(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】生物学的組織および/または補綴組織の標的部位に接着剤組成物またはシーラント組成物の層を堆積させるためのアプリケータ、及び、そのようなアプリケータを含むアプリケータアセンブリ
(51)【国際特許分類】
A61B 17/00 20060101AFI20240219BHJP
【FI】
A61B17/00 400
(21)【出願番号】P 2021508070
(86)(22)【出願日】2019-04-24
(86)【国際出願番号】 EP2019060517
(87)【国際公開番号】W WO2019206998
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-03-24
(32)【優先日】2018-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520417067
【氏名又は名称】ティッシウム
【氏名又は名称原語表記】TISSIUM
【住所又は居所原語表記】74 r du Faubourg Saint-Antoine, 75012 PARIS, FRANCE
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ラマゾワデ、ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】ローピス、ミゲル
(72)【発明者】
【氏名】メノン、シモン
(72)【発明者】
【氏名】ビアディラ、ユーセフ
(72)【発明者】
【氏名】ペリーラ、マリア
【審査官】鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-505169(JP,A)
【文献】特開2005-169125(JP,A)
【文献】特開2012-110721(JP,A)
【文献】特表2005-523071(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的組織および/または補綴組織の標的部位に接着剤組成物またはシーラント組成物の層を堆積させるためのアプリケータ(1)であって、前記アプリケータ(1)は、前記生物学的組織および/または補綴組織に対向して配置されることを意図した塗布面(7)を有する本体(2)を備えるとともに、
前記接着剤組成物またはシーラント組成物が分配装置(25)から前記アプリケータ(1)に流れることを可能にするための第1の入口開口部(8)と、
前記塗布面(7)に設けられた第1の出口開口部(9)であって、前記接着剤組成物またはシーラント組成物が前記アプリケータ(1)から流出して前記接着剤組成物またはシーラント組成物の層を形成することを可能にする第1の出口開口部(9)と、
前記接着剤組成物またはシーラント組成物を前記第1の入口開口部(8)から前記第1の出口開口部(9)に案内するための第1の内部チャネル(10)と、
前記接着剤組成物またはシーラント組成物の層を堆積させながら汚染物質または望ましくない要素を前記標的部位から除去することを可能にするために、前記第1の出口開口部(9)に隣接して、前記塗布面(7)に設けられた第2の入口開口部(14)と、
除去された前記汚染物質または望ましくない要素が前記アプリケータ(1)から排出されることを可能にするための第2の出口開口部(15)と、
除去された前記汚染物質または望ましくない要素を前記第2の入口開口部(14)から前記第2の出口開口部(15)に案内するための第2の内部チャネル(16)と、
を備え、
前記第1の出口開口部(9)は第1の断面を有し、前記第2の入口開口部(14)は前記第1の断面よりも大きい第2の断面を有
し、
スロットとして成形された前記第1の出口開口部(9)が第1の幅(w
1
)および第1の高さ(h
1
)を有し、前記第2の入口開口部(14)が第2の幅(w
2
)および第2の高さ(h
2
)を有し、前記第2の幅(w
2
)が前記第1の幅(w
1
)以上である、アプリケータ。
【請求項2】
スロットとして成形された前記第1の出口開口部(9)が、2~15ミリメートル、好ましくは5~8ミリメートルからなる第1の幅(w
1)を有する、請求項
1に記載のアプリケータ。
【請求項3】
スロットとして成形された前記第1の出口開口部(9)が、0.2~1ミリメートル、好ましくは0.4~0.6ミリメートルからなる第1の高さ(h
1)を有する、請求項1
または2に記載のアプリケータ。
【請求項4】
前記第2の入口開口部(14)は、0.2~5ミリメートル、好ましくは0.3~0.5ミリメートルからなる第2の高さ(h
2)を有する、請求項1~
3のいずれか一項に記載のアプリケータ。
【請求項5】
前記第1の入口開口部(8)は円形であり、前記第1の内部チャネル(10)は、前記第1の入口開口部(8)から前記第1の出口開口部(9)まで連続的に増加する幅(w)と、前記第1の入口開口部(8)から前記第1の出口開口部(9)まで連続的に減少する高さ(h)とを有する、請求項1~
4のいずれか一項に記載のアプリケータ。
【請求項6】
前記本体(2)は、取り付け主軸(X
1)に従って前記分配装置(25)の取り付け部分(31)に対して平行移動および/または回転させることにより、前記分配装置(25)の前記取り付け部分(31)と協働して前記アプリケータ(1)を前記分配装置(25)に取り付けるように構成された第1の取り付け部分(3)を有する、請求項1~
5のいずれか一項に記載のアプリケータ。
【請求項7】
前記第1の取り付け部分(3)は、前記取り付け主軸(X
1)に従って前記分配装置(25)の前記取り付け部分(31)の雌の円錐形内面と合致するように構成された雄の円錐形外面と、前記本体(2)の前記第1の取り付け部分(3)を前記分配装置(25)の前記取り付け部分(31)にロックするために、前記取り付け主軸(X
1)に対して直角に突出しているラグ(13)とを含む、請求項
6に記載のアプリケータ。
【請求項8】
前記塗布面(7)は平面であり、且つ前記取り付け主軸(X
1)と角度(α)を形成し、前記角度は、90~
30度、好ましくは90~
60度、より好ましくは75~85度で構成される、請求項6または7に記載のアプリケータ。
【請求項9】
前記本体(2)は、前記第1の内部チャネル(16)と前記第2の内部チャネル(21)とを分離する壁(20)を含み、前記壁(20)は、前記第1の出口開口部(9)と前記第2の入口開口部(14)との間で測定される25マイクロメートル~1センチメートルの厚さを有する、請求項1~
8のいずれか一項に記載のアプリケータ。
【請求項10】
前記第1の内部チャネル(10)は第1の主軸(X
1)を有し、前記第2の内部チャネル(16)は第2の主軸(X
2)を有し、前記第2の主軸(X
2)は前記第1の主軸(X
1)に対して10~20度の角度(β)で配向される、請求項1~
9のいずれか一項に記載のアプリケータ。
【請求項11】
前記本体(2)が材料の単一片で形成されている、請求項1~
10のいずれか一項に記載のアプリケータ。
【請求項12】
前記材料は、観察者が前記第1の内部チャネル(21)内を流れる前記接着剤組成物またはシーラント組成物を見ることができるように、可視光に対して透明または半透明である、請求項
11に記載のアプリケータ。
【請求項13】
前記材料は、350~670ナノメートル、好ましくは405ナノメートルの波長を有する放射線に対して不透明である、請求項
11または12に記載のアプリケータ。
【請求項14】
接着剤組成物またはシーラント組成物で満たされたリザーバ(32)を含み、前記接着剤組成物またはシーラント組成物が分配装置(25)から流出することを可能にするための端部開口部(30)を有する分配装置(25)と、
前記分配装置(25)の前記端部開口部(30)から流れる接着剤組成物またはシーラント組成物の層を生体組織上に堆積させることを可能にするために前記分配装置(25)に取り付けられるように構成された、請求項1~
13のいずれか一項に記載のアプリケータ(1)と、
を備えたアプリケータアセンブリ(44)。
【請求項15】
吸引管(38)を備え、前記アプリケータ(1)が、前記第2の内部チャネル(16)を吸引装置に接続するために前記吸引管(38)の端部(41)を前記アプリケータ(1)に取り付けるための第2の取り付け部分(24)を含む、請求項
14に記載のアプリケータアセンブリ。
【請求項16】
前記リザーバ(32)に含まれる前記接着剤組成物またはシーラント組成物は、一般式(-A-B-)
nのポリマー単位を含むプレポリマーを含み、Aは置換エステルまたは非置換エステルを表し、Bは少なくとも2つの酸エステル官能基を含む置換酸エステルまたは非置換酸エステルを表し、nは1より大きい整数を表す、請求項
14または15に記載のアプリケータアセンブリ。
【請求項17】
前記分配装置(25)は、前記リザーバ(32)を画定するシリンダ(27)と前記シリンダ(27)内にスライド可能に取り付けられたピストン(28)とを含むシリンジ(26)と、光が前記リザーバ(32)内に含まれる前記接着剤組成物またはシーラント組成物を照射することを防ぐように、前記シリンダ(27)の周りに配置されるように構成されたケーシング(33)とを有している、請求項
14~
16のいずれか一項に記載のアプリケータアセンブリ。
【請求項18】
前記ケーシング(33)は、前記ケーシング(33)内に前記シリンダ(27)を挿入すると変形し、前記ケーシング(33)内に前記シリンダ(27)が挿入されたら、前記ケーシング(33)を前記シリンダ(27)にロックするために前記シリンジ(26)の肩(36)に隣接するように構成された弾性タブ(35)を含む、請求項
17に記載のアプリケータアセンブリ。
【請求項19】
前記アプリケータ(1)および前記分配装置(25)を封入するためのパッケージ(37)を備え、前記パッケージ(37)は、細菌の侵入を防止する材料でできている、請求項
14~
18のいずれか一項に記載のアプリケータアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的組織および/または補綴組織の標的部位に接着剤組成物またはシーラント組成物の層を堆積させるためのアプリケータ、及び、そのようなアプリケータを含むアプリケータアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
血管(大動脈、大腿動脈、頸動脈または冠状動脈、または静脈など)の外科的修復、心臓修復または泌尿器系修復では、止血を達成するための標準的な方法(縫合糸およびステープルなど)の補助として外科用接着剤またはシーラントが使用される。外科用接着剤またはシーラントは、漏れ(例えば、脳または脊髄の漏れ)を止めるためにも使用できる。外科用接着剤/シーラントは、一般に、縫合糸またはステープルによって作成された穴を密封し、組織間の接合部を強化し、止血および組織の治癒または間隙の充填を容易にするために、出血または漏出部位の上に層として堆積される。
【0003】
しかしながら、接着剤/シーラントの性能は、接着剤組成物またはシーラント組成物自体の特性だけでなく、接着剤またはシーラント層の塗布条件にも依存する。特に、接着剤/シール性能は、接着剤またはシーラント層と下にある組織との間の接触の質に応じて大きく変化し、そのような接触の質は、接着剤またはシーラント層を堆積するために使用される装置によって影響を受けることが観察されている。
【0004】
米国特許出願公開第2005/0127119号明細書は、例えば、肺組織または肝臓組織などの生物学的組織に接着剤またはシーラントを塗布するための分配器具に接続され得るアプリケータを開示している。アプリケータは、ミキサまたは分配器具の出口に接続するためのアダプタと分配スロットとを有している。アプリケータは、アダプタからスロットまで延在するエンクロージャを有し、そのようなエンクロージャは、接着された基板に向けられるエンクロージャの側面がアダプタの縦軸と角度をなすように湾曲した形状を有している。さらに、エンクロージャは分配スロットに向かって円錐状に拡大されている。この文書によると、エンクロージャの湾曲により、接着される組織、例えば、肺組織は、最初に滑らかにされ、その後すぐに接着剤またはシーラントで均一にコーティングされる。
【0005】
しかし、実際には、大血管に接着剤やシーラントを塗布するためにこのようなアプリケータを使用した場合でも、再現性のある接着剤/シール性能を得るのは難しいことが証明されている。
【発明の概要】
【0006】
本発明の1つの目的は、接着剤またはシーラントの層と生物学的組織および/または補綴組織との間の改善された接着を得ることを可能にする、生物学的組織および/または補綴組織に接着剤組成物またはシーラント組成物の層を堆積させるためのアプリケータを提供することである。
【0007】
この目的は、本発明に従って、生物学的組織および/または補綴組織の標的部位に接着剤組成物またはシーラント組成物の層を堆積させるためのアプリケータであって、アプリケータは、生物学的組織および/または補綴組織に対向して配置されることを意図した塗布面を有する本体を備えるとともに、
・接着剤組成物またはシーラント組成物が分配装置からアプリケータに流れることを可能にするための第1の入口開口部と、
・塗布面に設けられた第1の出口開口部であって、接着剤組成物またはシーラント組成物がアプリケータから流出して接着剤組成物またはシーラント組成物の層を形成することを可能にする第1の出口開口部と、
・接着剤組成物またはシーラント組成物を第1の入口開口部から第1の出口開口部に案内するための第1の内部チャネルと、
・接着剤組成物またはシーラント組成物の層を堆積させながら汚染物質または望ましくない要素を標的部位から除去することを可能にするために、第1の出口開口部に隣接して、塗布面に設けられた第2の入口開口部と、
・除去された汚染物質または望ましくない要素がアプリケータから排出されることを可能にするための第2の出口開口部と、
・除去された汚染物質または望ましくない要素を第2の入口開口部から第2の出口開口部に案内するための第2の内部チャネルと、
を備え、
第1の出口開口部は第1の断面を有し、第2の入口開口部は第1の断面よりも大きい第2の断面を有する、アプリケータ、により達成される。
【0008】
このようなアプリケータを使用すると、標的部位からの汚染物質または望ましくない要素(例えば、流体、材料、または組織の断片)の除去、および接着剤組成物またはシーラント組成物の堆積を同時に行うことができる。
【0009】
より正確には、外科医がアプリケータを標的部位に沿って移動させている間、標的部位は漸進的に洗浄され、接着剤組成物またはシーラント組成物の層は、洗浄後すぐに堆積される。これにより、堆積層と標的部位の表面との接着が促進される。
【0010】
さらに、堆積中に、標的部位の表面と接着剤組成物またはシーラント組成物との間にくぼみが生じる。結果として、組織の表面の不規則性にもかかわらず、標的部位の表面と接着剤組成物またはシーラント組成物の層との間の密接な接触が得られ得る。
【0011】
本発明の特定の実施形態によれば、アプリケータはまた、以下の特徴のうちの少なくとも1つを有し得る。
・スロットとして成形された第1の出口開口部が第1の幅および第1の高さを有し、第2の入口開口部が第2の幅および第2の高さを有し、第2の幅が第1の幅以上である。
・スロットとして成形された第1の出口開口部が、2~15ミリメートル、好ましくは5~8ミリメートルからなる第1の幅を有する。
・スロットとして成形された第1の出口開口部が、0.2~1ミリメートル、好ましくは0.4~0.6ミリメートルからなる第1の高さを有する。
・第2の入口開口部は、0.2~5ミリメートル、好ましくは0.3~0.5ミリメートルからなる第2の高さを有する。
・第1の入口開口部は円形であり、第1の内部チャネルは、第1の入口開口部から第1の出口開口部まで連続的に増加する幅と、第1の入口開口部から第1の出口開口部まで連続的に減少する高さとを有する。
・本体は、取り付け主軸に従って分配装置の取り付け部分に対して平行移動および/または回転させることにより、分配装置の取り付け部分と協働してアプリケータを分配装置に取り付けるように構成された第1の取り付け部分を有する。
・第1の取り付け部分は、取り付け主軸に従って分配装置の取り付け部分の雌の円錐形内面と合致するように構成された雄の円錐形外面と、本体の第1の取り付け部分を分配装置の取り付け部分にロックするために、取り付け主軸に対して直角に突出しているラグとを含む。
・塗布面は平面であり、且つ取り付け主軸と角度を形成し、角度は、90~30度、好ましくは90~60度、より好ましくは75~85度で構成される。
・本体は、第1の内部チャネルと第2の内部チャネルとを分離する壁を含み、壁は、第1の出口開口部と第2の入口開口部との間で測定される25マイクロメートル~1センチメートルの厚さを有する。
・第1の内部チャネルは第1の主軸を有し、第2の内部チャネルは第2の主軸を有し、第2の主軸は第1の主軸に対して10~20度の角度で配向される。
・本体が材料の単一片で形成されている。
・材料は、観察者が第1の内部チャネル内を流れる接着剤組成物またはシーラント組成物を見ることができるように、可視光に対して透明または半透明である。
・材料は、350~670ナノメートル、好ましくは405ナノメートルの波長を有する放射線に対して不透明である。
【0012】
本発明はまた、
・接着剤組成物またはシーラント組成物で満たされたリザーバを含み、接着剤組成物またはシーラント組成物が分配装置から流出することを可能にするための端部開口部を有する分配装置と、
・分配装置の端部開口部から流れる接着剤組成物またはシーラント組成物の層を生体組織上に堆積させることを可能にするために分配装置に取り付けられるように構成された、上述したアプリケータと、
を備えたアプリケータアセンブリにも関する。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、アプリケータアセンブリは吸引管を備え、アプリケータが、第2の内部チャネルを吸引装置に接続するために吸引管の端部をアプリケータに取り付けるための第2の取り付け部分を含む。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、リザーバに含まれる接着剤組成物またはシーラント組成物は、一般式(-A-B-)nのポリマー単位を含むプレポリマーを含み、Aは置換エステルまたは非置換エステルを表し、Bは少なくとも2つの酸エステル官能基を含む置換酸エステルまたは非置換酸エステルを表し、nは1より大きい整数を表す。
【0015】
成分Aは、ジオール、トリオール、テトラオールまたはそれ以上などのポリオールから誘導され得る。適切なポリオールには、アルカンジオールなどのジオールと、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミンなどのトリオールと、エリスリトール、ペンタエリスリトールなどのテトラオールと、ソルビトールなどの高級ポリオールとが含まれる。テトラデカ-2、12-ジエン-1、14-ジオールなどの不飽和ジオール、または、例えばポリエチレンオキシドなどのマクロモノマージオールを含む他のジオール、およびN-メチルジエタノールアミン(MDEA)も使用することができる。好ましくは、ポリオールは、置換または非置換のグリセロールである。
【0016】
成分Bは、二酸またはより高次の酸などの多酸から誘導され得る。多種多様な二酸、または高次の酸を使用することができる。例示的な酸には、クエン酸(3炭素)、グルタル酸(5炭素)、アジピン酸(6炭素)、ピメリン酸(7炭素)、セバシン酸(8炭素)、およびアゼライン酸(9炭素)が含まれるが、これらに限定されない。例示的な長鎖二酸には、10を超える、15を超える、20を超える、および25を超える炭素原子を有する二酸が含まれる。非脂肪族二酸も使用できる。例えば、1つ以上の二重結合を有する上記の二酸のバージョンを使用して、ポリオール-二酸コポリマーを製造することができる。好ましくは、二酸は、置換または非置換のセバシン酸である。
【0017】
アミン、アルデヒド、ヒドラジド、アクリレート、芳香族基などのいくつかの置換基を炭素鎖に組み込むことができる。例示的な芳香族二酸には、テレフタル酸およびカルボキシフェノキシプロパンが含まれる。ポリ酸、例えば二酸は、置換基も含むことができる。例えば、アミンやヒドロキシルなどの反応性基を使用して、架橋に利用できるサイトの数を増やすことができる。アミノ酸やその他の生体分子を使用して、生物学的特性を変更することができる。芳香族基、脂肪族基、およびハロゲン原子を使用して、ポリマー内の鎖間相互作用を変更することができる。
【0018】
プレポリマーは、ポリアミド骨格またはポリウレタン骨格をさらに含み得る。例えば、ポリアミン(2つ以上のアミノ基を含む)を使用して、ポリオールと一緒に、またはポリオールと反応した後に、ポリ酸と反応させることができる。他の例では、ポリイソシアネート(2つ以上のイソシアネート基を含む)を使用して、ポリオールと一緒に、またはポリオールと反応した後に、ポリ酸と反応させることができる。
【0019】
プレポリマーは、好ましくは活性化することができる。プレポリマーは、反応するか、または反応して架橋を形成することができる官能基を導入することによって活性化することができる。プレポリマー骨格上で活性化される適切な官能基には、ヒドロキシ酸基、カルボン酸基、アミン、およびそれらの組み合わせ、好ましくはヒドロキシおよび/またはカルボン酸が含まれる。プレポリマー上の遊離したヒドロキシル酸基またはカルボン酸基は、ポリマー鎖間に架橋を形成することができる部分でヒドロキシ基を官能化することによって活性化することができる。活性化される基は、プレポリマーのA部分および/またはB部分上の遊離したヒドロキシル酸基またはカルボン酸基であり得る。好ましくは、官能基は、アクリレート基であるか、またはアクリレート基を含む。
【0020】
アクリレート基は、置換または非置換のアクリロイル基を含む部分である。アクリレートは、以下の基、すなわち、-C(=O)-CR1=CR2R3を含み得、R1、R2、R3は、H、メチルまたはエチルなどのアルキル、フェニルなどのアリール、置換アルキル、置換アリール、カルボン酸、エステル、アミド、アミン、ウレタン、エーテル、およびカルボニルからなる群から選択され、互いに独立している。好ましくは、R1、R2およびR3がHであるか、または、R1がCH3で、R2およびR3がHであるか、または、R1とR2がHで、R3がCH3であるか、または、R1とR2がHで、R3がフェニルである。
【0021】
好ましい実施形態によれば、リザーバに含まれる接着剤組成物またはシーラント組成物は、一般式(-A-B-)nのポリマー単位を含む架橋可能なポリエステルプレポリマーを含み、Aは、置換または非置換のエステルを表し、Bは、少なくとも2つの酸エステル官能基を含む置換または非置換の酸エステルを表し、nは1より大きい整数を表し、Aは、架橋前のアクリレート基を含む。
【0022】
好ましい実施形態によれば、接着剤組成物またはシーラント組成物は、一般式(-A-B-)nのポリマー単位を含むプレポリマーを含み、(i)組成物中のグラフト化無水物の含有量がポリ酸の0.05モル/モル未満であるか、または(ii)組成物が無水物化合物を含む。
【0023】
活性化されたプレポリマーは、一般式:
【化1】
を有することができ、nおよびpはそれぞれ独立して1以上の整数を表し、個々の単位のR2は水素、またはポリマー鎖、または-C(=O)-CR3=CR4R5を表し、R3、R4、R-5は、H、メチルまたはエチルなどのアルキル、フェニルなどのアリール、置換アルキル、置換アリール、カルボン酸、エステル、アミド、アミン、ウレタン、エーテル、およびカルボニルからなる群から選択され、互いに独立している。好ましくは、R3、R4およびR5がHであるか、または、R3がCH3で、R4およびR5がHであるか、または、R3とR4がHで、R5がCH3であるか、または、R3とR4がHで、R5はフェニルである。好ましくは、pは、1~20、より好ましくは2~10、さらにより好ましくは4~10の整数である。p=8の場合が最も好ましい。
【0024】
特に、プレポリマーは以下の構造
【化2】
を有し得、nは、1以上の整数を表す。
【0025】
好ましい実施形態によれば、接着剤組成物またはシーラント組成物は、光硬化性化合物である。「光硬化性化合物」は、より具体的には光源からの光の形で、適切な放射エネルギーを受け取ると、重合するか、さもなければ硬化するように構成される化合物を指す。
【0026】
好ましくは、光硬化性化合物は、プレポリマーおよび光開始剤を含み、当該光開始剤は、特定の波長の光に曝されたときに、上記プレポリマーの重合を誘導することができる。
【0027】
特別な実施形態によれば、上記光開始剤は、紫外線(UV)放射に敏感である。
【0028】
UV放射に敏感な適切な光開始剤の例には、2-ジメトキシ-2-フェニル-アセトフェノン、2-ヒドロキシ-1-[4-(ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチル-1-プロパノン(Irgacure 2959)、1-ヒドロキシシクロヘキシル-1-フェニルケトン(Irgacure 184)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン(Darocur 1173)、2-ベンジル-2-(ジメヒルアミノ)-1-[4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン(Irgacure 369)、メチルベンゾイルホルメート(Darocur MBF)、オキシ-フェニル-酢酸-2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステル(Irgacure 754)、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-(4-モルホリニル)-1-プロパノン(Irgacure 907)、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド(Darocur TPO)、ホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)(Irgacure 819)、およびそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0029】
別の実施形態によれば、上記光開始剤は、可視光(通常、青色光または緑色光)に敏感である。
【0030】
可視光に敏感な光開始剤の例には、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド、エオシンY二ナトリウム塩、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)およびトリエタノールアミン、ならびにカンファーキノンが含まれるが、これらに限定されない。
【0031】
さらに、接着剤組成物またはシーラント組成物はまた、材料がシーラント/接着剤として機能する期間中に放出され得る1つ以上の医薬品、治療薬、予防薬、および/または診断薬を含み得る。薬剤は、例えば、2000、1500、1000、750、または500Da未満の分子重量を有する小分子剤、生体分子、例えば、ペプチド、タンパク質、酵素、核酸、多糖、成長因子、RGD配列またはインテグリンなどの細胞接着配列、細胞外マトリックス成分、またはそれらの組み合わせであり得る。同様に、接着剤組成物またはシーラント組成物はまた、細胞または生物組織または粒子状骨移植片または/および代用骨を含み得る。小分子剤の例示的なクラスには、抗炎症剤、鎮痛剤、抗菌剤、およびそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。例示的な成長因子には、TGF-D、酸性線維芽細胞成長因子、塩基性線維芽細胞成長因子、表皮成長因子、IGF-IおよびII、血管内皮由来成長因子、骨形態形成タンパク質、血小板由来成長因子、ヘパリン-結合成長因子、造血成長因子、ペプチド成長因子、または核酸が含まれるが、これらに限定されない。例示的な細胞外マトリックス成分には、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、エラスチン、およびそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0032】
本発明の実施形態によれば、分配装置は、リザーバを画定するシリンダとシリンダ内にスライド可能に取り付けられたピストンとを含むシリンジと、光がリザーバ内に含まれる接着剤組成物またはシーラント組成物を照射することを防ぐように、シリンダの周りに配置されるように構成されたケーシングとを有している。
【0033】
本発明の実施形態によれば、ケーシングは、ケーシング内にシリンダを挿入すると変形し、ケーシング内にシリンダが挿入されたら、ケーシングをシリンダにロックするためにシリンジの肩に隣接するように構成された弾性タブを有している。
【0034】
本発明の実施形態によれば、アプリケータアセンブリは、アプリケータおよび分配装置を封入するためのパッケージを備え、パッケージは、細菌の侵入を防止する材料でできている。
【0035】
本発明はまた、生物学的組織および/または補綴組織の2つの部分を一緒に保持するための方法であって、
・可能であれば外科用縫合糸で縫うことによってもしくはステープルで、または端から端まで縫うことによって、2つの部分を一緒に結合するステップと、
・前述のアプリケータアセンブリを使用することにより、接合部上に接着剤組成物またはシーラント組成物の層を塗布するステップと、
・接着剤組成物またはシーラント組成物の架橋を誘発するために、接着剤組成物またはシーラント組成物の層を光に曝すステップと、を含む方法、に関する。
【0036】
本発明の実施形態によれば、一緒に結合される2つの部分は、血管と、好ましくは、ダクロンもしくはテフロン(登録商標)などの合成材料、または生物学的材料でできている血管補綴とを含む。
【0037】
本発明の実施形態によれば、2つの部分は、血管および管状血管補綴を含み、末端吻合または末端外側吻合によって互いに結合される。
【0038】
本発明はさらに、前述のようにアプリケータアセンブリを使用することによって、接着剤組成物またはシーラント組成物の層を標的表面に適用することを含む、生物学的および/または人工組織を含む標的表面を接着または密封する方法に関する。
【0039】
特別な実施形態によれば、前述の補綴組織は、PTFEベースのグラフト/パッチ材料、ダクロンベースのグラフト/パッチ材料、またはそれらの任意の組み合わせなどのグラフト材料である。
【0040】
本発明はさらに、組織を医療機器に接着させる方法に関し、この方法は、前述のようにアプリケータアセンブリを使用することによって、組織および/または医療機器の表面に接着剤組成物の層を塗布することを含む。
【0041】
本発明はさらに、前述のようにアプリケータアセンブリを使用することによって、医療機器を別の医療機器に接着させる、または医療機器の部品を一緒に接着させる方法に関する。
【0042】
本発明はまた、特に、例えば血液または他の任意の流体、ガスなどの漏れを防止するために、バリアを形成するための、または空隙を充填するための方法に関し、前述の方法は、前述のようにアプリケータアセンブリを使用することによって、接着剤組成物またはシーラント組成物の層を表面に塗布することを含む。
【0043】
使用例には、例えば、創傷または外傷による出血の停止、または移植片を血管に縫合した後、または血管内処置における血管アクセス後などの手術中が含まれる。
【0044】
他の例には、血管吻合における縫合糸の補助として、およびePTFEグラフト、例えばePTFE血管グラフトにおける縫合糸の補助として、接着剤組成物またはシーラント組成物の層を使用することが含まれる。
【0045】
他の例には、例えば、
・細胞の再生および組織の修復、すなわち、組織の内部成長を防ぎ、望ましい細胞だけが保護された空間に再増殖して組織の修復を促進し、細胞再生領域の機械的保護および安定化を図る場合、または
・特に胸部および腹部レベルでの外科的処置後の、組織間の癒着防止を図る場合、
の受動的バリアとして接着剤組成物またはシーラント組成物の層を使用することが含まれる。
【0046】
上記で定義されたアプリケータアセンブリを使用することによって接着剤組成物またはシーラント組成物の層を表面に塗布することを含む方法は、接着剤またはシーラントが必要とされる他の様々な状況に適用することができる。これらには、肺切除後の空気漏れ、胃腸の漏れを封じるため、外科的処置の時間を短縮するため、硬膜を密封するため、腹腔鏡下手術を容易にするため、分解性皮膚接着剤として、厩舎や鋲の必要性を防止または軽減するためのヘルニアマトリックスとして、失血を防ぐため、外科的処置中に臓器または組織を操作するため、角膜移植を適切に確保するため、心臓にパッチを当てて薬物を送達する、および/または心筋梗塞後の心臓の拡張を減らすため、別の材料を組織に付着させるため、縫合糸またはステープルを増強するため、組織全体に力を分散させるため、漏れを防ぐため、火傷した皮膚からの水分の蒸発を防ぐための皮膚のバリア膜として、抗瘢痕または抗菌薬の送達のためのパッチとして、組織に取り付けられた装置に、入れ歯や口腔器具を保持するなど口腔内に装置を固定するためのテープとして装置を粘膜に取り付けるため、軟組織を骨に固定するためのテープとして、誘導組織(例えば、骨の修復および/または再生)における成形可能なバリアとして、および、組織の穴の形成を防ぐこと、組織の機械的特性を強化/増強すること、等が含まれるが、これに限定されない。
【0047】
本発明はまた、生物学的組織および/または補綴組織の2つの部分を一緒に保持するための方法であって、
・例えば、外科用縫合糸、ステープル、または端から端まで縫うことによって、2つの部分を結合するステップと、
・血液またはその他の液体を標的部位から除去し、前述のようにアプリケータアセンブリを使用して、接合部に接着剤組成物またはシーラント組成物の層を塗布するステップと、
を含む方法に関する。
【0048】
接着剤組成物またはシーラント組成物の層の厚さは、少なくとも約50ミクロン、100ミクロン、500ミクロン、または1000ミクロンであり得る。好ましくは接着剤組成物またはシーラント組成物の層の厚さは1500ミクロン未満である。
【0049】
好ましい実施形態によれば、上記の方法のうちの1つは、
・例えば、外科用縫合糸、ステープル、または端から端まで縫うことによって、2つの部分を結合するステップと、
・血液またはその他の液体を標的部位から除去し、上記で定義したアプリケータアセンブリを使用して、接合部に接着剤組成物またはシーラント組成物の層を塗布するステップと、
を含み得る。
【0050】
好ましい実施形態によれば、上記の方法のうちの1つは、誘導骨再生(GBR)に適用される。GBRは、粒子状骨移植片または/および代用骨の有無にかかわらずバリア膜を使用する外科手術である。誘導骨再生による骨再生は、多能性および骨形成細胞(例えば、骨膜および/または隣接する骨および/または骨髄に由来する骨芽細胞)の骨欠損部位への移動と、骨形成を妨げる細胞(例えば、上皮細胞および線維芽細胞)の排除とに依存する。本発明によれば、この方法は、
・骨移植片材料(例えば、自家骨、同種移植片、異種移植片、または異物形成法(alloplast))を標的部位に適用するステップと、
・血液またはその他の液体を標的部位から除去し、上記で定義したアプリケータアセンブリを使用して、骨移植片材料上に接着剤組成物またはシーラント組成物の層を塗布するステップと、
を含み得る。
【0051】
好ましい実施形態によれば、上記の方法のうちの1つは、
・接着剤組成物またはシーラント組成物の適用層を放射線に曝して、接着剤組成物またはシーラント組成物の重合または硬化を誘導するステップ
をさらに含み得る。
【0052】
いくつかの実施形態によれば、接着剤組成物またはシーラント組成物は、重合または硬化を促進するために、光開始剤の存在下において紫外線(UV)光により照射される。
【0053】
適切な光開始剤の例には、2-ジメトキシ-2-フェニル-アセトフェノン、2-ヒドロキシ-1-[4-(ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチル-1-プロパノン(Irgacure 2959)、1-ヒドロキシシクロヘキシル-1-フェニルケトン(Irgacure 184)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン(Darocur 1173)、2-ベンジル-2-(ジメヒルアミノ)-1-[4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン(Irgacure 369)、メチルベンゾイルホルメート(Darocur MBF)、オキシ-フェニル-酢酸-2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステル(Irgacure 754)、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-(4-モルホリニル)-1-プロパノン(Irgacure 907)、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド(Darocur TPO)、ホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)(Irgacure 819)、およびそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0054】
他の実施形態では、接着剤組成物またはシーラント組成物は、重合または硬化を促進するために、光開始剤の存在下において可視光(典型的には青色光または緑色光)により照射される。
【0055】
可視光に敏感な光開始剤の例には、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド、エオシンY二ナトリウム塩、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)およびトリエタノールアミン、ならびにカンファーキノンが含まれるが、これらに限定されない。
【0056】
照射は、患者内の所望の適用部位に光を透過、放出、方向付け、または他の方法で適用するように構成された光源で適用される。
【0057】
特別な実施形態によれば、光源は、別個の光アプリケータに配置される。
【0058】
「光源」という用語は、ハロゲン電球、発光ダイオード(LED)、LEDアレイ、およびそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない任意の光生成装置を指す。
【0059】
一緒に結合される2つの部分は、
・組織の端、または、
・血管および、好ましくはダクロンまたはePTFE(GoreTex(登録商標))などの合成材料でできている人工血管、または、
・生体材料で作られた血管および人工血管、
・動脈および/または静脈を含む2つの血管部分、
・血管と、パッチやステントなどの人工組織、
を含み得る。
【0060】
2つの部分は、血管および管状血管補綴を含み得、そして末端吻合または末端外側吻合によって一緒に結合され得る。
【0061】
他の実施形態によれば、接着剤組成物またはシーラント組成物の層は、縫合なしで、例えば切開(例えば、血管切開)の無縫合閉鎖のために接合部上に適用され得る。
【0062】
血管切開は、例えば、約0.5~6ミリメートル、典型的には約4~5ミリメートルの血管切開を含む。
【0063】
治療できる他の種類の創傷には、漏れる創傷、閉じるのが難しい創傷、または通常の生理学的メカニズムによって適切に治癒しない創傷が含まれるが、これらに限定されない。
【0064】
上記の方法は、ヒトまたは獣医の使用のために、体内および体外の両方で実施することができる。これらの方法は、開腹手術、低侵襲手術、または腹腔鏡手術の下で実施することができる。
【0065】
本発明の実施形態は、図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【
図1】本発明の第1の実施形態によるアプリケータを概略的に示す。
【
図2】本発明の第1の実施形態によるアプリケータを概略的に示す。
【
図4】本発明の第2の実施形態によるアプリケータを概略的に示す。
【
図5】本発明の第2の実施形態によるアプリケータを概略的に示す。
【
図6】本発明の第3の実施形態によるアプリケータを概略的に示す。
【
図7】本発明の第4の実施形態によるアプリケータを概略的に示す。
【
図8】本発明の第5の実施形態によるアプリケータを概略的に示す。
【
図9】本発明の第5の実施形態によるアプリケータを概略的に示す。
【
図11】アプリケータを取り付けることができる分配装置を概略的に示す。
【
図12】ケーシングを備えた分配装置を概略的に示す。
【
図13】アプリケータおよび分配装置を封入するためのパッケージを概略的に示す。
【
図14】本発明の一実施形態によるアプリケータアセンブリを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0067】
図1~
図3を参照すると、第1の実施形態によれば、アプリケータ1は、1つの単一の材料で作られている。アプリケータ1の材料は、剛性であろうと可撓性であろうと、生体適合性材料であり得る。アプリケータ1の材料は、例えば、射出成形製造技術と互換性のある剛性材料であるポリカーボネートであり得る。
【0068】
アプリケータ1の材料は、可視光に対して半透明であるため、観察者は、アプリケータ1を通って流れる接着剤組成物またはシーラント組成物を見ることができる。しかしながら、アプリケータ1の材料は、好ましくは、接着剤組成物またはシーラント組成物を活性化する波長の放射線に対して不透明である。
【0069】
アプリケータ1は、取り付け部分3と、送達部分4と、取り付け部分3を送達部分4に接続する中間部分5とを含む本体2を備えている。
【0070】
取り付け部分3は、分配装置に接続されることを意図した取り付け面6を有する。
【0071】
送達部分4は、接着剤組成物またはシーラント組成物が堆積される生物学的組織および/または補綴組織に面して配置されることを意図された塗布面7を有する。塗布面7は実質的に平面である。
【0072】
中間部分5は曲がっている。
【0073】
本体2は、取り付け面6に設けられた第1の入口開口部8と、塗布面7に設けられた第1の出口開口部9と、第1の入口開口部8から第1の出口開口部9まで延在する第1の内部チャネル10とをさらに含む。
【0074】
第1の入口開口部8は円形である。第1の入口開口部8の直径は、4ミリメートル~4.5ミリメートルの間、好ましくは4.270ミリメートル~4.315ミリメートルの間、例えば4.29ミリメートルから構成され得る。第1の入口開口部8は、接着剤組成物またはシーラント組成物が分配装置からアプリケータ1に流れることを可能にするように構成されている。
【0075】
第1の出口開口部9は、接着剤組成物またはシーラント組成物がアプリケータ1から流出し、接着剤組成物またはシーラント組成物の層を形成することを可能にするためのスロットを有する。第1の出口開口部9は、第1の幅w1および第1の高さh1を有する。第1の幅w1は、2~15ミリメートルの間で構成され、好ましくは5~8ミリメートルの間で構成され、例えば3.89ミリメートルに等しい。第1の高さh1は、0.2~1ミリメートルの間、好ましくは0.4~0.6ミリメートルの間、例えば0.63ミリメートルから構成される。
【0076】
第1の内部チャネル10は、接着剤組成物またはシーラント組成物を第1の入口開口部8から第1の出口開口部9に案内するように構成されている。第1の内部チャネル10は、第1の入口開口部8から第1の出口開口部9まで連続的に増加する幅wを有し、第1の入口開口部8から第1の出口開口部9まで連続的に減少する高さhを有する断面を有する。
【0077】
本体2はまた、アプリケータ1を分配装置に取り付けるために、分配装置の取り付け構成要素と協調するように構成された第1の取り付け構成要素11を含む。第1の取り付け構成要素11は、取り付け面6から突出し、第1の入口開口部8を取り囲む第1の環状壁12を含む。環状壁12は、取り付け主軸X1に従って、分配装置の取り付け部分の雌の円錐形内面と適合するように構成された雄の円錐形の外面を含む。第1の取り付け構成要素11はまた、本体2の第1の取り付け構成要素11を分配装置の取り付け構成要素にロックするために、取り付け主軸X1に対して直角に突出するラグ13を含む。
【0078】
本体2はまた、塗布面7に設けられた第2の入口開口部14、取り付け面6に設けられた第2の出口開口部15、および第2の入口開口部14から第2の出口開口部15に延在する第2の内部チャネル16を含む。
【0079】
第2の入口開口部14は長方形の形状をしている。第2の入口開口部14は、汚染物質または望ましくない要素(例えば、流体、材料片または組織片)を標的部位から除去することを可能にするために、塗布面7上の第1の出口開口部9に隣接して配置され、一方、接着剤組成物またはシーラント組成物の層は、第1の出口開口部9を通して堆積される。第2の入口開口部14は、第2の幅w2および第2の高さh2を有する。第2の幅w2は、第1の幅w1以上である。第2の幅w2は、2~15ミリメートルの間で構成され、好ましくは5~8ミリメートルの間で構成され、例えば4ミリメートルに等しい。第2の高さh2は、0.2~5ミリメートルの間、好ましくは0.3~2ミリメートルの間、例えば1.55ミリメートルからなる。
【0080】
第2の出口開口部15は円形である。第2の出口開口部15は、1.6ミリメートル~10ミリメートルの間、例えば2ミリメートルで構成される直径を有する。第2の出口開口部15は、標的部位から除去された汚染物質または望ましくない要素(例えば、流体、材料片、または組織片)が外部吸引装置に向かって排出されることを可能にするように構成されている。
【0081】
第2の内部チャネル16は、第1の内部チャネル10と平行に、本体内に延在している。
【0082】
本体2はまた、第2の内部チャネル16を外部吸引装置に接続するために、吸引管の端部をアプリケータ1に取り付けるように構成された第2の取り付け構成要素17を含む。第2の取り付け構成要素17は、取り付け面6から突出し、第2の出口開口部15を取り囲む第2の環状壁18を含む。第2の取り付け構成要素17はまた、第2の環状壁18の周りに延在する円錐形の膨らみ19を含む。円錐形の膨らみ19は、吸引管をアプリケータ1に取り付けるために、吸引管の端部開口部に挿入されるように構成されている。
【0083】
本体2は、第1の内部チャネル10を第2の内部チャネル16から分離する壁20を含む。壁20は、取り付け面6から塗布面7に向かって減少する厚さを有する。壁20は、第1の出口開口部9と第2の入口開口部14との間(塗布面7の平面内)で測定され、25マイクロメートル~1センチメートル、例えば0.46ミリメートルで構成される厚さを有する。
【0084】
塗布面7は、取り付け主軸と角度αを形成し、この角度は、90~30度、好ましくは90~60度、より好ましくは75~85度、例えば63.72度で構成される。
【0085】
図3から分かるように、第1のチャネル10は、入口部21、出口部22、および入口部21を出口部22に接続する中間部23を有する。入口部21は、本体2の取り付け部分3内に侵入している。入口部21は、第1の入口開口部8から中間部23まで延在している。出口部22は、本体2の送達部分4内に侵入する。出口部22は、中間部23から第1の出口開口部9まで延在している。中間部23は、本体2の中間部分5内に延在している。中間部23は湾曲しており、一方、出口部22は実質的に真っ直ぐである。
【0086】
図4および
図5は、本発明の第2の実施形態によるアプリケータ1を概略的に示す。
【0087】
この第2の実施形態では、アプリケータ1は、アプリケータ1の送達部分4が、中間部分5から塗布面7に向かって連続的に増加する幅Wを有することを除いて、第1の実施形態のアプリケータと同様である。
【0088】
この第2の実施形態では、第1の出口開口部9は、9.29ミリメートルに等しい第1の幅w1と、0.52ミリメートルに等しい第1の高さh1とを有する。
【0089】
第2の入口開口部14は、第2の幅w2および第2の高さh2を有する。第2の幅w2は、第1の幅w1よりも大きくなっている。第2の幅w2は8.87ミリメートルに等しく、第2の高さh2は1.54ミリメートルに等しい。
【0090】
この第2の実施形態は、第1の実施形態で堆積された接着剤組成物またはシーラント組成物の層よりも広い幅を有する接着剤組成物またはシーラント組成物の層を堆積することを可能にする。この第2の実施形態は、大動脈、大腿動脈、頸動脈または冠状動脈などの大きな血管上に接着剤組成物またはシーラント組成物の層を堆積させるように構成され得る。
【0091】
図6は、本発明の第3の実施形態によるアプリケータ1を概略的に示す。
【0092】
この第3の実施形態では、アプリケータの送達部分は、取り付け部分から塗布面に向かって連続的に減少する幅を有する。
【0093】
この第3の実施形態では、第1の出口開口部は、2.38ミリメートルに等しい第1の幅および0.40ミリメートルに等しい第1の高さを有する。
【0094】
さらに、アプリケータ1は、塗布面7上の第1の出口開口9に隣接して並んで配置された2つの第2の入口開口14を備える。これにより、所定のサイズの材料を濾過することが可能になり、生体材料または細胞(例えば、骨粉末または細胞)などの材料の望ましくない除去を防ぐことができる。
【0095】
この第3の実施形態では、本体2は、曲げられた中間部分5を有する。中間部分5は、スロット9の主平面内に延在する曲率半径を有する。
【0096】
図7は、本発明の第4の実施形態によるアプリケータ1を概略的に示す。
【0097】
この第4の実施形態では、アプリケータ1は、塗布面7上の第1の出口開口9に隣接して並んで配置された3つの第2の入口開口14を有する。
【0098】
図8~
図10を参照すると、第5の実施形態によれば、アプリケータ1は、第1の取り付け部分3、第2の取り付け部分24、および送達部分4を備える本体2を備える。
【0099】
送達部分4は、接着剤組成物またはシーラント組成物が堆積される生物学的組織および/または補綴組織に面して配置されることを意図された塗布面7を有する。適用面7は実質的に平面である。
【0100】
本体2は、第1の取り付け部分3に設けられた第1の入口開口部8、送達部分4に設けられた第1の出口開口部9、および第1の入口開口部8から第1の出口開口部9まで延在する第1の内部チャネル10を含む。
【0101】
第1の出口開口部9は、塗布面7に設けられている。
【0102】
第1の入口開口部8は円形である。第1の入口開口部8の直径は、4ミリメートル~4.5ミリメートルの間、好ましくは4.270ミリメートル~4.315ミリメートルの間、例えば4.28ミリメートルからなる。第1の入口開口部8は、接着剤組成物またはシーラント組成物が分配装置からアプリケータ1に流れることを可能にするように構成されている。
【0103】
第1の出口開口部9は、接着剤組成物またはシーラント組成物がアプリケータから流出し、接着剤組成物またはシーラント組成物の層を形成することを可能にするためのスロットを有した形状になっている。第1の出口開口部は、第1の幅w1および第1の高さh1を有する。第1の幅w1は、2~15ミリメートルの間で構成され、好ましくは、6~8ミリメートルの間で構成され、例えば、4ミリメートルに等しい。第1の高さh1は、0.2~1ミリメートルの間、好ましくは0.4~0.6ミリメートルの間、例えば0.5ミリメートルからなる。
【0104】
第1の内部チャネル10は、接着剤組成物またはシーラント組成物を第1の入口開口部8から第1の出口開口部9に案内するように構成されている。第1の内部チャネル10は、第1の入口開口部8から第1の出口開口部9まで連続的に増加する幅wを有し、第1の入口開口部8から第1の出口開口部9まで連続的に減少する高さhを有する断面を有する。
【0105】
第1の取り付け部分3は、アプリケータ1を分配装置に取り付けるために、分配装置の取り付け部分と協働するように構成されている。第1の取り付け部分3は、第1の入口開口部8を取り囲む第1の環状壁12を含む。環状壁12は、取り付け主軸X1に従って、分配装置の取り付け部分の雌の円錐形内面と適合するように構成された雄の円錐形の外面を含む。第1の取り付け部分3はまた、本体2の第1の取り付け部分12を分配装置の取り付け部分にロックするために、取り付け主軸X1に対して半径方向に突出するラグ13を含む。
【0106】
本体2はまた、送達部分4に設けられた第2の入口開口14と、第2の取り付け部分24に設けられた第2の出口開口15と、第2の入口開口14から第2の出口開口15に延在する第2の内部チャネル16とを含む。
【0107】
第2の入口開口部14は、塗布面7に設けられている。
【0108】
第2の入口開口部14は、実質的に長方形の形状を有している。第2の入口開口部14は、第2の入口開口部14を介して汚染物質または望ましくない要素(例えば、流体、材料片または組織片)を標的部位から除去する一方で、接着剤組成物またはシーラント組成物の層が第1の出口開口部9を通して堆積されることを可能にするために、塗布面7の第1の出口開口部9に隣接して配置されている。第2の入口開口部14は、第2の幅w2および第2の高さh2を有する。第2の幅w2は、第1の幅w1以上である。第2の幅w2は、2~15ミリメートルの間で構成され、好ましくは5~8ミリメートルの間で構成され、例えば、3.72ミリメートルに等しい。第2の高さh2は、0.2~5ミリメートル、好ましくは0.3~0.5ミリメートル、例えば2.32ミリメートルで構成される。
【0109】
第2の出口開口部15は円形である。第2の出口開口部15は、4~8ミリメートル、例えば、5.05ミリメートルの間で構成される直径を有する。第2の出口開口部15は、標的部位から除去された汚染物質または望ましくない要素(例えば、流体、材料片、または組織片)が外部吸引装置に向かって排出されることを可能にするように構成されている。
【0110】
第2の取り付け部分24は、第2の内部チャネル16を外部吸引装置に接続するために、吸引管の端部をアプリケータ1に取り付けるように構成されている。第2の取り付け部分24は、第2の出口開口部15を取り囲む第2の環状壁18を含む。第2の取り付け部分24はまた、第2の環状壁18の周りに延在する円錐形の膨らみ19を含む。円錐形の膨らみ19は、吸引管をアプリケータ1に取り付けるために、吸引管の端部開口部に挿入されるように構成されている。
【0111】
本体2はまた、第1の内部チャネル10および第2の内部チャネル16を分離する壁20を含む。壁20は、取り付け部分3、24から塗布面7に向かって減少する厚さを有している。壁20は、第1の出口開口部9と第2の入口開口部14との間(塗布面7の平面内)で測定され、25マイクロメートル~1センチメートルの間、例えば1ミリメートルで構成された厚さを有している。
【0112】
塗布面7は、取り付け主軸X1と角度αを形成し、この角度は、90度~60度、好ましくは75度から85度、例えば70度で構成される。
【0113】
この第5の実施形態では、第1のチャネル10は実質的に真っ直ぐであり、第1の主軸X1に沿って延びている。第2のチャネル16は実質的に真っ直ぐであり、第2の主軸X2に沿って延びている。第2の主軸X2は、第1の主軸X1に対して10~20度、例えば18.72度の間に含まれる角度βで配向されている。
【0114】
図11は、アプリケータ1を取り付けることができる分配装置25を概略的に示している。
【0115】
分配装置25は、シリンジ26を含む。シリンジ26は、シリンダ27と、シリンダ27の長手方向軸に従ってシリンダ27内を滑ることができるようにシリンダ27内に配置されたピストン28とを含む。
【0116】
シリンジ26はまた、接着剤組成物またはシーラント組成物が分配装置25から流出することを可能にするための端部開口部30を有するカニューレ29を含む。
【0117】
シリンジ26は、端部開口部30を取り囲む取り付け部分31を含む。シリンジ26の取り付け部分31は、アプリケータ1を分配装置25に取り付けるために、アプリケータ1の第1の取り付け部分3と協働するように構成されている。より正確には、分配装置25の取り付け部分31は、雌の円錐形内面を有している。アプリケータ1の第1の取り付け部分3の雄の円錐形外面は、分配装置25の取り付け部分31の雌の円錐形内面と適合するように構成されている。
【0118】
シリンダ27およびピストン28は一緒になって、接着剤組成物またはシーラント組成物で満たされ得るリザーバ32を画定する。
【0119】
シリンダ27は、好ましくは、接着剤組成物またはシーラント組成物と反応しないか、またはその中で拡散しない材料でできている。シリンダの材料は、ガラス、または環状オレフィンコポリマー(COC)もしくは環状オレフィンポリマー(COP)などのポリマーであり得る。シリンダの材料は、所定の波長の光がリザーバ内に含まれる接着剤組成物またはシーラント組成物を照射するのを防ぎ、接着剤組成物またはシーラント組成物の架橋を開始するように光をフィルタリングすることができる着色剤などの物質を含み得る。
【0120】
接着剤組成物またはシーラント組成物は、好ましくは、国際公開第2014/190302号、国際公開第2016/202984号または国際公開第2016/202985に開示されるようなプレポリマーを含む組成物である。
【0121】
接着剤組成物またはシーラント組成物は、化学式ABを有する疎水性粘性プレポリマーを含み得、Aは、架橋前に1つまたはアクリレート基を含み得る置換または非置換のポリオール部分に由来し、Bは、架橋前にアクリレート基を含み得る置換または非置換の二酸に由来する。接着剤組成物またはシーラント組成物は、プレポリマーが、水および/または血液などの体液によって洗い流されることなく、投与部位の所定の位置に留まることを可能にする粘度を有する。好ましい実施形態によれば、接着剤組成物またはシーラント組成物の粘度は、ブルックフィールド粘度計システムを使用して、摂氏37度で2000~15000センチポアズの間で構成される。
【0122】
接着剤組成物またはシーラント組成物はまた、接着剤組成物またはシーラント組成物が所定の波長の放射線に曝されたときにプレポリマーの架橋を開始することができる光開始剤を含み得る。好ましくは、接着剤組成物またはシーラント組成物は、プレポリマーおよび光開始剤を含み、前記光開始剤は、特定の波長で露光されたときに前記プレポリマーの重合を誘導することができる。特別な実施形態によれば、前記光開始剤は、紫外線(UV)光に敏感である。特別な実施形態によれば、UV光に敏感な適切な光開始剤の例には、2-ジメトキシ-2-フェニル-アセトフェノン、2-ヒドロキシ-1-[4-(ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチル-1-プロパノン(Irgacure 2959)、1-ヒドロキシシクロヘキシル-1-フェニルケトン(Irgacure 184)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン(Darocur 1173)、2-ベンジル-2-(ジメヒルアミノ)-1-[4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン(Irgacure 369)、メチルベンゾイルホルメート(Darocur MBF)、オキシ-フェニル-酢酸-2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステル(Irgacure 754)、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-(4-モルホリニル)-1-プロパノン(Irgacure 907)、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド(Darocur TPO)、ホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)(Irgacure 819)、およびそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。別の実施形態によれば、前記光開始剤は、可視光(通常、青色光または緑色光)に敏感である。可視光に敏感な光開始剤の例には、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド、エオシンY二ナトリウム塩、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)およびトリエタノールアミン、ならびにカンファーキノンが含まれるが、これらに限定されない。
【0123】
図12は、ケーシング33を備えた分配装置25を概略的に示している。
【0124】
ケーシング33は、リザーバ32内に含まれる接着剤組成物またはシーラント組成物に光が照射されるのを防ぐように、シリンダ27の周りに配置されている。
【0125】
ケーシング33は、シリンダ27を取り囲む管状壁34と、管状壁34から延在する弾性タブ35とを備えている。弾性タブ35は、ケーシング33内にシリンダ27を挿入すると変形し、シリンダ27がケーシング33に挿入されるとシリンジ26の肩部36に接して、ケーシング33をシリンダ27上にロックするように構成されている。
【0126】
図13は、アプリケータ1を封入するパッケージ37と、アプリケータ1に接続された吸引管38とを概略的に示す。
【0127】
パッケージ37はまた、分配装置35および任意選択でケーシング33を封入し得る。
【0128】
パッケージ37は、2枚のシート39および40を含み、これらは、アプリケータ1および吸引管38を含むポケットを画定するように、それらの縁に沿って一緒に熱融着される。各シート38、40は、細菌の侵入を防止する材料でできている。第1のシート39(または裏打ち)は、パッケージ37に含まれる成分の滅菌を可能にするため、酸化エチル(ETO)などのガス透過性の材料でできていてもよく、または織られたまたは織られていない合成繊維、例えばタイベック(登録商標)(E.I.du Pont de Nemours and Company提供)などのポリエチレン繊維のシートであってもよい。第2のシート40は、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはそれらの混合物など、ガスを透過せず、透明である材料でできていてもよい。
【0129】
吸引管38は、例えばポリウレタン(PU)など、陥没に耐えることができ、生体適合性のある材料でできている。
【0130】
図13に見られるように、吸引管38は、第1の端部41および第2の端部42を有する。アプリケータ1は、吸引管38の第1の端部41に取り付けられている。
【0131】
パッケージ37はまた、吸引管38を吸引装置に接続するために、吸引管38の第2の端部42に取り付けられた目盛り付き(または階段状)コネクタ43を含む。吸引装置は、パイプラインシステムを介して中央の医療用真空供給装置に接続することができる。
【0132】
図14は、本発明の一実施形態によるアプリケータアセンブリ44を概略的に示す。
【0133】
アプリケータアセンブリ44は、分配装置25、分配装置25の周りに配置されたケーシング33、アプリケータ1、および吸引管38を備えている。
【0134】
アプリケータ1は、分配装置25に接続されている。
【0135】
より正確には、アプリケータ1を分配装置25に取り付けるために、アプリケータ1の第1の取り付け部分3は、分配装置25の取り付け部分31に接続される。そのような接続は、アタッチメントの主軸X1に従って、分配装置のアタッチメント部分31に対してアプリケータ1の第1のアタッチメント部分3を平行移動させ、次に回転させることによって行われる。
【0136】
アプリケータ1はまた、吸引管38に接続されている。
【0137】
より正確には、アプリケータ1の第2の取り付け部分24は、吸引管38の第1の端部41に接続されている。
【0138】
使用中、吸引管38の第2の端部42は、段付きコネクタ43を介して吸引装置に接続されている。
【0139】
アプリケータアセンブリ44を使用して、接着剤またはシーラントの層を堆積させて、2つの部分の間の接合部などの組織領域を覆うことができる。第1の部分は、例えば、血管を含み得、第2の部分は、血管補綴を含み得る。
【0140】
血管補綴は、管状血管補綴であり得る。管状血管補綴は、ダクロンやePTFE(例えばGoreTex(登録商標))などの合成材料、または生体材料でできている。
【0141】
血管と管状血管補綴は、例えば縫製またはステープル留めによって、末端吻合によって以前に一緒に結合されていた可能性があり、または単に端から端まで維持されている可能性がある。
【0142】
アプリケータアセンブリ44は、第1の出口開口部9が血管または補綴に面するように配置され、2つの部分の間の接合部に対して横方向に延在している。
【0143】
次に、アプリケータ1が接合線に沿って同時に変位する間、ピストン28がシリンダ27内で漸進的にスライドするようにされる。
【0144】
接着剤組成物またはシーラント組成物は、アプリケータ1の第1の内部チャネル10に流れ込む。同時に、汚染物質または望ましくない要素は、第2の入口開口部14を介して標的部位から除去される。
【0145】
組織の表面と接着剤組成物またはシーラント組成物との間にくぼみが作られると、組織の表面に不規則性があるにもかかわらず、組織と接着剤組成物またはシーラント組成物の層との間に密接な接触が得られる。
【0146】
アプリケータ1の材料は可視光に対して半透明であるため、オペレータは、接着剤組成物またはシーラント組成物が第1の内部チャネル10内を流れるのを見て、接着剤組成物またはシーラント組成物が第1の出口開口部9に到達する瞬間を検出することができる。
【0147】
接着剤組成物またはシーラント組成物は、第1の出口開口部9を通ってアプリケータ1から流出する。これにより、薄いストリップの形状を有する接着剤またはシーラントの層を堆積させることができる。
【0148】
堆積されると、接着剤またはシーラント層は、プレポリマーの架橋を誘発するように放射線に曝される。
【0149】
硬化した接着剤またはシーラント層のポリマーは、下にある組織と物理的に絡み合っている。したがって、接着剤またはシーラント層は、止血シールを提供し、例えば、血管と補綴との間の接合部を補強する。
【0150】
末端外側吻合によって一緒に結合された血管および管状血管補綴に同じ方法を適用することができる可能性がある。
【0151】
標的部位からの汚染物質または望ましくない要素(例えば、流体、材料片または組織片)の除去により、接着剤組成物またはシーラント組成物の層の堆積が容易になる。結果として、複雑な接合の場合でさえも接着剤組成物またはシーラント組成物の堆積が成功裏に得られ得る。
【0152】
管状補綴の代わりにパッチの形状を有する血管補綴にも同じ方法を適用することができる可能性がある。
【0153】
例1:血管手術
本発明によるアプリケータアセンブリは、ブタモデルで実施される血管再建手順で使用された。クランプ後、左頸動脈に2~3センチメートルの線形切開を行った。ePTFE(Gore-TEX(登録商標)血管グラフト、標準壁、直径8mm)を切開部に縫合した。動脈のクランプが解除され、縫合穴からの血液漏れが観察された。その後、容器は再びクランプされた。
図8~
図10に従って、PGSA(Poly(Glycerol)Sebacate Acrylate-米国特許第8143042号明細書)を含む1ミリリットルのシリンジを含む分配装置がアプリケータに接続されている。吸引管は、真空ラインに接続された外部吸引装置に接続された(真空ラインは約-0,8バールの減圧を生成することができる)。次に、アプリケータを使用して、縫合線上にPGSAを適用した。アプリケータは標的部位の血液を効率的に除去し、PGSAと下層組織との接触を強化する。すべての縫合線を覆った後、PGSAは、Gecko独自の光活性化ペン(Setalum(商標))を使用して30秒間、平方センチメートル(s/cm
2)の放射線を照射することによって重合された。血管がクランプ解除されると、即座に止血が得られた。
【0154】
例2:尿路手術
ミニブタモデルで30cmの腹部切開を行った。膀胱と尿道が露出した。膀胱と尿道を分離するために横切開を行う前に膀胱を空にし、根治的直腸切除シナリオをシミュレートした。フォーリーカテーテル(BBraunが提供)を尿道に通し、膀胱に留置した。臓器を接続するために4本の縫合糸を適用し、吻合部からの血液および少量の尿漏れが観察された。PGSAA(ポリ(グリセロール)セバシン酸アクリレート無水物-国際公開第2016202985号)を含む1ミリリットル(mL)のシリンジを含む分配装置が、本発明によるアプリケータに接続されている。次に、真空ラインに接続された外部吸引装置にアプリケータを接続した(真空ラインは約-0.8バールの減圧を生成することができる)。PGSAAは吻合領域に適用されている。PGSAAの重合は、Gecko独自の光活性化ペン(Setalum(商標))を使用して1平方センチメートル(s/cm2)あたり30秒間放射線を照射することによって実行された。重合後、接着剤組成物が標的組織および縫合糸に付着しているのを明らかに見ることができた。膀胱を尿道から引き離すと、PGSAAが両方の組織の分離を制限していることがはっきりとわかる。PGSAAの適用後、吻合領域の内側からの漏れは観察されなかった。
【0155】
次に、接着剤を除去し、接着剤プレポリマーの2回目の塗布を、同じ条件に従って、しかし真空なしで再度実施した。
【0156】
この実験は、真空の使用が、
a)PGSAAを適用する前に標的組織から液体を除去することにより、アプリケータアセンブリの使いやすさを大幅に改善し、これにより、シーラント/接着剤組成物の堆積が促進されること、
b)標的表面とシーラント/接着剤との接触を大幅に強化し、接着性を向上させること、
を示している。
【0157】
例3:骨
この試験は、ウシ大腿骨の横断面を使用して生体外で実施された。骨の骨膜を取り除き、試験を容易にするために1.5cm×2.5cmの長方形を切り取った。骨の長方形は、リン酸緩衝生理食塩水に潜ることによって水和された。次に、PGSA(ポリ(グリセロール)セバケートアクリレート)を含む1ミリリットル(mL)のシリンジを含む分配装置が、本発明によるアプリケータに接続された。次に、アプリケータを真空ラインに接続された外部吸引装置に接続した(真空ラインは約-1.0~-0.7バールの減圧を生成することができる)。まず、PGSAを骨の1cm×1cmの領域に真空を当てて適用し、Gecko独自の光活性化ペン(Setalum(商標))を使用して30秒間重合させた。これを3回実行した。次に、真空をオンにして同じ手順を実行した。次に、機械的試験機(インストロンが提供)を使用して、接着力の測定を行った。PGSAの骨への接着レベルは40倍以上増加した。
【0158】
例4:PGSAの適用-水中動脈
本研究では、本発明によるアプリケータアセンブリが使用された。
図8~
図10に従って、PGSA(ポリ(グリセロール)セバシン酸アクリレート-米国特許第8,143,042号明細書)を含む1ミリリットルのシリンジを含む分配装置がアプリケータに接続されている。吸引管は、真空ラインに接続された外部吸引装置に接続された(真空ラインは約-0,8バールの減圧を生成することができる)。次に、完全に水に沈めたブタの頸動脈にPGSAを適用した。吸引がオンのとき、ユーザは頸動脈にPGSAを簡単に適用した。吸引は、送達されたPGSAと他の標的血管との間の接触を安定させるのに役立ち、接着を強化した。ポリマー塗布の終わりに、容器がまだ水没していることに注意すべきである。吸引をオフにして同じ装置を使用すると、PGSAの堆積はより困難になり、PGSAは血管表面に止まらない傾向があった。
【0159】
例5:PGSAバースト性能に対する吸引の影響
本研究では、本発明によるアプリケータアセンブリが使用された。
図8~
図10に従って、PGSA(ポリ(グリセロール)セバシン酸アクリレート-米国特許第8,143,042号明細書)を含む1ミリリットルのシリンジを含む分配装置がアプリケータに接続されている。吸引管は、真空ラインに接続された外部吸引装置に接続された(真空ラインは約-0,8バールの減圧を生成することができる)。
【0160】
ブタの頸動脈を、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)で満たされたシリンジを含むシリンジポンプに接続した。頸動脈のもう一方の端には、頸動脈内の液圧を測定するために圧力プローブを接続した。システムにPBSを充填した後、システムに漏れがないことを確認した。すべての実験は、動脈を濡らして実施された。
【0161】
頸動脈に縦方向の2~3mmの切開を作成し、PBSが環境圧力を漏らせるようにした。
【0162】
まず、頸動脈切開部を吸引してPGSAを適用した。最大破裂圧力が評価された。ポリマーの第1の層を除去した後、吸引をオンにしてポリマーを再適用した。これを3回繰り返した。
【0163】
結果は、吸引を使用した場合、PGSAバースト圧力が平均40%増加することを示している。さらに、測定値の標準偏差は約39%減少したが、吸引はPGSAバースト性能を改善および標準化する。