(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】マーキング手段を備えたガラス製ルアーチップとその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61M 39/10 20060101AFI20240219BHJP
A61M 5/158 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
A61M39/10 110
A61M5/158 500H
(21)【出願番号】P 2021500919
(86)(22)【出願日】2019-07-02
(86)【国際出願番号】 EP2019067744
(87)【国際公開番号】W WO2020011603
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2022-06-20
(32)【優先日】2018-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】310021434
【氏名又は名称】ベクトン ディキンソン フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】セドリック リヴィエ
【審査官】村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/122366(WO,A1)
【文献】特開2005-169113(JP,A)
【文献】特表2012-530586(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0350477(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 39/10
A61M 5/158
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩擦ばめ接続を介して対応する中空円錐形メス型継手(6)に接続されることを意図した、注射装置(3)用のガラス製の円錐台形オス型ルアーチップ(1)であって、
前記オス型ルアーチップ
(1)は、ユーザーに、漏れのない接続を完了するための前記メス型継手の近位端(6a)をどこに配置するかを示すように構成されたマーキング手段(4)を含
み、
前記マーキング手段(4)は、標準化された寸法を有するゲージ(8)によって、前記オス型ルアーチップ(1)上に配置する位置が決定されている、ことを特徴とする、ルアーチップ(1)。
【請求項2】
前記マーキング手段は、前記チップの表面に配置された、視覚的インジケーター(4)、触覚的インジケーター、および/または、それらの組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項1に記載のルアーチップ(1)。
【請求項3】
前記マーキング手段は、環状の形状を有することを特徴とする、請求項1または2のいずれか一項に記載のルアーチップ(1)。
【請求項4】
前記マーキング手段は、印刷(4)、彫刻、レリーフ、およびそれらの組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のルアーチップ(1)。
【請求項5】
前記マーキング手段は環状印刷(4)であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のルアーチップ(1)。
【請求項6】
注射装置(3)用のガラス製円錐台形オス型ルアーチップ(1)との漏れのない摩擦ばめ接続を完了するために、対応する中空円錐形メス型継手(6)の近位端(6a)をどこに配置するかをユーザーに示すように構成されたマーキング手段(4)を備えた、注射装置(3)用のガラス製円錐台形オス型ルアーチップ(1)を製造する方法であって、前記方法は以下のステップ:
‐ A)ガラスからチップを予備成形するステップと、
‐ B)前記成形済みチップを焼きなましするステップと、
‐ C)チップ上に前記マーキング手段を配置する位置を決定するために、標準化された寸法を有するゲージ(8)をチップに適用するステップと、
‐ D)前記チップ(1)に前記位置で前記マーキング手段(4)を提供するステップと、
を含み、
ステップB)が、ステップC)の前またはステップD)の後に起こることを特徴とする方法。
【請求項7】
前記ゲージ(8)は、物理的ゲージであることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記物理的ゲージ(8)は、軸方向の力によって前記チップに適用されるステンレス鋼ゲージであることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ゲージ(8)は、カメラによって前記チップに適用される仮想ゲージであることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
ステップB)が、ステップC)の前に起きると、次に、ステップD)が、前記チップ(1)をインク印刷すること、および/または前記チップをレーザー印刷することを含むことを特徴とする、請求項6から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ステップB)が、ステップD)の後に起きると、ステップD)が、前記チップをエナメル印刷すること、および/または、前記チップ上に形成されるガラスレリーフを含むことを特徴とする、請求項6から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ステップB)の前に起きる、前記チップ上にセラミックコーティングを堆積するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項6から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
対応する中空円錐形メス型継手(6)との漏れのない摩擦ばめ接続を完了するため、
請求項1から5のいずれか一項に記載のガラス製の円錐台形オス型ルアーチップ(1)、または、請求項6から12のいずれか一項に記載の方法により得られるガラス製の円錐台形オス型ルアーチップ(1)の使用。
【請求項14】
請求項1から5のいずれか一項に記載のガラス製の円錐台形オス型ルアーチップ(1)、または、請求項6から12のいずれか一項に記載の方法により得られるガラス製の円錐台形オス型ルアーチップ(1)と、対応する中空円錐形メス型継手(6)との間で漏れのない摩擦ばめ接続を完了するための方法であって、前記方法は、メス型継手の近位端(6a)がマークされたガラスルアーチップのマーキング手段(4)に到達するまで、前記メス型継手(6)を前記オス型ルアーチップに押してねじるステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1から5のいずれか一項に記載のガラス製の円錐台形オス型ルアーチップ(1)、または、請求項6から12のいずれか一項に記載の方法により得られるガラス製の円錐台形オス型ルアーチップ(1)を含むことを特徴とする、注射装置(3)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注射装置用のガラス製ルアーチップに関する。漏れのない接続を得るために、ルアーチップは、ルアーチップに接続することを意図したメス型継手の近位端をどこに配置するかをユーザーに示すためのマーキング手段を有す。本発明はまた、そのようなルアーチップを製造するための方法に関する。本発明はさらに、そのようなマークされたルアーチップの使用、およびメス型継手との漏れのないルアースリップ接続を完了するためのそのようなマークされたルアーチップを使用する方法に関する。本発明はまた、そのようなマークされたルアーチップを含む注射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願では、部品またはデバイスの遠位端は、ユーザーの手から最も遠い端部であると理解され、近位端は、ユーザーの手に最も近い端部であると理解される。同様に、本出願において、「遠位方向」は、注射装置に関して注射の方向であると理解され、「近位方向」は、注射の方向と反対の方向であると理解される。
【0003】
注射装置の分野では、針が注射装置自体の一部ではなく、ユーザーが注射に進む準備ができたときに注射装置の先端に接続する必要がある場合がある。これは、特に注射装置の先端がガラスでできている場合に当てはまる。そのような場合、分離針とも呼ばれる別個の針が、注射装置の先端に接続されるように提供される。針を注射装置の先端に接続するために、さまざまな接続システムが利用可能である。
【0004】
使用可能な接続の1つは、ルアースリップ接続である。このような接続は、例えばガラス製皮下注射器などの注射装置と針との間の接続を提供することを目的としている。本出願において、「ルアースリップ接続」とは、円錐台状オス型ルアーチップと対応する中空円錐メス型継手との間の摩擦ばめ接続を意味する。
【0005】
より安全な標準医療接続を作成する必要性に応えて、接続を形成する要素の寸法に関する標準が設定されている。ISO80369ー7は、ルアースリップ接続の要素の寸法を示す規格である。標準化された寸法とは、ISO80369-7に準拠した本書面の寸法によることを意味する。
【0006】
これらの規格によれば、注入装置の先端は、接続のオス部分とも呼ばれる、6%のテーパーを持つ円錐形の先端であるルアーで形成されている。接続のメス部分(以下、メス型継手と呼ぶ)は、針ハブまたはルアーチップの6%のテーパーと一致するように意図された内面を備えた円錐形の中空接続部分を有する他のルアー接続である。ルアースリップ接続は、ユーザーが注入装置のルアーチップをプッシュアンドツイスト(push-and-twist)方式でメス型継手に挿入する必要がある摩擦ばめ接続である。
【0007】
接続を完了するためのプッシュアンドツイスト方式は、接続が切断される可能性が低いことを保証することになっている。メス型継手を注射装置のルアーチップにスライドさせるだけでは、確実なフィッティングが保証されない場合がある。
【0008】
実際、注入装置の先端がガラス製の場合、ルアースリップ接続がよく使用される。いずれにせよ、注射装置の先端とメス型継手の標準化された寸法にもかかわらず、プラスチック注射器と比較して、ガラス製の部品に固有の比較的高い寸法公差のために、接続が完全に正しく確実ではない場合がある。
【0009】
例えば、針が先端に安全に接続されていない場合、粘性薬物の注射中に針が先端から外れ、そこから排出される可能性がある。さらに、例えばメス型継手が十分に押されていない場合、製品の漏れが発生し、注射ステップが損なわれる可能性がある。
【0010】
従って、メス型継手はプッシュアンドツイストステップの最後に正しく配置する必要がある。
【0011】
しかし、ガラス注射装置と針を接続すると、実際には他の問題が発生する。実際、各注射装置について、ガラスルアーチップと、ニードルハブまたは他の接続デバイスなどのメス型継手との間の接続は、前記ガラスルアーチップに固有の寸法公差だけでなく、接続を実行する人間、言い換えれば、ユーザーにも依存する。各ユーザーは、独自の方向、独自のジェスチャ、特にプッシュアンドツイストジェスチャに従って、独自の力でルアーチップをメス型継手に挿入する。結果として、接続は再現できない。加えて、各ユーザーは、正しい接続とは何か、正しい接続がどのように実行されるかについて異なる感覚を持っている可能性がある。
【0012】
その結果、ガラス製ルアーチップの寸法公差や接続を完了するユーザーによっては、一部の接続では、ルアーチップの遠位端が、メス型継手を形成している、中空コーンの遠位端に到達しない場合があり、および/または、軸方向の正しい位置に配置されていない場合がある。
【0013】
すでに述べたように、製品の漏れはそのような状況から生じる可能性があり、注入ステップが危険にさらされる可能性がある。加えて、注入中に針がルアーチップから外れる場合がある。
【0014】
特許文献1は、外面にリブが設けられたルアーチップを示している。いずれにせよ、この文献には、これらのリブがルアーチップのどこに正確に配置されているかは示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】国際公開第2018/122366号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、ルアースリップ接続の場合、ユーザーがルアーチップとそれが接続されることを意図されているメス型継手との間の漏れのない接続を完了することを可能にするチップおよび/または方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第1の態様は、ルアースリップ接続を介してメス型継手に接続されることを意図した、注射装置用のガラス製オス型ルアーチップであり、前記オス型ルアーチップは、ユーザーに、漏れのない接続を完了するための前記メス型継手の近位端をどこに配置するかを示すように構成されたマーキング手段を含む。より具体的には、本発明の一態様は、摩擦ばめ接続を介して対応する中空円錐形メス型継手に接続されることを意図した、注射装置用のガラス製の円錐台形オス型ルアーチップであり、前記オス型ルアーチップは、漏れのない接続を完了するために、前記メス型継手の近位端を配置する場所をユーザーに示すように構成されたマーキング手段を含む。
【0018】
特に、マーキング手段は、前記チップと前記メス型継手との間の漏れのない接続を完了するために、前記チップに対してメス型継手の近位端をどこに配置するかをユーザーに示すように構成される。例えば、マーキング手段は、漏れのない接続を完了し、メス型継手をどこに配置するかをユーザーに示すために、非常に特定の場所、特にオス型ルアーチップの外面に配置される。
【0019】
本発明の別の態様は、前記チップとの漏れのないルアースリップ接続を完了するためにメス型継手の近位端をどこに配置するかをユーザーに示すように構成されたマーキング手段を備えた、注射装置用のガラス製オス型ルアーチップを製造する方法であり、前記方法は以下のステップ:A)ガラスからチップを予備成形するステップと、B)前記成形済みチップを焼きなましするステップと、C)チップ上に前記マーキング手段を配置する位置を決定するために、標準化された寸法を有するゲージをチップに適用するステップと、D)前記チップに前記位置で前記マーキング手段を提供するステップと、を含み、ステップB)が、ステップC)の前またはステップD)の後に起こり得る。
【0020】
言い換えると、本発明の別の態様は、前記チップとの漏れのないルアースリップ接続を完了するためにメス型継手の近位端をどこに配置するかをユーザーに示すように構成されたマーキング手段を備えた、注射装置用のガラス製円錐台形オス型ルアーチップを製造する方法であり、前記方法は以下のステップ:A)ガラスからチップを予備成形するステップと、B)前記成形済みチップを焼きなましするステップと、C)チップ上に前記マーキング手段をどこに配置するか位置を決定するために、標準化された寸法を有するゲージをチップに適用するステップと、D)前記チップに前記位置で前記マーキング手段を提供するステップと、を含み、ステップB)が、ステップC)の前またはステップD)の後に起こり得る。
【0021】
本発明の別の態様は、メス型継手との漏れのないルアースリップ接続を完成させるため、上記のようなガラス製のオス型ルアーチップ、または上記の方法によって得られたガラス製のルアーチップを使用することである。言い換えれば、本発明の別の態様は、対応する中空円錐形メス型継手との漏れのない摩擦ばめ接続を完成させるため、上記のようなガラス製の円錐台形ルアーチップ、または上記の方法によって得られたガラス製の円錐台形ルアーチップを使用することである 。
【0022】
本発明の別の態様は、上記のように、または上記の製造方法によって得られたガラス製のオス型ルアーチップとメス型継手との間の漏れのないルアースリップ接続を完成させる方法であり、前記方法は、前記メス型継手の近位端が前記マーキング手段に到達するまで、前記オス型ルアーチップ上に前記メス型継手を押してねじるステップを含む。言い換えれば、本発明の別の態様は、上記のようなガラス製の円錐台形オス型ルアーチップまたは上記の方法によって得られたガラス製の円錐台形ルアーチップと対応する中空円錐形メス型継手との間の漏れのない摩擦ばめ接続を完了する方法であり、前記方法は、前記メス型継手の近位端が前記マーキング手段に到達するまで、前記メス型継手を前記オス型ルアーチップ上に押してねじるステップを含む。
【0023】
本発明の別の態様は、上記のようにガラス製のルアーチップを含むか、または上記の製造方法によって得られる注射装置である。
【0024】
本発明のマークされたガラス製ルアーチップおよび本発明の方法は、針ハブまたは他のルアー接続のように、前記ガラス製ルアーチップと、それが接続されることを意図されているメス型継手との間の確実で漏れのない滑り接続を達成することを可能にする。本発明のマークされたガラス製ルアーチップおよび本発明の方法のおかげで、ユーザーは、針に接続する必要がある、ある注射装置から別の注射装置へ、実行する新しい接続ごとに、彼が実行する接続が安全かつ確実であると確信することができる。実際、ルアーチップおよび本発明の方法のおかげで、寸法公差に従ったそのガラス質の性質のために、ルアーチップの寸法が、あるルアーチップから別のルアーチップへと変化し得るという事実とは関係なく、ユーザーはこの快適な感覚を持ち得る。また、ユーザーは、人間として、そのような接続を実行するたびに、あるジェスチャから別のジェスチャに、意図的かどうかに関係なく変化を適用できるという事実とは関係なく、この快適な感覚を持つ可能性がある。
【0025】
実施形態では、マーキング手段は、前記チップの表面に配置された、視覚的インジケーター、触覚的インジケーター、および/またはそれらの組み合わせから選択することができる。従って、ユーザーはインジケーターを見るか、例えば指で感じることができる。マーキング手段は、環状の形状を有し得る。そのような実施形態は、ユーザーがマーキング手段の存在をより容易に見たり感じたりすることを可能にする。例えば、マーキング手段は、印刷、彫刻、レリーフ、およびそれらの組み合わせから選択される。実施形態では、マーキング手段は環状印刷である。
【0026】
上記のマーク付きガラス製オス型ルアーチップの製造方法は、以下のステップ:A)ガラスからチップを予備成形するステップと、B)前記成形済みチップを焼きなましするステップと、C)チップ上に前記マーキング手段をどこに配置するか位置を決定するために、標準化された寸法を有するゲージをチップに適用するステップと、D)前記チップに前記位置で前記マーキング手段を提供するステップと、を含み、ステップB)が、ステップC)の前またはステップD)の後に起こり得る。
【0027】
本文書において、「標準化された寸法を有するゲージ」とは、ISO80369-7に規定された寸法を有するゲージを意味する。
【0028】
第1のステップ、ステップA)において、本発明のマークされたルアーチップを製造するために、チップはガラスから予備成形される。チップは、それ自体で形成することも、ガラス注射装置のバレルと一緒に単一の部品として予備成形することもできる。この予備成形工程は、当技術分野で知られているガラス成形方法に従って完了する。
【0029】
本発明の製造方法の第1実施形態では、ステップA)で得られた予め形成されたチップは、任意のマーキング手段を適用する前に焼きなましされる。
【0030】
従って、そのような第1実施形態では、予め形成されたチップは、方法の第2のステップ、ステップB)に従って焼きなましされる。焼きなまし工程は、約200℃から約800℃の範囲の温度で実施することができる。
【0031】
焼きなましされた予備成形されたチップが冷却されると、標準化された寸法を有するゲージが、第3のステップ、ステップC)でチップに適用される。このステップにより、チップ、特にチップの外面で、マーキング手段を配置する場所を決定することができる。実施形態では、ゲージは物理的ゲージである。例えば、ゲージは、軸方向の力によって前記チップに適用されるステンレス鋼ゲージであり得る。他の実施形態では、ゲージは、カメラによってチップに適用される仮想ゲージである。
【0032】
上記のステップC)は、ガラス製品に固有の寸法公差のために、ガラスルアーチップの寸法があるガラスルアーチップから別のガラスルアーチップで変化する可能性があるという事実に関係なく、マーキングされる個々のガラスルアーチップのマーキング手段を配置する場所を決定することを可能にする。従って、ガラスルアーチップの寸法変化は、ステップC)に準拠したゲージの使用のおかげで、1つの個々のガラスルアーチップについて決定された位置の正確さに影響を及ぼさない。
【0033】
ガラスルアーチップに対してマーキング手段を配置する場所が決定されると、前記マーキング手段は、第4のステップ、ステップD)に従って前記場所に提供される。ステップD)は、前記チップをインク印刷すること、および/または前記チップをレーザー印刷することを含み得る。例えば、環状印刷は、チップの外面上の決定された位置に印刷される。あるいは、レーザー印刷により、チップの外面の決められた位置に彫刻を行う。彫刻は、チップの表面にレリーフを形成する場合がある。
【0034】
マークされたガラス製のルアーチップが得られ、これは、ルアースリップ接続を介してメス型継手を注射装置にしっかりと接続するために使用できる。
【0035】
本発明の製造方法の代替の実施形態では、マーキング手段は、焼き戻しステップの前にステップA)で得られた予め形成されたチップに適用される。
【0036】
そのような第2実施形態の場合、ステップC)は、ステップA)の後に実行され、標準化された寸法を有するゲージが、予め形成されたガラスチップに適用される。上記のように、ゲージは、軸力によってチップに適用され得るステンレス鋼ゲージなどの物理的ゲージ、あるいはカメラによって予め形成されたガラスチップに適用され得る仮想ゲージであり得る。第1実施形態のように、このステップは、チップ、特にチップの外面上で、マーキング手段を配置する場所を決定することを可能にする。
【0037】
上記のように、ガラス製品に固有の寸法公差のために、ガラスルアーチップの寸法が、あるガラスルアーチップから別のガラスルアーチップで変化する可能性があるという事実に関係なく、マーキングされる個々のガラスルアーチップのマーキング手段を配置する場所を決定することを可能にする。従って、ガラスルアーチップの寸法変化は、ゲージの使用のおかげで、1つの個々のガラスルアーチップについて決定された位置の正確さに影響を及ぼさない。
【0038】
本発明の製造方法のそのような第2実施形態では、マーキング手段は、第4のステップ、ステップD)に従って前記位置に提供され、これは、前記チップをエナメル印刷すること、および/または前記チップ上に形成されるガラスレリーフを含み得る。
【0039】
例えば、エナメル質は、チップの表面上の決定された位置に環状バンドとして堆積される。あるいは、溝または隆起、例えば環状溝または環状隆起などのレリーフは、前のステップでゲージによって決定された位置に形成されるガラスによって形成され得る。
【0040】
次のステップである焼き戻しステップB)では、エナメル堆積物またはガラスレリーフなどのマーキング手段を備えたガラスルアーチップが焼きなましされる。 焼きなまし工程は、約200℃から約800℃の範囲の温度で実施することができる。そのような焼きなましステップは、マークされたチップの形状を固定することを可能にする。
【0041】
マークされたガラス製のルアーチップが得られ、これは、ルアースリップ接続を介してメス型継手を注入デバイスにしっかりと接続するために使用できる。
【0042】
本発明の製造方法は、上記の第1または第2実施形態に関係なく、前記チップ上にセラミックコーティングを堆積するステップをさらに含み得る。このセラミックコーティング工程は、焼きなまし工程B)の前に行うことができる。セラミックコーティングにより、ガラスルアーチップの表面に追加の粗さを提供できるため、メス型継手をガラスルアーチップに接続したときの摩擦ばめが向上する。
【0043】
上記のようにマークされたガラスルアーチップは、メス型継手との漏れのないルアースリップ接続を完了するために使用できる。例えば、そのような漏れのないルアースリップ接続は、メス型継手の近位端がマークされたガラスルアーチップのマーキング手段に到達するまで、メス型継手を本発明のマークされたガラスルアーチップに押してねじることによって完了することができる。メス型継手の近位端が環状印刷などのマーキング手段に到達すると、ユーザーは、メス型継手がガラスルアーチップに対して軸方向に正しく配置され、接続が安全で漏れがないことを認識する。
【0044】
本発明のマークされたガラスルアーチップは、ガラス注射器などの注射装置の一部であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0045】
次に、本発明は、以下を含む同封の図面を参照して詳細に説明される。
【
図1】
図1は、メス型継手が接続されている過程にある本発明のマークされたガラスルアーチップの側面概略図である。
【
図2】
図2は、固定接続が完了した後の、マークされたガラスルアーチップと
図1のメス型継手の側面概略図である。
【
図3】
図3は、本発明の製造方法に従って、マーキング手段をガラスルアーチップに適用するステップの概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1を参照すると、注射装置3のガラスバレル2の遠位端に配置された本発明のガラス製のオス型ルアーチップ1を部分的かつ概略的に示す。チップ1は、ガラスバレル2に含まれる製品(図示せず)の通過および送達のためのチャネル1c(点線で示されている)を備えている。
【0047】
ガラスルアーチップ1は、ISO80369-7に準拠した6%テーパーコーンの形状をしている。それは、ガラスルアーチップ1の外面1aに配置された環状印刷4の形状の下に、マーキング手段を備えている。ガラスルアーチップ1は、遠位端1bを有する。
【0048】
図1を参照すると、ニードルハブ5も示されている。ニードルハブ5は、ガラスルアーチップ1に接続されることを意図した、メス型継手6の形態の下の中空の6%テーパーコーンを含む。メス型継手6は、針7が設けられている近位端6aおよび遠位端6bを備える。
【0049】
メス型継手6は、ルアースリップ接続を介してガラスルアーチップ1に接続されることを意図している:そのような接続によれば、メス型継手6は、
図1に示す矢印AとBに準拠してプッシュアンドツイスト方式でガラスルアーチップ1に載置される。
【0050】
環状印刷4などのマーキング手段は、漏れのない接続を完了するためにメス型継手6の近位端6aをどこに配置するかをユーザーに示すように構成される。マーキング手段は、そのような位置の視覚的指標を構成する。示されていない実施形態では、マーキング手段は、触覚インジケーターの形をとることができる。
【0051】
例えば、マーキング手段は、彫刻および/またはレリーフの形をとることができる。
【0052】
図2を参照すると、ルアースリップ接続が完了すると、
図1のガラス製ルアーチップ1とメス型継手6が表示される。この図に示されているように、メス型継手の近位端6aは、環状印刷4の位置に配置されている。環状印刷4に対するメス型継手6の近位端6aのそのような位置において、ガラスルアーチップ1の遠位端1bは、メス型継手6の遠位端6bの壁と接触していることが観察され得る。従って、ガラスルアーチップ1とメス型継手6との間の接続はしっかりしており、漏れがない。
【0053】
ユーザーは、接続が安全であり、注射ステップ中に針が外れないという事実に安心できる。
【0054】
図3を参照して、
図1および2のマークされたガラスルアーチップ1を製造するための本発明の方法のステップが示されている。
【0055】
この方法によれば、第1のステップ(図示せず)において、注射装置のバレルおよびチップはガラスから予備成形される。あるいは、チップはそれ自体でガラスから予備成形することができる。この予備成形ステップは、よく知られたガラス成形方法に従って完了する。
【0056】
次に、事前に形成されたチップが焼きなましされる。例えば、焼きなまし工程は、約200℃から約800℃の範囲の温度で実施することができる。
【0057】
焼きなましステップはまた、焼きなまし自体の前に、チップ上にセラミックコーティングを堆積するステップを含み得る。 セラミックコーティングは、コーティングされたチップが焼きなましされると、ガラスルアーチップの表面に追加の粗さを提供することを可能にする。チップにセラミックコーティングが施されているため、後でメス型継手をガラスルアーチップに接続する際の摩擦ばめを改善できる。
【0058】
図3を参照すると、焼きなましされ予備成形されたチップ1が冷却されると、ISO 80369-7に準拠した標準化された寸法を有するゲージ8がチップ1に適用される。ゲージ8は、
図3に示される矢印Cに従って軸方向の力によってチップ1に適用され得るステンレス鋼ゲージなどの物理的ゲージであり得る。あるいは、ゲージは、カメラによって予め形成されたガラスチップ1に適用される仮想ゲージであり得る。
【0059】
ゲージ8をチップ1に適用することにより、ガラス製品に固有の寸法公差により、あるガラスルアーチップから別のガラスルアーチップへガラスルアーチップの寸法が変化するという事実に関係なく、マーキングされる個々のガラスルアーチップ1ごとに、環状印刷4などのマーキング手段を配置する場所を決定することができる。従って、ガラスルアーチップの寸法変化は、本発明の方法でゲージを使用するために、1つの個々のガラスルアーチップ1について決定された位置の正確さに影響を及ぼさない。
【0060】
ガラスルアーチップのマーキング手段を配置する場所が決定されると、マーキング手段がその場所に提供される。
【0061】
例えば、
図3を参照すると、印刷インクを供給するためのノズル9aを備えたプリンタ9のおかげで、環状印刷4が適用される。
【0062】
示されていない実施形態では、マーキング手段は、レーザー印刷によって決定された位置に提供される彫刻であり得る。
【0063】
本発明の方法の代替の実施形態では、マーキング手段は、焼きなましステップの前にガラスルアーチップに適用することができる。これは、例えば、マーキング手段が、チップを形成するエナメル印刷および/またはガラスレリーフから選択される場合である。 例えば、エナメル質は、チップの表面上の決定された位置に環状バンドとして堆積される。あるいは、溝または隆起、例えば環状溝または環状隆起などのレリーフは、前のステップでゲージによって決定された位置に形成されるガラスによって形成される。
【0064】
次に、エナメル印刷またはガラス成形によって得られたレリーフの形状を固定するために、マークされたガラスルアーチップは焼きなましされる。
【0065】
マークされたガラスルアーチップ1が得られ、これは、
図1および2に関連して説明されるように、ルアースリップ接続を介してメス型継手6を注射装置にしっかりと接続するために使用され得る。
【0066】
本発明のマークされたガラス製ルアーチップおよび本発明の方法は、針ハブまたは他のルアー接続のように、前記ガラス製ルアーチップと、それが接続されることを意図されているメス型継手との間の確実で漏れのない滑り接続を達成することを可能にする。新しい接続ごとに、ガラスルアーチップの寸法の変化から独立して、および接続を実行する人間によって完了されるジェスチャーの変化から独立して、前記接続は、確実である。