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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】ドアトリムモジュールとその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/02 20060101AFI20240219BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
B60R13/02 B
B60J5/00 M
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021146714
(22)【出願日】2021-09-09
(65)【公開番号】P2023039551
(43)【公開日】2023-03-22
【審査請求日】2024-01-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】308013436
【氏名又は名称】小島プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野口 尚克
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-171958(JP,U)
【文献】特開2017-206146(JP,A)
【文献】特開2019-196046(JP,A)
【文献】特開2017-128245(JP,A)
【文献】特開2016-132950(JP,A)
【文献】特開2003-063318(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/58120(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第19738684(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/02
B60J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアボデーの車室内側に配置されて該ドアボデーとともに車両ドアを構成するドアトリムモジュールであって、
(i)前記ドアボデーに組付けられるドアトリム本体と、
(ii)前記ドアトリム本体と別体に形成されて該ドアトリム本体に組付けられるアームレストと、該アームレストと別体に形成されて該アームレストに組付けられるインサイドハンドル装置と、を有するインサイドハンドルモジュールと、
を有し、
前記ドアトリム本体には、前記インサイドハンドルモジュールによって車室内側から覆われる位置にケーブル用開口が形成されており、
前記インサイドハンドル装置は、結線されるケーブルを用いて機械的に前記車両ドアに設けられるロック装置のロックを解除可能とされており、
前記インサイドハンドル装置は、前記ケーブル用開口を挿通している前記ケーブルと結線されている、ドアトリムモジュール。
【請求項2】
前記車両ドアの閉時における車幅方向視で、前記ケーブル用開口は、前記インサイドハンドル装置よりも大とされている、請求項1記載のドアトリムモジュール。
【請求項3】
前記インサイドハンドルモジュールは、前記車両ドアの閉時における車幅方向と交差する方向から、前記ドアトリム本体に組付けられている、請求項1または請求項2記載のドアトリムモジュール。
【請求項4】
前記インサイドハンドル装置は、結線されるワイヤハーネスを用いて電子的に前記ロック装置のロックを解除可能とされており、
前記インサイドハンドル装置は、前記ケーブル用開口を挿通している前記ワイヤハーネスと結線されている、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のドアトリムモジュール。
【請求項5】
前記インサイドハンドル装置は、前記車両ドアを開閉操作する際に握るプルハンドルに配置されている、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のドアトリムモジュール。
【請求項6】
前記ケーブル用開口は、前記車両ドアの閉時において、前記プルハンドルと車両前後方向で異なる位置に形成されている、請求項5記載のドアトリムモジュール。
【請求項7】
インサイドハンドル装置をドアトリム本体とは別体に形成されるアームレストに組付けてインサイドハンドルモジュールを作製する第1工程と、
前記ドアトリム本体をドアボデーに組付けるとともに、該ドアボデーから延びるケーブルを、前記ドアトリム本体に形成されるケーブル用開口を挿通させて前記ドアトリム本体の車室内側に引き出す第2工程と、
前記ケーブルを前記インサイドハンドル装置に結線させるとともに、前記インサイドハンドルモジュールを前記ドアトリム本体に前記ケーブル用開口を覆うようにして組付けて前記インサイドハンドルモジュールと前記ドアトリム本体を有するドアトリムモジュールを作製する第3工程と、
を有するドアトリムモジュールの製造方法。
【請求項8】
前記第3工程では、前記インサイドハンドルモジュールは、車両ドア閉時における車幅方向と交差する方向から前記ドアトリム本体に組付けられる、請求項7記載のドアトリムモジュールの製造方法。
【請求項9】
前記第2工程では、前記ケーブルを前記ケーブル用開口を挿通させて前記ドアトリム本体の車室内側に引き出すとき、前記ドアボデーから延びるワイヤハーネスも前記ケーブル用開口を挿通させて前記ドアトリム本体の車室内側に引き出しており、
前記第3工程では、前記ケーブルを前記インサイドハンドル装置に結線させるとき、前記ワイヤハーネスも前記インサイドハンドル装置に結線させる、請求項7または請求項8記載のドアトリムモジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ドア(車両のサイドドア)のドアトリムモジュールとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、インサイドハンドル装置を操作して該装置に結線されたケーブルを引っ張ることで、車両ドアに設けられるロック装置のロックを解除(ドア開錠)する技術を開示している。該公報開示の技術では、インサイドハンドル装置をドアトリム本体(トリムボード)に組付けた後に、インサイドハンドル装置付きのドアトリム本体を、ドアボデー(車体パネル)に組付けている。
【0003】
ところで、図10に示すように、アームレスト3にインサイドハンドル装置4が設定されたドアトリム1がある。このようなドアトリム1は、現状、上記公報開示の技術と同様に、インサイドハンドル装置4がドアトリム本体2に組付けられてアッセンブリ化された状態で、車両への組付工程に納入されてドアボデー6に組付けられている。そのため、図11に示すように、車両への組付けにおいてドアボデー6に固定されたケーブル7の余長を使っての作業になるので作業者Pの作業スペースが少なく、また、ドアトリム1を抱えながらドアトリム1の上辺(上方)から覗き込むような作業姿勢となり、作業性が良くない。
【0004】
このような状況のため、アームレスト3にインサイドハンドル装置4が設定されたドアトリム1では、ドアトリム本体2やアームレスト3が邪魔になり、ケーブル7のインサイドハンドル装置4への結線部を視認できないだけでなく、作業スペース不足によりケーブル7をインサイドハンドル装置4へ結線できないおそれや、作業者から遠く作業者の腕が結線部まで届かないおそれがある。
【0005】
そこで、解決策として現状では、図12に示すように、作業者Pがケーブル7を結線できるドアトリム1位置に中継点8を設け、インサイドハンドル装置4から中継点8まで延びるサブケーブル9を追加している。そして、ケーブル7を中継点8で結線するようにしている。
【0006】
しかし、結線作業を可能にするために、中継点8を設けサブケーブル9を追加しているため、コストが上がってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-206142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、従来に比べて、コストダウンを図ることができ、ドアボデーへの組付けを容易に行うことができる、ドアトリムモジュールとその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明はつぎの通りである。
(1)ドアボデーの車室内側に配置されて該ドアボデーとともに車両ドアを構成するドアトリムモジュールであって、
(i)前記ドアボデーに組付けられるドアトリム本体と、
(ii)前記ドアトリム本体と別体に形成されて該ドアトリム本体に組付けられるアームレストと、該アームレストと別体に形成されて該アームレストに組付けられるインサイドハンドル装置と、を有するインサイドハンドルモジュールと、
を有し、
前記ドアトリム本体には、前記インサイドハンドルモジュールによって車室内側から覆われる位置にケーブル用開口が形成されており、
前記インサイドハンドル装置は、結線されるケーブルを用いて機械的に前記車両ドアに設けられるロック装置のロックを解除可能とされており、
前記インサイドハンドル装置は、前記ケーブル用開口を挿通している前記ケーブルと結線されている、ドアトリムモジュール。
(2) 前記車両ドアの閉時における車幅方向視で、前記ケーブル用開口は、前記インサイドハンドル装置よりも大とされている、(1)記載のドアトリムモジュール。
(3) 前記インサイドハンドルモジュールは、前記車両ドアの閉時における車幅方向と交差する方向から、前記ドアトリム本体に組付けられている、(1)または(2)に記載のドアトリムモジュール。
(4) 前記インサイドハンドル装置は、結線されるワイヤハーネスを用いて電子的に前記ロック装置のロックを解除可能とされており、
前記インサイドハンドル装置は、前記ケーブル用開口を挿通している前記ワイヤハーネスと結線されている、(1)~(3)のいずれか1つに記載のドアトリムモジュール。
(5) 前記インサイドハンドル装置は、前記車両ドアを開閉操作する際に握るプルハンドルに配置されている、(1)~(4)のいずれか1つに記載のドアトリムモジュール。
(6) 前記ケーブル用開口は、前記車両ドアの閉時において、前記プルハンドルと車両前後方向で異なる位置に形成されている、(5)記載のドアトリムモジュール。
(7) インサイドハンドル装置をドアトリム本体とは別体に形成されるアームレストに組付けてインサイドハンドルモジュールを作製する第1工程と、
前記ドアトリム本体をドアボデーに組付けるとともに、該ドアボデーから延びるケーブルを、前記ドアトリム本体に形成されるケーブル用開口を挿通させて前記ドアトリム本体の車室内側に引き出す第2工程と、
前記ケーブルを前記インサイドハンドル装置に結線させるとともに、前記インサイドハンドルモジュールを前記ドアトリム本体に前記ケーブル用開口を覆うようにして組付けて前記インサイドハンドルモジュールと前記ドアトリム本体を有するドアトリムモジュールを作製する第3工程と、
を有するドアトリムモジュールの製造方法。
(8) 前記第3工程では、前記インサイドハンドルモジュールは、車両ドア閉時における車幅方向と交差する方向から前記ドアトリム本体に組付けられる、(7)記載のドアトリムモジュールの製造方法。
(9) 前記第2工程では、前記ケーブルを前記ケーブル用開口を挿通させて前記ドアトリム本体の車室内側に引き出すとき、前記ドアボデーから延びるワイヤハーネスも前記ケーブル用開口を挿通させて前記ドアトリム本体の車室内側に引き出しており、
前記第3工程では、前記ケーブルを前記インサイドハンドル装置に結線させるとき、前記ワイヤハーネスも前記インサイドハンドル装置に結線させる、(7)または(8)記載のドアトリムモジュールの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
上記(1)のドアトリムモジュールまたは上記(7)のドアトリムモジュールの製造方法では、つぎの効果を得ることができる。
インサイドハンドルモジュールが、ドアトリム本体と別体に形成されてドアトリム本体に組付けられるアームレストと、アームレストと別体に形成されてアームレストに組付けられるインサイドハンドル装置と、を有するため、ドアトリム本体をドアボデーに組付けた後に、インサイドハンドルモジュールをドアトリム本体に組付けることができる。
また、ドアトリム本体にはケーブル用開口が形成されているため、ドアトリム本体をドアボデーに組付けるときに、ケーブルをケーブル用開口からドアトリム本体の車室内側に引き出しておくことができる。そのため、インサイドハンドルモジュールをドアトリム本体に組付けるときに、ケーブル用開口から引き出して配線されたケーブルを、インサイドハンドル装置に直接結線することができる。その際、ドアトリム本体はドアボデーに組付けられた状態であるため、インサイドハンドルモジュールのみを抱えながら作業することになり、ドアトリムモジュール全体を抱えながらケーブルを結線させつつドアトリムモジュールをドアボデーに組付ける場合(従来)に比べて、ドアトリムモジュールのドアボデーへの組付けを容易に行うことができる。
【0011】
また、ドアトリム本体にはケーブル用開口が形成されており、インサイドハンドル装置がケーブル用開口を挿通しているケーブルと結線されているため、従来要していた中継点やサブケーブルを用いることなくケーブルをインサイドハンドル装置に直接結線できる。そのため、従来に比べてコストダウンを図ることができる。
【0012】
上記(2)のドアトリムモジュールでは、車両ドアの閉時における車幅方向視で、ケーブル用開口がインサイドハンドル装置よりも大とされているため、ケーブル用開口がインサイドハンドル装置よりも小とされている場合に比べて、ケーブル用開口を通してケーブルをドアトリム本体の車室内側に容易に引き出すことができる。
【0013】
上記(3)のドアトリムモジュールまたは上記(8)のドアトリムモジュールの製造方法では、インサイドハンドルモジュールが、車両ドアの閉時における車幅方向と交差する方向から、ドアトリム本体に組付けられているため、車両ドアを勢いよく閉じたときや車両の側面衝突時等、車両ドアに車幅方向の衝撃が加わった際に、インサイドハンドルモジュールがドアトリム本体から外れて脱落することを抑制できる。
【0014】
上記(4)のドアトリムモジュールまたは上記(9)のドアトリムモジュールの製造方法では、インサイドハンドル装置が、ケーブル用開口を挿通しているワイヤハーネスと結線されているため、ケーブルだけでなくワイヤハーネスにあっても、上記(1)で得られる効果と同様の効果を得ることができる。
【0015】
上記(6)のドアトリムモジュールでは、ケーブル用開口が、車両ドアの閉時において、プルハンドルと車両前後方向で異なる位置に形成されているため、インサイドハンドル装置がプルハンドルに配置される場合であっても、ケーブルをインサイドハンドル装置に結線する際に、プルハンドルの車外側にある凹部を避けて配線させて結線させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明実施例のドアトリムモジュールを有する車両ドアの概略斜視図である。
図2】本発明実施例のドアトリムモジュールを有する車両ドアの、インサイドハンドルモジュールが分解された状態にある斜視図である。
図3】本発明実施例のドアトリムモジュールにおける、インサイドハンドル装置の斜視図である。
図4図2のA-A線拡大断面図である。
図5】本発明実施例のドアトリムモジュールにおける、ドアトリム本体とインサイドハンドルモジュールとの分解斜視図である。
図6A】本発明実施例のドアトリムモジュールの、インサイドハンドル装置がロック装置のロックを機械的および電子式に解除可能とされている場合であって機械的に解除する場合の部分断面図である。
図6B】本発明実施例のドアトリムモジュールの、インサイドハンドル装置がロック装置のロックを機械的および電子式に解除可能とされている場合であって電子式に解除する場合の部分断面図である。
図7】本発明実施例のドアトリムモジュールにおける、インサイドハンドル装置がアームレストの上面に設定されている場合の、インサイドハンドル装置とその近傍の斜視図である。
図8】本発明実施例とは異なる、本発明実施例の比較例を示す断面図である。
図9】本発明実施例とは異なる、本発明実施例の別の比較例を示す斜視図である。
図10】従来のドアトリムモジュールを有する車両ドアの概略分解斜視図である。
図11】従来のドアトリムモジュールを有する車両ドアの模式断面図である。
図12】従来のドアトリムモジュールの、中継点とサブケーブルが設定されている場合の概略背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照して、本発明実施例のドアトリムモジュール10を説明する。なお、図中UPは車両上方、FRは車両前方、OUTは反車室内側を示す。
【0018】
ドアトリムモジュール10は、図1に示すように、金属製のドアボデー100の車室内側に配置されて該ドアボデー100とともに車両ドア(車両のサイドドア)200を構成している。
【0019】
ドアボデー100に、ロック装置(ドアラッチといってもよい)110が設けられている。ロック装置110は、車両ドア200が取付けられる車体に設けられるストライカ(図示略)に、車両ドア200が閉状態にあるときに係脱可能とされている。ロック装置110がストライカに係合しているとき、ロック装置110によって車両ドア200がロック状態にあり、ロック装置110がストライカから離脱したとき、ロック装置110による車両ドア200のロックが解除される。
【0020】
ドアトリムモジュール10は、図2に示すように、ドアトリム本体20と、インサイドハンドルモジュール30と、を有する。
【0021】
ドアトリム本体20は、樹脂製である。ドアトリム本体20は、一部品構成であってもよく、別体に形成されて互いに固定される複数部品構成であってもよい。ドアトリム本体20は、ドアボデー100に車室内側から組付けられる。ドアトリム本体20の上下方向の中間部には、インサイドハンドルモジュール30によって車室内側から覆われる位置にケーブル用開口21が形成されている。
【0022】
インサイドハンドルモジュール30は、ドアトリム本体20と別体に形成されて、ドアトリム本体20の上下方向中間部に車室内側から組付けられる。インサイドハンドルモジュール30は、車両ドア200の閉時における車幅方向と交差する方向から、図示略の樹脂製のクリップ等を用いてドアトリム本体20に組付けられている。インサイドハンドルモジュール30は、ドアトリム本体20と別体に形成されてドアトリム本体20に組付けられるアームレスト40と、アームレスト40と別体に形成されてアームレスト40に組付けられるインサイドハンドル装置50と、を有する。
【0023】
アームレスト40は、ドアトリム本体20の上下方向の中間部で車両前後方向に延びて設けられる。図1に示すように、アームレスト40の車両前後方向の中間部とドアトリム本体20との間には、上面から下方に凹む上方開放凹形状の凹部41が設けられている。凹部41は、アームレスト40に一体に設けられていてもよく、ドアトリム本体20に上方開放ボックス22を設定することで設けられていてもよい(図2参照)。凹部41が設けられているため、凹部41の車室内側にあるアームレスト40部分が、乗員が車両ドア200を開閉操作する際に握るプルハンドル42となっている。
【0024】
プルハンドル42よりも車両前方側にあるアームレスト40の上面位置には、図示略のサイドウインドウを昇降させるスイッチ等を有するスイッチベース43が設けられていてもよい。スイッチベース43が設けられる場合、スイッチベース43には、図示略のスイッチ用ワイヤハーネスが結線される。この結線は、ハーネス側のコネクタをスイッチベース43側のコネクタに結線させることで行われる。具体的には、ハーネス側のコネクタをスイッチベース43側のコネクタに直線的に挿入させて、ハーネス側のコネクタに設けられる爪(図示略)をスイッチベース43側のコネクタに設けられる嵌合穴(図示略)に嵌合させることで行われる。スイッチ用ワイヤハーネスのスイッチベース43への結線は、ハーネス側のコネクタをスイッチベース43側のコネクタに直線状に挿入させるだけで行われるため、比較的容易であり、後述するケーブル51のインサイドハンドル50cへの結線に比べて極めて容易である。
【0025】
インサイドハンドル装置50は、乗員の操作によってロック装置110による車両ドア200のロックを解除する装置である。インサイドハンドル装置50は、結線されるケーブル51(図5参照)を用いて機械的にロック装置110のロックを解除可能とされている。なお、機械的とは、電子信号(電気信号)を要することがないことを示している。
【0026】
インサイドハンドル装置50は、プルハンドル42に配置されている。ただし、インサイドハンドル装置50は、図7に示すようにアームレスト40の上面などプルハンドル42以外に配置されていてもよい。なお、以下、本発明実施例では、インサイドハンドル装置50がプルハンドル42に配置される場合を説明する。
【0027】
インサイドハンドル装置50は、図6Aに示すように、ベゼル部50aを有するハウジング50bと、インサイドハンドル50cと、を有する。
【0028】
ハウジング50bは、一部品構成であってもよく、複数部品構成であってもよい。ハウジング50bは、アームレスト40に取付けられている。インサイドハンドル50cは、ハウジング50bに、上下方向に延びるハンドル軸芯P1周りに回転可能に支持されている。
【0029】
ケーブル51は、インサイドハンドル50cに結線されている。ケーブル51のインサイドハンドル50cへの結線は、ケーブル51の一端部(ケーブルエンド)51aをハウジング50bに設けられる嵌合穴50b1に入れた後にケーブル51をハウジング50bに対して回転させて一端部51aが嵌合穴50b1から抜けることを抑制させるとともに、ケーブル51の外周側にありケーブル51と同方向に延びるケーブルアウタ53をハウジング50bに設けられる係合部50b2に係合させることで行われる。このため、ケーブル51のインサイドハンドル50cへの結線は、ワイヤハーネスをコネクタに直線状に挿入するだけで結線が行われる場合に比べて、極めて複雑であり難しい作業である。
【0030】
乗員がインサイドハンドル50cを車室内側に引張操作すると、インサイドハンドル50cがハンドル軸芯P1まわりに回転し、ケーブル51が引っ張られる。これにより、乗員の操作力がケーブル51にてロック装置110に伝達され、車両ドア200のロックが解除されるようになっている(機械的解除)。
【0031】
図6Bに示すように、インサイドハンドル装置50は、結線されるワイヤハーネス52を用いて電子的(電気的)にも、ロック装置110のロックを解除可能とされている。なお、電子的(電気的)とは、電子信号(電気信号)を要することを示している。
【0032】
インサイドハンドル装置50は、ハウジング50bに可動に支持されるスイッチ50dと、ハウジング50bに固定されるコネクタ50eと、を有している。スイッチ50dは、乗員によって押されて動く。スイッチ50dは、乗員によって直接押されて動くようにされていてもよく、図示例のようにインサイドハンドル50cの裏側(車外側)に配置されて乗員がインサイドハンドル50cを車外側に押すことによりインサイドハンドル50cを介して押されて動くようにされていてもよい。
【0033】
ワイヤハーネス52は、コネクタ50eに結線されている。ワイヤハーネス52のコネクタ50eへの結線は、ワイヤハーネス52側のコネクタをインサイドハンドル装置50側のコネクタ50eに直線的に挿入させて、ワイヤハーネス52側のコネクタに設けられる爪(図示略)をインサイドハンドル装置50側のコネクタ50eに設けられる嵌合穴(図示略)に嵌合させることで行われる。このため、ワイヤハーネス52のインサイドハンドル装置50への結線は、ワイヤハーネス52側のコネクタをインサイドハンドル装置50側のコネクタ50eに直線状に挿入させるだけで行われるため比較的容易であり、ケーブル51のインサイドハンドル50cへの結線に比べて極めて容易である。
【0034】
乗員がインサイドハンドル50cを車外側に押圧操作すると、スイッチ50dがインサイドハンドル50cによって押されて動く。この結果、乗員の操作がワイヤハーネス52にてロック装置110側に電子的(電気的)に伝達され、車両ドア200のロックが解除されるようになっている(電子的解除)。
【0035】
前述したように、ドアトリム本体20には、ケーブル用開口21が形成されている。そして、インサイドハンドル装置50は、ケーブル用開口21を挿通しているケーブル51と結線されており、さらに、ケーブル用開口21を挿通しているワイヤハーネス52と結線されている。
【0036】
図1に示すように、ケーブル用開口21は、車両ドア200の閉時において、プルハンドル42と車両前後方向で異なる位置に形成されている。なお、図示例では、ケーブル用開口21は、プルハンドル42より車両後方の位置に形成されている。ケーブル用開口21の開口面積は、車両ドア200の閉時における車幅方向視で、インサイドハンドル装置50よりも大とされている。
【0037】
ここで、上記構成のドアトリムモジュール10の製造方法(組付方法、作製方法)を説明する。
ドアトリムモジュール10の製造方法は、
(a)インサイドハンドル装置50をドアトリム本体20とは別体に形成されるアームレスト40に組付けてインサイドハンドルモジュール30を作製する第1工程と、
(b)ドアトリム本体20をドアボデー100に組付けるとともに、ドアボデー100から延びるケーブル51を、ドアトリム本体20に形成されるケーブル用開口21を挿通させてドアトリム本体20の車室内側に引き出す第2工程と、
(c)ケーブル用開口21を挿通しておりドアトリム本体20の車室内側に引き出されているケーブル51をインサイドハンドル装置50に結線させるとともに、インサイドハンドルモジュール30をドアトリム本体20にケーブル用開口21を覆うようにして組付けてインサイドハンドルモジュール30とドアトリム本体20を有するドアトリムモジュール10を作製する第3工程と、
をこの順に有する。
【0038】
上記第2工程について
第2工程では、ケーブル51をケーブル用開口21を挿通させてドアトリム本体20の車室内側に引き出すとき、ドアボデー100から延びるワイヤハーネス52も、ケーブル51と同様に、ケーブル用開口21を挿通させてドアトリム本体20の車室内側に引き出す。
【0039】
上記第3工程について
(c1)インサイドハンドルモジュール30は、車両ドア200の閉時における車幅方向と交差する方向から、ドアトリム本体20に組付けられる。
(c2)ケーブル51をインサイドハンドル装置50に結線させるとき、ケーブル用開口21を挿通しておりドアトリム本体20の車室内側に引き出されているワイヤハーネス52も、ケーブル51と同様に、インサイドハンドル装置50に結線させる。
【0040】
つぎに、本発明実施例の作用、効果を説明する。
【0041】
(A)インサイドハンドルモジュール30が、ドアトリム本体20と別体に形成されてドアトリム本体20に組付けられるアームレスト40と、アームレスト40と別体に形成されてアームレスト40に組付けられるインサイドハンドル装置50と、を有するため、ドアトリム本体20をドアボデー100に組付けた後に、インサイドハンドルモジュール30をドアトリム本体20に組付けることができる。
【0042】
(B)ドアトリム本体20にはケーブル用開口21が形成されているため、ドアトリム本体20をドアボデー100に組付けるときに、ケーブル51をケーブル用開口21からドアトリム本体20の車室内側に引き出しておくことができる。そのため、インサイドハンドルモジュール30をドアトリム本体20に組付けるときに、ケーブル用開口21から引き出して配線されたケーブル51を、インサイドハンドル装置50に直接結線することができる。その際、ドアトリム本体20はドアボデー100に組付けられた状態であるため、インサイドハンドルモジュール30のみを抱えながら作業することになり、ドアトリムモジュール10の全体を抱えながらケーブル51を結線させつつドアトリムモジュール10をドアボデー100に組付ける場合(従来)に比べて、ドアトリムモジュール10のドアボデー100への組付けを容易に行うことができる。
【0043】
(C)ドアトリム本体20にはケーブル用開口21が形成されており、インサイドハンドル装置50がケーブル用開口21を挿通しているケーブル51と結線されているため、従来要していた中継点やサブケーブルを用いることなくケーブル51をインサイドハンドル装置50に直接結線できる。そのため、従来に比べてコストダウンを図ることができる。
【0044】
(D)車両ドア200の閉時における車幅方向視で、ケーブル用開口21がインサイドハンドル装置50よりも大とされているため、ケーブル用開口21がインサイドハンドル装置50よりも小とされている場合に比べて、ケーブル用開口21を通してケーブル51をドアトリム本体20の車室内側に容易に引き出すことができる。
【0045】
(E)車両ドア200の閉時における車幅方向視で、ケーブル用開口21がインサイドハンドル装置50よりも大とされているため、インサイドハンドル装置50の大きさをケーブル用開口21の影響を受けずに決めることができる。このため、インサイドハンドル装置50がベゼル部50aを大にするなどしてケーブル用開口21を覆うことができる大きさとされている場合(図9の比較例参照)に比べて、インサイドハンドル装置50のデザイン自由度を大にすることができる。また、車両の側面衝突時にクッションとして機能し得るアームレスト40の範囲を確保できる(側面衝突時における衝突安全性能上有利である)。
【0046】
(F)インサイドハンドルモジュール30が、車両ドア200の閉時における車幅方向と交差する方向から、クリップ等を用いてドアトリム本体20に組付けられているため、車両ドア200を勢いよく閉じたときや車両の側面衝突時等、車両ドア200に車幅方向の衝撃が加わった際に、インサイドハンドルモジュール30がドアトリム本体20から外れて脱落することを抑制できる。
【0047】
(G)インサイドハンドル装置50が、ケーブル用開口21を挿通しているワイヤハーネス52と結線されているため、ケーブル51だけでなくワイヤハーネス52にあっても、上記(B)、(C)で得られる効果と同様の効果を得ることができる。
【0048】
(H)インサイドハンドル装置50が、車両ドア200を開閉操作する際に握るプルハンドル42に配置されている。そのため、インサイドハンドル装置50にケーブル51とワイヤハーネス52を結線する際に、凹部41を避けて配線させて結線させなければならず、作業スペースが不足するだけでなく、配線の経路も極めて複雑化するおそれがある(図8の比較例参照)。しかし、本発明実施例では、ケーブル用開口21が、車両ドア200の閉時においてプルハンドル42と車両前後方向で異なる位置に形成されているため、インサイドハンドル装置50がプルハンドル42に配置される場合であっても、ケーブル51とワイヤハーネス52をインサイドハンドル装置50に結線する際に、プルハンドル42の車外側にある凹部41を避けて配線させて結線させることができる。よって、インサイドハンドル装置50がプルハンドル42に配置される場合であっても、作業スペースを確保でき、配線経路を簡素化できる。この結果、前述したようにケーブル51のインサイドハンドル装置50ヘの結線はワイヤハーネス52の結線に比べて極めて困難な作業であるが、プルハンドル42に配置されるインサイドハンドル装置50にケーブル51を結線させることが可能になる。
【符号の説明】
【0049】
10 ドアトリムモジュール
20 ドアトリム本体
21 ケーブル用開口
30 インサイドハンドルモジュール
40 アームレスト
41 凹部
42 プルハンドル
50 インサイドハンドル装置
50a ベゼル部
50c インサイドハンドル
50d スイッチ
50e コネクタ
51 ケーブル
51a ケーブルの一端部
52 ワイヤハーネス
53 ケーブルアウタ
100 ドアボデー
110 ロック装置
200 車両ドア
P1 ハンドル軸芯
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12