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特許7439062グルコース感受性インスリンおよびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】グルコース感受性インスリンおよびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/62 20060101AFI20240219BHJP
   A61K 38/28 20060101ALI20240219BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240219BHJP
   A61K 47/59 20170101ALI20240219BHJP
   C07D 259/00 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
C07K14/62 ZNA
A61K38/28
A61P3/10
A61K47/59
C07D259/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021515203
(86)(22)【出願日】2019-09-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 EP2019074987
(87)【国際公開番号】W WO2020058322
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-09-16
(31)【優先権主張番号】18195490.0
(32)【優先日】2018-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】19176911.6
(32)【優先日】2019-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519331637
【氏名又は名称】ノヴォ・ノルディスク・リサーチ・センター・オックスフォード・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ホゥ-イェンセン
(72)【発明者】
【氏名】アリス・レイヴン・マドセン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・クルーゼ
(72)【発明者】
【氏名】ペル・サウエルベルク
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー・マレー
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー・ピーター・デイヴィス
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・マイケル・チャップマン
【審査官】坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/107520(WO,A1)
【文献】特表2018-513843(JP,A)
【文献】特表2020-511533(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 14/62
A61K 38/28
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インスリン誘導体であって、ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体、グルコース模倣体、および下記の式M1のマクロサイクルM
【化1】
式中、RおよびRは、-OH、
【化2】
から独立して選択され
式中、R、R、R、R、R、およびRは独立して、水素、ハロゲン、(1-4C)アルキルおよび(1-4C)アルコキシから独立して選択され、
式中、Rは、式M1のマクロサイクルの、ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体への結合点を示す
を含むインスリン誘導体であり、
ヒトインスリン類似体は、ヒトインスリンと比較して5個未満の変異を含み、かつ、インスリン活性を有するインスリン類似体であり、
グルコース模倣体は、グルコシドであり、
(i)マクロサイクルが、リンカーを介して、a)ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体のB鎖の1位におけるアルファアミノ基、またはb)ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体のB鎖の29位におけるリジン(K)のイプシロンアミノ基またはアルファカルボン酸基に結合し、
リンカーが、
a)下記の式L1のリンカー:
【化3】
式中、XはCH -または(CH CH O-) であり、式中、pは2~4の整数であり、
式中、Yが、CH -、(CH CH CO-)、または-Ph-para-CH -であり、
式中、*は、マクロサイクルMへの結合点を示し、かつ
式中、#は、ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体への結合点を示す);および
b)下記の式L3のリンカー:
【化4】
式中、Zが、CH -または(CH CH O-) であり、
式中、Wは、CH -、(CH CH CO-)、または-Ph-para-CH -であり、
式中、*は、マクロサイクルMへの結合点を示し、かつ
式中、#は、ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体への結合点を示す)
から選択され、
(ii-1)グルコース模倣体が、リンカーを介して、a)ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体のA鎖の1位におけるアミノ酸残基のアルファアミノ基、またはb)ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体のB鎖の29位におけるリジン(K)のイプシロンアミノ基またはアルファカルボン酸基に結合し、
リンカーが、下記の式L2のリンカー:
“-(CH CH O-) -(CH -C(O)-#
(式中、qは、1または2であり、
式中、rは、1または2であり、
式中、“は、グルコース模倣体への結合点を示し、かつ
式中、#は、ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体への結合点を示す)
であるか、または
(ii-2)二つのグルコース模倣体が、ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体のB鎖の29位にあるリジン(K)のアルファカルボン酸基またはイプシロンアミノ基に結合した三価リンカーを介して、結合し、
リンカーが、
a)
【化5】
および
b)
【化6】
の群から選択されるか、または、
(ii-3)二つのグルコース模倣体が各々、ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体のB鎖の29位におけるリジン(K)のアルファカルボン酸基および前記イプシロンアミノ基にそれぞれ結合した二価リンカーを介して、結合し、
リンカーが、下記の式L6および式L7:
【化7】
および
【化8】
(式中、“は、グルコース模倣体への結合点を示し、かつ
式中、# は、ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体のB鎖の29位におけるリジン(K)のアルファカルボキシル酸基への結合点を示し、かつ
式中、# は、ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体のB鎖の29位におけるリジン(K)のイプシロンアミノ基への結合点を示す)
で示される、
インスリン誘導体
【請求項2】
前記グルコース模倣体が、β-D-グルコピラノシドである、請求項1に記載のインスリン誘導体。
【請求項3】
以下:
【化9】
実施例19のINS35、
【化10】
実施例20のINS36、
【化11】
実施例22のINS38、および
【化12】
実施例25のINS41
の群から選択される、インスリン誘導体。
【請求項4】
糖尿病の治療を必要とする患者における糖尿病の治療および/または予防のための医薬組成物であって、請求項1~のいずれか一項に記載の治療有効量のインスリン誘導体を、薬学的に許容可能な賦形剤とともに含む、医薬組成物。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載のインスリン誘導体を含む医薬。
【請求項6】
糖尿病、1型糖尿病、2型糖尿病、耐糖能障害、高血糖症、およびメタボリックシンドローム(メタボリックシンドロームX、インスリン抵抗性症候群)の治療および/または予防で使用するための、請求項に記載の医薬。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
グルコースはヒトのエネルギー恒常性において最も重要な成分であり、また制御されていない血糖は糖尿病の特徴である。糖尿病治療の主な目的は、血糖値を正常値に調節することであり、またインスリンは、この目的のために最も有効な薬剤である。しかしながら、インスリンを使用するグルコースの調節は、高血糖と低血糖との間の困難なバランスである。現代の血糖モニターを用いてさえも、低血糖は一般的に発生しており、様々なグルコース感受性インスリン送達システムが、機械的システム(ポンプ/センサー)または分子送達システムの両方の形態で状況の改善を試みて立案されている。したがって、グルコース調節生物活性(例えば、低血糖値におけるインスリンのより弱いグルコース低下活性)を有する、糖尿病関連ペプチドおよびタンパク質薬剤を配備することが有利であることになる。
【0002】
グルコース感受性インスリン生物活性は、グルコース結合要素に加えて、血糖と競合するグルコース結合要素を結合する結合パートナーを有するインスリンを配備することによって達成することができ、そしてそれ故に、活性状態と不活性状態との間の平衡におけるインスリンフォールディングを制御する(国際特許公開公報第2016149222号、同第2010107520号)。インスリン誘導体上のグルコース結合要素が、同じインスリン上の結合パートナーを結合するとき、インスリンは、不活性または弱い活性の立体構造を獲得する。血糖値が増加するとともに、インスリン誘導体上の結合パートナーはグルコース結合剤から変位し、インスリンの立体構造が活性状態に変化する。
【0003】
こうしたシステムは、何らかの形態でグルコース結合剤を組み込む必要がある。これが、小分子グルコース結合剤の新規設計の試みをもたらした。しかしながら、他の炭水化物との構造上の差異は非常に微妙であるため、水中での合理的な親和性および選択性を有してグルコースを結合することは、非常に困難な課題である。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、グルコース感受性インスリン誘導体を提供する。本発明のインスリン誘導体は、マクロサイクルM、グルコース模倣体、およびヒトインスリンまたはその類似体を含む。マクロサイクルMは、式M1で示され、
【0005】
【化1】
式中、RおよびRは、-OH、
【0006】
【化2】
から独立して選択され、
【0007】
式中、R、R、R、R、R、およびRは独立して、水素、ハロゲン、(1-4C)アルキルおよび(1-4C)アルコキシから独立して選択され、
式中、Rは、式M1のマクロサイクルの結合点を示す。
【0008】
本発明のインスリン誘導体に含まれるマクロサイクルは、水性媒体中のグルコースに対して極めて高い親和性を示す。さらに、本発明のインスリン誘導体内に含まれるマクロサイクルは、他の構造的に類似した糖類(例えば、マンノースまたはフルクトース)に優るグルコースに対する前例のない選択性のレベルを示す。
【0009】
理論に束縛されるものではないが、インスリン誘導体上のマクロサイクルMがグルコース模倣体を同じインスリン上で結合すると、インスリンは不活性または弱い活性の立体構造を獲得すると考えられる。血糖値が増加するとともに、インスリン誘導体上のグルコース模倣体はマクロサイクルMから変位し、インスリンの立体構造が活性状態に変化する。図1は、概略的な形態の原理を図示する(図1のインスリンにおける置換の位置を文字通りに解釈するべきではない)。
【0010】
一態様では、本発明は、投与後に、グルコース濃度の関数としてインスリンを活性化する、インスリン誘導体の提供に関する。
【0011】
一態様では、本発明は、例えば、グルコースが約3mM未満のレベルの低血糖レベルの状況中に、低い活性/可用性を有する、または活性/可用性を持たないインスリン誘導体の提供に関する。
【0012】
一態様では、本発明は、例えば、グルコースが約10mMを上回る高血糖レベルに応答して、高い活性/可用性を有するインスリン誘導体の提供に関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、グルコース感受性インスリン誘導体(Gm=グルコース模倣体、G=グルコース)の概略図である。グルコース感受性インスリン生物活性は、グルコース結合要素に加えて、血糖と競合するグルコース結合要素を結合する結合パートナー(グルコース模倣体、グルコシドなど)を有するインスリンを配備することによって達成することができ、そしてそれ故に、活性状態と不活性状態との間の平衡におけるインスリンフォールディングを制御する。
図2図2は、10mMのリン酸緩衝液中のD-グルコース(10mM)で滴定された化合物6d(5μM)の蛍光滴定(λex=310nm)を示す。
図3】白丸:380nmでの測定された強度対D-グルコース濃度。破線:実験データ(1:1の結合モデル)に適合した等温線。計算したKa=14751.48±637.3 M-1。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、グルコース依存性の様式でインスリン受容体を活性化するグルコース感受性化合物に関する。
【0015】
本発明の一態様では、本発明は、ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体、グルコース模倣体、およびグルコース結合剤を含むグルコース感受性インスリン誘導体に関する。
【0016】
本発明の一態様では、グルコース結合剤は、マクロサイクルMである。本発明の一態様では、マクロサイクルMは、式M1で示され、
【0017】
【化3】
式中、RおよびRは、-OH、
【0018】
【化4】
から独立して選択され、
【0019】
式中、R、R、R、R、R、およびRは独立して、水素、ハロゲン、(1-4C)アルキルおよび(1-4C)アルコキシから独立して選択され、
式中、Rは、式M1のマクロサイクルの結合点を示す。
【0020】
別の態様では、本発明は、ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体、二つのグルコース模倣体、および二つのグルコース結合剤を含むグルコース感受性インスリン誘導体に関する。
【0021】
一般的な定義
「化合物」という用語は、分子実体を指すために本明細書で使用され、それ故に「化合物」は、各化合物または化合物の群に対して定義される最小限の要素以外の異なる構造要素を有してもよい。化合物が定義された構造および/または機能的要素を含む限り、化合物はポリペプチドまたはその誘導体であってもよいということになる。「化合物」という用語はまた、本明細書の薬学的に関係のある形態を包含することも意味し、すなわち、本発明は、本明細書で定義される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、アミド、もしくはエステルにも関する。
【0022】
「ペプチド」または「ポリペプチド」という用語は、例えば、本発明の文脈で使用される場合、アミド(またはペプチド)結合によって相互接続された一連のアミノ酸を含む化合物を指す。特定の実施形態では、ペプチドは、ペプチド結合によって相互接続されたアミノ酸から成る。
【0023】
「類似体」という用語は一般に、配列が参照アミノ酸配列と比較したときに一つ以上のアミノ酸変化を有するペプチドを指す。ある特定の変化を「含む」類似体は、それらの参照配列と比較したときにさらなる変化を含んでもよい。特定の実施形態では、類似体は、特定の変化を「有する」または「含む」。他の特定の実施形態では、類似体は、変化「から成る」。「から成る」または「から成っている」という用語が類似体に関連して使用される場合、例えば、類似体が、特定のアミノ酸変異の群から成るか、または成っている場合、当然のことながら、特定のアミノ酸変異は、類似体における唯一のアミノ酸変異である。対照的に、特定のアミノ酸変異の群を「含む」類似体は、追加的な変異を有してもよい。「類似体」はまた、N末端位置および/もしくはC末端位置におけるアミノ酸の伸長、並びに/またはN末端位置および/もしくはC末端位置におけるアミノ酸の切断も含んでもよい。
【0024】
一般に、アミノ酸残基は、それらの完全な名称、それらの1文字コード、および/またはそれらの3文字コードによって特定されてもよい。これら三つのやり方は、完全に均等である。
【0025】
「誘導体」という用語は一般に、化学修飾によって、特に一つ以上の置換基の共有結合によって、天然ペプチドまたはその類似体から調製されてもよい化合物を指す。
【0026】
「アミノ酸」という用語は、タンパク質原性(または天然)アミノ酸(その中でも、20個の標準アミノ酸)だけでなく、非タンパク質原性(または非天然)アミノ酸も含む。タンパク質原性アミノ酸は、タンパク質の中へと天然に組み込まれるものである。標準アミノ酸は、遺伝子コードによってコードされるアミノ酸である。非タンパク質原性アミノ酸は、タンパク質中に見出されないか、または標準細胞機構によって産生されないかのいずれかである(例えば、それらは、翻訳後修飾に供されていない場合がある)。
【0027】
以下では、光学異性体が記載されていない本発明のペプチドの各アミノ酸は、(別段の指定がない限り)L異性体を意味すると理解されるべきである。アミノ酸は、アミノ基およびカルボン酸基、ならびに任意選択で、しばしば側鎖と呼ばれる一つ以上の追加の基を含有する分子である。
【0028】
以下では、光学異性体が記載されていない本発明のペプチドの各炭水化物は、(別段の指定がない限り)D異性体を意味すると理解されるべきである。
【0029】
本明細書で使用される場合、「(1-4C)アルキル」という用語は、1~4個の炭素原子を含有する直鎖または分岐アルキル基を包含する。
【0030】
本明細書で使用される場合、「(1-4C)アルコキシ」という用語は、1~4個の炭素原子を含有する直鎖または分岐アルコキシ基を包含する。
【0031】
本明細書上記の化学式で使用される実線および破線は、例示目的のみのために使用されていることが容易に理解されるであろう(すなわち、本発明の化合物の相対的配向を表示するため)。これらは、示される化合物の絶対的な構成(すなわち、立体化学)を指すものではない。
【0032】
同じ分子式を有するが、それらの原子の結合の性質もしくは配列またはそれらの原子の空間における配置が異なる化合物は、「異性体」と呼ばれる。空間におけるそれらの原子の配置が異なる異性体は、「立体異性体」と呼ばれる。互いの鏡像ではない立体異性体は、「ジアステレオマー」と呼ばれ、互いに重ね合わせることができない鏡像である立体異性体は、「エナンチオマー」と呼ばれる。化合物が非対称な中心を有する場合、例えば、それが四つの異なる基に結合している場合、一対のエナンチオマーが可能である。エナンチオマーは、その非対称中心の絶対的構成によって特徴付けることができ、またカーンおよびプレログのR配列規則およびS配列規則によって、または分子が偏光された光の平面を回転させる様式によって説明することができ、かつ右旋性または左旋性として指定することができる(すなわち、それぞれ(+)または(-)異性体として)。キラル化合物は、個別のエナンチオマーとして、またはその混合物としてのいずれかで存在することができる。等しい比率のエナンチオマーを含有する混合物は、「ラセミ混合物」と呼ばれる。
【0033】
本発明の化合物は、一つ以上の非対称な中心を持っていてもよく、したがってこうした化合物を、個々の(R)-または(S)-立体異性体として、またはそれらの混合物として生成することができる。別途示されていない限り、明細書および特許請求の範囲における特定の化合物の説明または命名は、個々のエナンチオマーおよびそのラセミ体またはその他の混合物の両方を含むことが意図されている。立体化学の決定および立体異性体の分離の方法は、当技術分野で周知であり(“Advanced Organic Chemistry”,4th edition J.March,John Wiley and Sons,New York,2001」の第4章の考察を参照)、例えば、光学活性出発物質からの合成またはラセミ体の分割による。本発明の化合物の一部は、幾何異性体中心(E-およびZ-異性体)を有してもよい。本発明は、糖認識の能力を有するすべての光学、ジアステレオ異性体、および幾何異性体およびその混合物を包含することが理解されるべきである。
【0034】
本発明のある特定のマクロサイクル化合物は、溶媒和された形態だけでなく溶媒和されていない形態(例えば、水和された形態など)で存在してもよいことも理解されるべきである。本発明が、糖認識の能力を有するすべてのこうした溶媒和された形態を包含することが理解されるべきである。ある特定の化合物は、多型を呈する場合があり、また本発明は糖認識の能力を有するすべてのこうした形態を包含することも理解されるべきである。
【0035】
本発明のマクロサイクル化合物は、多数の異なる互変異性体で存在してもよく、また特定の式の化合物への参照は、こうしたすべての形態を含む。疑義を避けるために付言すると、化合物がいくつかの互変異性体のうちの一つにおいて存在することができ、かつ一つのみが具体的に説明または示されている場合には、すべての他の化合物は、それにもかかわらず所与の式によって受け入れられる。互変異性体の例としては、ケト形態、エノール形態、およびエノラート形態、例えば、以下の互変異性対:ケト/エノール、イミン/エナミン、アミド/イミノアルコール、アミジン/アミジン、ニトロソ/オキシム、チオケトン/エンチオール、およびニトロ/アシニトロにおけるものが挙げられる。
【0036】
アミン機能を含有する化合物はまた、N-オキシドも形成してもよい。アミン機能を含有する所与の式の化合物に対する本明細書での言及は、N-オキシドも含む。化合物がいくつかのアミン機能を含有する場合、一つ以上の窒素原子は酸化されてN-オキシドを形成してもよい。N-オキシドの特定の例は、三級アミンのN-オキシドまたは窒素含有複素環の窒素原子である。N-オキシドは、過酸化水素または過酸(例えば、ペルオキシカルボン酸)などの酸化剤で、対応するアミンを処理することによって形成することができる(例えば、Advanced Organic Chemistry,by Jerry March, 4th Edition, Wiley Interscience, pagesを参照)。より具体的には、N-オキシドは、L.W.Deady(Syn.Comm.1977,7,509~514)の手順によって作製することができ、ここでアミン化合物は、例えばジクロロメタンなどの不活性溶媒中で、m-クロロペルオキシ安息香酸(mCPBA)と反応する。
【0037】
インスリン
本明細書で使用される場合、「ヒトインスリン」という用語は、その構造および特性が周知のヒトインスリンホルモンを意味する。ヒトインスリンは、A鎖およびB鎖と称される二つのポリペプチド鎖を有する。A鎖は、21個のアミノ酸のペプチドであり、B鎖は、30個のアミノ酸のペプチドであり、二つの鎖は、ジスルフィド架橋によって接続され、第一の架橋は、A鎖の7位におけるシステインとB鎖の7位におけるシステインとの間であり、また第二の架橋は、A鎖の20位におけるシステインとB鎖の19位におけるシステインとの間である。第三の架橋は、A鎖の6位におけるシステインとA鎖の11位におけるシステインとの間に存在する。
【0038】
ヒトインスリンA鎖は、以下の配列、GIVEQCCTSICSLYQLENYCN(配列番号1)を有する一方、B鎖は、以下の配列、FVNQHLCGSHLVEALYLVCGERGFFYTPKT(配列番号2)を有する。
【0039】
人体では、このホルモンは、プレペプチド-B-Arg Arg-C-Lys Arg-A(式中、Cは、31個のアミノ酸の接続ペプチドである)の構成にある、24個のアミノ酸のプレペプチドに続いて86個のアミノ酸を含むプロインスリンから成る一本鎖前駆体プロインスリン(プレプロインスリン)として合成される。Arg-ArgおよびLys-Argは、A鎖およびB鎖からの接続ペプチドの切断のための切断部位である。
【0040】
本発明による「インスリン」は、本明細書では、ヒトインスリン、またはブタインスリンもしくはウシインスリンなどの別の種からのインスリンとして理解されるべきである。
【0041】
「インスリンペプチド」、「インスリン化合物」、または「インスリン」という用語は、本明細書で使用される場合、インスリン活性を有する、ヒトインスリンまたはその類似体もしくは誘導体のいずれかであるペプチドを意味する。
【0042】
インスリン類似体
本明細書で使用される場合、「インスリン類似体」という用語は、インスリンの一つ以上のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基によって置換されており、かつ/または一つ以上のアミノ酸残基がインスリンから欠失しており、かつ/または一つ以上のアミノ酸残基がインスリンに付加および/もしくは挿入されている、修飾ヒトインスリンを意味する。
【0043】
本明細書で使用される場合、「修飾」という用語は、置換、欠失、および付加(挿入を含む)を意味する。本明細書で使用される場合、「変異」という用語は、ヒトインスリンの配列内のアミノ酸の置換または欠失を意味する。変異という用語は、ヒトインスリンの配列への付加、伸長、または延長を含まない。インスリン分子における変異は、鎖(AまたはB)、位置、および天然アミノ酸残基を置換するアミノ酸残基に対する1文字コードまたは3文字コードを記載して示される。
【0044】
一実施形態では、インスリン類似体は、ヒトインスリンと比較して10個未満のアミノ酸変異を含み、代替的に、ヒトインスリンと比較して9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個、または1個未満の変異を含む。本明細書で使用される場合、インスリン類似体に対する任意の変異は、インスリンペプチド単独に対する変異を意味し、インスリンペプチド/類似体に結合されたいかなる連結基も含まない。
【0045】
「desB30」または「B(1-29)」は、B30アミノ酸を欠く天然インスリンB鎖またはその類似体を意味し、また「A(1-21)」は、天然インスリンA鎖を意味する。それ故に、例えば、desB30ヒトインスリンは、B鎖の30位におけるアミノ酸が欠失しているヒトインスリン類似体である。
【0046】
本明細書では、「A1」、「A2」、および「A3」などの用語は、インスリンのA鎖のそれぞれ1位、2位、および3位など(N末端から数えて)におけるアミノ酸を表す。同様に、B1、B2、およびB3などの用語は、インスリンのB鎖のそれぞれ1位、2位、および3位など(N末端から数えて)におけるアミノ酸を示す。アミノ酸に対して1文字コードを使用して、A21A、A21G、およびA21Qなどの用語は、A21位におけるアミノ酸がそれぞれA、G、およびQであることを指定する。アミノ酸に対して3文字コードを使用すると、対応する表現は、それぞれA21Ala、A21Gly、およびA21Glnである。
【0047】
本明細書では、「アミノ酸残基」という用語は、形式上、ヒドロキシ基がカルボキシ基から除去されており、かつ/または形式上、水素原子がアミノ基から除去されている、アミノ酸である。
【0048】
desB30を含むヒトインスリン類似体を、インスリン誘導体の実施例で使用した。しかしながら、インスリン類似体の他の耐性変異、組み合わせ、変異数、配列延長/切断なども同様に、本発明を例示するために使用することが可能である。こうしたインスリン類似体の例は、B28Dヒトインスリン、B28K B29Pヒトインスリン、およびB3K B29Eヒトインスリンである。
【0049】
一態様では、本発明のインスリン類似体は、desB30ヒトインスリン(配列番号1のA鎖および配列番号3のB鎖)を含む。
【0050】
一態様では、本発明のインスリン類似体は、desB30ヒトインスリン(配列番号1のA鎖および配列番号3のB鎖)を含む。
【0051】
インスリン誘導体
【0052】
本明細書で使用される場合、「インスリン誘導体」または「インスリン類似体の誘導体」という用語は、グルコース模倣体およびマクロサイクルが結合されるヒトインスリンまたはその類似体(インスリン類似体)を指す。言い換えれば、本発明のインスリン誘導体は、ヒトインスリンまたはその類似体、マクロサイクル、およびグルコース模倣体を含む。
【0053】
一態様では、本発明のインスリン誘導体は、ヒトインスリンまたはその類似体、少なくとも一つのマクロサイクル、および少なくとも一つのグルコース模倣体を含む。
【0054】
別の態様では、本発明のインスリン誘導体は、少なくとも二つのマクロサイクル、および少なくとも二つのグルコース模倣体を含む。
【0055】
別の態様では、本発明のインスリン誘導体は、二つのマクロサイクル、および二つのグルコース模倣体を含む。
【0056】
一態様では、マクロサイクルおよびグルコース模倣体はそれぞれ、リンカーを介してヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体に各々結合されてもよい。一態様では、ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体への結合点は、
a)ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体のA鎖の1位におけるアミノ酸残基のアルファアミノ基、
b)ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体のB鎖の1位におけるアルファアミノ基、および
c)ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体のB鎖の29位におけるリジンのイプシロンアミノ基またはアルファカルボン酸基、から選択される。
【0057】
一態様では、マクロサイクルおよびグルコース模倣体は、ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体上の同じ結合点に結合しない。
【0058】
マクロサイクル
本発明のインスリン誘導体内に含まれるマクロサイクルは、グルコースに対して高い親和性を示す。本発明のインスリン誘導体内に含まれるマクロサイクルは、他の構造的に類似した糖類(例えば、マンノース)に優るグルコースに対する選択性を示す。
【0059】
本発明のインスリン誘導体内に含まれるマクロサイクルは、式M1:
【0060】
【化5】
式中、RおよびRは、-OH、
【0061】
【化6】
から独立して選択され、
【0062】
式中、R、R、R、R、R、およびRは独立して、水素、ハロゲン、(1-4C)アルキルおよび(1-4C)アルコキシから独立して選択され、
式中、Rは、式M1のマクロサイクルの結合点を示す。
【0063】
一態様では、RとRとは同一である。一態様では、RおよびRは-OHである。別の態様では、RおよびRは以下のものである。
【0064】
【化7】
さらなる態様では、RおよびRは、以下のものである。
【0065】
【化8】
【0066】
一態様では、R、R、R、R、R、およびRは同一である。さらなる態様では、R、R、R、R、R、およびRはエチルである。
【0067】
グルコース模倣体
本明細書で使用される場合、「グルコース模倣体」という用語は、グルコースと構造的に類似し、かつマクロサイクルMに結合する化合物を指す。言い換えれば、グルコース模倣体は、マクロサイクルMに対して親和性を有する。
【0068】
一態様では、本発明のインスリン誘導体に含まれるグルコース模倣体は、グルコシドである。さらなる態様では、本発明のインスリン誘導体に含まれるグルコース模倣体は、1-置換β-D-グルコピラノシドである。
【0069】
リンカー
本発明によるインスリン誘導体は、マクロサイクルMとヒトインスリン類似体との間のリンカー、および/またはヒトインスリン類似体とグルコース模倣体との間のリンカーをさらに含んでもよい。
【0070】
本発明の文脈では、リンカーは、マクロサイクルおよびグルコース模倣体をそれぞれヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体に共有結合するために使用される化学部分または残基である。それ故に、用語「-リンカー-」は、インスリン誘導体の化学単位を意味することが意図され、これは、ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体のアミノ酸残基に、およびマクロサイクルまたはグルコース模倣体にそれぞれ共有結合している。
【0071】
結合点に応じて、リンカー末端の反応性は変化する場合がある。リンカーは、問題の産物に応じて、様々な形態を有してもよい。
【0072】
マクロサイクルをヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体に共有結合するために使用されるリンカーは、グルコース模倣体をヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体に共有結合するために使用されるリンカーとは異なっていてもよい。
【0073】
一実施形態では、リンカーは-(CHCHO)-を含み、式中、pは1~5の整数である。
【0074】
一実施形態では、リンカーは-NH(CHCHO)-CHCH-トリアゾール-PhCHである。一実施形態では、リンカーは-(CHCHO)-CHCHC(O)-である。
【0075】
ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体とマクロサイクルおよびグルコース模倣体とのそれぞれ間の結合を生成するために、異なる長さおよび組成物を有する代替的なリンカーを採用することが可能である。
【0076】
一態様では、マクロサイクルMは、下記の式L1のリンカーを介してヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体のB鎖の1位におけるアルファアミノ基に結合される。
【0077】
【化9】
式中、XはCH-または(CHCHO-)であり、式中、pは2~4の整数であり、
式中、Yは、CH-、(CHCHCO-)、または-Ph-para-CH-であり、
式中、*は、マクロサイクルMへの結合点を示し、かつ
式中、#は、ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体への結合点を示し、
グルコース模倣体は、リンカーを介して、ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体のB鎖の29位におけるリジン(K)のイプシロンアミノ基に結合され、前記リンカーは式L2で示され、
【0078】
【化10】
式中、qは、1または2であり、
式中、rは、1または2であり、
式中、“は、グルコース模倣体への結合点を示し、かつ
式中、#は、ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体への結合点を示す。
【0079】
第二の態様では、インスリン誘導体は、二つのグルコース模倣体および式M1の二つのマクロサイクルMを含み、二つのマクロサイクルは、ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体のB鎖の1位におけるアルファアミノ基に結合され、かつ二つのグルコース模倣体は、ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体のB鎖の29位におけるアルファカルボン酸基および/またはリジン(K)のイプシロンアミノ基に結合される。二つのグルコース模倣体は、三価リンカーを介して、ヒトインスリンもしくはヒトインスリン類似体のB鎖の29位におけるリジン(K)のアルファカルボン酸基もしくはイプシロンアミノ基に結合されてもよく、または二つのグルコース模倣体の各々は、ヒトインスリンもしくはヒトインスリン類似体のB鎖の29位における、それぞれ、リジン(K)のアルファカルボン酸基およびイプシロンアミノ基に結合された二価リンカーを介して、結合されてもよい。
【0080】
一態様では、二つのマクロサイクルMをヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体のB鎖の1位におけるアルファアミノ基に連結する三価リンカーは、式L3で示され、
【0081】
【化11】
式中、Zは、CH-または(CHCHO-)であり、
式中、Wは、CH-、(CHCHCO-)、または-Ph-para-CH-であり、
式中、*は、マクロサイクルMへの結合点を示し、かつ
式中、#は、ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体への結合点を示す。
【0082】
一態様では、二つのグルコース模倣体をヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体のB鎖の29位におけるリジン(K)のアルファカルボン酸基に連結する三価リンカーは、式L4で示され、
【0083】
【化12】
式中、“は、グルコース模倣体への結合点を示し、かつ
式中、#は、ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体のB鎖の29位におけるリジン(K)のアルファカルボキシル酸基への結合点を示す。
【0084】
一態様では、二つのグルコース模倣体をヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体のB鎖の29位におけるリジン(K)のイプシロンアミノ基に連結する三価リンカーは、式L5で示され、
【0085】
【化13】
式中、“は、グルコース模倣体への結合点を示し、かつ
式中、#は、ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体のB鎖の29位におけるリジン(K)のイプシロンアミノ基への結合点を示す。
【0086】
一態様では、二つのグルコース模倣体をヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体のB鎖の29位におけるリジン(K)のアルファカルボン酸基およびイプシロンアミノ基にそれぞれ連結する二価リンカーは、それぞれ式L6およびL7で示され、
【0087】
【化14】
【0088】
【化15】
式中、“は、グルコース模倣体への結合点を示し、かつ
式中、#は、ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体のB鎖の29位におけるリジン(K)のアルファカルボキシル酸基への結合点を示し、かつ
式中、#は、ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体のB鎖の29位におけるリジン(K)のイプシロンアミノ基への結合点を示す。
【0089】
ヒトインスリンおよびインスリン類似体の生成
ポリペプチド、例えば、インスリンの生成は、当技術分野で周知である。インスリンまたはインスリン類似体は、例えば、古典的なペプチド合成、例えば、t-BocもしくはFmoc化学または他の十分に確立した技法を使用する固相ペプチド合成によって生成されてもよい(例えば、Greene and Wuts,“Protective Groups in Organic Synthesis”,John Wiley&Sons,1999を参照)。インスリンまたはインスリン類似体はまた、類似体をコードするDNA配列を含有し、かつ好適な栄養培地内で、インスリン類似体の発現を許容する条件下で、インスリン類似体を発現する能力を有する宿主細胞を培養することを含む方法によって生成されてもよい。ヒトインスリンおよびヒトインスリン類似体の生成では、いくつかの組み換え方法が使用されてもよい。大腸菌(Escherichia coli)および出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)などの微生物におけるインスリンの生成に使用されてもよい方法の例は、例えば、国際特許公開公報第2008/034881号に開示されている。
【0090】
典型的には、インスリンまたはインスリン類似体は、例えば、欧州特許第1246845号または国際特許公開公報第2008/034881号に開示される周知の技法によって、問題のインスリン類似体またはその前駆体をコードするDNA配列を、好適な宿主細胞内で発現させることによって生成される。
【0091】
インスリンまたはインスリン類似体は、細胞培養培地から回収され、そしてクロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親和性、疎水性、クロマトフォーカシング、およびサイズ排除)、電気泳動手順(例えば、調製用等電点電気泳動法(IEF)、較差溶解度(例えば、硫酸アンモニウム沈殿))、または抽出を含むがこれらに限定されない、当技術分野で公知の様々な手順によって精製されてもよい(例えば、Protein Purification,J.-C.Janson and Lars Ryden,editors,VCH Publishers,New York,1989を参照)。好ましくは、インスリンまたはインスリン類似体は、抗インスリン類似体抗体カラム上で親和性クロマトグラフィーによって精製される。高速液体クロマトグラフィーなどの従来の化学的精製手段によって、追加的な精製は達成されてもよい。クエン酸バリウム沈殿を含む他の精製方法が、当技術分野で公知であり、また本明細書に記載の[インスリンまたはインスリン類似体の精製に適用されてもよい(例えば、Scopes,R.,Protein Purification,Springer-Verlag,N.Y.,1982を参照)。
【0092】
医薬組成物
本発明はまた、本発明の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、アミド、もしくはエステル、および一つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤(複数可)を含む医薬組成物にも関する。こうした組成物は、当技術分野で公知のとおりに調製されてもよい。
【0093】
「賦形剤」という用語は、活性治療成分(複数可)以外の任意の成分を幅広く指す。賦形剤は、不活性物質、非活性物質、および/または医薬的に活性でない物質であってもよい。賦形剤は、例えば、担体、希釈剤、希釈剤、錠剤補助剤として様々な目的を果たす場合があり、かつ/または活性物質の投与および/もしくは吸収を改善するように機能する場合がある。賦形剤の非限定的な例は、溶媒、希釈剤、緩衝液、防腐剤、等張性調節剤、キレート剤および安定剤である。様々な賦形剤を伴った薬学的に活性成分の製剤化は、当技術分野において公知である(例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy(例えば、第21版(2005)および任意のその後の版)を参照)。
【0094】
本発明の組成物は、液体製剤、すなわち、水を含む水性製剤の形態であってもよい。液体製剤は、溶液または懸濁液であってもよい。別の方法として、これは、固形製剤、例えば、凍結乾燥または噴霧乾燥した組成物であってもよい。
【0095】
本発明の医薬組成物は、治療剤などの第二の活性成分をさらに含んでもよく、これは併用療法の場合に投与を単純化する場合がある。
【0096】
薬学的適応
糖尿病
「糖尿病(diabetes)」または「糖尿病(diabetes mellitus)」という用語には、1型糖尿病、2型糖尿病、妊娠糖尿病(妊娠中)、および高血糖症を引き起こす他の状態が含まれる。この用語は、膵臓が産生するインスリンの量が不十分であるか、または身体の細胞がインスリンに適切に応答できず、それ故に細胞がグルコースを吸収するのを妨げる、代謝障害に対して使用される。結果として、グルコースは、血液中に蓄積する。
【0097】
インスリン依存性糖尿病(IDDM)および若年発症糖尿病とも呼ばれる1型糖尿病は、通常は絶対的インスリン欠乏をもたらすB細胞破壊によって引き起こされる。
【0098】
非インスリン依存性糖尿病(NIDDM)および成人発症糖尿病としても知られる、2型糖尿病は、主なインスリン抵抗性、それ故に相対的なインスリン欠乏および/またはインスリン抵抗性を伴う主なインスリン分泌不全に関連している。
【0099】
他の適応
一実施形態では、本発明による化合物は、ストレス誘発性高血糖症を含む高血糖症、2型糖尿病、耐糖能障害、または1型糖尿病の治療または予防のための医薬の調製に使用される。
【0100】
別の実施形態では、本発明による化合物は、2型糖尿病における疾患の進行を遅延または予防するための医薬として使用される。
【0101】
本発明の一実施形態では、化合物は、ストレス誘発性高血糖症を含む高血糖症、2型糖尿病、耐糖能障害、または1型糖尿病の治療または予防のための医薬として使用するためのものである。
【0102】
さらなる実施形態では、本発明は、ストレス誘発性高血糖症を含む高血糖症、2型糖尿病、耐糖能障害、または1型糖尿病の治療または予防のための方法に関し、方法は、こうした治療を必要としている患者に、こうした治療のための有効量の本発明による化合物を投与することを含む。
【0103】
投与の方法
「治療」という用語は、参照される疾患、障害、または状態の予防および最小化の両方を含むことを意味する(すなわち、「治療」は、文脈によって別段の指示がないか、または明確に矛盾しない限り、本発明の化合物または本発明の化合物を含む組成物の予防的投与および治療的投与の両方を指す。
【0104】
投与の経路は、本発明の化合物を体内の所望のまたは適切な場所に、例えば非経口的に(皮下、筋肉内、または静脈内など)効果的に輸送する任意の経路であってもよい。あるいは、本発明の化合物は、経口、肺、直腸内、経皮、口腔内、舌下、または経鼻で投与することができる。
【0105】
非経口投与については、本発明の化合物は、公知のインスリンの製剤と類似的に製剤化される。さらに、非経口投与については、本発明の化合物は、公知のインスリンの投与と類似的に投与され、医師は、この手順に精通している。
【0106】
投与される本発明の化合物の量、本発明の化合物を投与する頻度の決定、および任意選択で別の抗糖尿病化合物と一緒に、どの本発明の化合物(複数可)を投与するかの選択は、糖尿病の治療に精通している医師と相談して決定される。
【0107】
本発明は、以下の非限定的実施形態によってさらに説明される:
【0108】
1. インスリン誘導体であって、ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体、グルコース模倣体、および式M1のマクロサイクルMを含むインスリン誘導体
【0109】
【化16】
式中、RおよびRは、-OH、
【0110】
【化17】
から独立して選択され、
式中、R、R、R、R、R、およびRは独立して、水素、ハロゲン、(1-4C)アルキルおよび(1-4C)アルコキシから独立して選択され、
式中、Rは、式M1のマクロサイクルの結合点を示す。
【0111】
2. インスリン誘導体が、式M1の二つのグルコース模倣体と二つのマクロサイクルMとを含む、実施形態1に記載のインスリン誘導体。
【0112】
3. RおよびRが以下のものである、実施形態1~2のいずれか一つに記載のインスリン誘導体。
【0113】
【化18】
【0114】
4. R、R、R、R、R、およびRの各々がエチルである、実施形態1~3のいずれか一つに記載のインスリン誘導体。
【0115】
5. マクロサイクルおよびグルコース模倣体がそれぞれ、任意選択的なリンカーを介してヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体に結合され、ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体への結合点が、
a)ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体のA鎖の1位におけるアミノ酸残基のアルファアミノ基、
b)ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体のB鎖の1位におけるアルファアミノ基、および
c)ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体のB鎖の29位におけるリジン(K)のイプシロンアミノ基、から選択され、
マクロサイクルおよびグルコース模倣体が、ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体上の同じ結合点に結合されていないことを条件とする、実施形態1~4のいずれか一つに記載のインスリン誘導体。
【0116】
6. マクロサイクルMが、リンカーを介してヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体に結合され、前記リンカーが、
*-NH(CHCHO)-CHCH-トリアゾール-PhCH-#であり、
式中、mは、1~5の整数であり、
*は、マクロサイクルMへの結合点を示し、かつ
#は、ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体への結合点である、実施形態1~5のいずれか一つに記載のインスリン誘導体。
【0117】
7. グルコース模倣体が、リンカーを介してヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体に結合され、前記リンカーが、
“-(CHCHO)-CHCHC(O)-#であり、
式中、nは、0~5の整数であり、
“は、グルコース模倣体への結合点を示し、かつ
#は、ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体への結合点である、実施形態1~6のいずれか一つに記載のインスリン誘導体。
【0118】
8. ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体が、ヒトインスリン類似体desB30ヒトインスリンである、実施形態1~7のいずれか一つに記載のインスリン誘導体。
【0119】
9. グルコース模倣体が、β-D-グルコピラノシドである、実施形態1~8のいずれか一つに記載のインスリン誘導体。
【0120】
10. インスリン誘導体が、
実施例1のB1-マクロサイクルB29-グリコシドdesB30ヒトインスリン8と、
実施例2のB1-マクロサイクルA1-グリコシドdesB30ヒトインスリン12と、
実施例3のB29-マクロサイクルA1-グリコシドdesB30ヒトインスリン13と、
実施例4のB1-ビス-マクロサイクルB29-ビス-グリコシドdesB30ヒトインスリン14と、から選択される、実施形態1~9のいずれか一つに記載のインスリン誘導体。
【0121】
11. 糖尿病の治療を必要とする患者における糖尿病の治療のための医薬組成物であって、実施形態1~10のいずれか一つに記載の治療有効量のインスリン誘導体を、薬学的に許容可能な賦形剤とともに含む、医薬組成物。
【0122】
12. 医薬として使用するための、実施形態11に記載の医薬組成物。
【0123】
13. 糖尿病を有する患者の治療において使用するための、実施形態11に記載の医薬組成物。
【0124】
本発明は、以下の非限定的実施形態によってなおさらに説明される。
【0125】
14. ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体、グルコース模倣体、および式M1のマクロサイクルを含むインスリン誘導体であって、
【0126】
【化19】
式中、RおよびRは、-OH、
【0127】
【化20】
から独立して選択され、
式中、R、R、R、R、R、およびRは独立して、水素、ハロゲン、(1-4C)アルキルおよび(1-4C)アルコキシから独立して選択され、
式中、Rは、式M1のマクロサイクルの結合点を示す、インスリン誘導体。
【0128】
15. グルコース模倣体が、グルコシドである、実施形態14に記載のインスリン誘導体。
【0129】
16. グルコース模倣体が、β-D-グルコピラノシドである、実施形態15に記載のインスリン誘導体。
【0130】
17. RおよびRが-OHである、実施形態14~16のいずれか一つに記載のインスリン誘導体。
【0131】
18. RおよびRが以下のものである、実施形態14~16のいずれか一つに記載のインスリン誘導体。
【0132】
【化21】
【0133】
19. RおよびRが以下のものである、実施形態14~16のいずれか一つに記載のインスリン誘導体。
【0134】
【化22】
【0135】
20. R、R、R、R、R、およびRの各々がエチルである、実施形態14~19のいずれか一つに記載のインスリン誘導体。
【0136】
21. マクロサイクルおよびグルコース模倣体がそれぞれ、任意選択的なリンカーを介してヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体に結合され、ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体への結合点が、
a)ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体のA鎖の1位におけるアミノ酸残基のアルファアミノ基、
b)ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体のB鎖の1位におけるアルファアミノ基、および
c)ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体のB鎖の29位におけるリジン(K)のイプシロンアミノ基またはアルファカルボン酸基と、から選択され、
マクロサイクルおよびグルコース模倣体が、ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体上の同じ結合点に結合されていないことを条件とする、実施形態1~4のいずれか一つに記載のインスリン誘導体。
【0137】
22. マクロサイクルが、ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体のB鎖の1位におけるアルファアミノ基に結合され、かつ二つのグルコース模倣体が、ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体のB鎖の29位におけるリジン(K)のイプシロンアミノ基に結合される、実施形態21に記載のインスリン誘導体。
【0138】
23. マクロサイクルMが、リンカーを介してヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体に結合され、上記のリンカーが、式L1で示され、
【0139】
【化23】
式中、XはCH-または(CHCHO-)であり、式中、pは2~4の整数であり、
式中、Yは、CH-、(CHCHCO-)、または-Ph-para-CH-であり、
式中、*は、マクロサイクルMへの結合点を示し、かつ
式中、#は、ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体への結合点を示す、実施形態22に記載のインスリン誘導体。
【0140】
24. グルコース模倣体が、リンカーを介してヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体に結合され、前記リンカーが、式L2で示され、
“-(CHCHO-)-(CH-C(O)-#
式中、qは、1または2であり、
式中、rは、1または2であり、
式中、“は、グルコース模倣体への結合点を示し、かつ
式中、#は、ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体への結合点を示す、実施形態23に記載のインスリン誘導体。
【0141】
25. ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体が、ヒトインスリン類似体desB30ヒトインスリンである、実施形態14~24のいずれか一つに記載のインスリン誘導体。
【0142】
26. インスリン誘導体が、
実施例1のINS1
【0143】
【化24】
と;
実施例5のINS9と、
実施例8のINS18と、
実施例9のINS21と、
実施例12のINS28と、
実施例14のINS30と、
実施例18のINS34と、
実施例19のINS35と、
実施例20のINS36と、
実施例21のINS37と、
実施例22のINS38と、の群から選択される、実施形態25に記載のインスリン誘導体。
【0144】
27. インスリン誘導体が、二つのグルコース模倣体と式M1の二つのマクロサイクルMとを含む、実施形態14~22のいずれか一つに記載のインスリン誘導体。
【0145】
28. 二つのマクロサイクルが、ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体のB鎖の1位におけるアルファアミノ基に結合される、実施形態27に記載のインスリン誘導体。
【0146】
29. 二つのマクロサイクルMが、三価リンカーを介してヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体のB鎖の1位におけるアルファアミノ基に結合され、前記リンカーが、式L3で示され、
【0147】
【化25】
式中、Zは、CH-または(CHCHO-)であり、
式中、Wは、CH-、(CHCHCO-)、または-Ph-para-CH-であり、
式中、*は、マクロサイクルMへの結合点を示し、かつ
式中、#は、ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体への結合点を示す、実施形態28に記載のインスリン誘導体。
【0148】
30. 二つのグルコース模倣体が、ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体のB鎖の29位におけるリジン(K)のアルファカルボン酸基および/またはイプシロンアミノ基に結合される、実施形態29に記載のインスリン誘導体。
【0149】
31. 二つのグルコース模倣体が、三価リンカーを介してヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体のB鎖の29位におけるリジン(K)のアルファカルボン酸基またはイプシロンアミノ基に結合され、
前記リンカーが、
a)
【0150】
【化26】
および

b)
【0151】
【化27】
の群から選択され、
または、二つのグルコース模倣体が各々、ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体のB鎖の29位におけるリジン(K)のアルファカルボン酸基およびイプシロンアミノ基にそれぞれ結合された二価リンカーを介して結合され、
前記リンカーが、式L6および式L7で示され、
【0152】
【化28】
および
【0153】
【化29】
式中、“は、グルコース模倣体への結合点を示し、かつ
式中、#は、ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体のB鎖の29位におけるリジン(K)のアルファカルボキシル酸基への結合点を示し、かつ
式中、#は、ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体のB鎖の29位におけるリジン(K)のイプシロンアミノ基への結合点を示す、実施形態30に記載のインスリン誘導体。
【0154】
32. ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体が、ヒトインスリン類似体desB30ヒトインスリンである、実施形態27~31のいずれか一つに記載のインスリン誘導体。
【0155】
33. インスリン誘導体が、
実施例10のINS22と、
実施例13のINS29と、
実施例16のINS32と、
実施例17のINS33と、の群から選択される実施形態32に記載のインスリン誘導体。
【0156】
34. インスリン誘導体が、実施例25のINS41である、実施形態14に記載のインスリン誘導体。
【0157】
35. インスリン誘導体が、実施例3のINS5である、実施形態14に記載のインスリン誘導体。
【0158】
36. インスリン誘導体が、実施例2のINS4である、実施形態1に記載のインスリン誘導体。
【0159】
37. インスリン誘導体が、インスリン受容体に結合する能力を有する、実施形態14~36のいずれか一つに記載のインスリン誘導体。
【0160】
38. インスリン誘導体が、20mMのグルコースの存在下において、グルコースが存在しないときより高いインスリン受容体親和性を有する、実施形態14~36のいずれか一つに記載のインスリン誘導体。
【0161】
39. インスリン誘導体が、20mMのグルコースの存在下において、グルコースが存在しないときより少なくとも2倍高いインスリン受容体親和性を有する、実施形態14~36のいずれか一つに記載のインスリン誘導体。
【0162】
40. 糖尿病の治療を必要とする患者における糖尿病の治療および/または予防のための医薬組成物であって、実施形態14~36のいずれか一つに記載の治療有効量のインスリン誘導体を、薬学的に許容可能な賦形剤とともに含む、医薬組成物。
【0163】
41. 医薬として使用するための、実施形態40の医薬組成物。
【0164】
42. 糖尿病の治療および/または予防において使用するための、実施形態40の医薬組成物。
【0165】
43. 医薬として使用するための、実施形態14~36のいずれか一つに記載のインスリン誘導体。
【0166】
44. 糖尿病、1型糖尿病、2型糖尿病、耐糖能障害、高血糖症、およびメタボリックシンドローム(メタボリックシンドロームX、インスリン抵抗性症候群)の治療および/または予防で使用するための、実施形態14~36のいずれか一つに記載のインスリン誘導体。
【0167】
45. 糖尿病、1型糖尿病、2型糖尿病、耐糖能障害、高血糖症、およびメタボリックシンドローム(メタボリックシンドロームX、インスリン抵抗性症候群)の治療および/または予防のための方法で使用するための、実施形態14~36のいずれか一つに記載のインスリン誘導体。
【0168】
46. 糖尿病、1型糖尿病、2型糖尿病、耐糖能障害、高血糖症、およびメタボリックシンドローム(メタボリックシンドロームX、インスリン抵抗性症候群)の治療および/または予防のための方法であって、それを必要とする患者への有効量の実施形態14~36のいずれか一つに記載のインスリン誘導体の投与を含む、方法。
【0169】
[実施例]
化学構造は、化学名が曖昧でない限り、すべての最終生成物について、および中間生成物についても示されている。最終生成物および一部の中間体は、それらの構造に加えて、以下のセクションで化学名とともにリストされる。しかしながら、これらの化学名は、生成物を明確に定義する完全な化学名ではなく、また読み易くするためにのみ提供される。PEGリンカーのナンバリングに使用される命名法は文献によって異なり、本明細書では、PEG3は、三つのエチレン基を有するPEGリンカーを示し、PEG4は、四つのエチレン基を有するPEGリンカーを示す、などとしている。
【0170】
材料および方法
略語リスト
CV カラム体積
DBU 1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデカ7-エン
DCM ジクロロメタン
DIC N,N-ジイソプロピルカルボジイミド
DMF N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
EtOAc 酢酸エチル
DIPEA N,N-ジイソプロピルエチルアミン
Fmoc-OSu 炭酸9-フルオレニルメチルN-スクシンイミジル
HBTU 2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
HOBt 1-ヒドロキシベンゾトリアゾール
HONSu M-ヒドロキシスクシンイミド
HRMS 高分解能質量分析
LCMS 液体クロマトグラフィー質量分析
MeCN アセトニトリル
NMR 核磁気共鳴
NMP N-メチル-ピロリドン
RP-HPLC 逆相高速クロマトグラフィー
TEMPO (2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イル)オキシル
THF テトラヒドロフラン
THPTA トリス(3-ヒドロキシプロピルトリアゾリルメチル)アミン
【0171】
ビルディングブロックの調製
【0172】
化合物1の調製
【0173】
【化30】
3,4-ジアミノ安息香酸(41.0g、0.269mol)を、飽和NaHCO(0.40L)およびアセトニトリル(0.40L)と混合し、褐色のスラリーを得た。次に、固体のFmoc-OSu(99.99g、0.296mol)を5分間にわたり少しずつ添加した。不均質な懸濁液を室温で16時間攪拌し、その後1MのHCl(水溶液)で酸性化した。固体をフリット上に収集し、冷たいジエチルエーテル(3×100mL)、ヘキサン(3×100mL)、次いでMeOH(3×50mL)で洗浄し、次いで真空下で乾燥させた。褐色の固体(101g、0.269mol、100%)。この中間体(10.0g、0.027mol)、HOBt(8.181g、0.053mol)、およびHBTU(20.259g、0.053mol)を、THF(300mL)およびDIPEA(18.610mL、0.107mol)中に溶解した。不均質なスラリーを室温で90分間攪拌し、その後溶媒を真空中で除去して、粘稠な油を得た。油をEtOAc(80mL)中に溶解し、そして急速に攪拌している水(200mL)とEtOAc(40mL)との混合物へと添加した。約2分後、沈殿物が形成され、そしてジエチルエーテル(100mL)をフラスコに加えた。10分間攪拌した後、固体1を濾過によって収集し、そして水(3×10mL)とジエチルエーテル(2×10mL)で洗浄した後、真空下で16時間乾燥させた。
H NMR: (500MHz、DMSO-d6)δ 8.94(s、1H)、8.14(dd、J=17.7、8.4Hz、2H)、8.01-7.93(m、1H)、7.90(d、J=7.6Hz、2H)、7.87-7.68(m、6H)、7.68-7.61(m、1H)、7.54(dt、J=11.5、7.5Hz、1H)、7.42(t、J=7.4Hz、2H)、7.34(t、J=7.6Hz、2H)、6.89(d、J=8.6Hz、1H)、6.46(s、2H)、4.44(s、2H)、4.31(s、1H)、3.40(s、7H)、3.03(s、7H)、2.50(s、4H)。
【0174】
化合物2aの調製
【0175】
【化31】
【0176】
NaH(3.809g、0.095mol、鉱油中60%)をシュレンク管(100mL)に添加し、窒素下に定置した。3×25mLの60~80℃の石油エーテルで、固体を洗浄することにより、鉱油を除去した。洗浄したNaHを、無水DMF(40mL)中に懸濁し、そして氷浴中で冷却しながら約10分間激しく攪拌した。固体トリフルオロアセトアミド(16.147g、0.143mol)を、窒素向流下で少しずつ添加した。混合物を5分間攪拌した後、室温まで温めた。気体の放出が完全に停止したら(1時間以内)、固体1,3,5-トリブロモメチル-2,4,6-トリエチルベンゼン(7.00g、0.016mol、Sigma-Aldrich)を窒素向流下で少しずつ添加し、そして得られた白色懸濁液を室温で攪拌した。約18時間後、懸濁液を0.5MのHCl(150mL)の中へと注ぎ、そして淡いオレンジ色の沈殿物をフリット上で収集した。固体を水(2×10mL)で洗浄し、次いで真空下で一晩乾燥させた(約10-2mbar)。オフホワイトの固体(7.910g、0.015mol、93%)。中間体アセトアミド(4.90g、0.009mol)を、メタノール(38.6mL)および水(38.6mL)中に溶解した。NaOH(1.05g、3.150mol)を添加し、反応混合物を攪拌して、65℃で約18時間攪拌した。固体BocO(7.287g、0.033mol)およびトリエチルアミン(2.534mL、0.026mol)を追加し、そして反応物を周囲温度でさらに4時間攪拌した。反応混合物をDCM(200mL)で希釈し、そして飽和NaHCO水溶液(200mL)、1MのNaOH(200mL)および食塩水(100mL)で洗浄した。有機相を濃縮乾固し、結果として得られた粗生成物をMPLC(Biotage、DCM中0~50%MeOHを用いる)によって精製した。無色固体2a(4.820g、0.009mol、96%)。
H NMR(450MHz、CDCl)δ m.br 4.33(9H、ArC NHCOC(CH)、N)、q. 2.71(6H、HH=7.5Hz、ArC CH)、s. 1.44(27H、COC(C )、t. 1.19(9H、HH=7.5Hz、ArCH )。
13C NMR(125MHz、CDCl)δ 155.5(C(CH)、143.9、132.6(Ar)、79.7(CO (CH)、38.9 ArNHCOC(CH)、28.6(COC()、23.0(ArCH)、16.7(ArCH )。
【0177】
化合物2bの調製
【0178】
【化32】
予め乾燥させた200mLのシュレンク管に、磁気攪拌器、および化合物2a(1.266g、2.25mmol)を充填し、次いで窒素雰囲気下に定置した。2-クロロピリジン(1.7mL、20.21mmol)および無水DCM(70mL)を、シリンジを介して添加し、無色の均質な溶液を得た。トリフリン酸無水物(1.5mL、10.11mmol)を、攪拌しながら(400rpm)2分間にわたって周囲温度で滴下して添加した。反応混合物の小さいアリコート(約50mL)を引き抜き、かつTLC(SiO、ガソリン中50%のEtO)によって分析する前に、反応物を30分間攪拌し、出発物質(Rf=0.24)の完全な消費と2b(Rf=0.5)への変換が明らかになった。溶媒をロータリーエバポレーター上で除去して、オフホワイトの固体を得た。固体を、EtO(×2 15mL)を用いて抽出し、アルミナプラグ(20mm×20mm)を通過させ、さらに20mLのEtOで溶出した。無色の濾液を蒸発乾固させ、残渣をヘキサンから再結晶させた。無色結晶性固体2b(0.435g、1.33mmol、59%)。
H NMR(400MHz、トルエン-d)δ s. 3.93(6H、ArC NCO)、m. 2.51-2.37(6H、ArC CH)、m. 0.96-0.86(9H、ArCH )。
13C NMR(100MHz、トルエン-d)143.2、132.6(Ar)、124.0(NO)、40.4(ArNCO)、22.8(ArC CH)、16.0(ArCH )。
【0179】
【化33】
【0180】
化合物3の調製
化合物1(3.308g、5.443mmol)および無水DIPEA(1.270mL、7.258mmol)を無水THF(20mL)中に溶解した。11-アジド-3,6,9-トリオキサンウンデカン-1-アミン(1.000mL、4.536mmol)を滴下して添加した。室温で16時間攪拌した後、反応混合物を真空下で濃縮して、褐色の残渣を得た。粗生成物を、フラッシュカラムクロマトグラフィーで精製して、50%~100%のEtOAc/DCMで溶出した。画分を含有する生成物を組み合わせ、かつ蒸発乾固して、無色の無定形の固体3(2.50g、4.35mmol、80%)を得た。
H NMR: (400MHz、CDCl3)δ 7.74(d、J=7.5Hz、2H、ArH)、7.60(d、J=2.0Hz、2H、ArH)、7.45(s、1H、ArH)、7.38(t、J=7.5Hz、2H、ArH)、7.26(d、J=9.6Hz、2H、ArH)、7.05(s、1H、ArH)、6.84(s、1HArH)、6.65(d、J=8.4Hz、1HC(O)NHCH2)、4.49(s、1H、Flu-CH2)、4.18(s、2H、Flu-OCH2)、3.68-3.45(m、14H、OCH2)、3.27(t、J=5.0Hz、2HC(O)NHCH2)、1.34(d、J=6.7Hz、2H、N3CH2)。
【0181】
化合物4の調製
【0182】
【化34】
N,N’,N’-トリス[トリス(2-tert-ブトキシカルボニル-エチル)メチル]-3,3’,3’’-(1-アミノメタントリイル)-トリプロパンアミド(7.0g、5.0mmol、Allichem(G2アミン))および化合物1(5.310g、10mmol)を無水THF(210mL)中に溶解した。トリエチルアミン(2.23mL、16mmol)を添加し、反応物を室温で18時間攪拌させた。反応混合物を、EtO(40mL)で希釈し、そして得られた懸濁液を濾過した。得られた濾液を真空下で濃縮し、そして残渣を、MeCN(10mL)中で120gのC18カートリッジへと装填し、逆相クロマトグラフィー(水勾配中の70~100%アセトン)により精製した。画分を含有する生成物を組み合わせ、かつ蒸発乾固して、オフホワイトの無定形の固体4(7.61g、4.0mmol、81%)を得た。
H NMR: (400MHz、(CDCl3): δ 1.43(s、81H、C(26)H3)、1.95(m、18H、C(23)H2)、2.11(t,
J=7.2Hz、6H、C(18)H2)、2.17(m、18H、C(22)H2)、2.25(t、J=7.2Hz、6H、C(19)H2)、4.27(m、3H、C(7)HおよびNH2)、4.47(d、J=7.4Hz、2H、C(8)H2)、6.08(s、3H、NH)、6.76(d、J=8.4Hz、1H、C(13)H)、7.26-7.31(m、2H、C(4)H)、7.38(t、J=7.4Hz、2H、C(3)H)、7.57-7.69(m、2H、C(5)H)、7.71(d、J=8.7Hz、1H、C(2)H)、7.75(d、J=7.6Hz、3H、C(2)H)、7.78(d、J=2.1Hz、1H、C(15)H)、8.54(s、1H、NH)
13C NMR: (100MHz、(CDCl3):δ28.0(C26)、29.8(C22)、29.9(C23)、31.8(C19)、32.2(C18)、47.2(C7)、53.4(C17)、57.4(C21)、67.3(C8)、80.6(C25)116.6(C12)、119.9(C2),122.6(C10)、124.6(C14)、125.3(C4)、126.0(C15)、126.8(C13)、127.0(C5)、127.6(C3)、141.3(C1)、143.8(C6)、145.3(C11)、154.9(C9)、166.6(C16)、172.7(C24)、173.1(C20);
IR:λmax(cm-1)2977、2963、1752、1723、1689、1637、1535、1367、1242、1151、1098、844;
HRMS: (ESI+)実測値[M+2Na]2+: 921.0252。
【0183】
化合物5aの調製
【0184】
【化35】
フラスコの中へと、1-アミノ-3,6,9-トリオキサドデカン-12-オイック酸(Fluorochem)(10.0g、37.7mmol)およびMeOH(50mL)を添加した。混合物を、氷浴(0℃)中で冷却した。塩化チオニル(7.25mL、99.4mmol)を滴下して添加した。混合物を加熱して還流し(3時間)、周囲温度まで冷まし、EtOAc(100mL、白色沈殿物を生成)で希釈した。固体を真空濾過によって単離し、そして真空下で乾燥して、純粋な塩酸塩エステル1b(8.09g、25.6mmol、収率68%、白色の固体5a)を得、これを次のステップでそのまま使用した。
【0185】
化合物5bの調製
【0186】
【化36】
化合物1(1.100g、2.014mmol)および無水DIPEA(0.702mL、4.028mmol)を無水THF(70mL)中に溶解した。無水THF(10mL)中に溶解された化合物5a(0.763g、2.417mmol)を滴下して添加した。室温150mLで16時間攪拌した後、飽和NHCl(aq)を添加した。得られた懸濁液を、DCM(3×30mL)で抽出した。組み合わされた有機抽出物をMgSO上で乾燥させ、そして蒸発乾固させた。得られた残渣を、最小限の沸騰EtOAcから再結晶させて、ワックス状の固体5b(1.03g、1.62mmol、80%)を得た。
【0187】
化合物6aの調製
【0188】
【化37】
シュレンク管に、攪拌棒、化合物4(0.933g、0.519mmol)、化合物2b(0.100g、0.305mmol)、無水THF(6mL)および無水ピリジン(0.147mL、1.833mmol)を充填した。次いで、混合物を5時間、50℃に加熱した。無水THF(1mL)中に溶解した化合物3(0.228g、0.397mmol)を一度に加え、反応物をさらに12時間攪拌した。反応混合物を、真空下で濃縮し、そして粗残渣を、5mLのMeCN中、120gのC18カートリッジに装填し、逆相フラッシュクロマトグラフィー(1CV 85%アセトン/H2O、10CV 85~95%アセトン/H2O、2CV 95%アセトン)によって精製した。画分を含有する生成物を組み合わせ、かつ蒸発乾固して、オフホワイトの無定形の固体(458mg、46%)を得た。
H NMR: (400MHz、(CDOD):δ8.02-7.46(19H、br.m、ArH)、7.46-7.11(14H、br.m、ArH)、4.60-4.30(12H、br.m、NHCH2PhおよびFmocH)、4.19(3H、br.s、NHCH2PhおよびFmocH),3.71-3.55(14H、m、PEGCH2)、3.33(2H、m、PEGCH2)、2.85(6H、br.s、CH2)、2.35-1.86(96H、m,デンドリマーCH2)、1.42(162H、s、CH3)、1.23(9H、br.s、CH3);
HRMS: (ESI+)C2443522157Na 2+に対する計算値:1520.8407、実測値[M+3Na]3+: 1520.8395。
【0189】
化合物6bの調製
【0190】
【化38】
化合物6a(2.400g、0.534mmol)を無水DCM(26mL)中に溶解し、そして室温かつ窒素下でDBU(0.479mL、3.204mmol)を用いて処理した。1時間後、反応混合物を真空下で濃縮してDCMを除去し、EtOAc(50mL)中に再溶解し、HCl(50mL、1M)で洗浄し、そしてMgSO上で有機相を乾燥し、濾過し、そして得られた濾液を真空下で濃縮した。粗残渣を、5mLのMeCN中で、120gのSNAP Ultra C18 135カートリッジに装填し、逆相フラッシュクロマトグラフィー(70~100%のMeOH:水勾配)によって精製した。画分を含有する生成物を組み合わせ、かつ蒸発乾固して、淡い黄色の無定形の固体6b(1.56g、0.408mmol、76%)を得た。
H NMR(400MHz、メタノール-d)δ 7.91(s、2H)、7.41(s、7H)、7.38(d、J=8.2Hz、2H)、7.35(d、J=8.2Hz、1H)、7.27(d、J=2.0Hz、2H)、7.23(d、J=2.0Hz、1H)、7.18(dd、J=8.4、2.0Hz、2H)、7.10(dd、J=8.3、2.1Hz、1H)、4.48(s、6H)、3.71-3.55(m、14H)、3.51(t、J=5.3Hz、2H)、2.96-2.72(m、6H)、2.28-2.13(m、48H)、2.13-2.03(m、12H)、2.01-1.83(m、36H)、1.42(s、162H)、1.31-1.15(m、9H)。
13C NMR(101MHz、メタノール-d)δ 175.5、174.4、170.2、170.1、158.0、157.9、145.1、141.8、141.4、133.9、132.8、132.3、129.9、129.7、124.9、124.5、118.9、118.4、117.3、117.0、81.6、71.6、71.5、71.3、71.1、70.6、59.3、58.7、51.7、40.9、39.3、32.5、32.2、30.7、30.4、28.4、23.9、17.0。
HRMS [M+3H]3+1993282151に対する必要とされる計算値:1276.1239、実測値:1276.1305。
【0191】
化合物6cの調製
【0192】
【化39】
化合物6b(1.057g、0.276mmol)を無水ピリジン中に溶解し、窒素下で50℃に加熱した。別個のナシ型フラスコ内に化合物2b(0.108g、0.331mmol)を、無水DCM(11.500mL)中に溶解し、そしてシリンジポンプを介して添加した(1.2mL/時間)。添加が完了した後、反応混合物を真空下で濃縮し、トルエン(50mL)を用いて共沸して残留ピリジンを除去して、オレンジ色の固体を得た。粗生成物を、5mLのMeCN中、120gのC18カートリッジの上へ置き、そして逆相フラッシュクロマトグラフィー(80~100%アセトン:水勾配)によって精製した。画分を含有する生成物を組み合わせ、かつ蒸発乾固して、淡いオレンジ色の無定形の固体6c(0.70g、0.169mmol、61%)を得た。
H NMR(400MHz、メタノール-d)δ 8.09-7.86(m、6H)、7.64(dd、J=8.6、2.1Hz、2H)、7.58(dd、J=8.5、2.1Hz、1H)、7.44(s、6H)、4.57-4.24(m、12H)、3.69-3.54(m、12H)、3.53-3.45(m、2H)、3.34-3.30(m、2H)、3.07-2.82(m、6H)、2.80-2.68(m、6H)、2.33-2.04(m、60H)、2.04-1.80(m、36H)、1.41(s、162H)、1.28-1.11(m、18H)。
13C NMR(101MHz、メタノール-d)δ 174.3、174.2、173.1、168.3、168.0、157.1、156.0、155.9、143.2、143.2、143.1、135.8、135.4、133.0、133.0、132.7、132.5、129.9、129.2、128.8、128.1、124.7、124.6、121.0、120.9、80.3、70.3、70.3、70.2、70.0、69.8、69.3、58.1、57.5、57.4、50.4、39.6、37.6、37.4、31.1、30.9、30.9、29.4、29.1、27.1、22.3、15.5、15.4、15.3。
HRMS[M+3H]3+2173492454に対する必要とされる計算値:1385.1768、実測値:1385.1824。
【0193】
化合物6dの調製
【0194】
【化40】
化合物6c(334.0mg、0.080mmol)をDCM(8.00mL)およびTFA(5.50mL、72mmol)中に溶解し、室温で16時間攪拌した。反応混合物を水(90mL)の中へと注ぎ、そしてDCMを真空下で蒸発させた。得られた白色の固体を、遠心分離によって収集した。ペレットを水(30mL)中に再懸濁(ホモジネートした)し、そして遠心分離した。上清をデカントし、そして得られた固体を高真空下で乾燥して、オフホワイトの固体6dを得た。250mg、0.0796mmol、99%。
H NMR(400MHz、DO中の重水素化リン酸緩衝液)δ 7.78-7.60(m、6H)、7.52-7.41(m、3H)、7.33(s、3H)、4.55-4.07(m、12H)、3.70-3.38(m、14H)、3.24(t、J=4.9Hz、1H)、3.02-2.94(m、1H)、2.81-2.46(m、12H)、2.26-2.11(m、12H)、2.10-1.86(m、48H)、1.86-1.63(m、36H)、1.23-0.79(m、18H)。
【0195】
化合物7aの調製
【0196】
【化41】
【0197】
化合物7aを、化合物5bおよび化合物2bを使用して化合物6aと類似の様式で調製した。
【0198】
化合物7bの調製
【0199】
【化42】
【0200】
化合物7bを、化合物7aを使用して化合物6bと類似の様式で調製した。
【0201】
化合物7cの調製
【0202】
【化43】
【0203】
化合物7cを、化合物7bを使用して化合物6cと類似の様式で調製した。
【0204】
化合物7dの調製
【0205】
【化44】
化合物7c(421.6mg、0.1mmol)をTHF(10mL)および0.5MのNaOH(水溶液)(10mL)中に溶解し、そして2時間攪拌した。THFを減圧下で除去し、そして得られた懸濁液を、0.1MのHCl(aq)を使用してpHへと取り、次いでDCM(2×10mL)で抽出した。組み合わされた有機抽出物を組み合わせ、そしてMgSO4で乾燥し、次いで蒸発乾固して、オフホワイトの固体7d(420.1mg、0.99mmol、99%)を得た。
【0206】
O-スクシンイミジルPEG-β-D-グルコピラノシドカルボキシレート8の調製
【0207】
【化45】
スクシンイミジルエステルβ-D-グルコピラノシドPEG3 8は、N-ヒドロキシスクシンイミド(1当量)およびN,N-ジイソプロピルカルボジイミド(1当量)での形質転換によって、DMF中に溶解されたカルボン酸(Sussex Research)から調製される。
【0208】
O-2,3,4,6-テトラアセチル-ジエチレングリコール-β-D-グルコピラノシド9の調製
【0209】
【化46】
25mLのジクロロエタン中のO-ペルアセチル-アルファ-ブロモ-D-グルコピラノシド(3g、7.3mmol)に、ジエチレングリコール(8.9g、83.7mmol)および2スプーンのモルシーブ(mol sieve)、次いで炭酸銀(3.6g、13.1mmol)を添加し、そして混合物を一晩激しく攪拌した。混合物を、60mLのトルエンで希釈し、そしてセライトを通して濾過して固体を除去し、次いで溶液を、食塩水で2回および水で1回洗浄し、次いでMgSOで乾燥し、そして真空中で濃縮した。油性の粗残渣を、エーテルで粉砕し、そして白色の結晶が形成された。これらを、ジエチルエーテルで2回洗浄し、次いでデシケーター内で乾燥させて、9が提供された。
【0210】
O-ペルアセチル-ジエチレングリコール-β-グルコピラノシドカルボン酸10の調製
【0211】
【化47】
アセトン(50mL)中のグルコシド9(1.3g、2.979mmol)の混合物に、飽和NaHCO溶液(10mL)を添加し、そして混合物を氷浴中で冷却した。次いでTEMPO(9.3mg、0.06mmol)およびNaBr 30.384mg、0.298mmol)を添加し、続いてトリクロロイソシアヌル酸(1.38g、5.958mmol)を約20分間にわたって小さいアリコートで加えた。次いで、反応物を一晩(18時間)攪拌させた。次いで、部分的に真空中で濃縮し、そしてHClで酸性化し、次いで、DCMで5回抽出し(相分離を助けるために塩をいくらか加える)、MgSOで乾燥し、そして濃縮乾固して白色の固体とした。
【0212】
O-スクシンイミジルO-ペルアセチル-ジエチレングリコール-ベータ-グルコピラノシドカルボキシレート11の調製
【0213】
【化48】
THF(3mL)中のカルボン酸10(400mg、0.888mmol)を、N-ヒドロキシスクシンイミド(143mg、1.243mmol)およびDIC(179mg、1.421mmol)で処理し、一晩攪拌し、11をインスリンアシル化のために粗形態で使用した。
【0214】
D-グルコピラノシド-1-PEG4-アジド12の調製
【0215】
【化49】
D-グルコピラノシド-1-PEG4-アジド12は、J.Am.Chem.Soc.2017,139,3528に記載のように調製した。
【0216】
化合物13の調製
【0217】
【化50】
50mLのフラスコに、化合物1(500mg、1.017mmol)、ジ-tert-ブチル-4-アミノ-4-(3-(tert-ブトキシ)-3-オキソプロピル)ヘプタンジオエート(Frontier Scientific-NTN1963、560mg、1.35mmol)、および無水トルエン(10mL)を充填した。スラリーを蒸発乾固させ、そして残渣を無水ピリジン(5mL)およびDCM(3mL)中に再溶解した。混合物を50℃で16時間攪拌した。溶媒を除去して、粘稠な褐色の油を得た。これはEtOAcと1MのHCl水溶液との間で分配された。有機相を水で、その後食塩水で洗浄した。組み合わされた有機画分を濃縮し、その後シリカゲル上で吸収させ、そしてフラッシュクロマトグラフィー(EtOAc:DCM(20/50%)によって精製して、13を得た(467mg、0.612mmol、60%)。1H NMR: (400MHz、CDCl3)δ 7.79(d、J=7.6Hz、2H、ArH)、7.64(d、J=2.1Hz、1H、ArH)、7.43(t、J=7.5Hz、2H、ArH)、7.34(s、3H、ArH)、6.78(d、J=9.0Hz、1H、NH)、6.60(s、1H、ArH)、6.30(s、1H、ArH)、4.56(s、2H、Flu-CH2O)、4.28(s、1H、Flu-CH2)、4.08(s、2H)、2.30(dd、J=8.8、6.7Hz、6H、CH2C(O))、2.16-2.04(m、6H、CCH2)、1.44(s、24H、C(CH3)3)。
【0218】
化合物14の調製
【0219】
【化51】
化合物13(2.36g、3.06mmol、2.0当量)および化合物2b(0.50g、1.53mmol、1.0当量)を無水THF(20.6mL)中に溶解し、50℃へと2時間加熱した。次いで、化合物3(1.32g、2.29mmol、1.5当量)を固体として添加し、そして反応物を50℃で一晩放置した。DBU(1.4mL、9.2mmol、6.0当量)を、不均質な反応混合物に添加した。溶媒を除去し、そして残渣を、DCMを使用してC18の上へと乾燥装填し、次いで120gのC18カートリッジの上へと装填し、そして逆相フラッシュクロマトグラフィー(50~100%のMeOH:水勾配)によって精製した。画分を含有する生成物を、TLCによって同定し、そして真空下で濃縮して、淡いピンク色の固体を得た。純粋でない画分を組み合わせ、そして再精製して、14(859mg、32%)を得た。
H NMR(400MHz、メタノール-d)δ 7.35(d、J=8.3Hz、1H)、7.32(d、J=8.3Hz、2H)、7.24(d、J=2.1Hz、1H)、7.17(d、J=2.0Hz、2H)、7.12(dd、J=8.3、2.1Hz、1H)、7.06(dd、J=8.2、2.1Hz、2H)、4.48(s、6H)、3.67-3.55(m、12H)、3.51(t、J=5.4Hz、2H)、3.31(t、J=5.2Hz、2H)、2.86(q、J=7.4Hz、6H)、2.23(dd、J=9.5、6.5Hz、12H)、2.05(dd、J=9.5、6.5Hz、12H)、1.41(s、54H)、1.22(t、J=7.4Hz、9H)。
13C NMR(101MHz、メタノール-d)δ 174.6、170.4、170.3、158.1、145.2、142.0、133.9、133.5、129.5、125.0、125.0、118.5、118.4、117.1、81.8、71.6、71.5、71.3、71.1、70.6、59.3、51.7、49.8、40.9、40.3、39.3、30.8、30.6、28.4、23.9、16.9。
HRMS [M+2H]2+911411521に対する必要とされる計算値:890.0213、実測値:890.0206。
【0220】
化合物15の調製
【0221】
【化52】
化合物14(0.820g、0.461mmol、1.0等量)を無水ピリジン(192mL)中に溶解し、そして窒素下で45℃に加熱した。別個のナシ型バイアル内に、化合物2b(0.181g、0.553mmol、1.2当量)を、無水CHCl(19.2mL)中に溶解し、そしてシリンジポンプを介して化合物14の溶液に添加した(速度:2.0mL/時間、10時間添加)。反応混合物を真空下で濃縮して、トルエン(100mL)を用いて共沸して、オレンジ色の固体を得た。粗残渣をMeCN(2mL)中に溶解し、そしてC18カートリッジの上へと装填し、そして逆相フラッシュクロマトグラフィー(60~100%アセトン:水勾配)によって精製した。画分を含有する生成物を、TLCによって同定し、そして真空下で濃縮して、オレンジ色/ピンク色の固体を得た(0.372g、38%)。
H NMR(400MHz、メタノール-d)δ 8.01(d、J=2.1Hz、1H)、7.95(d、J=8.6Hz、2H)、7.92(d、J=8.7Hz、1H)、7.88(d、J=2.0Hz、2H)、7.62(s、2H)、7.58-7.51(m、3H)、4.55-4.30(m、12H)、3.64-3.52(m、12H)、3.53-3.48(m、2H)、3.46-3.36(m、2H)、2.92-2.81(m、6H)、2.78-2.66(m、6H)、2.29-2.20(m、12H)、2.11-2.04(m、12H)、1.43(s、54H)、1.18(t、J=7.1Hz、18H)。
13C NMR(101MHz、メタノール-d)δ 174.6、169.7、158.4、158.3、157.2、144.5、136.8、134.3、133.9、131.5、130.2、129.9、129.5、125.6、125.5、125.2、122.3、81.7、71.7、71.5、71.4、71.3、71.1、70.6、59.5、51.7、40.9、38.8、38.7、30.8、30.6、28.4、24.2、23.6、16.6。
HRMS [M+2H]2+1091621824に対する必要とされる計算値:1054.1021、実測値:1054.1028。
【0222】
化合物16の調製
【0223】
【化53】
化合物15(190mg、0.090mmol)を、CHCl(9mL)およびTFA(6.2mL、81mmol)中に溶解し、そして室温で16時間攪拌した。反応混合物を水(90mL)の中へと注ぎ、そして懸濁液を窒素で30分間沸き立たせて、あらゆるCHClを除去した。得られた白色の固体を、遠心分離によって収集した。ペレットを水(30mL)中に再懸濁し、そして遠心分離した。上清をデカントし、そして得られた固体を水(25mL)中に再懸濁し、NaOH水溶液の添加によってpH7.4に中和した。すべての材料を確実に完全に可溶性にするために、添加と添加の間に超音波処理が必要とされた。所望のpHで均質になると、溶液を0.22μmのPESシリンジフィルターに通し、次いで凍結乾燥して16を得た(170mg、99%)。
H NMR(400MHz、DO、100mMのリン酸緩衝液および2mMのDMFを有する)δ 7.91-7.22(m、9H)、4.32(br.s、12H)、3.72-3.32(m、14H)、3.21(s、2H)、2.62(br.s、12H)、2.04(br.s、12H)、1.91(br.s、12H)、1.04(br.s、18H)。
【0224】
化合物17の調製
【0225】
【化54】
市販の2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エタン-1-アミンを使用して化合物3として調製された。白色の固体17(3.2g、71%)。
H NMR(400MHz、メタノール-d)δ 7.97(t、J=5.6Hz、1H)、7.87-7.56(m、4H)、7.56-7.17(m、5H)、6.79(d、J=8.4Hz、1H)、4.49(s、2H)、4.27(s、1H)、3.70-3.59(m、8H)、3.54(q、J=5.2Hz、2H)、3.35-3.25(m、2H)。
HRMS [M+H]2831に対する必要とされる計算値:531.2351、実測値:531.2362。
【0226】
化合物18の調製
【0227】
【化55】
化合物17、白色の固体18(0.78g、86%)を使用して化合物14について記載したように調製した。
H NMR(400MHz、メタノール-d+CDCl)δ 7.36-7.29(m、3H)、7.22(d、J=2.1Hz、1H)、7.18(d、J=2.1Hz、2H)、7.10(dd、J=5.0、2.0Hz、1H)、7.07(dd、J=5.0、2.1Hz、2H)、4.48(s、6H)、3.69-3.60(m、8H)、3.54(t、J=5.4Hz、2H)、3.34(t、J=5.0Hz、2H)、2.85(q、J=7.2Hz、6H)、2.30-2.21(m、12H)、2.11-2.02(m、12H)、1.43(s、54H)、1.23(t、J=7.2Hz、9H)。
13C NMR(101MHz、メタノール-d+CDCl)δ 174.5、170.1、170.0、169.9、157.9、157.8、144.9、141.6、141.5、133.6、133.1、133.0、132.1、129.5、129.4、125.0、124.9、118.5、118.4、116.9、116.9、81.8、71.3、71.2、70.9、70.5、59.1、59.0、51.5、40.7、39.2、30.8、30.7、30.5、28.4、23.7、16.9。
HRMS [M+2H]2+891371520に対する必要とされる計算値:868.0082、実測値:868.0085。
【0228】
化合物19の調製
【0229】
【化56】
化合物18を使用して化合物15について記載したように調製して、白色の固体19を得た(449mg、48%)。
H NMR(400MHz、メタノール-d)δ 8.03(d、J=2.1Hz、1H)、7.99-7.91(m、3H)、7.89(d、J=2.1Hz、2H)、7.65(s、2H)、7.59(dd、J=8.6、2.1Hz、1H)、7.55(dd、J=8.6、2.1Hz、2H)、4.54-4.35(m、12H)、3.68-3.62(m、6H)、3.60(t、J=5.2Hz、2H)、3.49(t、J=5.6Hz、2H)、3.35(t、J=4.9Hz、2H)、2.94-2.83(m、6H)、2.83-2.71(m、6H)、2.33-2.23(m、12H)、2.12-2.06(m、12H)、1.45(s、54H)、1.23-1.16(m、18H)。
13C NMR(101MHz、メタノール-d)δ 174.6、169.8、169.7、158.4、158.3、157.3、144.5、136.9、134.3、133.9、133.9、131.5、130.4、130.0、129.6、125.6、125.5、122.6、122.4、81.7、71.5、71.5、71.1、70.7、59.5、51.7、40.9、38.8、38.7、30.8、30.6、28.4、23.6、16.6、16.6。
HRMS [M+2H]2+1071581823に対する必要とされる計算値:1031.5874、実測値:1031.5889。
【0230】
化合物20の調製
【0231】
【化57】
化合物19を使用して化合物16について記載したように調製して、白色の固体20を得た(380mg、94%)。純度は、H NMR分光法を使用したDMF内部標準に対する相対積分によって、約75重量%でアッセイした。
H NMR(400MHz、DO、100mMのリン酸緩衝液および2mMのDMFを有する)δ 8.07-7.20(m、9H)、4.27(s、12H)、3.61-3.33(m、10H)、3.19(s、2H)、2.55(s、12H)、2.03(s、12H)、1.90(s、12H)、1.00(s、18H)。
【0232】
化合物21、G1マクロサイクルプロピルアジドの調製
【0233】
【化58】
【0234】
ステップ1:化合物21aの調製
【0235】
【化59】
化合物1を無水THF(110.5mL)中に溶解し、そしてDIPEA(4.1mL、23.731mmol)を添加しながら攪拌した。3-アジドプロピルアミン(0.750g、6.742mmol)を添加し、そして均質な溶液を一晩攪拌した。溶媒を乾燥まで除去して、ピンク色の固体を得、これをDCM(10mL)およびMeOH(約10mL)中に懸濁し、そして加温して溶液を得た。溶液を、ロータリーエバポレーター上で濃縮し、白色の固体を沈殿させる。沈殿物を収集し、DCM(2×3mL)で洗浄し、次いでガソリン(2×5mL)で洗浄し、次いで高真空下で乾燥して、オフホワイトの固体21a(1.8g、3.94mmol、59%)を得た。H NMR(400MHz、メタノール-d)δ 8.57(d、J=7.6Hz、2H)、8.48-8.40(m、2H)、8.21(s、1H)、8.13(t、J=7.4Hz、2H)、8.06(s、1H)、7.47(d、J=8.4Hz、1H)、5.22-5.14(m、2H)、5.05-4.95(m、2H)、4.08(dt、J=10.3、6.8Hz、4H)、4.00-3.91(m、1H)、2.52(p、J=6.8Hz、2H)。
【0236】
ステップ2:化合物21bの調製
【0237】
【化60】
化合物6aにより、化合物4(2.358g、3.055mmol)、21a(1.046g、2.291mmol)、および2b(500mg、1.527mmol)から作製された。生成物を、オフホワイトの無定形の固体21b(1.17g、0.503mmol、33%)として単離した。H NMR(400MHz、メタノール-d)δ 8.31-7.00(m、33H)、4.43-3.97(m、15H)、3.37(t、J=6Hz、2H)、3.30(m、2H)、2.76(br.s、6H)、2.25-2.19(m、12H)、2.10-2.03(m、12H)、1.79(p、J=6Hz、2H)1.39(s、54H)、1.18-1.12(m、9H)。
【0238】
【化61】
【0239】
ステップ3:化合物21cの調製
化合物6bにより、化合物21b(1.17g、0.503mmol)から作製された。生成物を、オフホワイトの無定形の固体化合物21c(0.702g、0.423mmol、84%)として単離した。H NMR(400MHz、メタノール-d)δ 7.36(d、J=8.4Hz、1H)、7.34(d、J=8.3Hz、2H)、7.25(d、J=2.1Hz、1H)、7.19(d、J=2.1Hz、2H)、7.12(dd、J=8.3、2.1Hz、1H)、7.08(dd、J=8.2、2.1Hz、2H)、4.50(s、6H)、3.42(t、J=6.8Hz、2H)、3.39(t、J=6.7Hz、2H)、2.88(q、J=7.0Hz、6H)、2.31-2.20(m、12H)、2.12-2.01(m、12H)、1.85(p、J=6.7Hz、2H)、1.43(s、54H)、1.24(t、J=7.4Hz、9H)。13C NMR(101MHz、メタノール-d)δ 174.6、170.4、170.4、158.1、158.1、145.1、142.0、141.9、133.9、133.5、132.4、129.7、129.5、125.0、125.0、118.5、118.3、117.0、81.8、59.3、50.2、39.3、38.3、30.8、30.6、29.8、28.3、23.9、16.9。HRMS([M+H]861301518に対する必要とされる計算値:1660.9718、実測値:1660.9723。
【0240】
ステップ4:化合物21dの調製
【0241】
【化62】
化合物6cにより化合物21c(740mg、0.445mmol)および2b(175mg、0.535mmol)から作製され、溶媒に20%のDMFを添加して、45℃に加熱した。生成物は、白色の無定形の固体化合物21d(0.254g、0.128mmol、29%)として単離された。H NMR(400MHz、メタノール-d)δ 8.05(d、J=2.1Hz、1H)、7.96(d、J=8.6Hz、2H)、7.95(d、J=8.5Hz、1H)、7.91(d、J=2.1Hz、2H)、7.57(dd、J=8.6、2.2Hz、1H)、7.53(dd、J=8.6、2.1Hz、2H)、4.47(s、6H)、4.42(s、6H)、3.48-3.39(m、4H)、2.94-2.80(m、6H)、2.80-2.71(m、6H)、2.33-2.23(m、12H)、2.13-2.05(m、12H)、1.88(p、J=6.7Hz、2H)、1.45(s、54H)、1.20(t、J=7.3Hz、18H)。13C NMR(101MHz、メタノール-d)δ 174.6、169.8、169.7、158.3、158.2、157.3、157.2、144.5、144.5、136.5、136.3、134.2、134.1、133.8、133.8、131.3、130.4、130.0、129.5、125.4、125.1、124.9、122.6、122.4、81.7、59.4、50.2、38.8、38.4、30.8、30.7、30.6、29.8、28.4、23.6、16.6、16.6。HRMS[M+2H]2+1041501821に対する必要とされる計算値:994.5690、実測値:994.5684。
【0242】
ステップ5:化合物21、G1マクロサイクルプロピルアジドの調製
【0243】
【化63】
化合物6dにより、化合物21d(240mg、0.121mmol)から作製された。生成物は、NaOHでpH7.5に中和された後に単離され、そして白色の無定形の固体21として凍結乾燥された(187mg、0.105mmol、87%)。H NMR(400MHz、DO中の重水素化リン酸緩衝液)δ 8.12-7.12(m、9H)、4.41-3.92(m、12H)、3.33(m、4H)、2.66-2.26(m、12H)、2.20-1.52(m、26H)、1.31-0.74(m、18H)。
【0244】
化合物22、G2マクロサイクルPEG3アジドの調製
【0245】
【化64】
【0246】
ステップ1:化合物22aの調製
【0247】
【化65】
化合物1(7.00g、8.55mmol、1.0等量)を無水THF(85.5mL)中に溶解し、DIPEA(3.0mL、17mmol、2.0等量)を添加した。N-(PEG)2-NH(1.94g、11.1mmol、1.3当量)を添加し、室温で攪拌する。反応混合物を真空下で濃縮し、次いでRP MPLC用にMeCN中に溶解した。画分を含有する生成物を組み合わせて、真空下で濃縮した。シリカゲルの上へとEtOAc/MeOHを用いて乾燥装填し、次いでNP MPLCにより精製した。画分を含有する生成物を組み合わせ、そして真空下で濃縮してオレンジ色の油状物を得た。ガソリン/CHCl、次いでEtOAcの添加により、沈殿が生じた。濾過によって収集された沈殿物を、ガソリンで洗浄して、オフホワイトの固体化合物22a(3.210g、6.050mmol、71%)を得た。H NMR(400MHz、メタノール-d)δ 7.97(t、J=5.6Hz、1H)、7.87-7.56(m、5H)、7.56-7.17(m、5H)、6.79(d、J=8.4Hz、1H)、4.49(s、2H)、4.27(s、1H)、3.70-3.59(m、8H)、3.54(q、J=5.2Hz、2H)、3.35-3.25(m、2H)。HRMS [M+H]2831に対する必要とされる計算値:531.2351、実測値:531.2362。
【0248】
ステップ2:化合物22bの調製
【0249】
【化66】
化合物21aおよび化合物4から化合物6aと同様に作製される。H NMR(400MHz、メタノール-d)δ 7.99-7.44(m、17H)、7.44-7.14(m、16H)、4.44(s、6H)、4.33(br.s、6H)、4.13(br.s、3H)、3.63-3.55(m、8H)、3.51(t、J=5.1Hz、2H)、3.25(t、J=5.0Hz、2H)、2.81(br.s、6H)、2.24-2.03(m、60H)、1.94-1.82(m、36H)、1.38(s、162H)、1.19-1.10(m、9H)。
【0250】
ステップ3:化合物22cの調製
【0251】
【化67】
化合物6bにより、化合物22b(2.75g、0.62mmol)から作製された。生成物を、オフホワイトの無定形の固体化合物22c(1.52g、0.403mmol、65%)として単離した。
H NMR(500MHz、メタノール-d)δ 7.39(d、J=8.3Hz、2H)、7.37(d、J=8.3Hz、1H)、7.29(d、J=2.1Hz、2H)、7.27(d、J=2.1Hz、1H)、7.21(dd、J=8.3、2.1Hz、2H)、7.14(dd、J=8.3、2.1Hz、1H)、4.51(s、6H)、3.67-3.62(m、8H)、3.54(t、J=5.5Hz、2H)、3.34(t、J=5.3Hz、2H)、2.89(q、J=7.5Hz、6H)、2.27-2.22(m、12H)、2.21-2.15(m、36H)、2.12-2.07(m、12H)、1.99-1.88(m、36H)、1.43(s、162H)、1.25(t、J=7.5Hz、9H)。13C NMR(126MHz、メタノール-d)δ 175.5、174.4、170.3、170.1、158.0、158.0、145.2、141.9、141.5、133.9、132.9、132.4、129.9、129.7、124.9、124.5、118.9、118.4、117.4、117.1、81.7、71.5、71.4、71.1、70.7、59.4、58.7、51.7、40.9、39.3、32.5、32.2、30.7、30.5、28.4、23.9、17.0。HRMS[M+3H]3+1973242150に対する必要とされる計算値:1261.4485、実測値:1261.4509。
【0252】
ステップ4:化合物22dの調製
【0253】
【化68】
化合物6cにより化合物22c(1.50g、0.396mmol)および2b(156mg、0.476mmol)から作製され、溶媒に20%のDMFを添加して、45℃に加熱した。生成物は、白色の無定形の固体化合物22d(0.94g、0.229mmol、58%)として単離された。H NMR(500MHz、メタノール-d)δ 8.07(s、1H)、8.03(d、J=2.1Hz、1H)、8.01-7.95(m、3H)、7.92(d、J=8.6Hz、1H)、7.66(dd、J=8.7、2.0Hz、2H)、7.60(dd、J=8.5、2.1Hz、1H)、7.44(s、4H、NH信号がゆっくりと交換し、そのため積分は変化する)、4.57-4.33(m、12H)、3.71-3.59(m、8H)、3.53(t、J=5.5Hz、2H)、3.36(t、J=5.2Hz、2H)、2.87(br.s、6H)、2.78(br.s、6H)、2.29-2.23(m、12H)、2.23-2.17(m、36H)、2.15-2.09(m、12H)、2.00-1.90(m、36H)、1.44(s、162H)、1.24-1.14(m、18H)。13C NMR(101MHz、メタノール-d)δ 175.6、175.5、174.4、169.7、169.4、169.3、158.4、158.3、157.3、157.2、144.5、144.5、144.4、137.1、136.7、134.3、134.3、134.0、133.8、131.2、131.2、130.5、130.2、129.4、126.1、125.9、125.4、125.2、122.7、122.2、81.6、71.5、71.4、71.1、70.6、59.5、59.4、58.8、58.7、51.7、40.9、38.9、38.8、38.7、38.7、32.4、32.2、30.7、30.7、30.4、28.4、23.6、16.8、16.7、16.6。HRMS[M+3H]3+2153452453に対する必要とされる計算値:1371.1700、実測値:1371.1720。
【0254】
ステップ5:化合物22の調製
【0255】
【化69】
化合物6dにより、化合物22d(500mg、0.122mmol)から作製された。生成物を、黄色の無定形の固体化合物22(376mg、0.122mmol、99%)として単離した。H NMR(400MHz、DO中の重水素化リン酸緩衝液)δ 8.01-7.67(m、6H)、7.67-7.49(m、2H)、7.43(s、1H)、4.55-4.21(m、12H)、3.92-3.47(m、8H)、3.47-3.29(m、2H)、2.82-2.55(m、12H)、2.43-2.18(m、12H)、2.18-2.00(m、48H)、2.00-1.72(m、36H)、1.36-0.80(m、18H)。
【0256】
化合物23 G2マクロサイクルPEG5アジドの調製
【0257】
【化70】
【0258】
ステップ1:化合物23aの調製
【0259】
【化71】
化合物3aにより、化合物1(3.975g、6.470mmol)および14-アジド-3,6,9,12-テトラオキサテトラデカン-1-アミン(2.546g、9.705mmol)から作製された。褐色の油状物(3.933g、6.357mmol、98%)として単離された。H NMR(400MHz、CDCl)δ 7.75(d、J=7.6Hz、2H、ArH)、7.67-7.55(m、2H、ArH)、7.50(d、J=13.6Hz、1H、ArH)、7.39(t、J=7.5Hz、2H、ArH)、7.34-7.27(m、2H、ArH)、7.15(m、1H、ArH)、6.89(m、1H、ArH)、6.69(d、J=8.4Hz、1H、C(O)NHCH2)、4.52(s、1H、Flu-CH)、4.24(s、2H、Flu-OCH2)、3.70-3.46(m、16H、OCH2)、3.28(t、J=5.1Hz、2H、(C(O)NHCH2)、1.37(dd、J=11.8、7.0Hz、2H、N3CH2)。13C NMR(101MHz、CDCl)δ 167.26(C(O)NH)、143.80、141.45、127.89、127.26、125.14、120.10(Ar)、77.36、70.57、70.49、70.46、70.43、70.42、70.22、70.03、69.92(OCH2)、55.66(Flu-OCH2)、50.66(Flu-CH)、39.80(N3CH2)、38.72(NHCH2)。
【0260】
ステップ2:化合物23bの調製
【0261】
【化72】
化合物6aにより、化合物4a(3.24g、1.80mmol)、23a(836mg、1.35mmol)、および2b(295mg、0.90mmol)から作製された。生成物を、オフホワイトの無定形の固体23b(1.77g、0.387mmol、43%)として単離した。H NMR(400MHz、メタノール-d)δ 8.02-7.48(m、18H)、7.46-7.11(m、15H)、4.46(br.s、6H)、4.34(br.s、6H)、4.15(br.s、3H)、3.54-3.44(m、18H)、3.25(dd、J=5.6、4.4、2H)、2.80(br.s、6H)、2.35-2.04(m、60H)、2.04-1.80(m、36H)、1.41(s、162H)、1.25-1.11(m、9H)。
【0262】
ステップ3:化合物23cの調製
【0263】
【化73】
化合物6bにより、化合物23b(1.76g、0.38mmol)から作製された。生成物は、オフホワイトの無定形の固体23c(1.14g、0.29、76%)として単離された。H NMR(400MHz、メタノール-d)δ 7.46-7.37(m、3H)、7.29(d、J=2.1、2H)、7.27(d、J=2.0、1H)、7.21(dd、J=8.3、2.1、2H)、7.15(dd、J=8.4、2.0、1H)、4.51(s、6H)、3.66-3.51(m、16H)、3.36-3.34(m、4H)、2.94-2.82(m、6H)、2.29-2.14(m、48H)、2.13-2.06(m、12H)、1.99-1.89(m、36H)、1.44(s、162H)、1.30-1.21(m、9H)。
【0264】
ステップ4:化合物23dの調製
【0265】
【化74】
化合物6cにより、化合物23c(500mg、0.27mmol)および2b(100mg、0.30mmol)から作製され、溶媒に20%のDMFを添加して、45℃に加熱のみした。生成物を白色の無定形の固体23d(0.86g、0.19mmol、70%)として単離した。H NMR(400MHz、メタノール-d)δ 8.11-7.87(m、6H)、7.66(d、J=8.5、2H)、7.59(d、J=8.4、1H)、7.45(s、6H、NH信号がゆっくりと交換し、そのため積分は変化する)、4.56-4.34(m、12H)、3.64-3.56(m、16H)、3.52-3.46(m、2H)、3.35-3.32(m、2H)、2.90(br.s、6H)、2.78(br.s、6H)、2.29-2.17(m、48H)、2.15-2.08(m、12H)、1.99-1.91(m、36H)、1.43(s、162H)、1.24-1.17(m、18H)。
HRMS[M+3H]3+2193502455に対する必要とされる計算値:1400.5209、実測値:1400.5232。
【0266】
ステップ5:化合物23の調製
【0267】
【化75】
化合物6dにより、化合物23d(750mg、0.179mmol)から作製された。生成物を白色の無定形の固体23(570mg、0.179mmol、99%)として単離した。H NMR(400MHz、DO中の重水素化リン酸緩衝液)δ 8.08-7.73(m、6H)、7.55(d、J=8.6、2H)、7.50-7.43(m、1H)、4.59-4.19(m、12H)、3.75-3.42(m、16H)、3.36-3.21(m、2H)、3.17-3.05(m、2H)、2.82-2.53(m、12H)、2.35-2.21(m、12H)、2.15-2.00(m、48H)、1.98-1.76(m、36H)、1.30-0.90(m、18H)。
【0268】
化合物24、G1マクロサイクルPEG5アジドの調製
【0269】
【化76】
【0270】
ステップ1:化合物24aの調製
【0271】
【化77】
化合物6aにより、化合物23a(2.36g、3.06mmol)、G1デンドリマーアミン=ジ-tert-ブチル-4-アミノ-4-(3-(tert-ブトキシ)-3-オキソプロピル)ヘプタンジオエート(Frontier Scientific-NTN1963)(1.42g、2.29mmol)および2b(500mg、1.53mmol)から作製された。生成物はオフホワイトの無定形の固体(1.58g、0.64mmol、42%)として単離された。H NMR(400MHz、メタノール-d)δ 8.01-7.40(m、21H)、7.30(t、J=7.5、7H)、7.26-7.1(m、7H)、4.56-4.24(m、12H)、4.19-4.02(m、3H)、3.67-3.39(m、18H)、3.29-3.20(m、2H)、2.80(d、J=9.0、6H)、2.24(dd、J=9.4、6.4、12H)、2.13-1.97(m、12H)、1.40(s、54H)、1.15(t、JJ=7.3、9H)。
【0272】
ステップ2:化合物24bの調製
【0273】
【化78】
化合物6bにより、化合物24a(1.55g、0.62mmol)から作製された。生成物を、オフホワイトの無定形の固体24b(1.11g、0.61、98%)として単離した。H NMR(400MHz、メタノール-d)δ 7.39(s、1H(部分的に交換されたNH))、7.33(d、J=8.3、3H)、7.23(d、J=2.0、1H)、7.18(d、J=2.0、2H)、7.07(ddd、J=8.1、4.1、1.9、3H)、4.49(s、6H)、3.70-3.54(m、16H)、3.51(d、J=5.5、2H)、3.35-3.25(m、2H)、2.99-2.72(m、6H)、2.39-2.16(m、12H)、2.08(dd、J=9.5、6.1、12H)、1.44(s、54H)、1.24(t、J=7.3、9H)。
【0274】
ステップ3:化合物24bの調製
【0275】
【化79】
化合物6cにより、化合物24a(500mg、0.27mmol)および2b(100mg、0.30mmol)から作製され、溶媒に20%のDMFを添加して、45℃に加熱した。生成物は、白色の無定形の固体24b(0.33g、0.153mmol、58%)として単離された。H NMR(400MHz、メタノール-d)δ 8.03-7.94(m、3H)、7.94-7.87(m、3H)、7.62(s、1H)、7.56(dd、J=8.7、2.1、3H)、4.48(s、4H)、4.43(s、8H)、3.60-3.33(m、18H)、3.30-3.28(m、2H)、2.96-2.83(m、6H)、2.77(d、J=7.8、6H)、2.32-2.23(m、12H)、2.10(td、J=7.5、4.7、12H)、1.45(s、54H)、1.25-1.14(m、18H)。HRMS[M+H]1111641825に対する必要とされる計算値:2151.5、実測値:2151.5。
【0276】
ステップ4:化合物24、G1マクロサイクルPEG5アジドの調製
【0277】
【化80】
化合物6dにより、化合物24b(330mg、0.153mmol)から作製された。生成物を白色の無定形の固体24(281mg、0.153mmol、99%)として単離した。H NMR(400MHz、DO中の重水素化リン酸緩衝液)δ 7.90-7.56(m、6H)、7.45-7.25(m、3H)、4.48-4.07(m、12H)、3.71-3.13(m、18H)、3.13-3.01(m、2H)、2.70-2.44(m、12H)、2.35-2.21(m、12H)、2.08-2.01(m、12H)、2.01-1.84(m、12H)、1.12-0.91(m、18H)。
【0278】
化合物25、G0マクロサイクルPEG4アジドの調製
【0279】
【化81】
【0280】
ステップ1:化合物25aの調製
【0281】
【化82】
エチル3,4-ジアミノ安息香酸エチル(25.0g、0.139mol)をTHF(280mL)中に溶解した。トリエチルアミン(23.2mL、0.166mol)およびBocO(33.3g、0.153mol、1.1当量)を添加した。室温で16時間攪拌した。溶媒を真空下で除去し、そして粗固体を高温ジエチルエーテル/ガソリン40-60(5:95、500mL)中で粉砕し、濾過し、ガソリン40-60(100mL)で洗浄し、そして高真空下で乾燥して、生成物を淡い褐色の固体(34.8g、89.5%)として得た。
H NMR(400MHz、クロロホルム-d)δ 7.83(d、J=1.9Hz、1H)、7.72(dd、J=8.4、2.0Hz、1H)、6.73(d、J=8.4Hz、1H)、6.15(s、1H)、4.30(q、J=7.1Hz、3H)、4.26(s、2H)、1.50(s、10H)、1.35(t、J=7.2Hz、4H)。
【0282】
ステップ2:化合物25bの調製
【0283】
【化83】
雰囲気下で、25a(17.0g、60mmol)および2b(3.3g、10mmol)を無水DCM(100mL)および無水DMF(9.9mL)中に溶解した。無水ピリジン(7.3mL、91mmol、9当量)を添加し、そして反応物を40℃で18時間攪拌した。反応物を室温まで冷まし、そして溶媒を真空下で除去した。次いで、粗油を1MのHCl水溶液(1000mL)で沈殿させ、濾過し、EtOで洗浄し、そして高真空下で乾燥して、生成物25b(11.7g、10mmol、99%)を淡い褐色の固体として得た。H NMR(400MHz、DMSO-d)δ 8.44(s、3H)、8.21(d、J=8.7Hz、3H)、8.18(s、3H)、7.74(s、3H)、7.70(dd、J=8.7、2.1Hz、3H)、7.07(t、J=3.7Hz、3H)、4.37(br.s、6H)、4.27(q、J=7.1Hz、6H)、2.80(q、J=7.5Hz、6H)、1.39(s、27H)、1.29(t、J=7.1Hz、9H)、1.18(t、J=7.3Hz、9H)。
【0284】
ステップ3:化合物25cの調製
【0285】
【化84】
25b(11.1g、9.50mmol)をCHCl(62mL)およびDMF(15mL)中に溶解した。トリフルオロ酢酸(77.1mL、1.0モル)を5分間にわたって添加し、そして反応物を室温で3時間攪拌した。反応混合物を、窒素流下で濃縮し、そして粗油を飽和NaCO水溶液(1500mL)で沈殿し、濾過し、水で洗浄した。次いで、粗固体をEtOで洗浄し、そして高真空下で乾燥して、オフホワイトの固体として生成物25c(8.0g、9.2mmol、97%)を得た。H NMR(400MHz、DMSO-d)δ 7.82-7.68(m、6H)、7.31(d、J=2.0Hz、3H)、7.18(dd、J=8.5、2.0Hz、3H)、6.47(s、3H)、4.79(s、6H)、4.39-4.27(m、6H)、4.20(q、J=7.1Hz、6H)、2.87-2.66(m、6H)、1.24(t、J=7.1Hz、9H)、1.15(t、J=7.4Hz、9H)。MS[M+H]4558 に対する必要とされる計算値:868.4、実測値:868.4。
【0286】
ステップ4:化合物25dの調製
【0287】
【化85】
雰囲気下で、25c(5.00g、6mmol、1当量)を無水DMF(417mL)中に溶解し、そして無水ピリジン(960mL)を45℃に加熱した。次いで、2b(2.26g、7mmol、1.2当量)を無水CHCl(41mL)中に溶液として10時間かけて添加し、そして反応混合物を45℃でさらに6時間攪拌した。次いで、反応混合物を真空下で濃縮し、そして粗残渣を1MのHCl水溶液(1000mL)で沈殿させ、濾過し、水で洗浄し、乾燥させた。次いで、粗固体をMeOH/CHCl中に溶解し、C18上の上へと乾燥装填し、逆相フラッシュクロマトグラフィー(0.1%ギ酸を有する45%~80%のMeCN:水)によって精製した。生成物を含有する画分を組み合わせ、かつ真空下で濃縮して、オフホワイトの固体として生成物(4.2g、4mmol、61%)を得た。H NMR(400MHz、DMSO-d)δ 8.22(d、J=2.1Hz、3H)、8.08(d、J=8.7Hz、3H)、7.89(s、3H)、7.60(dd、J=8.6、2.1Hz、3H)、7.53(s、3H)、6.49(t、J=5.1Hz、3H)、6.35(t、J=5.4Hz、3H)、4.36-4.24(m、18H)、2.80(d、J=7.7Hz、6H)、2.67(d、J=7.8Hz、6H)、1.31(t、J=7.1Hz、9H)、1.19-1.10(m、18H)。MS[M+H]63791212 に対する必要とされる計算値:1195.5、実測値:1195.5。
【0288】
ステップ5:化合物25eの調製
【0289】
【化86】
25d(4.9g、4.10mmol、1当量)をエタノール(50mL)および水(50mL)中に懸濁し、そして40℃に加熱した。水酸化ナトリウム(0.246g、6.15mmol、1.5当量)を添加し、そして反応物を40℃で16時間攪拌した。反応物を室温まで冷まし、有機溶媒を真空下で除去した。次いで、粗生成物を1MのHCl水溶液(400mL)で沈殿させ、濾過し、1MのHCl水溶液で洗浄し、そして乾燥させた。次いで、粗固体をアセトン/水中に溶解し、C18の上へと乾燥装填し、逆相フラッシュクロマトグラフィーによって精製した。生成物を含有する画分を組み合わせ、そして溶媒を真空下で除去して、白色の固体として生成物25e(1.7g、1.46mmol、36%)を得た。
H NMR(400MHz、DMSO-d)δ 8.18(d、J=2.1Hz、2H)、8.17(d、J=2.1Hz、1H)、8.04(d、J=8.7Hz、2H)、8.01(d、J=8.6Hz、1H)、7.86(s、2H)、7.83(s、1H)、7.59-7.52(m、3H)、7.50(s、2H)、7.46(s、1H)、6.48-6.42(m、3H)、6.36-6.27(m、3H)、4.33-4.21(m、16H)、2.83-2.71(m、6H)、2.68-2.58(m、6H)、1.28(t、J=7.1Hz、6H)、1.11(td、J=7.3、6.9、2.4Hz、18H)。MS[M+H]59711212 に対する必要とされる計算値:1139.5、実測値:1139.5。
【0290】
ステップ6:化合物25fの調製
【0291】
【化87】
雰囲気下で、25e(300mg、0.231mmol、1.0当量)、HBTU(97mg、0.254mmol、1.1当量)、およびHOBt.HO(39mg、0.254mmol、1.1当量)を無水DMF(8.5mL)中に溶解した。DIPEA(80μL、0.460mmol、2等量)を添加し、そして反応混合物を室温で15分間攪拌した。11-アジド-3,6,9-トリオキサンウンデカン-1-アミン(100uL、0.463mmol、2当量)を添加し、そして反応物を室温で16時間攪拌した。反応混合物を水の中へと注ぎ、沈殿物を濾過し、水で洗浄し、そしてアセトンを用いてRBFに移した。溶媒を真空下で除去し、そして粗残渣をアセトン/水中で30gのSNAP Ultra C18カートリッジの上へと装填し、逆相フラッシュクロマトグラフィー(50~100%のアセトン:水勾配)によって精製した。画分を含有する生成物を組み合わせ、そして溶媒を真空下で除去して白色の固体を得て、これを真空下でさらに乾燥させて、白色の固体として生成物25f(240mg、0.175mmol、76%)を得た。H NMR(400MHz、メタノール-d)δ 8.23(d、J=2.0Hz、2H)、8.04(d、J=2.1Hz、1H)、8.01(d、J=8.6Hz、2H)、7.94(d、J=8.6Hz、1H)、7.79(dd、J=8.7、2.0Hz、2H)、7.60(dd、J=8.6、2.1Hz、1H)、4.49-4.40(m、12H)、4.35(q、J=7.1Hz、4H)、3.67-3.58(m、12H)、3.52(t、J=5.4Hz、2H)、2.91-2.71(m、12H)、1.39(t、J=7.1Hz、6H)、1.20(t、J=7.6Hz、18H)。
【0292】
ステップ7:化合物25、G0マクロサイクルPEG4アジドの調製
【0293】
【化88】
25f(0.22g、0.161mmol、1.0当量)をエタノール(5mL)およびメタノール(0.5mL)中に溶解した。1Mの水酸化ナトリウム水溶液(5.5mL)を添加し、そして40℃で3時間攪拌した。有機溶媒を真空下で除去して水溶液を得、次いでこれを1Mの塩酸水溶液に注いだ。得られた懸濁液を遠心分離し、水をデカントし、固体を水で洗浄した。次いで、固体を再度遠心分離し、水をデカントし、そして固体を、アセトンを用いてRBFに移した。溶媒を真空下で除去し、そして高真空下で乾燥して、白色の固体として25(190mg、0.111mmol、90%)を得た。H NMR(400MHz、DMSO-d)δ 8.41(s、2H)、8.37(d、J=2.0Hz、2H)、8.31-8.23(m、2H)、8.21(d、J=2.1Hz、1H)、8.13(s、2H)、8.11(d、J=8.6Hz、2H)、8.01(d、J=8.7Hz、2H)、7.52(dd、J=8.6、2.1Hz、2H)、7.43(dd、J=8.6、2.1Hz、1H)、6.58-6.42(m、3H)、6.29(d、J=5.4Hz、3H)、4.32(s、12H)、3.60-3.49(m、11H)、2.81-2.54(m、12H)、1.16(dd、J=9.2、4.3Hz、18H)。MS[M+H]65831614 に対する必要とされる計算値:1311.6、実測値:1311.6。
【0294】
本発明のインスリン誘導体の調製
【0295】
実施例1:B1-ベンジル-4-トリアゾリル-PEG4-G2マクロサイクルB29-PEG3-グリコシドdesB30ヒトインスリンINS1の調製
【0296】
【化89】
【0297】
実施例1のインスリン誘導体INS1は、下記に記載されるように調製される。
【0298】
ステップ1:B1-4-エチニル-ベンジルdesB30ヒトインスリンINS2の調製(スキーム1)
【0299】
【化90】
DesB30ヒトインスリンは、0.1M酢酸中に溶解され、またpHは、8Mの酢酸を使用して4に調節される。N-メチル-ピロリドン(NMP)中の4-エチニル-ベンズアルデヒド(1.5当量)を添加し、そして混合物を30分間攪拌する。NMP中のアルファ-ピコリンボラン(6当量Oを添加し、かつ混合物を2時間攪拌する一方で、pHは、8Mの酢酸の添加により、4の近くに保たれる。LCMSは、所望の生成物の形成を示し、pHは2に調節され、そして生成物は、水中の0.1%のTFAを緩衝液Aとして、かつアセトニトリル中の0.1%のTFAを緩衝液Bとして使用した、C18カラム上で逆相HPLC(RP-HPLC)によって精製された。生成物(INS2(スキーム1))を凍結乾燥によって単離した。
【0300】
ステップ2:INS3の調製(スキーム2)
【0301】
【化91】
【0302】
上記で調製されたようなマクロサイクル-PEG-アジド6dは、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)中に溶解され、そして不活性雰囲気(窒素)下で、酢酸を使用してpH7.8に調節された2Mトリエチルアミン中に溶解されたアルキンインスリンINS2(スキーム1、1当量)と反応し、触媒としてCuI(0.1当量)およびリガンドとしてトリス(3-ヒドロキシプロピルトリアゾリルメチル)アミン(THPTA、2当量)と反応する。反応にLCMSが続き、そして生成物INS3(スキーム2)は、実施例1のステップ1に記載されるようにRP-HPLCを使用して単離される。
【0303】
ステップ3:化合物INS1の調製
【0304】
【化92】
活性エステル8(1.2当量)を、0.2Mの炭酸ナトリウム中にpH10.5で溶解されたB1-マクロサイクル-インスリンINS3(スキーム2)と反応させる。反応にLCMSが続き、そして実施例1のB1-マクロサイクルB29-グリコシドINS1が、実施例1のステップ1に記載されるようにRP-HPLCを使用して単離される。LCMSの測定値1858.5[M+5H]5+、計算値1858.6。
【0305】
実施例2:B1-ベンジル-4-トリアゾリル-PEG4-G2マクロサイクルA1-PEG3-グリコシドdesB30ヒトインスリンINS4の調製
【0306】
【化93】
pH7.5で0.1Mの重炭酸ナトリウム中のB1-マクロサイクル-インスリンINS3(スキーム2、実施例1のステップ2のように調製)を、グルコシド活性エステル8と反応させる。反応にLCMSが続き、そして実施例2のB1-マクロサイクルA1-グルコシドINS4は、実施例1のステップ1に記載されるようにRP-HPLCを使用して単離される。
【0307】
実施例3:B29-PEG4-G2マクロサイクルA1-PEG3-グリコシドdesB30ヒトインスリンINS5の調製
【0308】
【化94】
上記のように調製されたカルボキシマクロサイクルPEG 7dは、グルコシド8について記載したようにスクシンイミジルエステルとして活性化され、実施例1に記載されるように、desB30ヒトインスリンとpH10.5で反応する。反応にLCMSが続き、そしてB29-マクロサイクル誘導体は、上述のRP-HPLCを使用して単離される。B29-マクロサイクル誘導体を、実施例3に記載されるように、pH7.5でベータ-グリコシド活性エステル8と反応させる。反応にLCMSが続き、そして粗生成物は、95%のTFAを用いた30分間の処理によって脱保護される。実施例3のB29-マクロサイクルA1-グルコシドINS5は、実施例1のステップ1に記載されるようなRP-HPLCを使用して単離される。
【0309】
実施例4:B1-ベンジル-3,5-ビス-トリアゾリル-PEG4-G2マクロサイクルB29-ベンゾイル-3,5-メチルアミノ-ビス-PEG3-グリコシドdesB30ヒトインスリンINS6の調製
【0310】
【化95】
インスリンINS6上のMに対する結合点=*
【0311】
【化96】
インスリンINS8上のMに対する結合点=*
【0312】
B1-3,5-ビス-エチニル-ベンジルdesB30ヒトインスリンは、3,5-ビス-エチニル-ベンズアルデヒドおよびdesB30ヒトインスリンから、化合物INS2の調製と類似して還元アルキル化によって生成される(スキーム4)。ビス-アルキンINS7を、化合物INS3について記載したような条件下でマクロサイクルアジド6dと反応させ、反応にLCMSが続き、そして中間体INS8を、実施例1のステップ1に記載したようにRP-HPLCを使用して単離する。活性エステルグルコシド8は、3,5-ビス-アミノメチル-安息香酸と反応する。精製された生成物は、グルコシド8について記載したようにスクシンイミジルエステルとして活性化され、そしてINS3について記載したようにpH10.5でインスリン中間体INS8と反応する。反応にLCMSが続き、そして実施例4のB1-ビス-マクロサイクルB29-ビス-グリコシドdesB30ヒトインスリンINS6が、実施例1のステップ1に記載されるようにRP-HPLCを使用して単離される。
【0313】
実施例5:B1-ベンジル-4-トリアゾリル-PEG4-G2マクロサイクルB29-アセチルエチレングリコール-D-グリコシドdesB30ヒトインスリンINS9の調製
【0314】
【化97】
【0315】
ステップ1:INS2を、pH11の氷浴上で0.1MのNaCO中に溶解し、そしてTHF中の活性エステル11で10分間処理した。INS10を、実施例1の記載と同様にHPLCによって単離した。LCMSの測定値1564.25[M+4H]4+、計算値1564.24。
【0316】
【化98】
【0317】
ステップ2:INS10を、33%のMeOHで0.2MのK2CO3中に溶解し、そして30分間攪拌した。INS11を、実施例1の記載と同様にHPLCによって単離した。LCMSの測定値1522.21[M+4H]4+、計算値1522.21。
【0318】
【化99】
【0319】
ステップ3:INS11(4.1mg、0.001mmol)およびマクロサイクルアジド6d(3.579mg、0.001mmol)を、2MのEt3N/CH3COOH水性緩衝液pH7(0.6mL)およびDMSO(0.3mL)中に溶解し、水(0.3mL)でさらに希釈し、そして混合物を脱気した。 混合物を、THPTA(0.015mg、5mol%)で、およびスパチュラ先端量のCuIで処理し、10分間放置した。INS9を、実施例1の記載と同様のHPLCによって単離し、LCMSの測定値は1846.8[M+5H]5+、計算値は1847.0であった。
【0320】
実施例8:B1-メチル-4-トリアゾリル-PEG4-G1マクロサイクルB29-PEG4-グリコシドdesB30ヒトインスリンINS18の調製
【0321】
【化100】
【0322】
ステップ1:DesB30ヒトインスリン(1.71g、0.3mmol)を、0.1MのAcOH/水(5mL)+MeOH(5mL)中に溶解した。プロピナル(29mg、0.54mmol)を加え、混合物を15分間攪拌し、次いでより多くのプロピナル(15mg)で処理し、30分間攪拌した。DMF中のアルファ-ピコリンボラン(192mg、1.8mmol)を添加し、そして混合物を1時間攪拌した。INS19を、実施例1の記載と同様にHPLCによって単離した。LCMSの測定値1436.8[M+4H]4+、計算値1437.1。
【0323】
【化101】
ステップ2:INS19(150mg、0.026mmol)を0.1MのNa2HPO4緩衝液pH11.5(3mL)中に溶解し、そしてグルコシド活性エステル8と1時間反応させた。INS20を、実施例1の記載と同様にHPLCによって単離した。LCMSの測定値1517.4[M+4H]4+、計算値1517.7。
【0324】
【化102】
【0325】
ステップ3:INS20(11mg、1.8umol)およびマクロサイクルアジド6d(8.3mg、2.4umol)を、2MのトリエタノールアミンpH7.0(0.4mL)+DMSO(0.8mL)中に溶解した。THPTA(0.236mg、0.54umol)を添加し、そして混合物を慎重に脱気した。CuI(0.003mg、0.018umol)を添加し、そして混合物を90分間攪拌した。INS18を、実施例1の記載と同様にHPLCによって単離した。LCMSの測定値1843.5[M+5H]5+、計算値1843.4。
【0326】
実施例9:B1-ベンジル-4-トリアゾリル-PEG4-G2マクロサイクルB29-アセチルジエチレングリコール-グリコシドdesB30ヒトインスリンINS21の調製
【0327】
【化103】
INS21を、グルコシドを作製するためのトリエチルエングリコール、およびマクロサイクルアジド6dを使用して、INS9と同様に調製した。INS21 LCMS測定値1855.7[M+5H]5+、計算値1855.9。
【0328】
実施例10:B1-ベンジル-3,5-ビス-トリアゾリル-PEG4-G1マクロサイクルB29-Nε-プロパノイル、Cα-アミノメチル-ビス-トリアゾリル-PEG4-グリコシドdesB30ヒトインスリンINS22の調製
【0329】
【化104】
ステップ1:DesB30ヒトインスリン(120mg、0.21mmol)およびプロパルギルアミン(100mg、1.8mmol)を、DMSO(1mL)、DMF(1mL)、エタノール(1mL)、および0.1Mのリン酸ナトリウムpH7(1mL)の混合物中に溶解し、TFAを用いてpH7.0に調節した。アクロモバクター・リチカス(achromobactor lyticus)プロテアーゼ(40uL、6.3mg/mL)の溶液を添加し、そして混合物を一晩放置した。INS23を、実施例1の記載と同様にHPLCによって単離した。LCMSの測定値1436.5[M+4H]4+、計算値1436.9。
【0330】
【化105】
【0331】
ステップ2:INS23(300mg、52umol)を、0.1MのNaCO緩衝液pH11(15mL)内に溶解し、そしてDMSO(1mL)中に溶解されたO-スクシンイミジルペンチネート(succinimidyl pentynate)(10.1mg、51umol)で処理した。反応を1時間放置し、INS24を実施例1に記載されるようにHPLCによって単離した。LCMSの測定値1456.6[M+4H]4+、計算値1456.9。
【0332】
【化106】
【0333】
ステップ3:INS24(97mg、17umol)を、INS3について記載したようにTHPTAおよびCuIを使用して化合物12(12.7mg、33umol)と反応させた。INS25を、実施例1に記載したようにHPLCによって単離した。LCMSの測定値1647.4[M+4H]4+、計算値1647.6。
【0334】
【化107】
【0335】
ステップ4:INS25(85mg、13umol)を、50%のアセトニトリル/水(1.2mL)中に溶解し、そして3,5-ジエチニルベンズアルデヒド(3.1mg、21umol)で処理した。pHを、0.1MのNa2COを使用して4に調節した。NaCNBH3(4mg、65umol)を添加し、そして混合物を一晩放置した。INS26を、実施例1の記載と同様にHPLCによって単離した。LCMSの測定値1345.7[M+5H]5+、計算値1345.9。
【0336】
【化108】
【0337】
ステップ5:INS26(24mg、4umol))、化合物16(20mg、11umol)、THPTA(1mg)、およびメチル-β-D-グリコピラノシド(20mg)を、2MのEtN/AcOH(1mL)+DMSO(1mL)中に溶解し、そして脱気した。スパチュラ先端量のCuIで処理し、2時間放置した。INS22を、実施例1の記載と同様にHPLCによって単離した。LCMSの測定値1711.5[M+6H]6+、計算値1711.7。
【0338】
実施例11:B1-ベンジル-4-トリアゾリル-PEG4-G2マクロサイクルB29-アセチル-グリコシドdesB30ヒトインスリンINS27の調製
【0339】
【化109】
INS27は、グルコシドを作製するためのエチレングリコール、およびマクロサイクルアジド6dを使用して、INS9と同様に調製された。INS27 LCMSの測定値1838.2[M+5H]5+、計算値1838.2。
【0340】
実施例12:B1-メチル-4-トリアゾリル-PEG3-G1マクロサイクルB29-PEG3-グリコシドdesB30ヒトインスリンINS28の調製
【0341】
【化110】
INS20(36.4mg、6umol)および化合物20(14.5mg、7.8umol)を、DMSO(4mL)+2MトリエチルアミンpH7.0(3mL)に溶解した。THPTA(0.78mg、1.8umol)を添加し、そしてフラスコを脱気した。CuI(0.011mg、0.06umol)を添加し、そして混合物を1時間放置した。INS28を、実施例1の記載と同様にHPLCによって単離した。LCMSの測定値1559.2[M+5H]5+、計算値1559.5。
【0342】
実施例13:B1-ベンジル-3,5-ビス-トリアゾリル-PEG4-G1マクロサイクルB29-Cα-エチレンジアミン-メチルトリアゾリル-PEG4-グリコシドdesB30ヒトインスリンINS29
【0343】
【化111】
N,N-ジプロピニル-エチレンジアミンを、INS23について記載したように酵素カップリングによって、desB30ヒトインスリン中のB29のCαにコンジュゲートした。アジドPEG4グルコシド12は、INS3について記載したようにアルキンに二重コンジュゲートされ、そして生成物のB1は、INS26について記載したように3,5-ジエチニルベンズアルデヒドで還元的にアルキル化された。生成物を、INS22の合成について記載したようにG1マクロサイクルPEG4アジド(化合物16)とコンジュゲートし、そして生成物を、INS1について記載したようにHPLCによって精製した。LCMSの測定値1711.8[M+6H]6+、計算値1711.9。
【0344】
実施例14:B1-メチル-4-トリアゾリル-PEG4-G1マクロサイクルB29Nε-PEG3-グリコシドdesB30ヒトインスリンINS30
【0345】
【化112】
INS30は、INS9について記載したようにINS20およびG1マクロサイクルPEG4アジド16から調製され、そしてINS1について記載したようにHPLCにより精製された。LCMSの測定値1568.1[M+5H]5+、計算値1568.3
【0346】
実施例15:B1-メチル-4-トリアゾリル-プロピル-G1マクロサイクルB29Nε-アセチル-グリコシドdesB30ヒトインスリンINS31
【0347】
【化113】
INS31を、1-アセチル-グルコシドおよびG1マクロサイクルプロピルアジド21からINS18として調製し、INS1について記載したようにHPLCによって精製した。LCMSの測定値1524.2[M+5H]5+、計算値1524.3。
【0348】
実施例16:B1-ベンジル-3,5-トリアゾリル-PEG4-G1マクロサイクルB29Nε-ベンゾイル-3,5-トリアゾリル-PEG4-グリコシドdesB30ヒトインスリンINS32
【0349】
【化114】
INS32は、INS23について記載したようにスクシンイミジル3,5-ジエチニル安息香酸を使用してB29中でdesB30ヒトインスリンをアシル化することによって調製され、その後続いて、INS3について記載されるグルコシドPEG4アジド12と反応し、続いて、INS26について記載したように3,5-ジエチニルベンズアルデヒドを使用して還元アルキル化した。生成物を、INS22の合成について記載したようにG1マクロサイクル-PEG4-アジド(化合物16)へとコンジュゲートし、そして生成物を、INS1について記載したようにHPLCによって精製した。LCMSの測定値1717.3[M+6H]6+、計算値1717.6。
【0350】
実施例17:B1-ベンジル-3,5-トリアゾリル-プロピル-G1マクロサイクルB29Nε-B29-ベンゾイル-3,5-トリアゾリル-PEG4-グリコシドdesB30ヒトインスリンINS33
【0351】
【化115】
INS33は、INS32について記載したようにdesB30ヒトおよびスクシンイミジル3,5-ジエチニル安息香酸から調製され、続いてINS3について記載したようにグルコシドPEG4アジド12と反応し、その後続いてINS26について記載したように3,5-ジエチニルベンズアルデヒドを使用して還元アルキル化した。生成物を、INS32の合成について記載したようにG1マクロサイクル-プロピルアジド(化合物21)へとコンジュゲートし、そして生成物を、INS1について記載したようにHPLCによって精製した。LCMSの測定値1677.9[M+6H]6+、計算値1678.2。
【0352】
実施例18:B1-メチル-トリアゾリル-プロピル-G1マクロサイクルB29Nε-PEG3-グリコシドdesB30ヒトインスリンINS34
【0353】
【化116】
INS34を、INS9について記載したようにINS20およびG1マクロサイクルプロピルアジド21から調製した。生成物を、INS1について記載したようにHPLCによって精製した。LCMSの測定値1930.7[M+4H]4+、計算値1930.7。
【0354】
実施例19:B1-プロパノイル-トリアゾリル-PEG3-G2マクロサイクルB29Nε-PEG3-グリコシドdesB30ヒトインスリンINS35
【0355】
【化117】
A1-Boc desB30ヒトインスリン(EP0132770)を、INS20について記載したようにグルコシドPEG3活性エステル8と反応させた。生成物を、INS1について記載したようにHPLCによって精製し、そしてスクシンイミジルペンチネートを使用してB1をアシル化し、そして生成物を、INS1について記載したようにHPLCによって精製した。生成物を、INS9について記載したようにG2-マクロサイクルPEG3アジド22とコンジュゲートさせた。LCMSの測定値1843.1[M+5H]5+、計算値1843.0。
【0356】
実施例20:B1-プロパノイル-トリアゾリル-PEG5-G2マクロサイクルB29Nε-PEG3-グリコシドdesB30ヒトインスリンINS36
【0357】
【化118】
A1-Boc desB30ヒトインスリンを、INS20について記載したようにグルコシドPEG3活性エステル8と反応させた。生成物を、INS1について記載したようにHPLCによって精製し、そしてスクシンイミジルペンチネートを使用してB1をアシル化し、そして生成物を、INS1について記載したようにHPLCによって精製した。生成物を、INS9について記載したようにG2-マクロサイクルPEG5アジド23とコンジュゲートさせた。LCMSの測定値1860.73[M+5H]5+、計算値1860.6。
【0358】
実施例21:B1-メチル-トリアゾリル-PEG5-G1マクロサイクルB29Nε-PEG3-グリコシドdesB30ヒトインスリンINS37
【0359】
【化119】
INS37を、INS9について記載したようにINS20およびG2マクロサイクルPEG5アジド24から調製した。生成物を、INS1について記載したようにHPLCによって精製した。LCMSの測定値1971.3[M+4H]4+、計算値1971.2。
【0360】
実施例22:B1-メチル-トリアゾリル-PEG4-G0マクロサイクルB29Nε-PEG3-グリコシドdesB30ヒトインスリンINS38
【0361】
【化120】
INS38を、INS9について記載したようにINS20およびG0マクロサイクルPEG4アジド25から調製した。生成物を、INS1について記載したようにHPLCによって精製した。LCMSの測定値1845.4[M+4H]4+、計算値1845.6。
【0362】
実施例23:B1-メチル-トリアゾリル-PEG4-G1マクロサイクルB29Nεアセチル-グリコシドdesB30ヒトインスリンINS39
【0363】
【化121】
INS39を、1-アセチル-グリコシドおよびG1マクロサイクルPEG4アジド16を使用してINS18として調製した。生成物を、INS1について記載したようにHPLCによって精製した。LCMSの測定値1934.4[M+4H]4+、計算値1934.7。
【0364】
実施例24:B1-メチル-トリアゾリル-PEG3-G1マクロサイクルB29Nε-アセチル-グリコシドdesB30ヒトインスリンINS40
【0365】
【化122】
1-アセチル-グリコシドおよびG1マクロサイクルPEG3アジド20を使用して、INS40をINS18として調製した。生成物を、INS1について記載したようにHPLCによって精製した。LCMSの測定値1923.6[M+4H]4+、計算値1923.6。
【0366】
実施例25:B29-プロパニオール-トリアゾリル-プロピル-G1マクロサイクルA1-アセチル-グリコシドdesB30ヒトインスリンINS41
【0367】
【化123】
DesB30ヒトインスリンvarは、B29でスクシンイミジル4-ペンチネート(pentynate)(pH10.5)と反応し、そしてA1で、INS1について記載したようにHPLCにより精製された生成物である、スクシンイミジルO-ペルアセチル-1-アセチル-グルコシド(pH8.5)と反応した。O-アセチルは、1:1のMeOH+100mMの炭酸ナトリウム水溶液を使用して、鹸化によって除去された。生成物を、INS31と同様にG1マクロサイクルプロピルアジド21と反応させた。生成物を、INS1について記載したようにHPLCによって精製した。LCMSの測定値1532.7[M+5H]5+、計算値1532.7。
【0368】
グルコース感受性インスリン受容体活性化
【0369】
実施例26:蛍光滴定によるマクロサイクルのグルコース親和性
所与のマクロサイクルの光学特性(蛍光)は、非結合状態とグルコース結合状態との間で変化する。マクロサイクルを、関連するグルコース濃度範囲内でグルコースで滴定し、かつシステムの蛍光の変化を測定することは、それ故にグルコース結合に対する結合曲線を与えることができ、これはグルコース結合定数Ka(および変位定数Kd)を決定するために使用することができる。
【0370】
すべての溶液を、10mMのリン酸緩衝液溶液を使用してpH7.4に維持した。滴定は、310nmの励起波長を有するHoriba Scientific Duetta蛍光分光計を使用して実施し、かつ320~550nmからの放射をモニタリングした。励起および放射スリット幅/バンド幅を5nmに設定した。すべての点は、0.5秒の積分時間および5つの蓄積を使用して取得された。
【0371】
溶液1-化合物6dの原液:
2mgの化合物6d(Mw=3540g/mol)を5.6mLの超高純度H2O(pH7.4、10mM PB)中に溶解した。化合物6dの純度を、D2O中のDMFの公知の濃度を内部標準として使用して、1H NMR分光法によって以前にアッセイした。純度を80%(40μM)で較正した。次いで、これを4倍に希釈して、化合物6dの10μMの溶液を得た。
【0372】
溶液2-D-グルコースおよび化合物6dの原液:
D-グルコース(188.16mg)を1mLの10mMのPB中に溶解し、そして一晩静置して、αアノマーとβアノマーとの平衡化を可能にした。これは逐次的に希釈されて、20mMのD-グルコースの原液を得た。この溶液の250μLを、250μLの化合物6d原液と組み合わせて、10mMのD-グルコース/5μMの化合物6dを得た。
【0373】
3mLのキュベット内で、1500μLの溶液1を、1500μLの10mMのリン酸緩衝液で希釈して、5μMの溶液を得た。これを溶液2で滴定した。滴定剤溶液(溶液2)の各添加に対して、添加の前に等価体積をキュベットから除去して、セル体積を一定(3000μL)に保持した。各添加物を1分間攪拌し、次いで攪拌を停止して、試料が取得前に平衡化するために1分間置いた。添加量(単位μL):0、10、10、10、10、10、20、20、50、100、100。
【0374】
データを図2および図3に示す。
【0375】
計算値Ka=14751.48±637.3 M-1、Kd化合物6d=1/14751M-1=68uM。
グルコース親和性は、以下に対して同様に測定された。
化合物21、Kd=89uM
化合物22、Kd=132uM
化合物23、Kd=78uM
化合物24、Kd=131uM
【0376】
マクロサイクルはすべて、どのリンカーが備えられているかにかかわらず、100uM(Kd)付近の親和性でグルコースに結合する。
【0377】
実施例27:グルコースの非存在下または存在下でのヒトインスリン受容体(hIR-A)に対する親和性を決定するためのアッセイ
インスリン誘導体のグルコース感受性を測定するために、ヒトインスリン受容体に対するインスリン誘導体の親和性を、グルコースが存在しない状態で、または20mMのグルコースが存在する状態で測定した。
【0378】
インスリン受容体の調製
ヒトインスリン受容体A(hIR-A)を過剰発現させるBHK細胞を、50mMのHepes pH8.0、150mMのNaCl、1%のTriton X-100、2mMのEDTA、および10%のグリセロール中に溶解させた。クリアになった細胞溶解物を、90分間、小麦胚細胞凝集素(WGA)-アガロース(小麦胚芽由来レクチン-アガロース、L1394、Sigma-Aldrich Steinheim,Germany)を用いてバッチ吸収した。受容体を20体積の50mMのHepes pH8.0、150mMのNaCl、および0.1%のTriton X-100で洗浄し、その後、受容体を50mMのHepes pH8.0、150mMのNaCl、0.1%のTriton X-100、0.5Mのn-アセチルグルコサミン、および10%グリセロールで溶出した。すべての緩衝液は、Complete(Roche Diagnostic GmbH,Mannheim,Germany)を含有する。
【0379】
シンチレーション近接アッセイ(SPA)結合アッセイ
SPA PVT抗マウスビーズ(Perkin Elmer)を、100mMのHepes pH7.4、100mMのNaCl、10mMのMgSO、0.025%(v/v)のTween-20から成るSPA結合緩衝液中で希釈した。SPAビーズをIR特異性抗体83-7および可溶化半精製hIR-Aを用いてインキュベートした。5000cpmの125I-(Tyr31)-インスリン(Novo Nordisk A/S)の10%の結合を達成するように受容体濃度を調節した。冷たいリガンドの希釈系列を96ウェルOptiplateに添加し、続いてトレーサー(125I-インスリン、5000cpm/ウェル)および最後に受容体/SPA混合物を添加した。グルコース感受性を試験するために、結合実験を、20mMグルコースの非存在下または存在下で設定した。プレートを22℃で22.5時間穏やかに揺動させ、1000rpmで5分間遠心分離し、TopCounter(Perkin Elmer)で計数した。ヒトインスリンと比較した類似体に対する相対親和性を計算し、そして相対親和性の0から20mMグルコースへの増加は、類似体のグルコース感受性(HIRグルコース因子)に反映された。実験は、1.5%のヒト血清アルブミンの存在下で実施された。
【0380】
データを表1に示す。
【0381】
結果は、本発明のインスリン誘導体(一つの位置におけるグルコース結合剤マクロサイクルに加えて、別の位置におけるグルコシドで構成されたグルコース感受性スイッチを有するインスリン)が、グルコースが存在しないときよりも20mMのグルコースの存在下でより高いインスリン受容体親和性を有することを示す。INS27、INS31、INS39、およびINS40は、最も弱いグルコース感受性を示し、リンカーの長さがインスリンコンジュゲートのグルコース感受性に影響を及ぼすことを実証している。
【0382】
【表1】
【0383】
本発明のある特定の特徴が本明細書に例示および記載されているが、ここで、多くの修正、置換、変更、および同等物が当業者に想到されるであろう。したがって、添付の特許請求の範囲が、本発明の真の趣旨の範囲内にあるこうしたすべての修正および変更を網羅することを意図していることが理解されるべきである。
図1
図2
図3
【配列表】
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