(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】放射線撮像装置及び放射線検出器
(51)【国際特許分類】
G01T 1/24 20060101AFI20240219BHJP
【FI】
G01T1/24
(21)【出願番号】P 2021146032
(22)【出願日】2021-09-08
【審査請求日】2023-10-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小野内 雅文
(72)【発明者】
【氏名】石津 崇章
【審査官】後藤 慎平
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-504297(JP,A)
【文献】特開2009-025149(JP,A)
【文献】特開2020-038185(JP,A)
【文献】国際公開第2020/202617(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0131776(US,A1)
【文献】特開2002-040145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00-1/16
G01T 1/167-7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を被写体に照射する放射線源と、
前記放射線の光子のエネルギーに応じて電荷を生成する半導体層と、前記電荷を画素毎に計数する光子計数回路とを有する複数の検出素子モジュールと、前記放射線源と前記半導体層との間に配置され、前記放射線が通過する複数の通過孔を形成する複数の壁を有するコリメータと、を備える放射線撮像装置であって、
前記半導体層に複数のサブ画素が形成され、
前記コリメータの壁によって区切られた1つ以上のサブ画素がマクロ画素としてグループ化される際に、
前記検出素子モジュールの端部から複数のマクロ画素のサイズが、前記検出素子モジュールの端部から複数のマクロ画素以外のマクロ画素のサイズよりも小さく、
前記検出素子モジュールの端部から並ぶマクロ画素のサイズは均一であることを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の放射線撮像装置であって、
前記検出素子モジュールの端部から並ぶマクロ画素のサイズEは、サイズの小さいマクロ画素の数がn、前記検出素子モジュールの間の隙間がW、サイズがEであるマクロ画素以外のマクロ画素のサイズがXであるとき、E=(X-W/2)/nとして算出されることを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項3】
放射線を被写体に照射する放射線源と、
前記放射線の光子のエネルギーに応じて電荷を生成する半導体層と、前記電荷を画素毎に計数する光子計数回路とを有する複数の検出素子モジュールと、前記放射線源と前記半導体層との間に配置され、前記放射線が通過する複数の通過孔を形成する複数の壁を有するコリメータと、を備える放射線撮像装置であって、
前記半導体層に複数のサブ画素が形成され、
前記コリメータの壁によって区切られた1つ以上のサブ画素がマクロ画素としてグループ化される際に、
前記検出素子モジュールの端部から複数のマクロ画素のサイズが、前記検出素子モジュールの端部から複数のマクロ画素以外のマクロ画素のサイズよりも小さく、
前記検出素子モジュールの内部の隙間である内部隙間が有る場合、前記内部隙間に隣接するマクロ画素のサイズは、その隣のマクロ画素のサイズよりも小さいことを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項4】
放射線を被写体に照射する放射線源と、
前記放射線の光子のエネルギーに応じて電荷を生成する半導体層と、前記電荷を画素毎に計数する光子計数回路とを有する複数の検出素子モジュールと、前記放射線源と前記半導体層との間に配置され、前記放射線が通過する複数の通過孔を形成する複数の壁を有するコリメータと、を備える放射線撮像装置であって、
前記半導体層に複数のサブ画素が形成され、
前記コリメータの壁によって区切られた1つ以上のサブ画素がマクロ画素としてグループ化される際に、
前記検出素子モジュールの端部から複数のマクロ画素のサイズが、前記検出素子モジュールの端部から複数のマクロ画素以外のマクロ画素のサイズよりも小さく、
前記検出素子モジュールの端部に配置されるサイズの小さい複数のマクロ画素を構成するサブ画素のサイズが均一であることを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項5】
放射線源から被写体に照射された放射線の光子のエネルギーに応じて電荷を生成する半導体層と、前記電荷を画素毎に計数する光子計数回路とを有する複数の検出素子モジュールと、前記放射線源と前記半導体層との間に配置され、前記放射線が通過する複数の通過孔を形成する複数の壁を有するコリメータと、を備える放射線検出器であって、
前記半導体層に複数のサブ画素が形成され、
前記コリメータの壁によって区切られた1つ以上のサブ画素がマクロ画素としてグループ化される際に、
前記検出素子モジュールの端部から複数のマクロ画素のサイズが、前記検出素子モジュールの端部から複数のマクロ画素以外のマクロ画素のサイズよりも小さく、
前記検出素子モジュールの端部から並ぶマクロ画素のサイズは均一であることを特徴とする放射線検出器。
【請求項6】
請求項
5に記載の放射線検出器であって、
前記検出素子モジュールの端部から並ぶマクロ画素のサイズEは、サイズの小さいマクロ画素の数がn、前記検出素子モジュールの間の隙間がW、サイズがEであるマクロ画素以外のマクロ画素のサイズがXであるとき、E=(X-W/2)/nとして算出されることを特徴とする放射線検出器。
【請求項7】
放射線源から被写体に照射された放射線の光子のエネルギーに応じて電荷を生成する半導体層と、前記電荷を画素毎に計数する光子計数回路とを有する複数の検出素子モジュールと、前記放射線源と前記半導体層との間に配置され、前記放射線が通過する複数の通過孔を形成する複数の壁を有するコリメータと、を備える放射線検出器であって、
前記半導体層に複数のサブ画素が形成され、
前記コリメータの壁によって区切られた1つ以上のサブ画素がマクロ画素としてグループ化される際に、
前記検出素子モジュールの端部から複数のマクロ画素のサイズが、前記検出素子モジュールの端部から複数のマクロ画素以外のマクロ画素のサイズよりも小さく、
前記検出素子モジュールの内部の隙間である内部隙間が有る場合、前記内部隙間に隣接するマクロ画素のサイズは、その隣のマクロ画素のサイズよりも小さいことを特徴とする放射線検出器。
【請求項8】
放射線源から被写体に照射された放射線の光子のエネルギーに応じて電荷を生成する半導体層と、前記電荷を画素毎に計数する光子計数回路とを有する複数の検出素子モジュールと、前記放射線源と前記半導体層との間に配置され、前記放射線が通過する複数の通過孔を形成する複数の壁を有するコリメータと、を備える放射線検出器であって、
前記半導体層に複数のサブ画素が形成され、
前記コリメータの壁によって区切られた1つ以上のサブ画素がマクロ画素としてグループ化される際に、
前記検出素子モジュールの端部から複数のマクロ画素のサイズが、前記検出素子モジュールの端部から複数のマクロ画素以外のマクロ画素のサイズよりも小さく、
前記検出素子モジュールの端部に配置されるサイズの小さい複数のマクロ画素を構成するサブ画素のサイズが均一であることを特徴とする放射線検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光子計数型検出器を搭載した放射線撮像装置に係り、光子計数型検出器の画素間の感度の差異を低減することに関する。
【背景技術】
【0002】
光子計数型検出器は、入射する放射線の光子を個々に計数するととともに、各光子のエネルギーを計測する。そのため、光子計数型検出器を搭載したフォトンカウンティングCT(Computed Tomography)装置は、従来の電荷積分型の検出器を搭載したCT装置に比べてより多くの情報を得ることができる。
【0003】
光子計数型検出器は、入射する光子のエネルギーに応じて電荷を生成する半導体層と、生成された電荷を画素毎に計数する光子計数回路とが積層された複数のモジュールが、放射線の入射方向と直交する面内に配置されて構成される。モジュール内の画素は一定のピッチであるのに対し、同一面内に配置されるモジュール間には隙間が生じるため、隣接するモジュールの境界部において画素のピッチがずれる。
【0004】
特許文献1には、モジュールの境界部においても画素ピッチの連続性を維持するために、境界部における画素サイズを境界部以外の画素サイズよりも小さく形成することと、境界部の画素の出力信号を画素サイズ×開口率に応じて補正することが開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1では、画素サイズが異なることによって生じる画素間の感度の差異に対する配慮が不十分である。光子計数回路には、1個の光子を計数してから次の光子を計数できるようになるまでの時間である不感時間があるため、単位時間に入射する光子数である光子入射レートが高くなると感度が低下し、画素サイズの比に応じた出力信号の補正では不十分である。また、別の対処法として、モジュール間の隙間を減らし、境界部における画素サイズの削減量を抑制することも考えられるが、公差設計の観点からモジュール間の隙間を減らすことは現実的ではない。このような公差設計を行ってしまうと、モジュール同士が干渉し配列が不可能となってしまう。
【0007】
そこで本発明は、光子入射レートが高い場合であっても、画素間の感度の差異を十分に低減可能な放射線撮像装置及び放射線検出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、放射線を被写体に照射する放射線源と、前記放射線の光子のエネルギーに応じて電荷を生成する半導体層と、前記電荷を画素毎に計数する光子計数回路とを有する複数の検出素子モジュールと、前記放射線源と前記半導体層との間に配置され、前記放射線が通過する複数の通過孔を形成する複数の壁を有するコリメータと、を備える放射線撮像装置であって、前記半導体層に複数のサブ画素が形成され、前記コリメータの壁によって区切られた1つ以上のサブ画素がマクロ画素としてグループ化される際に、前記検出素子モジュールの端部から複数のマクロ画素のサイズが、前記検出素子モジュールの端部から複数のマクロ画素以外のマクロ画素のサイズよりも小さいことを特徴とする。
【0009】
また本発明は、放射線源から被写体に照射された放射線の光子のエネルギーに応じて電荷を生成する半導体層と、前記電荷を画素毎に計数する光子計数回路とを有する複数の検出素子モジュールと、前記放射線源と前記半導体層との間に配置され、前記放射線が通過する複数の通過孔を形成する複数の壁を有するコリメータと、を備える放射線検出器であって、前記半導体層に複数のサブ画素が形成され、前記コリメータの壁によって区切られた1つ以上のサブ画素がマクロ画素としてグループ化される際に、前記検出素子モジュールの端部から複数のマクロ画素のサイズが、前記検出素子モジュールの端部から複数のマクロ画素以外のマクロ画素のサイズよりも小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光子入射レートが高い場合であっても、画素間の感度の差異を十分に低減可能な放射線撮像装置及び放射線検出器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明が適用されるX線CT装置の全体構成を示す図である。
【
図2】光子計数回路の入出力特性の一例を示す図である。
【
図3】従来の光子計数型検出器の画素サイズと隣接する画素間の面積比について説明する図である。
【
図4】第一実施形態の光子計数型検出器の画素サイズと隣接する画素間の面積比について説明する図である。
【
図5】第一実施形態の光子計数型検出器の画素サイズと隣接する画素間の面積比について説明する図である。
【
図6】第二実施形態の光子計数型検出器の画素サイズと隣接する画素間の面積比について説明する図である。
【
図7】第二実施形態の光子計数型検出器の画素サイズと隣接する画素間の面積比について説明する図である。
【
図8】第三実施形態の光子計数型検出器の画素サイズと隣接する画素間の面積比について説明する図である。
【
図9】第四実施形態の光子計数型検出器の画素サイズと隣接する画素間の面積比について説明する図である。
【
図10】第五実施形態の光子計数型検出器の画素サイズと隣接する画素間の面積比について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお本発明の放射線撮像装置は、放射線源と、光子計数型検出器を備える装置に適用される。以降の説明では、放射線がX線であり、放射線撮像装置がX線CT装置である例について述べる。
【0013】
<第一実施形態>
第一実施形態のX線CT装置は、
図1に示すように、X線を被写体7に照射するX線源1と、X線の光子を検出する複数の検出素子が二次元に配列されるX線検出器2と、信号処理部3と、画像生成部4とを備える。なお検出素子中には、光子計数単位としての画素が2次元に構成されている。信号処理部3は、検出素子から出力される検出信号に対し補正等の処理を行うとともに、X線CT装置の各部を制御する。画像生成部4は、信号処理部3で補正等の処理がなされた信号を用いて被写体7の画像を生成する。X線源1とX線検出器2は互いに対向する位置で回転板5に支持され、寝台6に横たわる被写体7の周りを、被写体7に対して相対的に回転するように構成される。
【0014】
X線検出器2は、複数の検出素子モジュール300がX線源1を中心とする円弧状に配列されて構成される。検出素子モジュール300は光子計数型検出器であり、コリメータ301、高電圧配線302、半導体層303、光子計数回路304を有する。なお
図1において、Z軸は回転板5の回転軸の方向であり、Y軸はX線が照射される方向、X軸はYZ面に直交する方向である。つまり円弧状に配列される検出素子モジュール300のそれぞれは、異なるY軸とX軸を有する。
【0015】
半導体層303は、例えばテルル化亜鉛カドミウム(CZT)やテルル化カドミウム(CdTe)等で構成され、入射する光子のエネルギーに相当する電荷を生成する。光子計数回路304は、複数の画素電極306を介して半導体層303に接続され、半導体層303で生成される電荷を画素毎に計数し、計数した結果を計数信号として出力する。コリメータ301は、タングステンやモリブデンのような重金属で形成されるスリットまたはグリッドであり、半導体層303に入射する散乱線を抑制する。高電圧配線302は、半導体層303に高電圧を供給し、画素電極306との間に電界を形成させる。半導体層303で生成される電荷は、形成された電界によって、最も近い画素電極306を介して光子計数回路304へ移動する。すなわち、画素電極306へ移動する電荷が生成される領域が画素に相当する。
【0016】
対向配置されたX線源1とX線検出器2が被写体7の周りを回転する間に、X線源1からのX線照射と、被写体7を透過したX線のX線検出器2での検出とが繰り返される。X線検出器2の光子計数回路304が出力する計数信号は、信号処理部3において補正等の処理を施された後、画像生成部4に送信される。画像生成部4では送信された信号に基づいて被写体7の断層画像、いわゆるCT像が生成される。CT画像の画質を担保するには、光子計数回路304の感度が均一であることが要求される。
【0017】
図2を用いて光子計数回路304の入出力特性の一例について説明する。なお
図2のグラフは、横軸が単位時間に半導体層303へ入射する光子数である光子入射レートICRであり、縦軸が単位時間に光子計数回路304によってカウントされる光子数であるカウントレートOCRである。光子計数回路304の理想的な入出力特性は、光子入射レートICRとカウントレートOCRの比OCR/ICRである感度が一定の線形応答である。しかし光子計数回路304には、1個の光子を計数してから次の光子を計数できるようになるまでの時間である不感時間τがあるため、光子入射レートが高くなるに連れて感度が低下するような非線形応答となる。入出力特性が非線形応答であると、単位面積あたりの光子入射レートが同一であっても画素サイズが異なることにより感度の差異が生じ、画素サイズの比に応じた出力信号の補正では不十分である。
【0018】
図3を用いて従来の光子計数型検出器の画素サイズと隣接する画素間の面積比について説明する。なお
図3の(a)は検出素子モジュール300の正面図、(b)は平面図である。検出素子モジュール300は、例えばX方向に8画素、Z方向に16画素が配列され、検出素子モジュール300の間に隙間W33を有する。半導体層303には画素が2次元に構成されるが、それらの画素とコリメータ301の開口部305とは1対1、あるいは、N対1で対応する。表現を替えると、コリメータ301の壁によって半導体層に形成される複数の画素は1つ以上の画素を含むようにグループ化される。
図3は1対1対応の例であり、
図9は4対1対応の例である。このように、半導体層303上に構成される画素と、開口部305としての画素の2種類が存在する。そこで、それらを明確に区別する為に、半導体層303上に構成される画素をサブ画素、開口部305によって定まる画素をマクロ画素と呼ぶこともある。また、マクロ画素を単に画素と表現することもある。なお、前述の1対1対応の場合は、サブ画素=マクロ画素である。コリメータ301は、検出素子モジュール300の端部の壁厚がW32、端部以外の壁厚がW31である。また、壁の間の開口部305の幅、すなわち画素のサイズが検出素子モジュール300の端部でE3、端部以外でX3である。なお、端部の画素のサイズE3は端部以外の画素のサイズX3よりも小さく、E3<X3であり、E3=X3-W33/2である。
【0019】
図3の(c)に、W31=0.2mm、W32=0.1mm、W33=0.1mm、E3=0.75mm、X3=0.8mm、X方向の画素ピッチを1mm、Z方向の画素サイズを同一としたときの検出素子モジュール300の端部近傍の画素の面積比を示す。端部の画素の面積は端部以外の画素の面積に対して0.938である。また
図3の(d)に示される隣接画素間の面積比差分は、絶対値が0.06以上である。画素の面積の差異は、光子計数型検出器の感度の差異に相当するので、従来の光子計数型検出器では隣接する画素の間で6%以上の感度の差異が生じることになり、画質の担保が困難となる。
【0020】
図4を用いて第一実施形態の光子計数型検出器の画素サイズと隣接する画素間の面積比について説明する。なお
図4の(a)は検出素子モジュール400の正面図、(b)は平面図である。検出素子モジュール400は、例えばX方向に8画素、Z方向に16画素が配列され、検出素子モジュール400の間に隙間W43を有する。コリメータ401は、検出素子モジュール400の端部の壁厚がW42、端部以外の壁厚がW41である。また、壁の間の開口部405の幅、すなわち画素のサイズが検出素子モジュール400の端部でE41、端部の隣でE42、それら以外でX4である。なお、端部の画素と端部の隣接画素のサイズE41とE42はそれら以外の画素のサイズX4よりも小さく、E41<E42<X4であり、E41、E42、X4は等差数列である。
【0021】
図4の(c)に、W41=0.2mm、W42=0.1mm、W43=0.1mm、E41=0.767mm、E42=0.783mm、X4=0.8mmとしたときの検出素子モジュール400の端部近傍の画素の面積比を示す。なおX方向の画素ピッチは1mmであり、Z方向の画素サイズは同一である。端部の画素の面積と端部の隣接画素の面積はそれら以外の画素の面積に対して、それぞれ0.958と0.979である。またE41、E42、X4が等差数列であるため、
図4の(d)に示される隣接画素間の面積比差分は、絶対値が約0.02以下となり、従来の約1/3に抑制できる。
【0022】
以上説明したように、
図4に例示される検出素子モジュール400では、端部から2個の画素のサイズがそれら以外の画素のサイズよりも小さいので、画素間の感度の差異を従来よりも小さくできる。また端部から並ぶ画素のサイズが等差数列であるので、隣接画素間の面積比差分が小さく、隣接する画素間の感度の差異を十分に低減できる。なおサイズを小さくする画素の数は2個に限定されない。
【0023】
図5を用いて、端部から3個の画素のサイズがそれら以外の画素サイズよりも小さい光子計数型検出器について説明する。なお
図5の(a)は検出素子モジュール500の正面図、(b)は平面図である。検出素子モジュール500は、例えばX方向に8画素、Z方向に16画素が配列され、検出素子モジュール500の間に隙間W53を有する。コリメータ501は、検出素子モジュール500の端部の壁厚がW52、端部以外の壁厚がW51である。また、壁の間の開口部505の幅、すなわち画素のサイズが検出素子モジュール500の端部でE51、端部の隣でE52、さらに隣でE53、それら以外でX5である。なお、端部から3個の画素のサイズE51、E52、E53はそれら以外の画素のサイズX5よりも小さく、E51<E52<E53<X5であり、E51、E52、E53、X5は等差数列である。
【0024】
図5の(c)に、W51=0.2mm、W52=0.1mm、W53=0.1mm、E51=0.775mm、E52=0.783mm、E53=0.792mm、X5=0.8mmとしたときの検出素子モジュール500の端部近傍の画素の面積比を示す。なおX方向の画素ピッチは1mmであり、Z方向の画素サイズは同一である。端部から3個の画素の面積はそれら以外の画素の面積に対して、それぞれ0.969、0.979、0.990である。またE51、E52、E53、X5が等差数列であるため、
図5の(d)に示される隣接画素間の面積比差分は、絶対値が約0.01以下となり、従来の約1/6に抑制できる。
【0025】
以上説明したように、
図5に例示される検出素子モジュール500では、端部から3個の画素のサイズがそれら以外の画素のサイズよりも小さいので、画素間の感度の差異を従来よりも小さくできる。また端部から並ぶ画素のサイズが等差数列であるので、隣接画素間の面積比差分が小さく、隣接する画素間の感度の差異を十分に低減できる。
【0026】
なお端部からn個の画素のサイズがそれら以外の画素のサイズよりも小さく、端部から並ぶ画素のサイズが等差数列であるとき、等差数列の差Δは次式から算出されても良い。
【0027】
Δ=W/(n・(n+1)) …(式1)
ここで、Wは検出素子モジュールの隙間であり、n≧2である。
【0028】
<第二実施形態>
第一実施形態では、検出素子モジュールの端部から複数の画素のサイズを、それら以外の画素のサイズよりも小さくし、端部から並ぶ画素のサイズを等差数列にすることについて説明した。第二実施形態では、検出素子モジュールの端部から複数の画素のサイズを、それら以外の画素のサイズよりも小さくするとともに、端部から複数の画素のサイズを均一にすることについて説明する。なお第二実施形態には、第一実施形態で説明した構成や機能の一部を適用できるので、同様の構成、機能については同じ符号を用いて説明を省略する。
【0029】
図6を用いて第二実施形態の光子計数型検出器の画素サイズと隣接する画素間の面積比について説明する。なお
図6の(a)は検出素子モジュール600の正面図、(b)は平面図である。検出素子モジュール600は、例えばX方向に8画素、Z方向に16画素が配列され、検出素子モジュール600の間に隙間W63を有する。コリメータ601は、検出素子モジュール600の端部の壁厚がW62、端部以外の壁厚がW61である。また、壁の間の開口部605の幅、すなわち画素のサイズが検出素子モジュール400の端部と端部の隣で等しくE6であり、それら以外でX6である。なお、端部の画素及び端部の隣接画素のサイズE6はそれら以外の画素のサイズX6よりも小さい。すなわちE6<X6である。
【0030】
図6の(c)に、W61=0.2mm、W62=0.1mm、W63=0.1mm、E6=0.775mm、X6=0.8mmとしたときの検出素子モジュール600の端部近傍の画素の面積比を示す。なおX方向の画素ピッチは1mmであり、Z方向の画素サイズは同一である。端部の画素の面積と端部の隣接画素の面積はそれら以外の画素の面積に対して、いずれも0.969である。また
図6の(d)に示される隣接画素間の面積比差分は、絶対値が約0.03以下となり、従来の約1/2に抑制できる。
【0031】
以上説明したように、
図6に例示される検出素子モジュール600では、端部から2個の画素のサイズがそれら以外の画素のサイズよりも小さいので、画素間の感度の差異を従来よりも小さくできる。また端部の画素のサイズと端部の隣の画素のサイズが等しいので製造が容易になる。なおサイズを小さくする画素の数は2個に限定されない。
【0032】
図7を用いて、端部から3個の画素のサイズがそれら以外の画素サイズよりも小さい光子計数型検出器について説明する。なお
図7の(a)は検出素子モジュール700の正面図、(b)は平面図である。検出素子モジュール700は、例えばX方向に8画素、Z方向に16画素が配列され、検出素子モジュール700の間に隙間W73を有する。コリメータ701は、検出素子モジュール700の端部の壁厚がW72、端部以外の壁厚がW71である。また、壁の間の開口部705の幅、すなわち画素のサイズが検出素子モジュール700の端部から3個までが等しくE7であり、それら以外でX7である。なお、端部から3個の画素のサイズE7はそれら以外の画素のサイズX7よりも小さい。すなわちE7<X7である。
【0033】
図7の(c)に、W71=0.2mm、W72=0.1mm、W73=0.1mm、E7=0.783mm、X7=0.8mmとしたときの検出素子モジュール700の端部近傍の画素の面積比を示す。なおX方向の画素ピッチは1mmであり、Z方向の画素サイズは同一である。端部から3個の画素の面積はそれら以外の画素の面積に対して、いずれも0.979である。また
図7の(d)に示される隣接画素間の面積比差分は、絶対値が約0.02以下となり、従来の約1/3に抑制できる。
【0034】
以上説明したように、
図7に例示される検出素子モジュール700では、端部から3個の画素のサイズがそれら以外の画素のサイズよりも小さいので、画素間の感度の差異を従来よりも小さくできる。また端部から並ぶ3個の画素のサイズが均一であるので、製造が容易になる。
【0035】
なお端部からn個の画素のサイズがそれら以外の画素のサイズよりも小さく、均一であるとき、そのサイズEは次式から算出されても良い。
【0036】
E=(X-W/2)/n …(式2)
ここで、Xは端部からn個の画素以外の画素のサイズ、Wは検出素子モジュールの隙間であり、n≧2である。
【0037】
<第三実施形態>
第一実施形態では、検出素子モジュールの間にのみ隙間がある場合について説明した。検出素子モジュールに用いられる半導体層は、面積が大きくなるほど歩留まりが低下するので、より面積の小さい半導体層を用いることで製造原価を低減できる。第三実施形態では、より面積の小さい半導体層が用いるために、検出素子モジュールの内部にも隙間がある場合について説明する。なお第三実施形態には、第一実施形態で説明した構成や機能の一部を適用できるので、同様の構成、機能については同じ符号を用いて説明を省略する。
【0038】
図8を用いて第三実施形態の光子計数型検出器の画素サイズと隣接する画素間の面積比について説明する。なお
図8の(a)は検出素子モジュール800の正面図、(b)は平面図である。検出素子モジュール800は、例えばX方向に8画素、Z方向に8画素が配列され、検出素子モジュール800の間に隙間W83を有するとともに、内部にも隙間W84を有する。すなわち、検出素子モジュール800の内部において、高電圧配線802と半導体層803と光子計数回路804がX方向において2つに分割される。コリメータ801は、検出素子モジュール800の端部の壁厚がW82、端部以外の壁厚がW81である。また、壁の間の開口部805の幅、すなわち画素のサイズは、X軸方向の並び順でE81、E82、E83、E84、E84、E83、E82、E81である。なお、端部から2個の画素のサイズE81とE82は、その隣の画素のサイズE83より小さく、E81<E82<E83であり、E81、E82、E83は等差数列である。さらに検出素子モジュール800の内部の隙間W84に隣接する画素のサイズE84は、その隣の画素のサイズE83より小さい。
【0039】
図8の(c)に、W81=0.2mm、W82=0.1mm、W83=0.1mm、W84=0.050mm、E81=0.767mm、E82=0.783mm、E83=0.792mm、E84=0.783mmとしたときの端部近傍の画素の面積比を示す。なおX方向の画素ピッチは1mmであり、Z方向の画素サイズは同一である。各画素の面積は、最大面積を有する画素であるサイズがE83の画素の面積に対して、それぞれ0.968、0.989、1.000、0.989、0.989、1.000、0.989、0.968である。またE81、E82、E83が等差数列であるため、
図8の(d)に示される隣接画素間の面積比差分は、絶対値が約0.02以下となり、従来の約1/3に抑制できる。
【0040】
以上説明したように、
図8に例示される検出素子モジュール800では、端部から2個の画素のサイズがそれら以外の画素のサイズよりも小さいので、画素間の感度の差異を従来よりも小さくできる。また端部から2個の画素のサイズが等差数列であるので、隣接画素間の面積比差分が小さく、隣接する画素間の感度の差異を十分に低減できる。さらに検出素子モジュール800の内部隙間に隣接する画素のサイズを、その隣の画素のサイズよりも小さくすることにより、画素のピッチが維持され、より面積の小さい半導体層が用いられるので製造原価を低減できる。
【0041】
<第四実施形態>
第一実施形態では、サブ画素とマクロ画素が1対1対応する場合について説明した。第四実施形態では、サブ画素とマクロ画素が4対1対応する場合について説明する。各画素が複数のサブ画素に分割されることにより、計数性能が向上する。なお第四実施形態には、第一実施形態で説明した構成や機能の一部を適用できるので、同様の構成、機能については同じ符号を用いて説明を省略する。
【0042】
図9を用いて第四実施形態の光子計数型検出器の画素サイズと隣接する画素間の面積比について説明する。なお
図9の(a)は検出素子モジュール900の正面図、(b)は平面図である。検出素子モジュール900は、例えばX方向に8画素、Z方向に16画素が配列され、検出素子モジュール900の間に隙間W93を有する。さらに各画素は2×2のサブ画素に分割される。コリメータ901は、検出素子モジュール900の端部の壁厚がW92、端部以外の壁厚がW91である。また、壁の間の開口部905の幅、すなわち画素のサイズが検出素子モジュール900の端部でE91、端部の隣でE92、それら以外でX9である。さらにサブ画素のサイズは、サイズがE91の画素ではE911とE912であり、サイズがE92の画素ではE921とE922である。なお、端部の画素と端部の隣接画素のサイズE91とE92はそれら以外の画素のサイズX9よりも小さく、E91<E92<X9であり、E911、E912、E921、E922、X9/2は等差数列である。
【0043】
図9の(c)に、W91=0.2mm、W92=0.1mm、W93=0.1mm、X9=0.800mm、E911=0.380mm、E912=0.385mm、E921=0.390mm、E922=0.395mmとしたときの端部近傍のサブ画素の面積比を示す。なおX方向の画素ピッチは1mmであり、Z方向の画素サイズは同一である。端部の画素と端部の隣接画素のサブ画素の面積はそれら以外の画素のサブ画素の面積に対して、それぞれ0.950、0.963、0.975、0.988である。またE911、E912、E921、E922、X9/2が等差数列であるため、
図9の(d)に示される隣接サブ画素間の面積比差分は、絶対値が約0.013以下となり、従来の約1/5に抑制できる。
図9に例示されるように画素が複数のサブ画素に分割される場合、サブ画素毎に画素電極が設けられるので、画素電極の配置精度がより厳しくなる。従って、従来の光子計数型検出器のように、検出素子モジュール端部の画素のサイズのみではなく、端部から複数の画素のサイズを小さくし、1画素当たりのサイズ削減量を抑制することが必然となる。
【0044】
以上説明したように、
図9に例示される検出素子モジュール900では、端部から2個の画素のサブ画素のサイズがそれら以外の画素のサブ画素のサイズよりも小さいので、画素間の感度の差異を従来よりも小さくできる。また端部から2個の画素のサブ画素のサイズが等差数列であるので、隣接サブ画素間の面積比差分が小さく、隣接するサブ画素間の感度の差異を十分に低減できる。さらに検出素子モジュール900の各画素がサブ画素に分割されるので計数性能を向上できる。
【0045】
<第五実施形態>
第四実施形態では、サブ画素とマクロ画素が4対1対応する場合であって、さらに端部のサブ画素の面積が等差数列で設定される場合について説明した。第五の実施形態では、サブ画素の面積が等差数列ではなく、略同一に設定される場合について説明する。サブ画素の面積が略同一に設定されることにより、設計、検証が容易になるだけでなく、製造工程が安定する効果がある。なお第五実施形態には、第一実施形態で説明した構成や機能の一部を適用できるので、同様の構成、機能については同じ符号を用いて説明を省略する。
【0046】
図10を用いて第五実施形態の光子計数型検出器の画素サイズと隣接する画素間の面積比について説明する。なお
図10の(a)は検出素子モジュール1000の正面図、(b)は平面図である。検出素子モジュール1000は、例えばX方向に8画素、Z方向に16画素が配列され、検出素子モジュール1000の間に隙間W103を有する。さらに各画素は2×2のサブ画素に分割される。コリメータ1001は、検出素子モジュール1000の端部の壁厚がW102、端部以外の壁厚がW101である。また、壁の間の開口部1005の幅、すなわち画素のサイズが検出素子モジュール1000の端部と端部の隣でE101、それら以外でX10である。さらにサブ画素のサイズは、サイズがE101の画素ではE1011である。なお、端部の画素と端部の隣接画素のサイズE101はそれら以外の画素のサイズX10よりも小さい。
【0047】
図10の(c)に、W101=0.2mm、W102=0.1mm、W103=0.1mm、X10=0.800mm、E1011=0.3775mmとしたときの端部近傍のサブ画素の面積比を示す。なおX方向の画素ピッチは1mmであり、Z方向の画素サイズは同一である。端部の画素と端部の隣接画素のサブ画素の面積はそれら以外の画素のサブ画素の面積に対して、いずれも0.969である。また、
図10の(d)に示される隣接サブ画素間の面積比差分は、絶対値が約0.03以下となり、従来の約1/2に抑制できる。
図10で示した画素が複数のサブ画素に分割される場合においては、画素電極をサブ画素毎に設ける必要がある為、画素電極配置の為の画素寸法制約がより厳しくなる。従って、従来技術のようにモジュール端部画素の寸法のみではなく、モジュール端部から複数画素の寸法を小さくし、1画素当たりの寸法削減量を抑制することが必然となる。
【0048】
以上説明したように、
図10に例示される検出素子モジュール1000では、端部から2個の画素のサブ画素のサイズがそれら以外の画素のサブ画素のサイズよりも小さいので、画素間の感度の差異を従来よりも小さくできる。また端部から2個の画素のサブ画素のサイズが等しいので製造が容易になる。なおサイズを小さくする画素は2個に限定されない。
【0049】
以上、本発明の放射線撮像装置について複数の実施形態を説明した。本発明の放射線撮像装置は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。例えば、X方向の画素ピッチは必ずしも同一としなくても良く、端部から複数の画素のサイズを維持したまま、検出素子モジュールの隙間を広げても良い。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせても良い。さらに、上記実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除しても良い。
【符号の説明】
【0050】
1:X線源、2:X線検出器、3:信号処理部、4:画像生成部、5:回転板、6:寝台、7:被写体、300:検出素子モジュール、301:コリメータ、302:高電圧配線、303:半導体層、304:光子計数回路、305:開口部、306:画素電極、400:検出素子モジュール、401:コリメータ、402:高電圧配線、403:半導体層、404:光子計数回路、405:開口部、500:検出素子モジュール、501:コリメータ、502:高電圧配線、503:半導体層、504:光子計数回路、505:開口部、600:検出素子モジュール、601:コリメータ、602:高電圧配線、603:半導体層、604:光子計数回路、605:開口部、700:検出素子モジュール、701:コリメータ、702:高電圧配線、703:半導体層、704:光子計数回路、705:開口部、800:検出素子モジュール、801:コリメータ、802:高電圧配線、803:半導体層、804:光子計数回路、805:開口部、900:検出素子モジュール、901:コリメータ、902:高電圧配線、903:半導体層、904:光子計数回路、905:開口部、1000:検出素子モジュール、1001:コリメータ、1002:高電圧配線、1003:半導体層、1004:光子計数回路、1005:開口部