(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】修飾型RNA(MOD-RNA)を使用する効率的なインビボタンパク質発現
(51)【国際特許分類】
A61K 48/00 20060101AFI20240219BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240219BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240219BHJP
C12N 15/16 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
A61K48/00
A61P9/00 ZNA
A61P43/00 101
A61P43/00 111
C12N15/16
(21)【出願番号】P 2021102103
(22)【出願日】2021-06-21
(62)【分割の表示】P 2019078998の分割
【原出願日】2012-03-12
【審査請求日】2021-07-14
(32)【優先日】2011-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2011-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】310022017
【氏名又は名称】ザ ジェネラル ホスピタル コーポレーション ドゥーイング ビジネス アズ マサチューセッツ ジェネラル ホスピタル
(73)【特許権者】
【識別番号】596115687
【氏名又は名称】ザ チルドレンズ メディカル センター コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】シーン ケネス アール.
(72)【発明者】
【氏名】プタチェク レオン エム.
(72)【発明者】
【氏名】リュイ キャシー オワ-ラン
(72)【発明者】
【氏名】ザンギー リオール
(72)【発明者】
【氏名】蝦名 渉
(72)【発明者】
【氏名】ロッシ デリック ジェイ.
【審査官】菊池 美香
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/012316(WO,A1)
【文献】Circulation,1998年,98,2800-2804,http://circ.ahajournals.org/content/98/25/2800.long
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 48/00
A61P 9/00
A61P 43/00
C12N 15/16
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓虚血の状態を有する対象における、心臓性組織における心臓線維症の軽減における使用のための、VEGFポリペプチドをコードする合成修飾型RNA分子であって、VEGFポリペプチドがヒトVEGF-Aポリペプチド(hVEGF-A)であり、少なくとも5-メチルシチジン(5mC)およびシュードウリジンを含む、前記合成修飾型RNA分子。
【請求項2】
VEGFポリペプチドをコードする合成修飾型RNA分子の対象への投与によって、VEGFポリペプチドをコードする非修飾型合成RNA分子の投与と比較して自然免疫応答が低下する、請求項1記載の使用のための合成修飾型RNA分子。
【請求項3】
虚血の状態が
、うっ血性心不全、心筋症、心筋梗塞、組織虚血
、アテローム性硬化症、構造的心疾患、冠動脈疾患、心筋虚血、感染性心筋炎、薬物または毒素誘導性の筋異常、先天性心臓疾患、冠動脈機能不全、冠動脈樹機能不全および冠動脈側副血行路形成から選択される疾患または障害によって引き起こされる、請求項1又は2記載の使用のための合成修飾型RNA分子。
【請求項4】
i) 合成修飾型RNA分子が、ベクターにおいて発現しない、および/または、
ii) 合成修飾型RNA分子が、裸の合成修飾型RNA分子を含む、および/または、
iii) 合成修飾型RNA分子が、脂質複合体中に存在する、
請求項1~3のいずれか一項記載の使用のための合成修飾型RNA分子。
【請求項5】
合成修飾型RNA分子が5'キャップをさらに含み、好ましくは該5'キャップは5'キャップ類似体であり、好ましくは該5'キャップ類似体は5'ジグアノシンキャップである、請求項1~4のいずれか一項記載の使用のための合成修飾型RNA分子。
【請求項6】
合成修飾型RNA分子が5'三リン酸を含まない、請求項1~5のいずれか一項記載の使用のための合成修飾型RNA分子。
【請求項7】
合成修飾型RNA分子が、ポリ(A)テール、コザック配列、3'非翻訳領域、5'非翻訳領域、またはそれらの任意の組合せをさらに含み、好ましくは該ポリ(A)テール、該コザック配列、該3'非翻訳領域、該5'非翻訳領域、または該それらの任意の組合せが、5-メチルシチジン(5mC)、N6-メチルアデノシン(m6A)、3,2'-O-ジメチルウリジン(m4U)、2-チオウリジン(s2U)、2'フルオロウリジン、シュードウリジン、2'-O-メチルウリジン(Um)、2'デオキシウリジン(2'dU)、4-チオウリジン(s4U)、5-メチルウリジン(m5U)、2'-O-メチルアデノシン(m6A)、N6,2'-O-ジメチルアデノシン(m6Am)、N6,N6,2'-O-トリメチルアデノシン(m62Am)、2'-O-メチルシチジン(Cm)、7-メチルグアノシン(m7G)、2'-O-メチルグアノシン(Gm)、N2,7-ジメチルグアノシン(m2、7G)、N2,N2,7-トリメチルグアノシン(m2,2,7G)、およびイノシン(I)からなる群より選択される1つまたは複数の修飾ヌクレオシドを含む、請求項1~6のいずれか一項記載の使用のための合成修飾型RNA分子。
【請求項8】
合成修飾型RNA分子が標的化タンパク質にVEGFが融合されている融合タンパク質をコードし、好ましくは合成修飾型RNA分子はVEGF-vWF融合タンパク質をコードする、請求項1~7のいずれか一項記載の使用のための合成修飾型RNA分子。
【請求項9】
合成修飾型RNA分子が、被験体に、合成修飾型RNA分子を含むまたは合成修飾型RNA分子で被覆される埋め込み型装置、カテーテルまたは内視鏡を介して心臓への直接注入によって投与される、請求項1~8のいずれか一項記載の使用のための合成修飾型RNA分子。
【請求項10】
埋め込み型装置がステントまたは移植可能薬物送達ポンプである、請求項9記載の使用のための合成修飾型RNA分子。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項記載の合成修飾型RNA分子を含む、心臓虚血の状態を有する対象における、心臓性組織における心臓線維症の軽減における使用のための組成物。
【請求項12】
組成物が、
i)100ng/μlよりも高い、又は
ii) 1~25μg/μlの間、又は
iii) 25μg/μlと50μg/μlの間
の濃度の合成修飾型RNA分子を含む、請求項11記載の使用のための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2011年4月3日に提出された米国特許仮出願番号第61/471,166号、および2011年4月4日に提出された同第61/471,584号の利益を主張する。これらのそれぞれの内容は、それらの全体の参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本願はEFS-Webを介してASCII形式で提出された配列表を含み、その配列表はその全体の参照によりここに組み込まれる。前記のASCIIコピーは、2012年3月12日に作成され、32587153.txtという名称であり、サイズが2,105,668バイトである。
【0003】
本発明の分野
本発明は、概して、合成修飾型RNAを使用するインビボでの筋細胞および心筋細胞における遺伝子発現ならびにその使用法に関する。本発明は、概して、合成修飾型RNAを使用する腫瘍における遺伝子発現の調節およびその使用法にさらに関する。
【背景技術】
【0004】
心血管疾患は、心血管系に関連する疾患または障害を含む。そのような疾患および障害は心膜、心臓弁、心筋、血管および静脈のものを含む。
【0005】
ここ二十年で心不全の罹患率と死亡率が著しく上昇した(Tavazzi, 1998)。それ故、有効な治療法の発見は公衆衛生における今世紀の最大の課題のうちの一つである。心不全の治療には冠動脈バイパス移植および全心臓移植などのいくつかの代替法が存在するが、厳格な適格規準と共に心筋線維症および器官の不足のため、この疾患を治療する新しいアプローチの探索が要求されている。細胞移植によっても収縮性筋細胞の数を損傷を受けた心臓において増加させることができることが明らかになっている。しかしながら、心筋細胞(cardiomyocyte)は心筋の細胞(cardiac muscle cell)としても知られるが、それは終末分化細胞であり、分裂することができず、そして、それらの細胞移植での使用は、梗塞を起こした広い部位の心筋の修復に充分な量の心筋細胞を得ることができないことから限定的である。
【0006】
したがって、1つのストラテジーは、細胞死から細胞を保護するための、傷害後の心臓、例えば、心筋細胞における遺伝子発現の誘導またはタンパク質の発現であり得、あるいは、機械的ストレスや低酸素誘導ストレスへの細胞の耐性を上昇させるための、細胞への作用物質もしくは遺伝子の導入などの予防ストラテジーであり得る。作用物質の導入または遺伝子発現の誘導のための伝統的な方法は外来性DNAによるもの、または組換えウイルスベクターによるものであったが、そのような遺伝子治療法の使用は意図しない変異形成性のゲノム変化を導入する潜在的なリスクを有し、ならびに細胞に有毒である可能性や自然免疫応答を誘発する可能性がある。さらに、タンパク質補充療法も、タンパク質のインビボ送達が自然免疫応答を誘導するという問題およびタンパク質の安定性や特定の組織種および細胞種への送達に関する問題のために難しいことがある。したがって、有益な研究用途や治療用途に適したインビボ遺伝子発現やタンパク質発現の能率的な方法の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0007】
本明細書は、合成修飾型RNA配列を使用するインビボ遺伝子発現の方法を提供し、ならびに、特に、インビボでの組織および器官における、およびまた細胞、例えば、心筋細胞および筋原細胞を含むが、これらに限定されない筋肉細胞におけるインビボタンパク質発現のための方法を提供する。他の本発明の態様は、対象における疾患および障害、例えば、限定されないが、筋肉障害ならびに心血管系の疾患および障害の治療のための、目的のタンパク質をコードする修飾型RNAの使用法に関する。他の本発明の態様は、対象の疾患または障害の治療のために対象に投与するための、目的のタンパク質をコードする少なくとも1つの合成修飾型RNAを含む医薬組成物およびそのキットに関する。いくつかの実施形態では、その疾患または障害は心血管系の疾患または障害であり、合成修飾型RNAによって発現されるその目的のタンパク質は心機能増強タンパク質である。
【0008】
最近、合成修飾型RNA(本明細書において「MOD-RNA」と呼ぶ)は、哺乳類細胞における目的の遺伝子の過剰発現のためにインビトロで使用することができることが報告された。合成mRNAに行われる化学修飾および配列修飾がその分子を安定化し、転写を増強する。MOD-RNAからのポリペプチドの発現が、宿主細胞に取り込まれ得るDNAまたはウイルス性配列の導入を必要とすることなく、目的の遺伝子の非常に効率的で一過性のインビトロ発現を可能にする。
【0009】
本明細書において、発明者らは合成修飾型RNAを使用する効率的なインビボタンパク質発現を実証する。本明細書において示されるように、タンパク質をインビボで発現させるためのMOD-RNAの使用は急速に生じ、そして、非MOD RNA(例えば、普通のRNA配列)の導入、または自然免疫系を活性化し得るタンパク質の直接細胞内導入よりもずっと効率的で細胞への有害性が低い。本明細書は、目的に合わせた形質移入技術を用いる合成修飾型RNAの送達を実証し、そしていくつかの実施形態では、組成物中のMOD-RNAの投与は導入された合成修飾型RNAの分解を阻害する特定の試薬を含むこともできる。
【0010】
本発明の1つの態様は、目的のタンパク質をコードする合成修飾型RNAを組織に導入することによるインビボタンパク質発現のための組成物、方法およびキットに関する。本明細書において開示されるように、いくつかの実施形態では、本明細書に記載される少なくとも1つのインビボ合成修飾型RNAを導入するための方法はいくつかの独自の特徴を含み、それには特定の形質移入プロトコル、例えば、目的のタンパク質をコードする高濃度レベル、例えば、少なくとも約1μg/μlまたは約100μg/μlのMOD-RNAの送達、ならびに目的の器官や組織への修飾型RNAを含む組成物の特異的な導入を可能とする組織特異的外科的手技が含まれる。
【0011】
いくつかの実施形態では、本明細書において開示される方法、組成物およびキットはインビボタンパク質補充療法のための方法での使用に合わせることができる。いくつかの実施形態では、目的のタンパク質をコードする合成修飾型RNAは、タンパク質発現が望ましい様々な異なる疾患の治療のための方法において、インビボタンパク質発現のために組織や器官に送達することができる。いくつかの実施形態では、疾患は本明細書において開示される機能欠損型疾患、例えば、限定されないが、筋ジストロフィー、嚢胞性線維症、ならびに特定のタンパク質のタンパク質発現のレベルが不適切であるおよび/または遺伝子発現によって非機能性タンパク質がもたらされる他の疾患であり得る。
【0012】
さらに、いくつかの実施形態では、本明細書において開示される、インビボタンパク質発現のための合成修飾型RNA技術のインビボ送達のための方法は、器官全体および全身の病態生理学を研究するために使用することができる動物モデルプラットフォームの作製に用いることができる。いくつかの実施形態では、本明細書において開示される方法は、ヒトの患者での臨床用途のための治療法の試験や開発のための小動物モデルおよび大動物モデル、例えば、霊長類モデルおよび豚モデル、の両方を使用するインビボシステムを提供する。
【0013】
いくつかの実施形態では、合成修飾型RNAを使用するインビボタンパク質発現のための本明細書において開示される方法および組成物およびキットは、疾患または障害の発生と治療のための物であり得る。いくつかの実施形態では、疾患または障害は、特定のタンパク質の不十分な発現または正常に動作しない型のタンパク質の発現の結果である遺伝性障害や後天性障害である。いくつかの実施形態では、疾患または障害は後天性障害、例えば、本明細書において開示される心血管系の疾患または障害である。
【0014】
別の実施形態では、合成修飾型RNAを使用するインビボタンパク質発現のための本明細書において開示される方法および組成物およびキットは再生医療ストラテジーにおいてでも用いられ得る。例えば、いくつかの実施形態では、目的のタンパク質をコードする少なくとも1つの合成修飾型RNAを含む組成物は目的の細胞集団を含むこともできる。言い換えると、いくつかの実施形態では、本発明は、目的の細胞集団と少なくとも1つの合成修飾型RNAの組合せを対象に投与する工程を含む、再生細胞療法のための方法を提供する。いくつかの実施形態では、細胞集団は幹細胞集団であり、いくつかの実施形態では、幹細胞集団は心臓前駆細胞または心臓始原細胞の集団である。いくつかの実施形態では、幹細胞はIsl1+幹細胞集団であり、または血管始原細胞集団である。そのような細胞集団は当技術分野において周知であり、そして、国際特許出願公開第2008/054819号、同第2010/144678号、同第2010/042856号、および米国特許出願公開第2010/0166714号、同第2011/0033430号、同第2010/021713号および同第2011/0003327号に開示される細胞集団を含むが、これらに限定されない。それらは参照により全体が本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、細胞集団はIsl1+始原細胞、または国際公開第2010/144678号に開示されるその子孫細胞である。
【0015】
本明細書において開示されるように、本発明の1つの態様は、組織、例えば、限定されないが、心筋細胞および筋細胞など、心臓組織および筋肉組織においてタンパク質発現をインビトロでもインビボでも誘導するための合成修飾型RNA(本明細書において「MOD-RNA」と呼ぶ)の使用に関する。いくつかの実施形態では、その心筋細胞は哺乳類の心筋細胞、例えば、ヒト心筋細胞である。
【0016】
特に、本明細書の実施例において示されるように、MOD-RNAによる機能性心筋細胞(CM)のインビトロおよびインビボでの形質移入により、非常に速いタンパク質発現の開始が、非MOD RNAで形質移入されている細胞と比較して有意に高い、例えば、少なくとも約2倍高いタンパク質発現レベルと共にもたらされる。本明細書はまた、MOD-RNAによるマウス新生児の形質移入およびヒト胎児心筋細胞のインビトロでの形質移入に最適な用量の範囲が1000細胞当たり10~30ngの間であり、そのような用量は細胞に無毒であることを実証する。
【0017】
本明細書はまた、MOD-RNAによる心臓および筋肉組織の形質移入の後の非常に効率的で急速であるインビボタンパク質発現を実証する。発明者らは、タンパク質発現が形質移入後から少なくとも3時間以内までに起こること、および、MOD-RNAからのインビボタンパク質発現が筋肉または心臓へのMOD-RNAの直接注入から少なくとも4~5日間生じることを示す。本明細書の実施例において開示されるように、MOD-RNAによる心臓組織および筋肉のインビボ形質移入によって、低免疫応答がもたらされる。重要なことに、発明者らは、インビボタンパク質発現のレベルは心臓または筋肉にインビボで注入されたMOD-RNAの量に対して用量依存的であり、そのことが、所望の量の必要なタンパク質発現のためにその組織に投与されるMOD-RNAの量を決定することを可能とすることを示す。したがって、合成修飾型RNAがタンパク質補充療法または他の治療法においてインビボタンパク質発現のために使用されている場合、発現するタンパク質の量を決定する能力は非常に有用である。
【0018】
本発明の別の態様は、ポリペプチドをコードする合成修飾型RNAを含む組成物をその対象に投与する工程を含む、該対象の疾患または障害を治療する方法に関する。いくつかの実施形態では、組成物は対象の特定の組織に送達することができ、いくつかの実施形態では、その組織は筋肉組織である。いくつかの実施形態では、筋肉組織は骨格筋、心筋または平滑筋である。
【0019】
いくつかの実施形態では、本明細書において開示される方法は、1つ以上の疾患、例えば、限定されないが、次の筋肉疾患:心筋症(虚血性および非虚血性)、骨格筋障害、嚢胞性線維症、筋ジストロフィーの治療のために対象の筋肉組織に目的のポリペプチドをコードする合成修飾型RNAを送達する工程を含む。いくつかの実施形態では、心筋症の治療のために、VEGF、例えば、hVEGFをコードする合成修飾型RNAを対象の心臓に送達することができる。いくつかの実施形態では、VEGFをコードする合成修飾型RNAは、直接心筋内注入により心筋に送達することができる。
【0020】
発明者らは本明細書において、心筋梗塞のマウスモデルの心臓へのhVEGFポリペプチドをコードする合成修飾型RNAのインビボ送達が心筋梗塞巣が発生することを防ぎ、虚血性発作後の心臓への損傷を顕著に予防することを実証している。いくつかの実施形態では、hVEGFポリペプチドをコードする合成修飾型RNAのインビボ送達はまた心臓の虚血からの回復を促進した。したがって、1つの実施形態では、本明細書において開示される方法は、心臓発作や心筋梗塞の治療のために対象の心臓組織、例えば、心筋組織にVEGFをコードする合成修飾型RNAを送達する方法に関する。
【0021】
いくつかの実施形態では、前記方法と組成物は、例えば、1つ以上の遺伝子をコードする合成修飾型RNAを送達することができる場合、筋ジストロフィーの治療のための方法に有用であり、そして、1つ以上の筋肉組織の標的に送達することができる。例えば、いくつかの実施形態では、前記方法がデュシェンヌ型/ベッカー型筋ジストロフィーの治療のためのものである場合、非変異型のジストロフィンタンパク質をコードする合成修飾型RNAを送達することができる。前記方法がエメリー・ドレヒュス型筋ジストロフィーの治療のためのものである別の実施形態では、エメリンおよび/またはラミンタンパク質をコードする合成修飾型RNAを送達することができる。
【0022】
いくつかの実施形態では、ジストロフィンおよび/またはエメリンおよび/またはラミンタンパク質をコードする合成修飾型RNAは、前記の健康状態、特に胸郭の横隔膜の衰弱に起因する不十分な呼吸および姿勢筋の衰弱に起因する歩行不能に関連する最も顕著な障害を有する筋肉組織に送達することができる。横隔膜注射については、ジストロフィンおよび/またはエメリンおよび/またはラミンタンパク質をコードする合成修飾型RNAの横隔膜筋への直接注入のための胸腔鏡アプローチを用いることができる。いくつかの実施形態では、骨格筋への注射、例えば、それぞれ姿勢の維持と腕全体の動作に関連する腰帯筋および肩帯筋への直接注入により直接的に、ジストロフィンをコードする合成修飾型RNAを送達することができる。
【0023】
別の実施形態では、前記方法と組成物は、例えば、非変異型(野生型)CFTRタンパク質をコードする合成修飾型RNAを対象の横隔膜に送達することができる場合、嚢胞性線維症の治療のための方法において有用である。いくつかの実施形態では、CFTRをコードする合成修飾型RNAは、非変異型CFTRタンパク質をコードする合成修飾型RNAの直接実質注入や気管支内導入によって送達することができる。したがって、疾患または障害の治療のための所望のポリペプチドをコードする合成修飾型RNAを送達するためのあらゆる手段が本明細書に包含され、例えば、それぞれ腹腔鏡アプローチおよび内視鏡アプローチを介する腸および膵臓への、これらの器官および系に関連する障害を有する対象の治療のための直接注入が本明細書に包含される。
【0024】
いくつかの実施形態では、本明細書において開示される方法は、1つ以上の疾患の治療のために目的のポリペプチドをコードする合成修飾型RNAを対象の組織に送達することに向けられており、その場合、合成修飾型RNAは、埋め込み型装置、例えば、薬物送達ポンプなどの薬物送達装置によって、または代わりに、例えば、単一の進入口からの複数回の注入や単一の部位への反復注射を容易にする柔軟な注射用カテーテルを使用して送達される。
【0025】
いくつかの実施形態では、目的のポリペプチドをコードする合成修飾型RNAは、埋め込み型装置の外側に着いて対象の組織に送達され、例えば、目的のポリペプチドをコードする合成修飾型RNAが埋め込み型装置の外側を被覆する。いくつかの実施形態では、治療される疾患が本明細書において開示される心臓の疾患または障害である場合、目的のポリペプチドをコードする合成修飾型RNAがステントを被覆する。
【0026】
さらに、発明者らはまた、複数のMOD-RNA、例えば、少なくとも2つの異なるタンパク質を同時に発現する少なくとも2つのMOD-RNAを用いて心筋細胞をインビトロおよびインビボで形質移入することができること、ならびに、MOD-RNAによるヒト胎児心筋細胞の二重形質移入が細胞は、その細胞で翻訳された異なるMOD-RNAと両方のRNAを区別することができないことを明らかにすることを実証している。
【0027】
いくつかの実施形態では、合成修飾型RNAを使用するインビボタンパク質発現のための本明細書において開示される方法および組成物およびキットは、研究者が単一の遺伝子産物または遺伝子産物群についてのタンパク質発現の器官全体および全身性の効果を調査することができるような、そのための基盤を提供する。特定の指向性タンパク質発現を容易に実行する能力が、(遺伝子導入マウス技術および他の動物全体での遺伝的修飾技術と比較して)器官生理および全身性生理の研究における新境地を開く。そのような強力な基盤は生物学者および臨床科学者の間で広範な関心対象となり得る。いくつかの実施形態では、本発明は、遺伝子発現を活性化および/または不活化する動物モデル、例えば、誘導性タンパク質発現系の動物モデルに合成修飾型RNAをインビボ送達するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、前記方法は、特定の組織や細胞種における遺伝子のノックアウトの効果を見るために、Creリコンビナーゼタンパク質をコードする合成修飾型RNAを動物モデルに送達する。いくつかの実施形態では、動物モデルは大動物モデル、例えば、豚モデルである。
【0028】
例えば、本明細書は、Cre遺伝子座からの遺伝子発現を選択的に誘導するCre MOD-RNAによるROSA-Creストップ-LacZマウスのインビボ形質移入を実証する。そのインビボ形質移入は、研究目的用のツールとして有用な指向性で可逆的、且つ、特定的な一過性遺伝子発現方法のための方法を可能にする。
【0029】
本発明の1つの態様は、組織においてタンパク質をインビボ発現させるための方法であって、ポリペプチドをコードする合成修飾型RNA分子を含む組成物とその組織を接触させる工程を含み、該組織中の細胞への該合成修飾型RNA分子の導入によって、1つ以上の修飾を含まない該ポリペプチドをコードする合成RNA分子と接触した該組織中の細胞と比較して自然免疫応答が低下するように、該合成修飾型RNA分子が該1つ以上の修飾を含む方法に関する。
【0030】
いくつかの実施形態では、前記組織は心臓組織または心臓性組織、または筋肉組織、例えば、骨格筋、心筋、もしくは平滑筋である。いくつかの実施形態では、その組織は哺乳類の組織、例えば、ヒトの組織である。
【0031】
本明細書において開示される組成物、方法およびキットにおいて使用される合成修飾型RNAは、2010年9月28日に提出された米国特許仮出願第61/387,220号、および2010年4月16日に提出された米国特許仮出願第61/325,003号に記載されており、それらの両方は参照により全体が本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、合成修飾型RNA分子がベクターにおいて発現せず、合成修飾型RNA分子は裸の合成修飾型RNA分子であり得る。いくつかの実施形態では、組成物は脂質複合体中に存在する少なくとも1つの合成修飾型RNA分子を含むことができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、合成修飾型RNA分子は少なくとも2つの修飾ヌクレオシドを含み、例えば、少なくとも2つの修飾ヌクレオシドは、5-メチルシチジン(5mC)、N6-メチルアデノシン(m6A)、3,2'-O-ジメチルウリジン(m4U)、2-チオウリジン(s2U)、2'フルオロウリジン、シュードウリジン、2'-O-メチルウリジン(Um)、2'デオキシウリジン(2'dU)、4-チオウリジン(s4U)、5-メチルウリジン(m5U)、2'-O-メチルアデノシン(m6A)、N6,2'-O-ジメチルアデノシン(m6Am)、N6,N6,2'-O-トリメチルアデノシン(m62Am)、2'-O-メチルシチジン(Cm)、7-メチルグアノシン(m7G)、2'-O-メチルグアノシン(Gm)、N2,7-ジメチルグアノシン(m2、7G)、N2,N2,7-トリメチルグアノシン(m2,2,7G)、およびイノシン(I)からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、合成修飾型RNA分子は5'キャップ類似体などの5'キャップ、例えば、5'ジグアノシンキャップをさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書において開示される方法および組成物において使用される合成修飾型RNA分子は5'三リン酸を含まない。いくつかの実施形態では、本明細書において開示される方法および組成物において使用される合成修飾型RNA分子はポリ(A)テール、コザック配列、3'非翻訳領域、5'非翻訳領域、またはそれらの任意の組合せをさらに含み、いくつかの実施形態では、合成修飾型RNA分子は任意によりアルカリホスファターゼで処理されることもできる。
【0033】
いくつかの実施形態では、本明細書において開示される方法、キットおよび組成物において使用される合成修飾型RNA分子は、表1に記載されるもののいずれか、またはそれらの組合せから選択される目的のタンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、合成修飾型RNA分子はVEGFポリペプチド、例えば、ヒトVEGF(hVEGF)をコードする。いくつかの実施形態では、合成修飾型RNA分子はジストロフィンポリペプチド、またはα1アンチトリプシンポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態では、合成修飾型RNA分子は機能欠損型疾患のためのポリペプチド、例えば、嚢胞性線維症のためのポリペプチドをコードし、その場合、そのMOD-RNAから発現されるタンパク質は嚢胞性線維症膜コンダクタンス調節因子(CFTR)ポリペプチドである。
【0034】
いくつかの実施形態では、合成修飾型RNA分子は筋肉に直接注入される。いくつかの実施形態では、合成修飾型RNA分子は埋め込み型装置の中、またはその上に存在し(例えば、その上に被覆されている)、例えば、その場合、前記埋め込み型装置はステントまたは移植可能薬物送達ポンプである。いくつかの実施形態では、合成修飾型RNA分子はカテーテルまたは内視鏡を介して標的組織に送達される。
【0035】
いくつかの実施形態では、標的組織でのインビボタンパク質発現のための、目的のタンパク質をコードする合成修飾型RNA分子を含む組成物は、100ng/μlを超える濃度の、例えば、約1~25μg/μlの濃度、または25μg/μlと50μg/μlの間の濃度の合成修飾型RNA分子を含む。
【0036】
本発明の別の態様は、対象において心機能を増強するための方法であって、該対象において心機能を増強するポリペプチドをコードする合成修飾型RNA分子を含む組成物を該対象に投与する工程を含み、該合成修飾型RNA分子の該対象への投与によって、1つ以上の修飾を含まない該ポリペプチドをコードする合成RNA分子の投与と比較して自然免疫応答が低下するように、該合成修飾型RNA分子が該1つ以上の修飾を含み、かつ、該合成修飾型RNA分子からの該ポリペプチドの発現が該対象における心機能を増強する方法に関する。
【0037】
いくつかの実施形態では、対象は不十分な心機能を特徴とする疾患または障害を患っており、または対象は構造的心疾患を患っている。いくつかの実施形態では、本明細書において開示される方法は、うっ血性心不全、心筋症、心筋梗塞、組織虚血、心臓虚血、血管病、後天性心臓疾患、先天性心臓疾患、アテローム性硬化症、心筋症、刺激伝達系機能不全、冠動脈機能不全、肺性心高血圧症である疾患または障害の治療に有用である。いくつかの実施形態では、前記疾患は、うっ血性心不全、冠動脈疾患、心筋梗塞、心筋虚血、アテローム性硬化症、心筋症、特発性心筋症、心不整脈、筋ジストロフィー、筋量異常、筋変性、感染性心筋炎、薬物または毒素誘導性の筋異常、過敏性心筋炎、自己免疫性心内膜炎および先天性心臓疾患からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、心機能を増強する方法のための方法、キットおよび組成物において使用される合成修飾型RNA分子は、表1、表2、表3、表4、表5、または表6に記載されるもののいずれか、またはそれらの組合せから選択される目的のタンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、リポソーム性蓄積症を治療する方法のための方法、キットおよび組成物において使用される合成修飾型RNA分子は、そこでMOD-RNAは、限定されないが、表7に記載されるポリペプチドのうちのいずれか、またはそれらの組合せから選択されるタンパク質をコードする。
【0038】
いくつかの実施形態では、合成修飾型RNA分子によって発現される心臓増強タンパク質はVEGFポリペプチド、例えば、ヒトVEGF(hVEGF)である。いくつかの実施形態では、合成修飾型RNA分子はα1アンチトリプシンポリペプチドをコードし、または機能欠損型疾患のためのポリペプチドをコードし、例えば、合成修飾型RNA分子は心臓で発現しないポリペプチド、または心臓での正常な発現と比較して低レベルで発現するポリペプチド、または天然の野生型のポリペプチドと比較して機能獲得型もしくは変異型のタンパク質として対象において発現するポリペプチドを発現する。
【0039】
いくつかの実施形態では、本明細書において開示される方法は哺乳類の対象、例えば、ヒトの治療に関連する。いくつかの実施形態では、対象は心筋梗塞を患ったことが有り、または心不全を有するかまたは心不全のリスクを有し、例えば、その場合、その対象は後天性心不全を有する。さらなる実施形態では、その心不全は、アテローム性硬化症、心筋症、うっ血性心不全、心筋梗塞、虚血性心疾患、心房性不整脈および心室性不整脈、高血圧性血管疾患、末梢血管疾患と関係がある。いくつかの実施形態では、本明細書において開示される方法は、先天性心臓疾患を有する対象の治療に関し、例えば、その場合、その対象は、高血圧、血流障害、症候性不整脈、肺性高血圧、関節硬化症、刺激伝達系機能不全、冠動脈機能不全、冠動脈樹機能不全および冠動脈側副血行路形成からなる群より選択される健康状態を有する。いくつかの実施形態では、本明細書において開示される方法は心不全の治療または予防に関する。
【0040】
いくつかの実施形態では、合成修飾型RNA分子は、心内膜心筋投与経路、心筋外投与経路、心室内投与経路、冠内投与経路、後洞の投与経路、動脈内投与経路、心膜内投与経路、または静脈内投与経路を介して対象に投与され得る。いくつかの実施形態では、合成修飾型RNA分子は筋肉内注射を介して対象に投与することができ、例えば、その場合、筋肉はインビボタンパク質発現のための生物学的なポンプ(例えば、生体ポンプ)として働き、例えば、その場合、そのMOD-RNAは分泌タンパク質をコードする。
【0041】
本発明の別の態様は、インビボCre動物モデルにおける遺伝子をノックアウトするための、Creリコンビナーゼポリペプチドをコードする合成修飾型RNA分子の使用に関する。
【0042】
1つの態様では、本明細書に記載される発明は、以下の工程を含む、対象において腫瘍を治療するための方法に関する:該対象において血管新生を増強するポリペプチドをコードする合成修飾型RNA分子を含む組成物を投与する工程であって、該合成修飾型RNA分子の該対象への投与によって、1つ以上の修飾を含まない該ポリペプチドをコードする合成RNA分子の投与と比較して自然免疫応答が低下するように、該合成修飾型RNA分子が該1つ以上の修飾を含み、かつ、該合成修飾型RNA分子からの該ポリペプチドの発現が該腫瘍における血管新生を増強する、工程;および、化学療法剤を該対象に投与する工程であって、該血管新生が該対象に投与される化学療法剤の効果を増大させ、それによって該腫瘍が治療される、工程。さらなる態様では、本明細書に記載される発明は、以下の工程を含む、対象において腫瘍を治療するための方法に関する:該腫瘍においてヘッジホッグ(Hedgehog)シグナル伝達を増強するポリペプチドの発現を阻害する合成修飾型RNA分子を含む組成物を投与する工程であって、該合成修飾型RNA分子の該対象への投与によって、1つ以上の修飾を含まない該ポリペプチドをコードする合成RNA分子の投与と比較して自然免疫応答が低下するように、該合成修飾型RNA分子が該1つ以上の修飾を含み、かつ、ヘッジホッグシグナル伝達を増強する該ポリペプチドの発現の該合成修飾型RNA分子による阻害が該腫瘍と関連する線維形成性組織の量または増殖を低下させる、工程;および、化学療法剤を該対象に投与する工程であって、該線維形成性組織の量または増殖の低下が該対象に投与される化学療法剤の効果を増大させ、それによって該腫瘍が治療される、工程。
【0043】
いくつかの実施形態では、合成修飾型RNA分子はベクターにおいて発現しない。いくつかの実施形態では、合成修飾型RNA分子を含む組成物は裸の合成修飾型RNA分子を含む。いくつかの実施形態では、合成修飾型RNA分子を含む組成物は、脂質複合体中に存在する少なくとも1つの合成修飾型RNA分子を含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、合成修飾型RNA分子は少なくとも2つの修飾ヌクレオシドを含む。いくつかの実施形態では、その少なくとも2つの修飾ヌクレオシドは、5-メチルシチジン(5mC)、N6-メチルアデノシン(m6A)、3,2'-O-ジメチルウリジン(m4U)、2-チオウリジン(s2U)、2'フルオロウリジン、シュードウリジン、2'-O-メチルウリジン(Um)、2'デオキシウリジン(2'dU)、4-チオウリジン(s4U)、5-メチルウリジン(m5U)、2'-O-メチルアデノシン(m6A)、N6,2'-O-ジメチルアデノシン(m6Am)、N6,N6,2'-O-トリメチルアデノシン(m62Am)、2'-O-メチルシチジン(Cm)、7-メチルグアノシン(m7G)、2'-O-メチルグアノシン(Gm)、N2,7-ジメチルグアノシン(m2、7G)、N2,N2,7-トリメチルグアノシン(m2,2,7G)、およびイノシン(I)からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、合成修飾型RNA分子、その中で少なくとも2つの修飾ヌクレオシドは5-メチルシチジン(5mC)およびシュードウリジンである。
【0045】
いくつかの実施形態では、合成修飾型RNA分子は5'キャップをさらに含む。いくつかの実施形態では、合成修飾型RNA分子、その中で5'キャップは5'キャップ類似体である。いくつかの実施形態では、5'キャップ類似体は5'グアノシンキャップである。いくつかの実施形態では、合成修飾型RNA分子は5'三リン酸を含まない。
【0046】
いくつかの実施形態では、合成修飾型RNA分子はポリ(A)テール、コザック配列、3'非翻訳領域、5'非翻訳領域、またはそれらの任意の組合せをさらに含む。いくつかの実施形態では、そのポリ(A)テール、コザック配列、3'非翻訳領域、5'非翻訳領域、またはそれらの任意の組合せは1つ以上の修飾ヌクレオシドを含む。いくつかの実施形態では、その1つ以上の修飾ヌクレオシドは、5-メチルシチジン(5mC)、N6-メチルアデノシン(m6A)、3,2'-O-ジメチルウリジン(m4U)、2-チオウリジン(s2U)、2'フルオロウリジン、シュードウリジン、2'-O-メチルウリジン(Um)、2'デオキシウリジン(2'dU)、4-チオウリジン(s4U)、5-メチルウリジン(m5U)、2'-O-メチルアデノシン(m6A)、N6,2'-O-ジメチルアデノシン(m6Am)、N6,N6,2'-O-トリメチルアデノシン(m62Am)、2'-O-メチルシチジン(Cm)、7-メチルグアノシン(m7G)、2'-O-メチルグアノシン(Gm)、N2,7-ジメチルグアノシン(m2、7G)、N2,N2,7-トリメチルグアノシン(m2,2,7G)、およびイノシン(I)からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、合成修飾型RNA分子はアルカリホスファターゼで処理される。
【0047】
いくつかの実施形態では、対象は腺癌を患っている。いくつかの実施形態では、対象は、線維形成性組織の層を有する腫瘍を含む癌を患っている。いくつかの実施形態では、その癌は膵管腺癌(PDAC)である。
【0048】
血管新生が増加するいくつかの実施形態では、合成修飾型RNA分子はVEGFポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態では、VEGFポリペプチドはヒトVEGF(hVEGF)である。いくつかの実施形態では、合成修飾型RNA分子は表3に開示されるポリペプチドをコードする。
【0049】
ヘッジホッグシグナル伝達を増強するポリペプチドの発現が阻害されるいくつかの実施形態では、合成修飾型RNA分子は、ヘッジホッグ(Hh)、スムーズンド(Smoothened;Smo)、パッチド1(Patched 1;Ptc1)、およびGliをコードするmRNAからなる群より選択されるmRNAのアンチセンス阻害剤である。いくつかの実施形態では、ヘッジホッグシグナル伝達を増強する前記ポリペプチドはヒトポリペプチドである。
【0050】
いくつかの実施形態では、対象は哺乳類である。いくつかの実施形態では、その哺乳類はヒトである。
【0051】
いくつかの実施形態では、組成物は静脈内投与経路または経腫瘍投与経路を介して投与される。いくつかの実施形態では、組成物は対象の血管系に投与される。いくつかの実施形態では、組成物は腫瘍への直接注入によって対象に投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、合成修飾型RNA分子を含む、またはそれで被覆されている埋め込み型装置を使用して対象に投与される。いくつかの実施形態では、組成物はカテーテルによって対象に投与される。いくつかの実施形態では、組成物は内視鏡を介して対象に投与される。
【0052】
いくつかの実施形態では、組成物は100ng/μlよりも高い濃度の合成修飾型RNA分子を含む。いくつかの実施形態では、組成物は1~25μg/μlの間の濃度の合成修飾型RNA分子を含む。いくつかの実施形態では、組成物は25μg/μlと50μg/μlの間の濃度の合成修飾型RNA分子を含む。
【0053】
いくつかの実施形態では、前記化学療法剤は、ゲムシタビン、フルオロウラシル、カペシタビン、シプラスチン(ciplastin)、イリノテカン、オキサリプラチン、5-フルオロウラシル、フォリン酸、およびエルロチニブからなる群より選択される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】
図1A~1Bは、eGFP修飾mRNA(MOD-RNA)を形質移入されたマウス新生児心臓細胞のFACS分析を示す。新生児心臓細胞が、2ng/細胞1000個で形質移入された。
図1Aは、蛍光FL-4およびFL-1を示し、
図1Bは蛍光Thy-1およびeGFP MOD-RNAを示す。形質移入された心臓細胞は全部で58.5%であり、62.2%の心臓線維芽細胞が形質移入され、52.2%の心臓非線維芽細胞が形質移入された。
【
図2】
図2A~2Bは、マウス新生児心筋細胞にインビトロでeGEP MOD-RNAを形質移入する最適用量の実施形態を示す。単離したマウス新生児心筋細胞が異なる用量のeGFPMOD-RNA(グリーン、0~50ng/細胞1000個)を形質移入された。
図2Aは、生存率を計測した細胞数と、eGFPが存在または不存在のトロポニンT陽性細胞数の結果のヒストグラムを示す。図示されているのはトロポニンTおよびeGFPに対してダブルポジティブである形質移入された細胞の%で、3ng/細胞1000個では81.4%の細胞がTnT+/eGFP+であり、15ng/細胞1000個では89.1%の細胞がTnT+/eGFP+であり、30ng/細胞1000個では90.5%の細胞がTnT+/eGFP+であることが示されている。
図2Bは、eGFP MOD-RNAの増量に伴うインタクトな生細胞%を示し、0~30ng/細胞1000個のMOD-RNA濃度では細胞死が誘導されないことを示している。
【
図3】
図3A~3Bは、ヒト胎児心筋細胞にインビトロでeGEP MOD-RNAを形質移入する最適用量の実施形態を示す。単離したヒト心筋細胞は様々な用量のeGFP MOD-RNA(グリーン、0~50ng/細胞1000個)を形質移入された。
図3Aは、生存率を測定したヒト胎児心筋細胞数と、eGFPが存在または不存在のトロポニンT陽性細胞数の結果のヒストグラムを示す。図示されているのはトロポニンTとeGFPに対してダブルポジティブである形質移入された細胞%であり、1ng/細胞1000個では21.6%の細胞がTnT+/eGFP+であり、2ng/細胞1000個では34.4%の細胞がTnT+/eGFP+であり、5ng/細胞1000個では43.3%の細胞がTnT+/eGFP+であり、10ng/細胞1000個では63.3%の細胞がTnT+/eGFP+であり、30ng/細胞1000個では71.9%の細胞がTnT+/eGFP+であることが示されている。
図3Bは、eGFP MOD-RNAの増量に伴うインタクトな生細胞の%を示し、1~30ng/細胞1000個のMOD-RNA濃度では細胞死が誘導されないことを示している。
【
図4】ルシフェラーゼMOD-RNAのマウス心筋細胞(CM)または心臓線維芽細胞(CF)へのインビトロの形質移入を示す。新生児マウス心筋細胞(CM)および心臓線維芽細胞(CF)がインビトロで1μg/ウェル(100000/ウェル)のルシフェラーゼ(Luc)MOD-RNAを形質移入された。
図4は、ルシフェラーゼMOD-RNAを10μg/細胞1000個の濃度でインビトロ形質移入した後の心筋細胞(CM)または心臓線維芽細胞(CF)におけるルシフェラーゼ(luc)タンパク質の発現を定量化する生物発光分析の結果を示す。CMとCFの両方で高レベルのルシフェラーゼ発現が形質移入の少なくとも約24時間後に検出され、MOD-RNAルシフェラーゼの発現は形質移入後少なくとも約50時間生じた。
【
図5A】ルシフェラーゼMOD-RNAのマウス心臓細胞およびマウス大腿四頭筋へのインビボの形質移入を示す。Balb/c骨格筋(脚部)および心筋にLuc MOD RNAを様々な用量でインビボ注射した。ルシフェラーゼMOD-RNAを100μg/組織の濃度でインビボ形質移入した後の心筋または四頭筋におけるルシフェラーゼ(luc)タンパク質の発現を定量化する生物発光分析の結果を示す。心組織と四頭筋の両方で高レベルのルシフェラーゼ発現がインビボ形質移入の少なくとも約24時間後に検出され、ルシフェラーゼの発現は形質移入後心筋では少なくとも約50時間、脚筋では少なくとも約25時間生じた。
【
図5B】ルシフェラーゼMOD-RNAのマウス心臓細胞およびマウス大腿四頭筋へのインビボの形質移入を示す。Balb/c骨格筋(脚部)および心筋にLuc MOD RNAを様々な用量でインビボ注射した。Luc MOD RNAの注射(100μg/心臓)後測定したLuc発現(Y軸)の経時変化を示す。
【
図6】インビトロのhVEGF MOD-RNAの翻訳および機能性を示す。ヒト心臓線維芽細胞にhVEGF MOD-RNAまたは非MOD RNAを形質移入し、ELISAを用いてhVEGFを測定した。心臓線維芽細胞(CF)に1μg/ウェル(100,000/ウェル)でインビトロ形質移入したhVEGF MOD-RNAと非MOD-RNAの比較が図示され、MOD-RNAからのhVEGFタンパク質の発現は非MOD-RNAからの発現の2倍であることを示しているが、これは非MOD-RNAの翻訳の低減を示す。高VEGFタンパク質発現が、1μgのhVEGF MOD-RNA(左のパネル、全40.8ngのhVEGF)を形質移入した心筋細胞から分泌された。より低レベルのhVEGFが1μgの非MOD RNA hVEGF(22.9ng、右のパネル)を形質移入した心筋細胞から発現し分泌された。
【
図7】MOD-RNAがインビボで自然免疫応答を誘発しないことを示す。マウス心臓にhVEGF MOD-RNAまたは非MOD RNAをインビボで形質移入した後の遺伝子発現レベルの結果を示すヒストグラムが図示されている。hVEGF MOD-RNAの形質移入後、非MOD RNAと比較して高レベルのhVEGF遺伝子発現が検出される。さらに、自然免疫応答が誘発されたシグナルとしてのINFα遺伝子の高レベルの発現がhVEGF非Mod RNAで検出されたが、hVEGF RNA-MODのインビボ形質移入後は不存在であった。
【
図8】インビボのhVEGF MOD-RNAの免疫原性および機能性を示す。Balb/c骨格(脚)筋肉に100μgのhVEGF MOD-RNAまたは非MOD-RNAをインビボ注射した。送達後1日または4日後、筋肉を除去してRNAを抽出し、hVEGF、mVEGF、INFα、INFβ、CD31およびFlk-1のqPCRを実施した。
図8は、hVEGF MOD-RNAのインビボ送達1日後(左のパネル)および4日後(右のパネル)の遺伝子発現のヒストグラムを示す。
【
図9A】非常に効率的なインビトロのMOD RNAおよびhVEGF-A MOD RNAの心筋細胞形質移入を示す。ヒト胎児の心臓(妊娠13週)の明白な区画を消化し、リアルタイムqPCRを用いてVEGFの様々なアイソフォームの遺伝子発現を調査した実験結果を示す。過形成性内皮細胞(outgrowth endothelial cells)を対照として用いた(破線)。区画ごとに5本のバーが示され、1本目のバーはVEGF-Aの発現を表し、2本目のバーはVEGF-Bの発現を表し、3本目のバーはVEGF-Cの発現を表し、4本目のバーはVEGF-Dの発現を表し、5本目のバーはPLGFの発現を表す。
【
図9B】非常に効率的なインビトロのMOD RNAおよびhVEGF-A MOD RNAの心筋細胞形質移入を示す。ベヒクルのみか、またはeGFP MOD RNAを様々な用量で形質移入した後の、MOD RNA形質移入心筋細胞(cTropTおよびeGFPに対してダブルポジティブである細胞)を百分率で示す。
【
図9C】非常に効率的なインビトロのMOD RNAおよびhVEGF-A MOD RNAの心筋細胞形質移入を示す。ベヒクルのみか、またはeGFP MOD RNAを様々な用量で形質移入した後の、生存細胞を百分率で示す。
【
図9D】非常に効率的なインビトロのMOD RNAおよびhVEGF-A MOD RNAの心筋細胞形質移入を示す。Lucタンパク質の翻訳と発現の経時変化を示す。
【
図9E】非常に効率的なインビトロのMOD RNAおよびhVEGF-A MOD RNAの心筋細胞形質移入を示す。hVEGF-A MOD RNAを形質移入後のVEGF-Aタンパク質の翻訳と分泌の経時変化を示す。
【
図10A】MI(心筋梗塞)後の成体心臓におけるhVEGF-A MOD RNAによる心臓再生を示す。実験計画の概略図である。
【
図10B】MI(心筋梗塞)後の成体心臓におけるhVEGF-A MOD RNAによる心臓再生を示す。対照心臓(C)対被験心臓(E)の毛細血管密度の定量化を示す。
【
図10C】MI(心筋梗塞)後の成体心臓におけるhVEGF-A MOD RNAによる心臓再生を示す。対照心臓(左のバー)と被験心臓(右のバー)における線維細胞をパーセントで示す。
【
図10D】MI(心筋梗塞)後の成体心臓におけるhVEGF-A MOD RNAによる心臓再生を示す。様々な細胞種のうちKi67+細胞を百分率で示す。各細胞群の左側のバーは対照群を表し、右側のバーは実験群を表す。
【
図10E】MI(心筋梗塞)後の成体心臓におけるhVEGF-A MOD RNAによる心臓再生を示す。対照群(左のバー)対実験群(右のバー)におけるTUNEL陽性細胞を百分率で示す。
【
図10F】MI(心筋梗塞)後の成体心臓におけるhVEGF-A MOD RNAによる心臓再生を示す。偽処置の心臓(上のバー)、ベヒクル処置心臓(中間のバー)またはhVEGF-A MOD RNA処置心臓(下のバー)の拡大時および収縮時の体積のCine-MRI画像を示す。
【
図11A】hVEGF-A MOD RNAがEPDCの増殖と心血管系列への細胞運命の切り替えを誘導することを示す。**p<0.01;***p<0.001。本明細書における実験プロトコルの概略図である。
【
図11B】hVEGF-A MOD RNAがEPDCの増殖と心血管系列への細胞運命の切り替えを誘導することを示す。**p<0.01;***p<0.001。本明細書における実験プロトコルの概略図である。
【
図11C】hVEGF-A MOD RNAがEPDCの増殖と心血管系列への細胞運命の切り替えを誘導することを示す。**p<0.01;***p<0.001。異なる処置後の遺伝子標識したWT1 eGFP+細胞のFACS分別を示す。
【
図11D】hVEGF-A MOD RNAがEPDCの増殖と心血管系列への細胞運命の切り替えを誘導することを示す。**p<0.01;***p<0.001。異なる処置後のWT1由来細胞のFACS分別を示す(eGFP+およびTomato)。
【
図11E】hVEGF-A MOD RNAがEPDCの増殖と心血管系列への細胞運命の切り替えを誘導することを示す。**p<0.01;***p<0.001。異なる処置後のWT-1由来細胞の定量化を示す(MI+ベヒクル処置(左のバー)とMI+hVEGF-A MOD RNA(右のバー)。
【
図11F】hVEGF-A MOD RNAがEPDCの増殖と心血管系列への細胞運命の切り替えを誘導することを示す。**p<0.01;***p<0.001。異なる処置後のWT1由来細胞の細胞運命の系列追跡を示す。Luc MOD RNA (100μg/心臓)注射後に測定したLuc発現(Y軸)の経時変化。
【
図11G】hVEGF-A MOD RNAがEPDCの増殖と心血管系列への細胞運命の切り替えを誘導することを示す。**p<0.01;***p<0.001。線維性から心血管系列への細胞運命切り替えモデルを示す。
【
図12A】hVEGF-A MOD RNAが非修飾型RNAよりも低い免疫原性を呈することを示す。hVEGF-A非MOD RNAを形質移入された細胞からのVEGF-Aタンパク質の翻訳および分泌の経時変化を示す。
【
図12B】hVEGF-A MOD RNAが非修飾型RNAよりも低い免疫原性を呈することを示す。1μgのhVEGF-A MODまたは非MOD RNAを成体心臓細胞に形質移入後10日間にわたり上清から回収した全hVEGF-Aタンパク質を示す。
【
図12C】hVEGF-A MOD RNAが非修飾型RNAよりも低い免疫原性を呈することを示す。処置なし(形質移入なし)またはベヒクル処置、hVEGF-A MOD RNA処置または非MOD RNA処置の生存細胞総数を示す。
【
図12D】hVEGF-A MOD RNAが非修飾型RNAよりも低い免疫原性を呈することを示す。異なる処置群のアネキシンV染色を示す。
【
図12E】hVEGF-A MOD RNAが非修飾型RNAよりも低い免疫原性を呈することを示す。成体心臓細胞にhVEGF-A MODまたは非MOD RNAをインビトロまたはインビボで形質移入した後4日目のマウス(各群左のバー)またはヒト(右のバー)VEGF-Aの遺伝子発現の比較を示す。
【
図12F】hVEGF-A MOD RNAが非修飾型RNAよりも低い免疫原性を呈することを示す。異なる群間で比較した異なる自然免疫遺伝子の遺伝子発現を示す。各群の1本目のバーは遺伝子INF-αの発現を示し;2本目のバーはINF-βの発現を示し;3本目のバーはRIG-1の発現を示す。
【
図13A】hVEGF-A MOD RNAをMI後のマウスの心臓に送達すると、毛細血管密度の上方調整および線維症の軽減が得られる効果があったが、偽処置の心臓では得られなかったことを示す。実験計画の概略図である。
【
図13B】hVEGF-A MOD RNAをMI後のマウスの心臓に送達すると、毛細血管密度の上方調整および線維症の軽減が得られる効果があったが、偽処置の心臓では得られなかったことを示す。梗塞部を切除して様々な心臓遺伝子の遺伝子発現を調査したMIの7日後のデータを示す。MI後ベヒクルのみで処置した心臓を標準化に用いた(破線)。
【
図13C】hVEGF-A MOD RNAをMI後のマウスの心臓に送達すると、毛細血管密度の上方調整および線維症の軽減が得られる効果があったが、偽処置の心臓では得られなかったことを示す。異なる治療後の毛細血管密度の定量化を示す(左のバーはMI+ベヒクル処置を表し;右のバーはMI+hVEGF-A MOD RNA処置を表す)。
【
図13D】hVEGF-A MOD RNAをMI後のマウスの心臓に送達すると、毛細血管密度の上方調整および線維症の軽減が得られる効果があったが、偽処置の心臓では得られなかったことを示す。異なる治療後の線維性部位の定量化を示す(左のバーはMI+ベヒクル処置を表し;右のバーはMI+hVEGF-A MOD RNA処置を表す)。
【
図14A】hVEGF-A MOD RNAが、線維性系列から心血管系列へEPDCの細胞運命切り替えを誘導することを示す。実験計画の概略図である。
【
図14B】hVEGF-A MOD RNAが、線維性系列から心血管系列へEPDCの細胞運命切り替えを誘導することを示す。実験計画の概略図である。
【
図14C】hVEGF-A MOD RNAが、線維性系列から心血管系列へEPDCの細胞運命切り替えを誘導することを示す。FACS分別し遺伝子標識したWT1 eGFP+細胞の様々な心臓遺伝子の遺伝子発現について調査したMIの7日後のデータを示す。ベヒクル処置のみの心臓から単離したWT1 eGFP+細胞を標準化に使用した(破線)。
【
図14D】hVEGF-A MOD RNAが、線維性系列から心血管系列へEPDCの細胞運命切り替えを誘導することを示す。FACS分別したWT1由来細胞(eGFP+およびTomato+細胞)を様々な心臓遺伝子の遺伝子発現について調査したMIの7日後のデータを示す。ベヒクル処置のみの心臓から単離したWT1由来細胞(eGFP+およびTomato+細胞)を標準化に使用した(破線)。
【
図14E】hVEGF-A MOD RNAが、線維性系列から心血管系列へEPDCの細胞運命切り替えを誘導することを示す。異なる処置後FLK-1染色したWT1 eGFP+細胞を示す。最初のピークは二次抗体のみの処置を示し;2番目のピークは非MI処置を示し;3番目のピークはMI7日後+ベヒクル処置を示し;4番目のピークはMI7日後+VEGF-A MOD RNAを示す。
【
図14F】hVEGF-A MOD RNAが、線維性系列から心血管系列へEPDCの細胞運命切り替えを誘導することを示す。hVEGF-A MOD RNAの存在または非存在下でのWT1/CreERT2/+::R26 mTmGマウスモデルにおける漏れやすさを決定する実験計画の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
目的のポリペプチドをコードする合成修飾型RNA(MOD-RNA)を送達することによる、組織でのタンパク質のインビボ発現のための組成物および方法およびキットが本明細書に記載される。その組織は対象の任意の組織であり、例えば、いくつかの実施形態では、その組織は筋肉組織または心臓組織である。いくつかの実施形態では、目的のポリペプチドをコードする合成修飾型RNA(MOD-RNA)を使用する、組織でのタンパク質のインビボ発現のための本明細書において開示される方法、組成物およびキットは疾患または障害の治療のための方法に有用である。いくつかの実施形態では、その疾患または障害は本明細書において開示される心血管系の疾患または障害である。
【0056】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法、組成物およびキットは、細胞、例えば、筋細胞、例えば、心筋細胞の性質のインビトロ、エクスビボまたはインビボでの合成修飾型RNA(MOD-RNA)を使用する改変に有用である。いくつかの実施形態では、筋細胞例えば、心筋細胞は哺乳類細胞であり、例えば、それはヒト筋細胞またはヒト心筋細胞であり得る。
【0057】
他の態様は、対象の心血管系の疾患または障害の治療のための方法での本明細書において開示される合成修飾型RNAの使用に関する。本発明の他の態様は、心臓の疾患または障害の治療において使用される合成修飾型RNAを含む医薬に関する。別の実施形態では、心臓細胞の集団、例えば、心筋細胞の集団、または心筋細胞前駆細胞(例えば、心臓幹細胞)の集団は合成修飾型RNA(MOD-RNA)とインビトロ、インビボまたはエクスビボで接触することができ、いくつかの実施形態では、その接触がインビトロまたはエクスビボで起こる場合、心臓細胞の集団、例えば、心筋細胞の集団は、心臓疾患の治療や予防のために、または疾患もしくは傷害により損傷を受けている既存の心筋の治療のために対象に移植され得る。別の実施形態では、本発明は、対象の心血管系の疾患または障害を治療するための方法であって、心臓細胞の集団、例えば、心臓幹細胞または心室心臓幹細胞の集団、および本明細書において開示される目的のタンパク質をコードする少なくとも1つの合成修飾型RNAを含む組成物を前記対象に投与する工程を含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、心臓細胞は人工多能性幹細胞(iPS)から分化した心臓細胞の集団であり、いくつかの実施形態では、そのiPS細胞は自己iPS細胞例えば、前記医薬組成物が投与されている対象から得られた体細胞から再プログラム化されたiPS細胞である。いくつかの実施形態では、心臓細胞は、国際特許出願公開第2008/054819、同第2010/144678号、同第2010/042856号、および米国特許出願公開第2010/0166714号、同第2011/0033430号、同第2010/021713号および同第2011/0003327号に開示される心臓始原細胞または心臓前駆細胞の集団である。それらの文献は参照により全体が本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、細胞集団はIsll+始原細胞、または国際公開第2010/144678号に開示されるその子孫細胞である。
【0058】
したがって、本発明の1つの態様は、医薬組成物、例えば、心臓再生療法の必要がある対象、例えば、先天性心臓疾患を有する対象ならびに、例えば、疾患または傷害により損傷を受けた心筋のような獲得型先天性欠損症または疾患を有する対象への移植用の医薬組成物の作製のためのMOD-RNAの使用に関する。いくつかの実施形態では、組成物は、本明細書に記載される心臓増強タンパク質をコードするMOD-RNAを含み、および任意により心臓細胞を含むこともできる。いくつかの実施形態では、組成物は、心臓増強タンパク質をコードするMOD-RNAとインビトロまたはエクスビボで接触させた心臓細胞を含む。いくつかの実施形態では、本明細書において開示される医薬組成物での治療を受け入れられる対象は、例えば、うっ血性心不全、冠動脈疾患、心筋梗塞、心筋虚血、アテローム性硬化症、心筋症、特発性心筋症、心不整脈、筋ジストロフィー、筋量異常、筋変性、感染性心筋炎、薬物または毒素誘導性の筋異常、過敏性心筋炎、自己免疫性心内膜炎および先天性心臓疾患を含む。
【0059】
本願において記載される本発明の他の態様は、MOD-RNAの送達を介して化学療法剤の効力を増加させることにより患者において腫瘍を治療する方法に関する。化学療法剤の効力は、(i)血管新生を上昇させること、および/または(ii)化学療法剤では通常効果が無い、腫瘍の維形成性組織の増殖量もしくは増殖速度を低減させることによりその作用物質の腫瘍への浸透能を上昇させて増強される。いくつかの実施形態では、合成修飾型RNA分子は対象における血管新生を増強させるポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態では、合成修飾型RNA分子は、腫瘍においてヘッジホッグシグナル伝達を増強するポリペプチドの発現を阻害するアンチセンス阻害剤である。
【0060】
定義
便宜上、本願全体(明細書、実施例および別記の特許請求の範囲を含む)において使用されるある特定の用語がここにまとめられる。別途定義されない限り、本願において使用される全ての技術用語および科学用語は本発明が属する分野の当業者が一般に理解するものと同じ意味を有する。
【0061】
「心筋細胞」という用語は、本明細書において使用される場合、心臓の筋肉細胞を広く指す。心筋細胞という用語は、心臓の平滑筋細胞ならびに心筋細胞を含み、横紋筋細胞、ならびに自然拍動性心筋細胞も含む。
【0062】
「分化」という用語は、本内容では、さらに分化することができない、より特殊化し、週末分化細胞に近づきつつある細胞である細胞に関連することが知られているマーカーを発現する細胞を形成することを意味する。細胞が、あまりコミットされていない細胞から益々特定の細胞種にコミットされている細胞へ進行し、最終的に終末分化細胞へ進行する経路は漸進的分化または漸進的コミットメントと呼ばれる。より特殊化しているが(例えば、漸進的分化のある経路に沿って進行し始めたが)、未だ終末分化に至っていない細胞は部分的分化されていると呼ばれる。分化とは、細胞がより特殊化した表現型を呈する、例えば、他の細胞種と別個の1つ以上の特徴または機能を獲得する発生過程である。いくつかの事例では、分化表現型は、ある発生経路の成熟エンドポイントにある細胞の表現型(いわゆる終末分化細胞)を指す。全ての組織ではないが、多くの組織で分化過程は細胞周期からの離脱を伴う。これらの事例では、終末分化細胞はそれらの増殖する能力を失う、またはその能力を大いに制限する。しかしながら、我々は、本明細書の内容では、「分化」または「分化した」という用語は細胞の発生のある時点よりもそれらの運命または機能において特殊化している細胞を指すことに留意する。
【0063】
細胞を「濃縮すること」という用語は細胞を「単離すること」と同義で使用され、ある種類の細胞の収量(割合)が開始培養物または調製物におけるその種の細胞の割合よりも増加することを意味する。
【0064】
コミットされていない細胞(例えば、幹細胞)から特定の分化細胞種へのコミットメントの程度が上昇した細胞への、および最終的に終末分化細胞への細胞の発生は漸進的分化または漸進的コミットメントとして知られる。始原細胞と比較して「分化した」細胞はその始原細胞と比較して1つ以上の表現型の差異を有する。表現型の差異には、形態上の差異ならびに発現マーカーの有無ばかりかマーカーの量の差および一組のマーカーの共発現パターンの差をも含む遺伝子発現および生物活性の差異が含まれるが、これらに限定されない。
【0065】
「マーカー」は、本明細書において使用される場合、細胞の特徴や表現型を説明する。マーカーは目的の特徴を含む細胞の選択に使用することができる。マーカーは特定の細胞によって異なる。マーカーは、形態的特徴であれ、機能的特徴であれ、生化学的(酵素的)特徴であれ、細胞種またはその細胞種が発現する分子に特定の特徴である。そのようなマーカーはタンパク質であることが好ましく、当技術分野において利用可能な抗体または他の結合分子のエピトープを有することがより好ましい。マーカーは、細胞内または細胞の表面上に見出される、タンパク質(ペプチドおよびポリペプチド)、脂質、多糖類、核酸およびステロイドを含むが、これらに限定されないあらゆる分子から構成され得る。形態的な特徴または形質の例には、形、大きさ、および細胞質に対する核の比率が含まれるが、これらに限定されない。機能的な特徴または形質の例には、特定の物質に付着する能力、特定の色素を取り込む、または排除する能力、特定の条件下で遊走する能力、および特定の系列に沿って分化する能力が含まれるが、これらに限定されない。マーカーは、当業者が一般に利用可能な任意の方法で検出され得る。
【0066】
「レポーター遺伝子」は、本明細書において使用される場合、幹細胞の表現型に加える、細胞に遺伝的に導入されているあらゆる遺伝子を包含する。本発明において開示されるレポーター遺伝子は蛍光遺伝子、酵素遺伝子および耐性遺伝子を包含するが、当業者が容易に検出できる他の遺伝子も包含することが意図されている。本発明のいくつかの実施形態では、レポーター遺伝子は、特定の幹細胞、心血管系幹細胞およびそれらの分化した子孫細胞の特定のためのマーカーとして使用される。
【0067】
「系列」という用語は、本明細書において使用される場合、共通の祖先細胞を有する細胞、例えば、同じ心血管系幹細胞または他の幹細胞に由来する細胞を説明する用語を指す。
【0068】
本明細書において使用される場合、「クローン細胞株」という用語は、培養で維持され得、そして、無期限で増殖する可能性を有する細胞系列を指す。クローン細胞株は幹細胞株であり得、または幹細胞に由来するものであり得、そして、そのクローン細胞株が幹細胞を含むクローン細胞株という内容で用いられる場合、その用語は、数か月~数年の間に分化することなく増殖することを可能とするインビトロ条件下で培養されてきた幹細胞を指す。そのようなクローン幹細胞株は、元の幹細胞からいくつかの細胞系列に沿って分化する可能性を有する。
【0069】
「表現型」という用語は、実際の遺伝子型にかかわらず、特定のセットの環境条件下で細胞または生物を限定する1つの、または多数の全生物学的特徴を指す。
【0070】
「組織」という用語は、ある特別の機能を一緒に実行する、同様に特殊化した細胞の群または層を指す。「組織特異的」という用語は、特定の組織に由来する細胞の供給源、またはその限定的特徴を指す。
【0071】
「減少した(reduced)」または「減少する(reduce)」という用語は、本明細書において使用される場合、統計的に有意な量の減少を一般に意味する。しかしながら、誤解を避けるために付け加えると、「減少した(reduced)」は、基準レベルと比べて少なくとも10%の減少、例えば、少なくとも約20%、または少なくとも約30%、または少なくとも約40%、または少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約80%、または少なくとも約90%の減少、または100%の減少を含む100%までの減少(すなわち、基準試料と比べて存在しないレベル)、または基準レベルと比べた10~100%の間の任意の減少を意味する。
【0072】
「増加した(increased)」または「増加する(increase)」という用語は、本明細書において使用される場合、統計的に有意な量の増加を一般に意味する。誤解を避けるために付け加えると、「増加した(increased)」は、基準レベルと比べて少なくとも10%の増加、例えば、少なくとも約20%、または少なくとも約30%、または少なくとも約40%、または少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約80%、または少なくとも約90%の増加、または100%の増加を含む100%までの増加、または基準レベルと比べた10~100%の間の任意の増加、または少なくとも約2倍、または少なくとも約3倍、または少なくとも約4倍、または少なくとも約5倍または少なくとも約10倍の増加、または基準レベルと比べた2倍と10倍の間もしくはそれ以上の任意の増加を意味する。
【0073】
「濃縮すること(enriching)」または「濃縮した(enriched)」という用語は本明細書において互換的に使用され、ある種類の細胞の収量(割合)が開始培養物または調製物におけるその種の細胞の割合よりも少なくとも10%増加することを意味する。
【0074】
特定の細胞集団に関して「実質的に純粋な」という用語は、全細胞集団を構成する細胞に関して少なくとも約75%、好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、および最も好ましくは少なくとも約95%純粋な細胞の集団を指す。書き直すと、「実質的に純粋な」または「基本的に精製された」という用語は、1つ以上の部分的分化細胞種や終末分化細胞種の調製に関して、約20%より少ない、より好ましくは約15%、10%、8%、7%より少ない、最も好ましくは約5%、4%、3%、2%、1%より少ない、または1%未満の幹細胞ではない細胞または幹細胞の子孫細胞ではない細胞を含む細胞の集団を指す。
【0075】
本明細書において使用される場合、「タンパク質」は、20アミノ酸のうちのいずれかより基本的になる高分子である。「ポリペプチド」は、多くの場合、比較的に大きいポリペプチドへの言及で使用され、「ペプチド」は、多くの場合、小さいポリペプチドへの言及で使用されるが、当技術分野におけるこれらの用語の使用は重複しており、そして、変化する。「ペプチド」、「タンパク質」および「ポリペプチド」という用語は、本明細書において互換的に使用される。
【0076】
「野生型」という用語は、通常インビボで存在するように、それぞれ天然のタンパク質もしくはその一部をコードするポリヌクレオチド配列、またはタンパク質配列、またはその一部を指す。
【0077】
「変異体」という用語は、生物の遺伝物質のあらゆる変化は、特に野生型ポリヌクレオチド配列における変化(すなわち、欠失、置換、付加、または変化)または野生型タンパク質配列におけるあらゆる変化を指す。「異型体」という用語は「変異体」と互換的に使用される。遺伝物質中の変化がタンパク質の機能の変化をもたらすとみなされることが多いが、「変異体」および「異型体」という用語は、その変化がそのタンパク質の機能を変える(例えば、機能を増強する、機能を低減する、新しい機能を加える)かどうかに関係なく、またはその変化がそのタンパク質の機能に影響を有する(例えば、その変異または異型がサイレントである)かどうかに関係なく、野生型タンパク質の配列の中の変化を指す。変異という用語は、本願において多型と本明細書において互換的に使用される。
【0078】
本明細書において使用される場合、「核酸」という用語はデオキシリボ核酸(DNA)および適切な場合はリボ核酸(RNA)などのポリヌクレオチドを指す。その用語はまた、等価物として、ヌクレオチド類似体から形成されるRNAまたはDNAのどちらかの類似体を、および記載されているところの実施形態に適用可能である場合は、一本鎖ポリヌクレオチド(センスまたはアンチセンス)および二本鎖ポリヌクレオチドを含むと理解されるべきである。「ポリヌクレオチド配列」および「ヌクレオチド配列」という用語もまた本明細書において互換的に使用される。
【0079】
本明細書において使用される場合、「遺伝子」または「組換え遺伝子」という用語は、エクソンと(任意により)イントロンの配列の両方を含む、ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含む核酸を指す。
【0080】
「組換え」という用語は、本明細書において使用される場合、タンパク質が原核生物の発現系または真核生物の発現系から得られることを意味する。
【0081】
本明細書において使用される場合、「ベクター」という用語はそれが結合した別の核酸を伝達することができる核酸分子を指す。好ましいベクターは自律的複製とそれらが結合している核酸の発現の両方、またはいずれか一方ができるものである。機能するようにベクターに結合している遺伝子の発現を導くことができるベクターは本明細書において「発現ベクター」と呼称される。
【0082】
「対象」および「個体」という用語は本明細書において互換的に使用され、そして、本明細書に記載される方法および組成物を用いる、予防的処置を含む治療が提供される動物、例えば、ヒトを指す。ヒト対象などの特定の動物に特異的な感染症、健康状態または疾患状態の治療にとって、「対象」という用語はその特定の動物を指す。「非ヒト動物」および「非ヒト哺乳類」という用語は本明細書において互換的に使用され、そして、ラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ネコ、イヌ、ウシ、ブタ、および非ヒト霊長類などの哺乳類を含む。
【0083】
「再生」という用語は疾患または外傷の後の細胞集団、器官または組織の再成長を意味する。
【0084】
「疾患」または「障害」という用語は本明細書において互換的に使用され、そして、機能の実施を中断もしくは妨害する、および/または症状、例えば、不快、機能不全、苦痛もしくは死さえも苦しめられている人物もしくは人と接触している人物に引き起こす、身体または器官のいくつかの状態のあらゆる変化を指す。疾患または障害は病気(distemper)、病気(ailing)、病気(ailment)、疾病(malady)、障害(disorder)、病気(sickness)、病気(illness)、病状(complaint)、不快(indisposition)または疾患(affection)にも関連し得る。
【0085】
本明細書において使用される場合、「心血管系の健康状態、疾患または障害」という語句は不十分な、望ましくない、または異常な心機能、例えば、虚血性心臓疾患、高血圧性心臓疾患および肺性高血圧性心臓疾患、弁膜症、先天性心臓疾患、および対象、特にヒト対象においてうっ血性心不全を引き起こすあらゆる健康状態を特徴とする全ての障害を含むことが意図されている。不十分または異常な心機能は疾患、傷害や加齢の結果であり得る。背景として、心筋の傷害に対する応答は、いくつかの細胞は死ぬが、他の細胞は、細胞は未だ死んではいないが、機能不全である休止状態に入る、明確に定義された経路に従う。この後に炎症性細胞の浸潤、瘢痕化の一部としてのコラーゲンの沈着が続き、それらの全てが新しい血管の内殖およびある程度の継続的細胞死と並行して起こる。本明細書において使用される場合、「虚血」という用語は、血液の流入の低下に起因するあらゆる局所組織の虚血を指す。「心筋虚血」という用語は、冠動脈アテローム性硬化症や心筋への不十分な酸素供給を原因とする循環障害を指す。例えば、急性心筋梗塞は心筋組織への不可逆性虚血性発作を表す。この発作は、冠循環に閉塞性(例えば、血栓性または塞栓性)事象をもたらし、心筋の代謝要求が心筋組織への酸素の供給を越える環境を作り出す。
【0086】
「病的状態」という用語は、本明細書において使用される場合、疾患または障害の原因となる、症状、例えば、細胞、組織または器官における構造的および機能的変化を指す。例えば、病的状態は特定の核酸配列、すなわち全体的または部分的にその病的状態の原因となる核酸配列を指す「病的核酸」に関連する場合があり、例として、その病的核酸は、特定の病的状態を引き起こす、または特定の病的状態に関連する変異または多型を有する遺伝子をコードする核酸であり得る。病的状態は、全体的または部分的に、特定の疾患または障害と関連がある病的状態の原因となる病的タンパク質または病的ポリペプチドの発現と関係がある場合がある。別の実施形態では、病的状態は、例えば、他の要因、例えば、虚血などと関連がある。
【0087】
本明細書において使用される場合、「治療する(treat)」または「治療(treatment)」または「治療すること(treating)」という用語は治療的処置を指し、ここで、目的は疾患の発生を予防することまたは遅らせること、例えば、心臓障害の発生を遅らせること、または心血管系の健康状態、疾患もしくは障害、すなわち、不十分なもしくは望ましくない心機能を特徴とするあらゆる障害の少なくとも1つの有害影響または症状を低減させることである。心臓障害の有害影響または症状は当技術分野において周知であり、それには呼吸困難、胸部痛、心悸亢進、めまい、失神、浮腫、チアノーゼ、蒼白、倦怠感および死が含まれるが、これらに限定されない。1つ以上の症状または臨床マーカーが、本明細で定義される通りに減少する場合、治療は一般に「有効」である。あるいは、疾患の進行が低下または停止している場合、治療は「有効」である。すなわち、「治療」は症状の改善またはその疾患のマーカーの減少だけではなく、治療が無い場合に予想され得る症状の進行または悪化の停止または遅延化も含む。有益な、または望ましい臨床成果には、検出可能であれ、検出不可能であれ、1つ以上の症状の軽減、疾患の程度の縮小、疾患の安定化(すなわち、非悪化)状態、疾患進行の遅延または減速、疾患状態の改善または緩和、および(部分的にせよ、全体的にせよ)寛解が含まれるが、これらに限定されない。「治療」は、治療を受けなかった場合に予想される生存期間と比べた生存期間の延長を意味することもできる。治療を必要とする人には心臓疾患を有すると既に診断されている人、ならびに遺伝的感受性または体重、食事および健康などの他の要因のために心臓疾患を発生する可能性がある人が含まれる。いくつかの実施形態では、治療することという用語は予防的手段および/または予防的処置も包含し、それには疾患または障害の発症を防ぐために本明細書において開示される医薬組成物を投与することが含まれる。
【0088】
「有効量」という用語は、本明細書において使用される場合、医薬組成物からなる治療薬の量、例えば、疾患または障害の少なくとも1つ以上の症状を減少させるために十分な量のタンパク質を発現する合成修飾型RNAの量を指し、そして、所望の効果をもたらすために十分な量の薬理学的組成物に関連する。例えば、本明細書において開示される合成修飾型RNAの「治療上有効量」という語句は、本明細書において使用される場合、あらゆる医療に適用できる妥当なリスク・ベネフィット比で障害を治療するために十分な量の組成物を意味する。「治療上有効量」という用語は、したがって、本明細書において開示される組成物の、例えば、心血管系の健康状態、疾患または障害を有する典型的な対象に投与されると心機能不全または障害に関係がある症状または臨床マーカーの治療的または予防的に有意な軽減をもたらすために十分な量を指す。
【0089】
症状の治療的に有意な軽減は、例えば、対照または非治療対象と比べて測定パラメータの少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約125%、少なくとも約150%またはそれ以上の軽減である。測定パラメータまたは測定可能パラメータには、疾患の臨床的に検出可能なマーカー、例えば、生物学的マーカーのレベルの上昇または抑制、ならびに疾患または障害の臨床的に許容される規模の症状またはマーカーに関連するパラメータが含まれる。本明細書において開示される組成物および製剤の総1日使用量は、確実な根拠がある医学的判断の範囲内で担当医によって決定されることが理解される。必要とされる正確な量は治療される疾患の種類などの要因に応じて左右される。
【0090】
例えば、対象における心血管系の健康状態または疾患の治療に関連して、「治療上有効量」という用語は、心血管系の疾患または障害の発生を防ぐ、または遅らせるために安全で十分な量を指す。その量は、そのため、心血管系の疾患もしくは障害を治癒することができ、または心血管系の疾患もしくは障害の寛解を引き起こすことができ、心血管疾患の進行過程を遅らせることができ、心血管系の疾患もしくは障害の症状を遅延化もしくは抑制することができ、心血管系の疾患もしくは障害の副次的症状の成立を遅延化もしくは抑制することができ、または心血管系の疾患もしくは障害の副次的症状の発生を抑制することができる。心血管系の疾患もしくは障害の治療にとっての有効量は、治療される心血管疾患の種類、その症状の重症度、治療されている対象、その対象の年齢および一般健康状態、投与モードなどによって左右される。したがって、正確な「有効量」を特定することは不可能である。しかしながら、あらゆる所与の事例にとって、適切な「有効量」は日常の実験法のみを用いて当業者によって決定され得る。治療効力は当業者によって判断され得、例えば、効力は本明細書において考察されるとおりに心血管系の疾患または障害の動物モデルにおいて評価され得る。例えば、急性心筋梗塞または虚血再灌流障害を有するげっ歯類の治療、ならびに本明細書において開示される心血管系の疾患または障害の少なくとも1つの症状の減少、例えば、心臓の駆出率の上昇、心不全の割合の減少、梗塞巣のサイズの減少、合併症(肺浮腫、腎不全、不整脈)の罹患率の減少、運動耐容能または他の生活の質の測定基準の改善、および死亡率の低下をもたらすあらゆる治療または組成物もしくは製剤の投与が有効な治療を表す。その組成物が心血管系の疾患または障害の治療のために使用される実施形態では、その組成物の効力は心血管疾患の実験動物モデル、例えば、虚血再灌流障害の動物モデル(Headrick JP, Am J Physiol Heart circ Physiol 285;H1797;2003)および急性心筋梗塞の動物モデル(Yang Z, Am J Physiol Heart Circ. Physiol 282:H949:2002、Guo Y, J Mol Cell Cardiol 33;825~830,2001)を使用して判断され得る。実験動物モデルを使用するとき、治療効力は、心血管系の疾患または障害の症状の低減、例えば、呼吸困難、胸部痛、心悸亢進、めまい、失神、浮腫、チアノーゼ、蒼白、倦怠感および高血圧のうちの1つ以上の症状の低減が治療されていない動物と比べて治療されている動物で早く起こるとき、明らかとなる。「より早く」という言葉によって、例えば、腫瘍のサイズの減少が少なくとも5%早く起こるが、好ましくはより早く起こる、例えば、1日早く、2日早く、3日早く、またはそれ以上早く起こることを意味する。
【0091】
本明細書において使用される場合、「治療すること(treating)」という用語は、心血管系の疾患または障害の治療に関して使用されるとき、心血管系の疾患または障害の症状や生化学的マーカーの低減について言及するために使用され、例えば、心血管疾患の少なくとも1つの生化学的マーカーの少なくとも約10%の低減は有効な治療とみなされ得る。心血管疾患のそのような生化学的マーカーの例には、血液中の、例えば、クレアチンホスフォキナーゼ(CPK)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の減少、および/または心血管疾患の症状の減少、および/または心電図(ECGまたはEKG)もしくは心エコー図(心臓超音波)、ドップラー超音波画像法および核医学画像法によって測定される、幾人かの当業者によって決定される血流および心機能の改善が含まれる。心血管疾患の症状の少なくとも約10%の減少も本明細書において開示される方法による有効な治療とみなされ得る。別の例として、心血管疾患の症状の減少、例えば、次の、呼吸困難、胸部痛、心悸亢進、めまい、失神、浮腫、チアノーゼなどのうちの少なくとも1つの少なくとも約10%の減少、またはそのような系の停止、または心血管疾患の1つのそのような症状のサイズの少なくとも約10%の減少も本明細書において開示される方法によって有効な治療とみなされ得る。いくつかの実施形態では、治療薬が、単に症状を管理可能な程度にまで軽減するよりも、実際に心血管系の疾患または障害を除去することが好ましいが、必須ではない。
【0092】
本明細書において開示される方法による治療を受け入れることができる対象は、心筋梗塞(一般に心臓発作と呼ばれる)または癌を診断するためのあらゆる方法によって特定され得る。これらの健康状態を診断する方法は当業者に周知である。非限定的な例として、心筋梗塞は(i)クレアチンホスフォキナーゼ(CPK)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)および心筋梗塞の間に放出される他の酵素のレベルを検出するための血液検査、(ii)心臓活動の紙またはコンピュータモニターのどちらかでの図による記録である心電図(ECGまたはEKG)によって診断され得る。ECGは、疾患や損傷の検出に有益であり得る。(iii)先天性心臓疾患の調査ならびに心臓の壁、弁および血管の機能の異常を含む心臓壁の異常を評価するために使用される心エコー図(心臓超音波)、(iv)ドップラー超音波画像法は心臓弁を越える血流の測定のために使用することができる。(v)核医学画像法(当技術分野において放射性核種スキャニング法とも呼称される)は生体構造と器官の機能の画像化を可能とし、冠動脈疾患、心筋梗塞、弁疾患、心臓移植拒絶反応を検出し、バイパス手術の有効性をチェックし、または血管形成術または冠動脈バイパス移植の患者を選択するために使用することができる。
【0093】
「冠動脈疾患」および「急性冠動脈症候群」という用語は、本明細書において互換的に使用され、心筋梗塞を指す場合、心血管系の健康状態、疾患または障害を指し、不十分な、望ましくない、または異常な心機能を特徴とするあらゆる障害、例えば、虚血性心臓疾患、高血圧性心臓疾患および肺性高血圧性心臓疾患、弁膜症、先天性心臓疾患および対象、特にヒト対象においてうっ血性心不全に至るあらゆる健康状態を含む。不十分な、または異常な心機能は疾患、傷害や加齢の結果であり得る。背景として、心筋の傷害に対する応答は、いくつかの細胞は死ぬが、他の細胞は、細胞は未だ死んではいないが、機能不全である休止状態に入る、明確に定義された経路に従う。この後に炎症性細胞の浸潤、瘢痕化の一部としてのコラーゲンの沈着が続き、それらの全てが新しい血管の内殖およびある程度の継続的細胞死と並行して起こる。
【0094】
本明細書において使用される場合、「虚血」という用語は、血液の流入の低下に起因するあらゆる局所組織の虚血を指す。「心筋虚血」という用語は、冠動脈アテローム性硬化症や心筋への不十分な酸素供給を原因とする循環障害を指す。例えば、急性心筋梗塞は心筋組織への不可逆性虚血性発作を表す。この発作は、冠循環に閉塞性(例えば、血栓性または塞栓性)事象をもたらし、心筋の代謝要求が心筋組織への酸素の供給を越える環境を作り出す。
【0095】
本明細書において互換的に使用される「組成物」または「医薬組成物」という用語は、当技術分野において従来型であり、哺乳類および好ましくはヒトまたはヒト細胞への投与に適切である薬学的に許容可能な担体などの賦形剤を通常含む組成物または製剤を指す。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、標的の組織または器官への直接送達、例えば、標的組織への直接注入またはカテーテル注射による直接送達のために特定的に製剤され得る。他の実施形態では、組成物は、経口経路、眼球非経口経路、静脈内経路、動脈内経路、皮下経路、鼻腔内経路、舌下経路、髄腔内経路、脳室経路などを含むが、これらに限定されない多数の経路のうちの1つ以上を介する投与のために特定的に製剤され得る。さらに、局所(例えば、口腔粘膜、呼吸器粘膜)投与や経口投与のための組成物は溶液、懸濁液、錠剤、丸剤、カプセル剤、持続放出性製剤、含嗽剤、または粉剤を形成することができ、当技術分野において公知であるように本明細書に記載される。その組成物は安定化剤および保存剤を含むこともできる。担体、安定化剤およびアジュバントの例については、フィラデルフィア科学大学(2005年) Remington:The Science and Practice of Pharmacy with Facts and Comparisons,第21版。
【0096】
本明細書において使用される場合、「投与すること(administering)」、「導入すること(introducing)」および「移植すること(transplanting)」という用語は互換的に使用され、そして、少なくとも1つのMOD-RNAを含む医薬組成物、または細胞集団および少なくとも1つのMOD-RNAを含む組成物、または本明細書に記載されるようにMOD-RNAで形質移入されている心筋細胞の集団を含む組成物の対象への、その医薬組成物を所望の部位または組織の位置に少なくとも部分的に局在させる方法または投与経路による設置を指す。本明細書において使用される場合、「投与すること」、「導入すること」および「移植すること」という用語は互換的に使用され、そして、少なくとも1つのMOD-RNAを含む医薬組成物、または心臓細胞の集団および少なくとも1つのMOD-RNAを含む組成物、または本明細書に記載されるようにMOD-RNAで形質移入されている心筋細胞の集団を含む組成物の対象への、その医薬組成物を所望の部位または組織の位置に少なくとも部分的に局在させる方法または投与経路による設置を指す。いくつかの実施形態では、MOD-RNAを含むその医薬組成物は対象に有効な治療をもたらすあらゆる適切な経路により投与され得る、すなわち、投与によって、そのMOD-RNAが発現するタンパク質の少なくとも一部が所望の標的組織または標的細胞の位置に局在する、対象内の所望の位置または組織への送達がもたらされる。
【0097】
「非経口投与」および「非経口的に投与される」という語句は、本明細書において使用される場合、経腸投与および局所投与以外の投与モードであって、通常注射による投与モードを意味し、そして、限定されないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、心室内、関節包内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、髄腔内、脳脊髄内、および胸骨内の注射および点滴を包含する。「全身投与」、「全身投与される」、「末梢投与」および「末梢投与される」という語句は、本明細書において使用される場合、MOD-RNAを含む医薬組成物が動物の系に進入し、そうして代謝および他のそのような過程の対象となるような、標的の組織または器官への直接的な投与以外のMOD-RNAを含む医薬組成物の投与を意味する。
【0098】
「薬学的に許容可能な」という語句は、確実な根拠がある医学的判断の範囲内で、ヒトおよび動物の組織との接触での使用に適切な、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題、または合併症を持たず、妥当なリスク・ベネフィット比にふさわしい化合物、物質、組成物、および/または剤形を指すために本明細書において使用される。
【0099】
「薬学的に許容可能な担体」という語句は、本明細書において使用される場合、ある器官、または身体の部分から別の器官または身体の部分への対象作用物質の移送または輸送に関わる薬学的に許容可能な物質、組成物または液体もしくは固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒もしくはカプセル化物質などのベヒクルを意味する。各担体は製剤の他の成分と適合するという意味で「許容可能」でなくてはならない。医薬製剤は1つ以上の薬学的に許容可能な成分と併せて本発明の化合物を含有する。担体は固形物、半固形物、または液体希釈剤、クリームまたはカプセルの形状であり得る。これらの医薬調製物は本発明のさらなる課題である。活性化合物の量は通常調製物の0.1~95重量%の間であり、好ましくは非経口使用のための調製物においては0.2~20重量%の間であり、そして、好ましくは調製物においては1重量%と50重量%の間である。いくつかの実施形態では、MOD-RNAを含む医薬組成物は1つ以上の薬学的に許容可能な成分と組み合わさっていてよい。担体は固形物、半固形物、または液体希釈剤、クリームまたはカプセルの形状であり得る。
【0100】
「薬物」または「化合物」という用語は、本明細書において使用される場合、疾患または健康状態を治療、または予防または管理するために対象に投与される化学物質または生物学的製剤、または複数の化学物質または生物学的製剤の組合せを指す。化学物質または生物学的製剤は、必ずしもそうではないが、低分子量化合物であることが好ましいが、より大きい化合物、例えば、限定されないが、タンパク質、オリゴヌクレオチド、リボザイム、DNAザイム、糖タンパク質、siRNA、リポタンパク質、アプタマー、ならびにそれらの修飾および組合せを含む、核酸、アミノ酸、または炭水化物からなるオリゴマーであってもよい。
【0101】
「作用物質」という用語は、通常存在しない、または細胞、組織もしくは対象に投与されているレベルでは存在しないあらゆる実体を指す。作用物質は、化学物質、小分子、核酸配列、核酸類似体、タンパク質、ペプチド、アプタマー、抗体、またはそれらの機能性断片を含む群から選択され得る。核酸配列はRNAまたはDNAであってよく、一本鎖または二本鎖であってよく、そして、目的のタンパク質をコードする核酸、オリゴヌクレオチド、および核酸類似体、例えば、ペプチド核酸(PNA)、偽相補性PNA(pc-PNA)、ロックド核酸(LNA)などを含む群より選択され得る。そのような核酸配列には、核酸配列をコードする例えば、転写抑制因子として作用するタンパク質、アンチセンス分子、リボザイム、低分子阻害性核酸配列、例えば、限定されないが、RNAi、shRNAi、siRNA、マイクロRNAi(mRNAi)、アンチセンスオリゴヌクレオチドをコードする核酸配列が含まれるが、これらに限定されない。タンパク質および/またはペプチドまたはその断片は細胞内で通常存在しないか、またはより低いレベルで発現しているタンパク質であるあらゆる目的のタンパク質、例えば、限定されないが、変異タンパク質、治療用タンパク質、短縮型タンパク質であり得る。タンパク質は、変異タンパク質、遺伝的改変タンパク質、ペプチド、合成ペプチド、組換えタンパク質、キメラタンパク質、抗体、ミニボディ、トリボディ、ヒト化タンパク質、ヒト化抗体、キメラ抗体、修飾化タンパク質およびそれらの断片を含む群から選択されることもできる。作用物質は培地に適用されてよく、そこでその作用物質は細胞と接触し、その効果を誘発する。あるいは、作用物質は、その作用物質をコードする核酸配列の細胞への導入の結果として細胞内に存在してよく、そして、その転写は、細胞内でその核酸および/またはタンパク質の環境刺激を産生することになる。いくつかの実施形態では、その作用物質は、限定されないが、合成および天然の非タンパク質性物質を含む、任意の化学物質の全体または部分である。ある特定の実施形態では、その作用物質は化学的成分を有する小分子である。例えば、化学的成分には、マクロライド、レプトマイシン類(leptomycins)および関連の天然産物またはそれらの類似体を含む、不飽和型または飽和型のアルキル成分、芳香族成分または複素環成分分が含まれた。作用物質は望ましい活性や特質を有することが知られていることがあり、または様々な化合物からなるライブラリーから選択することができる。
【0102】
「1つ」および「ある」という冠詞は、1つ、または1つよりも多く(すなわち、少なくとも1つ)のその冠詞の文法上の目的語を指すために本明細書において使用される。例として、「要素(an element)」は1つの要素、または1つよりも多くの要素を意味する。
【0103】
「統計的に有意な」または「有意に」という用語は統計的な有意性を指し、一般に平均より標準偏差の2倍分(2SD)下の、またはそれより下のマーカーの濃度を意味する。その用語は、差異が存在するという統計的な証拠を指す。それは、帰無仮説が実際に真であるときに、帰無仮説を拒絶する決定を行う確率として定義される。その決定は、多くの場合、p値を使用してなされる。
【0104】
実施例、または別途指示される場合を除いて、本明細書において使用される成分または反応条件の量を表す全ての数は全ての事例で「約」という用語によって修飾されると理解されるべきである。「約」という用語は、パーセンテージとの関連で使用されるとき、±1%を意味し得る。本発明は以下の実施例によって詳細にさらに説明されるが、本発明の範囲はそれらに限定されないべきである。
【0105】
本発明は、本明細書に記載される特定の方法、プロトコル、および試薬などに限定されず、したがって、変更し得ることが理解されるべきである。本明細書において使用される用語法は特定の実施形態を説明することを目的とするだけのものであり、本発明の範囲を制限するものと意図されてはおらず、その本発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0106】
インビボタンパク質補充療法の方法
本明細書に記載される合成修飾型RNAは、合成修飾型RNA組成物の個体への投与により、または別の実施形態では、細胞を合成修飾型RNAとエクスビボで接触させ、次にそのような細胞を対象に投与することにより、治療上の目的のタンパク質を標的の組織または器官で発現させるために使用されることもできる。1つの態様では、細胞を患者から取り出し、例えば、電気穿孔法またはリポフェクションにより形質移入し、そして、その患者に再導入するエクスビボアプローチを用いて、修飾型RNAにより細胞を形質移入して治療用タンパク質を発現させることができる。この方法での連続投与または持続型投与は、患者に再注入する血液細胞の電気穿孔法により達成することができる。
【0107】
本明細書において開示されるように、発明者らは、心臓および筋肉組織のMOD-RNAによる形質移入の後の非常に効率的で、迅速なインビボタンパク質発現を示す。発明者らは、タンパク質発現が形質移入後から3時間以内までに起こること、および、インビボタンパク質発現が筋肉または心臓へのMOD-RNAの直接注入後に少なくとも4~5日間起こることを示す。重要なことに、発明者らは、インビボタンパク質発現のレベルは心臓または筋肉にインビボで注入されたMOD-RNAの量に対して用量依存的であり、そのことが、所望の量のタンパク質が発現するためにその組織に投与されるMOD-RNAの量を決定することを可能とすることを示す。したがって、合成修飾型RNAがタンパク質補充療法または他の治療法においてインビボタンパク質発現のために使用されている場合、発現するタンパク質の量を決定する能力は非常に有用である。
【0108】
本明細書の実施例において開示されるように、MOD-RNAを使用する心臓組織および筋肉のインビボ形質移入は低免疫応答をもたらす。
【0109】
したがって、本発明の1つの態様は、組織においてタンパク質をインビボ発現させるための方法(例えば、対象の組織)であって、目的のタンパク質をコードするMOD-RNAを含む組成物とその組織を接触させる工程を含む方法に関する。いくつかの実施形態では、組織は、目的のタンパク質のタンパク質発現を増加させたことが望ましい任意の器官である。
【0110】
「組織」という用語は、本明細書において使用される場合、特定の機能を実行する細胞からなる任意の群に適用される広義の用語であり、いくつかの例では、器官全体(例えば、副甲状腺)および/または膵島などの器官の一部を含む。組織は必ずしも層を形成せず、したがって、筋肉、心臓、骨髄、皮膚、結合組織(例えば、他の身体組織を支える体性の中の線維を構成する細胞)、および造血性組織およびリンパ組織(例えば、身体を細菌や他の外来物質から保護するのに役立つ身体の免疫系の一部として機能する細胞)、膵臓、胃、腸、肺などを含む広範囲の組織を包含する。
【0111】
いくつかの実施形態では、MOD-RNAと接触する標的組織は筋肉組織、例えば、心筋、または骨格筋または平滑筋である。いくつかの実施形態では、その組織は心臓組織である。いくつかの実施形態では、その組織は心臓の血管新生化組織である。
【0112】
いくつかの実施形態では、組織を、目的のタンパク質をコードするMOD-RNAを含む組成物と接触させる。「接触させる」または「接触」という用語は、組織を本明細書において開示されるMOD-RNAと接触させることとの関連で本明細書において使用される場合、インビボでMOD-RNAを組織、器官または標的細胞集団と接触させること、またはMOD-RNAの極近傍に組織、器官または標的細胞集団を置くことを含む。したがって、いくつかの実施形態では、「組織を接触させる」または「細胞集団を接触させる」という語句は、曝露の方法であって、直接的または間接的であり得る方法を指す。一方法では、そのような接触は、直接心臓注射など、当技術分野において周知のあらゆる手法を介した組成物の組織への直接注入を含む。別の実施形態では、接触はまた、間接接触、例えば、組織を取り囲む局所的媒体を介した間接接触、または対象への投与、または当技術分野において公知の任意の経路を介した投与を包含する。別の実施形態では、「接触させる」という用語は、本明細書において開示されるMOD-RNA分子が治療を受けている対象に導入され、その分子がインビボで標的組織に接触することが可能になることを意味する。それぞれの可能性は本発明の異なる実施形態を表す。
【0113】
いくつかの実施形態では、MOD-RNAは組織の直接注入により組織に送達される。本明細書において開示されるように、MOD-RNAを含む組成物の心臓への直接注入によって、強固なタンパク質発現が約3日以内にそのMOD-RNAから起こり、発現が約4~5日間続いた。
【0114】
いくつかの実施形態では、MOD-RNAは当業者に知られている任意の方法により組織に送達され得、そして、例えば、カテーテルによる送達を含むことができ、そのカテーテルは、MOD-RNA組成物を標的組織に送達するための永久カテーテルまたは一時的カテーテルであり得る。いくつかの実施形態では、MOD-DNAは内視鏡を使用して送達される。いくつかの実施形態では、カテーテルや内視鏡による送達のために、そのカテーテルや内視鏡は装着型カメラを有することができ、撮影によって臨床医がMOD-RNAを含む組成物を所望の組織位置へ正確に送達することを助けることができる。
【0115】
いくつかの実施形態では、本明細書において開示されるMOD-RNAを含む組成物は、埋め込み型装置を使用して標的組織に送達することができる。いくつかの実施形態では、その埋め込み型装置は薬物送達装置であり、その薬物送達装置はMOD-RNA組成物を標的組織に送達するための送達用カテーテルを含む。
【0116】
いくつかの実施形態では、「薬物送達装置」は、本明細書において使用される場合、送達用要素、例えば、MOD-RNAを含む医薬組成物を対象の所望の標的組織または標的生体構造、例えば、心臓に輸送するための送達用カテーテルを指す。いくつかの実施形態では、薬物送達装置は「薬物溶出モジュール」または「制御型薬物ポンプ装置」を含むことができ、それらは、本明細書に記載される方法に従った、MOD-RNAを含む組成物の貯蔵とそれの標的領域または標的組織への制御放出に適切なあらゆる埋め込み型装置を指す。そのような「薬物送達装置」の使用によって、MOD-RNAを含む組成物のポンプからの、その装置自身によって制御または決定される、制御された方式(例えば、放出速度、放出のタイミング)での放出が可能になる。「薬物溶出モジュール」という用語はまた、分散系、受食系または対流系を含む任意の作用機序を有する任意の埋め込み型装置、例えば、浸透圧ポンプ、生体分解性移植物、電気拡散システム、電気浸透システム、蒸気圧ポンプ、電解ポンプ、発泡性ポンプ、圧電ポンプ、浸食系システム、または電気機械式システムを包含する。いくつかの実施形態では、MOD-RNAを含む組成物の薬物送達装置からの放出はプログラムすることができ、いくつかの実施形態では、その送達装置はリモートコントロールを用いてプログラムすることができ、それは医師やその埋め込み型装置が移植される対象によってプログラムされ得る。
【0117】
別の実施形態では、本明細書において開示されるMOD-RNAを含む組成物は、特定の疾患または障害の治療のための埋め込み型装置を使用して標的組織に送達することができる。いくつかの実施形態では、前記埋め込み型装置はステントである。例えば、MOD-RNAを含む組成物が心血管系の疾患または障害の治療のために使用されるいくつかの実施形態では、そのMOD-RNAはステントを被覆するために使用することができる。
【0118】
心筋細胞および筋細胞細胞
本発明の1つの実施形態は、対象の心血管系の疾患または障害を治療する方法であって、本明細書において開示される少なくとも1つの合成修飾型RNA(MOD-RNA)を含む組成物の有効量を心血管系の疾患または障害を有する対象に投与する工程を含む方法に関する。
【0119】
発明者らは、hVEGFを発現するMOD-RNAの心臓または筋肉組織への直接注入後から3時間以内もの早さでの心臓組織における非常に効率的なインビボタンパク質発現を本明細書において示す。発明者らは、タンパク質発現が少なくとも4~5日間続き、それが非修飾型RNAと比べて低免疫応答をもたらすことを示す。前に論じたように、発明者らはまた、インビボタンパク質発現のレベルは心臓または筋肉にインビボで注入されたMOD-RNAの量に対して用量依存的であり、そのことが、必要とされる所望の量のタンパク質発現のためにその組織に投与されるMOD-RNAの量を決定することを可能とすることも示す。
【0120】
したがって、本発明の1つの態様は、疾患または障害の治療のために対象の組織においてインビボでポリペプチドを発現する合成修飾型RNAを含む方法および組成物に関する。本発明の別の態様は、目的のポリペプチドをコードする合成修飾型RNAを含む組成物を投与する工程を含む、対象の疾患または障害を治療するための方法に関する。
【0121】
いくつかの実施形態では、前記組成物は、対象の特定の組織に送達することができ、いくつかの実施形態では、その組織は筋肉組織である。いくつかの実施形態では、その筋肉組織は骨格筋、心筋または平滑筋であり得る。
【0122】
いくつかの実施形態では、本明細書において開示される方法は、心血管疾患などの1つ以上の疾患の治療のために、心臓増強ポリペプチドをコードする合成修飾型RNAを対象の筋肉組織に送達する工程を含む。いくつかの実施形態では、心血管疾患は次の筋肉疾患、すなわち心筋症(虚血性および非虚血性)、骨格筋障害、嚢胞性線維症、筋ジストロフィーであるが、これらに限定されない。
【0123】
発明者らは、hVEGFポリペプチドをコードする合成修飾型RNAの心筋梗塞のマウスモデルの心臓へのインビボ送達は心筋梗塞巣が発生することを防ぎ、そして、心臓への損傷を有意に防ぎ、ならびに心臓の回復を促進したことを本明細書において示した。したがって、1つの実施形態では、本明細書において開示される方法は、心臓発作および心筋梗塞の治療のために、心臓増強ポリペプチド、例えば、VEGFをコードする合成修飾型RNAを対象の筋肉組織に送達する方法に関する。いくつかの実施形態では、心臓増強ペプチドをコードする合成修飾型RNAは、直接心筋内注入を介して心筋に送達することができる。
【0124】
いくつかの実施形態では、心血管疾患の治療にとり、MOD-RNAが発現する心臓増強ペプチドは心臓の血管新生を増強するための、および/または虚血もしくは心臓梗塞の後の心臓の再血管形成のためのポリペプチドである。いくつかの実施形態では、前記MOD-RNAが発現する心臓増強ペプチドはVEGF、例えば、hVEGFである。
【0125】
「血管新生を増強する」という用語は、本明細書において使用される場合、新生血管網の形成速度の上昇または加速化を指す。いくつかの実施形態では、血管新生の増強は、前記方法が無い場合(例えば、心臓増強ポリペプチドをコードするMOD-RNAを投与することが無い場合に起こり得る血管新生)と比較して、より密な毛細管または新生血管網の形成を指す。言い換えると、血管新生の増強は新生血管網の形成速度の統計的に有意な上昇、または代わりに、新生血管網のを形成する毛細管の量の統計的に有意な増加を指す。
【0126】
「再血管形成する(revascularize)」、「再血管形成すること(revascularizing)」、「血管新生(neovascularization)」、または「再血管形成(revascularization)」という用語は、本明細書において使用される場合、既存の血管網を改善もしくは修正すること、または疾患、先天性の欠陥、もしくは傷害に通常起因する虚血性区域の血管が無い、もしくは血管が少ない区域を有する組織もしくは器官に新しい機能的な、もしくは実質的に機能的な血管網を構築することを指す。そのような血管が無い、または血管が少ない組織または器官は、多くの場合、完全もしくは部分的に機能不全であり、または限定的な機能を有し、そして、再血管形成を必要とする場合がある。そのような組織または器官に血管を再形成することによって、器官または組織に機能が回復または増強することになる場合がある。
【0127】
いくつかの実施形態では、MOD-RNAは融合タンパク質、例えば、VEGFを特定の細胞に標的化するために標的化タンパク質にVEGFが融合されている融合タンパク質をコードすることができる。いくつかの実施形態では、VEGFを内皮細胞に標的化することが望ましい場合、MOD-RNAはVEGF-vWF融合タンパク質をコードすることができ、ここでvWFはVEGFを内皮細胞に標的化するためのホーミングペプチドとして機能する。他の標的化ペプチドおよびホーミングペプチドは本発明に包含される。
【0128】
いくつかの例では、MOD-RNAに分泌タンパク質をコードさせることが望ましい。そのような場合では、MOD-RNAはタンパク質の分泌を容易にする分泌シグナル配列を含むタンパク質をコードする。例えば、MOD-RNAが目的のタンパク質として血管新生性タンパク質をコードする場合、当業者であれば、天然のシグナル配列を有する血管新生性タンパク質、例えば、VEGFを選択することができるか、ルーチンの遺伝子操作を用いてそのような配列を含むように遺伝子産物を修飾することができる(Nabel et al., 1993を参照のこと)。
【0129】
あるいは、いくつかの実施形態では、MOD-RNAは修飾されて、標的組織の特定の細胞種にMOD-RNAを標的化するために、本明細書において開示されるように付加された特定の標的化成分を有することができる。いくつかの実施形態では、その成分はMOD-RNAに直接付加された標的化成分、または代わりに、間接的に付加された標的化成分であることができ、例えば、そのMOD-RNAがリポソームまたはナノ粒子中に製剤される場合、そのリポソームまたはナノ粒子の表面は、組織内の特定の細胞によるMOD-RNAの取込を管理するための標的化成分を含むことができる。
【0130】
いくつかの実施形態では、MOD-RNAが発現する心臓増強ペプチドは、心臓細胞の生存および/または増殖を促進するためのあらゆる心臓栄養因子または成長因子であり得る。最近、心臓発作後の心筋梗塞巣に心臓幹細胞が存在することが報告された。したがって、心筋梗塞の治療のために心臓増強ペプチドをコードするMOD-RNAを心臓に投与することができる。心臓栄養因子は当技術分野において周知であり、そして、心臓栄養性作用物質、クレアチン、カルニチン、タウリン、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2003/0022367号に開示される心臓作用因子、アクチビンA、アクチビンBなどのTGFβリガンド、インスリン様成長因子、骨形成タンパク質、線維芽細胞増殖因子、血小板由来増殖因子、ナトリウム利尿因子、インスリン、白血病抑制因子(LIF)、上皮成長因子(EGF)、TGFα、およびBMPまたはクリプト経路の産物を含むが、これらに限定されない。MOD-RNAから発現し得る他の心臓増強ペプチドには、本明細書において開示される、サイトカインおよび成長因子のような細胞分化作用物質が含まれる。様々な細胞分化作用物質の例は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願番号第2003/0022367号、またはGimble et al., 1995、 Lennon et al., 1995、 Majumdar et al., 1998、 Caplan and Goldberg, 1999、 Ohgushi and Caplan, 1999、 Pittenger et al., 1999、 Caplan and Bruder, 2001、 Fukuda, 2001、 Worster et al., 2001、 Zuk et al., 2001において開示される。
【0131】
別の実施形態では、本明細書において開示される合成修飾型RNAは、組織再生に関与するそれらの能力を増強するために、または治療用タンパク質を投与部位に送達するために使用されてタンパク質を発現することができる。成長因子であるポリペプチドをコードする、本明細書において開示される合成修飾型RNAが特に興味深く、例えば、細胞が筋原細胞、例えば、心筋細胞である場合、本明細書において開示される方法において有用な合成修飾型RNAは様々な種類の1つ以上の成長因子、心房性ナトリウム利尿因子などの心臓作用因子、クリプト、ならびにGATA-4、Nkx2.5およびMef2-Cなどの心臓転写調節因子を発現することができる。本明細書において開示される方法および組成物の中のMOD-RNAによって発現され得るサイトカインおよび成長因子の他の例には、心臓栄養性作用物質、クレアチン、カルニチン、タウリン、アクチビンA、アクチビンBなどのTGFβリガンド、インスリン様成長因子、骨形成タンパク質、線維芽細胞増殖因子、血小板由来増殖因子ナトリウム利尿因子、インスリン、白血病抑制因子(LIF)、上皮成長因子(EGF)、TGFα、およびBMPまたはクリプト経路の産物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0132】
したがって、1つの実施形態では、本発明は、心筋梗塞を治療するための方法であって、心臓増強ポリペプチドをコードする少なくとも1つの合成修飾型RNA(MOD-RNA)を含む組成物を心筋梗塞を有する対象に、心臓発作を有する対象の心臓に、または心臓発作があったことがある対象の心臓に投与する工程を含む方法を提供する。
【0133】
さらに、出生後心房筋細胞は増殖することができないが、それらは再プログラム化されて、Isl1を再発現し、細胞周期に再び入り、そして、増殖することができる。そのような方法は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2011/0003327号に開示される。したがって、いくつかの実施形態では、Isl1タンパク質を発現するMOD-RNAを含む組成物は心房筋細胞においてIsl1を再発現するために使用することができ、その後、その心房筋細胞は、心臓栄養性成長因子を発現するMOD-RNAと接触させることにより血管平滑筋細胞ならびに心室筋細胞へ分化するように誘導され得る。したがって、本発明は、心房筋細胞をIsl1 MOD RNAで形質導入し、それらの増殖とその後の心室筋細胞への分化を誘導することを考えている。さらに、いくつかの実施形態では、MOD-RNAは、心筋細胞の増殖を促進するために使用されるタンパク質、例えば、表4に開示される任意の遺伝子を発現することができる。
【0134】
本明細書において使用される場合、「Isl1」という用語はIslet1遺伝子、および機能の構造に有害な影響を与えることがない保存的置換、付加、欠失をその中に含むそのホモログをコードする核酸を指す。Isl1は当技術分野においてIslet 1、ISL LIMホメオボックス1またはIsl-1とも呼ばれる。ヒトIsl1はGenBank受託番号BC031213またはNM_002202に対応する核酸によってコードされ、ヒトIsl1はRefSeq識別番号AAH31213に対応するタンパク質配列に対応する。
【0135】
いくつかの実施形態では、前記方法および組成物は、筋肉の疾患および障害の治療、例えば、筋ジストロフィーの治療のための筋肉タンパク質をコードするMOD-RNAの使用に関する。筋ジストロフィーは筋肉の遺伝性疾患のファミリーを表す。いくつかの型は子供を冒し(例えば、デュシェンヌ型ジストロフィー)、そして、20年~30年以内に致死となる。他の型は成人期に存在し、より時間をかけて進行する。いくつかのジストロフィーの遺伝子が特定されており、それにはデュシェンヌ型ジストロフィー(ジストロフィン遺伝子内の変異によって引き起こされる)ならびに十代および成人発症性三好型ジストロフィーまたはその異型体である肢帯型ジストロフィー2BすなわちLGMD-2B(ジスフェリン遺伝子内の変異によって引き起こされる)が含まれる。これらは、筋肉での関連のタンパク質の発現を妨げ、それによって筋肉機能不全を引き起こす「機能欠損型」変異である。自然発生した、または、適切な遺伝子の不活化もしくは欠失により作製された、これらの変異のマウスモデルが存在する。これらのモデルは、筋肉内で失われているタンパク質を補充し、正常な筋肉機能を回復することができる治療法の試験に有用である。
【0136】
いくつかの実施形態では、1つ以上の遺伝子をコードする合成修飾型RNAを含む組成物は、1つ以上の筋肉組織標的に送達することができる。例えば、その方法がデュシェンヌ型/ベッカー型筋ジストロフィーの治療のためのものである実施形態では、非変異型のジストロフィンタンパク質をコードする合成修飾型RNAを送達することができ、それは1つ以上の筋肉組織標的に送達され得る。例えば、前記方法がエメリー・ドレヒュス型筋ジストロフィーの治療のためのものである実施形態では、エメリンおよび/またはラミンタンパク質をコードする合成修飾型RNAを送達することができ、それは1つ以上の筋肉組織標的に送達され得る。
【0137】
いくつかの実施形態では、前記方法および組成物は、筋肉の疾患および障害の治療、例えば、骨格筋障害の治療のための筋肉タンパク質をコードするMOD-RNAの使用に関する。いくつかの実施形態では、α1アンチトリプシンタンパク質をコードする合成修飾型RNAを含む組成物は、1つ以上の筋肉組織標的に送達することができる。
【0138】
いくつかの実施形態では、ジストロフィンおよび/またはエメリンおよび/またはラミンタンパク質をコードする合成修飾型RNAは、前記健康状態、特に胸郭の横隔膜の衰弱に起因する不十分な呼吸および姿勢筋の衰弱に起因する歩行不能に関連する最も顕著な障害を有する筋肉組織に送達することができる。横隔膜注射のために、ジストロフィンおよび/またはエメリンおよび/またはラミンタンパク質をコードする合成修飾型RNAの横隔膜筋への直接注入のための胸腔鏡アプローチを用いることができる。いくつかの実施形態では、骨格筋への注射、例えば、それぞれ姿勢の維持と腕全体の動作に関連する腰帯筋および肩帯筋への直接注入により直接的に、ジストロフィンをコードする合成修飾型RNAを送達することができる。
【0139】
本発明の別の実施形態は、対象の傷害を受けた組織を治療する方法であって、(a)その対象の組織傷害部位を決定する工程、および(b)少なくとも1つの合成修飾型RNA(MOD-RNA)を含む組成物を組織傷害部位およびその周りに投与する工程を含む方法であり、少なくとも1つの合成修飾型RNA(MOD-RNA)を含むその組成物がその傷害を受けた組織の治療にとって有益であるタンパク質を発現させる方法をさらに提供する。1つの実施形態では、その組織は心臓組織または心筋である。さらなる実施形態では、その組織傷害は心筋梗塞、心筋症または先天性心臓疾患である。いくつかの実施形態では、その組織は皮膚であり、その傷害を受けた組織は創傷治癒部である。前記組織が皮膚であるそのような実施形態では、MOD-RNAを含む組成物は皮膚に局所的に投与され得る。
【0140】
いくつかの実施形態では、表1、2、3、4、5および6に記載される1つ以上の遺伝子をコードする合成修飾型RNAを含む組成物は、インビボタンパク質発現のために対象の1つ以上の標的組織に送達することができる。いくつかの実施形態では、その標的組織は筋肉組織であり、いくつかの実施形態では、その筋肉組織は心筋組織、骨格組織または平滑筋組織である。
【0141】
(表1)対象の標的組織でのインビボタンパク質発現のための合成修飾型RNAによってコードされる遺伝子の例
【0142】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの合成修飾型RNA(MOD-RNA)を含む方法および組成物は、心筋症、心筋梗塞および先天性心臓疾患からなる群より選択される循環障害を治療するために使用することができる。いくつかの実施形態では、心血管系の疾患または障害は心筋梗塞である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの合成修飾型RNA(MOD-RNA)を含む組成物は組織、例えば、心筋梗塞巣を有する心臓組織と接触し、そこでタンパク質のインビボ発現が心筋梗塞巣のサイズを減少させることにより心筋梗塞を治療する。心臓増強タンパク質をインビボで発現する少なくとも1つの合成修飾型RNA(MOD-RNA)を含む組成物は、心筋梗塞巣の結果生じる瘢痕組織のサイズを減少させることにより心筋梗塞を治療するために使用され得ることも意図される。いくつかの実施形態では、本発明は、少なくとも1つの合成修飾型RNA(MOD-RNA)を含む組成物は対象の心臓組織に直接投与される、または全身的に投与されることを考えている。
【0143】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの合成修飾型RNA(MOD-RNA)を含む方法および組成物は、心筋症、心筋梗塞および先天性心臓疾患からなる群より選択される循環障害を治療するために使用することができ、例えば、MOD-RNAは、表2に開示されるような、心不全を治療するためのMOD-RNA、または血管形成を促進するためのMOD-RNA、例えば、表3に開示される遺伝子のうちのいずれか、またはそれらの組合せを発現することができる。
【0144】
(表2)心不全の治療用の対象の標的組織でのインビボタンパク質発現のための合成修飾型RNAによってコードされる遺伝子の追加の代表例
【0145】
(表3)心不全の治療用の対象の標的組織でのインビボタンパク質発現のための合成修飾型RNAによってコードされる遺伝子の追加の代表例
【0146】
いくつかの実施形態では、本発明はまた、対象の遺伝的欠陥、肉体的傷害、環境障害、または脳卒中、心臓発作もしくは(ほとんどの場合、虚血に起因する)心血管疾患に由来する損傷の結果として生じる心臓または末梢脈管構造の損傷が存在する場合に対象の心血管系の疾患または障害を治療する方法であって、対象の心臓において有効量の心臓増強ポリペプチドをインビボで発現させるための少なくとも1つの合成修飾型RNA(MOD-RNA)を含む組成物をその対象に投与する工程を含む方法に関する。そのような治療の医学的適応には、様々な種類の急性および慢性の心臓疾患、例えば、冠動脈心臓疾患、心筋症、心内膜炎、先天性心血管系障害およびうっ血性心不全の治療が含まれる。治療の効力は、瘢痕組織によって占められる面積の減少または瘢痕組織の再血管形成、および狭心症の頻度と重症度において、または最大圧、収縮期圧、拡張終期圧、患者の運動能および生活の質の改善などの臨床的に受け入れられている基準によってモニターすることができる。
【0147】
いくつかの実施形態では、心臓増強ポリペプチドをコードする少なくとも1つの合成修飾型RNA(MOD-RNA)を含む組成物の投与の効果は、限定されないが、次の臨床的尺度:心臓駆出率の上昇、心不全の割合の減少、梗塞巣のサイズの減少、合併症の罹患率の減少(肺浮腫、腎不全、不整脈)運動耐容能または他の生活の質の測定基準の改善、および死亡率の低下のうちの1つによって実証され得る。心臓増強ポリペプチドのタンパク質発現の効果は組成物の投与計画の投与開始後から数日~数週間の期間にわたって明らかである場合があり、しかし、インビボ投与後から3時間もの早い時期にインビボタンパク質発現が検出され得るので、発現する心臓増強タンパク質の発現の有益な効果は最初の投与後から数時間もの早い時期に観察する場合があり、そして、その効果は少なくとも数日、数か月から数年持続する場合がある。
【0148】
いくつかの実施形態では、心臓増強タンパク質をインビボで発現する少なくとも1つの合成修飾型RNA(MOD-RNA)を含む組成物は、特別な装置を使用して心臓に送達することができ、その装置は組成物を心室および心房、心膜、または心筋の内側の所望の位置に直接投与するために利用可能であり、適合している。本明細書において開示される組成物は冠内注射により受容者の心臓に、例えば、冠循環に投与され得る。別の実施形態では、心臓増強タンパク質をインビボで発現する少なくとも1つの合成修飾型RNA(MOD-RNA)を含む組成物は、筋肉内注射により心臓の壁に投与することもできる。
【0149】
いくつかの実施形態では、心臓における目的のタンパク質、例えば、心臓増強タンパク質のインビボタンパク質発現のためのMOD-RNAを含む組成物は心臓への注射、例えば、心臓の心室壁への直接注入により投与され得る。
【0150】
いくつかの実施形態では、心臓における目的のタンパク質、例えば、心臓増強タンパク質のインビボタンパク質発現のためのMOD-RNAを含む組成物は、対象の遺伝的欠陥、肉体的傷害、環境障害、または脳卒中、心臓発作もしくは(ほとんどの場合、虚血に起因する)心血管疾患に由来する損傷の結果として生じる心臓または末梢脈管構造の循環損傷を治療するために使用することができ、その方法は、心臓における目的のタンパク質、例えば、心臓増強タンパク質のインビボタンパク質発現のためのMOD-RNAを含む組成物を対象に(移植する工程を含む)投与する工程を含む。そのような治療の医学的適応には、様々な種類の急性および慢性の心臓疾患、例えば、冠動脈心臓疾患、心筋症、心内膜炎、先天性心血管系障害およびうっ血性心不全の治療が含まれる。治療の効力瘢痕組織によって占められる面積の減少または瘢痕組織の再血管形成、および狭心症の頻度と重症度において、または最大圧、収縮期圧、拡張終期圧、患者の運動能および生活の質の改善などの臨床的に受容されている基準によってモニターすることができる。
【0151】
いくつかの実施形態では、心臓における目的のタンパク質、例えば、心臓増強タンパク質のインビボタンパク質発現のためのMOD-RNAを含む組成物の効果は、限定されないが、次の臨床的尺度:心臓駆出率の上昇、心不全の割合の減少、梗塞巣のサイズの減少、合併症の罹患率の減少(肺浮腫、腎不全、不整脈)運動耐容能または他の生活の質の測定基準の改善、および死亡率の低下のうちの1つによって実証され得る。心臓における目的のタンパク質、例えば、心臓増強タンパク質のインビボタンパク質発現のためのMOD-RNAを含む組成物の効果は前記手法後から数日~数週間の期間にわたって明らかである場合がある。しかしながら、有益な効果は、前記手法後から数時間もの早い時期に観察する場合があり、そして、その効果は数年持続する場合がある。
【0152】
いくつかの実施形態では、心臓増強タンパク質をコードするMOD-RNAを含む組成物は、筋原細胞をエクスビボで修飾するために使用することができ、その筋原細胞は対象に移植することができ、いくつかの実施形態では、心臓増強タンパク質をコードする少なくとも1つの他のMOD-RNAの存在下で対象に移植することができる。いくつかの実施形態では、本明細書において開示される合成修飾型RNAが使用されて、例えば、遺伝子産物を置換するために、または心臓性組織の再生を促進するために、疾患を治療するために、または傷害後または筋原細胞の対象への移植後の筋原細胞の生存を改善するために(すなわち、移植拒絶を防ぐために)細胞、例えば、筋原細胞、例えば、心筋細胞を修飾することができる。
【0153】
別の実施形態では、合成修飾型RNAを使用するインビボタンパク質発現のための本明細書において開示される方法および組成物およびキットは再生医学ストラテジーにおいて同様に使用することができる。例えば、いくつかの実施形態では、目的のタンパク質をコードする少なくとも1つの合成修飾型RNAを含む組成物は目的の細胞集団を含むこともできる。言い換えると、いくつかの実施形態では、本発明は、目的の細胞集団と少なくとも1つの合成修飾型RNAの組合せを対象に投与する工程を含む再生細胞療法のための方法を提供する。したがって、目的のタンパク質をコードする少なくとも1つの合成修飾型RNAおよび目的の細胞の集団を含む組成物は、そのような治療を必要とするヒト患者または他の対象における組織の再構成または再生に使用することができる。MOD-RNAと細胞を含む組成物は、意図した組織部位に移植または移動することができ、機能的な欠損が有る領域を再構成または再生することができるような方式で投与され得る。
【0154】
いくつかの実施形態では、組織再生のために細胞と併せて投与される合成修飾型RNAを使用するインビボタンパク質発現のための本明細書において開示される方法および組成物およびキットは、心筋細胞の増殖や生存を促進するタンパク質をコードするあらゆるMOD-RNAであり得、例えば、そのような遺伝子は本明細書において開示される表4に記載される遺伝子を含むが、それらに記載されない。
【0155】
(表4)心不全の治療のための、または心筋細胞の増殖を促進するための対象の標的組織におけるインビボタンパク質発現のための合成修飾型RNAによってコードされる遺伝子の代表的な例
【0156】
他の機能欠損型疾患の治療
いくつかの実施形態では、合成修飾型RNAを使用するインビボタンパク質発現のための本明細書において開示される方法、組成物およびキットは、機能欠損型疾患の治療の方法において使用することができる。機能欠損型疾患は、タンパク質機能の低減または消失の原因となる遺伝子内の変異と関連がある疾患である。
【0157】
いくつかの実施形態では、機能欠損型遺伝子は腫瘍抑制遺伝子、またはDNA修復、細胞分裂周期チェックポイント、細胞運動能、転写調節およびアポトーシスに機能する遺伝子内の変異である。機能欠損型は、本明細書において使用される場合、遺伝子または遺伝子産物の正常な活性の低下または消失を指す。活性の喪失は転写やRNAのプロセッシングの低減、翻訳、安定性、輸送もしくは遺伝子産物の活性の低減、またはそれらの任意の組合せに起因し得る。腫瘍抑制遺伝子および腫瘍抑制遺伝子であると疑われる遺伝子には、BRCA1、BRCA2、MLH1、MSH2、MSH6、EPHA3、EPHA4、APHB2、INI1、AXIN1、AXIN2、MLL3、EP300、NF1、TP53、APC、VHL、SMAD2、SMAD4、KEAP1、CDKN2A、RB1、MEN、NF2/SCH、PTCH、TGFBR1、TGFBR2、ACVR1B、AVCR2、MRE11、MAP2K4、およびLKB1/STK11が含まれるが、これらに限定されない。
【0158】
いくつかの実施形態では、本明細書において開示される方法、組成物およびキットは、本明細書において開示される表5~7に記載される遺伝子のうちのいずれかをコードする合成修飾型RNAを使用する、対象の組織でのインビボタンパク質発現のために使用することができる。いくつかの実施形態では、本明細書において開示される方法、組成物およびキットは、不整脈の治療のために表5に記載される遺伝子のうちのいずれかをコードする合成修飾型RNAを使用する、対象の組織でのインビボタンパク質発現のために使用することができる。
【0159】
いくつかの実施形態では、本明細書において開示される方法、組成物およびキットは、ミオパチーの治療のために表6に記載される遺伝子のうちのいずれかをコードする合成修飾型RNAを使用する、対象の組織でのインビボタンパク質発現のために使用することができる。
【0160】
いくつかの実施形態では、本明細書において開示される方法、組成物およびキットは、対象のリポソーム性蓄積症の治療のために表7に記載される遺伝子のうちのいずれかをコードする合成修飾型RNAを使用する、対象の組織でのインビボタンパク質発現のために使用することができる。
【0161】
(表5)不整脈の治療のための対象の組織でのインビボタンパク質発現のための合成修飾型RNAによってコードされる遺伝子の代表例
【0162】
(表6)ミオパチーの治療のための対象の組織でのインビボタンパク質発現のための合成修飾型RNAによってコードされる遺伝子の代表例
【0163】
(表7)リポソーム性蓄積性疾患および障害の治療のための対象の組織でのインビボタンパク質発現のための合成修飾型RNAによってコードされる遺伝子の代表例
【0164】
別の実施形態では、合成修飾型RNAを使用するインビボタンパク質発現のための本明細書において開示される方法、組成物およびキットは、嚢胞性線維症の治療のための方法において使用することができる。いくつかの実施形態では、非変異型(野生型)CFTRタンパク質をコードする合成修飾型RNAを対象の横隔膜に送達することができる。いくつかの実施形態では、CFTRをコードする合成修飾型RNAは、非変異型CFTRの発現を管理する修飾型RNAの直接実質注入や気管支内導入によって送達することができる。疾患または障害の治療のための所望のポリペプチドをコードする合成修飾型RNAを送達するためのあらゆる手段が本明細書に包含され、例えば、それぞれ腹腔鏡アプローチおよび内視鏡アプローチを介する腸および膵臓への直接注入が、これらの器官系に関連する障害を有する対象の治療のために用いられ得る。
【0165】
14kDaの血管新生性リボヌクレアーゼをコードするANGは、ALSにおいて特定された機能欠損型遺伝子である。したがって、別の実施形態では、ANGポリペプチドを発現する少なくとも1つのMOD-RNAを含む組成物は、ALSの治療のために筋肉においてANGタンパク質を発現するために使用することができる。いくつかの実施形態では、ANGタンパク質をコードする合成修飾型RNAをALSと診断された対象の筋肉に送達することができる。
【0166】
他の機能欠損型疾患の治療は本発明の方法に包含され、そして、部分的機能欠損型疾患を含む。例えば、プレセニリンタンパク質をコードするMOD-RNAを含む組成物を対象のアルツハイマー病の治療のために投与することができる。
【0167】
機能欠損型疾患はαサラセミア、βサラセミア、ターナー症候群、網膜芽細胞腫を含む。
【0168】
いくつかの実施形態では、本明細書において開示される方法は、1つ以上の疾患の治療のために目的のポリペプチドをコードする合成修飾型RNAを対象の組織に送達する工程を含み、その合成修飾型RNAは埋め込み型装置、例えば、薬物送達ポンプなどの薬物送達装置によって、または代わりに、例えば、単一の進入口からの複数回の筋肉注射を容易にし得る柔軟な注射用カテーテルを使用して送達される。いくつかの実施形態では、目的のポリペプチドをコードする合成修飾型RNA埋め込み型装置の外側に付いて対象の組織に送達され、例えば、目的のポリペプチドをコードする合成修飾型RNAで埋め込み型装置の外側を被覆する。いくつかの実施形態では、治療される疾患が本明細書において開示される心臓の疾患または障害であるとき、目的のポリペプチドをコードする合成修飾型RNAでステントを被覆する。
【0169】
いくつかの実施形態では、合成修飾型RNAを使用するインビボタンパク質発現のための本明細書において開示される方法、組成物およびキットは、皮膚障害、例えば、皮膚色素障害の治療のための方法において使用することができる。そのような実施形態では、目的のタンパク質をコードする合成修飾型RNAを含む組成物の局所投与は、皮膚障害や皮膚色素障害の治療において用いることができる。いくつかの実施形態では、前記方法は、白斑の治療のためのタンパク質をコードする合成修飾型RNAを使用するインビボタンパク質発現に関する。いくつかの実施形態では、皮膚障害は湿疹(多くの場合、機能欠損型のフィラグリン遺伝子と関連がある)、または白皮症、例えば、ヘルマンスキー・パドラック症候群(中でもHPS1遺伝子およびHPS3遺伝子の変異と関連がある)、色素失調症(IKBKG遺伝子の変異と関連がある)、眼皮膚白皮症(MC1R遺伝子、OCA2遺伝子、SLC45A2遺伝子、TYR遺伝子、SLC45A2遺伝子およびTYRP1遺伝子のうちの1つ以上の変異と関連がある)、ワーデンブルグ症候群(EDN3遺伝子、EDNRB遺伝子、MITF遺伝子、PAX3遺伝子、SNAI2遺伝子、およびSOX10遺伝子の変異と関連がある)、および色素性乾皮症(ERCC2遺伝子、ERCC3遺伝子、POLH遺伝子、XPA遺伝子およびXPC遺伝子の変異と関連がある)である。したがって、本発明は、皮膚障害と関連があるタンパク質のインビボ発現によるそのような障害の治療であって、タンパク質発現がその皮膚障害に関連がある1つ以上のタンパク質をコードするMOD-RNAの局所投与によって起こる、治療に関する。
【0170】
癌の治療
多くの腫瘍、特に腺癌は、化学療法剤の送達に対して抵抗性を示す間質細胞からなる外層(線維形成性組織)を特徴とする。線維形成性組織の量を減少させること、線維形成性組織の増殖速度を低下させること、および/または線維形成性組織が化学療法剤では効果が無い程度にまで程度を減少させることにより、化学療法剤がより効果的に腫瘍に浸透することが可能となり、効力を増強し、必要な用量を減少させることができる。本明細書は、化学療法剤の効力を増大する2つの方法で線維形成性組織を変化させる方法を記載する。いくつかの実施形態では、線維形成性組織の血管形成の程度が上昇し、化学療法剤が腫瘍の全体に届く機会が多くなる。いくつかの実施形態では、線維形成性組織の量または線維形成性組織の増殖速度はヘッジホッグシグナル伝達を阻害することにより低下し、ヘッジホッグシグナル伝達は線維形成性組織の増殖に関連があるとされている。本明細書に記載される合成修飾型RNAは(i)対象の腫瘍の線維形成性組織において血管新生を増強するポリペプチドを発現するために、および/または(ii)標的の腫瘍においてヘッジホッグシグナル伝達を増強するポリペプチドの発現阻害剤として、合成修飾型RNA組成物の個体への投与により、または別の実施形態では、腫瘍をその合成修飾型RNAと接触させることにより使用することができる。いくつかの実施形態では、細胞を合成修飾型RNAとエクスビボで接触させ、次にそのような細胞を対象に投与する。1つの態様では、細胞を患者から取り出し、例えば、電気穿孔法またはリポフェクションにより形質移入し、そして、その患者に再導入するエクスビボアプローチを用いて、修飾型RNAにより細胞を形質移入して治療用タンパク質を発現させることができる。この方法での連続投与または持続型投与は、患者に再注入する血液細胞の電気穿孔法により達成することができる。
【0171】
本明細書において開示されるように、発明者らは、様々な組織のMOD-RNAによる形質移入後の非常に効率的で、迅速なインビボタンパク質発現を示す。発明者らは、タンパク質発現が形質移入後から3時間以内までに起こること、および、インビボタンパク質発現が組織へのMOD-RNAの直接注入後に少なくとも4~5日間起こることを示す。重要なことに、発明者らは、インビボタンパク質発現のレベルは組織にインビボで注入されたMOD-RNAの量に対して用量依存的であり、そのことが、所望の量のタンパク質が発現するためにその組織に投与されるMOD-RNAの量を決定することを可能とすることを示す。したがって、合成修飾型RNAが治療法におけるインビボタンパク質発現のために使用されている場合、発現するタンパク質の量を決定する能力は非常に有用である。
【0172】
本明細書の実施例において開示されるように、組織のMOD-RNAによる形質移入はインビボで低免疫応答をもたらす。
【0173】
したがって、本明細書に記載される本発明の1つの態様は、腫瘍(例えば、対象内の腫瘍)においてポリペプチドをインビボで発現させるための方法であって、その対象において血管新生を増強するポリペプチドをコードする合成修飾型RNA分子を含む組成物を投与する工程を含む方法であり、その結果生じる血管新生が前記対象に投与される化学療法剤の効果を上昇させる方法に関する。いくつかの実施形態では、腫瘍はMOD-RNAまたはMOD-RNAを含む組成物と接触させられる。いくつかの実施形態では、化学療法剤はMOD-RNAと同時に投与される。いくつかの実施形態では、組成物は化学療法剤と血管新生を増強するポリペプチドをコードするMOD-RNAの両方を含む。
【0174】
血管新生を増強するポリペプチドは、そのポリペプチドと接触した組織において血管形成の増加を引き起こすあらゆるポリペプチド、その異型体、またはその機能性断片であり得る。血管新生を増強する例示的なポリペプチドは本明細書の表3に記載される。いくつかの実施形態では、その血管新生を増強するポリペプチドはVEGFポリペプチドである。いくつかの実施形態では、そのVEGFポリペプチドはヒトVEGFポリペプチドである。
【0175】
本明細書に記載される本発明の1つの態様は、対象の腫瘍においてヘッジホッグシグナル伝達を増強するポリペプチドの発現を阻害することにより腫瘍を治療するための方法であって、ヘッジホッグシグナル伝達を増強するポリペプチドの発現の合成修飾型RNA分子アンチセンス阻害剤を含む組成物対象に投与する工程を含む方法であり、ヘッジホッグシグナル伝達の阻害により線維形成性組織が減少または線維形成性組織の増殖が減少することになり、その結果、前記対象に投与される化学療法剤の効果が上昇する方法に関する。いくつかの実施形態では、腫瘍はMOD-RNAまたはMOD-RNAを含む組成物と接触させられる。いくつかの実施形態では、化学療法剤はMOD-RNAと同時に投与される。いくつかの実施形態では、組成物は化学療法剤と血管新生を増強するポリペプチドをコードするMOD-RNAの両方を含む。
【0176】
「ヘッジホッグシグナル伝達経路(Hedgehog signaling pathway)」、「ヘッジホッグ経路」および「ヘッジホッグシグナル伝達経路(Hedgehog signal transduction pathway)」という用語は全て、何よりもヘッジホッグ、スムーズンド、Ptch1、およびGliが通常介在し、遺伝子発現の変化およびヘッジホッグ活性に典型的な他の表現型の変化をもたらす一連の事象を指すために使用される。下流の構成要素の活性化はヘッジホッグタンパク質が無い場合であってもヘッジホッグ経路を活性化することができる。例えば、スムーズンドの過剰発現はヘッジホッグが無い場合にその経路を活性化し、GliおよびPtch1の遺伝子発現は活性があるヘッジホッグシグナル伝達経路の指標である。したがって、本明細書に記載される化合物は、ヘッジホッグシグナル伝達のレベルを低下させるために使用することができる。
【0177】
ヘッジホッグシグナル伝達を増強するポリペプチドは、活性が有ると、ヘッジホッグシグナル伝達経路が伝播するシグナル伝達を増大する;またはヘッジホッグシグナル伝達の下流の標的である;またはヘッジホッグシグナル伝達経路のメンバーの発現もしくは活性を増加させるあらゆるポリペプチドであり得る。いくつかの実施形態では、ヘッジホッグシグナル伝達を増強するポリペプチドはヘッジホッグ(SHH;NCBI Ref Seq;NP_000184;配列番号087);スムーズンド(Smo;NCBI Ref Seq;NP_005622;配列番号088);パッチド(PTCH1;NCBI Ref Seq;NP_000255;配列番号089)またはGli(NCBI Ref Seq;NP_001153517;配列番号090)であり得る。いくつかの実施形態では、ヘッジホッグシグナル伝達を増強するポリペプチドはヒトポリペプチドであり得る。
【0178】
あらゆる特定の理論に捉われるつもりはないが、Ptch1は細胞に直接シグナルを伝達することはできず、むしろ、ヘッジホッグシグナル伝達においてPtch1の下流に位置する別の膜結合タンパク質であるスムーズンドの活性を調節することが留意されたい(Marigo et al., (1996) Nature 384: 177~179; Taipale et al. (2002) Nature 418, 892~896)。遺伝子smoはショウジョウバエの全てのセグメントの正確なパターン形成に必要とされるセグメントポラリディー遺伝子である(Alcedo et al., (1996) Cell 86:221232)。smoのヒトホモログが特定されている。例えば、Stone et al. (1996) Nature 384:129~134、およびGenBank受託番号U84401を参照のこと。スムーズンド遺伝子はヘテロ三量体G-タンパク質共役受容体の特徴、すなわち、7回膜貫通領域を有する膜内タンパク質をコードする。このタンパク質はwingless経路のメンバーであるショウジョウバエのFrizzled(Fz)タンパク質に対する相同性を示す。PtcはHh受容体である。Smoを発現する細胞はHhに結合できず,このことはsmoがHhと直接結合しないことを示す(Nusse, (1996) Nature 384: 119120)。むしろ、ソニック・ヘッジホッグ(SHH)のその受容体であるPTCHへの結合がスムーズンドのPTCHによる正常な阻害を妨げると考えられている。活性化スムーズンド変異が散発性基底細胞癌において(Xie, et al., Nature, 1998, 391: 90~92)、そして、中枢神経系の未分化神経外胚葉性腫瘍において(Reifenberger, et al., Cancer Res., 1998, 58:1798~1803)生じることが知られている。
【0179】
ヘッジホッグ遺伝子の脊椎動物のファミリーにはデザート・ヘッジホッグ(Dhh)、ソニック・ヘッジホッグ(Shh)およびインディアン・ヘッジホッグ(Ihh)として知られる、哺乳類において存在する3つのメンバーが含まれ、それらの全てが分泌タンパク質をコードする。これらの様々なヘッジホッグタンパク質はシグナルペプチド、非常に保存的なN末端領域、およびより分化しているC末端ドメインからなる。生化学的研究により、Hh前駆タンパク質の自己タンパク質分解性切断が、後に求核置換において切断されるチオエステル中間産物を介して進行することが示されている。その求核種は、N-ペプチドのC末端に共有結合し、それを細胞表面に連結する小親油性分子である可能性がある。生物学的な意味は重大である。その連結の結果として、局所的に高濃度のN末端ヘッジホッグペプチドがヘッジホッグ産生細胞の表面に形成される。このN末端ペプチドが短期および長期のヘッジホッグシグナル伝達活性に必要かつ十分である。
【0180】
ヘッジホッグシグナル伝達経路は、経膜タンパク質受容体であるパッチド(Ptc)が7回経膜タンパク質であるスムーズンド(Smo)の活性を阻害する場合に不活性である。Hhシグナル伝達の下流の構成要素である転写因子Gliはプロセッシングを受けて抑制因子型になり、そして、活性化型の核内蓄積は、FusedおよびSuppressor of fused(Sufu)を含む細胞質タンパク質との相互作用を介して妨げられる。結果として、ヘッジホッグ標的遺伝子の転写活性化が抑制される。その経路の活性化は3つの哺乳類リガンド(Dhh、ShhまたはIhh)のうちのいずれかのPtcへの結合によって開始される。リガンドの結合によってSmoの抑制が逆転し、それによって、活性型の転写因子Gliの核への移動に至るカスケードを活性化する。核内のGliがPtcおよびGli自体を含む標的遺伝子の発現を活性化する。ヘッジホッグシグナル伝達のレベルの上昇は腫瘍と関連がある線維形成性組織の増殖の原因となり得る。
【0181】
いくつかの実施形態では、ヘッジホッグシグナル伝達を増強するポリペプチドの発現を阻害するMOD-RNAは「遺伝子サイレンシング」作用物質(例えば、RNAi分子)である。遺伝子サイレンシング作用物質は、標的mRNAに相補的であり、標的mRNAに結合し、それによって標的遺伝子のmRNAの発現を阻害する核酸配列、修飾型核酸配列、または核酸類似体の配合を含む。本明細書において使用される場合、核酸作用物質(例えば、遺伝子サイレンシング作用物質)の活性への言及における「遺伝子サイレンシング」または「サイレンシングを受けた遺伝子」は、その遺伝子サイレンシング作用物質が存在しない細胞で見られる標的遺伝子のmRNAレベルの少なくとも約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約99%またはそれ以上の細胞での標的遺伝子のmRNAレベルの減少を指す。1つの好ましい実施形態では、mRNAレベルは少なくとも約70%、約80%、約90%、約95%、約99%またはそれ以上減少する。いくつかの実施形態では、遺伝子サイレンシング作用物質はアンチセンスオリゴヌクレオチドであり得る。標的遺伝子が産生するメッセンジャーRNA(mRNA)に結合し、それを不活化し、その遺伝子を効果的に「オフ」にする核酸(DNA、RNAまたは化学的類似体)の鎖を合成することができる。この理由は、mRNAは翻訳されるためには一本鎖でなくてはならないからである。この合成核酸は、その塩基配列が遺伝子のメッセンジャーRNA(mRNA)に対して相補的であり、これは「センス」配列と呼ばれるので、「アンチセンス」オリゴヌクレオチドと呼ばれる(mRNA「5'-AAGGUC-3'」のセンスセグメントはアンチセンスmRNAセグメント「3'-UUCCAG-5'」によってブロックされ得る)。
【0182】
いくつかの実施形態では、遺伝子サイレンシング作用物質は、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよびその修飾型を含む、RNA干渉誘導分子(RNAi)であり得、RNAi作用物質は標的遺伝子の遺伝子発現を停止させる。RNAi分子の例にはdsRNA、shRNAi、siRNA、マイクロRNAi(mRNAi)、アンチセンスオリゴヌクレオチドなどが挙げられるが、これらに限定されない。他の配列も存在し得る。本明細書において使用される場合、「RNAi」という用語は、作用物質がRNAiを引き起こす、例えば、二本鎖RNA(dsRNA)が相同性があるmRNAの特異的な分解を引き起こし、そうして遺伝子産物の発現を抑制する現象を指す(Coburn, G. and Cullen, B. (2002) J. of Virology 76:9225を参照のこと)。この過程は植物、脊椎動物および哺乳類細胞において説明されている。RNAiは、siRNA、shRNA、内在性マイクロRNAおよび人工マイクロRNAを含むが、これらに限定されないあらゆる種類の干渉性RNAによって引き起こされ得る。
【0183】
RNAi作用物質は標的遺伝子(例えば、ヘッジホッグ)またはゲノム配列、またはその断片に対して実質的に相同であり得る。本内容において使用される場合、「相同である」という用語は、標的遺伝子のRNA干渉をもたらすほど標的のmRNAまたはその断片に対して実質的に同一である、十分に相補的である、または類似していると定義される。天然のRNA分子に加えて、標的遺伝子の発現を阻害または干渉するのに適切なRNAにはRNAの誘導体および類似体が含まれる。
【0184】
いくつかの実施形態では、RNAi作用物質は標的mRNAまたはその断片に対して実質的に相同であり得る。非限定的な例として、RNAiは次の遺伝子またはそれらの断片:ヘッジホッグ(例えば、NCBI Ref Seq;NP_000193;配列番号091)、スムーズンド(例えば、NCBI Ref Seq;NP_005631;配列番号092)、パッチド(例えば、NCBI Ref Seq;NP_000264;配列番号093)またはGli(例えば、NCBI Ref Seq;NP_001160045;配列番号094)から発現されるmRNAに対して実質的に相同であり得る。いくつかの実施形態では、ヘッジホッグシグナル伝達を増強するポリペプチドはヒトポリペプチドであり得る。
【0185】
いくつかの実施形態では、真核細胞において内在的に見つかるRNAの形態である一本鎖RNA(ssRNA)は、RNAi分子を形成するために使用することができる。細胞性ssRNA分子にはメッセンジャーRNA(および始原細胞であるプレメッセンジャーRNA)、核内低分子RNA、核小体低分子RNA、トランスファーRNAおよびリボソーマルRNAが含まれる。
【0186】
いくつかの実施形態では、RNAi分子はdsRNAである。二本鎖RNA(dsRNA)はそのdsRNAトリガーに対して相補的である一本鎖RNA(ssRNA)標的の分解を引き起こすことが示されている(Fire A, 1999, Trends Genet 15:358~363)。dsRNAによって引き起こされるRNA干渉(RNAi)の効果は植物、原生動物、線虫および昆虫を含む多数の生物において示されている(Cogoni C. and Macino G,2000, Curr Opin Genet Dev 10:638~643)。
【0187】
いくつかの実施形態では、RNAi分子は低分子干渉RNA(siRNA)である。siRNAは転写後遺伝子サイレンシングを仲介し、そして、哺乳類細胞においてRNAiを誘導するために使用することができる。遺伝子発現のsiRNA依存性転写後サイレンシングは、siRNAによって導かれた部位での標的メッセンジャーRNA分子の切断を伴う。siRNAは化学的に合成することができ、インビトロ転写によって産生することができ、または宿主細胞内で産生することができる。1つの実施形態では、siRNAは約15~約40ヌクレオチド長の、好ましくは約15~約28ヌクレオチドの、より好ましくは約19~約25ヌクレオチド長の、およびより好ましくは約19、20、21、22、または23ヌクレオチド長の二本鎖RNA(dsRNA)分子であり、そして、各鎖に約0、1、2、3、4、または5ヌクレオチドの長さを有する3'および/または5'突出部を含むことができる。その突出部の長さはその2本の鎖の間で独立している、すなわち、一方の鎖の突出部の長さは第二の鎖の突出部の長さに左右されない。siRNA分子は3'ヒドロキシル基を含むこともできる。siRNA分子は一本鎖または二本鎖であり得る。そのような分子は平滑末端になっている、または突出末端(例えば、5'突出末端、3'突出末端)を含むことができる。いくつかの実施形態では、siRNA配列は、アンチセンス鎖の5'末端での結合についての最低の自由エネルギーを有する配列をスキャンすることにより選択される。好ましくは、そのsiRNAは標的メッセンジャーRNA(mRNA)の分解または特異的な転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)を介するRNA干渉を促進することができる。
【0188】
1つの実施形態では、3'突出部は分解に対して安定化され得る。非限定的な例として、RNAはアデノシンヌクレオチドまたはグアノシンヌクレオチドなどのプリンヌクレオチドを含むことにより安定化され得る。あるいは、ピリミジンヌクレオチドの修飾型類似体による置換、例えば、ウリジン2ヌクレオチドの3'突出部の2'-デオキシチミジンによる置換は忍容され、RNAiの効率に影響を与えることがない。2'ヒドロキシルが無いことが、組織培養培地においてその突出部のヌクレアーゼ耐性を著しく増強する。
【0189】
siRNAはまた低分子ヘアピン(ステムループとも呼ばれる)RNA(shRNA)も含む。1つの実施形態では、これらのshRNAは短(例えば、約19~約25ヌクレオチドの)アンチセンス鎖とそれに続く約5~約9ヌクレオチドからなるヌクレオチドループ、および類似するセンス鎖から構成される。あるいは、センス鎖はヌクレオチドループ構造に先行することができ、アンチセンス鎖が続くことができる。これらのshRNAはプラスミド、レトロウイルスおよびレンチウイルスに含まれることができ、そして、例えば、polIII U6プロモーターまたは別のプロモーターから発現させることができる(例えば、Stewart, et al. (2003) RNA Apr;9(4):493~501を参照のこと;参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0190】
その3'末端もしくは5'末端のどちらか、またはそれらの両方に共有結合している様々な「尾部」を有するsiRNA分子およびmiRNA分子は当技術分野において公知でもあり、そして、本発明の方法を用いて送達されるsiRNA分子およびmiRNA分子を安定化するために使用することができる。一般的に述べると、RNA分子の3'末端または5'末端に結合するインターカレート基、様々な種類のレポーター基および親油性基は当業者に周知であり、本発明の方法に従うと有用である。本発明に従うと有用である修飾型RNA分子の調製に適用可能な3'-コレステロール修飾化オリゴヌクレオチドまたは3'-アクリジン修飾化オリゴヌクレオチドの合成についての説明は、例えば、次の論文:Gamper, H. B., Reed, M. W., Cox, T., Virosco, J. S., Adams, A. D., Gall, A., Scholler, J. K., and Meyer, R. B. (1993) Facile Preparation and Exonuclease Stability of 3'-Modified Oligodeoxynucleotides. Nucleic Acids Res. 21 145~150、および Reed, M. W., Adams, A. D., Nelson, J. S., and Meyer, R. B.,Jr. (1991) Acridine and Cholesterol-Derivatized Solid Supports for Improved Synthesis of 3'-Modified Oligonucleotides. Bioconjugate Chem. 2 217~225 (1993)に見出すことができる。
【0191】
遺伝子サイレンシング作用物質がアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはRNAi作用物質である場合、標的配列に対して相同性を有するその作用物質の領域は所与の標的遺伝子配列、例えば、開始コドンの約25ヌクレオチドから50ヌクレオチドまで下流、約50ヌクレオチドから75ヌクレオチドまで下流、または約75ヌクレオチドから100ヌクレオチドまで下流で始まるヘッジホッグのコード配列から選択され得る。ヌクレオチド配列は5'UTRまたは3'UTRおよび開始コドンの近傍の領域を含み得る。アンチセンスオリゴヌクレオチドおよびRNAi作用物質を予測する方法および選択する方法は当技術分野において公知であり、またGENSCRIPT、AMBION、DHARMACON、OLIGOENGINEのウェッブサイトで見出され、そして、米国特許第6,060,248号に記載されている。
【0192】
非限定的な例として、本発明のsiRNA分子を設計する一つの方法はAA(N19)TT(配列番号355)(Nは任意のヌクレオチドであり得る)という23ヌクレオチドの配列モチーフを特定する工程、および少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%または75%のG/C含量を有するヒットを選択する工程を含む。その配列の「TT」部分は任意に選択される部分である。あるいは、そのような配列が見つからない場合、Nが任意のヌクレオチドであり得るNA(N21)というモチーフを使用して検索を拡張することができる。この状況では、センス鎖と3'突出アンチセンス鎖からなる配列組成物に関して、センスsiRNAの3'末端は、対称性の二本鎖部分の形成を可能にするためにTTに変換され得る。その後、アンチセンスsiRNA分子はその23ヌクレオチド配列モチーフの1~21のヌクレオチド位置に対する相補物として合成され得る。
【0193】
遺伝子サイレンシング作用物質は一つの配列だけを標的とすることが好ましい。siRNAなどの遺伝子サイレンシング作用物質の各々は、例えば、発現プロファイリングにより、可能性があるオフ・ターゲット効果についてスクリーニングすることができる。そのような方法は当業者に知られており、そして、例えば、Jackson et al, Nature Biotechnology 6:635~637, 2003に記載される。発現プロファイリングに加えて、オフ・ターゲット効果を有することができる潜在的な配列を特定するために配列データベース中に類似の配列について潜在的な標的配列をスクリーニングすることもできる。例えば、最小で11連続ヌクレオチドからなる配列同一性は非標的化転写物のサイレンシングを導くのに十分である。それ故、可能性がある標的外サイレンシングを避けるために、BLASTなどの任意の公知の配列比較法による配列同一性分析を用いて提唱されている遺伝子サイレンシング作用物質を最初にスクリーニングすることができる。
【0194】
いくつかの実施形態では、遺伝子特異的な遺伝子サイレンシング作用物質を使用する標的遺伝子の発現および/またはノックダウンの評価は、ウエスタンブロット分析または酵素活性検定などの当技術分野において周知である方法によって決定され得る。当業者は、標的mRNAの既知の配列に基づいて他の方法を容易に用意することができる。
【0195】
本明細書に記載される方法および組成物は固形腫瘍、軟組織腫瘍、および腫瘍の転移の治療において有用である。いくつかの実施形態では、化学療法剤はMOD-RNAの後に投与される。本明細書において使用される場合、「腫瘍」は制御されていない増殖を行っている組織塊を指す。腫瘍は癌性腫瘍であり得る。いくつかの実施形態では、腫瘍は、様々な器官系のうちの1つの悪性腫瘍(例えば、肉腫、腺癌、または癌腫)、例えば、肺、乳腺、リンパ系、胃腸(例えば、大腸)、および泌尿生殖管(例えば、腎臓腫瘍、尿路上皮腫瘍、または精巣腫瘍)、膵臓、咽頭、前立腺、および卵巣の悪性腫瘍である。いくつかの実施形態では、腫瘍は間質層を有する腫瘍でありうる。いくつかの実施形態では、癌は非小細胞肺癌である。いくつかの実施形態では、癌は腺癌である。いくつかの実施形態では、癌は膵管腺癌(PDAC)である。腺癌の例には大腸直腸癌、腎細胞癌、肝臓癌、非小細胞肺癌および小腸癌が挙げられるが、これらに限定されない。追加の代表的な固形腫瘍には線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、胃腸系の癌、大腸癌、膵臓癌、乳癌、泌尿生殖器系の癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、セミノーマ、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頚部癌、内分泌系の癌、精巣腫瘍、肺癌腫、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺癌、膀胱癌、上皮性癌、グリオーマ、星状細胞腫、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫瘍、希突起膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、および網膜芽細胞腫が含まれる。
【0196】
本明細書において使用される場合、「化学療法剤」は、異常な細胞増殖を特徴とする疾患の治療において治療的有用性を有するあらゆる化学的作用物質を指す。そのような疾患には腫瘍、新生物および癌ならびに肥厚成長を特徴とする疾患が含まれる。化学療法剤は、本明細書において使用される場合、化学的作用物質および生物学的作用物質の両方を包含する。これらの作用物質は、持続生存のために癌細胞が依存する細胞活動を阻害するように機能する。化学療法剤の分類にはアルキル化/アルカロイド剤、抗代謝剤、ホルモンまたはホルモン類似体、および多方面の抗新生物薬物が含まれる。これらの薬剤の全てではなくともほとんどが癌細胞にとって直接的に有毒であり、免疫刺激を必要としない。1つの実施形態では、化学療法剤は固形腫瘍などの新生物の治療において使用される薬剤である。1つの実施形態では、化学療法剤は放射活性分子である。当業者は使用する化学療法剤を容易に特定することができる(例えば、Slapak and Kufe, Principles of Cancer Therapy, Chapter 86 in Harrison's Principles of Internal Medicine, 14th edition、 Perry et al., Chemotherapy, Ch. 17 in Abeloff, Clinical Oncology 2.sup.nd ed., .COPYRGT. 2000 Churchill Livingstone, Inc、Baltzer L, Berkery R (eds): Oncology Pocket Guide to Chemotherapy, 2nd ed. St. Louis, Mosby-Year Book, 1995、Fischer D S, Knobf M F, Durivage H J (eds): The Cancer Chemotherapy Handbook, 4th ed. St. Louis, Mosby-Year Book, 1993を参照のこと)。
【0197】
いくつかの実施形態では、化学療法剤は細胞傷害性化学療法剤である。「細胞傷害剤」という用語は、本明細書において使用される場合、細胞の機能を阻害もしくは妨害する物質および/または細胞の破壊を引き起こす物質を指す。その用語は放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32およびLuの放射性同位体)、化学療法剤、ならびに、細菌起源、真菌起源、植物起源または動物起源の低分子毒素または酵素的活性毒素などの、断片および/または異型体を含む、毒素を包含することが意図されている。
【0198】
いくつかの実施形態では、化学療法剤はゲムシタビンである。「ゲムシタビン」または「2'-デオキシ-2',2'-ジフルオロシチジン塩酸塩(b-異性体)」は抗腫瘍活性を示すヌクレオシド類似体である。ゲムシタビン塩酸はジェムザール(商標)の商標でEli Lillyが販売している。いくつかの実施形態では、化学療法剤はゲムシタビン、フルオロウラシル、カペシタビン、シプラスチン(ciplastin)、イリノテカン、オキサリプラチン、5-フルオロウラシル、フォリン酸、またはエルロチニブであり得る。いくつかの実施形態では、2つ以上の化学療法剤、例えば、2つの薬剤、3つの薬剤またはそれ以上の薬剤が投与され得る。複数の化学療法剤が別々に、または同時に投与され得る。本明細書に記載される方法において使用され得る化学療法剤の非限定的な例にはシスプラチン、ドキソルビシン、イリノテカン(カンプトテシン11(CPT11))、パクリタキセル、5-フルオロウラシル(5-FU)、カペシタビン(ゼローダTM)、6-メルカプトプリン、ベバシズマブ、メトトレキサート、6-チオグアニン、ペメトレキセド、ラルチトレキセド、アラビノシルシトシンARA-Cシタラビン(シトサール-U(登録商標))、ダカルバジン(DTICDOME@)、アゾシトシン、デオキシシトシン、ピリドミデン(pyridmidene)、フルダラビン(フルダラ(FLUDARA)(登録商標))、クラドラビン(cladrabine)、および2-デオキシ-D-グルコースが挙げられる。化学療法剤のさらなる非限定的な例には、チオテパおよびシトキサン(登録商標)シクロホスファミドなどのアルキル化剤;ブスルファン、イムプロスルファンおよびピポスルファンなどのスルホン酸アルキル類;ベンゾドパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドパ(meturedopa)、およびウレドパ(uredopa)などのアジリジン類;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミドおよびトリメチロロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン類およびメチラメラミン類(methylamelamine);TLK286(TELCYTATM);アセトゲニン類(特にブラタシンおよびブラタシノン);デルタ-9-テトラヒドロカナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標));β-ラパコン;ラパコール;コルヒチン類;ベツリン酸;カンプトテシン(合成類似体のトポテカン(ハイカムチン(登録商標))、CPT-11(イリノテカン、カンプトサル(CAMFFOSAR)(登録商標))、アセチルカンプトテシン、スコポレクチン(scopolectin)、および9-アミノカンプトテシンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン(callystatin);CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼルシンおよびビゼレシン合成類似体を含む);ポドフィロトキシン;ポドフィリン酸;テニポシド;クリプトフィシン類(特にクリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体であるKW-2189およびCB1-TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン(pancratistatin);サルコジクチイン;スポンジスタチン(spongistatin);クロラムブチル、クロルナファジン、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベムビチン(novembichin)、フェネステリン、プレドニムスチン、トロフォスファミド、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード類;カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、およびラニムスチンなどのニトロソウレア類;クロドロネートなどのビスホスホネート類、;エンジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特にカリケアマイシンガンマIIおよびカリケアマイシンオメガII(例えば、Agnew,Chem Intl. Ed. Engl.,33: 183~186 (1994)を参照のこと)およびアナマイシン、AD32、アルカルビシン(alcarubicin)、ダウノルビシン、デクスラゾキサン、DX-52-1、エピルビシン、GPX-100、イダルビシン、KRN5500、メノガリルなどのアントラサイクリン類、ジネマイシンAを含むジネマイシン、エスペラマイシン、ネオカルジノスタチンクロモフォアおよび関連のクロモタンパク質エンジイン抗生物質クロモフォア、アクラシノマイシン類、アクチノマイシン、オートラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン類、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシニス、ダクチノマイシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソL-ノルロイシン、アドリアマイシン(登録商標)ドキソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-プロリノ-ドキソルビシン、リポソーム性ドキソルビシン、およびデオキシドキソルビシンを含む)、エソルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン類などのマイトマイシンC、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン類、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメックス、ジノスタチン、およびゾルビシンなどの抗生物質;デノプテリン、プテロプテリン、およびトリメトレキサートなどの葉酸類似体;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、およびチオグアニンなどのプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルウリジン、エノシタビン、およびフロクスウリジンなどのピリミジン類似体;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、およびテストラクトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、およびトリロスタンなどの抗副腎剤;フォリン酸(ロイコボリン)などの葉酸補充剤;アセグラトン;アリムタ(ALIMTA)(登録商標)、LY231514ペメトレキセド、メトトレキサートのようなジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤、5-フルオロウラシル(5-FU)ならびにUFT、S-lおよびカペシタビンのようなそのプロドラッグなどの抗代謝剤、ならびにラルチトレキセド(TOMUDEX(登録商標)、TDX)などのチミジレートシンターゼ阻害剤およびグリシンアミドリボヌクレオチドホルミルトランスフェラーゼ阻害剤のような抗葉酸抗新生物剤;エニルウラシルなどのジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼの阻害剤;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキサート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルシン;ジアジコン;エルホミチン(elfomithine);酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン(lonidainine);マイタンシンおよびアンサマイトシン類などのマイタンシノイド類;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール(mopidanmol);ニトラエリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;2-エチルヒドラジン;プロカルバジン;PSKS多糖複合体(JHSNaturalProducts、ユージーン、オレゴン州);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2',2"トリクロロトリエチルアミン;トリコテカセン類(特にT-2トキシン、ベラクリン(verracurin)A、ロリジンAおよびアングイジン);ウレタン;ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標));ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド類およびタキサン類、例えば、TAXOL(登録商標)パクリタキセル(Bristol-Myers Squibb Oncology、プリンストン、ニュージャージー州)、ABRAXANETM Cremophorフリー、パクリタキセルのアルブミン結合ナノ粒子製剤(American Pharmaceutical Partners、シャンバーグ、イリノイ州)、およびTAXOTERE(登録商標)ドセタキセルクロラムブシル(Rhone-Poulenc Rorer、アントニー、フランス);クロランブシル(chloranbucil);6-チオグアニン;メルカプトプリン;プラチナ;シスプラチン、オキサリプラチンおよびカルボプラチンなどのプラチナ類似体またはプラチナ系類似体;ビンブラスチン(VELBAN(登録商標));エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン(オンコビン(登録商標));ビンカアルカロイド;ビノレルビン(ナベルビン(登録商標));ノバントロン;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチロミフィン(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド;上記のもののいずれかの薬学的に許容可能な塩、酸または誘導体;ならびにシクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、およびプレドニソロンからなる併用療法の略語であるCHOP、および5-FUおよびロイコボリンとオキサリプラチン(ELOXATINTM)を併用する治療計画の略語であるFOLFOXなどの上記のもののうちの2つ以上からなる組合せが挙げられる。
【0199】
いくつかの実施形態では、MOD-RNAは腫瘍の直接注入により組織に送達される。本明細書において開示されるように、MOD-RNAを含む組成物の組織への直接注入は約3日以内にそのMOD-RNAからの強固なタンパク質発現をもたらすことができ、発現は約4~5日間続き得る。
【0200】
いくつかの実施形態では、MOD-RNAは当業者に知られている任意の方法により組織(例えば、腫瘍)に送達することができ、そして、例えば、カテーテルによる送達を含むことができ、そのカテーテルは、MOD-RNA組成物を標的組織に送達するための永久カテーテルまたは一時的カテーテルであり得る。いくつかの実施形態では、MOD-DNAは内視鏡を使用して送達される。いくつかの実施形態では、カテーテルや内視鏡による送達のために、そのカテーテルや内視鏡は装着型カメラを有することができ、撮影によって臨床医がMOD-RNAを含む組成物を所望の組織位置へ正確に送達することを助けることができる。
【0201】
いくつかの実施形態では、本明細書において開示されるMOD-RNAを含む組成物は、埋め込み型装置を使用して標的組織に送達することができる。いくつかの実施形態では、埋め込み型装置は薬物送達装置であり、その薬物送達装置MOD-RNA組成物を標的組織に送達するための送達用カテーテルを含む。
【0202】
いくつかの実施形態では、MOD-RNAは融合タンパク質、例えば、VEGFを特定の細胞に標的化するために標的化タンパク質にVEGFが融合されている融合タンパク質をコードすることができる。いくつかの実施形態では、VEGFを内皮細胞に標的化することが望ましい場合、MOD-RNAはVEGF-vWF融合タンパク質をコードすることができ、それでは、vWFはVEGFを内皮細胞に標的化するためのホーミングペプチドとして機能する。他の標的化ペプチドおよびホーミングペプチドは本発明に包含される。
【0203】
いくつかの例では、MOD-RNAに分泌タンパク質をコードさせることが望ましい。そのような場合では、MOD-RNAはタンパク質の分泌を容易にする分泌シグナル配列を含むタンパク質をコードする。例えば、MOD-RNAが目的のタンパク質として血管新生性タンパク質をコードする場合、当業者であれば、天然のシグナル配列を有する血管新生性タンパク質、例えば、VEGFを選択することができるか、ルーチンの遺伝子操作を用いてそのような配列を含むように遺伝子産物を修飾することができる(Nabel et al., 1993を参照のこと)。
【0204】
あるいは、いくつかの実施形態では、MOD-RNAは修飾されて、標的組織の特定の細胞種にMOD-RNAを標的化するために、本明細書において開示されるように付加された特定の標的化成分を有することができる。いくつかの実施形態では、その成分はMOD-RNAに直接付加された標的化成分、または代わりに、間接的に付加された標的化成分であることができ、例えば、そのMOD-RNAがリポソームまたはナノ粒子中に製剤される場合、そのリポソームまたはナノ粒子の表面は、組織内の特定の細胞によるMOD-RNAの取込を管理するための標的化成分を含むことができる。
【0205】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法および組成物は腫瘍の治療に関する。そのような治療の医学的適応には癌の診断が含まれる。癌を診断する方法は医療分野の当業者に周知である。非限定的な例として、PDACは、無痛性黄疸、背中へと広がる心窩部痛、体重減少、吐き気、および掻痒症を含み得る症状を特徴とする。診断は、例えば、腹部動悸、超音波、PDACの血清学的マーカー(例えば、CA19-9)のレベル上昇の検出、および/または、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるBortesi et al. Surgical Pathology (2011) 4に記載されるような、対象からの生検試料もしくは切除試料の組織学的検査を含む検査に基づいて行われ得る。治療の効力は、本明細書に記載される方法に従う治療を受けていない対象と比べた腫瘍体積の減少、腫瘍の成長の低下、または転移もしくは腫瘍増殖の低下などの臨床的に受け入れられている基準によってモニターすることができる。
【0206】
いくつかの実施形態では、腫瘍の治療のための少なくとも1つの合成修飾型RNA(MOD-RNA)を含む組成物の投与の効果は、限定されないが、次の基準、すなわち血管新生の増加または線維形成性組織の減少または腫瘍の線維形成性組織の増殖速度の低下のうちの1つによって実証され得る。血管新生は、例えば、癌のマウスモデルにおいて肉眼検査およびヘマトキシリン・エオシン染色によって決定され得る。線維形成性組織または腫瘍の線維形成性組織の増殖速度に対する効果は組織学的に決定され得る。
【0207】
いくつかの実施形態では、対象において本明細書に記載されるように癌を治療するためにMOD-RNAを投与する方法は、症状緩和を目的とした減量治療または外科的治療を用いて治療されてもいる対象を治療するために使用することができる。いくつかの実施形態では、減量治療または外科的治療の間にMOD-RNAが投与される。いくつかの実施形態では、減量治療または外科的治療の後にMOD-RNAが投与される。
【0208】
対象に投与されるMOD-RNAの用量
いくつかの実施形態では、目的のタンパク質または作用物質をコードするMOD-RNAを含む組成物の有効量をインビボで所望の組織に送達することができる。いくつかの実施形態では、本発明のMOD-RNAの様々な用量範囲が包含される。いくつかの実施形態では、MOD-RNAは100ng/μlよりも高い(例えば、多い)濃度で送達される。いくつかの実施形態では、インビボで組織に送達される組成物中のMOD-RNAの濃度は少なくとも約0.5μg/μl、または少なくとも約1μg/μl、または少なくとも約2μg/μl、または少なくとも約3μg/μl、または少なくとも約4μg/μl、または少なくとも約5μg/μl、または少なくとも約6μg/μl、または少なくとも約7μg/μl、または少なくとも約8μg/μl、または少なくとも約9μg/μl、または少なくとも約10μg/μl、または少なくとも約12μg/μl、または少なくとも約14μg/μl、または少なくとも約16μg/μl、または少なくとも約18μg/μl、または少なくとも約20μg/μl、または少なくとも約25μg/μl、または少なくとも約30μg/μl、または少なくとも約40μg/μl、または少なくとも約50μg/μl、または約0.5μg/μlと25μg/μlの間の任意の整数の濃度である。いくつかの実施形態では、インビボで組織に送達される組成物中のMOD-RNAの濃度は50μg/μlよりも高く、そして、少なくとも約60μg/μl、または少なくとも約70μg/μl、または少なくとも約80μg/μl、または少なくとも約90μg/μl、または少なくとも約100μg/μl(0.1mg/ml)であり得る、または100μg/μlよりも高くてよい。
【0209】
いくつかの実施形態では、インビボで組織に投与される組成物中のMOD-RNAの用量は約50μg、または約100μg、または約200μg、または約300μg、または約400μg、または約500μg、または約600μg、または約700μg、または約800μg、または約900μg、または約1mg、または約50μgと1mgの間の任意の量のMOD-RNAである。いくつかの実施形態では、インビボで組織に投与される組成物中のMOD-RNAの用量は約100μg/kg体重、または約100μg/kg体重、または約200μg/kg体重、または約300μg/kg体重、または約400μg/kg体重、または約500μg/kg体重、または約600μg/kg体重または約0.7mg/kg体重または約0.8mg/kg体重または約0.9mg/kg体重または約1mg/kg体重である。
【0210】
いくつかの実施形態では、インビボで組織に投与される組成物中のMOD-RNAの用量は約100μg/kg組織重量(例えば、MOD-RNAを送達している組織)、または約100μg/kg組織重量、または約200μg/kg組織重量、または約300μg/kg組織重量、または約400μg/kg組織重量、または約500μg/kg組織重量、または約600μg/kg組織重量、または約0.7mg/kg組織重量または約0.8mg/kg組織重量、または約0.9mg/kg組織重量、または約1mg/kg組織重量である。
【0211】
いくつかの実施形態では、組織に与えられる投薬の頻度はMOD-RNAのインビボ半減期によって決定される。いくつかの実施形態では、半減期はインビボで約48時間であり、それによりMOD-RNAを含む組成物の投与頻度は毎日であり得、またはいくつかの実施形態では、隔日であり得る。いくつかの実施形態では、MOD-RNAからのインビボタンパク質発現は約4~5日間続き得るので、いくつかの実施形態では、MOD-RNAを含む組成物の投与頻度は4日毎、または5日毎、または週毎または10日毎または2週毎であり得る。いくつかの実施形態では、投与頻度は月毎である。
【0212】
1つの実施形態では、インビボで組織に投与される組成物中のMOD-RNAの用量は10~100μg/日の範囲内にある。別の実施形態では、投与量は約50~200μg/日である。別の実施形態では、投与量は50~200μg/日である。いくつかの実施形態では、投与量は約100μg/日である。
【0213】
別の実施形態では、投与量は1日用量である。別の実施形態では、投与量は1週間用量である。別の実施形態では、投与量は1月用量である。別の実施形態では、投与量は1年用量である。別の実施形態では、用量は一連の限定された数の用量のうちの1つである。別の実施形態では、用量は、1回限りの用量である。以下に記載するように、別の実施形態では、本明細書において開示されるMOD-RNAの利点は非修飾型RNAも高いそれらのインビボでの力価であり、それがより少ない用量を使用することを可能にする。
【0214】
さらに、いくつかの実施形態では、MOD-RNAを含む組成物の用量は、組織において複数の異なるタンパク質および/または作用物質をインビボで同時に発現するための複数のMOD-RNA、例えば、少なくとも2つ、または少なくとも約3、または少なくとも約4、または少なくとも約5、または少なくとも約5、または少なくとも約6、または少なくとも約7、または少なくとも約8、または少なくとも約9、または少なくとも約10の異なるMOD-RNAを含む。いくつかの実施形態では、組成物が1つより多くのMOD-RNAを含み、組織がコードされるタンパク質のうちの少なくとも1つをインビボで発現する場合、その組織は異なるMOD-RNAに由来する他のタンパク質のうちの少なくとも1つ、全て、または任意の組合せを発現することもできる。
【0215】
ポリペプチドを発現する合成修飾型RNA
本明細書は、心臓細胞、例えば、心筋細胞の集団をポリペプチドをコードする少なくとも1つの合成修飾型RNA(MOD-RNA)を含む組成物と接触させることによる組織、例えば、心臓組織、または心筋細胞におけるインビボタンパク質発現のための方法を記載する。
【0216】
本明細書において開示される組成物、方法およびキットにおいて使用される合成修飾型RNAは、2010年9月28日に提出された米国特許仮出願第61/387,220号、および2010年4月16日に提出された米国特許仮出願第61/325,003号に記載されており、それらの両方が参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0217】
本明細書において使用される場合、「合成修飾型RNA」という用語は(本明細書においてMOD-RNAとも呼ばれる)、宿主細胞で発現するポリペプチドなどの因子をコードする核酸分子を指し、それは少なくとも1つの修飾ヌクレオシドを含み、その用語が本明細書において使用される場合、少なくとも次の特徴を有する:(i)合成修飾型RNAはインビトロ転写により生成することができ、細胞から単離されない、(ii)合成修飾型RNAは哺乳類(および、好ましくはヒト)細胞においてインビボで翻訳可能である、および(iii)合成修飾型RNAは、同じ配列の合成非修飾型RNAと比較して、それが導入されている、または接触している細胞において自然免疫応答またはインターフェロン応答を誘発しない、または著しく軽減された自然免疫応答またはインターフェロン応答を誘発する。本明細書に記載されるような合成修飾型RNAは標的細胞または組織におけるインビボでの反復形質移入を可能にする、すなわち、本明細書に記載されるような合成修飾型RNA分子によってインビボで形質移入された細胞または細胞集団は自然免疫応答またはインターフェロン応答を顕著に誘導することなくそのような合成修飾型RNAでの反復形質移入を許容する。上記の合成修飾型RNA分子についてのこれら3つの主要な基準は以下により詳細に説明されている。
【0218】
第一に、合成修飾型RNAは鋳型DNAのインビトロ転写によって生成可能でなくてはならない。鋳型を生成する方法は標準的な分子クローニング技術を用いる当業者にとって周知である。制限エンドヌクレアーゼ切断部位の存在に依存しない鋳型DNAの構築に対する追加的なアプローチ(「スプリント介在性ライゲーション」と呼称される)も本明細書に記載される。転写された合成修飾型RNA高分子は、例えば、キャップまたは他の官能基を付加することにより、転写後にさらに修飾され得る。
【0219】
インビトロ転写に適切であるためには、修飾ヌクレオシドは、MOD-RNAで形質移入されている組織または細胞が発現する少なくとも1つのRNAポリメラーゼ酵素によって基質として認識されなくてはならない。一般に、天然のG、A、U、およびCヌクレオシド塩基は互いにかなり異なることを少なくとも部分的な理由として、RNAポリメラーゼ酵素は様々なヌクレオシド塩基修飾を許容することができる。したがって、本明細書に記載される合成修飾型RNAの生成に使用される修飾ヌクレオシド塩基の構造は一般にその修飾ヌクレオシドの糖-リン酸部分よりも多様であり得る。そうは言っても、RNAポリメラーゼによる転写が可能なリボースとリン酸が修飾されているヌクレオシドまたはヌクレオシド類似体は当技術分野において公知である。本明細書に記載される態様のいくつかの実施形態では、RNAポリメラーゼはファージのRNAポリメラーゼである。修飾ヌクレオチドであるシュードウリジン、m5U、s2U、m6A、およびm5CはファージのRNAポリメラーゼを使用する転写に適合することが知られているが、一方、N1-メチルグアノシン、N1-メチルアデノシン、N7-メチルグアノシン、2'-)-メチルウリジン、および2'-O-メチルシチジンは適合しない。修飾ヌクレオシドを受容するポリメラーゼは当業者に知られている。
【0220】
合成修飾型RNAを本明細書に記載されるように生成するために修飾型ポリメラーゼを使用することができることも意図される。したがって、例えば、特定の修飾ヌクレオシドを基質として許容または受容するポリメラーゼを、その修飾ヌクレオシドを含む合成修飾型RNAを生成するために使用することができる。
【0221】
第二に、合成修飾型RNAは、真核生物細胞、好ましくは哺乳類細胞、およびより好ましくはヒト細胞の翻訳機構によってインビボで翻訳可能でなくてはならない。インビボ翻訳は一般に少なくともリボソーム結合部位、メチオニン開始コドン、およびポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを必要とする。好ましくは、合成修飾型RNAはまた、5′キャップ、終止コドン、コザック配列およびポリAテールを含む。さらに、真核細胞内のmRNAは分解によって調節されており、そのため、本明細書に記載される合成修飾型RNAは、RNA分解速度を減少させる修飾を組み込むことにより(例えば、合成修飾型RNAの血清中安定性を増加させることにより)さらに修飾して細胞中での半減期を延長させることができる。
【0222】
ヌクレオシド修飾は翻訳に干渉することができる。所与の修飾が翻訳に干渉する限り、それらの修飾は本明細書に記載される合成修飾型RNAによって包含されない。インビボ翻訳アッセイを用い(例えば、インビボマウスcreモデルアッセイにおけるcreリコンビナーゼ遺伝子をコードするMOD-RNA、またはルシフェラーゼをコードするMOD-RNAを使用し、翻訳タンパク質の生物発光アッセイを用いてインビボ発現を検出して)、そして、作製されたポリペプチドの量を、SDS-PAGE、ウエスタンブロット、または免疫化学、生物発光アッセイなどを用いて検出して合成修飾型RNAをその翻訳される能力および翻訳効率について試験することができる。候補修飾を含む合成修飾型RNAの翻訳が、候補修飾を持たないRNAの翻訳と比較され、候補修飾を有する合成修飾型RNAの翻訳が同程度のままである、または増加する場合、その候補修飾は本明細書に記載される組成物および方法に関して使用されることが企図される。フルオロ修飾ヌクレオシドは一般に翻訳可能ではなく、そして、インビトロ翻訳アッセイの負の対照として本明細書において使用することができることに留意されたい。
【0223】
第三に、合成修飾型RNAは形質移入された組織または細胞集団による低下した(または存在しない)自然免疫応答をインビボで、または低下したインターフェロン応答をインビボで誘発する。真核細胞、例えば、哺乳類細胞またはヒト細胞で産生されたmRNAはかなり修飾されており、その修飾によって細胞はその細胞により産生されていないRNAを検出することが可能になる。細胞は翻訳を停止することにより応答し、他には、自然免疫応答またはインターフェロン応答を開始することにより応答する。したがって外部より付加されるRNAが、標的細胞が産生する内在性RNAに生じている修飾を模倣するために修飾され得る限り、その外来性RNAは外来性核酸に対する標的細胞の防御の少なくとも一部を避けることができる。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載され合成修飾型RNAには真核生物/哺乳類/ヒトRNAにおいてインビボで見つかる修飾を含むインビトロで転写されたRNAが含まれる。そのような天然の修飾を模倣する他の修飾は、細胞が許容する合成修飾型RNA分子の生産において有用でもあり得る。これを背景として、または合成修飾型RNAの必要条件についての理解の開始点として、本明細書に記載される合成修飾型RNAにおいて意図されるまたは有用な様々な修飾は、本明細書の以下でさらに考察される。
【0224】
RNAの修飾
いくつかの態様では、本明細書は、ポリペプチドをコードする、またはそれ自体がアンチセンス阻害剤である合成修飾型RNA分子(MOD-RNA)であって、1つ以上の修飾を含む合成修飾型RNA分子であり、その合成修飾型RNA分子の細胞または組織へのインビボでの導入によって、前記ポリペプチドをコードする、該1つ以上の修飾を含まない合成RNA分子と接触している細胞と比較して、その組織の自然免疫応答が低下することになる合成修飾型RNA分子を提供する。
【0225】
本明細書に記載される合成修飾型RNAは、エンドヌクレアーゼおよびエクソヌクレアーゼによる急速な分解を防ぐため、および、そのRNAに対する細胞の自然免疫応答またはインターフェロン応答を避ける、または低下させるために修飾を含む。修飾には、例えば、(a)末端修飾、例えば、5'末端修飾(リン酸化、脱リン酸化、複合体化、逆結合(inverted linkage)など)、3'末端修飾(複合体化、DNAヌクレオチド、逆結合など)、(b)塩基修飾、例えば、修飾型塩基、安定化塩基、脱安定化塩基、または広範囲の相手と塩基対合する塩基、または複合塩基との置換、(c)糖修飾(例えば、2'位または4'位での)または糖の置換、ならびに(d)ホスホジエステル結合の修飾または置換を含むヌクレオシド間結合修飾が含まれるが、これらに限定されない。そのような修飾が翻訳に干渉する限り(すなわち、例えば、ウサギ網状赤血球インビトロ翻訳アッセイにおいてその修飾が無いときと比べて50%以上の低下がもたらされる限り)、その修飾は本明細書に記載される方法および組成物に適切ではない。本明細書に記載される方法について有用な合成修飾型RNA組成物の具体例には、修飾ヌクレオシド間結合または非天然型ヌクレオシド間結合を含むRNA分子が含まれるが、これらに限定されない。修飾ヌクレオシド間結合を有する合成修飾型RNAには、何よりも、ヌクレオシド間結合内にリン原子を持たないRNAが含まれる。他の実施形態では、合成修飾型RNAはそのヌクレオシド間結合内にリン原子を有する。
【0226】
修飾ヌクレオシド間結合の非限定的な例には、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、メチルホスホネートならびに3'-アルキレンホスホネートおよびキラルホスホネートを含む他のアルキルホスホネート、ホスフィナート、3'-アミノホスホルアミデートおよびアミノアルキルホスホルアミデートを含むホスホルアミデート、チオノホスホルアミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、ならびに通常の3'-5'結合を有するボラノホスフェート、これらの2'-5'結合類似体、ならびに隣接するヌクレオシド単位の対が3'-5'から5'-3'へ、または2'-5'から5'-2'へ結合している逆転した極性を有するものが挙げられる。様々な塩、混合塩、および遊離酸型も含まれる。
【0227】
上記のリン含有結合の調製を教示する代表的な米国特許には米国特許第3,687,808号、第4,469,863号、第4,476,301号、第5,023,243号、第5,177,195号、第5,188,897号、第5,264,423号、第5,276,019号、第5,278,302号、第5,286,717号、第5,321,131号、第5,399,676号、第5,405,939号、第5,453,496号、第5,455,233号、第5,466,677号、第5,476,925号、第5,519,126号、第5,536,821号、第5,541,316号、第5,550,111号、第5,563,253号、第5,571,799号、第5,587,361号、第5,625,050号、第6,028,188号、第6,124,445号、第6,160,109号、第6,169,170号、第6,172,209号、第6,239,265号、第6,277,603号、第6,326,199号、第6,346,614号、第6,444,423号、第6,531,590号、第6,534,639号、第6,608,035号、第6,683,167号、第6,858,715号、第6,867,294号、第6,878,805号、第7,015,315号、第7,041,816号、第7,273,933号、第7,321,029号、および米国再発行特許第39464号が含まれるが、これらに限定されず、それらのそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0228】
リン原子を中に含まない修飾ヌクレオシド間結合は、短鎖アルキルヌクレオシド間結合もしくは短鎖シクロアルキルヌクレオシド間結合、ヘテロ原子およびアルキル混合ヌクレオシド間結合もしくはヘテロ原子およびシクロアルキル混合ヌクレオシド間結合、または1つ以上の短鎖ヘテロ原子性ヌクレオシド間結合もしくは複素環ヌクレオシド間結合によって形成されるヌクレオシド間結合を有する。これらはモルホリノ結合(部分的にはヌクレオシドの糖部分から形成される)、シロキサン骨格、スルフィド、スルフオキシドおよびスルホン骨格、ホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格、メチレンホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格、アルケン含有骨格、スルファメート骨格、メチレンイミノおよびメチレンヒドラジノ骨格、スルホネートおよびスルホンアミド骨格、アミド骨格を有するヌクレオシド間結合、ならびにN、O、SおよびCH2構成要素部分を混合して有する他のヌクレオシド間結合を形成する。
【0229】
修飾オリゴヌクレオシドの調製を教示する代表的な米国特許には米国特許第5,034,506号、第5,166,315号、第5,185,444号、第5,214,134号、第5,216,141号、第5,235,033号、第5,64,562号、第5,264,564号、第5,405,938号、第5,434,257号、第5,466,677号、第5,470,967号、第5,489,677号、第5,541,307号、第5,561,225号、第5,596,086号、第5,602,240号、第5,608,046号、第5,610,289号、第5,618,704号、第5,623,070号、第5,663,312号、第5,633,360号、第5,677,437号、および第5,677,439号が含まれるが、これらに限定されず、それらのそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0230】
本明細書に記載される合成修飾型RNAのいくつかの実施形態は、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合を有する核酸およびヘテロ原子性ヌクレオシド間結合を有するオリゴヌクレオシドを含み、特に上で参照した米国特許第5,489,677号の-CH2-NH-CH2-、-CH2-N(CH3)-O-CH2-[メチレン(メチルイミノ)またはMMIとして知られる]、-CH2-O-N(CH3)-CH2-、-CH2-N(CH3)-N(CH3)-CH2-および-N(CH3)-CH2-CH2-[元々のホスホジエステルヌクレオシド間結合が-O-P-O-CH2-と表されている]、ならびに上で参照した米国特許第5,602,240号のアミド骨格を含み、それらの特許の両方がその全体の参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、本明細書に取り上げられる核酸配列は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、上で参照した米国特許第5,034,506号のモルホリノ骨格を有する。
【0231】
本明細書に記載される合成修飾型RNAは1つ以上の置換糖成分を含有することもできる。本明細書に取り上げられる核酸は以下のうちの1つを2'位に含むことができる:H(デオキシリボース);OH(リボース);F;O-、S-、またはN-アルキル;O-、S-、またはN-アルケニル;O-、S-またはN-アルキニル;またはO-アルキル-O-アルキル、そのアルキル、アルケニルおよびアルキニルは置換型または非置換型のC1~C10アルキルまたはC2~C10アルケニルおよびアルキニルであり得る。例となる修飾には、nとmが1から約10までである、O[(CH2)nO]mCH3、O(CH2)nOCH3、O(CH2)nNH2、O(CH2)nCH3、O(CH2)nONH2、およびO(CH2)nON[(CH2)nCH3)]2が含まれる。いくつかの実施形態では、合成修飾型RNAは以下:C1~C10低級アルキル、置換低級アルキル、アルカリル、アラルキル、O-アルカリルまたはO-アラルキル、SH、SCH3、OCN、Cl、Br、CN、CF3、OCF3、SOCH3、SO2CH3、ONO2、NO2、N3、NH2、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリル、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、レポーター基、インターカレーター、RNAの薬物動態特性を改善する基、または合成修飾型RNAの薬力学的特性を改善する基、および類似の特性を有する他の置換基のうちの1つを2'位に含む。いくつかの実施形態では、前記修飾には2'メトキシエトキシ(2'-O-CH2CH2OCH3、2'-O-(2-メトキシエチル)または2'-MOEとしても知られる)(Martin et al., Helv. Chim. Acta, 1995, 78:486~504)、すなわち、アルコキシ-アルコキシ基が含まれる。別の例示的な修飾は2'-ジメチルアミノオキシエトキシ、すなわち、2'-DMAOEとしても知られるO(CH2)2ON(CH3)2基、および2'-ジメチルアミノエトキシエトキシ(当技術分野において2'-O-ジメチルアミノエトキシエチルまたは2'-DMAEOEとしても知られる)、すなわち、2'-O-CH2-O-CH2-N(CH2)2である。
【0232】
他の修飾には、2'-メトキシ(2'-OCH3)、2'-アミノプロポキシ(2'-OCH2CH2CH2NH2)および2'-フルオロ(2'-F)が含まれる。類似の修飾は核酸配列上の他の位置、特に3'末端ヌクレオチドの糖の3'位または2'-5'結合ヌクレオチド内の糖の3'位および5'末端ヌクレオチドの5'位に行うこともできる。合成修飾型RNAはペントフラノシル糖の代わりにシクロブチル成分などの糖模倣物を有することもできる。そのような修飾型糖構造の調製を教示する代表的な米国特許には米国特許第4,981,957号、第5,118,800号、第5,319,080号、第5,359,044号、第5,393,878号、第5,446,137号、第5,466,786号、第5,514,785号、第5,519,134号、第5,567,811号、第5,576,427号、第5,591,722号、第5,597,909号、第5,610,300号、第5,627,053号、第5,639,873号、第5,646,265号、第5,658,873号、第5,670,633号、および第5,700,920号が含まれるが、これらに限定されず,それらのうちのある特定のものは本願と共通しており、それらの特許のそれぞれはその全体の参照により本明細書に組み込まれる。
【0233】
非限定的な例として、本明細書に記載される合成修飾型RNAは、2'-O-メチル修飾ヌクレオシド、5'ホスホロチオエート基を含むヌクレオシド、2'-アミノ-修飾ヌクレオシド、2'-アルキル-修飾ヌクレオシド、モルホリノヌクレオシド、ホスホルアミデートまたは非天然塩基含有ヌクレオシド、またはそれらの任意の組合せを包含する少なくとも1つの修飾ヌクレオシドを含むことができる。
【0234】
本明細書に記載されるこの態様および他の全てのそのような態様のいくつかの実施形態では、少なくとも1つの修飾ヌクレオシドは、5-メチルシチジン(5mC)、N6-メチルアデノシン(m6A)、3,2'-O-ジメチルウリジン(m4U)、2-チオウリジン(s2U)、2'フルオロウリジン、シュードウリジン、2'-O-メチルウリジン(Um)、2'デオキシウリジン(2'dU)、4-チオウリジン(s4U)、5-メチルウリジン(m5U)、2'-O-メチルアデノシン(m6A)、N6,2'-O-ジメチルアデノシン(m6Am)、N6,N6,2'-O-トリメチルアデノシン(m62Am)、2'-O-メチルシチジン(Cm)、7-メチルグアノシン(m7G)、2'-O-メチルグアノシン(Gm)、N2,7-ジメチルグアノシン(m2,7G)、N2,N2,7-トリメチルグアノシン(m2,2,7G)、およびイノシン(I)からなる群より選択される。
【0235】
あるいは、合成修飾型RNAは最大でオリゴヌクレオチドの全長までで、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個またはそれ以上の修飾ヌクレオシドを含むことができる。少なくとも1つの修飾型ヌクレオシドを含む合成修飾型RNA分子は、最低でも、本明細書に記載される修飾を有する1つのヌクレオシドを含む。所与の合成修飾型RNA内の全ての位置が必ずしも均等に修飾されている訳ではなく、実際には、前述の修飾のうちの1つよりも多くが1つの合成修飾型RNA内または合成修飾型RNA内のたった1つのヌクレオシドに組み込まれ得る。しかしながら、分子内の各事例の所与のヌクレオシドが修飾されている(例えば、各シトシンが修飾型シトシン例えば、5mCである)ことが好ましいが、必要とは限らない。しかしながら、所与の合成修飾型RNA分子において、異なる事例の同じヌクレオシドが異なる様に修飾され得ることも意図される(例えば、いくつかのシトシンは5mCとして修飾されており、他のシトシンは2'-O-メチルシチジンまたは他のシトシン類似体として修飾されている)。前記修飾は合成修飾型RNA内の複数の修飾ヌクレオシドのうちのそれぞれについて同一である必要はない。さらに、本明細書に記載される態様のいくつかの実施形態では、合成修飾型RNAは少なくとも2つの異なる修飾ヌクレオシドを含む。本明細書に記載される態様のいくつかのそのような好ましい実施形態では、その少なくとも2つの異なる修飾ヌクレオシドは5-メチルシチジンおよびシュードウリジンである。合成修飾型RNAは修飾ヌクレオシドおよび非修飾ヌクレオシドの両方の混合物を含むこともできる。
【0236】
本明細書において使用される場合、「非修飾型」または「天然」のヌクレオシドまたは核酸塩基はプリン塩基であるアデニン(A)およびグアニン(G)、ならびにピリミジン塩基であるチミン(T)、シトシン(C)およびウラシル(U)を含む。いくつかの実施形態では、合成修飾型RNAは少なくとも1つのヌクレオシド(「塩基」)修飾または置換を含む。修飾ヌクレオシドは他の合成および天然の核酸塩基、例えば、イノシン、キサンチン、ヒポキサンチン、ヌブラリン(nubularine)、イソグアニシン(isoguanisine)、ツベルシジン、2-(ハロ)アデニン、2-(アルキル)アデニン、2-(プロピル)アデニン、2(アミノ)アデニン、2-(アミノアルキル)アデニン、2(アミノプロピル)アデニン、2(メチルチオ)N6(イソペンテニル)アデニン、6(アルキル)アデニン、6(メチル)アデニン、7(デアザ)アデニン、8(アルケニル)アデニン、8-(アルキル)アデニン、8(アルキニル)アデニン、8(アミノ)アデニン、8-(ハロ)アデニン、8-(ヒドロキシル)アデニン、8(チオアルキル)アデニン、8-(チオール)アデニン、N6-(イソペンチル)アデニン、N6(メチル)アデニン、N6,N6(ジメチル)アデニン、2-(アルキル)グアニン、2(プロピル)グアニン、6-(アルキル)グアニン、6(メチル)グアニン、7(アルキル)グアニン、7(メチル)グアニン、7(デアザ)グアニン、8(アルキル)グアニン、8-(アルケニル)グアニン、8(アルキニル)グアニン、8-(アミノ)グアニン、8(ハロ)グアニン、8-(ヒドロキシル)グアニン、8(チオアルキル)グアニン、8-(チオール)グアニン、N(メチル)グアニン、2-(チオ)シトシン、3(デアザ)5(アザ)シトシン、3-(アルキル)シトシン、3(メチル)シトシン、5-(アルキル)シトシン、5-(アルキニル)シトシン、5(ハロ)シトシン、5(メチル)シトシン、5(プロピニル)シトシン、5(プロピニル)シトシン、5(トリフルオロメチル)シトシン、6-(アゾ)シトシン、N4(アセチル)シトシン、3(3アミノ-3カルボキシプロピル)ウラシル、2-(チオ)ウラシル、5(メチル)2(チオ)ウラシル、5(メチルアミノメチル)-2(チオ)ウラシル、4-(チオ)ウラシル、5(メチル)4(チオ)ウラシル、5(メチルアミノメチル)-4(チオ)ウラシル、5(メチル)2,4(ジチオ)ウラシル、5(メチルアミノメチル)-2,4(ジチオ)ウラシル、5(2-アミノプロピル)ウラシル、5-(アルキル)ウラシル、5-(アルキニル)ウラシル、5-(アリルアミノ)ウラシル、5(アミノアリル)ウラシル、5(アミノアルキル)ウラシル、5(グアニジニウムアルキル)ウラシル、5(1,3-ジアゾール-1-アルキル)ウラシル、5-(シアノアルキル)ウラシル、5-(ジアルキルアミノアルキル)ウラシル、5(ジメチルアミノアルキル)ウラシル、5-(ハロ)ウラシル、5-(メトキシ)ウラシル、ウラシル-5オキシ酢酸、5(メトキシカルボニルメチル)-2-(チオ)ウラシル、5(メトキシカルボニル-メチル)ウラシル、5(プロピニル)ウラシル、5(プロピニル)ウラシル、5(トリフルオロメチル)ウラシル、6(アゾ)ウラシル、ジヒドロウラシル、N3(メチル)ウラシル、5-ウラシル(すなわち、シュードウラシル)、2(チオ)シュードウラシル、4(チオ)シュードウラシル、2,4-(ジチオ)シュードウラシル、5-(アルキル)シュードウラシル、5-(メチル)シュードウラシル、5-(アルキル)-2-(チオ)シュードウラシル、5-(メチル)-2-(チオ)シュードウラシル、5-(アルキル)-4(チオ)シュードウラシル、5-(メチル)-4(チオ)シュードウラシル、5-(アルキル)-2,4(ジチオ)シュードウラシル、5-(メチル)-2,4(ジチオ)シュードウラシル、1置換シュードウラシル、1置換2(チオ)-シュードウラシル、1置換4(チオ)シュードウラシル、1置換2,4-(ジチオ)シュードウラシル、1(アミノカルボニルエチレニル)-シュードウラシル、1(アミノカルボニルエチレニル)-2(チオ)-シュードウラシル、1(アミノカルボニルエチレニル)-4(チオ)シュードウラシル、1(アミノカルボニルエチレニル)-2,4-(ジチオ)シュードウラシル、1(アミノアルキルアミノカルボニルエチレニル)-シュードウラシル、1(アミノアルキルアミノ-カルボニルエチレニル)-2(チオ)-シュードウラシル、1(アミノアルキルアミノカルボニルエチレニル)-4(チオ)シュードウラシル、1(アミノアルキルアミノカルボニルエチレニル)-2,4-(ジチオ)シュードウラシル、1,3-(ジアザ)-2-(オキソ)-フェノキサジン-1-イル、1-(アザ)-2-(チオ)-3-(アザ)-フェノキサジン-1-イル、1,3-(ジアザ)-2-(オキソ)-フェンチアジン-1-イル、1-(アザ)-2-(チオ)-3-(アザ)-フェンチアジン-1-イル、7-置換1,3-(ジアザ)-2-(オキソ)-フェノキサジン-1-イル、7-置換1-(アザ)-2-(チオ)-3-(アザ)-フェノキサジン-1-イル、7-置換1,3-(ジアザ)-2-(オキソ)-フェンチアジン-1-イル、7-置換1-(アザ)-2-(チオ)-3-(アザ)-フェンチアジン-1-イル、7-(アミノアルキルヒドロキシ)-1,3-(ジアザ)-2-(オキソ)-フェノキサジン-1-イル、7-(アミノアルキルヒドロキシ)-1-(アザ)-2-(チオ)-3-(アザ)-フェノキサジン-1-イル、7-(アミノアルキルヒドロキシ)-1,3-(ジアザ)-2-(オキソ)-フェンチアジン-1-イル、7-(アミノアルキルヒドロキシ)-1-(アザ)-2-(チオ)-3-(アザ)-フェンチアジン-1-イル、7-(グアニジニウムアルキルヒドロキシ)-1,3-(ジアザ)-2-(オキソ)-フェノキサジン-1-イル、7-(グアニジニウムアルキルヒドロキシ)-1-(アザ)-2-(チオ)-3-(アザ)-フェノキサジン-1-イル、7-(グアニジニウムアルキル-ヒドロキシ)-1,3-(ジアザ)-2-(オキソ)-フェンチアジン-1-イル、7-(グアニジニウムアルキルヒドロキシ)-1-(アザ)-2-(チオ)-3-(アザ)-フェンチアジン-1-イル、1,3,5-(トリアザ)-2,6-(ジオキサ)-ナフタレン、イノシン、キサンチン、ヒポキサンチン、ヌブラリン(nubularine)、ツベルシジン、イソグアニシン(isoguanisine)、イノシニル、2-アザ-イノシニル、7-デアザ-イノシニル、ニトロイミダゾリル、ニトロピラノゾリル、ニトロベンズイミダゾリル、ニトロインダゾリル、アミノインドリル、ピロロピリミジニル、3-(メチル)イソカルボスチリリル、5-(メチル)イソカルボスチリリル、3-(メチル)-7-(プロピニル)イソカルボスチリリル、7-(アザ)インドリル、6-(メチル)-7-(アザ)インドリル、イミダゾピリジニル、9-(メチル)-イミダゾピリジニル、ピロロピリジニル(pyrrolopyrizinyl)、イソカルボスチリリル、7-(プロピニル)イソカルボスチリリル、プロピニル-7-(アザ)インドリル、2,4,5-(トリメチル)フェニル、4-(メチル)インドリル、4,6-(ジメチル)インドリル、フェニル、ナフタレニル、アントラセニル、フェナントラセニル、ピレニル、スチルベニル、テトラセニル、ペンタセニル、ジフルオロトリル、4-(フルオロ)-6-(メチル)ベンズイミダゾール、4-(メチル)ベンズイミダゾール、6-(アゾ)チミン、2-ピリジノン、5ニトロインドール、3ニトロピロール、6-(アザ)ピリミジン、2(アミノ)プリン、2,6-(ジアミノ)プリン、5置換ピリミジン、N2-置換プリン、N6-置換プリン、O6-置換プリン、置換1,2,4-トリアゾール、ピロロ-ピリミジン-2-オン-3-イル、6-フェニル-ピロロ-ピリミジン-2-オン-3-イル、パラ-置換-6-フェニル-ピロロ-ピリミジン-2-オン-3-イル、オルト-置換-6-フェニル-ピロロ-ピリミジン-2-オン-3-イル、ビス-オルト-置換-6-フェニル-ピロロ-ピリミジン-2-オン-3-イル、パラ-(アミノアルキルヒドロキシ)-6-フェニル-ピロロ-ピリミジン-2-オン-3-イル、オルト-(アミノアルキルヒドロキシ)-6-フェニル-ピロロ-ピリミジン-2-オン-3-イル、ビス-オルト-(アミノアルキルヒドロキシ)-6-フェニル-ピロロ-ピリミジン-2-オン-3-イル、ピリドピリミジン-3-イル、2-オキソ-7-アミノ-ピリドピリミジン-3-イル、2-オキソ-ピリドピリミジン-3-イル、またはそれらのあらゆるO-アルキル化またはN-アルキル化誘導体を含む。修飾ヌクレオシドはまた複合体化成分、例えば、リガンドを含む天然塩基も包含する。本明細書において上で論じたように、修飾ヌクレオシドを含有するRNAは宿主細胞内で翻訳可能でなくてはならない(すなわち、その修飾型RNAがコードするポリペプチドの翻訳を妨げない)。例えば、s2Uおよびm6Aを含有する転写物はウサギ網状赤血球溶解物ではほとんど翻訳されないが、一方、シュードウリジン、m5Uおよびm5Cは効率的な翻訳に適合する。さらに、転写物のヌクレアーゼ耐性を上昇させるのに有用な2'-フルオロ-修飾型塩基によって翻訳が非常に非効率的になることが当技術分野において公知である。当業者は、例えば、ウサギ網状赤血球溶解物翻訳アッセイを用いて翻訳を分析することができる。
【0237】
さらなる修飾核酸塩基には米国特許第3,687,808号に開示されるもの、Modified Nucleosides in Biochemistry, Biotechnology and Medicine, Herdewijn, P. ed. Wiley-VCH, 2008に開示されるもの、2009年3月26日に提出された国際特許出願番号第US09/038425号に開示されるもの、The Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering, 858~859ページ, Kroschwitz, J. L, ed. John Wiley & Sons, 1990に開示されるもの、およびEnglisch et al., Angewandte Chemie, International Edition, 1991, 30, 613に開示されるものが含まれる。
【0238】
上記の修飾核酸塩基ならびに他の修飾核酸塩基のうちのある特定のものの調製を教示する代表的な米国特許には上記の米国特許第3,687,808号ならびに米国特許第4,845,205号、第5,130,30号、第5,134,066号、第5,175,273号、第5,367,066号、第5,432,272号、第5,457,187号、第5,457,191号、第5,459,255号、第5,484,908号、第5,502,177号、第5,525,711号、第5,552,540号、第5,587,469号、第5,594,121号、第5,596,091号、第5,614,617号、第5,681,941号、第6,015,886号、第6,147,200号、第6,166,197号、第6,222,025号、第6,235,887号、第6,380,368号、第6,528,640号、第6,639,062号、第6,617,438号、第7,045,610号、第7,427,672号、および第7,495,088号が含まれるが、これらに限定されず、それらのそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれ、および、米国特許第5,750,692号もまた全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0239】
本明細書に記載される合成修飾型RNAに関して使用される別の修飾は、そのRNAの活性、細胞内分布または細胞取込を増強する1つ以上のリガンド、成分または複合化物のRNAへの化学結合を含む。リガンドは、例えば、合成修飾型RNAがインビボで投与される場合、特に有用であり得る。そのような成分には、コレステロール成分(Letsinger et al., Proc. Natl. Acid. Sci. USA, 1989, 86: 6553~6556,その全体が参照により本明細書に組み込まれる)、コール酸(Manoharan et al., Biorg. Med. Chem. Let., 1994, 4:1053~1060,その全体が参照により本明細書に組み込まれる)、チオエーテル、例えば、ベリル-S-トリチルチオール(Manoharan et al., Ann. N.Y. Acad. Sci., 1992, 660:306~309、Manoharan et al., Biorg. Med. Chem. Let., 1993, 3:2765~2770,それらのそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる)、チオコレステロール(Oberhauser et al., Nucl. Acids Res., 1992, 20:533~538,その全体が参照により本明細書に組み込まれる)、脂肪族鎖、例えば、ドデカンジオール残基またはウンデシル残基(Saison-Behmoaras et al., EMBO J, 1991, 10:1111~1118、Kabanov et al., FEBS Lett., 1990, 259:327~330、Svinarchuk et al., Biochimie, 1993, 75:49~54,それらのそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる)、リン脂質、例えば、ジ-ヘキサデシル-rac-グリセロールまたはトリエチル-アンモニウム1,2-ジ-O-ヘキサデシル-rac-グリセロ-3-ホスホネート(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 1995, 36:3651~3654、Shea et al., Nucl. Acids Res., 1990, 18:3777~3783,それらのそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる)、ポリアミン鎖またはポリエチレングリコール鎖(Manoharan et al., Nucleosides & Nucleotides, 1995, 14:969~973,その全体が参照により本明細書に組み込まれる)、またはアダマンタン酢酸(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 1995, 36:3651~3654,その全体が参照により本明細書に組み込まれる)、パルミチル成分(Mishra et al., Biochim. Biophys. Acta, 1995, 1264:229~237,その全体が参照により本明細書に組み込まれる)、またはオクタデシルアミン成分またはヘキシルアミノ-カルボニルオキシコレステロール成分(Crooke et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 1996, 277:923~937,その全体が参照により本明細書に組み込まれる)などの脂質成分が含まれるが、これらに限定されない。
【0240】
本明細書に記載される合成修飾型RNAは5'キャップをさらに含むことができる。本明細書に記載される態様のいくつかの実施形態では、合成修飾型RNAは、5'-5'トリホスフェート結合を用いてRNA分子の5'末端に結合する修飾グアニンヌクレオチドを含む5'キャップを包含する。本明細書において使用される場合、「5'キャップ」という用語には、例えば、5'ジグアノシンキャップ、メチレン-ビス(ホスホネート)成分を有するテトラホスフェートキャップ類似体(例えば、Rydzik, AM et al., (2009) Org Biomol Chem 7(22):4763~76を参照のこと)、ホスホロチオエート修飾を有するジヌクレオチドキャップ類似体(例えば、Kowalska, J. et al., (2008) RNA 14(6):1119~1131を参照のこと)、非架橋酸素の代わりにイオウ置換を有するキャップ類似体(例えば、Grudzien-Nogalska, E. et al., (2007) RNA 13(10): 1745~1755を参照のこと)、N7-ベンジル化ジヌクレオシドテトラホスフェート類似体(例えば、Grudzien, E. et al., (2004) RNA 10(9):1479~1487を参照のこと)、または抗リバースキャップ類似体(例えば、Jemielity, J. et al., (2003) RNA 9(9): 1108~1122 and Stepinski, J. et al., (2001) RNA 7(10):1486~1495を参照のこと)を含む、他の5'キャップ類似体を包含することも意図されている。1つのそのような実施形態では、5'キャップ類似体は5'グアノシンキャップである。いくつかの実施形態では、合成修飾型RNAは5'三リン酸を含まない。
【0241】
5'キャップは翻訳を開始するためのmRNAの認識とリボソームへの結合に重要である。5'キャップはまた5'エクソヌクレアーゼ介在性分解から合成修飾型RNAを保護する。合成修飾型RNAが5'キャップを含むことは絶対条件ではなく、したがって他の実施形態では、合成修飾型RNAは5'キャップを持たない。しかしながら、5'キャップを含む合成修飾型RNAの比較的長い半減期と翻訳効率の上昇のため、5'キャップを含む合成修飾型RNAが本明細書において好ましい。
【0242】
本明細書に記載される合成修飾型RNAは5'および/または3'非翻訳領域(UTR)をさらに含むことができる。非翻訳領域は開始コドン(5')の前および終止コドン(3')の後のRNAの領域であり、それ故、翻訳機構によって翻訳されない。1つ以上の非翻訳領域によるRNA分子の修飾は、非翻訳領域がリボヌクレアーゼおよびRNA分解に関与する他のタンパク質に干渉することができるので、mRNAの安定性を向上することができる。さらに、5'非翻訳領域および/または3'非翻訳領域によるRNAの修飾は、mRNAへのリボソームの結合を変化させる結合タンパク質によって翻訳効率を向上させることができる。RNAの3'UTRによる修飾はそのRNAの細胞質内局在を維持し、その細胞の細胞質において翻訳が起こるようにするために使用することができる。1つの実施形態では、本明細書に記載される合成修飾型RNAは5'UTRまたは3'UTRを含まない。別の実施形態では、合成修飾型RNAは5'UTRまたは3'UTRのどちらかを含む。別の実施形態では、本明細書に記載される合成修飾型RNAは5'UTRおよび3'UTRの両方を含む。1つの実施形態では、5'UTRおよび/または3'UTRは細胞内で高い安定性を有することが知られているmRNAから選択される(例えば、マウスα-グロビン3'UTR)。いくつかの実施形態では、5'UTR、3'UTR、またはそれらの両方が1つ以上の修飾ヌクレオシドを含む。
【0243】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される合成修飾型RNAはコザック配列をさらに含む。「コザック配列」は、開始コドン(AUG)の3塩基上流のRがプリン(アデニンまたはグアニン)であり、その開始コドンにもう一つの「G」が続く、(gcc)gccRccAUGGというコンセンサスを有する真核生物のmRNA上の配列を指す。コザックコンセンサス配列はポリペプチドの翻訳を開始するためにリボソームによって認識される。通常、翻訳開始は、転写物の5'末端の近位にある、翻訳機構が遭遇した最初のAUGコドンで起こる。しかしながら、いくつかの事例では、このAUGコドンは読みもらし(leaky scanning)と呼ばれる過程においてバイパスされることがある。そのAUGコドンの近くにコザック配列が存在することで翻訳開始部位としてそのコドンが強化され、正確なポリペプチドの翻訳が起こる。さらに、開始コドンについてあいまいさがなかったとしても、合成修飾型RNAへのコザック配列の付加により効率的な翻訳が促進される。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載される合成修飾型RNAは、正確な長さのポリペプチドを作製するために、所望の翻訳開始部位にコザックコンセンサス配列をさらに含む。いくつかのそのような実施形態では、コザック配列は1つ以上の修飾ヌクレオシドを含む。
【0244】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される合成修飾型RNAは「ポリ(A)テール」をさらに含み、ポリ(A)テールはアデニンヌクレオチドからなるホモポリマーの3'尾部を指し、その長さは様々であり得(例えば、少なくとも5アデニンヌクレオチド)、そして、最大で数百アデニンヌクレオチドであり得る)。3'ポリ(A)テールを含むことにより合成修飾型RNAを細胞内での分解から保護することができ、そして、それはまた核外局在を促進して翻訳効率を向上させる。いくつかの実施形態では、ポリ(A)テールは1と500の間のアデニンヌクレオチドを含み;他の実施形態では、ポリ(A)テールは少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、少なくとも100、少なくとも110、少なくとも120、少なくとも130、少なくとも140、少なくとも150、少なくとも160、少なくとも170、少なくとも180、少なくとも190、少なくとも200、少なくとも225、少なくとも250、少なくとも275、少なくとも300、少なくとも325、少なくとも350、少なくとも375、少なくとも400、少なくとも425、少なくとも450、少なくとも475、少なくとも500のアデニンヌクレオチドまたはそれ以上のアデニンヌクレオチドを含む。1つの実施形態では、ポリ(A)テールは1と150の間のアデニンヌクレオチドを含む。別の実施形態では、ポリ(A)テールは90と120の間のアデニンヌクレオチドを含む。いくつかのそのような実施形態では、ポリ(A)テールは1つ以上の修飾ヌクレオシドを含む。
【0245】
本明細書に記載される合成修飾型RNAに対する1つ以上の修飾によって、細胞または組織における合成修飾型RNAのインビボでの安定性がより高くなることが意図される。そのような修飾が翻訳を許容し、その修飾を有する合成修飾型RNAに対する細胞の自然免疫応答またはインターフェロン応答を低下させるか、激化させない限り、そのような修飾が本明細書において使用されることが具体的に企図される。一般に、合成修飾型RNAの安定性が高いほど、より多くのタンパク質がその合成修飾型RNAから作製され得る。通常、哺乳類mRNAのAUに富む領域の存在は、転写物のポリ(A)テールの除去を促進するために細胞内タンパク質がAUに富む領域にリクルートされるので、その転写物を不安定化する傾向がある。合成修飾型RNAのポリ(A)テールの除去はRNA分解を上昇させることになり得る。したがって、1つの実施形態では、本明細書に記載される合成修飾型RNAはAUに富む領域を含まない。とりわけ、3'UTRがAUUUA配列エレメントを実質的に持たないことが好ましい。
【0246】
1つの実施形態では、リガンドは、それが組み込まれている合成修飾型RNAの細胞取込、細胞内標的化または半減期を変化させる。いくつかの実施形態では、リガンドは、例えば、そのようなリガンドが無い組成物と比較して、選択された標的組織、例えば、組織または細胞種、または細胞内区画、例えば、ミトコンドリア、細胞質、ペルオキシソーム、リソソームへの上昇した親和性を提供する。好ましいリガンドは合成修飾型RNAからのポリペプチドの発現に干渉することがない。
【0247】
リガンドには、例えば、タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)、低密度リポタンパク質(LDL)、またはグロブリン)、炭水化物(例えば、デキストラン、プルラン、キチン、キトサン、イヌリン、シクロデキストリンまたはヒアルロン酸)、または脂質などの天然物質が含まれ得る。そのリガンドは合成高分子、例えば、合成ポリアミノ酸などの組換え分子または合成分子でもあり得る。ポリアミノ酸の例にはポリリジン(PLL)、ポリLアスパラギン酸、ポリL-グルタミン酸、スチレン-マレイン酸無水物共重合体、ポリ(L-ラクチド-co-グリコリード(glycolied))共重合体、ジビニルエーテル-マレイン酸無水物共重合体、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド共重合体(HMPA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリウレタン、ポリ(2-エチルアクリル酸)、N-イソプロピルアクリルアミド重合体、またはポリホスファジンが挙げられる。ポリアミンの例にはポリエチレンイミン、ポリリジン(PLL)、スペルミン、スペルミジン、ポリアミン、シュードペプチド-ポリアミン、ペプチド模倣性ポリアミン、デンドリマーポリアミン、アルギニン、アミジン、プロタミン、陽イオン性脂質、陽イオン性ポルフィリン、ポリアミンの第4級塩、またはαヘリカルペプチドが挙げられる。
【0248】
リガンドには標的化基、例えば、線維芽細胞などの特定の細胞種に結合する細胞標的化作用物質もしくは組織標的化作用物質(例えば、レクチン、糖タンパク質、脂質またはタンパク質)、または抗体も含まれ得る。いくつかの実施形態では、標的細胞が内皮細胞である場合、内皮細胞標的化作用物質はvWFタンパク質またはその断片である。いくつかの実施形態では、本明細書において開示される方法において有用である他の標的化基は、中でも、例えば、チロトロピン、メラノトロピン、レクチン、糖タンパク質、サーファクタントタンパク質A、ムチン糖鎖、多価ラクトース、多価ガラクトース、N-アセチル-ガラクトサミン、N-アセチル-グルコサミン、多価マンノース、多価フコース、グリコシル化ポリアミノ酸、多価ガラクトース、トランスフェリン、ビスホスホネート、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、脂質、コレステロール、ステロイド、胆汁酸、葉酸、ビタミンB12、ビオチン、またはRGDペプチドまたはRGDペプチド模倣物であり得る。
【0249】
リガンドの他の例には、色素、インターカレート剤(例えば、アクリジン類)、架橋剤(例えば、ソラーレン、マイトマイシンC)、ポルフィリン類(TPPC4、テキサフィリン、サッフィリン(Sapphyrin))、多環芳香族炭化水素(例えば、フェナジン、ジヒドロフェナジン)、人工エンドヌクレアーゼ(例えば、EDTA)、親油性分子s、例えば、コレステロール、コール酸、アダマンタン酸、1-ピレン酪酸、ジヒドロテストステロン、1,3-ビス-O(ヘキサデシル)グリセロール、ゲラニルオキシヘキシル基、ヘキサデシルグリセロール、ボルネオール、メントール、1,3-プロパンジオール、ヘプタデシル基、パルミチン酸、ミリスチル酸、O3-(オレオイル)リトコール酸、O3-(オレオイル)コレン酸、ジメトキシトリチル、またはフェノキサジン)およびペプチド複合化物(例えば、アンテナペディアペプチド、Tatペプチド)、アルキル化剤、アミノ、メルカプト、PEG(例えば、PEG-40K)、MPEG、[MPEG]2、ポリアミノ、アルキル、置換アルキル、放射性標識マーカー、酵素、ハプテン(例えば、ビオチン)、および輸送/吸収促進剤(例えば、アスピリン、ビタミンE、葉酸)が挙げられる。
【0250】
リガンドはタンパク質、例えば、糖タンパク質、またはペプチド、例えば、共リガンドに対して特定の親和性を有する分子、または抗体、例えば、線維芽細胞、またはポリペプチドの産生に有用である他の細胞などの特定の細胞種に結合する抗体であり得る。リガンドにはホルモンおよびホルモン受容体も含まれ得る。それらには、脂質、レクチン、炭水化物、ビタミン、補因子、多価ラクトース、多価ガラクトース、N-アセチル-ガラクトサミン、N-アセチル-グルコサミン多価マンノース、または多価フコースなどの非ペプチド種も含まれ得る。
【0251】
前記リガンドは物質、例えば、薬物であり得、その薬物は、例えば、細胞の細胞骨格を破壊することにより、例えば、細胞の微小管、微小フィラメントおよび/または中間径フィラメントを破壊することにより、その細胞への合成修飾型RNAまたはそれの組成物の取込を増加させることができる。その薬物は、例えば、タキソール、ビンクリスチン、ビンブラスチン、サイトカラシン、ノコダゾール、ジャプラキノリド(japlakinolide)、ラトランクリンA、ファロイジン、スウィンホリドA、インダノシン(indanocine)、またはミオセルビン(myoservin)であり得る。
【0252】
1つの例示的なリガンドは脂質または脂質系分子である。脂質または脂質系リガンドは(a)分解耐性を上昇させることができ、および/または(b)標的の細胞または細胞膜への標的化または輸送を増大させることができる。脂質系リガンドは、例えば、修飾型RNA組成物の標的細胞への結合を調節するために使用することができる。
【0253】
別の態様では、リガンドは成分、例えば、ビタミンであり、それは宿主細胞によって取り込まれる。例となるビタミンにはビタミンA、E、およびKが含まれる。他の例となるビタミンにはビタミンB、例えば、葉酸、B12、リボフラビン、ビオチン、ピリドキサール、または例えば、癌細胞によって取り込まれる他のビタミンもしくは栄養素が含まれる。HSAおよび低密度リポタンパク質(LDL)も含まれる。
【0254】
別の態様では、前記リガンドは細胞透過作用物質、好ましくはヘリカル細胞透過作用物質である。好ましくは、該作用物質は両親媒性である。例となる作用物質はtatまたはアンテノペディア(antennopedia)などのペプチドである。該作用物質がペプチドである場合、それは、修飾することができ、ペプチジル模倣物、逆転異性体、非ペプチドまたはシュード-ペプチド結合、およびD-アミノ酸の使用を含む。該ヘリカル作用物質はαヘリカル作用物質であることが好ましく、それは親油性と疎油性の相を有することが好ましい。
【0255】
いくつかの実施形態では、「細胞透過ペプチド」という用語は細胞、例えば、ヒト細胞などの哺乳類細胞に透過することができ、ならびに、血液脳関門を透過するペプチドである。細胞透過ペプチドは当技術分野において周知であり、それには、例えば、αヘリカル直鎖状ペプチド(例えば、LL-37またはセロピン(Ceropin)P1)、ジスルフィド結合含有ペプチド(例えば、α-ディフェンシン、β-ディフェンシンまたはバクテネクチン)、または1種類もしくは2種類の支配的なアミノ酸しか含まないペプチド(例えば、PR-39またはインドリシジン)、ならびにHIV-1のgp41とSV40ラージT抗原のNLSからなる融合ペプチドドメインに由来するMPG(Simeoniet al., Nucl. Acids Res. 31:2717~2724, 2003)などの二連両親媒性ペプチドが含まれるが、これらに限定されない。
【0256】
合成修飾型RNAの合成
本明細書に記載される合成修飾型RNAは、ここで全体の参照により本明細書に組み込まれる"Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry", Beaucage, S.L. et al. (Edrs.), John Wiley & Sons, Inc., New York, NY, USAに記載される方法のような当技術分野においてよく確立されている方法によって合成および/または修飾することができる。転写方法は本明細書の実施例においてさらに説明される。
【0257】
本明細書に記載される態様の1つの実施形態では、合成修飾型RNAの鋳型は「スプリント介在性ライゲーション」を用いて合成され、スプリント介在性ライゲーションによってDNAコンストラクトの迅速な合成が長鎖オリゴヌクレオチドやdsDNA PCR産物の制御されたコンカテマー化により、連結領域に制限部位を導入する必要なく、可能となる。それは、T7鋳型生成の間に一般的な非翻訳領域(UTR)を遺伝子のコード配列に付加するために使用することができる。スプリント介在性ライゲーションは、オープンリーディングフレームに核局在化配列を付加するため、および野生型のオープンリーディングフレームから点突然変異を有するドミナントネガティブなコンストラクトを作製するために使用することもできる。簡単に説明すると、一本鎖DNAコンポーネントおよび/または変性したdsDNAコンポーネントをアニールして、所望の末端を接続しているスプリントオリゴヌクレオチドにし、その末端を耐熱性DNAリガーゼによりライゲーションし、そして、所望のコンストラクトをPCRにより増幅する。その後、合成修飾型RNAは、RNAポリメラーゼを使用してその鋳型からインビトロで合成される。合成修飾型RNAの合成が完了した後、使用前に鋳型DNAを転写反応から本明細書に記載される方法を用いて除去する。
【0258】
これらの態様のいくつかの実施形態では、合成修飾型RNAはアルカリホスファターゼでさらに処理される。
【0259】
複数の合成修飾型RNA
本明細書に記載される態様のいくつかの実施形態では、複数の異なる合成修飾型RNAがインビボで標的組織、例えば、筋肉組織または心臓組織と接触し、または、それに導入され、そして、所望の標的組織における少なくとも2つのポリペプチド産物の発現が可能となる。いくつかの実施形態では、本明細書において開示される合成修飾型RNA組成物は2つ以上の合成修飾型RNA、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の合成修飾型RNAを含むことができる。いくつかの実施形態では、2つ以上の合成修飾型RNAは所望のポリペプチド産物(例えば、転写因子、細胞表面マーカー、細胞死受容体など)の発現を上昇させることができる。いくつかの実施形態では、組成物が心血管系の疾患または障害の治療のために使用される場合、その組成物はVEGFをコードするMOD-RNAと異なる心臓増強タンパク質をコードする少なくとも1つの他のMOD-RNAを含む。
【0260】
いくつかの実施形態では、複数の異なる合成修飾型RNA、合成修飾型RNA組成物、または複数の異なる合成修飾型RNAを含む培地が所望のセットのポリペプチドの発現を調節するために使用されるとき、その複数の合成修飾型RNAを同時または連続してインビボで標的組織と接触させる、またはそれに導入することができる。他の実施形態では、その複数の合成修飾型RNAを別々にインビボで標的組織と接触させる、またはそれに導入することができる。さらに、各合成修飾型RNAはその特有の投与計画に従ってインビボで標的組織に投与され得る。例えば、1つの実施形態では、組成物は、インビボで標的組織と接触させる複数の合成修飾型RNAを、該複数の合成修飾型RNAが同時に投与されるように、様々な相対量で、または等量で含んで調製され得る。あるいは、1回に1つの合成修飾型RNAをインビボで標的組織に(例えば、連続して)投与することができる。このように、それぞれの目的のポリペプチドにとって望ましいインビボでの発現は、投与する特定の合成修飾型RNAの投与頻度や量を変えることによって、容易に調整することができる。標的組織をインビボで各合成修飾型RNAと別々に接触させることにより、インビボタンパク質発現の効率を低下させ得る合成修飾型RNA間の相互作用を防ぐこともできる。使いやすさのために、および、汚染混入を防ぐために、インビボで異なる合成修飾型RNAからなるカクテルを標的組織に投与し、またはそれと標的組織を接触させ、それにより必要な投薬の回数を減少させ、標的組織へのインビボでの汚染混入の導入の機会を最小化することが好ましい。
【0261】
本明細書に記載される方法および組成物により、1つ以上のポリペプチドのインビボタンパク質発現が、形質移入される各合成修飾型RNAの量を変えることにより所望のレベルに調整されることが可能となる。当業者は、合成修飾型RNAよってコードされるタンパク質のインビボ発現のレベルを、例えば、ウェスタンブロッティング技術または免疫細胞化学技術を用いて容易にモニターすることができる。合成修飾型RNAは、所望のレベルのインビボタンパク質発現を可能とする頻度と用量で標的組織にインビボで投与され得る。本明細書の実施例において開示されるように、インビボで投与されるMOD-RNAの量がインビボタンパク質発現の量を決定し、それ故、発現するタンパク質の量は標的組織にインビボ投与されたMOD-RNAの量に基づいて制御され得る。したがって、それぞれ異なる合成修飾型RNAは、インビボでの標的組織での適切な発現を可能にするためにその特有の用量で投与され得る。さらに、インビボで標的組織に投与される合成修飾型RNAは一時的な性質である(すなわち、時間経過と共に分解する)ので、当業者は、さらなる形質移入を停止し、組織が時間経過と共に合成修飾型RNAを分解することを許容することにより、合成修飾型RNAからのインビボタンパク質発現を容易に除去または停止することができる。合成修飾型RNAは細胞性mRNAと同様な方式で分解する。
【0262】
細胞への合成修飾型RNAの導入
合成修飾型RNAは、インビボで標的組織、例えば、筋肉組織または心臓組織へ、例えば、筋原細胞、または心筋細胞への送達のために、合成修飾型RNAがコードするポリペプチドのインビボ発現が起こるように合成修飾型RNAの細胞内送達を達成するあらゆる方法で導入することができる。本明細書において使用される場合、「細胞を形質移入すること」という用語は、当業者が理解するように、組織への取込または吸収を促進または達成する手段を用いる、その組織の細胞への核酸の導入の過程を指す。その用語が本明細書において使用される場合、「形質移入」はベクターが介在する遺伝子送達、例えば、ウイルス性またはウイルス粒子に基づく送達方法は包含しない。合成修飾型RNAのインビボでの組織への吸収または取込は、自発的な拡散過程もしくは能動的細胞過程を介して、または補助剤もしくは補助装置によって起こり得る。さらなるアプローチは本明細書の以下に記載される、または当技術分野において公知である。
【0263】
いくつかの実施形態では、合成修飾型RNAは標的組織、例えば、筋肉または心臓、例えば、筋原細胞へ、例えば、形質移入、ヌクレオフェクション、リポフェクション、電気穿孔法(例えば、Wong and Neumann, Biochem. Biophys. Res. Commun. 107:584~87 (1982)を参照のこと)、マイクロインジェクション(例えば、合成修飾型RNAの直接注入)、遺伝子銃、細胞融合などによって導入することができる。
【0264】
本明細書において、MOD-RNAは組織、例えば、心臓および筋肉組織にMega Tran1.0形質移入試薬(OriGene Technologies Inc.)を使用してインビボで導入された。あるいは、本明細書において、MOD-RNAは組織、例えば、心臓および筋肉組織にリポフェクタミン(RNAi MAX)を使用してインビボで導入された。送達するMOD-RNAの濃度を最適にすることができるが、1つの実施形態では、発明者らは約100μgのMOD-RNAの組織へのインビボでの送達のために25μg/μlの濃度を用いた。
【0265】
別の実施形態では、合成修飾型RNAは、ナノ粒子、デンドリマー、ヒドロゲル、バイオポリマー、ポリマー、リポソーム、または陽イオン性送達システムなどの薬物送達系を用いて送達することができる。正に帯電した陽イオン性送達システムは(負に帯電したポリヌクレオチドである)合成修飾型RNAの結合を促進し、また、負に帯電した細胞膜での相互作用を増強して効率的な細胞取込を可能とする。陽イオン性の脂質、デンドリマー、またはポリマーは修飾型RNAに結合することができるか、または誘導されて修飾型RNAを包む小胞もしくはミセルを形成することができる(例えば、Kim SH., et al (2008) Journal of Controlled Release 129(2):107~116を参照のこと)。陽イオン性修飾型RNA複合体の作製方法および使用方法は十分に当業者の能力の範囲内である(例えば、Sorensen, DR., et al (2003) J. Mol. Biol 327:761~766、Verma, UN., et al (2003) Clin. Cancer Res. 9:1291~1300、Arnold, AS et al (2007) J. Hypertens. 25:197~205を参照のこと。それらは全体の参照により本明細書に組み込まれる)。
【0266】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるMOD-RNAは、Hubbellらの米国特許第5,410,016号に記載されるものなどの、生物分解性高分子ヒドロゲルに含まれ得る。これらの高分子ヒドロゲルは、対象に送達さすることができ、その高分子が分解するにつれ、時間経過と共に活性化合物が放出される。市販のヒドロゲルは、適切な量の水性ベヒクル中での分散の後に投与することを意図して、乾燥粉末または部分的に水和したペーストのどちらかで供給され得る。これらの粉末は、米国薬局方(U.S.P.)の吸収性ゼラチンスポンジ(例えば、Pfizer,Inc.のGelfoam(登録商標)またはEthicon,Inc.のSurgifoam(商標))、または典型的な化学架橋処理もしくは加熱脱水架橋処理の間に形成されるケーク(例えば、米国特許第6,063,061号、米国特許出願公開第2003/0064109号を参照のこと)などの架橋マトリックスの機械的破砕により形成される。これらのヒドロゲルはゼラチン、コラーゲン、デキストラン、キトサンに基づくことができる。他の組成物、例えば、アルギン酸(米国特許第5,294,446号)、ならびにポリホスファラジン、ポリアクリレート、ポリアンヒドリドおよびポリオルトエステルなどの合成ポリマー、ならびにポリエチレンオキシドとポリプロピレングリコールの混合物などの「ブロック共重合体」(米国特許第5,041,138号、同第5,709,854号、同第5,736,372号)もまた使用される。さらに、米国特許第5,749,874号および同第5,769,899号(両方ともSchwartz et al, 1998)は二成分移植物を開示しており、ここで第1の要素は定着デバイスであり、硬いが生物分解性である物質(ポリグリコール酸、ポリ乳酸、またはそれらの組合せなど)から作製されており、それはヒドロゲル移植物の固定に役立ち、第2の要素はより多孔性で柔軟なマトリックスを含む。
【0267】
ヒドロゲルは乾燥、部分水和または完全水和の状態で投与することができる。完全水和状態では、ヒドロゲルは液体をさらに吸収することができず、そして、完全に膨潤した大きさである。対照的に、乾燥ヒドロゲル組成物または部分水和ヒドロゲル組成物は過剰な吸着能を有する。投与されると、乾燥ヒドロゲルまたは部分水和ヒドロゲルは液体を吸収し、インビボでゼラチンマトリックスからなる膨潤になる。乾燥ヒドロゲルまたは部分水和ヒドロゲルの膨潤は投与との関連で考慮されるべきである。好ましい場合は、高分子ヒドロゲルは中で分散している活性化合物を含むミクロ粒子またはリポソームを有することができ、本明細書に記載されるMOD-RNAまたはペプチドをコードする核酸の制御放出のための別の機序を提供する。
【0268】
本明細書に記載される態様のいくつかの実施形態では、前記組成物は、乳剤、リポソーム、陽イオン性脂質、非陽イオン性脂質、陰イオン性脂質、荷電脂質、浸透増強剤など、合成修飾型RNAの細胞への取込を促進する試薬(形質移入試薬)、または代わりに、合成修飾型RNAに対する、例えば、リガンド、ペプチド、親油性基、もしくは標的化成分を結合するための修飾をさらに含む。
【0269】
合成修飾型RNAの細胞への送達のための処理は必然的に、選択されている形質移入のための特定のアプローチに左右される。1つの好ましいアプローチは、陽イオン性形質移入試薬(以下を参照のこと)と複合体化したRNAを、その細胞用の細胞培養培地へ直接添加することである。
【0270】
第1合成修飾型RNAおよび第2合成修飾型RNAを別々に、異なるタイミングで投与することが本明細書において企図される。したがって、複数の合成修飾型RNAのそれぞれが異なる時間または異なる頻度間隔で投与されてポリペプチドの所望の発現を達成することができる。通常、陽イオン性脂質介在性形質移入を用いて細胞当たり100fg~100pgの合成修飾型RNAが投与される。陽イオン性脂質介在性形質移入は合成修飾型RNAの細胞質への送達に非常に非効率的であるので、他の技術はより少ないRNAを必要とし得る。哺乳類細胞のトランスクリプトーム全体は約1pgのmRNAを構成し、ポリペプチド(例えば、転写因子)は細胞当たり1fg未満の量で生理的効果を有することができる。
【0271】
形質移入試薬
本明細書に記載される態様のある特定の実施形態では、合成修飾型RNAは形質移入またはリポフェクションにより標的組織へインビボで導入され得る。形質移入またはリポフェクションに適切な作用物質には、例えば、リン酸カルシウム、DEAEデキストラン、リポフェクチン、リポフェクタミン、DIMRIE C(商標)、スーパーフェクト(Superfect)(商標)およびエフェクチン(Effectin)(商標)(Qiagen(商標))、ユニフェクチン(unifectin)(商標)、マキシフェクチン(maxifectin)(商標)、DOTMA、DOGS(商標)(トランスフェクタム(Transfectam);ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン)、DOPE(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン)、DOTAP(1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン)、DDAB(ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド)、DHDEAB(N,N-ジ-n-ヘキサデシル-N,N-ジヒドロキシエチルアンモニウムブロミド)、HDEAB(N-n-ヘキサデシル-N,N-ジヒドロキシエチルアンモニウムブロミド)、ポリブレン、ポリ(エチレンイミン)(PEI)などが含まれるが、これらに限定されない(例えば、Banerjee et al., Med. Chem. 42:4292~99 (1999); Godbey et al., Gene Ther. 6:1380~88 (1999)、Kichler et al., Gene Ther. 5:855~60 (1998); Birchaa et al., J. Pharm. 183:195~207 (1999)を参照のこと)。本明細書において開示される実施例では、発明者らはMega Tran1.0形質移入試薬(OriGene Technologies Inc.)を使用してMOD-RNAを組織、例えば、心臓および筋肉組織にインビボで導入した。あるいは、いくつかの実施形態では、MOD-RNAは、リポフェクタミン(RNAi MAX)を使用して組織、例えば、心臓および筋肉組織にインビボで導入された。送達するMOD-RNAの濃度を最適にすることができるが、1つの実施形態では、発明者らは約100μgのMOD-RNAの組織へのインビボでの送達のために25μg/μlの濃度を用いた。
【0272】
合成修飾型RNAは、本明細書において開示されるように、陽イオン性脂質担体(例えば、オリゴフェクタミン(商標))または非陽イオン性脂質系担体(例えば、Transit-TKOTM(商標)、Mirus Bio LLC、マジソン、ウィスコンシン州)との複合体として標的組織にインビボで形質移入され得る。修飾型RNAの標的組織へのインビボでの導入の成功は様々な公知の方法を用いてモニターすることができる。例えば、本明細書において、標的組織のインビボでの一過性形質移入は本明細書において示されるように、緑色蛍光タンパク質(GFP)などの蛍光マーカーなどのレポーターを使用して、または生物発光検出を用いるルシフェラーゼレポーターを使用して、またはβ-galレポーターを使用して、creリコンビナーゼをコードするMOD-RNAで形質移入されているCreリコンビナーゼマウスモデルからシグナルとして示される。標的組織の修飾型RNAによるインビボでの形質移入の成功は目的のポリペプチドのタンパク質発現レベルを、例えば、ウェスタンブロッティングまたは免疫細胞化学により測定することによって、決定することもできる。
【0273】
本明細書に記載される態様のいくつかの実施形態では、合成修飾型RNAは、形質移入試薬を使用して標的組織にインビボで導入される。いくつかの例示的な形質移入試薬には、例えば、リポフェクチン(Junichiら、米国特許第5,705,188号)などの陽イオン性脂質、陽イオン性グリセロール誘導体、およびポリリジン(Lolloら、PCT出願公開第97/30731号)などのポリカチオン高分子が含まれる。市販の形質移入試薬の例には、例えば、中でも、リポフェクタミン(商標)(Invitrogen;カールスバード、カリフォルニア州)、リポフェクタミン2000(商標)(Invitrogen;カールスバード、カリフォルニア州)、293フェクチン(商標)(Invitrogen;カールスバード、カリフォルニア州)、セルフェクチン(Cellfectin)(商標)(Invitrogen;カールスバード、カリフォルニア州)、DMRIE-C(商標)(Invitrogen;カールスバード、カリフォルニア州)、フリースタイル(FreeStyle)(商標)MAX(Invitrogen;カールスバード、カリフォルニア州)、リポフェクタミン(商標)2000CD(Invitrogen;カールスバード、カリフォルニア州)、リポフェクタミン(商標)(Invitrogen;カールスバード、カリフォルニア州)、RNAiMAX(Invitrogen;カールスバード、カリフォルニア州)、オリゴフェクタミン(商標)(Invitrogen;カールスバード、カリフォルニア州)、オプチフェクト(Optifect)(商標)(Invitrogen;カールスバード、カリフォルニア州)、X-tremeGENE Q2形質移入試薬(Roche;グレンザッハーシュトラッセ、スイス)、DOTAPリポソーム性形質移入試薬(グレンザッハーシュトラッセ、スイス)、DOSPERリポソーム性形質移入試薬(グレンザッハーシュトラッセ、スイス)、またはFugene(グレンザッハーシュトラッセ、スイス)、トランスフェクタム(登録商標)試薬(Promega;マジソン、ウィスコンシン州)、トランスファースト(TransFast)(商標)形質移入試薬(Promega;マジソン、ウィスコンシン州)、Tfx(商標)-20試薬(Promega;マジソン、ウィスコンシン州)、Tfx(商標)-50試薬(Promega;マジソン、ウィスコンシン州)、ドリームフェクト(DreamFect)(商標)(OZ Biosciences;マルセイユ、フランス)、エコトランスフェクト(EcoTransfect)(OZ Biosciences;マルセイユ、フランス)、トランスパスa(TransPassa)D1形質移入試薬(New England Biolabs;イプスウィッチ、マサチューセッツ州、米国)、LyoVec(商標)/LipoGen(商標)(Invitrogen;サンディエゴ、カリフォルニア州、米国)、パーフェクチン(PerFectin)形質移入試薬(Genlantis;サンディエゴ、カリフォルニア州、米国)、ニューロポーター(NeuroPORTER)形質移入試薬(Genlantis;サンディエゴ、カリフォルニア州、米国)、ジーンポーター(GenePORTER)形質移入試薬(Genlantis;サンディエゴ、カリフォルニア州、米国)、ジーンポーター2形質移入試薬(Genlantis;サンディエゴ、カリフォルニア州、米国)、サイトフェクチン(Cytofectin)形質移入試薬(Genlantis;サンディエゴ、カリフォルニア州、米国)、バキュロポーター(BaculoPORTER)形質移入試薬(Genlantis;サンディエゴ、カリフォルニア州、米国)、トロガンポータ(TroganPORTER)(商標)形質移入試薬(Genlantis;サンディエゴ、カリフォルニア州、米国)、リボフェクト(RiboFect)(Bioline;トーントン、マサチューセッツ州、米国)、プラストフェクト(PlasFect)(Bioline;トーントン、マサチューセッツ州、米国)、ユニフェクター(UniFECTOR)(B-Bridge International;マウンテンビュー、カリフォルニア州、米国)、シュアフェクター(SureFECTOR)(B-Bridge International;マウンテンビュー、カリフォルニア州、米国)、またはハイフェクト(HiFect)(商標)(B-Bridge International、マウンテンビュー、カリフォルニア州、米国)が挙げられる。
【0274】
他の実施形態では、「デンドリマー」という名称の高分岐有機化合物は、本明細書に記載される合成修飾型RNAなどの外来性核酸に結合し、それを標的組織にインビボで導入するために使用することができる。
【0275】
本明細書に記載される態様の他の実施形態では、非化学的方法の形質移入が企図される。そのような方法には電気穿孔法(放電を受けて細胞の細胞膜にミクロサイズの孔を一時的に作成するために機器を使用する方法)、音波穿孔法(音波力の応用を介した細胞への形質移入)、および光学的形質移入(高度に収束されたレーザーを用いて細胞膜に微小な(直径約1μm)孔を一時的に作成するための方法)が含まれるが、これらに限定されない。他の実施形態では、核酸が不活性固形物のナノ粒子(一般的には金)と結合し、次に標的細胞の核に直接「撃ち込む」ための遺伝子銃の使用、磁性ナノ粒子に結合している外来性核酸を標的細胞に送達するために磁力を用いる形質移入方法を指す「磁石移入(magnetofection)」の使用、または外来性核酸が結合しているカーボンナノファイバーまたはシリコンナノワイヤーなどの細長いナノ構造体によって細胞を刺突することにより行われる「刺突移入(impalefection)」の使用などの粒子系の形質移入方法が企図される。
【0276】
投与された核酸の浸透を増強するために、エチレングリコールおよびプロピレングリコールなどのグリコール類、2-ピロールなどのピロール類、アゾン類、ならびにリモネンおよびメントンなどのテルペン類を含む他の作用物質を利用してよい。
【0277】
送達用製剤および医薬組成物
いくつかの実施形態では、標的組織にインビボで送達するための、本明細書において開示される合成修飾型RNA分子はナノ粒子にカプセル化されている。ナノ粒子包装の方法は当技術分野において周知であり、例えば、Bose Sら(Role of Nucleolin in Human Parainfluenza Virus Type 3 Infection of Human Lung Epithelial Cells. J. Virol. 78:8146. 2004)、Dong Yら(Poly(d,l-lactide-co-glycolide)/montmorillonite nanoparticles for oral delivery of anticancer drugs. Biomaterials 26:6068. 2005)、Lobenberg R.ら(Improved body distribution of 14C-labelled AZT bound to nanoparticles in rats determined by radioluminography. J Drug Target 5:171.1998)、Sakuma S Rら(Mucoadhesion of polystyrene nanoparticles having surface hydrophilic polymeric chains in the gastrointestinal tract. Int J Pharm 177:161. 1999)、Virovic Lら(Novel delivery methods for treatment of viral hepatitis: an update. Expert Opin Drug Deliv 2:707.2005)、およびZimmermann Eら(Electrolyte- and pH-stabilities of aqueous solid lipid nanoparticle (SLN) dispersions in artificial gastrointestinal media. Eur J Pharm Biopharm 52:203. 2001)に記載されている。いくつかの実施形態では、組成物が1つより多くのMOD-RNA分子を含む場合、その特有のナノ粒子製剤および医薬組成物として製剤される各MOD-RNAは複数のMOD-RNAナノ粒子製剤を含む。別の実施形態では、ナノ粒子は、異なるタンパク質をコードする複数の異なる合成修飾型RNAを含むことができる。各方法は本発明の別個の実施形態を表す。
【0278】
いくつかの実施形態では、1つのMOD-RNAは小胞、例えば、リポソーム内で標的組織にインビボで送達される(Langer, Science 249:1527~1533 (1990)、Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer, Lopez-Berestein and Fidler (eds.)内のTreatら,Liss, New York, pp.353~365 (1989)、Lopez-Berestein,同書のpp.317~327を参照のこと;同書を全般的に参照のこと)。いくつかの実施形態では、組成物が1つより多くのMOD-RNA分子を含む場合、各MOD-RNAは、その、それ自体のリポソーム製剤として製剤することができ、そして、医薬組成物は複数のMOD-RNAリポソーム製剤を含むことができる。別の実施形態では、リポソームは、異なるタンパク質をコードする複数の異なる合成修飾型RNAを含むことができる。
【0279】
いくつかの実施形態では、本明細書において開示される、標的組織にインビボで送達するための、少なくとも1つのMOD-RNAを含む組成物は、別の実施形態では、当業者に知られているあらゆる方法、例えば、非経口的、側癌的、筋肉内的、皮内的、皮下的、腹膜内的、心室内的、頭蓋内的、膣内的、または腫瘍内的な方法によって対象に投与され得る。
【0280】
本発明の方法および組成物の別の実施形態では、本明細書において開示される、標的組織にインビボで送達するための、少なくとも1つのMOD-RNAを含む組成物は、注射に適切な形態、すなわち、液体調製物として製剤する。適切な液体製剤には水剤、懸濁剤、分散液剤、乳剤、油剤などが含まれる。本発明の別の実施形態では、有効成分はカプセル、例えば、持続放出性カプセルに製剤される。
【0281】
他の実施形態では、本明細書において開示される、標的組織にインビボで送達するための、少なくとも1つのMOD-RNAを含む医薬組成物は、液体調製物の動脈内注射または筋肉内注射により投与することができる。適切な液体製剤には、水剤、懸濁剤、分散液剤、乳剤、油剤などが含まれる。別の実施形態では、本明細書において開示される、少なくとも1つのMOD-RNAを含む医薬組成物は動脈内投与することができ、したがって、動脈内投与に適切な形態に製剤する。
【0282】
別の実施形態では、標的組織にインビボで送達するための医薬組成物は筋肉内投与することができ、したがって、筋肉内投与に適切な形態に製剤する。筋肉内注射は、本明細書において開示されように、心筋、横隔膜および四肢の筋肉に投与され得る。
【0283】
別の実施形態では、本明細書において開示される、標的組織にインビボで送達するための、少なくとも1つのMOD-RNAを含む医薬組成物は、体表に局所的に投与することができ、したがって、局所投与に適切な形態に製剤する。適切な局所製剤には、ゲル剤、軟膏、クリーム剤、外用水薬、滴剤などが含まれる。局所投与用に、前記組成物またはそれらの生理的に許容される誘導体が調製され、そして、医薬担体を含む、または含まない、生理的に許容可能な希釈剤中の水剤、懸濁剤、または乳剤として適用される。いくつかの実施形態では、眼中でのインビボタンパク質発現が有益である場合、本明細書において開示される、少なくとも1つのMOD-RNAを含む医薬組成物は目薬の形態で製剤される。
【0284】
本明細書において使用される場合、「薬学的に許容可能な担体または希釈剤」は当業者にとって周知である。その担体または希釈剤は、様々な実施形態において、固体の製剤のための固体の担体もしくは希釈剤、液体の製剤のための液体の担体もしくは希釈剤、またはそれらの混合物であり得る。別の実施形態では、固体の担体/希釈剤には、ガム、デンプン(例えば、コーンスターチ、α化デンプン)、糖(例えば、ラクトース、マンニトール、ショ糖、ブドウ糖)、セルロース系物質(例えば、結晶セルロース)、アクリレート(例えば、ポリメチルアクリレート)、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、タルク、またはそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。他の実施形態では、液体製剤用の薬学的に許容可能な担体は水性または非水性の溶液、懸濁液、乳液または油類であり得る。非水性溶媒の例はプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、およびエチルオレエートなどの注射可能な有機エステルである。水性担体には水、生理食塩水および緩衝培地を含む、アルコール性/水性の溶液、乳液または懸濁液が含まれる。油類の例は石油起源、動物起源、植物起源、または合成起源の油類、例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱物油、オリーブ油、ヒマワリ油および魚肝油である。
【0285】
非経口ベヒクル(皮下、静脈内、動脈内、または筋肉内の注射用)には、塩化ナトリウム溶液、リンゲルブドウ糖液、ブドウ糖および塩化ナトリウム液、乳酸リンゲル液、および不揮発性油が含まれる。静脈内ベヒクルには、水分および栄養補充液、リンゲルブドウ糖液に基づくもののような電解質補充液などが含まれる。例は、界面活性剤および他の薬学的に許容可能なアジュバントが添加されている、または添加されていない、水および油類などの無菌液体である。一般に、水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液および関連の糖溶液、およびプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなどのグリコール類は特に注射可能水剤にとって好ましい液体担体である。油類の例は石油起源、動物起源、植物起源、または合成起源の油類、例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱物油、オリーブ油、ヒマワリ油および魚肝油である。
【0286】
別の実施形態では、標的組織にインビボでMOD-RNAを送達するための組成物は、結合剤(例えば、アラビアゴム、トウモロコシデンプン、ゼラチン、カルボマー、エチルセルロース、グアーガム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポビドン)、崩壊剤(例えば、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、アルギン酸、二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、グアーガム、グリコール酸デンプンナトリウム)、様々なpHおよびイオン強度の緩衝液(例えば、トリス塩酸緩衝液、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液)、表面への吸収を防ぐためのアルブミンまたはゼラチンなどの添加物、清浄剤(例えば、ツイーン20、ツイーン80、プルロニックF68、胆汁酸塩)、プロテアーゼ阻害剤、界面活性剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)、透過促進剤、可溶化剤(例えば、グリセロール、ポリエチレングリセロール)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム、ブチル化ヒドロキシアニソール)、安定化剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、増粘剤(例えば、カルボマー、コロイド状二酸化ケイ素、エチルセルロース、グアーガム)、甘味料(例えば、アスパルテーム、クエン酸)、保存剤(例えば、チメロサール、ベンジルアルコール、パラベン類)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム)、流動補助剤(例えば、コロイド状二酸化ケイ素)、可塑剤(例えば、ジエチルフタレート、クエン酸トリエチル)、乳化剤(例えば、カルボマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム)、高分子塗剤(例えば、ポロキサマー類またはポロキサミン類)、被覆および被膜形成剤(例えば、エチルセルロース、アクリレート、ポリメタクリレート)および/またはアジュバントをさらに含む。上記の賦形剤のそれぞれは本発明の別個の実施形態を表す。
【0287】
別の実施形態では、標的組織にインビボでMOD-RNAを送達するための医薬組成物は制御放出性組成物、すなわち、化合物が投与後に時間経過と共に放出される組成物の中にMOD-RNAを含むことができる。制御放出性組成物または持続放出性組成物には親油性デポー(例えば、脂肪酸、蝋、油類)中の製剤が含まれる。別の実施形態では、標的組織にインビボでMOD-RNAを送達するための組成物は即放性組成物、すなわち、全化合物が投与後直ぐに放出される組成物である。
【0288】
別の実施形態では、標的組織にインビボでMOD-RNAを送達するために、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンまたはポリプロリンなどの水溶性ポリマーの共有結合により本発明のMOD-RNAを修飾することができる。その修飾型化合物は対応する非修飾型化合物よりも長い、静脈内注射後の血中半減期を示すことが知られている(Abuchowski et al., 1981; Newmark et al., 1982、およびKatre et al., 1987)。そのような修飾はまた、別の実施形態では、水性溶液でのその化合物の溶解度を上昇させ、凝集を排除し、その化合物の物理的および化学的安定性を向上させ、ならびにその化合物の免疫原性と反応性を大いに低下させる。結果として、そのような高分子化合物アブダクト(abduct)の、非修飾型化合物を用いる投与よりも少ない頻度または少ない用量での投与によって、所望のインビボ生物活性が達成され得る。
【0289】
別の実施形態では、標的組織にインビボでMOD-RNAを送達するための組成物は、中和化された薬学的に許容可能な塩形態を含むように製剤化される。薬学的に許容可能な塩には、例えば、塩酸もしくはリン酸などの無機酸または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などのような有機酸と形成される酸付加塩(ポリペプチドまたは抗体分子の遊離アミノ基と形成される)が含まれる。遊離カルボキシル基から形成される塩は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、または水酸化第二鉄などの無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどのような有機塩基から得ることができる。上記の添加物、賦形剤、製剤および投与方法のそれぞれは本発明の別個の実施形態を表す。
【0290】
合成修飾型RNAまたはその組成物の標的組織へのインビボでのインビボ投与に関する本明細書に記載される態様のいくつかの実施形態では、1つ以上の浸透増強剤、界面活性剤やキレート剤と併せて製剤される。適切な界面活性剤には脂肪酸やそれらのエステルまたは塩、胆汁酸やそれらの塩が含まれる。適切な胆汁酸/胆汁酸塩にはケノデオキシコール酸(CDCA)およびウルソデオキシケノデオキシコール酸(UDCA)、コール酸、デヒドロコール酸、デオキシコール酸、グルコール酸、グリコール酸、グリコデオキシコール酸、タウロコール酸、タウロデオキシコール酸、ナトリウムタウロ-24,25-ジヒドロ-フシデートおよびナトリウムグリコジヒドロフシデートが含まれる。適切な脂肪酸にはアラキドン酸、ウンデカノイン酸、オレイン酸、ラウリル酸、カプリル酸、カプリン酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノレイン酸、リノレン酸、ジカプレート、トリカプレート、モノオレイン、ジラウリン、グリセリル1-モノカプレート、1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オン、アシルカルニチン、アシルコリン、またはモノグリセリド、ジグリセリド、またはそれらの薬学的に許容可能な塩(例えば、ナトリウム塩)が含まれる。いくつかの実施形態では、浸透増強剤の組合せ、例えば、胆汁酸/胆汁酸塩と組み合わせて脂肪酸/脂肪酸塩が使用される。1つの例となる組合せはラウリル酸、カプリン酸およびUDCAのナトリウム塩である。さらなる浸透増強剤にはポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン-20-セチルエーテルが含まれる。
【0291】
本明細書において開示される、少なくとも1つのMOD-RNAを含む組成物は、持続性放出剤形を含む、多数の可能な剤形のうちのいずれかに製剤することができる。前記組成物は、水性培地、非水性培地または混合培地中の懸濁剤として製剤することができる。水性懸濁剤は、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールやデキストランを含む、その懸濁剤の粘度を上昇させる物質をさらに含むことができる。その懸濁剤は安定化剤を含むこともできる。
【0292】
本明細書において開示される、少なくとも1つのMOD-RNAを含む組成物は、合成修飾型RNAの送達のための乳剤として調整および製剤することができる。典型的には乳剤は、通常、直径が0.1μmを超える液滴の形状で1つの液体が別の液体に分散する不均一系である(例えば、Ansel's Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, Allen, LV., Popovich NG., and Ansel HC., 2004, Lippincott Williams & Wilkins (8th ed.), New York, NY、Idson, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p.199、Rosoff, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., Volume 1, p.245; Block in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 2, p.335; Higuchi et al., in Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1985, p.301を参照のこと)。乳剤は、多くの場合、十分に混合され、そして、互いに分散した2つの非混和性液相を含む二相系である。一般的に、乳剤は油中水型(w/o)か水中油型(o/w)のどちらかであり得る。水相が小さい液滴に細かく分割され、大容量の油相中に分散されるとき、その結果生じる組成物は油中水型(w/o)乳剤と呼ばれる。あるいは、油相が小さい液滴に細かく分割され、大容量の水相中に分散されるとき、その結果生じる組成物は水中油型(o/w)乳剤と呼ばれる。乳剤は分散相に加えてその他の成分、および、水相、油相または別の相としてのそれ自体に溶液として存在し得る活性薬物(すなわち、合成修飾型RNA)を含有することができる。乳化剤、安定化剤、顔料および抗酸化剤などの医薬賦形剤も必要に応じて乳剤中に存在することができる。乳剤はまた、例えば、油中水中油型(o/w/o)乳剤および水中油中水型(w/o/w)乳剤の場合のように、2つよりも多い相からなる多重乳剤であり得る。そのような複合型製剤は、多くの場合、単純な二相型乳剤が提供しないある特定の利点を提供する。o/w乳剤の個々の油滴が小さい水滴を取り囲む多重乳剤はw/o/w乳剤を構成する。同様に、油の連続相中で安定化された水の小球の中に取り囲まれた油滴の系はo/w/o乳剤を提供する。乳化剤は合成界面活性剤、天然乳化剤、吸収基剤、および細分散化固形物の4つの区分に大きく分類され得る(例えば、Ansel's Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, Allen, LV., Popovich NG., and Ansel HC., 2004, Lippincott Williams & Wilkins (8th ed.), New York, NY、Idson, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p.199を参照のこと)。
【0293】
乳液製剤に使用される天然乳化剤には、ラノリン、蜜蝋、ホスファチド、レシチンおよびアラビアゴムが含まれる。吸収基剤は、無水ラノリンおよび親水性ワセリンのように、親水性を有するので、水を吸収してw/o乳剤を形成し、しかしそれでも、その半固形物の硬度を保持する。細分化された固形物もまた、特に界面活性剤と組み合わせて、および、粘性調合物中において良好な乳化剤として使用されている。これらには、重金属水酸化物などの極性無機固形物、ベントナイト、アタパルファイト、ヘクトライト、カオリン、モンモリロナイト、コロイド状ケイ酸ナトリウムおよびコロイド状ケイ酸アルミニウムマグネシウムのような非膨潤粘土、顔料ならびに炭素またはトリステアリン酸グリセリルなどの非極性固形物が含まれる。
【0294】
多様な非乳化物質も乳液製剤に含まれ、そして、乳液の特性に寄与する。これらには、脂肪、油類、ワックス、脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪エステル、保湿剤、親水性コロイド、保存剤および抗酸化剤が含まれる(Block, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 335、Idson, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 199)。
【0295】
親水性コロイドまたはヒドロコロイドには、多糖類(例えば、アラビアゴム、寒天、アルギン酸、カラギナン、グアーガム、カラヤガムおよびトラガカント)、セルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースおよびカルボキシプロピルセルロース)および合成高分子(例えば、カルボマー、セルロースエーテルおよびカルボキシビニル高分子)などの天然ガム類および合成高分子が含まれる。これらは水中で分散し、または、膨潤し、分散相の液滴の周囲に強力な界面薄膜を形成することにより、そして、外相の粘度を増大させることにより乳剤を安定化させるコロイド溶液を形成する。
【0296】
上述のように、リポソームはリポソームとそれらの内容物の特定の細胞集団への送達を促進する表面基を含むように調製されてもよい。例えば、リポソームは、抗体または抗体断片、細胞表面受容体との相互作用のための小エフェクター分子、抗原、および他のそのような化合物などの表面基を含むことができる。
【0297】
表面基は、リポソーム性脂質の中に標的化分子で誘導体化した脂質、または予め形成したリポソームの中において標的化分子で誘導体化することができる極性ヘッド化学基を有する脂質を含むことにより、リポソームに組み入れることができる。あるいは、標的化成分は、予め形成したリポソームをリガンド高分子脂質複合体とインキュベートすることにより、予め形成したリポソームに導入することができる。
【0298】
核酸を含む多数のリポソームが当技術分野において公知である。国際公開第96/40062号(Thierryら)は、リポソーム中に高分子量核酸をカプセル化する方法を開示している。米国特許第5,264,221号(Tagawaら)はタンパク質結合性リポソームを開示しており、そして、そのようなリポソームの内容物にはRNA分子が含まれ得ることを主張している。米国特許第5,665,710号(Rahmanら)は、リポソーム中にオリゴデオキシヌクレオチドをカプセル化するある特定の方法を記載している。国際公開第97/04787号(Loveら)は、raf遺伝子を標的とするRNAi分子を含むリポソームを開示している。さらに、核酸を含むリポソーム組成物を調製するための方法は、例えば、米国特許第6,011,020号、同第6,074,667号、同第6,110,490号、同第6,147,204号、同第6,271,206号、同第6,312,956号、同第6,465,188号、同第6,506,564号、同第6,750,016号、および同第7,112,337号に見出すことができる。これらのアプローチのそれぞれは、本明細書に記載される合成修飾型RNAの細胞への送達を提供することができる。
【0299】
本明細書に記載される態様のいくつかの実施形態では、本明細書において開示される、標的組織におけるインビボタンパク質発現のための少なくとも1つのMOD-RNAを含む組成物はナノ粒子中にカプセル化することができる。ナノ粒子包装の方法は当技術分野において周知であり、および、例えば、Bose Sら(Role of Nucleolin in Human Parainfluenza Virus Type 3 Infection of Human Lung Epithelial Cells. J. Virol. 78:8146. 2004)、Dong Yら(Poly(d,l-lactide-co-glycolide)/montmorillonite nanoparticles for oral delivery of anticancer drugs. Biomaterials 26:6068. 2005)、Lobenberg R.ら(Improved body distribution of 14C-labelled AZT bound to nanoparticles in rats determined by radioluminography. J Drug Target 5:171.1998)、Sakuma S Rら(Mucoadhesion of polystyrene nanoparticles having surface hydrophilic polymeric chains in the gastrointestinal tract. Int J Pharm 177:161. 1999)、Virovic Lら(Novel delivery methods for treatment of viral hepatitis: an update. Expert Opin Drug Deliv 2:707.2005)、およびZimmermann Eら(Electrolyte- and pH-stabilities of aqueous solid lipid nanoparticle (SLN) dispersions in artificial gastrointestinal media. Eur J Pharm Biopharm 52:203. 2001)に記載されており、それらの内容は全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0300】
細胞の自然免疫応答またはインターフェロン応答をさらに避ける方法
いくつかの実施形態では、本明細書において開示される、少なくとも1つのMOD-RNAを含む組成物はまた自然免疫介在性応答を低下させるための作用物質を含む。1つの実施形態では、その組成物は、組織の自然免疫応答をさらに低下させるために、インターフェロン除去剤(例えば、可溶性インターフェロン受容体)をコードする修飾型RNAをさらに含む。
【0301】
いくつかの実施形態では、クロロキン(TLRシグナル伝達阻害剤)および2-アミノプリン(PKR阻害剤)などの、細胞において自然免疫応答を阻害する小分子は、本明細書において開示される、インビボタンパク質発現のために少なくとも1つのMOD-RNAを含む組成物と組み合わせて投与することもできる。市販のTLRシグナル伝達阻害剤のいくつかの非限定的な例にはBX795、クロロキン、CLI-095、OxPAPC、ポリミキシンB、およびラパマイシン(全てがINVIVOGEN(商標)から購入可能である)が挙げられる。さらに、2-アミノプリン、BX795、クロロキンおよびH-89などのパターン認識受容体(PRR)(自然免疫シグナル伝達に関与する)の阻害剤は、本明細書において開示される、インビボタンパク質発現のための少なくとも1つのMOD-RNAを含む組成物および方法において使用することもできる。さらに、本明細書において開示される、インビボタンパク質発現のために少なくとも1つのMOD-RNAを含む組成物は、免疫経路のタンパク質を阻害する細胞透過性ペプチドをさらに含むことができる。市販の細胞透過性ペプチドのいくつかの非限定的な例には、Pepin-MYD(INVIVOGEN(商標))またはPepinh-TRIF(INVIVOGEN(商標))が挙げられる。Toll様受容体シグナル伝達経路のオリゴデオキシヌクレオチドアンタゴニストを、免疫シグナル伝達を低下させるために、本明細書において開示される、インビボタンパク質発現のための少なくとも1つのMOD-RNAを含むことに付け加えることもできる。
【0302】
本明細書に記載される合成修飾型RNAで形質移入されている組織の免疫応答を低下させるための別の方法は、NLRX1などの自然免疫の負の調節因子をコードするMOD-RNAを共形質移入することである。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書において開示される、インビボタンパク質発現のための少なくとも1つのMOD-RNAを含む組成物は、NLRX1、NS1、NS3/4AまたはA46Rのうちの1つ以上、または任意の組合せをコードするMOD-RNAを含む。さらに、いくつかの実施形態では、本明細書において開示される、少なくとも1つのMOD-RNAを含む組成物は、組織または対象が生起する自然免疫応答を避けるために、自然免疫系の阻害剤をコードする合成修飾型RNAを含むこともできる。
【0303】
いくつかの実施形態では、当業者は研究の場で抗ウイルス経路に遺伝的に欠損がある細胞(例えば、VISAノックアウト細胞)を使用することにより、細胞が生起する自然免疫応答を避けることができることも本明細書において企図される。
【0304】
別の実施形態では、本明細書において開示される、少なくとも1つのMOD-RNAを含む組成物は免疫抑制剤をさらに含むことができる。本明細書において使用される場合、「免疫抑制薬または免疫抑制剤」という用語は、正常な免疫機能を阻害またはそれに干渉する医用薬剤を包含することが意図されている。本明細書において開示される方法に適した免疫抑制剤の例には、T細胞/B細胞共刺激経路を阻害する薬剤、例えば、米国特許出願公開第20020182211号において開示される、CTLA4経路およびB7経路を介するT細胞およびB細胞の結合に干渉する薬剤が挙げられる。1つの実施形態では、免疫抑制剤はシクロスポリンAである。他の例にはミオフェニレートモフェチル(myophenylate mofetil)、ラパマイシン、および抗胸腺細胞グロブリンが含まれる。1つの実施形態では、免疫抑制薬は、本明細書において開示される、少なくとも1つのMOD-RNAを含む組成物に加えられる、または別個の組成物で少なくとも1つのMOD-RNAを含む組成物の対象への投与と同時、またはその前もしくは後に投与することができる。免疫抑制薬は投与経路と適合する製剤に加えられ、所望の治療効果を達成するのに十分な投薬量で対象に投与される。別の実施形態では、免疫抑制薬は、本明細書において開示されるMOD-RNAに対する寛容性を誘導するのに十分な期間、一時的に投与される。
【0305】
治療薬の特定のためのアッセイにおけるMOD-RNAを使用するインビボタンパク質発現
いくつかの実施形態では、合成修飾型RNAを使用するインビボタンパク質発現のための本明細書において開示される方法および組成物およびキットは、研究者が単一の遺伝子産物または遺伝子産物群についてのタンパク質発現の器官全体および全身性の効果を調査することができるような、そのための基盤を提供する。特定の指向性タンパク質発現を容易に実行する能力が、(遺伝子導入マウス技術および他の動物全体での遺伝的修飾技術と比較して)器官生理および全身性生理の研究における新境地を開く。そのような強力な基盤は生物学者および臨床科学者の間に広範な関心を喚起しうる。いくつかの実施形態では、本発明は、遺伝子発現を活性化および/または不活化する動物モデル、例えば、誘導性タンパク質発現系の動物モデルに合成修飾型RNAをインビボ送達するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、前記方法は、特定の組織や細胞種における遺伝子のノックアウトの効果を見るために、Creリコンビナーゼタンパク質をコードする合成修飾型RNAを動物モデルに送達する。いくつかの実施形態では、動物モデルは大動物モデル、例えば、豚モデルである。
【0306】
例えば、標的組織における特定のタンパク質のインビボタンパク質発現のためのMOD-RNAを、タンパク質発現の上昇の組織の機能に対する効果、および/または動物に対する効果、および/または特定の疾患もしくは障害に対する可能性のある治療薬としての効果を調査するために使用することができる。例えば、病的特徴を有するタンパク質をコードする目的のタンパク質をコードするMOD-RNAを使用することができる。例えば、所望の病的特徴には、疾患病状、例えば、本明細書において開示される心血管疾患病状の原因である変異や多型を有する遺伝子から発現されるタンパク質が含まれる。そのような実施形態では、本明細書において開示される方法は、遺伝子内の変異の組織におけるインビボのタンパク質機能に対する効果を調査するアッセイ、ならびに病的状態を軽減する目的のタンパク質を発現するMOD-RNAをスクリーニングするためのアッセイに存在し得る。それ故、本明細書において開示される方法は、例えば、標的組織における特定のタンパク質のインビボでの発現の効果を評価するために用いることができ、それ故、薬物開発と疾患分析のためのインビボモデルとして機能し、MOD-RNAから発現されるタンパク質治療薬の臨床評価に有用である。
【0307】
様々なMOD-RNA濃度を用いて、複数のアッセイを並行して行い、様々な濃度のMOD-RNAからの様々なレベルのタンパク質発現に対する示差的応答を得ることができる。当技術分野において公知であるように、有効な濃度のMOD-RNAの決定は通常1:10または他の対数尺度の希釈から生じる範囲の濃度を用いる。その濃度は、必要に応じて、2つ目の希釈系列を用いてさらに精緻化することができる。通常、これらの濃度のうちの1つは負の対照、すなわち濃度ゼロまたはその作用物質の検出レベル未満または検出可能な表現型の変化を生じない作用物質濃度以下として機能する。
【0308】
したがって、いくつかの実施形態では、標的組織における特定のタンパク質のインビボタンパク質発現のためのMOD-RNAを、操作されているMOD-RNA、例えば、遺伝子配列などに目的の変異が導入されているMOD-RNAから発現されるタンパク質の効果を調査するために使用することができる。
【0309】
別の実施形態では、分化経路を研究するためのモデルとして標的組織における目的のタンパク質のインビボ発現のためにMOD-RNAを使用することができる。いくつかの実施形態では、目的のMOD-RNAは、例えば、複数の心筋細胞系列、例えば、限定されないが、心筋細胞または平滑筋細胞の系列に沿った心筋細胞の分化に対する特定のタンパク質の効果を調査するために、または心臓始原細胞を異なる亜集団、例えば、限定されないが、心房系、心室系、流出管系および導伝系に分化させる様々なタンパク質の効果を調査するために、心臓組織において発現することができる。
【0310】
したがって、標的組織におけるインビボでの目的のタンパク質のタンパク質発現のためのMOD-RNAを含む、本明細書において開示される組成物は臨床治療、研究、開発、および商業目的における様々な使用法を有することができる。治療目的では、例えば、MOD-RNAが心臓の心臓増強タンパク質をインビボでコードする場合、そのような組成物は、代謝機能の先天異常、病気の影響、または重症の外傷の結果など、考えられるあらゆる要求に応えて心筋の組織維持もしくは修復を増強するために投与することができる。いくつかの実施形態では、対象の心臓への心臓増強タンパク質をコードするMOD-RNAのインビボでの投与は、損傷を受けた組織、または他の場合では、病気の組織にその機能を回復させるのに役立つばかりか、損傷を受けた組織の再構成を促進することができる。
【0311】
目的の心臓増強タンパク質をコードする特定のMOD-RNAの治療上の投与の適切性を決定するために、まず適切な動物モデルにおいてMOD-RNAを試験することができる。複数の実施形態では、目的の心臓増強タンパク質をコードするMOD-RNAの適切性は、そのMOD-RNAを使用する治療の結果として起こる心臓の回復の程度を評価することにより動物モデルにおいて決定することができる。多数の動物モデルがそのような試験に利用可能である。例えば、心臓は、予め冷やしたアルミニウムの棒を前方左側の心室壁に接触させることにより凍傷で冒すことができる(Murry et al., J. Clin. Invest. 98:2209, 1996、Reinecke et al., Circulation 100:193, 1999、米国特許第6,099,832号)。より大きい動物では、凍傷は、液体窒素で冷やした30~50mmの銅の円盤状のプローブを左心室の前方の壁に約20分間配置することによって与えることができる(Chiu et al., Ann. Thorac. Surg. 60:12, 1995)。梗塞は左主冠動脈を結紮することにより誘導することができる(Li et al., J. Clin. Invest. 100:1991, 1997)。傷害を受けた部位は本発明の細胞調製物で治療され、損傷を受けた領域中での細胞の存在について心臓組織は組織学によって調査される。心機能は、左心室の拡張終期圧、最大圧、圧力上昇率、および圧力減衰率のようなパラメータを測定することによりモニターすることができる。
【0312】
いくつかの実施形態では、目的の心臓増強タンパク質をコードするMOD-RNAは、あらゆる生理的に許容可能な賦形剤の状態で投与することができる。目的のタンパク質をコードするMOD-RNAを含む組成物は標的組織、例えば、心臓に注射、カテーテルなどによって送達することができる。
【0313】
いくつかの実施形態では、本明細書において開示される、標的組織でのインビボタンパク質発現のための目的のタンパク質をコードするMOD-RNAを含む組成物は、医薬組成物の形状で供給することができ、ヒトへの投与のために十分な無菌状態で調製した等張賦形剤を含む。細胞賦形剤と組成物のあらゆる添加成分の選択は、投与に用いられる経路と装置に応じて適合させる。本明細書において開示される、標的組織でのインビボタンパク質発現のための目的のタンパク質をコードするMOD-RNAを含む組成物は、治療効果を促進する1つ以上の他の成分を含むこともできる、または、1つ以上の他の成分を伴うこともでき、そして、スキャフォールドの使用ならびに他の細胞の添加を含むこともできる。適切な成分には添充細胞種、特に内皮細胞が含まれる。別の実施形態では、前記組成物は妥当なマトリックススキャフォールドまたは生物分解性のマトリックススキャフォールドを含んでよい。
【0314】
本発明の別の態様は、本明細書において開示される、標的組織でのインビボタンパク質発現のための目的のタンパク質をコードするMOD-RNAを含む組成物の全身性投与または標的解剖学的部位への投与のどちらかに関する。本明細書において開示される、標的組織でのインビボタンパク質発現のための目的のタンパク質をコードするMOD-RNAを含む組成物は、対象の標的組織、例えば、心臓に、もしくはその近傍に導入することができ、例えば、または全身投与、例えば、限定されないが、動脈内投与もしくは静脈内投与することができる。別の実施形態では、本明細書において開示される、標的組織でのインビボタンパク質発現のための目的のタンパク質をコードするMOD-RNAを含む組成物は、対象の心血管系への送達に適切であり得る様々な方法で投与することができ、それには、静脈内投与および動脈内投与、髄腔内投与、心室内投与、実質内投与、頭蓋内投与、嚢内投与、線条体内投与、および黒質内投与を含む非経口投与が包含されるが、これらに限定されない。任意に、本明細書において開示される、標的組織でのインビボタンパク質発現のための目的のタンパク質をコードするMOD-RNAを含む組成物は免疫抑制剤と併せて投与される。
【0315】
本明細書において開示される本明細書において開示される、標的組織でのインビボタンパク質発現のための目的のタンパク質をコードするMOD-RNAを含む組成物は、適正な医療行為に基づき、個々の患者臨床状態、投与部位および投与方法、投与のスケジューリング、患者の年齢、性別、体重および医師に知られている他の要因を考慮に入れて、投与および投薬することができる。本明細書における目的に適した薬学的「有効量」は定義の節において定義されており、当技術分野において公知であるような留意事項によって判定する。その量は、疾患の進行を停止するのに、ならびに/または、生存率の改善もしくはより急速な回復、もしくは症状および当業者により測定基準として選択される他の指標の改善もしくは除去を含むが、これらに限定されない改善を達成するのに有効でなくてはならない。本明細書において開示される、標的組織でのインビボタンパク質発現のための目的のタンパク質をコードするMOD-RNAを含む組成物は対象に投与することができることが行われ得るが、それは次の場所、すなわち病院、診察室、救急診療部、病棟、集中治療室、手術室、カテーテル装着室、および放射線治療質に限定されない。
【0316】
本発明のいくつかの実施形態は、以下の番号を付した段落のうちのいずれかのように定義され得る。
1. 組織においてタンパク質をインビボ発現させるための方法であって、ポリペプチドをコードする合成修飾型RNA分子を含む組成物と該組織を接触させる工程を含み、該組織中の細胞への該合成修飾型RNA分子の導入によって、1つ以上の修飾を含まない該ポリペプチドをコードする合成RNA分子と接触した該組織中の細胞と比較して自然免疫応答が低下するように、該合成修飾型RNA分子が該1つ以上の修飾を含む、前記方法。
2. 前記組織が心臓組織または心臓性組織である、段落1に記載の方法。
3. 前記組織が筋肉組織である、段落1に記載の方法。
4. 前記筋肉組織が骨格筋である、段落3に記載の方法。
5. 前記筋肉組織が心筋である、段落3に記載の方法。
6. 前記筋肉組織が平滑筋である、段落3に記載の方法。
7. 前記組織が膵臓組織である、段落1に記載の方法。
8. 前記合成修飾型RNA分子がベクターにおいて発現しない、段落1に記載の方法。
9. 前記合成修飾型RNA分子を含む前記組成物が裸の合成修飾型RNA分子を含む、段落1に記載の方法。
10. 前記合成修飾型RNA分子を含む前記組成物が、脂質複合体中に存在する少なくとも1つの合成修飾型RNA分子を含む、段落1に記載の方法。
11. 前記組織が哺乳類の組織である、段落1に記載の方法。
12. 前記哺乳類の組織がヒトの組織である、段落11に記載の方法。
13. 前記合成修飾型RNA分子が少なくとも2つの修飾ヌクレオシドを含む、段落1に記載の方法。
14. 前記少なくとも2つの修飾ヌクレオシドが、5-メチルシチジン(5mC)、N6-メチルアデノシン(m6A)、3,2'-O-ジメチルウリジン(m4U)、2-チオウリジン(s2U)、2'フルオロウリジン、シュードウリジン、2'-O-メチルウリジン(Um)、2'デオキシウリジン(2'dU)、4-チオウリジン(s4U)、5-メチルウリジン(m5U)、2'-O-メチルアデノシン(m6A)、N6,2'-O-ジメチルアデノシン(m6Am)、N6,N6,2'-O-トリメチルアデノシン(m62Am)、2'-O-メチルシチジン(Cm)、7-メチルグアノシン(m7G)、2'-O-メチルグアノシン(Gm)、N2,7-ジメチルグアノシン(m2,7G)、N2,N2,7-トリメチルグアノシン(m2,2,7G)、およびイノシン(I)からなる群より選択される、段落13に記載の方法。
15. 前記合成修飾型RNA分子、その中で前記少なくとも2つの修飾ヌクレオシドが5-メチルシチジン(5mC)およびシュードウリジンである、段落13に記載の方法。
16. 前記合成修飾型RNA分子が5'キャップをさらに含む、段落1に記載の方法。
17. 前記合成修飾型RNA分子、その中で前記5'キャップが5'キャップ類似体である、段落16に記載の方法。
18. 前記5'キャップ類似体が5'グアノシンキャップである、段落17に記載の方法。
19. 前記合成修飾型RNA分子が5'三リン酸を含まない、段落1に記載の方法。
20. 前記合成修飾型RNA分子が、ポリ(A)テール、コザック配列、3'非翻訳領域、5'非翻訳領域、またはそれらの任意の組合せをさらに含む、段落1に記載の方法。
21. 前記ポリ(A)テール、コザック配列、3'非翻訳領域、5'非翻訳領域、またはそれらの任意の組合せが1つ以上の修飾ヌクレオシドを含む、段落20に記載の方法。
22. 前記1つ以上の修飾ヌクレオシドが、5-メチルシチジン(5mC)、N6-メチルアデノシン(m6A)、3,2'-O-ジメチルウリジン(m4U)、2-チオウリジン(s2U)、2'フルオロウリジン、シュードウリジン、2'-O-メチルウリジン(Um)、2'デオキシウリジン(2'dU)、4-チオウリジン(s4U)、5-メチルウリジン(m5U)、2'-O-メチルアデノシン(m6A)、N6,2'-O-ジメチルアデノシン(m6Am)、N6,N6,2'-O-トリメチルアデノシン(m62Am)、2'-O-メチルシチジン(Cm)、7-メチルグアノシン(m7G)、2'-O-メチルグアノシン(Gm)、N2,7-ジメチルグアノシン(m2,7G)、N2,N2,7-トリメチルグアノシン(m2,2,7G)、およびイノシン(I)からなる群より選択される、段落21に記載の方法。
23. 前記合成修飾型RNA分子がアルカリホスファターゼで処理される、段落1に記載の方法。
24. 前記合成修飾型RNA分子がVEGFポリペプチドをコードする、段落1に記載の方法。
25. 前記VEGFポリペプチドがヒトVEGF(hVEGF)である、段落23に記載の方法。
26. 前記合成修飾型RNA分子がジストロフィンポリペプチドをコードする、段落1に記載の方法。
27. 前記合成修飾型RNA分子がα1アンチトリプシンポリペプチドをコードする、段落1に記載の方法。
28. 前記合成修飾型RNA分子が機能欠損型疾患のためのポリペプチドをコードする、段落1に記載の方法。
29. 前記機能欠損型疾患が嚢胞性線維症である、段落27に記載の方法。
30. 前記合成修飾型RNA分子が嚢胞性線維症膜コンダクタンス調節因子(CFTR)ポリペプチドをコードする、段落29に記載の方法。
31. 前記合成修飾型RNA分子が、表1、2、3、4、5、6または7のいずれかに開示されるポリペプチドをコードする、段落1に記載の方法。
32. 前記合成修飾型RNA分子と前記組織を接触させる工程が筋肉への直接注入を含む、段落1に記載の方法。
33. 前記合成修飾型RNA分子と前記組織を接触させる工程が、該合成修飾型RNA分子を含むかまたはそれで被覆されている埋め込み型装置と該組織を接触させることを含む、段落1に記載の方法。
34. 前記埋め込み型装置がステントである、段落33に記載の方法。
35. 前記埋め込み型装置が埋め込み型送達ポンプである、段落33に記載の方法。
36. 前記合成修飾型RNA分子と前記組織を接触させる工程が、カテーテルによって該合成修飾型RNA分子を送達することを含む、段落1に記載の方法。
37. 前記合成修飾型RNA分子と前記組織を接触させる工程が、内視鏡を介して該合成修飾型RNA分子を送達することを含む、段落1に記載の方法。
38. 前記組成物が、100ng/μlよりも高い濃度の合成修飾型RNA分子を含む、段落1に記載の方法。
39. 前記組成物が、1~25μg/μlの間の濃度の合成修飾型RNA分子を含む、段落1に記載の方法。
40. 前記組成物が、25μg/μlと50μg/μlの間の濃度の合成修飾型RNA分子を含む、段落1に記載の方法。
41. 対象において心機能を増強するための方法であって、該対象において心機能を増強するポリペプチドをコードする合成修飾型RNA分子を含む組成物を該対象に投与する工程を含み、該合成修飾型RNA分子の該対象への投与によって、1つ以上の修飾を含まない該ポリペプチドをコードする合成RNA分子の投与と比較して自然免疫応答が低下するように、該合成修飾型RNA分子が前記1つ以上の修飾を含み、かつ、該合成修飾型RNA分子からの該ポリペプチドの発現が該対象において心機能を増強する、前記方法。
42. 前記合成修飾型RNA分子が段落8~22のいずれか一項に記載のものである、段落41に記載の方法。
43. 前記対象が、不十分な心機能を特徴とする疾患または障害を患っている、段落41に記載の方法。
44. 前記対象が構造的心疾患を患っている、段落41に記載の方法。
45. 前記疾患または障害が、うっ血性心不全、心筋症、心筋梗塞、組織虚血、心臓虚血、血管病、後天性心臓疾患、先天性心臓疾患、アテローム性硬化症、心筋症、刺激伝達系機能不全、冠動脈機能不全、肺性心高血圧症である、段落41に記載の方法。
46. 前記疾患が、うっ血性心不全、冠動脈疾患、心筋梗塞、心筋虚血、アテローム性硬化症、心筋症、特発性心筋症、心不整脈、筋ジストロフィー、筋量異常、筋変性、感染性心筋炎、薬物または毒素誘導性の筋異常、過敏性心筋炎、自己免疫性心内膜炎および先天性心臓疾患からなる群より選択される、段落41に記載の方法。
47. 前記合成修飾型RNA分子がVEGFポリペプチドをコードする、段落41に記載の方法。
48. 前記VEGFポリペプチドがヒトVEGF(hVEGF)である、段落41に記載の方法。
49. 前記合成修飾型RNA分子がジストロフィンポリペプチドをコードする、段落41に記載の方法。
50. 前記合成修飾型RNA分子がα1アンチトリプシンポリペプチドをコードする、段落41に記載の方法。
51. 前記合成修飾型RNA分子が機能欠損型疾患のためのポリペプチドをコードする、段落41に記載の方法。
52. 前記合成修飾型RNA分子が、心臓で発現しないポリペプチド、または心臓での正常な発現と比較して低レベルで発現するポリペプチド、または天然の野生型のポリペプチドと比較して機能獲得型タンパク質もしくは変異型タンパク質として発現するポリペプチドを、前記対象において発現する、段落41に記載の方法。
53. 前記合成修飾型RNA分子が、表1、2、3、4、5、6または7のいずれかに開示されるポリペプチドをコードする、段落41に記載の方法。
54. 前記対象が哺乳類である、段落41に記載の方法。
55. 前記哺乳類がヒトである、段落54に記載の方法。
56. 前記対象が心筋梗塞を患ったことがある、段落41に記載の方法。
57. 前記対象が心不全を有するかまたは心不全のリスクを有する、段落41に記載の方法。
58. 前記心不全が後天性心不全である、段落57に記載の方法。
59. 前記心不全が、アテローム性硬化症、心筋症、うっ血性心不全、心筋梗塞、虚血性心疾患、心房性不整脈および心室性不整脈、高血圧性血管疾患、末梢血管疾患と関係がある、段落57に記載の方法。
60. 前記対象が先天性心臓疾患を有する、段落41に記載の方法。
61. 前記対象が、高血圧、血流障害、症候性不整脈、肺性高血圧、関節硬化症、刺激伝達系機能不全、冠動脈機能不全、冠動脈樹機能不全および冠動脈側副血行路形成からなる群より選択される健康状態を有する、段落41に記載の方法。
62. 心機能の増強が、心不全を治療または予防するための方法である、段落41に記載の方法。
63. 前記組成物が、心内膜心筋投与経路、心筋外投与経路、心室内投与経路、冠内投与経路、後洞投与経路、動脈内投与経路、心膜内投与経路、または静脈内投与経路を経て投与される、段落41に記載の方法。
64. 前記組成物が前記対象の血管系に投与される、段落41に記載の方法。
65. 前記組成物が心臓への直接注入により前記対象に投与される、段落41に記載の方法。
66. 前記組成物が、前記合成修飾型RNA分子を含むかまたはそれで被覆されている埋め込み型装置を使用して前記対象に投与される、段落41に記載の方法。
67. 前記埋め込み型装置がステントである、段落66に記載の方法。
68. 前記埋め込み型装置が埋め込み型送達ポンプである、段落66に記載の方法。
69. 前記組成物がカテーテルによって前記対象に投与される、段落41に記載の方法。
70. 前記組成物が内視鏡を介して前記対象に投与される、段落41に記載の方法。
71. 前記組成物が、100ng/μlよりも高い濃度の合成修飾型RNA分子を含む、段落41に記載の方法。
72. 前記組成物が、1~25μg/μlの間の濃度の合成修飾型RNA分子を含む、段落41に記載の方法。
73. 前記組成物が、25μg/μlと50μg/μlの間の濃度の合成修飾型RNA分子を含む、段落41に記載の方法。
74. 前記合成修飾型RNA分子が、心臓で発現しないポリペプチド、または心臓での正常な発現と比較して低レベルで発現するポリペプチド、または天然の野生型のポリペプチドと比較して機能獲得型タンパク質もしくは変異型タンパク質として発現するポリペプチドを、前記対象において発現する、段落41に記載の方法。
75. インビボCre動物モデルにおける遺伝子をノックアウトするための、Creリコンビナーゼポリペプチドをコードする合成修飾型RNA分子の使用。
76. 心臓始原細胞の動員、増殖、および/または分化を増大させる方法であって、対象における心臓始原細胞の動員、増殖、および/または分化を増大させるポリペプチドをコードする合成修飾型RNA分子を含む組成物を該対象に投与する工程を含み、該合成修飾型RNA分子の該対象への投与によって、1つ以上の修飾を含まない該ポリペプチドをコードする合成RNA分子の投与と比較して自然免疫応答が低下するように、該合成修飾型RNA分子が該1つ以上の修飾を含み、かつ、該合成修飾型RNA分子からの該ポリペプチドの発現が、該対象における心臓始原細胞の動員、増殖、および/または分化を増大させる、前記方法。
77. 前記対象における心臓始原細胞の動員、増殖、および/または分化を増大させる前記ポリペプチドがVEGFポリペプチドを含む、段落76に記載の方法。
78. 前記VEGFポリペプチドがVEGF-Aを含む、段落77に記載の方法。
79. 前記対象が、高血圧、血流障害、症候性不整脈、肺性高血圧、関節硬化症、刺激伝達系機能不全、冠動脈機能不全、冠動脈樹機能不全および冠動脈側副血行路形成からなる群より選択される健康状態を有する、段落76に記載の方法。
80. 前記対象がヒトである、段落76に記載の方法。
81. 前記対象が心筋梗塞を患ったことがある、段落79に記載の方法。
82. 前記心臓始原細胞がWT-1始原細胞を含む、段落76に記載の方法。
83. 以下の工程を含む、対象において腫瘍を治療するための方法:
該対象において血管新生を増強するポリペプチドをコードする合成修飾型RNA分子を含む組成物を投与する工程であって、該合成修飾型RNA分子の該対象への投与によって、1つ以上の修飾を含まない該ポリペプチドをコードする合成RNA分子の投与と比較して自然免疫応答が低下するように、該合成修飾型RNA分子が前記1つ以上の修飾を含み、かつ、該合成修飾型RNA分子からの該ポリペプチドの発現が該腫瘍における血管新生を増強する、工程;および、
化学療法剤を該対象に投与する工程であって、該血管新生が該対象に投与される化学療法剤の効果を増大させ、それによって該腫瘍が治療される、工程。
84. 前記合成修飾型RNA分子がベクターにおいて発現しない、段落83に記載の方法。
85. 前記合成修飾型RNA分子を含む前記組成物が裸の合成修飾型RNA分子を含む、段落83に記載の方法。
86. 前記合成修飾型RNA分子を含む前記組成物が、脂質複合体中に存在する少なくとも1つの合成修飾型RNA分子を含む、段落83に記載の方法。
87. 前記合成修飾型RNA分子が少なくとも2つの修飾ヌクレオシドを含む、段落83に記載の方法。
88. 前記少なくとも2つの修飾ヌクレオシドが、5-メチルシチジン(5mC)、N6-メチルアデノシン(m6A)、3,2'-O-ジメチルウリジン(m4U)、2-チオウリジン(s2U)、2'フルオロウリジン、シュードウリジン、2'-O-メチルウリジン(Um)、2'デオキシウリジン(2'dU)、4-チオウリジン(s4U)、5-メチルウリジン(m5U)、2'-O-メチルアデノシン(m6A)、N6,2'-O-ジメチルアデノシン(m6Am)、N6,N6,2'-O-トリメチルアデノシン(m62Am)、2'-O-メチルシチジン(Cm)、7-メチルグアノシン(m7G)、2'-O-メチルグアノシン(Gm)、N2,7-ジメチルグアノシン(m2,7G)、N2,N2,7-トリメチルグアノシン(m2,2,7G)、およびイノシン(I)からなる群より選択される、段落87に記載の方法。
89. 前記合成修飾型RNA分子、その中で前記少なくとも2つの修飾ヌクレオシドが5-メチルシチジン(5mC)およびシュードウリジンである、段落87に記載の方法。
90. 前記合成修飾型RNA分子が5'キャップをさらに含む、段落83に記載の方法。
91. 前記合成修飾型RNA分子、その中で前記5'キャップが5'キャップ類似体である、段落90に記載の方法。
92. 前記5'キャップ類似体が5'グアノシンキャップである、段落91に記載の方法。
93. 前記合成修飾型RNA分子が5'三リン酸を含まない、段落83に記載の方法。
94. 前記合成修飾型RNA分子が、ポリ(A)テール、コザック配列、3'非翻訳領域、5'非翻訳領域、またはそれらの任意の組合せをさらに含む、段落83に記載の方法。
95. 前記ポリ(A)テール、コザック配列、3'非翻訳領域、5'非翻訳領域、またはそれらの任意の組合せが1つ以上の修飾ヌクレオシドを含む、段落94に記載の方法。
96. 前記1つ以上の修飾ヌクレオシドが、5-メチルシチジン(5mC)、N6-メチルアデノシン(m6A)、3,2'-O-ジメチルウリジン(m4U)、2-チオウリジン(s2U)、2'フルオロウリジン、シュードウリジン、2'-O-メチルウリジン(Um)、2'デオキシウリジン(2'dU)、4-チオウリジン(s4U)、5-メチルウリジン(m5U)、2'-O-メチルアデノシン(m6A)、N6,2'-O-ジメチルアデノシン(m6Am)、N6,N6,2'-O-トリメチルアデノシン(m62Am)、2'-O-メチルシチジン(Cm)、7-メチルグアノシン(m7G)、2'-O-メチルグアノシン(Gm)、N2,7-ジメチルグアノシン(m2,7G)、N2,N2,7-トリメチルグアノシン(m2,2,7G)、およびイノシン(I)からなる群より選択される、段落95に記載の方法。
97. 前記合成修飾型RNA分子がアルカリホスファターゼで処理される、段落83に記載の方法。
98. 前記対象が腺癌を患っている、段落83に記載の方法。
99. 前記対象が、線維形成性組織の層を有する腫瘍を含む癌を患っている、段落83に記載の方法。
100. 前記癌が膵管腺癌(PDAC)である、段落98に記載の方法。
101. 前記合成修飾型RNA分子がVEGFポリペプチドをコードする、段落83に記載の方法。
102. 前記VEGFポリペプチドがヒトVEGF(hVEGF)である、段落83に記載の方法。
103. 前記合成修飾型RNA分子が、表3に開示されるポリペプチドをコードする、段落83に記載の方法。
104. 前記対象が哺乳類である、段落83に記載の方法。
105. 前記哺乳類がヒトである、段落104に記載の方法。
106. 前記組成物が静脈内投与経路または経腫瘍投与経路を介して投与される、段落83に記載の方法。
107. 前記組成物が前記対象の血管系に投与される、段落83に記載の方法。
108. 前記組成物が前記腫瘍への直接注入によって前記対象に投与される、段落83に記載の方法。
109. 前記組成物が、前記合成修飾型RNA分子を含むかまたはそれで被覆されている埋め込み型装置を使用して前記対象に投与される、段落83に記載の方法。
110. 前記組成物がカテーテルによって前記対象に投与される、段落83に記載の方法。
111. 前記組成物が内視鏡を介して前記対象に投与される、段落83に記載の方法。
112. 前記組成物が、100ng/μlよりも高い濃度の合成修飾型RNA分子を含む、段落83に記載の方法。
113. 前記組成物が、1~25μg/μlの間の濃度の合成修飾型RNA分子を含む、段落83に記載の方法。
114. 前記組成物が、25μg/μlと50μg/μlの間の濃度の合成修飾型RNA分子を含む、段落83に記載の方法。
115. 前記化学療法剤が、ゲムシタビン、フルオロウラシル、カペシタビン、シプラスチン(ciplastin)、イリノテカン、オキサリプラチン、5-フルオロウラシル、フォリン酸、およびエルロチニブからなる群より選択される、段落83に記載の方法。
116. 以下の工程を含む、対象において腫瘍を治療するための方法:
該腫瘍においてヘッジホッグ(Hedgehog)シグナル伝達を増強するポリペプチドの発現を阻害する合成修飾型RNA分子を含む組成物を投与する工程であって、該合成修飾型RNA分子の該対象への投与によって、1つ以上の修飾を含まない該ポリペプチドをコードする合成RNA分子の投与と比較して自然免疫応答が低下するように、該合成修飾型RNA分子が該1つ以上の修飾を含み、かつ、ヘッジホッグシグナル伝達を増強する該ポリペプチドの発現の該合成修飾型RNA分子による阻害が該腫瘍と関連する線維形成性組織の量または増殖を低下させる、工程;および、
化学療法剤を該対象に投与する工程であって、該線維形成性組織の量または増殖の低下が該対象に投与される化学療法剤の効果を増大させ、それによって該腫瘍が治療される、工程。
117. 前記合成修飾型RNA分子がベクターにおいて発現しない、段落116に記載の方法。
118. 前記合成修飾型RNA分子を含む前記組成物が裸の合成修飾型RNA分子を含む、段落116に記載の方法。
119. 前記合成修飾型RNA分子を含む前記組成物が、脂質複合体中に存在する少なくとも1つの合成修飾型RNA分子を含む、段落116に記載の方法。
120. 前記合成修飾型RNA分子が少なくとも2つの修飾ヌクレオシドを含む、段落116に記載の方法。
121. 前記少なくとも2つの修飾ヌクレオシドが、5-メチルシチジン(5mC)、N6-メチルアデノシン(m6A)、3,2'-O-ジメチルウリジン(m4U)、2-チオウリジン(s2U)、2'フルオロウリジン、シュードウリジン、2'-O-メチルウリジン(Um)、2'デオキシウリジン(2'dU)、4-チオウリジン(s4U)、5-メチルウリジン(m5U)、2'-O-メチルアデノシン(m6A)、N6,2'-O-ジメチルアデノシン(m6Am)、N6,N6,2'-O-トリメチルアデノシン(m62Am)、2'-O-メチルシチジン(Cm)、7-メチルグアノシン(m7G)、2'-O-メチルグアノシン(Gm)、N2,7-ジメチルグアノシン(m2,7G)、N2,N2,7-トリメチルグアノシン(m2,2,7G)、およびイノシン(I)からなる群より選択される、段落120に記載の方法。
122. 前記合成修飾型RNA分子、その中で前記少なくとも2つの修飾ヌクレオシドが5-メチルシチジン(5mC)およびシュードウリジンである、段落120に記載の方法。
123. 前記合成修飾型RNA分子が5'キャップをさらに含む、段落116に記載の方法。
124. 前記合成修飾型RNA分子、その中で前記5'キャップが5'キャップ類似体である、段落123に記載の方法。
125. 前記5'キャップ類似体が5'グアノシンキャップである、段落123に記載の方法。
126. 前記合成修飾型RNA分子が5'三リン酸を含まない、段落116に記載の方法。
127. 前記合成修飾型RNA分子が、ポリ(A)テール、コザック配列、3'非翻訳領域、5'非翻訳領域、またはそれらの任意の組合せをさらに含む、段落116に記載の方法。
128. 前記ポリ(A)テール、コザック配列、3'非翻訳領域、5'非翻訳領域、またはそれらの任意の組合せが1つ以上の修飾ヌクレオシドを含む、段落127に記載の方法。
129. 前記1つ以上の修飾ヌクレオシドが、5-メチルシチジン(5mC)、N6-メチルアデノシン(m6A)、3,2'-O-ジメチルウリジン(m4U)、2-チオウリジン(s2U)、2'フルオロウリジン、シュードウリジン、2'-O-メチルウリジン(Um)、2'デオキシウリジン(2'dU)、4-チオウリジン(s4U)、5-メチルウリジン(m5U)、2'-O-メチルアデノシン(m6A)、N6,2'-O-ジメチルアデノシン(m6Am)、N6,N6,2'-O-トリメチルアデノシン(m62Am)、2'-O-メチルシチジン(Cm)、7-メチルグアノシン(m7G)、2'-O-メチルグアノシン(Gm)、N2,7-ジメチルグアノシン(m2,7G)、N2,N2,7-トリメチルグアノシン(m2,2,7G)、およびイノシン(I)からなる群より選択される、段落128に記載の方法。
130. 前記合成修飾型RNA分子がアルカリホスファターゼで処理される、段落116に記載の方法。
131. 前記対象が腺癌を患っている、段落116に記載の方法。
132. 前記対象が、線維形成性組織の層を有する腫瘍を含む癌を患っている、段落116に記載の方法。
133. 前記癌が膵管腺癌(PDAC)である、段落131に記載の方法。
134. 前記合成修飾型RNA分子が、ヘッジホッグ(Hh)、スムーズンド(Smoothened;Smo)、パッチド1(Patched 1;Ptc1)、およびGliからなる群より選択されるタンパク質をコードするmRNAのアンチセンス阻害剤である、段落116に記載の方法。
135. ヘッジホッグシグナル伝達を増強する前記ポリペプチドがヒトポリペプチドである、段落116に記載の方法。
136. 前記対象が哺乳類である、段落116に記載の方法。
137. 前記哺乳類がヒトである、段落136に記載の方法。
138. 前記組成物が静脈内投与経路または経腫瘍投与経路を介して投与される、段落116に記載の方法。
139. 前記組成物が前記対象の血管系に投与される、段落116に記載の方法。
140. 前記組成物が、前記腫瘍への直接注入によって前記対象に投与される、段落116に記載の方法。
141. 前記組成物が、前記合成修飾型RNA分子を含むかまたはそれで被覆されている埋め込み型装置を使用して前記対象に投与される、段落116に記載の方法。
142. 前記組成物がカテーテルによって前記対象に投与される、段落116に記載の方法。
143. 前記組成物が内視鏡を介して前記対象に投与される、段落116に記載の方法。
144. 前記組成物が、100ng/μlよりも高い濃度の合成修飾型RNA分子を含む、段落116に記載の方法。
145. 前記組成物が、1~25μg/μlの間の濃度の合成修飾型RNA分子を含む、段落116に記載の方法。
146. 前記組成物が、25μg/μlと50μg/μlの間の濃度の合成修飾型RNA分子を含む、段落116に記載の方法。
147. 前記化学療法剤が、ゲムシタビン、フルオロウラシル、カペシタビン、シプラスチン(ciplastin)、イリノテカン、オキサリプラチン、5-フルオロウラシル、フォリン酸、およびエルロチニブからなる群より選択される、段落116に記載の方法。
【0317】
本発明は以下の実施例によってさらに例証されるが、それらの実施例は本発明をさらに限定するものと決して解釈されてはならない。本願を通して引用される参照文献、特許公報、特許出願公開、および同時係属中の特許出願を含む全ての引用文献の内容はここに参照により明示的に組み込まれる。
【0318】
本発明は、本明細書に見いだされる特定の実施形態または本発明者が提唱する特定の実施形態に関して、本発明の実施にとって好ましいモードを含むと説明されている。当業者は、本開示を考慮すれば、多数の修飾と改変を、本発明の意図されている範囲から逸脱することなく、例示されている特定の実施形態において行うことができることを理解する。例えば、コドンの重複性のため、タンパク質配列に影響することなく根底にあるDNA配列に改変を行うことができる。さらに、生物学的な機能上の等価性についての考慮すべき事柄から、生物学的作用の種類または量に影響することなくタンパク質構造に改変を行うことができる。あらゆるそのような修飾は別記の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図される。
【実施例】
【0319】
本明細書に示す実施例は、組織におけるインビボの効率的なタンパク質発現のための方法および組成物に関し、対象となるタンパク質を発現する合成修飾型RNA(MOD-RNA)を含む組成物を組織に接触させることを含む。本願を通して様々な出版物が参照される。本発明が関する技術水準をより完全に記載するために、全出版物およびそれら出版物中に引用される参照文献の開示はその全容をここに参照として組み込まれる。以下の実施例は、請求の範囲を本発明に制限する意図はなく、むしろ特定の実施形態の例示を企図する。当業者が想到する例示的方法のあらゆる変形は、本発明の範囲内であると企図される。
【0320】
材料および方法
ヒト胎児心筋細胞の単離
心臓を、300U/mlのコラゲナーゼII型および0.65mg/mlの細菌XXIV型プロテイナーゼを用いて5~10分間のみ37℃で(150rpmで振盪しながら)消化した。次いで、心臓を300U/mlのコラゲナーゼII型を用いて90分間37℃で(150rpmで振盪しながら)さらに消化し、15分の消化ごとに上清を回収してウシ新生児血清と混合し、その後4℃で2分間、30×gで遠心分離した。遠心分離後、上清を回収したが、これが「心臓線維芽細胞(Fb)」画分であり、ペレットが「心筋細胞(CM)」画分であった。
【0321】
両方の画分は、示差的プレーティング(differential plating)ステップのためにさらに培養することができる。CMのペレットとFbのうち、CMはダーク培地において、Fbは線維芽細胞培地において再懸濁した。CMをゼラチン被覆ウェルに蒔き、一晩培養する。Fbを非ゼラチン化組織培養プレートに蒔き、37℃で一晩培養する。翌朝、プレート内で接着した間葉系細胞を見ることができる。浮遊細胞であればスローな間葉系細胞とCMを含有している。次いで、上清を回収して新しいプレートにさらに3時間置くことで、別の示差的プレーティングステップを実施することができる。この後、多くの場合、上清にはCMしか含まれないので、それをゼラチン被覆プレート上に一晩蒔くことでさらに回収可能である。第2プレート上にも間葉系細胞が存在する。各インキュベーション時間の経過後、Ca2+を含むPBSでプレートを少なくとも5回は必ず洗って結合が緩い細胞を剥がすこと。次いで、適当な培地を入れ替える。
【0322】
インビボでの使用のための修飾合成RNA(RNA-MOD)の濃縮
MOD-RNAを用いてインビボで標的組織中にタンパク質を発現させるため、発明者らはMOD-RNAを少なくとも25μg/μlまで濃縮した。MOD-RNAを濃縮するため、MOD-RNAを以下のとおり沈殿させた。
【0323】
1:10倍量の5Mの酢酸アンモニウム(NH4Ac)を精製したMOD-RNAに加え、2.75倍量の100%エタノールを加えて十分撹拌し、-20℃で30分インキュベートした。次に該液体をRNAaseフリーの1.7mlチューブに分注し、4℃で15分、13000で微量遠心分離した。上清を除去廃棄した後、ペレットを500μLの70%低温エタノールで洗浄し、次いで4℃で15分、13000で2度目の遠心分離を行った。遠心分離後、70%エタノール上清を除去し、ペレットを500μlの70%冷エタノールで2度目の洗浄に供し、4℃で15分、13000で3度目の遠心分離を行う。遠心分離後、2度目の洗浄の70%エタノール上清を除去し、ペレットを2時間空気乾燥する。ペレットを、TE緩衝液を用いて濃度25μg/μlになるまで再懸濁する。
【0324】
修飾型RNAのインビボ注射
心臓への注射のため開心術を行い、筋肉と心臓の両方の注射のために、約100μlのMOD-RNAを各マウスの骨格筋内および/または心臓に注射した。MOD-RNAは送達ベヒクルとしてのリポフェクタミン(商標)と共に使用され、心臓内および骨格筋内に直接注入された。
【0325】
実施例1
筋肉細胞で発現するタンパク質をコードするMOD-RNA
図1A~3Bに示すように、発明者らは、マウス胎仔心筋細胞とヒト胎児心筋細胞におけるインビトロでの合成修飾型RNA(MOD-RNA)からのeGFPタンパク質の効率的な発現を実証する。発明者らは、心筋細胞が、形質移入された同一細胞内で、形質移入MOD-RNAから2つ以上のタンパク質を発現し得ることを実証する(データ不掲載)。
【0326】
実施例2
心臓および筋肉組織におけるインビボのMOD-RNAからのタンパク質発現
ルシフェラーゼタンパク質を発現するMOD-RNAをマウスの脚筋または心臓内に直接注入した少なくとも3時間後、マウスの筋肉と心臓で高レベルのインビボタンパク質発現が生物発光画像法により検出さた(データ不掲載)。インビボのタンパク質発現は約4~5日続いた(
図5A)。
【0327】
creを発現するMOD-RNAからのcreリコンビナーゼのインビボタンパク質発現は、心臓および脚の筋肉においてβガラクトシダーゼの発現をインビボで誘導するために使用することができたが(データ不掲載)、それは、心臓表面の全ての細胞種がMOD-RNAを吸収し、コードされるタンパク質を発現することを実証している(データ不掲載)。MOD-RNAからのインビボタンパク質発現のレベルは、非修飾型RNAからのタンパク質発現レベルより少なくとも2倍高く(
図6)、また、自然免疫応答を誘発しなかった(
図7)。
【0328】
hVEGFをコードするMOD-RNAをマウスの筋肉に10日間注射したとき(1μg/日を毎日注射)、VEGFタンパク質のインビボ発現が機能し、筋組織における形態的変化が誘導された(データ不掲載)。さらに、hVEGFをコードするMOD-RNAは、心筋梗塞のマウスモデルにおいて心臓に対する損傷を修復および予防することができた(
図8)。特に、発明者らは、hVEGFポリペプチドをコードする合成修飾型RNAを心筋梗塞のマウスモデルの心臓にインビボ送達することにより心筋梗塞巣の発生が予防され、虚血発作後に心臓が受ける損傷が有意に予防されることを本明細書において実証した。いくつかの実施形態では、hVEGFポリペプチドをコードする合成修飾型RNAのインビボ送達は、虚血からの心臓の回復も促進した。いくつかの実施形態では、VEGFをコードする合成修飾型RNAは、心筋内に直接注入することで心筋に送達され得る。
【0329】
実施例3
化学修飾型mRNAを介するインビボでの心臓始原細胞の細胞運命と再生の推進
背景
万能性心臓始原細胞のファミリーは、心発生の間、明白な心筋系列、血管平滑筋系列および内皮細胞系列の多様化および増殖を担う。細胞ベースの再生治療のためにこれら始原細胞の潜在能力を解明することは、規模の拡張可能性、移植、生存、拒絶反応および電気的結合に関わる難しさにより妨げられてきた。最近の研究により、ごく少数の出生後心臓始原細胞が、それらの再生、細胞運命および機能を制御する発生上の合図と共に、多能性幹細胞におけるインビトロ心発生およびクローン検定の間に特定されている。本物のインビボパラクリン因子が特定され、効率的、局所的かつ一過的な態様で送達され得るならば、パラクリン因子のインビボの心臓送達は、特定の血液細胞系列を選択的に増大させるエリスロポエチンとGM-CSFの既知の臨床用途に類似の、実行可能である代替的な治療ストラテジーとなり得る。
【0330】
この考えを支持して、最近の研究により、心臓損傷後これらの始原細胞をインビボで増殖させ得る内在性パラクリンシグナルの存在が示唆されているが、ただし始原細胞の正確な部分集合およびパラクリンシグナルの詳細の大部分は不明白である。本明細書で発明者らは、ES細胞の心発生の間に万能性ヒト心臓始原細胞ファミリーの中で血管始原細胞のプールを増大させる、ヒト胎児心臓における主要な細胞運命切り替えタンパク質因子としてVEGF-Aを特定し、化学修飾型mRNAを用いて対応するタンパク質を高レベルでヒトおよびマウスの心筋細胞においてインビトロで、ならびに損傷を受けた後の成体のマウスの心臓において一過的および効率的に発現させた。独立した3種の遺伝子操作されたマウスモデル系の細胞系列追跡とFACS分析を組み合わせることにより、VEGF-Aが心筋梗塞後に希少な既存のWT-1心外膜始原細胞を増殖し、それを以前に説明されていた間質線維芽細胞様の状態から心臓および血管細胞運命へと駆出させることが記述される。治療効果には、WT1+心外膜始原細胞とそれらの血管細胞系列の顕著な増加、毛細血管密度の増加、心臓線維症の顕著な軽減、全体的な心機能の増強および新規の心筋細胞島の産生があげられる。まとめると、modRNAにより、心臓損傷後の内在性心臓始原細胞の増殖と細胞運命を推進し得る既知または新規のパラクリンタンパク質因子の高速のインビボアッセイが可能になる。さらに、VEGF-A modRNAは、損傷後の新規の心臓始原細胞運命スイッチとなり、心血管再生のために内在性心臓始原細胞をインビボで集め、その後に分化させる新規の無細胞治療パラダイムを意味する。
【0331】
結果
万能心臓始原細胞の細胞運命スイッチとして働き得るパラクリンシグナル候補を特定するため、発明者らは、ヒト胎児心臓においてパラクリン因子の一団を特定し、その後、それをWT-1+始原細胞プールを含む始原ISL1+始原細胞から血管系列への追跡を可能にする遺伝子操作されたヒトES細胞ベースのアッセイ系で試験した。VEGF-Aは、ヒト胎児心臓における最も豊富なアンジクリン(angicrine)因子であり(
図9A)、独立した研究により、WT-1始原細胞の数を顕著に増加させ、次いでそれらを血管内皮系列に変換させるその能力が記述された。VEGF-A
165を心臓にインビボ送達しての心血管形成誘発は当分野では既知であるが、裸のDNAプラスミド、組み換えタンパク質またはウイルスなどの異なる送達系を使用する多くの研究が、定常的なタンパク質発現および心筋細胞への低効率な形質移入、タンパク質の短い半減期、タンパク質に対する中和性抗体または抗ウイルス免疫応答の発生によってそれぞれ妨害されている。化学修飾型mRNA(modRNA)は、自然免疫シグナルおよびその結果としての顕著なインターフェロンとサイトカインの放出を回避することにより、体細胞における再プログラム化因子の発現に有効に使用され得る。現在まで、マウス新生児心筋細胞の最も効果的な非ウイルス性形質移入では約8%の形質移入効率が得られている。
【0332】
発明者らは、非ウイルス性modRNA法が心筋細胞において利点があるかどうか調査した。マウスとヒトの両方に由来する心筋細胞は、それぞれおよそ89%または72%の効率および最小限の毒性で、効率よくmodRNAによって形質移入され得る(
図9B)。ルシフェラーゼ(Luc)発現(
図9D)またはhVEGF-A発現(
図9E)の経時変化を、生物発光アッセイまたはELISAアッセイを用いて100時間まで追った。フィブロネクチン上での管形成アッセイでは、hVEGF-Aが心臓細胞を内皮細胞運命への分化をインビトロで推進し得ることが観察された(データ不掲載)。
【0333】
さらに、ヒト胎児心筋細胞に2種の異なるmodRNAを形質移入すると、両方のmodRNAが同時形質移入されるか、どちらも形質移入されず、細胞は異なるmodRNAを区別できないことが示された(データ不掲載)。非ウイルス性DNAプラスミドのインビボ送達の結果、心筋細胞への形質移入は低効率(約1%)であった。したがって、modRNAによる心筋細胞の形質移入効率はインビボで調査した。modRNAは、成体マウスの心臓心外膜への1度の注射のみで、時間および用量依存性のLucリポーターの発現を駆動する(データ不掲載)。発現は3時間ごとに検出でき、24時間目で50倍増加のピークが生じ、72時間までにベースラインレベルに戻った(
図5B)。
【0334】
CreリコンビナーゼmodRNAをROSA26-LacZマウスに注射すると(データ不掲載)、1度の心外膜注射で約15%という非常に高効率な左心室での吸収が明らかになったが、これは裸の核酸を用いた先行研究より数桁高く、心筋細胞内注射後の異種タンパク質の発現も低かった。さらに、心筋細胞を含む注射部位のほとんどの細胞(約80%)(データ不掲載)は成功裏にmodRNAを形質移入された。インビトロおよびインビボの形質移入後、modRNAの免疫原性レベルを調査し、非修飾mRNA(非modRNA)と比較した。
図12A~12Fに示すように、modRNAはインビトロおよびインビボで非modRNAより免疫原性が低く、このため形質移入後のタンパク質分泌量と細胞生存率がより高かった。実際、modRNAではなく非mod RNAが免疫応答を誘発し、インターフェロン(IFN)例えばIFN-aおよびIFN-bなどの分泌を介しアポトーシスを誘導した(
図12Cおよび12E)。これらの結果をまとめると、VEGF-A modRNAのインビボ心外膜送達が、心筋梗塞(MI)後、希少な心臓始原細胞の動員、増殖および/または分化につながり得ることが示される。
【0335】
3種の独立したマウスモデル系を、VEGF-A modRNAが希少な心臓始原細胞を増殖させ分化系列へと駆動し結果として心血管を再生させる能力についての効果を決定するのに用いた。Rosa26-LacZマウスでは、hVEGF-A modRNAの心臓再生における役割をMI後インビボで調査した。MI後のhVEGF-A modRNAの送達の結果は以下のとおりであった:高毛細血管密度(d.、hVEGF-A modRNA注射後、ベヒクル処置対照の2.7と比較して、100細胞当たり9.6の管腔構造が計測された);線維性の低い部位(d.1、hVEGF-A modRNAでは1.2%の線維性部位対対照では11%);内皮細胞の増殖上昇(hVEGF-A modRNAでは3.7%のVEカドヘリン+、Ki67+細胞対対照では0.9%)、心筋細胞(hVEGF-A modRNAでは2.3%のcTropT+、Ki67+細胞対対照では1.0%)およびWt1+心外膜細胞(hVEGF-A modRNAでは23.6%のWT1+およびKi67+細胞対対照では4.9%)(d.2);心臓細胞の生存率向上昇(d.3、hVEGF-A modRNAでは1.7%のTUNEL+細胞対対照では4.8%)(データ不掲載)。
【0336】
さらに、MRIの結果は、偽処置対照(心膜は開いたがLADは結紮しなかった)では65.5%、ベヒクル処置の心臓では45%、hVEGF-A modRNA処置の心臓では52%であり、駆出率において有意な改善が認められた(e,p=0.005)。また、hVEGF modRNA処置後、心臓収縮運動が改善された(データ不掲載)。さらに、qPCRにより、WT-1の選択的発現が15倍増えたがIslet-1およびNKX2.5などの他の心臓始原細胞マーカーには変化はないことが明らかにされ、WT-1+心外膜始原細胞が選択的に活性化され得ることが示された(補足
図4a)。また、PECAM(
図4c)、ビメンチン(
図4c)およびコラーゲンI型(
図3c)の免疫染色ではVEGF-A mod RNA処置した心臓が、ベヒクル処置の心臓と比べてより多くの内皮様細胞とより少ない線維性部位を有することが(補足
図4bでも)示された。hVEGF-A modRNA注射は、MIが不存在の場合WT-1+心外膜始原細胞プールにほとんど影響を与えないか全く与えず、このことはWT-1心外膜始原細胞をそれらが自然発生する心臓適所から動員するには、損傷そのものが主要な要件であることを示している(データ不掲載)。
【0337】
hVEGF-A modRNAがWT-1+細胞数を増大させる能力を直接記述するために、発明者らは内在性のWT-1座にeGFPがノックインされたマウスを用いた。MI後、WT1+細胞数は偽処置群の2倍になった(
図11C.1、4.4%対2.1%)。さらに、MIとhVEGF-A modRNAの送達後、WT1+細胞数は13.3%まで上昇した(偽処置群と比べて約7倍の増加)。分別したeGFP+細胞はqPCRでも調査され、hVEGF-A modRNA処置したWT1+細胞において、ベヒクル処置心臓と比較してPECAMおよびFlk-1の発現が増加しビメンチンが減少していることが示された(
図14C)。さらに、WT1+細胞上のFlk-1免疫染色では、hVEGF modRNAの送達後、WT1+細胞はVEGF2受容体にも陽性であることが判明した(
図14E、MI後ベヒクル処置心臓で6倍対MI後hVEGF-A modRNA処置心臓で33倍)。
【0338】
類似の方法を用いて、発明者らは、WT1系列追跡トランスジェニックマウス(Wt1/CreERT2/+::R26 mTmG)を使用してmodRNAのインビボ送達後WT1+心外膜始原細胞から分化した細胞の細胞運命を調査した。MI後、WT1由来細胞数は偽処置対照の2倍であった(
図4b.1、2.7%対5.5%)。さらに、MIおよびhVEGF-A modRNAの送達後、WT1由来細胞数は17.4%まで上昇した(偽処置対照と比べて約6倍の増加)。分別したeGFP+細胞は、qPCRを用いた調査でも、ベヒクル処置の心臓と比較して、hVEGF-A modRNA処置した心臓におけるWT1細胞のPECAMおよびcTropTの発現の増加と、ビメンチン発現の減少を示した(
図14D)。hVEGF-Aは、インビトロのヒト心発生モデル系においてWT-1+心臓始原細胞の増殖とそれらの血管内皮細胞への変換を直接もたらすことができ、これは始原細胞運命スイッチとしての直接的な効果と一致する。実に、WT1由来細胞の免疫染色では、WT1由来細胞数がhVEGF-A modRNA送達後3倍増加したことが示された(データ不掲載)。この増加は心外膜上(2倍増)および心筋(約5倍増、
図11E)でも見いだされた。異なるマーカーでのWT1由来細胞の二重免疫染色は、hVEGF-A modRNA送達後、WT1+細胞が異なる心臓細胞種に分化したかもしれないことを示した。
【0339】
先行研究では、心外膜始原細胞が虚血後の心臓に見いだされ得ることと、心外膜表面を維持する線維芽細胞と間質細胞に主として寄与することを示唆している。本明細書は、hVEGF-A modRNAはこれらの始原細胞を動員し、それらの細胞運命を心血管のエンドポイントへと変化させ得ることを示す。これらの効果は、WT-1の、主要な3種の心血管細胞種すべて(内皮および血管平滑筋)および心筋細胞への変換増加と関連があるが、前者が主な反応である(
図11)。WT1系列追跡トランスジェニックマウスモデル(Wt1/CreERT2/+::R26 mTmG)を用いて得た生存性の情報により、系における漏れやすさも調査した。漏れは、この系にあったとしても、僅かに0.025%であり得たことが見いだされた(データ不掲載)。
【0340】
まとめると、hVEGF-A modRNAは、心筋梗塞後、WT-1+心外膜心臓始原細胞のプールを増殖させ、その運命を間質線維芽細胞応答から分化した心血管細胞系列、例えば心臓細胞、内皮細胞および平滑筋細胞へと切り替える直接的効果があるようである(
図11F)。したがって、modRNAは内在性パラクリン治療剤を特定することができ、経皮カテーテル技術によりヒト心外膜表面を診断するルーチンな能力の観点から、希少な心臓始原細胞を再生治療に対する応答へと駆動する無細胞な方法を示している。これらの研究により他の実質臓器および変性疾患の再生を駆動する並行的パラクリン治療法が可能になることも意図される。
【0341】
方法の概要
インビトロ転写の鋳型の構築およびMODRNAの合成は先述されており、当業者には既知である。簡単に説明すると、ORF PCRはeGFP、mCherry、ルシフェラーゼ、CreおよびhVEGFAを有するプラスミドを鋳型とした。インビボの実験では、Xgalまたはβガラクトシダーゼの免疫染色後、CreをR26lacZマウスのhVEGF注射部位の標識に用いた。MODRNAを、3'-O-Me-m7G(5')ppp(5')G ARCAキャップ類似体、アデノシントリプトファンおよびグアノシトリホスフェート、5-メチルシチジントリホスフェートおよびプソイドウリジントリホスフェートの特注混合物とMEGAscript T7キット(Ambion(商標))を用いて合成し、Antarcticホスファターゼで処理して残基の5'三リン酸を除去した。MLC2v-YFPマウスおよびヒト胎児の心臓から単離した心筋細胞を単離してeGFP、mCherry、ルシフェラーゼまたはhVEGFA MODRNAをインビトロで形質移入した。RNAiMAX(Invitrogen(商標))とOpti-MEM(商標)培地を含有するベヒクルを用いてMODRNAの形質移入を行った。
【0342】
Wt1eGFPCre/+マウスが先述されている。誘導型Wt1/CreERT2/+::R26 mTmGマウスを、Rosa26R-mTmGマウスとWt1CreERT2/+マウスを交配させて作製した。成体心外膜におけるWt1発現を、心筋梗塞(MI)の2~3週間前から4mgのタモキシフェンを腹腔内に毎日注射することにより得た。MIを成体のR26lacZ、Wt1eGFPCre/+またはWt1/CreERT2/+::R26 mTmGマウスにおける恒久的な左下行前動脈(LAD)の結紮により誘導し、MI後同時にベヒクルまたはhVEGF-A modRNAが投与された。心臓をコラゲナーゼIIで消化し、GFP+細胞を定量化し(FACS Aria II)、Flk-1発現が決定された(FACS Aria II)。ベヒクルまたはhVEGFAで処置した心臓をMI後7日目、14日目または28日目に摘出し、免疫蛍光のために処理した。ImageJ(商標)を用いてMI後の心臓の凍結切片の免疫蛍光定量化を行った。注射部位のMI後の心臓から単離した、Wt1eGFPCre/+マウスまたはWt1/CreERT2/+::R26 mTmGマウス由来のFACS分別したGFP+細胞の全RNAを逆転写し、SYBRグリーン(商標)と内在性対照としてGapdhとbActinを用いて、リアルタイムqPCRを行った。22DDCT法により倍率変化が決定され、ベヒクル処置の心臓と比較して提示された。MRI分析をベヒクルまたはhVEGFA modRNAのいずれかを注射したMI後7日目および21日目のR26lacZマウスについて行い、梗塞巣のサイズと心機能の経時的変化を決定した。
【0343】
方法
IVT鋳型の構築とmodRNAの合成
インビトロ転写(IVT)鋳型構築物の生産およびその後のRNA合成が先述されている。オリゴヌクレオチド配列をIntegrated DNA Technologies(商標)(コーラルヴィル)により合成した。オープンリーディングフレーム(ORF)PCRはAddgene(商標)のeGFP、mCherry(商標)、ルシフェラーゼ、CreおよびヒトVEGF-Aを有するプラスミドを鋳型とした。PCR反応を、HiFi Hotstart(商標)(KAPA Biosystems(商標))を製造者の指示に従い用いて行った。スプリント介在性ライゲーションをAmpligase(商標)耐熱性DNAリガーゼ(Epicenter Biotechnologies(商標))を用いて実施した。UTR連結は200nMのUTRオリゴと100nMのスプリントオリゴの存在下で行った。全中間PCR産物および連結産物をQIAquick(商標)スピンカラム(Qiagen(商標))で精製してからさらに処理した。鋳型PCR単位複製配列をpcDNA 3.3-TOPO TAクローニングキット(商標)(Invitrogen(商標))を用いてサブクローニングした。プラスミド挿入断片は制限切断により切り出され、SizeSelect(商標)ゲル(Invitrogen(商標))を用いて回収された後にtail PCRの鋳型として使用された。RNAを、MEGAscript(商標)T7キット(Ambion(商標))と40mLの反応ごとに1.6mgの精製tail PCR産物を鋳型として用いて合成した。30-O-Me-m7G(50)ppp(50)G ARCAキャップ類似体(New England Biolabs(商標))、アデノシントリホスフェートおよびグアノシントリホスフェート(USB)、5-メチルシチジントリホスフェートおよびプソイドウリジントリホスフェート(TriLink Biotechnologies(商標))を含む特注のリボヌクレオシド混合物が使用された。ヌクレオチド反応の最終濃度は、キャップ類似体は6mM、グアノシントリホスフェートは1.5mM、他のヌクレオチドは7.5mMであった。RNAはAmbion(商標)MEGAclear(商標)スピンカラムを用いて精製し、次いでAntarcticホスファターゼ(New England Biolabs(商標))を用いて30分間37℃で処理して残基の50トリホスフェートを除去した。処理したRNAを再度精製し、Nanodrop(商標)(Thermo Scientific(商標))で定量化した。
【0344】
modRNA形質移入
modRNA形質移入をRNAiMAX(商標)(Invitrogen(商標))を用いて行った。初めに、modRNAと試薬をOpti-MEM(商標)基本培地(Invitrogen(商標))で希釈した。100ng/mLのmodRNAを希釈し、MODRNA 1マイクログラム当たり5mLのRNAiMAX(商標)を希釈し、これらの構成要素をプールしてから室温で15分インキュベートし、培地に分配した。MODRNA形質移入は、全てのインビトロの実験でOpti-MEM(商標)に2%FBSを加えた中で行い、全てのインビボの実験でOpti-MEM(商標)のみの中で行った。
【0345】
マウスおよびヒト初代細胞の単離と培養
MLC2v-YFPマウスが先述されている。マウス新生児およびヒト胎児の心臓を先述したようにコラゲナーゼII(Sigma(商標))により個々の細胞に分解した。心臓細胞は5%FBS、10%ウマ血清および1μg/mlのインスリンを含有するDMEM中で培養した。マウス成体の心臓はコラゲナーゼIV(Sigma(商標))を用いて消化し、心臓細胞を、10%FBSを含有する間葉系幹細胞成長培地(Lonza(商標))で培養した。これらの心臓細胞へのeGFP、mCherry(商標)、lucまたはhVEGF-A MODRNAの形質移入は、RNAiMAX(商標)(Invitrogen(商標))とOpti-MEM(商標)基本培地の混合物を含有するベヒクルを用いて実施した。翻訳されたhVEGF-Aタンパク質の分泌は、ELISA(R&D systems(商標))を用いて定量化した。hVEGF-A modRNA(1μg)を形質移入した全ての心臓細胞は内皮細胞と類似していたが、ベヒクル処置の心臓は内皮の運命を適用できなかった(データ不掲載)。心臓内皮遺伝子プロファイリングの対照として使用される心臓内皮増殖活性の高いヒト内皮細胞(OEC)(
図9a)を先述のように生成した。
【0346】
IVISシステムを用いてのルシフェラーゼ+細胞のインビボ検出
ベヒクル(RNAiMAX(商標)とopti-MEM(商標)基本培地の混合物)またはluc MODRNA(100μg/心臓)を野生型Balb/cマウス心臓の左心室に投与した。異なる時点(3~240時間)において注射マウスの生物発光画像を撮影した。Luc+細胞を可視化するため、ルシフェリン(150lg/g体重;Sigma(商標))を腹腔内注射(i.p.)した。10~20分後、マウスをキシラジン(20mg/ml)とケタミン(100mg/ml)で麻酔し、IVIS100(商標)電荷結合素子画像システムを用いて2分間撮像した。画像データを分析し、Living Image Software(商標)で定量化した。シグナル強度(細胞数を表す)が異なる色のスペクトルにより示された。予想どおり、Luc+細胞は、濃度および時間依存性の態様でluc MODRNAを注射した心臓で観察されたが(データ不掲載)、ベヒクルのみを注射した心臓ではシグナルは一切認められなかった(データ不掲載)。
【0347】
心外膜追跡マウスの作製
Wt1eGFPCre/+マウスが先述されている。誘導型Wt1CreERT2/+::R26mTmGマウスは、先に示したように、Wt1CreERT2/+系とRosa26mTmGリポーターマウスとの交配およびジェノタイピングにより作製した。成体マウスを、2~3週間の間、週2回タモキシフェン(Tam)4mgを腹腔内注射(i.p.)する処置をしてCreを誘導した。Tam投与完了の1週間後、以下に記述のように左下行前動脈(LAD)冠動脈の結紮により心筋梗塞(MI)を誘導した。その後心臓は、FACS、免疫蛍光およびリアルタイムqPCR分析を組み合わせて7日後にeGFP発現と心筋マーカーを評価した。心外膜始原細胞の細胞運命切り替えの監視については、誘導型Wt1CreERT2/+::R26mTmGモデルに焦点を当て、Wt1-eGFP+誘導体の特異的時間的標識化を確認した。MIの存在または非存在下タモキシフェンでベヒクル処置されたマウスを対照として用いたが、重大なことに、eGFP+心筋細胞様細胞はこれらの心臓では一度も観察されなかった。
【0348】
心筋梗塞の誘導
マウスを用いた外科的実験的手法は全てマサチューセッツ総合病院動物管理使用委員会が承認したプロトコルに従い実施した。イソフルランで麻酔した野生型C57Bl/6、Rosa26-LacZ、Wt1eGFPCre/+またはWt1CreERT2/+::R26mTmGマウス(6~8週齢)において恒久的LAD結紮によりMIを誘導した。心血管再生におけるhVEGF-A MODRNAの効果を決定するため、ベヒクルまたはhVEGF-A MODRNA(100μg/心臓)をLAD結紮直後の梗塞部に注射した。各実験には偽処置対照(心外膜は開いたが、LADは結紮しなかった)も含めた。心臓は結紮後7日目に回収した。心尖部付近の梗塞部は、新鮮凍結してRNAを単離してからリアルタイムqPCR試験に供したか、または4%PFA中に固定して凍結切片化し免疫染色分析に供した。
【0349】
Wt1-eGFP+細胞の単離および特徴づけ
MI後ベヒクルまたはhVEGF-A MODRNAで処置したWt1eGFPCre/+またはWt1CreERT2/+::R26mTmGマウスから回収した心臓の尖部が前述したようにLAD結紮の7日後に回収され、コラゲナーゼII(Sigma(商標))を用いての酵素消化により処理され、単細胞浮遊液を得た。生存eGFP+細胞を、FACSAria II(商標)セルソーターを用いて488nmのレーザー光でeGFP(520/30nmチャネルで回収)を励起し、536nmのレーザー光でPI(610/620nmチャネルで回収)を励起して全心臓細胞集団から単離した。対照として、ベヒクルまたはhVEGF-A MODRNAで処置した無損傷のWt1eGFPCre/+またはWt1CreERT2/+::R26mTmGマウス由来の心臓も7日後に分析した。細胞をAPCが結合されたFlk-1抗体(BD Biosciences(商標))と共に4℃で30分インキュベートした後、PBS/2%FBSで3度洗ってハンクス液中に再懸濁した。細胞分別とフローサイトメトリー分析をFACSAria II(商標)セルソーターとFlowJo(商標)ソフトウェアを用いて行った。後述するように、eGFP+線維芽細胞、心筋細胞、平滑筋および内皮細胞を免疫染色および細胞数により評価した。
【0350】
RNA単離および遺伝子発現プロファイリング
回収した心臓の尖部から、製造者の指示に従い、RNeasy(商標)ミニキット(Qiagen(商標))を使用して全RNAを単離し、Superscript III(商標)RT(Invitrogen(商標))を使用して逆転写した。リアルタイムqPCR分析をSYBR Green(商標)(Quantitect(商標) SYBR Green PCR Kit(商標)、Qiagen(商標))を用いてMastercycler realplex 4 Sequence Detector(商標)(Eppendorff(商標))で行った。データはGapdhとβアクチン発現に対し適宜正規化した(内在性対照)。遺伝子発現の倍率変化は22DDCT法により決定し、ベヒクル処置の心臓に対して提示した。相補的DNAのPCRプライマー配列を本明細書の表2に示す。eGFP+始原細胞を特徴づけるため、LAD結紮7日後にWt1eGFPCre/+またはWt1CreERT2/+::R26mTmGマウス由来のhVEGF-A MODRNA処置またはベヒクル処置の心臓をコラゲナーゼ消化した後FACSAria II(商標)セルソーターを用いてFACSで分別したeGFP+細胞から、全RNAを得た。
【0351】
免疫検出法
免疫染色を、マウス新生児および成体の心臓細胞培養物、ヒト胎児心臓細胞培養物、ならびに偽処置心臓、MI後ベヒクルまたはhVEGF MODRNAで処置された心臓の凍結切片に対し、以下の抗体を用いての標準プロトコルを使用して行った:心筋cTnT(NeoMarkers(商標))、心筋MHC、ビメンチン(R&D systems(商標))、βガラクトシダーゼ、コラーゲンI、心筋cTNI、CD31、CD144、vWF、SMMHC、Wt1およびKi67(Abcam(商標))ならびにFlk1(BD biosciences(商標))。抗eGFP抗体の特異性は、存在するとしてもほんの少数のeGFP+細胞を心外膜領域に有する偽処置心臓の免疫染色により確認された(これは系の「漏れやすさ」であり得る)。凍結切片は、毛細血管密度を決定するためイソレクチンB4(Vector Lab(商標))で免疫染色し、アポトーシスを検出するためTUNEL染色(Roche(商標))を、それぞれ製造者の指示に従い行った。線維症の度合いを調査するため、コラーゲン原繊維に特異結合するピクロシリウスレッド(picrosirius red)を用いて凍結切片を染色した。免疫染色画像の定量化をImageJ(商標)ソフトウェアで実施した。
【0352】
核磁気共鳴画像法(MRI)
野生型C57Bl/6、Rosa26-LacZ、Wt1eGFPCre/+またはWt1CreERT2/+::R26mTmGマウス(6~8週齢)をベヒクルまたはhVEGF-A MODRNAで処置し、LAD結紮後1日目と21日目にMRI評価に供した。梗塞巣のサイズは15~40%の範囲内であり、フォローアップMRI分析を同一マウスに対しMIの21日後に行い梗塞巣のサイズと心機能の経時的変化を決定した。マウスは1~2%のイソフルラン/空気の混合物で麻酔した。心電図(EKG)プローブ、呼吸プローブおよび体温プローブを加温パッド上で保温されているマウスに載置した。画像は4.7T Bruker Biospec(商標)で得た。心臓尖部から底部までに及ぶ短軸断層のスタックおよび直交長軸断層を心電図(ECG)トリガー呼吸同期Flash-CINEシーケンスで、以下のパラメータを用いて得た:繰り返し時間(TR)25ミリ秒、エコー時間(TE)2.8ミリ秒、積算回数4、スライス厚1mm、マトリックスサイズ192×192(2.56×2.56cm)、5~7フレーム/シーケンス(RRインターバルによる)。その結果、1スライス当たりの収集時間は約5分であった。左心室心尖部から心底部にわたり5枚の短軸スライスが得られた。左心室(LV)駆出率は、拡張期LV体積で除算した、心臓拡張期LV体積と心臓収縮期LV体積の差として求めた。CINE-MRIの獲得と分析は処置群を盲検化して行った。
【0353】
統計学的分析
特に断らない限り、統計学的有意差はスチューデントt検定でp<0.05を有意とし決定した。数値は平均値±平均値の標準誤差として報告された。箱ひげ図においては、箱とバーは25、50および75パーセンタイルを、ひげは極値をそれぞれ表す。
【0354】
実施例4
ウサギにおけるhVEGF-A modRNAに基づいた心臓再生治療ストラテジーの臨床前試験
ウサギを用いる実験によって、臨床前試験を容易にするためのModRNAの中間動物モデル(ウサギ)を構築し得る。ModRNA導入の安全性を最適化し、心外膜表面にModRNAを送達する代替法(心筋への注射を必要としないヒドロゲルまたは他の生体高分子であり、それ故、ModRNAの全身的導入のリスクを軽減する)を評価するための実験も実施され得る。実験では、hVEGF-A ModRNAが急性MI同様、慢性MIの治療にも使用可能かどうか評価することができる。
【0355】
ModRNA駆動性遺伝子発現を、未処置のウサギ心臓において調査することができ、マウスにおいて機能する系はウサギにおいても機能することが立証される。ウサギ心臓におけるLacZ ModRNA(100ug、500ug、1mg)の用量反応は心外膜注射を用いて決定することができ、1:1の用量比でアルギン酸カルシウムゲルまたは他の生体高分子を介して注射により送達した場合のウサギにおけるLacZ ModRNA用量反応と比較することができる。両送達法で、ModRNAに誘導されたLacZ発現は、表層画像および断面画像を用いて視覚化して、その2つの方法により発現面積対発現深度を評価することができる。両送達法で、βガラクトシダーゼ対トロポニン、PECAM、ビメンチンおよびsmMHCを同時染色する断面染色計画により、全細胞種が形質移入されていることを確認することができる。さらに、ModRNA導入の両方法で、該作用物質の全身的導入に対する安全性を判定するために末梢血管腫形成の相対評価を行うことができる。
【0356】
ウサギにおける急性MIの背景で注射されるhVEGF-A ModRNA
MIは、前室間動脈の中間部の結紮により実施され得る。hVEGF-AとLacZの同時形質移入を、MIが計画されたときに実行され得る。持続性のLacZ発現により標識される細胞は、こうしてVEGF ModRNAが注射された細胞(注射またはゲルの表面添加の両方が使用可能)を標識することができる。MI後、処置した(modRNAの注射およびゲルによる導入の両方についての)心臓組織の以下の遺伝子のRT-PCRを行った(MIなしの開胸術/心膜切除対照と比較):Wt1、Tbxl8、Nkx2.5、Isl1、TnT、PECAM、ビメンチン、smMHCおよびFlk1。心筋断面染色により、分化して心外膜表面から心筋へと移動する心外膜Wt1細胞の間接的な運命マッピングとしてWt1/LacZ/Ki67の同時局在を評価できる。心筋断面染色により、毛細血管密度(PECAM)、線維芽細胞密度(ビメンチン)、心筋細胞、および細胞死(TUNEL)を評価することができる。トリクローム染色した処置心臓および未処置心臓の短軸断面画像により、処置心臓(2つの処置法)対未処置心臓の瘢痕量を評価することができる。心臓MR画像法は、MI後の心臓の収縮機能に対するModRNA処置の効果を評価するために処置および未処置の動物において実施することもできる。
【0357】
心筋梗塞後のWt1"細胞の上方調整期間の決定
プログラムされた心筋梗塞は、Wt1遺伝子座の対立遺伝子の1つにGFPが存在する遺伝子改変マウスにおいて引き起こすことができる。梗塞を起こさせた動物は、Wt1細胞活性化の経時変化を決定するために(FACS)、8週間まで毎週安楽死させることができる。同じマウス系列の第2組に梗塞を引き起こし、(先述のとおり、MIと同時の処置に対し)MI後に一連のインターバルでhVEGF-A ModRNA処置を行うことができる。VEGF ModRNA処置は、MI後1週間の間隔で8週間まで、または本明細書において先述したように瘢痕量の免疫組織化学的評価で評価した場合に影響が認められなくなるまで、異なる動物において実施することができる。左心室駆出率も、心臓の核磁気共鳴画像法により評価することができる。mod-RNAを投与されていない負の対照は、現在未知のパラメータであるが、Wt1発現細胞のMI後の増殖持続期間の評価を提供することができる。これらの分析により、MIの1週間後に観察された結果がどの程度持続性があるか、何らかの退行が生じるか否かを評価できる。理論により制限されることを望むものではないが、複数の処置が必要であり得る。亜急性梗塞巣または慢性の梗塞巣がhVEGF-A mod-RNAで有効に治療されるかどうかを決定するために、hVEGF-A mod-RNAをMIの後に(1~8週間まで、1週間ごとの増分)投与することができる。Wt1+細胞刺激とその後の瘢痕サイズに及ぼす効果の大きさは本明細書において上述したように評価することができる。マウスで治療機会域が定義されると、同じ実験をウサギで繰り返すことができる。
【0358】
実施例5
hVEGF-Aの化学修飾型mRNAの局所的送達による膵臓腺癌薬治療の強化および腫瘍増殖にかかわる他の要因
膵管腺癌(PDAC)関連の致死率は初診から5年以内で95%である。ゲムシタビンなどの細胞傷害性化学療法剤はインビトロでは腺癌に非常に有効であるが、臨床現場ではその効果は限定的である。この最適以下の応答は、多くの腫瘍において腺癌細胞を取り囲む間質細胞からなる線維形成層をこのような作用物質が通過不能であることに付随して起こる疑いがある1,2。この間質細胞塊は腫瘍により増殖し個体の腫瘍塊の80%を構成し得るのだが、その存在は化学療法に対する臨床反応不良と相関がある3。進行型PDACの代替的な治療ストラテジー、特に腫瘍への血液供給量を減らすVEGF阻害剤の使用も臨床現場では成功しなかった4~7。したがって、細胞傷害性化学療法剤の効果を増強するこの線維形成層の透過性上昇および/または縮小が膵臓腺癌治療の新規補助となり得る1,2。VEGF阻害に成功していないので、VEGFの局所的送達が、単独または既存の細胞傷害性化学療法剤との併用で、PDACの増殖阻害の新規パラダイムになることがあり得る。他のいくつかの分子標的、特にヘッジホッグ(Hh)をPDAC線維形成の低下のために活用することができるが、そのヘッジホッグは、PDAC腫瘍と関連のある線維形成組織の増殖の中心であることが示されている8。Hhリガンド依存性シグナル伝達の阻害は、膵管癌の増殖を阻害する有望なストラテジーである1,9。いくつかのHhリガンドが標的とされており、これにはHgの結合パートナーであるスムーズンド(Smo)とパッチド1(Ptc1)が含まれる8,10。下流エフェクター、特にGliも標的とされている11,12。機序としては有望であるが、全身送達薬剤を用いるVEGFおよびHh関連因子の標的化は、有害な副作用が懸念され困難である。
【0359】
PDAC腫瘍を取り囲む線維形成組織の存在は、化学療法剤の侵入を阻み、腺癌細胞を標的とする細胞傷害性化学療法剤の臨床的失敗をもたらす。VEGF-Aの化学修飾型mRNAをPDAC腫瘍内および周囲に局所的に送達することで、この線維形成性被膜をバイパスし、腺癌組織への薬剤送達を改善することができる血管新生をもたらすことができ、そうして応答不全が低下し得る13。この局所的送達ストラテジーは、全身的VEGF発現に関連する転移性播種のリスク回避に役立ち得る。化学修飾型RNAの局所的送達はヘッジホッグ関連シグナル伝達の阻害にも有用であり得るが、そのヘッジホッグ関連シグナル伝達は腫瘍増殖およびこの線維形成組織の増殖に関与することが示されている8。本明細書では、PDAC線維形成腫瘍間質の特性を同様に改変し治療への臨床的反応を改善する、Hhリガンド(SmoやPtc1など)および下流エフェクター(Gliなど)に対する化学修飾型アンチセンスRNAの使用に関する組成物および方法を説明する9~12。
【0360】
本明細書では、化学修飾型RNAを膵臓に導入しタンパク質の局所的発現を推進するためのインビボ方法の開発を説明する13。このタンパク質発現系は、PDACの既存の化学療法剤の代替として評価され得る。
【0361】
野生型マウス膵臓における修飾型RNAの実質細胞への直接注入によるルシフェラーゼの発現
化学修飾型RNAを用いてLacZおよびルシフェラーゼをマウス膵臓においてインビボで発現させることができる。この手法は外転および修飾型RNAの組織への直接注入と共に膵臓の外科的露出を含み得る。発現を達成する最適用量が評価され得る。
【0362】
マウス膵臓におけるルシフェラーゼのインビボの発現は前段落に記載の手法により達成され得る。用量はLacZ実験から知り得る。この実験を行う目的は、注射後のタンパク質発現の経時変化を決定することである。IVISイメージングを発現追跡に使用することができる。
【0363】
野生型マウス膵臓における修飾型RNAの実質細胞への直接注入によるVEGF-Aの発現
実行可能性は、VEGF-A修飾型RNAのインビボ注射により決定され得る。用量は、この実施例で上述した実験結果により決定され得る。タンパク質発現は、注射から48時間以内に免疫組織化学法を使用して測定され得る。
【0364】
VEGF-A修飾型RNAのインビボ注射は、タンパク質発現の生理学的「読み出し」を決定するために分析され得る。処置動物対偽処置動物の血管新生は、注射の3週間後に行われる肉眼による観察と塩基性のヘマトキシリン・エオシン染色を使用して比較することができる。
【0365】
PDACマウスモデル(LSL-KrasG12D;p53 L/+)14の膵臓腺癌腫瘍におけるVEGF-Aの発現と腫瘍血管新生の評価およびかかる処置腫瘍内のゲムシタビンレベルに及ぼす推定効果
膵臓腫瘍および周辺組織へのVEGF-Aインビボ注射の影響は、注射後の複数時点(1、2および3週間)で組織学的分析による腫瘍組織診断(血管新生、腫瘍サイズ、線維形成性被膜)により決定され得る。
【0366】
VEGF-Aは膵臓腫瘍および周辺組織に注射され得る。ゲムシタビンは標準的態様で複数時点に投与され得る(同時に、ならびに修飾型RNA注射の1、2および3週間後に)。腫瘍組織学上の影響(血管新生、腫瘍サイズ、線維形成性被膜)は注射後の複数時点(1、2および3週間)での組織学的分析により評価され得る。処置腫瘍対未処置腫瘍のゲムシタビンレベルの直接的アッセイは、VEGFが腫瘍内で作用物質レベルを上昇させるかどうか評価するために実施されよう1,2。この一連の実験により、VEGF-Aとゲムシタビンの投与の間の最適なタイミングを決定できる。これらの実験は、HhのリガンドであるSmo、Ptc1、ならびにHhの下流エフェクターであるGliに対する化学修飾型アンチセンスRNAを用いて反復可能である。膵臓腺癌のマウスモデルを用いて、Smo、Ptc1およびGliに対する化学修飾型アンチセンスRNAが注射され得る。注射部位におけるタンパク質発現の低下は免疫組織化学的に確認され得る。組織塊はウエスタンブロット法で評価することもできる。化学修飾型アンチセンスRNAがタンパク質発現のレベルを低下させ得ることが一旦確認されると、このような腫瘍縮小効果の試験を本明細書において上述のように前述のモデル系において実施することができる。
【0367】
【0368】
【0369】
【0370】
参照文献
参照文献は、ここに、それらの全体の参照によりそれぞれ本明細書に組み込まれる。
【配列表】