(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】光電変換装置、光電変換システム、移動体
(51)【国際特許分類】
H01L 27/146 20060101AFI20240219BHJP
H04N 25/70 20230101ALI20240219BHJP
【FI】
H01L27/146 A
H01L27/146 D
H04N25/70
(21)【出願番号】P 2021063491
(22)【出願日】2021-04-02
【審査請求日】2022-03-30
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】大貫 裕介
【審査官】小山 満
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-344888(JP,A)
【文献】特開2020-021775(JP,A)
【文献】特許第2917361(JP,B2)
【文献】特開2004-039794(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/146
H04N 25/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランジスタの配置された第一の面と、前記第一の面に対向する第二の面と、を有する半導体基板に配された複数の画素と、前記
複数の画素の一部への光の入射を妨げる遮光部とを有する光電変換装置であって、
前記複数の画素は、前記遮光部によって遮光された第一の画素と、第二の画素とを含み、
前記複数の画素のそれぞれは、領域と、フローティングディフージョンと、前記領域と前記フローティングディフージョンとの間に配された転送トランジスタとを有し、
前記複数の画素のそれぞれの前記領域は、第一の導電型の第一の半導体領域を含み、
前記第一の画素が有する前記領域は、前記第一の面と、前記第二の面との間に第二の半導体領域を含み、
前記第二の画素が有する前記領域は、前記第二の面と、前記第一の半導体領域との間に第三の半導体領域を含み、前記第一の半導体領域と前記第一の面との間に第二の導電型の不純物濃度が第一の不純物濃度であって前記第二の導電型の第四の半導体領域を含み、
前記第四の半導体領域は、前記第一の面から第一の深さに配され、
前記第一の画素が有する前記領域は、前記第一の面から前記第一の深さに前記第二の導電型の不純物濃度が前記第一の不純物濃度よりも低い半導体領域をさらに含み、
前記第二の面に対
して垂直な方向の断面視において、前記第二の面と、前記第一の半導体領域と、の間に、前記第二の面に平行な第一の線が前記第二の半導体領域及び第三の半導体領域のそれぞれを二分する位置で定められ、
前記第二の半導体領域の前記第一の導電型の不純物濃度は、前記第三の半導体領域の前記第一の導電型の不純物濃度よりも高いことを特徴とする光電変換装置。
【請求項2】
前記第二の半導体領域は、前記第一の導電型の半導体領域であることを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項3】
前記第二の半導体領域は、前記第二の導電型の半導体領域であることを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項4】
前記第二の半導体領域は、前記第一の半導体領域と、前記第二の面との間に配されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の光電変換装置。
【請求項5】
前記複数の画素同士を分離する前記第一の導電型の画素分離領域を有し、
前記第一の線が前記画素分離領域を二分することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の光電変換装置。
【請求項6】
前記領域のそれぞれは、複数の前記第一の半導体領域と、前記複数の第一の半導体領域の間に配された第五の半導体領域とを含むことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の光電変換装置。
【請求項7】
トランジスタの配置された第一の面と、前記第一の面に対向する第二の面と、を有する半導体基板に配された複数の画素と、前記
複数の画素の一部への光の入射を妨げる遮光部と
、を有する光電変換装置であって、
前記複数の画素は、前記遮光部によって遮光された第一の画素と、第二の画素とを含み、
前記複数の画素のそれぞれは、領域と、フローティングディフージョンと、前記領域と前記フローティングディフージョンとの間に配された転送トランジスタとを有し、
前記複数の画素のそれぞれの前記領域は、第一の導電型の複数の第一の半導体領域と、前記複数の第一の半導体領域の間に配された第五の半導体領域と、を含み、
前記第一の画素が有する前記領域は、前記第二の面と前記第五の半導体領域との間に配された、第二の導電型の第二の半導体領域を含み、
前記第二の画素が有する前記領域は、前記第二の面と前記第五の半導体領域との間に配された、前記第二の導電型の第三の半導体領域と、前記第一の面と前記第五の半導体領域との間に配された、前記第二の導電型の不純物濃度が第一の不純物濃度であって前記第二の導電型の第四の半導体領域と、を含み、
前記第四の半導体領域は、前記第一の面から第一の深さに配され、
前記第一の画素が有する前記領域は、前記第一の面から前記第一の深さに前記第二の導電型の不純物濃度が前記第一の不純物濃度よりも低い半導体領域をさらに含み、
前記第二の面に対
して垂直な方向の断面視において、前記第二の面と、前記複数の第一の半導体領域と、の間に、前記第二の面に平行な第一の線が前記第二の半導体領域及び第三の半導体領域のそれぞれを二分する位置で定められ、
前記第二の面に対
して垂直な方向の断面視において、前記第一の面と、前記第一の線との間に前記第二の面に平行な第二の線が前記第一の半導体領域及び第五の半導体領域のそれぞれを二分する位置で定められ、
前記第一の線に沿った方向において、前記第一の画素が有する前記第五の半導体領域の第一の幅は、前記第二の画素が有する前記第五の半導体領域の第二の幅よりも大きいことを特徴とする光電変換装置。
【請求項8】
前記第四の半導体領域の前記第二の導電型の不純物濃度は、前記第二の半導体領域の前記第二の導電型の不純物濃度よりも高いことを特徴とする請求項7に記載の光電変換装置。
【請求項9】
前記第一の幅は、前記第一の画素が有する前記複数の第一の半導体領域のうち一方の第一の半導体領域と他方の第一の半導体領域との間で、前記第一の画素が有する前記第五の半導体領域によって隔絶される第一の距離であり、前記第二の幅は、前記第二の画素が有する前記複数の第一の半導体領域のうち一方の第一の半導体領域と他方の第一の半導体領域との間で、前記第二の画素が有する前記第五の半導体領域によって隔絶される第二の距離であることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の光電変換装置。
【請求項10】
前記第一の画素が有する前記領域は、前記第一の面と前記第五の半導体領域との間に配された、前記第二の導電型の第六の半導体領域を含み、前記第二の面に対
して垂直な方向の断面視において、前記第一の面と、前記第二の線との間に前記第二の面に平行な第三の線が前記第四の半導体領域及び第六の半導体領域のそれぞれを二分する位置で定められることを特徴とする請求項7乃至請求項9のいずれか一項に記載の光電変換装置。
【請求項11】
前記第二の画素が有する前記領域は、前記第一の面と前記第四の半導体領域との間に配された、前記第一の導電型の第七の半導体領域を含み、前記第二の面に対する平面視において、前記第七の半導体領域は前記第五の半導体領域の少なくとも一部と重なる位置に配されることを特徴とする請求項6乃至請求項10のいずれか一項に記載の光電変換装置。
【請求項12】
前記遮光部は、前記第二の面の側に配されることを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載の光電変換装置。
【請求項13】
前記第四の半導体領域の前記第二の導電型の不純物濃度は、前記第三の半導体領域の前記第二の導電型の不純物濃度よりも高いことを特徴とする請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載の光電変換装置。
【請求項14】
前記第一の画素に隣り合う前記第二の画素が、前記遮光部によって遮光されることを特徴とする請求項1乃至請求項13のいずれか一項に記載の光電変換装置。
【請求項15】
前記複数の画素のそれぞれは、裏面照射型の画素であることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか一項に記載の光電変換装置。
【請求項16】
前記第一の導電型はP型であり、前記第二の導電型はN型であることを特徴とする請求項1乃至請求項15のいずれか一項に記載の光電変換装置。
【請求項17】
前記第一の画素が有する前記領域は、電荷蓄積領域を含まないことを特徴とする請求項1乃至請求項16のいずれか一項に記載の光電変換装置。
【請求項18】
請求項1乃至請求項17のいずれか1項に記載の光電変換装置と、
前記光電変換装置が出力する信号を用いて画像を生成する信号処理部と、を有することを特徴とする光電変換システム。
【請求項19】
請求項1乃至請求項17のいずれか1項に記載の光電変換装置を備える移動体であって、
前記光電変換装置が出力する信号を用いて前記移動体の移動を制御する制御部を有することを特徴とする移動体。
【請求項20】
トランジスタの配置された第一の面と、前記第一の面に対向する第二の面と、複数の画素とを有し、他の半導体基板に積層される半導体基板であって、
前記複数の画素は、前記
複数の画素の一部への光の入射を妨げる遮光部によって遮光された第一の画素と、第二の画素とを含み、
前記複数の画素のそれぞれは、領域と、フローティングディフージョンと、前記領域と前記フローティングディフージョンとの間に配された転送トランジスタとを有し、
前記複数の画素のそれぞれの前記領域は、第一の導電型の第一の半導体領域を含み、
前記第一の画素が有する前記領域は、前記第一の面と、前記第二の面との間に第二の半導体領域を含み、
前記第二の画素が有する前記領域は、前記第二の面と、前記第一の半導体領域との間に第三の半導体領域を含み、前記第一の半導体領域と前記第一の面との間に第二の導電型の不純物濃度が第一の不純物濃度であって前記第二の導電型の第四の半導体領域を含み、
前記第四の半導体領域は、前記第一の面から第一の深さに配され、
前記第一の画素が有する前記領域は、前記第一の面から前記第一の深さに前記第二の導電型の不純物濃度が前記第一の不純物濃度よりも低い半導体領域をさらに含み、
前記第二の面に対
して垂直な方向の断面視において、前記第二の面と、前記第一の半導体領域と、の間に、前記第二の面に平行な第一の線が前記第二の半導体領域及び第三の半導体領域のそれぞれを二分する位置で定められ、
前記第二の半導体領域の前記第一の導電型の不純物濃度は、前記第三の半導体領域の前記第一の導電型の不純物濃度よりも高いことを特徴とする半導体基板。
【請求項21】
トランジスタの配置された第一の面と、前記第一の面に対向する第二の面と、複数の画素と、を有し、他の半導体基板に積層される半導体基板であって、
前記複数の画素は、前記
複数の画素の一部への光の入射を妨げる遮光部によって遮光された第一の画素と、第二の画素と
、を含み、
前記複数の画素のそれぞれは、領域と、フローティングディフージョンと、前記領域と前記フローティングディフージョンとの間に配された転送トランジスタとを有し、
前記複数の画素のそれぞれの前記領域は、第一の導電型の複数の第一の半導体領域と、前記複数の第一の半導体領域の間に配された第五の半導体領域と、を含み、
前記第一の画素が有する前記領域は、前記第二の面と前記第五の半導体領域との間に配された、第二の導電型の第二の半導体領域を含み、
前記第二の画素が有する前記領域は、前記第二の面と前記第五の半導体領域との間に配された、前記第二の導電型の第三の半導体領域と、前記第一の面と前記第五の半導体領域との間に配された、前記第二の導電型の不純物濃度が第一の不純物濃度であって前記第二の導電型の第四の半導体領域と、を含み、
前記第四の半導体領域は、前記第一の面から第一の深さに配され、
前記第一の画素が有する前記領域は、前記第一の面から前記第一の深さに前記第二の導電型の不純物濃度が前記第一の不純物濃度よりも低い半導体領域をさらに含み、
前記第二の面に対
して垂直な方向の断面視において、前記第二の面と、前記複数の第一の半導体領域と、の間に、前記第二の面に平行な第一の線が前記第二の半導体領域及び第三の半導体領域のそれぞれを二分する位置で定められ、
前記第二の面に対
して垂直な方向の断面視において、前記第一の面と、前記第一の線との間に前記第二の面に平行な第二の線が前記第一の半導体領域及び第五の半導体領域のそれぞれを二分する位置で定められ、
前記第一の線に沿った方向において、前記第一の画素が有する前記第五の半導体領域の第一の幅は、前記第二の画素が有する前記第五の半導体領域の第二の幅よりも大きいことを特徴とする半導体基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換装置、光電変換システム及び該光電変換システムを用いた移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、飽和電荷量の向上やホワイトスポットの抑制のために、電荷蓄積領域の下部に空乏層の延伸を抑制するための空乏層止め層を有する画素を備えた光電変換装置に関して記述されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画素のノイズレベルの基準値を得るために、遮光領域に電荷蓄積領域を形成しない参照画素を配置する場合がある。有効画素領域に空乏層止め層を有する画素が配置された撮像装置において、電荷蓄積領域を形成しない参照画素では、フォトダイオード深部の半導体領域に電荷が溜まる場合がある。参照画素の半導体領域に溜まった電荷が近接する画素に漏れ込むと、画素から出力される信号の精度を低下させ、画質の低下を招く場合がある。しかし、特許文献1にはノイズレベルの基準を得る参照画素についてなんら考察がされていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一つの側面は、トランジスタの配置された第一の面と、前記第一の面に対向する第二の面と、を有する半導体基板に配された複数の画素と、前記複数の画素の一部への光の入射を妨げる遮光部とを有する光電変換装置であって、前記複数の画素は、前記遮光部によって遮光された第一の画素と、第二の画素とを含み、前記複数の画素のそれぞれは、領域と、フローティングディフージョンと、前記領域と前記フローティングディフージョンとの間に配された転送トランジスタとを有し、前記複数の画素のそれぞれの領域は、第一の導電型の第一の半導体領域を含み、前記第一の画素が有する前記領域は、前記第一の面と、前記第二の面との間に第二の半導体領域を含み、前記第二の画素が有する前記領域は、前記第二の面と、前記第一の半導体領域との間に第三の半導体領域を含み、前記第一の半導体領域と前記第一の面との間に第二の導電型の不純物濃度が第一の不純物濃度であって前記第二の導電型の第四の半導体領域を含み、前記第四の半導体領域は、前記第一の面から第一の深さに配され、前記第一の画素が有する前記領域は、前記第一の面から前記第一の深さに前記第二の導電型の不純物濃度が前記第一の不純物濃度よりも低い半導体領域をさらに含み、前記第二の面に対して垂直な方向の断面視において、前記第二の面と、前記第一の半導体領域と、の間に、前記第二の面に平行な第一の線が前記第二の半導体領域及び第三の半導体領域のそれぞれを二分する位置で定められ、前記第二の半導体領域の前記第一の導電型の不純物濃度は、前記第三の半導体領域の前記第一の導電型の不純物濃度よりも高いことを特徴とする光電変換装置。
【0006】
本発明の別の側面は、トランジスタの配置された第一の面と、前記第一の面に対向する第二の面と、を有する半導体基板に配された複数の画素と、前記複数の画素の一部への光の入射を妨げる遮光部と、を有する光電変換装置であって、前記複数の画素は、前記遮光部によって遮光された第一の画素と、第二の画素とを含み、前記複数の画素のそれぞれは、領域と、フローティングディフージョンと、前記領域と前記フローティングディフージョンとの間に配された転送トランジスタとを有し、前記複数の画素のそれぞれの領域は、第一の導電型の複数の第一の半導体領域と、前記複数の第一の半導体領域の間に配された第五の半導体領域と、を含み、前記第一の画素が有する領域は、前記第二の面と前記第五の半導体領域との間に配された、第二の導電型の第二の半導体領域を含み、前記第二の画素が有する領域は、前記第二の面と前記第五の半導体領域との間に配された、前記第二の導電型の第三の半導体領域と、前記第一の面と前記第五の半導体領域との間に配された、前記第二の導電型の不純物濃度が第一の不純物濃度であって前記第二の導電型の第四の半導体領域と、を含み、前記第四の半導体領域は、前記第一の面から第一の深さに配され、前記第一の画素が有する前記領域は、前記第一の面から前記第一の深さに前記第二の導電型の不純物濃度が前記第一の不純物濃度よりも低い半導体領域をさらに含み、前記第二の面に対して垂直な方向の断面視において、前記第二の面と、前記複数の第一の半導体領域と、の間に、前記第二の面に平行な第一の線が前記第二の半導体領域及び第三の半導体領域のそれぞれを二分する位置で定められ、前記第二の面に対して垂直な方向の断面視において、前記第一の面と、前記第一の線との間に前記第二の面に平行な第二の線が前記第一の半導体領域及び第五の半導体領域のそれぞれを二分する位置で定められ、前記第一の線に沿った方向において、前記第一の画素が有する前記第五の半導体領域の第一の幅は、前記第二の画素が有する前記第五の半導体領域の第二の幅よりも大きいことを特徴とする光電変換装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、有効画素領域に空乏層止め層を有する画素が配置された光電変換装置において、信号精度の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第一の実施形態に係る光電変換装置の概略図である。
【
図2】第一の実施形態に係る光電変換装置の画素回路図である。
【
図3】第一の実施形態に係る光電変換装置の画素回路図である。
【
図4】比較例の光電変換装置の画素平面図及び断面図である。
【
図5】第一の実施形態に係る光電変換装置の画素平面図及び断面図である。
【
図6】第二の実施形態に係る光電変換装置の画素平面図及び断面図である。
【
図7】第三の実施形態に係る光電変換システムの構成を示す図である。
【
図8】第四の実施形態に係る移動体の構成、動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明による光電変換装置及びその駆動方法に関する実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。以下に述べる各実施形態では、光電変換装置の一例として、撮像装置を中心に説明するが、各実施形態は、撮像装置に限られるものではなく、光電変換装置の他の例にも適用可能である。例えば、測距装置(焦点検出やTOF(Time Of Flight)を用いた距離測定等の装置)、測光装置(入射光量の測定等の装置)などがある。
【0010】
また、以下に述べる実施形態中に記載される半導体領域、ウエルの導電型や注入されるドーパントは一例であって、実施形態中に記載された導電型、ドーパントのみに限定されるものでは無い。実施形態中に記載された導電型、ドーパントに対して適宜変更できるし、この変更に伴って、半導体領域、ウエルの電位は適宜変更される。
【0011】
以下の説明において、画素の形成される半導体基板のトランジスタが配置されている面を表面もしくは上、表面に対向する側を裏面もしくは下と表記する。以下の説明では裏面側から光が入射する画素(裏面照射型)を例に挙げるが、画素の構造はこれに限られず、表面側から光が入射する画素(表面照射型)にも本発明は適用可能である。
【0012】
なお、以下の実施形態で述べる不純物濃度は、特に断りのない限り、実効的な不純物濃度を表すものとする。ドナーとアクセプタの両方が半導体領域に注入された場合には、その注入された不純物量の差を、その半導体領域の実効的な不純物濃度とする。
【0013】
(第一の実施形態)
本発明の第一の実施形態について
図1から
図5を用いて説明する。
【0014】
図1は、本実施形態に係る光電変換装置の概略構成を表す概略図である。
【0015】
図1において、撮像装置は画素アレイ100、垂直走査回路101、列増幅回路102、水平走査回路103、出力回路104、制御回路105を備える。
【0016】
画素アレイ100は、XYの行列状に配置された複数の単位画素20を備えている。なお、画素アレイ100を構成する画素の数は、特に限定されるものではない。例えば、一般的なデジタルカメラのように数千行×数千列の画素で画素アレイ100を構成してもよく、1行又は1列に並べた複数の画素で画素アレイ100を構成してもよい。画素アレイ100に配された複数の単位画素20のそれぞれは、光が入射するように構成された有効画素である。
【0017】
垂直走査回路101は、単位画素20のトランジスタをオンまたはオフに制御するための制御信号を供給する。垂直走査回路101には、シフトレジスタやアドレスデコーダなどの論理回路が用いられ得る。単位画素20の各列には垂直出力線10が設けられており、単位画素20からの信号が列毎に垂直出力線10に読み出される。
【0018】
列増幅回路102は垂直出力線10に出力された画素信号を増幅し、リセット時の信号及び光電変換時の信号に基づく相関二重サンプリング処理を行う。
【0019】
水平走査回路103は、列増幅回路102の増幅器に接続されたスイッチと、該スイッチをオンまたはオフに制御するための制御信号を供給する。
【0020】
出力回路104はバッファアンプ、差動増幅器などから構成され、列増幅回路102からの画素信号を撮像装置の外部の信号処理部に出力する。AD変換部を撮像装置に設け、デジタルの画像信号を出力してもよい。
【0021】
図2は、本実施形態に係る撮像装置を説明するための単位画素20の等価回路を示している。
図2には行方向及び列方向に2次元配列された複数の単位画素20のうち、3行×3列の9個の単位画素20が示されている。
【0022】
複数の単位画素20の各々は、光電変換部201(以下PDとも表記する)、転送トランジスタ202、フローティングディフュージョン203(以下FDとも表記する)を備える。またリセットトランジスタ204、増幅トランジスタ205、選択トランジスタ206を備える。また垂直出力線10と繋がる出力部207、接地208、電源209を有している。
【0023】
PD201は、入射光を光電変換するとともに、光電変換された電荷を蓄積する。
【0024】
転送トランジスタ202は、オン状態にされる事でPDの電荷をFDに転送する。
【0025】
増幅トランジスタ205は垂直出力線10に接続された不図示の電流源とともにソースフォロワ回路を構成する。これにより、増幅トランジスタ205はFDの電圧に基づく信号を、選択トランジスタ206を介して垂直出力線10に出力する。またリセットトランジスタ204をオン状態にさせる事により、FDの電圧を電源209の電圧でリセットすることができる。
【0026】
同一行の単位画素20Aに対しては共通の制御信号が垂直走査回路101から供給される。すなわち、第n行の転送トランジスタ202、リセットトランジスタ204、選択トランジスタ206には、それぞれ、制御信号Φ202(n)、Φ204(n)、Φ206(n)がそれぞれ供給される。これらのトランジスタは制御信号がハイレベルの時にオンされ、ローレベルの時にオフされる。
【0027】
図3は、本実施形態に係る光電変換装置の単位画素20、OB画素20B、参照画素20Nのそれぞれの等価回路を示している。
【0028】
単位画素20の有する素子及びその機能は
図2の説明と同一である。単位画素20に入射した光はPD201で信号に変換される。
【0029】
OB画素20Bは単位画素20と同一の素子構造を有するが、画素の光入射面側に光の入射を制限する不図示の遮光部が設けられている。したがってOB画素20BのPD201では入射光の光電変換は起こらず、OB画素20Bの出力として、PDの暗電流やノイズを含めた黒レベルの基準値を得ることができる。
【0030】
参照画素20Nは、単位画素20及びOB画素20Bと比べ、PD201が形成されていない。そのため参照画素20Nから出力される信号はPDの暗電流やノイズの影響を受けない。参照画素20Nの出力として、PDの暗電流やノイズを含まない画素部のノイズの基準値を得ることができる。
【0031】
図4(a)は比較例の光電変換装置の単位画素20、OB画素20B、参照画素20Nの3画素分の平面模式図を示し、
図4(a)のA-A‘における3画素分の断面模式図を
図4(b)に示す。
【0032】
単位画素20、OB画素20B、参照画素20Nの有する素子及びその機能は
図2、3の説明と同一である。
図4(a)中に太線で示される矩形の領域は、後述する
図4(b)の空乏層止め領域211のスリット部である。
図4(b)では模式的に、OB画素20Bと参照画素20Nの光入射面側に光を遮蔽するための遮光膜が配置されている。
【0033】
図4(a)のB-B‘における断面模式図を
図4(c)に示す。また
図4(a)のC-C‘における断面模式図を
図4(d)に示す。
図4(b)(c)に示すように、単位画素20、OB画素20BはN型の電荷蓄積領域210、P型の空乏層止め領域211、画素分離領域212を含む。
【0034】
比較例の光電変換装置において、単位画素20とOB画素20Bでは、N型の電荷蓄積領域210の下に、空乏層の延伸を抑制するためのP型の空乏層止め領域211が形成されている。空乏層止め領域211の下部のN型の半導体領域で発生した電荷は、ドリフトにより空乏層止め領域のスリット部を通って電荷蓄積領域210に収集される。空乏層止め領域211のスリット部は、
図4(a)においては各画素の空乏層止め領域毎に独立した領域として図示され、
図4(b)ではスリット部の第一の端部と、第一の端部に対向する第二の端部とがA-A‘断面において左右に離隔された構造をなす。空乏層止め領域の構造はこれに限られず、例えばA-A‘線に沿ってA-A‘方向一帯を覆うスリットを形成してもかまわない。各画素の空乏層止め領域のそれぞれを複数の部材で構成することが可能である。
【0035】
空乏層止め領域211がP型の半導体領域であることにより、空乏層止め領域211のスリット部のポテンシャルが高い場合、スリット部にポテンシャル障壁が形成される。このポテンシャル障壁がN型の半導体領域から電荷蓄積領域210への電荷移動の妨げとなり、N型の半導体領域に電荷が残ることが考えられる。また空乏層止め領域211のスリット部のポテンシャルが低く、ポテンシャルギャップがある場合には、転送トランジスタ202をオンして画素からFDへ電荷を転送する際に、空乏層止め領域211のスリット部に電荷が残ることが考えられる。
【0036】
空乏層止め領域211のスリット部のポテンシャルは、空乏層止め領域211及び電荷蓄積領域210を形成するためのフォトマスクパターンや、P型及びN型不純物のイオン注入条件、注入されたイオンの熱拡散で決まる。単位画素20とOB画素20Bにおける空乏層止め領域211のスリット部では、N型の半導体領域から電荷蓄積領域210にかけてポテンシャル勾配を形成している。
【0037】
一方で、参照画素20NにはPD201を形成しないため、電荷蓄積領域210を形成するためのイオン注入も行われない。電荷蓄積領域210を形成するためのイオン注入を行わないと、空乏層止め領域211のスリット部では相対的にP型の不純物濃度が高くなる。そのため、参照画素20Nでは電荷蓄積領域210を有する単位画素20及びOB画素20Bと比べ空乏層止め領域211のスリット部におけるポテンシャルが高くなる。つまり、スリット部にポテンシャル障壁が形成される。
【0038】
参照画素20NはPD201を持たず、また遮光部によって遮光されているために光電変換による電荷の発生はないが、暗電流による電荷は発生しうる。特に裏面入射型の光電変換装置では裏面側にSi界面が存在するため、表面入射型の光電変換装置と比較すると、裏面に近い位置のN型の半導体領域で暗電流による電荷が発生しやすい。
【0039】
N型の半導体領域で発生した電荷は、空乏層止め領域211のスリット部に形成されたポテンシャル障壁によって移動を抑制され、N型の半導体領域に電荷が溜まる場合がある。この溜まった電荷が、近接する画素(OB画素、単位画素)に漏れ込む場合がある。また、N型の半導体領域に溜まった電荷が当該半導体領域の蓄積可能な電荷量を越えると、余剰電荷の一部は参照画素とOB画素20Bの間のポテンシャル障壁を超えてOB画素20Bに侵入する場合がある。OB画素20Bに余剰電荷が侵入すると、黒レベルの基準値を正確に得ることができない場合がある。また、参照画素から単位画素20に電荷が漏れ込む場合がある。この場合には、単位画素20が出力する信号精度の低下が生じる。光電変換装置が出力する信号を用いて画像を生成する場合には、画質の低下が生じる。
【0040】
図5は、本発明の第一の実施形態に係る単位画素20、OB画素20B、参照画素20Nそれぞれの平面模式図および断面模式図を示している。
図5(a)のA-A‘における断面模式図を
図5(b)に示し、B-B‘における断面模式図を
図5(c)に示す。また
図5(a)のC-C‘における断面模式図を
図5(d)に示す。
【0041】
第一の実施形態に係る光電変換装置では、単位画素20及びOB画素20Bと比べ、参照画素20Nの電荷蓄積N層の下部の構造が異なる点で比較例の画素と異なっている。具体的には
図5(b)及び
図5(d)に示すように、空乏層止め領域211の下の、比較例の構造ではN型の半導体領域を形成していた領域全面がP型の半導体領域となっている。つまり、参照画素20Nの空乏層止め領域211下の領域は単位画素20及びOB画素20Bの空乏層止め領域211下の領域と比べP型不純物の実効濃度が高く、N型不純物の実効濃度が低い。各画素の光入射面から空乏層止め領域211までの範囲を光入射面に平行に二分し、同じ深さに当たる位置で比較したときに、参照画素のほうがP型不純物の実効濃度が高く、N型不純物の実効濃度が低いということもできる。
【0042】
空乏層止め領域211の下部をP型の半導体領域とすることで、該領域での余剰電荷の発生を抑制することができる。そのため、隣接するOB画素20Bへの余剰電荷の侵入を抑制することができ、OB画素20Bでの黒レベルの基準値をより正確に得ることができる。また、参照画素から単位画素20への電荷の侵入も抑制できる。よって、単位画素20が出力する信号精度の低下も抑制できる。光電変換装置が出力する信号を用いて画像を生成する場合には、画質の低下を抑制できる。
【0043】
なお、空乏層止め領域211の下部のP型半導体領域は、隣り合う画素同士を分離するP型の画素分離領域と同じイオン注入工程で形成しても良い。画素分離領域と同じ工程で形成することで、工程の簡易化が可能である。また、この実施形態において参照画素の空乏層止め領域211にスリットは必要不可欠ではない。
【0044】
本実施形態では空乏層止め領域211の下部の半導体領域をP型半導体領域として説明した。該領域を電荷蓄積領域210よりも濃度の低いN型半導体領域とし、形成されるポテンシャル井戸を浅くすることによっても、同様にスリット部のポテンシャル障壁形成による電荷移動の抑制を低減する効果を得られる。
【0045】
なお、本図では空乏層止め領域211の表面側にスリット部と重なるようにP型のカウンター領域214が形成されている。
図5(a)中に太点線で示される矩形の領域が、後述するカウンター領域214である。
【0046】
空乏層止め領域211のスリット部では、空乏層止め領域211が形成されていないために、局所的に電荷蓄積領域210の空乏化電圧が上がり、ポテンシャル溝ができる場合がある。転送トランジスタ202を介してPDの蓄積電荷をFDへ電荷転送する際に電荷がこのポテンシャル溝に残った場合、リニアリティの劣化や残像などの画質劣化が引き起こされうる。
【0047】
本実施形態では、空乏層止め領域211の表面側に、光入射方向からの上面視でスリット部に重なるように電荷蓄積領域210にボロンなどのP型不純物をイオン注入することなどによってカウンター領域214が形成される。カウンター領域214により、空乏層止め領域211のスリット部に重なる部分のポテンシャルが引き上げられ、局所的な空乏化電圧の上昇が抑制される。これにより、PDからFDへの電荷転送を容易にしている。
【0048】
また、カウンター領域214は、
図5(a)に示すように、空乏層止め領域211のスリット部に対して転送トランジスタ202と反対方向に延在していても良い。PDの転送トランジスタ202から遠い領域には、転送トランジスタ202による電界が届きにくく、電荷の移動が滞る場合がある。カウンター領域214を転送トランジスタ202から遠いPD領域まで延在させ、PD領域のポテンシャルを持ち上げることで、PDからFDへの電荷転送をさらに容易にすることが可能である。
【0049】
カウンター領域214は単位画素20のみならずOB画素20B、参照画素20Nにも形成される。カウンター領域214は以下に説明する第二の実施形態に係る光電変換装置や、比較例として示した光電変換装置にも適用可能である。
【0050】
(第二の実施形態)
本発明の第二の実施形態について
図6を用いて説明する。以下の説明では第一の実施形態に係る説明と重複する部分は省略し、主として第一の実施形態との相違点について説明する。
【0051】
図6は、本発明の第二の実施形態に係る光電変換装置の単位画素20、OB画素20B、参照画素20Nのそれぞれの平面模式図および断面模式図を示している。
図6(a)のA-A‘における断面模式図を
図6(b)に示し、B-B‘における断面模式図を
図6(c)に示す。また
図6(a)のC-C‘における断面模式図を
図6(d)に示す。
【0052】
第二の実施形態では、単位画素20及びOB画素20Bに対して、参照画素20Nの電荷蓄積領域下部の構造が異なる点が比較例の画素及び第一の実施形態に係る光電変換装置の画素と異なっている。具体的には、
図6(b)及び
図6(d)に示すように、参照画素が電荷蓄積領域210に加え空乏層止め領域211をも有さない点で異なる。もしくは空乏層止め領域211のスリット幅が参照画素の断面と同程度に広いと考えることもできる。
【0053】
本実施形態に係る参照画素20Nは空乏層止め領域211を有さないため、空乏層止め領域211のスリット部も存在せず、スリット部周辺のポテンシャル障壁も形成されない。そのため転送トランジスタ202をオンした時に参照画素20Nの光入射面側まで十分な電界がかかり、参照画素からFDへの余剰電荷の排出が可能となる。これによって、参照画素から隣接するOB画素20Bへの余剰電荷の侵入を抑制することができ、OB画素20Bでの黒レベルの基準値をより正確に得ることができる。また、参照画素から単位画素20への電荷の侵入も抑制できる。よって、単位画素20が出力する信号精度の低下も抑制できる。光電変換装置が出力する信号を用いて画像を生成する場合には、画質の低下を抑制できる。
【0054】
(第三の実施形態)
本実施形態による光電変換システムについて、
図7を用いて説明する。
図7は、本実施形態による光電変換システムの概略構成を示すブロック図である。
【0055】
上記第一及び第二の実施形態で述べた光電変換装置(撮像装置)は、種々の光電変換システムに適用可能である。適用可能な光電変換システムの例としては、デジタルスチルカメラ、デジタルカムコーダ、監視カメラ、複写機、ファックス、携帯電話、車載カメラ、観測衛星などが挙げられる。また、レンズなどの光学系と撮像装置とを備えるカメラモジュールも、光電変換システムに含まれる。
図7には、これらのうちの一例として、デジタルスチルカメラのブロック図を例示している。
【0056】
図7に例示した光電変換システムは、光電変換装置の一例である撮像装置1004、被写体の光学像を撮像装置1004に結像させるレンズ1002を有する。さらに、レンズ1002を通過する光量を可変にするための絞り1003、レンズ1002の保護のためのバリア1001を有する。レンズ1002及び絞り1003は、撮像装置1004に光を集光する光学系である。撮像装置1004は、上記のいずれかの実施形態の光電変換装置(撮像装置)であって、レンズ1002により結像された光学像を電気信号に変換する。
【0057】
光電変換システムは、また、撮像装置1004より出力される出力信号の処理を行うことで画像を生成する画像生成部である信号処理部1007を有する。信号処理部1007は、必要に応じて各種の補正、圧縮を行って画像データを出力する動作を行う。信号処理部1007は、撮像装置1004が設けられた半導体基板に形成されていてもよいし、撮像装置1004とは別の半導体基板に形成されていてもよい。
【0058】
光電変換システムは、更に、画像データを一時的に記憶するためのメモリ部1010、外部コンピュータ等と通信するための外部インターフェース部(外部I/F部)1013を有する。更に光電変換システムは、撮像データの記録又は読み出しを行うための半導体メモリ等の記録媒体1012、記録媒体1012に記録又は読み出しを行うための記録媒体制御インターフェース部(記録媒体制御I/F部)1011を有する。なお、記録媒体1012は、光電変換システムに内蔵されていてもよく、着脱可能であってもよい。
【0059】
更に光電変換システムは、各種演算とデジタルスチルカメラ全体を制御する全体制御・演算部1009、撮像装置1004と信号処理部1007に各種タイミング信号を出力するタイミング発生部1008を有する。ここで、タイミング信号などは外部から入力されてもよく、光電変換システムは少なくとも撮像装置1004と、撮像装置1004から出力された出力信号を処理する信号処理部1007とを有すればよい。
【0060】
撮像装置1004は、撮像信号を信号処理部1007に出力する。信号処理部1007は、撮像装置1004から出力される撮像信号に対して所定の信号処理を実施し、画像データを出力する。信号処理部1007は、撮像信号を用いて、画像を生成する。
【0061】
このように、本実施形態によれば、上記のいずれかの実施形態の光電変換装置(撮像装置)を適用した光電変換システムを実現することができる。
【0062】
(第四の実施形態)
本実施形態の光電変換システム及び移動体について、
図8を用いて説明する。
図8は、本実施形態の光電変換システム及び移動体の構成を示す図である。
【0063】
図8(a)は、車載カメラに関する光電変換システムの一例を示したものである。光電変換システム300は、撮像装置310を有する。撮像装置310は、上記のいずれかの実施形態に記載の光電変換装置(撮像装置)である。光電変換システム300は、撮像装置310により取得された複数の画像データに対し、画像処理を行う画像処理部312と、光電変換システム300により取得された複数の画像データから視差(視差画像の位相差)の算出を行う視差取得部314を有する。また、光電変換システム300は、算出された視差に基づいて対象物までの距離を算出する距離取得部316と、算出された距離に基づいて衝突可能性があるか否かを判定する衝突判定部318と、を有する。ここで、視差取得部314や距離取得部316は、対象物までの距離情報を取得する距離情報取得手段の一例である。すなわち、距離情報とは、視差、デフォーカス量、対象物までの距離等に関する情報である。衝突判定部318はこれらの距離情報のいずれかを用いて、衝突可能性を判定してもよい。距離情報取得手段は、専用に設計されたハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアモジュールによって実現されてもよい。また、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等によって実現されてもよいし、これらの組合せによって実現されてもよい。
【0064】
光電変換システム300は車両情報取得装置320と接続されており、車速、ヨーレート、舵角などの車両情報を取得することができる。また、光電変換システム300は、衝突判定部318での判定結果に基づいて、車両に対して制動力を発生させる制御信号を出力する制御部である制御ECU330が接続されている。また、光電変換システム300は、衝突判定部318での判定結果に基づいて、ドライバーへ警報を発する警報装置340とも接続されている。例えば、衝突判定部318の判定結果として衝突可能性が高い場合、制御ECU330はブレーキをかける、アクセルを戻す、エンジン出力を抑制するなどして衝突を回避、被害を軽減する車両制御を行う。警報装置340は音等の警報を鳴らす、カーナビゲーションシステムなどの画面に警報情報を表示する、シートベルトやステアリングに振動を与えるなどしてユーザに警告を行う。
【0065】
本実施形態では、車両の周囲、例えば前方又は後方を光電変換システム300で撮像する。
図8(b)に、車両前方(撮像範囲350)を撮像する場合の光電変換システムを示した。車両情報取得装置320が、光電変換システム300ないしは撮像装置310に指示を送る。このような構成により、測距の精度をより向上させることができる。
【0066】
上記では、他の車両と衝突しないように制御する例を説明したが、他の車両に追従して自動運転する制御や、車線からはみ出さないように自動運転する制御などにも適用可能である。更に、光電変換システムは、自車両等の車両に限らず、例えば、船舶、航空機あるいは産業用ロボットなどの移動体(移動装置)に適用することができる。加えて、移動体に限らず、高度道路交通システム(ITS)等、広く物体認識を利用する機器に適用することができる。
【0067】
[変形実施形態]
本発明は、上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
【0068】
例えば、いずれかの実施形態の一部の構成を他の実施形態に追加した例や、他の実施形態の一部の構成と置換した例も、本発明の実施形態に含まれる。
【0069】
また、上記第三の実施形態、第四の実施形態に示した光電変換システムは、光電変換装置を適用しうる光電変換システム例を示したものであって、本発明の光電変換装置を適用可能な光電変換システムは
図7及び
図8に示した構成に限定されるものではない。
【0070】
また、第一の実施形態及び第二の実施形態について
図1の光電変換装置の概略図を用いて説明したが、本発明は回路を2つ以上の半導体基板に配置して、それらの基板を貼り合わせた積層構造にしてもよい。例えば回路を2枚の基板に分け、第1基板に画素アレイ100と垂直走査回路101を配置し、第2基板には列増幅回路102と水平走査回路103、制御回路105を配置する。これは配置の一例であって、本発明を限定するものではない。たとえば、第1基板に配されていた垂直走査回路101は第2基板に配されるようにしても良い。また、
図1の例では単位画素20と列増幅回路102は画素の列ごとに電気的に接続されているが、例えば1つの画素毎に信号増幅回路が接続されてもよい。2枚の基板からなる積層構造を例に挙げて説明したが、例えばさらに回路を分割するか、回路や機能を追加するなどして3枚以上の基板からなる積層構造にしてもよい。
【0071】
なお、上記実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0072】
201 光電変換部
210 N型電荷蓄積領域
211 P型空乏層止め領域
212 画素分離領域