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特許7439064ナノ触媒を使用して燃料として低価値の炭素質原料をガス化するためのプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】ナノ触媒を使用して燃料として低価値の炭素質原料をガス化するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/04 20060101AFI20240219BHJP
   B01J 35/23 20240101ALI20240219BHJP
   B01J 35/51 20240101ALI20240219BHJP
   B01J 35/61 20240101ALI20240219BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20240219BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20240219BHJP
   C01B 32/40 20170101ALI20240219BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20240219BHJP
   C10J 3/46 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
B01J23/04 M
B01J35/23
B01J35/51
B01J35/61
B82Y30/00
B82Y40/00
C01B32/40
C01B32/50
C10J3/46 G ZNM
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021515505
(86)(22)【出願日】2019-08-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-15
(86)【国際出願番号】 BR2019050314
(87)【国際公開番号】W WO2020028963
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】BR1020180163060
(32)【優先日】2018-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BR
(73)【特許権者】
【識別番号】591005349
【氏名又は名称】ペトロレオ ブラジレイロ ソシエダ アノニマ - ペトロブラス
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100120684
【弁理士】
【氏名又は名称】宮城 三次
(72)【発明者】
【氏名】フェハス デ ソウザ,ウラジミール
(72)【発明者】
【氏名】パッソス デ ソウザ,ヴィヴィアン
(72)【発明者】
【氏名】アンドラーデ ロドリゲス,マイラ
(72)【発明者】
【氏名】デ アルメイダ ドゥマニ ドス サントス,アマンダ
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04720289(US,A)
【文献】特開2007-023084(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0299990(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
B82Y 30/00,40/00
C01B 32/15-32/198,32/40,32/50
C10J 3/46
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料として化石由来の炭素質原料とナノ触媒とを含む触媒混合物であって、
前記触媒混合物は、混合物の総重量に基づき、1重量%から50重量%までのナノ触媒と、
99重量%から50重量%までの炭素質原料と、を含み、
前記ナノ触媒は、少なくとも1つのアルカリ金属とカーボンナノ材料からなり、
前記カーボンナノ材料がナノスフィアの形態を有し、
前記炭素質原料が石油コークスであることを特徴とする混合物。
【請求項2】
前記ナノ触媒が、前記ナノ触媒の総重量に基づき、99.99重量%と95重量%との間の含有量の前記カーボンナノ材料と、0.01重量%と5重量%との間の含有量の少なくとも1つのアルカリ金属とから構成されることを特徴とする請求項1に記載の混合物。
【請求項3】
前記ナノ触媒の前記比表面積が500m/gと800m/gとの間で変動することを特徴とする請求項1又は2に記載の混合物。
【請求項4】
前記ナノ触媒がナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムから選択される少なくとも1つのアルカリ金属を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の混合物。
【請求項5】
前記混合物がナノ触媒50%と、化石源の前記炭素質原料50%とを含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の混合物。
【請求項6】
請求項1に記載されている触媒混合物のガス化プロセスであって、
前記混合物をガス化装置に導入する工程と、
空気、純粋酸素、二酸化炭素、水蒸気又は混合体から選択される酸化剤の存在下で、200℃と1,300℃との間の範囲の温度まで前記混合物を加熱する工程と、
、CO、CO、CHを含むガス生成物を得る工程と、
を備えることを特徴とするプロセス。
【請求項7】
前記混合物を加熱する前記工程が900℃と1,200℃との間の温度範囲で行われることを特徴とする請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記酸化剤を希ガスから選択される不活性ガス中で薄めることが可能であることを特徴とする請求項6又は7に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギ消費の少ない、ナノ触媒存在下での化石源の炭素質材料のガス化プロセスに関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、ナノ触媒と、石油コークス、石炭、重質残油留分又はそれらの混合物等の燃料として低価値の化石由来の炭素質原料とを含む混合物のガス化プロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
エネルギに対する世界的な需要の増大、その高い価格、及び環境に関する絶え間ない懸念が、オイル及び石炭の重質留分からの廃棄物等の燃料価値が低い炭素質原料から高付加価値を有する生成物の開発を先導する主要な要因の一部となっている。
【0004】
オイルの重質留分を処理するとかなりの量の減圧残油(処理された原油総量の約40%)が発生する。当該残渣は、コーキングプロセスにより処理して液状留分及びガス状留分を抽出することも可能である。コーキングプロセスから得られる炭素質固体残留物は石油コークスと呼ばれる。
【0005】
石炭及び石油コークス等の固体炭素質原料に価値を付加する1つの方法は、ガス化プロセスによるものである。ガス化プロセスにおいて、固体原料は、合成ガスと呼ばれる可燃性ガス生成物に変換される。
【0006】
そのガス生成物は、不活性ガス並びに微粒子及びタール等のいくつかの汚染物質を含んでいる可能性に加えて、CO、CO、H、CH、HO等のガスを含む。得られた生成物は、ガソリン及びメタノール等の二次生成物の形成、並びにエネルギ回収、発電の両方において幅広い用途を有する。
【0007】
ガス化プロセスにおいて、通常、空気、水蒸気、CO、純粋O、又はそれらの混合物から選択される酸化剤の存在下で、炭素質原料の熱化学変換が行われる。得られたガス生成物の発熱量の範囲は、使用される酸化剤に依存する。
【0008】
これに加えて、ガス化プロセスは、HのHOへの完全な酸化及びCOのCOへの完全な酸化を制限する条件下で進行する。当該プロセスにおいて生じる主な化学反応のいくつかは以下のとおりである。
燃焼: C+nO=nCO
部分酸化: C=nCO+
メタン生成: C+2nH=nCH
シフト反応、ガス/水: CO+HO=CO+H
メタン生成‐CO: CO+3H=CH+H
水蒸気改質: C+HO=nCO+(n+)H
メタンの乾式改質: CH+CO=2CO+2H
【0009】
炭素質原料の変換反応は、ガス化装置と呼ばれるリアクタの中で行われる。通常、使用されるガス化装置は、固定床、ドラッグ床、又は流動床である。
【0010】
そのような固体炭素質原料は、揮発性成分が少なく、そのためそれの燃焼を困難にするので、反応は、典型的な高温で、1,200℃から1,600℃までの間の範囲において。
【0011】
900℃未満等のより温和な温度条件下で変換を達成するために、プロセスにおいて触媒を使用することが可能であり、それによって、エネルギ消費がより少なくなり及び/又は副産物の生成がより少なくなる。
【0012】
中国特許出願公開第102417835号明細書は、水素が豊富なガスを得るために石油コークスと触媒の混合物をガス化するためのプロセスを開示している。とりわけ、炭酸カリウム、硝酸カリウム、酢酸カリウム等の従来のカリウム触媒を使用することができる。
【0013】
しかしながら、混合物が中国の文献で明らかにされたガス化プロセスにおいてガス化される前に、105℃と110℃の間で乾燥プロセスを経る必要がある。これに加えて、ガス化残渣に存在する可溶性塩の触媒が、水溶解法によって回収できることが言及されている。
【0014】
米国特許出願公開第2015/299588号明細書は、石油コークス、石炭及びアルカリ金属源を含むガス化触媒の混合物の蒸気の存在下でのガス化プロセスを開示している。
【0015】
しかしながら、その混合物のガス化が起こる前に、米国の文献に記載されている触媒は、最初に溶液の形態で石炭に浸透させられ、ろ過工程、乾燥工程及びそれに続くコークスとの混合工程を経る。
【0016】
このように、ガス化プロセスにおいて大幅な収率を達成するために、前述の文献において明らかにされた触媒は、炭素質原料を覆う、その接触面積を増大させるための事前の調整工程及び/又は残渣を分離するさらなる工程を経る必要があることが分かる。
【0017】
ナノ材料を使用することは、ガス化される固体原料を覆う触媒の接触面を増大するための代替手段であり、変換プロセスにおいてより良い結果が得られることを意味する。
【0018】
中国特許出願公開第104741138号明細書は、200m/g乃至600m/gの間の比表面積を有するリンーアルミニウムーシリカの活性メソポーラスナノ材料を含む触媒組成物を開示している。当該組成物は、オイルの重質留分に適用することが可能である。
【0019】
しかしながら、前述の中国の特許文献の触媒組成物において使用されているナノ材料は、石油とは異なる化学資源を有しており、そのため、プロセスの最後でより多くの残渣の生成を引き起こすことになるか又は反応の後工程においてナノ材料を分離することが必要となる可能性がある。
【0020】
この意味において、本発明の目的は、燃料価値が低い炭素質原料のガス化をより緩やかな条件下で可能にする触媒混合物を提供することである。本発明の触媒混合物は、事前の調整工程の必要性又は生成物と生成された副産物とをさらに分離する必要性を回避する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の主たる目的は、化石由来の燃料としての低価値の炭素質原料とナノ触媒とを含む混合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
これら課題を解決するために、本発明は混合物を提供する。前記混合物は、
1重量%から50重量%までのナノ触媒であって、前記ナノ触媒の総重量に基づき、99.99重量%と80重量%との間の含有量のカーボンナノ材料と、0.01重量%と20重量%との間の含有量の少なくとも1つのアルカリ金属とから構成され、前記ナノ触媒の比表面積が400m/gと1,300m/gとの間で変動するナノ触媒と、
石油コークス、石炭、石油の残留重質留分、又はそれらの混合物から選択される99重量%から50重量%までの化石由来の炭素質原料と、
を備える。
【0023】
本発明は、ガス生成物を得るために本明細書中に説明されている混合物をガス化するプロセスも提供する。
【0024】
プロセスは、混合物をガス化装置に導入する工程と、空気、純粋酸素、二酸化炭素、水蒸気又はそれらの混合体から選択される酸化剤の存在下で、200℃と1,300℃との間の範囲の温度まで混合物を加熱する工程と、H、CO、CO、CHを含むガス生成物を得る工程とを備える。
【0025】
下記の詳細な説明は添付図面に関する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、0%乃至50%の範囲の石油コークスを含むサンプルの温度変化(℃)に応じた変換率(%)のグラフを示す。
図2図2は、石油コークスを含むサンプルの700℃の温度での変換率(%)のグラフを示す。
図3図3は、石油コークスを含むサンプルの800℃の温度での変換率(%)のグラフを示す。
図4図4は、石油コークスを含むサンプルの900℃での変換率(%)のグラフを示す。
図5図5は、0%乃至100%の範囲の石油コークスを含むサンプルの温度変化(℃)に応じた変換率(%)のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、燃料として低価値の化石由来の炭素質原料とナノ触媒とを含む混合物に関する。混合物は、混合物の総重量に基づき、1重量%から50重量%までのナノ触媒と99重量%から50重量%までの炭素質原料とを含む。
【0028】
本発明の混合物に使用されるナノ触媒は、少なくとも1つのアルカリ金属を含むカーボンナノ材料からなる。
【0029】
ナノ触媒の総重量に基づき、カーボンナノ材料は、99.99重量%と80重量%との間の含有量で存在し、少なくとも1つのアルカリ金属は、0.01重量%と20重量%との間の含有量で存在する。好適には、カーボンナノ材料は、99.99重量%と95重量%との間の含有量で、また少なくとも1つのアルカリ金属は、0.01重量%と5重量%との間の含有量でナノ触媒中に存在する。
【0030】
本明細書中に説明されている混合物中のナノ触媒の比表面積は、400m/gより大きく、400m/gと1,300m/gとの間の範囲にわたる。好適には、ナノ触媒の比表面積は、500m/gと800m/gとの間である。
【0031】
本明細書中に説明されている本発明のナノ触媒中に存在するカーボンナノ材料は、炭素源としての石油留分に由来し、従来技術で既に説明されている通常のプロセスを通じて得ることができる。カーボンナノ材料は、ナノスフィア、ナノフィラメント、ナノチューブ、又はグラフェンから選択される。
【0032】
本発明の好適な実施形態において、参照により組み込まれているPI0806065‐7に説明されているプロセスに従ってオイルの重質留分から得られるカーボンナノスフィア又はカーボンナノフィラメントがナノ触媒において用いられる。
【0033】
カーボンナノ材料は、重縮合芳香環系で構成される領域である、ナノ触媒の比表面積全体にわたって現れる。これらの領域は、ガス化プロセス中、反応媒体中に分散している炭素質原料の芳香族構造を有するπ‐π型の誘引系の分子間相互作用をもたらすことができる。
【0034】
上記の分子間相互作用により、これらの芳香族構造とナノ触媒の表面上に存在するアル
カリ金属の触媒部位との接触を最適化することが可能となり、ガス化される炭素質原料に
対するより良い変換結果を達成することが可能となる。
【0035】
本発明のナノ触媒において任意のアルカリ金属を使用することができる。好適な実施形態において、少なくとも1つのアルカリ金属がナトリウム、カリウム、ルビジウム、及びセシウムから選択される。最も好適にはカリウムが使用される。
【0036】
このように、混合物中に存在するナノ触媒は、カーボンナノ材料の大きな比表面積とガス化反応に好ましいアルカリ金属の触媒部位の存在とを結びつける。
【0037】
触媒混合物中に存在する炭素質原料は、石油コークス、石炭又はそれらの混合物から選択される。好適には、石油コークスが炭素質原料として用いられる。
【0038】
本発明は、本明細書中に説明されている触媒混合物をガス化するためのプロセスも提供している。
【0039】
本プロセスは、以下の工程、すなわち、
ガス化装置中に触媒混合物を導入する工程と、
空気、純粋酸素、二酸化炭素、水蒸気又はそれらの混合物から選択された酸化剤の存在下で、200℃と1,300℃との間の温度範囲まで混合物を加熱する工程と、
、CO、CO、CHを含むガス生成物を得る工程と、
を備える。
【0040】
好適には、本プロセスの加熱工程で用いられる温度範囲は、900℃と1,200℃との間の範囲にわたる。
【0041】
本発明と関連して、用語「ガス化装置(gasifier)」は、固定床ガス化装置、流動床ガス化装置、又は間接ガス化装置等の従来技術において存在する任意の型のガス化装置を指す。
【0042】
本明細書中に説明されているガス化プロセスを実施する方法において、得られたガス生成物は、より低い割合で、炭化水素化合物をさらに含む。
【0043】
代替実施形態において、酸化剤は、希ガス等の不活性ガスで希釈することが可能である。
【0044】
先行技術に説明されている従来のプロセスと比較した場合、本発明のプロセスは、同じ温度でより大きな変換を達成することができるか、又はさらに、より低い温度で同様な変換を達成することができる。
【0045】
このように、使用されるナノ触媒が炭素質原料と同じ化学的性質を有するので、本明細書中に開示されているガス化プロセスにより、残渣の生成をより少なくすることが可能になることに加えて、より大きなエネルギ利得が可能になる。
【0046】
以下の説明は、本発明の好適な実施形態から開始される。当業者には明白であるように、本発明は、特に、これらの実施形態に限定されるものではない。
実施例
【0047】
本明細書中に説明されている触媒混合物を用いて、本発明のガス化プロセスについて3つの試験を実施した。2つの比較試験も実行し、一方は従来の材料(本明細書では不活性物質と呼ぶ)を用い、他方はナノ触媒を用いなかった(純粋な石油コークスのみ)。
試験1-石油コークスと不活性物質50%とを有するガス化プロセス
【0048】
石油コークスを含むサンプルを、BETにより測定された約2m/gの比表面積を有する市販のアルファアルミナ(以下、不活性物質と呼ぶ)と等量で混合した。
【0049】
不活性物質50%とコークス50%のサンプルを合成空気(19.4%)、ヘリウム(77.6%)、及び水蒸気(3%)のガス混合体の流れの中で加熱したが、後者は、24℃に維持された飽和器により供給した。使用した温度範囲は、10℃/分の速度で50℃から1,200℃までであった。
試験2-ナノ触媒とコークス50%とを有するガス化プロセス
【0050】
試験したサンプルは、石油コークスと本発明のナノ触媒との触媒混合物であった。試験したナノ触媒中に存在するカーボンナノ材料は、ナノスフィアの形態である。
【0051】
サンプルを、合成空気(19.4%)、ヘリウム(77.6%)、及び水蒸気(3%)のガス混合体の流れの中で加熱したが、後者は、24℃に維持された飽和器により供給した。使用した温度範囲は、10℃/分の速度で50℃から1,200℃までであった。
試験3-ナノ触媒25%とコークス75%とを有するガス化プロセス
【0052】
試験したサンプルは、石油コークス75%とナノ触媒25%とを含む触媒混合物であった。試験したナノ触媒中に存在するカーボンナノ材料は、ナノスフィアの形態である。
【0053】
サンプルを、合成空気(19.4%)、ヘリウム(77.6%)、及び水蒸気(3%)のガス混合体の流れの中で加熱したが、後者は、24℃に維持された飽和器により供給した。使用した温度範囲は、10℃/分の速度で50℃から1,200℃までであった。
試験4-ナノ触媒12.5%とコークス87.5%とを有するガス化プロセス
【0054】
試験したサンプルは、石油コークス87.5%とナノ触媒12.5%とを含む触媒混合物であった。試験したナノ触媒中に存在するカーボンナノ材料は、ナノスフィアの形態である。
【0055】
サンプルを、合成空気(19.4%)、ヘリウム(77.6%)、及び水蒸気(3%)のガス混合体の流れの中で加熱したが、後者は、24℃に維持された飽和器により供給した。使用した温度範囲は、10℃/分の速度で50℃から1,200℃までであった。
試験5-純粋コークス100%を有するガス化プロセス
【0056】
試験したサンプルは純粋なコークスで、触媒は全く存在しなかった。サンプルを、合成空気(19.4%)、ヘリウム(77.6%)、及び水蒸気(3%)のガス混合体の流れの中で加熱したが、後者は、24℃に維持された飽和器により供給した。使用した温度範囲は、10℃/分の速度で50℃から1,200℃までであった。
比較結果
【0057】
最初に、サンプルの変換率50%値を考察したが、当該変換率はTGAでの質量損失により測定した。
【0058】
図1において、様々な割合でカーボンナノスフィアを含むナノ触媒の存在により、試験4においては400℃から、試験3においては380℃から、及び試験2においては200℃からより大きな変換率がもたらされることが分かる。
【0059】
これに加えて、図1において、試験2中では917℃の温度で、試験3及び試験4中では970℃近くで、並びに試験1では1,137℃の温度でのみサンプルの変換率50%値に到達したことがわかる。
【0060】
次に、試験2の同じ変換率を達成するためには、コークスと不活性物質のサンプルを用いたガス化プロセスの温度を220℃高くする必要があったことが確認された。
【0061】
このように、試験2のガス化プロセスがより低い温度で起こることにより、稼働費用の低減に加えて、プロセスに対するエネルギ供給の節約がもたらされることが明らかになった。
【0062】
図2図3、及び図4は、それぞれ、試験1乃至5に応じた、700℃、800℃及び900℃の温度におけるサンプルの変換率を示す。
【0063】
試験1乃至5によると、サンプルの変換率は、プロセス温度が高くなるほど大きくなることを示している。900℃において(図4)、試験サンプル2の47%が変換され、試験1のサンプルの33%のみが変換されたことを示している。
【0064】
評価したすべての温度において、試験2(ナノ触媒50%と石油コークス50%とを有する触媒混合物のサンプル)が最も高い変換率を示すことも示している。
【0065】
同様に、ナノ触媒をより小さい割合で使用した試験3及び試験4が、評価した温度において、試験2で得られた結果に近いサンプル変換値を示すことを示している。
【0066】
図5において、1,200℃の温度における試験5のサンプルの最大変換率が63%のみであることを示している。
【0067】
その同じ温度において、試験2のサンプルの変換率が98%であること、つまり、コークスと割合が50%のナノ触媒とを有する触媒混合物が、H、CO、CO、CHを含むガス生成物にほとんどすべて変換されたことを示している。従って、ガス化プロセスにおける残渣の形成を最小限にしている。
【0068】
1,200℃において試験3及び試験4により達成された最大変換率が、それぞれ、90%と80%とであることも示している。
【0069】
従って、本明細書中に説明されている触媒混合物を使用しないプロセスと比較して、本発明に従うガス化プロセスにより、同じ温度でより大きな変換率が得られるか、又はさらに、より低い温度で同じ変換率が得られることを実証することができた。
【0070】
これまでのところ本発明の目的について行ってきた説明は、1つの可能な実施形態又は複数の可能な実施形態としてのみ考察されているものとし、その中で説明されているいかなる特性も、理解を容易にするために記載されたものであるとしてのみ理解されるものとする。
【0071】
従って、本願の保護の範囲を含むいくつかの変形が可能であり、本発明が上記の特定の構成/実施形態に限定されないことを強調する。
図1
図2
図3
図4
図5