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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】風力タービン発電機のロック機構
(51)【国際特許分類】
   F03D 80/50 20160101AFI20240219BHJP
   F03D 80/80 20160101ALI20240219BHJP
【FI】
F03D80/50
F03D80/80
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2021540261
(86)(22)【出願日】2020-01-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-09
(86)【国際出願番号】 DK2020050006
(87)【国際公開番号】W WO2020143889
(87)【国際公開日】2020-07-16
【審査請求日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】62/790,565
(32)【優先日】2019-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】PA201970068
(32)【優先日】2019-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】514130633
【氏名又は名称】ヴェスタス ウィンド システムズ エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107401
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 誠一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120064
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 孝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100182257
【弁理士】
【氏名又は名称】川内 英主
(74)【代理人】
【識別番号】100202119
【弁理士】
【氏名又は名称】岩附 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】ギュンデュツ,ムスタファ
(72)【発明者】
【氏名】マニク,ヘンリック ザー
(72)【発明者】
【氏名】マイネカット,ウルリヒ
(72)【発明者】
【氏名】モンジュ,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】マーシン,ジャノタ
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/108506(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0021816(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第2590301(EP,A1)
【文献】特開2012-085388(JP,A)
【文献】特開2012-139081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 80/50
F03D 80/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力タービン(1)のための発電機(24)であって、該発電機(24)は、ローターアセンブリ、ステーター、及び半径方向ロック機構を備え、該ローターアセンブリは、
- 回転軸、及びローター(32)の軸方向端部に位置する端面を有するローター(32)であって、該端面に配置された少なくとも一つのロック係合部(86)を含むローター(32)と、
- 軸方向外側に配置され、かつ前記端面に少なくとも部分的に隣接して配置された端部シールド(90)であって、前記ローター(32)の前記端面へのアクセスを可能にする少なくとも一つの開口部を含む、端部シールド(90)と、
- 前記端部シールド(90)の前記少なくとも一つの開口部を部分的に覆うように構成された取り外し可能なブロック(82)、及び該取り外し可能なブロック(82)を前記少なくとも一つのロック係合部(86)に係合させるローター係合具(84)を有する少なくとも一つの軸方向ロック(80)を含む軸方向ロック機構と、を備え、
前記軸方向ロック機構は、前記ローターアセンブリを軸方向ロック構成と軸方向ロック解除構成との間でシフトさせるように構成され、
- 前記軸方向ロック構成では、前記少なくとも一つの軸方向ロック(80)の前記取り外し可能なブロック(82)が前記端部シールド(90)に対して配置され、それによって前記少なくとも一つの開口部を少なくとも部分的に覆い、一方で、前記ローター係合具(84)が前記取り外し可能なブロック(82)を前記少なくとも一つのロック係合部(86)と係合させ、前記軸方向ロック(80)が前記ローター(32)の軸方向移動に抵抗し、
- 前記軸方向ロック解除構成では、前記取り外し可能なブロック(82)及び前記ローター係合具(84)は、前記ローター(32)が少なくとも一つの軸方向に移動可能であるように、前記端部シールド(90)の前記開口部から取り外され、
前記半径方向ロック機構は複数の半径方向ロック(60)を備え、該半径方向ロック(60)は、
- 前記ステーターに連結された固定部分(70)と、
- 前記固定部分(70)に対して移動し、かつ前記回転軸に対して半径方向に移動するように構成された可動長形部分(72)と、を備え、
前記半径方向ロック(60)は、前記発電機(24)を、半径方向ロック構成と半径方向ロック解除構成との間でシフトさせるように構成され、
- 前記半径方向ロック構成では、前記ローター(32)の半径方向の移動に抵抗するように、前記半径方向ロック(60)の前記可動長形部分(72)が、前記ローター(32)の外面に接触し、かつそれぞれの固定部分(70)に連結され、
- 前記半径方向ロック解除構成では、前記半径方向ロック(60)のうちの少なくとも一つの前記可動長形部分(72)は、前記ローター(32)が少なくとも一つの半径方向に移動可能となるように、前記ローター(32)の外面に接触しない、発電機(24)。
【請求項2】
前記発電機(24)は、ロック構成とロック解除構成との間でシフトするようにさらに構成され、
- 前記ロック構成では、前記発電機(24)は前記半径方向ロック構成、及び前記軸方向ロック構成にあり、
- 前記ロック解除構成では、前記発電機(24)は、前記半径方向ロック解除構成及び/又は前記軸方向ロック解除構成にある、請求項1に記載の発電機(24)。
【請求項3】
風力タービン(1)のための発電機(24)であって、該発電機(24)は、回転軸を有するローター(32)と、ステーターと、半径方向ロック機構とを備え、該半径方向ロック機構は複数の半径方向ロック(60)を備え、該半径方向ロック(60)は、
- 前記ステーターに連結された固定部分(70)と、
- 前記固定部分(70)に対して移動し、かつ前記回転軸に対して半径方向に移動するように構成された可動長形部分(72)と、を備え、
前記半径方向ロック(60)は、前記発電機(24)を、半径方向ロック構成と半径方向ロック解除構成との間でシフトさせるように構成され、
- 前記半径方向ロック構成では、前記ローター(32)の半径方向の移動に抵抗するように、前記半径方向ロック(60)の前記可動長形部分(72)が、前記ローター(32)の外面に接触し、かつそれぞれの固定部分(70)に連結され、
- 前記半径方向ロック解除構成では、前記半径方向ロック(60)のうちの少なくとも一つの前記可動長形部分(72)は、前記ローター(32)が少なくとも一つの半径方向に移動可能となるように前記ローター(32)の外面に接触しない、発電機(24)。
【請求項4】
前記複数の半径方向ロック(60)は、少なくとも前記発電機(24)が前記半径方向ロック構成にあるときに、前記半径方向ロック(60)の前記可動長形部分(72)が、前記ステーターの二つの隣接する巻線(38)の間に延在するように配置される、請求項3に記載の発電機(24)。
【請求項5】
少なくとも前記発電機(24)が前記半径方向ロック構成にあるとき、前記半径方向ロック(60)の前記可動長形部分(72)は、前記ステーターの二つの隣接する巻線(38)のいずれにも接触せずに、前記ステーターの該二つの隣接する巻線(38)の間に延在する、請求項4に記載の発電機(24)。
【請求項6】
前記複数の半径方向ロック(60)が、複数の対向する対として配置され、該複数の対向する対のうちの一つの前記半径方向ロック(60)は、前記ローター(32)の前記回転軸に対して、実質的に等しい軸方向位置に配置され、かつ互いに実質的に直径方向に対向するように配置される、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の発電機(24)。
【請求項7】
前記複数の半径方向ロック(60)のうちの少なくとも一つは、前記ローター(32)の駆動端(62)に配置され、前記複数の半径方向ロック(60)のうちの少なくとも一つは、前記ローター(32)の非駆動端(64)に配置され、該非駆動端(64)は、使用時に、風力タービンパワートレインとは反対の方向を向いている、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の発電機(24)。
【請求項8】
前記発電機(24)のハウジング(100)は実質的に直方体形状であり、前記複数の半径方向ロック(60)は、それぞれの半径方向ロック(60)を前記半径方向ロック構成と前記半径方向ロック解除構成との間でシフトさせるために、軸方向に沿って延在する前記ハウジング(100)の少なくとも一つの面を介して、前記半径方向ロック(60)へのアクセスが可能となるように配置される、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の発電機(24)。
【請求項9】
前記ハウジング(100)は複数のロックアクセスキャビティを備え、該ロックアクセスキャビティは、前記ハウジング(100)の外側からそれぞれの前記半径方向ロック(60)の前記長形部分(72)へのアクセスを可能にするように位置決めされる、請求項8に記載の発電機(24)。
【請求項10】
前記複数の半径方向ロック(60)は、実質的に等しい軸方向位置において隣接する半径方向ロック(60)の対として配置され、かつ前記隣接する半径方向ロック(60)の対における両方の前記隣接する半径方向ロック(60)は、前記ハウジング(100)の同一の面からアクセス可能である、請求項8又は9に記載の発電機(24)。
【請求項11】
隣接する半径方向ロック(60)の隣接する二つの対は、隣接する半径方向ロック(60)の両方の隣接する対が、前記直方体のハウジング(100)の同一の面からアクセス可能であるように配置される、請求項10に記載の発電機(24)。
【請求項12】
風力タービン(1)のための発電機(24)であって、該発電機はローターアセンブリを備え、該ローターアセンブリは、
- 回転軸と、ローター(32)の軸方向端部に位置する端面とを有するローター(32)であって、該端面に配置された少なくとも一つのロック係合部(86)を含むローター(32)と、
- 軸方向外側に配置され、かつ少なくとも部分的に前記端面に隣接して配置された端部シールド(90)であって、前記ローター(32)の前記端面へのアクセスを可能にする少なくとも一つの開口部を含む、端部シールドと、
- 前記端部シールド(90)の前記少なくとも一つの開口部を部分的に覆うように構成された取り外し可能なブロック(82)、及び該取り外し可能なブロック(82)を少なくとも一つのロック係合部(86)に係合させるローター係合具(84)を有する少なくとも一つの軸方向ロック(80)を含む軸方向ロック機構と、を備え
前記軸方向ロック機構は、前記ローターアセンブリを軸方向ロック構成と軸方向ロック解除構成との間でシフトさせるように構成され、
- 軸方向ロック構成では、前記少なくとも一つの軸方向ロック(80)の前記取り外し可能なブロック(82)が前記端部シールド(90)に対して配置され、それによって前記少なくとも一つの開口部を少なくとも部分的に覆い、一方、前記ローター係合具(84)が、前記取り外し可能なブロック(82)を前記少なくとも一つのロック係合部(86)と係合させて、前記軸方向ロック(80)が前記ローター(32)の軸方向の移動に抵抗し、
- 軸方向ロック解除構成では、前記取り外し可能なブロック(82)及び前記ローター係合具(84)は、前記ローター(32)が少なくとも一つの軸方向に移動可能であるように、前記端部シールド(90)の前記開口部から取り外される、発電機。
【請求項13】
前記ローター(32)へのアクセスを可能にする前記開口部は、前記ローターアセンブリの非駆動端(64)に配置され、該非駆動端(64)は、使用時に、風力タービンパワートレインとは反対の方向を向いている、請求項12に記載の発電機(24)。
【請求項14】
前記ローター(32)は複数の前記ロック係合部(86)を備える、請求項12又は13に記載の発電機(24)。
【請求項15】
前記端部シールド(90)は、前記ローター(32)の前記端面へのアクセスを可能にする複数の前記開口部を備える、請求項12乃至14のいずれか一項に記載の発電機(24)。
【請求項16】
- 前記ローター(32)は、複数の前記ロック係合部(86)を含み、前記端部シールド(90)は、前記ローター(32)の前記端面へのアクセスを可能にする複数の前記開口部を備え、前記軸方向ロック機構は、複数の前記軸方向ロック(80)を備え、
- 前記軸方向ロック構成では、各軸方向ロック(80)の前記取り外し可能なブロック(82)は、前記端部シールド(90)に対して配置され、それによって、前記複数の開口部のそれぞれ一つを少なくとも部分的に覆い、一方、それぞれの前記ローター係合具(84)が、前記取り外し可能なブロック(82)を前記複数のロック係合部(86)のそれぞれ一つと係合させ、前記軸方向ロック(80)が前記ローター(32)の軸方向の移動に抵抗する、請求項12又は13に記載の発電機(24)。
【請求項17】
前記複数のロック係合部(86)及び前記複数の開口部は、前記ローターアセンブリの一つ以上の内部構成部品から半径方向外側に配置され、その結果、前記ローターアセンブリがその軸方向ロック構成にあるときに、前記内部構成部品が前記ローター(32)アセンブリの外部からアクセス可能となる、請求項16に記載の発電機(24)。
【請求項18】
前記複数のロック係合部(86)及び前記複数の開口部は、使用時に前記ローターアセンブリに動作可能に連結されるギアボックス内の軸受カセットへの接続点から半径方向外側に位置し、その結果、前記軸受カセットは、前記ローターアセンブリがその軸方向ロック構成にあるときに、前記ローターアセンブリの外部からアクセス可能となる、請求項16に記載の発電機(24)。
【請求項19】
前記端部シールド(90)は四つの開口部を備え、二つの連続する開口部の中心は、前記回転軸に対して角度90°だけ角度的に離れている、請求項16に記載の発電機(24)。
【請求項20】
前記少なくとも一つのロック係合部(86)は、ねじ付きタイロッド端部を備え、前記軸方向ロック構成では、前記軸方向ロック(80)の前記ローター係合具(84)が、前記タイロッド端部にねじ嵌めされる、請求項12乃至19のいずれか一項に記載の発電機(24)。
【請求項21】
前記軸方向ロック(80)は、前記端部シールド(90)に対して移動し、かつ前記ローター(32)の前記回転軸に対して軸方向に移動するように構成されたプッシュピン(110)をさらに備え、前記ローターアセンブリの前記軸方向ロック構成では、前記プッシュピン(110)が、前記ローター(32)の前記端面に接触するように構成され、かつ、前記端部シールド(90)の方向における前記ローター(32)の軸方向の移動に抵抗するように、前記軸方向ロック(80)に連結される、請求項12乃至19のいずれか一項に記載の発電機(24)。
【請求項22】
請求項4乃至11に記載の前記半径方向ロック機構の特徴のいずれか及び/又は請求項13乃至21に記載の前記軸方向ロック機構の特徴のいずれかと組み合わせた請求項1又は2に記載の発電機(24)。
【請求項23】
請求項1乃至22のいずれか一項に記載の発電機(24)を含む、風力タービン(1)。
【請求項24】
風力タービン(1)のパワートレインから一つ以上のパワートレイン構成部品を取り外す又は保守する方法であって、前記パワートレインは、請求項1に記載の発電機(24)を含み、該方法は、
前記半径方向ロック機構を係合させることと、
前記軸方向ロック機構を係合させることと、
前記端部シールド(90)の中央開口部から一つ以上のパワートレイン構成部品を取り外す又は保守することと、を含む、方法。
【請求項25】
前記一つ以上のパワートレイン構成部品は、前記ローターアセンブリの一つ以上の内部構成部品を含む、請求項24に記載の一つ以上のパワートレイン構成部品を取り外す又は保守する方法。
【請求項26】
前記一つ以上のパワートレイン構成部品は、使用時に前記ローターアセンブリに動作可能に連結されるギアボックスの軸受カセットを含む、請求項24に記載の一つ以上のパワートレイン構成部品を取り外す又は保守する方法。
【請求項27】
前記一つ以上のパワートレイン構成部品は、迷走電流保護モジュールを含む、請求項24に記載の一つ以上のパワートレイン構成部品を取り外す又は整備する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力タービンのための発電機及び風力タービンのための発電機用ローターアセンブリに関する。具体的には、本発明は、風力タービンに配置された発電機及びローターアセンブリに用いられるロック機構に関する。
【背景技術】
【0002】
風力タービンは、多数のローターブレードを備えた大型のローターを使って、風からの運動エネルギーを電気的なエネルギーに変換する。典型的な水平軸風力タービン(HAWT)は、タワーと、タワーの頂部におけるナセルと、ナセルに取り付けられたローターハブと、ローターハブに連結された複数の風力タービンローターブレードとを備える。風の方向に応じて、ナセル及びローターのブレードは、ナセルを回転させるヨーシステム及びブレードを回転させるピッチシステムによって最適な方向に回転及び方向付けられる。
【0003】
ナセルには、例えば、発電機、ギアボックス、ドライブトレイン、ローターブレーキアセンブリなどの風力タービンの多くの機能部品や、ローターの機械エネルギーを電気的なエネルギーに変換して電力網に供給するための変換装置が収容される。ギアボックスは低速主軸の回転速度を上げ、ギアボックス出力軸を駆動する。次に、ギアボックス出力軸は発電機を駆動し、発電機はギアボックス出力軸の回転を電気に変換する。発電機によって生成された電気は、例えば電力網配電システムなどの適切な消費者に供給される前に、必要に応じて変換され得る。ギアボックスを使用しない、いわゆる「直接駆動(direct drive)」風力タービンも知られている。直接駆動風力タービンでは、発電機はローターに接続されたシャフトで直接駆動される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
風力タービンは通常、長期間の使用が意図されており、風力タービンの運転寿命はしばしば数十年に及ぶ。その結果、風力タービンの構成部品は使用によって劣化するため、その運転寿命の間に整備又は交換される必要があることが予想される。これは特に、発電機の電気・磁気部品と発電機の機械部品に当てはまる。
【0005】
風力タービンのナセルはしばしば地上から約100メートルの位置に建設されるので、ナセルに収容される構成部品(例えば、発電機やギアボックスなど)の整備を行うにはかなりの時間と労力と専門知識が必要になる。さらに、風力タービンの整備を行っている間は、非稼動であることが要求され、そのような整備時間は、風力タービンの動作に非効率の原因をもたらす。
【0006】
通常、発電機又はギアボックスの内部構成部品のこのような整備が必要な場合、修理又は交換される内部構成部品にアクセスするために、発電機及び/又はギアボックスの全体又は少なくとも実質的な部分を分解する必要がある。しかしながら、発電機及びギアボックスの内部構成部品の各々の劣化速度は、通常、変化し、その結果、全ての内部構成要素が同時に整備を必要とするわけではないと予想される。したがって、完全又は実質的な分解は、整備を必要としない内部構成部品へのアクセスを可能にすることを意味する。これにより、整備可能な構成部品が偶発的に破損する可能性がある。
【0007】
さらに、発電機及び/又はギアボックスの完全な又は実質的な解体は、必然的にかなりの時間を要し、その結果、風力タービンが操業不能となる長い期間につながる。これは、特に、発電機又はギアボックスの内部構成要素の実際の整備又は交換が比較的迅速に行われる場合には、特に非効率的であり得る。
【0008】
したがって、発電機及び/又はギアボックスの全体構造を維持しながら発電機及び/又はギアボックスの部品を分解することができることが有益である状況が存在する。上記のように、分解した部品は整備や交換が必要な場合があるが、残りの部品はそのままで構わない。
【0009】
さらに、発電機とギアボックスは、完全に組み立てられた後、輸送が必要となる場合がある。これは、風力タービンが最初に稼働し、完全に組み立てられた発電機とギアボックスをタワーの頂部まで持ち上げる必要がある場合である。発電機とギアボックスには、上記のような輸送中に損傷を受ける可能性のある内部構成部品が多数含まれている。したがって、輸送中にこれらの内部構成部品が損傷するリスクを最小限に抑えるシステムを提供する必要がある。これを確実にするような一つの方法は、発電機とギアボックスを完全に又は実質的に分解し、各要素を別々に輸送することであろう。しかしながら、上述のように、このような分解は、時間がかかり、非効率的であり得る。したがって、発電機及びギアボックスを完全に分解することを要求することなく、ナセルの構成要素に対する損傷のリスクを最小限にすることができるシステムを提供する必要がある。
【0010】
本発明の目的は、上述の一つ以上の問題を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様によれば、風力タービンのための発電機が提供される。発電機は、ローターアセンブリと、ステーターと、半径方向ロック機構とを備え、ローターアセンブリは、回転軸、及びローターの軸方向端部に位置する端面とを有するローターを備え、ローターは、端面に配置された少なくとも一つのロック係合部を含む。ローターアセンブリは、軸方向外側に配置され、かつ端面に少なくとも部分的に隣接して配置された端部シールドをさらに含み、端部シールドは、ローターの端面へのアクセスを可能にする少なくとも一つの開口部を含む。ローターアセンブリは、さらに、端部シールド(90)の少なくとも一つの開口部を部分的に覆うように構成された取り外し可能なブロック、及び取り外し可能なブロックを少なくとも一つのロック係合部に係合させるためのローター係合具を有する少なくとも一つの軸方向ロックを含む軸方向ロック機構を備える。軸方向ロック機構は、ローターアセンブリを軸方向ロック構成(axially locked configuration)と軸方向ロック解除構成(axially unlocked configuration)との間でシフトさせるように構成されている。軸方向ロック構成では、少なくとも一つの軸方向ロックの取り外し可能なブロックが端部シールドに対して配置され、それによって、少なくとも一つの開口部を少なくとも部分的に覆い、一方で、ローター係合具が取り外し可能なブロックを少なくとも一つのロック係合部と係合させ、その結果、軸方向ロックがローターの軸方向移動に抵抗する。軸方向ロック解除構成では、取り外し可能なブロック及びローター係合具は、ローターが少なくとも一つの軸方向に移動可能であるように、端部シールドの開口部から取り外される。半径方向ロック機構は、複数の半径方向ロックを備える。半径方向ロックは、ステーターに連結された固定部分と、固定部分に対して移動し、かつ回転軸に対して半径方向に移動するように構成された可動長形部分とを備える。半径方向ロックは、発電機を半径方向ロック構成(radially locked configuration)と半径方向ロック解除構成(radially unlocked configuration)との間でシフトさせるように構成される。半径方向ロック構成では、可動長形部分がローターの半径方向の動きに抵抗するように、半径方向ロックの可動長形部分が、ローターの外面に接触し、かつそれぞれの固定部分に連結される。半径方向ロック解除構成では、複数の半径方向ロックのうちの少なくとも一つの可動長形部分は、ローターが少なくとも一つの半径方向に移動可能であるように、ローターの外面に接触しない。
【0012】
半径方向ロックを係合させることで、ステーター及び発電機の他の静止部分に対するローターの半径方向の移動が防止される。半径方向ロックの係合は、長形部分をローターの外面に向かって移動させるだけで簡便に実現される。半径方向ロックを係合させることで、ローターは発電機の輸送中の損傷から保護される。さらに、ローターを半径方向にロックすることにより、例えば、ギアボックス出力軸を支持するローターの部品又は軸受カセットが保守又は一時的に取り外される整備作業を可能にすることができる。軸方向ロックを係合させることで、ステーター及び発電機の他の静止部品に対するローターの軸方向の移動が防止される。軸方向ロックの係合は、取り外し可能なブロックを端部シールドに対して配置し、ロックの係合具をローターの端面の係合部に係合させるだけで簡便に実現される。軸方向ロックをかけることで、ローターは発電機の輸送中の損傷から保護される。さらに、ローターを軸方向にロックすることにより、例えば、ギアボックス出力軸を支持するローターの部品又は軸受カセットが一時的に取り外される整備作業を可能にすることができる。
【0013】
本発明のこの態様の一実施形態において、発電機は、ロック構成とロック解除構成との間でシフトするように構成される。ロック構成では、発電機は、半径方向ロック構成及び半径方向ロック解除構成にある。ロック解除構成では、発電機は、半径方向ロック解除構成及び/又は軸方向ロック解除構成にある。
【0014】
本発明のさらなる態様によれば、風力タービン用の代替の発電機が提供される。発電機は、回転軸を有するローターと、ステーターと、半径方向ロック機構とを備え、半径方向ロック機構は、複数の半径方向ロックを備える。半径方向ロックは、ステーターに連結された固定部分と、固定部分に対して移動し、かつ回転軸に対して半径方向に移動するように構成された可動長形部分とを含む。半径方向ロックは、発電機を半径方向ロック構成と半径方向ロック解除構成との間でシフトさせるように構成される。半径方向ロック構成では、可動長形部分がローターの半径方向の動きに抵抗するように、半径方向ロックの可動長形部分が、ローターの外面に接触し、かつそれぞれの固定部分に連結される。半径方向ロック解除構成では、複数の半径方向ロックのうちの少なくとも一つの可動伸長部分は、ローターが少なくとも一つの半径方向に移動可能であるように、ローターの外面に接触しない。
【0015】
半径方向ロックを係合させることで、ステーター及び発電機の他の静止部分に対するローターの半径方向の移動が防止される。半径方向ロックの係合は、長形部分をローターの外面に向かって移動させるだけで簡便に実現される。半径方向ロックを係合させることで、ローターは発電機の輸送中の損傷から保護される。さらに、ローターを半径方向にロックすることにより、例えば、ギアボックス出力軸を支持するローターの部品又は軸受カセットが一時的に取り外される整備作業を可能にすることができる。
【0016】
好ましくは、複数の半径方向ロックは、少なくとも発電機が半径方向ロック構成にあるときに、半径方向ロックの可動長形部分が、ステーターの二つの隣接する巻線間に延在するように配置される。このような構成では、長形部分は、発電機の外部からアクセス可能にすることができ、ローターがステーターによって完全に包囲されている場合であっても、半径方向ロックの容易な係合及び係合解除を可能にする。ステーターへの損傷を防止するとともに、ステーター巻線による(例えば、熱膨張又は摩耗による)ロック機構の閉塞を回避するために、半径方向ロックの可動長形部分は、ステーターの二つの隣接する巻線のいずれにも接触せずに、ステーターの二つの隣接する巻線間に延在することが好ましい。
【0017】
一実施形態によると、複数の半径方向ロックは複数の対向する対として配置され、複数の対向する対のうちの一つの半径方向ロックは、ローターの回転軸に対して、実質的に等しい軸方向位置に配置され、かつ互いに実質的に直径方向に対向するように配置される。このような対のうちの二つだけで、全ての半径方向への移動が防止され得る。
【0018】
設置を容易にし、ステーターコアとの干渉を避けるために、複数の半径方向ロックのうちの少なくとも一つがローターの駆動端に配置され、複数の半径方向ロックのうちの少なくとも一つがローターの非駆動端に配置されてもよく、非駆動端は、使用時に風力タービンパワートレインとは反対の方向を向いている。また、両端に半径方向ロックを設ける場合、ローターの半径方向移動やローターの傾動をより一層防止することができる。
【0019】
発電機のハウジングが実質的に直方体形状である場合、複数の半径方向ロックは、それぞれの半径方向ロックを半径方向ロックと半径方向ロック解除構成との間でシフトさせるために、軸方向に沿って延在するハウジングの少なくとも一つの面を介して、半径方向ロックへのアクセスが可能になるように配置されてもよい。例えば、ハウジングは、複数のロックアクセスキャビティを備えることができ、ロックアクセスキャビティは、ハウジングの外側からそれぞれの半径方向ロックの長形部分へのアクセスを可能にするように位置決めされる。
【0020】
好ましい実施形態では、複数の半径方向ロックは、実質的に等しい軸方向位置において隣接する半径方向ロックの対として配置され、かつ隣接する半径方向ロックの対における隣接する両方の半径方向ロックは、ハウジングの同じ面からアクセス可能である。また、隣接する半径方向ロックの複数の対は、それらが直方体のハウジングの同じ面からアクセス可能となるように配置することができる。
【0021】
本発明のさらに別の態様によれば、ローターアセンブリを含む、風力タービンの代替の発電機が提供される。ローターアセンブリは、ローターと、端部シールドと、軸方向ロック機構とを含む。ローターは、回転軸と、ローターの軸方向端部に位置する端面とを有する。ローターは、端面に配置された少なくとも一つのロック係合部をさらに備える。端部シールドは、軸方向外側に配置され、かつ少なくとも部分的に端面に隣接して配置され、ローターの端面へのアクセスを可能にする少なくとも一つの開口部を含む。軸方向ロック機構は、端部シールドの少なくとも一つの開口部を部分的に覆うように構成された取り外し可能なブロックと、取り外し可能なブロックを少なくとも一つのロック係合部に係合させるローター係合具とを有する少なくとも一つの軸方向ロックを含む。軸方向ロック機構は、ローターアセンブリを軸方向ロック構成と軸方向ロック解除構成との間でシフトさせるように構成されている。軸方向ロック構成では、少なくとも一つの軸方向ロックの取り外し可能なブロックが、端部シールドに対して配置され、それによって、少なくとも一つの開口部を少なくとも部分的に覆い、一方で、ローター係合具が取り外し可能なブロックを少なくとも一つのロック係合部と係合させ、軸方向ロックがローターの軸方向移動に抵抗する。軸方向ロック解除構成では、取り外し可能なブロック及びローター係合具は、ローターが少なくとも一つの軸方向に移動可能であるように、端部シールドの開口部から取り外される。
【0022】
本発明に関連して、用語「ローターアセンブリ」は、発電機ローターと一つ以上の軸方向ロック機構との組合せに対して使用される。ローターをロックすることは、静的な基準フレームに対して行われるため、端部シールドもローターアセンブリの一部と見なされる。なお、完全に組み立てられた発電機では、端部シールドは、発電機ハウジング自体の一部であってもよく、又は、ハウジング内に含まれ、そこに固定的に取り付けられた別個の静止部品であってもよい。
【0023】
軸方向ロックを係合させることで、ステーター及び発電機の他の静止部品に対するローターの軸方向の動きが防止される。軸方向ロックの係合は、取り外し可能なブロックを端部シールドに対して配置し、ロックの係合具をローターの端面において係合部に係合させるだけで簡便に実現される。軸方向ロックを係合させることで、ローターは発電機の輸送中の損傷から保護される。さらに、ローターを軸方向にロックすることにより、例えば、ギアボックス出力軸を支持するローターの部品又は軸受カセットが一時的に取り外される整備作業を可能にすることができる。
【0024】
好ましくは、ローターへのアクセスを可能にする開口部は、ローターアセンブリの非駆動端に配置され、非駆動端は、使用時に風力タービンパワートレインとは反対の方向を向いている。発電機は風力タービンパワートレインの最後のユニットであるため、開口部は非駆動側から容易にアクセスでき、軸方向ロックの係合が容易になる。
【0025】
好ましくは、ローターは、複数のロック係合部を備える。さらに、端部シールドは、ローターの端面へのアクセスを可能にする複数の開口部を備えることができる。複数のロック係合部及び/又はローターハウジング開口部を有することは、ローターの回転位置に関係なく、ロック係合部が開口部を通してアクセス可能である可能性を増大させる。二つの隣接するロック係合部間の距離が、端部シールドの開口部又は複数の開口部の幅よりも小さい場合、各開口部には常に少なくとも一つのアクセス可能なロック係合部が存在する。
【0026】
ロック係合部及び開口部が、ローターアセンブリの一つ又は複数の内部構成部品から半径方向外側に配置される場合、ローターアセンブリが軸方向ロック構成にあるとき、ローターアセンブリのいくつかの内部構成要素はローターアセンブリの外部からアクセス可能であり、かつ取り外し可能である。同様に、ローターアセンブリが軸方向ロック構成にある場合、ギアボックス内のベリングカセット、及び迷走電流モジュールなどの中央に配置された他の部品は、ローターアセンブリの外部からアクセス可能であり、かつ取り外し可能であり得る。端部シールドの中央開口部により、保守される部品に到達したり、保守される部品を取り外したりすることができる。
【0027】
一実施形態では、端部シールドは四つの開口部を備え、二つの連続する開口部の中心は回転軸に対して角度90°だけ離れている。
【0028】
少なくとも一つのロック係合部は、ねじ付きのタイロッド端部を備えてもよく、軸方向ロック構成では、軸方向ロックのローター係合具がタイロッド端部にねじ嵌めされる。タイロッドは、ローターのコア構造の一部であってもよい。このような構成では、軸方向ロックは、ローターのコア構造と直接係合することができ、強固で安定した接続を提供し、それによって、ローターが、軸方向ロック構成において、軸方向に移動できないことを確実にする。
【0029】
一部の実施形態では、軸方向ロックは、端部シールドに対して移動し、かつローターの回転軸に対して軸方向に移動するように構成されたプッシュピンをさらに備えてもよい。ローターアセンブリの軸方向ロック構成では、プッシュピンは、ローターの端面に接触するように構成され、かつ、端部シールドの方向におけるローターの軸方向の移動にさらに抵抗するように、軸方向ロックに連結される。
【0030】
プッシュピンとローター係合工具の両方を設けることにより、両方のベクトル軸方向におけるローターの全軸方向ロックが確保される。これらの実施形態では、ローター係合具は、ローターのロック係合部と係合し、ローターを端部シールドに向かって効果的に「引っ張り」、端部シールドから離れるローターの軸方向の移動に抵抗する。同時に、プッシュピンは、ローターの端面に接触して、ローターを端部シールドから軸方向に効果的に「押す」ようにし、端部シールドに向かうローターの軸方向の移動に抵抗する。上述の二つの軸方向抵抗の組み合わせは、ローターを単一の軸方向位置に効果的にロックする。
【0031】
上述の様々な態様の実施形態に含まれる特徴は、適宜、他の態様の実施形態と組み合わせることができることを理解されたい。
【0032】
本発明のさらなる態様によれば、上記態様及び実施形態で説明したような風力タービンを含む発電機が提供される。
【0033】
本発明のさらなる態様によれば、一つ以上のパワートレイン構成部品を風力タービンのパワートレインから取り外し、又は保守するための方法が提供され、パワートレインは上述のような発電機を含む。この方法は、半径方向ロック機構を係合させることと、軸方向ロック機構を係合させることと、端部シールドの中央開口部を介して一つ以上のパワートレイン構成部品を取り外す又は保守することとを含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、一つ以上のパワートレイン構成部品は、ローターアセンブリの一つ以上の内部構成部品を含む。
【0035】
一実施形態によると、一つ以上のパワートレイン構成部品は、使用時にローターアセンブリに動作可能に連結されるギアボックスの軸受カセットを含む。
【0036】
さらなる実施形態では、一つ以上のパワートレイン構成部品は、迷走電流保護モジュールを含む。
【0037】
本発明をより容易に理解するために、一例として以下の添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】水平軸風力タービンの正面図である。
図2】典型的な水平軸風力タービンのナセル内に収容された主要機能構成部品の概略斜視図である。
図3】ギアボックスと連結した、図2のナセルの発電機の等角図である。
図4図3の発電機の断面図である。
図5】軸方向ロック構成かつ半径方向ロック解除構成における図2の発電機の断面等角図である。
図6】軸方向ロック構成かつ半径方向ロック解除構成における図2の発電機の側面図である。
図7】軸方向及び半径方向ロック構成における図2の発電機の断面等角図である。
図8】軸方向及び半径方向ロック構成における図2の発電機の側面図である。
図9】軸方向ロック構成における図2の発電機の一実施形態の断面等角図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
次に、本発明の具体的な実施形態について説明する。この実施形態では、特許請求の範囲に定義されている発明概念の完全な理解を提供するために、多数の特徴が詳細に説明される。しかしながら、当業者には、本発明が特定の詳細なしに実施され得ること、及び、いくつかの例では、本発明を不必要に不明瞭にしないために、周知の方法、技術及び構造が詳細に説明されていないことが明らかであろう。
【0040】
本発明の実施形態を適切な文脈に置くために、まず、本発明の実施形態によるロック機構を実施することができる典型的な水平軸風力タービン(HAWT)を示す図1を参照する。この特定の画像は陸上の風力タービンを示しているが、同等の特徴が洋上風力タービンにも見られることが理解されよう。さらに、風力タービンは「水平軸」と呼ばれるが、実際的な目的のためには、軸は、通常、強風の場合にローターブレードと風力タービンタワーとの間の接触を防止するためにわずかに傾いていることが当業者には理解されよう。
【0041】
風力タービン1は、タワー2と、タワー2の頂部にヨーシステムにより回転可能に連結されたナセル4と、ナセル4に取り付けられたローターハブ8と、ローターハブ8に連結された複数の風力タービンローターブレード10とを備える。ナセル4及びローターブレード10は、ヨーシステムによって回転され風上に向けられる。
【0042】
図2を参照すると、ナセル4は、ギアボックス22及び発電機24を含む発電アセンブリ20を含むことができる。主軸26は、主軸受ハウジング25によって支持され、ローターハブ8に接続されて駆動され、ギアボックス22に入力駆動を提供する。ギアボックス22は、図示しない内部ギアを介して低速主軸26の回転数を上昇させ、図示しないギアボックス出力軸を駆動する。次に、ギアボックス出力軸は発電機24を駆動し、発電機24はギアボックス出力軸の回転を電気に変換する。次いで、発電機24によって生成された電気は、例えば電気電力網配電システムのような適切な消費者に供給される前に、必要に応じて他の構成要素(図示せず)によって変換され得る。ギアボックスを使用しない、いわゆる「直接駆動」風力タービンも知られている。直接駆動風力タービンでは、発電機24は、ローターに連結されたシャフトによって直接駆動される。いわゆる「ピッチ管(pitch tube)」27は、発電機24及びギアボックス22の中心に沿って通り、ローターハブ8に油圧(hydraulic)及び/又は電気サービスを提供するように配置されてもよい。ギアボックス22及び発電機24は、一体化されたユニット内で一緒に連結され得る。図3に、発電機24の詳細を示す。図3では、ギアボックス22の最終段のハウジングも、発電機24のハウジングに連結されているように示されている。
【0043】
まず、ギアボックス22を参照すると、ギアボックスハウジングは、形状が概ね円筒状であり、その主要な回転軸が実質的に水平となるように配向されている。ギアボックスハウジングの円筒状の構成は、図示された実施形態で使用される特定のタイプのギアボックスによるものであり、これは、遊星式ギアボックスである。当業者であれば知っているように、遊星式ギアボックスは、中心の太陽歯車の周りに配置された一連の遊星歯車を含み、これらの遊星歯車は、環状リング歯車内に集合的に配置される。ギアボックスの歯車比は、リング歯車、遊星歯車、及び太陽歯車の歯数の比によって決まる。明確化のために、ギアボックスの詳細は、ギアボックスが本発明の主要な主題ではないので、ここではこれ以上詳述しない。他のギアボックス構成も使用できるが、現在は、遊星式ギアボックスが好ましいと考えられている。
【0044】
ギアボックス22の出力シャフトは、発電機24のローター32と接続する。このように、ギアボックス出力シャフトの主軸は、発電機24の回転軸を画定する。図4には、発電機24のみの断面図が示されている。図示の実施形態における発電機24は、ローター32を取り囲む外部ステーターを有するIPM(内部永久磁石)電気機械である。ステーターは、ステーター巻線38と、ステーターコア40と、ステーター巻線38及びステーターコア40を囲み支持するステーターフレームとを含む。しかしながら、本発明は特定のタイプのローター又はステーターに限定されないことに留意されたい。
【0045】
本発明の一実施形態では、発電機24の一部として含まれるようにそれぞれ構成され得る半径方向及び軸方向ロック機構が提供される。半径方向及び軸方向ロック機構は、発電機24が、それぞれ、半径方向ロック構成と半径方向ロック解除構成との間、及び軸方向ロック構成と軸方向ロック解除構成との間でシフトすることを可能にするために設けられる。半径方向ロック構成では、発電機24の回転軸に対するローター32の半径方向の移動が抵抗され、半径方向ロック解除構成では、ローター32は、少なくとも一つの半径方向に移動可能である。同様に、軸方向ロック構成では、発電機24の回転軸に対するローター32の軸方向の移動が抵抗され、軸方向ロック解除構成では、ローター32は少なくとも一つの軸方向に移動可能である。使用時に配置される半径方向及び軸方向ロック機構の例示的な実施形態を、図5~8を参照して以下により詳細に説明する。
【0046】
いくつかの実施形態において、発電機24はまた、全体的なロック構成とロック解除構成との間でシフトするように構成される。ロック構成では、発電機24は、半径方向及び軸方向の両方にロックされた構成となるように配置される。ロック解除構成では、発電機24は、半径方向及び/又は軸方向にロック解除された構成となるように配置される。
【0047】
発電機24では、(半径方向、軸方向、又はこれら二つの組み合わせの)ロック構成とロック解除構成の両方を有すると便利である。使用時には、ローター32は、軸方向及び半径方向の両方に移動することができる。使用時にこのような動きを制限することは、発電機24が最大効率で作動しないことを意味する可能性があり、ローター32の回転も制限される可能性があり、その結果、生成される電力が少なくなる。しかし、軸方向及び半径方向の移動の制限が有益であるシナリオもある。このような状況は、発電機24及び/又はナセル4全体がロケーション間で輸送される場合である。このような場合、ローター32の半径方向又は軸方向の移動は、ローター32自体又は外部ステーターなどの発電機24の構成部品に損傷を与える可能性がある。したがって、このような状況において、ローター32の軸方向及び半径方向の動きを制限することができることは有用である。ロック構成とロック解除構成とを切り替えることができると、輸送中の発電機24の損傷を防止することができるとともに、ローター32の使用時に発電機24の回転を制限しないことができる。
【0048】
さらに、本発明のいくつかの実施形態では、半径方向及び/又は軸方向ロックは、発電機24が(半径方向、軸方向、又はこれら二つの組み合わせの)ロック構成にあるときに、発電機24の構成部品にアクセスできるように、発電機24内に配置されることができる。これらのアクセス可能な構成部品は、その後、発電機24の全体構造を維持しながら、取り外したり、あるいは他の方法で整備したりすることができる。したがって、発電機24は、これらの構成要素を保守するために、実質的に分解される必要はない。端部シールドの中央開口部により、保守部品に到達したり、保守部品を取り外したりすることができる。これらの実施形態において取り外され得る構成部品の例は、迷走電流保護モジュール、ワッシャディスク、及びローターエクステンションを含む。さらに、半径方向ロック及び/又は軸方向ロックは、発電機24が(半径方向、軸方向、又はこれら二つの組み合わせの)ロック構成にあるときに、ロックされた発電機24を介してギアボックスの構成部品にアクセスできるように、発電機24内に配置されてもよい。そのような構成部品は、ギアボックスの一部である軸受カセット、温度及び振動センサを含むことができる。このようにして、発電機24を最初に取り外す必要なく、ギアボックスの部品を取り外し及び/又は保守することができる。
【0049】
ここで図5図8を参照すると、半径方向及び軸方向ロック機構を備えた発電機24の一実施形態における発電機24の一部の図が示されている。図5及び6は、半径方向ロック解除構成、且つ軸方向ロック構成の発電機24を示す。図7及び8は、半径方向ロック構成、且つ軸方向ロック構成の発電機24を示す。
【0050】
図5図8に示す半径方向ロック機構は、発電機24の周囲の様々な位置に配置された複数の半径方向ロック60を含む。図5では、一つの半径方向ロック60のみが示されており、図6から図8では、二つの半径方向ロック60が示されている。図6から図8において、一つの半径方向ロック60は、ローター32の駆動端62に配置され、一つの半径方向ロック60は、ローター32の非駆動端64に配置される。発電機24の非駆動端64は、使用時に風力タービン駆動系(パワートレイン)とは反対の方向を向いている端部と定義され、発電機24の駆動端62は、風力タービン駆動系に対向する端部と定義される。
【0051】
図6図8において、二つの半径方向ロック60は、二つの異なる軸方向位置に配置されているが、ローター32の回転軸に対して同じ角度位置を有している。本発明のいくつかの実施形態では、回転軸に対して異なる角度位置に配置された複数の半径方向ロック60を設けることができ、各半径方向ロック60は、二つの異なる軸方向位置のうちの一方に配置されることを理解されたい。複数の異なる角度位置に半径方向ロック60を含めることにより、ローター32の半径方向の移動をより多くの半径方向において制限することができる。半径方向ロック60の軸方向の位置決めが、ローター32の駆動端62及び非駆動端64にあるように示されているが、他の軸方向の位置も、同じ又は同様の形態の半径方向ロック60を使用する実施形態において使用することができることを理解されたい。
【0052】
図5図8に示される各半径方向ロック60は、固定部分70と可動長形部分72とを含む。これらの図において、固定部分70は、ステーターフレームの端部にボルト止めされたプレート又はブロックを含む。ブロックは、可動長形部分72が配置されるキャビティを備え、可動長形部分72はこのキャビティを通って移動するように構成される。可動長形部分72は、プレート又はブロックに対して移動するように構成されたプッシュピンを含む。また、プッシュピンは、発電機24の回転軸に対して半径方向に移動する。一部の実施形態では、長形部分72は、固定部分70を通るように構成されたボルトを含む。
【0053】
この実施形態では、発電機を半径方向ロック構成に配置するために、半径方向ロック60の各プッシュピンは、それぞれの半径方向ロック60のブロックを通ってローター32の外面と接触する位置に移動するように構成される。各プッシュピンが外部表面と接触すると、各プッシュピンは、特定の半径方向におけるローター32の半径方向移動に抵抗するように、それぞれの半径方向ロックのブロックに追加的に連結される。この連結は、プッシュピンがローター32の外面に接触すると、プッシュピンがばね機構を介して押され、ブロックに対して所定の位置にロックされるように構成されたばね負荷機構を備えるブロックによって達成することができる。次いで、このばね負荷機構は、発電機24が半径方向ロック解除構成にシフトされるときに、解除され得る。他の実施形態では、プッシュピンはねじ付きボルトを含むことができ、ブロックは相補的な態様でねじ付きとすることができる。ねじ付きボルトは、ローター32の外面に接触させるためにブロックにねじって取り付けられてもよい。これは、ドライバ、トルクレンチ、又は他の適当な手持ち工具を用いて達成することができる。次いで、ねじ嵌めは、ねじ切りされたボルトをブロックに連結するように作用し、特定の半径方向におけるローター32の動きに抵抗する。さらに別の実施形態では、プッシュピンは、その直径を貫通する穴を含んでもよく、プッシュピンがローター32の外面に接触すると、キーが当該穴及び固定部分70を通して挿入され、プッシュピンが固定部分70に対して適所に保持されるように構成される。
【0054】
複数の半径方向ロック60は、半径方向ロック機構が半径方向ロック構成にあるとき、ローターの動きがすべての半径方向において抵抗されるように、回転軸に対して角度的及び軸方向に位置決めされる。このような実施形態は、好ましくは、ローター32の駆動端62に配置された少なくとも三つの半径方向ロック60と、ローター32の非駆動端64に配置された少なくとも三つの半径方向ロック60とを備え、発電機24の各端における三つの半径方向ロック60の各々は、回転軸に対して120度の角度だけ離れている。代替実施形態では、発電機24の各端部にさらに半径方向ロック60を設けることができ、この場合、各半径方向ロック60間の角度間隔は120度未満である。そのような実施形態では、各連続する半径方向ロック60間の角度間隔は等しくなくてもよい。
【0055】
図7及び8は、ロータープッシュピンがローター32の外面と接触せず、ローター32が少なくとも一つの半径方向に移動可能である、発電機24の半径方向ロック解除構成を示す。図7及び図8は、図示された半径方向ロック60のプッシュピンが、ローター32の外面に接触し、それぞれの半径方向ロック60のブロックに連結される、発電機24の構成を示す。図7及び8は、発電機24の一部のみを図示し、したがって、いくつかの半径方向に関して半径方向の移動に抵抗することのみを可能にし得る、二つの半径方向ロック60のみが図示されることを理解されたい。完全な発電機24を示す完全な図では、ローター32の全ての半径方向への移動に対する抵抗を可能にする更なる半径方向ロック60が示されることが想定される。
【0056】
動作中、本発明の半径方向ロック機構は、各構成が必要とされるときに、図7及び8に示すような半径方向ロック解除構成から図7及び8に示すような半径方向ロック構成へ、及びその逆へとシフトすることができるように構成される。典型的には、半径方向ロック機構は、ローター32の内部構成部品へのアクセスが必要とされるときに、半径方向ロック構成にシフトされる。このようなアクセスは、ローター32の内部構成部品が整備を必要とする場合に必要とされ、ローター32を半径方向にロックすることによって、ユーザは、完全なローターを取り外す必要なく、これらの構成部品を取り外したり、あるいは修理したりすることができるように、これらの構成部品により容易にアクセスすることができる。設置された風力タービンについては、発電機24が静止するように減速されたとき、ローター32は、ロック解除された構成とロックされた構成との間でシフトされる。加えて、半径方向ロック機構は、発電機24及び/又はギアボックスが一つの位置から他へ移送されるときにも、半径方向ロック構成へシフトされる。輸送中にローターを半径方向にロックすることによって、発電機24及び/又はギアボックスが半径方向に自由に移動することを許された場合に起こり得るローターの構成部品の損傷を防ぐことができる。複数の半径方向ロック60が複数の異なる角度位置に設けられる実施形態では、そのような構成で複数の半径方向ロック60を設けることにより、ローターの半径方向の移動に起因して発電機24及び/又はギアボックスに生じる損傷のリスクを最小限に抑えながら、発電機24及び/又はギアボックスを複数の位置に移送することが可能となる。
【0057】
この実施形態では、半径方向ロック機構は、ローターの回転位置に関係なく、半径方向ロック解除構成と半径方向ロック構成との間でシフトするように構成される。したがって、これは、ロック解除構成とロック構成との間のシフトが必要とされるときに、ローター32を任意の回転位置で単に停止させることができ、半径方向ロック60の位置に特別に整列させる必要がないことを意味する。
【0058】
典型的には、ステーターは、電気的なエネルギーを生成するためにローター32の回転と共に使用される複数の巻線38を含む。本発明のいくつかの実施形態において、半径方向ロック機構の半径方向ロック60の少なくともいくつかは、発電機24が半径方向ロック構成にあるときに、使用される半径方向ロックの可動長形部分72がステーターの二つの隣接する巻線38間に延在するように配置される。そのような実施形態は、図7の断面図で明確に見ることができ、図7は、ローター32に向かって延在し、そのようなステーター巻線38の前方に接触する可動長形部分72を示す。また、可動長形部分72が二つの隣接するステーター巻線の間に延在するように、可動長形部分72の前に配置されるステーター巻線38(断面図には見えない)がさらに存在する。一部の実施形態では、半径方向ロック60は、発電機24が半径方向ロック構成にあるときに、半径方向ロック60の可動長形部分72とステーター巻線との間に接触がないように配置されてもよい。
【0059】
本発明の図示されていないいくつかの実施形態では、複数の半径方向ロック60を対向する対として配置することができる。そのような実施形態では、対向する対の半径方向ロックの各半径方向ロック60は、それらが発電機24に沿った実質的に等しい軸方向位置にあるが、ローター32に関して互いに直径方向に対向して位置するように配置される。これらの実施形態では、対向する対の各半径方向ロック60の位置決めは、互いに反対のベクトル方向へのローター32の半径方向の移動を防止するように作用する。発電機24に設けられた複数の対向する対の半径方向ロック60があってもよく、各対向する対は、他の対向する対に対する異なるベクトル方向におけるローター32の半径方向の移動を防止する。
【0060】
発電機24は、略直方体形状のハウジング100を備えることができる。これは、図5及び7では部分的に見えるが、図3及び4ではより明確に見える。このようなハウジング100が設けられている場合、半径方向ロック60は、ハウジング100の少なくとも一つの面を介して各半径方向ロック60へのアクセスが可能となるように、発電機24内に配置することができる。特に、半径方向ロックは、発電機24の軸方向に沿って延在する面のうちの少なくとも一つを介してアクセスが可能となるように構成することができる。ハウジング100の面を介して半径方向ロック60にアクセスすることにより、使用者は、半径方向ロック60の各々の可動長形部分72を移動させることができ、その結果、発電機24は、上述の実施形態に従って、半径方向ロック構成と半径方向ロック解除構成との間でシフトされ得る。
【0061】
さらなる実施形態では、複数の半径方向ロック60は、隣接する対として配置されてもよく、隣接する対の各半径方向ロック60は、実質的に等しい軸方向位置に配置され、隣接する対の半径方向ロック60の両方が、上述の実施形態に従って、ハウジング100の同じ面材からアクセス可能であるように配置されることができる。複数の半径方向ロック60は、ここで説明したように隣接する対と、上述した実施形態で説明したように対向する対との両方で同時に配置することができることを理解されたい。さらに、複数の隣接する対の半径方向ロック60が存在する実施形態では、二つの隣接する対の半径方向ロック60は、さらに、上述のような二つの隣接する対の各半径方向ロック60がハウジング100の同じ面からアクセス可能であるように配置されてもよい。このような配置は、地球の表面に最も近いハウジング100の面からアクセスされるように二つの対の隣接するロックが配置される場合に特に有益であり得る。これは、重力の影響により、この面の方向の半径方向の移動が他の面よりも大きくなることが予想されるためである。したがって、この方向への移動に抵抗する追加の半径方向ロックを設けることは、追加の半径方向移動を生じさせる際に重力の影響を打ち消すのに役立つ。
【0062】
図5及び7に示されるようないくつかの実施形態では、ハウジング100は、取り外し可能なアクセスカバー102を備えることができ、これは、取り外された場合、ユーザが複数の半径方向ロック60にアクセスすることを可能にする。別の実施形態では、ハウジング100は、複数のアクセスキャビティ(半径方向ロック60の各々に対して一つ)を備え、複数のアクセスキャビティがハウジング100の外側から複数の半径方向ロック60へのアクセスを可能にするように位置決めされてもよい。これらのキャビティの提供により、発電機24は、ハウジング100のいかなる部分も取り外されることなく、半径方向ロック構成と半径方向ロック解除構成との間でシフトすることができる。
【0063】
図5図8の実施形態に戻ると、ローター32の軸方向の移動を制限するために使用される軸方向ロック機構が示されている。ローター32のロックは、ある静的な基準フレームに対して行われるため、端部シールド90も定義される。しかしながら、完全に組み立てられた発電機24では、端部シールド90は、単に発電機ハウジング100自体の一部であってもよく、あるいは、そこに含まれ、そこに固定的に取り付けられた別個の静止部品であってもよいことに留意されたい。端部シールド90は軸方向外側に配置され、かつ少なくとも部分的に端面に隣接している。端部シールド90は中央開口部を備えていてもよく、この開口部を通って、保守される部品に到達したり、保守される部品を取り外したりすることができる。軸方向ロック機構は、軸方向ロック80を備える。軸方向ロック80は、各図においてローター32の非駆動端64に示されており、非駆動端64は、使用時に風力タービン駆動系(パワートレイン)とは反対の方向を向いている端部として定義される。非駆動端64において、ロックは、ロック及びロック解除のためにアクセスしやすくなる。しかしながら、他のパワートレインでは、一つ以上の軸方向ロックを駆動端62に取り付けることができる。手でアクセスできない場合、軸方向ロックは、場合によっては電気的又は機械的アクチュエータの助けを借りて、遠隔で切り替えることができる。一つの軸方向ロック80が図に示されているが、いくつかの実施形態では、ローター32は、複数の軸方向ロック80を備えることができることを理解されたい。
【0064】
軸方向ロック80は、ブロック82と、ブロック82が連結されるローター係合具84とを含む。ローター係合具84は、ローター32のロック係合部86と係合可能に構成され、ロック係合部86は、ローター32の軸方向端部の端面に配置されている。図5図8において、ロック係合部86はタイロッドの軸方向端部である。タイロッドは、ローター32の複数の磁気リングの各々を貫通して、複数の磁気リングの各々に連結され、ローター32の回転に伴って回転する。タイロッドは、典型的には、ローター32を構造的に支持するために使用される。本実施形態のローター32は、複数のタイロッドを含み、各タイロッドは、ロック係合部86として使用され得る。
【0065】
ローター係合具84とロック係合部86との間の係合は、任意の適切な連結機構によって可能にすることができる。例えば、図5図8に示すタイロッドの軸方向端部にねじが切られてもよく、ローター係合具84の一部は、タイロッドの軸方向端部のねじと相補的な態様でねじが切られたキャビティを備えてもよい。この例では、ローター係合具84とロック係合部86との係合は、二つの特徴部をねじってつなぐことによって可能になる。同様に、二つの特徴部をねじって外すと、連結を解除できる。
【0066】
他の実施形態では、ローター係合具84とロック係合部86との間の係合は、ローター係合具84及びロック係合部86の各々に二つの相補的な形状の嵌合部分を設けることによって可能にすることができ、ローター係合具が回転して二つの部分をロックされた構成にすることができるように構成される。係合を可能にするときは、二つの部分を接触させ、ローター係合具84を回転させて二つの部分を一緒にロックする。分離が必要な場合には、ローター係合具84を反対方向に回転させて、二つの部分を分離する。
【0067】
図5図8のローター32は、端部シールド90を含む。端部シールド90は、上述したように、ローター32の端面から軸方向外側に延在し、その一部に隣接するように配置される。端部シールド90は、ローター32を収容し、ローター32が回転する間、静止したままであるように構成される。
【0068】
端部シールド90は、少なくとも一つの開口部を含み、この開口部は、端部シールド90を取り外す必要なく、端部シールド90の外側からローター32の端面にアクセスすることを可能にする。一部の実施形態では、ローター32の端面へのアクセスが必要とされない場合、開口部は、取り外し可能なカバーで覆われてもよい。これは、動作中に塵又は他の破片がローター32に入るのを防止するために設けられてもよい。これらのカバーは、ローター32の端面にアクセスする必要がある場合には取り外す必要がある。開口部は、ローター係合具84のロック係合部86が開口部を軸方向に貫通し、ローター係合具84のブロック82部分が端部シールド90に対して確実に配置されるのに十分な大きさに構成される。いくつかの実施形態では、これは、ブロック82が開口部を通過できないように、開口部がブロック82よりも小さく構成されることを意味する。他の実施形態では、端部シールド90とブロックは、ブロック82を端部シールド90に確実に取り付けるために、相補的な取り付け手段を備えること(互いに引きつけて取り付けるように構成された磁気部分を備えるなど)ができる。上述のような開口部を含むことにより、ロック係合部86を軸方向ロック80に係合させることができると同時に、軸方向ロック80を端部シールド90に対して配置して固定することができる。
【0069】
一部の実施形態では、ブロック部分82は、ローター係合具84が開口部を軸方向に通過するときに、端部シールド90の開口部を覆うように構成されたプレートを備えることができる。これは、軸方向ロック80がローター32のロック係合部86に係合しているときに、塵埃又は他の破片がローター32に入るのを防止するために設けられてもよい。なお、ブロック部分82は、使用時に軸方向ロック80が端部シールド90に確実に取り付けられていれば、どのような構成であってもよい。
【0070】
図5図8の実施形態では、ローター32を軸方向ロック構成に配置するために、軸方向ロック80のローター係合具84が、端部シールド90の開口部を通って軸方向に挿入される。次いで、ローター係合具84は、上述の実施形態に従って、ローター32の端面上のロック係合部86と係合する。同時に、上述の実施形態に従って、軸方向ロック80のブロック部分82は、端部シールド90に固定される。軸方向ロック80が上述のように位置決めされると、ローター32は、端部シールド90に対して実質的に同じ相対軸方向位置に保持され、その結果、ローター32の軸方向移動は両方向において抵抗される。
【0071】
ローター32を軸方向ロック解除構成に配置するためには、ローター係合具84は、ローター係合具84がロック係合部86から外され、ブロック82及びローター係合具84の両方が端部シールド90の開口部から取り外されるように配置される。
【0072】
図5図8の各々は、ローター32の軸方向ロック構成を示しており、ローター係合具84は、ローター32のロック係合部86と係合しており、ブロック82は、ボルト締め機構を介して端部シールド90にしっかりと取り付けられている。端部シールド90の開口部は、図5図8では完全には見えないことが理解されるべきである。なぜならば、軸方向ロック80は、開口部を貫通して延在し、全体を覆うように示されているからである。軸方向ロック解除構成は図には示されていないが、このような構成は、軸方向ロックと端部シールド90又はロック係合部86との間の係合を伴わずに、上述の軸方向ロックを無くすことによって端部シールド90の開口部を明らかにすることを理解されたい。
【0073】
代替実施形態では、軸方向ロック80は、端部シールド90に恒久的に取り付けられ、ローター係合具84が開口部を通して延在し、開口部が軸方向ロック80のブロック部分82によって覆われるように構成されてもよい。これらの実施形態では、ローター係合具84は、係合状態及び後退状態(withdrawn state)の両方を有するように構成することができる。係合状態では、ローター係合具84は、上述の実施形態に従ってロック係合部86と係合する。後退状態では、ローター係合具84は、もはやロック係合部86と係合しないが、端部シールド90の開口部を通って延在し続ける。後退状態では、ローター係合具84は、使用中のローター32の回転を妨げないようにローター32から十分に後退されるように構成されている。
【0074】
動作中、図5図8の実施形態の軸方向ロック機構は、各構成が必要とされるときに、軸方向ロック解除構成から軸方向ロック構成へ、及びその逆へとシフトすることができるように構成される。典型的には、軸方向ロック機構は、ローター32の内部構成部品へのアクセスが必要とされるとき、軸方向ロック構成に移行される。このようなアクセスは、ローター32の内部構成部品が整備を必要とする場合に必要とされ、ローター32を軸方向にロックすることによって、ユーザは、完全なローター32を取り外す必要なく、これらの構成部品を取り外したり、あるいは修理したりすることができるように、これらの構成部品に容易にアクセスすることができる。ローター32がロック解除構成とロック構成との間でシフトされるとき、ローター32は、静止するまで減速されている。加えて、発電機24及び/又はギアボックスが一つの位置から他の位置へ移送されるとき、軸方向ロック機構は軸方向ロック構成へ移行する。輸送中にローター32を軸方向にロックすることにより、ローター32が軸方向に自由に移動することが許された場合に起こり得る、発電機24及び/又はギアボックスの構成部品への損傷を防ぐことができる。
【0075】
軸方向ロック機構は、ローター32の回転位置に関係なく、従って、ロック係合部86の回転位置に関係なく、ロック係合部86に取り付け可能に構成される。これは、開口部、軸方向ロック80及びロック係合部86の任意の適切な配置を用いて達成することができる。図5図8の実施形態では、ローター32は、ローター32の長さ全体にわたって軸方向に等しく延在する複数のタイロッドを備え、各タイロッドは、ローター32の回転軸から実質的に同じ半径方向距離に位置している。各タイロッドは、ローター32の非駆動端64にロック係合部86を備える。図5図8の端部シールド90は、複数の開口部を備え、各開口部は、ローター32の回転軸から、複数のタイロッドと同じ半径方向距離に部分的に配置される。いくつかの実施形態において、端部シールド90は、ローター32の回転軸から、複数のタイロッドと同じ半径方向距離に部分的に配置された単一の開口部を含むことができる。図5図8に戻ると、複数の開口部は、軸方向ロック解除構成と軸方向ロック構成との間でシフトするために停止されたときのローター32の回転位置にかかわらず、端部シールド90の開口部を介して少なくとも一つのタイロッドにアクセスすることが可能であるように、そのような態様で形成され、端部シールド90の周りで間隔を空けて配置される。いくつかの実施形態では、これは、各開口部が、各連続するロック係合部86間の角度間隔よりも大きい角度範囲を少なくともカバーするように、一つ以上の開口部を設けることによって達成される。これは、ローター32の回転位置にかかわらず、少なくとも一つのロック係合部86が開口部を通してアクセス可能であることを保証する。図5図8の実施形態では、端部シールド90の開口数に等しい複数の軸方向ロックが設けられており、ローター32を軸方向ロック構成にシフトすることは、上述の実施形態に従って、端部シールド90の個別の開口部を通して、各軸方向ロックを個別のタイロッドに固定することを含む。
【0076】
いくつかの実施形態では、軸方向ロック機構は、上述の実施形態に従って、四つの軸方向ロック80を備え、端部シールド90は、四つの開口部を備えている。四つの開口部の各々は、ローター32の回転軸から実質的に同じ半径方向距離に位置している。さらに、開口部の各々は、二つの連続する開口部の中心が回転軸に対して90°だけ角度的に離れているように構成されている。開口部及びロック係合部86の形状は、各軸方向ロックが、ローター32の回転位置に関係なく、端部シールド90の別個の開口部を介してロック係合部86に固定されることができるように構成されることを理解されたい。
【0077】
他の実施形態では、ローター32の回転位置に関係なくロック係合部86と係合可能な単一の開口部及び単一の軸方向ロックを提供することが可能であることを理解されたい。これは、全ての回転位置においてロック係合部86へのアクセスを可能にする単一の開口部を提供することを含むことができる。
【0078】
いくつかの実施形態では、ローター32の少なくとも一つのロック係合部86及び端部シールド(90)の開口部は、それぞれ、上述したローター32の内部構成部品から半径方向外側に配置されており、これらの構成部品は、完全なローター32を取り外す必要なく取り外したり、あるいは修理したりすることができるようにアクセスされる。このような構成部品は、ナセル4の軸受カセットを含む。ローター32の少なくとも一つのロック係合部86及び開口部をこのように配置することによって、内部構成部品を取り外したり修理したりするときに、これらの構成部品に容易にアクセスできるようになる。
【0079】
いくつかの実施形態では、軸方向ロック80は、図9に示すように、一つ以上のプッシュピン110をさらに備える。プッシュピン110は、端部シールド90に対して移動するように、かつローター32の回転軸に対して軸方向に移動するように構成され、ローター32の軸方向ロック構成において、プッシュピン110は、ローター32の端面に接触し、ローター32の軸方向の移動にさらに抵抗するように、軸方向ロックに連結される。この実施形態では、プッシュピン110は、端部シールド90の開口部を通って移動するように構成される。プッシュピン110を設けることにより、ローター32の軸方向の移動に対する付加的な抵抗を与えることができ、特に、ローター係合具84の軸方向とは反対のベクトル方向の軸方向の移動に対する抵抗を与えることができる。その際、プッシュピン110及びローター係合具84の両方を設けることにより、ローター32を両方のベクトル軸方向に完全に軸方向ロックすることができる。図9に示す実施形態では、ローター係合具84は、ローター32のロック係合部86と係合し、ローター32を端部シールド90に向かって効果的に「引っ張り」、ローター32が端部シールド90から離れる軸方向の移動に抵抗する。同時に、プッシュピン110は、ローター32の端面に接触して、ローター32を端部シールド90から軸方向に効果的に「押し」、ローター32の端部シールド90への軸方向の移動に抵抗する。上述の二つの軸方向抵抗の組み合わせは、ローターを単一の軸方向位置に効果的にロックする。
【0080】
いくつかの実施形態では、プッシュピン110は、端部シールド90におけるねじ付きボアと係合するねじ付きボルトを含む。ねじ付きボルトは、ローター32の軸方向外側表面と接触させるために、端部シールド90を介してねじで取り付けることができる。また、ねじ切りは、ねじ付きボルトを端部シールド90に連結するように作用し、ローター32の軸方向の移動に抵抗する。プッシュピン110は、ドライバ、トルクレンチ、又は他の適当な手持ち工具を使用して、ローター32の外面と係合及び係合解除されることができる。あるいは、プッシュピン110の端部は、プッシュピン110を手で係合及び係合解除させるためのグリップを備えている。軸方向ロック80がボルト締め機構によって(永久的又は一時的に)端部シールド90にしっかりと取り付けられているいくつかの実施形態では、軸方向ロック80を端部シールド90に固定するために使用されるボルトは、プッシュピン110としても使用され得る。軸方向ロック80が端部シールド90に永久的に固定されている実施形態では、ねじ付きボルトは、軸方向ロック80を端部シールド90に固定するために、端部シールド90に部分的にねじって取り付けられてもよく、ボルトをローター32に接触させる(すなわち、上述の実施形態に従って軸方向にロックされた構成にすることができる)ために、さらにねじって取り付けられてもよい。ボルトがローター32に接触しない場合、この実施形態の軸方向ロック80は、軸方向ロック解除構成になる。このような構成において、ボルトは、ローター32の回転を妨げないように位置決めされるように構成されている。
【0081】
図5図8の実施形態では、発電機24は、半径方向ロック機構と軸方向ロック機構の両方を備えている。このような実施形態では、発電機24は、ロック構成及びロック解除構成をさらに備える。ロック構成では、発電機24は、半径方向ロック構成及び軸方向ロック構成の両方となるように構成される。ロック解除構成では、発電機24は、半径方向ロック構成及び/又は軸方向ロック解除構成となるように構成される。動作中、本発明の半径方向ロック機構及び軸方向ロック機構は、各構成が必要とされるときに、ロック解除構成からロック構成へ、及びその逆にシフトされるように構成される。
【0082】
添付の特許請求の範囲に定義された本発明の範囲から逸脱することなく、上記の特定の実施例に対して多くの修正を行うことができる。一実施形態の特徴は、他の実施形態においても、そのような実施形態への追加として、又はその代替として使用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9