に各種の指示信号を入力することができる。 アクセルレバー15は、エンジン10の出力回転数を設定するための操作具である。 リバーサレバー26は、トラクタ1の前進、後進、および停止を切り換えるための操作具である。主変速レバー27は、リバーサレバー26で指示した方向にトラクタ1が走行する速度(車速)を無段階で変更するための操作具である。
【0026】
速度回転数選択切換スイッチ29は、手動走行を行うトラクタ1が、その車速とエンジン10の回転数との組合せを、予め設定されている2種類の組合せで交互に切り換えるための操作具である。速度回転数設定変更ダイアル14は、前記2種類の組合せのそれぞれに関して、トラクタ1の車速(走行機体2の車速)およびエンジン10の回転数の設定値を調整するための操作具である。ダイアル設定切換スイッチ16は、速度回転数設定変更ダイアル14が、トラクタ1の車速の設定値を変更するか、エンジン10の回転数の設定値を変更するかを切り換えるための操作具である。
【0027】
副変速レバー19は、トランスミッション22内の走行副変速ギア機構の変速比を切り換えるための操作具である。 PTOスイッチ17は、トランスミッション22の後端から突出したPTO軸(動力伝達軸(図示せず))への動力の伝達/遮断を切換するための操作具である。PTO変速レバー18は、PTO軸の回転速度の変速を行うための操作具である。
【0028】
作業機昇降スイッチ28は、走行機体2に装着された作業機の高さを所定範囲内で昇降させるための操作具である。作業機下降速度調整ノブ25は、作業機が下降するときの速度を調整するための操作具である。 キャビン11の屋根5上には、衛星信号受信用アンテナ46および無線通信用アンテナ48が設けられている(
図1参照)。衛星信号受信用アンテナ46は、走行機体2の位置情報を検出するために使用されるアンテナである。無線通信用アンテナ48は、無線通信端末100(後述する
図4参照)と通信を行うためのアンテナである。無線通信端末100は、自律走行経路の作成、および、トラクタ1との通信等を行うものである。無線通信端末100は、この実施形態では、タブレット型パーソナルコンピュータ(タブレット型PC)で構成されている例を示すが、これに限定されるものではない。
【0029】
座席13には、ユーザが座席に座っていることを検知する着座センサ13aが設けられていてもよい。この着座センサ13aは、例えば、メンブレンスイッチを利用した構成とすることができる。
図4は、トラクタ1の主要な電気的構成を示すブロック図である。
図4に示すように、トラクタ1は、走行機体2の動作(前進、後進、停止および旋回等)、および、走行機体2に装着された作業機の動作(昇降、駆動および停止等)を制御するための制御部4を備える。制御部4には、トラクタ1の各部を制御するための複数のコントローラがそれぞれ電気的に接続されている。
【0030】
複数のコントローラは、エンジンコントローラ31、車速コントローラ32、操向コントローラ33、昇降コントローラ34およびPTOコントローラ35を含む。 エンジンコントローラ31は、エンジン10の回転数等を制御するものである。エンジンコントローラ31は、エンジン10に設けられる燃料噴射装置としてのコモンレール装置41と電気的に接続されている。コモンレール装置41は、エンジン10の各気筒に燃料を噴射するものである。この場合、エンジン10の各気筒に対するインジェクタの燃料噴射バルブが開閉制御されることによって、燃料供給ポンプによって燃料タンクからコモンレール装置41に圧送された高圧の燃料が各インジェクタからエンジン10の各気筒に噴射され、各インジェクタから供給される燃料の噴射圧力、噴射時期、噴射期間(噴射量)が高精度にコントロールされる。エンジンコントローラ31は、コモンレール装置41を制御することで、エンジン10の回転数等を制御する。エンジンコントローラ31は、コモンレール装置41を制御することで、エンジン10への燃料の供給を停止させ、エンジン10の駆動を停止させることもできる。
【0031】
車速コントローラ32は、トラクタ1の車速を制御するものである。具体的には、トランスミッション22には、例えば可動斜板式の油圧式無段変速装置である変速装置42が設けられている。車速コントローラ32は、変速装置42の斜板の角度をアクチュエータ(図示せず)によって変更することで、トランスミッション22の変速比を変更し、所望の車速を実現することができる。自律走行時には、制御部4(後述する自律走行制御部50)は、トラクタ1の目標車速を指定する制御信号を車速コントローラ32に送信する。この制御信号に従って、車速コントローラ32は、トラクタ1の車速が目標車速になるように変速装置42を制御する。
【0032】
操向コントローラ33は、前輪7の転舵角を制御するものである。具体的には、ステアリングハンドル12の回転軸(ステアリングシャフト)の中途部には、操向アクチュエータ43が設けられている。自律走行時には、制御部4は、予め定められた自律走行経路に沿ってトラクタ1を走行させるための目標転舵角を演算して、操向コントローラ33に設定する。操向コントローラ33は、ステアリングハンドル12の回転角が目標転舵角となるように操向アクチュエータ43を制御する。これにより、トラクタ1の前輪7の転舵角が制御される。
【0033】
なお、操向アクチュエータはステアリングハンドル12の回動角度を調整することなく、トラクタ1の前輪7の転舵角を変化させるものであってもよい。その場合、制御部4は、予め定められた自律走行経路に沿ってトラクタ1を走行させるための目標転舵角を演算して、操向コントローラ33に設定する。操向コントローラ33は、前輪7の転舵角が目標転舵角となるように操向アクチュエータを制御する。その場合、旋回走行を行ったとしてもステアリングハンドル12は回動しない。
【0034】
昇降コントローラ34は、作業機の昇降を制御するものである。具体的には、トラクタ1は、作業機を走行機体2に連結する部分の近傍に、公知の油圧式のリフトシリンダからなる昇降アクチュエータ44を備えている。この構成で、昇降コントローラ34は、制御部4から入力された制御信号に基づいて図略の電磁弁を開閉することによりリフトシリンダを駆動し、作業機を適宜に昇降駆動させる。リフトシリンダは単動式である。リフトシリンダは、シリンダに作動油を供給することで作業機を上昇させ、シリンダから作動油を排出することで作業機が自重で下降するように構成されている。図示しないが、シリンダからの作動油の排出経路には公知の下降速度調整弁が配置されている。この下降速度調整弁の開度をユーザが作業機下降速度調整ノブ25(
図3参照)によって操作することで、作業機が下降する場合の速度を調整することができる。昇降コントローラ34により、作業機を、作業を行わない非作業高さ、および、作業を行う作業高さ等の所望の高さで支持することができる。
【0035】
PTOコントローラ35は、前記PTO軸の回転を制御するものである。具体的には、トラクタ1は、PTO軸への動力の伝達/遮断を切り換えるためのPTOクラッチ45を備えている。この構成で、PTOコントローラ35は、制御部4から入力された制御信号に基づいてPTOクラッチ45を切り換えて、PTO軸を介して作業機3を回転駆動したり、この回転駆動を停止させたりすることができる。本実施形態では、作業機3の「作業状態」とは、作業機3のピックアップ装置80がPTO軸からの駆動力によって駆動されている状態を意味する。また、「非作業状態」とは、上記の作業状態以外の状態を意味し、例えば、ピックアップ装置80が停止している状態である。
【0036】
制御部4には、衛星信号受信用アンテナ46が電気的に接続されている。制御部4には、無線通信部47を介して無線通信用アンテナ48が電気的に接続されている。無線通信部47は、一例として、無線LANルータ(Wi-Fiルータ)から構成されていてもよい。制御部4には、モニタ装置36が電気的に接続されている。制御部4には、作業機3と通信するためのインターフェースである走行機体側通信部37が電気的に接続されている。
【0037】
衛星信号受信用アンテナ46は、衛星測位システム(GNSS)を構成する測位衛星からの信号を受信するものである。衛星信号受信用アンテナ46で受信された測位信号は、位置情報算出部(位置情報取得部)49に入力される。位置情報算出部49は、トラクタ1の走行機体2(厳密には、衛星信号受信用アンテナ46)の位置情報を、例えば緯度・経度情報として算出する。
【0038】
なお、本実施形態では、衛星測位システムは、GNSS-RTK法を利用した高精度の衛星測位システムである。衛星測位システムは、これに限られるものではなく、他の測位システムを用いてもよい。例えば、相対測位方式(DGPS)、または静止衛星型衛星航法補強システム(SBAS)を使用してもよいし、これらのシステムを組み合わせて使用してもよい。
【0039】
制御部4には、慣性計測装置(図示せず)が接続されていてもよい。この慣性計測装置は角速度センサおよび加速度センサを備える公知の構成であり、上記のGNSS測位が電波受信等の事情でできなくなった場合においてもトラクタ1の位置を取得することができるように構成されている。 制御部4は、キャビン11内に搭乗したユーザの各種操作に基づいて、トラクタ1および作業機3を制御する機能、トラクタ1を予め作成された自律走行経路に沿って自動的に走行させながら、作業機3を自動的に制御する自律走行機能等を備えている。以下においては、自律走行機能について詳しく説明する。
【0040】
制御部4は、マイクロコンピュータを含んでいる。マイクロコンピュータは、CPU、記憶部(ROM、RAM、不揮発性メモリ、ハードディスク等)60を備えている。記憶部60には、プログラムおよび各種データが記憶される。マイクロコンピュータは、記憶部60に記憶されている所定のプログラムを実行することによって、複数の機能処理部として機能する。この複数の機能処理部には、自律走行制御部50などが含まれる。
【0041】
自律走行制御部50は、自律走行に関する統括的な制御を行う。この自律走行制御部50は、ユーザが搭乗した状態で自律走行を行う有人自律走行モード(第1モード)と、ユーザが搭乗しない状態で自律走行を行う無人自律走行モード(第2モード)とを切り換えて、トラクタ1を自律走行経路に沿って自律走行させることが可能に構成されている。 自律走行制御部50は、各コントローラ31~35を制御することにより、予め生成された自律走行経路に沿ってトラクタ1を自律走行させたり、自律走行を停止させたりする。自律走行制御部50は、所定の目標車速VTを車速コントローラ32に設定する目標車速設定部51を含む。自律走行時には、自律走行制御部50が制御信号を出力することによって、トラクタ1の車速が目標車速VTとなるように、車速コントローラ32が制御される。すなわち、トラクタ1の車速が目標車速VTと異なるときは、トラクタ1の車速は、目標車速VTと一致するように増減される。
【0042】
予め生成された自律走行経路には、トラクタ1の目標車速VTの基準となる車速である基準車速が設定されている。仮に、自律走行時に作業機側制御部84からの特定制御信号が制御部4に入力されない場合、トラクタ1の目標車速VTには基準車速が設定される。基準車速は、自律走行経路上のトラクタ1の位置に応じて、複数設定することが
できる。例えば、二種類の基準車速(第1基準車速V1および第2基準車速V2)が設定される。この設定は、例えば、無線通信端末100(後述する
図4参照)を用いて行われる。このように、無線通信端末100は、基準車速設定部としての機能を有する。
【0043】
ロールベーラである作業機3は、前述した作業機機構部82と、検出部83と、作業機側制御部84と、作業機側通信部85とを含んでいる。検出部83は、作業機3が特定の作業状態になったことを検出する。作業機側制御部84は、特定の作業状態になったときや特定の作業状態が解消されたときに所定の制御信号(特定制御信号)を出力する。作業機側通信部85は、走行機体側通信部37を介して制御部4と通信するためのインターフェースである。作業機側制御部84と制御部4とは、作業機側通信部85および走行機体側通信部37を介して通信可能である。よって、作業機側制御部84が出力する所定の制御信号(特定制御信号)は、作業機側通信部85および走行機体側通信部37を介して、制御部4に入力される。
【0044】
特定制御信号の種別としては、減速信号、停止信号、減速解除信号、停止解除信号が挙げられる。減速信号は、トラクタ1の減速を要求する信号である。停止信号は、トラクタ1の走行の停止を要求する信号である。減速信号が出力されると、目標車速VTは、第1基準車速V1または第2基準車速V2に所定の減速率(例えば0.5)を乗じた速度に設定される。停止信号が出力されると、目標車速VTは、0km/hに設定される。
【0045】
減速解除信号は、減速信号によるトラクタ1の減速の解除を要求する信号である。停止解除信号は、停止信号によるトラクタ1の走行の停止の解除を要求する信号である。言い換えると、停止解除信号は、実質的に、トラクタ1の走行の再開を要求する信号であるといえる。 本実施形態のように作業機3がロールベーラである場合、各特定制御信号が出力されるタイミングとしては、作業機3が以下のような作業状態となったタイミングが挙げられる。
【0046】
具体的には、減速信号は、成形室81に被成形材料が送られることによって、成形室81内の被成形材料の量が成形室81の容量の所定の割合(たとえば80%)に達したときや、作業機3の作業機機構部82に詰まりが発生して単位時間あたりに作業機3が拾い上げることができる被成形材料の量が低下したとき等に出力されることがある。減速解除信号は、成形室81からロールベールが排出されて成形室81が空になったときや、作業機機構部82の詰まりが解消されたとき等に出力されることがある。
【0047】
停止信号は、成形室81内でロールベールが形成されたときや、トラクタ1が自律走行経路を走行し終えたとき等に出力されることがある。停止解除信号は、成形室81からロールベールが排出されて成形室81が空になったとき等に出力されることがある。 無線通信端末100は、経路生成部101、表示部102、表示制御部103、無線通信部104および無線通信用アンテナ105を含む。経路生成部101は、自律走行経路の生成を行う。表示部102は、各種データを表示したり、ユーザによる操作を受け付けたりするものである。表示部102は、タッチパネル式ディプレイによって構成されている。表示制御部103は、表示部102の表示内容を制御する。具体的には、表示制御部103は、表示部102に対して自律走行経路を表示させたり、表示部102に表示された自律走行経路上に走行機体2の位置を示す所定画像を表示させたりすることができる。無線通信部104および無線通信用アンテナ105は、トラクタ1の制御部4と無線通信を行うために使用される装置である。無線通信用アンテナ105は、無線LANアダプタ(Wi-Fiアダプタ)を含んでいてもよい。無線通信用アンテナ105は、無線通信部104を介して経路生成部101および表示制御部103に接続されている。経路生成部101によって生成された自律走行経路は、無線通信端末100からトラクタ1の制御部4に送信され、記憶部60に経路データとして記憶される。
【0048】
図5は、自律走行経路の一例を示す模式図である。
図5を参照して、自律走行経路Pは、予め指定された作業開始位置Sと、作業終了位置Eとを結ぶように生成される。この自律走行経路Pは、作業領域Wに設定され、直線状または折れ線状の自律作業路(自律作業が行われる線状の経路)P1と、非作業領域Nに設定され、当該自律作業路P1の端部同士を繋ぐ経路である接続路P2とを交互に繋いだ構成となっている。なお、本実施形態において作業領域Wとは、自律作業が行われる領域であることを意味し、非作業領域Nとは、自律作業が行われない領域であることを意味するものとする。以下、特筆なき限り、「走行」は自律走行を意味し、「作業」は自律作業を意味するものとする。
【0049】
自律作業路P1は、作業機3による作業が行われる経路である。接続路P2は、旋回・切返し操作が行われる円弧状部分を含む旋回路である。
図5の例では、自律作業路P1は直線状に生成され、接続路P2はU字状に生成される。接続路P2は、互いに隣り合う自律作業路P1の端部同士を接続するように配置される。このように作成された自律走行経路Pにおいては、各接続路P2において180°の方向転換が行われるので、トラクタ1の走行方向は、ある自律作業路P1と、その自律作業路P1の隣の自律作業路P1との間で、互いに逆を向くことになる。トラクタ1は、自律走行経路P上を走行するが、以下では、トラクタ1の走行方向の前方を「走行方向下流側」ともいい、トラクタ1の走行方向の後方を「走行方向上流側」ともいう。自律作業路P1と接続路P2とは、走行方向に沿って交互に並んでいる。自律作業路P1と当該自律作業路P1の走行方向下流側の接続路P2との境界を第1境界位置B1という。接続路P2と当該接続路P2の走行方向下流側の自律作業路P1との境界を第2境界位置B2という。
【0050】
図6は、自律走行経路Pの接続路P2付近の模式図である。
図5および
図6を参照して、自律走行経路Pには、基準車速Vが設定されている。具体的には、自律作業路P1には、第1基準車速V1が設定されており、接続路P2には、第2基準車速V2が設定されている。目標車速設定部51は、特定制御信号が出力されていないときには、トラクタ1が自律作業路P1を走行するときに目標車速VTを第1基準車速V1にし、トラクタ1が接続路P2を走行するときに目標車速VTを第2基準車速V2にする。
【0051】
目標車速設定部51は、第1基準車速V1と第2基準車速V2との間で目標車速VTを切り換える第1設定部52を含む。第1設定部52は、走行機体2が自律作業路P1から当該自律作業路P1の走行方向下流側の接続路P2へ移動する際に、目標車速VTを第1基準車速V1から第2基準車速V2に切り換える。第1設定部52は、走行機体2が接続路P2から当該接続路P2の走行方向下流側の自律作業路P1へ移動する際に、目標車速VTを第2基準車速V2から第1基準車速V1に切り換える。
【0052】
自律走行経路P上には、目標車速設定部51が目標車速VTを切り換える基準となる変速基準位置Rが設定(特定)される。走行機体2が変速基準位置Rに達すると、車速コントローラ32を制御する制御信号が自律走行制御部50から出力される。変速基準位置Rを適切に設定するために、自律走行制御部50は、変速基準位置設定部54をさらに含む(
図4も参照)。変速基準位置設定部54は、車速コントローラ32によって目標車速VTに対する車速切換制御が開始されたことに応じて、走行機体2の現在の位置よりも走行方向下流側に次の変速基準位置Rを設定する。また、変速基準位置設定部54は、特定制御信号に応じて目標車速VTが変更される場合には、それに伴って変速基準位置Rを設定することが可能である。
【0053】
走行機体2が自律作業路P1から当該自律作業路P1の走行方向下流側の接続路P2へ移動する際に目標車速VTを切り換えるときの基準となる変速基準位置Rを第1変速基準位置R1ともいう。走行機体2が接続路P2から当該接続路P2の走行方向下流側の自律作業路P1へ移動する際に目標車速VTを切り換えるときの基準となる変速基準位置Rを第2変速基準位置R2ともいう。
【0054】
変速基準位置Rは、現在位置する経路(自律作業路P1であるか接続路P2であるか)と、基準車速Vとに基づいて設定される。第1変速基準位置R1は、自律作業路P1から接続路P2へ移動する際に、目標車速VTを切り換える基準となる位置であることから、第1境界位置B1またはその付近に設定される。第2変速基準位置R2は、接続路P2から自律作業路P1へ移動する際に目標車速VTを切り換える基準となる位置であることから、第2境界位置B2またはその付近に設定される。
【0055】
自律作業路P1では、その全域において作業が均等に行われることが好ましい。そのためには、トラクタ1がほぼ等速(自律作業路P1で目標車速VTを切り換えることなく)で自律作業路P1を走行することが好ましい。そのため、本実施形態では、トラクタ1がほぼ等速で自律作業路P1を走行することができるように変速基準位置Rが設定されることが好ましい。
【0056】
したがって、本実施形態では、走行機体2が次に通過する境界位置が第1境界位置B1である場合、変速基準位置設定部54は、現在の目標車速VTの値にかかわらず、変速基準位置R(第1変速基準位置R1)を第1境界位置B1に設定する。そして、変速基準位置Rで目標車速VTが切り換えられ、変速基準位置Rから所定の距離L1だけ走行機体2が移動した時点で、トラクタ1の車速が切り換え後の目標車速VTに達する。所定の距離L1は、切り換え後の目標車速VTにトラクタ1の車速が達するまでに必要な距離であり、現在の目標車速VTとトラクタ1の加速度または減速度の大きさとに応じて定まる。
【0057】
また、走行機体2が次に通過する境界位置が第2境界位置B2である場合、変速基準位置設定部54は、現在の目標車速VTから切り換え後の目標車速VTにトラクタ1の車速が達するまでに必要な距離(所定の距離L2)だけ第2境界位置B2よりも走行方向上流側に変速基準位置Rを設定する。変速基準位置設定部54は、現在の目標車速VTと、切り換え後の目標車速VTと、トラクタ1の加速度または減速度とに基づいて所定の距離L2を算出し、算出された所定の距離L2だけ第2境界位置B2よりも走行方向上流側に変速基準位置R(第2変速基準位置R2)を設定する。このように、第2変速基準位置R2は、第1変速基準位置R1とは異なり、現在の目標車速VTを考慮して設定される。
【0058】
図7は、減速信号などの特定制御信号が出力されない場合に、変速基準位置R付近を走行するトラクタ1の車速の変化を説明するためのグラフである。
図7では、横軸がトラクタ1(走行機体2)の位置を示しており、縦軸がトラクタ1の車速を示している(後述する
図8A~
図9Dでも同様)。
図7の例では、走行機体2が自律作業路P1を走行する際、第1設定部52が目標車速VTを第1基準車速V1に設定する。そして、変速基準位置設定部54は、走行機体2が現在位置する自律作業路P1と、その下流側に位置する接続路P2との境界である(すなわち走行機体2が次に通過する)第1境界位置B1に変速基準位置Rを設定する。そして、走行機体2が変速基準位置Rに達すると、第1設定部52は、目標車速VTを第1基準車速V1から第2基準車速V2に切り換える。そのため、トラクタ1の減速が始まる。そして、車速コントローラ32は、変速基準位置Rから所定の距離L1だけ走行機体2が移動した時点で、トラクタ1の車速が第2基準車速V2に達するようにトラクタ1の車速を制御する。
【0059】
目標車速VTが第2基準車速V2に設定されると、変速基準位置設定部54は、次の変速基準位置Rを設定する。詳しくは、変速基準位置設定部54は、現在の目標車速VT(第2基準車速V2)と、切り換え後の目標車速VT(第
1基準車速V1)と、トラクタ1の加速度または減速度とに基づいて所定の距離L2を演算し、走行機体2が次に通過する第2境界位置B2よりも所定の距離L2だけ走行方向上流側に次の変速基準位置Rを設定する。つまり、所定の距離L2は、第2境界位置B2に走行機体2が達した時点でトラクタ1の車速が目標車速VTに達するように演算される。そして、走行機体2が変速基準位置Rに達すると、目標車速VTが第2基準車速V2から第1基準車速V1に切り換えられ、トラクタ1の加速が始まる。そして、車速コントローラ32は、走行機体2が第2境界位置B2に達した時点で、トラクタ1の車速が第1基準車速V1に達するようにトラクタ1の車速を制御する。
【0060】
そして、図示はしないが、目標車速VTが第1基準車速V1に切り換えられると、変速基準位置設定部54は、次の変速基準位置Rを設定する。詳しくは、変速基準位置設定部54は、走行機体2が次に通過する第1境界位置B1に次の変速基準位置Rを設定する。そして、走行機体2が作業終了位置Eに達するまで、目標車速VTの設定と、変速基準位置Rの設定とが繰り返される。
【0061】
自律走行制御部50は、走行機体2が第1境界位置B1に達する際、作業機3による作業を停止するための作業停止信号を作業機側制御部84に出力する。自律走行制御部50は、走行機体2が第2境界位置B2に達する際、作業機3による作業を開始するための作業開始信号を作業機側制御部84に出力する。 なお、作業停止信号および作業開始信号の出力タイミングは、作業機3が第1境界位置B1、第2境界位置B2に達した際でもよい。この場合、走行機体2の位置と、予め定められた走行機体2に対する作業機3の相対位置とに基づいて作業機3の位置が算出される。
【0062】
本実施形態のように作業機3がロールベーラである場合、作業停止信号および作業開始信号によって、PTOコントローラ35がPTOクラッチ45を切り換えて、作業機3の作業機機構部82を回転駆動させたりこの回転を停止させたりする。本実施形態とは異なり作業機が耕耘機等である場合、作業停止信号および作業開始信号によって、昇降コントローラ34が作業機を上昇させたり下降させたりしてもよい。なお、作業停止信号または作業開始信号が出力されてから実際の作業が停止または開始されるまでに所定の準備期間を要する作業機である場合には、当該所定の準備期間の間に走行機体2が走行する準備走行距離を算出し、走行機体2が第1境界位置B1または第2境界位置B2よりも準備走行距離だけ上流側の位置に達したときに作業停止信号または作業開始信号が出力されることとしてもよい。
【0063】
本実施形態では、特定制御信号(特に減速信号や減速解除信号)が出力されることによって、目標車速VTが変更されることがある。このような場合、特定制御信号が出力されることによって行われる車速制御と、トラクタ1が変速基準位置Rに達したことによって行われる車速制御との関係性について考慮する必要がある。 トラクタ1が変速基準位置Rの付近を走行しているときに特定制御信号が出力された場合、特定制御信号によるトラクタ1の車速の変化、および、走行機体2が変速基準位置Rに達したことによる車速の変化の双方が短時間で実行されるおそれがある。しかし、車速の頻繁な変更は、走行機体2への負荷が大きい上に、トラクタ1の燃費や作業機3の作業にとっても好ましくない。
【0064】
そこで、本実施形態では、目標車速設定部51が、特定制御信号が出力された場合に走行機体2の位置に基づいて目標車速VTを設定することができるように構成されている。詳しくは、目標車速設定部51が、第1設定部52に加えて、第1設定部52とは異なる基準で目標車速VTを設定する第2設定部53をさらに含んでいる(
図4参照)。 第1設定部52は、作業機3が特定の作業状態でないときに、目標車速VTを設定する設定部である。一方、第2設定部53は、作業機3が特定の作業状態となってから(特定の作業状態であることを示す特定制御信号が出力されてから)、特定の作業状態が解消されるまで(特定の作業状態が解消されたことを示す特定制御信号が出力されるまで)の期間に、目標車速VTを設定する設定部である。
【0065】
つまり、第1設定部52は、作業機3が特定の作業状態でない場合に、走行機体2が変速基準位置Rに至ったこと、および、作業機3の特定の作業状態が解消されたことを示す特定制御信号を取得したときに目標車速VTを設定する設定部であるといえる。また、第2設定部53は、作業機3が特定の作業状態である場合に、走行機体2が変速基準位置Rに至ったとき、および、特定の作業状態であることを示す特定制御信号を取得したときに目標車速VTを設定する設定部であるといえる。
【0066】
以下では、特定制御信号に応じて第1設定部52が目標車速VTを設定する場合、その特定制御信号は特定の作業状態が解消されたことを示す特定制御信号を示し、第2設定部53が目標車速VTを設定する場合、その特定制御信号は特定の作業状態であることを示す特定制御信号を示すこととする。 第1設定部52および第2設定部53は、作業機側制御部84から特定制御信号が出力されたときには、現在、変速基準位置設定部54により設定されている変速基準位置Rに対する走行機体2の位置に基づいて特定目標車速VSを演算し、その特定目標車速VSを目標車速VTとして設定する。詳しくは、走行機体2の現在の位置と、現在の変速基準位置Rとの間の距離(離間距離)が、所定の基準距離D未満であるか否かに基づいて特定目標車速VSが変えられる。
【0067】
より詳しくは、第1設定部52および第2設定部53は、走行機体2の現在位置と変速基準位置Rとの離間距離が基準距離D未満であるときに特定制御信号が出力されると、走行機体2が現在位置する経路P1,P2(第1区間)の走行方向下流側の経路P2,P1(第2区間)の基準車速V1,V2に基づいて特定目標車速VSを演算する。また、第1設定部52および第2設定部53は、走行機体2の現在位置と変速基準位置Rとの離間距離が基準距離D以上であるときに特定制御信号が出力されると、走行機体2が現在位置する経路P1,P2(第1区間)の基準車速V1,V2に基づいて特定目標車速VSを演算する。第1設定部52および第2設定部53は、作業機側制御部84から特定制御信号が出力されたときに目標車速VTを設定することによって車速コントローラ32に車速を制御させる。
【0068】
所定の基準距離Dは、例えば、予め設定された固定の距離である。所定の基準距離Dとは、例えば、特定制御信号が出力されたことに応答して目標車速VTが設定された場合に、トラクタ1の車速がその目標車速VTに達するまでに要する走行距離(変速に必要な走行距離)である。変速に必要な走行距離は、トラクタ1の現在の車速や、トラクタ1の加速度(減速度)によって変化する。変速に必要な走行距離を適宜算出して基準距離Dとして設定してもよい。基準距離Dは、変速に必要な走行距離にマージンを加えた距離であってもよい。基準距離Dは、第1変速基準位置R1および第2変速基準位置R2のそれぞれに対して設定されている。基準距離Dは、特定制御信号の種別に応じて変更されてもよい。
【0069】
そして、変速基準位置設定部54は、特定制御信号が出力されたときには、現在の目標車速VTと、現在の変速基準位置Rに対する走行機体2の現在の位置とに基づいて変速基準位置Rを設定することができる。すなわち、第1設定部52または第2設定部53により特定目標車速VSが目標車速VTとして設定されることに伴って、車速コントローラ32により車速切換制御が行われる場合、変速基準位置設定部54は変速基準位置Rを走行機体2の現在位置に変更する。そして、変速基準位置設定部54は、車速コントローラ32による車速切換制御が開始された後、次の変速基準位置Rを設定する。
【0070】
自律走行に必要な各情報は、記憶部60に記憶される。すなわち、記憶部60は、経路記憶部61、領域記憶部62、変速基準位置記憶部63、基準車速記憶部64、および基準距離記憶部65を含む(
図4参照)。経路記憶部61は、自律走行経路P(自律作業路P1および接続路P2)の情報を記憶する。領域記憶部62は、予め設定された作業領域Wの情報(具体的には、作業領域Wの位置および形状等に関する情報)と、残りの領域である非作業領域Nの情報とを記憶する。作業領域Wの情報は、例えば、自律走行の開始前にユーザが無線通信端末100を適宜操作することで設定することができる。変速基準位置記憶部63は、自律走行経路Pに設定された変速基準位置Rを記憶する。変速基準位置記憶部63に記憶される変速基準位置Rは、変速基準位置設定部54が変速基準位置Rを設定する度に設定される。基準車速記憶部64は、自律走行中のトラクタ1の基準車速(第1基準車速V1および第2基準車速V2)を記憶する。基準距離記憶部65は、変速基準位置Rに対する基準距離Dを記憶する。
【0071】
次に、変速基準位置Rの付近を走行中に、減速信号または減速解除信号が出力された場合のトラクタ1の車速の変化について具体的に説明する。 まず、
図8A~
図8Dを用いて減速信号が出力された場合について説明する。
図8Aは、自律作業路P1を等速(第1基準車速V1)で走行中に減速信号が出力されたときのトラクタ1の車速の変化を説明するためのグラフである。
図8Bは、目標車速VTが第1基準車速V1から第2基準車速V2に切り換えられたことによってトラクタ1が減速している途中(減速中)に減速信号が出力されたときの、トラクタ1の車速の変化を説明するためのグラフである。
図8Cは、接続路P2を等速(第2基準車速V2)で走行中に減速信号が出力されたときのトラクタ1の車速の変化を説明するためのグラフである。
図8Dは、目標車速VTが第2基準車速V2から第1基準車速V1に切り換えられたことによってトラクタ1が加速している途中(加速中)に、減速信号が出力されたときのトラクタ1の車速の変化を説明するためのグラフである。
【0072】
図8A~
図8Dでは、特定制御信号が出力されないときのトラクタ1の車速の変化を実線で示している。
図8A~
図8Dでは、減速信号が出力された後のトラクタ1の車速の変化を一点鎖線または二点鎖線で示している。
図8A~
図8Dでは、減速信号が出力されたときの走行機体2の位置を下向きの矢印で示している。 変速基準位置Rが第1変速基準位置R1であり、かつ、特定制御信号が減速信号であるときの基準距離Dを第1基準距離D1という(
図8A参照)。変速基準位置Rが第2変速基準位置R2であり、かつ、特定制御信号が減速信号であるときの基準距離Dを第2基準距離D2という(
図8C参照)。本実施形態では、第1基準車速V1は、第2基準車速V2よりも大きいため、第1基準距離D1は、第2基準距離D2よりも大きい値に設定されている。
【0073】
減速信号による車速制御が実行されていない状態で、走行機体2が自律作業路P1に位置すると、第1設定部52は、現在の目標車速VTを第1基準車速V1に設定する。このとき、変速基準位置設定部54は、走行機体2が次に通過する第1境界位置B1に変速基準位置R(第1変速基準位置R1)を設定する。 その後、
図8Aの一点鎖線を参照して、走行機体2の現在の位置と第1変速基準位置R1との離間距離が、第1基準距離D1以上であるときに減速信号が出力された場合、第2設定部53は、自律作業路P1(第1区間)の基準車速(第1基準車速V1)に基づいて特定目標車速VSを演算する。特定目標車速VSが演算された結果、目標車速VTは、第1基準車速V1に所定の減速率(例えば0.5)を乗じた車速に設定される(VT=(1/2)V1)。この車速設定に応じて、車速コントローラ32が変速装置42を制御する。これにより、トラクタ1の車速が(1/2)V1に変化するまで、トラクタ1は減速される。
【0074】
目標車速VTが(1/2)V1に設定されると、変速基準位置設定部54は、変速基準位置Rを
走行機体2の現在位置に設定する。そして、車速コントローラ32によって走行機体2の車速を(1/2)V1とする車速切換制御が開始された後、変速基準位置設定部54は、目標車速VTにかかわらず第1境界位置B1に次の変速基準位置R(第1変速基準位置R1)を設定する。
【0075】
走行機体2の車速は、車速が(1/2)V1に至ってから走行機体2が次の変速基準位置R(第1変速基準位置R1)に達するまでの間、あるいは、次に特定制御信号が出力されるまでの間、(1/2)V1で維持される。 一方、
図8Aの二点鎖線を参照して、走行機体2の現在の位置と変速基準位置R(第1変速基準位置R1)との離間距離が、第1基準距離D1未満であるときに減速信号が出力された場合には、第2設定部53は、走行機体2が現在位置する自律作業路P1(第1区間)の走行方向下流側の接続路P2(第2区間)の基準車速(第2基準車速V2)に基づいて特定目標車速VSを演算する。特定目標車速VSが演算された結果、目標車速VTは、第2基準車速V2に所定の減速率(例えば、0.5)を乗じた車速に設定される(VT=(1/2)V2)。この車速設定に応じて、車速コントローラ32が変速装置42を制御する。これにより、トラクタ1の車速が(1/2)V2に変化するまで、トラクタ1は減速される。
【0076】
目標車速VTが(1/2)V2に設定されると、変速基準位置設定部54は、変速基準位置Rを走行機体2の現在位置に設定する。そして、車速コントローラ32によって走行機体2の車速を(1/2)V2とする車速切換制御が開始された後、変速基準位置設定部54は、次の変速基準位置Rを設定する。詳しくは、変速基準位置設定部54は、現在の目標車速VT((1/2)V2)に基づいて所定の距離L2を算出し、走行機体2が次に通過する第2境界位置B2よりも所定の距離L2だけ走行方向上流側に次の変速基準位置R(第2変速基準位置R2)を設定する。
【0077】
トラクタ1の加速度が一定であるとすると、所定の距離L2は、目標車速VTが第2基準車速V2である場合よりも現在の目標車速VTが(1/2)V2である場合の方が小さくなる。そのため、現在の目標車速VTが(1/2)V2であるときの第2変速基準位置R2は、現在の目標車速VTが第2基準車速V2であるときの第2変速基準位置R2と比べて走行方向下流側(第2境界位置B2に近い位置)に設定される。
【0078】
走行機体2の車速は、車速が(1/2)V2に至ってから走行機体2が次の変速基準位置R(第2変速基準位置R2)に達するまでの間、あるいは、次に特定制御信号が出力されるまでの間、(1/2)V2で維持される。
図8Bを参照して、走行機体2が変速基準位置R(第1変速基準位置R1)に達したことによってトラクタ1が減速中であるとき、変速基準位置Rは、走行機体2が次に通過する第2境界位置B2よりも所定の距離L2だけ走行方向上流側に設定されている(
図8Bの実線参照)。そのため、
図8Bの二点鎖線を参照して、走行機体2の位置と変速基準位置R(第2変速基準位置R2)との離間距離が第2基準距離D2以上であるときに減速信号が出力されると、トラクタ1が減速中であっても、第2設定部53は、接続路P2(第1区間)の基準車速(第2基準車速V2)に基づいて特定目標車速VSを演算する。特定目標車速VSが演算された結果、目標車速VTは、第2基準車速V2に所定の減速率(例えば0.5)を乗じた車速に設定される(VT=(1/2)V2)。
【0079】
目標車速VTが(1/2)V2に設定されると、変速基準位置設定部54は、変速基準位置Rを走行機体2の現在位置に設定する。そして、車速コントローラ32によって走行機体2の車速を(1/2)V1とする車速切換制御が開始された後、変速基準位置設定部54は、次の変速基準位置Rを設定する。詳しくは、
図8Bの二点鎖線を参照して、変速基準位置設定部54は、走行機体2の現在の目標車速VT((1/2)V2)に基づいて所定の距離L2を算出し、走行機体2が次に通過する第2境界位置B2よりも所定の距離L2だけ走行方向上流側に次の変速基準位置R(第2変速基準位置R2)を設定する。
【0080】
走行機体2の車速は、車速が(1/2)V2に至ってから走行機体2が次の変速基準位置R(第2変速基準位置R2)に達するまでの間、あるいは、次に特定制御信号が出力されるまでの間、(1/2)V2で維持される。
図8Cを参照して、特定制御信号による車速制御が実行されていない状態で、走行機体2が接続路P2に位置するとき、目標車速VTは、第2基準車速V2に設定されている。このとき、走行機体2が次に通過する第2境界位置B2よりも所定の距離L2だけ走行方向上流側に変速基準位置Rが設定されている。
【0081】
その後、
図8Cの一点鎖線を参照して、走行機体2の現在の位置と変速基準位置R(第2変速基準位置R2)との離間距離が、第2基準距離D2以上であるときに減速信号が出力された場合、第2設定部53は、走行機体2が現在位置する接続路P2(第1区間)の基準車速(第2基準車速V2)に基づいて特定目標車速VSを演算する。特定目標車速VSが演算された結果、目標車速VTは、第2基準車速V2に所定の減速率(例えば0.5)を乗じた車速に設定される(VT=(1/2)V2)。この車速設定に応じて、車速コントローラ32が変速装置42を制御する。これにより、トラクタ1の車速が(1/2)V2になるまで、トラクタ1は減速される。
【0082】
目標車速VTが(1/2)V2に設定されると、変速基準位置設定部54は、変速基準位置Rを走行機体2の現在位置に設定する。そして、車速コントローラ32によって走行機体2の車速が(1/2)V2とする車速切換制御が開始された後、変速基準位置設定部54は、次の変速基準位置Rを設定する。詳しくは、変速基準位置設定部54は、走行機体2の現在の目標車速VT((1/2)V2)に基づいて所定の距離L2を算出し、走行機体2が次に通過する第2境界位置B2よりも所定の距離L2だけ走行方向上流側に次の変速基準位置R(第2変速基準位置R2)を設定する(図示せず)。
【0083】
走行機体2の車速は、車速が(1/2)V2に至ってから走行機体2が次の変速基準位置R(第2変速基準位置R2)に達するまでの間、あるいは、次に特定制御信号が出力されるまでの間、(1/2)V2で維持される。 一方、
図8Cの二点鎖線を参照して、走行機体2の現在の位置と変速基準位置R(第2変速基準位置R2)との離間距離が、第2基準距離D2未満であるときに減速信号が出力された場合には、第2設定部53は、走行機体2が現在位置する接続路P2の走行方向下流側の自律作業路P1(第2区間)の基準車速(第1基準車速V1)に基づいて特定目標車速VSを演算する。特定目標車速VSが演算された結果、目標車速VTは、第1基準車速V1に所定の減速率(例えば、0.5)を乗じた車速に設定される(VT=(1/2)V1)。この車速設定に応じて、車速コントローラ32が変速装置42を制御する。これにより、トラクタ1の車速が(1/2)V1に変化するまで、トラクタ1が加速される。
【0084】
図8Cの二点鎖線で示す車速制御では、第2設定部53は、減速信号が出力された直後に目標車速VTを(1/2)V1に設定した。しかし、この車速制御とは異なり、走行機体2が変速基準位置R(第2変速基準位置R2)に達するまでは目標車速VTが設定されなくてもよい。例えば、走行機体2が変速基準位置Rに達したときに、第2設定部53が目標車速を(1/2)V1に設定してもよい。
【0085】
目標車速VTが(1/2)V1に設定されると、変速基準位置設定部54は、走行機体2の現在位置に変速基準位置Rを設定する。そして、車速コントローラ32によって走行機体2の車速を(1/2)V1とする車速切換制御が開始された後、変速基準位置設定部54は、走行機体2が次に通過する第1境界位置B1に次の変速基準位置R(第1変速基準位置R1)を設定する。
【0086】
走行機体2の車速は、車速が(1/2)V1に至ってから次の変速基準位置R(第1変速基準位置R1)に達するまでの間、あるいは、次に特定制御信号が出力されるまでの間、(1/2)V1で維持される。
図8Dを参照して、走行機体2が変速基準位置R(第2変速基準位置R2)に達したことによってトラクタ1が加速中であるとき、変速基準位置Rは、走行機体2が次に通過する第1境界位置B1に設定されている。そのため、走行機体2の位置と変速基準位置R(第1変速基準位置R1)との離間距離が第1基準距離D1以上であるときに減速信号が出力されると、トラクタ1が加速中であっても、
図8Dに二点鎖線で示すように、第2設定部53は、走行機体2が現在位置する接続路P2(第1区間)の走行方向下流側の自律作業路P1(第2区間)の基準車速(第1基準車速V1)に基づいて特定目標車速VSを演算する。特定目標車速VSが演算された結果、目標車速VTは、第1基準車速V1に所定の減速率(例えば0.5)を乗じた車速に設定される(VT=(1/2)V1)。
【0087】
目標車速VTが(1/2)V1に設定されると、変速基準位置設定部54は、走行機体2の現在位置に変速基準位置Rを設定する。そして、車速コントローラ32によって走行機体2の車速を(1/2)V1とする車速切換制御が開始された後、
図8Dに二点鎖線で示すように、変速基準位置設定部54は、第1境界位置B1に次の変速基準位置R(第1変速基準位置R1)を設定する。
【0088】
走行機体2の車速は、車速が(1/2)V1に至ってから走行機体2が次の変速基準位置R(第1変速基準位置R1)に達するまでの間、あるいは、次に特定制御信号が出力されるまでの間、(1/2)V1で維持される。 次に、
図9A~
図9Dを用いて、減速解除信号が出力された場合について説明する。
図9Aは、自律作業路P1を等速((1/2)V1)で走行中に減速解除信号が出力されたときのトラクタ1の車速の変化を説明するためのグラフである。
図9Bは、目標車速VTが(1/2)V1から(1/2)V2に切り換えられたことによってトラクタ1が減速されている途中(減速中)に減速解除信号が出力されたときの、トラクタ1の車速の変化を説明するためのグラフである。
図9Cは、接続路P2を等速((1/2)V2)で走行中に減速解除信号が出力されたときのトラクタ1の車速の変化を説明するためのグラフである。
図9Dは、目標車速VTが(1/2)V2から(1/2)V1に切り換えられたことによってトラクタ1が加速されている途中(加速中)に減速解除信号が出力されたときの、走行機体2の車速の変化を説明するためのグラフである。
【0089】
図9A~
図9Dでは、減速信号が出力されたことによって減速された状態で変速基準位置R付近を走行中のトラクタ1の車速の変化を実線で示している。減速解除信号が出力されるまでは、自律作業路P1における目標車速VTは、第1基準車速V1に所定の減速率(例えば0.5)を乗じた車速に設定されている(VT=(1/2)V1)。減速解除信号が出力されるまでは、接続路P2における目標車速VTは、第2基準車速V2に所定の減速率(例えば0.5)を乗じた車速に設定されている(VT=(1/2)V2)。
図9A~
図9Dでは、減速解除信号が出力された後のトラクタ1の車速の変化を一点鎖線または二点鎖線で示している。
図9A~
図9Dでは、減速信号が出力されたときの走行機体2の位置を下向きの矢印で示している。
【0090】
変速基準位置Rが第1変速基準位置R1であり、かつ、特定制御信号が減速解除信号であるときの基準距離Dを第3基準距離D3という(
図9A参照)。変速基準位置Rが第2変速基準位置R2であり、かつ、特定制御信号が減速解除信号であるときの基準距離Dを第4基準距離D4という(
図9C参照)。第3基準距離D3は、第1基準距離D1と異なる距離に設定されているが、第1基準距離D1と同じ距離であってもよい。第4基準距離D4は、第2基準距離D2と異なる距離に設定されているが、第2基準距離
D2と同じ距離であってもよい。
【0091】
減速信号による車速制御が実行されている状態で、走行機体2が自律作業路P1に位置するとき、第2設定部53は、現在の目標車速VTを(1/2)V1に設定している。このとき、変速基準位置設定部54は、現在の目標車速VT((1/2)V1)に基づいて第1変速基準位置R1を設定している。 その後、
図9Aの一点鎖線を参照して、走行機体2の現在の位置と第1変速基準位置R1との離間距離が、第3基準距離D3以上であるときに減速解除信号が出力された場合、第1設定部52は、自律作業路P1(第1区間)の基準車速(第1基準車速V1)に基づいて特定目標車速VSを演算する。特定目標車速VSが演算された結果、目標車速VTは、第1基準車速V1に設定される(VT=V1)。この車速設定に応じて、車速コントローラ32が変速装置42を制御する。これにより、トラクタ1の車速が第1基準車速V1になるまで、トラクタ1は加速される。
【0092】
目標車速VTが第1基準車速V1に設定されると、変速基準位置設定部54は、変速基準位置Rを走行機体2の現在位置に設定する。そして、車速コントローラ32によって走行機体2の車速を第1基準車速V1とする車速切換制御が開始された後、変速基準位置設定部54は、次の変速基準位置R(第1変速基準位置R1)を第1境界位置B1に設定する。
【0093】
走行機体2の車速は、車速が第1基準車速V1に至ってから走行機体2が次の変速基準位置R(第1変速基準位置R1)に達するまでの間、あるいは、次に特定制御信号が出力されるまでの間、第1基準車速V1で維持される。 一方、
図9Aの二点鎖線を参照して、走行機体2の現在の位置と変速基準位置R(第1変速基準位置R1)との離間距離が第3基準距離D3未満であるときに減速解除信号が出力された場合には、第1設定部52は、走行機体2が現在位置する自律作業路P1(第1区間)の下流側の接続路P2(第2区間)の基準車速(第2基準車速V2)に基づいて特定目標車速VSを演算する。特定目標車速VSが演算された結果、目標車速VTは、第2基準車速V2に設定される(VT=V2)。この車速設定に応じて、車速コントローラ32が変速装置42を制御する。これにより、トラクタ1の車速が第2基準車速V2になるまで、トラクタ1は減速される。
【0094】
図9Aの二点鎖線で示す車速制御では、第1設定部52は、減速解除信号が出力された直後に目標車速VTを第2基準車速V2設定した。しかし、この車速制御とは異なり、減速解除信号が出力されたとしても、走行機体2が変速基準位置R(第1変速基準位置R1)に達するまでは目標車速VTが設定されなくてもよい。例えば、走行機体2が変速基準位置Rに達したときに、第1設定部52が目標車速を第2基準車速V2に設定してもよい。
【0095】
目標車速VTが第2基準車速V2に設定されると、変速基準位置設定部54は、走行機体2の現在位置に変速基準位置Rを設定する。そして、車速コントローラ32によって走行機体2の車速を第2基準車速V2とする車速切換制御が開始された後、変速基準位置設定部54は、次の変速基準位置Rを設定する。詳しくは、変速基準位置設定部54は、現在の目標車速VT(第2基準車速V2)に基づいて所定の距離L2を算出し、走行機体2が次に通過する第2境界位置B2よりも所定の距離L2だけ走行方向上流側に次の変速基準位置R(第2変速基準位置R2)を設定する。
【0096】
トラクタ1の加速度が一定であるとすると、所定の距離L2は、現在の目標車速VTが第2基準車速V2である場合よりも現在の目標車速VTが(1/2)V2である場合の方が小さくなる。そのため、第2変速基準位置R2は、現在の目標車速VTが(1/2)V2であるときと比べて走行方向上流側(第2境界位置B2から遠い位置)に設定される。 その後、目標車速VTは、走行機体2が変速基準位置Rに達するまでの間、あるいは、次に特定制御信号が出力されるまでの間、第2基準車速V2で維持される。
【0097】
図9Bを参照して、走行機体2が変速基準位置R(第1変速基準位置R1)に達したことによってトラクタ1が減速中であるとき、変速基準位置Rは、走行機体2が次に通過する第2境界位置B2よりも所定の距離L2だけ走行方向上流側に設定されている。そのため、トラクタ1が減速中であっても、走行機体2の位置と変速基準位置R(第2変速基準位置R2)との離間距離が第4基準距離D4以上であるときには、
図9Bの二点鎖線に示すように、第1設定部52は、接続路P2(第1区間)の基準車速(第2基準車速V2)に基づいて特定目標車速VSを演算する。特定目標車速VSが演算された結果、目標車速VTは、第2基準車速V2に設定される(VT=V2)。
【0098】
目標車速VTが第2基準車速V2に設定されると、変速基準位置設定部54は、走行機体2の現在位置に変速基準位置Rを設定する。そして、車速コントローラ32によって走行機体2の車速を第2基準車速V2とする車速切換制御が開始された後、変速基準位置設定部54は、次の変速基準位置Rを設定する。詳しくは、
図9Bの二点鎖線に示すように、変速基準位置設定部54は、走行機体2の現在の目標車速VT(第2基準車速V2)に基づいて所定の距離L2を算出し、走行機体2が次に通過する第2境界位置B2よりも所定の距離L2だけ走行方向上流側に次の変速基準位置R(第2変速基準位置R2)を設定する。
【0099】
走行機体2の車速は、車速が第2基準車速V2に至ってから走行機体2が次の変速基準位置R(第2変速基準位置R2)に達するまでの間、あるいは、次に特定制御信号が出力されるまでの間、第2基準車速V2で維持される。
図9Cを参照して、減速信号により車速が制御されている状態で走行機体2が接続路P2に位置するとき、目標車速VTは、(1/2)V2に設定されている。このとき、走行機体2が次に通過する第2境界位置B2よりも所定の距離L2だけ走行方向上流側に変速基準位置Rが設定されている。
【0100】
その後、
図9Cの一点鎖線を参照して、走行機体2の現在の位置と変速基準位置R(第2変速基準位置R2)との離間距離が、第4基準距離D4以上であるときに減速解除信号が出力された場合、第1設定部52は、走行機体2が現在位置する接続路P2(第1区間)の基準車速(第2基準車速V2)に基づいて特定目標車速VSを演算する。特定目標車速VSが演算された結果、目標車速VTは、第2基準車速V2に設定される(VT=V2)。この車速設定に応じて、車速コントローラ32が変速装置42を制御する。これにより、トラクタ1の車速が第2基準車速V2になるまで、トラクタ1は加速される。
【0101】
目標車速VTが第2基準車速V2に設定されると、変速基準位置設定部54は、走行機体2の現在位置に変速基準位置Rを設定する。そして、車速コントローラ32によって走行機体2の車速が第2基準車速V2とする車速切換制御が開始された後、変速基準位置設定部54は、次の変速基準位置Rを設定する。詳しくは、変速基準位置設定部54は、走行機体2の現在の目標車速VT(第2基準車速V2)に基づいて所定の距離L2を算出し、走行機体2が次に通過する第2境界位置B2よりも所定の距離L2だけ走行方向上流側に次の変速基準位置R(第2変速基準位置R2)を設定する(図示せず)。
【0102】
走行機体2の車速は、車速が第2基準車速V2に至ってから走行機体2が次の変速基準位置R(第2変速基準位置R2)に達するまでの間、あるいは、次に特定制御信号が出力されるまでの間、第2基準車速V2で維持される。 一方、
図9Cの二点鎖線を参照して、走行機体2の現在の位置と変速基準位置R(第2変速基準位置R2)との離間距離が、第4基準距離D4未満であるときに減速解除信号が出力された場合には、第1設定部52は、走行機体2が現在位置する接続路P2(第1区間)の走行方向下流側の自律作業路P1(第2区間)の基準車速(第1基準車速V1)に基づいて特定目標車速VSを演算する。特定目標車速VSが演算された結果、目標車速VTは、第1基準車速V1に設定される(VT=V1)。この車速設定に応じて、車速コントローラ32が変速装置42を制御する。これにより、トラクタ1の車速が第1基準車速V1になるまで、トラクタ1は加速される。
【0103】
目標車速VTが第1基準車速V1に設定されると、変速基準位置設定部54は、走行機体2の現在位置に変速基準位置Rを設定する。そして、車速コントローラ32によって走行機体2の車速を第1基準車速V1とする車速切換制御が開始された後、変速基準位置設定部54は、次に走行機体2が通過する第1境界位置B1に次の変速基準位置R(第1変速基準位置R1)を設定する。
【0104】
走行機体2の車速は、車速が第1基準車速V1に至ってから次の変速基準位置R(第1変速基準位置R1)に達するまでの間、あるいは、次に特定制御信号が出力されるまでの間、第1基準車速V1で維持される。
図9Dを参照して、走行機体2が変速基準位置R(第2変速基準位置R2)に達したことによってトラクタ1が加速中であるとき、変速基準位置Rは、走行機体2が次に通過する第1境界位置B1に設定されている。そのため、走行機体2の位置と変速基準位置(第1変速基準位置R1)との離間距離が第3基準距離D3以上であるときに減速解除信号が出力されると、
図9Dに二点鎖線で示すように、第1設定部52は、当該接続路P2(第1区間)の走行方向下流側の自律作業路P1(第2区間)の基準車速(第1基準車速V1)に基づいて特定目標車速VSを演算する。特定目標車速VSが演算された結果、目標車速VTは、第1基準車速V1に設定される(VT=V1)。
【0105】
目標車速VTが第1基準車速V1設定されると、変速基準位置設定部54は、走行機体2の現在位置に変速基準位置Rを設定する。そして、車速コントローラ32によって走行機体2の車速を第1基準車速V1とする車速切換制御が開始された後、変速基準位置設定部54は、第1境界位置B1に変速基準位置R(第1変速基準位置R1)を設定する。 走行機体2の車速は、車速が第1基準車速V2に至ってから走行機体2が次の変速基準位置R(第1変速基準位置R1)に達するまでの間、あるいは、次に特定制御信号が出力されるまでの間、第1基準車速V1で維持される。
【0106】
以上の車速制御処理は、
図10~
図13に示すようなフローチャートに従う特定目標車速VSの演算、目標車速VTの設定、および変速基準位置Rの設定が行われることによって実現される。
図10は、自律走行システムによる車速制御処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図11は、
図10に示す自律走行システムによる車速制御処理において、減速信号に基づいて車速が制御されているときに行われる処理を説明するためのフローチャートである。
図12は、減速信号に基づく特定目標車速VSの演算処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図13は、減速解除信号に基づく特定目標車速VSの演算処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【0107】
図10を参照して、自律走行が開始されると、まず、第1設定部52は、目標車速VTを第1基準車速V1または第2基準車速V2に設定する(ステップS1)。詳しくは、走行機体2が自律作業路P1に位置するときには、目標車速VTは、第1基準車速V1に設定される。走行機体2が接続路P2に位置するときには、目標車速VTは、第2基準車速V2に設定される。そして、目標車速VTが設定されると(車速コントローラ32による目標車速VTに対する車速切換制御が開始されると)、変速基準位置設定部54は、変速基準位置Rを設定する(ステップS2)。詳しくは、走行機体2が自律作業路P1に位置するときには、走行機体2が次に通過する第1境界位置B1に変速基準位置R(第1変速基準位置R1)が設定される。走行機体2が接続路P2に位置するときには、走行機体2が次に通過する第2境界位置B2よりも所定の距離L2だけ走行方向上流側に変速基準位置R(第
2変速基準位置R2)が設定される。
【0108】
そして、自律走行制御部50は、減速信号に基づく車速制御中か否かを判別する(ステップS3)。減速信号に基づく車速制御中とは、減速信号が出力され、減速信号に基づく目標車速VTが設定されているときのことである。すなわち、減速信号に基づく車速制御中とは、減速信号が出力されたが、その後、減速解除信号または停止信号が未だ出力されていないときのことである。
【0109】
減速信号に基づく車速制御中でない場合(ステップS3:NO)、減速信号が出力されたか否か(ステップS4)、停止信号が出力されたか否か(ステップS5)、および、走行機体2の現在の位置が変速基準位置Rであるか否か(ステップS6)が監視される。減速信号に基づく車速制御が実行されている場合(ステップS3:YES)、
図11を参照して、減速解除信号が出力されたか否か(ステップS7)、停止信号が出力されたか否か(ステップS8)および、走行機体2の現在の位置が変速基準位置Rであるか否か(ステップS9)が監視される。
【0110】
減速信号に基づく車速制御中でない場合(ステップS3:NO)に行われる監視中に、走行機体2の現在の位置が変速基準位置Rに達した場合(ステップS6:YES)、第1設定部52は、第1基準車速V1または第2基準車速V2に現在の目標車速VTを設定する(ステップS10)。詳しくは、変速基準位置Rが第1変速基準位置R1であるときは、第1設定部52は、目標車速VTを第1基準車速V1から第2基準車速V2に切り換える。また、変速基準位置Rが第2変速基準位置R2であるときは、第1設定部52は、目標車速VTを第2基準車速V2から第1基準車速V1に切り換える。
【0111】
そして、変速基準位置設定部54は、変速基準位置Rを設定する(ステップS11)。詳しくは、第2境界位置B2よりも所定の距離L2だけ走行方向上流側の位置、または、第1境界位置B1に変速基準位置Rが設定される(
図7の説明を参照)。その後、ステップS3に戻る。 減速信号に基づく車速制御中でない場合(ステップS3:NO)に行われる監視中に停止信号が出力された場合(ステップS5:YES)、トラクタ1の走行が停止される(ステップS12)。停止信号が出力されてから停止解除信号が出力されるまでの間、トラクタ1の自律走行が停止される(ステップS13:NO)。停止解除信号が出力されると(ステップS13:YES)、目標車速VTが基準車速V1,V2にされ(ステップS1)、トラクタ1の走行が再開される。トラクタ1が自律走行経路Pの作業終了位置Eに達することによっても停止信号が出力されて、トラクタ1の自律走行が終了する。
【0112】
減速信号に基づく車速制御中でない場合(ステップS3:NO)に行われる監視中に減速信号が出力された場合(ステップS4:YES)、自律走行制御部50によって、減速信号に基づく特定目標車速VSの演算処理が実行される(ステップS14)。特定目標車速VSの演算処理の後、目標車速VTが、特定目標車速VSに設定される(ステップS15)。そして、走行機体2の現在位置に変速基準位置Rが設定され、車速コントローラ32によって走行機体2の車速を特定目標車速VSとする車速切換制御が開始される。走行機体2の車速を特定目標車速VSとする車速切換制御が開始されると、次の変速基準位置Rが設定される(ステップS16)(
図8A~
図8Dの説明を参照)。その後、ステップS3に戻る。
【0113】
図12を参照して、減速信号に基づく特定目標車速VSの演算では、まず、自律走行制御部50が、現在の変速基準位置Rの種類を判別する(ステップS30)。現在の変速基準位置Rが第1変速基準位置R1である場合(ステップS30:第1変速基準位置R1)、走行機体2の位置と変速基準位置Rとの離間距離が、第1基準距離D1未満であるか否かが判別される(ステップS31)。離間距離が第1基準距離D1以上である場合(ステップS31:NO)、特定目標車速VSは、第1基準車速V1(第1区間の基準車速V)に所定の減速率(例えば0.5)を乗じた速度にされる(ステップS32)。離間距離が第1基準距離D1未満である場合(ステップS31:YES)、特定目標車速VSは、第2基準車速V2(第2区間の基準車速V)に所定の減速率(例えば0.5)を乗じた速度にされる(ステップS33)。これにより、減速信号に基づく特定目標車速VSの演算処理が終了する。
【0114】
現在の変速基準位置Rが第2変速基準位置R2である場合(ステップS30:第2変速基準位置R2)、走行機体2の位置と、変速基準位置Rとの離間距離が、第2基準距離D2未満であるか否かが判別される(ステップS34)。離間距離が第2基準距離D2以上である場合(ステップS34:NO)、特定目標車速VSは、第2基準車速V2(第1区間の基準車速V)に所定の減速率(例えば0.5)を乗じた速度にされる(ステップS35)。離間距離が第2基準距離D2未満である場合(ステップS34:YES)、特定目標車速VSは、第1基準車速V1(第2区間の基準車速V)に所定の減速率(例えば0.5)を乗じた速度にされる(ステップS36)。これにより、減速信号に基づく特定目標車速VSの演算処理が終了する。
【0115】
図10および
図11を参照して、減速信号に基づく車速制御中である場合(ステップS3:YES)に行われる監視中に、走行機体2の現在の位置が変速基準位置Rに達した場合(ステップS9:YES)、第2設定部53は、第1基準車速V1に所定の減速率を乗じた速度、または、第2基準車速V2に所定の減速率を乗じた速度に現在の目標車速VTを設定する(ステップS17)。詳しくは、第1変速基準位置R1が設定されているときは、第1基準車速V1に減速率を乗じた速度から第2基準車速V2に減速率を乗じた速度に目標車速VTを切り換える。また、第2変速基準位置R2が設定されているときは、第2基準車速V2に減速率を乗じた速度から第1基準車速V1に減速率を乗じた速度に目標車速VTを切り換える。
【0116】
そして、変速基準位置設定部54は、変速基準位置Rを設定する(ステップS18)。詳しくは、第2境界位置B2よりも所定の距離L2だけ走行方向上流側の位置、または、第1境界位置B1に変速基準位置Rが設定される。その後、ステップS3に戻る。 減速信号に基づく車速制御中である場合(ステップS3:YES)に行われる監視中に停止信号が出力された場合(ステップS8:YES)、減速信号に基づく車速制御中でない場合に停止信号が出力された場合(ステップS5:YES)と同様の処理が実行される。
【0117】
減速信号に基づく車速制御が実行されている場合(ステップS3:YES)に行われる監視中に減速解除信号が出力された場合(ステップS7:YES)、自律走行制御部50によって、減速解除信号に基づく特定目標車速VSの演算処理が実行される(ステップS19)。特定目標車速VSの演算処理の後、目標車速VTが、特定目標車速VSに設定される(ステップS20)。そして、現在の目標車速VTと、現在の変速基準位置Rに対する走行機体2の位置とに基づいて変速基準位置Rが設定される(ステップS21)。その後、ステップS3に戻る。
【0118】
図13を参照して、減速解除信号に基づく特定目標車速VSでは、まず、自律走行制御部50が、現在の変速基準位置Rの種類を判別する(ステップS40)。変速基準位置Rが第1変速基準位置R1である場合(ステップS40:第1変速基準位置R1)、走行機体2の位置と、変速基準位置Rとの離間距離が、第3基準距離D3未満であるか否かが判別される(ステップS41)。離間距離が第3基準距離D3以上である場合(ステップS41:NO)、特定目標車速VSは、第1基準車速V1(第1区間の基準車速V)にされる(ステップS42)。離間距離が第3基準距離D3未満である場合(ステップS41:YES)、特定目標車速VSは、第2基準車速V2(第2区間の基準車速V)にされる(ステップS43)。これにより、減速解除信号に基づく特定目標車速VSの演算処理が終了する。
【0119】
変速基準位置Rが第2変速基準位置R2である場合(ステップS40:第2変速基準位置)、走行機体2の位置と、走行機体2が次に到達する第1変速基準位置R1との離間距離が、第4基準距離D4未満であるか否かが判別される(ステップS44)。離間距離が第4基準距離D4以上である場合(ステップS44:NO)、特定目標車速VSは、第2基準車速V2(第1区間の基準車速V)にされる(ステップS45)。離間距離が第4基準距離D4未満である場合(ステップS44:YES)、特定目標車速VSは、第1基準車速V1(第2区間の基準車速V)にされる(ステップS46)。これにより、減速解除信号に基づく特定目標車速VSの演算処理が終了する。
【0120】
以上に説明したように、第1実施形態の自律走行システムは、無線通信端末100と、作業機側制御部84と、目標車速設定部51と、車速コントローラ32とを含む。無線通信端末100は、自律作業路P1および接続路P2のそれぞれに基準車速Vを設定する。作業機側制御部84は、特定制御信号を出力する。目標車速設定部51は、自律走行経路Pに沿って自律走行するトラクタの目標車速VTを設定する。車速コントローラ32は、トラクタ1の車速が目標車速VTになるように、トラクタ1の車速を制御する。目標車速設定部51は、自律走行経路P上で特定された変速基準位置Rに走行機体2が達したときに、第1基準車速V1と第2基準車速V2との間で目標車速VTを切り換え可能である。目標車速設定部51は、特定制御信号が出力されたときに、変速基準位置Rに対する走行機体2の位置に基づいて特定目標車速VSを演算して、特定目標車速VSを目標車速VTとして設定する。
【0121】
この構成によれば、変速基準位置Rに対する走行機体2の位置に応じて、特定目標車速VSを変更することができる。したがって、走行機体2が変速基準位置Rに達したことによる車速制御と、特定制御信号(減速信号および減速解除信号)による車速制御とが短時間の間に実行された場合であっても、加速や減速が短時間で繰り返されないように目標車速VTを設定することができる。したがって、作業機3から特定制御信号が出力された際に、最適な車速制御を行うことができる。これにより、走行機体2の燃費を向上させたり、走行機体2に作用する慣性力(負荷)を低減させたりすることができる。さらに、走行機体2にユーザが搭乗する場合、ユーザに与える不快感を低減することができる。
【0122】
また、第1実施形態の自律走行システムでは、目標車速設定部51は、走行機体2の現在位置と変速基準位置Rとの離間距離が基準距離D未満であるときに特定制御信号が出力されると、走行機体2が位置する経路P1,P2(第1区間)の走行方向下流側の経路P2,P1(第2区間)の基準車速V2,V1に基づいて特定目標車速VSを演算する。 この構成によれば、走行機体2が次に達する変速基準位置Rと走行機体2の位置との離間距離が基準距離D未満であるときに減速信号または減速解除信号が出力された場合、目標車速VTは、走行機体2が現在位置する経路P1,P2(第1区間)の走行方向下流側の経路P2,P1(第2区間)の基準車速V2,V1に基づいて設定される。したがって、減速信号または減速解除信号によるトラクタ1の車速の変化と、走行機体2が変速基準位置Rに達したことによるトラクタ1の車速の変化とが短時間で行われることを確実に抑制することができる。同時に、走行機体2が現在位置する経路P1,P2(第1区間)の走行方向下流側の経路P2,P1(第2区間)の基準車速V1,V2に基づいて、目標車速VTを適切に設定することができる。
【0123】
また、第1実施形態の自律走行システムでは、目標車速設定部51は、特定制御信号が減速信号であるときには、第1基準車速V1または第2基準車速V2に所定の減速率(例えば0.5)を乗じた車速を特定目標車速VSとする。目標車速設定部51
は、特定制御信号が減速解除信号であるときには、第1基準車速V1または第2基準車速V2を特定目標車速VSとする。この構成によれば、減速信号および減速解除信号が作業機3から出力される構成において、適切に目標車速VTを設定することができる。
【0124】
次に、自律走行制御の際、無線通信端末100の表示部102に表示される画像について説明する。
図14は、自律走行中に無線通信端末100の表示部102に表示される画像を説明するための図である。表示制御部103(
図4参照)は、無線通信端末100の表示部102に、自律走行経路Pを示す画像108と、トラクタ1の現在の位置を示す画像109と、特定制御信号が出力されたときの走行機体2の位置を示す所定画像106とを表示部102に表示させる。所定画像106の表示によって、ユーザは、作業機側制御部84から特定制御信号が出力されたときの走行機体2の位置を容易に認識することができる。
【0125】
具体的には、作業機3から停止信号または停止解除信号が出力されたときの走行機体2の位置を示す所定画像を表示部102に表示することで、例えば、自律走行経路P上のどの位置にロールベールが排出されたかを特定することができる。また、作業機3から減速信号が出力されたときの走行機体2の位置を示す所定画像を表示部102に表示することで、例えば、作業機3に詰まりが発生したときのトラクタ1の位置を特定することができる。作業機3から減速解除信号が出力されたときの走行機体2の位置を示す所定画像を表示部102に表示することで、例えば、作業機3の詰まりが解消されたときのトラクタ1の位置を特定することができる。
【0126】
所定画像106を表示する際に、無線通信端末100は、音声による報知や発光による報知を行うように構成されていてもよい。これにより、ユーザは、表示部102を視認することなく、作業機側制御部84から特定制御信号が出力されたタイミングを知ることができる。
図15は、トラクタ1が自律走行経路Pを走行し終えた後に無線通信端末100の表示部102に表示される画像を説明するための図である。作業機側制御部84から特定制御信号が出力されたときの走行機体2の位置を示す所定画像106が自律走行経路P上の複数箇所(
図15では5箇所)に表示されている場合、経路生成部101に複数の画像106を通る走行経路Q(他の走行経路)を生成させることができる。走行経路Qは、自律走行経路Pとは別の走行経路である。自律走行の終了後に、作業機側制御部84から特定制御信号が出力されたときの走行機体2の位置を通る作業が行われる場合に、当該作業を効率的に行うことができる。
【0127】
例えば、作業機3から停止信号または停止解除信号が出力されたときの走行機体2の位置を示す所定画像を表示部102に表示する場合、経路生成部101は、ロールベールを回収するロールベール回収作業車両の現在位置を示す画像107を始点として、停止信号または停止解除信号が出力されたときの走行機体2の位置を示す所定画像106を接続する走行経路Qを生成することができる。この走行経路Qに沿ってロールベール回収作業車両を移動させることで、ロールベールを効率的に回収することができる。
【0128】
<第2実施形態> 第2実施形態に係る自律走行システムは、第1実施形態に係る自律走行システムとは異なり、
図16および
図17に示すように、特定目標車速VSの演算において、第1基準車速V1と第2基準車速V2との大小関係を考慮して目標車速VTを設定する。
図16は、第2実施形態に係る自律走行システムによる、減速信号に基づく特定目標車速VSの演算処理の一例を示すフローチャートである。
図17は、第2実施形態に係る自律走行システムによる、減速解除信号に基づく特定目標車速VSの演算処理の一例を示すフローチャートである。第2実施形態では、第1実施形態と主に異なる部分のみを説明し、今まで説明した部材と同じ部材には同じ参照符号を付して、その説明を省略する。
【0129】
図16を参照して、減速信号に基づく特定目標車速VSの演算では、現在の変速基準位置Rが第1変速基準位置R1であり(ステップS30:第1変速基準位置R1)、かつ、走行機体2の現在の位置と変速基準位置R(第1変速基準位置R1)との離間距離が第1基準距離D1未満である場合(ステップS31:YES)、基準車速V1,V2の大小関係が判別される(ステップS50)。
【0130】
走行機体2が現在位置する自律作業路P1(第1区間)の基準車速(第1基準車速V1)が当該自律作業路P1の走行方向下流側の接続路P2(第2区間)の基準車速(第2基準車速V2)以上である場合(ステップS50:V1≧V2)、特定目標車速VSは、当該自律作業路P1(第1区間)の基準車速(第1基準車速V1)に基づいて算出される。詳しくは、第1基準車速V1に所定の減速率(例えば0.5)を乗じた速度にされる(ステップS51)。
【0131】
走行機体2が現在位置する自律作業路P1(第1区間)の基準車速(第1基準車速V1)が当該自律作業路P1の走行方向下流側の接続路P2(第2区間)の基準車速(第2基準車速V2)よりも小さい場合(ステップS50:V1<V2)、特定目標車速VSは、当該接続路P2(第2区間)の基準車速(第2基準車速V2)に基づいて算出される。詳しくは、第2基準車速V2に所定の減速率(例えば0.5)を乗じた速度にされる(ステップS52)。
【0132】
走行機体2の現在の位置と変速基準位置R(第1変速基準位置R1)との離間距離が第1基準距離D1未満でない場合(ステップS31:NO)、上述の第1実施形態と同様に、特定目標車速VSは、第1基準車速V1に所定の減速率(例えば0.5)を乗じた速度にされる(ステップS32)。 現在の変速基準位置Rが第2変速基準位置R2であり(ステップS30:第2変速基準位置R2)、かつ、走行機体2の現在位置と変速基準位置R(第2変速基準位置R2)との離間距離が第2基準距離D2未満である場合も(ステップS34:YES)、基準車速V1,V2の大小関係が判別される(ステップS53)。
【0133】
走行機体2が現在位置する接続路P2(第1区間)の基準車速(第2基準車速V2)が当該接続路P2(第1区間)の走行方向下流側の自律作業路P1(第2区間)の基準車速(第1基準車速V1)よりも小さい場合(ステップS53:V1>V2)、特定目標車速VSは、当該自律作業路P1(第2区間)の基準車速(第1基準車速V1)に基づいて演算される。詳しくは、特定目標車速VSは、第1基準車速V1に所定の減速率(例えば0.5)を乗じた速度にされる(ステップS54)。
【0134】
走行機体2が現在位置する接続路P2(第1区間)の基準車速(第2基準車速V2)が当該接続路P2(第1区間)の走行方向下流側の自律作業路P1(第2区間)の基準車速(第1基準車速V1)以上である場合(ステップS53:V1≦V2)、特定目標車速VSは、当該接続路P2(第1区間)の基準車速(第2基準車速V2)に基づいて算出される。具体的には、特定目標車速VSは、第2基準車速V2に所定の減速率(例えば0.5)を乗じた速度にされる(ステップS55)。
【0135】
走行機体2の現在の位置と、変速基準位置R(第2変速基準位置R2)との離間距離が第2基準距離D2以上である場合(ステップS34:NO)、上述の第1実施形態と同様に、特定目標車速VSは、第2基準車速V2に所定の減速率(例えば0.5)を乗じた速度にされる(ステップS35)。 この実施形態では、特定目標車速VSは、第1基準車速V1と第2基準車速V2とが同じ車速である場合(V1=V2)、走行機体2が現在位置する経路P1,P2(第1区間)の基準車速(基準車速V1,V2)に基づいて算出されるとした。しかし、この実施形態とは異なり、特定目標車速VSは、第1基準車速V1と第2基準車速V2とが同じ車速である場合(V1=V2)、走行機体2が現在位置する経路P1,P2(第1区間)の下流側の経路P2,P1(第2区間)の基準車速(基準車速V2,V1)に基づいて算出されてもよい。
【0136】
すなわち、ステップS50では、V1>V2の場合、特定目標車速VSが第1基準車速V1に減速率を乗じた速度にされ(ステップS51)、V1≦V2の場合、特定目標車速VSが第2基準車速V2に減速率を乗じた速度にされてもよい(ステップS52)。一方、ステップS53では、V1≧V2の場合、特定目標車速VSが第1基準車速V1に減速率を乗じた速度にされ(ステップS54)、V1<V2の場合、特定目標車速VSが第2基準車速V2に減速率を乗じた速度にされてもよい(ステップS55)。
【0137】
図17を参照して、減速信号に基づく特定目標車速VSの演算では、現在の変速基準位置Rが第1変速基準位置R1であり(ステップS40:第1変速基準位置R1)、かつ、走行機体2の現在の位置と変速基準位置R(第1変速基準位置R1)との離間距離が第3基準距離D3未満である場合(ステップS41:YES)、基準車速V1,V2の大小関係が判別される(ステップS60)。
【0138】
走行機体2が現在位置する自律作業路P1(第1区間)の基準車速(第1基準車速V1)が当該自律作業路P1の走行方向下流側の接続路P2(第2区間)の基準車速(第2基準車速V2)よりも大きい場合(ステップS60:V1>V2)、特定目標車速VSは、当該接続路P2(第2区間)の基準車速(第2基準車速V2)にされる(ステップS61)。
【0139】
走行機体2が現在位置する自律作業路P1(第1区間)の基準車速(第1基準車速V1)が当該自律作業路P1の走行方向下流側の接続路P2(第2区間)の基準車速(第2基準車速V2)以下である場合(ステップS60:V1≦V2)、特定目標車速VSは、当該自律作業路P1(第1区間)の基準車速(第1基準車速V1)にされる(ステップS62)。
【0140】
走行機体2の現在の位置と変速基準位置R(第1変速基準位置R1)との離間距離が第3基準距離D3以上である場合(ステップS41:NO)、上述の実施形態と同様に、特定目標車速VSは、第1基準車速V1にされる(ステップS42)。 現在の変速基準位置Rが第2変速基準位置R2であり(ステップS40:第2変速基準位置R2)、かつ、走行機体2の現在の位置と変速基準位置R(第2変速基準位置R2)との離間距離が第4基準距離D4未満である場合も(ステップS44:YES)、基準車速V1,V2の大小関係が判別される(ステップS63)。
【0141】
走行機体2が現在位置する接続路P2(第1区間)の基準車速(第2基準車速V2)が当該接続路P2(第1区間)の走行方向下流側の自律作業路P1(第2区間)の基準車速(第1基準車速V1)以下である場合(ステップS63:V1≧V2)、特定目標車速VSは、当該接続路P2(第1区間)の基準車速(第2基準車速V2)にされる(ステップS64)。
【0142】
走行機体2が現在位置する接続路P2(第1区間)の基準車速(第2基準車速V2)が当該接続路P2(第1区間)の走行方向下流側の自律作業路P1(第2区間)の基準車速(第1基準車速V1)よりも大きい場合(ステップS63:V1<V2)、特定目標車速VSは、当該自律作業路P1(第2区間)の基準車速(第1基準車速V1)にされる(ステップS65)。
【0143】
走行機体2の現在の位置と変速基準位置R2(第2変速基準位置R2)との離間距離が第4基準距離D4以上である場合(ステップS44:NO)、上述の第1実施形態と同様に、特定目標車速VSは、第2基準車速V2にされる(ステップS45)。 この実施形態では、特定目標車速VSは、第1基準車速V1と第2基準車速V2とが同じ車速である場合(V1=V2)、走行機体2が現在位置する経路P1,P2(第1区間)の基準車速(基準車速V1,V2)に基づいて算出されるとした。しかし、この実施形態とは異なり、特定目標車速VSは、第1基準車速V1と第2基準車速V2とが同じ車速である場合(V1=V2)、走行機体
2が現在位置する経路P1,P2(第1区間)の下流側の経路P2,P1(第2区間)の基準車速(基準車速V2,V1)に基づいて算出されてもよい。
【0144】
すなわち、ステップS60では、V1≧V2の場合、特定目標車速VSが第2基準車速V2に(ステップS61)、V1<V2の場合、特定目標車速VSが第1基準車速V1にされてもよい(ステップS62)。一方、ステップS63では、V1>V2の場合、特定目標車速VSが第2基準車速V2にされ(ステップS64)、V1≦V2の場合、特定目標車速VSが第1基準車速V1にされてもよい(ステップS65)。
【0145】
第2実施形態に係る自律走行システムでは、変速基準位置Rの設定においても第1基準車速V1と第2基準車速V2との大小関係が考慮される。 すなわち、ステップS50(
図16参照)でV1≧V2の場合、その後のステップS16(
図10参照)において、変速基準位置設定部54は、走行機体2の現在位置に変速基準位置Rを設定した後、第1境界位置B1に次の変速基準位置R(第1変速基準位置R1)を設定する。一方、ステップS50でV1<V2の場合、その後のステップS16において、変速基準位置設定部54は、走行機体2の現在位置に変速基準位置Rを設定した後、第2境界位置B2よりも所定の距離L2だけ上流側に次の変速基準位置R(第2変速基準位置R2)を設定する。
【0146】
ステップS53(
図16参照)でV1>V2の場合、その後のステップS16において、変速基準位置設定部54は、走行機体2の現在位置に変速基準位置Rを設定した後、第1境界位置B1に次の変速基準位置R(第1変速基準位置R1)を設定する。一方、ステップS53でV1≦V2の場合、その後のステップS16において、変速基準位置設定部54は、走行機体2の現在位置に変速基準位置Rを設定した後、第2境界位置B2よりも所定の距離L2だけ上流側に次の変速基準位置R(第2変速基準位置R2)を設定する。
【0147】
ステップS60(
図17参照)でV1>V2の場合、その後のステップS18において、変速基準位置設定部54は、走行機体2の現在位置に変速基準位置Rを設定した後、第2境界位置B2よりも所定の距離L2だけ上流側に次の変速基準位置R(第2変速基準位置R2)を設定する。一方、ステップS60でV1≦V2の場合、その後のステップS18(
図11参照)において、変速基準位置設定部54は、走行機体2の現在位置に変速基準位置Rを設定した後、第1境界位置B1に次の変速基準位置R(第1変速基準位置R1)を設定する。
【0148】
ステップS63(
図17参照)でV1≧V2の場合、ステップS18において、変速基準位置設定部54は、走行機体2の現在位置に変速基準位置Rを設定した後、第2境界位置B2よりも所定の距離L2だけ上流側に次の変速基準位置R(第2変速基準位置R2)を設定する。一方、ステップS63でV1<V2の場合に、変速基準位置設定部54は、走行機体2の現在位置に変速基準位置Rを設定した後、第1境界位置B1に次の変速基準位置R(第1変速基準位置R1)を設定する。
【0149】
第2実施形態に係る自律走行システムでは、第1実施形態に係る自律走行システムと同様に、作業機3から特定制御信号が出力された際に、最適な車速制御を行うことができる。 ここで、短時間の間で減速のみが繰り返されたり、短時間の間で加速のみが繰り返されたりする場合よりも、短時間の間で減速と加速とが実行される場合の方が、トラクタ1の燃費の悪化度合や走行機体2への負荷が大きい上にユーザが不快に感じやすい。そのため、短時間の間で減速と加速とが実行される車速制御を防止したいというニーズがある。
【0150】
第2実施形態に係る自律走行システムでは、トラクタ1が減速された直後に減速されることや、トラクタ1が加速された直後に加速されることが許容される一方で、トラクタ1が減速された直後に加速されることや、トラクタ1が加速された直後に減速されることが防止される。そのため、このようなニーズに対応することができる。また、減速信号および減速解除信号が作業機3から出力される構成において、目標車速VTを一層適切に設定することができる。
【0151】
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、さらに他の形態で実施することができる。 上述した実施形態では、特定制御信号には、減速信号、停止信号、減速解除信号、および、停止解除信号が含まれるとした。上述した実施形態とは異なり、特定制御信号には、トラクタ1の増速を要求する増速信号と、増速信号に基づいてトラクタ1の車速が制御されている状態の解除を要求する増速解除信号とが含まれていてもよい。特定制御信号が増速信号であるときの特定目標車速VSの演算は、特定制御信号が減速信号であるときの特定目標車速VSの演算(
図12参照)とほぼ同様であるが一部が異なる。具体的には、
図12のステップS32,S36において、第1基準車速V1に所定の減速率を乗じた車速が特定目標車速VSとされる代わりに、第1基準車速V1に所定の増速率を乗じた車速が特定目標車速VSとされる。
図12のステップS33,S35において、第2基準車速V2に所定の減速率を乗じた車速が特定目標車速VSとされる代わりに、第2基準車速V2に所定の増速率を乗じた車速が特定目標車速VSとされる。特定制御信号が増速解除信号であるときの特定目標車速VSの演算は、特定制御信号が減速解除信号であるときの特定目標車速VSの演算(
図13参照)とほぼ同様である。
【0152】
この構成によれば、特定制御信号として増速信号および増速解除信号が作業機3から出力される構成において、作業機3から特定制御信号が出力された際に、最適な車速制御を行うことができる。また、適切に目標車速VTを設定することができる。 第1基準車速V1と第2基準車速V2との大小関係を考慮する場合には、特定制御信号が増速信号であるときの特定目標車速VSの演算は、特定制御信号が減速信号であるときの特定目標車速VSの演算(
図16参照)とほぼ同様であるが一部が異なる。具体的には、
図16のステップS51,S54において、特定目標車速VSが第2基準車速V2に所定の増速率を乗じた速度とされ、
図16のステップS52,S55において、特定目標車速VSが第1基準車速V1に所定の増速率を乗じた速度とされる。
【0153】
第1基準車速V1と第2基準車速V2との大小関係を考慮する場合には、特定制御信号が増速解除信号であるときの特定目標車速VSの演算は、特定制御信号が減速解除信号であるときの特定目標車速VSの演算(
図17参照)とほぼ同様であるが一部が異なる。具体的には、
図17のステップS61,S64において、特定目標車速VSが第1基準車速V1とされ、
図17のステップS62,S65において、特定目標車速VSが第2基準車速V2とされる。
【0154】
第1基準車速V1および第2基準車速V2の大小関係を考慮した場合、上述した実施形態と同様に、トラクタ1が減速された直後に減速されることや、トラクタ1が加速された直後に加速されることが許容される一方で、トラクタ1が減速された直後に加速されることや、トラクタ1が加速された直後に減速されることが防止される。したがって、短時間で減速と加速とが実行される車速制御を防止したいというニーズに対応することができる。
【0155】
特定制御信号が増速信号や増速解除信号である場合の基準距離Dは、特定制御信号が減速信号である場合の基準距離D1,D2や、特定制御信号が減速信号である場合の基準距離D3.D4と同じ距離であってもよいし、これらと異なる距離であってもよい。 また、特定制御信号が停止解除信号である場合にも、特定制御信号が減速信号である場合の車速制御(
図12および
図16参照)や減速解除信号である場合の車速制御(
図13および
図17参照)と同様の車速制御を実行することが可能である。この場合、停止信号が出力されたことによって、トラクタ1が走行を開始するときの走行機体2の位置と、変速基準位置Rとの離間距離が所定の基準距離D未満であるか否かによって、目標車速VTが変えられる。特定制御信号が停止解除信号である場合の基準距離Dは、特定制御信号が減速信号である場合の基準距離D1,D2や、特定制御信号が減速信号である場合の基準距離D3.D4と同じ距離であってもよいし、これらと異なる距離であってもよい。
【0156】
また、上述した実施形態では、第1設定部52および第2設定部53は、走行機体2の現在の位置と変速基準位置Rとの離間距離が基準距離D1~D4未満であるときに特定制御信号が出力された場合には、特定制御信号が出力された直後に目標車速VTを設定するように構成されていた。上述した実施形態とは異なり、第1設定部52および第2設定部53は、走行機体2の現在の位置と走行機体2が次に通過する変速基準位置Rとの離間距離が基準距離D1~D4未満であるときに特定制御信号が出力された直後には、特定制御信号に基づく目標車速VTの設定を行わないように構成されていてもよい。つまり、特定制御信号を無視してもよい。その代わり、走行機体2が当該変速基準位置Rに達したときに目標車速VTが設定される。そして、走行機体2が当該変速基準位置Rの次の変速基準位置Rに達したときには、走行機体2が当該変速基準位置Rに達する前に出力された特定制御信号に基づいて目標車速VTが設定される。
【0157】
このような構成によれば、目標車速VTの設定によるトラクタ1の車速の変化量を低減することができる。具体的には、目標車速VTが第1基準車速V1(例えば10km/h)から第2基準車速V2(例えば4km/h)に減速率を乗じた速度(例えば2km/h)に変更されるよりも、目標車速VTが第1基準車速V1(例えば10km/h)から第2基準車速V2(例えば4km/h)に変更される方が、トラクタ1の車速の変化量を低減することができる。したがって、ユーザに与える不快感を一層低減できる。このような車速制御は、ユーザが搭乗した状態で自律走行を行う有人自律走行モード(第1モード)において特に有用である。
【0158】
ただし、上述の実施形態ように作業機3がロールベーラであれば、作業機機構部82に詰まりが発生して作業の続行ができないとき(作業の続行によってロールベーラの破損を招くようなとき)に停止信号が出力されることが想定し得る。このような場合には、停止信号を無視せずに、停止信号が出力された直後に目標車速VTを0km/hに設定する必要がある。
【0159】
また、上述した実施形態では、経路生成部101、表示部102、および、表示制御部103は、無線通信端末100に設けられていた。しかし、
図14および
図15に示す画像は、モニタ装置36に表示されるように構成されていてもよい。この場合、制御部4が、モニタ装置36による画像表示を制御する表示制御部38と、自律走行経路Pを生成可能な経路生成部39とを含んでいてもよい(
図4の二点鎖線参照)。
【0160】
また、上述した実施形態では、停止解除信号は、作業機3の作業機側制御部84から出力されるとした。しかし、上述の実施形態とは異なり、停止解除信号が特定制御信号には含まれず(作業機3から停止解除信号が出力されることはなく)、ユーザが無線通信端末100を操作することによってトラクタ1の走行の停止が解除されてもよい。 また、上述した実施形態では、無線通信端末100によって第1基準車速V1および第2基準車速V2を設定するとしたが、モニタ装置36または速度回転数設定変更ダイアル14を用いて第1基準車速V1および第2基準車速V2を設定してもよい。なお、トラクタ1の車速とエンジン10の回転数の設定は、トラクタ1の停止中だけでなく、トラクタ1が自律走行を行っている途中においても、速度回転数設定変更ダイアル14等をユーザが操作することにより変更することができる。また、無線通信端末100によって設定する速度回転数設定変更ダイアル14によって設定するかはトラクタ1のモードによって定められてもよい。例えば、トラクタ1が第1
モードである場合は、速度回転数設定変更ダイアル14によって設定され、トラクタ1が第2モードである場合は、無線通信端末100によって設定されることとしてもよい。
【0161】
上述の実施形態では、変速基準位置設定部54は、特定制御信号が出力されない場合にトラクタ1が等速で自律作業路P1を走行できるように変速基準位置Rを設定した。しかし、上述の実施形態とは異なり、変速基準位置設定部54は、特定制御信号が出力されない場合にトラクタ1が一定の速度で接続路P2を走行できるように変速基準位置Rを設定してもよい。
【0162】
詳しくは、変速基準位置設定部54は、第1変速基準位置R1を、現在の目標車速VTから切り換え後の目標車速VTにトラクタ1の車速が達するまでに必要な距離(所定の距離L1)だけ第1境界位置B1よりも走行方向上流側に設定する。一方、変速基準位置設定部54は、第2変速基準位置R2を、現在の目標車速VTの値にかかわらず、第2境界位置B2に設定する。
【0163】
また、上述の実施形態とは異なり、変速基準位置設定部54は、第1境界位置B1から所定の距離L1だけ走行方向上流側に第1変速基準位置R1を設定し、かつ、第2境界位置B2から所定の距離L2だけ走行方向上流側に第2変速基準位置R2を設定してもよい。 その他、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0164】
2 :走行機体(走行車)3 :作業機14 :速度回転数設定変更ダイアル(基準車速設定部)32 :車速コントローラ(車速制御部)36 :モニタ装置(表示部)38 :表示制御部39 :経路生成部51 :目標車速設定部84 :作業機側制御部100 :無線通信端末(基準車速設定部)101 :経路生成部102 :表示部103 :表示制御部106 :所定画像D :基準距離(所定の距離)D1 :第1基準距離(所定の距離)D2 :第2基準距離(所定の距離)D3 :第3基準距離(所定の距離)D4 :第4基準距離(所定の距離)P :自律走行経路P1 :自律作業路(第1区間、第2区間)P2 :接続路(第1区間、第2区間)Q :他の走行経路R :変速基準位置 R1 :第1変速基準位置(変速基準位置)R2 :第2変速基準位置(変速基準位置)V :基準車速(第1区間の基準車速、第2区間の基準車速)V1 :第1基準車速(第1区間の基準車速、第2区間の基準車速)V2 :第2基準車速(第1区間の基準車速、第2区間の基準車速)VS :特定目標車速VT :目標車速